2020’青春18切符1daytrip 第四章(3)最終回

 

 第3話(最終話) 紀州の春の味

 
 2020年 4月10日(後編)

 
再び「スナック変てこネーミング愛好家」の活動が始まる。
今度は反対側から繁華街へ入ろう。

 

 
『銀ちろ専用二輪車置場』。
店の看板にチャリンコの置き場所を示すだなんて斬新だ。
でも、店本体が見当たらない。謎です。ステルス店舗なのかもしれない。地方に行くと、時空間が時々歪むからね(笑)。

『居酒屋 味心 むそう』。
「むそう」が無双の事なのか、それとも夢想を表しているのかがワカラナイ。いや、両方の意味が込められているからこその平仮名表記なのかも。だったとしたら、そんな掛け合わせをしようなんて考えた店は唯一無二だろうから、無双かもね。

『紅葉』。
「もみじ」もしくは「こうよう」という店名かと思いきや、下に「KREBA」の文字がある。「くれば」だったんだね。
けど、その読み方って無理がないかい❓普通に読めば「くれないば」、もしくは「べにば」だよね。紅に「くれ」という読み方はないのだ。
まあいい。にしても、何でわざわざ秋に限定されるようなネーミングにしたんだろね❓まさか秋限定のオープンなワケでもなかろう。う〜ん、ママさんの名前が「紅葉」でもなければ、解せませぬ。

『SEED』。
種子❓種(たね)は物事の始まりを表すものでもあるからして、理解できなくもない。
いや、まさかのママさんの名前が「タネ」だったりしてね。だとしたら、どんだけオールディーな名前やねん❓
そうじゃなければ、まさかまさかのシードの別の意味でもある「精液」や「精子」だったりしてね。(-_-;)…、だとしたら相当に奥が深い。ハプニングバーとか、とんでもない店だったらいいなあ。

『居酒屋 白百合』
「昭和」を通り越して、もう「大正」の世界だ。
一周回って大正ロマンの香りさえ漂っている。

振り返っても撮る。

 

 
どうやらこの通りは味光路(あじこうじ)というらしい。

 

 
『AGAIN』。
アゲイン。再び。
また来てねという意味か?
他に浮かばないし、段々無理からイチャモンつけるのも面倒くさくなってきたよ。

『LARME』。
ラルムというのはフランス語の「涙」「涙の雫(しずく)」の事でいいのかな。
にしても、そんなマイナス思考のネーミングでいいんすか❓

『スナック すみれ』
何ら奇抜さがない普通のネーミングだ。
でも奇を衒わないところが、かえって新鮮だ。明朗会計に違いなかろう。好感もてます。

『LUSH』。
普通に訳せば、「青々とした」「瑞々しい」だろう。
調べたら他にも意味があって、「大酒呑み」とゆうのが出てきた。たぶん由来はコレだな。
さておき、下の「a new sense bar」とゆうのが引っ掛かる。新しいセンスとは何❓
このネーミングのワケの分からなさにスナック文化の面白みがある。こうしてアレコレ想像するのは楽しい。ネーミングの裏に、その人の人となりが見え隠れするのだ。

『がらくた』。
(☆▽☆)来たー❗、自虐系ネーミング❗
けど、ストレートの平仮名表記である。普通ならば「我楽苦多」などという宛字をブチ込んでくるのがセオリーなんだけどね。その路線にいかないのは、言うほどポンコツではなさそうだ。ただの自虐的な人なのかもしれない。

後ろのビルの看板が横に写っている。気になるからコッチもコメントしておこう。

『Pino』
イタリア語かな❓ならば「松の木」とか「松ぼっくり」という意味になる。可愛さ演出かしら❓
単にお菓子のピノ好きの店主だったりして…。

『Bebe』
普通に考えれば「赤ちゃん」だよね。
ばぶばぶの赤ちゃんプレーの店だったりして…。いかん、いかん。どうしてもエロに走るクセがある。
だとしたら、フランス語の「パートナー」という意味なのかもしれない。豚が2頭向き合ってるしね。
でも、ちょっと待て❗
下には「Boys snack」という文字があるではないか❗❗
とゆうことは、モーホーの集まるスナック❓それもパートナーを探す的な❓しかも赤ちゃんプレーがメイン的な❓
頭がオカしくなってきたところで、目的の店の前に着く。

 

 
ここの向かい側が店となるのだが、惹かれる風情があって、つい写真を撮ってしまったなりよ。
あっ、でも惹かれた理由は風情だけじゃないと直ぐに気づいたよ。

 

 
🎵ホッピー(◠‿・)—☆
久し振りに看板と幟を見たので、テンションが上がる。奴は関東文化圏のもので、関西ではあまり見ないのだ。これは東京に住んでた頃に劇団の先輩に教えてもらったというか、仕込まれた。
えー、ホッピーとは下町のヤサグレ親父たちのフェバリット安酒の事である。
もとい、厳密に云うとホッピーそのものは酒ではない。

 

(出展『Wikipedia』)

 
ホッピー(Hoppy)とは、ホッピービバレッジ(旧・コクカ飲料)が1948年に発売した麦酒様清涼飲料水のこと。平たく言うと、ルートビアみたくビールテイストの炭酸飲料の事ね。でもホッピーといえば、焼酎をこれで割った飲み物を指す場合のことの方が多い。
ホッピーが発売された頃は、まだビールは高価だったそうな。なので、そのビールの代わりにホッピーで焼酎を割って飲む技が編み出された。そして、手軽にビールの満足感を得られる酒として関東圏で急速に広まっていったらしい。そう、ビールモドキなのだ。その辺からして男たちの苦い哀愁が漂うなあ。
ちなみに今でも東京の大衆酒場には必ずと言っていいほど置いてある筈だ。まあ、安く飲める酒の代表選手みたいなもんだすな。飲んでるオヤジたちもイタい人が多かったから、場末感満載なのだ。何だか懐かしい。

又しても脱線してもうた。
いざ、目的の店にゆかん。

 

 
『紀州魚介庵 かんてき』。目的地到着だす。
店はビルの奥まったところにある。

 

 
「かんてき」とは、関西では七輪(しちりん)の事だが、火がカチカチ熾る様から癇癪(かんしゃく)持ちを表す言葉でもある。つまり気が短くて怒り出したら止まらない人で、感情がコントロール出来ないってこと。
たぶん店の名の由来は、この両方で、どちらかとゆうと後者だと推察される。ならば、めんどくさい親父に決まっている。テメェで付けてるくらいなんだから、自他ともに認める性格なのだろう。

口あけだから、客はワシ以外には誰もいない。

 

 
カウンターの真ん中に座る。
店の雰囲気は昔からある居酒屋という感じだ。

 

 
目の前の大将は、よく喋る。
気は如何にも短そうだ。でも本当の癇癪持ちならば、店を長く続けてはこれなかっただろう。ようは気は短いが、気のいいオヤジさんってとこなのだろう。ヤンチャの匂いがしますな。

当然、先ずは何をおいても生ビールから入る。

 

 
付き出しは「イソモン(磯もん)」という地元で穫れる貝。
磯で穫れる貝を総称してそう呼ばれる事が多いが、見たところ1種類だけだから、どうやら地元ではそう呼ばれている貝なのだろう。一瞬、シッタカ(尻高)にも見えたが、似ているけど頂きはシッタカみたく鋭く尖ってないから別な種だね(註1)。

金串で根元を刺し、貝を手でぐるりと回しながら身を取り出す。こうすると、先っちょの肝までキレイにとれる。
味はシッタカとほぼ同じで旨い。肝のホロ苦さがよろしおまんな。所謂サザエの壺焼き系の味だ。それよか柔らかいけど。

 

 
お次は黒ビール。
黒ビールの生を置いてある店は少ないから、飲むことにした。

 

 
久し振りに飲む黒ビールは豊潤で旨い。

 

 
刺身盛合せ。
左は上からモチガツオ、モチガツオ心臓、グレの白子。右はヒトハメ、グレ、ウツボのたたきである。

モチガツオとは紀州の春の味覚の一つ。黒潮に乗って2~5月頃に紀伊半島沖に現れるカツオの中でも午後になると岸近くに寄って来るモノのことをいうそうだ。本来、カツオは遠洋にいるものとばかり思ってたけど、そうゆうカツオもいるんだね。
それを釣り上げて活け締めにして即座に陸揚げしたものは、死後硬直が始まる前のモチモチとした食感が味わえるそうだ。モチモチだからモチガツオと呼ばれてるってワケだね。付け加えておくと、モチガツオと言える状態は短く、水揚げされてから6時間以内なんだってさ。

モチガツオから食べてみる。
\(☆▽☆)/ワオッ❗、確かにモチモチの食感だ。
旨味もあって、(´ω`)うみゃーい。

お次は心臓だ。
艶々してて張りがあり、如何にも鮮度が良さそうだ。
(・o・)あっ、コリコリだ。珍味ですなあ。

続いてグレの白子。
コチラも見るからに鮮度が良い。たぶんグレの白子は初めて食べるんじゃないかな。
うん、臭みは全然ない。期待どおりの味だ。旨い。
とはいえ、鯛やフグの白子の旨さには及ばないけどね。

右側に移ろう。
わかりにくいが、一番上は「ひとはめ」という海藻である。
人をハメちゃうの❓何だか純真な田舎娘をシャブ中にしてソープに売り飛ばす悪いヤクザみたいな名前じゃないか。もしくは妖怪の名前みたい。『悪戯妖怪ひとはめ』。
「雨の日でもないのに道の角を曲がった所に水溜まりをこさえ、人がハマったのを見て、キャッキャッと喜ぶイタズラ系妖怪の事。」とかさ。
スゲー名前だなと言ったら、お女将さんが正式名称は「ヒロメ」だと言って小冊子みたいなのを見せてくれた。

 

 
「それによると、こう書いてあった」と書きかけて、邪魔クサイので画像を拡大する。

 

 
ようするにワカメの親戚みたいなものだ。
ただし細長くなくて、名前のとおり幅が広い。
ちなみに「ヒロメ」の「メ」は海藻(海布)という意味。これはワカメを漢字で書くと「若布」と書くことからも解る。
「ヒトハメ」の方は後で調べてみたら、人をハメるというヤバい由来は全然なくて、〝一つの葉〞で「一葉布」なんだそうな。

 

(出展『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』)

 
(出展『和歌山県ホームページ』)

 
葉部が大きな卵形で切れ込みがなく、メカブを作らないのがワカメとの違いみたい。

味は旨い。
シャキシャキとした食感なのに、部位によっては柔らかくてとろみがあって美味しい。粘質物に含まれる食物繊維「フコイダン」がワカメより多いそうだ。
とはいえ、生のワカメをサッと湯通ししたものと、ほぼ変わらない。黙って出されればワカランだろう。

最近は養殖も試みられており、「紀州ひろめ」というブランド名で販売促進されているという。
しかし近年は温暖化で冬場の海水温が下がらないためか、生育状況が良くなくて、収穫量は年々減少しているという。

ネクスト、その下はグレの刺身。
えー、グレとは関西での呼び名で、関東ではメジナと呼ばれている磯の代表的な魚ですな。
グレにはあまり良い印象を持ってない。磯臭いのだ。特に夏場はゲロ臭い。けど餌が違う冬場は美味であるという話も聞く。
それでも何度か食べた事はあるが、特別旨いという印象はない。
この時の味の感想の方だが、1年近く前の事なのでハッキリとした印象はない。ただ、グレにしては旨かったような記憶が残っている。

最後は「ウツボのタタキ」。
ウツボは見た目が凶暴且つグロテスクで小骨も多いので積極的に食べる地方は少なく、紀伊半島南部の一部と房総半島南部、高知県くらいだろう。
何度か食べた事があるが、タタキとはいうものの、生ではなくて火が結構入っている。レアチャーシューとか、ステーキでいえばミディアムレアみたいな感じに仕上げられたのものが多い。
色は白っぽくて鶏肉に似ていて、身は肉厚で柔らかい。味は淡白ではあるが独特の旨みがある。一方、皮は歯応えがあって弾力が強い。皮下と共にゼラチン質でコラーゲンも豊富そうだ。コチラの部位は、噛むと皮下のゼラチン質から濃厚豊潤な旨みが広がる。この身と皮の2つの異なる風味が合わさった味わいがウツボの最大の魅力かもしれない。
とはいうものの、めちゃくちゃ美味いってワケでもないけどさ。食べる機会があれば、トライしてみてはと云うレベルだ。

 

 
海老団子。
野菜も入っている。呻くほどではないが、旨い。

客は誰も来ない。
4月7日に東京や大阪など7府県に対してコロナウイルスに対する緊急事態宣言がなされていたが、和歌山県は対象外だった。
なのに、この閑古鳥の状態である。こんなとこまで影響力があったんだね。未知の病気だっただけに、当時は皆、相当にビビってたんだろう。あとは下手に調子ブッこいて外出して罹患でもすれば、周囲からの批判に晒され、病人なのに袋叩きに遭いそうな雰囲気があったせいもあるかもしれない。
尚、緊急事態宣言の対象を日本全国の都道府県にまで拡大したのは、もう少しあとの4月16日になる。

そういや、この時期には和歌山市の病院でもクラスターが発生したような気がするなあ。その影響もあったのかも。
結局、この日は他に一組の客しか来なかった。オヤジさん曰く、普段は満杯だそうで、土日などは予約しないと入れないそうだ。心なしか元気がなかったのは、そのせいかもしれない。いつもはもっと威勢がいいんだろね。

その後、和歌山県は知事の仁坂吉伸氏の適切な対応で、2021年の2月現在に至るまで感染は少数で抑えられ続けている。あまり報道されることはないが、その手腕は高く評価されているようだ。
余談だが、この仁坂さん、実を言うと蝶屋である。つまり、趣味は蝶の採集・蒐集・研究なのである。
去年の2020年10月には『ブルネイの蝶 Butterflies of Brunei』(NRC出版)という図鑑も出版されておられる。
定価10,000円+税(送料別)と結構な額の本だが、結構売れていて、在庫わずかだという。
これは蝶の雑誌『季刊 ゆずりは』に連載されていたものが下敷きになっていて、仁坂さんがブルネイ大使を務められていた2003~2006年に採集された標本を整理され、図鑑にしたものである。内容は、標本のカラー図版と各解説、巻末にブルネイの蝶663種のチェックリスト付いている。中には新種の可能性があるものも含まれているようだ。

 

(出展『Amazon』)

 
図鑑そのものは見ていないが、「季刊ゆずりは」の連載は一通り見ている。珍品もそこそこ採られておられるので、正直驚いた。どうせ片手間の何ちゃって蝶屋だと思っていたからである。
さておき、和歌山でも網を振られているのかな❓まあ、この御時世だと、それどころじゃないだろうし、見つかったらボロカス書かれるからなあ…。最近の世の中は、おおらかじゃないから揚げ足をとって、徹底的に叩いてくるからね。嫌な時代だよ。
えー、在庫わずからしいので、購入される予定の人は急ぎNRC出版か南陽堂にホームページにアクセスされたし。

話が逸れた。本道に戻そう。

 

 
お店の自家製カラスミ。
カラスミって魚卵好きには堪らんよね。何であんなに美味いんだろうと、つくづく思う。究極の酒のツマミの一つだろう。
となれば、ここは焼酎だろう。

 

 
勿論のこと、ロックである。

 

 
鹿児島県霧島市の国分酒造の芋焼酎『安田』。
店主曰く、芋麹で造られた全量芋製焼酎で、入手困難ゆえにプレミアが付きつつあるという。
通常の芋焼酎は米を使用して麹を造るのだが、これは麹造りから「芋」を使用しているから全量芋製なのだ。芋麹を用いることによって、より芋の風味が濃厚な仕上がりになるそうだ。
使用しているサツマイモも、通常使われる黄金千貫(こがねせんがん)とは異なり、蔓無源氏という品種で仕込まれている。
この芋は今から百年ほど前に食用として栽培されていたサツマイモで、わずか10本の苗から復活させたという。
尚、「安田」という銘柄の由来は、平成4年より国分酒造の杜氏となった安田宣久氏の名字を冠したものだそうだ。

飲んでみる。
あれっ❓ガツンとくるかと思いきや、優しい。香り豊かでフルーティーなのだ。芋焼酎にしては女性的だ。コレってワイングラスで飲んだ方がいいかもしんない。その方が、より香りを感じられそうだからね。
御託を抜きにして、味は素直に旨い。調子ブッこいてガンガンに飲みそうだ。でも、今日はちゃんと電車に乗って帰らねばならぬ。酒バカにならぬよう、ちっとはセーブしよう。
けどカラスミを少し囓って焼酎を口に含んだら、ブレーキホースが瞬時にブッた切れた。焼酎⇒カラスミ⇒焼酎のエンドレス運動が始まる。
この円環のためには下に敷いてある大根が邪魔だ。マイルドアイテムは要らぬ。酒呑みは口中の濃い塩味と旨味を酒で洗い流すのを旨(むね)としているのだ。大根は大根として別に食うべし。それはそれで旨いのだ。

 

 
こんなの頼んだっけ❓
たぶんカツオの心臓の煮付けだと思うが、食った記憶もない。
まあ味は大体想像つくけどさ。おそらく基本は魚の内臓の味で、ホロ苦かったんだろう。
こうゆう渋い酒のアテは、エンジンがかかりやすい。

 

 
『国分 純芋 醸酎』。
コチラも国分酒造の芋焼酎で、「現代の名工」として国から表彰された安田杜氏が手掛けたものだ。
コレも「安田」と同じく従来の製法を払拭し、麹造りの際に米を使用しないサツマイモ100%の芋焼酎だ。ただし、地元産のさつまいも黄金千貫で芋麹を造り、黄麹で仕込んだものである。蒸留後は無濾過・無調整で1年熟成。加水せずにそのまま蔵出しされたものだそうだ。ゆえなのか、アルコール度数は35度と高い。

飲んでみる。
ふくよかで華やかだ。黄金千貫を贅沢に使い、白麹ではなく黄麹を使用しているからか特徴的な甘みと、まろ味(旨味)も感じられる。こっちも旨いね。甲乙つけ難いが、どちらかというとこっちかなあ。

 

 
蛍烏賊の沖漬けだよね。
これも、あまり頼んだ記憶がない。どうせ焼酎に合うだろうと思ってオーダーしたんだろな。どうみても酒呑みが好きそうなものだもん。

あっという間に時間が過ぎた。
旨い食いもんと旨い酒は時間を忘れさせる。
何で幸せの時間は短く感じるんだろ。解るようで解らない。

すっかり外は夜になっていた。駅の光がまばゆい。
午後8時39分発の和歌山ゆきに飛び乗る。

 

  
23時40分、天王寺に到着。

 

 
23時48分発の大和路線の難波ゆきに乗る。

 

 
ようやくJR難波駅に到着。

 

 
23時56分。期限ギリギリで改札を出た。

 

 
外に出ると、まあるい満月が夜空に掛かっていた。
ここに旅の円は閉じた。
小さく息を吐き、「これにて青春18きっぷの旅、終了。」と呟く。
春のやわらかな夜気は、どこまでも穏やかだった。

                        おしまい

 
追伸
第二章の途中で頓挫していたシリーズだが、何とか再開して10ヶ月後に完結できた。基本的には中途半端なのは嫌いなので、ホッと一安心。ようやく肩の荷が下りたよ。
思えば第一章の福井編が5話、第二章の武田尾・三田編が4話、第三章の山陽道編が2話、第四章の紀州編が3話の計14話も書いている。しかも各話が長い。自分でもよく書いたなと思う。
途中で頓挫したのは、多分この長さゆえだったのではないかと思う。書いてて、進まない終わらないで自分でも途中でウンザリしてきたのだ。そこへきてカトカラシリーズの連載が再開したものだから、そっちに力を注ぐことになったのだろう。
今年度の目標は文章を短くする事かな。でも脱線癖を治さねば無理だね(笑)。
文章を書き慣れない人は長い文章を書くのが苦手だろうが、実を言うと短い文章の方が難しい。慣れれば長い文章は誰でも書けるようになるが、それを削ってコンパクトにする方が遥かに難しいのだ。付け足すよりもソリッドに削る方が、より時間もかかるし、難産なのだ。

例によって、この日の正規運賃を示しておこう。

JR難波⇒道成寺 ¥2310
道成寺⇒紀伊田辺 ¥680
紀伊田辺⇒JR難波 ¥3080

              計 ¥6070

今回のチケットは金券ショップで購入した4回分¥6000(もしかしたら¥5000かも)のものだから、1回分を¥1500とすれば、以下の計算式となる。
¥6070ー¥1500=¥4570
つまり、¥4570もお得だったワケだすな。やっぱ青春18きっぷは、とってもお得なんだね。

そろそろ春も近い。
「かんてき」には、今年も行きたいなあ…。モチガツオと自家製カラスミは、もう1回食べたい。

(註1)シッタカみたく鋭く尖ってないから別な種だね

帰って調べてみたら、正式名称はクボガイのようだ。

 


(出展『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
北海道南部以南の日本各地、朝鮮半島、中国南部にかけて分布する。潮間帯の岩礫地に棲み、藻類を食べる。
「磯もの」や「磯玉」と呼ばれ、シッタカと共に海辺の居酒屋や宿などで茹でたものが出ることがある。身は小さいが、はらわたは磯の風味があり、足は甘みがあって美味。
(『Wikipedia』より抜粋)

参考までにシッタカの画像も貼り付けておきます。

 

(出展『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
正式名称は「バテイラ」というらしい。けどあまり使われてなくて、シッタカの方がポピュラーな名前だす。
それにしても、流石のぼうずコンニャクさんだ。食べられる魚介類は調べりゃ何でも出てくる。ホンマ、重宝しとります。

 

禁断のマリアージュ

 

先日、奈良漬けが半額になっていたから、思わず買ってしまった…。
勿論、奈良漬けの基本は瓜だから、瓜の奈良漬けだ。
でも奈良漬けなんて正直どうでもいい存在なのを、買ってから気づく。

 

 
「甲南漬け」と書いてあるが、名前が違うのは神戸は灘で作っているから奈良漬けとは言えないのだろう。でも中身は奈良漬けそのものと言っていい。
因みに「甲南漬け」は、関西ではそこそこ有名だ。
そういえば昔、CMとかやってたな(註1)。全然、画像が動かないで、音だけが流れてるヤツ。

🎵灘のめーいさぁ~ん(名産)、甲南づけー、甲南づけ~

あっ、ちゃんと歌えるやん。ガキの頃の記憶力ってスゴいな。最近は何でもすぐ忘れるのにさ。
あっ、ここで気づく。甲南漬けの文字の横にちゃんと平仮名で「ならづけ」と書いてあるわ。んっ?「甲南ならづけ」ってことか。昔は奈良漬と書いてなかったような気がするけど、創業140年余年のプライドを捨てたのかな?(甲南漬けさん、昔から書いてあったならゴメンなさい。)

一応言っとくと、奈良漬けとは野菜を塩漬けにし、何度も新しい酒粕に漬け替えながら作る漬物の事ね。酒粕をふんだんに使ってるから、お酒に弱い人などは奈良漬を食っただけで酔っ払うらしい。
そういえば、昔は飲酒運転の検問で止められたら、『ワシ、さっき奈良漬食いましてん』とか言いワケするオヤジが結構いたようだけど、現代ではそんな言いワケをする人は皆無に近いだろう。
それで思い出した。昔、酒飲んだあとに何人かで先輩の車に乗って移動してる時に検問で止められ、咄嗟に『先輩、車に乗る前にウィスキーボンボンを食ったでしょう?あきまへんがなー。』とかデタラメを言って乗り切ったことがあったなあ…。飲んでない人間が多かったとはいえ、あんなウソっぱちがよく通ったなと自分でも驚いたんで、よく覚えている。

話が逸れた。戻そう。
で、奈良漬けと云えば鰻かなと思って、しゃあなしに奮発して鰻丼をつくった。

 

 
あっ、錦糸玉子の鰻玉丼を作ったんだね。忘れてたよ。最近は忘却の人なのだ。ボケないことを祈ろう。

奈良漬の位置が決まらないので、ちょいと変えてみる。

 

 
あんま変わらんなあ。茶色で限りなく地味なので、きっと位置を変えても誰も気づかんでござるよ。

鰻丼は美味しゅうございました。
けど、鰻丼に奈良漬はそんなには必要ない。せいぜい3、4切れで事足りるから、当然の如くかなり余った。かといって、そうしょっちゅう高価な鰻丼は食えない。

(・。・;…。さて、どうしたものか❓
奈良漬けは嫌いじゃないけど、好きでもない。あえて言うなら、寧ろ嫌いな範疇に近い。困ったなあ…。

考えてたら、思い出した。そういえば奈良漬けとクリームチーズが意外と合うということを何かの媒体で聞いたことがある。とはいえ、ちょっと変態的組み合わせの禁断のマリアージュである。
(@_@)デヘデヘ。オデ、オデ、おめぇの事さ、ずっとめぇから好きだったべさ。そのキレイな肌さ、触らせてくんろ。😱👩キャア ━━━━━━━━━ ❗
真っ白やわ肌のクリームチーズが、ずっと風呂入ってません的なオッサン奈良漬けにエッチな悪戯をされてる図を想像してしまった。

相変わらず妄想が過ぎる阿呆である。
しかし見方を変えれば、コレこそ千載一遇のチャンスかもしれない。🎵行け行けドンドン、行けドンドン。流れ的には躊躇する理由はない。保守的な考え方を否定するつもりはないけれど、自分のなかでは余程の事がないかぎりは唾棄すべきものだ。今回なんぞは所詮は危険と隣り合わせの選択ではない。死ぬワケではないんだから、迷わずゴーでしょう。

とにかく、いっちょ試してみるか…。
クリームチーズを買いに行く。

 

 
クリームチーズといえば、Kiriクリームチーズである。とはいえ、だいたいクリームチーズはコレしか売ってないんだけどね。

それに合わせる酒は日本酒にするか、ワインにするか迷った。何か国際結婚の図を想像した。一方は頑なに日本酒を飲んでる新郎チームで、もう一方はワインを頑なに飲んでるフランス人の新婦チーム。両者が左右のテーブルに分かれて、この奈良漬クリームチーズを前にして、どちらの酒と合うか、その優位性を口角泡飛ばして主張しあってる図である。揉めてまんなあ。
国際結婚も大変そうだな。あの時、しなくて良かったよ。
まあ、酒はどっちでも合いそうだけど…。

というワケで仲良くしましょう。
両方、買っちゃいました。

 

 
富山県は黒部市、銘酒の誉れ高い皇国晴酒造の『幻の瀧』の純米吟醸である。
「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」の「食中酒部門」で、3年連続の金賞受賞をしているらしい。
何度か飲んだ事があるが、スッキリとした辛口で、どんなツマミにも合う。名水で仕込んだ酒が不味いワケがないんである。

ワインはコチラ⬇。

  

 
サンタ・ヘレナ・アルパカ・シャルドネ・セミヨン。
これは大手スーパーやコンビニでも売ってるから知っている方も多かろう。アサヒビールが輸入する一番有名なチリワインである。値段も1コインの500円くらいと激安だから売れるんだろね。お手軽なんで、自分も珠に買う。
品種は、“白ワインの女王”とも称される「シャルドネ」と貴腐ワインの原料でもあり、糖度が高く酸味は穏やかな「セミヨン」をブレンドしたものだ。
味は一応辛口となっているが、辛口派としては結構甘い。セミヨンが入っているから当然かもね。まろやかなのも、そのせいだろう。でも、この値段でこの味なら文句はない。飲みやすいのだ。
但し、これは3、4年前のものである。先日、流しの下の闇の食料貯蔵庫に長い間眠っていたものが発掘されたのである。

奈良漬けを小さく切り、半ばヤケクソ気味でクリームチーズに合わせてみる。

 

 
結構、イケる。奈良漬がレーズンみたいな役割を果たしているのだ。甘みとアクセントとなる歯応えがあって、レーズンよりもいいかもしんない。
日本酒にもワインにもバッチリ合う。
ここに禁断のマリアージュ、成立せりである。

 
翌日も食べた。
しかし、クリームチーズを足して、もう少し奈良漬の個性を和らげることにした。それでも、真っ白なクリームチーズが、うっすらと茶色がかってしまっている。デへデへおじさんはしつこくてパワフルなんである。

 

 
今回は赤ワインをチョイス。
Clacson Le Rouge 2016(クラクソン ル・ルージュ)。

  

 
フランス産のワインだ。
産地は Languedoc-Roussillon(ラングドック-ルシヨン=通称ラングドック)。プロヴァンス地方からピレネー山脈、さらにスペインとの国境に至る南仏沿岸地域の旧地域圏名で、フランスの主要なワイン生産地の一つでもある。この辺はバイクで、走ったよなあ…。懐かしいね。そういえばワイン畑もそこそこあったような気がする。
ブドウの品種は、merlot(メルロー)、Syrah (シラー)、Grenache(グルナッシュ)。

価格は1500円くらいだったと思う。あんまり憶えてないのは、これも流しの下の闇の食料貯蔵庫に眠っていたからである。

色はガーネットレッド。香りはバニラとベリー系やチェリー系が混ぜあわさったような感じで、味はそれらベリー系のフルーティーさにスパイシーさが加わる。タンニン(渋み)はそれなりにあるが、強くはない。フルボトルという程にはドッシリとしてはいなくて、ミディアムの範疇だろう。しかし、自分にしてはちょっと甘いかな。

ワインを一口飲んで、食べてみる。
あっ、( ´∀`)旨いわ。赤ワインとも相性がいい。この甘さが、チーズの良さを引き立たせてくれてるような気がするなあ。白よか赤を推すよ。

 
数日後、さらにそこにアホカドを加えてみた。
アホカドがそろそろ食べないといけない頃合いだったし、以前にアホカドとクリームチーズが合うとも聞いていたからである。
アホカドの変色を防ぐためにレモン汁を少し搾って、混ぜ合わせてみる。

 

 
緑色になったよ。
少しは見てくれが良くなった。お洒落になったかも。華麗なる変身である。デへデへおじさん色はだいぶ軽減された。

今回は白ワインを用意した。アホカドには白が合うと何となく思ったからだ。

 

 
マルケス・デ・テナ メルセゲラ・ソーヴィニョン・ブラン(Marques de Tena Merseguera-Sauvignon Blanc)。
スペイン産の白ワインである。これも闇の食料貯蔵庫出身なのでうろ覚えだが、確かバレンシアのワイナリーのものだったように思う。名前からすると、お馴染みのソーヴィニョン・ブラン種とマイナーな感のあるメルセゲラ種をブレンドしたもののようだ。
ラベル等含めて品のある感じで高そうに見えるが、実をいうと安い。たぶん、500円くらいだったと思う。
味はフルーティーで華やかな感じで、爽やかさと酸味も適度にある。青リンゴのような匂いも仄かに香る。ライトなのだが渋みもややあって、値段の割りには満足度は高い。色も輝けるような黄金色で綺麗だ。

お約束のようにワインを一口飲んで、食べてみる。
あっ、これも結構旨いかも。白ワインにも合う。
奈良漬とクリームチーズとアホカドなんて、ある意味ムチャクチャな組み合わせだな。
しかし、これまた禁断のマリアージュじゃよ。
でも、これって重婚じゃね❓
重罪だね。益々もって禁断だすなあ。

                   おしまい

 
追伸
って書いといて、特に言うことはない事に気づく。
つい、クセで追伸と入れちゃったのだ。

(註1)甲南漬けのCM
今でもサンテレビでは流れてるらしい。ちゃんと画像は動くみたいだ。

 
 

あおはる1day trip その弐(後編)

 

『お城とおでんとお菊さん』後編

 
晩飯に何を食うかは、彦根から姫路へと向かう電車の中で既に決めていた。
姫路といえば、今や「姫路おでん」である。それを食う為もあって、彦根からここまで青春18切符で大返してやって来たのだ。
姫路おでんは、以前は関西でもあまり知られていないローカルフードだった。しかし、数年前にTVで紹介されてから脚光を浴び、今やメジャーな食いもんにのし上がってきている。
でも実を言うと、姫路おでんって食ったことないんだよねー。12、3年前に当時のオネーチャンと来た時はまだ姫路おでんなんてもんは全然有名じゃなかったんである。あの時って、いったい何食ったんだろ❓
懸命に考えたみたけど、全然思い出せないや。夏場だったから、おでんなんて絶対食ってないことは確かだ。夏場におでんなんぞ食いたいとホザいたら、彼女にシバかれとるわ。シバかれとったら、いくら健忘症のニワトリおつむのオイラでも覚えているだろう。

帰り道は一本隣の小溝筋の商店街を通った。
TVで見た日本酒の酒造会社が経営している老舗おでん屋というのを探す。しかし、困ったことに店の名前を覚えていない。それでも何とかなるだろうと思ったのだが、どうもそれらしき店が見つからない。仕方がないので、もう1回観光案内所へ行く。そこで訊くのが一番の早道じゃろう。

行くと、受付の若い女性にパンフレットを渡された。

 

 
おでん屋のガイドマップだ。
こんなもん、あったのね。

でも開いてみたら、思ってた以上におでん屋だらけだ。

 

 
(# ̄З ̄)ちっ、裏にまである。

 

 
こりゃ、ワカランわと思って、その若い女性に訊いてみた。

『あのう…、この中でお姉さんのお薦めの店はどこですか❓もしくは一番有名な店はどこです❓あっ、一番老舗の店でもいいです。』
だが、何だか反応が鈍い。
ならばと間髪入れずに『酒造会社がやってる昔からあるおでん屋さんって、どれですかね❓』と訊いてみた。
そこで、漸くその女性が口を開いた。
『そういうことは、一切お答えできません(-_-)』
冷たい声でピシャリと言われた。
(;゜0゜)唖然とする。
言ってることは理解できる。観光案内所の人間が、どこか特定の店に肩入れして紹介するのは不公平だからと云う事たろう。誠にもって正しい意見ではある。
それに人にはそれぞれ好みというものがある。お薦めした店が万人に合うワケではないだろう。あとで、「不味かったやんけ、ボケー(#`皿´)」とも言われかねないのである。
でもさあ、他の場所の観光案内所では結構親身になって色々教えてくれたぞ。
例えば長野県上田市の観光案内所では、旨いそば屋を教えてくれませんか❓と尋ねたら、特にここが美味しい、お薦めだとは言わなかったけれど、ここが昔から有名な老舗店ですとか、ここがいつも行列ができてますとか、ここが有名観光地に近くて便利ですとか、ここが一番コスパがいいですとかとは言ってくれた。つまり特定のオススメは決して言わずに、ちゃんと広く情報は流してくれたのだった。あとは観光客がそこから好きなところを選べばいいのである。これならクレームが出ることもないだろう。賢いですな。

ワタクシの質問一つめと二つめの、お薦めの店はどこですか❓と一番有名な店はどこですか❓は、その若い女性の答えでもいいだろう。なぜなら、多分に個人的意見が入る余地があり、また答えは一つと限定できないからだ。
しかし、一番老舗の店はどこですか❓という質問は、その若い女性当人がちゃんと勉強していれば答えられた筈だ。貴方の好みを訊いているワケではないからだ。単に事実を訊いているだけだ。お薦めを訊いているワケではないのである。二度言うが、それならば、答えられた筈だ。
次の、酒造会社がやってる昔からあるおでん屋さんってのも、彼女の好みやお薦めを訊いているワケではない。もし知っていれば、事実を答えればいいだけのことだ。だが、答えられないと云うのは、どうせ勉強不足で知らないだけなのだろう。
ようは言い方である。上田市の対応がヒントにはなろう。そもそも観光案内所の仕事は接客業である。お客様に情報と云う価値あるサービスを提供してこそ、何ぼのもんなのである。そこには官も民も関係ない。たとえ市というお役所の運営だったとしてもである。
ハッキリ言う。彼女の答え方は全てのお店を公平に扱っていますという一見正当な理由の傘(笠)に甘えた、単なる怠慢行為に過ぎない。もし観光客に対して親身になって相談を聞いているならば、その紋切り型の答えはありえないだろう。
ワテは優れているから(笑)、何とでも解決策を見つけられるからいい様なものの、普通の観光客ならば困惑するだろう。己の力で探せってか❓だったら、パンフレットだけ置いとけや。アンタは、いらん。
(-“”-;)あっ、大人げなく怒ってしまったよ。
スマン、スマン。まだ若いからそれも仕方がないよね。是非この先経験を積んで、いい応対をして下さいな。キミなら、きっと出来るよ。大丈夫d=(^o^)=b

ここまで書いて、そこまで怒ることないじゃん、そんなのネットで調べればいい事じゃんか❓と疑問を持たれた方もいるだろう。おっしゃるとおーりである。
出来ることなら、ワシもそうしたかったとよ。でもスマホが古いのでバッテリーがバカになりかけてて、直ぐに電池が無くなるのだ。だから今日もずっと機内モードにしているのだが、それでも電池が無くなりかけていたのである。もし、ここで機内モードを解除してネット検索したら、迷惑メールがてんこ盛りでやって来て、あっという間に電池切れになることは明白である。そうなったら、姫路おでんの写真が撮れんのじゃよ、もしー。だから観光案内所に頼るしかなかったというワケなのさ。
何かここ書いてたら再び沸々と怒りが湧いてきたわ。

まあいい。怒ったところで問題が解決するワケではない。流そう。そんな事に拘ってても疲れるだけだ。
もうこうなったら自分で探すしかない。おでんガイドマップをガン見する。

丹念に見ていくと、それらしき記述のある店が見つかった。
店の名はどうやら『酒饌亭 灘菊 かっぱ』と云う店のようだ。言われてみれば聞いたことがあるような気もする。
紹介文にはこうあった。
「酒蔵が経営する”姫路おでん”の老舗。姫路駅前でカウンターと太鼓のイスで50年余。大串おでん。”SAKE”一合徳利瓶が名物。

【おでんダネの特徴】
旬の素材・地元の食材を一つ一つ丁寧に仕込んで、こんぶ、かつを、地酒を使った伝承の出汁で煮込みます。

ここまで書いてあるんだったら、教えてくれてもいいやんか❗やっぱあのアマぁ(#`皿´)、知らなかっただけか単に性格が悪いだけだ。地獄に落ちろや、ドブスめがっ❗❗
どーどーどー。幸い見つかったから良いではないか。そう怒る事はない。怒ると体によくないあるよ。

想像はしてたけど、やっぱ店は駅から近かった。
歩いて5分とかからなかった。

 

 
如何にも大衆的な感じがいいねぇ。
最近はお洒落な店よりもぐでんぐでんの酔っ払いのオヤジが好きそうな店に惹かれる。何やらそっちの方が落ち着くのだ。ようするに自分もオジサンになっちったと云うことなのね。

 

 
店舗の上がセクシー系の店なのに、ちょい笑う。
老舗感、大幅減やんか(^○^)

 

 
店内はこんな感じ。悪くない。
昭和33年創業というから、もう60年も続いてるって事か。ならば、それなりに期待が持てそうだ。

明るい声のオバチャンに煙草を吸う人用の壁際のカウンター席に座るよう促される。狭い店なんだから、どこだっていっしょだろうにと思うが、便宜上色々あるんだろね。酒飲むのにも面倒くさい世の中になってきたなあ。何かとコンプライアンスで、どんどんツマンナイ世の中になっていってる。まるで何かの寓話みたいだ。5年後、コンプライアンス人間は、みんな原因不明の奇病にかかって口がきけなくなるのさ。

そんな事よりも、先ずはビールである。

  

 
そういえば、今日初めてのビールだ。電車に乗る前に売店で買ったろかいと思ったが、まだおバカになるには早いと思って自重したんだったワ。コンプライアンス的にぃ~。

(≧∀≦)ぷしゅー。
あるこほるが、瞬時に全身の血管の隅々にまで運ばれてゆく。堪んないね。

落ち着いたところで、さてさて問題は何を頼むかだが、先ずは何をおいても姫路おでんである。
ここで姫路おでんとは何ぞやと申しますると、どうやら生姜醤油で食べるおでんのことを「姫路おでん」と呼ぶらしい。姫路には関東煮と呼ばれる濃い味付けのおでんと関西風の薄味のおでんの二種類が存在するが、出汁のベースには全く関係がなくて、生姜醤油で食べるかどうかが姫路おでんか否かの大きな決め手となるらしい。つまり生姜醤油で食べるおでんは全て「姫路おでん」ってワケ。おおらかだけど、ざっくりでんなあ。
姫路を中心に加古川~相生辺りの地域に限定されるもので、2006年に町おこしを考えるグループがその食べ方を「姫路おでん」と名付けたことが始まりのようだ。

ふぅ~ん(´・ω・`)
でもさあ、それって帰りにコンビニでおでん買ってさあ、家で自分で生姜醤油を作って、おでんにソレつけて食べたら「姫路おでん」ってことかあ❓
気せずも根元的な問題に触れてしまう。
そう考えると、果して姫路で今おでん食う意味あんのかえ❓という疑問が俄(にわか)に首をもたげてくる。けんど、強引にシャットアウト。こういう事に徒(いたずら)に疑問を持ってはならない。たとえそうであったとしても、先ずは本場の姫路おでんを食わなければ、姫路おでんの何たるかを己の中に規定できないじゃないか。基準無きものについては論じられないのである。だいち、それでは彦根から此所まで苦労してやって来た意味が瓦解してしまう。o(T□T)o意味ないじゃーん。
ワタシは姫路城を見る事と姫路おでんを食うことを目的に遠路はるばる此所までやって来たのだ。しかと、己にそう言い聞かす。

早速メニューを見る。あった、あった。コレだ。

 

 
TV放送での記憶だと、この店は赤おでんと白おでんってのがあって、それが名物のようだ。コヤツが多分それだね。
ふむふむ。どうやら大串セットというのお得のようだ。取り敢えず姫路おでんの定番そうな赤おでんのセット(¥540)の方をたのむ。

 

 
見た目のルックスが、まるで漫画の中の🍢おでんだ。
赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』のチビ太がいつも手に持ってたのが、この形のおでんだね。それがやがて漫画の世界での典型的なおでんの形となっていったのである。

 
【チビ太】
(出典『越谷秘宝館』)

 
でも実際には、こんな形のおでんは見たことがない。あれはあくまでも象徴としてのおでんであって、この世には存在しないものだとばかり思っていた(註1)。それが今、現実的に目の前にある事に半分カンドーして、半分笑ってしまう。冗談かよ…。確信犯だったら、尊敬するわ。

具は上からスジ肉、玉子、厚揚げ、コンニャク、ごぼ天である。よく見ると、玉子も含めて全部小振りである。チビ太の事を考えての配慮かな。それとも赤塚先生へのオマージュ❓

カウンター周りで生姜醤油を探したが、あれっ?無い。どうやら生姜醤油は既にかかっているようである。この店では、そういうスタイルらしい。
でも自分でおでんを生姜醤油にジャバッとつけて、ヤアと食べるという、既成の概念を打ち破る勇気の瞬間が楽しみたかったなあ…。とはいえ、店にはそれぞれのスタイルというものがある。ましてや、60年もの歴史がある店だ。まあ、そこは致し方なかろう。

取り敢えず左手を腰にあて、チビ太の如くおでん串を右手に掲げ、直立不動で清く正しく食ってみる。コチラも赤塚先生へのオマージュだ。何だかバガバカしくって楽しい。

味はねぇ。よく味が具材にしゅんでる。ちょっと濃いかなと思ったが旨い。
でも破壊的な旨さではない。想像の範囲内だ。普通ちゃ、普通なのだ。因みに、生姜の味は思ったほどしなかった。

ふと、思い出した。以前も書いたことがあるような気がするけど、昔、ショットBarをやっていた頃のお客さんに「おでん」というニックネームの女の子がいた。アダ名はオラがつけた。客の名前が憶えられないニワトリ頭だからだ。とはいえ、言い訳させて戴ければ、当時はいっぱい客がいたから、そうでもしないと憶えられなかったのである。無い知恵の自分なりの苦肉の策だったのだ。
たしか彼女には「おでん」も含めて4つくらいのアダ名候補があった。でも候補といってもアッシが全部考えたもので、他の3つはそれはもう最低の酷いネーミングだったと思う。何でこんな手の込んだ事をしたのかというと、ニックネームをどうしても「おでん」にしたかったのである。
で、この4つの中から彼女に自分で選ばせた。答えは自ずと決まってくる。だって他の3つはサイテーなんだもん。
勿論、そこへ持ってゆくのに、別な布石も打っていた。
『おでんちゅーもんはなあ、万人に愛されとる庶民的な食いもんやないか。おまえの飾らないでいて、みんなに愛されそうな雰囲気にピッタリやないか。おでん、ええと思うでぇ。大丈夫。おでんそのものやなくて、ちゃんも付けたるやん。』とか何とか言いくるめるトークはそのものではない前にはしていたのだ。でも、ついぞ最後まで呼び捨てで、「ちゃん」をつけることは一度たりともなかった。酷い男である。

その「おでん」とは、一度だけ二人で飯を食いに行ったことがある。場所はお洒落系屋台の寿司屋だったと思う。
彼女は可愛いし、オッパイもデカイし、素直な性格の娘だったけど、話は全然弾まなかった。
何だかツマンナかったのである。別に彼女に魅力が無かったワケではない。単にフィーリングが合わなかったのだ。素直なだけで、個性を感じられなかったのである。そういうものは30分も話せばわかることだ。多分、少し変わった女が好きなのかもしれない。ロクでもない相手だとしても、相性が合えば惹かれあってしまうのが恋だとかいうものなのだ。

ひとしきりのモノローグが終えたところで、次は白の方を頼むことにする。
でも酒粕を使っているらしく甘い可能性がある。左党は甘いものは好まない。それにセットだと具は赤おでんと全く同じラインナップのようだ。飽き性の自分が、それに飽きないワケがない。
値段的には損だが、ならばと単品で白のスジ肉(¥250)を頼むことにした。

 

 
酒粕の良い香りがする。自分ところの酒蔵の酒粕だろうから期待は持てそうだ。当然ここは酒粕に絶対合うであろう日本酒を頼むことにした。

 

 
『本醸造なだぎく』。
意外なほどに辛口で、思ってた以上に旨い。

食ってみる。
濃厚だ。酒の味がスゴくする。甘いが、それほど気にならない。でも、そんなに幾つも食えないだろう。単品にしといて正解だ。

すかさず日本酒を飲む。合うねぇ。
あっ、閃いた。ここは一味をかけて、もっと酒との相性を良くしよう。

 

 
うん、いいね。正解だ。

店に来てから、ずっと懐かしい歌謡曲が流れている。
最初に耳に入ってきたのは町田義人の『戦士の休息』だった。🎵男はだ~れも皆 孤独な兵士~ 笑えて死ねる人生~ それさえあればい~い
懐かしい。映画『野性の証明』のテーマ曲だったよね。
次は小椋佳の『さらば青春』。あれっ❓『さらば青春の時』かな❓どっちだっけ❓とにかく、🎵僕は~ 呼び掛けはしな~い 遠く過ぎさるもの~に 僕は~ 呼び掛けはしな~い 傍らをゆくものさえ~ って方だ。
3曲目は尾崎豊の『15の夜』。これは誰でも知っているだろう。🎵盗んだバイクを…ってやつね。
4曲目はキャンディーズの『ハートのエースが出てこない』。言わずと知れた名曲だ。何かよくワカランがとても嬉しくなってきた。やっぱ、昭和の時代は良かったよ。

もう一品くらい頼もうかと思った。でもおでんはもういいや。とすれぱ、姫路名物だそうだが今まで聞いた事もない『ひねぽん』辺りを頼もうか…。ひねぽんのひねは卵を産まなくなった雌鶏(ひね鶏)の事で、ぽんはポン酢の事のようだ。
でもなあ…、ようはメスの親鳥の肉をポン酢で和えたものだろ❓味の想像はだいたいつく。無理して食べるほどのものでもないだろう。それにこれ以上食ったら、次の店で何も入らなくなるかもしれん。ここは思い切って移動することにした。
5曲目のザザンの『チャコの海岸物語』が終わったところで店を出た。さらば、昭和のノスタルジィー。

駅へと向かう。

 

 
既に陽は落ち、黄昏れ時になっていた。
路上ライブの歌声がビルに反響して谺する。
昼間の暑さが嘘のように涼しい。
風が渡ってゆく。何だか、ほっこりする。
そういえば、もう9月も10日なのだ。
秋の気配を感じた。

 
                    つづく

 
追伸
書き出すと言葉が溢れて、サクサク書けない。
理想は昔に書いた『西へ西へ、南へ南へ』の初回と最終回かな。本当はソリッドな文章を書きたいのだ。
次回、最終回。といっても予定としておこう。

 
(註1)この世には存在しないものだと思っていた
赤塚先生の串おでんのモチーフになった店があるようだ。チビ太のおでんは、公式には上からコンニャク、ガンモ、ナルトで、だしは関西風と設定されているが、この店の当時の具は「はんぺん」「揚げボール」「ナルト」だったという。
因みに、コンビニの「サークルKサンクス」が一時期「チビ太のおでん」と称して、この串に刺したおでんを販売していたようだ。
 

モナーク蝶とb.ioオーガニックワイン

 
年末に、高級スーパー「ビッグビーンズ」に寄った。
そこで、たまたまワインの試飲会をやっていた。

それで予定外に思わず買ってしまったのが、コレ。

イタリア・シチリア島のオーガニックワインだ。
赤と白との2本で3000円。
そもそも普段は極貧ゆえに1本500円のワインを飲んでいるのである。1本500円のワインもそんなに悪かないが、流石にやっぱり味が違うし、パッケージに昆虫がモチーフとして使われているのが決め手になって、つい買ってしまった。

虫好きは、虫がマイナーな存在だけに、ちょいとフュチャアーされてるだけでも嬉しいのだ。
てんとう虫なんかは、女子受けもよろしかろう。あざといが許そう。

買ったら、おばちゃんにオマケにバックが付いてますよと言われた。

あっ、モナーク蝶だ❗
正直、何だかとっても嬉しいや(о´∀`о)

和名はオオカバマダラ。欧米では神聖視されている蝶で、北アメリカからメキシコまで3500㎞に及ぶ長い旅をする事で有名な蝶だ。メキシコの越冬地には物凄い数のモナーク蝶が集まり、たぶん世界遺産にも指定されてた筈だ。

(出典『wypr.org』)

(出典『TERRA―Z』)

とはいえ、ここ数年で激減してるらしい。
ハッキリ言うけど、減ったのは人のせいだ。
渡りをするには、途中に休むためのそれなりの緑地帯が必要だし、エネルギーを補給する為の花も必要だ。しかも、花なら何でもいいと云うワケではない。何種類かの特定の植物の花が無ければ生きてはいけないのである。
きっと開発により、適性な環境が次々に失われていっているに違いない。
しかし、たかが蝶の為に経済活動が休止される事は無いだろう。自然は大切だ。それは誰もが解っている。でも、経済活動の前では、結局そんなものは建て前に過ぎないのだ。自然保護と言っておけば、何でも美談になるし、マスコミもそうしたがるが、真剣にモナーク蝶の事を考えてる人は少ないだろう。

はたと思う。
何にも考えていなかったが、よくよく考えてみたら、ヨーロッパにはモナーク蝶はいないよね❓
オーガニックとか言っても、所詮はイメージかよ❓
オーガニックやエコとかと云う言葉は、何だか怪しい。地球温暖化だって、その裏には結局は金の匂いがそこかしこに垣間見えなくはしないか❓
何か腹立つけど、世界的にみても現状はそんなもんなんだろね。人々の認識は限りなく低いのだ。

やめとこ。
まあ、エコバッグは気に入ったし、あんま文句は言わないようにしよっと…。