2019’カトカラ2年生 其の弐(1)

 

  vol.19 ウスイロキシタバ

   『象牙色の方程式』

 
カトカラを本格的に採り始めた2018年は、ウスイロキシタバを探しに行かなかった。
フシキキシタバ(註1)を偶然に採って、カトカラに少し興味を持ち始めたばかりの頃だったので、カトカラ1年生の触り、謂わば黎明期。また本格的にカトカラを集める気なんてサラサラ無かったのである。
だいちウスイロキシタバなんて、カトカラの中でも一番汚い奴っちゃと思っていた。下羽が鮮やかな者が多いこのグループの中にあって、ウスイロは下羽に鮮やかさが微塵も無いのである。
それにカトカラ同好会のホームページ(註2)のウスイロキシタバの項には「関東以北の愛好者にとっては憧れのカトカラだが、関西の愛好者にとってはなんということのない種である」云々といったようなことが書かれてあった。ゆえに、そのうちどっかで採れるだろうと思っていたのだ。
しかし、2018年は結局どこでも会うことはなかった。

それでも2019年には、どうにでもなると思っていた。
そうゆう事実はスパッと忘れていて、いつものように根拠の無い自信に溢れていた。そう、相変わらずのオメデタ楽観太郎になっていたのである。

 
2019年 6月13日
 
夏の青空が広がっている。
時期的にはもう梅雨に入っていてもオカシクない筈だが、ここのところ天気は頗(すこぶ)る良い。この先の予報も晴れ続きだ。何でもかんでも異常気象で片付けるのもどうかとは思うが、やっぱりここ数年の天気は何だかオカシイ。

この日は宝塚方面へ行った。

 

 
第一の目的は、来たるカバフキシタバ(註3)のシーズンに備えての下見だった。ライトトラップを持ってないので、現状は樹液採集に頼らざるおえないのだ。その為には予め樹液の出てる木を探しておきたい。天才肌なので(笑)、いつもは下見なんぞ面倒臭くてしないのだが、天下のカバフ様である。手は抜けない。それに此処にはウスイロキシタバの記録もあるので、あわよくばと云うのもあった。謂わば、一石二鳥の作戦ってワケ。

山を歩き回るが、樹液の出ている木は1本しか見つけられなかった。しかもバシバシに樹液が溢れ出ているような木ではない。誠に心許ないようなチョロチョロ状態だ。もしその木に何も寄って来ないようなら、暗闇の中を山に登って探しなおすしかない。昼間歩いている時に樹液の甘い香りがしたのだが、どの木から出ているのか分からなかったのだ。それを探すしかないってワケ。
実をいうと、樹液の出ている木は昼間よりも夜の方が見つけやすい。カブトムシやクワガタは目立つし、クソ蛾どもが複数飛んでいたら、その周辺から樹液が出ている可能性が高いのだ。それに昼間だと視界が広過ぎて視認センサーが散漫になりやすい。対して夜だと見えるのは懐中電灯の照らす範囲だけなので余計なものは目に入らず、見逃す確率が格段に減るのである。

ようやく暗さが増し始めた午後7時20分、その唯一の樹液ポイントへと行く。
だが、来ていたのはヤガらしいクソ蛾が1頭だけだった。
まあいい。クソ蛾であっても蛾が誘引される樹液であると云う証明にはなる。希望はゼロではないということだ。ゼロと1とでは雲泥の差がある。明るい未来を想像しましょう。

とは言いつつも、正直この木だけでは厳しい。取り敢えず此処は置いといて、新たな樹液ポイントを探しに夜の山道を歩き始める。
10分ほど歩いたところで、空気中に微かな樹液の匂いを感じた。見つけられなかった木は、この辺だったような気がする。立ち止まり、咄嗟に懐中電灯をその方向へと向けた。下から上へと灯りを移動させる。
❗Σ( ̄□ ̄;)ワッ、地上約4mくらいのところでカトカラが乱舞していた。
どうりで見つけられなかったワケだよ。昼間見つけられなかったのは、樹液が出ている箇所が高かったからだね。
それにしても凄い数だ。少なくとも10頭以上は飛んでいる。いや、20頭くらいはいるだろう。こんなに沢山のカトカラが乱舞している光景を見るのは初めてだ。
時期的に考えれば、勿論カバフではないだろう。まだ早い。黄色いからウスイロである可能性も無さそうだ。ウスイロは名前通りに色が薄いのだ。だとしたら、フシキかな❓コガタ(註4)にもちょっと早い気がするしね。あっ、ワモン(註5)の可能性も無いではないね。でもワモンにしても出始めの頃だろうから、こんなに沢山いる筈はない。だいちワモンは何処でも個体数が少ないと言われているので、こんだけ大量にいたら事件だ。可能性、却下だ。逆にアサマ(註6)は、もう姿を消している頃だ。同様に、こんなに大量にいるワケがない。
黄色が鮮やかに見えるし、感じからすっと、たぶん全部フシキキシタバで間違いないだろう。最近、網膜にインプットされた画像と同じに見えるもん。

とやかく考えていても話は始まらない。
網をスルスルと伸ばして、空中でエイやっι(`ロ´)ノ❗と掬い採る。たぶん一度に3つ入った。
中を見ると、予想通りの3つともフシキだった。どうやら飛んでるのは皆、フシキくんのようだ。
どこが珍品やねん٩(๑`^´๑)۶❗嘗(かつ)ては、そうだったらしいけど、今や普通種の域だ。

樹液への飛来時間の謎を解きたいので、ガツガツ採らずに目についた型の良さそうなものだけを選んでチョビチョビ採る。
いくつか採り、落ち着いたところで周辺を見ると、やはり思ったとおり、周囲の木の幹に止まっている個体が複数いた。樹液の出ている木の上部や下部で憩(やす)んでいるものもいる。
おそらく宵になると直ぐに餌を摂りに樹液にやって来て、お腹いっぱいになったら周辺で憩んでいるのだ。で、また腹が減ると、再び樹液に訪れるものと思われる。その合間に交尾も行われるのではなかろうか。それだと、途中でピタリと飛来が止まる謎にもスッキリと説明がつく。餌場はオスとメスとの出会いの場でもあるのだ。

 
【フシキキシタバ】

 
しかし、交尾しているカップルは1つも見つけられなかった。出歯亀作戦、失敗である。

ウスイロキシタバは、結局1頭も飛んで来なかった。
とはいえ、さしたるショックは無かった。昼間に山の植物層を見て、殆んど諦めてたもんね。
ウスイロキシタバの幼虫の食樹はアラカシだと言われている。どうやら、そのアラカシが多く生える豊かな照葉樹林が棲息地みたいなのだ。でも此処は乾燥した二次林って感じで、あまり居そうには見えなかったのである。
まあ、そのうち会えるっしょ。

 
2019年 6月17日

この日から本格的なウスイロ探しが始まった。
でも場所の選定には迷った。『ギャラリー・カトカラ全集』には、関西なら何処にでも居るような事が書いてあったが、調べてみると意外と文献記録が少ないのだ。ネットを見ても、関西のウスイロの記事は少ない。

場所は武田尾方面と決めた。
理由は、わりかし最近の記録があるし、ナマリキシタバの下見もしておこうと思ったのだ。またしても一石二鳥作戦である。虻蜂取らずにならぬ事を祈ろう。

 

 
ここは国鉄時代の旧福知山線が走っていたのだが、跡地が遊歩道になっている。
でもトンネルだらけで、昼間でもメッチャ怖い((( ;゚Д゚)))

 

 
昼間でコレなんだから、夜なんて想像に難くない。チビるに充分なシュチエーションだろう。
いや、超怖がり屋としては恐怖のあまり発狂するやもしれぬ。2年目ともなると夜の闇にもだいぶ慣れてきたとはいえ、トンネルはアカンで、Σ(゚Д゚|||)アカンでぇー。

 

 
トンネルを抜けたら、又トンネルってのが何度も続く。長くて出口が見えないトンネルだってあるから、バリ怖い。カッちゃんだったら、髪の毛ソッコー真っ白やな。

 

 
ナマリキシタバは流紋岩や蛇紋岩の岩場環境に棲息するとされている。ここは流紋岩だろう。この感じ、如何にもナマリが居そうな環境だ。

ナマリの食樹であるイブキシモツケも結構そこかしこにある。

 

 
これでミッション1はクリアだ。ナマリも何とかなりそうな雰囲気だね。7月半ば過ぎ辺りに来れば大丈夫だろう。

メインミッションの方も着々と進んでいた。
アラカシの多い森で、樹液の出ているクヌギの木を1本見つけた。有望なポイントだろう。そして、クヌギが主体だがアラカシも結構混じる雑木林でも樹液がドバドバ出ている木を見つけた。一安心だ。取り敢えず、これで戦える態勢は整った。この2つのうちのどっちかにポイントを絞ろう。

とはいえ夜が訪れるまでには、まだまだ時間がある。ナマリキシタバの幼虫記録は生瀬にもあるから、そこまで歩くことにした。それに生瀬辺りに、行きしの電車の車窓から見て気になる場所があった。山頂に赤い鳥居があって、その山が何か環境的にいい感じなのだ。そこも確かめておきたかった。もしソチラの方が良さげなら、ポイントを変えてもいい。夜の森は何処でも怖いが、トンネルは特別だ。ホラー度マックスなのだ。アソコは避けれるものなら避けたい。それが偽らざる心情だ。
その場でググると、アラカシ林も有るようだ。今日のオラ、冴えてるかも。<( ̄︶ ̄)>へへへ、早くも楽勝気分になる。

だが、生瀬までの道程はつまらなかった。イブキシモツケは結構生えているのだが、如何せん交通量の多い車道沿いなのだ。成虫のポイントとしては使えない。いくら何でも、こんなところで網を振る勇気は無い。危険だし、通報されかねない。気分が少し下がる。

生瀬に到着。
しかし、麓が住宅地で道が入り組んでおり、赤い鳥居の神社への登り口が中々見つけられない。そして、ウロウロしているうちに日が暮れてきたので断念。やむなく武田尾方面に戻ることにした。無茶苦茶歩いてるからヘトヘトだし、何だか雲行きが怪しくなってきた。

迷ったが、アラカシの森を選択することにした。ウスイロの方程式はアラカシの森だ。それに従おう。
午後7時を過ぎて暫くすると、突然闇が濃くなったような気がした。(-_-;)怖っ…。戦々恐々だが、やるっきゃない。

 

 
午後8時を過ぎても、ウスイロは姿を見せない。飛んで来たカトカラはフシキキシタバだけだった。嫌な予感が走る。
このままだと決断を迫られる事になる。此処に残って粘るか、思い切って移動するかを判断せねばならぬ。

8時半になっても、姿なし。どうする❓
この時間になっても飛んで来ないと云うことは、此処には居ないのかもしれない。それに闇の恐怖にも耐えきれなくなってきた。照葉樹の森の中は、ことさらに暗いのだ。
ヽ(`Д´)ノえーい、しゃらクセー。クヌギの雑木林に移動することを決断した。判断に迷ったら「動」だ。攻めよう。何もせずに戦いに敗れるなんて耐えられない。無策に終わる奴は滅びればよい。

樹液がドバドバ出ている木には、いっぱい蛾が集まっていた。
クソ蛾も多いが、カトカラも結構いる。
採ってみると、大半がフシキキシタバだったが、コガタキシタバも混じっていた。

だが、結局ついぞウスイロは1頭たりとも現れなかった。
(ㆁωㆁ)…。闇の中で💥💣爆死。白目オトコと化す。

 
2019年 6月19日

この日も天気が良い。
日付的には、とっくに梅雨に入っている筈なのに連日晴天が続いている。ライト・トラップをするわけではないので、特に問題があるワケではないが、連日の晴れも考えものかもしれない。乾燥し過ぎるのも良くないような気がする。ウスイロキシタバは紀伊半島なんかでライト・トラップをすると、ヤクシマヒメキシタバと一緒に飛んで来るそうなのだが、その際、雨が降ると活動が活発になると聞いたことがある。おそらくヤクヒメと同じく湿気の多い環境を好む種なのではあるまいか。そう思ったりもするからだ。

生瀬駅で降り、あの頂上に赤い鳥居がある場所を目指す。リベンジだ。
前回は北側の斜面からアプローチを試みたのだが、結局登山口を見つけられずに時間切れとなった。だから、今回は駅を出て一旦右に針路をとり、北西側から回り込んでルート探査することにした。

しかし斜面はアホほどキツいし、山へはフェンスで囲まれていて入れない。結構アラカシも生えているし、環境的には悪くないのに何でやねん❓
オマケに直射日光に晒され、((o(∵~エ~∵)o))アジィィ〜 。たちまち汗ダクになる。でもって、再び住宅地に迷い込む。もう最悪である。
結局、ぐるりと歩いて山の南東側までやって来てしまった。このままいくと、前回歩いた所にまで行きついてしまう。だったら、何処から登れというのだ❓もしかして、謎の霊的な山だったりして…。結界じゃよ、結界❗そんな山に、夜一人ぼっちで入るのか❓絶対、魑魅魍魎どもに拐(さら)われるな…(ー_ー;)
また要らぬ事を考えてしまう。基本的に超がつく怖がり屋さんだし、チキンハートのビビりなのだ。

山の南東の端まで降りてきて、やっと道が見つかった。しかも、この前に引き返した辺りだ。まさか学校の裏に登山口があるとは思いもよらなかったよ。(╯_╰)徒労感、激しいわ。ものスゲー遠回りしたし、せっかく登ったのに降りてきて、また登るのかよ。

斜面を登ってゆくが、意外と山は乾燥している。住宅地のそばだし、致し方ないか…。アラカシもあるにはあるのだが、思っていた程にはない。

山頂に辿り着く。

 

 
幟(のぼり)に光照稲荷大明神とある。「あまてらすいなりだいみょうじん」と読むのかと思いきや、まんまの「こうしょういなりだいみょうじん」と読むんだそうな。

 

 
眼下に生瀬の町が見える。
眺めは気持ちいいくらいに抜群に良い。さぞや夜景も綺麗だろう。でもここじゃ、多くは望めそうにない。また惨敗の可能性大だ。

こうゆう事もあろうかと思って、第2の候補地として岩倉山方面の下調べもしてあった。塩尾寺周辺にアラカシ林があるらしい。それに、この近くにもウスイロの記録がある。

麓に降り、宝塚駅まで歩く。郊外の一駅は遠いわ。
甲子園大学の横を抜け、山を登り始める。しかし、あまりにも坂がキツくて半泣きになる。忘れてたけど、六甲山地の斜面はキツイのだ。去年、クロシオキシタバ(註7)の時に散々ぱらそれを味わった筈なのにね。見事なまでに忘れておる。六甲と云えば、あの源平合戦の一ノ谷の戦いの鵯越えで有名なのだ。半端ない坂なんじゃよ。

「人間とは、忘却し続ける愚かな生命体である。」
          by イガリンコ・インタクタビッチ

言葉に含蓄ありそで、全くねぇー。底、浅ぇー(◡ ω ◡)
3歩あゆめば忘れる鶏アタマ。単に阿呆なだけだ。

午後5時半に塩尾寺に到着。

 

 
マジ、しんどかった。
標高は350mだが、平地から一気に登っているので、かなり高いとこまで来た感がある。

寺を越えて尾根道に入る。
樹液の出ている木を探すが、中々見つけられない。クヌギやコナラの木は結構あるのに、何で❓
それに尾根にはアラカシがあまり生えていない。見た感じではアラカシ林はもっと下にあり、そこへゆく道はどうやら無さそうだ。ピンチじゃのう。完全に負のスパイラルに入りつつある。否、既に入っとるわ。

あっちこっち探してるうちに日が暮れ始めた。

 

 
夜になれば見つけられるかもしれないと思って、日没後も探してみたが、ねぇっぺよー(༎ຶ ෴ ༎ຶ)
こりゃダメだと思い、標高を下げることにした。
そこで漸く樹液の出ている木を1本だけ見つけた。しかし、出てる樹液の量は少なく、寄って来るのはクソ蛾のみ。

 

 
夜景が綺麗だが、それも今は虚(むな)しく見える。焦りからか、心に余裕が全然ないのだ。
まだウスイロを採ったことがないので、その方程式が見えない。どうゆう環境を好むのかがワカラナイ。前回に惨敗してるから、尚更イメージ出来なくなってる。もしかしたら、これってオドロ沼にハマったのかもしれん。蝶の採集では、そうゆうことは滅多に無かったからパニックになりそうだ。何で小汚いウスイロ如きが採れんのだ。関西では普通種だと聞いてたけど、ホントかよ(-_-メ)❓
まさかの躓きに、暗澹たる気分に支配される。

午後8時40分。
このままでは惨敗必至だと思った。採れるイメージが全然湧かないのである。この感覚は大事にしてて、そうゆう時は蝶での経験で大概は惨敗に終わると知っている。ここにずっといてもロクな事は無い。ダメな場所でいくら粘ろうともダメなものはダメなのだ。
もう一人の俺が、動けと命令している。
意を決して、ここを離脱することにした。まだ今ならギリギリで何とかなる。駆け足で山を下った。

記憶では、汗ダクになりながら9時20分くらいの武田尾方面ゆきの電車に飛び乗った。
一発逆転。イチかバチかの博打(ばくち)だ。勝負師ならば、大胆に最後の一手を打とう。そこに一縷の望みを賭けよう。

                        つづく
 

追伸
2019年の採集記は1回で終わる予定だったが、結局長くなって2回に分けることにした。毎度ですが、頭の中の草稿構成力が甘い。というか、アバウト過ぎるのだ。よく考えもせず書き始めるから、こうゆう事になる。書いてるうちに構成が決まってきて、それに肉付けしてるうちに結局長くなっちゃうんだよね。熟思黙考には向いてない人なんである。喋ってるうちにするすると言葉が出てきて、自分でも、へーそうゆうこと思ってたんだねと感心しちゃうようなタイプなのだ。

 
(註1)フシキキシタバ

(Catocala separans)

上が♂で下が♀。
詳細は拙ブログの、2018’カトカラ元年シリーズの『不思議のフシキくん』とその続編『不思議なんてない』を読まれたし。

 
(註2)カトカラ同好会のホームページ
ホームページ内の『ギャラリー・カトカラ全集』のこと。
日本のカトカラ各種の写真と簡潔な解説が付与されており、カトカラの優れた入門書になっている。

(註3)カバフキシタバ

(Catocala mirifica)

(♂)

(♀)

日本のカトカラの中では、トップクラスの珍品だが、去年タコ採りしたので、本当にそうなのかな?と思ってる。
これまたカトカラ元年シリーズの『孤高の落武者』と『リビドー全開❗逆襲のモラセス』の前後編を読んでおくれやす。

  
(註4)コガタ=コガタキシタバ

(Catocala praegnax)

(♂)

(♀)

同じくコチラも元年シリーズのvoi.4『ワタシ、妊娠したかも…』と、その続編『サボる男』を読んでけろ。
それにしても、フザけたタイトルだよなあ…。

 
(註5)ワモン=ワモンキシタバ

(Catocala xarippe)

(♂)

(♀)

 
詳細は、元年シリーズのvol.2『少年の日の思い出』と、その続編『欠けゆく月』、続・続編『アリストテレスの誤謬〜False hope knight〜』を読んでたもれ。

 
(註6)アサマ=アサマキシタバ

(Catocala streckeri)

(♂)

最新作の『2019’カトカラ2年生』の解説編の第5章『シュタウディンガーの謎かけ』と第6章『深甚なるストレッケリィ』を読んで下され。暇な人は第一章の『晩夏と初夏の狭間にて』から読みませう。

こうして黄色い下翅のカトカラの幾つかを並べてみると、矢張りアサマだけが雌雄の触角の長さに相違がある。まだ全種の触角を確認してはいないけど、今のところアサマの♀だけが触角が短い傾向がある。これについては第1章から第4章にかけて書いとります。

因みに、この日は1頭だけアサマがいた。勿論、ボロボロでした。

  
(註7)クロシオキシタバ

(Catocala kuangtungensis)

(♂)

(♀)

カトカラ元年vol.9『落武者源平合戦』と、その続編『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』を読んでおくんなまし。

何だか今回は、自分のブログの宣伝ばっかになっちゃったなあ…。

 

2019’カトカラ2年生 其の1 最終章

 
   No.18 アサマキシタバ(6)

  『深甚なるストレッケリィ』

 
アサマキシタバの解説編の続きである。でもって、今度こそ最終章である。
前回で最終話になる予定が、ドツボに嵌まって💦トッピンシャン。とんでもない大脱線となった。まさか自分でも最初の項目である【学名】で終わるとは夢にも思わなかったよ。

仕切り直しで、アタマからいく。
今度こそ、石塚さんの『世界のカトカラ(註1)』から画像をパクリまくりである。石塚さん、いつもスイマセン。

 
【アサマキシタバ ♂】

 
【同♀】

 
【♂の裏面】

【♀の裏面】

 
今回、♀の裏面の画像を差し替えた。でも同じ個体です。触角が見やすいようにとマチ針を外したのだ。
オスとメスは一見して、かなり見た目が違うのだが、それについては後ほど別項を設けて書きます。

 
【分類】
ヤガ科 Noctuidae
シタバガ亜科 Catocalinae
カトカラ(シタガバ)属 Catocala

 
【学名】
Catocala streckeri staudinger,1888

学名の属名 Catocala の語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
小種名 streckeri の語源は、おそらくアメリカの昆虫学者ハーマン・ストレッカーに献名されたものだろう。詳しくは前回を参照されたし。

 
【和名】
アサマキシタバの後半部分の「キシタバ」は、下翅が黄色いシタバガの仲間と云うこと。カトカラ(シタバガ)属の中で、このキシタバと名の付くものは下翅が黄色いグループに含まれる。
前半部分の「アサマ」は、たぶん長野県と群馬県とに跨がる浅間山に因んだものだろう。
蝶にもアサマイチモンシ、アサマシジミってのがいて、由来は最初に浅間山周辺で採集されたからだ。たぶん同じようなもんっしょ。とはいえ、浅間山ならぬ浅間さんが最初に見つけたからだったりして…。
何か冒頭から雑いよなあ。きっと文章を書くのに疲れておるのだ。気を取り直して、前へと進めよう。

 
【亜種】
調べた範囲では、亜種は特に記載されていないようだ。
タイプ産地は、おそらくアムールとか沿海州(ロシア南東部)だろう。この辺りの産地と朝鮮半島のものがわりと下翅の黒帯が細く、黄色い部分が広いような気がする。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
上が韓国産で、下がロシア産である。
見た目の印象が結構違う。黒っぽい日本のものよりも、キレイだ。
とはいえ、傾向があると云うだけで亜種区分する程のものではないのだろう。
でもググってると、他にも韓国産のアサマキシタバの画像が出てきた。

 


(出典 2点共『www.jpmoth.org』)

 
う〜ん、こんだけ黄色いのが続くと考えちゃうなあ…。
もし分けるとなると、日本の黒っぽいモノの方が別亜種になるんだろね。どこにも誰もそんな事は書いてないけど、黄色いのと日本のような黒っぽいヤツとは大陸では連続的に分布していて、厳密的には線引き出来ないのかもしれない。そうゆう事にしておこっと。

その後、日本の分布について調べてたら、増井武彦氏の『四国の蛾の分布資料(Ⅷ) オオシロシタバとアサマキシタバの発見(註2)』と云う論文に以下のような記述を見つけた。

「5月下旬に本種の1♀を採集することができた。得られた個体は開張55mmでやや大型であり、コガタキシタバを連想させるほど後翅の黄色帯は濃く、やや中部以北産の個体とは趣を異にしている。」

四国のアサマは他と違ってるのか…❓
それで思い出した。そういえば愛媛産のアサマキシタバも、そんな感じだったような気がするぞ。

 

(出典『南四国の蛾』)

 
やはり、黄色い。
でもなあ…個体差もあるしなあ…。明確には分けれないんだろなあ…。
下手に触れればロクな事がない。一々、疑問を持つからドツボにハマり、文章が長くなるのだ。個体差があって。厳密的には分けれない。やっぱり、そうゆう事にしておこっと。

亜種はいないが、ヨーロッパに小型の近縁種がいるもようだ。

 
【Catocala euychea Treitschke,1835】


(出典『世界のカトカラ』)

 
翅の斑紋がアサマとは全然違うけど、♂の交尾器の構造が似通っているそうだ。
地中海周辺から西アジアに分布し、和名にギリシャキシタバの名がある。

一応、カトカラのDNA解析の系統図を見たら、予想外のウスイロキシタバ(Catocala intacta)のクラスターに入れられていた。系統図からは、かなり近縁な関係に見受けられる。

 

(出典『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』)

 
とはいえ、DNA解析の結果が100%正しいかどうかは疑問なところもある。本能的に違うんじゃないかと思う解析結果も珠にあるのだ。全く違う系統の種が何らかの収斂の結果(例えばカタツムリ食のオサムシ)、互いに見た目が似通うってことはあるのは理解できる。でもそれとは違う、もっと本能的な違和感を珠に感じるのだ。
とにかく、解析のやり方によっては違う結果が出ることもあるだろう。だから結果を鵜呑みにはしないようにしている。
まあ将来的には検査方法が確立されて精度も高まるだろうから、信頼できるに足るようなものにはなってくんだろうけどさ…。
きっと、オラって肉眼で見えてるものしか信じない旧いタイプの人なんだろね。でも肉眼で区別できないものを分類するのって、はたして必要なのかな?全く不必要だとは言わないが、そんなのまで図鑑に載せ始めたら、混乱するだけだろ。いたずらに細分化するのって、疑問を感じるよ。

記事をアップ後、カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんからDNA解析の結果について御指摘があった。折角だから載せておきます。

『引用されているDNA系統樹は、新川さんにやっていただいたミトコンドリアND5をMLで処理したものです。これでアサマとウスイロが近縁と判断するのは誤りです。ここで類縁が指摘されているのはワモンとキララ、オオシロとcerogama、ムラサキとrelicatだけです。そのほかのものは類縁関係は判断できません。おそらくミトコンドリアND5の解析ではカトカラの系統を推定するのは無理なのだと思います。😀』

また、補足のコメントもござった。

『遺伝子解析は有力なデータの一つです。その解析結果をどう解釈するかが問題だとおもいます。』

石塚さんが言ってるんだから、これについては何ら反論は無い。んな事よりも、DNA解析って何なん❓益々、信用でけへんわ。蝶かて、どーよ❓って感じ。サトウラギンとかヤマウラギンとか無視だな。

 
【シノニム(同物異名)】
Ephesia strecceri Hampson, 1913

これは属名が、Ephesiaからcatocalaに変更になったからだろう。
Ephesiaという属名は古い属名で、リンネが鱗翅目を分類した時に命名した4つの属のうちの一つである。

あっ、小種名は字面が似ているから同じ「streckeri」かと思いきや、よく見ると綴りが違うや(・o・)
違うけど、ここは掘り下げないようにしよう。もうウンザリなのだ。こんなの、どうせミスプリントだ。これ以上、迷宮を彷徨うのは御免だ。また前回の学名の項みたくなりたくない。

 
【変異・異常型】
アサマは上翅斑紋が不明瞭なものが多いが、柄にメリハリがあるものもいるようだ。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
他には、稀に後翅の中央黒帯が細まるものや、ほぼ消失する異常型などが知られているそうな。
たぶん、↙こうゆう型のことだろう。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ(註3)』にも異常型が載っていた。

 

(出典 岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』学研)

 
(・・;んっ❓ 何か違和感を感じた。
触角や後脚が違うが、斑紋は全く同じに見える。
もし見当違いならゴメンなさいです。もしかしてコレって同個体で、展翅をやり直しただけなんじゃないのか❓
どっちが再展翅したモノなのかはワカンナイけど、まあ岸田先生と石塚さんは懇意にされてるみたいだから、そうゆう標本の貸し借りみたいな事はよくあるのだろう。勝手な推測だけど。

 
【開張(mm)】
『原色日本産蛾類図鑑Ⅱ』では、52〜54mm。『日本産蛾類標準図鑑』では、47〜54mm内外となっていた。

日本のカトカラの中では、やや小さい部類に入るだろう。

 
【雌雄の判別】
カトカラは基本的に雌雄同型の斑紋なので、雌雄の判別には慣れが必要である。一応、参考までにアサマキシタバの雌雄の判別法を自分なりに書いておきます。

①同定をする場合、先ずは裏返して尻先と産卵管の有無を確認しましょう。その2つが有れば、間違いなくメスです。

 

 
黄色いのが、おそらく産卵管だろう。
以下、確認されたし(画像はピンチアウトすると拡大できます)。

 

 
一方、オスはこんな感じ。

 

  
一見してオスは毛束が多く、スリットは認められない。
 
補足事項として、以下のような雌雄の特徴が傾向として見受けられる。

②オスは腹部が細くて長い。反対にメスは太くて短いものが多い。また、尻先も丸くなる傾向がある。

③オスは尻先に毛束がある。メスも無くはないが、その量は遥かに少ない。

④オスは前脚(第1脚)と後脚(第3脚)が多くの毛に覆われ、モフモフである。特に新鮮な個体ではコレが顕著である。対するメスは毛があるにはあるが、オスよりも明らかに少なく、モフモフ度は低い。

 
(オスの前脚)

 
(メスの前脚)

 
横からの画像も加えておこう。

(オス)

  
前脚だけでなく、後脚なんかもモフモフなのだ。

 
(メス)

 
但し、この判別法は新鮮な個体に限る。飛び古した個体は体毛が抜け落ちるからだ。

④相対的にメスの方が翅に丸みがある。バランスは横長で、胴体の太さも相俟ってか、ずんぐりむっくりな印象を受ける。それと比して、オスは全体的に細くてシャープに見える。

⑤触角は比較的オスの方が長い傾向にある。

これらは上の画像や冒頭の展翅画像でも確認できる。
但し、補足の②〜⑤の各項には例外もあるので、これらを総合的に鑑みて同定することが必要だろう。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬。

本種は、杉(1971)によれば、内陸準乾燥地を好む蛾であり、ミズナラ帯にも進入しているので、中部以北、北海道まで広く産する。ところが、近畿以西の西南日本では、マメキシタバと同様に低標高地で発見されているのが特徴である。
たしかに近畿地方では低山地に多い。『世界のカトカラ』には「一般にあまり多くないが、場所によっては多産する。」とあったが、近畿では広く分布していて、何処にでもいると云った印象がある。一瞬、暖帯を好む種なのかと思ったが、九州地方では稀なので、それは考えられない。となると、幼虫の食樹の分布と関係があるのかもしれない。近畿地方では冷温帯に好んで生えるミズナラが少なく、幼虫は主に低山地に生えるクヌギ、コナラ、アベマキ、ナラガシワ、アラカシ、ウバメガシを食樹として利用しているからなのかもしれない。

わかり易いように分布図を貼り付けとこっと。

 

(出典『日本のCatocala(註4)』)

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
因みに、三重県が空白になっているが、ネットで見ると三重県北部での採集記録がある。また、茨城県太子町、東京都武蔵村山市、千葉県市川市でも見つかっているようだ。

四国では1978年に増井武彦氏によって香川県で初めて分布が確認され、極めて珍しいものだった。しかし近年になって各地で個体数を増やしており、今では四国全県で見られるという。
記録を拾うと、香川県さぬき市前山、高松市藤尾神社、丸亀市。徳島県八方町(文化の森は総合公園)。愛媛県西条市、松山市。高知県いの(伊野)町などがあった。

中国地方でも従来は少ないとされてきたが、近年は増えつつあるようで、『世界のカトカラ』の分布図では空白になっている島根県でも発見され、現在は全県に記録がある。記録が拾えた産地を列挙しておく。
岡山県美作市、奥矢津。広島県宮島市、広島市東区。鳥取県日野郡。島根県太田市三瓶町。山口県秋吉台、小野田市。

九州では長らく分布しないとされてきたが、2006年に大分県深耶馬溪、釈迦ヶ岳で見つかった。その後、同じく大分県九酔渓、佐賀県作礼山、福岡県北九州市平尾台、長崎県対馬でも分布が確認されている。

国外では、アムール、朝鮮半島、中国東北部に分布している。

 
【レッドデータブック】
以下の都道府県が稀少種に指定しているようだ。

滋賀県:絶滅危機増大種
兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)
香川県:準絶滅危惧種

わりと居るとされる近畿地方なのに、2県もランクされているじゃないか。兵庫県なんぞは、淡路島から県中部に広く記録があるのに、なして(・ ・)❓
やっぱレッドデータブックって、トンチンカンなとこあるワ。幼虫の食樹はクヌギなどありふれたものなので、そないに減っているものではないだろう。とはいえ、里山の雑木林は放置されてるから将来的にはわからないけど。

 
【成虫出現期】
日本のカトカラの中では、最も早くに現れる。
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、5E-7(5月終わりから7月)となっているが、『世界のカトカラ』や『日本産蛾類標準図鑑』では5月中旬から現れ、8月中旬頃まで見られるとある。
近畿地方では、5月中旬頃から現れ、6月中旬には殆んど姿を消す。西日本だと何処でも概ねそんな感じだろう。他のカトカラと比べて発生期間が短いように思う。それと比べて図鑑の発生期が長いのは、たぶん東日本では標高が高かったり、寒冷地であったりして、低山地と比べて発生が遅れる地域があるからだろう。
憶測で言うのも何なんで、一応調べとくか…。

西尾規孝氏の『日本のCatocala』によると、「長野県の温暖な地域では5月下旬から、低山地では6月上、中旬から下旬、標高1000m付近のミズナラやカシワ林では6月中旬から7月上旬に出現する。」とあった。予想通りでおましたな。
ついでに北海道も調べたけど、今一つハッキリとした資料は見つけられなかった。しかし、ネットに7月に撮られた写真が載ってて、かなり新鮮な個体だった。なので、おそらく6月下旬から7月上旬に現れるものと思われる。
また『日本のCatocala』では、出現ピークは1週間から10日。寿命は2、3週間と書いてあった。実際、2020年に生駒山地に樹液採集に行った折は、そんなもんだった。最初に行ったのが5月24日で、この日は新鮮な個体ばかりだった。たぶん発生初期だったかと思われる。しかし、16日後の6月9日に行った時は1頭たりとも見なかった。勿論、全く同じ場所である。つまり、たった16日で消えてしまったと云うことだ。そこから類推すると、発生期間はやはりて2週間から3週間と云うことになる。多くのカトカラの寿命が2、3ヶ月だから、極めて短い。
これは、いったい何を意味するのだろう❓
考えられるとすれば、交尾、産卵するまでの間が極めて短く、羽化後すぐに交尾、産卵するという事だろう。多くのカトカラがメスの卵巣が成熟するまでに時間を要するそうだから、これもカトカラの中では異例と言えるだろう。

 
【成虫の生態】
かつては珍品だったようだが、生態が解明されてからは普通種に成り下がったと書いてあるのを各所で見た。けど、何れも具体的な理由については言及されていなかった。おそらく灯火採集よりも樹液採集の方が得やすいと分かったからだろう。あとは、昔は個体数が少なかった可能性も考えられる。また或いは、カトカラに興味を持つものが当時は少なかったと云うのも可能性としてはあるだろう。誰もが、その珍しいと云う記述を鵜呑みにして疑問を持たなかった事は充分考えられるからだ。

灯火にも樹液にも、よく集まるとされる。
しかし個人的には、その時期にライトトラップをした事が無いので、外灯に来たのを1頭くらいしか見たことがない。
但し、時に大発生し、その時は外灯に多数が集まるようだ。長野県では1981年前後と1999年、2005年から2007年にかけて大発生したそうだ。カトカラ2年生のワシは知らんけど、近畿地方でも2015年前後に大発生して、大阪市内や神戸、西宮、宝塚などの市街地、果ては関西空港でも灯下に集まるものが多く見られたという。大阪市内に良好な発生地があるとは思えないから、飛翔力は、それなりに有りそうだね。ちょっと待て。となると、生駒山地で16日後に消えたのは、移動した事も考えられるな。とは言っても、やはり寿命は短いものと思われる。

灯火への飛来時刻は、調べたが明確な答えは見つけられなかった。参考までに言い添えておくと、近畿地方の大発生の時は、日没後、時間帯に関係なく現れたようだ。そんなに珍しい種類ではないので、あまり注視されてなくて、言及もされないのだろう。

ちょっと面白いのは、多くの昆虫が大発生した翌年には大幅に減少するのに対し、連続で大発生することもあると云う点だ。関西でも翌年も結構いたそうだ。
大発生した者の多くが翌年に減少するのは、それに呼応して天敵も増えるからだと言われている。例えばオニベニシタバが大発生した時は、それに連れて卵に寄生する天敵のトビコバチの1種も増えたそうだ。そういえばマイマイガが大量発生した時は、普段は少ない天敵クロカタビロオサムシも大発生したもんな。

樹液には日没後、比較的早くに集まって来る。午後9時前後に飛来が一旦止まり、10時過ぎくらいからポツポツ飛んできて11時から0時にかけてまた飛来数が増えると云う日が多かった。とはいえ、日没後から間もない方が飛来数は多いと云う印象が強い。
しかし、2020年は日没後7時台に数頭飛んできて、飛来がピタリと止まり、9時台になって活性化した。その後、11時まで継続して飛んで来た(11時以降は帰ったので分からない)。たぶん、その日の微妙な気候条件によっても左右されるのだろう。

糖蜜トラップにも飛来する。
2020年に1回だけしか試した事はないが、最初はフル無視されて、樹液にしか反応しなかった。しかし、なぜか10時台になって急に反応し始め、帰った11時までに6例の飛来があった。

樹液の他に、花にも吸蜜に集まる。記録されている花はヤマウルシ、イボタ、カキ(柿)、ウツギ、クリ。
また熟したクワの実やアブラムシの分泌物にも吸汁に訪れるようだ。

成虫は昼間は頭を下にしてクヌギやコナラなどに静止していると言うが、真面目に探した事がないので見たことはない。
驚いて飛び立つと、上向きに着地して直ぐに下向きに素早く姿勢を変えるという。他のカトカラは着地後、暫くしてから向きを変えるものが多いと云うイメージがあるから、ちょっと変わってるかもしれない。

交尾行動も変わっていて『日本のCatocala』によれば、交尾は樹液近くのクヌギの葉裏で観察されている。多くのカトカラが樹幹で交尾するから、これも特異と言っていいだろう。時間帯は午後11時から深夜2時。ブナ科コナラ属を食樹とするカトカラの多くが日没後、比較的早い時間帯に交尾が観察されているから、これも特異かもしれない。但し、野外でカトカラの交尾が観察されることは稀だから、今後、新しい知見がもたらされて覆される可能性はある。
♀腹部内にある交尾曩の精包数から交尾は複数回行われているようだ。

同じく『日本のCatocala』に拠れば、産卵習性も特異だ。
日没後、メス親は食樹であるナラ類の周辺を飛翔し、樹幹に着地する。その後、歩行して枯れた枝にできたカミキリムシやキクイムシがあけた孔に数10卵を産み、更に入口を分泌物で塞ぐそうだ。したがって卵期にはトビコバチなどの天敵は今のところ見当たらないという。また産卵習性が他のカトカラとは異なることが、大発生時の消長の特異性に関わっているかもしれないと書かれている。なるほどね。
西尾氏の観察力は凄いや。よくぞこんな事まで調べたなと思う。真似できない凄い方です。そうゆうワケで、ここから先も西尾氏の『日本のCatocala』に頼りっきりで書く。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のクヌギ、コナラ、アベマキ、ミズナラ、アラカシ。
西尾氏は、この他にカシワ、ナラガシワ、ウバメガシを加えておられる。
低山地に生息するものはクヌギ、コナラ、アベマキ、アラカシなどを、1000m付近の山地に生息しているものはミズナラを利用しているものと思われる。北海道にはクヌギ、アベマキ、アラカシ、ナラガシワ、ウバメガシは自生しておらず、コナラも極めて稀なので、おそらく低地ではカシワ、山地ではミズナラを利用しているものと考えられる。

 
【幼生期の生態】
幼生期については全くのド素人ゆえ、毎度の事だが今回も西尾氏の『日本のCatocala』の力を全面的にお借りする。

卵はカミキリムシのあけた孔に纏めて産まれ、互いが分泌液で接着されている。

 
(卵)


(出典『日本のCatocala』)

まんじゅう型で扁平、他種よりも小さい。卵殻は柔らかく、色は黄白色。
これには驚いた。およそカトカラの卵には見えない。こんな色のツンツルテンの卵は他に類を見ないのだ。カトカラの卵といえば、大体こんな感じだもんね。↙

 


(以上4点共 出典『日本のCatocala』)

上からマメキシタバ、フシキキシタバ、オニベニシタバ、ムラサキシタバである。因みにマメとフシキ、オニベニはアサマと同じく食樹はナラ類である。
とにかく、大概の卵はこんな風に基本は溝付きなんである。それに色も殆んどは淡褐色とか暗褐色だ。こんな目立つ色の卵は他にないのだ。これについて西尾氏は、「卵に対する捕食もしくは寄生などの圧力が殆んどかからず、卵の色彩が隠蔽的になるような進化が起きなかった結果と考えられる。」と推察されておられる。
時に連続的に複数年の大発生が見られるのは、或いはこれが原因なのかもしれない。つまり、あまり発生数が天敵に左右されない可能性があるってことだ。
卵塊で産卵されるのも珍しいようだ。飼育下での話だが、他に卵塊性産卵をすると考えられる種は、カバフキシタバとコガタキシタバくらいらしい。

幼虫は5齢を経て、蛹になる。

 
(終齢幼虫)

(出典『明石の蛾達』)

 

(出典『青森の蝶たち』)

 

(出典『フォト蔵』)

 


(出典『日本のCatocala』)

 
野外の幼虫の色彩変異はやや有り、白粉で覆われるために分かりにくいが、著しく白化したものから色彩のコントラストが激しいものまで連続的に変異が見られる。
幼虫は樹齢15〜40年の壮齢木によく付き、卵塊産卵性があるために1本の木から複数の幼虫が見つかることも少なくないという。
若齡幼虫は日中、葉裏に静止している。終齢幼虫になると、細い枝から太い枝や樹幹に降りてくる。しかし、樹幹にまで降りてくる個体はあまり多くない。

 

 
終齢幼虫の体長は約55mm。頭幅は淡色のものが平均3.4mm。黒っぽいものが平均3.2mmと差異が認められるそうだ。

 
(幼虫の頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
各種カトカラの幼虫の識別は、この頭部の斑紋や色彩が重要な手がかりとなるようだ。

蛹化場所も特異で、他のカトカラが落葉の下など地表部なのに対して、食樹上の葉の重なり合った部分から容易に発見されるという。但し、北海道ではカシワ林の落葉の下から蛹が見つかっている(小木,2002)。
繭の構造も特異で、他のカトカラが1重の粗末な作りなのに対し、丈夫な2重構造になっている。西尾氏は、これと樹上での営繭との関連を示唆されておられる。ようは樹上の方が風雨に晒され、気温の変化も激しいから、それに耐えうるために二重構造となったと云うワケだね。

 
(繭と蛹)


(出典 4点共『日本のCatocala』)

 
下2点が葉っぱを開いたものである。
更に繭を破ると、こんな感じ。↙

 


(出典2点共『明石の蛾達』)

 
アサマキシタバって、カトカラの常識を逸脱している事だらけで面白い。地味なカトカラだし、小馬鹿にしていたが、甚だしく奥深きカトカラなんだね。

                        おしまい

 
追伸
やっと終わりました。
アサマキシタバなんぞに、まさかの六章も費やすとは夢にも思わなかったよ。あの美しき女王、ムラサキシタバの連載だって五章までだったのだ。全くの想定外だったよ。でも調べていくうちに面白くなってきてしまった。アサマって小汚いし、あまり興味がなかったけど、どんだけ変わり者やねん。あんた、メッチャおもろいやんけ。人と同じで、見た目だけで判断しちゃダメだね。

前回にも触れたが、この解説編と第一章は3月にはほぼ出来上がっていた。しかし、触角の件と生態面で確認したい事があって暫く寝かしておくこたにした。それが、再度書き始めると、何だかんだとドえりゃー長くなってしまった。この解説編も、かなり加筆する事になった。次回はすんなり終わることを願おう。

 
(註1)世界のカトカラ

カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんのカトカラ入門書にして、全世界のカトカラをほぼ網羅した図説。出版元は『(有)むし社』。

 
(註2)『四国の蛾の分布資料(Ⅷ)』
「蝶と蛾」vol.30 No.1&2 1979年

 
(註3)『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』

日本蛾類学会の会長でもある岸田泰則先生編著の、日本の蛾類について最も詳しく書かれた図鑑。全4巻からなる。

 
(註4)『日本のCatocala』

2009年に西尾規孝氏により自費出版された。
日本のカトカラに於いては、圧倒的に最も信頼できる文献。日本のカトカラについて全ての面に於いて西尾氏の高い観察眼が発揮されている。幼生期の生態解明を筆頭に、よくぞここまで調べれられたなと思う。驚嘆せざるおえない。
しかし、自費出版なので目に触れる機会は少ない。しかも一冊8万円くらいなので、手が中々出せない代物。誰か発言力のある偉い人が、どっかの出版社に働きかけて廉価版を出してくんないかなあ。このまま蛾の愛好家の人たちの目に滅多に触れられないなんて勿体ないと思うんだよね。

 

2019’カトカラ2年生 其の1 第五章

 
 No.18 アサマキシタバ(5)

『シュタウディンガーの謎かけ』

 
いよいよ最後は解説編です。
えー、今回も石塚勝己さんの『世界のカトカラ(註1)』の画像を借りまくりまする。石塚さん、いつもスンマセン。

 
【アサマキシタバ♂】

【同♀】

【♂裏面】

【♀裏面】

 
【分類】
ヤガ科(Noctuidae)
シタバガ亜科(Catocalinae)
シタバガ属(Catocala)

属名は、愛好家の間ではシタバガ属と呼ばれることは殆んど無く、学名そのままの「カトカラ」が通称となっている。

 
【学名】Catocala streckeri Staudinger, 1888

記載者はドイツ人の昆虫学者・蒐集家・標本商のオットー・シュタウディンガー(Otto Staudinger)であろう。
シュタウディンガーは日本の蝶だと、ウラジロミドリシジミ、アイノミドリシジミ、ヒロオビミドリシジミ、オオゴマシジミの学名の後ろに其の名があるから、ゼフィルス好きの人なら馴染みがあるだろう。

属名「Catocala」の語源は、ギリシャ語の「Cato=下」と「Kalos=美しい」を合わせた造語である。
小種名「streckeri」は、頼みの綱である平嶋義宏氏の『蝶の学名−その語源と解説−』には残念ながら載っていなかった。ようするに「streckeri」と云う学名がついてる蝶はいないようなのだ。
と云うワケで、今回は自力で語源を探(さぐ)るしかない。

小種名「streckeri(ストレッケリィ)」は、おそらく誰かに献名されたものだろう。
なぜなら、人名っぽい「strecker」と云う語尾に「i」が付いているからだ。学名の命名規約上では誰かに献名する場合には、男性だとその名前の語尾にラテン語の属格の「〜i」を付けることが慣わしになっているからである。
だとするならば、問題は「strecker」とは誰かと云うことだ。

最初に候補として考えたのが、ドイツ人化学者のアドルフ・シュトレッカー(Adolph Friedrich Ludwig Strecker)である。
昆虫学者ではないが、シュタウディンガーとは同じドイツ人同士だから何らかの関わりがあったかもしれないと考えたのだ。
まずはシュタウディンガーの生没年だが、西暦1830〜1900年となっていた。シュトレッカーは、1822〜1871年だった。つまり、二人はほぼ同時代に活躍している。であるからして、可能性はある。
しかし、ここで重大な事に気づく。アサマキシタバの記載年は1888年なのだ。まさかのシュトレッカーは既に没しているのである。没後に献名された可能性も無いではないが、没後17年も経ってからの献名は考え難(にく)い。もし二人の親交が深ければ、死んでから時を経ずして献名されていて然りだからだ。
もしかして、シュタウディンガーは1871年から1888年の間に何にも記載していないのでは❓とも考えたが、調べたら、そんなことは全然なかった。結構、この間も蝶や蛾を記載しているのである。A.シュトレッカーの可能性は低いだろう。
😓あ〜あ、ふりだしに戻っちゃったよ。

全然関係ない話だけど、このシュトレッカーの没日は11月7日。この日は、著名な博物学者であるアルフレッド・ウォレスと松村松年が亡くなった日でもある。シュトレッカーはどうでもいいけど、ウォレスと松村松年が同じ日に亡くなったというのは感慨深いものがある。

取り敢えず、他に学名に同じ小種名が使われているものはないかと探してみた。そこから、語源を追えないかと思ったのである。
検索すると「Ficimia streckeri(メキシコフックノーズスネーク)」という蛇がトップに出てきた。
そこからさぐってゆくと、John Kern Strecker junior(ジョン・カーン・ストレッカー・ジュニア)という人物にヒットした。
英語版の Wikipedia を意訳してみる。

ジョン・カーン・ストレッカーは、1875年にイリノイ州で生まれ、13歳でテキサス州ウェイコに移住した。彼の主な関心は爬虫類、特にヘビだった。そして、18歳の時にベイラー大学の博物館のキュレーターとして雇われる。その後、彼は直ぐに各地を旅して博物館の標本収集を始める。彼は鳥、哺乳類、軟体動物、爬虫類、両生類に関する学術論文を発表し、1933年に死去するまで多くの新聞や雑誌の記事を書いた。

いくつかの爬虫類が、彼に因んで名付けられている。

・Ficimia streckeri(メキシコのヘビ)
・Pseudacris streckeri(カエル)
・Sistrurus miliarius streckeri(小型のガラガラヘビ)

 
J.K.ストレッカーは博物館の標本収集をしていたワケだから、昆虫も集めていた可能性はある。だから、この人に献名されたかもと思ったが、生没年的にそれは無さそうだ。1875年に生まれているから、アサマが記載された時はまだ13歳だ。いくらなんでも子供に献名はせんじゃろう。100%と無いとは言い切れないが、確率は極めて低い。他をあたろう。

色々調べていると、新たな鉱脈にブチ当たった。
驚いた事に、シュタウタウディンガーは、アサマキシタバの記載以前にも別な蛾に同じ小種名を付けている。
Kentrochrysalis streckeri(Staudinger, 1880)というロシア原産のスズメガの仲間だ。

 


(出典『http://tpittaway.tripod.com/china/k_str.htm 』)

 
補足すると、記載者と記載年が()括弧で括られているように、属名はシュタウディンガーの名付けたものとは変更になっている。元々の属名は「Sphinx(スフィンクス)」だ。個人的な好みとしては、コチラの方が圧倒的にカッコイイなと思う。

それにしても、同じ人に二度も献名したってことなのかな❓ならば、よほど懇意にしていた人物か…❓

また、この学名はサボテンにも付けられている。しかし、そこからも語源には辿り着けなかった。
何か、どんどんアサマキシタバの話から離れていってるような気がするが、もうここまできたら意地だ。納得いくまで調べてやろう。

延々調べてると、以下のような文を見つけた。

『GrrlScientist
A century of butterflies and moths

Collection Manager Jim Boone takes us on a tour through the Field Museum’s Herman Strecker Moth and Butterfly Collection
GrrlScientist

Historically, insect collecting was (and still is) a widespread and very popular educational hobby. But the earliest insect collectors weren’t professional entomologists — they were hobbyists.

Herman Strecker was a sculptor who lived in Pennsylvania from 1836 to 1901. But his art was not what gave him lasting fame. Instead, it was his hobby. Beginning when he was a teenager, Mr Strecker collected and studied butterflies and moths. Swapping specimens with scientists and specialists around the world brought him into contact with some of the most notable people of his day, such as Grand Duke Nicholas of Russia. Although considered an amateur by today’s standards, Mr Strecker named and described 251 different species of butterflies and moths, mostly in a book he illustrated and published in parts from 1872 to 1900. By the time he died, Mr Strecker had amassed the largest and most important collection of butterflies and moths in the Americas, comprising more than 50,000 specimens. In 1908. the Field Museum in Chicago purchased this collection along with several thousand letters between Strecker and other leading naturalists of the day.

In this interesting video, Collection Manager Jim Boone tells us a little about the history of the moth and butterfly collection held by the Field Museum in Chicago and shows us some its most interesting specimens.』

ざっくり訳すと、こうだ。

『GrrlScientist(進化生態学者・鳥類学者・科学作家・ジャーナリスト)
ー蝶と蛾の世紀ー

コレクション蒐集マネージャーのジム・ブーンが、フィールド博物館のハーマン・ストレッカーの蝶と蛾のコレクションの旅に御案内します。

歴史的に、昆虫の採集は広く普及しており、非常に人気の高い教育的趣味でした。しかし、初期の昆虫採集者は専門家の昆虫学者ではなく、愛好家たちでした。

ハーマン・ストレッカーは1836年から1901年までペンシルベニアに住んでいた彫刻家でした。しかし、彼の芸術作品は永続的な名声を得ることはありませんでした。
その一方で、彼は10代の頃から蝶や蛾を収集、研究しており、標本を世界中の学者や専門家と交換することで、ロシアの大公ニコラスなど、世界中の著名な専門家たちとも親交がありました。
ハーマン・ストレッカーは、現在の基準ではアマチュアと見なされますが、251種類の蝶と蛾に名前を付け、その殆どを1872年から1900年にかけて部分的に出版した本で図示、解説しました。
彼が亡くなった時には、その標本は5万点を超え、アメリカ大陸で最大かつ最も重要な蝶と蛾のコレクションとなっていました。シカゴの自然史博物館は、1908年にこの重要なコレクションを購入しました。また、ストレッカーと当時の他の主要な博物学者との間で交わされた数千通の手紙も得ました。

この興味深いビデオでは、コレクションマネージャーのジム・ブーンが、シカゴ自然史博物館が開催する蛾と蝶のコレクションの歴史について少しお話し、最も興味深い標本をいくつか紹介します。』

ハーマン・ストレッカーの生没年(註2)はシュタウディンガーが生きた時代とも被るから、アサマキシタバの学名はこの人に献名された可能性はある。アメリカ人だと云うのが気になるが、世界的なコレクターだったから、シュタウディンガーと親交があった可能性は高い。だいちシュタウディンガーは世界有数の標本商でもあるのだ。ストレッカーは、その良いお客さんだったに違いない。となると、上客に対する御機嫌とりに献名されたとか、そうゆう可能性は充分あるんじゃなかろうか❓
また、ストレッカーはロシア大公とも親交があったと云うのもアサマキシタバとの関連性が考えられる。おそらくかアサマの記載に使われたタイプ標本はロシア南東部のものだから、大公からストレッカー、もしくはシュタウディンガーの手に渡ったのではあるまいか❓

まあ、これは全てオラの勝手な想像だけどね。
だから、間違ってたら御免よ。

因みに、冒頭で「strecker」と云う学名がついてる蝶はいないみたいな事を書いたが、調べたら、このストレッカー由来の蝶がいた。
「Megathymus streckeri」というバカでかいセセリチョウにも、この小種名が付いている。

 

(出典『Wikipedia』)

 
たぶん英名は「Strecker’s giant skipper(ストレッカーのジャイアントスキッパー)」。
スキッパーはセセリチョウの英名だね。ジャイアントは言うまでもないが、巨大という意味だ。
米国では、モンタナ州南東部とノースダコタ州南西部からテキサス州南部、アリゾナ州北西部からユタ州南西部にかけて見られるそうだ。

 

(出典『Butterflies of America』)

 
🤯ゲゲッ❗、6.3センチもある。
バケモンだな。

記載者と記載年は(Skinner, 1895)となっている。これも()付きなので、Skinnerが記載してから後に属名が変更になったのだろう。

更に調べを進めていくと、このセセリチョウの仲間からストレッカーが記載したものと考えられるものが見つかった。

 
【Megathymus cofaqui(Strecker, 1876)】

 
【同裏面】

(出典『Butterflies of America』)

 
ストレッカーズ・ジャイアント・スキッパーよりも、コチラの方が見てくれはいいな。所詮はセセリだから、どっちも蛾みたいなもんだけどさ。

💡ピコリン。
ここで漸くシナプスが繋がった。
セセリチョウは蛾みたいなもんだと云うことは、もしかしてストレッカーは蝶よりも蛾を中心に蒐集、研究していたのではないか❓
慌てて、石塚さんの『世界のカトカラ』を見てみる。このストレッカーが記載したカトカラも、きっと有る筈だ。

日本には、ストレッカーが記載したカトカラはいなかった。もしあったとしたら直ぐにピンときてた筈だから、期待はしてなかったけどね。
ならばと、旧大陸(ヨーロッパからアジア)に分布するカトカラを調べてみる。
だが、こちらからも残念ながらストレッカーの名前は見い出せなかった。
但し、スタウディンガーの記載がゴチャマンに出てきた。
折角だから並べちゃおう。

 
・Catocala deuteronympha Staudinger,1861 ケンモンキシタバ

・Catocala orientalis Staudinger,1877 ウラルベニシタバ

・Catocala strekeri Staudinger,1888 アサマキシタバ

・Catocala repudiata Staudinger,1888 ネズミベニシタバ

・Catocala desiderata Staudinger,1888 ナガレモンベニシタバ

・Catocala neglecta Staudinger,1888 ヒメウスベニシタバ

・Catocala optima Staudinger,1888 オプティマベニシタバ

・Catocala doerriesi Staudinger,1888 クロゾメキシタバ

・Catocala remissa Staudinger,1891 サバクベニシタバ

・Catocala aestimabilis Staudinger,1891 カシュガルキシタバ

・Catocala eminens Staudinger,1892 チョコレートキシタバ

・Catocala koreana Staudinger,1892 アズミキシタバ

・Catocala abacta Staudinger,1900 トラフキシタバ

 
こんな事やってるから、徒(いたずら)に長くなるんだよなあ…。

さてさて、お次は新大陸である。考えてみれば、ストレッカーはアメリカ人なんだから、アメリカ大陸が1番有望だ。何で北米のお化けセセリチョウの時点でピンとこなかったんだろ?
とにかく、ここにストレッカーが記載したと思(おぼ)しきカトカラが有れば、ビンゴだろう。そして、スタウディンガーと同時代に記載していたならば、アサマキシタバの小種名はストレッカーに献名されたものと断定してもいいだろう。

ワクワクしながら、ページに目を通す。
w(● ̄0 ̄●)wワオッ❗、いきなり1つ目から「Strecker」の文字が目に飛び込んできだ。

アメリカオニベニシタバ Catocala aholibah Strecker,1874 とある。記載年もスタウディンガーの活躍した時代とピッタリ合う。
以下、ストレッカーの記載らしきものが続々と出てきた。

 
・Catocala obscura Strecker,1873 クラヤミクロシタバ

・Catocala agrippina Strecker,1874 アグリピナクロシタバ

・Catocala judith Strecker,1874 ユディトクロシタバ

・Catocala ulalume Strecker,1878 ウラルメクロシタバ

・Catocala dejecta Strecker,1880 ウナダレクロシタバ

・Catocala sappho Strecker,1883 カバフクロシタバ

・Catocala herodias Strecker,1876 マエジロカシベニシタバ

・Catocala hippolyta Strecker,1874 イポリタベニシタバ

・Catocala luciana Strecker,1874 ダイヘイゲンベニシタバ

・Catocala faustina Strecker,1873 ウエスタンベニシタバ

・Catocala delilah Strecker,1874 デリアキシタバ

・Catocala amestris Strecker,1874 テキサスキシタバ

・Catocala jair Strecker,1897 ニセオビナシチビキシタバ

 
何と、14種も記載している。これはスタウディンガーの13種類よりも1つ多い。そして、記載年の殆んどがスタウディンガーよりも早い(こんな事やってるから、徒(いたずら)に長くなるんだよなあとか言ったけど、スタウディンガーが記載したカトカラを抜き出しといたのが役に立ったよ)。
記載年が早いと云うことは、カトカラの記載に於いてはストレッカーの方がスタウディンガーよりも先輩なのだ。寧ろスタウディンガーがストレッカーに教えを乞うていたかもしれない。或いは、二人は互いに切磋琢磨するライバル関係にあったのかもね。
これらの事から、スタウディンガーが尊敬の念を込めて、アサマキシタバの学名にストレッカーの名前を冠したのだろう。

                         つづく

 
追伸
(^o^;)アハハハハ。おいおい、である。
いやー(^^ゞ、まさか解説編が1番最初の【学名】の項で終わるとはね。こんなのシリーズ前代未聞だよ。ドツボに嵌まって、とんでもない大脱線となってしまったおかげで、今回で最終話になる予定が見事にフッ飛んだわ。ホント、学名で力尽きるだなんて夢にも思わなかったよ。

実をいうと、アサマキシタバの第一章と此の解説編は3月には殆んど完成していた。しかし、触角の件と生態の一部に答えが見つからなかったので、寝かせておったのだ。
改めて書き始めると、触角関連で大幅加筆になり、この解説編でも加筆する羽目になった。
「💡ピコリン。ここで漸くシナプスが繋がった…」以降の展開が、この回の新たな加筆部分である。それで、考えざるおえなくなった。この後に更に各項目の文章が続くので、これではあまりにも長いと気づき、分けることにしたのである。
次回こそ、ちゃんと解説編を完結させますんで、宜しく御願いします。

そうゆうわけで、石塚さんの画像は次回にパクリまくりになります。↙コレね。

 
(註1)『世界のカトカラ』

カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんのカトカラ入門書にして、全世界のカトカラをほぼ網羅した図説。出版元は『(有)むし社』。

 
(註2)ハーマン・ストレッカーの生没年
Herman Streckerで検索したら、ちゃんと出てきたよ。

Ferdinand Heinrich Herman Strecker(フェルディナンド・ハインリッヒ・ハーマン・ストレッカー)
「生没年 1836.3.24 30〜1901.11.30」

どえりゃー長い名前だな。
Wikipediaによると、蝶と蛾を専門とするアメリカの昆虫学者とある。で、内容を信じるならば、どちらかというと蛾よりも蝶の研究家だったみたい。予測はハズレましたな。

若い頃からフィラデルフィア自然科学アカデミーの図書館に頻繁に出入りしていたという。興味の対象は、カリブ海、メキシコと中央アメリカの蝶だったそうな。

クソ長い名前から予想はしていたが、両親はドイツ人のようだ。或いはスタウディンガーともドイツ語でやり取りしていたのかもしれないね。
翻訳文では彫刻家としたが、実際にはニュアンス的に墓石屋に近かったらしい。
より詳細を知りたければ、Wikipediaの記事を読んで下され。

 

2019’カトカラ2年生 其の1第三章

 
   vol.18 アサマキシタバ(3)

  『コロナ禍の狭間で(後編)』

 
午後8時を過ぎてもアサマキシタバは飛んで来ない。
いよいよヤバい展開だ。

8時15分。ようやく樹液に飛んで来た。
ものスゴくホッとする。でも、ここで逃したら元も子もない。ゆえに網で採るか毒瓶で採るか迷った。通常ならば翅の鱗粉の損傷を最小限にとどめる為や背中の毛がハゲちょろけにならないように毒瓶を使用すべきところだ。しかし、今回重視しているのは触角だ。この際、完品とかどうだっていい。それに位置的にやや高い。手の長いオイラのことだから届くだろうが、まあまあギリってとこだろう。ならば、ここは確実に採るために網を選択すべきだと判断した。

網枠で幹をコツンと叩いて、驚いて飛んだ瞬間に網の切っ先がマッハで反応した。下から左上へと海老反りでナギ倒すように振る。

【アサマキシタバ Catocala streckeri】

網さばきは今年も健在なりよ(◠‿・)—☆
おっ、この尻の形からするとオスだな。触角は…長いね。
取り敢えず、やはりオスの触角は長いと言っていいだろう。
それにしても、アサマちゃんって相変わらずあまり美しくないね。所詮はカトカラカーストでは下層民なのだ。

ベンチでアンモニア注射で昇天させ、写真を撮って三角紙に収める。いつもこの最初の1頭を三角ケースにしまうと、心の底からホッとする。ゼロと1とでは精神的にどえりゃー差がある。心の余裕が全然違うのだ。

木に戻ったら、もう1頭来ていた。
コヤツも網で難なくゲット。これも♂だった。で、触角は矢張り長かった。

でも、正直オスはもういい。ターゲットはサンプルの足りないメスなのだ。メスの触角を見なければ、アホっぽいオラの仮説も証明できない。

8時半。また樹液に1頭飛んで来た。
やや小さくて、翅が丸く見えた。たぶんメスだ。

今度は低いところに止まったので、毒瓶を被せることにした。
今思うと、確実に網で採れよな。この辺が直ぐにダレちゃうオラの悪いクセだね。基本、てーげーな人なのだ(註1)。

難なくゲット。
♀っぽいね。一応、裏返してみる。

腹が短いし、太いから多分♀に間違いなかろう。

触角を確認してみる。
あっ、♂よりも明らかに短いぞ(画像をピンチアウトすると拡大できます)。
でも毒瓶を被せた時に千切れたとかないだろうか❓ カッコつけて毒瓶なんか使わなければ良かったよ。

ここでピタリと飛来が止まる。
ヤバいよなあ…。このままいくと、あまり数は望めないかもしれない。
カトカラ2年生、まだまだ少ない経験値で言っちゃうと、多くのカトカラは樹液への飛来が7時半くらいから8時台半ばまでは強い活性があって、9時くらいになると一旦飛来がピタリと止まる。そして10時を過ぎたくらいから再びダラダラと飛来が始まり、11時台の半ばあたりから午前0時過ぎにかけて、もう1回活性のピークがあると云うイメージがある。そのパターンからすると、ヨロシクない傾向だ。2回目のピークは1回目よりも弱いしね。

まっ、いっか…。今日は電車ではなく、難波からママチャリで来ているのだ。ゆえに終電を気にする必要はない。じっくりと対峙できる。
とはいえ、10時迄まだ1時間以上もある。11時なら2時間待ちだ。待つことが誰よりも大嫌いな人間にとっては、地獄だな。それまで闇の恐怖と戦わねばならないと思うと、気が重いよ。

覚悟して、大声で怪鳥の鳴き声を真似て発してやった。
闇を切り裂く高音の怪しき声が山に谺する。鵺(ぬえ)の哭く夜は恐ろしいのである。超恐がりとしては、苦肉の策の逆療法なのだ。逆にこの怪鳥音で魑魅魍魎を震撼させてやろうというセコい作戦ですねん。でも闇の恐怖を紛らわすには効果がある。闇の中で黙っていると、ろくな妄想をしかねないのだ。
それに展望台辺りでキャアーキャアー言ってる小娘どもの声がウザいので、ビビらせやろうとも思った。悪の心が恐怖をも凌駕するのだ。
効果があったのか、小娘どもの嬌声のトーンは落ち、ひそひそ声のキャァキャァになった。ψ(`∇´)ψケケケケケ、おまんら死ぬほどビビって山を下りたらええねん。悪いオジサンは、自分の恐怖を紛らわす為だったら、何だってするのだ。

9時10分。
闇と闘うことに漸く折り合いをつけたところで、アサマが樹液に飛んで来た。

(. ❛ ᴗ ❛.)あらま、予想外の嬉しいお越しだよ。
当然、今度は網でシバく。

なあんだ。また♂か。
でも一瞬、触角を見て戸惑った。短くねえか❓
だがよくよく見れば、触角の先が光の反射か何かのせいで白っぽく見えてるだけのようだ。ちゃんと見ると、♂らしい長さだね。
確認のために裏返してみる。

やはり長いね。
けど♂は、もういい。♀をもっと見んと仮説は証明できん。

9時35分。
待望の♀が飛んで来た。

やっぱ、触角は短く見える。

裏返したら、思ってた以上に長い。それでも♂よりも短い気がする。

9時40分。
連続して飛んで来た。しかも3頭。完全に活性が入った。
気分は殺し屋スナイパー。1つ1つ確実に始末していこう。

♀だ。
これも触角が短い。

でも裏返してみたら、そうでもないような気がしてきた。
いやいや、やはり♂よりも短いぞ。とはいえ、何だか頭の中が少し混乱してきたぞ。

お次も、又しても♀である。

やっぱ、どう見ても短いよなー。

裏返してみたら、コレもそうでもないような…。
けれど、同じく♂よりも短い気がするぞ。と言いつつも、更に頭の中が混乱してきた感あり。

それはさておき、もはや裏返せば瞬時に雌雄が見分けれるようになった。
今一度、並べた画像を見て戴きたい。先ず絶対的に違うのは、尻先だ。♀は尻先に縦にスリットが入り、何やら黄色いものが見える。おそらく産卵管だろう。一方、♂は腹先にスリットが入らないし、毛でフサフサだ。黄色いものは見えない。
ここからは相対的で絶対条件ではないが、気づいた他の判別法も並べておく。

その他①
腹の形は♀は短くて太い。対して♂は細くて長い傾向がある。しかし、腹が長く見える個体もあったりするから、どっちか悩むこと有りです。

その他②
♂は前脚が毛でモフモフだ。♀は、それと比べてモフモフ度が低い。
但し、これは新鮮な個体での話だ。飛び古した♂は毛が抜けてるだろうから、その場合は判別には使えないだろう。

図鑑には、この②と腹のスリット&産卵管については何処にも書いてなかった気がする。そもそも裏面画像が添付されてる図鑑は殆んど無いのだ。知る限りでは、唯一あるのは西尾規孝氏の『日本のCatocala』だけだ。それとて雌雄両方の画像は無い。また、文中で前脚とスリット云々については言及されていなかった筈だ。

その他③
♀の方が翅形が円い。対して♂は上翅からシャープな印象を受ける。
また裏返して見ると、♀の方が下翅が円く見える。
とはいえ、微妙な個体もいるから、これも絶対条件ではない。

その他④
♀の方が全体的に小さい。但し、個体差があり、♀でも大きいものはいる。あくまでも相対的だから、これまた絶対条件ではない。けれど、樹液に飛来した時の目安にはなる。それで、だいたい雌雄の目星がつくことが多い。

時を戻そう。
問題は触角である。雌雄に差があるような気がするけど、でも微妙なんだよなあ…。まだ明確な答えは出せない。今度は♂の触角を見たくなってきた。♂の触角をもう一度見ないと判断は下せないと思った。

3頭いたうちの残り1頭は、いつの間にか樹液から消えていた。
さっきから見てると、コヤツら、どうも全体的に樹液滞在時間が短いような気がする。せわしない感じがして、他の個体や蛾が飛んで来たら直ぐに飛び立つ。で、どっか行っちゃう。何か神経質なのだ。でも去年はそうゆうイメージを抱(いだ)かなかったから、今日だけの事なのかもしれない。或いは去年はボオーッと見てたから気づかなかったのかも…。些細な事だけど、そう感じたので一応書いときました。とはいえ、その日によるものと思われる。

しっかし、それにしても糖蜜トラップに対してアンタら完全にフル無視やのう(。ŏ﹏ŏ)
アサマって、糖蜜にはあまり反応しないのか❓いや、でも文献には好んで集まるみたいな事が書いてあった気がするぞ。んっ❓、あれは糖蜜じゃなくて、樹液の方だったっけ❓ あれあれっ、どっちだっけ❓ 事前に復習して来なかったから、ワカラーン。この勉強不足具合、たかがアサマと云う見下し意識が垣間見えとるよ。

いつしか時計の針は午後10時近くを指していた。
9時台でも樹液に結構来るんだね。樹液の飛来時刻の概念が少し変わったよ。
きっと、その日の天気とか温度、湿度、発生の時期、前日の天気等々、様々な条件が関係しているのだろう。基本的なパターンはあるのだろうが、しばしばイレギュラーがあって、その微妙な条件が人間には感知しえないのだろう。

10時ジャスト。
(☉。☉)!ワオッ、遂に糖蜜トラップに来よった❗

証拠の為に写真を撮る。
でも、やっぱり小さくしか写らない。結構近づいてるんだけどなあ…。スマホのカメラじゃ限界あるよね。センチ単位の至近距離まで近づかないと、まともな写真は撮れなさそうだ。

慎重に接近する。
しかし、さあシャッターを押そうとしたら、(+_+)あちゃま、逃げよった。まあ、しゃあないわな…。

10時10分。
別な木だが、またトラップに来た。でも、さっきの個体とは明らかに違う。もっと大きい。たぶん♂だ。

待望の♂である。
おっ、触角はどう見ても♀よりも長いぞ。
♀の触角が短いなんて気のせいだと思ってたけど、ここまで差異が連続すると、仮説が現実味を帯びてきた。

10時20分。
又してもトラップに飛んで来た。おいおい、急にどうしたんだ❓ その急変振り、全くもって理由がワカラン。

♀だね。そして、これまた触角が短い。
っていうか、メチャメチャ短くね❓切れてんのか❓

『キレてないですよ(註2)。』
思わず、長州力ばりに言っちゃったよ。
でも、ちょっと待てよ。ここで漸く気づいた。よく見ると、根元は黒いけど、段々先に向かって白くなっていってんじゃねえか。先が白いから手の平と同化して短く見えたのだ。
(≧▽≦)何だよー、それー。完全に騙されたわ。
皆さんも、画像を拡大して検証してみてね。

急いで、撮った写真を全部確認してみよう。
いや、その前に裏の確認だ。

けど、白いとこを入れても♀の方が、やや短いような気がするぞ。

慌てて撮った写真を確認してみる。
確かに♀は触角が途中から白くなってる個体が多い。でも、やっぱそれでも♂よりも短いような気がする。
けんど、ジッと画像を見ていると、段々ワケがわからなくなってきた。ゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。いや、既に起こしているやもしれぬ。
こんな暗いところで、あーだこうだ考えたところで埒が開かん。帰って、展翅せんと本当のところはワカランぞなもし。

それ以降もアサマはトラップに飛来し、延べ6例の飛来があった。


(PM10:29。ものスゲーピンボケ(笑))

重複個体もあるかもしれないが、少なくとも4個体以上は飛来したものと思われる。そう云うワケだから、アサマキシタバも糖蜜トラップに反応すると云うことは証明できたかと思う。
それはさておき、何で急に反応し始めたのだろう❓空気に触れて、途中から微妙に成分が変わったとか❓まーさかー。

↘上のピンボケ写真の個体。

またもや♀だ。

尚も続けて飛んで来た。
以下、撮影時刻を入れておく。写真屋も偉そうなこと言うなら、撮影時刻くらいチャンと入れろよな(註3)。



(PM10:38)


(PM10:54)

全部メスだ。
しかし、もう触角がどーのこーのと云う思考回路は働かない。完全にゲシュタルト崩壊が起こっておるのだ。もう、うんざりなのだ。

11時前に♂がトラップに来たが、網を構えたら逃げよった。
それで、プッツンいった。触角とか、そんな瑣末な事は、もうどうでもいいわい(ノ`Д´)ノ彡┻━┻❗

今日はチャリで来てるんだから、終電の時刻は気にしなくてもいいんだけど、帰ることにした。とっとと帰って、🍺ビールがぶ飲みじゃい❗

11時過ぎ、撤退。
さあ、光瞬く下界へと降りよう。

翼よ!あれが巴里の灯だ❗(註4)

                        つづく

追伸
その後の話を少ししておく。
真っ暗な坂道を歩いてたら、急に闇への恐怖が芽生えたんだよね。また、口裂け女とか思い出したよ。震撼っす。
降りてきて、11時半に枚岡駅を出発。午前0時半ジャストに帰り着いた。帰りは30分短縮の1時間で帰ってきたってワケ。ママチャリで時速15キロって、速くね❓
えー、何でそんなに早かったのかと云うと、駅ごとに即興で歌を歌って漕いでたからだ。

🎵GO to the つるは〜し(鶴橋)
🎵GO to the つるは〜し
🎵GO GO GO GO GOOー つるは〜し❗

とかね。駅ごとに曲つくって歌ってたのさ。
音楽は力なり(笑)

結局、この日は4♂8♀も採ってしまった。検証の為とはいえ、心情的にはちょっとね。スマヌよ(◡ ω ◡)

本当はこの回で触角問題の解決までいく予定だったが、書いてて長いから力尽きた。今回はあんまり脱線してないのになあ…。
えー、次回いよいよ触角問題の解決編です。

 
(註1)てーげーな人なのだ
「てーげー」とは沖縄県の方言で、物事について深く考えたり、突き詰めて考えたりせず、程々のええ加減で生きていこうという意味の琉球語であり、また概念のこと。
そこには、いい加減を筆頭に「テキトー」「だいたい」「おおよそ」「まずまず」「そこそこ」「なあなあ」といったニュアンスが多分に含まれている。

 
(註2)キレてないですよ
プロレスラー長州力の有名なセリフ。そのモノマネで有名になった長州小力がこのセリフをネタとしており、一時流行った。
しかし、長州自身は実際には『キレてないですよ。』とは言っておらず、正確には『キレちゃいないよ。』と言っている。長州力って滑舌がバリ悪いから、誰もツッ込まないけどね。それに長州自身もバラエティー番組でイジられたら、『キレてないですよ。』と言ってたしね。

 
(註3)撮影時刻くらいチャンと入れろよな
蝶の写真を撮るのを趣味にしている人には、全部が全部じゃないけれど採集する人に対して批判的な人が多い。そうゆう人のブログを見てると、しばしば網を持っている人への強い攻撃性を感じる。最初の頃は同じ蝶屋なんだし、仲良くすればいいじゃないと思っていた。実際、フィールドで会っても仲良く接してきた。だが、最近はブログ内の表現もエスカレードしてきて、採集者を指して『ネットマン』という侮蔑と揶揄たっぷりの底意地の悪い言葉が横行している。それって、如何なものかと思う。マナーの悪い採集者への怒りからだろうけど、ネットマンという蔑称を連発するのもマナーがいいとは言えないよね。
こういう事を書き始めると長くなるし、だいち面倒くさい。なので、冷静でわかり易く書いておられる方の文章をお借りしよう。
リンクを貼っておきます。

『雑記蝶』
https://usubasiro2-exblog-jp.cdn.ampproject.org/v/s/usubasiro2.exblog.jp/amp/21315119/?amp_js_v=a2&amp_gsa=1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#aoh=15911860661393&amp_ct=1591186079462&referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&amp_tf=%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%3A%20%251%24s&ampshare=https%3A%2F%2Fusubasiro2.exblog.jp%2F21315119%2F

テキストエディタだと、リンクを貼るのが上手くいかない。
かといって今更ヴィジュアルエディタで書くとなると、改行をイチから全部やり直さなければならないんだよね。
一応、このままでも上の空白部分をクリックすると記事には飛びます。それで御勘弁を。

もう一つリンクを貼り付けておきます。

『BUTTERFLY BRINGS☆』
https://rpsbetter-exblog-jp.cdn.ampproject.org/v/s/rpsbetter.exblog.jp/amp/21378006/?amp_js_v=a2&amp_gsa=1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#aoh=15912263520122&referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&amp_tf=%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%3A%20%251%24s&ampshare=https%3A%2F%2Frpsbetter.exblog.jp%2F21378006%2F

申し訳ないけど、これも空白部分をクリックして下され。

きっと「ネットマン」と云う言葉は、殺してる者に対する憎悪からの発露だろう。謂わば、正義感だ。おまえらは蝶に対して愛はないのかと云うことだ。でも撮る人だけでなく、採る人も間違いなく蝶に対して愛はあるんだよね。この辺の心情は、昔は採っていたけど、撮る側にまわった人は理解できるかと思う。
問題なのは、撮ることから入った人たちだ。そうゆう人たちは正義感を振りかざしやすい。「生き物を殺してはならない」。この言葉は伝家の宝刀みたいなもので、絶対正義だからだ。何か結局ディスる事になりそうだが、続ける。
怒らないで読んで戴きたい。正義を振りかざす人は大抵が底が浅い。単純だからこそ、猪突猛進。平気で強く批判できる。正しいことをやっていると信じている人は強いのだ。世の中のクレーマーの多くが正義感の上に立って行動しているのと同じだ。最近で言えば、コロナウィルスの「自粛警察」とか「コロナポリス」と呼ばれる人たちが、こういう人種だろう。正義が背景にあるから、正義なんだから何やってもいいと逸脱してしまう輩たちだ。そう云う輩は、もうそれは正義を飛び越えて悪になっているのが分からなくなってるから怖い。盲信だ。ホント、こういうのってタチが悪いんだよね。勿論、写真をやっている人全員がそうではないだろう。そうゆう人は一部の人だとは思うけどね。

話を少し戻す。「生き物を殺してはならない」と云うなら、何も食うなよと云う論理にいきがちだが、言いたいところの本意はそこにあるワケではない。たとえ家畜でも生き物だと言いたいワケでもない。言いたいのは、アナタたちが食ってるものは自然をブッ壊した結果、目の前にありものだと云うことだ。作物を作るにしても、家畜を飼うにしても、森は切り拓かれる。それによって、その場の植物や鳥、哺乳類、昆虫、爬虫類、両生類、土壌生物etc、どれだけの生き物が絶滅していることか。我々が食ってるハンバーガーの、その背後に無数の生き物の死がある事を忘れてやしやせんか❓単に目の前の死だけしか見てなくて発言している人が多いから底が浅いって言いたいってワケ。マクドナルドが1店舗増えるごとに結構な広さの森が失われているのだ。その事を忘れないでほしい。

アレッ❗❓、何か脱線してるなあ…。こんな事を言いたかったワケではない。結局ディスってるし。良くないなあ。
えーと、何が言いたかったんだっけ❓
あっ、そうだ。思い出した。

写真をやってる人たちのブログを見てると、そこに有るのは蝶の写真だけで情報量が少なく、何ら参考にならないものが多い。撮影地の地名を載せてないのは、まだ理解できる。直ぐにワンサカ人が集まって来て荒れるからね。でも撮影環境くらい載せてもいいんじゃないかと思う。その蝶がどんな環境に棲んでるか知りたい人もいるだろうに。あっ、でもその写真だけで場所を特定してしまう鋭い人もいるか…。けど蝶そのものだけでなく、棲息環境の写真あっての生態写真だと思うんだよね。
あれっ?、待てよ。写真やってる人のブログって、生態面に殆んど言及されていないものばかりだぞ。そうゆうのって採集者は大事だと解ってるけど、カメラしかやらない人は興味ないのかな?綺麗な蝶の写真さえ撮れればいいのかな?
それじゃ、オナニーと一緒で何ら博物学に寄与していないじゃないか。考えてみれば、撮影日すら書いてないブログも多い。その蝶が、その地域では何日(いつ)ぐらいに発生しているか記録されていれば、貴重な資料になる。環境写真や生態的知見が書かれていれば、それもまた貴重な資料になるのである。写真を撮っている人にはお願いしたい。せめて撮影日くらいは書きましょうよ。できれば撮影時刻も。なぜなら、撮影時刻からでも蝶の生態が類推できるからだ。それで従来の生態的知見がひっくり返る事だって有り得る。それって、スゲーことじゃん。

撮影する人も採集する人も同じ蝶屋なんだから、ちゃんと情報交換や意見交換して仲良くしましょうよ。蝶が趣味の人なんて、世間から見ればキモい極々少数のマイノリティなんだからさ。いがみ合いしてても、何ら良い事はおまへんで。

 
(註4)翼よ!あれが巴里の灯だ
ビリー・ワイルダー監督、ジェームズ・ステュアート主演の1957年上映のリンドバーグの伝記映画。名作です。
勿論、大阪の街はパリじゃないけど、ぽろっと口から言葉が零れた。何となく、そんな気分だったのだ。

 

2019’カトカラ2年生 其の1第ニ章

 
   No.18 アサマキシタバ(2)

    『コロナ禍の狭間で』

 
2020年 5月24日

日本はもとより全世界を席捲している新型コロナウイルス禍は少し勢いを減じていた。それでも終息の兆しはまだ見えないと云う状況下、生駒山地の枚岡へと出撃した。

1週間ほど前から、そろそろアサマキシタバが発生しているのではないかと気にはなっていた。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♂】

(2019.5.23 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

だが去年みたく、たかだかアサマキシタバなんぞにフライングしたくなかった。あの二の舞は避けたい。それに今回求めているのはメスだ。少し遅めの始動で丁度よろしかろう。そう考えて、この日を選んだ。

午後5時半。
🚲ママチャリで難波を出る。
そう、アホはチャリで生駒まで行こうとしているのである。ここから枚岡神社まで優に15キロはある。ママチャリで上町台地を越え、生駒山地の途中まで登らねばならぬのだ。
普通の人間だったら、そんなおバカなことは考えない。電車で行けば30分だ。じゃあ何でそんな事を考えたのかというと、アホだからである。と言っては身も蓋もないので、もっともらしい理由を考えよう。
そうそう、運動不足だからである。それに此処にはスミナガシに会うため、5月のアタマに一度ママチャリで来ているのだ。つまり、自分の中ではもう普通の行動範疇なのである。
勿論、出来るだけ人との接触を避けたいと云う気持ちも根底にはあった。コロナを伝染(うつ)されたくないし、伝染したくもない。加えて、あのマスクと云うのが苦手だ。マゾじゃないから、ああゆう拘束具みたいなのは大嫌いなのだ。ストレスが高いわ。
ついでに言っとくと、その浮いた電車賃で高めの食材でも買うたろうかと思ったと云うのもある。今日は帰ったら、美味いもん食って、酒ガブ呑みじゃヽ(`Д´)ノ❗

難波⇒日本橋⇒上本町⇒鶴橋⇒今里⇒布施⇒永和⇒小阪⇒八戸ノ里⇒若江岩田⇒河内花園⇒東花園⇒瓢箪山と近鉄奈良線に沿って走る。しっかし、やっぱマジ遠いわ(;´∀`)
瓢箪山から枚岡駅までは地獄の坂じゃ。途中、立ち漕ぎも出来ないくらいのキツイ坂になった。仕方なくチャリを押して喘ぎながら登る。生駒山地は勾配がキツイんじゃ。日本一勾配のキツイ国道、最大斜度37%の国道308号もすぐ近くを通っておる。もう何で電車に乗らなかったんだろうと後悔しきりである。思えば後悔ばかりの人生だよ、おっかさん。

ようやくチャリが漕げる所まで上がって来たら、夕陽が沈もうとしていた。日が沈むまでには着いちゃる❗
鉄砲玉、ぴゅう━━━(((((((((((((((( ヘ(* – -)ノ

午後7時、ようやく枚岡駅に着いたところで、ちょうど陽が沈んだ。

(||´Д`)ハァハァー、(;;;´Д`)ゼェーゼェー。
ここまで1時間半かあ…。結構かかってる。けど電車だって30分かかる。そのたった3倍の時間で済んでると考えれば、まだ早い方なんじゃないか?

汗だくでヘトヘトだが、息つくヒマもなく準備を始める。
と言っても、懐中電灯をザックから出しただけなんだけどね。

さてさて、ここからが本番じゃよ。
今回の課題は、2つある。

①アサマの♀の触角って、もしかして短くねぇんでねえの❓
②アサマって、はたして糖蜜トラップにも反応しまんの❓

前回を読んでない人のために少し補足説明をすると、オスと比べてメスの触角が短いんではないかという疑念を持った。それを確認しようと云うワケなんである。んなワケなかろうとは思ってるけど。

2つ目は、去年はアサマを樹液でしか採っていないから、はたして糖蜜トラップにも寄ってくるのかどうかを確かめたかったからだ。
多くのカトカラが糖蜜トラップに誘引されるが、殆んど反応しない種もいる。正直、同じカトカラ属といってもワケわかんねぇところが多々あるのだ。例えば去年、カバフキシタバが樹液よりも糖蜜トラップに圧倒的に反応したなんてのは予想外の出来事だった。普通は逆なんである。当然、自然物の樹液に集まる昆虫の方が多いのである。そう云う例もあったゆえ、一通り実験しようと思ったのだ。調べていくうちに、糖蜜に集まる奴と集まらない奴との何らかの差異が見えてくるかもしれないと考えたのである。
また、標高が高いところではカトカラは糖蜜トラップに集まらないと云う定説があるが、ナマリキシタバなんかは標高の低い場所でも寄って来なかったりもする。でも樹液に来た例はあったりする。もうワケワカメなんである。糖蜜トラップをかけ続けることによって、この疑問にも答えが見つかるかもしれない。

枚岡神社を抜け、住宅街を通って椋ヶ根橋までやって来た。
辺りには誰もいない。そら、居るワケないわな。こんな時間に誰が山登りすんねん。

暗き森の入口に立つ。
超ビビリ男、((;゚Д゚))ブルッときた。武者震いだ。
いよいよ今年も始まりましたなあ。闇の絵巻、魑魅魍魎どもが跳梁跋扈する闇世界への潜入捜査が。
今更ながらに一人で夜の山に入るだなんて、どーかしてるぜ。嗚呼、虫採りなんかやめて、一般ピーポーに戻りたいよ。

意を決し、心を鎮めて急坂を登り始める。懐中電灯の光だけが闇を切り取っている。それが現世と幽世(註1)、現実の世界と冥界との境界線だ。要らぬことは考えずに足もとを照らす。勿論、👺👻👹👽魑魅魍魎どもはメチャメチャ怖いが、ここは先ずはマムシなどの🐍蛇に心を砕くべきだ。目の前の現実に集中してさえいれば、化け物どもも怖くない。敵は我が心中にあり。自身の紡ぎ出す想像と妄想こそが一番の敵なのだ。

7時20分。目的の尾根に辿り着いた。

風に木々がザワザワと揺れる。
(||゚Д゚)怖いですねー。(((( ;゚Д゚)))恐ろしいですねー。

ヤバい精神傾向だ。想念を遮断して、樹液の確認に行く。
(゜o゜;ゲッ❗、去年アサマが3頭飛来したクヌギの壮齢木の樹液が渇れとるがな。(++)ヤッベー💦
あと残るは、もう1本。アケビコノハがいた去年最初に見つけた木がダメなら、(@
@)アーパープーパーだ。

よっしゃ、ε-(´∀`*)セーフ。
幸いそのコナラの木の樹液は健在だった。っていうか、去年よりも確実に樹液量が増えていて、コクワガタが3頭も来ている。ちゅー事はアサマキシタバもそのうちやって来るだろう。取り敢えずは一安心だ。でも去年は安心したら、その後に大コケしたので予断を許さない。

( –)/占==3 シュッシュラシュッシュッシュッー。
霧吹きで糖蜜を木の幹に吹きつけてゆく。
辺りに甘い匂いが立ち込める。今回の糖蜜は何が入ってんだっけ❓ 嗅いでみるが、複雑過ぎてワカラン。たぶん焼酎とかビールとかのアルコール類に、甘系ジュースだの酢だのその他モロモロが入っとるんだろなあ。去年、王者ムラサキシタバを採りに行った時(註2)に使った残りだから、憶えてねえや。

何か痒いなと思ったら、🦟蚊がワンサカ寄ってきとるー。
(≧▽≦)しもたー。虫除けスプレーを忘れた。カトカラ開幕戦ゆえに携行品に漏れがあったか…。のっけから躓いた感じでヨロシクない流れだよ。

7時28分。
早くも樹液にアサマキシタバがやって来た。
取り敢えず、写真でも撮っとくか。

しかし、スマホではクソしょーもない写真しか撮れん。被写体が小さくしか写らんし、懐中電灯を照らして片手で撮ってるからブレブレだ。
仕方なく至近距離まで近づいて撮ろうしたら、(-_-)チッ、逃げやがった。
何やってんだ❓、俺。先ずは撮る前に採れよなー。余裕カマし過ぎだぞ。
とはいえ、まあそのうちまた戻って来んだろ。去年の記憶では、1頭飛んで来たら立て続けに飛んで来たもんね。

しかし、後が続かない。
糖蜜トラップには、雑魚キャラのキマワリとヨツボシケシキスイ、名前も知らんクソ蛾とオオクロナガオサムシしか寄ってこん。

誰じゃ、おまはん❓
名前もワカランし、無視する。

クロナガオサムシ系とマイマイカブリは樹液とか糖蜜が好きなんだなと改めて思う。でも、オオオサムシとかヤコンオサムシなどの Ohomopterus属は見たことがない。地面に埋めた糖蜜トラップには来るのに何で❓木に登るのは苦手なのかな❓

デカい百足(ムカデ)もやって来た。
( `ε´ )ったくよー。見た目といい、生き様といい邪悪過ぎるんだよ、テメェ。
そういえば、去年クロシオキシタバを採りに行った折り(註3)、ムカデに耳を思いきし咬まれたんだよなあ…。
突然、💥バチーッと、もう火箸でも押し付けられたんじゃないかと思うくらいの鋭い痛みが走って、飛び上がりそうになった。あとはズキズキした痛みが続いて、涙チョチョ切れだったよ。思い出したら、何かフツフツと怒りが込み上げてきた。復讐のジェノサイド、オドレ、虐殺したろか٩(๑`^´๑)۶
でも小さい奴でもあんだけ痛かったんだから、このクラスだと咬まれたらどんだけ痛いっちゅーねん。ムカデって、どう見ても暴君って感じだもんなあ。やめとこ。君子、危うきに近寄らずである。

8時になった。流石に💦焦ってくる。
アサマって、日没後早めにワッと飛んで来るんじゃなかったっけ❓だとすれば、今はゴールデンタイム。来ないのはどゆ事❓
最悪のシナリオが頭を掠める。
もしもあの、写真なんか撮ってて逃げられた奴が今日の最初で最後の1頭になったりして…。そう思うと顔が強張る。ならば、ここまで必死こいてチャリで来た努力も、闇の恐怖に耐えてきたことも、全ては無駄になる。
いかーん。頭の中で『スターダストクルセイダース』の大悪党、ディオのスタンド(註4)が無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…と高速パンチを繰り出してる映像が浮かんどるやないけー。

何かのメタファー(暗喩)かよ。
木々がまたザワザワと騒ぎだした。
 
                        つづく

 
追伸
3話構成で完結させる予定が、無駄無駄無駄無駄無駄…無駄な事を書き過ぎて4話以上の完結になる事、決定であ〜る。
何やってんだ、オラ。

(註1)幽世
幽世(かくりょ)。隠世とも書き、常世(とこよ)とも言われる。
幽世・常世とは、永久に変わらない神域。死後の世界でもあり、黄泉もそこにあるとされる。「永久」を意味し、古くは「常夜」とも表記した。日本神話や古神道、神道の重要な二律する世界観の一方であり、対義語として「現世(うつしよ、げんせ)」がある。

 
(註2)王者ムラサキシタバを採りに行った折り
拙ブログの、2018’カトカラ元年 其の17第四章に『パープル・レイン』と題して書いた。読まれる方は、第一章から読んでね。クソ長いけど(笑)

【ムラサキシタバ♂】

(2019.9月 長野県松本市)

 
(註3)クロシオキシタバを採りに行った時に
拙ブログにクロシオキシタバの続篇として『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』と題して書いた。

【クロシオキシタバ】

(2019.7月 神戸市須磨区)

註釈を入れるのを忘れたが、カバフキシタバの糖蜜トラップ云々の話(『リビドー全開❗逆襲のモラセス(後編)』)も書いたので、ソチラもヨロシクです。

【カバフキシタバ】

(2019.7月 兵庫県宝塚市)

 
(註4)ディオのスタンド
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」のヒール、ディオのスタンドであるザ・ワールドのこと。アニメの中で無駄無駄…と連呼して連続で攻撃しまくる。めちゃんこ強いのだ。
なお、第5部 黄金の風で、その息子ジョルノのスタンド、ゴールドエクスペリエンスも無駄無駄…と連呼してタコ殴りしよります。

【ザ・ワールド】

(出典 プレステ『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』)

こんな感じっす。


(出典『ミドルエッジ』)

 

2019’カトカラ2年生 其の1

No.18 アサマキシタバ 前編

『晩春と初夏の狭間にて』

 
2018年にカトカラ(シタバガ属)を集めようかと思い始めた頃には、既にアサマキシタバの時期は終わっていた。
なので、2019年はまだ見ぬアサマくんからのスタートとあいなった。

思えば、カトカラを追い掛けるキッカケになったのはシンジュサン探しからだった。
蝶採りにも飽きてきて、この年はまだ見ぬ有名な昆虫たち、例えばオオトラカミキリとかオオチャイロハナムグリなんかを探そうと思っていた。予定調和は面白くない。未知なるモノを全智全能を傾けて採るから楽しいのだ。
そのリストの中にシンジュサンも入っていた。つまり、恥ずかしながらも実物のシンジュサンを一度も見た事がなかったのである。虫捕りを始めた時には、そう珍しいものではないだろうから何処かでそのうち会えるだろうと思っていたが、なぜか一度も出会えなかった。
で、この年は真面目に探し始めたんけど、これがどうにも見つからない。んなわけなかろうと、途中から必死モードになったんだよね(笑)。たぶんシンジュサンって、今や普通種じゃないんでねえの❓
その辺の苦労話は拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題して書いたので、宜しければ読んでつかあさい。

【シンジュサン(神樹蚕)】


(2018.6月 奈良市)

その折りに、副産物としてフシキキシタバとワモンキシタバが採れて、ちょっとカッコイイかもしんないと思ってしまった。それが黄色いカトカラに本格的に興味を持ち始めた切っ掛けになった。
そういえば、その1ヶ月程前の5月中旬くらいにシンジュサンが見たくてA木くんにせがんでライト・トラップをしてもらったんだった。
場所をお任せしたら、彼は金剛山地の持尾方面を選定した。
だが。結局飛んで来たのはベニスズメとかコスズメくらいで、そのうち雨が強くなって早々と撤退。結局、シンジュサンは見れずじまいだった。
その時に、A木くんから『もう、アサマキシタバも出てるかもしれませんよ。』と言われたんだっけな…。
でも、アサマキシタバと言われてもピンとこなかった。よくワカンなかったから、生返事しか出来なかったように思う。言われてキシタバの仲間だろうと云う事くらいは何となく想像できたが、頭の中には図鑑等でインプットされた画像は一切無かったのである。
だから、もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったならば、黄色い系のカトカラには全く興味を持たなかったかもしれない。正直、アサマキシタバは黄色いカトカラ類の中にあっては一番小汚いのだ。蛾は基本的に忌むべきものだったから、(`ェ´)ケッと思ったに違いない。汚いのは蛾の概念の域を出ない気色の悪い存在でしかないのである。

 
2019年 5月18日

小太郎くんに『アサマは見られる時期がわりと短いですよ。鮮度の良いキレイな個体を採りたければ、早めに行っといた方がいいんじゃないですか。』と事前には聞かされていた。たしかに去年ここを最初に訪れた時は6月上旬だったけど、ボロでさえも一つも見なかった。
今年は蝶の発生が例年よりも早いと言われているし、もう出ているだろうと思い、この日はその奈良県大和郡山市の矢田丘陵へと出掛けた。

この季節を人々は初夏と呼ぶが、自分の中では晩春だ。なぜなら、1年を夏は6,7,8月。秋は9,10,11月。冬を12,1,2月。そして、春を3,4,5月と便宜上区切っているからだ。だから、3月1日がどんなに寒かろうとも春だと自分に言い聞かせて気持ちを切り替えるようにしてきた。
とはいえ現実の感覚とか心は、けっしてそんな風には割り切れないところがある。今日はまだ5月だが、既に気分は半分夏だ。あれっ?自分で何を言いたいのかワカンなくなってるぞ。
まあいい、いつも通り構成を考えずに書き始めておるのだ。そのうち思い出すだろう。

ポイントへ行く道すがら、アルテミスと出会った。ギリシャ神話の月の女神だ。

【オオミズアオ】

あっ、今はアルテミスじゃないんだったな。本種の日本産の学名は Actias artemis から Actias aliena に変わっちゃんだよね。ものスゴくガッカリだよ。別種になったみたいだから、致し方ないんだろうけどさ。

そんな事はどうあれ、その儚き翠(みどり)はいつ見ても幽玄で美しい。
もうオイラの心の中ではアルテミス、月の女神でいいじゃないか。そうゆう事にしておこう。と云うワケなので、女神に会ったんだから幸先良いスタートだ。たぶん、この調子でアサマも余裕のヨッちゃんで楽勝ゲットだろう。前向き軽薄男は御都合主義のプラス思考なのだ。

(ー_ー゛)……。
しかし、去年カトカラがわんさか集まっていた樹液出まくりのクヌギの大木には何にも居なかった。
たぶん樹液が出ていないのだ。😰あっちゃっちゃー。そんな事はまるで予測していなかったので、ものスゴ〜く💦焦る。どうせ樹液で採れるからと糖蜜トラップは持ってきてないし、此処では外灯に集まって来る個体は樹液に集まるものよりも遥かに少ないからだ。余裕のヨッちゃん気分が一気にフッ飛ぶ。

オラ、もう必死のパッチで他に樹液が出ている木を探しましたよ。そいだらこと縁起が悪いべよ。開幕戦からー、コケるのはー、何としてでもー、避けねべならねっ。
で、何とか3本の木を見つけることが出来た。しかし、どれも少量の樹液しか出ていない。もしもコクワガタくんが来てくれていなけりゃ、見つけられんかったよ。それくらい心もとない樹液滲出状況なのだ。
こりゃ採れんかもしれん…。林内の闇の中空に、行き場を失った不安が所在なげに浮遊する。
いかん、いかん。悲観的な考えは後で恰好な言い訳の材料になる。ダサいぞ、俺。そんなもんは直ぐ様うっちゃって、プラス思考に切り替えよう。でないと、益々採れんくなる。
樹液状況が芳しくないとはいえ、コクワガタくんが来てるんだから大丈夫っしょ。飛んで火に入る夏の虫、デヘデヘ🥵。悪意に満ちたストーカー変態男が待伏せているとも知らずに、そのうちノコノコやって来るっぺよ。
危うしアサマくん、Σ(゚∀゚ノ)ノキャアー、逃げてぇー。
ひとしきり一人遊びしたところで、いつもの前向きオチャラケ男に戻る。

(ー_ー;)……。
(。ŏ﹏ŏ)……。
༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽……。

けれども、待てど暮せどアサマキシタバはいっこうに姿を見せない。
もしかしてフライング❓ それとも今年はムチャクチャ発生数が少ないとか❓ 或いは何らかの理由で、ここでは既に絶滅してたりとか❓ だから去年、6月上旬でも見れなかったのかもしれない…。頭の中をあっちゃこっちゃ色んな思考が駆け巡る。

とにかく、まさかの展開である。アサマって嘗ては珍品だったらしいけど、最近は普通種に成り下がったと聞いていたし、2015年には大発生したみたいで、その時の話も散々ぱら聞かされてもいた。何と大阪市内や神戸市内、果ては関西空港の外灯にもいたらしい。そんなワケだから、戦う前から楽勝気分だったのだ。
もしかして、樹液に来るのはメチャメチャ遅い時間だったりして❓ 前向きに考えるも、でもそんな情報、聞いたことがない。だいち、もしもそんな特異な生態をもっていたならば、沢山採ったことのある小太郎くんが必ずや言及している筈だ。

🙀ゲロゲロー。
結局、樹液に来たのはコクワガタとクロカタビロオサムシくらいだった。
クロカタビロオサムシが樹液を吸汁するなんて聞いたことがなかったから、一応証拠写真を撮っとくことにした。オサムシ屋さんにとっては、多分それなりに価値ある例だろう。オイラ、こう見えても小学生の時は、日浦(勇)さんに「オサムシ少年」と呼ばれていたのだ。オサムシの知識のベースはそれなりにある。

【クロカタビロオサムシ】

(2019.5.18 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

この画像を Facebookに載せたら、オサムシの研究で知られる神吉正雄さんからワザワザ連絡があったくらいだから、かなり珍しい例のようだ。と云うことで、この写真はニュー・サイエンス社の学術誌『昆虫と自然』にも掲載された。
エヘヘ(^^)ゞ、タダではコケない男なのである。

(ノД`)グスン。そんなこと言ったって、所詮は負け犬の遠吠えである。現実は惨敗なのだ。夜道を1時間半、暗澹たる思いで駅まで歩いて帰ったよ。

 
2019年 5月23日

前回採れなかったので、満を持して5日後に再訪した。
5月下旬ならば、絶対に発生している筈だ。それでも会えないとなれば、ここには居ないということだ。捜索は振出しに戻る。つまりイチから場所の選定をし直さなければならない。

まさか、そんなわきゃなかろう。たかだかアサマキシタバだ。大丈夫だろう。そうは思うが、正直なところ半信半疑だった。
夜の森を一人でウロウロしてるだけでもストレスなのに、また採れないとなると最悪な気分になること必至だ。それだけは何としてでも避けたいところだ。
それにアサマで2連敗なんかしたら、小太郎くんあたりに何を言われるかワカったもんではない。もし今日も採れなかったら、黙っておこう。2連敗の事実は闇に永遠に葬り去ろう。

午後7時。
やがて日が沈んだ。この黄昏から夜へと移る時間帯は毎回心がゾワゾワする。逢魔が刻(おうまがとき)なのだ。この時間帯が暗闇よりも寧ろ恐かったりもする。これは来たるべく黒い闇を怖れて心が敏感になっているからだろう。口裂け女が現れるのも、この時間だというしね。

『ワタシ、キレイ❓』

😱ゾクッときた。口裂け女のセリフを思い出して、背中に悪寒が走ったのだ。そして、もしも口裂け女が出たらと想像してしまったのである。マジ、それ怖すぎー😭。
あんなもんに横走りで追い掛け回されたら、😭涙チョチョギレで超マッハで走らねばならぬ。でも口裂け女は100メートルを5秒で走るというから、小学校6年間と中学3年間、ずっとリレーの選手でトップかアンカーをつとめ、100メートルを12秒フラットで走れたワシでもソッコー追いつかれるだろう。そして、そして…。
次々と、その後のヤバい展開の映像が浮かんでくる。
いかん。恐怖の連鎖反応じゃ。恐怖が恐怖を呼んでおる。想像力こそが恐怖を増幅させるのだ。これ以上想像したら、発狂してしまう。
 
負の脳内物語を全て頭から遮断し、心頭を滅却させる。
 
٩(๑`^´๑)۶、ヤアーッ❗

『臨、兵(びょう)、闘、者、皆(かい)、陣、烈、在、前(ざん)、オンソワカー❗』(註1)
 
左腰から右上に手刀でキレッキレで、空を「九字切り」する。
念の為に同じ呪文を唱えながら、神様の形を真似て手指を結び、「契印(手印結び)」も行う。
もう気分は、陰陽師 安倍晴明じゃよ。式神も出したろか、ワレ。
  
7時20分。
空はまだ仄かに明るかったが、森の中は真っ暗になった。
闇の物語の始まりじゃあ〜と思ったら、らしきものが直ぐにパタパタと飛んで来た。そして、先日クロカタビロオサムシがいた木と同じところに止まった。
たぶんアサマキシタバで間違いなかろう。この時期にいるカトカラはアサマしかいない。何だかε-(´∀`*)ホッとする。

ヘッドライト、オーン💡
網を構えて距離を詰める。緊張感は、さしてない。会えたと云う安堵の心の方が強かったのだろう。
取り敢えず、💥ダアリャー。網を幹に強く叩きつける。すると、驚いた彼奴(きゃつ)は自ら網の中に飛び込んできた。
もう、この採り方もお手の物である。網の面を正確に幹と合わせる事と、力加減さえ間違えなければ、ほぼ百発百中だ。

今思えば、この頃(2019年初夏)はまだ、こんな博奕度の高い採り方をしてたんだね。もっと楽勝の採り方を編み出したのは、もう少し後の事だったわ。たぶんカバブキシタバかマホロバキシタバの時だね(註2)。

素早く毒瓶にブチ込み、〆る。
暫く経ったところで取り出し、手の平に乗せる。

【アサマキシタバ ♂】

(裏面)

冒頭に『もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったなら、黄色いカトカラには興味を持たなかったかもしれない。』と書いたように、その第一印象は酷いものだった。カトカラを本格的に集めようと思っていたから、採れたのは素直に嬉しかったが、一方、右脳は別な評価を下していた。
『チビだなあ…。それに何だよ、コイツの下翅。黄色いとこが少ないし、オマケにその黄色に鮮やかさがまるて無いじゃないか。薄汚れてて美しくないなあ。それに何だか毛深いや。』
正直、お世辞にも全然魅力的には見えなかったのである。

その後、この日は4、5頭程が飛来した。
ド普通と聞いてたけど、今回そうでもないと実感したよ。その年により発生数の増減が激しい種なのかもしれない。

 
2019年 6月3日

♀があまり採れていなかったので、もう1回訪れた。
この日は小太郎くんも参戦してくれた。

コナラにウスタビガの幼虫がいた。

【ウスタビガ 終齢幼虫】

一瞬、持って帰ったろかと思ったが、やめた。
面倒くさがりやの自分には飼育は向いていないからだ。それに、尻の一部が茶色い。小太郎くん曰く、寄生されてるかも…と云う意見もあったしさ。

この日も日没後、暗くなったら、アサマくんたちが樹液に飛来した。やはり飛来時刻は早い。
で、いくつか連続でゲットしてソッコー飽きた。

 
2019年 6月6日

この日は、夕方に生駒山地の枚岡にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。

【ウラジロミドリシジミ ♂】

こんなに美しいのに、酷い和名だなと思う。
何で、この色にフォーカスしないのさ。

たぶん、この裏面からのネーミングだと思うけど、もっと他に名付けようがあっただろうに。
学名は、Favonius saphirinus。小種名の語源は宝石のサファイアだぜ。学名が先に有りきの和名の命名だろうから、より想像力の欠如と言わざるおえない。

折角だからと、ゴージャスな夕日を見て帰ることにした。

けど、ついでに夜までいた。
 

 
べつに夜景を見たかったワケではない。理由は他にある。
生駒山地の昆虫調査をしている東さんが、フシキキシタバの記録が無いと言っていたのを思い出したのだ。
矢田丘陵にフシキキシタバがいるなら、隣の生駒山地にいないワケがなかろう。それって、蛾屋の怠慢じゃないか❓だったら、それをお茶の子さいさいで証明してやろうと云う心が芽生えたのである。負けず嫌いのイヤらしい性格なのだ。
しかし、同時にこうも思っていた。東さんは協力者が少ないのに真面目に調査してはるみたいだし、世話になってるところもあるから少しは貢献しようとも思ったのである。嘘じゃなくて、そう云う殊勝な心もちゃんとあったんだかんね。

それに樹液が出ている木を探しておいて損はない。
10年ここに通っているが、いまだもってスミナガシ(註3)の♀が一度も採れていないんである。どころか見たことさえ殆んど無い。どうやらメスは、ほぼ樹液でしか採集は望めないようなのだ。でも、枚岡って意外と樹液がバシバシ出てるような御神木的な木が無いのだ。だから、そういう木を昔から探しているのだが、標高の低いイージーな場所では、ナゼか見つからない。昼間に樹液の出ている木を探すのは意外と難しいのだ。むしろ夜の方が意外と見つけ易かったりする。その事に気づいたのは、カトカラ採りもするようになった去年(2018年)だった。夜は視界が制限されるから、かえって集中力が高まるし、蛾、特にヤガの仲間は懐中電灯の光が当たると目が光るから目印になるのだ。また昼間よりも樹液に集まる昆虫が多いので、目につきやすい。昼間はあまり見ない夜行性のカブトムシやクワガタなどの大型甲虫も集まるから、よく目立つのである。

日没後、ウロウロしていると懐中電灯の光がアケビコノハの姿を捉えた。

【アケビコノハ】

(2019.6.13 )

コヤツが木に下翅を開いて止まっていると云うことは、樹液が出ている証拠だ。(^3^♪オホホ、ソッコーでフシキがおることも証明したるわい(ノ`Д´)ノ❗

そして、別な木だが樹液に来てるアサマも3頭見つけた。
しかし、3頭とも羽が傷んでいたのでリリース。場所は違えど、初見からまだ10日だぞ。ボロになるのが早過ぎやしないか❓
 
アサマがいるなら、フシキも採れんだろ。採れなきゃ採れないで、いないって逆証明にもなりうる。ただ、季節的には発生初期だろうから、まだ発生していない可能性もある。かりに発生していても、出始めで個体数は少ないだろう。

結局、フシキキシタバは樹液には来なかった。
だが、帰りの夜道で飛んでるのをシバいたった。

【フシキキシタバ ♂】

やはり、いたね。
ザマー、見さらせである。センスを証明されたいがために虫採りやってんのかもなあ。
 
 
2019年 6月12日

この日はアサマではなく、フシキキシタバを探しに矢田丘陵へとやって来た。

ガクアジサイがひっそりと咲いており、夕暮れのそよ風に嫋(たお)やかに揺れている。

予想したとおり、フシキキシタバは最盛期に入ろうとしていた。

【フシキキシタバ♂】

どれも新鮮な個体ばかりだ。

【同♀】

アサマと比べたら、遥かに美しい。

アサマも飛んで来たが、既に古びたボロ個体ばかりで数も少なかった。見たのは2頭だけだ。初見から20日足らずで、この状態とあらば、やはりアサマって発生期間が短いようだね。
 
 
2019年 6月13日

翌日に兵庫県宝塚市にカバブキシタバの下見に行った時も、大量のフシキキシタバに混じってボロボロのアサマを1頭だけ見た。この例からも、成虫の発生期は他のカトカラと比べて、比較的短いのではないかと思う。

2019年に採ったアサマキシタバの展翅画像を貼り付けておこう。

【Catocala streckeri アサマキシタバ♂】

形はカッコイイと思うんだけど、下翅が汚い。
それにしても、酷い展翅だな。上から3、4つまではまあまあだけど、段々酷くなっていってる。

【同♀】

更にメスは目を覆いたくなるような出来だよ。このテキトーさ加減、対象に対する愛が感じられないねぇ。これは年を越えたゆえ、カトカラに対する概念がリセットされて、アサマを見て改めて所詮は蛾だと云う認識に逆戻りしたのかもしれなーい。オイラ、元々は生粋の蛾嫌いなのだ。

それはさておき、何か♀の触角が短くないかい❓

【♂裏面】

【♀裏面】

裏展翅のコレも♀の触角が短いぞ。
気になるから、石塚さんの『世界のカトカラ』を開いてみた。

♂と比べて、やっぱ少し短くなくねぇか❓
今一度、アチキが展翅した♂の画像と見比べて戴きたい。明らかに♂の触角は長いよね。でも、この一つだけじゃ何とも言えない。慌てて他の♀画像に目を転じる。

あっ、コレも短い。と一瞬思ったが、左の触角はそうでもない。
٩(๑`^´๑)۶ハッとさせんじゃないよ。

一瞬、これも短いと思ったが、コチラは右の方の触角が長い。
長い方が本来の長さだろうから、たぶん♀の触角が短いなんて気のせいだろう。

あっ、短い❗とコレも思ったが、よく見れば左側が少し長いな。やっぱ、きっと気のせいなんだろうな。
 
それはさておき、しかしこうも触角の先って切れるもんかね❓
何か理由があるのかもしれない。元々メスは左右の触角が同じじゃない個体が多いとか、メスって極めて触角の先が折れやすいとかさ…。
(ノ´・ω・)ノ ミ ┻━┻、んなワケあるかーい。理由として論理的に苦しいわ。アカンな。
 
おーっと、そうだ。オスも見てみよう。
 

 
ヽ(`Д´#)ノクソッ、コイツもかよ。右の触角が折れとるのか短いじゃないか。アサマって、そんなにも触角が折れやすい種なのか❓
それはさておき、左の触角はメスよかオスの方が長いような気がする。けど、微妙な長さではあるんだよね。上から3番目、番号10のメス個体も触角が長めだからなあ。
ならばと他のオスを探すが、(・o・)ありゃま。でも他にオスの標本が図示されてない。オスはこの1個体だけなのだ。それじゃサンプルが少な過ぎて、これ以上は何とも言えないや。
 
異常型だが、メスをもう1点。


(以上すべて、石塚勝己『世界のカトカラ』より)

これは明らかに短いような気がするぞ。
けど短い感じたものが偶々(たまたま)連続したから、そうゆう印象を最初に持ってしまっただけなのかもしれない。こんなどうでもいいような事をグダグダ書いてたら、レベルが低いと笑われそうだな。声高に論じるテーマとも思えんしなあ…。

まあ気のせいだとは思うけど、今年(2020年)、確認しに行こう〜っと。
 
                         つづく
 
 
追伸
終わりそうで終わらない物語みたいでヤだけど、アサマキシタバの話は尚も続きます。このままいくと3話構成にはなる。3話で終わることを祈るよ。

えー、この文章は3月の時点で下書きが粗方出来上がっておりました。でも、触角問題と生態面でハッキリとしないところがあって一旦お蔵入りになってました。そこにある程度の目処(めど)がついたので、晴れて蔵出しとあいなったワケである。
けんど、シリーズ初回にも拘らず、改めて文章の手直しを始めだら、大脱線。要らぬところで筆が止まらず、大幅訂正加筆の1.5倍以上に膨れ上がってしまった。我ながら、愚かじゃよ。

愚か者ゆえに、次回は触角問題に切り込むでぇ〜。まだ一行も書いてないけどー。
嗚呼、次もどうせ大脱線になりそうだ。自分にウンザリだよ。
 
 
(註1)『臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前』オンソワカ
悪霊退散の呪文の1つ。九字を唱える事でその場を清め、結界を張ることも出来る。
これは「仏の言葉」や「秘密の言葉」と言われる真言の一種で「神様の軍隊が通るため、立ち去るように」という最終通告を意味している。
また九字護身法には、悪霊や邪気、災いを祓う浄化効果だけでなく、その人が持つ霊力を高めて幸福へと導く開運効果もあるとされている。

オンソワカの「オン」は、真言の頭につける慣用句。「帰命する」という意味。
「ソワカ」は聖句の末尾につけられ、「成就あれ」の意味。

 
(註2)カバブキシタバかマホロバキシタバの時だね

【カバブキシタバ】


(2019.6 兵庫県宝塚市)

上がオスで、下がメスである。次のマホロバも同じ。

 
【マホロバキシタバ】


(2019.7 奈良市)

木の幹に止まったカトカラの簡単採集法は、たぶんカバブキシタバの時の後半辺りで気づき、マホロバの時に確立した。採り方は、マホロバの回の時にでも詳しく書くつもりだ。まあ、蛾捕りの天才であるマオ(小林真央くん)も、その採り方を実践してたから、知ってる人は知ってんだろうと思うけどね。

 
(註3)スミナガシ 
タテハチョウ科に属するチョウの一種。

【スミナガシ 春型♂】

 
(裏面)

(2018.4.28 東大阪市枚岡公園)

名前の由来は、平安時代から続く伝統的な芸術技法であり、遊びの一種でもある「墨流し」から。墨汁を水に垂らした際に出来る模様、及びそれを紙に写したもので、その模様を布に染めた物のことも指す。

 

青春18切符1daytrip 春 第二章(2)

第2話 流水桃花物外春


前回は『往年のギフチョウ』と題しておきながら、殆んど鉄道の事とJR湊町駅について紙数を費やしてしまった。スマン、スマン。
というワケで、今度こそ往年のギフチョウについて書きまする。謂わば、今回は『往年のギフチョウ』の後編ってワケね。


9時前にポイントに着く。









三葉躑躅(ミツバツツジ)が満開だ。
このミツバツツジとギフチョウの発生期は重なるから、おそらく今日も楽勝じゃろう。

ツツジの中では、ミツバツツジが一番か二番目に好きだ。
葉が芽吹く前に先んじて花が咲くから綺麗だし、基本的には野生のものだからだ。春先のまだ茶色っぽい山肌の所々を鮮やかにポッと染めているのを見ると、何だか心がホッとする。ほのぼのと春なんだなと実感できるのだ。
ツツジといえば、世間では公園などに植えられている平戸躑躅のイメージだろう。だが、あの多分バチバチに品種改良されたであろう大振りのピンクの花が好きじゃない。人工的な感じがするからだ。派手なんだけど、品のない女みたいで好きくないのだ。野生のものなら、また違った意見を言いそうだけど…。

尾根筋のギフチョウが如何にも好きそうな小ピークに陣取る。
程なくして20mほど遠くで飛ぶ姿が見えた。さあゴールデンタイムの始まりだ。天気や気温にも左右されるが、この9時くらいから10時半くらいまでがギフチョウの動きが一番活発になるのである。
でも走り出すこともなく、余裕のヨッちゃんでスルーする。
煙草に火を点けたばかりだったし、そのうちバンバンに飛んで来るだろうから、まっいっかと思ったのである。

しかし、その後ジャンジャンに飛んで来る筈が全く姿を見せない。気温も上がってるし、何で❓ もしかして個体数が少ないとか❓
やや焦り始める。余裕カマして煙草なんぞ吸ってたワシって、もしかして救いようのない愚か者❓

9時半を少し回ったところで、ようやく2頭目が飛んで来た。
(・o・)あれっ❓、何か黄色いくないかい❓ 一瞬、イエローバンド(註1)とかじゃねえかと思って気合が入った。慎重に距離を詰めて💥一閃、鮮やかに振り抜く。



(裏面)


でも網の中を見て、直ぐに普通のギフチョウだと気づく。
福井の黒っぽいギフチョウに目が慣れてたから、そう見えただけだったんだね。ここいらのギフチョウは比較的黄色い部分が多く、明るく見えるという事を完全に忘れてたよ。
とは言っても往年の名産地である武田尾のギフチョウの完品だ。前に来た時は時期が遅くて全てボロだったから、ちょっと嬉しい。余談だが前回の手乗りギフチョウの写真は、その時に撮ったものだ。ボロばっかだったから、そういう遊びごとが出来たってワケ。

コレをキッカケにジャンジャン飛んで来た。しかし、どれも翅が欠けてたり、擦れてたりと鮮度があまりヨロシクない。今年は噂通りに発生が早かったのだろう。何度も同じ個体を採るのもイヤなのでリリースせずに生かしたまま三角紙に收めてゆく。

10頭数頭を採ったところで、完全に飽きてきた。
このまま続けていても同じ事の繰り返しだろうから、春の三大蛾(註2)であるイボタガやオオシモフリスズメ、エゾヨツメの探索に切り替えようかとも思った。
けど、よくよく考えてみれば、まだメスが採れてない。どうせ三田のモノと変わりあるまいとは思いつつも此処のメスがどんな型なのか見ておきたいし、もう少し粘ることにした。

しかし、10時半頃にピタリと飛来が止まった。
蝶って、示し合わせたかのように飛び始めたら一斉に飛び始めるし、飛ばなくなったら全く姿を見せなくなるって事がよくある。日照、気温、風、湿度等々ほとんど条件が変わってないのに何で❓と思う事しばしばなのである。また昨日と今日の気象条件がほぼ同じでも、昨日は沢山いたのに今日は全然見かけないなんて事もよくある。あれって、何ざましょ❓
おそらく人間には感知しえない微妙な変化があるのだろう。何らかの条件によりスイッチが入ったり、反対にOFFになったりするんだろうけど、それが何だか解らないケースも多々あるのだ。

11時過ぎ、ようやく1頭が姿を現した。
正面から飛んで来たのを仕留める。



(裏面)




あっ、メスだわさ。
しかも完品のキレイな個体だ。
ギフチョウの雌雄の区別は比較的簡単だ。メスの方が大きく、翅形が丸くて優しい感じがする。人も女性の方が体の線が丸いから同じだね。これって基本的に生物の普遍的な法則なのだろう。例外も結構あると思うけど。
他には背中の毛がメスはオスに比べて短くて赤っぽい事、裏面の色にコントラストがあって鮮やかな事、また上翅裏面の外縁上部が濃い黄色になることで区別できる。あと、尻先に交尾囊(受胎囊)があれば、間違いなくメスだ。これは交尾した時にオスが他のオスとの交尾を阻害するために分泌物で蓋をしたものである。これにより一度交尾をしたメスは、もう交尾することが出来ないと言われている。謂わば、貞操帯みたいなもんである。
ギフチョウって、人間で言えば独占欲が強くて相手を縛りたがる嫉妬深い男みたいだ。それって病的で怖いなあ…。あんまし何でもかんでも人間目線で見ちゃいけないんだけどね。

再び静寂が訪れる。
その後も、とんと姿を見せない。
何処へ行ったの❓、ギフチョウちゃん。

ようやく見つけたと思ったら、何とナミアゲハくんだった。



ギフチョウ並みに小さい個体だったし、しかもギフチョウみたく地面に止まったからマジ間違えたよ。普通はナミアゲハが地面に翅をベタッと広げて止まることなど滅多とないからね。折角だからと、ヤラせ写真を撮る。



本当にこんな風に止まったのだ。
そりゃ一瞬、間違うでしょうよ。

その後もやはり姿は見られず、正午には諦めてその場を離脱することにした。
2♂1♀のみを残して、あとは全部リリースする。
何が起こったか、ちょっと解らないような顔で暫し指先に止まり、何かを思い出したかのようにふわふわと飛んでゆく。その後ろ姿を見送り、どうか無事生き延びて欲しいと願う。

いつもライト・トラップをしている場所に移動して、三大蛾を探す。

【春の三大蛾】

(オオシモフリスズメ)


(エゾヨツメ)


(イボタガ)


しかしコヤツら皆、この季節の枯れた風景に溶け込むような色柄だ。容易に見つかるわけがない。我慢が足りない人だから直ぐにダレてきて、小一時間ほどで早々とやめにすることにした。現実的にも性格的にも、どだい無理な話であった。

枝垂れ桜が綺麗だ。





風にそよそよとなびく様を暫く見てた。
桜はいつまでも見てても飽きない。
こうやって往く春を見送る気持ちも悪かない。

午後2時過ぎ。
バス停まで戻ってきたが、時刻表を見るとバスはさっき出たばかりのようだった。困ったことに、次のバスまでかなり時間がある。
はてさて、どうしたものか…。
でもこんなとこで、ぼおーっと待ってるのは性に合わない。元来、待つことが死ぬほど嫌いな男なのだ。歩き回って疲れてはいるが、この際、歩こう。駅まで歩ける距離なのかどうかも確かめたいしね。ライト・トラップするのに行きはバスで、バス便のない帰りは歩きで戻れる可能性の可否を知っておいて損はないだろう。道中で無理だと思ったら、途中のバス停から乗ればいい。

駅の近くで飛んでいるギフチョウを見た。道路標識の青色に反応して一瞬だけ纏わりついて飛んで行った。なあ〜んだ、駅の周辺にもいるじゃないか。たぶん放蝶ものだろうけどさ。

午後3時。
思ってた以上に遠かったが、何とか駅にたどり着いた。
行きの時は直ぐにバスが出発しそうだったのでゆっくり見れなかったが、満開の桜が綺麗だ。その向こうにはラムネ色の川が流れている。



       浮雲柳絮人間世
       流水桃花物外春(註3)

世間はコロナ騒動でそれどころではないけれど、桜はどこ吹く風と変わらずに咲いている。当たり前の事だが、不思議な気持ちに囚われる。季節の推移はそんな騒動とは関係なく粛々と進んでいるのだ。

さてさて、どうしたものか…。午後3時と中途半端な時間になったから三田に転戦するには遅過ぎるし、次の目的地に行くにはまだ早過ぎる。
まあいい。電車に乗ってから考えよう。今回は青春18切符を持っているのだ。その日のうちならば、何処へなりと行ける。風の赴くまま、心の赴くままに。

                         つづく

一応、この日に採って展翅したものを並べておく。

(♂)




(♀)


福井産と比べてやや大型で、後翅中央黒帯が細く、下の黒点との間隔が開く。ゆえに黄色い領域が広くて全体的に明るく見えるのだろう。また赤紋が福井産よりも厚い傾向にある。

参考までに『ギフチョウ88か所めぐり』の「武田尾」の項にあるギフチョウの特徴を書いておく。
それによれば、「京都〜大阪北部の集団と、兵庫県の山陽側の集団とはかなり印象が異なるが、ここらあたりが接点となる。斑紋は基本的には兵庫県山陽型であるが、京都〜大阪北部型も混じる。」。因みに此処の幼虫の食草はヒメカンアオイである。
お隣の「三田」のギフチョウについても言及されているので、それについても書いておこう。
「兵庫県の瀬戸内側、三田市から西脇市あたりにかけてのヒメカンアオイ食いのギフチョウはやや変わった一集団である。この産地では尾状突起が短く、丸い翅形の個体が多い。」
(☉。☉)あら、武田尾とは違うんだね。けど、ホントかね❓ ニブいアッシにはワカランかったよ。実を云うと、それほど変異には興味がない人なのである。でも言われてみれば、尾突起は短かかったような気がしないでもない。

比較のために福井産のモノも貼付しておきます。

(♂)






後翅中央の黒帯が太くて、3つめの個体などは下の黒紋と完全に繋がっている。小太郎くん曰く、こう云う型を「ジジヒゲ(爺髭)型」と言うんだそうだ。
福井産は、この様に黄色い領域が狭い個体がわりと多く、また縁毛が黒くなりがちなせいもあって黒っぽく見えるのだろう。
とは言っても、あくまで傾向であって、例外も多々あることをつけ加えておこう。

右面上翅がH型のこれなんかは↙、一見すると福井のモノに見えない。
とはいえ、分かる人には一発で福井南部のものと判別できるんだろうけどさ。



(♀)





メスも同じような傾向があるが、これまた例外もある。
2つめの赤上がりの個体は黒帯があまり太くないし、下の黒紋との間隔も開きがある。

一応、コチラも参考までに『ギフチョウ88か所めぐり』の福井県越前産のギフチョウについて書かれた箇所を示しておこうと思った。けんど、(-_-;)あちゃーだった。
福井県の産地は5箇所(丹生郡、勝山市、大野郡、南城郡)が紹介されているのだが、そのうちの3箇所が手元にない。随分前に本からコピーしたものなので、あえてその部分を複写しなかったのか、それとも最初からその部分が抜け落ちていたのかは分からない。取り敢えず「南条町 杣山」の項に「異常型(杣山型のこと)の血が混じっているせいか、黒条に何らかの乱れをもつ個体が多い。」という記述があった。
なるほどね。形質がバラバラという印象があるのは、そう云うワケなのね。此処がギフチョウ発祥の地で、ここから全国に広まったりとかしてね。いい加減なこと言ってるけど(笑)。
また文中には「黒条の乱れる程度にはさまざまな段階があるようだが、前後翅のいちばん基部側の黒条が太くなり、前翅ではその外側の黒条が薄れ、後翅では短い黒条が細く線状になる点が共通している。」とも書かれている。加えて『日本産蝶類標準図鑑』によれば、「日本海側では秋田〜新潟県までは前後翅とも黄色部がよく発達し、明るい印象を受ける。新潟上越地方〜富山県あたりになると徐々に黄色部が減退し、福井県北部で顕著になってゆく。福井県若狭地方〜島根県中部では、縁毛も黒色の割合が増え、黒い印象を受けるようになる。」。
ようするに、ここいらのは黒いってワケだ。

スルーするつもりだったけど、三田のギフの画像も探してみっか…。


(2018.4.13 兵庫県三田市)


(2015.4.3 三田市)

以外と写真が残ってない。
展翅画像に至ってはコレだけだった。



翅形が丸いといえば、丸いような気もする。尾突起も短いっちゃ短い。でもこの個体1つだけじゃ何とも言えないよね。
けど、もうウンザリだ。やさグレる。本音は、んな事どっちだっていい。どうしても気になる方は自分で調べてくれたまえ。

ついでだから、ギフに見間違えたナミアゲハの画像も貼り付けとこっと。



最近は蛾の展翅の影響で上翅が下げ気味になってきてるが、これは蝶屋の展翅らしく前翅を上げ気味にした。
矢張り、こう云う上げ気味なのが好きだなあ…。

も一つ次いでに、ギフチョウと並んだ展翅画像も貼り付けとこう。



ねっ、ナミアゲハにしては小さいでしょ。


追伸
本稿は当初『往年のギフチョウ(後編)』と題して書き進めていたが、記事のアップ直前に『流水桃花物外春』に改題した。構成をロクに考えずに書き始めるから、こう云うことはままある。ワタクシにおいては、万事が日常茶めしごとなんである。何をするにも計画がアバウト。緻密な計画を立てようと思うのだが途中で放り出してしまうのだ。向いてない。
しかし、こうも思う。綿密に計画を立てたところで、だいたいがその通りにはいかないじゃないか。だったら緻密とか綿密な計画など立てる必要など無いではないか。そもそも、たとえその通りにいったとしても、それって果たして面白いか❓とも思ってしまう。まあ、立てた計画がピッチリ進んでゆくことに無上の喜びを持ってる人もいるとは思うけどさ。それはそれで楽しいとは理解できる。
そういえば知り合いにデートの前の週に下見に行く奴がいたなあ。自分には真似できないから尊敬はするけど、んな事は絶対一生やんないだろな。そこまでシュミレーションしてて計画通りにいかなかったら、絶対に女の子に苛つきそうだもん。となると、当然上手くいかないよね。細かくスケジュール管理する男は嫌われるのだ。
因みに、ワテは待ち合わせ場所だけ決めといて、そこで行く所を決めることも多い。で、その場その場の局面で物事を決めてゆく。時に導線も無視する。無茶苦茶だが、自分でも先がどうなるかは分からないから面白いのだ。女の子だって先が読めないからドキドキしたりする。ようは自分も楽しめて、女の子も楽しければいいのだ。勿論、女の子からの信頼があってこその話だけどもね。だから、これは恋愛慣れしてない人は絶対にやめといた方がいい。ノープランって、基本的には最悪だからね。女の子に嫌われるパターンの典型でもあるから、フレキシブルに動けない人は綿密な計画を立てましょうね。


(註1)イエローバンド




(2013.5.8 長野県開田高原)


(下はクモマツマキチョウ)

縁毛が黄色くて美しい。ギフチョウの型の中でも最も美しいものの一つだろう。
この型は各地に稀に見られるが、長野県白馬産のものが出現頻度が高いことで有名である。因みに、この個体はその白馬産を飼育放蝶としたと言われている長野県開田高原産のものである。とかく蝶屋は放蝶されたものに対して厳しい意見だが、こう云うのは全然OKな人もいるみたいで採りに行かれる人は多い。綺麗だから、ワシも全然許す。白馬ではギフチョウが採集禁止だしさ。


(註2)春の三大蛾
本ブログにて『春の三大蛾祭』と題して2017年と2018年に詳しく書いた。なので、宜しければソチラを読んで下され。


(註3)浮雲柳絮人間世 流水桃花物外春
第19代 内閣総理大臣だった原 敬(はら たかし)の書(漢詩)。
おそらく「禹山傍繞翠爭新兩澗平分月有鄰木紗柴開如看畫構陰苔徑欲凝塵浮雲柳藥人間世流水桃花物外春杯酒狂歌極浩蕩野煙晴樹望中勺春日遊山」という漢詩からの引用であろう。
一応、訳しておこう。
「柳の綿種がふわふわと浮かぶように、人の世は儚い。けれど川の水はそんな俗世間とは関係なく滔々と流れ、桃の花咲く変わらぬ春だ。」

当時は世界的にスペイン風邪(インフルエンザ)が流行し、日本でも約39万から44万人もの人が死んだと言われている。原自身も、この死の病に罹患した。これは、その時の事を思って書かれたものだとされているようだ。しかし、スペイン風邪では死ななかったものの、1921年に東京駅で暗殺されちゃうんだけどね。


半神の蛇

 
去年は春の3大蛾のうち、ついぞイボタガとオオシモフリスズメを見れなかった。
なので、今年は何とか会っておきたいと思った。

 
【エゾヨツメ】

 
【オオシモフリスズメ】

 
【イボタガ】

 
しかし、箕面で灯火回りをするも惨敗。
その後はずっと天気が良く、出動できなかった。月齢も悪くて月夜続きだったのだ。天気が良いのに何で❓と訝(いぶか)る向きもおられるだろうから、一応説明しておく。
蝶採りの場合は晴天が好条件となるが、蛾の灯火採集の場合は反対に曇天や小雨の天候の方が好条件となるのである。
蝶と比べて蛾が気の毒なのは、夜の住人だからだ。今でこそ、夜になっても光が溢れているが、古(いにしえ)の時代はそうではなかった。昔は今よりもずっと闇は深く、人々はその闇を怖れていたのだ。その闇から湧き出る蛾は魑魅魍魎の化身であり、畏怖の対象になったとは考えられまいか。その記憶の遺伝子が現代人にも引き継がれているのではなかろうか…。そんな気がする。
我々現代人は今の時代のモノサシで全てを計ってはいけない。昔の方が今よりも闇が深かったゆえに、数々の幻想的な物語や奇っ怪な伝説、伝承が誕生したとも言えるのだ。そこに人々は想像力を掻き立てられ、ドラマツルギーにも大きな影響を与えた筈だ。
冒頭からワケのわからぬことを言ってしまった。御託はこれくらいにして、話を進めよう。

 
2020年 4月17日。
久々に良さげな天気予報で、曇天且つ気温も高め、翌朝は雨となっていた。灯火採集には好機である。
んなワケで小太郎くんを誘ったら、車で来ると云う。

午後8時前に奈良の富雄駅でピックアップしてもらい、近大農学部方面へ。
しかし、駐輪場の外灯には何もいない。ここの外灯は去年の春までは水銀灯で、色んな虫がバンバン寄って来ていたのだが、夏に入るとLEDライトを残して突然消灯されてしまった。秋になって復活したと思ったら、何にも寄って来なくなっていた。一見して水銀灯っぽいライトなのだが、たぶん水銀灯モドキのLEDなのだろう。早々と諦め、南へ向かう。

しかし、昨年の秋までは水銀灯にバシバシにウスタビガが飛んで来ていた葬儀場もLEDに替わっていた。そして、橋上の水銀灯は消えていた。最悪である。これで確実に水銀灯があるのは、この地域では知る限り1箇所だけとなった。
けど、泣きっ面に蜂。そこも質も量もダメでロクなもんがおらん。オオシモフリの羽が落ちていただけだった。

ならばと、新たな水銀灯を探し求めて信貴山方面を探索する。
なんとか幾つかの水銀灯を見つけたが、なぜか何にも来とらん。天気、気温、湿度共に良い筈なのに何でやのん(╥﹏╥)❓

仕方なしに、オオシモフリの羽が落ちていた水銀灯に戻る。
時刻は既に午後11時近くになっている。しかし遠目に見ても、水銀灯の周りにはロクすっぽ何も飛んでなくて、全く活性が入っていない。時刻的にはゴールデンタイムなんだけどなあ…。
エゾヨツメは日没直後に現れるが、オオシモフリは9時過ぎ頃から飛来が始まり、午前零時前後に個体数が多い。イボタガはオオシモフリより飛来が遅れ、午後10時以降、多くは午後11時を過ぎてから現れるのだ。
だが、近づくも状況は全くもってヨロシクないままだ。ホント、泣きたくなるくらいに何もおらん。

そんな中、小太郎くんから声が飛ぶ。
「屋根の庇に何か大きいのが止まってますよ。」。
見ると、そこには大きなスズメガが止まっていた。
しかし、大きいとはいえどもオオシモフリと比べれば小さいし、遥かに迫力に欠ける。邪悪性も感じられない。オオシモフリくんはバケモン的存在で、ネズミくらいはあるのだ。下手したら、ネズミよかデカイかもしんない。もうオーラが全然違うのだ。またチューチュー鳴いてくれよ、オオシモフリちゃん。

それはそうと、このスズメガって何じゃらホイ(・o・)❓
この時期にいるスズメガっていたっけ❓ 見たことも聞いたこともないぞ。普通スズメガの仲間って、コスズメとかベニスズメ、キイロスズメなど早いものでも5月に入ってから現れると云うイメージしか持ち合わせていない。

取り敢えず、もっと近くで見てみようと下から網で突っついたら、イヤイヤしよる。何ゆえ、そんなところに固執するのかね?キミにはキミの事情があるかもしれないが、許しません❗
更に強引に突っついたら、網の縁にポテッと落ちよった。
で、動かない。

 

 
(ー_ー゛)うーむ、何じゃこりゃ❓
上翅の柄がオシャレっちゃオシャレで、まあまあ渋カッケーかもしんない。たぶん見たことがないスズメガだ。小太郎くんに何ぞや?と訊いてみたが、彼もワカラナイと言う。
もしかしたら、稀少種とか海外から飛来した迷蛾かもしれないと云う考えが頭を掠(かす)める。マホロバキシタバ(註1)に引き続き、又してもイガハヤコンビで新発見とちゃうかーと云うスケベ心がムクムクと湧き上がってくる。

とはいえ、ススメガは蛾を噛り始めた2018年は一応採っていたものの、次第に無視するようになった。普通種は一通り採ったと云うのもあるが、所詮はデフだと解ったので興味を失ったのだ。ススメガの仲間は止まっている姿はシャープで結構カッコいいから、つい採ってしまってたんだけど、展翅するとイマイチ格好良くないのだ。それを思い出して、上がったテンションがソッコー下がる。

と云うワケで、持ち帰るかどうか迷った。殺すのが面倒くさいし、持ち帰ったら展翅しなければならない。それもまた面倒くさいからだ。
だが、まあまあカッコイイし、採らないと後に正確な同定が出来ない。それに、もしも珍品だったら後々に地団駄を踏みかねない。しゃあない。持ち帰ることにした。

12時過ぎまで待ったが、他に飛んできたのはボロボロのアケビコノハだけだった。一瞬でも、すわっエゾヨツメのメスかと思った自分が呪わしいよ。

 
【アケビコノハ】

 
その後、天理、山添村と足を伸ばしたが、悲しいくらいに何もいなかった。そのうち無情の雨が降り出し、ジ・エンド。吉野家で牛丼食って、始発で帰った。
あ〜あ、今年もオオシモフリ、イボタガには会えずじまいで終わりそうだ。

翌日、小太郎くんからLINEが入った。
彼の言によると、あのスズメガ、どうやらハネナガブドウスズメという名前らしい。
ネットでググると画像がいっばい出てきた。なんじゃい、って事は普通種やんけー(ノ´・ω・)ノ ミ ┻━┻。
一瞬、捨てたろかと思ったが、殺めといてそれもしのびない。それに画像検索しても生態写真ばかりで、展翅画像が殆んどない。だから、どんな奴なのか全体像がイマイチ把握しきれない。というワケで、超久し振り、2年振りにスズメガを展翅してみた。

 
【ハネナガブドウスズメ】

 
スマホを買い替えたら、勝手に補正して色がドギつく映りよる。茶褐色で、やや紫がかってはいるが、本当はこんなに赤っぽくは見えない。
なので、前のスマホで撮り直した画像も貼り付けておく。

 


(2020.4.21 奈良県生駒郡平群町)

 
十全とは言えないが、こっちの方がまだ実物に近い。
ところで、コレってオスなのかなあ?メスなのかなあ?
多分ススメガの仲間だから雌雄同型なんだろうが、ワカラン。

お手本がないので適当に展翅したが、こんなもんかなあ…。
蛾は翅の形が個性的なモノが多くて、正解を見い出しづらい。

一応、ネットからパクった裏面写真も貼付しておきます。

 
[裏面]

(出典『Wikipedia』)

 
それにしても、やっぱスズメガは胴が太くて、下翅が小さいや。だから高速で飛べるのだろうが、この胴体と翅とのバランスがどうも好きになれない。オオシモフリは上翅がジャックナイフみたいでカッコイイから許せるが、他はだいたい形がおとなしいのだ。あと許せるスズメガの仲間といえば、オオシモフリと同じく禍々しい出で立ちのメンガタスズメ、クロメンガタスズメと色柄が美しいイブキスズメ、キョウチクトウスズメくらいだ。

それはそうと、下翅がやっぱり地色一色のベタで柄が無いなあ。これは別にスズメガの仲間に限ったことではなくて、蛾の多くがこのパターンである。だから、展翅の時に翅を開いてみて、ガッカリすることが多々ある。
対して蝶は殆んどの種類が上下ともに柄がある。そこが蝶の方が人気のある理由の一つになっているのかもしれない。このハネナガブドウにしたって、上翅は中々にスタイリッシュなのに惜しい。下翅も上翅と同じようなデザインならば、印象が相当変わるだろうに。正直、上翅のデザインに関しては蛾の方がバリエーション豊富で、デザイン性が高いのではないかとさえ思うことがある。でも下翅がねぇ…。
それに蛾は裏の色柄がイマイチなモノも多い(ハネナガブドウは、まだマシな方)。そのへんも残念なところだ。
思うに、これは蛾は蝶のように翅を立てて止まるものが少なく、下翅を見せずに三角形の形で平面的に止まっているものが多いからではなかろうか❓ 見られることが少ないゆえに下翅や裏面は手を抜いてるんじゃないか❓そう疑いたくもなるよ。言っとくけど、あくまでも総体的な話で、例外は多々あるけどね。

普通種とはいえ、一応どんな奴かをザッと頭に入れておくことにした。これも一つの出会いである。知っておいて損はなかろう。

 
【科・属】
科:スズメガ科(Sphingidae)
ホウジャク亜科(Macroglossinae)
属:Acosmeryx Boisduval, 1875

意外にもホウジャク亜科なんだね。全然ホウジャクっぽくないけどさ。
そういえば Barをやってた頃の客の彼女に、ホウジャクかオオスカシバかはワカランが、『アタシ、近所でハチドリを見た❗』と強く言い張る若いバカな女がいたな。顔は可愛いが、頭が悪いクセに強情な女で大嫌いだった。思い出したら、段々腹が立ってきた。日本にハチドリはいないと何度説明しても、納得しなかったのだ。

属名のAcosmeryxは調べてみたが、その語源は手がかりさえ掴めなかった。きっと対象に対して愛がないから、調べる気合が足りないんだろう。

 
【学名】Acosmeryx naga (Moore, 1858)
小種名の naga(ナーガ)とはサンスクリット語(梵語)で蛇の意。
神話上では人間の顔とコブラの首、蛇の尾を持つ半神的な存在である。7つの下界の最下層のパーターラに住まわせるために聖仙カシュバの妻カドルーが産んだとされる(出典 平嶋義宏『蝶の学名‐その語源と解説‐』)。

こんなんやろか❓

 

 
絵心、ゼロである。
何で服着とんねん❓(笑)。

それはそうと、何ゆえ学名は「蛇神さま」なのだ❓
ちょっと理由が思いつかない。

 
【和名及び近似種との違い】
和名は同属の近縁種であるブドウスズメよりも翅が長いことからの命名だろう。
漢字で書くと「翅長葡萄天蛾」、もしくは「翅長葡萄雀蛾」と書くようだ。

ブドウスズメ(Acosmeryx castanea)とよく似るが、本種はより大型で、胸部背面に先端が尖った山型の茶褐色の紋があり、前翅外縁の白線が後角部まで伸びる。

ブドウスズメは2年前に武田尾で一度だけ採っている。今はなき唯一残っていた水銀灯の柱の下部に止まっていた。

 
[ブドウスズメ Acosmeryx castanea]

(2018.8月 兵庫県宝塚市武田尾)

 
確かに上翅外縁にある白線がハネナガブドウよりも明らかに短い。背中の山型紋も形が違う。
初見の印象はハネナガブドウよりも赤っぽいイメージが残っている。ハネナガはグレーに見えたから、似ているにも拘わらず、両者が繋がらなかったのだ。ただし照明の関係もあるし、両種とも一度だけしか見たことがないゆえ、色についてはあまり偉そうなことは言えない。あくまで印象です。この点は鵜呑みなされるな。

それにしても酷い展翅だな(笑)。上翅を上げ過ぎてバンザイさんになっとる。その頃は蛾を採り始めてまだ1年目だったのでバランスが全然わかんなかったのだ。蛾はお手本になる図鑑が蝶と比べて少なく、しかも高価なのだ。加えてネット上の画像も少ないときてる。特に展翅画像は少ない。オマケにその展翅が大概はヒドいから、あんまり参考にならんのだ。
岸田先生には是非とも安価なポケット図鑑を作って戴きたいね。とは言うものの、蛾は蝶と比べて遥かに種類数が多いゆえ、そうおいそれとは簡単にはいかないだろうけどさ。

 
【開張(mm)】 85〜115mm
今回採集した個体は95mm。上翅をもっと下げれば、100mm近くになるかもしれない。なのにそんなに大きいとは感じないのは、横幅が広いわりには表面積が少ないからだろう。
気になったのは、85〜115mmと大きさにレンジがあるところだ。大小の差が3センチもあるじゃないか。これはオスとメスの差も関係してるのかな?と思って、ザッとそれについて調べてみた。
だが、どうやら雌雄同型で、色調や斑紋、翅形、大きさなどに差はないようだ。それゆえ雌雄を区別するには、腹端を精査する必要があるという。そう言われても、ワシにはどっちがどっちだか皆目ワカランけど。

 
【分布】
日本では北海道、本州、四国、九州、対馬、屋久島、トカラ列島、奄美大島、徳之島、沖縄本島。ようは日本全国どこにでもいるというワケだ。完全に普通種だな(-_-;)
海外では台湾、朝鮮半島、中国北部~南部、ロシア、インド、ネパール、インドシナ半島、マレー半島、アフガニスタン、タジキスタンに分布しているようだ。
( ̄皿 ̄)ケッ、アジアでも何処にでもおるやんけ。ちょっとでも珍品だと思った自分が恥ずかしいわい。

 
【亜種と変異】
🔹Acosmeryx naga naga (Himalayan foothills of Pakistan, India, Nepal and China, Peninsular Malaysia, Thailand, northern Vietnam, eastern and southern China, Taiwan, Korea and Japan)

🔹Acosmeryx naga hissarica Shchetkin, 1956 (southern Tajikistan and Afghanistan)

分布が広いから亜種も多いかと思いきや、そんな事はない。
亜種は原記載のもの以外は、南タジキスタン〜アフガニスタンに分布するものだけのようだ。
日本のものは上記のように原記載亜種に含まれる。
そういうワケだから、国内での地理的変異は知られていない。ただ、色調に若干の個体変異があるという。

 
【成虫出現期】
年一回の発生のようだが、ネットで見ると4〜6月とするものと6~8月とするものがあった。今回4月に採れたんだから、6〜8月というのはオカシイ。いい加減なこと書きやがってと思ったが、もしかしたら、これは北方など寒い地域での出現期なのかなあ…。

  
【成虫の生態】
夜行性で、日中は林縁などで休息している。
夕刻から夜半にかけて各種の花を吸蜜に訪れるが、主な飛来時刻は18:30~19:30頃。
また、灯火に飛来することも多く、飛翔は敏速。

 
【幼虫の食餌植物】 
マタタビ科:サルナシ、シマサルナシ、キーウィフルーツ。ブドウ科:ヤブカラシ、ブドウ、ノブドウ、エビヅルなど。

 
【幼生期】

(出典『いもむしハンドブック』)

 

(出典『Return to Sphingidae of the Eastern Palaearctic species list』)

 
幼虫は毛虫型ではなく、芋虫型。丸々と太っておる。庭木を剪定してて、こんなもんが出てきたら絶叫発狂モノだな。世の女子は気をつけなはれ。
とは言っても、むしろ可愛いらしいわ❤️なんていう女子もいたりするから、女子はようワカラン。
ちなみに左側の尾突起のある方に目がいきがちだが、右側が頭となる。鳥などの天敵の目を逸らせる役目があると言われてそうだが、そんなもんで鳥から逃げおおせるとは思えん。二度目の攻撃でプチュやろ。

越冬態は蛹で、軟らかい土中などに土窩を作って蛹化し,そのまま冬を越す。

ここで、はたと思いつく。もしかして学名の由来は、この蛇にも似た幼虫の形態から来ているのではないか❓と。
しかしながら、スズメガ科の幼虫はみんなこの芋虫型だ。ハネナガブドウスズメだけが特別に蛇っぽいワケではない。
となると、食樹のブドウからかな❓ブドウといえば、長い蔓(つる)がある。ヤブカラシなんかもツル植物で、蛇がノタ打ち回るようにして生えているという印象がある。けど、だったら素直にブドウ的な学名にしても良さそうなものなのにね。
もしかして、ブドウ的なものは既にブドウスズメの学名に使われてたとか❓
けんど確認すると、ブドウとは関係なさそうな学名だ。小種名の「castanea」は、どう見たって「🌰栗」って意味だろう。ブドウスズメって栗の木の葉っぱも食うの❓それって全然系統が違う植物じゃないかと軽くパニックになる。
けど調べた結果、ブドウスズメは栗🌰は食わないようだ。ここで漸く気づく。たぶんコレはその見てくれの色にある。成虫の色が栗みたいな茶色だってことで名付けられたに違いなかろう。
そこで、またまた気づく。何とブドウスズメの方がハネナガブドウよりも記載されたのは後ではないか。ハネナガが1858年なのに対し、ブドウスズメは1903年の記載だ。つまりは50年近く後になってからブドウスズメが発見されたと云うワケだ。完全に和名に騙されたよ。和名の慣わしからすれば、ブドウスズメが基準種だ。となれば、当然記載年もブドウスズメの方が先だと考えるのが妥当だろう。ナゼに❓
やめとこう。普通種のスズメガたちの名前の由来なんて、ホントはどうだっていい。

 
【天敵】
オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリなどのカマキリ類。ヤブキリ、コロギス等の捕食性キリギリス類のほか、造網性クモ類など。幼虫はスズメバチ類、ジガバチ等のアナバチ類、クチブトカメムシ類、サシガメ類も天敵になる。またハチにも寄生され、ヒメバチ亜科のクロヒメバチ(Amblyjoppa cognatoria)やイヨヒメバチ(Amblyjoppa proteus satanas)に卵を産み付けられることが知られている。

以上、おしまい。
と、ここで終わりにしときゃいいのに、たぶん蝶にもこの「naga」と云う学名を持つ種がいた筈だと思ってしまい、つい探してまっただよ。

(◠‿・)—☆ビンゴ‼️
ありました。

 
【Plastingia naga(de Niceville, 1884)】

 
(裏面)


(出典 4店共『BOLD SYSTEMS』)

 
あらま、コレってタイかラオスで見たわ。裏面が可愛いらしいんだよね。そっか、それが頭の隅に残ってたというワケだ。たぶんインドシナ半島北部では、かなり珍しい種だったと思う。

生態写真も貼り付けておこう。

 

(出典『ButterflyCicle Checklist』以下4点共同じ)

 
裏面の写真は沢山見つかるのだが、なぜか表側の画像があまりない。あっても上のようなものばかりでキレイに開翅しているものが皆無だ。
理由は途中で解った。このセセリチョウ、どうやら下翅だけを横に開き、上翅を立てて止まるのが特徴のようだ。こんな感じでね↙

 

 
でも、こうゆう風に止まっていたと云う記憶が全然ない。
所詮はセセリだと思って採ってるから、印象に残らなかったのだろう。

前述したように裏面画像は沢山あるので、厳選したのを貼り付けておこう。

 
(裏面)

(出典『ButterflyCicle Checklist』)

 
そうそう、コレ。こっちは記憶がある。
特徴的な裏面がスタイリッシュだね。
ちなみに和名はウラギントラセセリというようだ。

英語版のみだが、Wikipediaに解説があった。それによると、英名は「The chequered lancer」or「Silver-spot lancer」とあるから、さしづめ「市松模様の槍騎兵」「銀紋の槍騎兵」といったところか。何れにしろ裏面由来の命名だね。

大きさは「It has a wingspan between 33–38 mm.」とあるから、日本でいうところのイチモンジセセリとかダイミョウセセリくらいの大きさだ。もっと小さいイメージだったけどなあ…。
分布はアッサムからミャンマー、タイ、ラオス、マレーシア、シンガポール、ボルネオ島、インドネシア、フィリピン。
林内や林縁に見られ、主に午前中に活動し、日陰を好む種みたいだ。

「The species’ host plant is the Caryota mitis, also known as the fishtail palm.」
幼虫のホスト、つまり食餌植物は和名でコモタチクジャクヤシやカブダチクジャクヤシと呼ばれているものだ。

 
(卵)

 
(幼虫)

 
(蛹)

(出典『ButterflyCicle Checklist』)
 
 
卵はポップで、とってもオシャレさんだ。
しかし、幼虫と蛹は正直言って気持ち悪い。そもそもセセリチョウの幼虫と蛹は嫌いなのだ。幼虫はのっぺりしてて変に透けてたり、蛹は粉っぽかったりするからだ。バナナセセリの幼虫なんて許せないくらいに醜いもんなあ。

それはさておき、このセセリチョウからも「naga=蛇的」なものが一切感じられない。なのに何で「naga」と命名されたのだ❓

このnagaと云う小種名を持つチョウは、ジャノメチョウ亜科の Lethe属にもいる。

 
【Lethe naga Doherty.1889 ナガクロヒカゲ】

(出典『Wikipedia』)

 
取り敢えず、Wikipediaの英語版にヒットしたが、画像は無く、絵しかない。向かって左側が表、右が裏面になる。絵しかないところからも、たぶん相当な珍品かと思われる。
調べてみたら、木村勇乃助氏の『タイ国の蝶vol.3』でも短い解説文があるのみで標本写真は図示されていなかったから、その可能性は高い。

 

(出典『yutaka.it-n.jp』)

 

(出典『Butterflies of India』)

 
何とか画像も見つけた。
上がオスで下がメスなんだそうである。オスには白帯が無いんだね。雌雄異型とは想像してなかったから、ちょい驚き。
オスは日本のクロヒカゲモドキっぽい。メスは台湾にいるシロオビクロヒカゲとイメージが重なる。

 
【クロヒカゲモドキ】

(2016.6月 大阪府箕面市)

 
この生息地は物凄い数のダニだらけなので、これ以来行っていない。はたして今も健在なのだろうか❓
マジ卍で、ダニだらけだから行かないとは思うけどさ。
補足しておくと、クロヒカゲモドキは多くの地域で減少傾向にあり、絶滅危惧種に指定されている。そう云えば、奈良県の某有名産地でも極めて稀になりつつあるようだ。

 
【シロオビクロヒカゲ】

(2016.7月 台湾南投県仁愛郷)

 
初めて見た時は、クロヒカゲのイケメン版やなと思った。
たしかバナナ・トラップに寄ってきたんだよね。それで幾つか採れた。ヒカゲチョウが寄ってくるのは想定外だったから、軽く驚いた記憶がある。
そういえば、マレーシアでも似たような奴を見たな。たぶん別種だとは思うけど。

Lethe nagaの話に戻ろう。
英語版のWikipediaには、こうとだけ書いてあった。

「Lethe naga, the Naga treebrown, is a species of Satyrinae butterfly found in the Indomalayan realm where it occurs from Assam to Myanmar, Thailand and Laos.It is named for the Naga hills.」

訳すと「英名は Treebrown。ジャノメチョウ亜科に属し、インド・マラヤルムで発見された。分布はアッサム、ミャンマー、タイ、ラオス。学名の由来はナガヒル(ナガ丘陵)から。」といったところか。

えっ❗❓と云うことは、和名のナガクロヒカゲのナガはナガヒルの事だったのか❗
和名が脳内でオートマチックに「長黒日陰」に変換されていたから、目から鱗だ。となると、おそらくウラギントラセセリの学名も同じ由来の可能性が高い。
そっかあ…、学名の「naga」は蛇の意とばかり思っていたが、コヤツらはそっちだったのね、しからば、ハネナガブドウスズメもナガ族やナガヒル、ナガランド(註2)が由来という可能性も出てきたぞ。
昆虫にはナガランドやナガヒル由来のものが、わりかし多いという印象がある。ここで初めて見つかった種は結構有りそうだ。そういえばシボリアゲハが最初に見つかったのはナガヒルだったなあ。幻の蝶オナシカラスアゲハもナガヒルで採集された記録があった筈だ。今でも「ナガヒル」でネット検索すると、最初にズラズラとクワガタムシの名前が出てきたりするしね。クワガタなど甲虫も此処が原産地のものが数多くいるのだろう。
でも冷静に考えると、ハネナガブドウスズメなんて広域分布の低山地性普通種だ。秘境であるナガヒルで最初に見つかったとは考え難い。ゆえにハネナガブドウの学名の由来は、最初の見立てどうりの「蛇」「半神の蛇」「蛇神さま」でいいだろう。だからといって、この蛾に何故にこの学名が付けられたかは結局わからずじまいだけどもね。

ナガクロヒカゲを見て、シロオビクロヒカゲを思い出し、長い間頓挫したままの連載『台湾の蝶』シリーズの事も思い出した。たぶん連載は1年くらいは止まったまんまだ。
たぶん原因は労作だったキアゲハの回で力尽きた事に始まる。その後、そろそろ連載を再開しようと、このシロオビクロヒカゲにターゲットを絞った。しかし、いざ書く段になって、まだ展翅すらしていない事に気づいた。まず先にそれを探す事から始めないといけないかと思うと、急に全てが嫌になって放り出したのだ。で、カトカラの連載を始めちゃったんだよね。そのカトカラの連載(註3)も、結局は途中でウンザリになってレームダック状態、書くのが苦痛で仕方がなかった。それでも何とか先月、第一シーズンを終わらせたけどさ。

よくよく考えてみれば、『台湾の蝶』シリーズは、まだまだ書いていないものだらけなんだよなあ…。展翅画像はちゃんと撮っているものの、ゼフィルスには手をつけていないし、ヒカゲチョウ、ジャノメチョウ、セセリチョウ、シロチョウも殆んどの種が登場を待っていると云う状態だ。書かねばならない種は山ほどあるのだ。2回しか行ってないけど、あと百話くらいは書けるんじゃないかな? 何だか、気が遠くなってきたよ。

 
                        おしまい

 
追伸
こんなどうでもいい事を書いているから大事な原稿が書けないのだ。

台湾は前述したように2回しか行ってないのに、珍品も含めてその時期に採れる蝶の殆んどを採った。結構、自慢だったけど、今となってはそれが重荷になってる。もう、3、4年前の事だから、台湾での記憶も薄れてきてるし、益々書く気が起こらん。1行でも書けば記憶が甦り、暫くは突っ走れそうだけど…。
こんな戯れ言を書いてる時点で調子悪りぃー(_)

 
(註1)マホロバキシタバ

 
2019年に発見された日本では32種目となるカトカラ。
日本以外では台湾のみに生息し、日本のものはその亜種として記載された。学名 Catocala naganoi mahoroba。

 
(註2)ナガ族とナガランド、ナガヒル
チベット・ビルマ語族。インド〜ミャンマー国境に居住し、約100万人がインド・ナガランド州に、もう100万人がミャンマーのパトカイ山脈沿いに住む。その孤立した地理的条件から独特の風習を保ち、衣服をほとんど身にまとわない代わりに、ビーズやタトゥーで身を飾る。ビーズは古くから交易によってインドやベネチアからもたらされたもので、身につけるビーズによって富や社会的地位を示している。
また、かつては首狩りの習慣を持っていた。村の繁栄を祝ったり、勇者の証しとするために首が狩られたという。太平洋戦争(第二次世界大戦)時、この地域からイギリスの勢力を排除しようとしたインパール作戦では日本軍も彼らにずいぶんと苦しめられたそうだ。
補足すると、インパール作戦とは「史上最悪の作戦」とも言われ、無謀で愚かな作戦の代名詞として、しばしば引用される。当初より軍内部でも慎重な意見があったものの、牟田口廉也中将の強硬な主張により作戦は決行された。兵站(物資の補給、負傷者の回収及び手当て等の野戦病院、移動などの後方支援)を無視し、精神論を重視した杜撰な作戦により、多数の死者と負傷者を出して歴史的な敗北を喫した。その死者数は2万4千とも、6万5千、7万2千とも言われ、これをキッカケに日本は敗戦の道をひたに走り出したとも言われている。ようは、無能な司令官、上司、リーダーが指揮すると、全員討ち死になると云う格好の例なのだ。

ナガランド州はインド東部にあり、一般外国人観光客には多くが未開放地域となっている。
面積は1万6579平方キロメートル。ミャンマー北西部に接するナガ山地に位置する。人口約199万。州都はコヒマ。
ナガ人によって独立運動が行われた結果、かつてのアッサム州ナガ山地を中心として、1957年に自治州、62年に州となった。しかし現在も独立運動は続けられており、それが観光客に対する入域規制エリアの多さに繋がっている。
焼畑農業が盛んで、大部分の住民はチベット・ビルマ語系の言語を話す。宗教は仏教徒とイスラム教徒が多い。年平均気温は24~25℃、年降水量は2000ミリメートルを超える。

 
(註3)カトカラの連載
『2018’カトカラ元年』のこと。現在、第一シリーズの第17章を書き終えたところで休載になっている。

 

2018’カトカラ元年 其の17 最終章

   vol.17 ムラサキシタバ
       最終章
      『紫の肖像』

 
さてさて、早くも第四章から中ニ日でのシリーズファイナルの解説編である。そう、いよいよの泣いても笑ってもお終いの、シリーズ完結編なのだ。
また苦労を強いられそうだが、最後の力を振り絞って書こう。

 
【ムラサキシタバ Catocala fraxini ♂】

(2019.9月 長野県 白骨温泉)

 
【同 ♀】

(2018.9月 長野県 白骨温泉)

 
【裏面】

(2019.9月 長野県白骨温泉)

 
このムラサキシタバが、Schank(1802)によって最初のシタバガ属(Catocala属)として記載された。つまり、カトカラ属の模式種であり、会員ナンバー1番なのである。もう、無条件に偉い。
それだけでも偉いのに、このムラサキシタバ、他にも賞賛される要素がてんこ盛りなのである。下翅にカトカラ属で唯一の高貴なる青系の色を有しており、属内では有数の大きな体躯を持ち合わせている。まだまだある。美しき後翅と前翅とのコントラストの妙、バランスのとれたフォルム、そこそこの稀種で簡単には見られないと云う絶妙なレア度etc……。蛾嫌いでも興味を唆られる、謂わば蛾界のトップアイドルであり、スター蛾なのだ。
そもそも図鑑(原色日本産蛾類図鑑)でさえも「見事な蛾で、それを得たときのうれしさはまた格別である。」なんて云う、図鑑の解説を逸脱したような個人的見解が入っているのだ。
だから、めちゃんこ人気が高い。かくいうワタクシも憧憬の想い、いまだ止(や)まずである。

 
【学名】Catocala fraxini (Linnaeus, 1758)

属名の「Catocala」は、ギリシャ語の「Cato=下」と「Kalos=美しい」を合わせた造語である。

小種名「fraxini(フラクシーニ)」は、ブログ『蛾色灯』によると、ラテン語で「灰」という意味なんだそうな。そして「後翅の紫には触れないのか…。」と云う感想を述べられている。
確かに「fraxini ラテン語」でググると「灰」と出てくる。ムラサキシタバの上翅は灰色だから、これは理解できなくもない。だが、何で鮮やかな下翅の紫色を無視して灰色なのだ❓アッシも解せないよなあ…。だとしたら記載者の Linnaeus って、相当なひねくれ者だよな。
(・o・)んっ⁉️
この”Linnaeus”という人物ってさあ、もしかして「分類学の父」とも呼ばれ、動植物の学名方式を発明した博物学者のあのリンネのこと❓リンネのラテン語名はカロルス・リンナエウス(Carolus Linnaeus)だった筈。ってことは、リンネ大先生って偏屈者の変人だったのかな❓

けどさあ…、だとしてもだ。「灰」というのは何か納得できないよなあ。
と云うワケで、植物の学名で同じようなものはないかと思って検索してみた。

すると、Pterocarya fraxinifolia(コーカサスサワグルミ)というのが出てきた。
小種名の由来は、Fraxinus(トネリコ属)➕foliaの造語で「トネリコの葉のような」という意味なんだそうな。
そこで🖕ピンときた。ムラサキシタバが最初に記載されたヨーロッパでは、🐛幼虫の食樹としてトネリコ属も知られていた筈だからである。

あ~、のっけから迷宮に迷い込みそうな予感だ。いや、これって最早たぶん、下手に足を突っ込んどるパターンとちゃうかあ…。

次にトネリコ属 Fraxinus(フラキシヌス)の学名の由来を調べてみることにした。
トネリコ属はモクセイ科に分類され、英語名は、Ash(アッシュ)のようだ。ここでまたピンときた。アッシュといえば思い浮かぶのが、アッシュカラーや木材のアッシュだよね。

アッシュを英語で直訳すると「灰」だ。そこから転じてアッシュカラーは、灰色、ねずみ色、鉛色を意味している。
一方、木材としてのアッシュは、ネットで見ると主にセイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)のことを指すようだ。木には、古い英語で“spear(槍)”の意味があるんだそうな。更にラテン語の Fraxinusも同じく「spear(槍)」の意味があるという。或るサイトでは、“灰”の ash とは関係ないみたいだとも書いてあった。
と云うことは、学名の語源は「灰」ではないってワケかな❓
何か、益々ややこしくなってきたぞ。

とりあえず、「トネリコ」で検索ちゃん。
それによると、日本のトネリコには「Fraxinus japonica」という学名が付いてて、日本の固有種のようだ。
余談だが、野球のバットの原材料として知られるアオダモもトネリコ属に含まれる。

(ノ∀`)あちゃー。他のサイトを見て、ズッコケそうになる。
一部、抜粋要約しよう。

『学名の Fraxinus は「折れる」を意味するラテン語に由来する。これは木が容易に裂けることからだといわれる。
北欧神話では世界樹ユグドラシルはトネリコ(セイヨウトネリコ)であるといわれ、最高神オーディンに捧げられたほか、セイヨウトネリコからは人類最初の男性であるアスク(Ask)が作られたという伝説がある。
また、木材が槍の柄に使われたところから、槍、さらには戦闘を意味するようになり、そのためかギリシャ神話やローマ神話では戦争の神マルス(マレス、アレス)の木とも言われている。ゆえに、ヨーロッパ北部では持ち主を保護する木として家の周りに植えられた。
花言葉は「高潔」「荘厳」「思慮分別」「私といれば安心」。
占星術では獅子座の支配下にあるとされる。』

「槍」かあ…。「灰」より、もっとワケがワカランぞ。
いったいムラサキシタバと槍がどう繋がるというのだ❓
こうなると、さらに突っ込んで調べるしかあるまい。

「折れる」関係で探してみたら『Fraxとは略語で骨折。語源は、fracture=折れる。』というのが出てきた。
となれば、コレも候補になる。でも「折れる」とムラサキシタバにどういう結び付きがあるのだ❓
もうサッパリわからんよ。迷宮世界だ。

遠回りかもしれないが、ここは原点に帰って、根本から攻めていこう。語尾に何かヒントはないだろうか❓

トネリコの属名の「Fraxinus」はラテン語の形容詞の男性形であろう。
接尾語の~inusは「の様な、~に属する」を付した派生語男性形かな…❓
(ㆁωㆁ)アカン…。早くも脳ミソがワいてきた。
さらに調べてると、ムラサキシタバの学名「fraxini」は、もしかして「fraxin」の語尾に「i」を付け加えた男性の形容詞の最上級ではないか?とも思えてきた。書いてて、 益々アタマがこんがらがってくる。
或いは、属格の名詞で、語尾に「~i」が付くケースで、「トネリコの」的な意味でいいのか❓
属格だの接尾語だの自分でも何言ってるのかワケワカンなくなってきた。だいたい昔から外国語の文法も日本語の文法も苦手なのである。目的語とか所有格とか知るか、ボケー💢😠なのである。

(@_@)んー、だいち、こんなんで解決にはならーん。

ヤケクソでクグリまくってると、昆虫で同じ小種名のものにヒットした。
どうやらアメリカに、Arubuna fraxini という蛾がいるようだ。英語版の Wikipedia によると、以下のように解説があった。何となく、良い予感がした。鉱脈に当たったか❓

「Albuna fraxini, the Virginia creeper clearwing, is a moth of the family Sesiidae. It is known from the northern United States and southern Canada.」

翻訳すると「Arubuna fraxiniは「ヴァージニア・クリーパー・クリアウィング(ヴァージニア州の透明な翅を持つ這う昆虫の意)」と呼ばれるスカシバガ属の蛾の一種。アメリカ北部とカナダ南部から知られている。」といったところだ。

更に読み進めると、以下のような記述が出てきた。

「The larvae feed on Virginia creeper, white, red, green, and European ash, and sometimes mountain-ash.」

これは幼虫の食餌植物はトネリコ属のホワイトアッシュ、レッドアッシュ、グリーンアッシュ、ヨーロッパアッシュ。マウンテントネリコであることを示している。

 
(Arubuna fraxini)

(出典『Butterflies and Moths of North America』)

 
つまり、学名は食樹に由来していると云うワケだ。となれば、ムラサキシタバの学名も、その由来は「灰」ではなく、幼虫の食樹である可能性が高いと思われる。もう、そゆことにしておこう。間違ってたら、ゴメンなさいだけどー😜

にしても、食樹が学名とはダサくねぇか❓
これほど立派な見た目なんだから、もっと粋なネーミングがあって然りだろう。
もしかしてリンネって、賢いけどセンスねえんじゃねえの❓
まあ、リンネのオッサンのセンスは、この際どうでもよろし。
よし、兎に角とりあえずは、第一関門突破じゃ。

 
【和名】ムラサキシタバ

紫といっても色の範囲は広い。

 

(出典『泉ちんの「今日も、うだうだ」』)

 

(出典『フェルト手芸の店 もりお!』)

 
青紫もあるし、赤紫だってある。そういえば藤色や藤紫、菫色なんてのもあるなあ。
日本の色表現だと、かなり細かく分けられていて「江戸紫」「葵色」「京籘」「若紫」「桔梗色」「竜胆色」「茄子紺」「紫紺」「二人静」「紫檀色」「紫苑色」等々、何十種類もがある筈だ(註1)。

正直言うと、帯の色は自分の感覚的には紫というよりも、青に近い感覚で見てる。
だからといって、和名を否定するつもりは毛頭ない。
なぜなら、「アオキシタバ」では何となく語呂が悪いからだ。ムラサキシタバが大好きな青木くんは喜ぶかもしんないけどさ(笑)。字面の見た目で、青キシタバか青木シタバなのか脳が混乱しがちだし、ムラサキシタバの方が言葉のリズムとしては断然に良いのではないかと思うからだ。
だいち日本では、古来より紫色が一番高貴な色とされてきた。聖徳太子が制定した「冠位十二階」でも、紫は最上位の色とされてる。だから天皇や上級貴族しか身につけられなかった。それに、布を紫色に染める染料が大変高価だった為、富のある者しか身につけられなかったようだ。
また、紫は天皇の色とされ、一般庶民を筆頭に使用が禁じられていた時代もあった筈だ。紫色の衣服が庶民にも着られるようになったのは、江戸時代以降だったんじゃないかな。
そういえばローマ帝国や中国王朝でも、紫は最も高貴な色とされ、身分の高い者しか身につけられなかったよな。
ならば、青よりも高貴なる紫の方が、この蛾には相応しい色ではないか。オイチャンは、そう思うのである。

 
【英名】Blue underwing or Clifden nonpareil

「Blue underwing」の underwing は、カトカラ(シタバガ属)そのもののことを指すから、さながら”青いカトカラ”と云うことでいいだろう。
ふ〜ん、英語名は紫を示すパープルでもヴァイオレットでもなく、ブルーなんだね。欧米人の目線では、青に見えているのだね。前述したように、オラの目にも、どっちかというと青に見えている。

一方、クリフデン・ノンパレイルという名前の由縁は、イギリスでは18世紀のバークシャー・クリフデン地方で最初に見つかったからだろう。たぶん場所は現在の21世紀では、U・K(ユナイテッド・キングダム)ではなく、アイルランドだ。因みにノンパレイユはフランス語で「無比の、比較を越えたもの、比類なき、飛び切りの、特別な、最上の、逸材」といった意味があるそうな。つまり「クリフデンの比類なき者」ってところか。英国方面でも評価が高いんだね。

だが、1960年代には絶滅してしまったそうだ。これは戦後の施策により林業形態が変化し、針葉樹の森を植栽するために幼虫の食樹であるポプラ類が伐採されたからだとされている。
その後、何十年もの間、大陸側からの飛来で稀に記録されるだけだったが、近年になって目撃例が増え、さらには定着が確認されて、分布を各地に拡大しているらしい。
あっ、英文からのワシ意訳なので、間違ってたらゴメンね。

因みにドイツでも評価が高く「Blaues Ordensband」という名前が冠されている。
訳すと「青い勲章の綬」ということになる。これは勲章を胸に飾るための帯とかリボン、紐のことである。いかにも、この蛾の高貴な意匠にふさわしいじゃないか。
この呼び名は、ナチュラリストで知られるフリードリッヒ・シュナックの『蝶の生活』(岩波文庫)にあるそうだ。原文は読んでないけどさ。
とにかく、粋なネーミングだよね、それと比べて、和名のネーミングはクソ真面目で、マジ酷いものが多い。ルールに変に囚われ、虫の特徴のみを表すところに重点が置かれ過ぎててツマンナイ。粋じゃないのだ。
日本のチョウで、洒落てる名前だなと思うのは、スミナガシ、キマダラルリツバメ、コムラサキ、ヒオドシチョウくらいだろう。あとは横文字の、ルーミスシジミとかシルビアシジミくらいかな。
他にもあったような気もするが、言わんとしていることは解って貰えたかと思う。

 
【亜種】

Wikipediaには、以下のような亜種が表記されていた。

 
・Catocala fraxini fraxini(原記載亜種)

ヨーロッパのものだ。何処で最初に発見されたのだろうと思って探してみたが、『www.nic.funet.fi』で見ても「Europe」としか書かれていなかった。

 
・Catocala fraxini jezoensis Matsumura, 1931(日本亜種)

日本の亜種は、ヨーロッパの元記載亜種よりも大きいようだ。たぶんスペインや中国の亜種にも勝るだろう。
シロシタバなんかもそうだけど、日本のものの方が他国のものよりもカッケーかも。
あっ、学名の項で日本亜種の「jezoensis」について言及してなかったよね。これは語尾に「ensis」とあるから「〜産の」という意味で、前半分は地名を指している。
でも「jezon」って何処だ❓そんな地名、日本にあったっけ❓まさか、高級焼肉店の「叙々苑」でもあるまいし…。嗚呼、何か急に叙々苑に行きたくなってきたよ。マジで誰か連れてってくんないかな。
ネットで調べたら、同じ小種名を持つものにエゾマツがあった。学名は「Picea jezoensis」。それで、ピンときた。たぶん場所は蝦夷地のエゾを指しているんじゃないか❓で、アタマの「j」は発音しないものと思われる。
調べたら、👍ビンゴ。やはりそのとおりだった。ようは、日本では北海道で最初に見つけられたんだろね。

 
・Catocala fraxini legionensis Gómez Bustillo & Vega Escandon, 1975(スペイン亜種)

これまた、語尾からして地名由来のものだろう。
原産地は、”Leon”、”Villanueva de carrizo”となっている。これがヒントになった。おそらくLeon(レオン)はスペイン北部のカスティーリヤ・レオン州のレオンのことであろう。
調べてみると、古典ラテン語のローマ軍を意味する「レギーオ(Legio)」に由来し、910年に建国されたレオン王国を祖といるんだそうな。なるほど、ひとひねりしてる学名ってワケだ。
ところで、バイクでユーラシア大陸を横断した時には、レオンって通ったっけ❓
フランスのパリを出発して、ざっくり言うと、ル・マンを経由して古城で有名なロワール地方のトゥールに行き、さらにボルドー、アルカッションと移動して一番北の国境からスペインのIRUN(イルン)に入った筈だ。そこからサン・セバスチャン、ブルゴス、セゴビア、マドリード、トレドと旅した。その後、国境とは思えないような小さな村からポルトガルに入ったんだよね。何かクソ長い名前の村だったけど、何て名前だったっけ?
おっ、そうだ思い出した。Valencia de Alcantara(バレンシア・デ・アルカンタラ)だ。シェルの地図(註2)が画像で脳にインプットされてたようで、映像記憶ファイルから出てきた。
そこから海岸にあるナザレの町まで走ったんたよね。そうだ、そうだ。岬の横をジェット戦闘機が、超低空を爆音轟かせてド迫力で飛んでったんだよね。
あっ、いかん、いかん。また余談に逸れちゃったよ。そう云うワケだから、たぶんレオンには行っとらん。
しかし、あんな環境に果たしてムラサキシタバなんて、いるもんかね?レオンには行ってないけれど、スペインはフランスと比べて何処も乾燥がちで、森というか疎林といった感じのところばかりだった。つまり、日本の生息地とは、かなり環境を異にする。ナポレオンがピレネー山脈から向こうはアフリカだと言った意味が理解できたのを思い出したよ。それくらいピレネー山脈の北と南とでは様相が違うのだ。

 
・Catocala fraxini yuennanensis Mell, 1936(中国・雲南省亜種)

これも語尾は「ensis」だ。でも字面からも何となく想像できた。産地も”yunnan”となっていたから、雲南省のもので間違いなかろう。
調べたら、分布は雲南省南西部とあった。

参考までに言っとくと、『日本産蛾類標準図鑑』では、他にロシア南東部、中央アジアのものも亜種になっているとのこと。

 
【シノニム(同物異名)】

Wikipedia には、以下のようなシノニムが記されてあった。

 
・Phalaena fraxini Linnaeus, 1758

これは属名が違うから、ムラサキシタバが最初に記載された時には、属名は Catocala属ではなかったという事だね。
因みに、Phalaena(ファラエナ)という属はリンネが命名した大変古い属名で、今よりもっと大きな枠組の分類だったみたい。ドクガやシャクガなど多くの蛾がここに含まれていたようだ。
詳しく調べたら、何とリンネは初めに Lepidopera(鱗翅目)の中に Papilio(パピリオ=蝶)、Sphinx(スフィンクス=スズメガ)、Phalaena(その他の蛾)の3属しか設けていない。リンネはぁ〜ん、ザックリどすなあ。
とにかく、Catocalaという属は、のちに新設された属ってワケやね。

 
・Catocala fraxini var. gaudens Staudinger, 1901

原産地は”Ala tau”となっていた。たぶんカザフスタンと中国との国境に跨がるアラタウ山脈のことかと思われる。

 
・Catocala fraxini var. latefasciata Warnecke, 1919

原産地は”Amur region”、”Ussri”となっているから、アムール地方とウスリーだ。ようはロシア南東部ってことだな。
あれっ⁉️、ちょっと待てよ。一つ前のシノニムはカザフスタンのものだから、産地は中央アジアだ。という事は、亜種の欄でロシア南東部と中央アジアのものも亜種となっているようだと書いたが、たぶん岸田先生はコレらの事を言ってはったんじゃないのか?
おそらく今はカザフスタン、ロシア南東部のモノは、双方ともシノニムになってて、他の亜種に吸収されてしまったのだろう。

 
・Catocala jezoensis Matsumura, 1931

最初、松村松年は日本のものを新種として記載したんだろね。で、のちに亜種に格下げになったと云うワケだすな。あくまで推測だけど。

 
【変異】

上翅の色柄は、著しく白っぽいものから全体が暗化したものまであり、変異幅がある。今回も石塚さんの『世界のカトカラ』から、画像をお借りしまくろう。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
国外のムラサキシタバだが、右下が白化したもので、左上が暗化したものの典型だろう。一応、拡大しとくか。

 

 

 
もっと上翅の斑紋が不鮮明になり、メリハリの無いベタなのもいるようだ。

 
【近縁種】
北米には、本種に近縁のオビシロシタ(Catocala relicta)がいる。本種よりも一回り小型だが、やはりPopuls属(ヤマナラシ属、またはハコヤナキ属)を食樹としており、北アメリカの西から東まで広く分布している。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
これを初めて『世界のカトカラ』で見た時は、カッコ良過ぎて仰け反った。アメリカの国鳥ハクトウワシを彷彿とさせ、めちゃめちゃ貴賓と威厳がある。
とはいえ変異幅が広く、上翅が白ではなくてグレーのものや帯が淡い紫がかっているのもいる。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 

(出典『Wikipedia』)

 
画像2枚目の奴なんかは、帯が紫がかってて、ほとんどムラサキシタバだ。帯が細いムラサキの異常型と言われても納得しそうである。

近縁種で思い出したが、ネット上にムラサキシタバと間違えてフクラスズメの写真が載せられていることがよくある。
まあ人間、間違うこともあるだろう。しかし、激怒されること覚悟で、敢えてモノ申す。

それって、マジダサい。

確かに彼奴が驚いて飛んだ時などは、一瞬垣間見える下翅の青色に反応してしまい『すわっ(・o・;)❗、ムラサキかっ⁉️』と思う時はある。でも次の瞬間には即違うことに気づく。ゴツくて汚らしいからだ。あれって、ホント💢腹立つよなー。
それで思い出したよ。山梨県の大菩薩山塊で必死にムラサキシタバを探していた時の事だ。樹液が出てるミズナラから突然、下翅か青い蛾が飛び出した。一瞬にして血が逆流したよ。でもそれがムラサキではなく、フクラスズメだと気づいた時のガッカリ感は半端なかった。同時に、あんなもんに見間違えた自分に激しく憤りを覚えたわ。その後、その木には何頭も寄ってきたから、憎悪の炎🔥が燃えたぎったね。
よく見ると、青い部分は中途半端なデザインだし、それに何よりも糞デフだ。フォルムが全くもって美しくないのである。上翅の柄もメリハリが無いし、まるで乞食爺さんみたいだと思ったよ。そもそも蛾嫌いなオイラにとっては、背中がゾワゾワするような邪悪な見てくれなのだ。

 
(フクラスズメ Arcte coeruta)

 
まだディスる。
こんなもんをムラサキシタバとずっと間違えたまんまの人って、どーかしてるぜ┐(´д`)┌
そういえば、虫屋の飲み会に遅れて行ったら、丁度、兵庫の明石城公園でムラサキシタバを見たと強く主張しているバカがいて、その場で『んなもん、100%フクラスズメじゃ❗そんな海沿いにおるわけないやろ、バーロー(ノ ̄皿 ̄)ノ ⌒== ┫❗』とボロクソ言ってブッ潰したことがある。
ちょっと大人気なかったかもしんない。ワシにボロクソ言われた人、ゴメンなさいね。同じことまだ主張するなら、ディスり殺すけどね( ̄皿 ̄)💢

 
(裏面)

(出典 上2点共『http://www.jpmoth.org』)

 
裏がまた、絶望的に汚ない。美しさが微塵も無いのだ。
しかも、これだけにはとどまらない。幼虫が死ぬほど醜くて超気持ち悪いのだ。あまりにも気持ち悪いから、画像は添付しない。気になる人は自分で探してくれたまえ。んでもって、思いきし鳥肌たてて仰け反りなはれ。
そういや、山梨の時はその気持ち悪さを思い出して益々憎らしくなってきて、マジで全員、網で叩き殺してやろうかと思ったよ。
そういうワケだから、見たことはアホほどあるが、採ったことは一度もない。ゆえに手持ちの標本も皆無。であるからして、ネットから画像をお借りしたのでありんす。
ついでに言っとくと、ムラサキシタバと同じくヤガ上科シタバ亜科に含まれるが、属は違い。フクラスズメ属である。認めたくはないが、意外と類縁関係は近いみたいだ。もう一言書き添えると、スズメガとは関係は浅い。和名は、鳥のスズメが羽毛を逆立てて冬の寒さに耐える様を「ふくらすずめ」と呼び、丸っこくて毛に覆われた様子をこの蛾に当てはめたものである。

 
【レッドデータブック】

福井県:希少種B(県レベル)
兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)
岡山県:稀少種
高知県:準絶滅危惧種
奈良県:稀少種
和歌山県:準絶滅危惧種

いつも思うんだけど、このレッドデータブックってヤツはどこかユルいわ。もっと指定されててもオカシクない都道府県が有るんでねぇの❓

 
【成虫発生期】

他のカトカラが盛夏に現れるのに対し、真打ち登場ってな感じで最も遅くに現れる。そこに風格、格の違いを感じる。謂わば、紅白歌合戦のトリや横綱みたいなもので、最後の最後に登場する大御所的な存在なのだ。この辺りも人気の高さに帰依しているところがあるのではないだろうか。

ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では「8E-10」となっているが、早いものでは8月上旬、通常は8月中旬頃から現れ、10月下旬まで見られる。
新鮮な個体を得るには9月上旬までに狙うのが望ましいとされているが、時に10月でも新鮮な個体が得られるという。

 
【開張(mm)】

『原色日本産蛾類図鑑』では、92〜102mm。『日本産蛾類標準図鑑』だと、90〜105mm内外となっている。

日本最大のカトカラのみならず、世界的に見ても最大級種である。よくその大きさはシロシタバと並び称されるが、基本的にはムラサキシタバの方が大きいように思う。個人的意見だが、特に東日本では差異を感じる。シロシタバの方が小さいなと感じるのだ。じゃあ、何でそないな風に並び称されるのかと云うと、たぶん開翅長(横幅)だけで論じられることが多く、表面積で語られることが少ないからではなかろうか?

 

 
上が長野県産のムラサキシタバで、下が岐阜県産のシロシタバである。産地はそれぞれ白骨温泉と平湯温泉だから、場所はそう離れてはいない。
再度、個人的見解だと断っておくが、東日本のシロシタバは、ムラサキシタバに比して、どれも大体これくらいの大きさだ。東北地方や北海道で得たことはないから断言は出来ないが、たぶん甲信越地方のものと変わらんだろう。下手したら、もっと小さいかもしれん。
但し、西日本の低地のものはデカい。それでも表面積はムラサキシタバに軍配が上がるかと思われる。
両種ともカトカラ内の横綱であることは間違いないが、シロシタバは自分的には張出横綱って感じで捉えている。

 
【分布】 北海道、本州、四国、九州、対馬

主に中部地方以北に見られ、北海道では比較的個体数が多いようだ。西日本では少なく、近畿地方、中国地方では稀で、四国地方、九州地方では極めて稀。

一応、分布図を添付しておこう。

 

(出展 西尾規孝『日本のCatocala』)

 
石塚さんの『世界のカトカラ』の分布図も添付しておこう。
こちらは県別の分布図になっていることに留意して見られたし。

 

(出展 石塚勝己『世界のカトカラ』)

 
見ての通り、従来は九州では対馬のみからしか記録がなく、長い間、九州本土には分布しないとされてきた。図鑑は元より、ネット情報でも今だに殆どがそうなっている。
ところが、2011年に福岡県添田町英彦山と福岡市南区油山で採集されたそうな。また、この年は長崎県平戸や山口県秋吉台でも採集されている。九州本土内の福岡県,長崎県の個体はほぼ完全なものであったため,遠くから飛来した偶産とは考えにくく,現地付近で発生したものと考えられるそうだ。

中国地方では空白地帯になっていた山口県でも確認されたことにより、全県に記録がある事になった。
記録をあたってみると、岡山県恩原高原、西粟倉村、鳥取県若桜町、島根県鯛丿巣山、琴引山、島根半島で採集されている。広島県は北部にいるらしいが、地名は拾えなかった。

四国では愛媛県四国中央市(塩塚高原)、内子町(小田深山)、高知県香美市物部町、徳島県西祖谷村の記録のみしか拾えなかったが、全県から記録されているようだ。中央に横たわる四国山地の高標高地に局所的に分布するものと思われる。

近畿地方でもかなり少なく、大阪府と三重県には記録がない。
和歌山県は準絶滅危惧種となっていたが、産地は分からなかった。奈良県はレッドデータブックで稀少種になっていた。で、やっぱり産地は分からなかった。京都府は分布することになっているが、全く手がかり無しだった。いるとしたら、北部だろう。滋賀県には記録はあるものの、かなり古いものらしい。レッドデータブックでは情報不足となっている。どうやら思っていた以上に近畿地方では稀なようだ。確実にいるのは、兵庫県北部の但馬地方周辺の高標高地くらいだろう。

西日本では少ない理由は、先ず第一に気温だろう。ムラサキシタバは冷温帯を好む種だからだ。それに西日本では中部地方のように標高の高い山も少ない。つまり冷涼な気候の場所も少ないから、生息に適した環境があまり無いのだろう。

第二の理由は幼虫の食樹である。食樹については別項で詳しく書くが、ムラサキシタバの食樹はヤマナラシとドロノキ、ポプラである、このうちドロノキは分布が中部地方から北海道だから、西日本には自生しない。
次にポプラだが、植栽されたものしか無いから標高の高い冷涼な地域では殆ど見られないだろう。しかも、ポプラは風に弱くて直ぐに倒れるし、カミキリムシの食害にもあいやすい。ゆえに、現在ではあまり植栽されていないのだ。
最後のドロノキだけが、西日本では利用されていると考えられる。しかし、これとて少なく、西日本ではあまり見ない木だ。何故なら、種子が非常に小さいので、競争相手のいない裸地でなければ侵入できない。それにポプラと同じくカミキリムシなどの被害を受けやすく、木の寿命が短いのだ。
これらの理由から、西日本では滅多に見られないのだろう。
逆に北海道に多い理由は、ドロノキやヤマナラシ(エゾヤマナラシ)が多く自生し、冷涼な気候ゆえ、平地のポプラでも発生できるからだろう。

国外では、極東アジアからヨーロッパまでユーラシア大陸に広く分布している。
ヨーロッパでは、中央ヨーロッパと北ヨーロッパのほぼ全域、および南ヨーロッパの一部に分布している。但し、或る資料によると、ポルトガル、地中海の島々(コルシカ島を除く)、ギリシャ、スコットランド北部、スカンジナビア北部、ロシア北部およびロシア南部で絶滅、もしくは激減しているようなことが書かれていた。ヨーロッパ以外では、旧北区からトルコ北部、中国、シベリア、極東ロシア、韓国、日本に分布していることになっている。

分布は広いと知ってはいたが、思ってた以上に広い。
同じく巨体であるシロシタバはアジアの一部にしかいないから、国外の愛好家、特に欧州ではムラサキシタバよりもシロシタバの方が格上で、珍重されているのも解るような気がするよ。
 
 
【雌雄の区別】
他のカトカラは尻の形、及びその先端の毛束の量などで判別するが、ムラサキシタバはそれ以外にもっと簡単な判別法がある。

 
(オスの裏面)

 
♂の腹は♀と比べて細いことが多い。但し、この様に腹が太いものもいるから注意が必要。腹先の毛束は♂の方が多い。コチラの方が、まだ見分けやすい。

 
(メスの裏面)

 
裏の羽と胴体の感じが、ほよ(・ω・)?顔みたいで、初めて見た時は笑ったよ。
それに胸の辺りが、もふもふで可愛い(◍•ᴗ•◍)❤

参考までに言っとくと、鮮度を見るには表よりも裏面の方が分かりやすい。鮮度が良いほど白く見える。この2つだと、♂の方が鱗粉が剥がれていないから、より新鮮な個体だと御理解戴けるかと思う。

いかん、いかん。話が逸れてしまった。雌雄の見分け方だったね。
えー、メスは尻の先に縦にスリットが入るのだ。
より解りやすいように、画像を拡大しよう。

 
(オスの尻先)

 
(メスの尻先)

 
ねっ、全然違うっしょ。
にしても、何でムラサキシタバだけがそうなんざましょ❓
他のカトカラの♀には、こんな明確なスリットは入っていないと思うのだ。

 
【生態】
中部地方では標高1000〜1800mのミズナラ・ブナ林帯に産地が多いが、北海道では平地にも生息している。
生息環境はヤマナラシ、ドロノキが林立する広葉樹林の斜面や渓谷沿いの河辺林、針葉樹と広葉樹との混交林等。北海道などの、より低標高の産地では植栽されたポプラ並木や公園でも発生する。

灯火にも樹液にも集まる。また花(サラシナショウマ)での吸蜜例もある(関,1982)。

採集方法は主に灯火採集で、ライト・トラップを設置するか、外灯巡りをするかだろう。
一晩に数頭飛来すれば御の字だが、雨の前後などガスが発生するような天候の折りには、一晩で数十頭採れることもあるという。

灯火に訪れるのは午後10時くらいからが多いそうだが、日没直後や明け方に飛来するものもいるようだ。これも、その日の気象条件に多分に左右されるからであろう。因みに灯火で自分が見た時刻は、午前10時40分くらいと午前0時前後だった。

灯火採集の経験値が少ないから偉そうなことは言えないけど、周りから聞いた話を総合すると、ライトトラップに寄ってきても上空を高速でビュンビュン飛んでて、中々トラップに止まってくれないそうだ。しかも、止まっても大概は変なとこに止まるから、採りづらいらしい。でもって、かなり敏感で、下手に近づくと直ぐに飛ぶし、逃したら二度と戻って来ないらしい。
また、石塚さんの『世界のカトカラ』によると、コウモリがムラサキシタバを捕らえようと飛来した際は、コウモリから放たれる音波を敏感に察知し、逃れるために急降下するような光景もしばしば見受けられるという。

中部地方では9月中旬以降になると、低標高の長野市、松本市、上田市などの市街地の外灯にも飛来する。夏型の気圧配置が終わって山が2、3日雲で覆われた後や秋雨のあとによく本種が採れるそうである。この事からも、飛翔力は強く、移動性もそれなりに強いのではないかと推測される。

そういえば、高い位置(高さ6、7mくらい)を、らしきモノがかなりのスピードで飛んで行くのを二度ほど見ている。或いは普段は高所を飛んでいるのかもしれない。
前から疑問に思ってたんだけど、カトカラ類が普段どの程度の高度を好んで飛んでいるかについて書かれたものを殆んど見たことがない。ガ全般なら尚更だ。チョウならば、ほぼ全ての種において、飛翔の高さについて言及されているのにナゼに❓
勿論、夜だから目につきにくいというのは当然あろうが、にしても観察例が少な過ぎる。ライト・トラップだけでじゃなく、別な観察方法も必要になってきているのではなかろうか❓
もしくは、ライト・トラップしてるのならば、時にはそのまま暫く放っといて、懐中電灯を持って探しに行けばいいではないか。でも、誰もとは言わないが、あまりそんな事している人はいないんだろなあ…。

クヌギやハルニレなどの樹液やフルーツ(腐果)トラップ、糖蜜トラップに集まるが、観察例はあまり多くない。特に高原や標高の高い山地帯(ブナ帯など)での観察例は極めて少ないようだ。
その理由について西尾規孝氏は『日本のCatocala』の中で、以下のような推察をなされておられる。

「高原や標高の高い山地、とくにブナ帯にいる Catocala は
何を餌として長い成虫期を過ごしているのか不明な点が多い。本種のような冷涼な山地に生息する種の行動はほとんど未知である。山地の生息地ではもともと気温が低い(夜間の気温は10〜20℃)ので、意外と低山地ほど栄養を必要としない可能性がある。」

これは有り得るかもしれないなとは思う。
しかし、そもそもブナ帯で樹液or糖蜜採集を試みている者が少ないというのもあるのではないか?とも思う。蛾を採集する皆さんの間では、ライト・トラップなどの灯火採集が主流なのである。また、低地ではクヌギやコナラから樹液がドバドバ出ているが、そのような樹液ドバドバの木が高標高地では少ないような気がする。高標高だと樹液の出る木はミズナラ、ヤナギ類、カバノキ類になると思われるが、それを見つけるのは結構大変だ。低山地にみたいにカナブンやハナムグリ、クワガタ、カブトムシなどの甲虫やスズメバチは多くないだろうから、ヒントが少なくて探すのは容易ではないのだ。里山の雑木林みたいに、昆虫酒場に群がっているワケではないのである。それにクヌギみたく強い匂いもしないしね。と云うワケで、効率が悪いから真剣に樹液で探している人が少ないんではなかろうか。

非常に敏感で、カトカラの中でも特にムラサキシタバは樹液や枝葉に静止している際にライトを当てると慌てて飛び立つ。
腐果トラップ、糖蜜トラップに飛来した際も同じく極めて敏感で、腹立つくらいにソッコーで逃げよる。こういうところも心憎いところである。ゆえに憧憬が募る。いい女と同じで、簡単には落ちないのだ。

フルーツトラップや糖蜜トラップから飛ぶ際は、他のカトカラと同じくパタパタ飛びで、それほど速くはない。但し、一度だけだが、ライト・トラップに近寄ってきて逃げた際はメチャメチャ速いスピードで飛び去った。

腐果・糖蜜トラップに寄って来る際の姿は見たことがないが、おそらく他のカトカラと同じくパタパタ飛びでやって来るものと推測される。
カトカラ類は翅形からすると、本来はかなり速いスピードで飛翔できるものと思われるが、樹液や腐果&糖蜜トラップに寄って来る際も、また飛び去る際もパタパタ飛びだ。何か鈍臭い感じなのだ。これはもしかしたら、体が重いとか形体のバランスだとか、何らかの理由でトップスピードになるのに時間が掛かるのかもしれない。また反対に、トップスピードから急制動でピタリと止まるのも苦手なのかもしれん。意外と寄って来る際は、高いところから徐々にスピードを緩めて降りて来るのやもしれぬなあ。
我々はライト・トラップも含めて樹液や糖蜜トラップの設置位置の目線でしか物事を見ていないのかもしれない。前述したように、或いはカトカラたちは普段は我々が思っている以上の高所を主なる活動空間にしているって可能性はないのかな?

一応、補足しておくと、カトカラ類は昼間に驚いて飛び去る際、時にかなりのスピードで逃げ去ることがある。これは、その際には下向きに止まっているからなのかな❓自重で落ちる力を利用しているとかさ。

尚、自分は標高1700mで腐果トラップと糖蜜トラップの両方を試してみたが、そのどちらにも飛来した。但し腐果トラップが2例、糖蜜トラップでは1例のみである。
飛来時刻は午後9時前、9時半過ぎ、午前1時半だった。

『日本のCatocala』に拠れば、驚いたことに国内での昼間の静止場所についての記録は殆んどないそうだ。岩場の暗所に潜んでいたという観察例があるに過ぎない(四方,2001)という。
但し、ヨーロッパでは樹幹によく静止しているみたいだ。また、北海道では平地のポプラ並木で時々見掛けるという噂があるようだ。
確かにネットで画像検索すると、日本では昼間に撮られた写真は極めて少なく、壁や板塀(杭)に止まっているものが2点、自然状態と言える樹幹に止まっているものは1点だけしかなかった。因みに、何れも逆さ向きではなく、上向きに静止していた。もしも、昼間も上向きに静止しているのなら(大多数のカトカラは昼間は下向きに静止している)、そういう習性を持つカトカラは他にはジョナスキシタバくらいしかいないのではないかな?(調べたら、エゾベニシタバ、ゴマシオキシタバも上向きに止まっているそうだ)。
上翅の色彩模様は、食樹のヤマナラシやドロノキの樹皮に似ているというから、見つけにくいのかもしれない。でも、樹皮に似ているといっても、この2つの木は幼木と壮齢木、老木とでは、幹の感じがかなり異なる。昼間に探したことはないけれど、そんなに見つからないものなのかなあ❓…。
意外と見つからないのは、他のカトカラみたいに低い位置ではなく、高い所に好んで止まっているのかもしれない。勿論、これは勘だけで言ってるんだけどさ。

メスは三角紙の中でも容易に産卵し、母蛾から比較的簡単に採卵ができるようだ。
自然状態の産卵行動は、同じく『日本のCatocala』に観察例があったので、抜粋要約しよう。

「産卵行動については、ポプラの樹幹上で2例観察している。時刻はいずれも午後9時台であった。メスは樹幹に飛来し、木の下部から産卵を始め、歩行しながら次第に上部へと産卵場所を変えた。何れの場合もメスは光に敏感で、照射した光に直ぐに反応し、逃避した。照射を止めて数分後、再び産卵に訪れるもカメラのストロボ光で逃避し、暫くして再び飛来する行動を数回繰り返した。」

とにかく、懐中電灯の光には矢鱈と敏感なんだね。
よって見つけても採れないケースがあるから、余計に想いが募る人もいて、半ば神格化されるところがあるのだろう。

 
【幼虫の食餌植物】

食樹と幼生期に関しては、今回も西尾規孝氏の名著『日本のCatocala』の力を全面的にお借りしよう。

ヤナギ科:ヤマナラシ、ドロノキ、セイヨウハコヤナギ(ポプラ)などのPopulus属。日本では人によって、これをヤマナラシ属と訳したり、ハコヤナキ属と訳したりしてるからややこしい。でも一般ピーポーのことを考えれば、解りやすいポプラ属の方がエエんでねえの❓と思うよ。

主にヤマナラシ、ドロノキを食樹としているようだが、長野県ではコゴメヤナギやオオバヤナギ、カワヤナギでも卵殻が見つかっている。但し、どの程度利用されているかは調査不充分とのこと。
ヨーロッパでは、トネリコにも寄生することが知られているが、日本ではまだ見つかっていないという。たぶん真剣に探してる人がいないからだと思うけどさ。

『www.nic.funet.fi』によれば、以下のようなものが、食樹として載っていた。

Larva on Populus tremula, Betula sp., Fraxinus excelsior [SPRK], Fraxinus , Quercus , Q. robur, Tilia cordata, Fagus , Alnus , Acer , Ulmus , Salix [NE10], 96 (Beck, Anikin et al.)

ざっくり訳すと「幼虫はヤマナラシ、カバノキ科、セイヨウトネリコにいる。その他、僅かな記録があるのが、トネリコ属、ナラ属ヨーロッパナラ、シナノキ属フユボダイジュ、ブナ属、ハンノキ属、カエデ属、ニレ属、ヤナギ属。」

一番最初にヤマナラシが来ることから、おそらくヨーロッパでも主要となる食樹はヤマナラシなどのPopuls属の木だろう。
と云うことは、学名の由来であるトネリコは、たまたま最初に食樹として判明しただけって事かな❓
そう考えると、「fraxini」という学名は益々もってダサい。

それはそうと、他にも記録されてる別属の植物が矢鱈と多いな。気になるので、植物の系統図を見てみた。

 

(出典『APGⅢ』)

 
ヤマナラシ属の上位分類であるヤナギ科は、さらに上の分類にあたる「目」レベルだとキントラノオ目に分類されている。
他にヨーロッパで挙げられている食樹の分類も見ていこう。
カバノキ科はブナ目。ハンノキ属もそこに含まれる。またナラ属も科は違うが(ブナ科)、同じくブナ目だ。ニレ属はニレ科バラ目。このブナ目とバラ目が、クラスター的にはキントラノオ目にやや近い。とはいっても目レベルだから、かなり縁戚関係は遠いだろう。
次にクラスターが近いのが、シナノキ属のアオイ科アオイ目とカエデ属のムクロジ科ムクロジ目だ。
一方、食樹として認知度が高いトネリコ属は、シソ目モクセイ科に分類される。系統図を見ると、両者は「目」レベルでも、かなりかけ離れた関係である事がわかる。
この結果には驚きだった。ヨーロッパでのムラサキシタバの食性はメチャクチャじゃないか。ワケ、ワカメじゃよ。

いや、待てよ。冷静に考えると、完全に蝶目線で見てたわ。
チョウは幼虫の食餌植物の範囲が狭い。一方、それに対して蛾の幼虫の食餌植物の範囲はかなり広い。属とか科、下手したら目さえ関係なく、何でも食う奴だっていたんじゃないかと思う。その中にあって、カトカラ属は幼虫の食餌植物がチョウと同じようにかなり狭い。だから、ついつい蝶屋的観点で思考してた。でも、所詮は蛾である。元来は何でも食ってたんだろう。それが進化の過程の中で、食樹が収斂されていったのではなかろうか。で、かなり強引だが、時々先祖帰りする奴がいるとか…。そんな事、ないかね❓

 
(ポプラ)

(出典『山手の木々』)

 
(ドロノキ)

(出典『ムシトリアミとボク』)

 
(ヤマナラシ)


(出典 3点共『木々@岸和田』)

 
(セイヨウトネリコ)

(出典『キュー植物園で見られる植物』)

 
飼育する場合はヤマナラシ、ドロノキが望ましいが、ポプラでも育つという。但し、気温の高い平地室内で飼育する場合は、ポプラを与えるよりもヤマナラシを与える方が成長が良好のようだ。
また、シダレヤナギやウンリュウヤナギも代用食となるが、成長不良となる場合もあるという。
猶、飼育を成功させる為には、幼虫の孵化期と餌の葉の柔らかさのタイミング、室内温度の調整が重要となるそうだ。

 
【幼生期の生態】

卵は食樹に付着した蘚苔類や樹皮の裏、裂け目、樹皮の溝、小枝の脱落した跡などに産付され、大木の地表近くでよく見つかる。1箇所への産卵数は1個の場合が多い。
受精卵は黒色ないし黒褐色、褐色で、緑色を帯びるものもあり、孵化直前に白みががる。

 
(卵)


(出典『Lepiforum』)

 
去年、インセクトフェアで卵をタダでもらった。
100卵だったかな。その時に初めて卵の実物を見たけど、あまりにも小さ過ぎて笑ったよ。何せケシ粒くらいしかないのだ。
で、大半を飼育の上手い小太郎くんに無理矢理に預けて、5卵だけ持ち帰った。
しかし、小さ過ぎてハッチアウトがワカンなかった。一応、ポプラの若芽を入れてはいたんだけど、あまりに孵化しないので、諦めて放ったらかしにしてたら、いつの間にか孵ってた。既にその時はポプラの若芽は枯れていたから、人知れず死んでおりましたとさ。ちゃん、ちゃん。
m(_ _)mすまぬ、悪いことしたよ。やっぱ、性格的に飼育には向いておりませぬな。
因みに小太郎くんも飼育に失敗。全滅したらしい。ポプラを与えたけど食いつかず、わざわざヤマナラシを山に採りに行ったらしい。それでもやはり食いつかず、ダメだったそうだ。

長野県の標高700m付近の谷での孵化は5月中旬。終齢幼虫は7月上旬に見られ、群馬県の標高約1600mでは、6月上旬に1齢幼虫が見つかっている(つまり孵化は5月下旬から6月上旬と推定される)。
幼虫は若い木から老齢木まで幅広く見つかるが、比較的大木を好むようだ。

 
(終齢幼虫)

(出典『青森の蝶たち』)

 
幼虫の色彩変異は他のカトカラと比べて乏しいが、野外では時に全体的に暗化したものも見られるという。
ネットで幼虫は紫がかってると書いてある記事を見たけど、実物を見たわけではないので、本当のところはよく分からない。

 

(出展 文一総合出版『イモムシハンドブック2』)

 
終齢幼虫は他の多くのカトカラよりも1齢多い6齢にまで達する。成虫が姿を現す時期が最も遅くなるのは、この辺りにも理由があるのかもしれない。
終齢幼虫の体長は約90mm。体重は40gを越える。
頭幅は5.5〜6mm。幼虫の同定は、この顔面の斑紋形態で他種と区別ができるようだ。

1〜2齢幼虫は食樹の葉裏に静止しているが、中齢幼虫以降は枝に静止し、樹幹には下りない。摂食時間は主に夜間だが、終齢幼虫(6齢)になると、昼間でも活動することがあるそうだ。

1、2齢幼虫の食痕は円形に近い形状で、5、6齢幼虫になると葉柄部分だけを残し、時に葉柄部も切り落とす。この習性は日本ではオオシロシタバにも見られ、北米のカトカラ数種からも同じ生態が報告されているようだ(ハインリッチ,1985)。
ハインリッチは、これを食痕やそこに付いた唾液からハチなど天敵の目標となることを避けるための戦略だと推察している。

蛹化場所についての知見は他のカトカラと同じく少ない。西尾氏は図鑑で、樹皮の裏での脱皮殻の発見例を記しておられるが、多くは落ち葉の下で蛹になるだろうと推察されておられる。

多分、↙️こういうのだね。

 

(出典『青森の蝶たち』)

 
この方、よく見つけはりましたなあ。
驚いたのは、蛹の周りに薄い繭を作るんだそうな。そういうことは、どこにも書いてなかったからだ。写真はそれを少し破って撮影したそうだ。
よく見ると、そんな感じではある。確かに外側に繭っぽいものが見える。

 

(出典『MEROIDA E.COM』)

 
蛹は紫ががってんだね。
マミー。ミイラみたいだ。こういうのを見ると、古代の人たちが蛹から美しい蝶や蛾が羽化するのを目のあたりにして、そこに甦りとか蘇生、輪廻転生と云った神秘的な力を感じたのも頷けるような気がする。
ちなみに、このブログ『青森の蝶たち』にはムラサキシタバの羽化する様子も写真に撮られている。なかなか無い画像だし、素直に美しいと思った。それも併せて見て戴けると、よりオジサンの言ってることが解るかと思う。

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青森の蝶たち

記事に飛ばない場合もあるので、URLも書いとく。
http://ze-ph.sakura.ne.jp/zeph-blog/index.php?e=1191

中々、神秘的でやんしょ(・∀・)
サイトには、羽が伸びて開翅してる画像らしきものもあるよん。
 
えー、これにて解説編はおしまいでやんす。
してからに、『2018′ カトカラ元年』、完結でごわす。

                        おしまい
 
 
追伸
第四章から、たった中ニ日で記事をアップできたのは、四章と並行して最終章も書いていたからである。
ナゼにそんな事をしてたのかと云うと、単に飽き性だからであるというのもあるが、両方の文章に相互効果があるのではないかと思ったからだ。まあ、ホントに効果があるかどうかワカンナイけどさ。

今回のタイトル『紫の肖像』は、かなり昔の捕虫網の円光シリーズのオオムラサキかヤクシマルリシジミの回で使ったような気がするけど、他に思い浮かばなかったので仮タイトルとしてつけた。で、結局良いタイトルが浮かばず、そのまま最後まできてしまったってワケ。まあ、解説編なんだから、タイトルとしてはそう悪くはないと思うけどさ。

それにしても、長い連載だったなあ…。
改めて、毎回このクソ長い文章の連載を我慢して読んで下さった皆様方、今まで誠に有難う御座いました。感謝、感激、雨あられでやんす。

えーと、マホロバキシタバのことを今シーズンが始まる前までには書こうと思っております。
なので、そのうち気が向いたら、カトカラ2年生の2019年に採ったもので、まだ書いてない奴のことも含めて書くやもしれません。
あくまでも、気が向いたらですけど。

 
(註1)日本の紫色の種類
調べたら、なんと57色もあった。昔の日本人の色彩感覚ってスゴイや。

 
(註2)シェルの地図
Shell石油が発行しているヨーロッパのロードマップ。
道路地図としてはミシュランの方が圧倒的に知名度は高いが、地図としてはシェル地図の方が遥かに優れており、使い勝手がいい。とても見やすく、情報も細かい。お薦めのビューポイントやらキャンプ場等々がマークで記されているし、シェルのガソリンスタンドの位置も一目で解るようになっている。バイクや車で移動する者にとっては、このガソリンスタンドの位置が分かるという事は、地味ではあるが大きい。燃料が無くなりかけた状態でガソリンスタンドを探すのは、精神衛生上よろしくないのだ。それにガソリンスタンドの位置さえ分かれば、その先を見据えて、どの辺で早めにガスを入れといた方がいいとか、もう少し長いスパンの計画も立てやすい。

また、一冊でヨーロッパ全土だけでなく、トルコの西半分やロシアの一部もカバーしている。お陰でトルコの地図を買わなくて済んだ。トルコの真ん中から東側は都市が連なっているワケではないから、道路網も複雑ではないのだ。つまり、大まかな幹線道路を示した地図があれば事足りる。大まかなモノなら、イスタンブール辺りのツーリスト・インフォメーションでもタダで手に入ろう。
但し、このShell地図。本屋では手に入らない。シェルのガソリンスタンドでしか売っていないのだ。しかも、シェルのスタンドなら何処でも売っていると云うワケではなさそうだった。
あっ、一応つけ加えておくと、今も地図が売られているどうかは知らないよん。或いは、もうこの世から消えてるかもしれない。今やGPSの時代だからね。
でも、それじゃ味気ないし、つまらない。GPSは地図を読むという楽しみを奪うものだからね。地図を見て、その情報をあれこれ読み取り、考えることは一種の知的ゲームでもあるのだ。そこには当然の如くリスクもあるけれど、浪漫もある。リスクや浪漫の無い旅なんて、旅じゃない。ただの旅行だ。
ヨーロッパをバイクや車で旅する人がいるなら、是非とも紙の地図の旅をしてほしい。そう思う。

 

2018′ カトカラ元年 其の17 第四章

 
  vol.17 ムラサキシタバ act4

  第四章『パープル・レイン』

 
 2019年 9月3日

もう一晩、此処わさび平小屋周辺で粘るという手もあったが、たぶん同じ事の繰り返しだろう。採れる気が全くしない。
この際、ヨシノキシタバは諦めてムラサキシタバとエゾベニシタバの2つにターゲットを絞りなおそう。両種の幼虫の食樹は被っているから、両方採れる可能性もある。
とは言いつつも、いつの間にか頭の中は女王ムラサキシタバのことだけで占められていた。エゾベニはまだ一度も見たことがないけれど、それよりもムラサキへの想いの方が強いみたいだ。皇帝の前では、他の全てのカトカラは霞んでしまう。それくらい存在感が違うのである。

問題は場所を何処にするかだ。当初はロープウェイ駅まで下りて、そこで勝負することを考えていた。1000〜1200mと頃合の標高だし、付近にはムラサキとエゾベニの食樹であるドロノキも多い。加えて周辺には旅館やホテルもあるから外灯だってあるだろう。そこに寄って来るカトカラもいるかもしれないと思ったのだ。
しかしながら、今や夜間に虫を寄せ集める水銀灯や蛍光灯は世の中から消えつつあると云うのが実情だ。最近は、殆ど虫が集まって来ないLED照明にとって替わられつつあるゆえ、たぶん多くは望めないだろう。それに夜まで時間を潰すのは大変そうだ。チョウさえいてくれれば、何の問題もないのだが、この時期にいる蝶は少ない。さらに言えば、採りたい蝶はキベリタテハくらいしかいない。

 
【キベリタテハ】
(2009.8月 八ヶ岳)

 
けれど困ったことに、この新穂高にはキベリタテハはあまりいないのである。昔、春にボロボロの越冬個体を1頭だけ見たのみだ。それに、沢山いると云う話も聞いた事がない。
考えてみれば、左俣周辺にはキベリタテハの幼虫の食樹となるダケカンバや白樺が少なかった気がする。あるとしたら、ロープウェイで上がった鍋平くらいだろう。しかし、いるかどうかも分からないのに行く気にはなれない。
今になって考えてみると、食樹が同じであるオオイチモンジは確実にいるから、ムラサキも間違いなくいる筈だ。ゆえに、それも悪い選択ではなかったかもしれない。だが、その時は前日の辛いテントでの一夜で、すっかり疲弊してしまっていて、そこまで頭が回らなかったのだ。

(・o・)ん⁉️、ちょっと待てよ。
でもキベリタテハの幼虫ってヤナギ類も食べるよな…。
谷間にはヤナギ類は結構あるのに、何でここいらにはキベリがあんまりおらんのじゃ?
もしかして、ヨシノキシタバもそうだったりして…。
だって、あれだけわさび平小屋周辺に立派なブナ林があるのにも拘わらず、全然見なかったもんな。
同じような環境なのに、居たり居なかったりして、生き物ってよくワカンナイや。

左俣道を降りてゆくが、やはりキベリタテハの姿はない。どころか、何もおらん。いる筈のヒョウモンチョウ類やシータテハ、エルタテハ、コムラサキも全く姿を見ない。
ロープウェイまで降りてきて、何だか全てがイヤになってきた。ここには、何もおらんような気がしてきたのだ。それに身も心も芯まで冷えきっていたから、熱い温泉に浸かるのを本能ちゃんが激しく熱望していた。

そんな気分だった折りに、丁度バスがやって来た。
これも流れだと思った。ならば、それに身を任そう。そのままバスに飛び乗る。

乗った時点で、次は何処へ行くかは決めていた。
だいぶ遠いが白骨温泉へ行こう。そこで温泉に入って鋭気を養い、仕切り直して去年採った場所に行き、確実にムラサキを仕留めよう。そう決心していた。
一旦、バスで平湯温泉へと移動する。そこで白骨温泉ゆきのバスに乗り換えられる筈だ。
だが車内でネットで調べてみると、バスが白骨に到着する頃には公共温泉施設は閉まってしまうことか分かった。ギリでアウトなのだ。おまけに間が悪いことに、温泉旅館の風呂も本日は清掃日にあたっており、入浴できないときてる。
何か完全に呪われとるね( ノД`)…。どないすんねん❓

幸い白骨方面ゆきバスの出発時刻までには、まだ時間があったから、平湯で風呂に入ることにした。
バス停から一番近い日帰り温泉、「平湯の森」へ行く。

 
【平湯の森】
(出展『楽天トラベル』)

 
初めて利用したが、広くて良い風呂だった。
ちょっと、気力も戻る。
これからは日帰りならば、いつものとこよりもコッチの方がいいかもしんない。

白骨温泉へ行くには、いったん沢渡まで行って、そこでまた別なバスに乗り換えなければならない。でもバスで行くのは初めてだから、不安が大きい。バスの本数が極めて少ないので、乗り換えに失敗したら最悪の結果になる。

沢渡で降りたら、雨が降り始めた。
予想はしてたけど、やっぱりか…。我が精緻なるお天気センサーは、ハッキリと答えを出せないでいる。降ったり、止んだりという感じかなあ…としか言い様がない。たぶんこの山域では降ってるところもあれば、降っていないところもあるんだろなと思う。女心と秋の空は変わりやすいというが、正にそれで、読めない。一日雨ということはないだろうが、何時から何時までが雨と云うのまではワカラナイ。おそらく天気予報を見たところで、ピンポイントでは当たりそうにないような微妙な天気なんだと思う。
まあ、とやかく言ったところで、どうしようもない。ようは運次第ってことだろう。

なんとか無事に乗り継げて、バスは4時半前に白骨温泉の上にある泡の湯に到着した。ここから、去年ムラサキシタバが採れた場所まで歩くつもりだ。

歩き出して直ぐに光が射してきた。そして、そのうち青空まで覗き始めた。
スーパー晴れ男の面目躍如と言いたいところだが、あんまし自信がない。センサーは晴れるという明確な信号を送ってはこないのだ。とにかく、このまま回復してゆくことを祈ろう。でも、同時にあまり信用しないようにしよう。それくらい今日の天気は気まぐれな気がする。
今さら思い悩んでも仕方がない。なるようにしかならんのだ。

途中、見覚えのあるような広場に出た。たぶん昔、森さんがオオイチモンジのポイントだと教えてくれた場所だ。温泉街からそう遠くないし、面倒くさくなってきたから、もう此処にしようかなと思った。
けど思いとどまった。ここは確実を期そう。先ずは実績のある場所で確実にムラサキを仕留めたい。ギャンブルを極力避けたいと云う心理が働いてるんだろなと思い、苦笑する。我ながら、気持ち弱ってるなあ…。

坂道は思っていた以上にキツい。喘ぎながら登る。
そして、目的の場所がいつまで経っても現れない。次のコーナーさえ回れば見えてくると何度も思うが、見覚えのある風景は何故だか見えてこない。段々、本当にこの道で合ってるのか不安になってくる。
しかも、ザックの重みが次第に肩に食い込んでくる。自分は荷物が重いのが大嫌いで、普段は必要最低限の物しか持たない主義の超軽装男なのだが、今回は勝手が違う。テントと糖蜜トラップ用の2Lのペットボトル、飲料水用の2Lのお茶も持参している。液体は重たいのだ。
一瞬、お茶を半分捨てたろかと云う衝動に駆られる。とはいえ、山で最も重要なのは飲料水である。これだけはケチれないし、削れない。「命の水」と云うだけあって、これを切らせば虫捕りどころではなくなるのだ。そう云うワケで、ことのほか重くて辛い。心がどんどん磨り減ってゆく。

途中、見晴らしの良い場所に出た。見下ろすと、温泉街は遥か下にあった。
えーっ❗❓、そんなに遠かったっけ❓
車で移動した時は、ものの5分か10分だと思っていたから近いと勝手に思い込んでいたが、とんでもねえや。
冷静に考えてみれば、あの時は下りだったし、思っている以上に車は速い乗り物だ。それは知っている。だから理解はできる。完全に文明の利器の力を侮ってましたよ( ;∀;)
だからといって、折角ここまで登ってきたのだ、今さら戻りたくはない。そもそも引き返すことが性格的に大嫌いなのだ。根性で歩く。
待ってろよ、紫のキミ。無茶苦茶に凌辱しちゃる(`へ´*)ノ

歩いていると、ムラサキの食樹であるドロノキが多いことに気づく。幼木が沢山生えているところも見つけた。そこを拠点にしようかとも考えだが、果たして幼木にメス親が卵を産みに来るのかどうかもワカラナイので、やめておくことにした。冷静な判断といえば聞こえはいいが、益々ハートは大胆さを失っているようだ。

ようやく目的地に着いたのは午後5時半くらいだった。
早速、テントを張る。そう、ここで野宿するつもりなのだ。
でも、この時は熊に対しての恐怖心はあまり持っていなかった。昨日の、新穂高の熊の巣窟に比べれば、どってことないと思ってたのだ。でも後日、小太郎くんに『よくあんな熊がいっぱい居るようなところに、一人でテントなんか張って寝れましたねー。』と言われた。知らぬが仏である。🙏なんまんだあ〜。

しかし恐れたとおり、再び天気は下り坂になった。
そして、さあこれからだと云う日没直後に雨が降り始めた。慌ててテント内に避難する。

寝袋に入り、テントを打つ雨音を聞いていた。
雨粒は間段なく雨のメロディーを奏で続けている。やむ気配は全く無い。
なんでやねん❓と呟く。
やはり、秋田さんや岸田先生の言うように、マホロバキシタバの発見で、今年の運を使い果たしたのかもしれない。
まあまあ天才のオラ(笑)に限って、そんな事はあるまいと思うが、8月からの絶不調振りは呪われているとしか思えない面もある。基本的に運だけのラッキーマンでやってきたから、こんなにコケ続けてるのは、あまり記憶にない。むしろ連戦連勝の方が当たり前なのだ。でもなあ…、今年は例年と比べて絶好調が当たり前というワケでもないんだよなあ…。時々、痛い苦杯を喫してもいる。けれど、その苦杯がマホロバの発見に繋がったんだもんなあ…。
そうだ、昨日、一昨日の敗北やこの雨も、きっと栄光への布石に違いない。そう思おう。
もう、神様ったら~(人´∀`)。゚+、アッシをヤキモキさせといて、結局最後には感動のフィナーレを用意してるんざんしょ❓憎いね、この、このー(☞゚∀゚)☞

一頻り自分をジャッキアップさせたところで、退屈しのぎに雨の歌でも歌うことにした。
一人雨唄歌謡ショー。雨のヒットパレードの開幕である。

 
八代亜紀『雨の慕情』

https://youtu.be/FZMWYN8pzG0
八代亜紀『雨の慕情』You Tubeリンク先

 
雨乞いの歌なんぞ歌ってどないすんねん(#`皿´)❗
でも、私のいい人、連れて来いなのだ。この雨がムラサキシタバを連れて来るのを祈ろう。

 
日野美歌『氷雨』

https://youtu.be/FBC04hXAC7A
日野美歌『氷雨』You Tubeリンク先

 
暗いなあ~。
それはさておき、別に好きな曲じゃないけれど覚えていたね。昔の時代の歌は、覚えやすいメロディーになってたんだろな。
とにかく歌詞にもあるように、採れるまで帰るワケには行かんのだ。

 
井上陽水『傘がない』
 
https://youtu.be/bgUpt00lG1s
井上陽水『傘がない』You Tubeリンク先

 
気分は、行かなくちゃ、君に逢いに行かなくちゃなのだ。
名曲だけど、これも暗いねぇー。
でもムラサキに会いに行かなくっちゃなのである。雨が早く上がることを祈ろう。

 
太田裕美『九月の雨』
 
https://youtu.be/a32fV43B2O4
太田裕美『セプテンバーレイン』You Tubeリンク先

 
まさにセプテンバー レインなのだ。
太田裕美には意外と名曲が多いんだよね。当時は地味な気がしてあまり好きではなかっけど、今見ると太田裕美ってカワイイよね。性格も良さそうだしさ。
にしても、マジで9月の雨は冷たいわ。

 
森高千里『雨』

https://youtu.be/XZfez9KcKcY
森高千里『雨』You Tubeリンク先

 
ムラサキさん、今の私は遠すぎるわ、貴方がなのだ。
改めて聞くと名曲だよなあ。森高千里はルックス的に大好き。昔から涼しそうな女の人には惹かれるのだ。

 
イルカ『雨の物語』
 
https://youtu.be/Oh9Y2Iqzb6o
イルカ『雨の物語』You Tubeリンク先

 
僕はまだキミを愛しているんだろう…
ムラサキよ、こんな雨の中でも待ち続けているんだから、僕はまだキミを愛してるんだろう。
作詞は、元「かぐや姫」のメンバーである伊勢正三だ。イルカの代表曲「なごり雪」も正やんの作詞でやんす。
ところで、イルカさんってどことなくイルカに似てるよね。だから、まさかのアーティスト名になったのかな❓

 
風『通り雨』

https://youtu.be/IlVCiL_NLkI
風『通り雨』You Tubeリンク先

 
淋しいのなら忘れようって言われても、ムラサキ様を忘れるワケにはいかんのだ。
この雨が通り雨だったらいいのにな…。

これも、正やんの歌だ。隠れた名曲だろう。正やんの歌詞は大好きだ。どれも情景が自然と浮かんでくる。

 
オフコース『眠れぬ夜』
 
https://youtu.be/3571xM9Ri8o
オフコース『眠れぬ夜』You Tubeリンク先

 
眠れない夜と雨の日には、忘れかけてた愛が甦るってかー。ホンマに昔の彼女の事を思い出して、何だかせつなくなってきたよ。

まだ、そんなに爆売れしてない頃のオフコースの楽曲です。
たしか、この曲は西城秀樹がカヴァーしてたんだよね。そういやヒデキも死んじゃったなあ…。西城秀樹の歌唱力は掛け値なしに素晴らしいと思う。そこにロックを感じるのだ。ヴォーカリストとして、もっと世間的に評価されるべきだろう。西城秀樹はダダのアイドルではないのだ。いや、アイドルだからこそ色眼鏡で見られて評価されないのか。まあ、自分も秀樹がメチャメチャ歌が上手いと気づいたのは随分あとになってからだからね。

 
稲垣潤一『ドラマチックレイン』

https://youtu.be/1T2NOEvM8Ws
稲垣潤一『ドラマチックレイン』You Tubeリンク先

 
哀愁漂う名曲である。
この曲は車のタイヤのCMにも使われてたね。赤い車だったっけ…。俯瞰の映像がカッコ良かったんだよなー。
さておき、マジでこのあとドラマティックレイン的展開にならんかのう。
 
 
八神純子『みずいろの雨』

https://youtu.be/sPwMDmESXwI
八神純子『みずいろの雨』You Tubeリンク先

 
嗚呼〜、水色の雨、降りしきるのーおーおー。
雨、やまーん❗トホホ😢、何だか泣けてくるよ。
この曲、アタマからパワフルでインパクトあったなあ。
🎵パープルタウン パープルタウン パープルタウン うぅ〜っふーふー。
(@_@)何か壊れてきたよ。勿論、ムラサキシタバの紫と掛けてるんだけどね。

ここで思い出した。昔、同じようにテントで寝転びながら雨の歌合戦をやったことがある。但し合戦だから、一人ではない。相棒とユーラシア大陸をバイクで横断した時に、そうゆう事があった。一人用テントを並べ、入口を開けて歌ってた。
スペインのどっかの小さい町だったっけ。キャンプ場が見つけられずに、仕方なく廃館になっていた美術館だか博物館の軒下で野宿したんだった。
そこで、突然相棒が『ねぇ、雨の歌合戦しましょうよ。』と言い出したのだ。
よっぽど退屈だったのだろう。イヤイヤ応じた記憶がある。
正面には、巨大な工場の煙突群が屹立しており、そこからモクモクと大量の煙が吐き出されてたんだよね。それがオレンジ色の光に照らされて、一種異様な雰囲気を醸し出してたっけ…。まるでSF映画の世界だった。その光景を見ながら、ずっと歌ってたね。

 
吉田拓郎『たどり着いたらいつも雨降り』
 
https://youtu.be/dDrMscLOzJM
吉田拓郎『たどり着いたらいつも雨降り』You Tubeリンク先

 
こっちも、たどり着いたら、いつも雨降りって気分だ。
同時代の歌じゃないけれど、がなる拓郎はカッコイイ。
けど、ライブバージョン限定かな。先にそっちを聴いていたから(伝説の篠島のライブアルバム?)、のちにオリジナルを聴いた時はイメージとは違って、とても優しい曲だったので驚いた記憶がある。
ちなみに、この曲は氷室京介など多くのアーティストがカヴァーしている。だか断然、拓郎のライブヴァージョンの方がいい。
でも、たどり着いたらいつも雨降りって歌詞、今の状況だと確実に力抜けんなあ…。

 
村下孝蔵『初恋』

https://youtu.be/OKizrDxp54c
村下孝蔵『初恋』You Tubeリンク先

 
サビも好きだけど、何といっても🎵五月雨(さみだれ)はーと云う入りが特に好きだ。続く歌詞の🎵緑色〜というのも良い。確かに五月雨の時期は新緑の季節なのだけれど、それをサラッと言えるところが秀逸だ。曲のテーマの、あおはる(青春)とも掛かっている。
この人の曲は繊細な感じがして、どれも好き。
でも、結構早死にしちゃったんだよなあ…。その頃の恋とか思い出して、どんどんモノローグの世界に入っていってるなあ。

 
クール・ファイブ『長崎は今日も雨だった』

https://youtu.be/ynJWpwn5-Hk
クールファイブ『長崎は今日も雨だった』You Tubeリンク先

 
正に状況が、探し探し求めて、一人さまよえばーで嗚呼、今日も雨だったーなのだ。もう今の気分にピッタリじゃないか。
これも別に好きな曲じゃないし、サビしか歌えんかと思ったけど、アタマの一言が出たら一番は完璧に歌えたよ。やはり小さい頃に聞いた曲は覚えてるもんだよね。それにメロディーが良い意味で単純だ。今時の日本の歌は変調や半音が多くて、なかなか頭に残らない。そういえば歌謡曲という言葉も死語になりつつあるな。今は歌謡曲ではなくて、Jポップなのだ。何だか悲しくなってくるよ。

 
とんねるず『雨の西麻布』
雨の西麻布

https://youtu.be/AzJu_Bn5RnU
とんねるず『雨の西麻布』You Tubeリンク先

 
もっとフザけてる曲かと思いきや、意外としっとりで、ムード歌謡の良い曲なんだよね。作詞はたぶん秋もっさんかなあ?

 
小林麻美『雨音はショパンの調べ』

https://youtu.be/lNc4eKmlzqM
小林麻美『雨音はショパンの調べ』You Tubeリンク先

 
彼にはもう会えないの Rainydaysなんてフレーズを聞くと、ズブズブに未来が暗澹となってくるよ。

小林麻美はアンニュイで好きだったなあ。
映画『野獣死すべし』の小林麻美は美しかった。松田優作に殺されるシーンは名シーンだと思う。
そういえば、この曲ってユーミンの作詞だったよね。曲のアレンジもミュージックビデオも当時(80年代)では最先端のモノだった。謂わば、オシャレの最先端。そうゆう時代背景を抜きにしても、どこか気だるさのある美しい曲だと思う。

 
柳ジョージ&レイニーウッド『雨に泣いてる…』

https://youtu.be/TPi7U9k4M5Y
柳ジョージ&レイニーウッド『雨に泣いてる…』You Tubeリンク先

 
ウイッピンク・イン・ザ・レイン。雨の中、一人佇むこの俺さー。歌詞が不意に口から溢れた。記憶から消えてた曲だ。
ワタクシ、現在雨に泣いておりまする。

 
松山千春『銀の雨』

https://youtu.be/SQiac0ezl54
松山千春『銀の雨』You Tubeリンク先

 
結構、甘酸っぱい思い出のある曲。
女の子からの別れの手紙に、この歌詞が書いてあった。
今宵は失恋したくないよなあ…。

 
ASKA『はじまりはいつも雨』

https://youtu.be/Rtewdssxnzc
ASKA『はじまりはいつも雨』You Tubeリンク

 
ドラマの主題曲だったから、何となく覚えてる。いや、映画かもしれない。どっちだっていいけどさ。いやいや『SAY YES』と混同しているかも。どっちだっていいけどさ。何だか段々ヤケクソになってきてる。

 
小泉今日子『優しい雨』

https://youtu.be/LbtXSHfjdNA
小泉今日子『優しい雨』You Tubeリンク先

 
ホント、降りしきる雨に全てを流して
しまえたらいいけどーと、声を大にして歌ったよ。
これもドラマの主題曲だったような気がする。
キョンキョンは幾つになっても可愛いけど、若い頃は死ぬほど可愛いかった。声もキュートだしさ。

 
竜童組『新宿レイニーナイト』

https://youtu.be/iTmML2ToEcc
竜童組『新宿レイニーナイト』You Tubeリンク先

 
東京に住んでいた頃は、よく新宿で遊んでた。あの猥雑な街の感じが懐かしく思い返される。雨の日は、濡れてる舗道に極彩色のネオンの光が滲んでて、まるで映画『ブレードランナー』の世界だった。
この曲は宇崎竜童と所ジョージがやっていた『夜はタマたま男だけ!!』という番組のテーマ曲だった。この番組、とても好きだったから最終回は何だか悲しかったなあ。最終回のゲストは根津甚八と桃井かおりだったのもよく憶えている。そして、ラストは4人ではしゃいでる映像がスローモーションで流れ、そのバックにこの曲が流れてのエンディングだった。

 
チューリップ『虹とスニーカーの頃』

https://youtu.be/bjLm005smqE
チューリップ『虹とスニーカーの頃』You Tubeリンク先

 
自分にとっては、ものすごく甘酸っぱい曲。
夏の雨は寂しくはないけれど、せつない。

 
徳永英明『レイニーブルー』

https://youtu.be/rubfOw6X3d0
徳永英明『レイニーブルー』You Tubeリンク先

 
歌詞のように外は冷たい雨が振り続けている。
何かどんどん、せつなくなってきたなあ…。
基本的に雨の歌って暗いし、ブルーになりがちだわさ。

 
小椋佳『六月の雨』

https://youtu.be/w6M_x9pKnzg
小椋佳『六月の雨』You Tubeリンク先

 
しまった…。切なさを越えて、めちゃめちゃダークに暗いわ。
何で、こないな歌を思い出したんじゃろ…。
ちょっと気分を変えて、明るめの曲を探そう。

 
さだまさし『雨やどり』

https://youtu.be/lrfoEaiKgZA
さだまさし『雨やどり』You Tubeリンク先

 
のほほん系の癒し曲だ。
それにしても古い曲ばかりだ。もう少し新しめのを探そう。

 
大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』

https://youtu.be/vWC2XYBZYVs
大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』You Tubeリンク先

 
そして僕は途方に暮れる…。サビを口ずさみながらも雨は止まんし、何か本当に途方に暮れてきた。
にしても、これはもはや雨の歌とは言えないよね(笑)
よくよく考えれば、まだ雨が降ってねえし。
ネタ切れも近いかな?
余談だが、この曲はカップヌードルのCMで流れてて、大ヒットしたんだよね。今にして思えば、何でカップヌードルのCMに使われたんだろ❓オシャレ路線を目指したのか❓

 
福山雅治『Squall』

https://youtu.be/lYE5qWSq3XQ
福山雅治『Squall』You Tubeリンク先

 
私、恋をしている。哀しいくらい。もう隠せないこの切なさは。叶えて欲しい夏の憧れ等々、歌詞の断片が心に突き刺さる。
時々、虫捕りは恋みたいなもんだと思う。特に憧憬する存在に対しては、その感情は殆んど恋と同じだ。
とはいえ、あんまし雨って感じの曲じゃないなあ。あっ、そっか。これって、雨は上がってる曲だわさ。マジ、雨上がれよなー。

 
X JAPAN『ENDLESS RAIN』

https://youtu.be/QhOFg_3RV5Q
X JAPAN『ENDLESS RAIN』You Tubeリンク先

 
サビしか歌えない。
エンドレスレインなんて、縁起でもないよなあ。
このまま降り続けられたら、マジ困る( ;∀;)

 
Mr.children『雨のち晴』

https://youtu.be/lx-ZnX3iMtY
Mr.Children『雨のち晴れ』You Tubeリンク先

 
雨のち晴れ…か。
ちょっとだけ元気出たけどー。歌詞の今日の雨は諦めた感はヨロシクないよねぇ…。今晩のうちに何とかせなアカン。夜が明ける前に雨はやむと信じよう。

 
米津玄師『雨の街路に夜光蟲』

https://youtu.be/nBj0FqfUCv8
米津玄師『雨の街路に夜光蟲』You Tubeリンク先

 
タイトルには雨とあるけど、あまり雨が主題になっている曲じゃないな。段々、引き出しが無くなってきた。
はたと思う。2000年代に入ると、雨を題材とした名曲がグンと少なくなるよね。否、ヒット曲が少ない。色んな有名アーティストたちが雨の曲を作ってる筈だけど、誰もが知っているような曲って、あんまし浮かばない。

 
童謡『あめふり』

https://youtu.be/O6xq62tP9HY
童謡『あめふり』You Tubeリンク先

 
雨雨降れ降れ、母さんがー、蛇の目でお迎え嬉しいなーときて、ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ らんらんらんなのだ。
これこそが誰しもが知ってる名曲だよな。にしても、だいぶネタ切れになってきたな(笑)
でも、明るい曲だから気分は少しは上がったよ。

二番を歌おうと思ったが、全然出てけえへん。
意外と、みんなも知らんのとちゃうかあ?
仕方がないので、三回続けて歌ってやった。

 
ドラマ挿入曲『子連れ狼のテーマ』

しとしとぴっちゃん しとぴっちゃん
しと~ぴ~っちゃんという秀逸なフレーズが耳に残る。で、哀しく冷たい雨すだれという言葉も情感があって良い。

https://youtu.be/fE7SspUv0Yc
橋幸夫『子連れ狼』You Tubeリンク先

 
ついに、こんなもんまで引っ張ってきただすか(笑)。
昔の時代劇『子連れ狼』のテーマ曲みたいなヤツだよね。
そろそろ、ホンマにネタ切れじゃ(`ロ´;)

ならば、洋楽なんてどうだ❓

 
BJ・トーマス『雨にぬれても』

https://youtu.be/mFvqHri0SZI
BJトーマス『雨にぬれても』You Tubeリンク先

 
Raindrops are falling on my head…から入るこの曲は、タイトルは知らなくとも誰もが聞いたことがあるだろう。
もちろん英詞は完璧に歌えてなくて、一部は鼻歌。
軽快なメロディーで歌詞の内容も前向きだから、ちょっと気持ちが上がる。
これって、たしか名画『明日に向かって撃て』で流れてた曲だよな。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビは最高でした。

 
ジーン・ケリー『雨に唄えば』

https://youtu.be/edvN1DfRTZI
ジーンケリー『雨に唄えば』You Tubeリンク先

 
🎵ジャ、スィーギンザレイン(just singing in the rain)、バン、バーン(`Д´)ノ❗❗
ジャ、スィーギンザレイン、バン、バーン(
`Д´)ノ❗❗
あかん…。これは傘で物をバンバンにドツクという癖があったわ。それで何本の傘をブッ壊してきたことか。

この曲は名作ミュージカル『雨に唄えば』の名シーンで歌われる曲として有名だね。軽やかな曲調で歌詞も前向きだから、コレも気分が少し跳ねる。おーし、徐々に元気出てきたぞー。

 
欧陽菲菲『雨の御堂筋』

https://youtu.be/3jrBS9DLXoI
欧陽菲菲『雨の御堂筋』You Tubeリンク先

 
アップテンポで、何か乗ってきたねぇー\(^o^)/
気持ちもピッタリだし、フルコーラスで歌ってもうたわ。
よし、もっと気持ち作っていこ。
で、ノリノリで替え歌『雨の白骨温泉』まで歌ってやったワイ。著作権の関係で、歌詞は載せれないけどさ。
このままいくと、この心悩ます夜の雨の中、出ていくしかあるまい。そして貴方はいずこと、ムラサキの影を求めて一人ぼっちで泣きながら探し回るのさ。

 
THE MODS『激しい雨が』

https://youtu.be/kJ_voZJNfFA
THE MODS『激しい雨が』You Tubeリンク先

 
(ノ`Д´)ノおりゃー、気合いも入ってキタ━━(゚∀゚)━━❗❗
たとえ激しい雨が俺を洗おうとも、激しいビートが俺を奮い立たせる。そう、何もかもが変わり始める筈だ。

 
RCサクセション『雨上がりの夜空に』

https://youtu.be/yqPzwSEu8_0
RCサクセション『雨上がりの夜空に』You Tubeリンク先

 
いよいよ、この雨にやられてアタマいかれちまったぜ。フルコーラスで歌ってからの替え歌じゃい(*`Д´)ノ❗❗。フルパワーで『雨上がりの森たちに』を熱唱。勿論、著作権の関係で歌詞は載せれないけどさ。

(^3^♪よーし、元気出たぞー。
雨よ、どうぞ勝手に降ってくれ。もはや雨が降ろうが降るまいが関係ない。こんな夜だからってムラサキが採れないなんて許せない。こんな夜だからってネットが振れないなんて耐えられない。
目を閉じる。雨上がりの星降る夜空に、輝くパープルバンドが閃めく。そして同時に、白き羽裏を見せて悠然と羽ばたく姿を想い浮かべる。よっしゃ、エンジンはギンギンだぜ。いつものようにキメて、シバキ倒そうぜ。

半ばヤケクソで外を覗いて見る。
いつのまにか雨は上がっているようだった。
時刻は既に10時過ぎになっている。長かったが、一人歌謡祭のおかげで随分と時間がつぶせたよ。
にしても、オデって、やってる事がバカだなあ( ̄∇ ̄*)ゞ

準備をして外に出る。
すっかり夜は更けている。闇は濃く、静か過ぎるくらいに静かだ。そして不気味だ。武者震いする。

実際には、完全に雨は止んでいるわけではなくて、細かい霧雨が降っていた。
気にならないではないが、この先また雨が強くなるとも限らない。少ないチャンスでもヤルっきゃないのだ。それに少し雨が降っているくらいの方が、かえって蛾の活動が活性化するとも聞いたことがある。前向きに捉えよう。全ての舞台装置は、劇的フィナーレのお膳立てだと思えばいい。

さあ、ここからが本番だ。全身に力をみなぎらせ、頭の中で、プリンスの『パープルレイン』を流しながら、ゆっくりと戦地へと赴く。

 
https://youtu.be/DHRyPjXeKZ4
プリンス『パープルレイン』You Tubeリンク先

 
辺りから雨上がりの靄が煙のように立ち昇っている。それが脳内で紫色のスモークの幻影と化す。まるで自分がステージに向かうミュージシャンのように思えてくる。全てがスローモーションになる。

今回は車ではないので、昨年みたいにトラップを2ヶ所に分けて仕掛けると云うワケにはいかない。去年採れた場所付近に一点集中、其処に全てを賭けることにした。

鬱憤を晴らすかのように、\(◎o◎)/ウキャキャキャー。ここぞとばかりに、霧吹で狂ったように糖蜜を撒き散らしまくる。
さあ準備万端、ステージは整った。あとは飛んで来ることを祈るのみ。そして、再び己に向かって気合を注入する。去年みたいに、もし採れなければ虫捕りなんか一生やめたらぁー宣言まではしないものの、このままおめおめと帰るワケにはいかない。結果を出して、気持ち良く今期の最終戦を終えようではないか。

暫くして、何かカトカラらしきものが来た。
瞬時に心を戦闘モードにシフトする。

(# ̄З ̄)ケッ、オオシロかよ。
と思うが、真剣に採りにいく。大事な場面でミスしないためにも、ウォーミングアップは必要だろう。

でも、結構敏感で、近づく前に逃げられた。
(  ̄皿 ̄)クソ忌々しい。機嫌の悪いオッチャンをナメんなよ。

(ノ ̄皿 ̄)ノうりゃ❗、暫くして戻って来たところを空中で鮮やかにシバいてやったワイ。
(・o・)あっ、でもこの採集方法では、特殊過ぎて練習にはならんわ。

 
【オオシロシタバ】

 
ボロッボロッやないけー(´д`|||)
去年よか2週間も早い来訪なのに、それよりもボロとは、どうゆうこっちゃねん❓
まあいい。何も来んよりかはマシだ。帝王の露払いとでも考えよう。

その後もポツポツとオオシロが飛んで来た。しかしボロばっか。闇夜で絶叫しそうになる心を必死に抱き止める。

時間は無情にも刻一刻と削り取られてゆく。
夜気が冷たくなってきた。時計に目をやる。針は、いつの間にか午前0時を指し示していた。
何も考えるな。集中力を保て。五感を研ぎ澄ませよ。心が病めば、採れるものも採れなくなる。

午前1時。
顔が懊悩で歪んできているのが自分でも解る。それはきっと、醜い有様でベッタリと顔面に貼り付いているに違いない。他人様(ひとさま)には、とても見せられないような顔だろう。

午前1時半過ぎ。
もう何度、期待を膨らませて懐中電灯で樹幹を照らしただろう。時間の感覚さえも失われつつある。半分諦めの体(てい)で、惰性で何気に遠くから木を照らす。

 
(⑉⊙ȏ⊙)いるっ‼️‼️

 
距離約20m。闇を切り取る光の束の先に、微かに青い下翅が見えた。
慌てて懐中電灯のスイッチを一旦切る。去年は懐中電灯の光で照らしただけで逃げたことを思い出したのだ。奴の敏感さは半端ねぇと心に刻まれているのだ。
そのまま後ずさりして、急いでテントにデカ毒瓶を取りにゆく。この日のために、巨大なムラサキシタバを確実に取り込もうと用意したものだ。けど、ポケットに入らないのでテントに置いていたのである。
その刹那にも既に逃げているかもしれないと、気が気でない。半ば錯乱状態で毒瓶を引っ掴む。
そしてヘッドライトを点け、赤外線モードにする。赤外線ならば女王を刺激しないと考えたのだ。大丈夫、冷静だ。

慎重を期して、懐中電灯を直接当てないように、遠めから中心をズラして照らす。

(◠‿・)—☆よっしゃ、逃げてない。まだいる❗
網を構え、そろりそろりと距離を詰めてゆく。

距離15m。
❤️❤️❤️ドクン、ドクン。

距離10m。
❤️❤️❤️❤️❤️❤️❤️ドクン、ドクン、ドクン。

距離10mを切った。鼓動が急に高鳴る。
💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……。

距離5m。
💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕
😱ヤッベー、ドキドキが止まらんくなる❗

距離2m。
去年採った木と全く同じ木だ。しかも止まっている位置も全く同じの地上から1.5mくらいだ。一瞬、デジャヴ(既視感)の反転なのか、現実なのかが解らなくなる。パラレルワールド❓時空間が歪んでいるのかもしれない。
何が何だかワカンなくなってきて、さらに心臓を脈打つスピードが倍加する。
💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💕💕💕💕💕💕💕💕
リズムはバクバクのデスメタルやんけ。口から心臓が迫り出しそうだ。

(@_@)どうする⁉️、(ノ ̄皿 ̄)ノどうする⁉️
このまま木の幹を💥バチコーン叩くか❓
それとも網を下から持っていき、下をコツンと小さく叩いて、驚いて飛んだ瞬間に一閃するか迷った。
にしても、赤外線ライトは暗い。ちょっとでも視界から外れれば、闇に紛れて見失うのは必定だ。今日は小太郎くんが後ろでフォローしくれているワケではない。そう、サポートは無いのだ。頼れるのは己の力のみだ。
もしもハズしたら…。最悪のシナリオを想像して、恐怖が心の襞(ひだ)を切れ味鋭く擦過する。
しかし、迷っているヒマはない。逡巡している間に逃げられでもしたら、その場で首カッ切って死ぬしかない。
ならば死なばもろとも。意を決して懐中電灯をいったん下に向けて点けてから、静かに口に咥えた。
いなや一歩、二歩、軽やかなステップで前へと踏み出した。と同時に、止まっている女王のすぐ下を網先で突っついた。

🤯(⑉⊙ȏ⊙)飛んだっ‼️
 
リアクション、早っ(@_@)❗❗
だが、体は瞬時に反応していた。

嵐陰流奥義 秘技💜紫返し💥‼️

(ノ ̄皿 ̄)ノ だありゃあ~❗

👹鬼神の如く中空を下から斜め左上へと切り裂く。
 
振り切り、すかさず網先を捻る。
(゜o゜;手応えは…。
あったような気がする。
でも、本当のところはわからない。
もしかしたら、中を見れば木の葉か何かに化けているやもしれぬ。こんな山奥の、しかも深夜の丑三つ時だ。この世の者ならざる闇の支配者に幻覚を見させられているかもしれない。

恐る恐る、中を見る。

 
(ノ≧∇≦)ノ しゃあー‼️‼️

 
そこには、紛れもない紫の女王がいた。
(☆▽☆)カッケー‼️ 全身の血が逆流する。
(´ω`)やったぜ。何とか首の皮一枚で仕留められた…。

しかし、毒瓶にブチ込むまでは、まだ勝負の行方はワカラナイ。
😱ヒッ、😱ヒッ、😱ヒッ、お願いだから暴れないでね、暴れちゃダメよー。心が焦りでワヤクチャになる中、素早く網の中に毒瓶をブッ込み、電光石火で中に追い込む。

毒が回って動きが止まったところで、念のためにアンモニアを注射を射ち、トドメをさす。これで、突然蘇生することもないだろう。

 

 
この目を見張る大きさ。そして上品な前翅の柄とわずかに覗く紫の帯。幻ではない。どう見てもムラサキシタバ様だ。

安堵して、手のひらに乗せる。

 

 
デカイ。ずっしり感がオオシロなんかとはケタ違いだ。

 

 
この神々しき青紫色。ぴゃあ〜\(☆▽☆)/
俺は今、星 飛雄馬ばりに猛烈に感動している༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽

一応、フラッシュを焚いても撮る。

 

 
w(°o°)wあちゃー。
素早く毒瓶に放り込んで〆た筈なのに、背中が落ち武者ハゲちょろけになっとるぅー(༎ຶ ෴ ༎ຶ)

 

 
(-_-;)やっちまったな…。
思いきし高速で網を振ったせいなのかなあ❓
まっ、いっか…。
気を取り直して、裏面写真も撮っとこっと。

 

 
あっ、この腹先の形からすると、♂だね。
去年のは♀だったから、これで一応雌雄が揃ったことになる。何とか最低限の結果は残せたってワケだ。地獄の底から這い戻ってこれたことに心底ホッとする。

女王を三角紙に収めて、腕時計に目をやる。
針は午前1時45分を指していた。

長く厳しい戦いは終わり、ここに円は閉じた。
立ち上がると、再び頭の中で「パープルレイン」のイントロが鳴り始めた。

 
                         つづく

 
実を云うと、ラストには更に以下のような文章が続いていた。

「勝利者だけに許される満ち足りた感じで、煙草に火を点ける。
大きく煙を吸い込み、天に向かってゆっくりと吐き出す。
その煙が風にふわりと揺れ、すうーっと流されていった。
煙が去った夜空には、いつしか星が瞬いていた。
今日は間違いなく晴れるだろうと思った。」

でも、記事のアップ直前に削った。
何かカッコつけ過ぎがシツコイかなと思ったのだ。

この続きの話も少し書いておこう。
その後、なぜだかピタリとカトカラたちの飛来は止まり、オオシロさえも飛んで来なくなった。
と云うワケで、午前2時半には諦めてテントに戻り、熊の存在も忘れて即💤爆睡した。

一応、この時に採集した個体の展翅画像を添付しておきます。

 

 
カトカラ2年生の終わりともなると、流石に上達してますなあ。
これから先は、この翅と触角のバランスでいこうと思う。

 朝方、またえっちらおっちら白骨温泉まで歩いて下り、念願の白濁温泉にも入ることができた。

 
(白骨温泉公共野天風呂)

 
3年間も閉鎖されていたそうだが、この春に漸く再開されたという。

 


 
 
一番乗りだったから、ワシの独り占め。
湯舟から見る風景は、朝の光にキラキラしてた。
りら〜っくす。(´ω`)はあ〜、堪りまへんなあ。
何か知らんが「登別カルルス、ブチ込んでようー。」と言ってしまう。昔はよく、入浴剤の「登別カルルス」をブチ込んで風呂に入ってたのだ。で、毎回湯に浸かる度にそれ言ってた。謂わば、当時の俺的リラックスワードだったのだ。

 

 
ここの温泉玉子がバカみたいに旨かった。
食べろと言われれば、10個くらいは食える自信がある。あー、もう1回食いてぇー。

でもって、その日のうちに帰阪した。へとへとだったと云うのもあるが、露天風呂に入って何か完結した感があったからだ。それに明後日に用事があったしさ。
でもあろうことか、その用事が帰ったらドタキャンになった。
石塚(勝己)さんからのライトトラップのお誘いをお断りしてまで帰ったのに、ガックリ😔やったわ。迷わずに、石塚さんとこに行っときゃ良かったよ。お誘いのライトトラップの日まで、この日を含めて2日あったワケだから、もっとムラサキも採れただろうし、エゾベニを狙うこともできた筈だ。
まあ、今さら後悔したところで、どうにもならないんだけどさ。

 
追伸
今回は問題作にして、野心作でんなあ(笑)。
雨の歌のオンパレードだなんて、虫関係のブログでは有り得ない展開だ。でも、それでいいのでござる。別に虫の事だけを書きたいから文章を書いているワケではないのだ。
参考までに言っとくと、最初のタイトルは『深山幽谷 爆裂💥雨の歌謡祭』だった。さすがにそれだとテーマからハズレてるし、フザけ過ぎだと思って今のタイトルに変えた。

えーと、次回の解説編にて、いよいよこの連載も完結です。
解説編は調べ事が多いし、毎回のように謎にカラめ取られて迷宮を彷徨うことになるから、何だか気が重いなあ。
まあ、最終回なんだから、何とか頑張って書くけどさ。

〈追伸の追伸〉
この文章を書いた約二年後の2022年、問題作がホントに問題作になってしまった。サーバーから歌詞が著作権法に触れるとの事でクレームがきた。

「該当記事における楽曲の歌詞箇所と解釈等の関係において、歌詞に対して、歌詞の説明・要約・紹介としての記述では主従関係の要件を満たしていない為、著作権法第32条1項の規定による利用には該当せず、現状のままではご利用いただく事ができません。
また、冒頭に歌詞を全文掲載する利用は、同規定の「公正な慣行、正当な範囲内」に収まるものではありません。歌詞の一部であっても、該当楽曲と判断できるものに関してはご利用いただくことができません。」

難解な文章で、頭の悪いアッシにはチンプンカンプンだが、自分なりに解釈して、肝の部分だけを残して大幅に歌詞部分を削った。全体の文章のバランスはズタズタになったけど、致し方あるまい。ゆえに気になる人は歌詞とメロディーを探して、頭の中で雰囲気を復元して下さいね。
 と一度は書いたものの、それでもクレームが来そうだ。なので、いっその事、歌詞を全部削ってリンクを貼り付けてやった。ついでに大幅加筆もした。おかげで、かなり時間が掛かったが、コッチの方が返って全体的には良くなったかも。むしろクレームに感謝かもしんないね。

          2023.1.3 極寒の公園にて

(追伸の追伸の追伸)
それでも許可が出なくて、四日後に更に書き直した。
まっ、お陰で更に文章は良くなったけどね。コレで通る事を切に祈ろう。