吸血蛾

 
『2017′ 春の三大蛾祭り』の第4話(最終回)の余談で吸血蛾について少し書いたが、何とも気になる。

 
春の三大蛾第4話(最終回)

  
怪蛾オオシモフリスズメの採集記を書いたんだけど、掴んだら鋭い痛みが走ったので、Σ( ̄ロ ̄lll)ウギャ❗、コイツ噛みつきよったあー。おどれ、もしかして吸血蛾かあ~( ; ゜Д゜)❓と謂ったくだりがあったのである。

で、んなワケなかろうとは思いつつも帰宅後に一応調べてみた。

妄想でした( ̄∇ ̄*)ゞ、勿論そんなワケはなかった。オオシモフリスズメは吸血蛾なんぞではござんせん(痛みの原因は本文を読まれたし)。
だいたい、そんな大型の蛾が人の生き血を吸おうものなら、知らぬ者などいなかろう。そげな恐ろしい奴が、このネット社会に於いて世間の人々の口の端にのぼらないなんて有り得ないのだ。

そもそも吸血蛾なんぞはホラー小説や映画・ドラマの空想世界のもので、現実世界にはいるワケないと思ってた。横溝正史先生の世界だすなあ(註1)。
だが、ついでに吸血蛾、Vampire mothでネットサーフィンをしてたら、コレが驚いたこと現実にいたんである。

「ロシアのシベリア地方に棲む蛾で、2008年に発見されたらしい。この蛾はヨーロッパ中央部から南ヨーロッパに分布する「Calyptra thalictri」という蛾の亜種なんだそうな。若干斑紋に差異が認められるだけで両者の見てくれはほとんど同じだという。だが、ヨーロッパにいる奴は果物の汁を餌としており、血は吸わないとの事。シベリアの過酷な環境が、加速度的に進化を促したのかもしれない。
それにしても、蚊じゃなくて蛾だぜー。そう大きくはない蛾だろうが、蚊よりも遥かに大きい筈だ。となると、当然ながらそこそこの量の血を吸われちゃうってワケだよね❓
ロシア人って、そんなもんに喰いつかれても気づかんのかね❓いくらなんでも鈍感過ぎっしょ(・。・;
何れにせよ、シベリア地方に行かれる予定の方は、お気をつけあそあせ。」

なんて云う解説文らしきものを書いた。
でも、写真も無しで充分とは言えない内容だった。
と云うワケで、今回は写真もちゃんと添付して、もう少し突っ込んで調べてみることにした。

 
(出展『National Geografic News 』)

(出展 上三点共『maghk.com』)

 
もう少し小さいのを想像してたけど、結構大きな蛾だ。こんなのに止まられて血を吸われたら、普通気づくでしょうに(笑)。きっと、普段は人間なんかよりも野生動物や家畜の血を吸ってんだろね。
いや待てよ、ヒル(蛭)みたいに麻酔液みたいなのを注入しといてから、コチラか気づかぬうちにジックリと血を吸いにかかると云う高等ワザを使う手練れやもしれぬ。

どうやら生き血を吸うのはオスだけらしい。これは意外だった。普通は蚊みたいに卵を産む為に栄養が必要なメスが吸血しそうなものなのにね。まあ、オスならばオスの、そこには何らかの吸血理由があるんだろうけどさ。

噛まれた後は皮膚が赤く膨らみ、痛みもあるそうだ。
でも特に表現が強調されてはいないようなので、激烈なる痛みではないと推測する。
痒みに関しては特に記述が無かったように思う。もっともコチラの英語読解力の低さゆえに見つけられなかったやもしれぬ。
今のところ、刺されても病気(感染症)の心配は無いそうだ。しかし、サンプル数は少なそうだから安心は出来ないだろう。後々になって未知の病気が見つかる事だって無いとは言えない。

 
(出展『maghk .com 』)

 
それにしても茶色くて地味な蛾でガッカリだなあ…。
出来ればニシキオオツバメガ(註2)とかド派手絢爛豪華だったり、もしくはタランチュラみたく黒くて毛むくじゃらのゴワゴワした如何にも邪悪です的な姿であって欲しかった。だいたい悪夢のような存在なんてもんは、それなりに特異なキャラというのが相場なのに、茶色一色とは地味過ぎー。全然、想像力が膨らまん。だから恐怖のストーリーが喚起してこない。せいぜい、「恐怖吸血ムササビ男」とかしか思い浮かばんよ。それじゃあ、何だかギャグっぽいもんなあ…。

 
日本語サイト『カラパイア』には、以下のような文章があった。

『フィンランドでは以前にもCalyptra thalictriという血を吸うようになった蛾が発見されているのですが、今回発見された蛾はCalyptra thalictriとは違う進化をしているとフロリダ大学の昆虫学Jennifer Zaspelさんは述べています。
しかし、外見上の差がほとんど見られないため、ロシアの吸血蛾のDNAとの比較分析を来年の1月に行う予定とのこと。果物を食べる蛾が血を吸うようになったのだとすれば、蛾がどのような過程で吸血するようになったのか調べる手がかりになるとZaspelさんは話しています。』

フィンランドで先に吸血蛾が見つかってんのか?
しかも種名はロシアと同じ「Calyptra thalictri 」という学名じゃないか…。だったら、ロシアで新種のVampire mothが見つかったっていう見出しは変だよね。どないなっとんのん❓
上の文章だと、C.thalictriとは違う進化をしていると書いてあると云う事は別種って意味だろ?訳し方にもよるのだろうが、少なくとも亜種って意味だよなあ。
いや、その下の文では外見上の差が殆んど見られないと書いてあるから、別種だとオカシイよね?
となれば、あくまでも亜種の関係なんだけど、現在、両者は違う進化の道筋を辿り始めていると云う意味か?
どちらにせよ、両者の遺伝解析をやるらしいから類縁関係は何れ解明されるだろう。
ところで、このニュースが流れたのはいつだっけ?

あっ、2008年でねえの。結構、古い。
遺伝子解析から既に10年くらいが経過していることになる。その後、DNA解析の結果はどうなったのだろう?

ネットでこんな記事を見つけた(ブログ「揺りかごから酒場まで☆少額微動隊」)。

『種としてはありふれた、日本にもたくさんいるエグリバ(ヤガ)の仲間で、中南ヨーロッパではCalyptra thalictri(ウスエグリバ)として知られるものの一種のようだという。手を差し出したところ、ちゅーちゅー吸い始めたという。動画、痛そう。
何故血を吸う行動をとるのか?フロリダ大の教授は羽根の模様しか形質的な違いの無い近隣の同種が果実を主食としていることに着目、汁を吸う行動の延長上で、この亜種が鉤爪状の針先を持つ吻口を仲間に・・・生殖行動のときにメスがオスに・・・突き刺し、不足した塩分を補給する、といったことから遺伝的に分化していく途上にあるのではないかという。地理的、羽根の模様、そして行動からいってあきらかに新種なのにDNAの違いがはっきりしていない、未だ種として分化していない、まさに進化の途中にある状態だというのだ。
しかし別の可能性として極端に塩分が少ない土地で(繁殖期のメスにとっては幼虫に)ナトリウムを提供するためやむなく行われてきた行動から発展したものかもしれない。他の種の蝶や蛾にもこういったことを行う習慣があるかもしれないとしている。どっちみち、進化の分かれ道になる可能性は残されるわけだけど。』

何と遺伝的には違いが見られないと云うじゃないか❗
同種の亜種関係で、こんなにも生態が変わるってスゴい例だ。今は進化(分化)の途上にあるって事なんだけど、この新たな生態を獲得してから何年くらいで外部形質も変化して完全な別種になるんだろね?興味が尽きないところだ。でも、別種になってる時には、たぶんワシはとうにこの世からいなくなってるよね。下手したら、別種になるのは何千年後かもしれんもんなあ…。

この記事ではオスではなく、メスが吸血するという前提で書かれている。そっちの方が納得だけど、これはメスで確定なのかなあ?

  
吸血蛾というと、イメージがホラー的だから物凄くビビったけど、よくよく考えてみれば世の中には他にも吸血生物が結構いるんだよなあ…。
ヒルにブヨ、アブ、マダニ、ツツガムシ(ダニ)、ナンキンムシ(トコジラミ)、ヌカカ、ツェツェバエ、スナノミ(ノミの一種)etc…。
マダニやツツガムシ、ツェツェバエなんぞは感染症を引き起こすと致死率が高いし、スナノミは足の裏から皮膚を破って侵入して増殖するというから、現実的には吸血蛾よりもコイツらの方が余程恐ろしいよね。
それにしても、上記のうちヒル、ブヨ、アブ、マダニ、ナンキンムシは、オイラ、既に経験済みなんだよなあ…。
あのおぞましき姿のヒルには何度も血を吸われているし、ブヨやアブにも酷いめにあっている。ブヨのせいで耳がボロボロになった事もあったっけ…。あとで物凄く痛痒くなるんだよね。ヒルはまだ痒いだけだから、ブヨの方が断然に後遺症があるのだ。
マダニにも食いつかれた事が数度ある。慎重に取り除かないと頭が残る。そうなると、感染症になりやすいとか、1年くらい痒みに悩まされるとかって聞いたことがある。食いつかれたら、素人はソッコーで病院に行きましょう。
ナンキンムシに最初に遭遇したのはインドだった。
その時は別な人の部屋だったので被害は無し。でも、ラオスでは酷いめにあった。背中を数百箇所も噛まれて、もう死ぬほど痒くて1週間以上痒みがとれなかった。ナンキンムシ、最悪です。

これらの被害にあうようになったのは、ここ最近の7、8年前からである。蝶採りを始める前までは蚊と虻ぐらいしかお目にかかったことがなかったのだ。
海外に行けば、他にも毒蛇に毒蜘蛛、毒アリ、毒草、それに大型動物の熊とか虎とか豹、オオカミ、野象なんて云う遭遇したら命にかかわるような奴等に会う確率だってケッコーあるのだ。
虫捕りって、最悪の趣味だよなあ…。冷静に考えれば、アホだ。でも、愚かにも恐怖よりも虫を捕りたいと云う欲望の方が勝ってしまうのだ。
虫捕り、やめよっかなあ…。全然、わりにあわないや。

                  おしまい

 
追伸
(註1)横溝正史的世界
横溝さんの推理小説に『吸血蛾』という作品があります。映画化もされました。金田一耕助も出てきまっせ。

 
(出展『Amazon』)

 
(註2)ニシキオオツバメガ
マダガスカル特産の世界一美しいと称される蛾。
体内に毒を持っている。

 

 
因みに裏面はもっとゴージャス。
あっ、そういえばまだ展翅してないや。
 

新子(いかなご)

 

 
毎年、春先に楽しみにしている旬の食材のひとつが釜あげ新子である。
新子(シンコ)といえば、関東だと真っ先に浮かぶのはコバダの幼魚のことであろうが、関西ではいかなごの幼魚のことをそう呼ぶのが普通なのだ。
因みに関東など東日本ではこの新子のことを「小女子(こうなご)」と呼んでいる。

因みに成魚は、こんな感じ。

 
(出展『大阪市水産物卸協同組合』)

 
関西では、いかなごよりも「かますご」と呼ばれる事が多い。
炙って、酢醤油で食うと旨いんだよねー。

 
新子は神戸人がこよなく愛する「くぎ煮」の原材料でもある。

 
【釘煮】

 
名前の由来は、形が「くの字」に曲がった古釘みたいだからだと言われちょります。

 

ご飯に乗っけて食うと旨いよね(^_^)v
普段は、甘いから佃煮なんか殆んど食わないけど、コレだけは別格の代物なのだ。

でも、その釘煮もここ数年は新子の漁獲量が激減しているようで、もはや庶民の味では無くなりつつある。
去年は特別少なかった印象があるが、どうやら今年はもっと酷いことになるのではと云う噂があった。
だからスーパーで売っていたら、極力つとめて買うようにしていた。

 

 
そのまま食う事が多いが、飽きたらオリーブオイル+塩少々で食います。コレが辛口の白ワインにメチャクチャ合うのだ。

 

 
しかし、今年はたったこんだけの回数しか食えなかった。
なぜなら、スーパーでもあまり見かけなかったのである。しかも、あったとしても値段が2、3年前と比べて倍以上もする。1パックで400円ともなると、流石に買えない。

何でこないな事態になったのかというと、まあ毎度お決まりの理由である。
乱獲や生息環境の悪化だね。護岸などで生息地が破壊されたり、海砂の採取が大きな影響を与えているという。西日本、特に瀬戸内海では、この海砂の採取が激減の理由だと言われているようだ。
いかなごは元々北方系統の魚で、西日本では暑い季節になると砂に潜って夏眠するのだが、その環境そのものが破壊されれば、魚が減るのも当然である。
えー、何で海砂なんか採取するのかというと、瀬戸内海の海砂がコンクリートの骨材に適してるんだとさ。

しかし、居酒屋の兄さんの話だと、乱獲の方がもっと深刻な減少原因になっているらしい。
そもそも瀬戸内に面した所以外では、あまり新子を食う習慣がなかったのだが、ここ数年、繰り返し全国ネットで新子(いかなご)の事が取り上げられる事により高値で取り引きされるようになったらしい。で、儲かるからと漁師が獲りまくっているという。

環境破壊にしろ、乱獲にしろ結局は人間のせいなのだ。生き物を守れとは言いつつも、常に経済活動が優先されるのである。特に行政なんかは本音と建前が酷い。

あっ、何だかまた話が逸れた。
話が怒り心頭、更に飛躍しそうなので、これくらいにしときます。

来年は、もっと食えなくなるんだろなあ…。
サンマといいイカといい、何だか最近はこんなことばっかだよね。

                  おしまい

 
追伸
新子がスーパーで見掛けなくなってきたメカニズム。

新子の浜値が高くなると、スーパーも仕入れがしにくくなる。高いと売れ残りやすいのだ。おまけに新子は足が早い魚なので、廃棄ロスが大きい。そのリスクを避けたいが為、スーパーは仕入れを控える=店頭に並ばないと云う図式になると云うワケなんだな。
(# ̄З ̄)ったくよー。

 

漫画やな、大谷くん

 
朝も早よから大谷翔平が先発というので、MLBを見ていた。
開幕から初ヒット、勝利投手、3試合連続ホームランときて、今度はどんな大谷翔平を見せてくれるのかと気になったのである。

まあ、そろそろ大リーグの洗礼を受けるんじゃないかと思ったら、いきなり三者三振でスタート。
それでも2巡目あたりの4回には捕まるんじゃないかと思ってた。
しかし、5回にも三者三振で、ここまでパーフェクトピッチング。6回も3人目の打者を三振に切って取って毎回の11奪三振❗( ; ゜Д゜)おいおいである。

6回辺りから球場も騒然となってきた。
大谷くんが一球投げるたびに、歓声やら溜め息が漏れる。観客が息を呑んで観戦しているのが手に取るようにわかった。
これはもしかしたらパーフェクトゲームをやっちゃうんじゃないかと思って、7回から録画ボタンを押しちやったよ。

もしパーフェクトゲームなんかやったら、漫画というか、漫画でも有り得ん事だ。💓ドキドキしてきた。

 
(画像 NHK BS1。以下全て同じ)

 
先頭打者には『あっ、打たれた!』と思った。

 

 
センターに抜けるかと思いきや、ショート正面のハーフ・ライナー。
益々、球場は騒然となってきた。おいおい大谷くん、もう伝説つくっちゃうのー(゜ロ゜;❓

 

 
しかし、次打者に三遊間にクリーンヒットを打たれてしまった。
ボールパークに大きな溜め息が広がった。そして、一拍間をおいて拍手が起きた。ここまでよく投げたねと云う温かい拍手だ。MLBのこういう雰囲気って、いいよね。

痛かったのは、2球めの外角低めのスライダーがボールと判定されたこと。あれがストライクになってたら、結果も違ってたと思う。その次に投げるボールが変わってた可能性があるし、打者が球種を絞り込めなくなってたからね。

 

 
その次の打者にはストレートのフォアボール。
しかも球が抜けて、明らかなボール球が続いた。

 

 
この回から、しきりとボールに息を吹きかけるようになったんだよなあ…。大リーグのボールは乾燥してるから、ボールが抜けやすいんだろね。後半になって球数が増えてきて、おさえが効かなくなったのかもしんない。

次打者はピッチャーゴロ。
しかし、ボテボテでダブルプレーは無理。ファーストに投げて、ツーアウト、二、三塁になった。
エンジェルスが6ー0とリードしているから勝ち投手にはなるだろうが、次なる伝説へと繋いで欲しい。ここは是非とも0点に抑えてくれと手を合わせて祈る。

しかし、この回5人めの打者に対してもコントロールが定まらない。抜けたボールがシュート回転して、全部外角にスライドする。
で、ツーストライク・スリーボールになった。あっ、今は日本でもスリーボール・ツーストライクと言うんだよね。昔から野球を観てきたものにとっては、いまだにこれには慣れない。
敬遠のボールを4球投げなくてもいいとか、何でもアメリカに追従するなよなー、日本野球(# ̄З ̄)

 

 
最後はスプリットで三振❗❗
スリーアウト、チェンジ。

 

 
これで、毎回奪三振の12個め。
今日はこのボールが良かった。MLBでは、このスプリット系のボールを投げるピッチャーが少ないから有効なのだ。古くは佐々木、最近までの上原、マーくんといい、活躍できたのはこのボールがあってこそだもんね。

 

 
ヒットを打たれちゃったから、大谷はこの回で降板のようだ。完封を見たいような気もするが、長いこれからのシーズンを考えれば正しい采配だと思う。

7回を投げて、球数91。被安打1。奪三振12。与四死球1。失点0。たいしたもんです。

 

 
チームメートにお辞儀する大谷くん。
礼儀正しくて、何だか微笑ましいよね。

3試合連続ホームランに、7回途中までパーフェクトピッチングで早くも2勝め。これだけでも、充分過ぎる漫画みたいな活躍だよね。
むしろパーフェクトなんかやらなくて良かったよ。やってたら、漫画でも有り得ん世界だ。そんな伝説をいきなりやってもーたら、翌日、交通事故で死ぬんじゃないかと心配になるよ(それはそれで永遠の伝説だけどね)。
それに次にやること無くなるやんか。変な周りからの期待も増大して、その分プレッシャーもかかるだろう(彼には無いかもしんない(笑))。

これからも夢を見させてね、大谷くん。
パーフェクトゲームの楽しみは、シーズン後半にとっておくよ。

                 おしまい

2017′ 春の三大蛾祭り 其の四 魑魅魍魎篇

 
長らく間があいたが、いよいよ最終回である。
でも、書きあぐねていたワケではなく、単に書く気が起こらなかっただけ。だから、別に練りあげた文章でも何でもないです。期待されても、その辺は無理。
えーと、今度こそ魑魅魍魎どもが登場するので、閲覧注意ですぞ😁

と、ここまで書いて、さらに1週間が経ってしまった。なので、今回は親切にも前回までのあらすじ付きなのじゃ(ヒマな人は過去3話を読み返しましょう)。
それでは、蛾嫌いでも読める手に汗にぎるノンフィクションホラーの始まり始まりぃ~\(^-^)/

 
【前回までのあらすじ】
2017年 4月上旬。ひょんなことからヒロユキは或る秘密結社の夜会に同行することとなった。その夜会とは、プロチームによるライトトラップを使った泣く子も黙るおぞましき蛾採集であった。
ヒロユキにとっては初のライトトラップにして、初の本格的蛾採集である。元来、ヒロユキは大の蛾嫌い。しかもターゲットは春の三大蛾と言われるエゾヨツメ、イボタガ、オオシモフリスズメという身の毛もよだつ凶悪な面々なのであった。
暗雲垂れ込める不気味な空。春まだき、寂たる白骨の森。とある山奥へと車はゆっくりと進んでゆく。
未知との遭遇への畏れ。武者震い。不安をかき消さんがための饒舌と過度の飲酒etc…。
やがて漆黒の闇が訪れる。戦々恐々とした中、碧い眼の妖蛾、エゾヨツメが現れる。酒の力を借りて、悪霊を退治するヒロユキ。しかし、梟男爵と闇の帝王は、いっこうにその邪悪なる姿を現さない。
真夜中、焦燥に駆られたヒロユキは、そこでついに決断した。遠く離れた巨匠のライトトラップへと一人で向かうことにしたのだ。暗黒世界に跳梁跋扈する魑魅魍魎の影に怯えるチキンハートのヒロユキ。恐怖と戦い、ようやく辿り着いた闇夜に浮かぶ宇宙船、光輝くライト・トラップ。だが、安堵も束の間。ついに戦慄の時を迎えるのであった…。

 
真夜中、丑三つ刻の山中を一人でうろうろしていたら、何が起こるかわからない。小心者のヒロユキは怯えた。闇の国の者どもに絡め取られるぬうちにとっとと戻ろう。

 

 
そう思って歩きだそうとした矢先だった。
ライト・トラップ右側の視界に違和感を覚えて、何気に杭の辺りに目をやった。
 
ドオ━━━ (◎-◎;) ━━━ ン❗❗

いきなりの強引なカットインで、おどろおどろしい映像が暴力的に網膜を支配してきた。
瞬時に全身がフリーズする。腰が抜けそうになった。

 

 
そこには、闇の将軍が夜陰に紛れて静止していた。
( ; ゜Д゜)何たる怪異なデザイン…。
デジタル悪魔じゃよ。
その特異な姿、間違いなく梟男爵イボタガだ。
一歩近づき、マジマジと見た。
((((;゜Д゜)))ブルッときた。背中から首筋にかけてゾクゾクしたものがギュンと走る。

さて、どうしたものか(-_-;)❓…。
アンモニア注射は持ってないし、網はベース基地に置いてきた。有るのは毒ビンだけである。
ということは、このバケモノを取り込む為には手で触らねばならない可能性が高い。
( ̄▽ ̄;)触るのか…。生来、大の蛾嫌いなオラに、こんな恐ろしげなものに触れというのか❓
碧眼魔女エゾヨツメは動き回っていたので、逃げられまいと思わず手が出た。だが、今回は違う。覇王色の覇気を放ち、静かに鎮座されておるから、畢境考えざるおえない。
時として思考は恐怖の敵だ。考えれば考える程にかえって怖さの実感がまざまざと這い上がってくるのだ。

だとしても、接触せねば採れない。
ここは男度胸。やるしかあるまいて(=`ェ´=)
武者震い。惑乱と恐怖が体を強(こわ)ばらせる。

しかれども、ビビって中途半端に触れて逃げられたら非常にマズイ。
Mさんに『いたんですけどぉー、掴もうとしたら逃げられちゃいました~\(・o・)/』などとホザいたところで、到底信じてはくれまい。現物が無ければ、嘘つき言いワケ野郎と云うレッテルを貼られるに決まっているのである。何があっても、根性なしの汚名を着させられるのだけは御免蒙りたい。

おもむろにスマホを取り出す。
取り敢えずは、保険として証拠写真を撮っておこうと云うワケである。イガちゃん、カシコイ。

2、3枚撮ったところで、Σ(゜Д゜)ドワッ❗❗

大きく羽を広げおった❗

 

 
闇の将軍、お怒りである。
それって、威嚇っすか❗❓
むぅ~( ̄▽ ̄;)…、目玉模様が怖い。
あながちフクロウの顔に擬態していると云うのも嘘じゃないかもしれぬ。

ブルン、ブンブンブン…。

ブルン、ブンブンブン……。

 

 
ヒッ❗❗(゜ロ゜ノ)ノ

思わず、後ずさりする。
男爵殿、ものすご~く御立腹の御様子である。

取り敢えず、ここは一旦離れて落ち着かせよう。
距離を置くために2、3歩下がったその時だった。少し離れた左下に禍々しいシルエットを感知した。視線はそのまま釘付けになる。

ドッ(◎-◎;)❗、

ドオッ(@_@;)❗、

ドオ━━ Σ( ̄ロ ̄lll) ━━━ ン❗❗

 

 
Σ( ̄ロ ̄lll)のわっ❗
慄然。マックス震撼する。

(@_@;)あわわわわ…。いつの間に❗
そこには、闇の帝王が仁王立ちするかの如く傲然と静止していた。紛れもないオオシモフリスズメだ。
きゃん玉がキュッと縮みあがる。

( ; ゜Д゜)デ、デカイ…。
形も悪魔みたいである。

前門の狼、後門の虎❗
丑三つ💓ドキドキ、💓ドキッドキッ❗

いきなり魑魅魍魎に囲まれ、チビりそうになる。
(○_○)どぎゃんするとですか?
一瞬、脳死状態になる。

大きく深呼吸する。
落ち着け俺。落ち着けオレ~。

そうだ、コヤツも写真を撮っておこう。
気を取り直して、へっぴり腰で近づいてみる。

 
キャヒ ━━ Σ(T▽T;) ━━ ン❗

 
(註1)

突然、ケツをオッ立てよった❗
アナタ様も御機嫌斜めの威嚇っすか❓

それにしてもこのポーズ、パッと見は何が何ちゃら分からないムチャクチャ異形(いぎょう)なカタチだ。
気持ち悪ぅ~Σ(-∀-;)

 

 

 
(以上3点共、画像はM氏からの御提供)

 
( ; ゜Д゜)…な、何たる…。息を呑む。
羽がギザギザやんけー。見る者を充分にたじろかせる、まるで鋭利なナイフのようだ。
アナタ、モルグ街の殺人鬼ですかあー❓

脚は太くてガッシリとしており、強靭そのものだ。
その前脚でグワシと獲物をワシ掴みにして、ムシャムシャと肉を貪る残虐悪鬼さんどすか❓

体は分厚く、装甲車を思わせる。或いは屈強なる戦士の鎧か…。
( ̄∇ ̄*)ホホホホ…。あらゆるものをブチかましの粉砕ですかあー❓

フォースの暗黒面に陥りしアナキン・スカイウォーカー、頭はダースベーダーみたいだ。蛾って、蝶から暗黒面に転落した堕天使どもの成れの果てやもしれぬ…。
おまけに稲妻の如き太い線が入っておる。スーパー極悪ヤンキー兄ちゃんのパンチパーマーにソリコミじゃよ。
そこまで凄みをテッテッー的に効かせはりますかあ❓

睨みつけるような焦げ茶色の眼も凶悪そうだ。
やっぱりyouも御機嫌悪かとですか❓
(ToT)っんましぇーん。

とにかく、邪悪の極み。この世のありとあらゆる憎悪を凝縮させたような姿だ。もうモンスターとか、怪獣レベルですけん。

さてさて、問題は二大凶悪犯をどう生け捕るかだ。
一瞬、敵前逃亡が頭を過(よぎ)る。いや、敵前逃亡なんかじゃない。一旦戻って、オジサン達を呼んでくるのが得策やもしれぬ。それに、これはそもそも巨匠のトラップだ。勝手に獲物を持ち去るのは泥棒じゃないか。まずは巨匠の許可を受けるべきである。それが人の道と云うものであろう。
とか何とか考えるが、本当は言いワケである。所詮は、敵前逃亡を正当化する為の方便でしかない。どう御託を並べたところで、Mさんはこのチキンハートの敵前逃亡を見破るだろう。(ToT)くちょー、ヘタレ呼ばわりされてたまるものか!である。
それに、行って戻ってきたら姿がかき消えてましたじゃあ、後悔してもしきれない。せっかくのチャンスを自らみすみす放棄するなんざ愚か者の極みだ。
やるっきゃない(*`Д´)ノ!!!

とはいえ、毒ビンは一つ。
どうみても、デカい蛾が二つも入りそうにない。
どちらも怖いが、より怖いのは帝王オオシモフリスズメの方だ。胴体も太いから、蝶みたいに指で圧死させる事は到底不可能に思える。
それに、もし無理に試みて、

シモフリ、ブチッと押したら、白いの出た。

になったら、どーすると云うのだ。
想像して、((((;゜Д゜)))オゾ気づいた。
そりゃ、阿鼻叫喚のスプラッター地獄絵図じゃよ。
18禁どころか、永遠の発禁モノじゃわい。
ならば、毒ビンにオオシモフリを放り込み、イボタガを指で圧死させる選択しかあるまい。
でも、イボタガだって蝶と比ぶればどの蝶よりも胴体は太いぞー(;o;)

ふぅ~(* ̄◇)=3
もう一回深呼吸。
先ずはイボタガから片付けよう。
丑三つ刻の悪夢を一刻も早く終わらせて、無事帰還せねばならない。地球へ戻ろう、宇宙飛行士ヒロユキくん。

丑三つ💓ドキドキ、💓ドキッドキッ❗

この期に及んで、またしても駄洒落を言うとる場合かっ!?

 
衝撃の展開に、酔いは完全に醒めている。

ドルルルルルゥー、グガガガガガー。

突然、発電機のけたたましい騒音が耳に甦ってきた。
それで、冷静さをいくらか取り戻した。
心頭滅却。考えてはいけない。感情を殺せ。
すうーっと手を伸ばし、フクロウ男爵を掴んだと同時に胴体をブチッと力を込めて押した。そして、マッハで三角紙に放り込む。心の動きを一切おし殺した、流れるような一連の動きである。
ワタシはレイケツニンゲン、ワタシは冷血人間。

勢いそのままに闇の帝王に挑みかかる。
毒ビンのフタをあけて近寄り、電光石火で掴む。
考えていた以上にデカイ❗、重い❗と思った瞬間、

Σ(T▽T;)痛って━━━ ❗

コ、コヤツ…、咬みよったあー❗❗

思わず、手を振り離してしまう。
怪物は狂ったように円を描いて飛んだ。
ヤッベー( ̄□||||!!と思ったが、金縛りにあったようにその場で固まる。
しかし、バケモノはバタバタとよろけるように飛んで横の白布に止まった。

 

  
吸血鬼❓エイリアン❓プレデター❓
何なんだ、アンタ❓
咬むって、そんな蛾がこの世にいるのかよ?(註2)
吸血蛾❓( ̄O ̄)嘘でしょ❗❓
二流怪奇映画とかで血を吸う蛾を見た記憶があるような気がするけど(註3)、アレってフィクションじゃなかったのー❓そこまでオオシモフリって、邪悪凶暴なの❓
(-_-;)まさかである。見てくれはいくら強面(こわもて)で恐ろしくとも、本当は意外と善良なヤツなんじゃねえのと思っていたが、とんでもない。見たまんまじゃねえか。

パニックになりかけるが、ここで戦陣を引いては沽券にかかわる。もうヤケクソ、アドレナリン大量放出。思いきって再度つかみにかかる。
いやいや、待て、待て。待てーい。すんでのところで手が止まった。指先に、さっきの鋭い痛みの感覚がまだ残っている。慌てて掴んだら、また同じ轍を踏むことになる。ここは再度冷静になろう。
そうだ。毒ビンを上から頭にズッポリかぶせ、⚡電光石火でもう片方の手で一挙にケツをグイと押し込む作戦でいこう。そいでもって、すかさず蓋を閉める。これなら、最小限の接触でスムーズにミッションを完遂できる筈だ。

 
意を決して、

ズバババババアーン❗❗

頭から覆せた。

三( ゜∀゜)ひっ、

ひいーっΣ(T▽T;)❗

ゴツい脚がガッツリと布に喰い込んどるぅー❗

えーい(*`Д´)ノ、こうなったらヤケクソじゃあー!

手で掴み、無理矢理に引き剥がす。
そして、毒ビンに頭を突っ込む。

ギヤッΣ(゜Д゜)!、

暴れて入らんo(T□T)o❗❗

パニ ━━ ック\(◎o◎)/❗❗❗

※▼☆§¢%◆β!Σ(×_×;)❗
激しい抵抗にあい、中々押し込めなーい(T_T)
デカ過ぎるんじゃ、(# ̄З ̄)ボケ~。

だりゃあーΣ( ̄皿 ̄;;、コンニャロ❗、コンニャロ❗、コンニャロ❗おどれ、魂(たま)取っちゃるけん❗

渾身の力で、強引にブチ込んだった。

 

 
はあー( -。-) =3、はあー( -。-) =3
m(。≧Д≦。)mぜぇー、m(。≧Д≦。)mぜぇー。
肩で息をする。
やってやったぜ、オカーチャン。
急に力が抜けて、その場にへなへなとへたり込む。
だが直ぐには恐怖と興奮はおさまらない。アドレナリンだだ漏れのまんまだ。全身がまだ緊張で強ばっている。指も小刻みに震えている。

しかし、本能が此処にとどまっていてはならぬと頭の後で警鐘を鳴らしている。そうなのだ。いつ闇の住人たちが、この心の隙間を狙って雪崩れこんで来るやもしれぬ。油断してたら、フォースの暗黒面に引き摺り込まれかねない。一刻も早くこの場所を離脱すべきだ。

全方位に警戒しながら、足早に坂道を下りる。
しかし、周囲の闇は深い。道を照らす懐中電灯の灯りは心もとなく、さしてスピードは上げられない。
心はざわついている。早く戻りたい。でも周囲にも警戒を怠ってはならぬ。それに、怪物たちがいつ甦生するとも限らないのだ。ここで暴れられたら、😱大絶叫するだろう。

10分後。ようやく坂の下にベース基地が見えてきた。
翼よ、あれが巴里の灯だ。

Mさんは、まだ起きていた。
興奮して、事の顛末を喋りまくる。
Mさんは笑いながら『ほーかぁー。良かったのぉー。』と言ってくれた。だが、こちらの興奮は伝播しない。
『よっしゃー、出動じゃーい(*`Д´)ノ!!!』とか雄叫びをあげるかと思いきや、余裕のよっちゃん。
『まあ、座って酒でも飲みいーや。』なのである。

30分後。
Mさんはようやく腰を上げ、巨匠を起こしにいかれる。
目をこすり、眠たげに起きてきた巨匠にダイジェストで顛末を語り、勝手に採集した非を侘びる。
巨匠は軽く『ええでぇー。かめへん、かめへん。』とおっしやった。人物がおおらかでデカいのだ。
しかし、その巨匠にも興奮は伝播しない。やはり、余裕のよっちゃんなのだ。すぐ見に行こうと云った雰囲気は全然ない。
その余裕、アンタら、魔道士かっ!?

 
一行が漸くライト・トラップに向けて出発したのは、その20分後である。

車で乗り付ける。

((((;゜Д゜)))シェーッ❗❗
どえりゃー事になっとるだがやー。

 

 
魑魅魍魎、真夜中の魔王祭りである。
しっかし、ワカランものよのう。Mさんからはオオシモフリは夜10時くらいから飛んで来ると聞いていたけど、全然飛んで来ずで、今はもう午前1時半前だもんなあ…。たぶん様々な細かい条件が重なりあって、今日は午前0時からの飛来開始になったのだろう。蝶と比べて活動時間の幅がかなり流動的だ。蛾の気持ちは、よーワカラン。

Mさんが『コイツ、鳴きよるねんでぇー。』と言って、掴んだオオシモフリを耳元に持ってきた。

『🎵チュー、チュー。』

Σ(゜Д゜)わっ!、ホンマに鳴いてる。
鳴くって、アンタ哺乳類かよ❗❓
見てくれといい、脚のゴツさといい、どこまで規格外なんじゃよ。何だか笑けてくる。ちよっと愛着が出てきたかもしんない。
と思ってたら、Mさん、必殺アンモニア注射をブチューと刺す。

 

 
鳴き声も聞こえなくなった。
哀れ、あえなく絶命じゃよ。
魔道士にかかれば、蛮王もイチコロである。
マッドサイエンティスト、恐るべし。

   

 
いやはや、それにしてもデカイよ。
でも、これはオス。メスはさらにデカくてブッといらしい。これよかデカくて太いって…、どないやねん!?恐ろし過ぎやろ。
(因みにこの日飛んで来たのは、全部♂だった。しかも、出たてらしい完品揃い。となると、♀の発生はもう少し後。う~ん、♀も見てみたかった。
それから、この日2017年の4月7日は寒い日が続いた後で、発生が例年より1週間ほど遅れていたそうな。蝶と違って蛾は発生期間が短い種が多く、且つ天候条件がシビアだから採集日和を当てるのは結構難しいようだ。同じ鱗翅類でも、蝶とはだいぶと勝手が違うんだね。)

 
Mさんから、王の遺骸をおし戴く。

  

 
昇天した帝王を膝に乗せる。
本当はこんな色なのだ。緑色に写っているのは水銀灯のせい。光の波長が違うのだろう。蛾は紫外線が好きなのだ。だから、蛍光灯なんかにも寄ってくる。でも最近は外灯のLED化が進んで、蛾も寄って来なくなったらしい。LEDからは紫外線が殆んど出ないらしいのだ。
蛾マニアには受難の時代だが、蛾たちにとっては喜ばしいことだろう。外灯なんかに寄ってきたら、車に踏んづけられたり、コウモリや猫の餌になったりして、ロクなことがないのである。

 
1頭だけだが、イボタガもいた。

 

 
掴もうとしたら、飛んで膝の上に止まりはった。

お目々、( ☆∀☆)ピッカー✴

怖い、怖い。
そして、またしてもブルン、ブンブンブンじゃ。
オオシモフリはボテーッとしてて、あまり羽ばたかないが、イボタさんはアクティブなのだ。

 
その後もオオシモフリはジャンジャン飛んで来た。
しかし、体が重いのか灯りに辿り着けずに、地面にボタボタ落ちている。
時々、誰かが気づかずに踏んづける。でも、誰も悔しがらない。それだけ飛来数が多いからなのだよ、オトーサン。

光と影のコントラストをぼんやりと眺めながら思う。
初のライト・トラップにして初の蛾採集は、どうやら成功裡に終わりそうだなあ…。
オラって実力は無いけど、引きだけは強いのだ。
春の三大蛾、一発で全部採れちゃったなあ…。
蛾好きのバカ植村だって、まだ一つも採ったことがないって言ってたもんね。あとで死ぬほど自慢してやろう。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケ…、オイラは性格が悪いのだ(笑)

 
へい、らっしゃーい❗
オオシモフリの姿造り二丁❗❗

 

 
プロのお二人の手に、オオシモフリてんこ盛り。
凄い光景だ。蛾嫌いの女子なんぞが見たら、絶叫、発狂、失禁、卒倒しかねない。
でも、あまりのおぞましさに笑ってしまう。恐怖もマックスの線を越えてしまえば、ギャグになってしまうのである。
正確には数えていないが、踏んづけたものも含めて少なくとも30頭くらいは飛んで来たんじゃないかと思う。
プロのお二方は飄々としたものだったが、僕ちゃんだけが終始ワーキャー言っていた。蛾は怖いが面白い。

 
飛来がパタリと止まったので、ベース基地に帰還。
酒を飲みながら、ウダウダ話す(プロのお二方は車の運転があるので、コーヒーを飲んでおられた)。

やがて、うっすらと空が白み始めた。
あと少しすれば、闇の世界は閉じるだろう。都会に住む殆んどの人は、本当の夜の闇というものがどんなものなのかを知らないと思う。夜といっても、現代ではどこを見ても某(なにがし)かの灯りはあるのである。
本当の闇は距離感さえも失わせる漆黒なのだ。だから、昔の人は闇を恐れたのである。その恐怖が生み出した想像の産物が、魑魅魍魎であり、妖怪、幽霊なのだ。

妄想。惑乱。焦燥。驚愕。興奮。そして、恐怖と歓喜。いやはや、濃密な時間じゃった。
男は大きく欠伸をして、両腕を上げて背伸びするように体を反らせた。
たまたま、それが天を仰ぐかたちになった。
空のわずかな隙間に、微かに星が瞬いていた。

                 おしまい

 
 
一応、今回は登場しなかったエゾヨツメの画像と本文未使用の写真、標本写真なども並べておきます。
それから、各種の蛾の解説は第1話にあるので割愛させて戴きやす。

 
【Aglia japonica エゾヨツメ♂】

 
【エゾヨツメ裏面】

 
【標本写真】

 

 

 
考えてみれば、これが人生初の蛾の展翅じゃないか。
翅は蝶とそれほど差はないからまだいいとしても、問題は触角だよね。こんな羊歯(シダ)型の触角をした蝶はいないのだ。どうやって整形すれば良いのかワカラン。
それに、だいたいこういうヤママユ系蛾の触角って、裏表の色や構造が微妙に違ったりするのだ。
しかし、触角が基本的には立った状態なので、そもそもがどっちが表で、どっちが裏なのかさえもワカランとですよ。
それはそうと、これって裏表は合ってんのかなあ?

 
(;・ω・)もふぅ~。

 
(出展『www.jpmoth.org』)

 
エゾヨツメ、かわゆすなあ~。
もふもふなのら~。
ヤママユガ科の蛾は脚までもふもふで、全体的にもこもこしててカワユイのだ。
脚の毛だけが白いので、何だか昔流行った女子高生のルーズソックスみたいだね。キュート❗
触角もぴょーんとなってて、ウサちゃんみたい。世には意外と隠れ蛾好き女子がいると聞くが、こういうところに萌え~なのかもしんないね。

 
続いてフクロウ男爵のお出ましどすえ。

 
【Brahmaea japonica イボタガ】

 
それにしても、凄いデザインだよね。アートしてる。
この蛾に似ている蛾も蝶もいないから、唯一無二のデザインと言ってもいいかもしんない。
しかも、よく見たら厳密的にはシンメトリーではない。左右の翅の柄が微妙に違うのだ。特に目玉模様の中の斑紋が顕著に違うらしく、一つとして同じ柄は無いようだ。

 
【イボタガ裏面】

 
裏も、中々にスタイリッシュだ。
この蛾はモノトーンの蝶蛾の畢粋でしょう。
こういう柄の着物があったら、買う人は絶対いるだろね。でも着る人を選ぶ柄かもしれない。若い娘じゃダメ。年増のええ女じゃないと着こなせないでしょう。

 
【標本写真♂】

 
【標本写真♀】

 
採った時は翅の柄に目を奪われて気づかなかったが、背中は虎柄なんだね。スタイリッシュにして、攻撃的デザインなのだ。( ☆∀☆)カッケー❗

メスはオスよりも一回り以上大きく、翅形が全体的に丸くなる傾向があるようだ。

最近の蛾展翅のトレンドは前脚を前に出すのが流行りらしいので、やってみた。
触角は捻れてて整形が大変だし、前脚までもとなると、正直メンドクセー(=`ェ´=)

 
(;・ω・)もふぅ~。

 

 

 
もふもふではあるが、細面でちよっとキツい目だ。
何だか意地悪女みたい。顔に邪悪感ありである。
( ̄へ ̄ )むぅ…。見方によっては、よく西洋で描かれる悪魔に似てるかも。西洋の悪魔は、頭が山羊(ヤギ)なのだ。
しかれども、この写真では今イチ邪悪度が足りない。
もっと悪辣非道キャラらしい画像を何処ぞでお借りしてこよう。

  
(出展『蛾色灯』)

 
間違いなく魔界より出(いで)し邪悪なる者だ。
こんな顔だと、あのスタイリッシュとか言ってた翅の柄も、何だか魔界の魔方陣に見えてくるよ。
蛾って、現世と魔界を往復せしめる存在なのかもしれない。

そういえばイボタガの幼虫って、成虫なんて目じゃないくらいにムチャクチャ邪悪な姿なんだよねー。
この世の者とは思えないような気持ち悪さなのだ。アレは写真を見ただけで、2m後ろに幽体離脱したね。

Ψ( ̄∇ ̄)Ψ出すぞ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψ出すぞー。
画像、出しちゃうぞーΨ( ̄∇ ̄)Ψ
そりゃそりゃ、閲覧注意の最悪印の登場じゃわい。皆の衆、逃げ遅れんなよー。

 
(出展『フォト蔵』)

 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA/caption

 
( ̄□||||❗❗キッショ❗
何度見ても💫めまいがする。
(|| ゜Д゜)何なんだ、そのムチのような突起物は❓
これを振りかざして、鳥の眼を潰します(=`ェ´=)❗
と言いたいところだが、それは無いだろう。たぶん威嚇のためのものだね。こんなもん、人ならずとも鳥だって会った瞬間には激引きだろう。たぶん世の中には、生き物全員が本能的に忌避する形や色の配色と云うものがあるのだ。
因みに終齡幼虫になると、このムチは無くなるらしい。
無くなったところで、気持ちが悪いのは何ら変わらないけどね(笑)

 
最後はビビビのネズミ男。もとい、闇の帝王である。

 
【Langia zenzeroides オオシモフリスズメ♂】

 
【オオシモフリスズメ裏面】

 
いかにも蛾らしく太い胴体だすなあ~。
この胴体の太いところが、蛾が気持ち悪がられる要因の一つだよね。
でも何だか見慣れてきちやって、それほど怖くなくなってきた。

 
(;・ω・)もふぅ~。

 

 
(;・ω・)もふぅ~。

 

 
(;・ω・)もふぅ~。

 

 
凶悪な顔とか言っちゃったけど、よく見ると案外可愛らしい。
手脚も短めに見えて、ちょっと萌え系かもしんない。
毛並みの感じなんかテディベアに見えてきたよ(笑)
おいおい、大丈夫か俺❓

 
【標本写真】

 
地味な色だが、よく見るとベタなグレーではない。
細かな柄が入っており、渋い。どこか大島紬(註4)のいぶし銀の魅力に通ずるところがある。

重ねて言うが、蛾の展翅なんて今回が初めてだからバランスがよくワカンナイ。図鑑は持ってないし、ネットでも参考になる資料が少ないのだ。ましてや、スズメガみたいなこんな翅形の蝶はいないから、翅の上げ下げのバランスが今イチわからん。
触角はエゾヨツメやイボタガに比べて単純な構造だから楽だけど、その角度に悩む。まあ、取り敢えずの一発目は無難な線で攻めてみた。

翅の上下、上翅と下翅の間隔の開け方、触角の角度、その組み合わせetc…。次からは色々と試してみよう。

で、今度は触角を上げて、下翅を下げてみる。

 

 
放射能により巨大化したクリオネだな。
絶対、人に危害を加えるタイプだ。
一応言っとくけど、クリオネさんはケッコー獰猛な奴です。

 
逆に次は触角を下げてみた。

 

 
これはこれでカッコイイと思う。
必ずしも触角と翅を平行にしなくても良さそうだ。

 
お次は触角をさらにグンと上げて、先っぽを真っ直ぐにしてみた。

 

 
ちよっと👿悪魔的じゃね?
ならばと、最後は思いきし翅を上げてみた。

 

 
q(^-^q)おー、邪悪感満載じゃよ。
蛾マニアからは上げ過ぎだと叱られるだろうが、こっちの方が断然👿悪魔的でカッケーと思うんだけどなあ。
まあ、所詮はオラは蝶が専門で、蛾は初心者なのである。批判されても全然痛くも痒くもないのだ。

 
(追伸)
書いてるうちにどんどん長くなってしまったニャア。
2018年版の『2018′ 春の三大蛾 ~悪魔が来たりてチューと鳴く~』を書こうと思って、この2017年版を書き始めたんだけど、もうお腹いっぱいだすよ。完全に書く気が萎えました。書くとしてもレポート程度になりそう。こういうのを世間では本末転倒という(笑)

 
(註1)画像はMさんから提供して戴いた。ケツを上げて威嚇してきたので、その瞬間に頭が真っ白になって写真を撮り忘れたんである。

 
(註2)咬むって、そんな蛾がこの世にいるのか?
(註3)二流怪奇映画、吸血蛾
相前後するが、まとめて説明します。

結論から言うと、オオシモフリは吸血蛾なんぞではござんせん。
もし、あんなもんが襲って来たら、人類の脅威だもんね。春先に好んで野山に訪れる人はあまりいないと思う。少なくとも夜には誰も出掛けたがらないだろう。

『皆様、今年もオオシモフリの季節がやって来ました。山間部に住まわれる方は、くれぐれも御注意ください。』

などと、必ずやニュースで流される筈だ。んな事は聞いた事が無いから、吸血蛾であるワケがないのであ~る。

検分してみたが、口には強力な顎や牙などは有しておらず、ストロー状のものがあるだけである(もふぅ~の拡大画像を見てくだされば確認できるかと思う)。つまり、蝶の口と同じなのだ。
しっかし、オオシモフリって何食ってんのかねー?
けど、花の蜜や樹液に来るとか聞いた事が無いんだよなあ。単に調べ足りないだけなのかなあ?
しかし、蛾には口が退化したものも多いというし(無駄を省いて交尾さえ出来ればいいと云う生存手段)、口吻の形は残っていてもエサは一切とらない連中もいると小耳に挟んだことがある。オオシモフリもそのクチなのかもしれない。
ならば、原因は何だったのかと云うと、コレ。

 

 
何と脚に鋭利なトゲがあるのだ。ちゃんと見てないが、前脚にはたぶん無くて、中脚と後脚にだけある。中でも後脚には大小3本もあって、中脚にあるものよりも硬くて長い。やっぱバケモノだよ。

調べてみたら、吸血蛾の映画はやはりありました。
タイトルはそのものズバリの『吸血蛾』。

 
(出展『さくらいこうすけ いにしえの川』)

 
1956年公開と云う古い映画だ。主演は池部良。
全然もってまだ産まれていないので、たぶんTVの再放送なんかで見たんだろうけど、記憶は覚束ない。

因みに、DVDも発売されているようだ。

 
(出展『Amazon』)

 
何と原作はあの横溝正史である。横溝さんは若い頃にあらかた読んでいるから、たぶん原作も中学生くらいの時に読んでいるのではないかと思う。
金田一耕助は出てきたっけ?全然記憶にないや。

怪奇推理小説の方の画像もありました。

 
(出展『Amazon』)

 
この表紙、見覚えありますねー。
これは確実に読んでるなあ。でも、やはりストーリーは全く思い出せない。
調べてみっか…。

(゜ロ゜)あらまっ、金田一耕助は出てくるけど、吸血蛾そのものは出てこない。吸血蛾はあくまでも暗喩なのだ。
だったら、吸血蛾そのものが出てくる映画とかドラマって、いったい何だったんだろ?
まっ、いっか…。それほど知りたいワケじゃないしさ。

 
この時点では、まだ現実には吸血蛾なんてこの世にいないと思っていた。
しかし、これが驚いた事に本当にいるんである。
ロシアのシベリア地方に棲む蛾で、2008年に発見されたらしい。この蛾はヨーロッパ中央部から南ヨーロッパに分布する「Calyptra thalictri」という蛾の亜種なんだそうな。両者は見てくれもほとんど同じだという。だが、ヨーロッパにいる奴は果物の汁を餌としており、血は吸わないとの事。シベリアの過酷な環境が、加速度的に進化を促したのかもしれない。
それにしても、蚊じゃなくて蛾だぜー。そう大きくはない蛾だろうが、蚊よりも遥かに大きい筈だ。となると、当然ながらそこそこの量の血を吸われるワケだよね❓
ロシア人って、そんなもんに喰いつかれても気づかんのかね?
何れにせよ、シベリア地方に行かれる予定の方は、お気をつけあそあせ。

 
(註4)大島紬(おおしまつむぎ)
奄美大島で作られる泥染めの高級紬のこと。ただし、高級着物ではあるがカジュアル(訪問着)なものとされ、フォーマルな席には着て行ってはいけない事になっている。