絶海の島の悲しき犀

 
『奄美迷走物語』の最終回で、サイカブトについて書いた。
その文の中で、日本にもう1種いる南大東島に産するヒサマツサイカブト(Oryctes hisamatui)についても少し触れた。
だが、実を言うとアップ直前に何となくヒサマツサイカブトの事が気になったので調べてみた。したら書き進めるうちにズブズブの泥沼にハマッてしまった。ようはサイカブトそっちのけの長大な文章になってしまったのである。本末転倒も甚だしい。いつもながらの事だが、愚かじゃよ。
なので一旦中断して、書きかけのサイカブトの部分を切り離してレイアウトを元に戻して記事をアップした。そして、こうして新たなタイトルを付け、切り離した部分に加筆することにしたのである。

先ずはサイカブトについておさらいしておこう。

【サイカブト(犀兜虫) ♀】

(2021.4.1 奄美大島 朝仁町)

和名の由来は、頭部に動物のサイ(犀)のような短い角があるカブトムシの仲間だからだ。この和名は2000年前後に使われ始めたもので、それ以前はタイワンカブトと呼ばれていた。
学名 Oryctes rhinocerosの小種名”rhinoceros”もサイの事を表している。尚、属名の”Oryctes”は、多分ギリシャ語の”orycho”が語源で「掘る・掘り出す」という意味だろう。これは成虫がヤシなどの内部にトンネルを掘ることからの命名かと思われる。
英名の Coconut Rhinoceros Beetleもサイに因む。ようするに、ココナッツ(椰子)にいるサイみたいな甲虫って事だね。


(出展『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』)

鞘翅目 カブトムシ亜科 サイカブト属に分類される甲虫の一種で、外来昆虫とされる。
ヤシの木やサトウキビ、パイナップルを食害する害虫で、その穿坑能力は極めて強く、成虫は茎頂部にトンネルを掘って潜り込んで摂食を行う。そのためヤシなどは成長点を貫通した時点で枯死する。
日本に侵入したのは20世紀初頭とされ、台湾からの物資に紛れ込んで石垣島に上陸し、以降、凄まじいまでの繁殖力で分布を北に拡大し続けている。そして、現在では南西諸島のほぼ全域で定着。九州南部でも見つかっている。
本種の原産地はインドシナ半島周辺とされるが、農作や植栽による人為的な植物の移動に伴い、東南アジアから西はインド・スリランカ、東は中国南部、台湾、果てはハワイにまで分布を拡げており、在来か外来かが判然としない地域も少なくない。

成虫の体長は雌雄共に30〜45mm。
卵はヤシの枯木内の他、畑脇に積み上げられた肥料用の牛糞の中や堆肥、落葉土に産み付けられる。孵化した幼虫は2度の脱皮を経て4ヵ月程で老熟し、それぞれ3〜4週間の前蛹期と蛹期を経て羽化する。成虫の寿命は2〜5ヵ月程だが、成虫、幼虫共に冬季の約2ヵ月を除きほぼ一年中活動している。
本土のカブトムシのように樹液に来ることは殆どなく、基本的には地面を這って生活しているようだ。
♂の大型個体は弓なりの細長い角を頭部に1本持つが、♀も短い角を備えるため、小型個体では雌雄の見分けがつきにくい。但し♀は尾端が毛で覆われていることから、慣れれば判別は比較的容易である。
夜行性で、しばしば街灯に飛来し、路上でひっくり返ってもがいている姿をよく見かけるという。体が分厚いのに足が短いから起き上がれないのだ。
なお、日本にはもう1種この属に含まれるものがいて、南大東島にヒサマツサイカブトが産する。

扠て、ここからが本番である。
『奄美迷走物語』の最終回では、ヒサマツサイカブトについては詳しく書かなかった。理由は冒頭に書いたとおりである。
そういうワケで、気が進まないけど改めて泥沼の話を始める。

【ヒサマツサイカブト 久松犀兜】

(出展『画像あり。(´・ω・`)』)

2002年に新種記載されたもので、サイカブトよりもふた周りくらいデカくて分厚く、胸部背面後方が高くせり上がり、角も長い。
(・∀・)う〜む、カッコイイかもしんない。興味が出てきたので、もっと本格的に調べてみよう。

体長45〜49mm。体色は黒色〜赤褐色で、個体によって変異がある。雌雄共に頭に角を有し、大型の♂では長く発達して後方に強く湾曲する。♀の腹端部には黄褐色の長毛を密生するが、雄は無毛である。

(♂)

(出展『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』)

(♀)


(出展『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』)

この♀は赤褐色型だね。想像してたよりも赤っぽい。戦国武将の兜に、こうゆう色艶のものが有りそうだね。

前胸背板前部は深く陥没し、♂の後縁中央にある山状の弱い突起がサイカブトは2つなのに対し、3つある。
以上の点で充分区別できそうだが、小さい個体だと判然としないのもいるそうだから、一応、他の区別点も列挙しておこう。

▪雄の胸部背面中央の窪みを取り囲んでいる帯状の浅い溝は、サイカブトでは後方で途切れるが、ヒサマツサイカブトでは繋がる。
▪雌は胸部背面の後方中央に長方形の浅い窪みがある。
▪上翅の点刻がサイカブトよりも細かく滑らかで、光沢がある。一方、サイカブトは点刻が粗く、光沢も弱い。

成虫の発生期は、6~11月。
サイカブトは年中いるが、ヒサマツは夏から秋しかいないんだね。
ヤシ科の常緑高木、ダイトウビロウ(ビロウの変種)の林に生息し、灯火に飛来するが、数が少なくて生態については不明な点が多い。

【ビロウ(蒲葵・枇榔)】

(出展『Inaho Farm』)


(出展『宮崎と周辺の植物』)

おそらくサイカブトと同様に幼虫は枯死したビロウの幹の腐植物を餌にしていると推察されている。って事は卵も幼虫も見つかってないの❓
どうやら、しばしば「幻の」とも形容されるくらいに極めて稀な存在で、全部で10頭ちょっとしか採集されていないようだ。レッドデータブックでも沖縄県の絶滅危惧種IA類に指定されており、県内で最も絶滅に瀕した昆虫類の一つとされている。

南大東島には、わざわざハマヤマトシジミを採りに行ったのだが(当時は確実に採れたのは大東諸島だけだった)、面白い島だったし、一瞬採りに行ったろかと思った。けど2019年に種の保存法により採集禁止となっていた。残念なりよ。

【ハマヤマトシジミ♀】


(2013.2.24 南大東島)

ちなみに、6枚目は製糖工場ね。この寂寥感のある独特の風景を見て、とんでもなく遠い所に来たなと実感したっけ。
まるで古き良き昭和の時代にタイムスリップしたみたいで、絶海の島は浪漫ある島だったよ。
もう1回行きたいなあ…。海は綺麗でダイナミックだし、あのメチャメチャ美味いけど3切れ以上食うと、その場で脱糞してしまうという恐るべし魚、インガンダルマも又食べたい。
それに東洋一美しいとも言われる鍾乳洞、星野洞にも結局入れていないもんね。


(出展『ニッポン旅マガジン』)

南大東島はサンゴ礁が隆起してできた島で、ほぼ石灰岩で形成されており、鍾乳洞がおよそ120カ所もあると言われている。
その中でも星野洞は最大級とされ、長さ375m、約1,000坪もの広さがあるのだ。
けれど、入口まで行ったけど入れなかった。入るには事前に予約が必要なのである。

ところで、和名の頭に冠せられる「ヒサマツ」という名の由来は何だろう❓地名のようだが、南大東島にそんな地名あったっけ❓記憶にないぞ。それに地名ならば、普通は「ダイトウサイカブト」と名付けるだろうに。
蝶屋だったら、ヒサマツといえば真っ先に頭に浮かぶのがゼフィルス(シジミチョウのキラキラグループ)界のスター蝶であるヒサマツミドリシジミだ。もしかしてヒサマツサイカブトの名前の由来は、このヒサマツミドリと何か関係があったりして…。

【ヒサマツミドリシジミ 久松緑小灰蝶】

(2014.6.25 京都市杉峠)

ヒサマツミドリシジミの名前の由来は、1933年に鳥取県にある久松山(きゅうしょうざん)で最初に発見されたからだ。命名者が山の名前を読み間違えたのか、ワザと読み換えたのかは諸説あるようで定かではないが、どちらにせよ鳥取県の山と絶海の島に棲むヒサマツサイカブトとに接点があるとはとても思えない。
なので調べてみたら、由来は全然違うサイドからの命名であった。
ヒサマツサイカブトが最初に採集されたのは1957年で、採集したのは愛媛大学の久松定成教授。ようは氏に献名されたというワケだ。人名の可能性がある事をすっかり忘れてたよ。
だから学名の小種名である”hisamatui”も久松氏のことを指す。

でも採れたのは♀2頭だった。すぐに記載されなかったのは、おそらく♂が採れていなかったからだろう。そしてその約40年後の1999年に、佐藤勝氏により初めて♂が採集された。それに拠って新種であることが判明し、2002年に漸く新種記載の運びと相成ったものと思われる。
ただ最近は全く採集されていないという噂もある。2000年前後に南大東島でもサイカブトの侵入が確認された事から、その後、ダイトウサイカブトが生存競争に敗れてしまい、絶滅したのでは❓と憂慮されている。

余談だがネットで『〜大人のための甲虫図鑑〜クワガタムシ・カブトムシの知られざる世界』というクソ長いタイトルのサイトを見つけた。そこのヒサマツサイカブトの欄に、こういう記述があった。
「位置的に、フィリピンやインドネシア、またはミクロネシア方面から海流によってもたらされたものと考えられる。」
たぶん南大東島のみの特産種だから、古い時代にフィリピンやインドネシア、ミクロネシア方面から海流に乗って辿り着き、そこで独自進化したのではないかと云うようなことが仰っしゃりたいのだろう。

あれっ❓このサイトのヒサマツサイカブトの画像って、添付した『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』の画像と同じだね。確認したら、どちらも著者は吉田賢治となっている。ワシは蝶屋だから詳しくは存じ上げないが、それでも名前くらいはお聞きしたことがある。多分、クワガタ界のレジェンドと呼ばれてる人だ。
そんなレジェンドにカブ&クワ素人のワシがおこがましくも言っちゃうけど、この海流に運ばれた説って果たしてホントかね❓一見、説得力がありそうだけど、どうも納得がいかない。そもそも何が漂着して、ヒサマツサイカブトに進化したのだ❓書いてないからワカランぞなもし。画像を使わせてもらっといて申し訳ないけど、そうゆうのは書いとくべきでしょうよ。まあ紙面の関係とかもあるんだろうとは思うけどさ。

で、調べた結果、どうやら考えられるのは Oryctes gnuのようだ。ちなみに、和名はオオサイカブトムシ・グヌサイカブト・オオハビロサイカブトと3つもある。以下、和名は学名そのままのグヌサイカブトで話を進めてゆきます。

(グヌサイカブト)

(出展『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』)

55〜72mm。ヒサマツよりも大型だが、外部形態から近縁種とされ、インドシナ半島、マレー半島、インドネシア(ボルネオ島・スマトラ島・ジャワ島・スラウェシ島)、フィリピンに分布する。サイトによっては、スリランカやニューギニアも分布地に含めている。
にしても、ミクロネシアは入ってないぞ。何だか胡散臭いな。
一応ネットで検索したら、ミクロネシア連邦のサイカブト関連記事にはヒットせず、出てくるのはその北に位置する北マリアナ連邦のものばかりだった。どうやらグァム島にサイカブトが侵入してヤシの木を食害しているようだ。2007年辺りに侵入が確認され、その後、急速に被害が拡大しているみたいだ。

一瞬、海流じゃなくて地史と関係あるかも…という考えがよぎった。太古の昔には大陸と沖縄本島は陸続きだった。ゆえに南大東島も陸続きになっていたかもしれないと思ったのだ。その繋がっていた時代に祖先種がやって来て、後に大部分の陸地が海の底に沈み、島に取り残されたものが独自に進化したのではあるまいか…。
けんど、すぐに気づいた。南大東島は海洋島で、一度もどこの陸地とも繋がってはおらんのだ。となると、まさかフィリピンやインドシナ半島から飛んでは来れないだろうから(たぶん体が重過ぎて長距離は飛べない)、やっぱ海流に運ばれて来た可能性が高いという事になる。
だとすれば、グヌサイカブトの分布域の中で、ヒサマツの故郷である可能性が一番高い場所は何処だろう❓
それをさぐる前に、南大東島と各地域との位置関係を確認しておこう。


(出展『風景印のある風景100選』)

絶海の孤島みたいなもんですな。大東諸島は沖縄県だが、沖縄本島から東に約400キロも離れており、間に島らしい島はない。

お次は、一応のミクロネシア連邦。


(出展『ミクロネシア連邦大使館』)

そして、アジアの地図である。


(出展『アジア地図』)

フィリピンの真下のKの形をした島がスラウェシ島で、その左隣の島がボルネオ島である。えーい、面倒くせー。インドネシアとマレー半島、インドシナ半島の位置関係が解る地図を貼付じゃい❗


(出展『旅行のとも、Zen Tach』)

これでジャワ島とスマトラ島の位置も御理解戴けたかと思う。それにしても、えらく大ごとになってきたな。嫌な予感がするよ。ぬかるみの迷路に入り込んだ可能性大だ。

距離だけを考えれば、一番近いのがフィリピンである。次はベトナム(インドシナ半島)だろう。その次が微妙で、ボルネオ島かスラウェシ島、或いはグヌサイカブトが分布するかどうかワカランがミクロネシアかな。以下、目測だけどニューギニア、ジャワ島、スマトラ島の順になるかと思われる。
とはいうものの、距離だけでは場所の特定はできない。海流に運ばれてきたのなら、大東諸島へ繋がる海流でなくてはならないからだ。いくら距離的に近くとも、海流が逆向きなら辿り着けないのである。


(出展『国際深海科学掘削計画』)

アメリカ大陸から流れてきた北赤道海流はフィリピン付近で主に北上する。コレが所謂ところの黒潮という奴だね。と云う事は、グヌサイカブトはフィリピンから流れて来た可能性が十分にある。
一方、フィリピンより下の海流は南下している。となれば、スラウェシ島やジャワ島、スマトラ島に棲むグヌサイカブトは、海に乗り出しだとしても南大東島には辿り着けないだろう。

ではインドシナ半島&マレー半島、ニューギニア、ミクロネシアの可能性はどうだろう❓
しかし、この図には示されていない。他の図を探そう。


(出展『VEHA』)

この図では、ミクロネシアならば北上する海流もあるから、南大東島に辿り着ける可能性はある。でも微妙なところではある。なぜなら、西へと向かう流れなら北上できるが、並行して東へと流れる海流もあるのだ。とは言うものの、グヌサイカブトは、たぶんミクロネシアには居なさそうだもんなあ。
インドシナ半島&マレー半島周辺の海流は南に向かって流れてるね。ニューギニア周辺の海流も北上はしてなさそうだ。
でも、もうちょいインドシナ半島周辺の海流を詳しく知りたいところだ。


(出展『東京情報大学 水圏研究計画』)

この図によると、インドシナ半島を北上する海流もあるね。これならベトナムからの渡航の可能性も有り得るかもしれない。しかし、沖合を南下する流れの方が強そうだ。それに北上できたとしても、海南島を過ぎた辺りで南向きの海流に押し戻されそうである。そして、たとえ一部が沿岸ぞいの流れで北上できたとしても、台湾と中国との間(台湾海峡)を通る潮流に乗ってしまい、次に合流するのは対馬暖流っぽい。これでは南大東島には辿り着けそうにない。

となると、やはり距離的にも海流的にもフィリピンの可能性が一番高そうだ。
ならば、グヌくんの黒潮に乗った壮大なる冒険の旅を検証してみよう。


(出展『日本大百科全書』)

大東諸島の近くには黒潮反流というのが流れているらしい。沖合を南西方向に流れ、その流速は1km内外だそうだ。コレに捕まったら、反対方向の流れだから島には着けないね。余談だが、南大東島は沖縄本島との文化交流はあまりなく、むしろ伊豆諸島の文化が入り込んでいる。うろ憶えだが、開拓前に八丈島辺りから漁師がこの黒潮反流に乗って漂着したと云う記録がある筈だ。後に明治時代に島に入植したのも八丈島の島民だったと思う。入島した時は鬱蒼としたビロウの密林だったらしい。きっとその頃にはヒサマツサイカブトも沢山いたに違いない。その後、開拓により森の大半は失われ、数を急激に減らしたのだろう。

話を本筋に戻そう。
そうなると、黒潮反流の南を流れる亜熱帯反流に乗らなければ島には辿り着けない。運次第のかなり厳しい旅だ。辿り着ける確率はかなり低い。それでも最も可能性があるのはフィリピンだろう。

しかしネットで調べたら、辿り着ける確率はもっと低そうだ。
『比蝶のブログ』には、フィリピンのグヌサイカブトについて以下のように書かれてあった。
「スマトラやボルネオでは比較的多く見られるのだが、ここフィリピンではとんでもなく集まりが悪い。それなりにここでがんばってきたがフィリピンでは珍品なのは間違いない。レイテ・サマールやカタンドゥアネス島などは年数回みる機会があったが、究極に難しいのがパラワン島のOryctes gnu。極稀にしか正体を現さない・・・。年間1頭どころか数年に1頭レベルの激レア産地なのである。」

こんなレアものが偶然に海流に流され、たまたま絶海の島に辿り着く可能性って、果たしてどれくらいあるのだろう❓殆ど奇跡に近いよね。

続いて、他の地域に生息するグヌサイカブトについても検証してみよう。
と思ったが、その前に驚愕の資料を見つけてしまった。
何気に『フィールガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』をもう一度見たら、見逃していたが解説欄もあった。


(出展『Amazon』)

そこには以下のような事が書かれてあった。

「小型種
体長 45〜55mm
[形態]
♂♀共に黒色で、身体は大きく太い。♂♀共に身体は厚く楕円形で頭部が小さく、上翅には縦筋がある。♂♀共に頭には突起物があり、♂は♀よりもやや大きい程度。♂の前胸中央はやや凹む。」

♂♀共に…連発で変な文章だな。
あれっ❓、他の文献だと体長は45〜49mmじゃなかったっけ❓6mmも大きいじゃないか。なのに小型種とある。ワケわかんねーぞ。それに赤褐色の個体には触れてないね。
「上翅には筋がある。」という記述も気になる。だって、サイカブトもヒサマツサイカブトも筋はあるからだ。コレは何を言わんやとしているのだろう❓まあいい、先に進もう。
いや、ちょっと待て。
「♂♀共に頭には小さな突起角があり、♂は♀よりやや大きい程度。」とな。
(・o・;)えっ、小さな❓♂♀共に小さな突起角❓♀の角は小さいけど、♂の角は小さくないのでは❓

「[生態]1年1化型。
夏に生まれた幼虫は翌年の5〜7月に変態し、羽化した成虫は10日ほど蛹室内にとどまった後、発生する。発生は6月に始まり、7月にピークを迎える。7月中旬〜8月初旬に個体数を最も増す。8月下旬になるとあまり見られなくなる。ミミズの死体や動物の糞にも来る。やや夜行性が高く、夜間の活動が中心。」

先ず驚いたのは、生態に不明な点が多いと聞いていたけど、幼生期まで解ってるの❓それに発生についても詳しく書かれている。でもって、この書き方だとそこそこ採れるような感じじゃないか。10頭ちょっとしか採れてなかったんじゃないの❓
でもレジェンドなんだから、極めて有効な採集方法を編み出してタコ採りしたのかもしれない。
ミミズの死体や動物の糞にも来るってのも驚きだ。最初は、へー、肉食性でもあるんだと思った。けれど近縁のサイカブトには、そうゆう生態は見受けられなかった筈だ。
一応、隣のサイカブトのページを見たら、全く同じ事が書いてあった。それって、やや近縁で肉食性のコカブトの生態と混同してないかい❓
或いは、生態が不明だとか極めて稀だとかの、ワシがヒサマツサイカブトについて調べて知った情報は古いのか❓
それはさておき、「やや夜行性が高く、夜間の活動が中心。」って何だ❓それって表現が矛盾してないか。ややって何だ❓これだと昼間4、夜6の割合で活動してるけど、夜中心に活動してまーすと言ってるようなもんだ。レジェンドは天才だから独特の物言いをするのかもしれんが、だとしたらワシら凡人には理解できましぇーん。

「インドネシア(ニューギニア島を含む)、フィリピン方面からの外来種。サイカブトが棲息していることから、独立繁殖など定着はしないと考えられる。また、タイ地域にほぼ同じものが分布していることからタイからの外来種とも考えられる。」

おいおい、外来種かよ❓ヒサマツサイカブトって、南大東島の固有種じゃなかったんじゃないの❓それにサイカブトが棲息しているから独立繁殖が出来ずに定着はしないって、どうゆう事だ❓元々、島にはヒサマツサイカブトがいて、後からサイカブトが侵入してきた筈だぞ。
「独立繁殖など定着はしない」ってのも意味不明だ。これだと何だかたまに流されて来るけど迷蝶みたいなもんで、繁殖できずに定着はしないって言ってるようにしか聞こえん。完全に外来種扱いじゃないか。
それともサイカブトと交配して特徴が埋没してしまうって事❓まさかの、密かに交配実験を何度も繰り返した上での意見❓

「タイ地域にほぼ同じものが分布しているのでタイからの外来種と考えられる」ってのも、乱暴だなあ。ほぼ同じだからって同種扱いして、挙句には外来種にまで仕立ててしまうなんて荒技すぎるわ。もしかして生態面や発生期についても、ほぼ同じと考えてるタイ産のモノの事を流用して書いているのか❓だとしたら、言ってる事の辻褄は合ってくる。とはいえ、何らそれについての説明がない。もしもタイ産の生態ならば、そう書くべきだ。
それに大きさはヒサマツサイカブトが45〜49mmに対してグヌサイカブトは55〜72mmだから、グヌの方が明らかにデカイ。となると、同種扱いにするのはオカシイ。「ほぼ同じもの」ってグヌの事じゃないの❓もしやグヌじゃなくて、別な種類のサイカブトだったりして…。

にしても、タイから海流に乗ってやって来たというのも信じ難い。ベトナムより遠いじゃないか。
タイの国土は南北に長く、1620kmもある。そして上半分が内陸である。つまり、上半分の内陸部からは来れないと云うことだ。海に面しているのは下半分のバンコクから南、マレー半島北部までだが、そのうち外洋に面しているのはマレーシアと隣接した僅かな部分しかない。そこから南大東島に辿り着くなんて至難のワザだ。内湾部からなら尚更だ。フィリピンからの漂着でさえ奇跡的な事なのに、その確率たるや目眩(めまい)がしそうだ。

でも、海流に運ばれて南大東島に来たのは間違いなさそうだ。何れにせよフィリピンかどっかから、はるばる旅して来たのだろう。そして、その旅はとても長かった筈だ。飢えに耐え抜いたという証左でもある。これも又、奇跡だろう。偶然にヤシの木ごと流されたのかもしれない。木の内部にいる時に、そのまま流されたとかさ。それでも過酷極まりない状況下での旅には変わりあるまい。
グヌサイカブトの冒険の旅に想いを馳せる。波に揉まれ、熱帯の灼熱の太陽に灼かれ、そして時には嵐にも翻弄されただろう。でも、ひょんな事からお魚の友達ができて、励ましてくれたかもしれない。で、お約束のようにサメに襲われて絶体絶命のピンチになるのだ。
何だかドラマチックだなあ。ディズニー映画の題材になりそうじゃないか。

「[産卵・幼虫]
♀は朽木が土化したものに産卵する。幼虫期間は約9〜10ヶ月。」

さっき書いたけど、これだと幼生期も判明している事になる。
けど、累代飼育とかの話は全然聞かない。あっ、採集、飼育、売買はおろか、譲渡でさえも禁止されてる天下の悪法「種の保存法」に指定されてるから無理か…。けれど指定されたのは2019年だ。ならば、それ以前の記録なり噂なりがある筈なのに、とんと聞かない。

一応、ワシが妄想で書いていると思われても困るので、観察図鑑の解説ページの画像も貼り付けておこう。


(出展『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』)

そして、その下に囲い込みがあった。もう面倒だから、これも画像を貼り付けておく。

10頭ちょっとしか採れてないと言われる珍品の採集難易度が、やや容易の★★星2つだとー❓❗
(-_-メ)ナメとんかワレ❗❗
武闘派の血が騒ぎ、一瞬、気色ばむ。
でもやっぱレジェンドはプロ中のプロの筈だから、きっと南大東島でタコ採りしたんだろう。で、標本が出回っていないのは、ヒサマツが絶滅する事を見越して誰にも譲渡も売買もしていないのだろう。後々、値段がハネ上がるからね。だとしたら、流石のレジェンドだ。いや、だからこそレジェンドと呼ばれるのだろう。
あー、でも種の保存法に指定されちゃったから売り飛ばせないか。だったら捕らぬ狸の皮算用だったのね。いやいや待てよ。レジェンドなら、指定される噂を事前にキャッチして高値で売り捌いたに違いない。買った方は法律上それを口外できないし、しないから完全犯罪だ。あっ、施行前だから犯罪にはならないか。

でもなあ…、大きさを45〜55mmと他文献よりも大型サイズの表記にしている事からも、やはりタイ産とか海外産の事を指している可能性が高い。でも本のタイトルには「日本の」と付いてるぞ。
それはさておき、その下の採集方法にも(? _ ?)だわさ。樹液採集が入っとるじゃないか。
サイカブトはサトウキビの維管束や腐果を餌としているが、本土のカブトムシのように樹液に来ることは殆どない筈だぞ。ならヒサマツも同じ生態の可能性が高い。おかしな事だらけだから、もしかしてレジェンド、テキトーに書いてるのか❓採るのと飼育するのはプロでも、学術的な知識にはやや欠けるのかも…。
いや、レジェンドなんだから、んなワケなかろう。そうじゃない事を祈るよ。近縁だからって生態が全く同じだとは言えないからね。ワシの見立てが間違ってて、樹液にも来るのかもしれない。
ピコリーン💡。そうだ、もっと詳しい最新の図鑑を見てみよう。それで事実がすんなり判明するかもしれない。

先ずは、2012年発行の『日本産コガネムシ上科標準図鑑』を見る。多分それが一番手っ取り早く、正確且つ新しい情報だと考えたのだ。


(出展『学研出版サイト』)

図版には冒頭に掲げた赤茶色の♀と同じ個体のみしかなく、♂は図示されていなかった。と云う事は、珍稀種である事を如実に物語っていそうじゃないか。
とはいえ、解説を読んでみないとね。けど、段々ダレてきた。書き写すのが邪魔くさいので写真を撮って貼付しちゃう。

やはり「採集例が少なく、生態など不明な点が多い。」と書いてあるじゃないか。分布も「南大東島だけから知られており、最近の採集記録はない。」とあるし、生態も「未詳」とある。
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻どりゃあ〜、何がタイからの外来種じゃい❗

それに2014年に発表された大東生物相研究グループによる『大東諸島の固有生物相を支えるダイトウビロウの保護に関する緊急調査』という論文も見つけた。
その論文には「大型のカブトムシの仲間であるにもかかわらず近年になって記載された南大東島の固有種である(Nagai 2002)。これまでに発見された個体は極めて少なく,その生息状況や生態については全く知られていない。(田川 2003)」と紹介されている。つまり研究者のあいだでは、間違いなく南大東島の固有種として認識されているのである。
この論文には、生態面についても興味深い記述があるので、併せて紹介しておこう。

「今回,南大東島の住民から聞き取り調査を行なった結果,30年以上前に海岸部の山火事で立ち枯れ状態になったダイトウビロウの幹の腐植物の中からヒサマツサイカブトムシと思われる個体を採集したとの情報を60歳代の男性から得られた。また20年ほど前に自宅に植栽されていたダイトウビロウが枯死し,立ち枯れ状態となったダイトウビロウの内部から,ヒサマツサイカブトムシと思われる成虫や幼虫を複数採集したとの情報も得た。これらの個体が,タイワンカブトムシ(サイカブト)であった可能性も考えられるが,同時期に南大東島で採集されたタイワンカブトムシの標本はこれまでに発見されておらず,いずれもかなり大きなカブトムシであったとのことからヒサマツサイカブトムシである可能性が高いものと思われる。このような聞き取り調査の結果からも,本種がダイトウビロウの枯死木で繁殖している可能性は極めて高いものと思われる。」

あくまでも聞き取り調査である事を忘れてはならないが、信憑性はそれなりに高そうだ。

詳細な採集データもあった。
「一方,採集データが保存されていた11個体の成体の採集日は,6月1日,6月8日,6月21日,7月22日,7月23日,8月2日,8月(日付不明),8月(日付不明),9月5日,9月15日,11月15日であった.これらの採集情報からは本種の成虫は,おもに6月上旬から11月中旬にかけて活動しているものと思われる。また,採集地点の詳細が明らかな6個体については,いずれも内幕のダイトウビロウ林周辺で灯火に飛来した個体であった。また,各標本の性別は雄が5個体で雌が6個体であった。」

10頭ちょっとというのはこの事だろね。それにしても♂はかなり珍しいと思ってたけど、結構採れてるんだね。
(・o・;) ん❓ちょっと待てよ。ネットの『読者メーター』で、♂を最初に見つけた佐藤氏の著者『珍虫ハンターの海外旅行記』が紹介されてたけど、その読者感想レビューには♂は1頭しか採れてないとか書いてなかったっけ❓
確認したら、矢張りそうだった。
「あと、ヒサマツサイカブトの♂はこの筆者の佐藤勝さんが発見した1匹しかいないとは知らなかった。」
って事は、その後にオスが4つ採れたっていう事❓それはちょっと怪しくないかい❓何かヒサマツサイカブトの情報って錯綜していて、どれがホントでどれが間違ってるのかワケわかんないぞ。

とにかく、この論文とコガネムシ図鑑の解説とで固有種である事には間違いなかろう。一件落着だ。
けど、確認のために『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』の出版年も見ておこう。

(┛◉Д◉)┛彡┻━┻どひゃあ〜💦
何と2015年になっとるやないけー。となれば、この図鑑の情報が一番最新って事になっちまうぜよ。
かくなる上は、アジアの他の種類のサイカブトをあたってみるしかない。タイに別種のサイカブトがいたら、そいつがヒサマツサイカブトそのもので、そやつが流されて来たかもしれないのだ。

しかし、今森さんの『世界のカブトムシ』にはグヌサイカブトさえ載っていないし、岡島秀治著、黒沢良彦監修の『世界のカブトムシ1』には、サイカブトとグヌサイカブトしか載っていなかった。

もう頼りは水沼さんの『Giant Beetles コレクションシリーズ テナガコガネ・カブトムシ』くらいしかない。

そこには、サイカブト、グヌの他に「O.heros」というチモール島特産の珍品と「O.centaurus」というニューギニア産のサイカブトしか載っていなかった。ちなみに、サイカブトの仲間の多くはアフリカに分布している。アフリカで生まれ、分化してアジアにも分布を広げたのだろう。

(Oryctes heros ♂)

頭部の角状突起が非常に長いが小型種である。なのでコヤツが南大東島に渡ってヒサマツになったとは思えない。珍品だし、チモール島は遠すぎだろ。

(Oryctes centaurus)

3と5が♂で4が♀である。グヌと大きさ的にも形態的にも似ているが、前胸背の窪みの上部の形、つまり後縁中央にある山状の弱い突起の形が違うようだ。
コレなら可能性はあるかもしれないが、より分布の広いグヌの方が漂着する可能性が断然高いだろう。あっ、もしかしたらレジェンドはコヤツをグヌのニューギニア亜種と考えて、ニューギニアを分布地に含めたのか❓
とにかくアジアには、これ以外の別種のサイカブトはいない。つまり、権威である水沼さんでさえもインドシナ半島にはサイカブトとグヌサイカブトしかいないと言ってるのと同じだ。やはりレジェンド吉田氏の書いてる事はオカシイ。しかし発行年は『世界のカブトムシ1』が1985年、水沼さんの図鑑が1999年だから、何れもレジェンドの観察図鑑よりも古い。となると、その後に新たな分類が提示され、インドシナ半島のグヌは別種になったかもしれないのだ。可能性は低いとは思うけどさ。けど、海外の論文までは追いきれないから真偽のほどは分からない。
他に海外産のカブトムシ関係の図鑑は見つけられなかったし、月刊むしの『世界のカブトムシ』は上巻の南北アメリカ編しか出てない。まだ下巻は発行されてないのだ。もうお手上げである。
(༎ຶ ෴ ༎ຶ)ダァー。誰か、正しい分類を教えてくれよー。

何だか頭がグチャグチャになってきた。もしかしてヒサマツサイカブトはグヌサイカブトから分化したものではなく、O.rhinoceros、普通のサイカブトからの分化だったりして…。

でも『日本産コガネムシ上科図説』には、ハッキリと書いてあった。

生態の欄には、不明(生態が)とあり、最後の方に「東南アジアに分布する O.gnu Mohnike 1874 のグループに属する。」と明瞭に書いてある。
やっぱ、ヒサマツサイカブトと最も近い関係にあるのはグヌサイカブトだったじゃないか。

けど、話はコレで終わらない。
改めて図版の解説を読んでコケる。

雌雄の区別の欄に、何と「外見上の差異はほとんどなく、交尾器による区別が確実。」と書いてあるではないか。
そして驚いた事に図版の1から4は♂で、5と6が♀らしい。
え━━━━\(◎o◎)/━━━━っ❗
全部♀だとばかり思っていたが、♂なのに角が♀みたく短いじゃないか。
謎が謎呼ぶ、新たな謎の登場である。ちなみにこの図鑑の発行年は2006年だから、♂は既に発見されている。つーか、既に記載されてんだから、著者は角の長い♂がいる事は知ってた筈だ。それを図示しないばかりか、触れてもいない。
でも、右下には♂の交尾器まで図示されてるもんなあ…。8が♂交尾器背面で、9は♂交尾器側面とある。ならば、たとえ角が短くともコヤツは♂なのだろう。

ここで漸く思い出す。そういや小型個体は雌雄の判別がつきにくいんだっけ❓いや、小型の個体だとサイカブトと間違えやすいんだったっけ❓何か記憶回路がショートしてきた。冷静になろう。
考えてみれば、レジェンドの観察図鑑には「♂♀共に頭には小さな突起角があり、♂は♀よりやや大きい程度。」と書いてあったな。という事は、レジェンドの見立ては正しかったのか…。だったら、それについてはゴメンなさいだ。

思い出した。♀は腹端部に黄褐色の長毛を密生するが、雄は無毛だった筈だ。ソレで解決だろう。改めて図版の裏面写真を見る。
(-_-;)ビミョー…。♀と比べて毛は少ないのだが、無毛ではないのである。

生態欄にも混乱するような事が書かれていた。
「標本のほとんどは1950〜60年代の採集品であり、再発見が期待される。」とある。
再発見が期待される❓もしかして、この著者達は1999年に発見された角の長い♂の標本を見ていないのだろうか❓となると、新種記載の時にタイプ標本に指定された個体も見てないって事❓何だか矛盾だらけじゃないか。そんなんで図鑑なんて書いていいのか❓おかげで益々の謎だらけじゃないか。
w(°o°)wあっ、もしかして角の長い♂は、佐藤氏が1999年に採集したモノだけだったりして…。じゃあ、佐藤氏が採ったのは本当にヒサマツサイカブトなのか❓それこそグヌサイカブトだったりして…。ここへ来て、また新たなる謎の壁にぶつかった。

けれども、それも含めてヒサマツサイカブトの数々の謎は永遠に解けないかもしれない。
既に述べだが、最近は全く採集されていないようなのだ。2014年に発表された大東生物相研究グループの論文『大東諸島の固有生物相を支えるダイトウビロウの保護に関する緊急調査』でも「過去5年間で数個体の発見例しかなく、生息個体数は極めて少ないものと推察される。」と書かれてあったし、調査の際にヒサマツが採れたとも書いていなかった。
そんな状況にも拘らず、年々農地整備や道路設置などによりビロウ林の減少や分断が進んでおり、生息環境が悪化しているという。ヒサマツが生き延びるには、繁殖場所となるビロウの枯死木が常に供給されるような大きなビロウ林が必要なのだ。
そして、既に触れたが2000年前後に南大東島にもサイカブトが侵入し、ビロウ林に大きな被害を与えている。ならばサイカブトとの種間闘争は避けられないだろう。そして、その闘いはヒサマツにとっては極めて不利だ。サイカブトは年中活動しているが、ヒサマツの発生期は夏から秋と短いし、大きな体の分だけ餌の量もサイカブトよりも必要だろう。またその期間も、より長くなる可能性が高い。繁殖力に大きな差があるのだ。これでは対抗できるワケがない。
さらには、近年は外来種であるオオヒキガエルとミヤコヒキガエルが激増して高密度に生息しており、灯火に飛来した昆虫類をガンガンに捕食しているため、本種への影響も懸念されている。
ヒサマツさん、絶体絶命だ。一応、サイカブトをトラップで駆除しているらしいが、あまり効果はないようだしさ。
えっ(☉。☉)、トラップで駆除❓おいおい、ヒサマツサイカブトムシの小型個体は、研究者でもサイカブトとの識別が困難じゃなかったっけ❓そんなの、島民が駆除する際に判別できんのかよ❓ヒサマツを誤って捕殺する可能性は高いよな。
こりゃ、きっと限りなく絶滅に近い状態だな。いや、既に絶滅している可能性の方が高い。あげなサトウキビ畑だらけの小さな島だ。そもそも棲息可能な場所は極めて狭いのだ。そこで探しても見つからないという事は、自ずとそうゆう公算が高いと言わざるおえないだろう。記載からたった20年くらいで消えてしまうなんて例が果たして過去にあるのだろうか❓あったとしても、前例は極めて稀なんじゃないか❓もし絶滅してたら酷い話だし、日本の恥でしょうよ。環境省、糞喰らえだ。

絶滅ならば、まだ解明されてない生態は永遠の謎として残ることになる。
又この論文では、学術的な意義として「海洋島である南大東島の昆虫相の形成過程やOryctes属の海洋分散と種分化を研究する上で重要な種である。」と評価している。その検証も儘ならないという事になりそうだ。

書けば書くほど、何だか悲しくなってきた。
南大東島は元々はビロウの原始林に覆われた島だったのだから、かつてはヒサマツサイカブトにとって天国のような所だったに違いない。なのに人間が入って来たばかりに、この世から永遠に消えようとしているのだ。
絶海の島の悲しき犀。奇(く)しくも動物のサイと同じような運命を辿っているんだね。なんだか哀れだよ。

あの南大東島の星降る夜空を思い出して見上げる。
せめて祈ろう。此の世からいなくなってしまう生き物なんて有ってはならないのだ。

                  おしまい

 
追伸
環境省には、せめてもの罪滅ぼしに、自ら音頭をとってDNA鑑定をして、種の解明くらいはして欲しいよね。まだ絶滅したとは決まってないけど。

参考文献
◆『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』
◆『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』
◆吉田賢治『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』
◆『日本大百科全書』小学館
◆『日本産コガネムシ上科標準図鑑』岡島秀治・荒谷邦男
◆『大東諸島の固有生物相を支えるダイトウビロウの保護に関する緊急調査』大東生物相研究グループ 2014
◆酒井香・藤岡昌介『日本産コガネムシ上科図説』
◆岡島秀治著 黒沢良彦監修『パーフェクトシリーズ22 世界のカブトムシ1』講談社
◆水沼哲郎『Giant Beetles コレクションシリーズ テナガコガネ・カブトムシ』ESI
◆今森光彦『世界のカブトムシ』アリス館

インターネット
◆『Wikipedia』
◆『画像あり。(´・ω・`)』
◆東 和明『南大東島まるごとミュージアムを確立する』
◆『http;//www.pref.okinawa.jp』
◆吉田賢治『〜大人のための甲虫図鑑〜クワガタムシ・カブトムシの知られざる世界』
◆『比蝶のブログ』
◆『国際深海科学掘削計画』
◆『VEHA』
◆『東京情報大学 水圏研究計画』
◆『Inaho Farm』
◆『宮崎と周辺の植物』

 

奄美迷走物語 其の19

第19話『そして、虚しき終焉』

 
2021年 4月1日

いよいよ帰阪の時が来た。

朝7時。
起きて外を見る。曇りだが、空は雨の予感を孕んでいる。
アマミキシタバもフタオチョウの♀も採れてないから、いっそ帰りのチケットを捨てて残ることも考えた。だが、これも流れだと思って素直に帰ることを決めていただけに何だかホッとする。
もし晴れでもしていたら、憾みを残したまま帰る事になる。そうじゃない事がせめてもの救いだ。

ベランダに出る。
晴れていたら、ゲストハウス涼風のベランダはこんな感じで割とお気に入りの場所だった。

ここで煙草を吸うことが多かったけど、こうゆう所で昼間っから飲むビールって最高なんだよなあ。
けど晴れてたら蝶採りに行ってっから、そうゆうワケにはいかないんだけどもね。虫採りの旅は不自由なのだ。蝶だけでなく蛾なんて採り始めた今は、夜も飲みに行けないので益々不自由だ。で、この結果なんだからアホらしい。

そんな事を思いつつ、ふと端っこを見ると、こんな奴が蹲(うずくま)っていた。

コカブト(註1)だ。コカブトムシとも言われるカブトムシの親戚だ。昨晩、おそらく宿の灯りに寄ってきたのだろう。

そういや、若者二人組のうちの一人がカブクワ屋(註2)で、このコカブトの事を激しく罵っていたな。
彼曰く、コヤツは驚いた事に肉食性らしい。コカブトなんぞには興味が無かっただけに知らなかったけど、カブトムシなのに肉食とはちょっとした青天の霹靂だ。そしてコヤツ、彼によると肉食性なだけにメチャンコ臭いらしい。
一般ピーポーなら見る機会は少ないが、真剣に虫採りをしていればそれなりに会える普通種だが、そんなにも異端児だったのね。一瞬、匂たろかとも思ったが、絶対に後悔しそうなので、やめておくことにする。

8時台に宿を出て、朝仁見取橋のバス停へ向かう。この前を通って、何度もあかざき公園に行ったよな…。苦い日々だったけどさ。

午前8時37分だったっけ❓もしかしたら、17分か27分だったかもしれないけど、とにかく空港行きのバスに乗る。

車窓を鉛色の景色が推移してゆく。
そして、ゆっくりと奄美での日々がスローモーションで頭の中を流れてゆく。でも、その殆どが苦い記憶だ。溢れ出る後悔で溺れそうになる。
でも頑張った方だと思う。少なくともサボることはなかった。ただ運がなく、メンタル面が弱かっただけだ。だから十全の結果は得られなかった。
奄美大島はダイビングインストラクター時代を含めてコレで4回目だけど、今回が一番カタルシスがなかったかもしれない。
まあ4回も来れば、そうゆう事もあるだろう。そう思わないとやってらんない日々だった。それなりに面白くはあったけどさ。

午前9時半過ぎにバスは奄美空港に着いた。
虚しき終焉が近づいている。

午前10:50発の飛行機に乗る。今回も行きと同じくピーチでの予約なのに、機体は何故かバニラエアのものだった。

窓の外を見ながら、ぼんやりと思う。
果たして又、リベンジに来るのだろうか…❓
フタオとアカボシ狙いなら次は6月末だろうが、夏型にはあまり興味がない。まだしも興味があるのはアカボシの黒化型ぐらいだ。それにアマミキシタバは、この時期にはあまり記録がなく、3〜4月の次に記録が多いのは8月なのだ。

(アマミキシタバ)

(出展『世界のカトカラ』)

つい最近、アマミキシタバは多化性である事が判明し、孵化から約1ヶ月半で成虫になる事が分かっている。なので可能性がないワケではないが、一番虫屋が集まる時期に記録が少ないという事は、返り討ちに遭う確率の方が高い。もしかしたら、その頃が丁度端境期にあたるのかもしれない。
まあそれとて先の話だ。今、考えたところで答えは出ない。

飛行機は突然重力を失ったかのように、ふわりと離陸した。
あっという間に建物がミニチュアみたいに小さくなってゆく。
さらば、奄美。迷走の日々もこれでお終いだ。
やがて機は厚い雲の中に突っ込み、島の姿は見えなくなった。

                  おしまい

 
追伸
カタルシスのあまりない連載で申し訳なかったが、結果に嘘はつけない。こうゆう時もあるさ。
もしカタルシスを求めるのならば、姉妹作『西へ西へ、南へ南へ』というシリーズを読んでくだされ。そちらの方が旅行記としても面白いです。
ゴチャゴチャ言ってますが、とにかく今回の連載を読んで下さった方には感謝です。ありがとうございました。

なお、奄美空港の写真は連載冒頭にも使いました。だからヤラセ写真です。写真を撮るつもりだったけど、出口の目の前に名瀬ゆきのバスが停まってた。で、運転手に出発する時刻を訊いたら、すぐ出ると言うので慌てて飛び乗ったのだ。バスの便がそんなに頻繁にあるワケではないので、たかが空港の写真を撮る為だけに時間を犠牲にしたくはなかったのである。

 
(註1)コカブト
調べたら、驚愕の野郎だった。少し長いが、各サイトの記事を要約して纏めておきます。

学名
Eophileurus chinensis (Faldermann, 1835)
日本のほぼ全域に分布し、日本以外にも朝鮮半島、中国、台湾に分布する(亜種を含む)。
奄美大島産は亜種 irregularis Prell, 1913 とされ、アマミコカブトと呼ばれる。分布は奄美大島の他に徳之島、与路島、請島。本土産と比べて♂の胸(前胸背板)の抉れが小さく、上翅の点刻が不規則に並ぶという相違点がある。
他に沖縄本島産も okinawanus Nomura, 1964 と云う亜種に分類されており、オキナワコカブトと呼ばれている。

英名
・Single-horn rhinoceros beetle
・Single horned beetle

意味は、一角サイみたいな甲虫って事だね。
一応言っとくけど、サイはあの動物のサイ(犀)の事ね。で、一角のサイといえばインドサイだ。他のサイは角が2つあるんじゃなかったけかな。あっ、絶滅しかけのジャワサイも一角だったね。

(インドサイ)

(出展『上野を散歩』)

この鎧のような体がインドサイの最たる特徴だ。
体は分厚く、背中が盛り上がってて重戦車みたい。


(出展『Pixabay』トリミングしてます。)

そういえばネパールのナショナルパーク(註3)でエレファントライドした時に、野生のインドサイを見た事があったな。
バーン❗と偶然に25メートルくらいの距離で突発的に対峙したんだけど、その時のオーラと迫力たるや凄まじいものがあった。サイにはおとなしいイメージがあるけど、全然違くて猛獣そのもの。闘争心の塊って感じで、闘気が朝靄にゆらゆらと立ち昇るのが見えたくらいだ。でもって、象からも静かなる闘気が立ち昇るのを感じた。もうスゲー緊迫感で、空気にピシッピシッピシッとヒビが入りそうなくらいだった。象の上にいるとはいえ、素直にメチャンコ怖かった。巻き込まれるの❓ワシら関係ないのにぃー( ;∀;)と思った記憶も甦ってきたよ。
両者が立ち止まって睨み合ってた時間は7、8秒かそこらだったと思う。なのに物凄く長く感じられたのを鮮明に憶えている。
そういやこの後、村で怒り狂った象が暴走しだしたんだよなあ…。あの時はマジ、死を覚悟した。あまりにも怖過ぎて爆笑したら、象がおとなしくなって助かったけど。人間、怖過ぎると爆笑すると知ったよ。

話をコカブトくんに戻す。
「コカブト、またはコカブトムシとも言われるコウチュウ目( 鞘翅目) コガネムシ科 カブトムシ亜科 コカブト属に分類される甲虫。
漢字で書くと、小甲虫、または小兜虫となる。
低地から低山帯に棲み、亜種オキナワコカブトやアマミコカブトなどは普通種だが、本土のコカブトは個体密度は低く、個体数もそれほど多くない。」

なぁ〜んだ、本土産は普通種じゃないのね。確かに小さい頃は一度も見た事がなくて、大人になって灯火採集をするようになってから見るようになったもんな。もう少しリスペクトすべきだったね。

「体長は18mm〜26mm程度。
小型ながらカブトムシの仲間であり、雌雄ともに小さな角状突起を持つ。このように外部形態上の性差には乏しいが、胸部前胸背板にある窪みの形の違いで判別する事ができる。オスは円形、メスはスリット状になる。体つきと角状の突起からサイカブト類にも似るが、より扁平。脚部の棘は体の割には大きめである。成虫は基本的に夜行性だが、日中に路上などを歩いている姿を見かけることもある。樹液に集まることは少なく、他の昆虫の幼虫や死骸を食物とする。」

おっ、やはり肉食性だね。しかも悪食と言ってもいい。加えて節操も無さそうだ。どこかハイエナを彷彿とさせるものがあるね。
そういや、矢田丘陵で樹液に来ているのを見た事があるな。でも肉食ならば、目的が樹液だったのかどうかは微妙だ。樹液に集まる昆虫を次々と襲って、ムシャムシャ食ってたりしてね。😱怖っ。

「主に体の柔らかいものを狙うが、コガネムシ類の腹部に穴をあけて体内に侵入し、内臓などを食い荒らすこともある。」

内蔵を食い荒らすとか、もうムチャクチャだな。何だかオゾマシイよね。とてつもなくホラーな野郎だよ。カブトムシの養殖場で発生して、その幼虫を食い荒らしたという報告もあるそうだ。悪辣だよな。その映像を何となく想像して気持ち悪くなったわ。地獄絵図じゃよ。

「幼虫は広葉樹の白色腐朽した朽木を食べるが、時に他種の幼虫を襲う事もある。成長は非常に早く、孵化した幼虫は2ヵ月足らずで羽化にまで至る。ゆえに年2〜3回発生していると考えられ、秋に羽化した成虫はそのまま朽木の中で越冬する。又、一旦野外で活動を開始した成虫も再越冬能力を持ち、半年から最大2年と長い寿命をもつ。幼虫の姿では滅多に越冬せず、メスは我が子が秋までに羽化できるタイムリミットの7月末以降は殆ど産卵しない。」

おいおい、幼虫まで肉食性があるのかよ。それに孵化した幼虫が、たった2ヵ月足らずで羽化にまで至るとは大型甲虫の生態概念を超越してる。これもホラーだ。

「夏期の成虫はよく飛翔するため灯火にもしばしば見られるが、凝集対象を持たない本種は樹液場や海岸をうろついていたりすることもあるなど、まだまだ謎の多い種類である。」

たしかに灯火には来るが、いつも単独で、複数が飛来したという記憶は多分ない。

「市販のカブトマットや他のクワガタに使った産卵木を入れておけば産卵させることはできるが、難易度はやや高く、産卵は7月迄にさせる必要がある。なお肉食傾向の強い種のため幼虫や卵が確認できたらすぐに成虫を取り出す必要がある。幼虫は非常に成長が早くて2ヶ月程で成虫になるが、早く羽化した成虫がまだ羽化していない幼虫や蛹を捕食することがあるので単独飼育の方が安全である。」

まさかの子殺し&兄弟殺し昆虫だ。
何だか生々しい生態だよね。ブサいくで、異様に生命力があって臭い。そして残虐でオマケに子殺し&兄弟殺しまでするという全然愛せない面ばっかの輩じゃないか。もうケダモノだね。こんなの、人間に喩えるなら人格崩壊のサイコ野郎だ。若者が罵る気持ちも解るような気がするよ。

一応、上から見た姿も必要かと思い、図書館で探した。
ちゃんとした図鑑よりも子供向けの図鑑の方が鮮明でキレイな画像ではないかと考えてソチラのコーナで探してみた。メジャーな昆虫ならば、往々にして海外産も含めて子供向け図鑑の方が画像が美しかったりするのだ。

目論見どおり、ソッコー発見。

(アマミコカブト)

(出展『学研の図鑑LIVE カブトムシ・クワガタムシ』)

しかし、その形に違和感を覚えた。
(・o・)あれっ❓…、奄美で見たのとは違うような気がする。
そして、隣の横向き画像を見て、\(@_@)/驚愕する。

角が明らかに短い❗
アレって、もしかしてサイカブトじゃなくなくねっ❓

慌ててサイカブトの項も見る。


(出展『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』)

勿論、横からの画像も確認する。

完全にサイカブトやないけー❗
考えてみれば、奄美にサイカブトがいるなんて足の爪先ほどにも思っていなかった。だから疑いもなくコカブトだと断定してしまったのだ。サイカブトの分布は沖縄以北だとばかり思い込んでたからね。道理で何かコカブトムシにしては矢鱈とデカイなと感じたのだ。最初に見た時はカブトムシの♀かと思ったくらいだからね。

しゃあないので、改めてサイカブトの解説をしまーす。

コウチュウ目(鞘翅目) コガネムシ科 カブトムシ亜科 サイカブト属に分類される甲虫の一種で、外来昆虫とされる。
漢字で書くと、犀兜虫。和名はサイのような短い角を持つことに因む。この和名は1990年代後半から2000年代前半頃に急速に使用され始めたもので、それ以前はタイワンカブトと呼ばれていた。これは日本の個体群の原産地が台湾とされる事からである。
また1970〜80年代には、一部でカンシャカブトと云う名前も使用されていた。カンシャとは甘蔗、つまりサトウキビのことである。これは本種がサトウキビの害虫として農業関係者の間では有名だった事に起因するものかと思われる。
他にヤシの木やパイナップルも食害し、その穿坑能力は極めて強く、成虫は茎頂部にトンネルを掘って潜り込んで摂食を行う。そのためヤシなどは成長点を貫通した時点で枯死する。
又、沖縄がアメリカ合衆国から日本に返還されて間もない1970年代には「サイクロンカブトムシ」という商品名で夜店やデパートで売られていたという。

学名 Oryctes rhinoceros (Linnaeus, 1758)
おっ、分類学の父とも称されるリンネの記載だね。
属名の”Oryctes”は、多分ギリシャ語の”orycho”が語源で「掘る・掘り出す」という意味だろう。これは成虫がヤシなどにトンネルを掘ることからの命名だろう。
小種名の”rhinoceros”はサイの事だね。

英名 Coconut Rhinoceros Beetle
ようするに、ココナッツ(椰子)にいるサイみたいな甲虫って事だすな。

日本に侵入したのは20世紀初頭とされ、台湾からの物資に紛れ込んで石垣島に上陸し、以降分布を北に拡大し続けており、現在では南西諸島のほぼ全域で定着。九州南部でも見つかっているという。凄まじいまでの繁殖力だね。なお奄美大島と徳之島では、1991年に初めて分布が確認されたそうだ。だから小学生の頃の知識だと、奄美には居ない事になっているのである。
本種の原産地はインドシナ半島周辺とされるが、人為的な植物の移動(主に農作植物)に伴い、東南アジアから西はインド・スリランカ、東は中国南部、台湾、果てはハワイにまで分布を拡げており、在来か外来かが判然としない地域も少なくない。
なお、日本にはもう1種この属がいて、南大東島にヒサマツサイカブト(O. hisamatui)が産する。

(ヒサマツサイカブト 久松犀兜)

(出展『画像あり。(´・ω・`)』)

2002年に新種記載されたもので、サイカブトよりもふた周りくらいデカくて分厚く、胸部背面後方が高くせり上がり、角も長い。

サイカブトの話に戻ろう。
成虫の体長は雌雄共に30〜45mm。
卵はカブトムシと同じく堆肥や落葉土に産み付けられる。孵化した幼虫は2度の脱皮を経て4ヵ月程で老熟し、それぞれ3〜4週間の前蛹期と蛹期を経て羽化する。成虫の寿命は2〜5ヵ月程だが、成虫、幼虫共に冬季の約2ヵ月を除きほぼ一年中活動している。
カブトムシと比べて全体に外皮が厚く強固であり、脚が太くて短かめである。特に前脚の脛節は幅が広く、トゲが発達している。その為、樹皮上を登る能力は十分に擁するものの、短足なことから細い枝を歩くのは苦手である。とはいえ、野生下では樹木の表面を歩行することは滅多になく、本土のカブトムシのように樹液に来ることも殆どない。基本は地面を這って生活しているようだ。
♂の大型個体は弓なりの細長い角を頭部に1本持つが、♀も短い角を備えるため、小型個体では雌雄の見分けがつきにくい。但し♀は尾端が毛で覆われていることから、慣れれば判別は比較的容易である。
夜行性で、しばしば街灯に飛来し、路上でひっくり返ってもがいている姿をよく見かけるという。

サイカブトなら、肉食性じゃないから触っても良かったなあ。ちょっと惜しい事をした。
因みに、生き虫を本土に持ち帰ることは厳に謹しむべきである。ましてや野に放つことは厳禁だ。紛れもなく害を及ぼし、下手したら後々には甚大なる被害を引き起こしかねないからね。
『可愛いそうだから、放してあげようよ。』とか、己のオナニー的優しさと正義感を押し付けてくる人が多いけど、この場合はクズだ。そのオナニー的正義感が時に犯罪行為になるのである。何でもかんでも可愛いそう視点の、昨今のヌルい優しさが蔓延する風潮は愚かとしか言いようがない。そのせいでアライグマは爆発的に増え、カミツキガメも急速に増えて各地で大問題になっているのだ。
一般ピーポーは、外来生物であるアメリカザリガニやブラックバスがどれだけ此の国の従来からある生態系を破壊し続けてきているのかをコレっぽちも知らんのである。

余談だがコカブトの話に戻ると『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』のアマミコカブトの欄には、分布地として奄美諸島の他に伊豆諸島の八丈島やトカラ列島も挙げられていた。


(出展『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』)

なぬ❓トカラ列島なら位置的にまだしも理解できるが、遥か離れた八丈島まで分布に含まれるのは解せない。
調べたら『ZUKAN 生きもの愛が図鑑になる』というサイトに、トカラ列島産(口之島・中之島・平島)も伊豆諸島産も名義タイプ亜種に含まれていた。しかし、よく見ると伊豆諸島は御蔵島以北とある。八丈島って御蔵島より南だったよな…。まさか…だよね。
でも読み進めると、そのまさかの答えがあった。
「八丈島では、2006年に2頭の雌が記録されているが、これらは奄美亜種の特徴を有しているという。同島では奄美大島などから植物とともに移入されたと考えられるカミキリムシなどが多く記録されており、コカブトムシも移入種の可能性がある。」
なるほどね。そういう事だったのか。ならば納得である。
危ねえ危ねえ。「子供の図鑑とはいえ、情報に正確性を欠くのはよくないと思うよー。」とか書きそうになってたから、危うく恥をかくとこだったよ。まあ、トカラ列島は間違いみたいだけどさ。あー、でもコレとて奄美諸島からの移入種という見解もあったりしてね。

 
(註2)カブクワ屋
カブトムシ&クワガタムシのディープな愛好家のことをこう呼ぶ。参考までに言っとくと、例えばクワガタ好きは「クワガタ屋」、カミキリムシ好きは「カミキリ屋」、蝶好きは「蝶屋」、蛾好きは「蛾屋」、蝶も蛾もやる人のことを「レピ屋」と呼ぶ。レピはレピドプテラ(Lepidoptera)の略で、蝶と蛾を含む上位分類である鱗翅目の昆虫の事を指す。ようするに愛好する虫の後ろに「屋」をつけるのが習わしなのだ。そしてそれらを総称して、虫好きの人は全て「虫屋」と呼ばれる。
但しコレは業界用語で、己の事や同じレベルの虫好きの事を指して言う。虫屋は己の事を何があっても「昆虫マニア」とか「昆虫愛好家」「昆虫オタク」とは言わないのだ。これらは一見して同じ意味に聞こえるが、それは世間の人が使う言葉であり、そこには蔑視が入っているからだ。

(註3)ナショナルパーク
ネパール南部に位置するチトワン国立公園でした。
東西80km、南北23km、総面積932㎡に及ぶ広大な国立公園のエリアは鬱蒼としたジャングルや草原からなるが、標高は低く、50m~200m程度で亜熱帯気候である。平原の彼方には、マナスルをはじめとするヒマラヤ山脈が遠望できる。
かつて王族たちの狩猟地だった為に開発を免れ、大自然が手付かずのまま残っており、1984年には世界遺産に登録された。
絶滅寸前のインドサイの他にベンガルトラ、ヒョウなど哺乳類は約40種おり、コウノトリ、サギ、インコなど野鳥の種類は500を数え、世界一の種類数だとも言われている。公園内の川では、絶滅の恐れの高いヌマワニや淡水イルカ、インドガビアルの生息が確認されている。朝には必ずといってよいほど朝靄が立ち込める。また、緩衝地帯にあるビスハザーリー湖などはラムサール条約の湿地に登録されている。
ゾウの背中に乗って回るジャングルサファリや、更に広大な範囲を探索できるジープサファリがあり、他にもラフティング、カヌー、バードウォッチングなどのアクティビティを楽しむことができる。

 
最後に、この旅で採った蛾と蝶を紹介して終わります。だだし全て展翅しているワケではないので一部の紹介になります。
と、ここまで書いて各種を並べて短い解説を添えていたのだが、またぞろ問題とか疑問にぶつかりバカ長くなってしまった。加えてアップ直前、最後にコカブトの画像を入れたところで、何とサイカブトだったと云うのが発覚して、更に徒らに長くなってしまった。拠って、ソチラはオマケ編として次回に回します。

 
参考文献
◆『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』
◆『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』
◆高田兼太『「虫屋」とは?ーリフレームによる言葉の分析』きべりはむし 37号(1),2014
◆石塚克己『世界のカトカラ』

インターネット
◆『Wikipedia』
◆『尾張の蛾、長話』
◆『ZUKAN 生きもの愛が図鑑になる』
◆『画像あり。(´・ω・`)』
◆東 和明『南大東島まるごとミュージアムを確立する』
◆『http;//www.pref.okinawa.jp』

 

2018′ カトカラ元年 其の九

 
 vol.9 クロシオキシタバ

   『落武者源平合戦』

  
2018年 7月23日。

次のターゲットはアミメキシタバだったが、何だかんだと用事があったので行く暇がなかった。
それでクロシオキシタバも抱き合わせで採れる場所を探した。で、候補に上がったのが両方の記録のある明石城跡公園だった。ここは明石にフツーに遊びに行った折りに何度か訪れているし、駅からも近い。何せプラットホームから丸見えなのさ。山登りもしなくて済むし、楽勝じゃん。
それに明石といえば魚の棚商店街があるから、昼網の新鮮な魚介類が堪能てきるし、名物の明石焼きだってある。夕方早めに行って、寿司か明石焼きを食ってから採りに行く事だって可能だ。或いはトットと採ってソッコー切り上げて、ゆっくりと酒飲みながら旨いもん食うと云う手も有りだ。
あっ、( ̄∇ ̄)それがいいわ。と云うワケで飯食うのは後回しにして、先に下見をすることにした。

探すと、結構樹液が出ている木がある。
カナブンや見たことがないハナムグリが群れている。
下調べの段階で知ったが、コヤツがキョウトアオハナムグリって奴だね。

 
【キョウトアオハナムグリ♂】
(出典『フォト蔵』)

 
このハナムグリは結構珍しい種みたいなんだけど、この明石公園に多産することが分かってからは価値が激落ちしたようだ。記念に1頭だけ採って、あとは無視する。

クロシオの幼虫の食樹であるウバメガシはあまりない。しかし、大木があった。常緑カシ類はどれも似たようなものばかりで区別が苦手だけど、コヤツは簡単にわかる。なぜなら、この木は葉が硬くて生垣によく使われるからそれなりに見慣れている。それに樹肌がお婆ちゃんみたいなのだ。漢字で書くと姥目樫。ようするに老女に見立てている。老女のようなシワシワの木肌だもんね。但し、ウバメガシの新芽、あるいは若葉が茶色いことからきているとする説もある。

櫓の向こうに夕陽が落ちてゆく。

 

 
余談だが、明石城は江戸幕府2代将軍徳川秀忠の命で小笠原忠真が元和5年(1619)に築城したとされる。
因みに天守閣は無い。焼失したとかそういう事ではなくて、最初から無いのだ。勿体ない。
理由は諸説あるが、ここでは書かない。こんな初めの方から大脱線するワケにはいかないのだ。

 

 
夕陽を見送り、いよいよ戦闘体制に入る。
しっかし、ちとやりにくい。けっこうイチャイチャ💕カップルがいて、ベンチの大半を占拠しておるのだ。ベンチの近くに樹液の出ている木もあるから正直気が引ける。それに何度も行ったり来たりしていたら、確実に怪しい人だと思われるだろう。で、そこで網なんか出しでもしたら、益々アンタ何者なんだ?ということになるに決まってんである。

で、そわそわマインドで探し回ったけど、結局飛んで来たカトカラはクソただキシタバのパタラ(C.patala)のみだった。
暇ゆえ、カップルへの意趣返しにカブトムシの交尾にちょっかいをかけてた。
(*`Д´)ノアンタたちー、ここで乳繰り合うのは許しませぬぞ❗

  

 
葉っぱ付きの枝でコチョコチョしたり邪魔して遊んでたら、あっちゅー間にタイムアップ。
結局、寿司も明石焼きも御預けになってしまい、終電で帰った。しょっぱいわ(;つД`)
やはり楽しちゃダメって事だね。イージーに採ろうとしたので、きっと神様にお灸をすえられたのだろう。

 
8月1日。

この日は須磨方面へ行くことにした。
考えた揚げ句、関西でウバメガシが一番多いところをネットで探すことにした。それが須磨周辺だった。
ウバメガシが一番多い場所も特定できたし、地図も手に入れた。準備万端だ。これを電撃⚡黒潮作戦と名付けよう。ここで採れなきゃ神様の胸ぐらを掴んでやるわい(*`Д´)ノ❗❗

海が見える。

 

 
長い間、海を見ていなかった気がする。
やっぱ海はいい。何だかホッとする。

歩きながら、ここへは一度来たことがあるのを思い出した。何年か前、プーさんにウラキンシジミ(註1)の採集に連れて来られたのだった。
しかし、結局1頭も見ずじまいだった。失意のままキツい傾斜を下りたんだよなあ…。須磨は大阪から案外遠いから、時間も電車賃も割合かかるし、徒労感はかなりあった記憶がある。
あの坂を上がるのかあ…。ウンザリだよ。それに此処はそんなワケだから鬼門かもしれない。ナゼか相性の悪い場所ってのはあるのだ。
もしも採れなかったら、神様の胸ぐらを掴むだけじゃすまない。そのまま、(#`皿´)オラオラオラー、テメエどうしてくれんだよーと激しく揺すって揺すぶって、揺すりたおしてやるよ。

15分ほどアスファルトの道を登ると、ウバメガシがチラホラ散見できるようになった。生息地は近い。
で、本格的な登山道に入ったと思ったら、いきなり深いウバメガシ林になった。(;・ω・)えっ、もう❓ これなら当たりをつけていた遠い尾根まで行かなくとも済むかもしんない。
と思ってたら、何かが慌てたように目の前を飛んで逃げた。間違いなく蛾だ。しかもカトカラっぽい。クロシオ❓ やがて、7~8m飛んで木の幹に止まった。
⤴テンションが上がる。ザックからネットと竿を取り出し、迅速に組み立てる。時刻はまだ4時半。明るいうちに採れれば、気分はグッと楽になる。トットと終らせようぜ、イガちゃん。んでもって、三宮辺りで旨いもんでも食おう。

慎重に距離を詰め、止まった辺りを凝視する。
いたっ❗かなり大きい。えっ、もしかして糞パタラ❓でも横向きだし、種を特定できない。けれど、ここはウバメガシ林だ。パタラよりもクロシオの可能性の方が高い。とにかく採ろう。採らなきゃワカランわい。
一歩踏み出し、網を振ろうとした時だった。
( ̄□||||❗❗ゲッ、また飛んだ❗(|| ゜Д゜)あちゃー、何たる敏感さ。慌てて後を追いかける。
しか~し、ガビ━━━ Σ( ̄ロ ̄lll) ━━━ン。森の奥へと消えて行った。
( ̄0 ̄;マジかよ…。やはり此処は鬼門なのか…。
己に言い聞かす。まだ4時半だ、時間はたっぷりある。チャンスはまだまだある筈だ。メゲずにいこうぜ。

暫く進むと、両側が石垣の道になった。そこを歩いていると、左側からいきなり何かが飛んだ。咄嗟にヒュン💥電光石火で網を振った。
手には、入ったと云う確信がある。
覗くと、おった( ☆∀☆)
いえ~d=(^o^)=b~い。運動神経と反射神経がよくて良かったー。

 

 
一見、パタラに似ているが、やや小さい。上翅の柄もパタラとは違うような気がする。それに何よりも色が違う。パタラは緑か茶色っぽいが、コイツは青っぽいのだ。おそらく、コヤツで間違いないだろう。キミがクロシオキシタバくんだね。

ホッとする。1頭でも採れれば、人には一応採ったと言える。その事実さえあれば、最低限のプライドは保たれる。嵌まりかけているとはいえ、いくら蛾の世界では人気があろうと、所詮は蛾風情だ、そうそう連敗するワケにはいかぬ。

さてとぉ~、この先どうすべっか…。
まだ午後4時40分なのだ。日没にはまだまだある。ここにいることはハッキリわかったのだから、この場所で張ってても問題ないだろう。駅にも比較的近いし、帰りも楽だ。でも、あと2時間以上も此処にいるのは精神的にキツい。時間を潰すのが大変だ。それに、動きたい、他にもポイントを見つけたいという生来の性格が此処にとどまることを許さない。だいち樹液の出ている木をまだ見つけていない。となると、闇の中での空中戦になる。それでは満足な数が採れる確率は低かろう。とにかく時間はまだたっぷりある。最初に地図で当たりをつけていた場所まで様子を見に行こう。その途上で樹液の出ている木も見つかるかもしんないし、他にも有望なポイントが見つかるかもしれない。ダメなら、戻ってくればいいだけの事だ。

山頂に向かって歩き始める。斜度は思っていたとおりキツい。あっという間に汗ビッショリになる。でも時折、心地好い海風が吹き、悪くない気分だ。

山頂にもウバメガシの木は沢山あった。でも次のクロシオが目っけらんない。樹液の出てる木も見つからん。
さらに尾根づたいに歩いてゆく。しかし、段々ウバメガシの木が減ってきた。相変わらず樹液の出ている木も見つからない。
道はさっきから下り坂になっている。それなりに傾斜はキツい。これを登り返すのかと思ったら、ゲンナリしてきた。

目指す森まであと3分の1というところで考えた。
帰りのことを考えれば、その森から駅まで戻るのは大変だ。登り返しだし、そのあと今度はキツい下り坂が待っている。時間的ロスもかなりあるだろう。さっきの場所ならば、その心配はない。でもこのまま目的地まで進めば、引き返す時には途中で日没になっている公算が高い。夜道を急いで戻るのは得策ではないし、何らかのトラブルを起こす確率も間違いなく上がるだろう。引き返すならば、今だ。それに道はどんどん狭まってきている。いわゆる痩せ尾根だ。

 

 
そういえば、この辺りが源平合戦で有名なところだったな。あの源義経が大活躍した一ノ谷の戦いは、この麓で行われたのだ。そして、この今いる場所から急峻な斜面を馬で駈け下りるという大奇襲作戦が勝負を決した。あの有名な、世にいう「鵯(ひよどり)越えの逆(さか)落とし」という奴である。平家は有り得ないと思っていた背後からの奇襲に大パニック、そのまま総崩れ、敗走を余儀なくされたのだった。

本当にこんな急斜面を馬で駈け下りたのだろうか❓俄かには信じ難い。絶対、ハナシ盛ってんな。
そういえば昔、TVで本当にそんな作戦が可能だったのかを検証すると云う番組があったな。ここと同じ斜度の別な場所で実験してた。たぶんサラブレッドではなく、ちゃんとその時代の馬に近い丈の低い種類の馬まで用意して実験は行われていた。
結果は途中棄権。確か限りなくアウトに近いものだったと思う。乗馬では無理で、実際は馬を牽いて下りたのではないかとも言ってたっけ…。
そんなことを思い出してたら、突然、心の中を恐怖が擦過した。もしかしたら、平家の亡霊に谷底に引き摺り込まれるやもしれぬ。o(T□T)o落武者じゃあ~。怖いよぉ~。落武者に山中で追いかけ回される映像が瞼の裏に浮かんだ。怖すぎだろ、ソレ。アメユジュトテチテケンジャア~(T△T)(註2)
んでもって、痩せ尾根から足を踏み外し、斜面を止めどなく転がってゆくのだ。最低でも骨折、打ち所が悪けりゃ、あの世ゆきだ。
あっ、でもウチの御先祖は平家だ。それはないでしょうよ。仲間じゃん。でもそんなこと言ったって、片目から目ん玉がドロリと落ちかけた落武者に必死コイて説明、懇願したところで聞いてくれる保証はどこにも無いよね。(ノ_・。)グスン。
そのうち源氏の亡霊どもも続々と現れて、合戦が始まるやもしれぬ。夜な夜な此処ではそんな事が行われてたりして…。そうなったら、もう阿鼻叫喚だ。木の根元で縮こまって震えてるしかない。
それに、落武者は扨ておき、もしも懐中電灯が途中で切れたなら、危険過ぎてその場から動けなくなる。膝小僧を抱いてシクシク泣きながら夜が明けるのを待つしかあるまい。そうなると、落武者以外にも魑魅魍魎がお出ましになるやもしれぬ。いや、ゼッテーおどろおどろしい色んなのが大挙して押し寄せて来るに決まってるんである。やっぱ予備の懐中電灯とか電池は持っとくべきだなあ…。性格なんだろうけど、その辺がいい加減というかユルい。

でも、足は意に反して前へ前へと出る。もしかしたら、何か得体の知れない者に誘(いざな)われているのやもしれぬ…。
冷静になろう。単に性格的に途中で中途半端に引き返すのがイヤなだけなのかもしれん。今まで歩いた分が勿体ないじゃないか❗と云うワケだ。しかし、理由が自分でもどっちがどっちなんだかワカンナクなってくる。( ̄~ ̄;)も~。

目的地が近くなってくると、またウバメガシが増え始めてきた。やがてウバメガシの純林とも言える状態になった。こりゃ、アホほどいるじゃろう。ここを目指したのは正解かもしんない。そう思って歩いてたら、老木にペタペタと何かが付いているのが目に入った。

 

 
あっ、カナブンやんか❗
ということは、樹液が出ているということだ。よく見ると何ヵ所かから樹液が出ている。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψフフフ…、賭けに勝ったな。もし此処に飛んで来ないなら、この森にはいないと云う事になる。しかし、これだけ大規模なウバメガシ林にいないなんて有り得ないだろう。それこそ七不思議の落武者の呪いだ。

もう一度樹液の出ている場所を丹念に確認してゆくと、木肌の或る箇所に違和感を覚えた。あらま、木と同化して、既にカトカラくんらしきものが下翅を閉じて止まっているではないか。何だろう❓大きさ的にはフシキとかコガタキシタバくらいの大きさだ。いや、もっと小振りか…。しかも上翅の感じはそれらとは違うような気がする。何かもっと茶色っぽい。とはいえ、下翅は見えないからカトカラじゃない可能性だってある。下翅が小汚い糞ヤガどもも上翅は似たような感じなのだ。
悪いクセだ。グダグダ思い煩う前にさっさと採ろう。

網でドツいて、難なくゲット。

 

 
あっ❗、コレってもしかしてアミメキシタバじゃね❓
また新しく1種増えた。らっき~(^o^)v
そっかあ…、アミメは幼虫の食性の幅が確か広かった筈だ。おそらくウバメガシも食樹になっているのだろう。よし、ならばここに居座ることは、もう決定だな。

夕暮れになっても歩いている人がちょこちょこいる。
さすが六甲だ。住宅街のすぐ上が山なのだ。住民が手軽に来れるというワケだ。
そこで考えた。それだけ登山者が多いと云うことは道も多い筈だ。正直、帰りはもう一回来た道を戻るのはしんどい。所要時間もそれなりにかかるだろう。ならば、この周辺から下へ下りられないか?その方が登りもないし、時間の短縮にもなるだろう。そこで訊いてみることにした。
人の良さそうなオジサンに声を掛ける。そのオジサンによると、一ノ谷を下りる道があるという。分岐も此処から近いそうだ。
でも歩いたことのない道だ。しかも、ましてや夜である。道に迷う可能性は大いにある。下手したら、やっぱりその場で膝小僧を抱いてシクシク泣きながら、夜明けを待つことになりかねない。当然、落武者と魑魅魍魎どもとも戦わねばなるまい。賭けではある。
よっしゃ、決めた。一ノ谷を下りよう。鵯越えの逆落としを義経張りに鬼神の如く勇猛果敢に下ってみせよう。あっ俺、平家だけどいいのか(・。・;❓
まっ、いっか。細かいことは、この際忘れよう。

やがて、闇が訪れた。

 

 
撮影事故ではござんせん。
ライト💡オーフ。試しに懐中電灯を消してみたら、一瞬にして目の前がマジで黒一色の世界になったのだ。エコエコアザラク、エコエコザメラク。
たぶんウバメガシ林が密過ぎて、街の灯が全く届かないから真っ暗けなのだ。京都以来のホラーな漆黒の闇、再びである。
まあ、ここは熊はいないだろうから惨殺されることはないゆえ、あの時ほどの恐怖は無いんだけどさ。
と思った次の瞬間には思い出していた。確かに此処には熊はいないけれど、イノシシがワンサカいるのだ。六甲といえばイノシシというのは有名だ。毎年、人がイノシシに襲われる事件が頻発しているのだ。住宅街にだってウロウロしているくらいなのさ。クソッ、落武者に魑魅魍魎、それにリアル猪かよ。ったくよー(# ̄З ̄)

日没後、すぐにカトカラがワンサカ集まって来た。
作戦的中。ざまー見さらせである。取り敢えずアミメをジャンジャン採る。時期的に最盛期を越えた感じなので、翅が欠けていたり擦れている奴が多い。ゆえに鮮度の良い奴の確保を優先したのだ。
パタラも多数飛来してきた。ウザい。ほんま、オマエら何処にでもおるのぉー(# ̄З ̄)
にしても、パタラの幼虫の食樹はフジなどのマメ科だ。なのに、こんなウバメガシしかないところにもいるんだね。あっ、でも翅がある生き物だもんね。樹液が出てりゃ、余裕で麓から飛んで来るわな。
ここで段々、疑問が芽生えてきた。夕方にクロシオだと思って採った奴は、もしかしたらパタラ、ただのキシタバなんじゃねえか❓それで今一所懸命に採ってるのがアミメではなくて、クロシオなんじゃねえの❓
そもそもクロシオって、そんなに大きかったっけ❓ 付け焼き刃の知識には、そんなことインプットされてないぞ。えー、(ToT)どっちなんだよー。頭の中がこんがらがってグチャグチャになる。この辺がカトカラ1年生のダメなところである。知識と経験値がショボい。
今にして思えば、これが落武者の呪いというか、落武者の悪戯だった。

混乱したままタイムリミットが来た。
急いで尾根を少し戻り、一ノ谷へと下る道に入る。いよいよ鵯越えの逆落としだ。果敢に攻めて、見事下りきってやろうではないか。
しかし、あまり使われていない道のようで、かなり荒れている。おまけに細い。泣く子も黙る更なる超真っ暗闇の中、思考は世話しなく動く。あらゆる物事に対して神経を研ぎ澄ます。闇では己の五感が頼りだ。
やがて崖崩れで道が寸断しかかっている所に出た。
ステップは足幅一つ分である。それが6、7mくらいは続いている。咄嗟に下を見る。真っ暗な崖底が不気味に口を開けている。
どうする❓リスクを冒してそのまま突っ切るか、それとも引き返すべきか…。だが、迷っている時間はない。えーい(*`Д´)ノ、行ったれー❗源氏ではないが、武士の血が流れている男だ。ここで引き下がるワケにはゆかぬ。
慎重に足を置き、バランスを崩さぬよう一気に崖崩れ地帯を渡る。
セーフ❗そのままの勢いで足早に駈け下ってゆく。

その後も所々寸断しかかってる急峻な坂道を慎重且つ大胆に駈ける。いやはや、流石のキツい傾斜だ。闇夜を一人歩くのはスリル満点っす。
分岐と枝道が多く、途中何度かロストしかけた。だがその都度、野生の勘と抜群の方向感覚で何とか乗り切る。

駅に着いた時には汗だくだった。
安堵感がジワリと広がる。無事に間に合った事だけでなく、闇の恐怖やミッションに対するプレッシャーから解放されて、ドッと体の力が抜けたよ。

翌日、展翅しようとして、愕然とする。
アミメはそこそこの個体数を採っているのに、クロシオは、たったの1頭しかなかったのだ。そう、夕方に最初に採った奴だけである。(@_@;)アチャー、やってもた~。パタラと思って無視していた奴、あれがようするにクロシオだったのである。カトカラ1年生、大ボーンベッドである。

それが、この1頭である。

 
【クロシオキシタバ Catocala kuangtungensis】

 
たぶん♂だね。
カトカラ1年生、やっぱり酷い展翅だな。上翅を上げ過ぎてしまっている。

「1頭でも採れたからいいじゃないか。そもそもアンタ、蝶屋でしょ?蛾なんだし、カトカラも所詮はヒマつぶしで採ってんでしょ?そこまで頑張ることないやん」と心の中でもう一人の自分が囁く。
確かにそうかもしれない。でも、このままでは引き下がれない。己のアホさをこのまま捨て置きはできぬ。そんなもんはプライドが許さないのだ。リベンジしてこその自分だ。それが無くなったら自分じゃなくなる。
🎵ボク~がボクであるためにぃ~ 勝ち~続けなきゃ~ならない

三日後、再び同地を訪れた。

 
8月4日。

 
ビーチだ。須磨の海水浴場でありんす。
思えば此処には高校生の頃からの思い出が沢山詰まっている。青春時代の夏と言えば、もう海水浴場っきゃない。ビール、ラジカセ、海の家、日焼けローションの香り、そしてそしての水着GALである。Tバックのお姉ちゃんたちが闊歩していたあの光景は、今考えると異様な時代だったよなー。Tバックのお姉さんの背中にローション塗るだなんて、高校生にとっては刺激が強過ぎて、もう頭の中が💥大爆発でしたよ。
そういえば夜に花火やってて、地元の奴らとモメて乱闘になりかけた事もあったよなー。オイラが原因を作っといて、オイラがその場を治めるというワケがワカンナイ無茶苦茶な展開だった。
何はともあれ、古き良き時代だった…。
このあと水着GALのいるビーチには目もくれず、夜の山に一人で蛾を採りに行こうとしてるんだから隔世の感しきりである。人生って、先のことはわかんないよね。

にしても、須磨の海岸も随分と様変わりした。
須磨といえば水着のお姉ちゃんだらけだったのに、夏真っ盛りというのにも拘わらず、家族連ればっかだ。きっと、今時の女の子は日焼けなんてしたくないのだろう。むしろ今は肌なんて出したくない美白の時代なのだ。嘆かわしい事だ。夏といえば若者の欲望が渦巻いてて当たり前だろ。こんなんじゃ、ナンパでけへんやんか。エロ無くして、日本の未来はないぞ。

 

 
また、キツい斜面をえっちらおっちら登ってきた。

 

 
淡路島が見える。
もう少しすれば、明石海峡大橋の向こうに夕陽が沈んでゆくんだね。六甲山地は山の上から海が見えるのがいいよね。

先日とは違い。不安が無いから気分にザワつきはない。クロシオが採れて当たり前の予定調和だ。採れないワケがない。そのゲット率は100%ではないが、それに近いだろう。突然、雷雨がやってでも来ない限りは大丈夫な筈だ。

美しい夕暮れが空を茜色に染め、やがて色を失い、闇が浸食してくる。
この一瞬に、ちょっとだけ不安がよぎる。物事には絶対はないからだ。もしクロシオが飛んで来なかったとしたら、心は行き場を失うだろう。怒りをどこに持ってゆけばいいのか想像がつかない。

心配は杞憂に終わった。
闇が訪れると、直ぐにジャンジャンやって来た。楽勝だ。それを確実にゲットしてゆく。

この日は神戸の港で花火大会が行われていて、花火を打ち上げる音がボンッ、ボンッと、ものすごーくよく聞こえてくる。しかし、鬱蒼としたウバメガシ林が邪魔して何も見えない。音だけで聞く花火ってのは、人を妙な気分にさせる。不思議な感覚に教われる。歓声を上げたりして、みんな楽しそうに花火を見ているのだろう。一方、自分は一人ぼっちで闇の中で蛾を採っている。何だ、この落差あり過ぎの孤独感は…。
しかし、お陰で闇の恐怖は確実に薄れている。闇の国、異界に隔絶されたような感覚は消え、現世(うつつよ)と繋がっているのだという安心感があるのだ。

乱舞するカトカラを採りまくって、溜飲が下がったところで撤退。帰路につく。

 

 
漆黒の闇地帯を抜けると、燦びやかな夜景が眼前に広がった。花火大会は、とっくに終わっている。
でもやっぱ神戸の夜景は綺麗じゃのう。昔だったらキスしまくりじゃわい。それが蛾とのランデブーとは隔世の感あり。全くもって(^_^;)苦笑しきりである。
とはいえ、やはり神戸の夜景は美しい。
満ち足りた気分で、ゆっくりと坂道を下りる。たぶん、明日も晴れるだろう。何となく、そう思った。

 
                    おしまい

 
クロシオキシタバは上翅にバリエーションがある。

 

 
ここまでが普通の型で、上翅が青っぽい。
上2つが♂で、一番下が♀である。♀は紋にメリハリがあって美しい。

 

 
こういう茶色っぽいのもいる。

 

 
これは白い紋が出るタイプである。カッコイイ。
これも♀である。

上翅がベタ黒のもいた。

 

 
一瞬、黒化型かと思ったが、下翅は別に黒くはないから、黒化型とは言えないだろう。
これも♀だ。もしかしたら、♀の方が変わった型が出やすいのかな❓

 
(裏面)

 
それにしても、全般的に展翅が下手ッピーだ。黒いのなんかは結構珍しいタイプそうなのに勿体ない。
一応、今年の展翅も載せておくか…。

 

 
だいぶ上達している。
触角の整形が、まだまだ甘いけどね。

今回のお題クロシオキシタバは久し振りに2019年版の続編を書きます。自分にとっては最悪だが、他人からすればたぶん笑える話なので、乞う御期待❗

それでは種の解説と参ろう。

 
【学名】
Catocala kuangtungensis sugii(Ishizuka, 2002)

小種名「kuangtungensis」は最後にsisとあるので、おそらく地名由来の学名だろう。kuangtungenで検索したら、広東省と出てきた。きっと最初に広東省で見つかったんだろうね。
亜種名「sugii」は最後に「i」で終わっているので、これは人名由来だろう。たぶん蛾の研究で多大なる功績を残された杉 繁郎氏に献名されたものと思われる。

 
【和名】
和名のクロシオは黒潮から来ている。次項で詳述するけど、これは分布が黒潮が流れる太平洋沿岸部だからでしょう。種の特性を上手く表現していて、良い和名だと思う。

 
【分布】
本州、淡路島、四国、小豆島、九州、屋久島。

本種は1960年代に高知県室戸岬、静岡県石廊崎で発見され、のちに幼虫の食樹がブナ科のウバメガシであることが判明し, この植物の分布するところには多産することが明らかになった。このため日本での本種の産地はウバメガシの分布域と重なり、九州から伊豆半島までの太平洋側沿岸部に見られる。東限はその伊豆半島となり、知多半島、紀伊半島、瀬戸内海沿岸部と家島、淡路島、小豆島などの島嶼、四国南部、屋久島などの産地が知られている。九州本土では少なく、大分、宮崎県下の沿岸部のみで得られているようだ。
飛翔力があり、成虫の寿命も長いことから、ウバメガシが自生しない場所でも稀に見つかる。中には長野県開田高原の地蔵峠など、発生地から150㎞も離れた場所での発見例がある。他に福井県、群馬県に記録がある。
食樹が判明するまでは、かなりの珍品だったようだ。今ではそう云うイメージは無くなってしまっているが、それでも全国的に見ると局地的な分布で、豊かなウバメガシ林があるところ以外では極めて稀な種だろう。

国外では中国南部広東省に原名亜種を産し、陝西省や四川省のような内陸部にも分布している。
👍ビンゴだね。やはり、学名は最初に発見された広東省から来てるんだね。それはさておき、内陸にも分布していると云うのは意外だった。クロシオというイメージからハズレちゃうね。食樹は判明してるのかな?やっぱウバメガシなんかな?でもウバメガシって、そんなに内陸部にあるのかしら?もし食樹が別なものだとしたら、極めて似通った別種の可能性もあると思うんだけど、どうなんだろ❓
とはいえ、日本でも和歌山県大塔山、香川県大滝山など、植生によってはかなり内陸部にも見られるらしいからなあ…。にしても、数十キロだ。中国の内陸産とは、海岸からの距離はとてつもない差があるとは思うけどさ。

 
【亜種と近縁種】
▪Catocala kuangtungensis kuangtungensis(Mell,1931)
中国・広東省の原記載亜種。

▪Catocala kuangtungensis sugii(Ishizuka, 2002)
日本亜種。

▪Catocala kuangtungensis chohien(Ishizuka、2002)
陝西省・四川省亜種。

四川省には、他にも小型の別種 Catocala dejeani(Mell,1936) がいるが、クロシオキシタバの亜種とする研究者もいるようだ。従来、台湾産のクロシオキシタバとされてきたものは、コヤツなんだそうじゃよ。

 
【開張】
大型のキシタバの1つで、パタラキシタバ(C.patala)の次に大きい。なぜかどこにも前翅長が書いていない。これはおそらく『原色日本蛾類図鑑』に大きさが載っていないからだろう。ワシも含めて、みんな孫引きに違いない。誰か自分で測る奴が一人もおらんのかよ。(# ̄З ̄)ったくよー。
と云うワケで、自分で計測してみようとしたが、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』にはちゃんと載っていて、開張58~68㎜となっていた。そんなもんだと思う。流石、岸田せんせである。

前翅は青灰色の鱗粉が広がり、内横線の外側に白色を帯びた淡色部がある。後翅の外側の帯は内側の帯と接触し、内縁角では黒色紋が分離する.

 
【レッドデータブック】
滋賀県:要注目種、大阪府:準絶滅危惧、兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)、香川県:準絶滅危惧、宮崎県:準絶滅危惧(NT-g)

 
【成虫出現期】
6月下旬~9月下旬まで見られる。
関西では7月初めから出現し、7月中、下旬に多い。8月に入ると傷んだ個体が増えるので、新鮮なものを得たければ7月中に狙うべきである。
成虫の寿命は長く、室内飼育では2ヶ月間も生きた例があるようだ。

 
【成虫の生態】
豊かなウバメガシ林に見られ、そういう場所では個体数が多い。
昼間は頭を下にして暗い場所の樹幹、岩石、石垣などに静止している。湿った暗い場所が好きなようで、生息地の冷んやりした石垣に止まっているのをよく見た。その際は敏感で、近づくと直ぐに飛び立つ。着地時は上向きに止まり、暫くして逆さまになるそうだ。
ウバメガシやクヌギなどの樹液に好んで集まる。また糖蜜にも寄ってくる。しかし、今のところは樹液の方を好む傾向がある。まあ、レシピ次第ではあろうけどね。
吸汁中は下翅を開く個体が多い。パタラキシタバも下翅を開くので、紛らわしい。しかし、慣れれば上翅の色と柄で区別できる。但し、アチキがやらかしたように、懐中電灯の灯りの色によっては間違うので、注意が必要。
日没直後から姿を現し、吸汁に満足すると、その木や周辺の木に翅を閉じて憩んでいる。おそらくその後数度にわたり吸汁に訪れるものと思われる。
灯りにもよく集まるそうだが、ライトトラップをした事がないので見たことはない。
前述したが、飛翔力があり、成虫の寿命も長いことから、ウバメガシが自生しない場所でも稀に見つかるそうだ。2019年は食樹が殆んどない奈良市若草山近辺や大和郡山市信貴山でも見つかっている。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のウバメガシ(Quercus phillyraeoides)。
 
ウバメガシは日本産の常緑カシ類では、葉が特に丸くて小さく、また硬い葉を持つカシである。
暖かい地方の海岸部から山の斜面にかけて多く見られ、特に海岸付近の乾燥した斜面に群落を作るのがよく見かけられ、しばしば密生した森を作る。トベラやヒメユズリハとともに、日本の暖地では海岸林の重要な構成樹種の一つとなっている。また乾燥や刈り込みに強いことから生垣や街路樹などとしてもよく使われている。その材は密で硬く、備長炭の材料となることでも有名である。和歌山県では、最高級の炭である紀州備長炭の材料ゆえ、計画的に植栽されている。

 
(出典『庭木図鑑 植木ぺディア』)

 
(出典『イーハトーブ火山局』)

 
しっかし、よくこんな硬い葉っぱ食うよな。若葉だって硬いらしい。でも、クロシオは黄色い系のカトカラの中では二番目に大きいんだよね。不思議だよ。
そういえば、ウラナミアカシジミの亜種とされるキナンウラナミシジミ(註1)は、このウバメガシを食樹としている。ウラナミアカよか小さいのは、通常の食樹であるクヌギやアベマキが無いので、仕方なしにウバメガシを食うも、葉っぱが硬いから大きくならないと言われている。クロシオは関係ないのかな❓
自然状態では、ウバメガシ以外の食樹は見つかっていないが、クヌギなどのナラ類でも容易に飼育できるそうだ。その場合は、どうなのだろう❓巨大化するのかな❓でも、そういう事は聞いたことがない。まあ、飼ったことがある人はそう多くはないと思うけどさ。カトカラは蛾の中では人気種とはいえ、蝶愛好家に比べれば圧倒的に少ないのだ。その中で飼育もするという人となると、数も限られてくるだろう。

ここまで書いて、ふと思った。キナンウラナミって、何でワザワザそんな硬い葉のウバメガシなんか食ってんだ❓紀伊半島ならば、アカガシやイチイガシ、アラカシ、ブナとか他にもブナ科の木はあるじゃないか。何でよりによってウバメガシ❓
気になったので、Wikipediaを真面目に最後まで読むことにした。
それで目から鱗ちゃん、漸く理由が理解できた。ウバメガシは日本に自生するカシ類の中では唯一のコナラ亜属(subgenesis Quercus)に属し、他に日本に自生するアカガシ亜属(subgenesis Cyclobalanopsis)のカシよりはナラ類に近縁なんだそうだ。常緑だし、見た目からしても、全く想像だにしていなかったよ。アカガシやアラガシなんかよりも、クヌギやアベマキに近いんだ。納得です。
また、他の疑問も解けた。ウバメガシの分布は本州の神奈川県以南、四国、九州、それに琉球列島にも分布するとあったから、クロシオは沖縄や奄美大島にはいないのかな?と云う疑問を持っていたのだ。これも沖縄県では伊平屋島と伊是名島、それに沖縄本島から僅かな記録があるのみという事が判明した。つまり南西諸島では珍しい植物なのだ。クロシオの分布は完全に否定できないものの、極めて可能性が低いことを示唆している。
また、日本国外では中国中部、南部、西部とヒマラヤ方向へ分布が広がっている。また、沖縄県が分布の南限である。これでクロシオが中国内陸部でも分布する理由がわかった。また沖縄が分布の南限ということは、その辺りが分布の限界であり、クロシオにとっても生育には適さない環境なのだと想像できる。おそらく暑すぎるのだ。

 
 
追伸
書いてて、ふと思った。
もしかしたら、明石公園で見たパタラキシタバの一部はクロシオだったのかもしれない。一年以上経って初めてその可能性に気づいたよ。おバカだ。我ながら、抜けている。でも、全部パタラだったと思うんだよなあ…。
しかし、これが怪我の功名だったかもしれない。お陰でアミメキシタバが須磨で採れた。もしも明石でクロシオが採れていたら、アミメは大阪の八尾辺りで探し回っててエラい目にあってたかもしんない。あの辺は山が荒れてて、道があまり良くないし、メマトイだらけだしさ。

前述したが、クロシオキシタバについては久し振りに2019年版の続編を書きます。そこで見た目が近いアミメキシタバと日本で初めて見つかったニューのカトカラであるマホロバキシタバの違いについても言及する予定。あっ、アミメの時の方がいっか。いや、マホロバの時でいっか…。まだまだ先の話だけど。

今回のタイトルは、最初『黒潮の詩』『暖流の民』とかを考えていたのだが、どこかシックリこなかったので『電撃⚡黒潮大作戦』で書き始めた。結局、途中で今のタイトル『落武者源平合戦』に変えた。でも、今もって納得はいってない。

 
(註1)ウラキンシジミ
(2017.6月 宝塚市)

 
この時は、何週間か前にプーさんがウラキンシジミの終齢幼虫をパラシュート採集で結構採ったので、成虫もそこそこいるだろうと出掛けたのであった。しかし、結果は惨憺たるものだった。

 
(註2)アメユジュトテチテケンジャア~
宮沢賢治の詩集「永訣の朝」の1節。
拙ブログの過去文にも度々登場し、ピンチの時に発せられる崩壊状態を示す言葉。

 
(註3)キナンウラナミアカシジミ(裏面)
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
Japonica saepestriata gotohi(Saigusa,1993)紀伊半島南部亜種。
ウラナミアカシジミの名義タイプ亜種と比べると、前翅長が短く(小さい)、裏面の黒条が発達していて、尾状突起が長いなどの特徴がある。
でもクヌギなどを与えるとウラナミアカ並みの大きさに育ち、名義タイプ亜種と区別がつかないという。そのことから亜種ではなく、一つのフォーム(型)とする見解もある。しかし、若干大きくなるだけで、紀伊半島中部産の名義タイプ亜種の大きさには達しないとする意見もある。

 

鬼と名がつく生物

 

前回のオニベニシタバの回で、オニと名がつく昆虫について触れたが、そこで書き切れなかったことを書こうかと思う。

 
【オニベニシタバ】
(2018年7月 奈良県大和郡山市)

 
前半は前回と重複するところもあるから、前回を読んだ人は暫し我慢して読まれたし。

オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼにオニダルマオコゼ、オニヒトデとかオニヤドガリetc…。
あっ、思い浮かんだのは海の生物ばかりだ。これって、ダイビングインストラクター時代の名残だよね。

改めて思うに、海の生物にはオニの名を冠する強烈なキャラが揃ってるなあ。真っ先にコレらが頭に浮かんだのも納得だよ。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられたそうな。

 
(出典『暮らしーの』)

 
ダイバーには、オニカマスよりもバラクーダの名で親しまれている。バラクーダって言った方がインパクトがあってカッコイイからかなあ❓音の響きが如何にもヤバそうな奴っぽいしさ。

よく群れで泳いでいるが、あれはそんなにデカくない。デカイにはデカイが、まだまだ小物だ。あんまし恐くない。(#`皿´)うりゃあ~と、時々トルネードに割って入って蹴散らしてやるくらいだもんね。
むしろヤバいのは単独でいる奴だ。バラクーダは老魚になると群れないのだ(註1)。それが超デカくて、超怖い。顔もさらに厳(いか)つくなって、目が合ったらオチンチンがメリ込むくらいに縮こまりまする。ヤのつく自由業の方々でも、モノホンの親分さんクラスの静かな威厳と侠気があるのだ。絶対逆らってはいけないオーラである。
それで思い出した。
昔、サイパンのオブジャンビーチで、とてつもなく馬鹿デカイのにお会いしたことがある。水深3~4mくらいの中層で辺りを睥睨するかのように浮かんでおり、優に2mくらいはあるように見えた。そして、その周りには光の束が後光のように無数に射しており、神々しくさえあった。だが、目だけはギラギラと動いていた。
あまりにも強烈なオーラに、その場で固まり、背中がスウーッと冷たくなったのを憶えている。
その日はアシスタントで入っていて、お客さんの後ろにいたから、頭の中で念仏を唱えたよ。もしも、お客さんに向かって泳ぎ出したら、身を呈してガードに行かなければならない。「生ける魚雷」と言われるくらいのハイスピードで泳ぐそうだし、あの鋭い歯だ。片腕一本くらいは持っていかれるのを覚悟したよ。
まあ、幸いその場にジッとしていてくれたから、何事も起こらなかったけどさ。そういえば、お客さん守るようにして後ろ向きに泳ぎながら遠ざかったんだよね。あの時は、もっと見ていたいような、早くこの場から立ち去りたいような複雑な気分だった。脳内に、その時の映像は今でも鮮明に残ってる。

 
オニイトマキエイ(マンタ)は、そのデカさからの命名だろう。

 
(出典『オーシャンズダイブツアー』)

 
マンタは石垣島とかで見たけど、やっぱデカイだす。
一度に何枚も現れると、中々凄い光景である。

 
(出典『オーシャナ』)

 
この画像なんかを見るとバットマンだな。
ちょー待てよ。まるで角のある鬼の影絵にも見えるじゃないか。デカイからだけではなく、名前の由来はこのツノ的なものと、そのシルエットにも関係があるのかもしれないね。

 
お次は、ブサいく鬼チームだ。
オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また背鰭に猛毒もあって危険なことからも名付けられたのではなかろうか。たぶんオニカサゴなんかも同じ意味あいからの命名だろう。

 
【オニオコゼ】
(出典『暮らしーの』)

 
異形(いぎょう)のものだ。
バケモノけだしである。

 
(正面)
(出典『庄内使えるサイト』)

 
顔なんて、ブサ怖い。

 
【オニダルマオコゼ】

 
何度か見たけど、コチラはもっと体が丸い。ゆえにダルマさんなのだ。
海底にジッとしてて、殆んど動かない。英名はストーンフイッシュと言うんだっけ?それくらい岩と同化しているのだ。だから、時々誰かが踏んづけてエライことになる。コヤツも背鰭に猛毒があるからね。アホほど足が腫れるらしい。

 
(正面)
(出典 2点共『暮らしーの』)

 
怨念が籠った顔だ。
創造主である神に対する激しい憎悪やもしれぬ。
(#`皿´)ワシをこんなにも醜い姿で世に産み落としやがって…って顔だ。

 
【オニカサゴ】
(出典『HONDA 釣り倶楽部』)

 
前二つほどではないが、コチラもブサいくだ。
背鰭に毒もある。赤いのも鬼っぽい。
猛毒ブサいく三姉妹ってところか…、最悪だよな。
でも彼女たちの名誉のために言っておくと、皮を剥いだ身は透き通るような白だ。でもって、味はメチャメチャ美味い。刺身に良し、鍋に入れて良し、揚げて良しの高級魚だ。
よくオコゼはブサいくな人へのフォローに使われ、「見た目は悪いけど、付き合ってみたら最高のパートナー」みたく言われる。まあ、理解はできるわな。人は見かけで判断しちゃダメだよね。
そういえばアッシの知り合いのお姉さんの友達に、エゲつない三姉妹がいることを思い出したよ。金魚ちゃん、ミッちゃん、イカスミちゃん(全て仮名)っていうんだけど、何れもデブでブサいくで性格が破綻している。因みに長女の金魚ちゃんは性格は悪くないけど極端に内向的で、何を尋ねても要領を得ない。三女のイカスミちゃんは天の邪鬼(あまのじゃく)且つワガママで性格がネジ曲がっている。二女のミッちゃんが一番ヤバくて柄の悪いトラックの運ちゃんみたいだ。とにかく口が悪くて、直ぐに暴力に訴えかけてくる。粗暴で凶暴なのだ。酒飲むと、ロンパリになって目が据わるしね。でもって何かと絡んでくる。ほんと、タチが悪いのだ。顔も表情も似てるから、ゴマモンガラを思い出したよ。

 
【ゴマモンガラ】
(出典『えいこのモルディブここだけの話&どうでもいい話』)

 
コヤツ、シャブ中患者とかキ○ガイみたく、目が完全にイっちゃってるんである。三白眼っていうのかなあ…、白目がちなんである。それがギョロギョロと落ち着きなく左右バラバラに動く。いわゆるロンパリ的な眼なんである。焦点がどこに合っているのか分からないから恐い。
それに泳ぎ方も変だ。真っ直ぐ泳げなくて、右に左にとヨレて急に横倒しになったりする。完全に狂った者の動きだ。しかも体は50㎝以上、大きなものは1m近くもあるというから恐い。形や色柄も変だし、おぞましいとしか言い様がない。もしも、コヤツの名前にオニがついていたとしても納得するよ。

 
(出典『wikimedia』)

 
この魚、一般の人にはあまり知られてないけれど、ダイバーの間では有名でサメやオニカマスよりも恐れられている。サメとかバラクーダは、のべつまくなしには襲ってこないが、ゴマモンガラはムチャクチャ気性が荒くて、無差別に噛みついてくる。アタマ、オカシイんである。ゴツい歯で指を食いちぎられたとか、ウェットスーツを食い破られて血だらけになったなんて話はよく聞いた。実際、自分の知り合いにもレギュレーターホースを食いちぎられたっていう人がいる。
デブでブサいくまではいいけれど、性格まで悪い女の人には、やっぱ近づかないでおこ~っと。

 
オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てているようだ。

 
【オニハタタテダイ】
(出典『沖縄の魚図鑑』)

 
とはいえ、角は小さい。オニというには、ちょいショボい。しかし、オニハタタテダイはチョウチョウウオやハタタテダイを含む近縁の仲間うちでは、かなりデカイ。最大種か、それに近かったような気がする。どちらかというと、そちらがオニと命名された理由なのかもしれない。いや、両方の合わせ技かな?

 
オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。

 
【オニヒトデ】
(出典『水槽レンタル神奈川マリブ』)

 
👿悪そう~。
僕、正義の味方ですぅ~と言われても、誰も信じないだろう。それくらい悪の匂いがビンビンである。
そういえぱ、沖縄発特撮ヒーローもん『琉神マブヤー』の敵役に「オニヒトデイビル」ってのがいたなあ…。結構ボケ倒しの憎めない奴だったけどさ。

 
(出典『おもしろ生物図鑑』)

 
色が赤いのも、如何にも鬼的だ。
但し、色には他にもヴァリエーションがあって、下の画像みたいなものや紫色のもいるようだ。

 
(出典『マリンピア日本海』)

 
性格も荒いそうだ。
ふと思ったのだが、トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。
まあ、どうみても邪悪以外の何者でもないことを体現してるよな。沖縄の珊瑚とかガリガリ食いまくってたしさ。

 
オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな❓

 
【オニヤドカリ】
(出典『日淡こぼれ話』)

 
コヤツも邪悪そのものだ。
色が赤いのも鬼と言われるに相応しい。
そう云えばコイツ、宮古島にダイビングに行った時にいたわ。綺麗な宝貝を水深5~6mで見つけたので拾ったら、デカいヤドカリが宿借りしていた。貝の中身はたぶんコヤツが食って、その貝殻を羽織ったのだろう。強盗殺人みたいなもんだ。やってる事が凶悪なギャングなんである。

 
(出典『極!泳がせ道』)

 
貝殻から出すと、下半身は驚くほど短小だ。ちょっと情けない。巨漢の男が実を云うと…的みたいで笑ったよ。
でもここが美味い。刺身で食うと、エビ・カニ系とホタテ貝を混ぜたような味なのだ。残った頭とかは味噌汁にブチ込むと良いダシが出る。

旨いで思い出したが、こんなのもいたね。

 
【オニエビ】
(出典『休暇村 竹野海岸』)

 
ゴジラエビとかモサエビなんて呼ばれ方もするが、オニエビも含めて全部その土地土地での地方名だ。
正式名称はイバラモエビという。イバラは植物の棘(茨・荊)から来ているし、ゴジラはあの怪獣ゴジラの背鰭からだ。モサは猛者から来ている。オニエビも、その背中のギザギザ由来だろう。
そういえば、兵庫県の香住ではサツキエビと呼ばれていた。これは五月(さつき)の頃によく水揚げがされるからだ。
この時は生きているのを食った。ても期待していた程には美味くなかった事を覚えている。
実をいうと、海老は新鮮だからといって旨いワケではない。車海老の踊り食いなんてのがよくあるが、あんなもんはプリプリの食感がいいだけで、味はたいしたことない。旨味と甘みが足りないのだ。生きてるボタンエビも食ったことがあるけど、同じようなものだった。魚やイカでもそうなんだけど、必ずしも生きているイコールが最上のものではないのだ。美味いと思っている人は、新鮮=美味と云う思い込み、つまり脳で食ってるからなんである。別にそれはそれで間違いではないけどさ。本人が旨いと思っていれば、それでいいってところは否定できないからね。
肝心なことを言い忘れた。死後硬直がとれたばかりの生はメチャメチャ美味い。甘いのだ。甘エビよりも甘い。焼いても天婦羅にしても美味くて、これまた甘みが強い。クッソー、食いてぇー(T△T)

  
 
植物ならば、オニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジ辺りが代表ってところかな。

 
【オニユリ】
(出典『Horti』)

 
オニユリの名の由来は、花が大きくて豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。

 
【オニツツジ】
(出典『身近な植物図鑑』)

 
オニツツジなんかも由来は同じようなもんだろう。
因みにオニツツジは俗称で、正式名はレンゲツツジという。この植物、実を云うと有毒である。根や葉茎だけでなく、花やその蜜にまでも毒があるとされている。調子に乗って、子供の頃みたいにツツジの蜜をチューチューしたら死にまっせ(笑)
この毒があるというのも、鬼と冠される理由なのかもしれない。

 
オニアザミやオニバスは、その棘(トゲ)と大きさに由来する。

 
【オニアザミ】
(出典『白馬五竜高山植物園』)

 
オニアザミという言葉は、葉の鋸歯の鋭い大型のアザミの仲間の総称としても使用される。最近はアメリカオニアザミという、もっとトゲトゲの奴があちこちに蔓延(はびこ)り始めているようだ。

 
【アメリカオニアザミ】
(出典『ありのままの風景を』)

 
外来種で、鹿も牛も食べないそうだから激増しているらしい。

 
【オニバス】

(出典 2点共『福原のページ』)

 
葉だけでなく、花や実までトゲトゲなのだ。

 
【オニグルミ】

(2点とも 出典『森と水の郷あきた』)

 
おそらく実ではなく、内部の種(核)が語源だろう。
核面のデコボコが著しく、そのゴツゴツした外観と固さが鬼のようだからだと命名されたと推察する。 

 
 
オニとつく昆虫について書くつもりが、海の生物と植物につい力が入ってしまった。哺乳類と鳥類は駈け足でいこう。

とは言うものの、哺乳類でオニと名のつくものは意外と少ない。ソッコーで片付きそうだ。

 
【アフリカオニネズミ】
(出典『wikipedia』)

 
デカイねぇ~。もう、こんなのウサギじゃん。
コヤツは地雷の除去に貢献しているので、知っている方もおられよう。
タンザニアの団体APOPOはアフリカオニネズミの優れた嗅覚に着目し、その一種であるサバンナアフリカオニネズミを訓練して地雷の探知・除去に役立てる事業を展開している。体重が軽いために地雷に乗っても爆発する可能性が低く、金属探知機よりも高効率で地雷の探索が出来るらしい。凄いぜ、ネズっち。機械よりもネズミの方が優れているなんて、何だか痛快だ。
でも動物虐待だとか言って、正義感を振りかざすバカなのがいそうだなあ…。だったらオマエら、肉も魚も野菜も一生食べんじゃねぇーぞ(#`皿´)

主だったところでは、あと哺乳類はオニテンジクネズミ(カピバラ)くらいだ。これは説明不要だろう。日本にも帰化してるし、動物園でも人気者だもんね。

ところで、何で哺乳類にはオニと名のつく動物が少ないのだろうか❓ 解るような気もするが、いざ答えるとなると明確には答えにくい。まあ、敢えてつける必要もないのだろうとだけ言っておこう。

 
お次は鳥類。

 
【オニオオハシ】
(出典『ナチュマライフ』)

 
オオハシ類の最大種。南米に生息し、その色鮮やかな美しい体色から「アマゾンの宝石」とも呼ばれている。巨大で特徴的な嘴(くちばし)は、体長に占める割合が全鳥類中で最大なんだそうな。

見た目は可愛くて、鬼のようには見えない。おそらくそのグループの最大種ゆえのネーミングだろう。

鳥は他にもオニとつくものが結構多い。
オニゴジュウカラ、オニアオバズク、オニカッコウ、オニヤイロチョウ、オニミズナギドリ、オニクロバンケンモドキ等があるが、如何せんどれもマイナーだ。鳥好き以外で名前を知っている人は少ないだろう。しかも、どれも大型種ではあるが、全然鬼っぽく見えない。厳つくないのだ。強いて鬼っぽいと言えば、オニカッコウぐらいかな。

 
【オニカッコウ】
(出典『wikipedia』)

 
青黒くて目が赤い。ゴツくはないが、精悍な感じだ。
目が紅蓮の炎の如く真っ赤な青鬼に見えなくもない。
だとしたら、由来としてはカッコイイ。
でもおそらくは、名前をつけた人はそんな事までは考えてなくて、単にカッコウ・ホトトギスの仲間の中では大型種だからと云う理由でつけたのだろう。
因みに画像はオスで、メスは茶色い。

 
そろそろ昆虫に行きたいところだが、先ずは他の節足動物から入ろう。

 
【オニサソリ】
(出典『SciELO』)

 
別にオニとつけなくとも、サソリは見てくれがもう全ての種類が十分な鬼的だ。攻撃性が強くて毒もあるから、鬼的要素がほぼ揃っている。
ムカデなんかもそうだろう。因みにオニムカデという和名を持つ種はいないようだ。でも、どっかで聞いたことがあるなあ…と思ったら、ゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)にオニムカデというキャラがいたわ。

 
【オニグモ】
(出典『弘子の写真館』)

 
邪悪だなあ。
オニグモ属最大種にして、属名の基準種でもある。
クモも、そもそも見た目が鬼的だ。なのに、オニグモはそれを強化具現させたかのような存在だわさ。
オニグモ属には数種いて、何れ劣らぬ鬼っぷりである。

 
【キバナオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

(出典『北海道の生物図鑑』)

 
黄色が入ると、鬼感が増幅されるねー。
野原で遭遇したら、ギョッとするだろう。
鬼とは、そもそもがこの世の者ならざる異形(いぎょう)な存在の総称なのかもしれない。だから、オニとつけるのならば、驚愕される存在であるべきじゃないかと思う。

 
【ヤマシロオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
万歳している👽宇宙人みたいだ。
或いは腹の下の方は、笑っている猫みたいにも見える。

 
【ヤマオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
黒いと邪悪度が増すなあ…。
でもカッコイイっちゃ、カッコイイ。何だかハカイダー(註2)を思い出したよ。

 
【イシサワオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
赤っぽいのも邪悪な感じがする。黄色もそうだけど、赤も警戒色なのである。あたしゃ、危険ですよという印だ。

 
【アカオニグモ】
(出典『まーしーのフォトアルバム』)

 
もっと赤いのもいた。
赤鬼様は毒々しい。しかし、邪悪度も上がるけれど、同時に美しさ度も上がる。見方を変えれば、デザインはポップでさえある。

赤鬼がいるのなら、青鬼もいるんじゃないかと思った。
で、一応調べてみたら、いた。

 
【アオオニグモ】
(出典『博物雑記』)

 
予想に反して青鬼は可愛いかった。
プリプリの白いお尻が、髭のおじさんのコケシ頭みたいだ。邪悪というよりもユーモラスだね。

オニグモって面白いなあ。
ついつい、めっちゃネットサーフィンしてしまったよ。
けど、いつまでこんな事やってんだ?いい加減にクロージングしないとマズイなあ…。

 
長々と書いてきたが、ようするにオニと名がついている生物には、基本的に以下のような特徴があるようだ。

①大きい
②刺(トゲ)、もしくは角がある
③見た目が厳(いか)つい
④凶暴・獰猛である
⑤毒々しい。或いは毒がある
⑥色合いが鬼に似ている
⑦勇壮

思うに、この何れかの特徴を有しているものが、オニと名付けられた模様だ。
言い加えると、①の大きいと⑦の勇壮は重複するところもあるが、大きいからといって勇壮とは限らないので、あえて分けた。

 
扨て、いよいよ昆虫である。
でも書き疲れて、正直どうでもよくなってきた。
と云うワケで、虫のオニ関係は次回後編に回します。

 
                     つづく

 
と、一旦クロージングしたんだけど、後編を書くのならば、導入部でまた前回の流れを汲む説明をしないといけない。それが正直、面倒くさい。しゃあないから、踏ん張って続けて書くことにした。たぶん、前半よか長くなるので、ここまで読んで疲れちゃった人はここで一旦読みのをやめて、二回に分けて読みましょうね(笑)。マジで。

始めるにあたって、今一度鬼の定義を確認しておこう。
ウィキペディアには、こう書いてあった。

『日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「大きな」といった意味の冠詞として使われる場合もある。(中略)。現在、一般的に描かれる鬼は、頭に二本、もしくは一本の角が生え、頭髪は細かく縮れ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。色は赤・青・黒などさまざまで、「赤鬼(あかおに)」「青鬼(あおおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。』

OK。自分が指摘したものとだいたい合っている。これを今一度脳ミソにブッ込んで、続きを読まれたし。

さあ、既にどうでもよくはなってきてはいるけれど、本当に言いたいことに向かって書き進めよう。
 
前回、オニシタバの回で書いた要旨はこうだ。
「昆虫でオニといえば、オニヤンマ、オニクワガタ辺りが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止(とど)めておく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。」
この言葉に対しての異論もあるようなので、理由を書きます。

繰り返すが、昆虫でオニといえばポピュラーなのは、オニヤンマとオニクワガタだろう。

 
【オニヤンマ】
(出典『自然観察日記』)

 
(出典『あにまるじゃんくしょん』)

 
日本最大の勇壮なトンボだから、一般の人でも知っている人は多いだろう。

 
(出典『廿日市市の自然観察』)

 
エメラルドグリーンの眼がとても美しいけど、よく見ると顔は厳(いか)めしい。

 
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
歯もゴツい。
コイツで、あの凶暴なスズメバチなんかもガリガリ食う。オニヤンマは日本有数の肉食昆虫でもあるのだ。
そういえば思い出したよ。随分前に当時の彼女と赤穂方面に旅行に行った時の事だ。龍野市でオニヤンマの巨大なメスが空中でシオヤアブ(註3)をガシッと捕まえて飛んで行った事がある。あれはインパクトあったなあ…。シオヤアブもスズメバチを襲うくらいの凶暴な奴である。その両者が互いに正面から飛んできて、ガチンコで相まみれたのだ。僅かな攻防があった次の瞬間には、アブがバキーッいかれとった。で、そのまま飛んで近くの電線に止まり、ガシガシと囓じり始めた。あまりの迫力に、彼女と二人して震撼。口あんぐりで見てたよ。

和名は、この巨大さと厳つい顔つき、凶暴性から名付けられたのだろう。また、黒と黄色の縞模様から虎皮のパンツを履いた鬼を連想して名づけられたという説もあるようだ。しかし、これはたぶん後付けでしょう。
あっ、二枚目の正面写真も鬼っぽくねえか❓
背中の柄がツリ目で出っ歯の鬼の顔に見えなくもない。これも名前の由来になってないのかなあ❓
とにかく、これだけ鬼の要素が揃っているのである。ネーミングに異論は無かろう。

それに対して、オニクワガタにはガッカリだ。

 
【オニクワガタ】
(出典『THE KAYAKUYA』)

 
たぶん顎の感じが鬼の角みたいだからと名付けられたのだろうが、小さくてマジしょぼい。2、3センチしかないのだ。クワガタといえば、昆虫界のスター軍団だ。デカくてゴツゴツした奴が綺羅星の如くいる。その中にあって、オニクワガタは鬼の名前を冠するのにも拘わらず、どうにも地味なのだ。こんな奴にオニとつけるんなら、タテヅノマルバネクワガタ(註4)とかの方がよっぽど相応しい。断然デカイし、珍しい。今や天然記念物だもんね。
それにオニクワガタはブナ林の中の道をひょこひょこ歩いてるのを時々見かける。結構、普通種なのだ。見ても全然感動がない。

とはいえ、横から見ると確かに鬼的ではある。

 
(出典『フォト蔵』)

 
角の形が鬼を彷彿とさせる。
これならば、オニという名前でもギリギリ許せる範囲内だ。
とはいえ、小さい奴にはあんまりオニとはつけて欲しくないなあ。
オニクワガタというのなら、⬇コレくらいの迫力はあって欲しいものだ。

 
【ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ】
(出典『W.B.B-01◆KING◆ブログ』)

 
オウゴンオニクワガタは幾つかの種に分けられているが、この種はインドネシア・ジャワ島に棲むもので、体長は大きなものは80㎜くらいもある。まさに黄金の鬼である。ゴージャス鬼だ。

オニとつくクワガタといえば、コヤツの存在も忘れてはならないだろう。
 
 
【オニツヤクワガタ】
(出典『ゲストハウス プリ/Guest House Puli』)

 
画像は台湾産のオニツヤだ。大きなものだと体長90㎜を軽く越えるものもいるという。

メスでもデカイ。

 

 
メスだってオニクワガタよか遥かにデカイのじゃ。
充分、鬼である。

幼虫がエグい。

 

 
これまた鬼なのである。下手したら成虫よりも凶悪な感じがする。

これら3点の画像は台湾中部、埔里で世話になったナベさんにお借りした画像だ。
ナベさんは埔里でゲストハウスを経営する大のクワガタ好きなのだ。2016年、初めて台湾に蝶採りに訪れた折り、ナベさんのゲストハウスに泊まっていたのだが、その時にこれらの画像を興奮気味に見せてくれたのだった。ナベさん曰く、気性が荒く凶暴なんだそうな。
コヤツは実物を是非この目で見てみたい。次に台湾に行くときは本気で探そうと思う。

因みに、ナベさんは渡辺さんではなくて渡部さんで、渡部と書いてワタベと読む。ワタナベさんではないのだ。でも呼びやすいから勝手にナベさんと呼んでたら「間違ってるけど、もうそれでいいですよー(# ̄З ̄)」と言われた。だから、ナベさんでいいのである。

 
どんどん行こう。

 
【オニオサムシ Carabus barysomus 】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
体長29~50㎜。
分布はインド北西部カシミール地方、パキスタン北東部。
光沢の強い漆黒の地に、顕著な上翅彫刻と亜属中最大の体長を有する。本亜属の基準種でもある。

ピンチアウトして画像の拡大は出来るけど、分かりやすいようにトリミングしよう。

 
【ssp.hazarensis&ssp.huegeli】

 
黒い鬼だ。この点刻が厳つさを増幅させ、鬼感を醸し出している。デカイと云うのも鬼でしょう。オニの名に異論なしだ。
図示したものは原記載亜種(ssp.barysomus)ではなく、左がカガン渓谷亜種(ssp.hazarensis)で、右がスリナガル東方亜種(ssp.huegeli)である。

 
【ssp.heroicus】

 
コチラも同じくオニオサムシだが、最大かつ最も特殊化したものとされる。ピル・バンジャン山脈西部のブーンチ北方の産する亜種で、こっちも負けず劣らずカッコいい。

 
【カシミールオニオサムシ Carabus caschmirensis】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村・水沢)

 
体長27~38㎜。
これは wittmerorum というパキスタン北部・スワート地方の亜種で、緑青色を帯びており、とても美しい。
カシミールの青鬼だな。因みに、原記載亜種は黒い。

オニオサムシ亜属(Imaibius)は、大半がインド北西部のカシミール地方からパキスタン北部の標高2000~3000mの高所に棲む。背後は7千、8千メーター峰が連なるカラコルム山脈とヒマラヤ山脈だ。そういうところも、鬼が棲むに相応しい異世界って感じでいい。
スリナガルは当時も旅行者には閉ざされていて、結局行けなかった。でもパキスタン北部にはバイクでユーラシア大陸を横断した折りに立ち寄った。標高四千くらいまでは行ったと思う。もし、その頃に虫採りをやってたとしたら、コヤツらも採れたかもしんない。ヨーロッパに始まり、アフリカを経由してアジアまで旅したから、会おうと思えば相当ええ虫に会えてたんだろうなあ…。モロッコの砂漠なんかにも行ったから、ニセマイマイカブリとか、カッコいいゴミムシダマシにも会えたかもしんない。勿体ねー。

 
【オニミスジ Athyma eulimene 】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
見よ、怒れる鬼の形相を想起させるこの出で立ちを❗
オオアカミスジなんていう普通過ぎるダサい和名もあるけど、塚田悦造氏が大図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で採用しているオニミスジを断固として推す。
なぜなら前翅長が42㎜くらいはあり、ミスジチョウやシロミスジの仲間の中では最大、もしくは最大級の種だからだ。翅も他のミスジチョウと比べて遥かに分厚いし、体も太くて頑健だ。デカくてゴツいのだ。そして飛ぶのもクソ速い。だから、採った時は到底ミスジチョウの仲間には思えなかった。

 

 
背中に光る金緑色が美しい。
何だか、まるで鬼火のようじゃないか。

 
【ミドリオニカミキリ】
(出典『cerambycodea.com』)

 
南米のカミキリムシだが、鬼そのものとも言える見てくれだ。残虐非道の青鬼様なのだ。
大きさは75㎜もあるそうだ。この厳つい顔、そして前胸のトゲトゲ、青緑色にギラギラ輝く感じ。そこに大きさも加わるのだから、鬼と呼ぶに申し分ない。性格も絶対に悪辣凶暴、極悪に違いなかろう。
オニの名がある虫の中では、コイツが一番鬼を具現化させたような存在じゃないかな。カミキリムシだから、肉食じゃないけどさ。

 
外国の昆虫はコレくらいにして、日本のオニと名のつく虫に戻ろう。

 
【オニホソコバネカミキリ】
(出典『リセント[RECENT]』)

 
(出典『ムシトリアミとボク』)

 
見た目が黄色と黒だし、毛むくじゃらなところは鬼と言って差し支えないだろう。カミキリなのにハチに擬態していると云うのも、何となく邪悪っぽい。
学名は Necydalis gigantea。その学名からカミキリ愛好家たちの間では、ギガンティア、ギカンと呼ばれている。ギガンティアとは、ラテン語で「巨大な」を意味する言葉である。その名のとおり、ネキ(=ネキダリス=ホソコバネカミキリ属)の最大種でもある。まさに鬼の名に相応しい。これも異論なし❗

 
オニクワガタはまあ置いておくとしても、ここまではオニと名付けられていることに何ら違和感のない昆虫たちだ。問題はここからである。
とはいえ、問題視しているのはワテだけかもしれん。ゆえに、ここから先の文句たらたらの文章は、あくまでも個人的見解であることをおことわりしておく。

 
【オニユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長22.0~31.2㎜。ユミアシゴミムシダマシの中の最大種である。
ユミアシというネーミングはセンスいいなと思う。
奈良の春日山と九州の大隅半島、福江島(五島列島)くらいでしか採れないようだから珍稀度も申し分ない。脚が太く、見た目もガッツリした感じで黒光りしているから、邪悪な黒鬼に見えなくもない。魅力的なのは認めよう。
だが、この見た目が問題だ。他のユミアシゴミムシダマシの仲間と見てくれはあんまし変わんないのである(註5)。つまりオニユミアシだけが特に鬼っぽいワケではないのだ。
あとはオオユミアシゴミムシダマシやアマミユミアシゴミムシダマシと大きさ的には、さほど差はないというのも気にかかる。オニというからには、圧倒的に巨大であって欲しいという願望があるのだ。
とはいえ、オニユミアシは自分の中では一応セーフかな。オニと名乗ってくれても強く反対はしないし、いたらゼッテー採るもん。

 
【オニヒゲナガコバネカミキリ】
(出典『長野県産カミキリ図鑑』)

 
ちっちゃ❗
調べたら、6~14㎜しかない。
ヒゲナガコバネカミキリの仲間では大きいから名付けられたようだけど、オニってのはどうよ❓小さ過ぎやしないか❓
見てくれは鬼っぽいといえば、鬼っぽくはあるけどさ。

 
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
でも、カッコいいなあ(о´∀`о)

 
【オニヒラタシデムシ】
(出典『東京昆虫館』)

 
オニとつくのに、体長はたった1㎝くらいしかない。
普通のヒラタシデムシ類でも1.5~2㎝くらいはあるのに解せない。
という事は背中の彫刻柄が鬼みたいってことなのかな❓にしても、オニというほどの複雑怪奇な彫刻柄ではない。鬼というほどのインパクトはあらへん。ネーミングに異議ありだ。
まあ、コイツらシデムシ(死出虫)は字の如く動物の死体に集まるから、その意味では鬼的ではある。鬼みたく死肉を屠(ほふ)るのである。気味悪いが、腐敗菌の蔓延を防ぐ掃除屋でもあるから、必要な存在ではあるんだけどもね。

 
【イシガキオニハネカクシ】

どうやらキシモトツノツツハネカクシの石垣島亜種の別称のようだ。でもイシガキオニハネカクシの画像がダウンロードできない。キシモトツノツツハネカクシの画像も見つからない。と云うワケで、ある程度近いであろうフトツノツツハネカクシの画像を添付してお茶を濁しときます。

 
【フトツノツツハネカクシ】
(出典『フォト蔵』)

 
イシガキオニの頭はこんなにデカくはないけど、だいたいこんな感じだ。角もあるし、見てくれは邪悪な感じがしてオニと言ってもいいだろう。
けどさあ、ハネカクシって、そもそも皆さん鬼的な見てくれだよねぇ。

 
(出典『コトバンク』)

 
しかし、如何せんやっぱり小さい。だいたいハネカクシ全体がチビッコだらけなのだ。

 
【ツツオニケシキスイ】
(出典『最上の自然』)

 
オニケシキスイ亜科 ヨツボシケシキスイ亜属に含まれる。
元々ケシキスイは矮小だけれど、4~6㎜くらいしかない。調べた限りでは他にこの亜属にはオニとつくものが2種、オニケシキスイ亜属にコオニと名のつくものが5種類あった。何でオニケシキスイ亜属がコオニで、ヨツボシケシキスイ亜属の奴らがオニケシキスイなのだ❓謎だよ。さっぱりワカランわ。
一瞬、この黒と赤が鬼を連想するゆえのネーミングかなと思ったが、考えてみればヨツボシケシキスイだって赤と黒なのだ。益々ワカランわ。

 
【オニメクラチビゴミムシ】

画像が見つからなかったので、別種のズンドウメクラチビゴミムシの画像を貼っておく。

 
(出典『俺流エンタメ道場』)

 
見た目はどれもこんな感じの形で赤茶色なので、雰囲気は何となく解ってもらえるかと思う。
メクラチビゴミムシはチビゴミムシ亜科のゴミムシのうちで、地下生活に強く適応した結果、複眼を失った一群の総称である。ようするに盲目なのである、
約300種以上が知られ、多くが体長5㎜前後の小さな昆虫だ。
画像は見つけられなかったが、学名は判明した。
Trechiama oni というらしい。小種名が、まんまの「oni=鬼」じゃねえか。よほど鬼っぽい姿なのかとワクワクしたが、そんなに特異なものならば、もっと言及もされている筈だ。しかし、目ぼしい情報がてんで見つからない。画像も見つけられなかった。
ってゆうことは、それほど特筆すべき奇怪な姿ではないのだろう。となると、鬼的要素として考えられるのは、属内最大種である公算が高い。でも、んな矮小なものにまでオニとつける必要性が果たしてあるのだろうか?

話は変わる。この一連の和名に対して、巷では差別だという批判の声が少なからずあるようだ。過去には改名騒動さえ起こったらしい。
確かに知らない人から見れば、メクラでチビでゴミみたい存在だと言っているように聞こえる。そんなの虫だからって名付けていいのかよ?それって差別だろって事なのだろう。ても、その考え方がメンドくせー野郎だなと思う。
掲げた画像のズンドウメクラチビゴミムシだって、ズンドウ(寸胴)は決して誉め言葉ではない。むしろ、その逆だろう。だからって、何だというのだ。メンドクセー。たかが虫だろ❓虫は悲しんだり傷ついたりはしない。

ウィキペディアには、続けてこうあった。
「和名に差別的に聞こえる要素があるため、日本の昆虫学の研究者の間でも改名すべきか否かで議論が絶えない。」
驚いた事に一般ピーポーではなく、玄人筋からのクレームだったのね。何だそりゃ?である。
クレームをつけている研究者はハッキリ言ってバカだ。言葉に対する感覚がズレている。こういう正義感ぶってる奴に限って、差別を助長していたりするから始末に悪い。所詮は虫なんだから、ありのままでいいのにね。
この手のセンスのない輩どもが、真面目で長ったらしくてクソ面白くもないつまらん和名を乱発しているのだろう。

ウィキペディアでは、それに対して更にこう続けている。
「現在のところ、このグループの研究を日本で牽引してきた上野俊一が、実際の差別と言葉は無関係であり、標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招くとする改名反対の主張を強く行っているため、当面改名されない模様である。」
上野さん、天晴れである。おっしゃる通りだ。
だいたいメクラも盲目も、所詮は同じ意味じゃないか。言い方を変えただけにすぎない。こんなの言葉狩りだろ。メクラという言葉にはそれ相応の歴史があり、その成立過程には様々な物語もあった筈だ。言葉を葬り去るということは過去の歴史をも闇に葬り去るということだ。負の遺産も人類の遺産なのだ。消してしまえば、根本の本当のことはわからなくなる。
そういえば、イザリウオなんかも差別用語だといって、知らぬ間に「カエルアンコウ」にされちゃったんだよねぇ。ようするに、イザリという言葉も葬り去られたワケだが、アレを言葉で説明するの大変だし、面倒くさいぞ。しかも、説明するとなると喋る方も聞く方も妙にリアルな嫌悪感情になるのは避けられんでしょう。
ホント、自主規制とかって馬鹿馬鹿しい。言葉が誕生したのには、それなりの理由があるのだ。

 
【アカオニミツギリゾウムシ】
(出典『昆虫データバンク』)

 
ミツギリゾウムシかぁ…。この仲間は海外で何度か見たけど、変な形だなあと思った記憶がある。コイツはそれよかもっと変な奴だな。触角とか、かなり変わってる。
調べた限りでは分布は狭く、福岡、愛知、奈良、京都の各府県でしか見つかっていないようだ。かなりの稀種なんだね。
灯火に飛来すること以外、生態は未解明だが、アリの巣と関係があるらしい。好蟻性昆虫なのか…、謎だらけだな。何か面白そうだ。

日本では、他にツヤケシオニミツギリゾウムシ、キバナガオニミツギリゾウムシの2種がいるが、これらも稀種のようだ。何れもネットでは五万円の値がついていた。とはいえ情報が少ないから、本当にそれだけの価値があるのかどうかはわからない。生態が分かってないし、探してる人も少ないから、単に需要と供給の問題だけなのかもしれない。

情報が少ないから、語源を探るのも大変だ。それだけマイナーな存在なんだろね。
ツヤケシオニミツギリってのは黒い。キバナガは赤い。勝手に想像すると、日本ではツヤケシが最初に見つかって、次に赤いのが見つかったからアカと名づけたのかな? で、キバナガはその次に見つかり、顎が長いのでキバナガとつけられたと推察する。
しかし記載年を確認したら、アカオニが1963年、ツヤケシが1976年、キバナガが2009年となっていた。見事に読みがハズレましたな。
それにしても何でオニなんだろ?ミツギリゾウムシの中では最大なのかなとも思ったが、たった10㎜くらいしかない。日本にいるミツギリゾウムシには、もっと大きいのが沢山いるから、それも当てはまらない。
オニアカは前胸中央に溝があるのが顕著な事から、セスジミツギリゾウムシという別名がある。もうそっちでいいと思うんだよね。正直、チビッコだし、鬼には見えないもん。

 
【オニコメツキダマシ】
(出典『虫つれづれ@対馬V2』)

 
前胸背の凹凸の彫刻柄が鬼の顔に見えることからついた種名のようである。
でもコレが鬼に見えるって、どんだけ想像力が逞しいねん。大きく張り出した前胸の顔はお地蔵さんにしか見えん。体全体もお地蔵さんやんけー(# ̄З ̄)
しかも、体長は5~11.5㎜と笑けるほど小さい。でもって、ド普通種らしい。
学名 Hylochares harmandi に秘密が隠されているのかと思いきや、そうでもなさそうだ。これはおそらく著名な博物学者のアルマン・ダヴィドに献名されたものだろう。余談だが、アルマンといえば、アルマンオサムシ(ホソヒメクロオサムシ)など多くの昆虫にその名が学名としてつけられている。余談ついでに言っとくと、学名には名前はないけれど、有名なのは中国で博物学調査を行い、ジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報じた人物でもありんす。

 
【オニツノキイロチビゴミムシダマシ】
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
ちっちゃ❗
チビとついてあるだけのことはある。

奄美大島にしかいない稀種なんだそうな。奄美って、固有種とか日本ではこの島にしかいないと云う虫が多いよね。フェリエベニボシカミキリとかアカボシゴマダラとかさ。あっ、アカボシゴマダラは今は本土にもクソ品のないクズ外来種がいるな。(# ̄З ̄)死ねばいいのに…。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
まさか触角が鬼に見えるとかじゃないだろうなあ。
だとしたら、無理無理じゃん。
あっ、でもよく見たら角があるわ。

しっかし、クソ長い名前だニャア。どれか1つくらい端折(はしょ)ることが出来なかったのかなあ❓
虫の名前には、とてつもなく長いものが結構ある。アレって、何とかならんのかね❓細かく特徴を現したいのだろうが、かえってワケわかんなくなってないか❓ハッキリ言う。長い和名はダサい。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
( ̄~ ̄;)う~む…。こりゃ、確かに鬼だわさ。
オニの名を認めてもいいような気がしてきた。
でも、それならオニかツノかのどっちか1つにしてもらいたいよね。
けど、オニとするには、やっぱ如何せんちっちゃ過ぎるわ。

 
【オニエグリゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこがオニなのか、さっぱりわからない。
単に属最大種なのかな❓
でも体長が10.7~12.3㎜しかないし、果たしてオニとつける意味ってあるのかな❓まだまだ昆虫素人にはワカンないや。自分の預かり知らぬ裏事情とかあるのかしら❓

 
【オニツノゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこに角あるねん(#`皿´)❗と思ったら、ちゃんとある奴も発見。

 
(出典『昆虫採集記』)

 
どうやら角はオスにしか無いようだ。もしくはオスの方が発達してる?

体長は10.8~18.5㎜。コレまた小さい。
属最大種かと思いきや、近縁のミツノゴミムシダマシ(コヅノゴミムシダマシ)の方が13.5~18.5㎜と大きいぞ。昆虫界のオニの基準って何なのさ❓

 
【オニクビカクシゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
頭に鬼的突起があるが、申し訳程度だ。鬼というよりも猫耳だ。ネコミミクビカクシゴミムシダマシの方が可愛くて良いのになあ…。
待てよ。そもそもコレって角なのか?小腮か何かじゃないのか❓
まあいい。おそらく猫耳は関係なく、属の最大種なのだろう。けれど、やはり小さい。体長は8.3~10.5㎜しかない。
とはいえ、クビカクシってのは中々秀逸なネーミングかもしんない。特徴をよく捉えていると思う。
 
 
【オニササキリモドキ】
(出典『日本のバッタ・コオロギ・キリギリス』)

 
属の最大種かと思いきや、そうでもないようだ。たった8~10.4㎜しかない。どこがオニやねんである。
調べてゆくと、愛媛県の鬼ヶ城山という地名がボツポツ出てくる。そこで最初に見つかったからなのか❓だとしたら、紛らわしい事この上ない。だったら、オニガシロササキリモドキにしろよなー(# ̄З ̄)
けど、調べるとどうやら基産地は鬼ヶ城山ではなく、篠山という所みたいだ。益々、ワケわかんねえや。
因みに、分布は愛媛県と高知県だけみたい。そこそこ珍しい種なんだろう。しかし、それとオニのネーミングは関係ないんだろなあ…。

 
【オニヒメタニガワカゲロウ】
(出典『ZATTAなホームページ』)

 
鬼なのに姫って、何じゃそりゃ❓である。
オニは主に最大種、ヒメは小型種につけられるのが生物界の常識だが、一般ピーポーにとっては何じゃそりゃ❓である。ミックスされたら、ワケわかんねえだろう。
これはおそらくヒメタニガワカゲロウの最大種であるから、頭にオニとつけられたのだと推測される。
でもヒメタニガワカゲロウというのが、探しても見つからない。フザけんなよである。ヒメは小さいという意味でつけられただけで、属レベルではタニガワカゲロウというワケなんだろね。もう面倒だから確認しないけど。

画像を見てもわかるとおり、葉っぱの大きさと比して大変小さい。ヒメと呼ぶに相応しいと言える。
だとしたら、オニの部分は大きさではなく、その形態によるネーミングではなかろうか?
そういう目で見れば、確かに頭部に突起らしきものがある。それを鬼に模して名付けられた可能性はある。とはいえ、申し訳程度だ。こんなもんがオニと言えるかね。せいぜいツノでよかったんじゃないの~❓

 
【オニヒメテントウ】
(出典『東京23区内の昆虫2』)

 
だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなっつーの(# ̄З ̄)
ヒメテントウの最大種らしいが3㎜しかないし、どこがオニやねん。もー、どいつもコイツもチビッコの鬼ばっかじゃねえか。

  
他にもオニヒメハネカクシ(だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなよ)、オキナワニセオニハネカクシ、アシナガオニゾウムシ、オニツヤハダチャイロコメツキとか、オニとつく昆虫はまだまだいるけれど、これくらいにしておこう。どうせ皆んなチビだろうしさ。

ようは、簡単に何でもかんでもオニって名前をつけるのはどうかと思うよと言いたいワケ。特にチビッコの虫にオニってつけるのは、もうやめません❓って事なのである。オニとつけるなら、それに相応しい存在であるべきだと思う。オニは鬼らしくである。
それを言うのに、ここまで長い文章を書くのは自分でも御苦労なこったである。( ̄∇ ̄ )ゞまっ、いっか…。

あっ、忘れてたよ。そういえば日本のオサムシにもオニの名を冠したのがいたなあ。

 
【オニクロナガオサムシ】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
正式には種ではなく、キュウシュウクロナガオサムシの東広島亜種で、その通称がオニクロナガオサムシである。
どうせキュウシュウクロナガオサムシの中で一番デカイから名付けられたんだろうと思っていた。実際、種の中では一番大きいのだが、甲虫屋のAさんから名前の由来を聞いて驚いた。何とオニは人のニックネームから来てるみたいなんである。
これは蛾の著名な研究者、特にシャチホコガの研究で高名な中臣謙太郎氏のアダ名なんだそうである。
長いが、学名を記そう。
Carabus(Leptocarabus)kyushuensis cerberus。
括弧内は、たぶん新たな分類を用いた場合の学名かな?
小種名の cerberus は冥界もしくは地獄の番犬ケルベロス(註6)のことだ。
Aさん曰く、中臣さんの顔が鬼みたいだったからオニの和名がついたそうだ。そんなん有りかいな(笑)。
その鬼に連動して小種名もついたようだ。その辺の事は詳しくは訊いてないけど、或いはケルベロス的な激しい性格の持ち主でいらっしゃるのかもしれない。でも、たとえそうだったとしても、鬼とかケルベロスとかとつけられるのを許した中臣さんは心が広い。

こう云うオニの命名の仕方は想定外だった。目から鱗である。由来が分かりにくい紛らわしいネーミングをすんなよとは思いつつも、でもちょっと愉しい。この由来ならば、納得です。エスプリが効いている。是非残して欲しい和名だよ(註7)。
もしかしたら、他にもコレ的イレギュラーな由来のオニ昆虫もいるかもしれないなあ…。
たぶんいないとは思うけど(笑)。

 
                    おしまい

 
追伸
他人の画像を借りまくりの回になった。自分の画像ってオニベニシタバとオニミスジしかないもんなあ…。ちょっと気が引ける。とにかく、画像を御使用させて戴きました方々、有り難う御座います。礼 m(__)m

今回は頭からケツに順には書かなかった。バラバラに書いて、あとから繋ぎ合わせた。最初に前回の元になる文章を入れて、植物から書き始め、次に海の生物の部分を膨らませていった。あとはオニオサムシの草稿、ついで鳥、戻って哺乳類、クモと書き、オニヤンマからオニツヤクワガタまでを一気に書いた。でもってミドリオニカミキリ、オニホソコバネカミキリを続けて書き、オニミスジを途中に挿入した。で、オニオサムシの稿を完成させた。そこからまた戻ってオニササキリモドキ、オニヒメタニガワカゲロウの項を書いた。してからに、オニクロナガの事とその前にある今回の主題である物言い(文句)を置いた。そして、最後にオニユミアシからゴミムシダマシの項までを順不同でバラバラに書いた。
だから、所々でトーンが微妙に変わっている。こういう書き方は珠にするけど、こごまで継ぎはぎだらけで書いたのは初めてだ。飽きれば別のところを書けばいいので、お陰で長文のわりにはあんまし苦痛ではなかった。でもそのせいで、ウンザリするくらいの長い文章になってしまったけどね。最後まで読んで下さった方には、ただただ感謝である。

 
(註1)バラクーダは老魚なると群れない

当時、先輩インストラクターにはそう聞かされていたのだが、これは間違い。単独行動の奴と群れている奴は別種なんだとさ。単独でいるデカイのがオニカマスで、群れているのはオオカマスだという。大型カマス類には何種類かあるのだが、ダイバーの間では全部ひっくるめてバラクーダと呼ばれている。だから種類が混同されているのだ。ブラックフィンバラクーダとかも、学術的には別種なんだろね。

 
(註2)ハカイダー
(出典『プレミアム バンダイ』)

 
特撮番組『人造人間キカイダー』及び『キカイダー01』に登場した悪役キャラクター。ダーティヒーローだ。
フィギュア、欲しいなあ…。

 
(註3)シオヤアブ
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
双翅目ムシヒキアブ科。体長23~30mm。
時にスズメバチをも襲う。オニヤンマも襲われることがあるみたい。返り討ちにあうことも多いそうだけど。

 
(註4)タテヅノマルバネクワガタ
(出典『気ままに昆虫採集』)

 
以前はチャイロマルバネクワガタ以外の全種全亜種が「タテヅノマルバネクワガタ」として、ひと括りにされていた。
現在はアマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、オキナワマルバネクワガタ、ヤエヤママルバネクワガタ、ヨナグニマルバネクワガタの5種類に分けられている。
マルバネクワガタは見たことがない。蝶屋だから夜は虫採りなんかしなかったのだ。そういえば、ヨナグニマルバネは禁止になる前年に与那国島にいて、しかもベストシーズンだった。それ狙いの人も沢山来ていた。今思うと、毎晩呑んだくれてる場合じゃなかったよ。
wikipediaには「今日知られる分類は水沼哲郎氏の熱心な研究によるところが大きい。」とあった。水沼さんは優しくて飄々としたお爺ちゃんだけど、やっぱスゴい人なんだね。

 
(註5)他のユミアシゴミムシダマシとそう変わらない

一見したところ、他の大型ユミアシゴミムシダマシとあまり変わらない。体長もそれほど大きな差はない。

 
【オオユミアシゴミムシダマシ】
(出典『こんなものを見た』)

 
体長21.8~27.9㎜。
そういえば初めてユミアシゴミムシダマシを採ったのは小学生の頃で、場所は長居公園の臨南寺だった。大阪のド真ん中だけど、まだ小規模ながら古い社寺林が残っていた時代だ。一部は原始に近い照葉樹林で、そこにはオオゴキブリやマイマイカブリ、オオゴミムシとかオオスナハラゴミムシなどの大型ゴミムシ、そういえばオオゴモクムシなんかもいた。オニユミアシは古くて豊かな照葉樹林にいるみたいだから、もしかしたらアレはオニユミアシだったりしてね。残念ながら標本は残っていないから確かめようがないけれど。

 
【アマミユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長23.8~29.3㎜。
前述したが、オニユミアシは22.0~31.2㎜。つまり大きさはオニユミアシ、アマミユミアシ、オオユミアシの順となる。

 
(註6)ケルベロス
(出典『世界の神話・伝説』)

 
ギリシア神話に登場する犬の怪物。冥界の入口を守護する番犬で、三つの首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬とされる。また、文献によって多少の差異はあるが、三つ首プラス竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれることが多い。
学名はラテン語なので、読み方はケルベルス。英語では読みはサーベラスとなる。

 
(註7)是非、残して欲しい和名だよ
実際、消えてゆく和名も多い。特にオサムシは亜種名にも和名をつける慣習があるからだ。オニクロナガも今ではキュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種と表記される機会が増えている。これは日本産オサムシ図説(井村・水沢, 2013)で、この亜種独自の和名を見直し「(種和名+主要分布地域名)亜種」という方式で和名を記載することが提唱されたからだ。この方式は従来方式の和名が「種を指すのか亜種を指すのか明確でない」という見解からだろう。確かに一見合理的ではある。
しかし、分布地域名の表記をなるべく正確かつ統一的なものしようとするあまり、やたらと長くなっているものが数多く見受けられるのも事実だ。従来の方式ならば、表記も喋るのも短くて済む。オニクロナガで済むところを、一々キュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種なんて言わなきゃならないなんて、どっちが合理的なのかワカンナイぞ。だいち、今は旧名と新名が混ざくりあって、益々何が何だかワカンなくなってて、かえって混乱を引き起こしてねぇか❓また、従来の和名は紀伊とか阿波なとの旧国名や地域名といった歴史ある地名を冠したものが多く、山河による地理的隔離により亜種分化をしてきたオサムシの和名に相応しいものともなっていた。しかし、それを継承しなかった新名もあり、亜種分化の歴史を掴みずらくしてしまったケースもある。オサムシはその形態よりも地方名がついたものが多い。これは見てくれが似たようなのばっかだからそうなったのだろうが、面白いし、かえって合理的でもある。言葉一つで何処に分布する種なのか解るもんね。形態を必死こいて表そうとして、無機質でクソ長ったらしくなった和名よか、余程こちらの方がいいや。
それとは関係ないけど中臣さんの名前を冠したらしきオサムシが、オニクロナガが以外にもう1つある。チュウゴククロナガオサムシ(キュウシュウクロナガオサムシ中国地方亜種)だ。
学名は Carabus (L.) kyushuensis nakatomii 。もしかしたら、オニクロナガも中臣さんに献じようと思ったが、既に nakatomii を使用しているのでアダ名を使ったのかもしれない。

 

『特別展 昆虫』に行ってきた

 

先日、大阪市自然史博物館で開催されている『特別展 昆虫』に行ってきた。

   

 
網とカブトムシ(アクタエオンゾウカブト)を持って嬉しそうにしてるのは、俳優で虫大好きの香川さんだ。
これも彼の昆活の一環なのだろう。虫はマイナーだから、啓蒙活動ガンガンやってね。
よく彼を批判する虫屋がいるけど、賛成できない。たしかに虫屋としては三流かもしんないけど、香川さんの熱い気持ちはよく解る。言い方は悪いけど、こういう広告塔をやってくれる人には素直に感謝すべきだと思う。我ら虫屋が少しでも市民権を得る為には、こういった有名人がいた方がいい。大局が見えてない細かい事をゴチャゴチャ言うのは、虫屋の最も悪い性向だ。

 

 
この企画は去年、東京で大盛況だったから気になっていたし(44万人以上の動員があったらしい)、今月末には終わってしまうので、博物館の図書室で調べものをするついでに行ってみた。

入口はこんな感じ。

 

 
スタッフに確認してみたら、中で写真を撮るのは基本的にはOKみたい。ナイスだね。何でもかんでも禁止にしたがる最近の風潮からすれば素晴らしいよ。
但し、映像はダメとのこと。たぶん著作権の問題があるからだろう。そこは致し方なかろう。

 

 
入っていきなり、ミツバチの巨大模型があった。
そこそこリアルで、中々良くできてると思う。
こういうのは結構好き。もし本当にこれくらいの大きさのミツバチがいたら、どう戦ってやろうかとマジで考えるのは楽しい。ワシとがっぷり四つで戦っている様を想像したら、何だかo(^o^)oワクワクしてきたよ。
あっ、こんな事、思う人はあんましいないか…❓
脳ミソの基本構造がお子チャマ仕様なのかもしんない。

 

 
日本の国蝶であり、世界最大級のタテハチョウとも言われるオオムラサキだ。
ワタクシの守護蝶でもあるので、個人的には親しみを込めて「ムラさん」と呼んでいる。
でも、この模型はミツバチと比べてクオリティーが低い。何かオモチャ的で多々不満がある。
オモチャとは全然戦う気は起きんわい(=`ェ´=)。回し蹴りで一発粉砕じゃ❗

まず羽の質感が全然表せてない。こんなベタで薄い紫色、ちっとも美しくないわい。ニセモンだ。ちょっと虫を知ってる子供が見ても同感じゃろう。
本来は構造色なんだから、角度によって色が変わるくらいやれよなー。今の技術なら、そう難しくはなくなくねぇか❓

目も死んでる。実物はもっと透明感のある黄色だ。せめてガラス玉とかにしろよなー(・ε・` )

胴体のふさふさの毛も無い。ツルッツルッだわさ。
こんなんだったら巨大化する意味あんのかよ。細かなところをリアルに再現してこそ、「わっ、こうなってんだね。」と解り、驚きと発見があるのだ。そこにこそ、巨大化する意味があるんじゃないのかね。子供たちがそれを自由に触れるようにすれば、なお面白いじゃないか。

 

 
ミンミンゼミじゃ。
緑色の質感が本物と比べてくすんでいるが、コヤツなら充分戦える。
後ろから羽交い締めにして、(ノ-_-)ノ~┻━┻ おりゃーと後ろに倒してやったら、すかさずマシンガンキックの嵐じゃ。

 

 
言わずと知れたオオクワガタ様じゃよ。
デカイと怪獣感増すなあ。ウルトラマンの怪獣アントラーズを思い出したよ。
勿論、コヤツなら戦える。相手にとって不足なしじゃ。

先ずは正面から睨み合い、互いの出方を探りあって円を描くように動く。儀式の如き前哨戦だ。そして次の瞬間、グワシャ❗互いの両手をガッツリ組み合っての力競べじゃ。
(#`皿´)ヌオーッ、ガガカ…、ギギギ…。均衡のなかで、彼奴の最大の武器である屈強な大顎がカチカチ鳴りながらワイの頭部へとググッと迫ってくる。
(|| ゜Д゜)マズイ、ピンチじゃけぇ。だが気持ちは負けてない。どころかコチラも頭を近づけ、おもいきしバチコーン💥、パチキ(頭突き)をカマしてやる。
ダアリャーッ、両者飛び退くように離れる。
( ̄~ ̄;)うぬ~、力勝負では分が悪い。ここはスピード勝負じゃ❗蝶のように舞い、蜂のように刺ーすっ❗軽(かろ)やかなステップで、左右に細かに動きながら、右から左からと千手観音の如くパンチとチョップを、アチョー、アタタタタアーと連続で繰り出す。御陀仏せえや。
(@_@;)痛ってぇ━━━❗❗
わちゃΣ(゜Д゜)、我が手を見ると血だらけじゃないか。お前、硬いよー。反則なくらい硬いよー(T-T)。
クソッ、卑怯な程の防護プロテクターじゃねえか。
ならばコチラも反則の火焔放射器じゃ❗
🔥ゴオーッ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψほれほれ~、業火に焼かれるがよいわ。そのまま黒焦げになってしまえ、(*≧∀≦*)ケケケケケケケ…。
しかし、オオクワガタの奴、びくともしない。その黒い甲冑様なもの、熱にも強いのか…。手強い。

その後も、拮抗した攻防は続いた。
そのなかで見えてきた。弱点は足だ❗オオクワガタの脚は体のわりには細い。そこを攻めてバランスを崩させれば勝機はある。でもコイツ、何でオオクワガタなのに立ってるの❓ふつう立ってないっしょ。
この際、細かい事はいい。死ねばもろとも、攻撃をかいくぐって果敢に内側に入り、スライディングして足元をすくう。
ぐらり。バランスを崩して前のめりに倒れてくる。迫って来るそれを巧みに避(よ)け、グワシャーン❗倒れたところをすかさずマウント。馬乗りになって、コレでもかコレでもかと雨あられの如く死ぬほど打撃を加えてやった。
(* ̄○ ̄)ハー、ハー、ゼェー、ゼェー。タコ殴りにしてやったワイ。ざまぁー見さらせ。
奴は、やがて意識を喪い、グッタリとなった。
落ちたな。しゃあー❗、拳を天に突き上げて雄叫びを上げる。イガちゃん、\(^o^)/大勝利ぃ~。おどれら、みんな死ねや~。

何をやっとるんじゃ( ・◇・)❓
妄想が酷い。我ながら、やってる事がアホ過ぎる。フザけるにも程がある。

 

 
ツノゼミだ。
コチラはガラスケースに入った模型で巨大ではない。
しかし、倍率をからすればオオクワガタやミンミンゼミと変わらないかもしれない。それだけ実際の大きさは小さい虫だってことだ。
まあ、コヤツがたとえ更に巨大化したとしても、楽勝で勝てそうだけどね。このワケのワカラン、何に役立っているのかも不明な飾りを掴んで捩じ切ってやれば、闘争心も萎えて大人しくなるじゃろう。勝負有りじゃ。
しかし、まだ予断は許せない。コヤツの意味不明の役割の頭部の飾りから💥ブシャーと毒液が飛び散り、目潰しを喰らうやもしれぬ。
(・┰・)アカン。まだ妄想暴走列車は走り続けとるやないけー。

 

 
この写真はそうでもないけど、平日のわりには結構人が多い。スタッフの数も多い。
正直、美術館じゃないんだから、そんなにスタッフいるか❓とは思う。

 

 
あっ、最近話題の野村ホイホイの実物だ。
画期的なトラップとして、とみに評価が高い。
けど、甲虫や蜂などには良いだろうが、鱗翅類のチョウやガには使えないよなあ…。おそらく、コレだと羽がボロボロになっちまうだろう。何か鱗翅類でも使えるような改造方法はないかえ❓

 

 
コレは蝶だが、甲虫とか他にも標本はそこそこあった。
でも、東京の時よか標本の出展数は減っているらしい。規模が小さくなってるとも聞いてるのは、そのせいかな❓
あんまり詳しいことは知らないけど、東京では標本を供出した人に対して一切ギャラが支払われなかったようだ。当然香川さんにはギャラが支払われているだろう。なのに標本を貸した人間はノーギャラというのはオカシイと思った人たちが何人かいたようだ。そのせいで、大阪では標本を貸す人がだいぶと減ったと聞いている。あくまでもまた聞きの噂話だから間違ってたらゴメンナサイ。話半分程度で聞いて下さればエエかと存じます。
まあ、この業界はアマチュア精神の善意で成り立っているから、標本を無料で提供するのが慣わしではある。しかし、コレは官の大阪市自然史博物館独自のオリジナルの企画ではないようだから、民間の企業の金儲けのイヴェントだろう。主催者の欄に読売新聞社と関西テレビ放送とあるからね。つまり基本的には営利目的だ。ならば、主催者側はギャラを払って然るべきだと思う。

結構、面白かったけど、入場料は¥1400は、ちょっと高いよね。そんなにボルなら、スタッフを削ってでも、標本を提供した人にギャラを支払うのが筋だと思うな。

昨日、酔っ払ってここまで書いたところで力尽きた。
でも朝起きて酔いも醒めると、果たしてここまで勝手な憶測を書いていいものかと考え直した。
このイヴェントには一ミリたりとも全く関わっていないから、裏事情とか本当の事は全く知らないのだ。
だから、何もわかっちゃいない人間の戯れ言だと思って読み流してけれ。
何かトーンダウンのグダグダの終わり方でスンマセン。

 
                   おしまい

  
追伸
今回も青春18切符の回と同じく、当初は写真だけ並べてサラッと最後にコメントを書いて終わる筈だった。
しかし、戦うとか妄想おふざけモードになってから止まらんくなった。おまけに事情を何も知らないのに噛みついてる。ホント、悪い癖だよ。

 

クロカタビロちゃんが、樹液に来た

 

先日5月18日、蛾の夜間採集に行った折りに樹液にクロカタビロオサムシ Calosoma maximowiczi が来ていて驚いた。
クロカタビロオサムシといえば、樹上性のオサムシで毛虫を食うことで知られているが、樹液を吸うなんて聞いたことがなかったからだ(註1)。

 

 
最初、遠目から見た時はキマワリかと思った。
けど、近づくにつれ、形も鞘羽の質感も違うと感じて直感的にクロカタビロだと思った。

普通、オサムシの多くは羽が退化しており、飛べないんだけど、このカタビロオサムシの仲間にはちゃんと羽があって飛べるんだよね。
目の前で飛んだらヤだなと思いつつ、グッと寄る。スマホで写真を撮るのには相当近づかないと撮れないのだ。したら、嫌がりはって移動。

 

 
わかりにくいので、トリミングしときます。

 

 
これでクロカタビロだと誰が見てもわかるだろうと思って、その場を一旦離れた。
しかし、暇なのでベンチに座って撮った写真をチェックしてみたら、これが酷い。あとで何を言われるか堪ったもんではないので、撮りなおすことにした。

 

 
それでも小さいから、一応トリミングしとくか…。

 

 
前脚の跗節の形からすると、♂みたいだね。
♂はここが幅広いが、♀は細いので判別しやすい。

場所は奈良県大和郡山市の矢田丘陵。
時刻は午後7時過ぎ。この日の日没時刻は7時半くらいだったが、天候がダダ曇りだったせいか辺りは完全に日没後の様相だった。吸汁時間は20~30分くらいだったかと思われる。

クロカタビロオサムシと云えば、アッシのガキの頃は関西では珍品だった。能勢で珠に採れるくらいで、確実に産しているのは兵庫県佐用町の大撫山くらいだったと記憶している。
それが2014年だったか、関西で大発生したんだよね。この年は各地でマイマイガの幼虫が大発生していて、餌が豊富だったからそれに連動してクロカタビロも大発生したのだと言われている。

でも、それって何か変なんだよなあ…。
確かクロカタビロオサムシって成虫越冬だよね。夏の終わりだか秋の初めに幼虫が土中に潜り込み、蛹から成虫になる筈だ。つーことは前年に既に沢山の幼虫がいた事になる。しかし、前年にマイマイガは大量発生していたワケではないよね。他の蛾の幼虫が大発生したというのも聞いていない。だったら計算が合わないじゃないか。前年にクロカタビロの幼虫が大量に生き残るには、餌となる芋虫だの毛虫だのが沢山必要となる。けど、マイマイガの幼虫が大発生するのは翌年なのだ。何でクロカタビロがそんなに生き残ったのかが、よくワカンナイ。
調べてみたら、クロカタビロオサムシは寿命が2年もあるらしい。越冬成虫には前年の成虫と新成虫の両方がいるようだ。一瞬、大発生の前年と前々年との成虫が合わさって、たまたま偶然にスゴい数の成虫が現れたのかと思った。しかし、東北なんかでは蛾の幼虫の大量発生(シャチホコガの1種)とクロカタビロの大発生は連動するらしい。どうやら偶然では無さそうだ。実際、今年も大量の毛虫が湧いてて、各地でクロカタビロオサが頻繁に見掛けられ始めているようだ。

それはさておき、何でクロカタビロちゃんは来年にマイマイガが大発生するって解ってたんだ❓予知能力でもあんのかよ❓
予知能力があるんだったら、スゴいよね。
理解不能だわさ。虫って、宇宙人だな。

 
                 おしまい

 
追伸
情が湧いたのか、このクロカタビロオサムシは採集しなかった。それに尻から臭い液を噴射されんのがヤだったというのもある。
因みに、樹液に来ていたワケではないが、もう1頭樹幹に静止していた個体も見ました。どちらも日没後まもなくだった。或いは夜はその時間帯くらいまでしか行動しないのかもしれない。ワカンナイけど。

一応、参考までに標本写真も添付しようと思ったが
手持ちのものがある筈だが行方不明。仕様がないので、綺麗な展足写真をお借りしよう。

 
【クロカタビロオサムシ♂】
(出展『日本産環境指標ゴミムシ類データベース 里山のゴミムシ』)

 
オサムシにしては、ズングリ型なのが特徴。
カッコイイ。オサムシはフォルムがスタイリッシュなので、基本的に好きだ。北海道にはオオルリオサムシやアイヌキンオサムシなど、美麗な金属光沢に輝くものもいて「歩く宝石」なんて言われたりもする。

 
【オオルリオサムシ】
(出展『井村有希・水沢清行 著『世界のオサムシ大図鑑』』以下、同じ)

 
色のバリエーションが様々なのも魅力だ。

 

 
【アイヌキンオサムシ】

 
似ているが、オオルリオサムシよりも一回り小さい。

   
(註1)樹液を吸うなんて聞いたことがなかった…

クロカタビロオサムシは聞いたことがなかったが、オサムシの仲間ではマイマイカブリやツシマカブリモドキが樹液や果実を発酵させたトラップに集まることが知られている。去年、山梨の大菩薩ではクロナガオサムシの仲間(コクロナガオサムシ?)がトラップに2頭寄って来てた。
 

台湾のカナブン

 
どうも気になるので、去年と今年に台湾で採ったカナブンを一同に集めてみた。

むう~(;゜∀゜)、もしかしてコレって全部別種とちゃうのん?

直感的と云うか、本能的に違うと感じたのだ。
まあ、採った時にも違和感は感じてたんだけど、すっかり忘れてた。今回一同に並べてみて、改めてそう感じたってワケ。

コレは説明し難(にく)いのだが、自分には僅かな差異を敏感に感じとる能力が生まれついてあるらしい。

昔、晩飯をつくる為に女の子と魚屋に行った事がある。忘れもしない。家呑みで鯛しゃぶでもつくろうということになったのだった。
その店には二種類の鯛の刺身が並んでいたのだが、一方は新鮮で、一方はややヘタっている感じだった。
当然、彼女は新鮮な方を選ぶと思っていたのだが、なんと無造作さにヘタっている方を選んだ。
『えっ( ゜o゜)?えっ( ; ゜Д゜)?、何でそっちなん?』と慌てて言った憶えがある。
彼女曰く、『どっちも一緒やん!』だった。
一応、差違を説明したけど、どうやら理解してなさそうだった。多分、彼女には違いが見えていなかったのだろう。そこで初めて、人によって目利きの有る無しというものがあるのだと知った。
芸能人に、「この2つのイチゴ、どっちが美味しいイチゴだと思いますか?」などと問う番組をたまに見かけるが、アレがまさにそう。
あんなのパッと見、映像を通してでも右側が艶々してるし一発でワカルと思うのだが、どうもワカンナイ人にはその艶々が全く見えていないようなのだ。つまり、見えない人には見えない世界というのが厳然とあるのだ。だから、あの時の彼女に罪はないと思う。

ものの本で読んだけど、そういう鋭敏な能力は幼少期に形成されるらしい。豊かな環境とそれを感じ取る本人の感性があってこそ、そういう能力は育まれるようだ。そして、それは大人になってから鍛えようとしても育たないとも書いてあった。きっと、大人になっちゃうと、そういうシナプスが繋がらないんだろね。
そういえば自分のガキの頃はもっぱら外で遊んでて、セミやカブトムシ、カエルだのザリガニだの生き物全般を必死になって追いかけ回していた。それとその鋭敏な能力とやらは無関係ではあるまい。
知らず知らずのうちに、美は生き物の細部に宿ることを学んでいたし、今思えば、その時の風や太陽、草木の匂いが五感を育むのに役立ったのに違いない。

う~ん(_)、のっけからお得意の脱線だ。
久し振りに新しく長文を書くとなると、やっぱり脱線癖がモロに出るね。何を言わんかやが、どんどん逸れてゆく気(け)が自分にはあるようだ。どうやら会話でもその傾向があるらしい。これじゃ、女性同士のオチのない会話と変わらんなあ…。
でもまあ女性とは違って、ちゃんと路線修正してブーメランみたく元の話には戻ってはくるんだけどね。

とにかく、オイラは蝶屋(蝶専門)なので甲虫の事はよくワカンナイ。でも、気になるものは調べたくなる。性格上、昔から何者なのかを特定できないのはイヤなのだ。きっと物事に意味付けを必要とする人種なのだろう(めんどクセー性格だ(笑))。

だが調べようとも、当然ながら台湾の甲虫図鑑なんて持ってない。世の中にそんなものが存在するのかさえもワカンナイ。よしんば有ったとしても、それを閲覧できる手法が全然ワカンナイ。また、たとえ閲覧できたとしても、表記される言語が外国語ならばお手上げだ。

と云うワケで、取り敢えずネットで検索してみた。
だが、そもそもカナブンの中国語名がワカラン。学名もワカンナイからゼロからの手探りだ。ネットでマイナーなものを探す場合、検索するのにもワードセンスが必要だと痛感したよ。

あれこれ試した末に、ようやく『虎甲蟲金龜子圖鑑』というサイトにヒットした。

先ずはコイツから調べてみよう。

なぜ一番手にもってきたかというと、この赤いカナブンが一番異質だと思ったからだ。
しかし、この赤色が種を分ける決め手ではない。種によっては、同種なのに様々なカラー・ヴァリエーションを持つものがいるからである。日本のカナブンでも色の幅はそれなりにあるようだから、色の重要度はそれほど高くはないだろう。
他と違う種類だと感じたのは、やや大きめというのもあるが、最も気になったところは背中だ。何となく他のカナブンと比べて平べったくなくて、盛り上がった感じに見えたのだ。それに何だか毛深い。

赤いカナブンは他にもいたが、見た目でわりかし簡単に種類を特定できた。

種名は、Torynorrhina pilifera。
台湾名は「毛翅騷金龜」となっている。
字面(じづら)からいって、毛が特徴的な種類なのだろう。たしかに尻の辺りに毛がモゾモゾ生えているから間違いなかろう。ザッと見たところ近似種もいなさそうだ。
因みに、(少)と書いてあったから、普通種ではないと思われる。実際、コレ1頭しか見てないしね。

後から解ったことだが、和名は、まんまのケバネカナブン。亜属名が他のカナブンとは違うし、台湾ではこの亜属はコイツのみの1種しかいない。カナブンの中ではかなり異端児なのではないかと思う。一番異質だと感じたのも頷けるかな。

お次のターゲットはコレ。

黒いカナブンだ。
このカナブンが一番小さい。
そういえば展足してくれた東さんが、『こんなカナブン、台湾にいたかなあ?まるでアフリカ辺りにいるカナブンみたいだね』と言ってたなあ…。もしかして、まさかまさかの新種だったりして(о´∀`о)

黒いカナブンは何種類かあったが、コレも決め手は背中だった。
コチラは逆に背中がどれよりも平べったい。その特徴で種名が特定できた(なあ~んや、新種とちゃうやんけー(# ̄З ̄)、ボケ~)。

種名はたぶん、Thaumastopeus shangaicus。
台湾名は「暗藍扁騷金龜」となっている。
これも、その字面で確信できた。「扁」と云う字は扁平を意味するから、それがこの種の特徴を表しているのは容易に想像できる。
それに、一見して真っ黒だが、角度によれば極濃の藍色にも見えるというのも名前どおりだ。
図鑑には体長も書いてあって、24~25㎜と台湾のカナブン類の中では一番小さいゆえ、間違いないとみた。
和名はワカンナイので、アンコクセイウン(暗黒星雲)ヒラタカナブンと勝手につけちゃおっと(笑)。
いや、コクダン(黒檀)ヒラタカナブンの方がカッコいいか?(笑)。

コレも(少)となっているので、少ない種類なのだろう。1頭しか見かけなかった。

ここで、ふと思った。『虎甲蟲金龜子圖鑑』のみだけでは、その記述が本当に正しいかどうかはわからない。ネットの情報は、その道のプロが書いたとは限らないのだ。間違った情報が流れされている可能性だってある。だから他のサイトも探してみる事にしたっぺよ。

ホイホーイ(*^ー^)ノ♪、ありましたよ~ん。
『台灣産金龜子總科索引(随意窩日誌)』というサイトが見つかりましたよ~。
こっちの方が、より詳細に台灣のコカネムシ科の事が書かれているぞなもし。

おっ(;・ω・)!、コイツ、外来種じゃんか。
2002年に最初に見つかって、どうやらそのまま土着したらしい。
なあーるへそ、だから東さんが「こんなカナブン、台湾にいたかなあ?」と言ったワケだ。
ふ~ん、調べてみないとわからない事ってあるよね。こういったような意外な発見があるのが、調べものをするところの面白さだね。

続いては、青いカナブンの登場ですよー。

青いカナブンなんて全くアタマに無かったので、去年初めて採った時は結構感動したなあ…(この時の採集記は、アメブロに連載していた『発作的台湾蝶紀行』の中にあると思う。たぶん、43話?『白水さん大活躍、ワシ虐待おとこ』の回じゃなかったかな?間違ってたらゴメンなさい)。
日本には青色のカナブンは基本的にはいない。唯一、長崎県は五島列島の福江島で稀に見られるくらいだ。だから、青いカナブンには密かに憧れていた。
そもそもワシ、青色に対しての感受性がまっこと強い男だかんねー。青くて綺麗なものには無条件に惹かれる体質なのら。ゆえにスッゴく嬉しかっんだと思うなー。

台湾には、青いカナブンが2種類いるようだ。
と云うか、青色のタイプが出現する種が2種類あると言った方がよいだろう。どうやら種として青色のみのカナブンはおらへんみたい。たぶん青色系のヤツは、劣性遺伝って事になるんだろなあ。

コレは割かし簡単に同定できた。一つはツノカナブン Trigonophorus rothschildi(台灣扇角金龜)という角のある種類だから、自(おの)ずと種名が判明したってワケ。

学名は、Anomalocera olivacea。
台灣名は「細脚騷金龜」。和名にすると、ホソアシカナブンってところか。
どうやらこの「騷金龜」ってのが、台灣ではカナブン類の事を指すみたいだね。
『台灣産金龜子總科索引』で、名前に騷金龜とつく種類を数えてみたら、全部で10種いた。ツノカナブン類も入れると12種類だ。日本にはカナブンの仲間は5、6種類くらいしかいない筈だから、蝶とかと一緒でやっぱり台湾の方が種類数が圧倒的に多いんだね。

(特)と書かれてあるのは、特別珍しいからなのかな?
それとも台湾の特産種って事なのかなあ?
でも、他に(少)とか(普)という記述しかないから、これは個体数の事を表しているというのが妥当な線でしょう。(特)はメッチャ珍しいヤツだということにしておこう。その方が楽しいしね。

問題は、その隣の緑色のヤツ(小さい方の緑)だ。

『虎甲蟲金龜子圖鑑』によれば、コレもホソアシカナブンだと思われるが、何だか青いヤツとは形が違う。青いのはズングリ体形だが、緑のはシュッとしてて、よりホッソリした形なのだ。それに青いヤツの尾端は尖っているけど、緑のはトンガリが無いように見える。

『台灣産金龜子總科索引』の方も見てみる。
でも、形は緑色の方がホソアシカナブンの特徴をよく表しているような気がする。
( ̄ー ̄)ん~、じゃあ青いヤツは何なのだ?メスか?
でも、尾端が尖るのがホソアシの特徴のようだぞ。
となるなと、はあ(゜〇゜;)❓じゃあトンガリが無い緑のヤツは、何者なのだ?

さらに調べていくと、かなり似たような緑色のカナブンがいる事が解ってきた。
Rhomborrhina formosana 台灣緑騷金龜という種類だ。『虎甲蟲金龜子圖鑑』には載ってなかったし、ニャン(ФωФ)だか珍品の匂いがするなあ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
(出展 『台灣産金龜子總科索引』)

あらま( ゜o゜)、けど見た目ほぼ一緒やん!
何じゃそりゃ(?▽?;)顔で読み進めていくと、区別の仕方らしき画像が見つかった。
むう~、どうやら頭の一番先が横一線ではなく、内側にやや湾曲しているのが本種らしい。
早速、見比べてみよう。
( ´△`)アッカーン、真っ直ぐやからホソアシカナブンやあ。

因みに、このホソアシカナブンは『台灣産金龜子總科索引』によると、「本種色系多變 由緑色系最為常見。」と書かれてあるから、たぶん多型色(緑、青、黒など)を呈し、中でも緑色のものが一番多く見られるという事なのだろう。でも、緑色のモノでも2度程しか見ていないから、そう簡単には会えない種類だと思われる。
また「活體具一種特殊的體味」とも書かれていた。
これは、おそらく体から特殊な匂いを放っているという意味だろう。でも、特別何かの匂いがしたという記憶はない。特殊な匂いって、どんなんだろ?美とか好とか云う字は入ってないから、たぶん臭い系だな。

最後は一番デカイ奴である。

この画像だと茶色がかって見えるが、実際は緑色の光沢が強いので、別な画像も添付しておこう。

ついでに、もういっちょイッとこう。

何れも同じ個体だが、光の当たり具合で微妙に色が変わるのだ。

ここまでくると、もう消去法で種名は決まってくる。
たぶん、Rhomborrhina splendida 金艷騷金龜。 キンカナブンという事になろう。
キンカナブンは、日本のカナブン(Rhomborrhina japonica)に一番近い種類で、台湾におけるカナブン類の最普通種だ。実際、何処にでもおる。フルーツトラップにアホみたいに群がってきやがるので、マジでクソ邪魔な奴らだ。蝶と一緒に網に入ってしまうと、翅が損傷する元凶になるから忌々(いまいま)しい存在でもある。
そういえば思い出したよ。
キイーッΣ( ̄皿 ̄;;、オドレ、貴重なスミナガシの♀が台無しやないけー。おまんら全員ジェノサイドじゃあ!
オジサン、怒りに任せて鬼神の如く千切っては投げ、千切っては投げしてやったものよ。
ハーハー( ̄▽ ̄)=3、ゼェーゼェー(´△`|||)、この最下層民甲虫どもめがぁー。

そんな糞カナブンどもが群がる中に、今年は一風変わった奴がいた。
それが上記した個体だ。他のキンカナブンに比べて明らかにデカくて、色もキンカナブンのような中途半端な茶色っぽい緑ではなく、光沢の強い緑だったのだ。だから、別種の可能性もあると思ってワザワザ持って帰ってきたのだった。

でも今回調べたところ、キンカナブンに極めて近くて、より大型のカナブンはどうやら台湾にはおらんようなのだ。ってことは、キンカナブンって事にせざるおえない。
(  ̄З ̄)むう~、でも『虎甲蟲金龜子圖鑑』には体長30~32㎜とあるけど、この個体は何と37㎜もあるんだじょー。デカ過ぎじゃろう。
こいつ、ホントにキンカナブンなの?
その大きさを解ってもらう為に、普通サイズのキンカナブンと一緒に並べたいところだが、あちゃー、全部進呈してもうたがなあー。
くちょー(´д`|||)、1つくらい普通のもキープしておくべきだったよ。

コレもさあー、
あの黒いカナブンみたいにさあー、
もしかしてさあー、外来種とちゃうのん(-“”-;)?
 

                   おしまい
 

追伸&補足
一瞬、中国からヒマラヤ辺りのカナブンを調べてみたろかと思たけど、やめた。考えてみれば、ワシそこまでカナブン好きとちゃうもん(・┳・)

補足その1
ケバネカナブンの仲間はチベットとか大陸方面にもいて、そいつらは多色系らしくて青や緑色のもいるらしい。やっぱ、色はアテにならんな。

補足その2
カナブンの英名は、ドローン・ビートルという。
英語で書くと、Dorone beetle。Doroneの綴りは、あの遠隔操作無人航空機のドローンと同じだ。しかし、命名された頃にドローンなんぞは当然まだ存在していない筈なので、別な意味あいから名付けられたかと思われる。
Doroneを辞書でひくと、
①雄の蜂。 ②居候(いそうろう)、のらくら者、ジゴロ(これは雄バチが巣にいても全く働かず、生殖の為のみ存在する事からの由来だろう)。③ブーンという蜂の羽音。
と書いてあった。
多分、③のブーンという蜂の羽音からの命名と推測される。まさかカナブンがジゴロでもなかろう(だったら笑うなあ。カナブンくんの事、断然リスペクトしちゃうよ)。
カナブンの飛翔力は甲虫の中ではかなり強い方だ。実際、飛んでいる時はブーンという羽音がハッキリ聞こえるくらいだから、コレは間違いないだろう。
あっ、ドローンの命名の由来もこの蜂の羽音からじゃないかな?ドローンも飛んでる時は、蜂の羽音みたいな音を出してるもんね。

クビアカツヤカミキリ(クロジャコウカミキリ)

 
ハグロゼミに続く赤と黒シリーズである。
Facebookに「クロジャコウカミキリ(クビアカツヤカミキリ)」について書いたんだけど、短い文章では伝えきれないこともあったので、加筆して知見を纏めてみようかと思う。

(2017・7・10 大阪府狭山市)

Σ( ̄ロ ̄lll)ヤバイでヤバイでー。
外来種クロジャコウカミキリやでー。
桜の樹の重要害虫やでー。
梅も桃も柿もオリーヴもザクロもボロボロにするでー。
でも、カッコええでー。

交尾もしとるでー。
よう飛びよる飛翔力抜群のケッコーでかいカミキリやでー。
麝香(じゃこう)と謳ってるけど、刺激臭デラくっさいでー(@_@;)
40分で6頭採ったけど、あとはサッパリワヤやったでー。

邪悪なボスキャラに有りがちなお姿ですなあ。
でもボスキャラって、主人公よりカッコ良かったりして人気が高かったりするんだよね~。
だいたい、黒に赤ってのは警告色だからヤバイ奴が多いのだ。何年か前に移入してきて大騒ぎになったセアカゴケグモなんかも赤と黒だもんなあ。
昔、近所に住んでいたパンチパーマのヤンキー兄ちゃんが、常に黒い上下に赤いシャツを着ていたけど、あのヤンキー兄ちゃんもヤバかった。シンナーのやり過ぎで、いつも完全に目がイッてたもんなあ。
もちろん見かけたら、ぴゅ➰➰ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ、全速力でその場から離脱したのは言うまでもない。

ここまでがFacebookに書いた大体の文章だ。
我ながら、あまりの低脳振りに苦笑いじゃよ。
でも、主なことは結構ちゃんと書かれてはいるんだよねー(笑)

ではここからは改めて真面目に書いてみよう。

【クロジャコウカミキリ(クビアカツヤカミキリ)】
学名 Aromia bungii
体長22~40㎜に達する中・大型のカミキリムシ。
年一回、6月中旬から7月下旬にかけて現れる。オスは体からフェロモンを発してメスを誘(おび)きだすと言われ、それが名前の由来にもなっている。
本来はベトナム北部・中国・モンゴル・朝鮮半島・台湾に分布するが、2012年愛知県で最初に移入が確認され、以後、埼玉、群馬、東京、大阪、徳島でも見つかっている。また遠くイタリアやドイツなどヨーロッパでも発生が確認されているようだ。
これは卵や幼虫の入った木材(物資の梱包用)が中国や韓国から運ばれ、そこから広まった可能性が高いと言われている。
幼虫のホストとなる木はサクラ、モモ、スモモ、ウメなどのバラ科とオリーブ、カキ、ヤナギ、セイヨウハコヤナギ(ポプラ)、コナラなどで、成虫になるまでに2~3年を要する。
幼虫は桜や桃などの樹木内を食い荒らし枯死させてしまうことから、重要外来生物に指定されている。繁殖力が強く、メスが卵を100~300卵も産むといわれ、中国では(黒麝香天牛と呼ばれている由)、スモモに深刻な被害を与えており、日本でも桜や果樹園に甚大なる被害を与えるのではないかと懸念されている。

解説としてはこんなところだろうか…。
あっ、二つある名前についても少し言及しておこう。
多分、最初につけられた和名はクロジャコウカミキリかと思われる。大方、誰かがその和名が気に入らないから、新たにクビアカツヤカミキリと名付けたのだろう。
二つも名前が存在するのは面倒臭いよね。しかも、どっちの名前も今一つもの足りなさが残る。クロジャコウはジャコウカミキリの仲間だからそう名づけたのだろうが、この種の特徴である目立つ赤い首部を全く無視している。反対にクビアカツヤはその赤い部分とツヤツヤの質感を表現してはいるが、名前だけではジャコウカミキリの仲間だとはわからない。それにあの強烈な麝香臭も大きな特徴なのに、それが表現されていないのは片手落ちというものだろう。素直に『クビアカジャコウカミキリ』でいいのにね。
しかし現在、マスコミや公共機関ではクビアカツヤカミキリに統一されつつあるようだ。それはそれで構わないとは思う。名前は一つの方がいいからだ。
でもクビアカツヤカミキリよりクロジャコウカミキリの方が名前としては邪悪で高貴な感じがするので、ここでは以後、クロジャコウカミキリの方を採用させていただく。ややこしいかもしれないけど、ダサい名前は嫌いなので、ささやかなる抵抗なのだ(註1)。

それでは自分が実際に見たクロジャコウカミキリの印象について書いてみよう。

7月10日、午後4時過ぎに南海高野線の狭山駅に到着。
ポイントへと向かう。去年の秋の終わりにこの辺に用事があったので、ついでに偵察しておいたゆえ大体のアタリはつけてある。場所を詳しく書いてもいいのだが、探す楽しむを奪うのもどうかと思うので、駅から2㎞圏内としておこう。

第1ポイント近くに差し掛かった時だった。
突然目の上、5m程上空を黒い影が過った。
Σ( ̄ロ ̄lll)何じゃ、おまえ❗と思ったら、長い触角の影が辛うじて見えた。アレだ、アヤツが間違いなくクロジャコウカミキリだと直感した。全身に緊張感が走る。
それにしても、想像を越えるデカさだ。下手なクワガタよりも立派なくらいである。こんなのが飛んでたら、かなり目立つだ筈だが、どうせ都会人には見えてるけど見えていないから気づかないだろう(人間、興味の無いものは視界に入っていても認識しないように出来ているのだ)。
どこかに止まるかと思ったが、大きく弧を描き、Uターンして工場内めがけてあっという間に飛んで行ってしまった。
思っていたよりもスピードは速い。飛翔力は相当ありそうだ。こりゃ、分布を拡大するのも時間の問題だなと思った。このカミキリ、ヤバイかもしんない。

近くに発生木が有るかもしれないと思い、住宅街の通りを覗いたら、道沿いに1本の桜の老木がポツンと立っているのが目に入った。もしやと思い近づいてみたら、おった❗、おった❗木の根元に見覚えのある姿がくっついておるではないか。目立つねー、アンタ。
飛んでいるのを見てから、まだ2分と経っていない。あまりに簡単に見つかったので、拍子抜けする。
でも、このクソ暑い中を探し回るのは地獄だなと思っていたから、ラッキー(^_^)v

取り敢えず、先ずは写真を撮ることにした。
直ぐに飛んで逃げる蝶とは違い、気持ち的に余裕がある。まあ、逃げられてもそれほど悔しくないというのもあるんだろうけど、ゆったりした気分で写メ撮り。
(〃⌒ー⌒〃)ゞいやあ、焦燥感や悲壮感の無い採集って楽だわ。

【クロジャコウカミキリ♂】

手で掴むと、!Σ(×_×;)!くっさー❗❗
強烈な匂いが漂ってきた。麝香というからにはムスクの香りかと思いきや、そげな良い香りではない。形容し難い濃い匂いで、薬品みたいな刺激臭がする。何だか目がシバシバするような気がするぞ。一番近いのはマイマイカブリとかオサムシを捕らえた時の匂いかなあ…。でもそんなこと言っても一般ピーポーには何のこっちゃかワカランだろなー。

木を見上げると、3~4mくらい上にもう1頭いた。でも網の口径が広くて横から逃亡、ぶいーんと飛び去られてしまった。
( ̄∇ ̄*)ゞまっ、いっか…。この感じだと他にもまだいそうだし、1つ採れたから最低限のノルマは既に達成している。ワシ、カミキリ屋じゃなくて蝶屋だもんね(業界ではカミキリ好きをカミキリ屋、蝶好きを蝶屋と呼ぶ)。だから、カミキリにはそんなに執着心は無いのであ~る。

去年、見つけた住宅街の中の桜の木が多い公園へと向かう。ここは、木からフラス(幼虫の食べ滓と糞が混じったオガクズみたいなもの)が出ているのを去年確認済みだから、間違いなく発生している筈だ。
このフラスが生息しているか否かの目安になる。そういう意味では証拠残しまくりの三流の犯罪者だ。ヒアリなんかよりも、遥かに駆除は簡単じゃないかなあ❓

【フラス】

公園に着いたら1本目の木にもういた。
しかも交尾個体。

(正確には交尾はしていないようです)

多分前がメスで、後がオスだ。
手で掴もうとしたら、しまった(|| ゜Д゜)❗
メスをほっぽり出してオスが逃走。ブイーンと飛んで行かはった。おまえさー、そんな事じゃ責任感が無いとメスに詰(なじ)られるぞー。人間なら、ビンタされて即フラれるところだ。
取り敢えず目の前の♀を確保。
メス、やっぱオスよかデカイわ。

【クロジャコウカミキリ♀】

オスとメスの区別はメスの方が大きくて胴体が太いことから、慣れれば比較的容易に見きわめがつくのだが、最もわかりやすい見分け方は触角の長さ。オスは体に比して遥かに触角が長い。他のカミキリでも大体コレで雌雄の区別がつくから覚えておけばよろしかろう。
あっ、でも普通の一般ピーポーには、そんな知識はいらんか…(笑)。誰がカミキリの雌雄を区別する能力なんて欲しがるねん。

逃げたオスを飛んで行った方向の木に辺りをつけて探したら、直ぐに見つかり無事確保。更にその横の木でオスを1頭ゲット。コレで20分で4つゲットだ。効率がいい。というか大発生してたりして…。
邪悪カミキリが木にウジャウジャ張り付いているのを想像したら、背中がブルッときた。それって阿鼻叫喚の光景だよね。そいつはちょっと…あまり見たくないなあ。

この公園では他にも2頭見かけたが、何れも網を近づけようとしたら感づかれて飛んで逃げられた。
意外と敏感で、すぐ飛ぶカミキリだ。もっとも蝶の方が遥かに敏感だけど。

第3ポイントの小さな梅畑に行く。
ここでもメスを1頭ゲット。隣の小高い公園でも1♂を捕まえた。40分で6頭ゲット。楽勝だ。

しかし、どうもその後は上手くいかない。飛翔中の個体だったり、高い所に止まっていたりで手が出せない。そして、午後5時半を過ぎるとピタッと姿を見かけなくなった。
でも夕方から夜にかけて活発に活動すると何かに書いてあったので、暗くなるまで粘ってみることにした。
あとでゴッソリいったるわい。

でもどうにもやりにくい。
懐中電灯片手に夜の住宅街をウロウロし、木に光を当てて回るなんざ、完全に不審者に見えるだろう。ポリ公にでも職質されたら、どうやって説明するのだ❓闇に包まれた住宅街で、オッサンが『カミキリムシ、採ってますねん。』って言っても、街中だぜ。んなもん果たして通用するのかね❓普通の人から見れば狂気の沙汰だ。気がオカシクなった人だと思われかねない。ホント、虫採りする大人って、アタマがオカシイ人だよな。ワシも今やその立派な一員ってこってすな。

結局、夜には一つも見つけられなかったので、8時前には退散。
結局思ったほど採れず、結果は3♂3♀の6頭に終わった。東さんも去年一つしか採れなかったようだし、Aくんも一つだけだと言ってたから、まだ採れた方か❓

上横1列が♀で、下1列が♂だ。
こうして並べてみると、雌雄の特徴の差がよく解る。

翌日、何となく消化不良だったのでもう1回行くことにした。たった一日だけでは邪悪髪切帝国の全貌はつかめない。ならば暴いたるぅー(=`ェ´=)

この日は少し早めに出て、午後4時前にポイントに着くようにした。一つ手前の北野田駅で降りる。どれくらい分布を拡大しているのか調査しようと思ったのだ。
しかし、桜の木はあっても食害された木は1本も見当たらなかった。案外、拡がる速度は速くないのかもしれない。ここ狭山市で最初に成虫が見つかったのが2015年らしいから、幼虫期間を考えれば少なくともその前の前の年には発生していた筈だ。となると、今年は発生してから最低でも5年目以上になる。それでコレくらいしか拡がっていないのなら、駆逐はそう難しくはないのではと思う。油断大敵。虫の繁殖力をナメてはいけない。まあ、そう簡単にはいかないのが常だから、予断は禁物だけどね。

昨日、最初に見つけたポイントよりも少し手前で1♀を見つけた。そこは昨日の時点でフラスを見つけていたので、ここにもいるだろうとは思っていた。どうやら基本的には食害された木にしかいないようで、健康な木にいるのを見たことがない。多分フラスが出てる木にメスが集まるので、そこにオスも集まるのだろう。

今回は秘密兵器を持ってきたので、難なくゲット。

お散歩ネットである。コヤツを長竿の先につければ、横から逃げられる心配はない。おら、アッタマいいー。カミキリ採りなんぞ楽勝じゃあ~。今日はガッポガッポと捕まえ捲って外来害虫殲滅、正義の駆除男と化すのじゃあ~\(^o^)/
この正義の味方が悪の黒麝香帝国を滅ぼしてくれるわ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。

昨日、最初に見つけた桜の木では確認出来なかった。
次の桜の木が沢山ある公園でも1頭も見つけられず。
( ; ゜Д゜)あれれー、昨日あれだけいたのにー。
思っていた程には悪の黒麝香帝国は隆盛ではないのかもしれない。それとも正義の味方に恐れをなして隠れよったか。

梅畑で、ようやく木の根元で交尾しているのを発見。
けど、手で捕まえようとしたら、またもや慌てたオスがメスをほっぽり出して逃走。飛んだところをすんでで空中でシバキ倒す。
この小さな網で空中で捕らえるとは、やっぱ俺ってまあまあ天才じゃん❗d=(^o^)=b

次の木でも交尾個体を発見。
だが、またしてもオス逃走。おまんら、女子に対しての責任感ちゅうもんが無いんかい(*`Д´)ノ!!!
しかし、今度は照準はバッチシ合っていたものの、ほんの少し届かず網は空を切った。まあまあ天才でも届かないものは採れない。致し方なかろう。

今日は更に捜索範囲を拡げてみることにする。
しかし、フラスの出ている木は今回捕らえた5ヶ所のポイントと一番最初に発生したとされる大きな公園でしか見つけられなかった。去年の秋の終わりに偵察に来た時よりも拡がった新たなポイントは今日最初に採ったポイント1ヵ所だけだ。
飛翔力があるから急速な分布の拡大を心配したが、案外それほど分布を広げる能力は無いのかもしれない。食害した木に執着するようだから、飛翔力はあってもあまり遠くには行かない習性なのかもしれない。
大発生では❓なんて心配したけど、この狭山のポイントでは今のところ爆発的に分布を拡大しているというワケではなさそうだ。

結局この日は2♂2♀、4頭のみのゲット。

♂は触角が長くて脚も長いのでスタイリッシュだ。
ちゃんと展足すれば、相当カッコイイに違いない。でも展足する道具が無いので、いくつか進呈する替わりに東さんに展足してもらお~っと。

一応、生態をまとめておこう。
①色んな人の話を総合すると、成虫は朝や昼間にはあまり活動しないみたいで、多く見られるのは夕方のようだ。その日の天候や気温にもよるのだろうが、午後3時くらいから活動し始め、4時~5時くらいに活発になると思われる。今回は夜には見つけられなかったし、夜に探しに行ったという人も一つも見つけられなかったとおっしやっていたから、夜間はあまり活動しないのかもしれない。

②今回、食害されていたのは桜と梅の木だけだった。柿の木もあったが、食害の痕跡は無し。
梅は本数が少ないのでワカランが、桜は明らかに老木を好むようで、大きな桜の木ほど被害率が高かった。

③高い所にもいるが、木の根元付近にいる事の方が多い。そういう意味では採集はしやすい。
細い枝にもいるが(電線を歩き回っているのもいた)、太い幹に止まっている個体の方が多い傾向にある。
大きいし、派手な出で立ちなので止まっていればよく目立つ。しかし、活動時間以外はどこに潜んでいるものか、なぜか全然見つけられない(まあ、ワシの目が節穴だと云う可能性もあるけど…)。

④危険を感じると、すぐ飛ぶ。その慌てぶりはシッチャカメッチャカでケッコー笑える。飛翔力は強く、そのスピードはカミキリにしては速いと思われる。飛ぶ高さもケースによってはかなり高く、10m近くの高さを飛んでいるのも見た。

⑤樹液に来ると何かに書いてあったけど、今回は樹液の出ている木を発生地のすぐそばで2、3本見つけたが、姿は見かけなかった。やって来るとしたら、夜❓

⑥時期にもよるのだろうが、♂♀揃っている事がわりと多かった。すぐ♂は♀をほっぽらかして逃走するので、必ずしも交尾をしているというワケではなさそうだ。

⑦捕まえると強烈な匂いを発する。超クセーです。
その匂いは暫く辺りに漂っており、中々消えない。
だから、もし捕獲するならば素手ではなく、手袋か何かを着用をする事をお薦めする。鋭い牙からも手を守れるしね。
因みに捕まえるとカミキリらしく一丁前にキィーキィー鳴くが、その声は大きさの割りにかなりかぼそい。

⑧寿命は2週間くらいと書いてあったが、Aくん曰く、毒瓶に入れた時間が短かったらしくて帰ったら復活していたので、そのまま飼育ケースに放り込んだらしい(クワガタと同居)。で、3週間経ってもまだ元気に生きているという。となると、生命力は相当強い可能性はある。もう1ヶ月以上は経つ筈だけど、まだ生きてんのかなあ❓

とここまで書いたところで、夕方のニュース(関西TV『みんなのニュース』)でクビアカツヤカミキリの特集をやってた。
何でも徳島県では果樹園で発生しており、相当問題になっているらしい。で、徳島県立農林水産技術支援センターというところが本格的に駆除に乗り出したようだ。
大学生のアルバイトを使って一匹500円で買い取るなんて事もやっているらしい。笑ったのは、女子大生が一つの木で連続ゲットし、思わず『金のなる木❗』と叫んだところ。女子はいつの時代も逞しい。
このセンターではクビアカツヤカミキリのフェロモンを利用したトラップを作製するという試みもされている。けっこう工夫されており、謂わば『クビアカツヤホイホイ』みたいなもんで、これなら大量に捕獲できるのではと云う代物だった。案外、チョロイぞクビアカツヤカミキリ。

TVで放映されたせいか、ネットで検索すると記事が以前よりも大幅に増えていた。
でも、何か煽り過ぎのような気もする。毒も無いようだし、ヒアリよりかは遥かに駆逐は容易(たやす)いと思うんだけどね。
中でも一つ気になった記事があった。
産経ニュースの群馬県館林市の発生地についての記事なんだけど、虫屋に対してシツコク悪者かの如くに書いている。

①『しかも一部昆虫マニアが動き出すなど、拡散の恐れもある(橋爪一彦)』

②『ネット情報に一部昆虫マニアが反応、全国各地から集まり、採集して持ち帰るという厄介な事態も起きている』

③『市は拡散防止に躍起なだけに、マニアの行為に「拡散を助長するだけなので控えて」と呼びかけている』

と、御丁寧にも一つの記事に三回も出てくる。
しかもその表現の仕方には明らかに悪意があるとしか思えない。マスコミというヤツは昔からだけど、どうして昆虫好きに対してイコール悪者にしたがるんだろうね❓
多分、大の大人が虫を追っかける事に嫌悪感があるのだろう。幼稚で健全なる大人に見えない変態サイコ野郎だとでも思っているに違いない。冬彦さんとかが、最たるもののプロトタイプだ。虫屋が全員そんなワケあるかい。冷静になって考えればわかることだ。
だいたいマニアという言葉を使う事からして、そこに悪意が詰まっている。

①の橋爪某なんかの『しかも、一部昆虫マニアが動き出すなど…』なんて表現は端(はな)から文脈が悪者風情仕立てだし、②の『昆虫マニアが反応し、全国各地から集まり、(中略)厄介な事態も起きている』というのも厄介という言葉を使っている時点で悪者決定だ。しかし、何が厄介な事態なのは具体的には書いていない。
③は拡散を助長するだけとは書いてあるが、どうして採集して持ち帰ったら拡散するかの理由は書いていない。まるで持ち帰ったら、放すのが当然みたいな書き方だ。
だいたい虫屋が持ち帰るならば標本にするのだ。殺すに決まっている。謂わば駆除に貢献しているのである。クワガタと違って真剣に飼うヤツもあまりいないだろう。ブリードしたところで、売れはしないから商売にもならんだろう。ましてやミドリガメやアリゲーター・ガー、カミツキガメみたいに、邪魔だから野外に放つという虫屋はまずいない。知識があるから生態系を壊すと誰よりも知っているからだ(まあ、過去に一部のドアホはいたけど…)。
むしろマニアックな虫好きではなく、一般の人たちの方が厄介なのではないか❓ミドリガメだって何だって、問題になっているのは一般人が逃がした事から増えたという例の方が多いだろう。
例えば普通のオトーサンがこのカミキリを見つけたとする。珍しそうだしカッコイイ。息子が喜びそうだ。持って帰ろう。で、持って帰って息子に見せる。『でも、かわいそうだから逃がしてあげようね』とか言って野に放つ。こっちの方が余程ありそうな図式である。
とにかくマスコミは虫屋をマニアと称して悪者にしておけば問題意識を煽れると思っている節がある。いわゆる紋切り型の記事というヤツだ。マスコミはもっと勉強なさい。そして、もっと木材の輸入についての問題を取り上げるべきでしょう。キミタチ、一番大事なのはこれ以上日本国内に入って来ないように水際で阻止する事ではないのん❓

だから、カミキリなんぞジャンジャン虫屋に採らせればいいのだ。虫とりが上手いから確実に数を減らしてくれるぞ。そうだ、下手な一般の大人よりも余程子供の方が虫とりが上手いんだから、地域の活動としてガキンチョどもに採らせればいいのだ。子供たちも喜ぶし、教育にもいい。
但し、絶対に他の場所には放たない事を徹底する。虫屋もルールは守る。地域の人にもちゃんと挨拶する。
ホント、ろくに挨拶もでけん虫屋が多いからマスコミにも地域住民にも叩かれるんではねえの❓ちゃんと挨拶くらいはしましょう。挨拶しておいて損はないのだ。

話が逸れた。
で、食害された木をジャンジャン切り倒して燃やす。
コレでだいぶと沈静化するぜ。

まあ、先ずはとにかくワシら虫屋で節度を守ってクビアカツヤカミキリを採りまくって駆逐してやろうではないか❗
マスコミに『クビアカツヤカミキリの撲滅に昆虫好きたちが立ち上がった❗』とか書いてもらうように虫屋の側(特に学会)も積極的に働きかけるとかでけへんのかなあ❓

                 おしまい

 
(註1)和名について
勝山礼一朗氏から御指摘があり、クロジャコウカミキリよりクビアカツヤカミキリの方がずっと前、戦前には既に命名されていたようです。クロジャコウカミキリは月刊むしで誰かが使い始め、それが広まったのではないかとの事で正式な論文にも使用されたことがない由。だから、マスコミにはクビアカツヤカミキリが使用されているのだそうな。
因みに首が赤くない個体群もいるらしい。となると、ソイツはクロジャコウがふさわしい名前だよね。名前ってややこしいや。

『西へ西へ、南へ南へ』25 最終回 怒りを込めて五臓六腑の矢を放とう

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-09-10 20:12:27

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』
        最終回

(第十九番札所・怒りを込めて五臓六腑の矢を放とう)

  
2011年 9月25日

  山間に湧く
  無慈悲な雲に涙しぼり
  熱帯に満つる
  濃密な空気に声を呑み
  天翔ける胡蝶に
  よしんば、骨肉ここに朽ち果つるとも
  九月の驟雨は凜として
  今、千の針となり天上から降り注ぐ
  されば膝を折り、頭を垂れ
  憤然、五体の怒りを込めよう
  五臓六腑の矢を放とう

(奄美出身・詩人泉芳朗の詩へのオマージュ。)

男は、何があっても脱出する事を決心した。
埒があかない。
結果がどうあれ、この無間地獄の呪縛から逃れよう。
潮時だ。旅は終焉の時を迎えたのだ。

だが、天気は最悪の様相。大雨警報が出ている。
朝のニュースでは記録的豪雨と繰返し報じている。
1時間に135㎜、降りだしてからは500㎜を越えているという。どうやら、去年災害をもたらした大雨に匹敵するくらいの雨量のようだ。

兎に角、少しでも雨が弱まれば出よう。
土砂崩れで、道が寸断されてない事だけを祈ろう。

午前10時、出ようとしたら強い雨が来た。
部屋に籠るしかない。残された時間は確実に減ってゆく。
アハハハハ…ヾ(@゜▽゜@)ノ♪
気がフレたよ。
もう、知んなーい。

11時40分。小雨の中、男は意を決して出発した。
晴れ男なんだから、何とかなる。何とかして見せようホトトギス。
って、でもこの天気で出るなんて尋常ならざる判断。

アハハハハ(~▽~@)♪♪♪

アメユキトテキテケンジャ

オデ、コワレタ

正午、あかざき公園着。
取り敢えず梔子(クチナシ)の木を叩き出して、イワカワシジミを手中に入れる。

爽やかな翠(みどり)と長い尾状突起が優雅で美しい。

 
樹液ポイントの萱(かや)を踏み固め、邪魔な枝を排除してネットが振れる空間を広げる。

『そこはハブの巣窟だよ。』

と昨日地元のおじさんに言われたが、もうこうなりゃヤケのヤンパチだ。少しでもやれることをやるしかない。

作業をしていたら、木の根元にデンと居座る大きなクワガタを発見❗❗

アマミヒラタクワガタ❓
黒光りしてカッコイイのぉー( ☆∀☆)

考えてみれば、甲虫採りの人はいいよなあ…。
蝶とは違い、雨とかあんま関係ないじゃん(  ̄З ̄)
晴れていないと蝶を採るのは難しいけど、甲虫ならばまだ何とかなる可能性があるだろう。それに雨で翅が傷まんしのぉー。
いっそ、クワガタ屋に転向したろかい(*`Д´)ノ!

12時半、雨止む。
だが、樹液には大きなルリタテハしかいない。
やはりアカボシゴマダラは夕方にしか来ないのか?

どきゃぶぎゃわ❗Σ(_)

クエッケッケ~Σ( ☆∀☆)

益々アタマが変になる。
再び強い雨が降り出したのだ。
(;o;)アメユキトテキテケンジャ~

1時半。頭上をボロ♀通過。

2時半。ボロ♀来たる。キヤッチ&リリース。

3時。さあ、これからという時に又しても雨が降り始めた。

(T_T)アメユキトテキテケンジャー

天に向かってどなる。

(◎-◎;)ひでぶ~

 
4時半。空は暗い。

そして、何も飛ばなくなった。細かい霧雨がシトシトと降り続いている。

アメユキトテキテケンジャ(ToT)
男は、敗北を覚悟した。

4時40分、強い雨がまた降り始めた。
無情の雨だ。
(T^T)アベユギドデギテゲンジャー

レインコートに着替え、合間に採った3頭の♂達を次々にリリースする。
彼等は開いた三角紙の上をトコトコと歩いて立ち止まり、小首を傾げるようにして周囲を見回す。
やがて、思い出したかのようにふわりと翔び立ち、雨の中をゆっくりと森に消えていった。
サヨナラ。そして、ありがとう。

腕時計の針は午後5時ちょうどを指していた。
タイムアップだ。

ここに円は閉じる事はなかった。
怒りの矢を放つことさえも出来なかった。
男は誰に言うでもなく、「完敗。」と呟いた。
そして、降りしきる驟雨の中、靄(もや)にけぶる坂道をゆっくりと下って行った。

 
午後9時20分。
定刻通り鹿児島ゆきのフェリーは、島を離れた。

北へ北へ、東へ東へ。

                 ー 完 ー

(subject 写真解説)

【イワカワシジミ】
完品は、矢張り美しい。完璧なフォルムだ。
イワカワは、たぶん日本に棲む蝶の中では最も長い尾突を持つ蝶だ。エレガントなのだ。でも、それが仇となって、結構尾っぽが切れている事が多くて中々完品が得られない蝶の一つらしい。そんとおりですわ~、三代目。

【スジブトヒラタクワガタ♂】
黒光りした渋いツヤ、ガッシリとした体躯。
( ☆∀☆)カッコいいですな~。
てっきりアマミヒラタクワガタだと思っていたら、帰って調べてみるとスジブトヒラタクワガタと云う奄美諸島の固有種であった。確かに太い筋がある。
気性がメチャメチャ荒いクワガタで、大きなものは体長70㎜に達するようだ。測ってないが、この個体も相当に大きかった。
持って帰るかどうかだいぶと悩んだが、逃がしてやることにした。
多分、元々クワガタは好きなだけにこんなもんまで集め始めたら収拾がつかなくなると思ったのだろう。
ただでさえ、家の中が標本箱だらけでエライこっちゃになりつつあるのだ。クワガタにまで手を出したら、
寝る場所さえも無くなりかねない。
でも、今考えるとちよっと惜しい事をした。

6年後の今、改めて勿体ない事をしたと思ってる。
クワガタは、男の子にとってはヒーローなのだ。興味を示さない男の子は、オスとして将来大丈夫かと思う。インポなんじゃないかと疑りたくなるね。
でも、最近はそんな男の子も多いらしい。草食性男子ってヤツ❓日本の行く末、危うしである。

【民宿の慣れ親しんだ部屋】

結局、この部屋に15日間も居た。
もう、気分はいっぱしの下宿人なのだ。

そういえば宿の外観の画像を添付し忘れていたので、ついでに添付しておきます。

釣具屋の右横手が「民宿あづまや」の入口。
因みに釣具屋の上、二階の左から二番目が泊まっていた部屋。
釣具屋は開いてるとこを見たことがないから、多分廃業してるんだと思う。

【フェリー】

デカイですなあ。
湾内は穏やかで大したことなかったから、あれ?と思ってたら、外洋に出たらしっかりと揺れました。

【三角紙】

中身はシロオビアゲハだね。多分、沖縄本島の時のものだ。
それにしても、何かぞんざいな蝶の入れ方だなあ…。
一応、正しいしまい方の画像も添付しておくか。

(中身はミヤマカラスアゲハ)

触角や尾っぽを傷めない為には、これが一番正しい。
野外では、このような戦利品を蝶の頭を下にしてケースにしまう。

三角紙って、普通の人には解らないと思うので、一応軽く解説しておきます。
まあ写メを見てもらえれば理解できるとは思うんだけど、三角紙とは簡単に言うと採集した蝶を入れる紙です。素材はパラフィン紙などですね。

半透明なのには理由があります。
一つは中身の蝶が何なのか一発で判るから。最初に作った人が整理する時に分かり易いようにと考えたんでしょうね。
でも、最大の理由は蝶の翅を傷めたくないがゆえのアイテムだろう。
この紙はツルツルで、蝶の鱗粉が剥がれにくくなっています。鱗粉を損なえば、美しい蝶の姿も台無しになってしまいますからね。

フィールドに出る時は、これを納める三角ケース(三角缶)と云うものを持っていきます。
形は三角紙と同じで三角形。ベルトを通せるようになっており、腰にぶら下げます。
僕は牛革製の物を使用していますが、気分はちよっとしたガンマン気分(笑)
個人的には、三角ケースは戦闘体勢に入る為のスイッチの一つ。コレを腰に巻けば、必殺モードになるのだ。気合いが入る。

(註1)アメユキトテキテケンジャ
宮沢賢治の詩『永訣の朝』に出てくる一節。
本当はアメユキトテキテケンジャではなく、「あめゆきとてちてけんじゃ」が正しい。「とてきて」ではなく、「とてちて」ね。
あえて一文字変えたのは、その方が何となく感情が伝わるんじゃないかと思ったのだ。効果の程は全然ワカンナイけど(笑)

最後に5話で添付すべきだった画像をアップしておきます。

拝山から見下ろして名瀬市内の画像だ。
この写真が一番奄美大島らしい。

さらば、奄美。
良いとこだったよ。