和風 鱧の子パスタ

 
だいぶ前に鱧の子のパスタのことを書いたが、今回は同じハモの子パスタでも、ちと違う。
いつもならニンニクと鷹の爪を使ったペペロンチーノ風だが、和風で攻めてみた。
とはいえ、最初から和風にしようと思ったワケではない。鱧の子をオリーブオイルで炒めている時に、突然そうしようと思ったのだ。
でも特にプランがあったワケではない。取り敢えず、そこに酒と顆粒の昆布だしを加え、塩て味付けしてみた。
しかし、何かパンチがない。
そこで、山から採ってきた青山椒を包丁で細かく刻んで放り込み、パスタの煮汁を足してみた。

山椒の辛味と痺れで引き締まって、味は良くなった。
けれどもパスタを入れて混ぜて味見したら、何かもの足りない。味に深みがないのである。
取り敢えず、パスタの煮汁とオリーブオイルを少しずつ足して乳化させる。
ここで漸く気づく。和といえば醤油じゃないか。基本中の基本の調味料を忘れておったよ。
「😠ぼおーっと、生きてンじゃねぇよ❗」
つい、一人ツッコミを入れてしまう。
しかれども、薄口醤油の瓶を持ったところで手が止まり、そのまま片手に醤油を持って暫し仁王立ち。何か、それは正解じゃないような気がした。

(-ω☆)✨キラリンコ、醤油はやめじゃ❗
そのままパスタを器に盛り、ベランダで育てている木の芽を乗っける。

\(^o^)/🎉チャッチャラーン🎊
ここで伝家の宝刀を繰り出す。

 

 
大阪が誇る高級塩昆布『まつのはこんぶ』様のお通りだい❗

 

 
誰に進呈しても泣くほど喜ばれる大阪は新町の「花錦戸」の塩昆布じゃよ。名前は松の葉のような形からだ。
細かく刻んだ昆布をスッポンの出汁で炊きあげたもので、そこに仄かな山椒の風味が加わり、絶品。上品で深い味わいが口いっぱいに広がり至福の極みなのじゃよ。

 

 
 
基本は御飯のお供だが、酒のつまみにもなると云う逸品でおま。
そやつをだな、ようするに醤油の替わりにパスタの上に乗っけちゃう作戦なのだ。

 

 
おっと、木の芽を散らしておこう。

 

 
美味いっ❗❗
やっぱ、まつのは昆布は最強だな。ケチらず、更に増量じゃ❗
何てったって、鱧の子は結構な量で200円台だったもんね。ふんだんに松の葉昆布を入れても、コスパは良いもんね。

とはいえ、大量に作り過ぎて残した。無理して食うことはないと思ったのである。たぶん冷えても美味いんじゃないかな。

 

 
思ったとおり、冷えても美味い。
むしろ温かいのよか美味いんじゃないかとさえ思えるくらいだ。

パスタを食い終わっても鱧の子が残ったので、ふりかけ代わりに御飯に乗っけて食う。

 

 
(☆▽☆)メチャメチャ美味いやんけー。
これが一番美味いかもしれへん。

                       おしまい

 

アンタにゃ、ガッカリだよ

 
生駒山地・枚岡で夜間に糖蜜採集してたら、見慣れぬ蛾がやって来た。
カトカラ(註1)以外はフル無視なのだが、羽を開いて吸蜜する姿が綺麗だったので、つい採ってしまった。

 

 
でも名前がワカラン。蛾は種類数が多いので調べるのが億劫だ。と云うワケでFacebookに載っけたら、カッチャンから御回答があった。
「ホソオビアシブトクチバ」という名前なんだそうな。
珍しいのかな❓と思って調べたら、ソッコーで┐(´(エ)`)┌ガックリ。バラの害虫で、園芸する人達にメッチャ嫌われとるやないけー。
という事は…とは思ったが、調べてみるとヤッパのド普通種であった。ネットで各画像を見てたら、段々見たことがあるような気がしてきた。羽を閉じた三角形のは見覚えあるかも。きっと羽を開いて吸蜜してたから、見たことない奴だと思ったんだね。その印象が強過ぎて、冒頭の三角形の画像でも気づかんかったのねんのねん。

よほど捨てたろかとも思ったが、それじゃ彼奴も浮かばれんだろう。そう思って展翅することにした。

 
【ホソオビアシブトクチバ Parallelia arctotaenia 】

 
羽を広げると、やっぱスタイリッシュでカッケーじゃんか。
珍しいか珍しくないかだけで評価するのもどうかとは思うが、惜しい。もし珍だったとしたら、きっと💗ラブリィーになってたに違いないのにね。

ゲッw(°o°)w、でも裏見たらメチャ汚い。

 

 
ほぼ文章が出来上がったので、画像を纏めて消そうと思ったら、裏側の写真が出てきたのじゃよ。記憶から完全に消されてた。そういえば帰り間際に急いで撮ったわ。
ラブリィー発言は撤回です。やっぱりアンタにゃ、ガッカリだよ。

一応、種の解説をしとくっか…。

ヤガ科(Noctuidae) シタバガ亜科(Catocalinae)に属する開張38〜44ミリの小型の蛾である。
分布は本州、四国、九州、対馬、沖縄本島、石垣島。海外では台湾、インド、大平洋地域、オーストラリア。
日本だけでなく、海外でも何処にでもいるって感じだな。もう愛情、ゼロである。

成虫の出現期は、5〜10月。こんだけ長く見られるということは、年2回は発生するのかな❓まあ、今やどっちゃでもエエけど。

幼虫の食餌植物はバラ(バラ科)の他に、ウバメガシ(ブナ科)、サルトリイバラ(ユリ科)、トウゴマ(トウダイグサ科)なんかも食うそうだ。属レベルにとどまらず、科まで越えて餌にしとるのね。相変わらず、蛾類って食いもんに節操がない奴が多いニャアー。

レッドデータブックでは、茨城県が希少種に指定しているようだ。こんなもんまで希少種にするって、茨城県には虫がそんなにもおらんのかえ❓
あっ、つもりじゃなかったけど、結果、ディスってるな。でも、茨城県って、何が有名で珍しい奴っておったっけ❓
考えてもチャマダラセセリくらいしか頭に浮かばんよ。

 
                       おしまい

 
追伸
思い入れがないと、書くのは早いから楽ちんなのだ。蝶の事とカトカラの事は、そうはいかないけど。只今、マホロバキシタバについての原稿を書いてるけど、全然進まへんしぃ〜。

 
(註1)カトカラ
ヤガ科シタバガ亜科 シタバガ(Catocala)属の総称。
名前はギリシア語由来で、美しい下羽という意味。その名のとおり美しい下羽を持つものが多く、人気の高い蛾。現在、日本には32種が記録されている。その代表的なモノの画像をいくつか貼り付けておきましょう。

 
【ムラサキシタバ】

(2019年 9月 長野県松本市)

 
【ベニシタバ】

(2019年 9月 岐阜県高山市)

 
【カバフキシタバ】

(2020年 7月 兵庫県宝塚市)

 
【シロシタバ】

(2019年 8月 長野県大町市)

 
ここに並べたものは、上翅にもそれぞれ特徴があって美しい。
本ブログに「2018′ カトカラ元年」と「2019′ カトカラ二年生」というカトカラについて書かれた連載があります。よろしければ、ソチらも読んで下され。

 

自家製 激旨一夜干し

 
前回の黒豆の枝豆を茹でた汁が残った。勿体ないし、立て塩みたいなもんだろうから一夜干しを作る事にした。
問題は魚を何にするかだ。アジとかカマスが真っ先に浮かんだが、候補はまだまだある。ノドグロ、キンキの高級魚コンビにハタハタ、キンメダイ、連子鯛、甘鯛。魚じゃないけどイカも有りだよな。変わったところではエボ鯛とかウツボなんてのもあるしなあ…。でもウツボなんか、その辺のスーパーで生で売ってるワケないよね。えーい、ぐじゅぐじゅ考えても始まらない。取り敢えずスーパーに行ってから考えよーっと。

で、たまたま鮎が売っているのが目に入ったた。川魚なので全く頭になかったけど、それも選択肢と全然有りだわさ。鮎の名産地なんかでは、鮎の一夜干しを売ってるもんね。思い立ったが吉日。養殖物だけど値段は¥298と手頃だし買うことにした。

先ずは鮎を洗う。
(☉。☉)あっ❗、スイカの匂いがする。鮎って川の中石に付いた苔を食ってるから西瓜とかメロンとか胡瓜の香りがするって云うけど、養殖モンでもするのか❓…。じゃあ、養殖モンにも苔を食わしてのか❓ それって面倒クサくて大変なんじゃないの❓

取り敢えず腹開きにして内蔵を取り出す。鮎のワタは苦くて結構好きだから勿体ないような気もするが、内蔵付きの一夜干しなんて聞いたことがない。とてつもなく生臭そうだし、いくらアホなチャレンジャーのワイでも、そんな変態チックなものは作らへん。ゴミ箱にポーイ(ノ•̀ o •́ )ノ ~ ┻━┻

捨てたところで気づく。
そういえば鮎の内蔵で作った塩辛の「うるか」ってのがあったな…。アレって苦味があって、大人の塩辛って感じで旨いんだよな。日本酒の冷やがバシバシいける。だが、後の祭りと言わない。養殖モノなんて餌に何食わしてるかワカラン。そんな内蔵で作ったウルカなんて気持ち悪くて食えるワケあらへんがな。

何か干物の開き方があったような気がするが、適当に真ん中割りにする。してからにキッチンペーパーで水気を拭いてから黒豆の茹で汁にブッ込むのだが、ブチ込むすんでで手が止まる。その前に茹で汁を舐めてチェックせなアカンがな。どれくらいの塩分濃度なのか正確には分かっとらんのである。

(ー_ー)ふむふむ。ちょっとキツいような気もするが、塩加減はこんなもんだろ。鮎をブッ込み、浮かないように落とし蓋をして30分ほど漬けておく。

時刻は夕方。取り敢えず笊に乗せ、ベランダの風通しの良いところに置く。上からネットを掛けたいところだが、無いゆえにそのまんま放置。どうせ焼くのじゃ、蝿が卵を産もうがカマヘン、カマヘン。もしも「ザ・フライ」、恐怖の蝿男になったらなったでエエんやないの。それならそれで世のうら若き女性たちを死ぬほど怖がらせて、イタズラなんかしちゃうまでだ。ぷちゅー。血い吸うたろか。

午前1時くらいに思い出して、一旦ひっくり返す。
裏表、万遍なく風に当ててやった方がいいだろうと云うワケである。

で、お昼くらいには、こんな感じになっとった。

 

 
いい感じの乾き具合である。
やっぱり蝿に卵を産まれるのはヤだし、カラスに持ってかれるのもヤだ。取り込んで軽くラップして冷蔵庫に安置する。
それはそうと、最近は金バエとか肉バエとかのデカい蝿を見ないよね。それだけ世の中、衛生的になってんだろ。しかしハエもおらんような世界と云うのも不自然な気がする。世の中、清潔になり過ぎるのも果たしてどうかと思うよ。ゼッテー人間って、生物として弱くなってるよね。菌とかに対しても抵抗力はだいぶ弱まってんじゃねえか❓ 今や人間も養殖モンだらけかもな。

夜になった。
さあ、焼きましょ焼きましょ、💕ルンルンルン。
身が薄いので、弱火でジックリ焼くことにした。

じっくり焼いて完成。
ええ感じに焼き上がった。

 

 
裏と表で交互に盛り付けてみた。
でもって、気を張っての器は織部だぜ、この野郎。

(◍•ᴗ•◍❤まっこと美味いにゃあ〜。
奇跡的に塩加減が絶妙。火の入り具合も程好い。香ばしくて頭や骨までバリバリとイケる。
(@_@)駄目だあ〜。今夜は飲まないと決めていたのに、コレはとてつもなく酒を呼びまんがなあ〜。

取り敢えず、焼酎のロックだなあ。

 

 
白玉の
歯にしみとほる
夏の夜の
酒は静かに飲むべかりけり
 
                       おしまい

 
追伸
最後の歌は吉井勇の有名な作品を夏ヴァージョンにもじったものだ。もっと改変してオリジナリティーさを出そうかとも思ったが、優れた詩には、それさえ許さないところがある。素人では、おいそれと触れれない完璧なカタチで成立しているのである。
  
ネットでググると「かつての養殖は生の魚(イワシなど)をエサにすることが多かったため、「養殖アユはイワシの味がする」とか言われてたそうだ。しかし現在では、天然に近づけるため魚粉に海苔や緑藻類を配合し、品質は非常に向上しています。ただし良い香りはあまりしないようです」みたいな事か書いてあった。

 

(出展『三卯養魚場』)
 
 
何れにせよ、やっぱり鮎の基本は天然に限るって事かもな。
思うに養殖で天然に近い鮎を作る事よりも、いっそ別な振り幅でええんちゃうのん❗例えば、鮎はサケ科の魚だけど一年魚で通常は巨大化しないから、寧ろ肥え太らせて鮭的なものを作るとかの方が面白いんでねぇの❓ いわゆる三倍体とかってヤツとかさ。

 

枝付き黒枝豆

 
枝付きの黒豆が、特売で¥398で売っていた。
少し高いが、枝付きは普通の枝豆だって500円くらいはするから、ここは買いでしょう。

 

 
場所は丹波ではなく、和歌山産だすな。
ハサミで鞘の端の内側をカットしてゆく。切り取ったら反対側もカットする。こうしておけば、茹でた時に塩水が染み込み易くて見た目が美しいからだ。でも普段はそんな事はしない。面倒くさいもん。

それをビニール袋にブッ込み、粗塩を入れてモミモミする。表面の産毛を取るためだが、これも面倒なので普段はしない。けど今回は何たって枝付きの黒豆さんなのである。真面目にしまっせハカセタロー。

産毛が取れたらサッと水で洗い流し、水1リットルに塩30gくらい入れて沸騰させる。本当は40gくらいが妥当なのだろうが、塩がキツ過ぎたら暗黒宇宙のハカセタローになりかねないので弱めにした。ところで、さっきからナゼにハカセタローなのだ❓酒飲んで書いてるから、アタマがワいてるな。
えー、珍しく慎重なのは、料理は足し算は簡単だが、引き算は出来ないからである。薄かったら、塩ぶっかけて蓋してシャカシャカやればいいだけの事だかんね。ダイビングインストラクター時代に、サイパンの居酒屋で慎ちゃんが小鉢に小皿で蓋してよくシャカシャカやってたなあ。

コトコト10分程茹でて、笊にあける。
普通の枝豆だと5分くらいだが、豆がデカい黒豆だから長めに茹でた。水では締めない。ナゼかっつーと、豆の香りが飛ぶからである。旨みとかも洗い流しそうだし、それに何より折角絶妙に塩で味付けしたのに、もう1回味付けし直すなんて許せないじゃないか。
そのかわり色止めにはならないから、見た目は悪くなる。そこは致し方ないところではあるが、見た目よか味重視っしょ。

温かいうちに食う。

 

 
もちろんキンキンに冷えたビールを改めてスタンバイさせておる。黒枝豆を口に放り込んだら、すかさずビールで流し込む。
(•‿•)旨い。
旨いけど5鞘くらい食ったところで、ふと疑問に思う。
枝豆って冷やした方が旨いような気がするぞ。茹でたてホクホクが旨いというイメージに騙されてると云うか引っ張られてるだけなんじゃないか❓
全員、冷蔵庫に撤退、テッターイ❗

急遽、登板予定を早め、リリーフ陣を投入してゆく。

 

 
冷凍物のトロカツオ。いわゆる戻り鰹の冷凍さんね。
もちろん生の鰹よか味は落ちるが、最近は冷凍技術も進歩しているので、昔ほどガッカリすることは無くなってきてる。
因みに薬味は生姜よりもニンニク派。生のニンニクの香りと辛味がアクセントになってていいんだよね。

 

 
豚肉の青山椒煮。
豚肉に出汁と野外採取した青山椒を入れて、サッと煮た。
旨いねっ。山椒の香りが食欲をアップさせる。試合、つくってるねー。(◍•ᴗ•◍)❤エンジン全開だぜ、ベイベェー。

十分に冷えたところで、いよいよ再戦に臨む。

 

 
(ー_ー゛)うーむ。やはり枝豆は冷やしたヤツの方が旨い。
より香りもするような気がするし、味も馴染んでる。

 

 
翌日も残ってるのを食った。
色はどんどん悪くなるけど、味はどんどん良くなる。

そろそろ夏本番だね。

                    おしまい

 

闇の中の小さな幽玄

  
太古の森の中で、ひっそりとヒメハルゼミが羽化していた。

 

 
何という美しさであろう。
闇の中に浮かび上がる、その透き通るような美しさは幽玄で儚い。

 

 
何れも産卵管が長く伸びているからメスだね。
ここにいるとは知ってはいたが、肉眼で見るのは初めてだ。
見慣れたクマゼミやアブラゼミと比べて、大変小さい。まるで妖精だね。

妖精ならば、そっとしておこう。
それにそもそも、ここは採集禁止だしね。まあ、たとえそうじゃなくとも持って帰らないけどさ。蝶だけでも標本箱だらけなのだ。他の虫まで集め始めたら大変な事になる。
セミは好きなんだけどね。元々、少年の頃は「セミ採り名人」と言われてたしさ。何だか懐かしい。少年の頃の思い出が映像となって、頭の中を次々と流れてゆく。

羽が乾くと、こんな感じになる。

 


(出展 2点共『セミの図鑑 zikade.world.coocan.jp』)

 
ヒメハルゼミの事はあまり知らないので、ちょいとWikipediaで調べてみた。

ヒメハルゼミ(姫春蟬)
学名 Euterpnosia chibensis
カメムシ目(半翅目)・セミ科に分類されるセミの一種。
西日本各地の照葉樹林に生息し、集団で「合唱」することが知られる。他のセミは生息分布域が面であるのに対し、ヒメハルゼミは点で表される。
(・∀・)ん❗❓ どうゆう意味❓ようするに分布が極めて局所的って事か…。
自分の言葉に変換した方が良さそうだ。以下、要約しよう。

飛翔力があまり強くなく、分布を広げようとしない性格に加え、生息条件も限られるために稀少なセミである。
成虫の体長はオス24-28mm、メス21-25mm、翅端まで35mmほどで、ハルゼミと同じくらいの大きさである。

 
【ハルゼミ♂】

【同♀】

(出展『セミの家』)

 
えっ❓ハルゼミと同じ大きさなのに何でヒメハルゼミなの❓ 普通、昆虫の名前にヒメと冠される場合は、その仲間の中では小さいモノであることを指す。なのに、同じ大きさなのに、何でヒメ❓
まあいいや。掘り下げるとロクな事がなさそうなので、スルーしておこう。

外見はハルゼミに似るが、ハルゼミより体色が淡く、褐色がかっている。前翅の翅脈上に2つの斑点があり、さらにオスの腹部には小さな突起が左右に突き出る。頭部の幅は広いが、体は細長い。オスの腹部は共鳴室が発達しており、ほとんど空洞となっていて、外観も細長い。一方メスは腹部が短く、腹部の先端に細い産卵管が突出する。
それにしても産卵管が異様に長いよね。木のどっかのメチャメチャ奥に産卵すのかな❓

 
【分布】
基亜種ヒメハルゼミ E. c. chibensis は西日本の固有種で、新潟県・茨城県以西の本州・四国・九州・屋久島・奄美大島・徳之島に分布する。
学名の小種名 “chibensis” は「千葉の(に棲む)」の意である。地名に因んだ学名の場合は、後ろに「ensis」が付けられからね。
生息域はシイ、カシなどからなる丘陵地や山地の照葉樹林で、人の手が入っていない森林に集団で生息する。

 
【生態】
成虫は6月下旬頃から現れ、8月上旬頃まで見られる。
オスの鳴き声はアブラゼミに強弱をつけたようで「ギーオ、ギーオ…」「ウイーン、ウイーン…」などと表現され、集団で合唱する習性をもつ。1頭が鳴き始めると周囲のセミが次々と同調し、やがて生息域全体に広がる。同様に鳴き終わる時は次々と鳴き止んでゆく。局所的に生息するために鳴き声を聞く機会は少ないが、発生期に生息地の森林に踏み入ると「森の木々が鳴いている」とも表現される蝉時雨に見舞われる。特に夕方に連続してよく鳴く。
走光性が強く、成虫や羽化直前の幼虫は光に集まる。
セミに走行性があるのは知っていたが、へぇー、幼虫まで光に集まるのね。

 
【保全状況】
照葉樹林が開発で伐採されることにより生息地が各地で減少しているが、同時に各地での保護活動も盛んである。
分布の北限に近い3ヶ所の生息地が、国の天然記念物に指定されている。

茨城県笠間市  片庭ヒメハルゼミ発生地(1934年指定)
千葉県茂原市  鶴枝ヒメハルゼミ発生地(1941)
新潟県糸魚川市 能生ヒメハルゼミ発生地(1942)

他にも、神奈川県箱根湯本の早雲寺周辺=箱根町指定天然記念物,岐阜県揖斐郡谷汲村花長下神社天然記念物 =岐阜県指定天然記念物,愛知県蒲郡市相楽町=愛知県指定天然記念物など.福井県,鳥取県,山口県などで愛知県蒲郡市相楽町など自治体レベルで絶滅危惧種や天然記念物に指定している所が数多くある。

 
【亜種】
オキナワヒメハルゼミ(沖縄姫春蝉)
E. c. okinawana Ishihara, 1968
 

(出展『インセクトアイランド』)

 
ダイトウヒメハルゼミ(大東姫春蝉)
E. c. daitoensis Matsumura, 1917


(出展『生物多様性センター』)

 
南大東島・北大東島に分布する固有亜種。体長25-30mmで、基亜種よりやや大きい。海岸部のアダンやススキなどからなる群落に生息し、成虫は3月~4月(西海岸の産地では6月~7月)に発生する。基亜種とは多くの差異があり、隔離分布地で独自の種分化を遂げたと考えられている。また個体変異も著しく、色彩・模様の両極端な個体を並べると、とても同一亜種とは思えないほどである。海岸部の開発で生息地が減少しており、環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されている。南大東島では楽観はできないものの、比較的持ち直しつつある傾向が見られるが、北大東島では主な生息地に近年道路が造られ、種の存続が大いに危ぶまれている。

基亜種のヒメハルゼミとは随分と棲息環境が違うんだね。深い照葉樹林と海岸のアダンやススキとでは、棲む環境が天と地ほどに違う。大東島といえば絶海の孤島だ。昔々、何かの拍子に偶然に流れ着いたヒメハルゼミが、仕様がなしに島の環境に適応したんだろね。ガンバレ❗、ダイトウヒメハルゼミちゃんって感じだな。。
そういえばハマヤマトシジミを探しに南大東島に行った時に、いねえかなあと思ってたんだよね。でも2月だったから、まだ発生していなかった。大東島は面白かったから、また行きたいな。

他に同属種にイワサキヒメハルゼミがいる。

イワサキヒメハルゼミ(岩崎姫春蝉)
E. iwasakii (Matsumura, 1913)


(出展『インセクトアイランド』)

 
ヒメハルゼミの亜種ではなく別種とされる。体長19-28mmで、ヒメハルゼミよりも更に細長い体型をしている。石垣島・西表島・与那国島に分布し、成虫は4〜8月に発生する。種名は八重山諸島の自然を研究し功績を残した岩崎卓爾に対する献名である。

その他ヒメハルゼミ属のセミは東南アジア・中国・台湾にかけての熱帯・亜熱帯域に広く分布する。

                       おしまい

  

痺れ電気クラゲが地球の裏側で嗤う

 
何となく獅子唐が食べたくなった。
なんか獅子唐って夏って感じがするからかもしんない。

Σヽ(`д´;)ノ うおりゃあ〜〜〜〜❗
ブスッ❗、ブスッ❗ブスッブスッブスッブスッブスーッ❗
気分は殺人鬼。先ずは獅子唐をフォークでメッタ刺ししまくる。あんさん、ストレス溜まってまんなあ。
ヽ(`Д´#)ノジャカワシわーい❗こうしとったら獅子唐が弾けへんのじゃあ〜。おめぇ、弾いたろか。そのまま加熱調理すると中の空気が膨張して破裂する恐れがあるのじゃよ。このバカタレがぁー❗
深夜に一人二役で呟いているワシって、ちょっと変。いや、かなり変だ。これも大量アルコホル摂取の為せる業である。

傷だらけの青唐たちを油で炒める。
気分で山で採ってきた青山椒もブチ込む。ある程度炒まったところで醤油をチャッとかける。味付けはこれだけ。醤油の香りが立ったら出来上がり。早漏男もビックリのアッという間の完成なのだ。

 

 
食ってみて、Σ(゚Д゚)ドびっくり〜。
メッチャメッチャ辛いでやんの。いわゆる当たりってヤツだ。しかも1個だけじゃなく、全員だ。
考えてみれば、そもそも獅子唐は青唐辛子だもんね。それを品種改良して辛味を無くしたものが獅子唐なのだ。
しかも青山椒が結構入ってるので、メチャンコ痺れる。普通の青山椒よか痺れる気がするぞー。野性のモノゆえ、痺れ度が強いのかもしんない。コレって完全に本場の四川料理の域じゃないか。あまりの痺辛(しびから)度合いに笑けてきたよ。
(;´◦ω◦`;)ハァハァ。頭からドッと汗も出る。深夜に汗ダラダラでヘラヘラ笑ってるオジサンって、どう見ても可笑しいだろう。そんな自分を幽体離脱の如く画像で想像したら、また笑けてきた。

痺れ電気クラゲが地球の裏側で嗤う。
そんなフレーズが頭に浮かぶ。地球の裏側、ペルー辺りで痺れ電気クラゲがケタケタ嗤っている気がした。
あっ、考えてみれば、唐辛子の原産って南米だよね。その偶然の符号にまたヘラヘラ笑ってしまった。

今宵も酔っ払いの夜は更けてゆく。

                       おしまい

 
追伸
獅子唐について、チビッと解説しておく。
獅子唐の正式名称は「獅子唐辛子」。名前の由来は尻の部分がライオン(獅子)の顔に似ているかららしい。そんなん一片も思った事ないわ。どんだけ想像力、豊かやねん。
Wikipediaには、辛い獅子唐ができる理由が書いてあった。

「シシトウガラシは甘味種で通常はピーマンのように辛くない実を付ける。ところが時折、トウガラシのような辛い実(辛味果)を付けるものがある。
辛味果は比較するとツヤがなく、果形によじれがある、緑色が濃い、実が硬いなどの傾向があるが容易には区別できない。
辛味果の発生は、栽培時の土壌の乾燥、高温・乾燥条件。そして、このような条件下で発生しやすくなる単為結果が原因とされる。栽培中に水分ストレスがかかると辛くなる。
28℃恒温条件下で栽培された場合、辛味が強くなり、その種子数が少ないと報告されている事から種子の少ない果実と辛みの関係性が指摘されている。種子の少ないもの全てが辛くなる訳ではないが、辛い果実は概ね種子数が少ないという調査結果も報告されている。
他のトウガラシ品種との交雑によって辛くなると言われることもあるが、この説には裏付けが無く、またトウガラシの辛味成分を作る遺伝情報は劣性遺伝であるため、主要因になることは考えにくい。
10個の中に1個ほど辛いものが混ざっていることがあり、「食べるロシアンルーレット」等と言われるが、単為結果による辛みについては、通常のものに比べて種の数が少ないので、果実を触るなどして調べるとある程度判断することができる。品種改良により、辛い商品が市場に出ることはほとんど無い。」

(・∀・)へぇーである。

今回は突然、フィリップ・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」くらい長いタイトルを付けたくなった。とはいえ、吟味してタイトルを付けたワケではない。酔っ払いのノリだ。字数も負けてるしね。

其れはさておき、虫の話じゃない時は書くのが楽チンだね。この文章も30分ちょっとで書けた。翌日に手直ししたら、もう30分かかったけどさ。酔っ払ってると誤字脱字が多くなるし、「てにをは」もテキトーになるのさ。

 

2019’カトカラ2年生 其の2(5)

 
   vol.19 ウスイロキシタバ

   最終章『穢なきインタクタ』

 
第五章の最終章は、種の解説編である。
ここまでやっとこさ辿り着いたんだから、また迷宮に囚われてクソ長くならないことを祈ろう。

 
【ウスイロキシタバ ♂】

 
スマホの自動画像補正機能の関係で下翅の色の再現性が低い。実際に肉眼で見る新鮮な個体の下翅の色は3番目が一番近い。スマホを買い替えて機能がアップしたと喜んでたけど、まさかこんな落とし穴があるとはね。前の機種にはあった画像をシャープにする機能も見当たらないし、ピンボケ写真が増えそうだ。機能アップも考えもんだよ┐(´(エ)`)┌

 
【同♀】


  
 
前翅の地色は明るい灰白色。波状の内横線は前半が巾広い黒色で縁取られ、前縁中央に大きな黒斑がある。後翅の地色は淡い黄白色で、中央黒帯と外縁黒帯は繋がらない。以上の事から他のキシタバ類とは容易に区別できる。
ヤガの大家であった杉 繁郎氏(故人)は、このウスイロキシタバを論文(註1)の中で褒め称えており「極めて顕著で優美な蛾である。」と書いておられる。

 
【♂裏面】

 
【♀裏面】

 
何か画像が暗いから撮り直しするっぺよ。

 

 
裏面は他のキシタバ類と比べて全体的に黒帯が細く、地色はやや淡い黄色である。
近縁種と思われるヤクシマヒメキシタバ(以下ヤクヒメ)の裏面と相似するが、以下の点で容易に区別できる。

 
【ヤクシマヒメキシタバ Catocala tokui】

(出展『日本のCatocala』)

 
①ヤクヒメはウスイロと比して上翅の黒帯、特に中央の黒帯が太い。
②ウスイロは上翅の頭頂部(先端)に黄色い小紋が入るが、ヤクヒメには入らない。
③ヤクヒメは下翅中央の黒帯が外側に向かって膨らみ、丸く弧を描くような曲線を示す。また、その内側に「くの字形」の小紋が入る。
④ヤクヒメは下翅外側の黒帯が太い。一方、ウスイロはその黒帯が細く、外縁から離れて見える。また上部で帯が消失する。

 
【分類】
ヤガ科(Noctuidae)
シタバガ亜科(Catocalinae)
カトカラ(シタバガ)属(Catocala)

 
【学名】Catocala intacta intacta Leech, 1889

記載者は、Leech(リーチ(註2))。
冒頭の杉 繁郎氏の論文『ウスイロキシタバ(改称)の採集記録』に拠れば、1886年の7月にリーチ自身が滋賀県長浜で採った1頭により記載されたものらしい。ようは最初に日本で発見されたってワケだね。

属名の「Catocala」は、ギリシャ語のkato(下)とkalos(美しい)の2つの言葉を合わせた造語。つまり後翅が綺麗な蛾であることを表している。

小種名 intacta の語源は、頼みの綱である平嶋義宏氏の『蝶の学名―その語源と解説―』には載っていなかった。ゆえに仕方なく自分で探すことにした。

学名にはラテン語が使われることが多いので、おそらく由来はラテン語であろう。
ならば綴りの語尾が「a」で終わっていることから女性名詞かな? ラテン語の名詞には男性・女性・中性の3つの文法上の性がある。例えばラテン語で「バラ」を意味する「rosa」の(〜a・〜ア)なんかが女性名詞となる。
いや待てよ。誰か女性に献名されたとは考えられないだろうか? だとしたら、ややこしい事になる。ここは外堀から攻めずに正面突破、先に綴りだけでググッておこう。それで見つかればラッキーちょんちょん。話が早い。

調べてみると、有り難いことにラテン語から同じ綴りの言葉が見つかった。
意味は「完全なままの、失われた部分がない、手つかずの、完全なる、完璧な」とあった。意訳すると「穢(けがれ)のない」「純潔の」といったところか。
更に”intact”の語源を辿ってゆくと、”intactus”に行き着いた。in(否定)+tactus(touchに相当)=untouched という構造になっているらしい。多分これがラテン語の語源中の語源で「intacta」はそこから派生した言葉だろう。何れにせよ、おそらく学名の由来はここらへんに違いなかろう。

だとしたら、ツッコミどころ満載の学名じゃないか。
どこが完全、完璧で、穢れなき純潔な存在やねん❓と言いたいアナタ、気持ちは解らんでもない。
記載者であるリーチが自分で見つけたからって、それはジャッキアップし過ぎの贔屓(ひいき)の引き倒しだろう。図鑑の画像なんかを見ると、中途半端な下翅の色はお世辞にも美しいとは言えない。つまり完璧だとは言い難い。そう思う人も多いだろう。
でも上翅は文句なく美しいから、もしも下翅が鮮やかな黄色だったとしたら完璧かもしんない。或いは純白ならば、それこそ純潔の証、穢れなき完璧な存在だ。そう考える人だっているかもしんない。
とはいえ、たとえそうじゃなくとも冒頭で書いたように杉 繁郎氏は「極めて顕著で優美な蛾である。」と述べられておられる。御大、アンタもリーチと同じで贔屓の引き倒しかよ。と言いたくなる向きもあろう。アチキも自分て採る前なら、そう言っていたに違いない。
しかしである。そこまで贔屓の引き倒しじゃないけれど、自分で採った今はアッシも優美な蛾だと思う。標本と生きている新鮮な個体とでは、まるで印象が違うのだ。実物を見て、素直に(☆▽☆)カッケーと思った。スタイリッシュな上翅はもとより、下翅も渋い象牙色で、思ってたよりも遥かに美しいのだ。これについては「成虫の生態」の項で改めて書くつもりだ。

因みに、全然関係ないんだけど、巨大衝突で周惑星円盤を経てない衛星を「intact moon」と言うらしい。
んっ(・∀・)❗❓、何故にムーンなのだ❓
いかん、いかん。危うく早くも脱線するところであった。気になる人は自分で調べてみて下され。

 
【和名】ウスイロキシタバ

キシタバ(黄下羽)の名を冠するが、後翅は鮮やかな黄色ではなく、淡い黄白色なことから名付けられたのだろう。色の薄いキシタバってワケだね。
昔はチャイロシタバとかチャシタバなんて云う酷い名前が付けられていたそうだ。しかし故 杉 繁郎氏によって名称が変更された。その経緯を前述の論文から一部抜粋しよう。

「従来チャシタバ(三宅,動物学雑誌,15:384,1903),チャイロシタバ(松村,日本毘蟲大図鑑:775,1931)の和名があるが、余りに不適当でおそらく実物を見ずにつけられたものであろう。幸にまだ多く使われていないので私達はここに改めてこの和名を提唱しておく。」

そういえば論文には、こうも書いてあった。
「原記載の図はよくできているが、SEITZ(ザイツ)の図はきわめて出来が悪く、前翅は褐色に、後翅の地色は強い黄色に描かれていて、およそ実物とは似つかぬものとなっているから注意する必要かある。」
それって、Wikipediaに載ってたコレの事かなあ❓

 

(出展『Wikipedia』)

 
コレ見たら、確かにチャイロと付けたくもなるかもね。
ウスイロキシタバもどうかとは思うが、チャシタバとかチャイロシタバよりかは遥かにマシだ。
って云うか、そもそも「うすいろ」の使い方、間違ってないか❓ 薄色って、たぶん薄い紫っぽい色じゃなかったっけ❓

『コトバンク』には、次のような説明があった。

ー薄色(うすいろ)ー
浅紫うすむらさきともいう。薄く、ややくすんだ紫色のこと。平安時代には紫系統の色が好まれ、最高位は深紫こきむらさきであった。薄色はそれに次ぐ序列の色。

 

(出典『カラーセラピーランド』)

 
ほらね。生成り色とかオフホワイト系の色じゃないのだ。
それはさておき、もしこの淡い紫が下翅だったら、かなり優美だよね。たおやかな美しさだろうから、ムラサキシタバと人気をニ分していたかもしれない。でも「ウスイロシタバ」だと、語源を知らない人ばっかだろうから、ダサいと言われそうだ。
何で「フジイロシタバ」とちゃうねん(ノ`Д´)ノ彡┻━┻❗と怒る人もいるだろね。

それはさておき、古(いにしえ)の色の呼び名って良いよね。
古色を使って、もっと雅(みやび)で渋カッコイイ名前って付けれなかったのかなあ…。

参考までに書き添えておくと、カトカラ同好会のホームページにある『ギャラリー・カトカラ全集(註3)』には「キシタバと称されているが、後翅は黄色ではない。薄クリーム色で、ほとんど白色である。ウスキシロシタバというような和名の方が的を射ている。」と云う一文がある。
まあ、それも解らないワケでもないが、あまりピンと来ない。って云うか反論しちゃうと、採れたての新鮮な個体は標本よりも下翅が断然黄色っぽい。飛び古した個体や死んで時間が経ったものが白っぽく見えるのではないかと個人的には思っている。シロスジカミキリと同じようなもんじゃなかとね❓ シロスジカミキリは新鮮な個体だと白筋カミキリではなく、黄筋カミキリだもんね。
しかし、生きている時の色を命名の基本とするか、標本の色を命名の基本とするかはジャッジメントが難しいところではある。逆にモンキアゲハなんかは生きてる時は紋が白くて、死ぬと紋が黄色くなったりするからさ。生きている時の見た目で、もしも「モンシロアゲハ」と名付けてたとしたら、「どこがモンシロやねん。モンキやないけ、ダボがっ(-_-メ)」とツッコミが入ることは想像に難くない。
段々、頭の中がこんがらがってきて、自分でも何言ってんのかワカンなくなってきた。こんな事に正否を追い求めること自体がナンセンスなのかもしんない。

でもさあ…。
黄色いんだよなあ。

 
(♂)

(♀)

 
象牙色か、それよりやや黄色味が強い。
いっそのこと、シンプルにキナリシタバやゾウゲシタバ。或いはゾウゲキシタバとかじゃダメだったのかな❓
まっ、これとてベストとは言えないけどさ。

そういえば『日本産蛾類標準図鑑2(註4)』には、黄色い下翅の個体が図示されてたな。

 

(出展『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

 
ウスイロって元々は下翅が黄色くて、進化の過程で色が薄くなっていったのかな❓ だったら、基本は名前の後ろにキシタバと付けるのが妥当かしらね。
因みに変なのはコレくらいで、調べた限りでは他に顕著な異常型は見つけられなかった。この種には大きな変異幅はあまりないようだ。

話を和名に戻そう。
この際だから言っちゃうと、下翅じゃなくて美しい上翅に目を向けるという手もある。例えばモザイクシタバとかさ。
(´-﹏-`;)う〜ん、あんまシックリこないな。ダサいかも(笑)
偉そうなこと言っちゃってるけど、和名を付けるのって難しいや。簡単じゃないやね。

 
【英名】
英語では、カトカラの仲間は「〜underwing」と呼ばれているが、調べた限りではウスイロキシタバには特に英名は付けられていないようだ。
もし名付けるとするならば「Off white underwing」あたりが妥当かな? 或いは「Ivory underwing」「Ivory white underwing」とかだろね。個人的には、オフホワイトよかアイボリーの方がシックリくるな。
まあ、英名なんてどっちだっていいけどさ。

 
【亜種と近縁種】

■Catocala intacta intacta Leech, 1889(日本)
日本で発見されたので、日本産が原記載(名義タイプ)亜種となる。

■Catocala intacta taiwana Sugi, 1965(台湾)
1965年に杉 繁郎氏によって記載された台湾亜種。
日本のモノとはどう違うんだろ❓
でも『世界のカトカラ(註5)』にはナゼか台湾産の標本写真が載ってなかった。もしかして珍しいのかも❓

探したけど、画像はこんなんしか見つけれんかった。⬇
情報が少ないと云うことは、どうやら台湾では稀そうだな。

 


(出典 3点共『台湾生物多様性資訊入口網』)

 
何となく日本のものとは違うような気がするが、標本が古くて真面目に検証する気が起こらない。
そうだ。日本人の記載だし、それも蛾の大家である杉さんだったら、アホなワシでも何とか記載論文を見つけられそうだ。

(◠‿・)—☆ありましたー❗
わりかし簡単にネットで目っかったよん。

『Illustrations of the Taiwanese Catocala,with Descriptions of Two New Species :Noctuidae of Taiwan1(Lepidoptera)』と云うタイトルの論文なのだが、全面英文で書かれていた。(╯_╰)メンドくせー。

たぶん、両者の違いについて書かれているのは、この箇所あたりだろう。

「differs from the nominate subspecies in the reduced median and marginal bands of hindwing, otherwise nearly identical.」

意訳すっと「原記載亜種とは異なり、後翅中央の黒帯、並びに外側の黒帯が減じ、細くなる。それ以外はほぼ同じである。」てな感じだろうか。

確かに日本のモノと比べて明らかに下翅の黒帯が細い。
亜種となるのも納得である。
余談だが、ネットには台湾名に『白裳蛾』と云う漢字を宛がっているサイトがあった。

大陸側の中国(中国浙江省の西天目山)でも分布が確認されているが、ソヤツは特に亜種区分は為されていないようだ。
『世界のカトカラ』には台湾産は無かったけど、中国産は図示されていた。

 


(出展『世界のカトカラ』)

 
台湾産みたく下翅の黒帯は細くなく、日本のものと特に変わったところは見当たらない。亜種区分されてないのも納得だね。

近縁種に、Catocala hoferi Ishizuka&Ohshima(ヒメウスイロキシタバ)という中国南東部に分布するものがいる。
ウスイロキシタバと比べて小型で、後翅の色調は暗い。成虫は5月頃に出現するそうだ。

 
【Catocala hoferi Ishizuka&Ohshima,2003】

(出典『世界のカトカラ』)

 
ウスイロというよりも、ヤクシマヒメキシタバの方がパッと見的には近い。それにしても子汚い奴っちゃのー。★4つだから、珍品みたいだけどね。

何となくネットサーフィンしてたら、変なのが出てきた。

 
(図1)

(出典『ResearchGate』)

 
(図2)

(出典『BioOne』

 
Catocala becheri Kons&Saldaitis といい、最近になってベトナム中部から発見され、2017年に記載されたようだ。どうりで石塚さんの『世界のカトカラ』にも載ってなかったワケだね。

画像1枚目の1.2.3が新種で、4.5.6がウスイロだ。ちなみに4は日本産(多治見)、5が中国江西省・武夷山、6は中国福建省のものだ。浙江省以外にもいるんだね。
この新種、一見してウスイロとソックリだ。けど上翅の黒い斑が濃く、外側も黒ずんでてメリハリが強い。後翅は茶色っぽくて黒帯が減退しがちだ。そして外側の黒帯が太い。
論文の触り(抄録)には、ウスイロや Catocala hoferi とは♂交尾器の形態が明らかに異なると書いてあった。

試しに学名でググッたら、ラオス在住の蛾採りの天才 小林真大(まお)くんのツイッター(Moth Explorer LAOS)にヒットし、そこに灯火に飛来した C.becheri の写真があった。画像は貼っつけれないけど、物凄く黒っぽくて、ウスイロとはかなり印象を異にする。黒い魔術師と白い魔術師ってな感じだから、ちょっと自分の標本箱に並べてみたくなったよ。
発生は3月からのようで、日付は3.26となっていた。一瞬、エラく早いなと思ったが、よくよく考えてみれば3月、4月の雨季前のこの時期は蝶も多い。ラオスは亜熱帯だかんね。この時期でもクソ暑い。
あー、またラオス行きてぇー。長いこと行ってないもんね。
論文の標本写真のラベルは5月になっていたから、少なくとも2ヶ月くらいの寿命はあるのだろう。発生は3月下旬、もしくは中旬から始まるものと思われる。ビャッコイナズマだけがまだ採れてないし、行きたいなあ…。

画像2枚目は、A.B.C.Dがベトナムの新種。E.Fはラベルがネパール産となっている。G.Hが日本の原記載のウスイロ。IとJはウスイロの台湾亜種だ。
論文を読めてないので、E.Fが何なのかがよくワカンナイ。ウスイロはネパールに分布しないから、これも新種 C.becheriになるのかな? それともウスイロの新亜種なのかな? 上翅はウスイロでも新種でもない変な感じだ。強いて言えば、その中間? 但し、新種は裏面上翅の帯がウスイロよりも太い。ネパール産のモノも太い。コレって何者なんざましょ❓
 
ところで、図鑑等では並びになっている Catocala tokui ヤクシマヒメキシタバとの類縁関係はどうなっているのだろうか❓ 何となく似てるし、並んでるから近縁だと思ってたけど、他人の空似という事はないのかね❓
DNA解析では、どうなってたっけ❓

 

(出典『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』)

 
図は拡大できるが、探すのは大変だろうからトリミングしよう。

 

 
近いっちゃ近い。
でもクラスターは上の Catocala streckeri アサマキシタバの方が近縁に見える。
この疑問に関してはアサマキシタバの回でも書いたが、世界的カトカラの研究者である石塚勝己さんから次のような御指摘があった。

「ブログ、楽しく読ませていただきました。
引用されているDNA系統樹は、新川さんにやっていただいたミトコンドリアND5をMLで処理したものです。これでアサマとウスイロが近縁と判断するのは誤りです。ここで類縁が指摘されているのはワモンとキララ、オオシロとcerogama、ムラサキとrelicatだけです。そのほかのものは類縁関係は判断できません。おそらくミトコンドリアND5の解析ではカトカラの系統を推定するのは無理なのだと思います。😀」

つまり、ウスイロとヤクヒメの類縁関係は証明されていないとゆう事だね。

 
【開張(mm)】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、58-60mmとなっていた。一方、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』では54〜61mm内外となっていた。『みんなで作る〜』は古い図鑑、たぶん『原色日本産蛾類図鑑』の表記をそのまま採用していると思われるので、岸田先生の図鑑の54〜61mmを支持する。但し、58〜60mmくらいの個体が多い。

 
【分布】
本州(中部地方以西)、四国、九州、対馬、屋久島。
国外では中国南部・台湾に分布する。

 

(出展『日本のCatocala』)

 

(出展『世界のカトカラ』)

 
杉 繁郎氏の『ウスイロキシタバ(改称)の採集記録』によると、タイプ産地の滋賀県長浜でリーチが1886年7月に採集して以来、その後ほとんど採集されず、僅かにMELIが神戸で採集した1♂の記録(1936)のみしか長年無かったそうだ。つまり、嘗(かつ)ては大珍品だったのである。そんな時代、永井洋三氏が1956年に静岡市北安東にある静岡県農業試験場の予察燈で本種を採集し、その分布が意外にも本州南岸に沿って東に延びている事が知られるようになった。その後、静岡県金谷町、長野県下伊那郡など東日本の各地でも少ないながら分布が確認されるようになったようである。また、日本海側では福井県武生市山室町(北限)でも見つかっている。

暖温帯系の種で、主に九州から山梨県南部(東限)に分布する。西尾規孝氏の『日本のCatocala(註6)』には、成虫の分布は食樹であるアラカシの分布と重なると書いてあった。
この事からも、たぶん垂直分布は低くて平地から低山地に棲むカトカラだろう。

北から順に調べた範囲内での主な産地を並べてみよう。
東日本では山梨県南巨摩郡身延町、長野県下伊那郡、岐阜県美濃加茂市、愛知県豊田市、豊川市平尾町、北設楽郡に記録がある。
ネットを見ると、愛知県や岐阜県南部では比較的多く見られるようだ。

関西では、京都市八瀬、京都府美山町芦生原生林。滋賀県長浜市、八日市。大阪府能勢町、池田市、箕面市。奈良県上北山村、川上村。和歌山県田辺市中辺路町、日置川町。三重県紀伊長島町、海山町、紀和町の記録がある。
人伝ての話だと、どうやら紀伊半島南部には広く分布するようだ。この地域は植林地も多いが、原始からの暖帯照葉樹林も結構残っているから解る気がする。気になるのは沿岸部の紀伊長島町の記録。探したら、意外と沿岸部の産地が沢山見つかるかもしれない。案外、キナンウラナミシジミと分布が重なったりしてネ。でもキナンウラナミの食樹はアラカシではなくてウバメガシだからなあ…。全然、的外れかもしんない。
大阪府南部に記録がないのも気になる。それなりに暖帯照葉樹林はあるし、記録の多い紀伊半島南部とも連なるから探せば見つかるかもしれない。
兵庫県の記録も比較的多く、神戸市の他にも宝塚市、西宮市、姫路市豊富町、丹波市山南町、赤穂市上郡町、相生市矢野町、佐用郡佐用町などの記録があり、よく調べられているといった感がある。
だが『兵庫県のシタバガ(註7)』には「県下では南部の平坦地に分布するが確認されている地点は少ない。」と書かれてあった。ならばと『兵庫県のカトカラ(註8)』で確認すると、やはり★★の「分布は限られるが、産地では個体数が多い」というカテゴリーに入れられていた。
これで疑問が解けたよ。
カトカラ同好会の『ギャラリー・カトカラ全集』には「関西の愛好者にとってはなんということのない種であるが、関東以北の愛好者にとっては憧れのカトカラの一つである。」と書かれてあったから、正直採る前から楽勝気分だった。でも全然そんな事はなかったからね。カトカラ同好会に所属しているAくんも姫路でしか見たことが無いと言ってたし、小太郎くんも赤松か加西のサービスエリアで1回だけしか見たことがないと言ってた。自分も各地を探してみたが池田市と箕面市で惨敗。生駒・金剛山地では記録は無いようだし、他のカトカラを採りに行った折りに偶然出会った事も無い。それで何処にでもいると云うイメージは完全に吹っ飛んだ。食樹であるアラカシは何処にでもあるのだが、何処にでもいないのだ。分布は関西でも局所的で、そんなに簡単に採れるような普通種ではないと思う。

中国地方では、岡山県吉備中央町、倉敷市、広島県庄原市、島根県三瓶町、大田市などからの記録が拾えた。岡山県南部から中部では普通に見られ、北部では少ないという。

四国は高知県土佐市宇佐町、高松市の記録しか見つけられなかった。しかし、上の分布図によると四国全県に記録はあるみたいだ。

九州地方は福岡県のレッドデータブックによると、九州での記録は少なくて局地性が強いという。西に行けば行くほど生息地が増え、普通種となるのかと思いきや、意外とそうでもないんだね。とはいえ、コチラも分布図を見ると全県に記録があるみたいだ。
福岡県内では、過去に大牟田市勝田で記録されただけであったが、近年朝倉市山田で確認された。そして朝倉市の記録は大分県日田市内の記録の延長線上にあると考えられると添えられていた。その大分県は他に佐賀関町、深耶馬渓に記録がある。耶馬渓には個体数が多く、散発的に日田市内まで見られるという。宮崎県は延岡市に記録がある。佐賀県、熊本県の記録は見つけられなかった。但し、熊本県は耶馬渓に隣接する地域には棲息すると思われる。鹿児島県は屋久島の記録しか見つけられなかった。長崎県も対馬の記録しか見つけられなかったが、多産するみたいだ。因みに何処にも書いていないけど、対馬のものは普通の型の他に黒っぽいタイプもいるみたいだ。

 

(出展『世界のカトカラ』)
 

(出展『撮影・採集した対馬の興味ある蛾』)

 
これについては、たまたま黒っぽい個体が目についただけだから、真偽の程には自信が無いことをお断りしておく。
それはそうと、下の個体って新種 C.becheri に似てなくね❓

話を戻そう。
西尾規孝氏の論文『環境指標としてのカトカラ(やどりが 204号 2005)』には、各カトカラの希少度を数値で示した表が載っていた。それによると、希少度が一番高いのがアズミキシタバで数値は338。以下、ヤクシマヒメキシタバ331、フシキキシタバ312、カバフキシタバ311、ナマリキシタバ310、ミヤマキシタバ304、ヒメシロシタバ283。そして、ウスイロキシタバとケンモンキシタバが278という順になっていた。
この時代の日本のカトカラは全部で30種(今は32種)だった筈だから、同率だが8位って事はかなり上位にランクされている。それはそうと、昔はフシキって相当な珍品だったのね。今や関西なら何処にでも居るけどさ。あっ、フシキを除けば実質7位じゃないか。7位と云うのは、かなり珍しい部類と言えるよね。
ようは全般的にウスイロの分布は局所的で、やはり何処にでもいると云うワケではなさそうだ。情報を何でもかんでも鵜呑みにしちゃダメだね。同時に書く方も気をつけなきゃいけないと思ったよ。実際、ネットには孫引きで関西には多いと書いているブログをよく目にする。そういや、まだカトカラ1年生でウスイロを見たことがない頃、山梨で会った関東の高校生に「関西はウスイロが簡単に採れていいですよねぇ。」と言われた事があったわ。きっと東日本の人が関西へ来て、誰かに現地を案内された場合、産地には個体数が多いから何処にでも沢山居ると思い込むケースなんてのもあったのだろう。『ギャラリー・カトカラ全集』の記述とそれらが『関西では普通種』という説が伝播していった原因になったのかもしれない。

おそらく西日本でも自然度が高い環境の良い照葉樹林(常緑カシ林)にのみ生息するものと思われる。類推するに、+アルファで起源の古い大きな森でアラカシの大木があり、すぐそばには川があって湿度の高い環境を好むのではなかろうか❓ 自分が見た兵庫県と三重県の生息地は、どちらもこれらの条件を満たす環境だった。紀伊半島南部ではヤクシマヒメキシタバと同時に得られることが多く、個体数も多いと聞いたことがある。そういえば、規模が大きな林であれば個体数は少なくないようなことが何処かに書いてあったな。居ないところも多いが、居る所には沢山いるって感じなのだろう。
でもなあ…、規模の大きい照葉樹林がある奈良市春日山で探し回っても見つからんかった。もしかしてクヌギやコナラの混じる照葉樹林の方が良いのかなあ…。 けどそんな環境だったら、関西だと何処にだってある。ワケわかんねえよ(@_@)

一方、ネットのブログ『尾張の蛾、長話』の「ウスイロキシタバ覚え書き」には、愛知県豊田市では以前は居なかった場所でも見つかるようになり、分布が広がっているようなことが書かれてあった。そして以下のような一文で締め括られていた。

「近年、放棄された森林にアラカシやツブラジイが侵入し、照葉樹林化していることが分かってきているが、その影響なのか?地球温暖化もあり、北限もそのうち更新されるかもしれない。」

この文章の雰囲気だと、原生林と云うよりも放置された二次林にいるような感じだ。でも棲息環境については詳しく書かれていない。それくらい書いてくれても良さそうなものなのにね。何でこうも大概のブログは秘密主義ばっかなのだ。詳しい産地まで書く必要性はないとは思うが、生態面や観察時刻まで秘密にする必要性は無いと思うんだよね。でも、あんましそれらを書いているサイトはあらへん(この人はまだ書いてる方だ)。特に蝶の写真しかやってない人たちが酷い。露出とかシャッタースピードなんてどうでもよろし。対象物に対する観察記述が殆んど見られないから正直使えない情報ばっかで、糞オナニーかよと思う。写真だけで、何の生態データもほぼ無いに等しいものだらけなのだ。そんなの文献としての価値はゼロだ。オナニーなら、魅せるオナニーをしろよな。画期的なオナニー方法なら、オラも知りたいよ。
もし目の前で「ネットマン」とか揶揄してくる奴がいたら、その場でボッコボコにしたるわい(ノ`Д´)ノ❗
あっ、いかん、いかん。酒飲みながら書いてるから、つい熱くなってしまったなりよ。撮る人も採る人も仲良くやった方がいいよね。マナーを守って互いに情報交換すれば有益だと思うんだけどな。特に蛾なんて生態が解明されてない種が多いから、協力しあった方がいいに決まってる。一応言っとくけど、撮影する人とは何処でも上手くやってまーす。楽しい方がいいもんね。腹立つのは、カメラやってる人の網を持ってる人へのネットでの陰湿な攻撃なのさ。٩(๑`^´๑)۶プンプン。
けんど、よくよく考えてみると蛾好きに写真しかやってない人なんているのかね❓
たぶん居ないよね。だって夜だもん。蝶の写真を撮ってる人とゴッチャになっとるわ。酒、呑み過ぎー😵🥵

やっぱり脱線してまっただよ。
それはそうと、果たしてウスイロは二次林に進出したアラカシと共に分布を拡げているのだろうか❓ もし愛知県ではそうなら、関西でも事情は同じ筈だろう。放置された雑木林がカシ類の進出により各地で薮化しているからね。でも何処にでも居るような感じにはなってなさそうだ。アラカシの若木に幼虫が寄生するなら、とっくに関西でも普通種になってる筈じゃないか。でもあまり見ないし、簡単には北限なんて更新されるとは思えない。
いや待てよ。分布の端っこに行けば行くほど生態は変わるという例はよくある。或いは食樹も含めて新たな生活様式を獲得して進化しているのかもしれない。けど、愛知県は分布の端っこではないか…。ないよね。酔いが回っとるわ。
まあ、こっちはまだカトカラ三年生だし、所詮は考えの浅いド素人だ。バカの放言でしかない可能性もあるからして、蛾のベテランさん達は怒らんといてやー。アホな奴の戯言だと思って流して下され。

 
【レッドデータブック】
滋賀県:絶滅危惧種
高知県:情報不足
宮崎県:情報不足

蛾類については、この情報不足と云うのが多い。
やっぱ蝶なんかと比べて愛好者が少ないんだろなあ…。

 
【雌雄の判別法】
野外の暗い中では、意外と雌雄を間違え易い種だと思う。
多くのカトカラの♂は腹が細長く、尻先に毛束がある。♀はその反対の見た目だからパッと見で大体区別がつく。それに対してウスイロはその特徴がやや弱いところがある。♂でも腹がそんなに長くないし、結構太かったりもする。加えて尻先の毛束もボーボーじゃないから、ややこしいのだ。最近は老眼も入ってきてるしさ。細かいとこが見えんのじゃ。
やっぱ決定的な差異は、裏側から見た尻先だろね。そこが判別のキモだ。

 
(♂裏面)

 
♂は尻先に毛束がある。
画像は拡大できるが、拡大図も載せておこう。

 

 
 
でも、あんまし毛束が無いのもいるから、ややこしい。

 

 
ピンボケでスマンが、♂なのにあまり毛束がないことは分かるかと思う。
一応、同じ個体の展翅画像を拡大したのも貼っつけておこう。

 

 
ねっ、♂なのに毛束があんまし無いっしょ。

 
(♀裏面)

 

 
♀は尻先に縦にスリットが入り、産卵管らしきものが見える。
コチラも画像は拡大できるが、展翅画像をトリミングしたものを貼っつけておこう。

 

 
でも、⬇こんなワケわかんないのもいる。

 

 
腹太だから一見すると♀に見えるが、尻先にスリットが無く、産卵管も見えない。となると、♂ということになる。こんなのがいるから、ワケわかんなくなるのだ。

因みに横から見ても判別は大体できる。

 
(♂横面)

 
(♀横面)

 
腹の太さと尻先の形で、おおよそは判別可能だ。
♀は腹が太くて尻先が尖って見える。この尖って見えると云うのが重要な区別点だ。それが横からだとよく分かる。
他に♂の方が前脚のモフ度がやや高いというのもあるが、アサマキシタバ程には差が無いし、飛び古した個体は毛が抜け落ちてるので補助的にしか使えない。また♀の方が翅に丸みを帯びるというのもあるが、微妙なのもいるから同様に補助的にしか使えまへん。

 
【成虫の発生期】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には6ー7。『日本産蛾類標準図鑑』では「6月上旬から出現し、7月下旬まで見られる」とあり、『世界のカトカラ』もそれと同じ発生期になっていた。『日本のCatocala』でも基本は同じだが、ごく一部の個体が8月上旬まで生き残るとあった。但し、7月上旬を過ぎると大半は姿を消す。ゆえに新鮮な個体を得たければ6月下旬までだろう。場所にもよるだろうが、7月に入ると傷んた個体ばかりになる。このカトカラは鮮度が命。新鮮な個体でなければ魅力は半減する。傷んだ個体は他のカトカラと比べて色が薄いだけに、より擦れ擦れに見えるのだ。

 
【成虫の生態】
成虫はコナラやアベマキ、クヌギなどの樹液に飛来する。
『日本のCatocala』には「一般に糖蜜採集では採集困難…」とあったが、自分の糖蜜トラップには楽勝で飛んで来た。レシピ次第では樹液をも凌駕する。ちなみに今年は常にワシの勝ちじゃったよ。カバフキシタバの時もワンサイド勝ちだったから、ワシって糖蜜トラップ作りの天才じゃね❓
けど、毎回テキトーに作ってるからレシピは自分でもワカラン。だから再現でけへんねん(笑)。ようはアホなのである。

飛来時は白っぽく見えるからウスイロだと直ぐに分かる。
白いゆえ他のカトカラと比べて上品な感じがして、(´▽`)💞萌え〜。まさに「穢れなきインタクタ」だ。リーチも最初は闇の中で飛んでいるのを見たのかもしれない。その時に無垢なる印象を強く持ったことは充分に考えられる。だったら、この学名にも納得だ。標本だけを見て、あーだこうだ言うのは考えもんだね。標本は所詮はミイラなのだ。生きている時の本当の美しさは損なわれている。

樹液に飛来した時刻は、早いもので日没後間もない7時半頃。とはいえ、フシキキシタバやコガタキシタバよりも遅れて飛来し、大体は8時くらいから活性が入り始める。暫くして飛来が一旦止まり、9時半前後からまたポツポツと飛んで来て、午後10時〜11時台にかけて再び小規模だが活性が入る。但し、これはその日の気象条件によっても変わり、午後8時半を過ぎても飛来しなかった事もあった。
尚、吸汁時には殆んどの個体が下翅を開く。敏感度は普通ってところかな。
調べた限りでは、樹液以外の餌となりうる花蜜、果実、アブラムシの甘露での観察例は無いようだ。また吸水に来た例も見つけられなかった。

灯火にもよく飛来し、一晩に何十頭と飛んで来る事もあるという。個体数が多い所では樹液や糖蜜採集よりも灯火採集の方が効果があるという説を又聞きだが聞いたことがある。
因みにアチキの何ちゃって小型ライトトラップには午後9時半頃と10時15分、11時過ぎに飛んで来た。これまた又聞きだが、灯火への飛来時刻は夜更けになってからが多いみたい。
個人的な意見だが、多数の個体を望まないなら、樹液や糖蜜トラップの方が早めに片が付く。おそらく樹液に集まるカトカラ類は、先ずは吸汁してから、その後に灯火に飛来するのだろう。

日中、成虫は頭を下にして樹幹に静止しているというが、見たことはない。驚いて飛ぶと、おそらく着地時は上向きに止まり、暫くして下向きに姿勢を変えるものと思われる。

交尾記録は、少ないながらも午後11時から午前2時の間で確認されている。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のアラカシ(Quercus glauca)。
幼虫の好む樹齢については調査されていないようで不明。
自然界ではアラカシのみが知られるが、クヌギやアベマキでも代用食になり、累代飼育も可能なようだ。
思うに、自然状態でもアラカシ以外の樹種を利用しているのだろう。ガって、チョウみたいに食餌植物に対してあまり厳密的ではなく、属レベルどころか科も関係なく何でも食う奴は多いからね。

 
【幼生期の生態】
いつものように幼生期は西尾さんの『日本のCatocala』に全面的に頼らせて戴く。西尾さん、いつもすいません。

 
(卵)


(出展『日本のCatocala』以下この項の写真は同出展)

  
卵は食樹の樹皮の裏などに産まれるが、観察例は少ないという。飼育下だが、卵の孵化の時期はナラ属を餌とするカトカラの中では早い方で、アミメキシタバよりも1週間から10日ほど早く、5月中には蛹化するという。

 
(3齢幼虫)

 
(5齢幼虫)

 
(5齢幼虫の頭部と、その脱皮殻)

 
終齢は5齢で、昼間は細めの枝に静止しているようだ。色彩変異は野外でも飼育下でも認められないという。
幼虫を高密度で飼育すると、4、5齢時に幼虫同士が口器で互いを噛じり合って傷をつけ、死亡する場合があるそうだ。
蛹については、よく分からないが、おそらく落葉の下で蛹化するものと思われる。

チョウやガは、互いが近縁種かどうかは幼生期の形態で大半は分かるとされている。なので、ついでだからヤクシマヒメキシタバの幼生期の写真と比較してみよう。

 
(ヤクシマヒメキシタバの卵)

 
幼虫は自然状態では見つかっておらず、食樹は不明だが、ウバメガシで良好に育つことが知られている。

(3齢幼虫)

 
(5齢(終齢)幼虫)

 
飼育下では、ウスイロと同じく色彩変異は認められていないようだ。

 
(5齢幼虫の頭部と、その脱皮殻)

 
卵は全然似ていないけど、終齢幼虫は結構似ているかも。
カトカラの幼虫の識別には頭部の柄の違いが重要だと言われているが、顔も似ている。親戚くさいぞ。
微妙ではあるが、両者は近縁関係にあると言えなくもないってところか…。

                       おしまい

 
追伸
やれやれ。今回も長おましたな。書いてて酷く疲れたよ。下書きはサラッと書けたのになあ…。

次回は2019年に目っかった新しきカトカラ、マホロバキシタバの予定。
とはいえ、今年の調査が終わってから書くかもしんない。たった一年の調査で偉そうな事を書いて恥かきたくないしさ。
どうしても知りたい人は、『月刊むし』の2019年10月号を買いましょう。その採集記に、現時点で知ってる事は全部書いてある。 

 
(註1)杉繁郎氏の論文
杉 繁郎・永井洋三『ウスイロキシタバ(改称)の採集記録』
(蝶と蛾 8(3),34-35,1957 日本鱗翅学会)

 
(註2)LEECH
John Henry Leech(ジョン・ヘンリー・リーチ)
[1862年12月5日〜1900年12月29日]


(出典『Wikipedia』)

鱗翅目と甲虫目を専門とするイギリスの昆虫学者。日本や韓国、中国の昆虫を数多く記載した。日本ではギフチョウを記載したことで知られるから、その名に記憶がある人は多いかもしれない。他にゴイシツバメシジミの記載者にも、その名がある。
日本のカトカラでは、ウスイロキシタバの他にフシキキシタバやナマリキシタバの記載を行っている。

(註3)『ギャラリー・カトカラ全集』
カトカラ同好会のネットサイト。日本のカトカラ各種についての説明がコンパクトに書かれている。カトカラについて知る入門書としては打ってつけのサイトだろう。

 
(註4)『日本産蛾類標準図鑑』

蛾類学会の会長でもある岸田泰則氏編著の、今のところ日本の蛾類について最も詳しく書かれた図鑑。全4巻からなる。2011年に学研から出版されており、ジュンク堂書店など大きな本屋に行けば売っている。

 
(註5)『世界のカトカラ』

世界的なカトカラ研究者である石塚勝己氏によって書かれた本。世界中のカトカラの標本写真が掲載されており、カトカラ属全体を俯瞰して見るには格好の書。2011年に、むし社から出版されている。

 
(註6)『日本のCatocala』

2009年に西尾規孝氏により自費出版された日本のカトカラについて最も詳しく書かれた本。生態面に関しては他の追随を許さぬ優れた生態図鑑である。

 
(註7)『兵庫県のシタバガ』
高島 昭 きべりはむし 31(2)
「きべりはむし」は兵庫昆虫同好会の機関誌だが、活動休止に伴い、2009年4月からは「NPO法人こどもとむしの会」が引き継いでPDF管理している。

 
(註8)『兵庫県のカトカラ』
阪上 洸多・徳平 拓朗・松尾 隆人 きべりはむし 39(2)

兵庫県のカトカラについては、これを読めば全て解ると言っても過言ではないくらいによく調べられている。兵庫県は関西で最もカトカラの種類が記録されているから、ひいては関西のカトカラの事もこれを読めば大体解るという優れた報文。
近年、新たに市川町でヤクシマヒメキシタバも見つかっているらしいので(※)、是非とも改訂版を執筆して戴きたい。

(※)
坪田 瑛:ヤクシマヒメキシタバを兵庫県市川町で採集
誘蛾燈No.234 2018

中身は読んでない。誰か詳しい場所を教えてくれんかのう。

 
 
 

 

令和2年 青瓜の漬物

 
青瓜が50円くらいで売っていた。
一瞬、スープとかにしようかと思ったが、邪魔くさいので定番の漬物にすることにした。

ベースは市販の野沢菜の調味液。
野沢菜をあらかた食ったところで、それに塩を足して、胡瓜も漬け込んでみた。

 

 
浅漬けは旨いよね。酒の肴にもなるし、御飯のお供にもなる。
その残り液に、更に塩を加えて青瓜を漬け込んだ。塩を足したのは、胡瓜から水分が出るので調味液が薄まる分を補うためだ。

 

 
今回は普段は削り取る種の部分を、初めて少し残してみた。胡瓜でも、このチュルチュルの部分が結構好きだから、ふと旨いんじゃないかと思ったのだ。

調味液の発酵が始まっていたせいか、一晩であっという間に古漬け風に。
淡い酸味がアクセントになってて旨い。チュルチュルの部分も旨い。コレって有りだなと思う。
飽きてきたら、醤油なんぞをチャラっと控えめにかけてもよろし。

日本酒の冷やをちびちびいきながら、雨の音を聴く。

                        おしまい

 

2019’カトカラ2年生 その弐(4)

 
   vol.19 ウスイロキシタバ

 第四章『瓦解するイクウェジョン』

 

2020年 6月17日

取り敢えずウスイロキシタバの新鮮な個体を雌雄共に確保できたので、新たな産地を探すことにした。

 
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♀】

 
これまでの結果、ウスイロが樹液、糖蜜トラップ、ライトトラップに飛来することは分かった。となれば残る象牙色の方程式の解明は、その棲息環境だろう。予測ではアラカシの大木が有るような古い起源の照葉樹林で、且つある程度の広さを有する湿潤な環境を好むのではないかと考えていた。
そういう場所となると、近畿地方では何処だろう❓
そこで真っ先に浮かんだのが奈良県の春日山原始林だった。あそこなら、これらの条件が完璧に揃っている。広大な原始林は常緑照葉樹を主体としており、そこに落葉広葉樹が混じる。幼虫の食樹であるアラカシも有り、古い起源の森だから勿論のこと大木もみられる。またイチイガシなどのアラカシ以外のカシ類も豊富だから、それらを二次的に利用する事も充分可能な環境でもある。加えて成虫の餌である樹液の供給源、クヌギやコナラ、アベマキも点在する。そして、原始林内には川も数本流れており、湿潤な環境という要素も満たしている。ようは、ここにいなきゃ何処にいるのだ❓というような場所なのだ。もしかしたらウスイロばかりか、ヤクシマヒメキシタバ(註1)だっているかもしれない。

 
【ヤクシマヒメキシタバ】

(出展『www.jpmoth.org』)

 
もしヤクヒメが見つかったら、ちょっとしたニュースだろう。マホロバキシタバ(註2)に次ぐ2匹目のドジョウじゃないか。そんな風に想像してたら、ニヤついてきた。今年も連戦、連勝じゃーいヽ(`Д´)ノ❗

ただ、一つ気掛かりなのは此処でのウスイロの記録が探しても見つけられなかった事だ。調べた範囲では奈良県の記録は上北山村ぐらいにしか無い。まあどうせ調査が行き届いてないんだろうけどさ。所詮は世の嫌われ者の蛾だ。調べた人が少なくて、しかもイモばっかだったのだろう。
あっ、でも甲虫屋とか蝶屋もよく訪れるところだから、記録があってもよさそうなもんじゃないか…。
いやいや、だったらマホロバもとっくに発見されて然りだった筈だ。それがあれだけ長年にわたり多数の虫屋が入ってきたのにも拘らず、去年まで見つからなかったのだ。ようは皆さん、蛾なんて無視なのだ。だから記録もない。そうゆう事にしておこう。

この日はマホロバの予備調査も兼ねていたので、小太郎くんも参戦してくれた。勿論、春日山と奈良公園一帯は昆虫採集は禁止されているので、公園事務所の許可を得ての調査だ。

 

 
今年、マホロバの採集を目論んでる方は、採集禁止エリアを調べてから出掛けることをお薦めします。許可なく夜の原始林内をウロウロしてトラブルを起こすリスクをわざわざ冒さなくとも、禁止エリア外でも結構採れますから。

マホロバの事も考えて、原始林とその周辺にかけて樹液の浸出状況を確認してゆく。その経過の中で、どうせウスイロも見つかるだろうと思っていたのだ。

しかし、何処でも姿は全く見られない。どころか、別なカトカラの仲間さえ殆んど見ないし、他の蛾たちも数が少ない。居るのはノコギリクワガタばっか。あまりにも何もいないので、つい普段はムッシングするクソ夜蛾を採ってしまう。

 

 
羽を閉じて止まっているのを見て、体の真ん中の白い線(上翅下辺)が目立ったから、見たことない奴だと思ったのだ。
名前がワカンなくて、Facebookに載っけたら、何と有り難いことに石塚(勝己)さんから、ノコメセダカヨトウだという御指摘を受けた。けんど驚いたでやんす。まさか奴だとは微塵も思ってなかったからね。

ノコメセダカヨトウといえば、だいたいはこんな感じだ。

 

(出展『茨城の蛾』)

 
コヤツなら、何処へ行ってもウザいくらいにアホほどいる。
なので、(⑉⊙ȏ⊙)マジか❓と思ったワケ。でもよく見ると、コヤツの上翅の下辺にも白い縁取りがある。
石塚さん曰く「普通種ですが、色調の変異は多様です。」との事。ふ〜ん、これは謂わば黒化型みたいなもんだね。
けど、ネットで検索しても、ここまで黒いのは見つけられなかった。もしかして、コレってレアな型❓
所詮はデブ蛾だから、どっちゃでもえーけど。

最後に若草山の山頂をチェックして、この日の調査を終えることにした。

 

 
若草山の山頂は夜景スポットとして人気があり、観光客が結構来ていた。
駐車場から山頂までの遊歩道の途中で、小太郎くんが上空を飛ぶカトカラを見つけた。それなりに高くて網が届かない位置だったから見送るしかなかったのだが、アレって何だったんだろう❓という話になった。かなり裏面が全体的に黄色っぽく見えたのだ。
消去法でいくと、キシタバ(C.patala)は特別大きいから可能性は低いだろう。だいち裏面はウスイロとは全然違うから間違えるワケがない。

 
(パタラキシタバ 裏面)

 
因みに、キシタバ(註3)の回で小太郎くんの事をキシタバ虐待男と書いたが、今や蔑視度は更に上がって「デブキシタバ」と呼んでいらっしゃる。但し、その憎悪も突き抜けてしまい、虐待にも値しないようだ。キシタバくん、良かったね。悪いお兄さんは、もう怖くないよ(•‿•)

あと、この時期に此処で見られるキシタバの仲間もいえば、コガタキシタバとフシキキシタバくらいしかいない。
でもコガタは裏面が黒っぽいから、ウスイロと間違うことはない。除外していいだろう。

 
(コガタキシタバ 裏面)

 
となると、フシキかウスイロのどちらかしかない。
けど、ウスイロって飛んでるのを下から見た事って、あんましないんだよね。採ってた場所は木が密生していて、上に大きな空間が無く、皆さん横に飛んで行かはるケースが多かったのだ。
しかし、小太郎くんは、アレはフシキじゃなかったと思うと言う。たしかにフシキならば、もっと黄色が濃くて鮮やかな気がする。

 
(フシキキシタバ 裏面)

 
(ウスイロキシタバ 裏面)

 
ならば、おそらくウスイロだろうと思った。あの飛んでるのを下から見たという一点だけで充分だった。居るならば、そのうち採れる。だからその後、探し回ることも無く、直ぐにワモンキシタバを求めて平群町へと移動した。
時期的に、そろそろワモンを採っとかないとボロばっかになる。優先順位はワモンさんなのだ。ウスイロはもう新鮮な個体は採ったし、ここではボロだって構わない。居るという事実さえ掴めばいいのだ。

で、帰る時間ギリで何とか採って帰った。

 
【ワモンキシタバ Catocala xarippe ♂】

 
ワモンって、渋カッコいいから好きなのだ。
あれっ?待てよ、自分は見たことないけど、そういえば小太郎くんが若草山にもワモンがいるって言ってたな。

あの見送った奴はワモンの可能性もあるかもしれない。たぶんワモンの裏面も黄色は薄かった筈だ。

 
(ワモンキシタバ 裏面)

 
でも、こんなに黒帯は太くはなかった筈だから、ワモンでもなかったと思われる。益々、ウスイロの可能性大だ。
 
 
 
2020年 6月20日

前回は様子見だったが、この日はマジ探しだった。
一番可能性の高そうな春日山遊歩道に狙いをつけて入った。
ここは照葉樹の原始林の真っ只中だし、道の横には川が流れているからだ。予測した環境としては申し分ない。どうせ居るだろうから、まあサクッと居ることを確認して、とっとと帰ろう。

 

 
森の中、真っ暗けー。

そういえば、去年は若草山でカバフキシタバを探したが見つけられず、早めに見切ってこの道を降りたんだよね。その時も真っ暗で、相当ビビりながら歩いた。オマケに思ってた以上に道のりが長かったから、途中でバリ不安になった。もしや別な異次元世界にでも迷い込んだんじゃないかと思って、パニくり寸前の半泣きどした。
そうだ、そうだ。思い出してきたよ。その後にカバフキシタバを採ったのに、あろう事か取り込みで逃しちまったんだよな。まあそれが結局はマホロバの発見に繋がったんだけどね。人生、何が幸いするのかはワカランもんだね。

 
【カバフキシタバ】

 
樹液の出てる木は見当たらないので、取り敢えず糖蜜を霧吹きで吹き付けてゆく。
しかし、少し時間が経っても何も寄って来ない。いつもなら、このスペシャル糖蜜に何らかの虫が直ぐに寄って来る筈なのだが…。
あっ、霧吹きを振ってから、かけるの忘れてた。下にエキスが沈殿するので、振って混ぜないと効力が半減するんだったわ。
とゆうワケで、今度は振ってから掛けようとしたら、シュコシュコ、シュコシュコ。シュコシュコシュコシュコシュコシュコ…。焦って何度もやるが、暗闇にシュコ音だけが空しく響くだけで液体は全く出てこない。
(-_-;)やっちまった…。こりゃ完全にノズルが詰まったな。
慌てて霧吹きを分解するも、だが事態を打開できない。何度試してもダメ。ただ握力だけが鍛えられるのみである。

まあいい。一回分だけでも、そのうち寄ってくんだろ。我が糖蜜トラップは無敵なのじゃよ。それに今回は採るのが目的ではない。何なら写真だけでもいいのだ。とにかく1頭だけでも飛んで来て、ここに居ることさえ証明できればいいのである。

だが、待てど暮せど、見事なまでに何もいらっしゃらない。
結局、9時過ぎまで待ったが何の音沙汰もなかった。諦めて下山し、樹液や灯火に来ていないかを確認しながら駅まで歩いた。他のカトカラも殆んどおらず、パタラが1頭だけ樹液に来ているのを見たのみで終わった。

 
【Catocala patala】

 
つまり、まさかの大惨敗を喫したってワケ。
あまりの惨事に、たぶん鬼日と言われる異常な日だったんだと思う事にした。でないと、プライドが保てない。

 
 
2020年 6月22日

何で、こないだはダメだったんだろ❓
本当にあの日は、たまたま鬼日に当たっただけなのだろうか❓
もしかしたら、純然たる照葉樹林よりも少しクヌギやコナラ、アベマキなどの広葉樹が混じる環境の方が良いのではと思い始めた。成虫の餌資源が有った方が良好な環境ではないかと思い直したのである。
そうゆうワケで、この日は滝坂の道を選んだ。

ここは道の左側(北)が春日山の原始林で、右側が広葉樹の混じる森だからである。道沿いに川が流れているので、空中湿度も高い。もう此処に居なけりゃ、何処にいるのだ❓という環境なのだ。

しかし、矢張り結果は同じだった。
(・o・;)マジかよ❓である。コレで完全に心が折れた。
で、調査打ち切りにした。何にも採れないって面白くないのだ。面白くない虫探しはしないというのがオラのモットーなのだ。
別に方程式なんて解けなくてもいいや。所詮はアマチュア。そこまで調べる義理は無い。どうせワシ、根性なしの二流虫屋やけん。
(TОT)ダアーッ。

                        つづく

 
追伸
なんとも冴えない終わり方である。
想定していたイクウェジョン、方程式は見事に瓦解した。象牙色の方程式は、また来年に持ち越しだよね。
因みに6月29日にも行ったが、ついぞウスイロを見つけることは出来なかった。こんだけ探しても見つからないということは、いないのかなあ❓…。絶対いる筈なのになあ…。いるけど、めちゃめちゃレアだとか❓
それはそうと、ならば小太郎くんと見送ったアレは何だったのだ❓フシキかなあ?…。でもフシキなんかとは間違えるワケないと思うんだよなあ。
ワテは根性なしなので、もういいやと思ってるけど、誰か根性がある人に是非とも此処でウスイロを見つけて欲しいよね。

次回、解説編で閉店ざんす。

 
(註1)ヤクシマヒメキシタバ
屋久島で最初に発見され、1976年に記載された。その後、九州、対馬、四国、紀伊半島でも分布が確認されている。

 
(註2)マホロバキシタバ

【Catocala naganoi mahoroba ♂】

2020年の7月に春日山原始林とその周辺で新たに見つかったカトカラ。しかし、国内新種にとどまり、最終的には台湾特産のキリタチキシタバ(Catocala naganoi)の新亜種として記載された。

 
(註3)キシタバ

各所で何度も書いているが、Catocala patalaの、このキシタバと云う和名、何とかならんもんかと思う。
毎度説明するのが面倒クセーんだけど、しなけりゃ論が進められないので説明します。カトカラ類の中で、この下翅が黄色いグループのことを総称して、皆さんキシタバと呼んでいる。でも、この C.patala の和名がキシタバだから、誠にもってややこしい。「キシタバ」と言った場合、それがキシタバ類全体を指しているのか、それとも種としてのキシタバを指しているのかが分かりづらいのだ。だから種としてのキシタバのことをいう場合、一々「ただキシタバ」とか「普通キシタバ」「糞キシタバ」「屑キシタバ」、又は小太郎くんのように「デブキシタバ」と呼ばねばならんのだ。にしても、人によって普通とか糞とかデブの概念が違ったりするから伝わらないこともあって、それはそれでヨロシクない。
そこで、自分は学名そのままの「パタラキシタバ」を極力使うようにしていると云うワケだ。パタラだったら、パタライナズマ(註4)と云う佳蝶もいる事だし、神話の蛇神様なんだから少しは尊敬の念も出よう。
とはいえ、ずっともっと他に相応しい和名があるのではないかと思ってた。で、こないだ小太郎くんとたまたまオニユミアシゴミムシダマシの話になって、そこから「オニ」と名のつく生き物の話に発展した。そこでワイのオニ和名に対する講釈が爆発したのだが(これについては拙ブログに『鬼と名がつく生物』と題して書いた)、その流れの中で、小太郎くんがボソッと言った。

「キシタバとか、いっそオニキシタバにしたらどうですかね❓」

これには、目から鱗だった。たしかに、このグループの中では圧倒的にデカい。鬼のようにデカいし、上翅は緑っぽいから青鬼と言っても差し支えなかろう。それに鬼のパンツは黄色と黒の縞々だと相場が決まってるんだから、まさに相応しいじゃないかの灯台もと暗し。即座に「それ、いいやんか。」と返した。
だが、言った本人の小太郎くんは奴を憎んでおるから「えー、あんな奴にオニをつけるんですかあ?」と不満そうだったけどね(笑)。

カトカラ界の頂点に立たれる石塚さん辺りが、この和名を改称してくんないかなあ…❓
風の噂では新しい図鑑を出す御予定もあると云うし、ねぇ先生、この際だから和名を改称しませんか。もちろん最初に和名を付けられた方に対しての敬意を失ってはいけないのでしょうが、この問題を解決できる良い機会だと思うんだけどなあ…。
あっ、でもカトカラには他にオニベニシタバってのがいるなあ。まっ、問題はべつにないか…。オニキにオニベニの青鬼と赤鬼の揃いぶみでございやせんか。悪かないと思うよ。

 
(註4)パタライナズマ

【Euthalia patala】

(裏面)

(2016.3月 Thailand)

ユータリア(イナズマチョウ属)属、Limbusa亜属の最大種。
激カッコ良くて、裏まで美しい。そしてデカい。しかも、レアものときてる。
パーターラ(pātāla)とは、インド神話のプラーナ世界における7つの下界(地底の世界)の総称、またはその一部の名称。また、この世界はナーガ(Naga)と呼ばれるインドの伝説と神話に登場する上半身が人間の蛇神の棲んでいる世界だともされている。
パタライナズマについては、拙ブログの初期の頃に何編か書いとります。興味がある方は探してみてくだされ。