Euthalia patala パタライナズマ(生態編)

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パタライナズマに関して二回に分けて書くつもりだったのだが、後編の最後で力尽きてしまった。 と云うワケで、今更ながらの生態編。

とは言っても、そこそこ珍蝶とされる蝶だから百や二百も採った経験はない。であるからして、あくまでもアチキ個人の私見として読んでもらいたい。

Euthalia patala パタライナズマに初めて出会ったのはラオス北部のウドムサイだった。

でも実を言うと、当時はその存在さえも知らなかった。珍品ビヤッコイナズマを探しに行って、たまたまパタラが採れたのだった。

だから最初に採れた時は、てっきりビヤッコイナズマだとばかり思ってた。でも何か変だなあとは思ってたんだよね。
部屋に帰って、ビヤッコの画像と見比べてみたら、完全なる別種だった。でも、数々の珍蝶をお持ちの師匠の標本箱でも見た記憶がない蝶だった。ゆえに当然の如く名前など分かるべくもなかった。
で、日本に帰ってから調べてみて、ようやくパタライナズマという名の蝶だと判った。
滝の横からスウーッと降りてきて、地面に羽を広げてベタッと止まる。飛来の目的の多くは吸水のようだが、ただ単に止まる場合もあるみたい。静止時間は他のユータリア(イナズマチョウ)属のチョウと同じでかなり短い。そして、この属の生態の特徴よろしく極めて敏感でもある。抜き足差し足で近づいても、大概は気づかれて飛んで行けれてしまう。多くは数メートル、十数メートル先にまた止まるが、それも2、3度続けると消え去ってしまう。実に忌々しい。

飛来時間は主に朝夕の二回。
午前9時前後から飛来し、11時前には見かけなくなる。基本的に昼間の暑い時間帯には姿を見掛けない。再び姿を現すのは早くて午後2時半辺りから。多くは3時から4時の間だった。

勿論、イナズマチョウの仲間であるからして、基本的に飛ぶのは速い。あまり羽ばたかず、一直線に飛ぶと云った印象だ。飛ぶ高さは、吸水に飛来した時は腰から下の場合が多い。飛び去る時も同じ高さだ。ぴゆーって感じで森の奥へと消えてゆく。

ただ、もののブログによると、普段は20~30m上空の梢を飛んでいて、時折地面に降りてくるらしい。
20、30m❓ホンマかいな❓いくらなんでも高過ぎやしないか❓(|| ゜Д゜)テングアゲハかよ⁉
でも、そんな高い所を飛んでいるのを見た事がない。
経験上、俄かに信じがたい。大概は腰から下で、地面スレスレを飛ぶ事も多い。

いや待てよ。台湾のタカサゴイチモンジやスギタニイチモンジは、高い所を飛んでいるのを何度か見かけた事がある。特に♂なんかはそれなりの高さのところでテリトリーを張っていた。とはいっても、せいぜい5、6mだけど…。
しかし、パタラがテリトリーを張っているのを一度も見た事がない。そもそもこの属(Limbusa亜属)のチョウって、テリトリーを張るのが普通なのかなあ❓…。考えてみれば、それすら知らんぞ。

ハッΣ( ̄ロ ̄ )❗、ここで思い出した。
タイのチェンマイでは地面に止まってたのが、驚いて木の上に飛んでったわ。

その時の個体がコレ。

獣糞に来ていたものだ。
バイクで林道を走っていたので、気づかずに驚かせてしまい、ビックリして飛んでったんだよね。
瞬間、チラリと薄緑色の裏が見えたし、大きさからいっても直感的にパタライナズマではないかと思った。ただ、そんな高い所を飛んでいるのを見た事がなかったので、絶対的な確信は持てなかった。
この辺の詳しい事はアメブロの採集記『翡翠の女王』を読んで下され。

捕虫網の円光 番外編『翡翠の女王』

獣糞が出たついでに誘因される物質も書いておこう。
獣糞に来たのを見たのは、この一回だけだった。
ベラカン(海老の発酵ペースト=調味料)は効くのかどうかよく判んない。撒いた小便と共に地面に擦り付けたからだ。だから寄ってきても、どちらに誘因されて訪れたのかは判断が難しいところだ。
いや、待てよ。特にストロー(口吻)をベラカンにつけていたという印象は無いから、小便の方が効果があったのかもしれない。
いやいや、待てよ。単に普通の水を吸水に来ただけなのかもしれん。小便にもそんなに執着心があるようには見えなかった。

フルーツトラップにも、やって来たのは一回だけだった(まあ、ワテのトラップがヘタレなだけかもしんないけどさ…)。
吸水に飛んでくるコースの途中に設置したけれど、時折興味を示すくらいで、大概は無視して一直線に吸水地点に飛んでくる。
とはいえ、タカサゴイチモンジやスギタニイチモンジはトラップにはよく来てくれたから、フルーツの素材や発酵状態にも因るのだろう。
因みに見てはいないが、多分樹液にも訪れる筈だ。

発生期はラオスでは4月と9月の少なくとも年2化とされるが、タイでは2月の下旬から現れ、3月に多く、4月まで見られるという。調べた限りだと、タイでは年1化で9月には見られないようだ。ラオスで会ったガイドのカンブンさんは、ラオスでも基本的には年1化なんじゃないかとおっしやっていた。その辺の事は自分は9月にラオスにもタイにも行った事がないので、よくわからない。でも、密かに年1化が基本ではないかと思っている。
根拠は台湾にいる同系のタカサゴイチモンジやスギタニイチモンジ、ホリシャイチモンジが年1化だからだ。
同じユータリア属でもベニボシイナズマなどは熱帯由来だが、緑色系イナズマチョウのLimbusa亜属の分布はヒマラヤからインドシナ半島北部、中国、台湾にかけてだ。つまり、より冷涼な地域に分布圏があり、標高も800m以上に棲む事からそう思ったのだ。多くは年1化で、一部少数が9月にも発生するとは考えられないだろうか?或いは年1化だが、だらだら発生とは考えられないだろうか?
そういえば、タカサゴイチモンジなんかは基本的に6、7月の発生だが、一部では5月から発生しているようだ。反対に9月に台湾に行った的場ちゃんからは、「9月(半ば?)でも結構いましたよ」と聞いている。意外と寿命が長い蝶なのかもしれない。それを2化めだと勘違いしたと云う事はないのかね?

そういえば、最初に採ったのは4月の初めだったけど、2年後の5月に同じ場所に行った時もわりかし鮮度の良いものが採れた。逆に4月の頭でもボロボロの個体がいた。(-。-;)何だかワケわかんなくなってきたぞ。

改めて標本を見る。
前から疑問に思ってたんだけど、パタライナズマには上翅の白帯の下に白点のあるタイプと無いタイプがいるんだよなあ…。

(白点があるタイプ)

(白点が無いタイプ)

あれれー(-。-;)、無いタイプと有るタイプを分けて並べたら、有るタイプの方が全体的に小振りだぞ。
気のせいか、色もやや薄い。

(左が白点の無いタイプで右が白点の有るタイプです)

もしかして、別種だったりして…(^o^;)
蝶には見た目がソックリでも互いに別種だということはよくあるのだ。まあ、交尾器とか調べないとワカンナイけどさ…。
でもプロじゃねえから、やり方もワカランし、たとえわかったとしても、何をどう調べればいいのかがワカンナイ。
元々、細かい事は苦手じゃないけど、性格的には向いていないのだ。多分、同種だと云う事にして忘れよう。

最後は幼生期の生活史だけど、調べた限りではパタライナズマの幼生期はまだ解明されていないようだ。
まあ、どうせ食餌植物はブナ科の常緑のシイ、カシ、カシワ類かトウダイグサ科の樹木だろう。
ビヤッコイナズマの食樹はブナ科マテバシイ属のシリブカガシだし、タカサゴイチモンジやスギタニイチモンジなんかもブナ科のナンバンガシやトウダイグサ科のクスノハガシワだからだ。
タカサゴイチモンジやスギタニイチモンジは、与えればアラカシやアカガシでも良好に育つらしい。この亜属は意外と食性が広いのかもしれない。
因みに幼虫には放射線状のゲジゲシがあり、いわゆるイナズマチョウ型だ。あまりにも邪悪な姿なので、画像は添付しない。想像しただけでもブルッとくる。つけ加えると、ユータリア属の幼虫には実際毒がある奴も多いようだ。おぞましい奴の大方は「アンタら、食うたら死ぬで😱」とアピールしていらっしゃるのである。

パタライナズマの分布は局所的だし、産地でも個体数が少ないと言われている。おまけに飛ぶのは速いし、高い。そして敏感ときているのだから、採集や撮影の難易度は結構高い蝶だと思う。
まだ会った事のない人は、チャレンジしがいのある蝶だと思いますよ(^o^)

おしまい

追伸
丁度、パタラには良い季節ですなあ…。キャニバルダスオオイナズマもそろそろ適期なんじゃねえか…。

そういえば俺、空中でパタラをシバいたった事があるわ。正面から飛んできたのを咄嗟に電光石火でシバキ倒したのだ。あれは、気持ち良かったなあ。

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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