2020’カトカラ3年生 其の壱

 

    vol.24 アズミキシタバ

   『白馬わちゃわちゃ狂騒曲』

 
 2019年 8月2日

一瞬、自分が何処にいるのか分からなくなる。
ひと呼吸あって、黄緑色のテントの天井に焦点が合う。寝起きの澱んだ脳ミソが、それでようやく自分の置かれている状況を認識した。そうだ、長い長い電車移動の果てに、この湖までやって来たんだったわさ。
マホロバキシタバ(註1)の分布調査が一段落したので信州遠征に出たのだ。また過酷な虫捕り旅が始まったってワケだ。
目的は会ったことのないカトカラ(シタバガ属)たちを採るためである。マホロバという国内新種を見つけたのにも拘らず、カトカラの採集を始めてまだ2年目のペーペー、採ったことのないカトカラがまだまだある。新種を見つけておいて、他のカトカラはあまり採った事が無いというのではカッコがつかない。だから10月の発表までに少しでも採集種類数を増やしておこうと思ったのだ。この時点では、マホロバを含めた全32種のうちの20種しか採れておらず、あと12種類も残っていたのである。

テントから出て歯を磨きに行くと、湖が見えた。

 

 
昨日は日没間近に着いたから気づかなかったけど、こんなにも碧くて綺麗な湖だったんだね。
同時に昨日の苦い記憶が甦ってくる。湖の周辺でミヤマキシタバ(註2)を狙うも擦(かす)りもせずの惨敗だったのだ。
こんだけロケーションが良いのなら、もう1日いてもいいかなと思った。昼間はじっくりミヤマの食樹であるハンノキを探しながら湖畔を散歩するのも悪かない。
しかし、昨日の貧果から多くは望めないと考え直した。もう1回アレを繰り返したら、ハラワタが煮えくり返ってホントに奴らに危害を加えかねない。
ちなみに奴らとは↙コイツの事である。

 
(フクラスズメ Arcte coerula)

(出典『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

 
コヤツ、カトカラじゃないし、デブだし、醜くてマジキモい。
それに一瞬だけ佳蛾ムラサキシタバ(註3)に見えて、あらぬ期待を持ってしまうから💢イラッとくる。

 
(ムラサキシタバ Catocala fraxini ♂)

(2019.9月 長野県松本市)

 
オマケに普通種のクセして妙に敏感で、こっちはさらさら採る気もないのに大袈裟に逃げてゆくのも腹立たしい。何だかそれがバカにされてるようで(-_-メ)超絶ムカッとくるのだ。なので標本は一つもない。なので岸田先生の図鑑の画像をお借りしたのである。

とにかく、此処で目的のミヤマが採れる気がまるでしない。そうゆう時は自分の勘に素直に従うべきだ。今までだってそうだし、これからだってきっとそうだ。己の勘を信じよう。湖を後にして、白馬村へと向かう。

 

 
又してもキャンプ場なのさ。ボンビー旅行なのもあるが、宿に泊まれば自由が効かない。何てったって蛾採りは夜がメインなのだ。しかも深夜に及ぶことが多い。宿泊してると、おいそれと夜に出歩くワケにはいかぬのだ。要らぬ心配や迷惑をかけたくない。

取り敢えず、ここを拠点にして各所を回るつもりだ。
狙いはアズミキシタバ、ノコメキシタバ、ハイモンキシタバ、ヒメシロシタバ、ヨシノキシタバである。こんだけ居りゃあ、どれか1つくらいは採れんだろ。

温泉入ってテント張ったら、もう夕方になった。
蜩(ひぐらし)の悲しげな声が辺りに侘しく響く。その何とも言えない余韻のある声を聞いていると、何だかこっちまで物悲しくなってくる。夏もいつかは終わるのだと気づかされてしまうからだ。でも、そんな夏の夕暮れこそが夏そのものでもある。この気持ち、何となくノスタルジックで嫌いじゃない。

岩に腰掛けて、ぼおーっと蜩たちの合唱を聞いていたら、サカハチチョウがやって来た。

 

 

夕暮れが訪れるまでの暫しの時間、戯れる。
こちらにフレンドリーで穏やかな心さえあれば、案外逃げないものだ。慣れれば手乗り蝶も意外と簡単。心頭を滅却して無私になれない人はダメだけど。
たぶん20分以上は遊んでたんじゃないかな。お陰さんで心が癒やされたよ。ありがとね、サカハっちゃん。

この地での最初のターゲットは、アズミキシタバだ。
近くの崖にいると聞いている。だが、ぼんやりとした不安が心の隅に蹲(うずくま)っている。

 

 
何となく見覚えのある場所だと思ったら、西尾規孝さんの名著『日本のCatocala(註4)』に載っていた場所と同じだ。しかし様相は随分と変わっている。

 

(出典『日本のCatocala』からトリミング。)

 
たぶん2000年代前半以前に撮られた写真だろう。今と比べて広範囲に岩が露出しており、アズミの食樹であるイワシモツケには適した環境だ。しかし現在は周囲からミズナラなどの木が侵入してきていて、どう見ても環境は悪化している。とゆうことは確実にアズミの数は減っているという事だ。それに此処は標高が低いから発生期のピークは過ぎているものと思われる。果たして採れるんかね❓

とはいえ、悪い事ばかりじゃない。
崖の近くにはアズミが吸蜜に訪れるというヒヨドリバナとリョウブの花があった。

 
(ヒヨドリバナ)

 
(リョウブ)

 
樹液にはあまり来ないとも聞いていたから、これならたとえトラップがダメでも何とかなる可能性はある。実力はさしてないけど、引きだけは強いと言われるワタクシだ。何とかなるっしょ。

夕焼けにバイバイしてから崖下に行き、木に霧吹きで糖蜜を吹き付けてゆく。
アズミキシタバが糖蜜トラップで採れたという話は聞いた事がないが、カバフキシタバ(註5)だってタコ採りの我がスペシャルレシピだ。寄って来るじゃろう。ワシがアズミも糖蜜で採れるという事を証明してやろうではないか。ψ(`∇´)ψケケケケケ…。

幸先良く、直ぐにベニシタバ(註6)がやって来た。
٩(๑´3`๑)۶ほら、見さらせじゃ。

 

 
昨日も採れたけど、嬉しい。元来ベニシタバは💖好きだもんね。それに発生初期であろうこの時期のベニシタバは格別に美しいのだ。

しかし、さあこれからというと段になって、⚡ガラガラピッシャーン❗本気の雷雨がやって来て、チャンチャンで惨敗に終わる。
🎵ズタズタボロボロ、🎵ズタボロロ~。
そして、その後も此の地でことごとく敗退。新しきカトカラは何一つ採れず、泥沼無間地獄の3連敗となる。でもって、秋田さんや岸田先生に「マホロバの発見で、今年の運を全部使い果たしたんじゃないのー。」と揶揄される始末。

 
2020年には、前から買う買うと言っていた小太郎くんが遂にライトトラップのセットを購入した。
なので即座に尻尾を振りまくり、アズミ遠征の約束を取り付けた。去年の惨敗と、その後の調べでアズミはライトトラップ無しでは採るのが難しいと痛感したのだ。この際、形(なり)振りなんか構ってらんない。でも以後、小太郎くんには事あるごとに「アズミ、行くの止めよっかなあー。」などとイジメられ続けたよ。世の中、持つ者と持たざる者とでは、常に持たざる者は虐げられる運命なのだ(笑)。

問題は、お天気である。もし晴れならば、新月でもなければ効果はあまり期待できない。灯火採集に月夜はヨロシクないんである。夜間に活動する昆虫は月の光を頼りに行動していると言われている。だから曇っている方が条件的には良い。月の光に影響されないからだ。詳しい説明は長くなるので割愛するが、とにかく虫たちは月の光と間違えて人工光に吸い寄せられる。
かといって同じく月が隠れる雨もヨロシクない。雨でも蛾は平気で飛んで来るらしいのだが、雨で羽が濡れてボロ化しやすいからマズイんである。それに小太郎くん曰く、雨はライトトラップセットの故障の原因にもなりやすいそうだ。
あとは風が強くてもダメだし、気温が低過ぎるのもヨロシクないと言われている。灯火採集は案外と条件がシビアなのだ。その点、糖蜜採集は楽だ。強い雨や気温が低い以外は、あまり天候に影響されない。自分的には糖蜜トラップの方が性格的には合ってる。ライトトラップは荷物の量が多いし、用意と後片付けとか面倒くさいのだ。あとは待つのが大嫌いな性格とゆうのもある。糖蜜トラップも一見待ちの採集だが、ポイントを巡回するのでアクティブなのだ。網を使う機会も多いしね。動的な採集の方が自分には合ってる。だからライトトラップの時は、今一つ気合が入らない。とはいえ、今度ばかりは気合が入っている。アズミには、そこそこ憧れてるし、絶不調続きで今年はまだ未採集のカトカラを一つも採れてないんである。

 
 2020年 7月26日

天気予報は雨模様で微妙だったが、イチかバチかでGOする事に決定した。この機会を逃すと、時期的に鮮度が良いものは望めないからだ。いくら沢山飛んで来ても、ボロばっかじゃ意味ないのだ。
博奕を打てない奴に良い虫は採れない。でも、どちらかというと予報は悪い方に傾いている。強い雨ならば、ライトトラップは中止にせざるおえない。とはいえ、小雨程度ならガスが掛かり、むしろ絶好のコンディションになるかもしれない。謂わば、我々はゼロ百の状況下にあるのだ。
雨予報でも晴れさせてしまうスーパー晴れ男のワシの力をもってすれば大雨は有り得んとは思うが、最近は何をやっても上手い事いかんしなあ…。こんなとこまで来てダメだったら泣くに泣けんよ。いや、( ;∀;)ダダ泣きさ。どうにかなることを心から祈るよ。

白馬村に入る頃には完全に日が暮れて、夜の帳がおりた。
場所の選定は山の中腹と高地の2箇所で、まだどちらにするか決めかねている。鮮度を考えれば高標高のポイントだが、細かいポイントは知らない。一方、中腹は小太郎くんが場所を詳しく聞いているから確実性は高い。だが、鮮度は落ちている可能性が大だ。ここが運命の分かれ目、思案のしどころである。

相談の結果、高標高のポイントを目指すことにした。もしポイントが見つからなければ、中腹ポイントに変更すればいいと判断したのである。アズミのライトへの飛来は夜半過ぎだと言われている。だから時間的にそれでも何とかなると踏んだ。夜遅くに飛んで来る蛾は待つのがウザいのだが、こうゆう場合は寧ろ助かる。周囲の環境や天候等々、様子によっては、そのポイントを捨てて移動することだって可能なのである。

小雨降る中、車は山へ向かう道へと入ってゆく。
すると、ガスり始めてヘッドライトの前を蛾がワンサカ飛びだした。完全に活性が入ってるって感じで、絶好のコンディションだ。このまま天気がもてば、何とかなる。どころか大爆発だって有り得る。心が期待でグンと膨れ上がる。

しかし着いた場所は真っ暗けで、周囲の環境が全然ワカラン。どこにライトを設置すれば良いのか、さっぱりワカランぞなもし。それでもこの状況ならば、たとえポイントを少々ハズしていたとしても1つや2つは飛んで来るだろう。
けど、嫌な予感がしないでもない。今シーズンのワシはマホロバもカバフもあんまり採れてなくて、絶不調がバリ続いているのだ。何が起こるかワカランのだ。慎重に状況を把握してから決断すべきだ。
考えてみれば、標高が高ければ高いほど雨になりやすい。高い分だけ気温が低いのも気にかかる。気温が低いと虫の活動は鈍くなるのだ。ゆえに確実に採れる場所である中腹を選択すべきではないかと思った。
小太郎くんは此処でやる事を望んでそうな素振りだったけど、ここは譲ってはならぬと感じた。なので、半ば強引に中腹でやることを主張した。小太郎くん、ゴメンね。&譲ってくれてアリガトね。

一旦、山を降り、別なルートを登り返して中腹ポイントを目指す。さあ、気持ちをリセットしてアズミをテゴメにしてやろうじゃないか。

ポイントは人に詳しく聞いていなければ、夜だと絶対に辿り着けないような場所だった。マジ真っ暗けだ。さっきの比じゃない漆黒の闇だ。

幸い雨は止んでいる。
けど寒い。途中で上着を忘れたのに早めに気づき、「GU」で買っといて大正解だったよ。良い兆候だと考えよっと。今日はツイてるから大丈夫だと自分に言い聞かせる。何につけ、ちょっとした事でもメンタルを強化しとくのは大切なのだ。

時計を見ると、早くも午後8時半近くになっていた。
ソッコーで今夜の屋台を組む。

 

 
何だかんだで結局ライトが点灯したのは、たぶん9時になる10分前くらいだった。

 

 
ほぼ雨は止んでいたが、傘つきの雨仕様になっておる。
とはいえ、活躍はあまりしてくれない事を祈ろう。どうか大雨にだけはなりませぬように👏

午後10時。
小太郎くんが突然椅子から立ち上がり、小走りに駆け出した。

えっ❗❓、えっ❗❓、えっ❗❓、もう飛んできたの❓

慌てて、自分も後を追っかける。

小太郎くんがライトトラップの裏へと回った。ねっ、ねっ、アズミなのー❓何か言ってくれよー。

コレ、密かに狙ってたんすよー❗

見ると、手にケバいくらいの派手派手な蛾を持っている。しかも、デカい。
(⑉⊙ȏ⊙)見たことあるぞー、ソレ。

 

 
ジョウザンヒトリである。
ワシも会ってみたかった蛾の一つだ。思ってた以上にデカいんで驚いたよ。それに想像していた以上に美しい。百聞は一見に如かずだね。何だって実物が一番美しくて、生きているオーラがある。

午後10時20分くらいだったと思う。
再び小太郎が慌てて走り出した。

いたっ❗いました❗たぶんアズミに間違いないです❗

しかし、飛んで逃げて忽然と姿を消した。(ㆁωㆁ)マジかよ❓
絶対に、まだ近くにいる筈だ。二人で辺りを探し回る。
思った通りだった。しかし何度か地面にいるのを見つけるのだが、クソ忌々しい事に直ぐに飛んで逃げよる。それを数度繰り返す。何でライトの近くまで寄ってこんの❓

暫くして、ようやくブラックライトまで近寄ってきたのを小太郎くんが見つけた。
白布で行き止まりだから、もう袋のネズミだ。余程の事がない限りは採れるだろ。これで、やっとこさ間近でじっくりと眺められる。小太郎くん、ゲットよろしくー。

しかーし、(⑉⊙ȏ⊙)あちゃま❗、何とブラックライトの隙間に入っていきよるー❗

こりゃ、ボロ化必至だな。
肉を切らして、骨を断つ。それでも小太郎くんは意地で何とか無理矢理ゲットした。

で、見せて貰ったけど、あちゃーの背中ズル剥けになってた。
小太郎くん、御愁傷様(´ε` )
それにしても、思ってた以上に小さい。マメキシタバ(註7)よか小さい。ここまでくると、もう小人ちゃんレベルだな。
とはいえ、実物を見て俄然やる気が出る。

けれど後が続かない。表情には出さないようにしてはいたが、心の中は相当波立っていた。このまま二度と飛んで来ないのではと考えると、胸が締めつけられそうだった。やっぱ絶不調のスパイラルにハマったまんまなのか…。いい加減、勘弁してくれよ、ジーザス。

11時過ぎ。
ようやく自分にもチャンスが巡ってきた。
ふと何気に地面を見たら、ペタッと止まっていたのだ。けどコヤツも同じように敏感で直ぐに飛び立った。目を切らずに姿を追い掛け、止まった辺りに目を凝らす。どこよ、どこー❓地面と同化して、よくワカンナイ。焦燥感が心を撫でる。

(☆▽☆)いたっ❗

けど、必死で毒瓶を被せようとしたら、すんでのところで逃げやがった。クソッ(-_-;)、マジかよ。でも飛びそこねて、ひっくり返りよった。

ダメー❗(༎ຶ ෴ ༎ຶ)ボロになっちゃうー。

ヽ(`Д´#)ノえーい、もうどうなってもええわい。とにかく何でもいいから採らなきゃ来た意味がない。強引に毒瓶を被せた。

中を見ると、ちゃんと毒瓶に収まっている。
(´д`)フゥー、何とか採れたよ。
毒が回り、ほぼ動かなくなったところで、やや震える指先で手のひらに乗せる。

 

 
(・o・;)ちっちゃ❗
そして、暴れ倒したので、ワシのも背中がハゲちょろけて見事なまでの落ち武者化しとるー。(;´д`)トホホのホー。

 

 
ちっちゃいけど、後翅の黄色が鮮やかで綺麗だ。前翅も複雑な紋様でカッコイイ。

腹や羽の形からすると、♀かな❓
それに尻先に毛束があまり無いような気がするもんね。カトカラの♀は♂と比べて腹が短くて太く、尻先の毛の量が少ない傾向がある。また翅形は丸みを帯びることが多い。

確認のために裏返してみる。

 
(裏面)

 
 
裏面は、どって事ない。どう見ても美しいとは言えないやね。
それに随分と擦れてる。時期的にもう遅いのかな❓それとも暴れて擦れたせいなのかな❓判断に苦しむところだ。
あれっ❗❓、♀と思ったけど尻先に縦スリットが入ってないし、産卵管も見えない。って事は♂❓

午前0時前。
ようやくマシなのが採れた。

 

 
(・o・;)やっぱ、ちっちゃ〜。

 

 
これは腹が細く、尻先に毛束があるから♂だろう。
じゃあ、最初のはどっちだったのだ❓
まあいい。数を採ってりゃ、そのうち自ずと分かってくるだろう。

2頭目を三角紙に収めたところで、雨がパラパラと降りだした。
このまま小雨で踏み堪えることを祈ろうと思って歩き出したら、また地面に止まっているのがいた。今度は崖の縁だ。

『いたっ❗』
と言ったら、一拍おいて小太郎くんも
『こっちもいましたあー❗』
と声を上げる。そして次の瞬間には、
『あっ、アッチにもコッチにもいます❗』
と叫んだ。
目を戻すと、視界に何かが入った。
(⑉⊙ȏ⊙)わちゃっ❗❗
コッチも2つ3つ飛んどる❗

雨で活性が入ったのかもしれない。そこから先は、祭が始まった。次から次へと崖の下からアズミが湧くように這い昇って来た。
でも相変わらず白布には止まらず、落ち着きなく地這い飛びしとる。歩くと複数が地面から飛ぶし、もうワチャワチャだ。それを二人とも中腰で右往左往で追いかけ回しているから、滑稽きわまりない。もし第三者が見ていたとしたら、泥鰌掬いのおっさんショーに見えたかもしれない。そして、採っても採っても地面で暴れて次々とボロ化してゆくから、その泥鰌掬いの動きに拍車がかかる。早く採らないとボロボロになってしまうから必死なのだ。もうワシらまでワチャワチャの、わちゃわちゃダンスパーティーなのだ。

狂騒曲は午前1時過ぎまで続いた。
一段落し、何だかバカバカしくって二人して笑う。

気がつけば、いつのまにか雨は上がっていた。

                        おしまい

 
後日談を少し書く。
深夜2時くらいに撤収して山を降りたら、晴れてきて星まで出てくる始末。そして、昼間にコヒョウモンモドキの様子を見に乗鞍まで行った時にも晴れてきた。天気予報は完全に悪かったから、やはり我ながらスーパーな晴れ男なのである。
とは言うものの、その後は土砂降りだったけどね。
で、その日に帰宅したのだが、2頭だけ展翅して睡魔に勝てず、残りを冷凍庫にブチ込み昏倒。以後、今まで1つも展翅してない。
一応、その時の展翅画像と昼間に見たらこんなんです画像を添付しておこう。

 

 
昼間に見ると、よりいっそう美しいことが解る。
下翅の黄色はキシタバ類の中でもトップクラスの鮮やかさだ。上翅もカトカラの中では見たことのないような独特の渋いグレーで、複雑な模様はデザイン性が高い。
とはいえ、激ちっちゃいけどさ。もう少しデカけりゃ、評価はもっと高いのにね。せめて中型サイズくらいあればなあ…。

 
【Catocala koreana azumiensis アズミキシタバ♂】

 
【同♀】

 
スーパー落武者にさせてしまったなりよ(´ε` )
触角も真っ直ぐに出来てないし、胴体も縒れてるしさ。
まあ睡魔に勝てずに力尽きたと云うこってすな。

 
追伸
こうして文章を書いていると、改めて場所の選択は正しかったんだなと思う。高標高側のポイントだと、ずっと雨だったんじゃないかという気がする。たぶん気温も更に下がっていただろう。
それに何よりアズミキシタバは殆んどが上からではなく、下側から飛んで来たからね。

2019年の採集記は他の回とも繋がっており、今のところ前後の話はベニシタバとミヤマキシタバ、ハイモンキシタバ、ノコメキシタバの回と繋がっている。どっかに憎悪のフクラスズメとの戦いも書いてある。おそらく今後、ヒメシロシタバやヨシノキシタバ、ケンモンキシタバの回ともコネクトしてゆく事になろう。御興味のある方は読んで下され。

 
(註1)マホロバキシタバ

【Catocala mahoroba ♂】

(2019.7月 奈良市)

 
2019年に日本で新たに見つかったカトカラ。新種が期待されたが、結局は台湾の”Catocala naganoi”の新亜種に収まった。
拙ブログに『真秀ろばの夏(2019’カトカラ2年生 其の3)』の前・後編、『月刊むし10月号がやって来た、ヤァ❗ヤァ❗ヤァ❗』『喋くりまくりイガ十郎』の4編の文章があります。

 
(註2)ミヤマキシタバ

【Catocala ella ♀】

(2020.8月 長野県木曽町)

 
詳しく知りたい方は本ブログに『突っ伏しDaiary(2019’カトカラ2年生 其の4)』と、その後編となる『灰かぶりの黄色きシンデレラ』と題した文章があるので宜しければ読んで下され。

 
(註3)ムラサキシタバ

【Catocala fraxini】

(2020.9月 長野県松本市)

 
フクラスズメとは、下翅にブルーが入っているのが共通するだけで、似ても似つかない。色、柄、フォルム、全てにおいてムラサキの方が格段に美しいのだ。しかも稀でデカいときてる。謂わば、フクラスズメとは月とスッポンくらいの身分の差があるのである。

拙ブログに『2018’カトカラ元年』シリーズの其の17として、『青紫の幻神』『憤激の蒼き焔(ほのお)』『2019’紫への道』『パープルレイン』『紫の肖像』というムラサキシタバについて書いた五章からなる大作がありんす。おいちゃん、ムラサキシタバ愛が強しなのである。

 
(註4)『日本のCatocala』

 
日本のカトカラについて書かれた図鑑の最高峰。生態図鑑としては圧倒的に群を抜いている存在だと思う。

 
(註5)カバフキシタバ

【Catocala mirifica ♀】

(2020.7月 奈良市)

 
拙ブログの『孤高の落武者(2018’カトカラ元年 其の5)』と『逆襲のモラセス(続・カバフキシタバ)』の前・後編を見られたし。

 
(註6)ベニシタバ

【Catocala electa ♀】

(2019.9月 岐阜県高山市)

 
拙ブログの『薄紅色の天女(2019’カトカラ2年生 其の16)』と、その後編『紅、燃ゆる』を読まれたし。

 
(註7)マメキシタバ

【Catocala duplicata ♂】

(2020.8月 長野県木曽町)

 
拙ブログの『侏儒の舞(2018’カトカラ元年 其の4)』を読まれたし。

 
 

すだれ貝で、( ̄□ ̄lll)すだれ顔

 
久し振りにスダレ貝に会った。

 

 
特別な印象はあまりないが、そこそこ旨かったような記憶があるし、半額だから買うことにした。だって、たったの140円くらいなんだもーん。それに死んでるならパスだけど、何とか青息吐息で辛うじて生きていそうだった。一応言っとくけど、半額なら何でも買うと云うワケではない。ちゃんと目利きした上での判断だ。
死んでる貝は激クサ死臭で、食ったらマジでヤバいと云うか、下手したらアタるどころか死にまっせ(笑)。けんど、生きててさえいれば、危険度は低いのだ。されども貝毒とゆうのもござるので、絶対セーフではないけどもね。

調理する前にスダレ貝について調べてみよう。
好奇心があると言えば聞こえがいいが、相変わらずメンドくさい性格である。

先ずはいつも御世話になってる『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』を見てみよう。ワケのわからぬ魚介類を調べる時は、このサイトが一番使えるのだ。

魚貝の物知り度 ★★★★★ 知っていたら学者級
味の評価度 ★★★ 美味

どうやら味はまあまあみたいだね。

【分類】
二枚貝綱 異歯亜綱 マルスダレガイ目 マルスダレガイ科 スダレガイ属。漢字で書くと「簾貝」。
スダレガイという名称は、表の殻頂から同心円を描く太い簾(すだれ)状の輪脈(細い筋)に因むそうだ。

【生息域】
海水生。水深10〜40mの浅い砂地に生息し、アサリなどと同じように海水を濾過してプランクトンを摂取している。
分布は国内では北海道南西部から九州に至る沿岸とされ、朝鮮半島、中国大陸南岸にまで及ぶ。

【主な産地と漁獲量】
ほぼ全国の沿岸に生息するようだが、底曳き網などで稀に他の貝類に混じって獲れる程度のようで、産地は非常に限定的。流通に乗せられるほど獲れる地域は殆んどない。

おいおい、そんなに珍しいのかよ。にしては安いよね。

【漁獲時期と旬】
旬は春で、4~6月とされる。
つまり、同じ二枚貝の浅蜊とかと同じって事だね。

【市場での評価】
嫌みのない味の良い二枚貝だが、前述したように生息数が少なくて市場に出回る事は殆んどない。市場で目にする「スダレガイ」と表記されている貝は本種ではなく、だいたいは近縁種のアケガイって貝らしい。
えっ❗、じゃあもしかしてコヤツも、そのアケガイ❓
アケガイと似ているが、本種の輪脈はアケガイのそれよりも段差がハッキリしており、それが殻頂(貝の上の部分)にまで及んでいるのが特徴。アケガイは上部に筋が無く、滑らかでツルツル。また、アケガイの殻の内側は殻頂部辺りが黄色いのに対し、本種は黄色くない。

もうメンドくせーなあ。そのアケガイとやらも調べないと話にならんではないか。その前にスダレガイの見た目って、どんなだっけ❓ギガの使い過ぎで画像の取り込みがメチャ遅いから文字だけコピーして書いているのだ。

 
(スダレガイ)

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
何だよ。全然違うじゃないか。
(-_-;)もしかして…。
慌ててアケガイの方も調べてみる。

 
(アケガイ)

(出典『ぼうずコンニャク魚貝類図鑑』)

 
( ̄□ ̄lll)あちゃー、スダレ顔になったよ。
とゆうことは、ワシが買ったのはアケ貝やんけ(-_-メ)
それにしても、相も変わらず魚介類業界の紛(まが)いもん表記は酷いな。こんなの完全に詐欺でしょうに。
あ〜あ、アケガイで調べ直しじゃよ。    

【分類】
マルスダレガイ目 マルスダレガイ科 スダレガイ属。
貝殻の模様と色は多様で、ベージュ系から濃いブラウン系まで様々。膨らみがやや強く、不規則な同心円肋で被われる。殻頂附近は平滑。
漢字で書くと「朱貝」。名前の由来は、おそらく足の部分が鮮やかな赤だからだろう。

味の方はどうだ❓
評価が低かったらガックシだよなあ…。

魚貝の物知り度 ★★★★ 知っていたら達人級
味の評価度 ★★★ 美味

おっ、スダレガイと変わらんじゃないか。ホッとしたよ。

【地方名・市場名】
アケスダレ(朱簾)、アカガイ(赤貝)、アカゲ、アブラガイ、クワズガイ、コウクイ、コウクリ、コングリ、サネガイ、ジョロガイ、タコガイ、チョウセンガイ、テッポウガイ、トリガイ、ハマグリ、ヒメカイ、ヒメガイ、ヒメサンガイ、ビンゾウ、ベニガイ、ベンクシガイ、ミミスリガイ、ミンガラガイ。
こんだけ名前があると云うことは、何処でも獲れるって事ね。

【生息域と分布】
海水生。水深10〜50mの砂地。
北海道南西部から九州。朝鮮半島、中国。
アサリよりもやや沖合に生息し、三河湾が産地として知られ、主に貝桁引き網で獲られる。
なるほどね。今回のも愛知県って書いてあったわ。

【市場での評価】
内湾で獲れるもので、主にアサリの代用品として利用される。アサリの減少から活貝、加工品として需要が高まっている。国内でも獲れるが、この需要を主に満たしているのが輸入モノ。中国や東南アジアからボイルしたものが冷凍の形で入ってくる。これを佃煮や総菜に加工しているようだ。絶対に「アサリの佃煮」とかって言われて、知らんうちに食わされてるな。
国内産はまとめて入荷することは少ないが、時にまとまって入荷してくる。値段は安い。

【目利き・選び方】
国産は原則として活け。活きのいいもの。貝殻の表面の滑りに透明感のあるもの。貝類は生きているものを選ぶことが前提で、水中のものなら水管を伸ばし、触ると素早く引っこめるものを選び、水から上げられているものは殻を閉じ、だらりと口を開けていないものを選ぶ。

【旬・味わい】
春から夏。
クセがなく旨みがやや薄いが、味的には間違いなく美味しい。
熱を通すと硬くなりやすいのが難点。

長々と書いたが、いい加減に調理にかかろう。
考えるのが面倒くさくて、酒蒸しにすることにした。調理法は基本的に浅蜊と同じだろう。

①ザルなどに入れて流水でザブザブと擦(こす)りながら洗い、水分をよく切る。

ゴシゴシ洗ってたら、足が取れた。

 

 
ちょっと迷ったが、生で食べてみることにする。
浅蜊は毒がある可能性があるから生では食べてはいけないと言われるけど、こんくらいなら大丈夫だろ。醤油をかけて食う。

(☉。☉)あっ❗、甘くて美味いぞ。
いっそ全部、生で食うたろかと思ったが、一々口をコジ開けてなんかいられない。やっぱ酒蒸しでいいや。

②雪平鍋に入れて酒を振りかけ(お好みで生姜を入れてもいい)、蓋をして蒸し焼にする。貝殻が開いたら出来上がり。お好みで三つ葉やネギを散らしてもよい。

この間、1、2分。そう、超簡単なのである。
ニンニクを加えて、白ワインで蒸し上げてもいいと思う。

 

 
見た目は浅蜊よか美しい。
とはいえ、毒々しいと見る向きもありそうだけどね。

食べてみよう。
先ずは出汁を飲む。
浅蜊よりも旨味が弱いような気もするが、旨い。

お次は身だ。
味は良い。でも、これまた浅蜊よか旨味が少ないような気がする。まあ、旨いという範疇には入るとは思うけどさ。
気になるのは食感だ。浅蜊よりも明らかに身質が固い。そこがちょっと残念ところかな。その代わりといっちゃ何だが、アサリと比べて身は大きいので食べごたえは浅蜊よりもある。

残り汁に余っていた卵の白身を入れて飲んだ。

 

 
普通に旨い。
けど、無茶苦茶あうってもんでもない。

それはさておき、ちょっと待てよ。旬は秋じゃなくて春だったな。それで思い出した。確か春先にも食ったような気がするぞ。もしかして、そっちこそ正真正銘のスダレガイだったりして…。

 

 
やっぱ、あった。
日付を見ると、5月23日になっている。

 

  
う〜ん、でもコッチもアケガイだね。
調理法は何だったっけ❓たぶん酒蒸しだったような気がするけど。

 

 
あらあら、器の選択も同じだし、どうやら調理法まで同じみたいだね。
記憶が少し甦った。そういや、この時の方が旨かったわ。やはり、旬は春かもしれないね。

                        おしまい

 
追伸
今回は酒蒸しのみ紹介したが、何にでも使える素材のようだ。
味噌汁、焼きアケガイ、アヒージョ、なめろう、ボンゴレ風パスタ、刺身、寿司、ぬた、かき揚げ、ブイヤベース、佃煮、炊き込みご飯などが紹介されていた。ようはアサリと思えばいいのである。
絶賛している料理があるので、一つだけ紹介しておこう。

◆アケガイの貝汁そうめん
多めのアケガイを酒蒸しにして、そこにめんつゆと水を加えて味を整えて冷蔵庫で冷やす。茹でたそうめんを冷水ですすぎ、水気を切って器に盛る。その上から先のアケガイの汁をかけ、刻んだ大葉とショウガを散らす。

これがことのほか旨いらしい。
今度見つけたら、そうしてみよう。あっ、でも春の方がいいかもね。

 
ー参考資料(ネット)ー

◆『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』

◆『旬の食材百科』

 

明太子のつまみ二種

 
酒のアテのために明太子でツマミを作る。

先ずはニラを適当な大きさに切る。世間ではニラの茎の部分を捨てる人が多いみたいだが、ゆめゆめ捨てる事なかれ。実を云うと、ここが一番旨いんである。

それを熱湯で茹でる。
葉の部分は10秒くらい、茎は30秒くらいで上げて冷水へドブン。で、軽く水気を絞る。あとは明太子と和えるだけ。
味をみて薄いようなら、醤油1、酒0.5の割合で鍋にかけてアルコール分を飛ばしたものを足しましょう。

 

 
ちなみに上に乗ってる赤いのは、明太子の皮を軽くレンチンして切ったものでござんす。

お次はシラスあえ。
これはもうレシピもへったくれもない。ただシラスと明太子を和えるだけ。注意事項があるとすれば、その配分だけだろう。シラスにやや少なめの明太子を加えて混ぜ、足りなければ明太子の量を増やして調整しまひょ。

 

 
お好みで白ゴマを振ってもよろし。

酒の種類は何でも合うだろう。強いて言うなら、シラス和えは白ワインだと生臭みを感じるかもしれない。たぶん問題ないとは思うけどさ。

(≧▽≦)う〜ん、酒が進むわ。

                       おしまい

 
追伸
えー、もちろん白飯にも合います。

 

 
明太子って偉いよね。

 

チェンジング麺つゆ出汁

 
こないだ記事をアップした「胡瓜の麺つゆ漬け」だが、残り汁が勿体ないので、その後には形を変えて食卓に登場した。

 

 
母胎はコレね。
白飯にバリ合う。

先ずはこの残り汁に少し塩を加え、シンプルに赤鶏の手羽先を煮てみた。

 

 
赤鶏だけに旨いねっ(. ❛ ᴗ ❛.)
肉厚でブリンブリンだわさ。

翌日、その残り汁に少しだけ薄口醤油を足して豚肉のしゃぶしゃぶにしてみた。第3形態である。

 

 
これまた、鶏の出汁が効いてて旨い。
だからポン酢なんて必要ないのである。

で、次に何気に牛蒡を入れて炊いてみたら、新たなる出汁に変化(へんげ)した。第4形態と言いたいところだが、これは前蛹みたいなもんで、ここから更なる形へとチェンジするのだ。

翌日、いよいよファイナル形態へと昇華させる。
その牛蒡のエキスをたっぶりと含んだ出汁を火にかける。
沸騰するまでに白ネギを切り、青い部分だけ残して汁にブッ込む。
そこに何と中華そばを投入じゃい❗
そう、麺つゆは最後に本来の麺つゆとして生涯を全うするのである。
葱の青い部分と手羽先の残りを毟って乗っければ出来上がり。

 

 
汁が少ないが、この際かまわん、かまわんのカマワンチェンジャー。

先ずは汁を飲んでみる。
(☆▽☆)うまーっ❗
奥深い。牛蒡が出汁を複雑なる旨さにさせちょる。
麺はねぇ、正直どってことない「スーパー玉出」の激安20円とか30円くらいの中華麺だ。どころか千円以上の買物をしたから実質1円だ。だから、コシはゼロである。
しかしだ、途中から麺が汁を吸って、それはそれで旨かったりもする。

汁を一滴残らず飲み干す。
お陀仏、お陀仏。
もとい、成仏、成仏だね。

                        おしまい

 

シルバーベルベットの想念

 
2020年 7月20日

近鉄奈良駅から外に出ると、凄い夕暮れになっていた。

 

 
何かが起こることを予兆するかのような凄絶で美しい夕景だ。
何となく、きっと今日は良いことが起きそうだなと思った。

そういえばこの日は、連日マホロバキシタバの調査に動いている小太郎くんには休むようにと釘を刺したんだっけ。前の日も一緒に能勢で灯火採集をして神戸までプーさんを送って朝方に奈良まで帰って行ったしね。だから小太郎くんには言わずに一人で春日山の原始林に入った。言ったら、近くに住んでいる彼は絶対に来る筈だからさ。

今回はイチイガシの木が多い場所に糖蜜を噴きつけた。
目的は殆んど糖蜜トラップに誘引されないマホロバキシタバを何とかこの手で捕らえることだった。この時点では色んな人がトラップを仕掛けたのにも拘らず、飛来したのはこの2年でたったの2例のみだったのだ。マホロバの発見者としては、そこんとこは抑えておかないとカッコつかないからね。
ならばとマホロバの食樹として有望視されるイチイガシの大木が多くある場所で糖蜜を撒きまくってやれと考えたのだ。
ちなみに春日山原始林と奈良公園は採集禁止である。なので、許可はちゃんと得ている。

 

 
午後8時40分。
糖蜜トラップに見慣れない蛾が来ていた。
近づくと、懐中電灯の光に照らされたそれは、渋い銀色でギラギラと鈍色(にびいろ)に輝いていた。まるでラメが入ったかのような妖しい光を放っており、質感は高級なベルベットを思わせる。シルバーベルベット。銀狐の美しさだ。闇の中で想念が慄(ふる)える。
蛾はカトカラとヤママユの仲間しか採らない主義だが、渋カッコイイので採ることにした。それにオラって牽きだけは強いからさ。2匹目の泥鰌(どじょう)、又もや新種だったりしてね。そんな目論見も無きにしもあらずだった。

 

 
やはり渋カッケーや。
当然ながら名前は知らん。珍しいかどうかもワカラン。蝶のことはそこそこ知ってはいても、同じ鱗翅目である蛾のことは素人並みの知識しかないのだ。

♀っぽいなあ…。
確認のために裏返してみる。

 

 
腹の感じからすると、♀っぽいね。
そして、やっぱ裏は汚い。蛾に今一つ踏み込めないのは、この辺に理由があるのかもしれない。勿論、裏面が美しい蛾もいるけど、相対的には野暮ったくて残念な奴が多いのだ。上翅は蝶を凌駕する多種多様で魅力的なバリエーションに富むのに、下翅と裏面がねぇ…。

暫くして下から闇をノタ打つ懐中電灯の光の束が見えてきた。
体が硬化する。一瞬、死体遺棄に来た殺人鬼かと思った。こんな時間に、こんな太古の森へと入って来る者など普通はいない。いるとしたら、彼しか有り得ないだろう。そう願おう。

正体の主は、やはり小太郎くんだった。休めよなー、この野郎。虫小僧、底知れぬ体力と精神力だわさ。

小太郎くんに、さっきのシルバーベルベットを見せると、何たらかんたらと云う長ったらしい名前を言った。(`∇´)ケッ、新種じゃないと分かって、その場で脳が名前を消去する。また、くだらぬモノを採ってしまったよ…。
彼曰く、無茶苦茶珍しいワケではないが、そこそこ珍しいらしい。特に関東方面では少なく、東日本の愛好家の間では評価が高いそうだ。だったら、まっ、いっか。

翌日、展翅するために羽を開いたら、下翅に黄色い紋がある。蛾って下翅が無紋のものが多いから、ちょい驚く。

 

 
といっても、黄色い紋は淡く、鮮やかではない。正直、あんまし綺麗じゃないよね。それに、夜に見た時みたいな妖しい光を放ってはいない。光の質とか当たり具合にもよるのかもしれない。ちょっいガッカリ。
まあいい。取り敢えず展翅すっか。

 

 
丸くて、お世辞にも形はカッコイイとは言えない。
ちなみに紫色の部分は、透明展翅テープに虫ピンの頭の色が映ってるだけで、実物にこうゆう色はない。

触角はカトカラみたく真っ直ぐにはしなかった。
カトカラと比して愛情が足りないので、邪魔くさかったのだ。

取り敢えず何者かを岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』で調べてみることにする。

 

 
結果、どうやらホリシャキシタケンモンとマルバネキシタケンモンのどちらかみたいだ。
でも形からすると、おそらくマルバネキシタケンモンだろう。
驚いたのは、♂と♀とでは触角の形が違うことだ。♂は触角が鋸歯状になるそうだ。
ということは、コヤツは思った通りに♀って事だね。

 
(マルバネキシタケンモン♂)

(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

 
オスとメスで触角の形が違うといえば、ヤママユの仲間が思い起こされるが、ヤガ科にも居るのね。
後翅の黄色い紋が大きいのは、たぶん異常型かと思われる。

種の解説に戻ろう。
基本的な斑紋はホリシャと同様だが、より変異の幅があり、前翅外横線と亜外縁線の間が広くて灰白色を帯びる個体も見られるそうだ。
前翅は丸みを帯び、ホリシャのように翅頂部は突出しない。腎状紋内側に沿う黒条は弧を描き(ホリシャは直線的)、前翅後角にある白斑はホリシャよりも発達する場合が多い。後翅中央の黄色紋はやや細く、縦長になる(ホリシャは横長で縦に短くて丸みを帯びる)。

比較のためにホリシャキシタケンモンの画像も貼っつけておこう。

 
(ホリシャキシタケンモン)

(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

 
左が♂で右が♀である。同じく♂は触角が櫛状だ。
裏面にも明確な違いがあるようだが、以下のサイトに詳しいので、気になる方はそちらを覗いてみて下され。

http://yokonami.web.fc2.com/4kisitakenmon.html

 
【分類】

ヤガ科(Noctuidae)
ケンモンガ亜科(Pantheidae)
ウスベリケンモン属(Trisuloides)

以前はホリシャキシタケンモンと一緒くたにされていたみたいだが、1976年に別種だと判明し、分離されたそうだ。
学名の記載者名は”Sugi”となっているから、たぶん蛾界に多大な功績を残された杉 繁郎氏の慧眼だろう。

 
【学名】Trisuloides rotundipennis Sugi, 1976

属名の後半の”loides”は「のようなもの、みたいな」という意味だが、前半の”Trisu”が分からないから何みたいなのかが不明。対象物がワカランのだ。ラテン語だと「3」に関係する言葉に使われることが多いようだけど、そこで思考は止まってしまう。カトカラじゃないから、別にいいや。掘り下げる気力なしなのさ。
小種名は前半部は”rotundity”あたりが語源だろう。意味は「丸み(丸味)、円み(円味)」。
後半の”pennis”はチンポ❓一瞬そう思った。
けど、んなワケないと思って調べてみたら「penna=羽根」とゆうのが出てきた。おそらくコレだろう。「丸い羽根」ならば意味が通る。語尾の”is”は多分ラテン語の女性形で、形容詞の語尾変化だろう。

 
【開張】♂35〜40mm。♀40〜52mm

何とオスとメスとで大きさまで違うのね。ちょっと驚き。
触角が鋸歯状だというのもあるし、来年はオスも見てみたいもんだね。

 
【分布】

伊豆半島以西の太平洋側、四国、九州。
国外では朝鮮半島南部に記録がある。

 
【成虫の出現期】

『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、5〜6月と9〜10月となっているが、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』には、6〜7月と9〜10月となっている。多分、岸田先生の方が正しいかと思われる。今回の個体の鮮度状態からみれば、そう言わざるおえない。それに『みんなで作る日本産蛾類図鑑』の方は、情報の一部に正確性を欠く場合が多いからね。だから鵜呑みにしない事にしてる。
とにかく発生は年2化ってことだね。

 
【成虫の生態】

ネットや図鑑で生態について書いてあるものは見つけられなかったが、糖蜜トラップに寄ってきたんだから、間違いなく樹液には飛来するだろう。
ネット情報だと灯火採集でも飛来しているから、走光性もありそうだ。
読んでいないが『ホリシャキシタケンモンとマルバネキシタケンモンの生活史(2020 宮田)』という論文があるので、そこに詳しく書かれているかもしれない。

 
【幼虫の食餌植物】ブナ科コナラ属:イチイガシ

だからイチイガシの森に居たんだね。納得だ。同時に関東方面では稀少な種という謎も解けた。イチイガシは関東方面では殆んど見られないからね。ということは、マルバネは関西でも何処にでもいるという種ではなさそうだ。イチイガシは九州を除き、西日本でもそう多い木ではないのだ。関西だと群生しているのは奈良公園及び春日山原始林内と紀伊半島南部の一部にくらいしかない。
ちなみに近縁のホリシャキシタケンモンの食樹は同じブナ科コナラ属のウバメガシだとされている。なので分布は、より沿岸部となるようだ。ウバメガシは海岸によく群生して生えてるからね。となれば、ホリシャの方が生息域は広いと思われる。実際に大発生した記録も有るようだしさ。マルバネの方が少ないから、長年混同されてたんだね。

幼虫はヤガ科には珍しく刺毛のある毛虫型。
キモいので、画像は貼っつけないけどさ。

                       おしまい

 
追伸
タイトルのモチーフは鬼才デビッド・リンチの映画『ブルーベルベット』。闇をこれだけ意識させられた作品は他にない。ハリー・ディーン・スタントンのお菓子のピエロのシーンが特に秀逸だ。

この日、念願のマホロバキシタバも糖蜜トラップにやって来た。やはりあの凄絶な夕景は予兆だったのかもしれないね。

 
【マホロバキシタバ】

(2019年 7月 奈良市)

 
マホロバに関しては当ブログに『まほろばの夏(マホロバキシタバ発見記)』と題して書いた文章など数編があるので、興味がござる方は探して下され。

 

超簡単❗胡瓜の麺つゆ漬けだもしー

 
TVでキュウリ農家の人が毎日食ってて、超簡単だという料理を紹介してた。
麺つゆを使うというのが盲点だったので興味が湧いた。で、胡瓜がたまたま安かったのて作ってみることにした。

レシピはキュウリを乱切り、生姜と青じそを細切りにして麺つゆをブッかけて冷蔵庫で一晩おくだけ。以上。
なんだけど、生の生姜がないのでチューブの生姜で代用した。あっ、麺つゆもないので白だしで代用したわ。で、希釈タイプゆえにそのままだと濃いので適当に水を足して調整した。

 

 
翌朝、土鍋で白飯を炊いて食った。
マジ、何ぼでも飯が食える。酒のツマミにもなりそうだ。
でも、よくよく考えてみれば、麺つゆで作ったワケではない。甘くないから、かえってワシの口に合っただけなのかもしれない。だから麺つゆで作って旨くなくても、悪いけどワシ、責任もたないんだもしー。

                       おしまい

 
追伸
ずっと魚介類つづきだったので、野菜の話にしてみた。

 

帰ってきた自家製イクラの醤油漬け

 
しつこくイクラの醤油漬けの話である。
スマン、見逃してた画像が出てきたのじゃよ。それにストレージが溜まっているので画像を消したいゆえ、書く。

 

 

 

 

 
結構、お茶碗1杯くらいのミニイクラ丼を作っていたのである。最初はシンブルだったけど、飽きてきたので茗荷なんかを加えたりもした。茗荷とイクラは合うと思う。
 
イクラ丼を食ってて、イクラの量が減ってきたので、こんな事もした。

 

 
ここに新たなものを加えたのである。

 

 
半熟玉子を加えてみたのさ。
コレはコレで旨かったりもする。そもそも半熟玉子に合わない食材ってあんのかね?旨くて当たり前だよね。

すっかり忘れてたけど、こんな画像もあった。

 

 
イクラとマグロの丼である。
海鮮丼では両者がトッピングされる事はあるが、この2つだけの組合わせは有りそうで、あまり見掛けないような気がする。

味は思ってた以上に旨い。サーモンとの親子丼に比肩するかもしんない。

来年も自家製イクラの醤油漬けは作るとは思うけど、1回は筋子の醤油漬けも作ろっかなあ…。

                        おしまい

 

銀ダラの煮付け

 
9月半ばに、高島屋で銀ダラが売られているのを久し振りに見た。値段は微妙な450円だが、銀ダラにしては安い方だ。最近は滅多に会えないことだし、買うことにした。

 

 
昔はどこのスーパーでも売ってるような大衆魚だったのに、今や高級魚だ。なのでスーパーで見掛けることは殆んどなくなった。だから銀ダラと言っても、もはや若い人などはワカンないだろう。オジサン、オバサンも銀ムツやメルルーサとゴッチャになっている人が多いかもしれない。
かく言うワタクシも、時に銀ダラと銀ムツの区別がつかなくなることがある。販売されてても誤表記も多く、パッケージには銀ダラと書いてあっても、ホントは銀ムツだったりする事は結構あるらしいのだ。その逆もまた然りである。
どちらも大型魚ゆえ、切り身で売っているから区別するのは難しいのだ。どうせ消費者なんぞバカだから区別でけんと思ってんだろね。
たぶん皮で見分けがつくと思われるが、恥ずかしながらどっちがどうというのを思い出せないことが多い。まあ両方とも高級魚で、味も美味いから怒るほどのことはないんだけどね。でもあえて言うならば、銀ムツの方が好きかなあ。

銀ムツ(学名 Dissostichus eleginoides)は、マジェランアイナメ(マゼランアイナメ)の事で、別名オオクチとも呼ばれており、スズキ目ノトテニア科の”Dissostichus属”に分類され、南極周辺の深海に生息する肉食性の大型深海魚。市場では銀ムツの他にメロとも呼ばれる。いや、最近はメロ(銀ムツ)と書かれていることの方が多いか。銀ムツはムツじゃないから偽装だとゆうことで、お上から禁止のお達しが出た筈だもんね。
またメルルーサ(属名 Merluccius)は、タラ目メルルーサ科メルルーサ属の総称で、ヨーロッパ、アフリカ西岸沖、北米太平洋岸沖、南米大西洋岸・太平洋岸沖、ニュージーランド沖等大陸棚の縁辺部に分布する大型魚。英国の国民食でもあるフイッシュ&チップスやマクドナルドのフィレオフィッシュの材料としても有名である。あっ、でも高騰が原因で近年は別な魚が使われているらしいけどね。
一方、今回の主役の銀ダラ(学名 Anoplopoma fimbria)は、カサゴ目ギンダラ科に属し、別名ナミアラ・ホクヨウムツとも呼ばれる肉食の大型深海魚である。市場魚貝類図鑑には「同属の他種の登録はありませんでした」と書いてあったが、Wikipediaにはギンダラ科には他にアブラボウズが含まれ、ギンダラ属はこの2種だけで構成される。ちなみにアブラボウズも旨い。ただしコヤツも高級魚クエに偽装されて市場に出回るケースが結構あるそうだ。
ようは3つとも分類が目レベルで違うから、かなり掛け離れた間柄というワケだ。つまり親戚でさえない、完全な他人の関係なのだ。
分布は駿河湾、北海道内湾以北からアリューシャン列島、アメリカ・カリフォルニア州沿岸までの北太平洋だが、分布密度には偏りがあり、アジア側では密度が低くて、アラスカからカナダ沖合では高い。
和名のとおり外見がタラによく似ているが、タラではなくアイナメやホッケに近い魚である。ちなみに、タラはタラ目タラ亜科、アイナメとホッケはカサゴ目。銀ムツもムツとは名打ってるけど、全くムツとは無縁の魚だ。だから偽装販売ということで大問題になった。銀ムツの表記が禁止されるようになり(銀ダラはナゼだかセーフ。たぶん和名がそもそもギンダラ属だからかも)、外国の深海魚だとバレて人気がダダ下がりになった。そしてスーパーの店頭から消えていった。銀ムツだと美味しそうだけど、メロ(銀ムツ)なんていう名前の得体のしれないものは誰も買わんのじゃよ。

さて御託はこれくらいにして、どう調理してこましたろか❓
塩焼きとか西京焼きも考えたが、何となく簡単そうなイメージの煮付けにすることにした。

①先ずは臭みを取るため、銀ダラをザルやまな板に乗せ、布巾やペーパータオルを被せて熱湯を回しかける。布巾を被せるのは皮を剥がれにくくするためである。面倒だからワシはそのまま熱湯を掛けたけどさ。

②鍋に水と酒を同量(40ccくらいずつ)、砂糖大さじ1/3 味醂少々、醤油大さじ1を入れて火にかける。火は弱火でよろしかろう。
甘いのが好きじゃないので、砂糖と味醂は控えめにした。世間一般の甘い味付けの煮付がお好きな方は増量されたし。

③そこに銀ダラを静かに入れる(沸騰してなくてもいい)。落し蓋(クッキングペーパーでも可)し、鍋の蓋もして強めの弱火で7〜10分ほど煮る。自分は熱が入り過ぎるのは嫌なので、7分経ったら火を消し、あとは3分放置の予熱方式にした。

 


 

 
厳かに有田焼の皿に盛って出来上がり。
今回は上に貝割れを乗せたが、青物は小松菜などをサッと煮て添えた方が良かったかもしれない。

(•‿•)脂が乗ってて旨いなあ。
あれっ❗❓、でも記憶の中ではもっと脂が乗ってて、口の中ですぐ溶けたような気がするぞ。
アレは銀ムツの方か❓
えっ、じゃあ銀ダラと銀ムツのどっちが美味いのじゃ❓
 
ここで銀ダラくんの事は冒頭の記述以上には知らないことに思い至る。今度こそ脳ミソにインプットして銀ダラか銀ムツか曖昧的な見識を払拭したい。銀ダラと銀ムツのどっちが美味いかも知りたい。再度、ネットで調べなおそう。

ウィキペディアと、いつもお世話になってるいる『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』の記述を参考にして編集、まとめてみよう。

『ギンダラ(銀鱈)』
体長は1mを超え、最大120cmになる。重量は13kgにもなる個体もある。肉食性で、魚類、甲殻類、頭足類などなんでも食べる。きっと旨いもん食ってるから旨くなるんだね。
寿命は20年以上とみられるらしい。へぇー、長生きなんだ。

 
(銀ダラ)

(出典『clovegarden』)

 

(出典『Mマート』) 

 
今さら言うことでもないが、タラに見た目が似ていて銀色だからギンダラ(銀鱈)と名づけられたのだろう。ホントに銀色かと言われると、微妙だけどもね。
タラのように下顎にヒゲはなく、背鰭が2基しかないことでタラ類とは区別できるという。ちなみにタラの背鰭は3基、アイナメやホッケの背鰭は1基である。
とはいえ、切り身で売ってるから、こんなこと知ってもあまり意味はないな。

英名は、Sablefish, Black cod。
「Sable」はヨーロッパからシベリアに生息するクロテン、またはその毛皮のことのようだ。「cod」はタラのこと。欧米でもタラに似ているという認識があるんだね。いや、輸入業者はそれを知ってたがゆえに、この和名をつけたのかも。

比較のために銀ムツとメルルーサの画像も載っけておこう。

 
(銀ムツ)

(出典『Wikipedia』)

 

(出典『Yahoo!ショッピング』)

 
鱗を除去した切り身の皮を見ると、銀ダラと比べて白くて網目模様の目が粗くて線が太い。そういや、こんな感じだったわ。やはり見分けるポイントは、この皮だね。

 
(メルルーサ)

(出典『ユーラシア大陸はての定置網』)

 

(出典『Mマート』)

 
銀ダラよりも皮が白く、銀ムツと比べて網目模様が薄くて細かい。また身が銀ムツや銀ダラのように白濁しない。この白濁は脂肪なので、だからそれがないゆえにメルルーサの味は淡白なんだね。
 
ここで「マルハニチロ」さんのブログから新たな事実が見つかった。
一部抜粋しよう。
「銀ダラもメロ(銀ムツ)と同様に買い付け競争の激化により、日本に輸入される量がすっかり減ってしまいました。今では高価な魚の部類といえるでしょう。
銀ダラの産地は、アラスカを主漁場とする米国がほとんど。これに若干のカナダ産が加わります。
FAO(世界食糧農業機関)の統計のグラフ見ると、1977年に200海里漁業専管水域が設定される以前は、日本の漁獲量が世界中の大部分を占めていましたが、その後、米国の漁獲量が世界の約9割を占めるようになっていることがわかります。」

どうやら銀ムツを見掛けなくなったのは、名前がメロになって人気が落ちたのではなく、高騰が原因で輸入されなくなったってワケね。昔は外国人はあまり魚を食べなかったから日本が魚資源を独占していたのだが、昨今はすっかり状況が変わったって事ね。寿司なんて世界的に流行らなければよかったのに。

銀ダラに話を戻そう。
特に大陸棚斜面と北東太平洋の海山付近の水深300-2000m程の深海の泥底に生息する。冬に産卵し、孵化した稚魚は浅い海で生活するが、成長するにつれ深海で生活するようになる。
主な漁法は底引き網、延縄。漁期は周年。
大きな魚だけに個体のまま出回ることはほとんどなく、販売時には切り身となっている。肉は白身で脂肪分が多い。煮付け、塩焼き、粕漬け、味噌漬けなど様々な料理で食べられている。

『市場魚貝類類図鑑』での評価も高い。

魚貝の物知り度 ★★★ 知っていたら通人級
味の評価度 ★★★★★ 究極の美味

究極の美味とまで評価しているじゃないか。
ここからは、主にそのぼうずコンニャクさんの『市場魚貝類図鑑』の力をお借りして再編集して書こう。

(地方名・市場名)
ナミアラ。北海道ではホクヨウアラ、ホクヨウムツとも呼ばれている。

(生息域)
海水魚。水深300〜3000mで見られる。
もともとアメリカで人気の高い食用魚だが、北海道、三陸沖などでも獲れる。しかし量的には少ない。。
当初は名前にあるようにマダラの代用品として鍋物用、煮つけ用に売られていた。当時としては脂っぽいところが嫌われて値段的にも安かった。また脂が強いところからムツ(ムツ、クロムツ)の代用品(偽物)として流通していた時代もあった。これが近年の脂嗜好から、後に高騰した。
最近では冷凍ドレス(頭と内臓を除いたもの)やフィレ(三枚下ろし)までも高級となり、スーパーから姿を消した。
アラスカ、カナダなどでは養殖されていて、刺身という新しい用途も生まれている。
マジか❓刺身は食ったことないから、食いたいよなあ。

(市場での評価)
主に冷凍ドレスがカナダやアラスカから流通する。古くは安い魚であったものが、近年は高騰している。特に生は高級。カナダなどからは養殖ものがチルドで輸入されてくる。
へぇー、養殖もあるんだね。ガンガンに輸入してくれんかのう❓ワシ、刺身が食いたいんじゃあ。

(選び方)
冷凍ものは変色、ドリップしていないもの。解凍されたものよりも、冷凍状態のまま購入したほうがよい。

(味わい)
生の旬は秋から冬。鱗は細かくて剥がれやすい。皮は厚みがあり、骨はあまり硬くない。透明感のある軟らかい白身で白濁して脂が混在している。熱を通しても固く締まらない。
珍しいことに液体を介した料理法、煮る・汁などにも、焼くにも向いている。あえて不向きなものを挙げるとソテーだろうか。

(料理法)
ーギンダラの塩焼きー
できれば国産で冷凍していないものを使いたい。切り身にして振り塩をして少し寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。焼き始めるとすぐに中から脂が染み出してきて、表面がかりっと香ばしく揚げたような状態になる。その内側には独特の風味を持つ脂が液化している。この表面カリッとして中がジューシーな味わいは無類のうまさである。

ーギンダラの西京漬(白味噌漬)ー
切り身に振り塩をする。少し置き、表面に出て来た水分をペーパータオルで拭き取る。これを白味噌・味醂・酒・砂糖を合わせたものに漬け込む。甘めがイヤなら砂糖は加えない。じっくり焦げないように焼き上げると、白味噌の風味と味醂・砂糖の甘味があいまって魚類屈指のうまさだ。

ーギンダラの煮つけー
冷凍切り身などで最も親しまれているのは煮つけである。食堂や居酒屋などでも定番ものとなっている。切り身は湯通しする。冷水に落として表面のぬめりなどを洗い流す。これを酒・砂糖・醤油で煮る。酒・醤油でも酒・味醂・醤油など味つけはあくまで各人の好み、もしくは地域性を大切にしてやってほしい。

ーギンダラのしゃぶしゃぶー
冷凍していない国産ものが手には入ったらぜひお試し願いたい。三枚に下ろして皮を引く。刺身状に切り、昆布だし・酒・塩で味つけしたなかで振り、好みの火の通り加減で食べる。国産なら中は生という感じがいい。野菜などは最低限にするといいかも。

ーギンダラの刺身ー
近年は養殖され、チルドの状態で入荷してくる。これは刺身になる。味わいはまさにトロ。白身の大トロといったところでマグロとの違いは酸味のあるなし。また国産の冷凍していないものも刺身になる。脂で真っ白で口に入れると溶ける。この脂の強さのなかに適度な食感と魚らしいうま味がある。

ーギンダラのフライパン照焼ー
ギンダラの切り身の表面の水分を丁寧に拭き取る。小麦粉をまぶして脂でじっくりとソテーする。一度取り出してフライパンに味醂・酒・醤油、好みで砂糖を加えて少し煮つめたところに切り身を戻す。ソテーした切り身に煮汁をソースとしてかけてもいい。ソースを最小限にすると御弁当にも使える。

ーギンダラのフライー
冷凍ギンダラの皮を取り、水分をよく取る。塩コショウをして小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせてパン粉をつけて表面がカリッとするように揚げたもの。温かいうちに食べると中はジューシーに表面は香ばしくて、非常に美味。

なるほどね。どれも旨そうだ。フライなんかは食ったことがないから試してみてもいい。しゃぶしゃぶは惹かれるなあ。王道の塩焼きも捨て難い。また見つけたら、やってみよう。

銀ムツについても同じように調べてみたが、ここでは割愛させて戴く。銀ムツが手に入った時にでもまた書こうかと思う。

さて、さて。銀ダラと銀ムツのどちらが美味いかという話だが、各々の嗜好の違いもあるので、あくまでも傾向として述べておく。
おおむね銀ムツの方が、より脂が乗ってて味が濃厚という意見が多いようだ。ようは旨いという評価だ。
ハッキリ言って、自分も銀ムツの方が美味いと思う。
参考までに言っておくと、値段も銀ムツの方がやや高く、流通量も少ないようだ。
それにしても両方とも高い。ザッと調べた限りでは100gで500円〜1000円もする。平均すると銀ダラが600〜700円、銀ムツが700〜800円といったところだ。たぶん昔と比べてどちらも5〜6倍以上の値にはなってるだろう。
ちなみにメルルーサは100〜300円くらいでした。

銀ムツ、もし売ってたら絶対買おっと。
照り焼きかなあ、塩焼きかなあ…じゅる。

                        おしまい

 

イクラ雲丹丼

  
タイトルには書いていないが、「2020年 自家製イクラの醤油漬け」シリーズの第7弾にして最終回である。
なワケで、ボスキャラで締めさせていただく。

本来ならば、世間一般的な呼び名であり、言いやすくもある「雲丹イクラ丼」とすべきであろう。がしかし、あくまでも本シリーズはイクラがメインなので、こうゆうタイトルとあいなった。

 

 
赤と黄のランデブー(≧▽≦)

 

 
イクラが主役と言っているのにも拘らず、ウニが前に来とるやないけー。
いかん、いかん。丼をズラす。

 

 
斜めの方が美味しそうだし、何だかアホらしくなってきたので、ここでやめておく。どうせヴィジュアル的にはイクラを前に持ってくるよか、ウニを前に持ってきた方が訴求力は強い。所詮、貧乏人は雲丹にひれ伏すのだ。ちなみに言っとくと、ウニは北海道産のエゾバフンウニである。
さらに言っとくと、ついウニの肩を持ってしまったが、ウニ単独のウニ丼よりも、雲丹、もといイクラ雲丹丼の方が遥かに旨い。これは何度も実験しているので断言できる。ウニ単独よりも、イクラと合わさった方が相乗効果があるってことだ。

作り方は今さら言うほどの事もなかろう。
ただ酢飯にイクラとウニを乗せるだけだ。一人暮らしの大学生でも失敗しないレベルだ。
あっ、海苔は下に隠してるけどね。アホはアホなりに学習しておるのだ。
イクラだけでなく、ウニも海苔との相性が良い(但し、鮮度が抜群に良いものは海苔も邪魔)。だから前回、前々回の鮭の親子丼、イクラしらす丼とは違い、海苔は必須アイテムなのだ。

でもさあ…、度々この海苔問題については宣(のたま)ってきたが、ホントは海苔を下に仕込むのも、上からかけるのも間違いである。
一番正しいのは、炙った海苔は別にして、食べる度ごとに海苔の上に酢飯とイクラ&ウニを乗っけて食べるのが極めて正しい食い方だ。そうすれば、海苔のパリパリ感と香りが楽しめるからである。エッジが全然ちゃう。
ただ面倒くさいから、愚か者はつい全面的に合体させてしまうのである。この辺がまだまだ凡人であり、真のエピキュリアンになれないたる所以であろう。

少しだけウニ側に醤油をかけて、あとは箸を持って厳かに構え、イクラだけ→ウニだけ→イクラ&ウニの順でワッシワッシと怒涛で頬張る。それを一心不乱にループで繰り返してゆく。
(´ω`)至福だ。
これ以上、何も言うことはない。

                       おしまい

  

イクラしらす丼

 
タイトルには書いていないが、「2020年 自家製イクラの醤油漬け」シリーズの第6弾である。もうイクラ男だな。

酢飯の上に釜揚げしらすと自家製イクラの醤油漬けを乗っけて、大葉を散らして出来上がり。

 

 
あまり試したことのない組み合わせだが、中々に旨い。
シラスとイクラの相性は根源的によろしいとは、薄々感じてはいたけどね。
あー、温泉卵をトッピングしても良かったかもしんないな。
絶対に美味いという確信があるから、また来年にでもチャレンジしてみよっと。
来年、覚えているかどうかはかなり疑わしいけどね。

 

                        つづく