2023’ベロ酔甲子園(選抜編)

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久方振りのベロ酔甲子園シリーズである。
どれくらい書いてないのか調べてみたら、たぶん最後に書いたのは『2018′ 選抜高校野球回顧 準々決勝』と題した文章かと思われる。大阪桐蔭の春夏連覇の年だね。根尾、藤原、柿木を中心に圧倒的な力での連覇だった。勿論、この年の夏も甲子園には行っているのだが、何か邪魔くさくなって書かなかったのだ。

 
 2023年 3月20日
 用事があって、朝9時に区役所に行かなければならなかった。だいたいにおいて役所ではクソみたいに待たされるのが常だが、この日は珍しく順番待ちが3番目だった。にしても、どうせ30分くらいは待たされると思って、高校野球の中継を見ていた(註1)。有り難いことだ、退屈しなくて済むと思ってたら、5分後くらいに呼ばれて、手続きも直ぐに終わった。
で、帰ろうとした時に歓声が上がったから、反射的にテレビ画面に目がいった。ヒットが出て、チャンスが訪れたようだ。
そこでハタと思った。考えてみれば、長いこと甲子園には行ってない。2020年はコロナウイルス蔓延の影響で、春夏ともに大会が中止となったし、2021年は入場が家族や関係者に限定されていた。そして多分2022年は球場でのチケット販売はなく、WEBでしか購入できなかった筈だ。思い立ったが甲子園。事前にチケットを買うとか自分スタイルではないのだ。飯食いに行くんだって、予約なんて余程の事でもなければしないからね。もし気が変わったらどうするのだ❓ 昨日食べたかったものが、今日も食べたいとは限らないのだ。だから3年間も甲子園から遠ざかっている。幸い今日はこの後の予定は入ってない。見ると観客席もガラガラだ。ならば今からでも入れるんじゃないかと思った。その場でスマホ検索。今大会のチケット販売について調べる。
どうやら今年もWEB販売のようだが、売れ残った席は球場で当日販売するようだ。今日は第3試合に人気の大阪桐蔭が登場するから微妙だが、選抜は夏の大会に比べて観客数が少ない。だから何とかなる筈だ。よし、ならば行こう。慌てて飛んで帰って用意し、近鉄電車に飛び乗った。30分もあれば甲子園には着くだろう。

 10時ジャストに甲子園駅に着いた。
階段を降りて、ちょっと驚く。長い間やっていた駅前の再開発工事が終わっており、広々とした道が真っ直ぐに球場に向かって伸びている。昔は手前に横断歩道があった筈だけど、無くなったみたいだね。

 😲ありゃま、チケット売場が改装されているではないか。昔は電光掲示板だったけど、液晶画面になっている。知らぬところで、日々時代は変わっているのだ。
並んでる人も疎らで直ぐに窓口に行けた。見ると、入場が関係者のみに限定されているアルプス席以外のチケットは全て購入可能になっている。読み通りの楽勝じゃん。
それにしてもチケットの値段が随分と上がっている。中央指定席が3900円。内野指定席が3400円。外野が700円。昔はバックネット裏で2500円だった筈だから、スゴい値上がり率だ。外野にいたっては、タダだったのに700円も取るんだね。世知辛い世の中だ。
迷ったが、外野のライト側にした。世代ナンバー1とも言われる大阪桐蔭の前田くんの球筋が見たかったからだ。彼は左投手だもんね。レフトからだと、背中側だから球筋が見えにくいのだ。

 チケットの確保ができたのでダイエー、もとい買収されたから今はイオンの食品売場に買い出しに行く。
今ひとつ食欲をそそるものがなくてアチコチうろうろする。で、散々迷った挙げ句、枝豆と唐揚げ、スモークチーズ、ビールのロング缶1本、アルコール度数9%の酎ハイのロング缶2本を購入した。

 明治神宮大会で優勝した大阪桐蔭と準優勝した広陵が同じ日に登場するんだね。たしか広陵には広島のボンズと呼ばれ、今大会最注目の強打者である真鍋くんがいるんだよね。どんなバッティングをするのか楽しみだ。そういや対戦相手の二松大付属にも強打者がいたなあ。2年生の片井くんだっけか?

 アルプススタンドの裏まで来たら、応援のブラスバンドの演奏と声援が漏れ聞こえできた。そういや、今年から声出し応援も解禁なったんだね。音の力はスゴい。自然とワクワク感が体の奥から湧き上がってくる。そう、いつもこの音を聞いて昂り、早く球場の中に入りたいと気持ちが逸るんだよね。

 入場する。でも入場はしたけれど、紙コップが置いてない。缶飲料の持ち込みが禁止ゆえ、以前は入口で紙コップに入れ替えさせられていた。とは言ってもコチラとしては渡りに船、むしろ有り難き優しい制度であった。それがどうやら「持ち込みは絶対に許さん❗」コップが欲しけりゃ、中でビールを買えという事みたいだ。外野の有料化といい、ホント世知辛い世の中だ。

 スタンドの階段を昇り、振り返る。
雲一つない青空の下、伸びやかにバーンと視界が広がる。久し振りに見る甲子園球場は広い。そして美しい。青々とした芝生には、光が降り注いでいる。更に階段を昇ると、フッと鼻腔をくすぐる懐かしい匂いがした。一拍おいて理解する。風に乗って何処からともなく届いたその香りは、紛れもなく甲子園カレーの匂いだ。ようやく帰ってきたなと思う。何だかジーンとする。

 ライト側、センター寄りに座る。
さあ、(⁠@⁠_⁠@⁠)ベロ酔甲子園の開幕だ。ビールのコップをワッシと掴み、ゴクゴクと勢いよく喉に流し込む。
😝プハーッ、よく晴れた甲子園で飲むビールは矢張りサイコーだ。
 先ずは定番の枝豆からだ。イオングループの枝豆は台湾産だが、大粒で旨味があって旨いのだ。
あれっ❓しかし今ひとつだ。粒が大きくて旨味はあるのだが、何だか青臭い。ハズレじゃんか。
気を取り直して、続いて唐揚げに手を伸ばす。パッケージには唐王(註2)と書いてある。唐揚げの王様とでも言いたいのだろう。そのせいか少し高めの値段だったが、一番旨そうだったので選んだ。
手に持つと、まだ温かい。期待を込めて口に放り込む。あっ、醤油味に生姜が効いていて結構旨いじゃないか。唸るような旨さではないが、惣菜の唐揚げにしてはレベルが高い。大体においてスーパーの唐揚げって、期待ハズレの残念なモノが多い。その点から考えれば、コレなら充分合格レベルでしょう。

 まだ第1試合が続いている。
回は8回表、地元兵庫県の社高校が1ー4と劣勢だ。この高校は大学の同級生の何人かが卒業生なので、何とか勝ってもらいたいと思う。奴らも何処かで観てるのかなあ…❓ みんなオジサンになってんだろなあ。そして何やかんやとそれぞれの人生を送ってきたのだろう。光陰矢の如しだねぇ。
しかし、この回さらに1点を追加されて、反撃もままならず、あっさり敗れた。

また夏に来いよー。

 次の試合の練習ノックが始まる。
両チームの動きを凝視する。高校野球は試合の合間も楽しめる。練習効率の良し悪しに始まり、選手の動き方や肩の強さ、連係プレー等々で、各チームの自力がよくワカルのだ。勿論、練習効率が良く、選手の動きが機敏で、肩が強くて送球が正確であり、連係プレーがスムーズなチームの方がポテンシャルが高い。見たところ、名門の広陵の方がチーム力は上だろう。但し、それがそのまま試合結果に繋がるかというと、必ずしもそうでもないんだけどね。

 そして、阪神園芸さんの神技的グランド整備も見ていて楽しい。特に息の合った動きで連動する水撒きなんぞは、芸術的と言ってもいいくらいだ。

 試合は0ー5で、広陵の貫禄勝ちだった。
広陵の2年生ピッチャーが光っていた。小気味良いピッチングで、スピードはコンスタントに140kmを越えていた。来年は騒がれる素材かもしれないね。

 注目の真鍋くんは、レフト前ヒット、レフトへのタイムリーヒット、ライトへのツーベースと計3安打を放った。特にライトへのヒットは技ありの柔らかいバッティングで唸った。強さだけではなく、上手さも兼ね備えているとあらば、逸材だ。
あと笑ったのがレフト前ヒット。レフト、センターともに長打を警戒して、予め後ろにかなり下がって守っており、打球が放たれた瞬間に両外野手とも同時に更にフェンス側に下がった。なのでホームランかと思った。しかし打球はレフト前にポトリと落ちた。期待させやがって、😗なぁ〜んだよーって感じ。たしかに打球は良い角度では上がった。でも落ちたのはレフトの定位置か、もしくは少し前だったのだ。両外野手とも強打にビビリ過ぎやろーと思って笑ったのだ。或いは、よっぽど真鍋くんの振りが鋭かったのかもね。それで勘違いした可能性はある。レフトだけが下がってたら単なる判断ミスだが、センターまで同じ反応をしたからさ。後々、コレが伝説になったりしてネ。まあ何れにせよ、あまり見た事のないシーンだった。

 早くもこの時点で、ビールをロング缶2本分と9%の酎ハイロング缶1本を飲み干していた。ヽ⁠(⁠(⁠◎⁠д⁠◎⁠)⁠)⁠ゝベロ酔いである。

 更にセンター寄り、バックスクリーンに最も近い席へと移動する。大阪桐蔭目当てなのか、客はどんどん増えている。そして、席の番号がどうのこーのという声がアチコチで聞こえ始めた。それで気づいた。

 おいおい、今は外野席まで指定なのかよ❗
昔は外野席はフリーだったから、自由に席を移動できた。だから試合や太陽の傾きによって席を変えれたし、横になる事だって出来たのに…。もう制約だらけじゃないか。ホント世知辛い世の中になったよ。

 本来の自分の席はもっとライト寄りだ。それも真ん中寄りの感じだ。けど、酔っ払いは移動するのが邪魔くさくなってきた。それに移動したら、前田くんの球筋がハッキリ見えなくなるじゃないか。もういいや、もしこの席のチケットを持ってる人がやって来たら、「😲えー❗❓、昔さ外野はフリー席だったども、今は外野まで指定席制だっぺか〜❓すまんの~、おら知らねがったべよー。」とでも言ってやろう。田舎から出てきた素朴な人を装って、おずおずと退散すればエエじゃろう。

 午後2時過ぎ、大阪桐蔭の春連覇に向かっての第一戦が始まる。
前の試合の途中ぐらいから浜風が少しづつ強くなり始めていたが、だいぶ強くなってきた。この風が波乱を起こしたら面白いのにと思う。大阪出身者ではあるが、大阪桐蔭には複雑な思いを持っている。心の中に、応援している自分と、憎らしいくらいに強いから負ければいいのにと思っている自分の両方がいるのだ。大阪愛が強いとはいえ、元来が判官贔屓の人なのだ。弱きが強きを倒すのが一番カタルシスがあるからね。兎に角、その二律背反する2つの心が、試合中に行ったり来たりして忙しい。そのうち己はどっちを応援しているのかがワカランようになって、混乱わちゃわちゃベロ酔い男となるのだ。

 ライト側が大阪桐蔭の応援スタンド、レフト側が敦賀気比の応援席だ。大阪桐蔭の方がだいぶと人数が多い。桐蔭は地元だから多いのはわかるが、敦賀気比だって福井県だ。そう遠くはないのに、ここまで人数に差が出るものかね?でも福井県は人口少ないか❓
やがて1回表の敦賀気比の演奏に続いて、大阪桐蔭の演奏が始まる。でもオカシクて笑ってしまう。音が圧倒的にデカいのだ。倍近い音量がある。ちなみに敦賀気比の応援がショボいワケではない。海星や社高校、広陵、二松学舎も同じようなものだったからね。オマケに演奏がメチャメチャ上手い。他チームの演奏はバラバラ感があるが、音が1つの塊となって聞こえる。状況に応じてスッと音が小さくなったりするのも驚きだ。統制されているのだ。指揮者の先生がいるんだろうけど、相当鍛えられてる証拠だよね。まあ、ブラスバンドの全国大会常連で数々の賞も受賞してるんだから当たり前ではあるんだけどもね。
但し、上手すぎて面白くない。いつも思うんだけど、キレイ過ぎて観客の魂を激しく揺り動かすものがない。何かが足りないように感じるのだ。同じ上手くとも、智弁和歌山や天理、習志野の方が、音に魂を揺さぶられる何かがあるような気がする。思いが音に乗り移ってるって感じるのだ。勝手な思い込みかもしれんけどー。

 試合は意外にも淡々と進んでいる。大概は大阪桐蔭が初回にプレッシャーをかけて大量点を奪うってのがお決まりなんだけどね。波乱が起きる雰囲気が微かに頭をもたげ始めている。

 と思ってたら、3回裏に桐蔭が2点を先制した。このままワンサイドにならない事を祈ろう。

 最後の酎ハイロング缶は早くも半分近くまで減っている。マジでベロ酔いである。濁った頭で、ぼんやりと思い出す。現在開催されているWBC、ワールド・ベースボール・クラシック大会で未曾有の活躍している大谷も選抜で見てるんだよなあ…。東北のダルビッシュと言われた花巻東の大谷と、浪速のダルビッシュと呼ばれた大阪桐蔭の藤浪という世代を代表する両投手の対決とあって、当時は話題だったんだよね。
結果は大阪桐蔭の圧勝だった。大谷は11三振を奪ったものの、9失点で炎上。ホームランも打たれていたね。でも一番印象に強く残ってるのは、他でもない大谷のホームランだった。バックネット席の1塁側の前の方に座っていたんだけど、藤浪の縦に落ちるスライダーをすくい上げた打球は一直線にライトスタンドへ飛び込んでいった。その美しい放物線は今でも強く目に焼き付けられている。

 4回表に敦賀気比が反撃。ショートのエラーの後に二塁打が出て1点を返し、1ー2となる。接戦の様相になってきた。

 5回裏が終わると、グランド整備が入る。だから5回表の攻撃が終わったところて喫煙所に向かう。いや、先にトイレだな。兎に角そうしないと、どっちも込むからだ。高校野球観戦のベテランともなると、その辺は抜け目がないのだ。

 喫煙所はガランとしていた。煙草を吸う人間がどんどん減ってるんだろね。増税となれば、いつでも煙草の値段が真っ先に上げられる。ゆえに、今や高額嗜好品である。それに耐えきれずにやめちゃう人も増えてるんだろなあ…。全くもって世知辛い世の中だ。

 あっ、モニターに休止中の張り紙が貼ってある。
ಠ⁠_⁠ಠ嫌がらせかよ。それにしても何故に❓ 壊れたワケでもなかろうに、解せないと思った。だが、よくよく考えてみれば見えてきた。コロナ禍で、人が密集するのを避ける為の方策に違いない。モニターがあれば、つい2本目の煙草に火を点けたりして、滞在時間が長くなるのだ。それで人が溜まる。しかしモニターが無ければ、試合の進行具合が気になって早く席に戻ろうとするだろうと云う計算だ。セコい手を使いやがる。世知辛い世の中だよ。

 春の霞のような曇が美しい。
誰かが、筆でサッと書いたみたいだ。巨人が大きな筆を持って、喜々として雲を描いてるのを想像してしまう。アホだ。

 その後、試合は中々動かなかったが、ようやく7回裏に桐蔭が1点追加し、1ー3となる。まだまだ接戦だが、でも何となくこのまま終わるような気がした。前田くんの要所を締める大人のピッチングは簡単に崩れそうにないからだ。ヒットはそこそこ打たれているのだが、ピンチになると伝家の宝刀チェンジアップでことごとく三振に切ってとっていた。でも最速148kmとも言われるストレートは、殆んどが130km後半で、相手を捻じ伏せるという感じではない。それが不満だ。クレバーな選手だから手を抜いて投げているのだろうが、最初からそれじゃプロでは大成しないような気がする。真のスター選手になるには、圧巻の伝説的ピッチングが必要なんじゃないかと思うんだよね。また勝手なこと言ってるけど(笑)

 思った通り、試合はそのまま終わった。
前田くんは結局7安打を打たれるものの、三振14。四死球2の自責点0だった。やっぱ、いいピッチャーだ。次戦は、更なる活躍を期待しよう。

 春のそよ風が頬を優しく撫でる。
さあ、帰ろう。明日は朝からWBCの準決勝、日本vsメキシコ戦だ。また朝から飲まなくてはならぬ。とっと帰って、早く寝よう。泥酔男は、意を決したようにフラフラと立ち上がり、ゆっくりと階段を降りて行った。

               おしまい

 
追伸
久し振りに長い文章を書いたが、しんどいわ。文章を書くのって、こんなにも時間がかかるのねと思ったよ。にも拘わらず、たいした文章は書けないしさ。まだまだリハビリが必要そうですなあ。

(註1)高校野球の中継を見ていた
今にして思えば、区役所でTVが観られるだなんて驚きだ。最近のお役所は、そんなサービスもやってるのね。良い事です。

(註2)唐王
あとで調べてみると、からあげグランプリ東日本スーパー惣菜部門で3年連続金賞を獲得しているそうだ。テレビ番組「ジョブチューン(TBS系)」でも、一流料理人たちから合格判定をもらったようだね。

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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