2019’カトカラ2年生 其の2(3)

 

  vol.19 ウスイロキシタバ

  『2020′ 象牙色の方程式』

 
2020年 6月12日

夏の扉が開いた。
日増しに陽射しも強くなり、ここのところ蒸すような暑さが続いている。いよいよ、今年もカトカラの発生が本格的に始まるんだなと思った。

去年、ウスイロキシタバは採れたものの、たった5頭のみだった。しかも新鮮な完品個体は1つも採れなかった。それにその生態、謂わば象牙色の方程式もまだ解けていなかった。今年はその答えも見つけたい。
問題はいつ先陣を切るかだ。文献に拠れば、九州や四国だと6月の上旬には発生するらしい。近畿地方ではどうなんだろ? 情報量が少ないので何とも言えないところがあるが、おそらく6月上旬の後半辺りには発生しているものと思われる。但し近年は気候の温暖化に伴い、虫たちの発生も年々早まっていると言われている。かといって春先の天候によっては発生が遅れる年もあったりするから判断が難しいところではある。今年の蝶の発生は、途中からやや遅れているとも聞いているしね。

去年、最初に採った日付が6月19日。鮮度はまずまずの♀だった。しかし、羽にスリットが入っていた。そこから逆算すると、フライング無しで新鮮な♂をゲットしたくば、その1週間前が頃合いではないかと考えた。そんなワケで、満を持してこの日に開戦することを早々と決めていた。
テキトーな性格なわりに意外と慎重なのは、単に何度も行きたくないからだ。これはあまり言った事かないけれど、金も労力も最低限で何とかしたがる効率重視の人でもあるのだ。

しかし当日にネットで天気を確認したら、夕方から夜にかけての予報は微妙だった。各社まちまちで、夕方から雨のところもあれば、そのままずっと曇りとしているところもあったりする。また雨としている予報にしても、丸っきり同じではなく、それぞれ降る時間帯にズレがある。予測雨量もバラバラだった。1mmのところもあれば30mmのところもある。それだとポツポツとザァーザァーくらいの違いがある。出掛けるとなると、博奕だろう。悩むところだ。
しかし、日が経てば経つほど彼女たちの羽はボロくなる。そろそろ行っとかないとヤバい。賭けではあるが、出掛けることにした。場所は去年と同じ武田尾渓谷。先ずは実績のあるところで確実に仕留めようという手堅い作戦だ。

車窓からずっと空の様子を見ていたが、福知山線 川西池田駅辺りで不穏な感じになってきた。北側の一部が帯のような黒雲に覆われている。悪意の塊のような不気味な雲だ。不安がよぎる。でもここは祈るしかない。現地が何とかあの雲から逸れることを願おう。

駅を降りて、歩き始める。
けんど、おら自慢のお天気センサーは判断を保留している。この先の天気が読めないのだ。おいらの肌で天気の変化を敏感に察知するセンサーは、自慢じゃないが精度が高い。だから日本でも海外でも雨でズブ濡れになったことは殆んどない。事前に察知して、早めに避難するからだ。それでも今回は何とも言えないという状況だ。この先は夜だし、森の中だし、空の微妙な変化がワカラン。

黒雲は微妙な位置にある。ここから外れてはいるが、雲の流れによっては、いつ近づいて来てもおかしくない位置関係だ。
『お願いだから、あっち行ってね。』と小さく呟く。

アラカシの森には午後7時15分くらいに着いた。
日没直後の仄かに残る光のなか、素早く網を組み立て、ヘッドライトを装着。毒瓶を両ポケットに突っ込む。網と糖蜜トラップを片手に、もう片方に懐中電灯を持って準備万端、森に入る。

 

 
さあ、夜会の始まりだ。
今宵も闇の世界で戯れよう。

去年、樹液が出ていた木には何もいなかった。どうやら今年は樹液が渇れているようだ。まあいい、ワシのスペシャルな糖蜜トラップなら何とでもなる。その威力、今回も存分に見せてくれようぞ。
( – -)/占==3 シュッシュラシュッシュッシュー。
昨年の記憶を頼りに、実績のあった木を中心に糖蜜を吹き付けてゆく。

午後7時28分。
早くも糖蜜トラップに飛来した。特徴的な上翅のデザインと色とで、すぐにウスイロだとわかった。この色の上翅のカトカラはカバフキシタバ(註1)とコヤツくらいなのだ。けど、両者は羽のデザインが全く違うし、発生時期も違う。同時期に見られることは、ほぼほぼ無いから間違えようがない。

毒瓶を上から被せるか、網で採るか迷ったが、ここは確実にゲットする為に網を選択した。毒瓶を被せる方法は未だままならない。どうしても殺気が出てしまい、相手にそれが伝わるようで結構逃げられる。下手に慎重になり過ぎてるところもヨロシクない。恋愛でも何でも自信が無い時は上手くいかないものだ。世の中、大体の事柄は心の有りようによって正否が決まるのだ。

網をターゲットの下まで持っていって軽くコツンとやり、驚いて飛んだのを⚡電光石火で左から右へ払うようにして振る。

(•‿•)難なくゲット。
(ΦωΦ)フフフ…。去年とは違うのだよ、去年とは。幹にいるカトカラを採る手法は去年のこの時期よりも格段に進歩しておるのだ。前の網ごと面で叩く方法でも高打率だったが、今やこの方法で百発百中の域だ。

 

 
やはり、上翅が美しい。コントラストが効いたオシャレなデザインだ。だが、羽が僅かに欠けている。

裏返す。

 

 
腹の感じからすると、どうやら♀だね。
♀で、やや欠けているとなると、やはり発生は6月上旬の後半には始まっていた可能性が高い。出動がやや遅かったか…。
とはいえ、幸先のいいスタートだ。このまま雨さえ降らなきゃ、タコ採りじゃねえの(◠‿・)—☆

他のキシタバたちもやって来た。
フシキ❓それともコガタ❓(註2)
けど今年はまだどちらも見ていないので、判断に迷う。フシキの季節の真っ只中だが、コガタもそろそろ出ててもおかしくない時期だ。見た感じでは、たぶん両方混じっていそうだ。どっちもべつに要らないけど、確認の為に採ってみることにする。

楽勝でゲット。
ಡ ͜ ʖ ಡデヘデヘのスカートめくりみたく、羽を持ち上げれば区別がつくのだろうが、頑な感じで閉じているので、裏返す。

 

 
黒っぽいね。フシキはこんなに黒くないし、もっと明るい黄色だった筈だから、おそらくコガキシタバだろう。

8時8分。
2頭目が飛来した。さっきとは違う木だが今度も糖蜜トラップに寄ってきた。ワシのスペシャル糖蜜、絶好調やん(^_^)v

これは毒瓶を直接カポッと被してゲット。死ぬまではタイムラグがあるので、地面に転がしておく。
移動を始めたと同時にポツリときた。雨かと思ったら、もうポツポツきだした。マイセンサーがヤバいと言っている。雨粒が大きめなので、コレは来るなと思った。慌てて折り畳み傘を取り出す。時は急を要する。毒瓶を回収しに戻る寸暇が仇になりかねない。地面に放置したまま、その場をマッハで離脱した。
トンネルに逃げ込んだところで、バケツをひっくり返したような激しい雨がやって来た。ギリ、セーフといったところだ。
雨は、あっという間に辺りを水浸しにしてゆく。無情の雨だ。これからという時に…何でやねん( ;∀;)❓ 恨めしげに空を見上げる。

恨めしいといえば、怨めしや〜である。
ここに着いた時から背後のトンネル内の漆黒の闇が気になってしかたなかった。引き摺り込まれそうな深く濃い闇で、尋常ならざるくらいにメッチャ怖い(´-﹏-`;)

 

 
暗闇の一部が、突然ぼおーっと白くなり、白い着物の幽霊が浮かび上がってきたりして…。或いは、奥からぬらりと此の世のモノならざる奴👹が出てきそうで、怖気(おぞけ)る。そして、想像力はどんどん逞しくなる。もし鎌をもった鬼首(おにこべ)おりんが高速で走ってでも来たら、ε=ε=ε=ε=ε=┌(TOT;)┘うわ〜ん、涙チョチョギレで逃げねばならぬ。捕まったら、確実に此の世とおさらばだ。見たくないけど、何度も後ろを振り返る。

雨は40分程で小雨になった。これはセンサーで予測してた。このまま止むだろう。
怖えし、出る。

森に戻る頃には、雨は完全にやんだ。
ゴールデンタイムを棒に振ったが、雨上がりには活性が入ると聞いたことがあるし、ここは一つ期待するとしよう。
でも気温はだいぶ下がったから、それがどう影響するかだ。たとえダメだとしても、それも一つの結果であって、己の経験値にはなる。けっして無駄にはならないだろう。こんなこと言えるのは、既に2つゲットしているから心に少しばかり余裕があるのだ。

先ずは転がしていた毒瓶を回収する。
中に水が侵入しているのではないかと心配していたが、大丈夫だった。胸を撫でおろす。そうゆう惨事が起こると、流れは一挙に悪い方向へと行きかねないからね。

 

 
今度も♀だった。もしかして、もう♀の時期❓だとしたら、♂は既に擦れてたりして…。
どちらかと云うと、♂が欲しいのになあ。フライング覚悟で、もっと早くに訪れるべきだったかもしんない…。

9時過ぎに1頭飛んできたが、懐中電灯を下に置いてヘッドライトを赤外線に切り替えてる隙に忽然と消えていた。
他の蛾もボチボチとしか飛んで来ないし、特に活性は入っておらんようだ。

9時40分過ぎに漸く1頭飛んできた。
(-_-メ)待たせやがって、次は何があってもシバいたるわい。

 

 
(ノ∀`)アチャー。網で採ったゆえ、取り込みにやや手間どったせいか、背中の毛が抜けとる。(-_-メ)チッ、落武者になっとるやないけー。
しかも、♂っぽくねえか?

裏返した。

 

 
腹を見ると、やはり♂だね。
クソー、折角の♂だったのに…。ガックシやわ。
けどまあいい。鮮度は悪くない。とゆうことは、まだまだチャンスはあるって事だ。ここからダイナマイト打線💥爆発といこうではないか。

(ー_ー゛)……。
だが、後が続かず、この日はこれで終わりだった。
ライトトラップならまだしも、糖蜜採集に雨上がりはヨロシクないようだ。糖蜜が流れるしさ。また一つ勉強したなりよ。

翌日、この日に採った個体を展翅した。
先ずは♂から。

 

 
やっぱり、シッカリ背中が禿チョロけておる。
よほど腹の毛を移植してやろうかと思ったが、秋田さんに叱られそうなのでやめた。

 
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♂】

 
ハゲちょろけなので裏展翅しようかとも考えたが、表にした。しかも、蝶屋的な展翅。触角をV字にしてやったわい(笑)

 
【同♀】

 
今度は蛾屋的な展翅にした。
この中間を目指そうかな…。どうせ、どっちがいいのか途中でワカンなくなるんだろうけどさ。

 
【♀裏面】

 
3つめは裏展翅にした。鮮度が良いものを早めに裏展にしておこうと思ったのだ。

ウスイロを裏展翅するのは初めてである。
表は象牙色なのに、裏は明るめの黄色なんだね。他のカトカラとはデザインの印象がだいぶ異なる。蛾の場合、図鑑でさえも大概は裏面が載せられていないが(註3)、同定するにあたって裏面は重要である。無視できない。表よりも違いがハッキリ出たりするからね。
黒帯が細くて、黄色い領域が広い。色も、他のキシタバと比してやや薄めの黄色だ。ここまで黒帯が細い種は他に見た記憶が無い。その形もかなり変わってる。これだけ黒帯が細くて線が単純なのは、たぶん他にはヤクシマヒメキシタバ(註4)くらいしかいないだろう。実物はまだ見たこと無いけどさ。
 

2020年 6月15日

完品の♂を求めて再度武田尾渓谷へ。
そして、初のライトトラップも試みた。小太郎くん曰く「ウスイロは樹液採集よりもライトトラップの方がジャンジャン採れますよ。」と聞かされていたからである。

7時45分。無事点灯。

 

 
とはいっても、誠にもってショボい屋台でおま。
けど、高出力UV LEDライトというから期待してみよう。結果が良ければ、軽いし点灯時間もそこそこ長いようだから充分な戦力になる。

ライトトラップ設置後に糖蜜トラップを撒く。設置にそんなに戸惑ったワケではないが、散布はこないだよりも30分ほど遅れた。だったら早よ来いよという話だが、性格に難ありなので仕方がないのである。いい加減でナメた性格なもんで、この前と同じ時間に家を出たのさ。基本は、なあ〜んにも考えてないんである。

この日は8時15分に最初の飛来があった。
寄ってきたのは糖蜜である。因みに前回に渇れていると言った木は復活。少ないながらも樹液が出始めていた。

 

 
♀っぽい。(´-﹏-`;)ガッカリだよ。
メスが要らないワケじゃないけど、オスが欲しいんだよー。
やっぱもうメスの時期に入っちゃってるのかなあ❓

9時前後に活性が入って、連続で飛んで来た。
前回は途中から土砂降りになったので、飛来時間の傾向はまだハッキリとは掴めていない。とはいえ。特別顕著な傾向は無いとみる。

 

 
またメスだな。
(;´Д`)おいおいだよ。

ならば、これはどっちだ❓↙

 

 
オスっぽく見えるけど、何か段々ワカンなくなってきた。
ウスイロは他のキシタバみたく雌雄の腹の長さや太さが明らかに違うワケではないようだから、夜だと今イチ同定に自信が持てない。オスの尻先の毛もボーボーじゃないしさ。

↓コヤツはどっち❓

 

 
腹が太いからメスに見えるけど、腹先にスリットが入ってないような気もする。老眼入ってきてるんで、細かいとこまで見えないよ、せにょ〜る┐(´(エ)`)┌

9時35分。
ライトトラップの様子を見に行くと、(⑉⊙ȏ⊙)あら、いるじゃないのよー💖
しかし証拠写真を撮ろうと近寄ったら、(ノ∀`)アチャー。飛んで逃げた。しかも暗くて何処へ飛んでったかワカンナイ。💦焦る。
(@_@)アッチャッチャー、そんなに遠くへ行ってない筈だと思って辺りを探しまくるが居なーい。
諦めかけたところで、(・o・;)ありゃま。灯台もと暗しのカメラの三脚に止まっていやはった。光にターンバックしちゃう虫の悲哀だね。紫外線の力には抗えはしないのだ。

 

 
しかし、よく見ると翅の先が欠けている。写真を撮って、そのまま放置。コヤツが呼び水とかになんねえかな?

飛来が止まって退屈なので、ウスイロキシタバの好む環境について考えてみた。
幼虫の食樹であるアラカシなんて関西でも何処にだってあるのに、どうして何処にでもいないのだろう❓ ワモンキシタバ(註5)みたく個体数は少ないながらも広く分布すると云うワケでもなさそうなのだ。自分の調べた限りでは記録された場所は案外少ない。
となると、アラカシの大木があるような古い起源の照葉樹林でしか生きられないのかもしれない。しかも、ある程度の広さの森を必要とするのかも。でもって、照葉樹林といえども小さい社寺林では生きていけなかったりして…。
だとしたら、理由は何だろう❓ もう少し掘り下げてみよう。
もしかしたら、幼虫は大木を好むのかもしれない。大木好きならば、ある程度の広さの古い森が必要だろう。でも待てよ。規模の小さい社寺林にも大木はある。でも広い森ならば、林内の中心部は乾燥しにくいのではなかろうか❓ 一方、もし小規模の社寺林には居ないのだとすれば、狭いゆえに乾燥しているのが理由とはならないだろうか❓
そういえば、紀伊半島ではヤクシマヒメキシタバの採集の折りに、ウスイロもよく得られるという。つまり空中湿度が高い場所を好むのではあるまいか❓
考えてみれば、ここも直ぐ傍には川が流れている。そして、森の中は、どちらかというと湿ってる。
整理しよう。ウスイロは本来、アラカシの大木があるような古くて広い照葉樹林に棲むカトカラで、加えて渓間など空中湿度の高い湿潤な環境を好む種なのではあるまいか…。

10時前後にまた糖蜜に飛んでき始めた。
飛んで来るとなると、何でこう示し合わせたように同時的にいらっしゃるのかね❓あんたらテレパシー持ちかよ。
蝶でもそうゆうことはよくあるんだけど、その細かい条件がサッパリわからへん。それ分かったら、楽だろね。けど、つまんなくなりそうだけどさ。解らないことは面白いのだ。

 

 
こりゃ完全にメスだな。尻先から産卵管が見えている。

10時20分にライトトラップに2頭目が飛来した。
しかし、上から毒瓶を被せようとしたら、敏感に察知して逃げよった。で、暗いから又どこ行ったかワカンなくなる。補助ライトとか必要かもなあ…。でも荷物が重たくなるから絶対買わないと思うけど。
まあ、そのうち戻ってくんだろ。でもって、暫く放ったらかしにしとけば落ち着くっしょ(・∀・)
けれど帰る時間を考えれば、あと10分とか15分くらいで消灯しなければならない。何せ初めてのライトトラップだ。後片付けは余裕をもって行いたい。慣れてないから何が起こるかワカランのである。そーゆーとこは慎重なのだ。ちゃんと考えてる。己の失態で帰れんくなるとか、そーゆーのは絶対にヤな人なのだ。

煙草を吸い始めたら、また戻ってきた。それを横目で見ながら、ぷか〜( ´ー`)y-~~。
しっかし、もし誰かがこんな怪しき青白い光の横で立ってる男を見たら、怖いだろなあ…。絶対、心臓が止まりそうになんだろなあ。誰か来たら、ワザと絶叫してやろうかしら。相手はチビるどころでは済まないぞ。阿鼻叫喚、その場で絶叫して脱兎の如く逃げるやもしれん。それを全速力で怒号の声を上げながら追尾するのだ。
想像すると、何だか笑けてきた。驚かす側に回れば、闇は怖くはないのである。闇への恐怖は、おのが自身の心の有りようにこそ在る。

アホな妄想をしている間にウスイロくんは落ち着いたようだ。
難なく毒瓶を被してゲット。

 

 
今度は羽は欠けていない。
裏返してみる。

 

 
しかも、こりゃ完全にオスだね。
腹がやや細めで長いし、尻先に毛束があるように見える。
ほぇ〜(◍•ᴗ•◍)✧*。やっとオスが採れたよ。ヨッシャである。
それにライトトラップにはあまり期待してなかったから、嬉しい。2頭も来れば御の字だろう。設置場所もベストと言えるとこじゃなかったしね。頑張った方だよ。

さあ、とっとと店じまいしよう。迅速に片付けに入る。
でも、白布にはビッシリ細かな虫たちが付いている。それに全身ダニまみれのシデムシもいる。正直、むちゃンコ気持ち悪い。ライトトラップって、やっぱ向いてないかもしんない。
けど片付けなければ帰れない。ビビリながら消灯し、意を決して白布を引っぺがしてバサバサやる。矮小昆虫たちの乱舞だ。マジ、とっても(〒﹏〒)キモいでござる。

帰る間際に樹液と糖蜜トラップを確認しに行くと、また活性が入った感じだった。林内で飛んでるのを2頭も見た。けど、電車に乗り遅れそうなので一つだけゲットして毒瓶にソッコーでブチ込み、そのまま闇の帝国を脱出した。

さあ、次は他の産地で見つけて、象牙色の方程式を完全に解いてやろうじゃないか。

                         つづく

 
この日に採った個体を並べておこう。
展翅していて驚いたのは、思いの外に♂が多かった事だ。

 
【♂】

 
(♂裏面)


 
 
オスがあんま採れないと嘆いていたが、5♂も採っとるやないけー。結果は5♂3♀だったから、半数以上が♂だったワケだ。我ながら節穴メクラ男だ。あっ、メ○ラは放送禁止用語か。すまぬ。我ながら節穴盲目男だ。何かシックリこんなあ。世の中、益々言葉狩り化してて、どんどん窮屈になってる。べつに言葉がどうあれ、その意味するところは同じだよね。問題は、そこ(使う側)に悪意があるか無いかだろう。言葉そのものにではなく、問題は単に文脈にあるんだと思うんだけど…。世の中、何か色々とオカシな方向に行ってて気持ち悪いや。

雌雄が結構わかりにくいのは、オスの腹があまり細く長くないからだろう。それに毛束も他種の♂と比べて少ないような気がする。一番上の個体は野外でも直ぐに♂と判ったのは、♂の特徴がよく出ていたからだと思われる。

 
【♀】

 
何か下翅の色が肉眼で見る色と違うように写っちゃう。

 

 
まだしも実際の色に近いのはコレかな。

 

 
最後の1頭は帰り際に慌てて採ったので、上翅が欠けている事に気づかなかった。ゆえにリリースせずに持って帰ってきてしまった。なので、これは修復用に取っとこうと思って展翅しなかった。

♀は腹が太く、尻先に毛が少なくて尖ったように見える。
裏面から見て、産卵管が確認出来れば♀と断定していいだろう。しかし、野外では判別に熟練を要するかもしれない。

 
追伸
今回はザアーッと一挙に下書きを書いたのだが、その後が書き直しに次ぐ書き直しの連続でムチャクチャ時間がかかった。ウスイロの季節も終わりかけになってまって、すまぬ。

次回、2020年の続きです。で、その後の解説編で完結予定です。結局、又もや5章になっちゃうなあ…。

 
(註1)カバフキシタバ

(2019.7月 兵庫県宝塚市)

早いところでは6月下旬、通常は7月上旬に現れる。ウスイロキシタバは6月中に殆んど姿を消すので、同時に見られることは稀だろう。

  
(註2)フシキキシタバ❓コガキシタバキシタバ❓

【フシキキシタバ♂】

(出展『狭山市の昆虫』)

なぜか下翅を開いてる手持ちのパンチラ写真が一枚も無い。
なので、ネットから画像をお借りした。黄色いね。キレイに撮ってはる。

以下、この項は自分の撮った写真。


(2019.6.12 兵庫県宝塚市)

(裏面)

(2018.6月 奈良県矢田丘陵)

 
【コガタキシタバ♂】


(2020.6月 兵庫県宝塚市)

(裏面)

(2019.6月 兵庫県西宮市)

両者の上翅には差はあるものの、似てるので羽を閉じて静止してる場合は判別困難だ。下翅は展翅すると明らかに違うが、樹液吸汁時には少ししか開かない場合もあるし、これまた判別に悩むところがある。フシキの方が黄色い領域が多くて明るい色で、コガタは黒帯が太いのだが、個体差もあるから夜だと一瞬ワカラン。
だが、採ってしまえば、裏側で一発でわかる。

それにしても、酷い裏展翅だな。こりゃ今年、しっかり裏展翅をし直そうと思ったが、フシキは時期的にもう無理だすな。裏展翅が出来なくはないけれど、季節的にもう擦れているだろう。カトカラは裏から翅の鮮度が落ちるのだ。ゆえに表翅の見た目よりも裏側を見れば、本当の鮮度がわかる。

 
(註3)図鑑でさえも裏面が載せられていないが
蝶と比べて蛾は圧倒的に種類数が多い。ゆえに裏面まで載せると膨大な紙数を要する。長大になれば値段も高くなるというワケだ。それらの事情は誠にもって理解できる。しかし、蛾に興味を持つ人も増えてきてる事だし、そろそろ裏面を載せた図鑑も必要なんじゃねえの❓分冊にするだとか、従来の図鑑の装丁を見直すなど何とか工夫してやれば、出来ないことはないと思うんだよね。今の時代なら印刷にしても格段に進化してるからね。安価にあげる方法はあると思う。事情知らずが勝手なこと言いますけど…。
因みに、カトカラに関しては唯一、西尾規孝氏の『日本のCatocala』のみが裏面写真を載せておられる。

 
(註4)ヤクシマヒメキシタバ

【Catocala tokui♀】

(出展『www.jpmoth.org』)

 
上翅は結構、変異の幅か広いようだ。ノーマルタイプは、こんなにカッコよくない。

 
(裏面)

(出展『日本のCatocala』)

屋久島で最初に発見され、1976年に記載されたカトカラ。
分布は紀伊半島、四国、九州、屋久島、対馬とされているが、最近になって兵庫県西部でも発見された。
裏面はウスイロに似てるね。図鑑でも並んで載ってるし、おそらく近縁関係にあるのだろう。

 
(註5)ワモンキシタバ

【Catocala xarippe ♂】

(2020.6月 奈良県平群町)

北海道から本州全土(唯一、鳥取県に記録が無い)、四国の一部までと分布は広いが、どこでも多数の個体が得られることはないと言われてる。自分も一度に沢山採ったことはない。大体が1頭で、多くて3頭しかない。

 

邂逅の生しらす丼

 
イオン系のスーパーKOHYOHで、大阪湾で今朝水揚げされた生シラスが売っていた。
見たところ新鮮で、かなりモノは良さそうだ。

だが、生シラスにはあまり良い印象を持っていない。
何度かチャレンジしたが、生臭かったり、苦味が強かったりして、いつもガッカリな結果だったからだ。
値段は税別298円。高いのか安いのかよく分からないが、買うことにした。

洗うかどうか迷ったが、旨味まで流してしまいそうで溜まった汁を切るのみにとどめた。
ご飯を炊き、そこに市販の紅生姜の残り汁を加え、何ちゃって酢飯的なものをつくる。この残り汁があってこその生シラスの購入だった。何となく、コレ何かに使えんじゃね❓という意識が底辺にあったのである。

人肌に冷ましたところで丼に盛り、生シラスを乗せる。
メディアなど過去に見てきた生シラス丼の記憶を思い起こし、取り敢えず青ネギを乗せてみた。

 

 
でも何か足りないと思った。見た目があまりに素っ気ない。
そういえば卵黄とか温泉玉子が乗っていたなと思い出すが、生のシラスを楽しむためには邪道だなと思った。味見して必要とあらば、投与すればよい。
なワケで、白胡麻を散らしてみた。

 

 
少し見栄えが良くなったが、それでも素っ気ない。臭み抜きのおろし生姜も考えたが、それもダメなら後から投与でもいいだろう。この際、旨く食うとかは二の次である。先ずは素材のポテンシャルを知りたい。

 

 
ややさみしい気もするが、素材が良ければシンプル・ザ・ベストだろう。
次なる問題点は、最後に醤油をかけるか、ポン酢をかけるかであった。人生は、日常であっても常に選択の連続である。

暫し沈思黙考後、やおらポン酢に手を伸ばす。
銘柄は関西人に昔から愛されておる『旭ポン酢』である。

 
【旭ポンズ】

  
一周まわって、これに回帰した。思えば長い旅路だったよ。10年ちょっとかかって戻ってきた。ある瞬間から、急に酸味がキツいと感じるようになったのである。それ以来、敬遠していたのだ。人生は長い旅路だ。そうゆうこともある。昔付き合ってた女とヨリを戻したりとかさ。
そんな事は、どうでもよろし。話はシラス丼なのだ。
エイとばかり、かっ込む。口いっぱいに頬張り、噛んでいると、奥から生シラスの旨味が立ち上がってきた。

これって、(☆▽☆)美味いかも。
やや苦味はあるものの、その苦味がかえって良いアクセントになっている。紅生姜ご飯との相性もいい。

途中で、おろし生姜を投入。
うん、生姜のエッジが効いてて、これまた旨い(☆▽☆)
でも、生シラスの個性は少し弱まる。ここは評価の分かれるところだろう。素材をダイレクトに楽しむ人からみれば、生姜は邪魔だと言うかもしれない。
まあ、どっちも美味いだから、ええんでねえのとは思うけど。

これで、生シラスに対する悪いイメージが払拭された。邂逅だ。生シラスくん、今まで誤解してて悪かったね。握手をしよう。また朝獲りの生シラスが売ってたら、必ずや買うよ。

翌日、またスーパーKOHYOHに行ったら、生シラスではないが「シラス丼」が半額になっていた。
199円(税別)だったから、つい買ってしまった。奇しくも二日続けてのシラス丼である。

 

 
ご飯の上に錦糸玉子、釜揚げシラス、ネギ、温泉玉子が乗っかっている。そして大好きなイクラちゃんが散らされている。
昨日、生シラス丼でググったら、大方には温泉玉子が乗っかっとった。どうやら生シラス丼も釜揚げシラス丼も温泉玉子トッピングが定番のようだ。
この何でもかんでも温泉玉子を乗せときゃいいやと云う風潮、正直疑問だよなあ。
そこには「温泉玉子が乗っかってるのに対して文句言う奴はいないだろう、温泉玉子、好きだろ?萌えるだろ?どうせオマエらなんぞ味音痴なんだから、温泉玉子さえあったら満足でしょうが。」という売る側の欺瞞と驕りを感じるのさ。だいたい温泉玉子を乗せときゃ、大概のもんは旨くなるのである。温泉玉子は大好きだけど、何かバカにされてる気もするんだよね。

添付の「ゆずポン酢」をかける。やはりシラスにポン酢は正解だったのね。
取り敢えずは温泉玉子を潰さずに食べてみる。

(•‿•)安心、安定に美味いねっ。生シラスと比べて、全くクセがない。誰が食っても旨いと言いそうな味だ。どうせ彩りのために入れとるんやろと思っていたイクラが意外と効いている。発想に無かったけど、有りだな。

半分ほど食べたところで、温泉玉子を潰してザックリ混ぜ合わせて食べてみる。
う〜ん、何とも言えないなあ…。勿論マズくはなくて、それなりに旨いんだけど、シラスの存在が消えかかっとる。温泉玉子の個性が強過ぎるのだ。
個人的な見解としては、生でも何でもシラス丼には温泉玉子は要らないと思う。
ワタシャ、もはや生シラスと邂逅したのだ。釜揚げであろうと何であろうと、シラスの個性を消す温泉玉子は排斥する。
それが、シラスとの友情ってもんだろ。

                       おしまい

 
 

2019’カトカラ2年生 其の弐(2)

 
    vol.19 ウスイロキシタバ

   『象牙色の方程式』後編

 
えー、前回の2019年 6月19日の後半部分です。

 
2019年 6月19日

黒い車窓に自分の顔がぼんやりと映っている。
酷い顔だ。屈辱と焦燥が入り混じった顔は疲れきっている。
でも、やるっきゃない。出来うる限りのやれる事をやらないで敗北するのは、それこそ負け犬だ。たとえ敗北したとしても、毅然たる心持ちでいたい。でないと、己の誇りに傷がつく。

頭の中で考える。
問題は、こないだのアラカシの森とクヌギを主体とする雑木林のポイントのどちらを選ぶかだ。
ポイントで実際に使える時間は、アラカシの森だと40分か多くて50分。雑木林だと1時間10分から20分くらいだろう。どっちを選ぶかは賭けだ。両方を回ることも可能だが、せわしないし、どっちつかずで終わりかねない。それこそ虻蜂取らずだ。それに、そんな思い切りの悪い男に神様は幸運を与えてはくれないだろう。
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻えーい、ままよ。雑木林にターゲットを絞った。

駅に着いた。
時刻は午後9時40分過ぎ。
駅を出て走る。Dead or alive。背中の毛が逆立つ。

期待を込めて、雑木林の樹液が出ている木を照らす。
昆虫酒場は大盛り上がりだ。クワガタさんもいる。
しかし、鱗翅類で居たのは名前の分からないクソ蛾どもとアケビコノハ。カトカラはフシキキシタバとコガタキシタバのみ。
アケビコノハは、新鮮で美しい個体だったので、もっと近くで見ようかなと思って一歩近づいたら、嘲笑うかのようにサッと飛んで逃げて行きよった。

 
【アケビコノハ】

 
べつに欲しいとも思わなかったのに、自意識過剰な女みたいにクソ忌々しい奴めっ❗もし今度飛んで来たら、網の枠でブン殴ってやらあ(`Д´)ノ❗ナメとったらあかんど、ワレー(-_-メ)

( ゚д゚)ハッ❗、いかん、いかん。危うくアケビちゃん虐待男になるところだったわい。
冷静になろう。冷静でないと採れるものも採れなくなる。それに虐待なんかしたら、どこかで神様が見てて、罰をお与えになるかもしれない。敗北という名の、今の自分にとって一番の罰を。
もうこうなったら、採れるんなら神頼みでも何でもする。

神様の旦那あ〜、ボロでも何でもいいから、オラにウスイロを採らせて下せぇー。

もはやプライド、ゼロである。
でもこの際、採れればプライドなんぞ、どうだっていい。

しかし、時は刻一刻と残酷なまでに抉(えぐ)り取られてゆく。悲痛な思いで、頻繁に懐中電灯で木を照らすも状況は変わらない。
やはり持ち時間は少なくとも、正攻法でアラカシの森を攻めるべきだったか❓ ざわざわと漣(さざなみ)のような後悔か心の内壁で寄せては返す。

午後10時50分。
帰る電車のタイムリミットまで、あと5分か10分。いよいよ崖っぷちまで追い詰められた。

神様の野郎、ブン殴ってやろうか(`Д´)ノ

天に唾(つばき)す。
そうか解ったよ。アンタなんかにゃ頼らん❗テメェの力で何とかしてやるよ、ダボがっ( ̄皿 ̄)ノ❗❗、🔥ゴオーッ。

懐中電灯で下から順に上へと木を照らす。
この木は根元から上の方まで数か所から樹液が出ているのだ。

いなーい(--;)
いなーい(ب
ب)
いなーい(◡ ω ◡)
いなーい(ー_ー゛)

(☉。☉)何かおる❗❗

高さ4m程の1番上の樹液に見たことがない蛾がいた。
色はグレーっぽい。大きさや形的にはカトカラも含まれるヤガ科の蛾に見える。でも下からなのでハッキリわからない。確認しようと後退るが、道が狭くて大して下がれないから状況はあまり変わらない。それに斜め横向きに止まっているので、下翅の柄もチラッとしか見えない。
アナタ、誰❓ 🎵放出(はなてん)中古車センター〜〜〜(註1)。
冗談を言っとる場合かよ。

でも、直感的に思った。

『ウスイロじゃ、なくなくねっ❗❓』

考えとるヒマはない。帰るリミットは迫っている。
とっとと採って、確認しよう。違うなら、八つ当たりで木に憤怒のドロップキックをカマすまでだ。
網をするすると伸ばす。だが、緊張感はマックスではない。時間が無いのでブルッてるヒマは無いのだ。それにもしクソ蛾だったら…と思うと変に期待できない。過度な期待を掛けて糠喜びだったりしたら、それこそ怒り爆発💥オロナミシCだ。何のコッチャかワカランけど、そうゆう事だ。
ややブラインドになっていて採りにくい角度だが、逡巡はしない。

💥バチコーン、横から強く網を幹に叩きつけた。

入った❗❓、それとも逃した❗❓
手応えも無ければ、逃したという感触もない。とにかく素早く網先を捻り、そのまま大胆かつ慎重に下に落とした。その刹那に、網の中に何かの影がチラリと見えた。どうやら逃してはいないようだ。でも、ただのクソ峨だったりして…。疑心暗鬼になりつつ、慌てて駆け寄る。

彼女は暴れることも無く、何があったのか解らないといった感じで静かに鎮座していた。

(☆▽☆)ぴきゅう〜❗
ウスイロ❓だよね❗❗

その特徴的な上翅のデザイン、間違いなくウスイロキシタバだっ❗❗
(´ω`)やっと採れた…。
ヘタヘタとその場にヘタり込みそうになる。だが、そんなヒマは無い。網の上からマッハでアンモニア注射をブッ刺す。
一瞬、彼女はクワッ❗と羽を広げ、次の瞬間にはゆっくりと羽を閉じてゆき、フェイドアウトで事切れる。
ゴメンなちゃいね。哀悼の念で軽く手を合わせる。

満ち足りた気分で、三角紙に収めようとして、写真を撮っとかなきゃいけない事を思い出す。

 

 
上翅の柄が独特で、他のカトカラとは全く斑紋が違う。
図鑑などの画像では、その特異な薄黄色い下翅に目がいっていたが、上翅も特異だったんだね。

 

 
メリハリが効いてて、カッコイイかもしんない。
いんや、カッコイイと断言してしまおう。バカにしてたけど、実物は標本写真なんかよりも遥かに美しい。玄人好みの渋い魅力がある。

おそらくメスだね。
裏返す。

 

 
あっ、他のカトカラとは全然違う。明らかに黒帯が細くて黄色い領域が多い。(•‿•)いいじゃん、(^o^)いいじゃーん。

でも、ニヤけ顔で浸っている場合ではない。終電の時刻がパッツンパッツンに迫っている。
震える手で慌てて三角紙に収め、闇を小走りで離脱した。

夜空には、星が瞬いていた。
早足で歩きながら、もう少しすれば七夕だなと思った。

                        おしまい

 
と言いたいところだが、話はまだまだ続く。

翌日、展翅した。
展翅しながら思う。はたして、あの雑木林の中にアラカシが混じる環境がウスイロキシタバの棲む場所を解く方程式なのかと。例えばアラカシの純林よか、アラカシの混じる雑木林の方が寧ろ適性な環境ではないかと一瞬、考えたのだ。
でもあんな環境なら、関西でも何処にでもある。だったら、もっと何処にでも居てもよさそうなものだが、どうもそんな感じではないような気がする。ならば、あそこから比較的近いアラカシの森から飛んで来たって事か❓となると、もう1回行ってアラカシの森で確かめねばなるまい。
けど、それはあんまり気が進まないんだよなあ…。あの森、暗くて怖いんだもん(。ŏ﹏ŏ)

アレコレ考えてているうちに展翅完了。

 
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♀】

 
展翅して、よりその美しさに魅了された。
特徴的な上翅のデザインが渋カッケー。下翅の色も、そんなに汚くは見えない。象牙色だ。薄色とか薄黄色だなんて言うからババちく見えるのだ。
名前って大事だ。名付け親になる人は愛をもって命名しないといけないよね。だからセンスの悪い人は誰かに相談しましょうね。
あっ、センスが悪い人は自覚がないから人には相談しないか❓ それでいいと思ってんだから、人には相談なんかいったし〜ませーん❗

 
2019年 6月21日

一応、ウスイロは採れたが、たった1頭だけだったので、別な所で探すことにした。他にもっと多産するところを見つけて、ゴッチャリ採ってやろうと云う皮算用である。それに象牙色の方程式を解きたい。色んな環境を見ることによって、自ずとその解も見つかるだろう。

文献から大阪府池田市にターゲットを絞る。
五月山に記録があったからだ。だったら駅から近いし、何なら昼間は其処から近い東山でクロヒカゲモドキ(註2)を探してもいい。絶滅危惧種のモドキちゃんは渋カッコイイのだ。

 
【クロヒカゲモドキ】

(2016.6.20 大阪府箕面市)

 
結局、クロヒカゲモドキは探しには行かず、昼めしを食ってから出掛けた。
クロヒカゲモドキのポイントはダニだらけなので、ダニが体のどっかに食いついてんじゃないかと思いながら夜道を歩き回るのは精神衛生上ヨロシクない。そう考えたのである。

池田駅には何度か降りているが、五月山に来るのは初めてだ。
遠目に見て、意外と山は険しいんだよなあ。だから今まで避けてたところがある。

 
【五月山】

(出展『MUJI✕UR』の画像をトリミング)

 
午後3時前に登山口に到着。
五月山にもアラカシが案外あることは、ネット検索済みだ。
望海亭跡への道を登り始めると、直ぐに照葉樹林が始まり、そこを抜けるとコナラやクヌギの混じる雑木林になった。これは居そうな環境かも?と思った。ただ、林内が乾燥がちなのが気になるところではある。とはいえ、今年は空梅雨だからね。そのせいで、そう感じたのだろうと思うことにした。
何事も前向きなのさ。でないと、虫採りなんぞ、やってらんない。虫採りは基本、苦行だと思ってるもんね。欲しいものを得るための道程(みちのり)は、けっして平坦ではないのだ。

🎵タラタラッタラー、イガちゃんスペシャル甘汁〜。
<( ̄︶ ̄)>フフフフフフ…、秘密兵器の登場である。
今回は満を持して糖蜜トラップを用意したのだ。前回の六甲みたく樹液の出る木を探して彷徨うのは、もうゴメンなのだ。
何で糖蜜トラップを今まで試さなかったのかと云うと、生態に関して最も信頼できる文献『日本のCatocala(註3)』のウスイロキシタバの項には、樹液には集まるが糖蜜トラップには集まらないみたいな事が書いてあったからだ。
疑問に思わないワケでも無かったが、信頼している文献なので素直にそれに従ったのである。糖蜜が効かないなら無駄だし、だいち勿体ない。それに荷物が増えるのは大嫌いだもんね。

日が暮れ、闇の時間が訪れた。
さあ、ここでタコ採りして、方程式の答えに近づこう。

だが、寄って来るカトカラはフシキとコガタキシタバのみ。しかも、個体数は少ない。効いてんのか❓、マイトラップ。
けんど、樹液に来るのも糖蜜に来るのも、さしたる数の差はあるようには見えない。

 
【フシキキシタバ】

 
【コガキシタバ】

 
午後9時半。
何かデカいのが糖蜜トラップに飛んで来た。
一瞬、何者❓と思ったが、次の瞬間には理解した。
ただキシタバのパタラキシタバ(C.patala)だ。今年初めて見るけど、やっぱデカい。その大きさは他の黄色い下翅を持つカトカラの中にあって、頭一つ抜きん出ている。あっ、パタラとはキシタバ(註4)の事ね。

今年初めての個体だし、一応採るか…。
でも、網を構える前に逃げよった。ただキシタバの分際で生意気である。(ー_ー゛)ちっ、パタラのクセにエラく敏感じゃねえか。

パタラといえば、鈍感というイメージがある。樹液に来ている時は夢中で吸汁しているから、かなり近づいても逃げない。そして樹液を吸い終わった者は、その周辺の木にベタベタと止まっていることが多いが、その際もあまり逃げない。

 
【パタラキシタバ】

 
スマホだって、楽勝でこれくらいは近づけるのである。
距離的に10センチ以内まで寄らないと、ここまでは撮れない。
やっぱ発生初期で、個体数が少ないから敏感なのかな❓
最盛期になって個体数が増えれば、段々鈍感になってゆくのかも。だいたい虫なんてものは、発生数が多ければ大概はバカになる。こんだけいりゃあ、ワシ一人が死んだところで我が一族は滅びんやろとかテーゲーなるのかな❓人間だって周りに人がそれなりに居たら、何となく安心するもんね。それって家畜みたいで、ヤだけど。

何度か攻防があったが、最終的にはシバいたった。
でも、それでタイムリミットとなった。惨敗である。
どうにも上手くいかないや。

 
2019年 6月22日

この日は大阪府箕面市へ行った。勿論、ウスイロ探しである。
個体数は少なさそうだけど、此処にもウスイロの記録があったからだ。因みに、この場所は前回の五月山と連なる山地だ。一帯に広く薄く棲息しているのかもしれない。

でも、夕方になって人が増えてきた。その多さに訝しがる。
箕面は滝があって観光客は多いけど、もうすぐ夜だぞ。何で❓

滝への道沿いに水銀灯があるので、一応そっちの様子から見ることにした。
暫く歩くと、人が多い謎が解けた。
闇の中を、すうーっと緑色の光が走ったのだ。そうゆう事か。皆さん、蛍狩りにいらっしゃったのだ。箕面にはホタルがいるとは知ってたけど、こんなにも有名だったのね。

 
【箕面大滝】

(夜に滝なんて撮らないので、昼間の写真です)

 
一応、奥の外灯まで行ったが、何もいなかった。
降りて来ると、更に人は増えていた。こんなところで恥ずかしくて網なんか出せやしない。しかも、蛾なんて採っていようものなら、一般人から見れば完全に狂人だ。方針を転換して、展望台に登ることにした。

石段を登ってゆくと、周りは照葉樹の多い森になった。少し期待する。
それはさておき、傾斜がキツくてしんどい。普通の人たちは蛍狩りしてんのに、ワシ、何やってんだ❓と思う。つくづく、虫屋って愚かな変人だ。

展望台に着いた。
夜景が見える。そして、イチャつきカップルもいた。二人きりでイチャイチャしたいが為に、ここまで登ってきたのか。エロという名の欲望、恐るべしである。

 

 
夜景を見ながら、己のアホさ加減にガックシくる。蛍狩りよかイチャ付いてる方が、もっと楽しそうじゃないか。全てがアホくさくなる。
でも、ここまで登ってきたのだ。その労力、無駄にしたくはない。尾根筋を少し歩き、そこで糖蜜を撒きまくる。闇は濃いが、そんなことも今やどうだってよくなる。

五月山の時に書き忘れたが、液体の糖蜜トラップを使うのは、あの時が初めてだった。前年にムラサキシタバ(註5)を採りに行った時にトラップは使ったが、それは蝶屋らしく果物トラップだった(言っとくけど、ワシって基本は蝶屋だかんね)。
バナナやパインをストッキングに入れて、上から酒を掛けて発酵させたものを木に括りつけるのだ。蝶屋の間ではポピュラーなものだが、蛾屋の間ではマイナーな手法のようだ。大概の蛾屋はジュースなどに酢と酒を混ぜ合わせたものを霧吹きに詰めて、(。・_・)r鹵~<巛巛巛シュッシュラ、シュッシューと幹や葉っぱに吹き付けて、お目当てのものを誘引するのだ。
そして、この日がその糖蜜トラップの2回目ってワケ。

大いなる期待値は、時間の経過と共に無残にも萎々(しおしお)になってゆく。何かの可能性が少しづつ失われてゆくのを見るのは、とても辛いものだ。やはり、ウスイロは糖蜜に反応しないのか❓…。
けれど樹液に来て、糖蜜に来ないってのは、どう考えても変だ。理屈に合わない。それとも、オラの作った糖蜜のレシピがダメなのか❓ 他のカトカラには問題なくとも、ウスイロさんにはお気に召さないってこと❓ どんどん頭の中がウニ化する。

結局飛んで来たのは、糞チビ蛾どもと鬱陶しいアケビコノハのみだった。正直、アケビコノハに当たり散らす気力も湧かなかった。
帰りしなに、己の心を少しでも和ませたいがゆえ、何とかコケガ(苔蛾)とかいうスタイリッシュで可愛い蛾の写真を撮って帰った。
言うまでもなく、今回も惨敗決定だ。

 
【アカスジシロコケガ】

 
電車の中で確認すると、ピントまでズレとるがな。 
又しても惨敗を喫した事実をひしひしと思い出した。ダメ押しでヘコむ。

これで、象牙色の方程式が全く見えなくなった。
誰やねん❓ ウスイロキシタバは、西日本ではどって事ないって言った奴。記録地でも、かすりもせんやないけ。情報を鵜呑みにした、アチキが馬鹿だったよ。

  
2019年 6月24日

再び武田尾の渓谷にやってきた。
まだ1頭しか採れていないのだ。謎とか方程式とか、もうどうでもいい。次の1頭が欲しい。

今回は一番最初に来た時に、ここぞと思ったアラカシの森に布陣することにした。泰然自若。今度は何があっても動かない。此処で心中する覚悟で臨む。
あの時は8時半を過ぎても飛んで来なかったから、焦れて雑木林に移動したが、やはりこの環境が最もウスイロキシタバが好む場所に相応(ふさわ)しいと判断したのだ。
ここでコケれば、我が軍は総崩れである。象牙色の方程式が解けないまま、この先1年間はエレファント凍土の迷宮に閉じこめられることになる。それを避けたければ、背水の陣で結果を出すしかない。

午後7時過ぎ。
今宵は7時半前くらいが日没時刻だったような気がするが、既に森の中は闇の世界に支配されようとしている。鬱蒼とした森が覆いかぶさって光を遮っているのだ。
Σ(゚∀゚ノ)ノ暗いよ、怖いよー(TOT)

 

 
オノレ、地底星人の仕業か。おおかた魑魅魍魎どもを操っているのも、お主たちであろう。ならば、北辰一刀流免許皆伝の抜刀術で目の前の邪魔者は全て一刀両断に斬るのみ❗、斬るのみ❗殺戮のセレナーデとなろう。
あかん…。明日のジョーの「打つべし❗、打つべし❗」の変形ヴァージョンになっとるやないけ。闇が怖すぎて妄想が酷い。

(。・_・)r鹵~<巛巛巛シュッシュラ、シュッシュー。
心を落ち着かせて糖蜜を吹き付けてゆく。
これで寄ってこなけりゃ、オラの糖蜜レシピが駄作なのか、やはり樹液には寄ってきても糖蜜には反応しないのか、はたまた此処には居ないのかが、ある程度は明らかになるだろう。
どっちにせよ、今日で終わりにしよう。これ以上、心を折られたら再起不能だ。負け慣れてないので打たれ弱いのだ。

午後8時になった。
やっぱダメなのかなあと諦めて( ´ー`)y-~~煙草を吸ってたら、目の前の糖蜜トラップにパタパタとあまり見覚えない蛾が飛んできてピタッと止まった。

(⑉⊙ȏ⊙)ゲゲッ❗、ウスイロやん❗❗❗❗

ここで会ったが百年目。慌てて煙草を揉み消し、そろりそろりと近づく。緊張感はあるが、初めての1頭ではないからか、意外と心は落ち着いている。すうーっと息を吐き、💥バチコーンいったった。
次の瞬間、驚いて飛んで網に入ったのが見えた。

中を確認して、ホッとする。
これで何とかエレファント凍土に閉じ込められなくて済んだ。

この日は、結局2♂2♀が採れた。
しかも、全部が樹液ではなく、糖蜜トラップに誘引された。
(・3・)何だよー、やっぱ糖蜜にも来るじゃんか。寧ろ樹液よか効果があるぞ。こんなんだったら、最初から使っておけば良かったよ。

これで象牙色の方程式が、全部じゃないけど、ある程度は解けた。
やはり、基本的な棲息環境は照葉樹林だろう。中でも昔から在るような古い照葉樹林ではなかろうか❓
樹液にも来るが糖蜜トラップにも反応する事も分かった。飛来時刻は情報不足だが、おそらく特別遅くはないだろう。これは断言出来ないから来年の課題だけどさ。
好む環境も完全に把握できたワケではないし、他にも幾つか疑問点は残った。でも翅の傷み具合から、そろそろ発生期も終盤みたいだし、これらは又、来年の宿題としよう。

満ち足りた気分で帰途につく。
車窓に映る今日の自分の顔は悪くないなと思った。

                         つづく

 
一応、この日の個体を並べておこう。

 

 
我ながら、ド下手な展翅だすな。
完品ではなかったから、ヤル気なし蔵だったのもあるけど、理由の一番は酔っ払って展翅したせいです。酔っ払うと、ただでさえテキトーな性格が益々テキトーになるのである。
それと、ウスイロキシタバは鮮度が落ちると、途端にみすぼらしくなるというのもあった。何かメリハリが無くなるのである。モチベーション、だだ下がりだ。
ウスイロキシタバを採りたい人は、発生初期に行かれることをお薦めします。

 
追伸
今回は、後半をバタバタで書いた。
酔っ払って寝ようとしてる時に、3分の2程まで書いていた文章に少し手を入れようとしたのがマズかった。朦朧としてて、書きかけの文章をそのままアップしてしまったのだ。それでいっぺんに酔いが醒めた。で、朝までかかって残りの3分の1を書いた。最悪やったわ。

次回は解説編か、もしくは続編の『2020’カトカラ3年生』になる予定です。

 
(註1)アナタ誰❓ 🎵放出中古車センタ〜〜〜
昔、関西ローカルで、そうゆうCMが流れてた。
ちょい、セクシーなCMでした。

 
(註2)クロヒカゲモドキ

全国的に減少しており、各地で絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている。
しかも、見つけても直ぐに藪の中へ逃げ込むので、あまり採れない。産地に行っても全く採れない事もある蝶の1つだろう。
因みにオラとは相性が良くて、何処へ行っても採れなかったことはない。その日、来てる人の中でオラだけ採った事も何度もある。
そういえば、3、4年ほど採りに行ってないね。でも関西では何処でもダニとセットだから、あんまし気が進まないんだよなあ…。最後に行った時は、あまりのダニの多さにポイントに着いて30分で帰った。採集に行って家に帰った最短記録である。この超絶短い滞在記録は今後とも塗り替えられる事はないだろう。あっ、言っとくけど滞在時間30分でも、ちゃんと採ったさー。

参考までに書いとくと、クロヒカゲモドキについては昔のブログ(アメブロ)に『へろへろ(@_@;)、箕面モドキ軍団殲滅作戦』と題して書いた事がある。他にも数篇の関連文章がある筈だ。ヒマな人は探してみてね。

 
(註3)日本のCatocala

西尾規孝氏によって書かれた日本のカトカラの生態図鑑。
その生態観察力は、飛び抜けている。

 
(註4)キシタバ

(Catocala patala ♂)

(♀)

 
日本のキシタバグループの最大種。和名がただの「キシタバ」だから、ややこしい事この上ない。「キシタバ」という言葉が種としてのキシタバを指しているのか、それともグループとしてのキシタバを指しているのか、判断に一瞬迷うから誠にもってややこしいのだ。
だから、それを避けるために出来るだけ学名のパタラを使うようにしている。誰か偉い人の鶴の一声で和名を変えて欲しいよね。
キシタバ(C.patala)くん本人としても、「ただキシタバ」とか「糞キシタバ」「屑キシタバ」「デブキシタバ」なんて酷い呼ばれ方をするのは心外だろう。
パタラキシタバについてもっと詳しく知りたい人は、拙ブログの、2018’カトカラ元年シリーズのvol.3『頭の中でデビルマンの歌が流れてる』の回と続編『黃下羽虐待おとこ誕生』を読んでね。
前回の註釈の項でも、ナメたタイトルが列挙されていたが、これまたフザけたタイトルざます。けど最近はカッコつけたタイトルが多いので、またおバカなタイトルをつけたいね。

 
(註5)ムラサキシタバ

(Catocala fraxini ♂)

(同♀)

カトカラの女王。日本最大種にして最美とも言われ、人気が高い。
詳しくは、拙ブログ内の『2018′ カトカラ元年』vol.17の連載を是非とも読まれたし。

 

食材チャレンジャー、イガがゆく②

 

 その2.アカイサキ(赤伊佐木)

『どっちつかずの、かわい子ちゃん』

 
前回のデカいガジラの数日後、またスーパー玉出で目を引く何じゃこりゃ\(◎o◎)/❓の魚が売っていた。

 

 
ねっ、\(◎o◎)/何じゃこりゃ❓でしょ。
あたい、ド派手すぎて二度見しましたよ。
若い女子が大好きそうなピンクと黄色の組み合わせに、更にオレンジまで加わるだなんて、めっちゃボップだ。こういう配色は好みじゃないけど、素直に綺麗だと思う。💖かわい子ちゃんだね。

だけど、食べるとなると話はまた別である。色鮮やかな魚は旨そうには見えないんである。むしろ毒々しくさえある。沖縄は別としても、こういう色の魚を食べるという概念が無いから、そう見えてしまうのだ。ようは殆んどの日本人の食用魚の概念には、カラフルな色は無いのだ。結構、美味しいんだけどね。

名前を見ると、赤イサキと書いてある。
赤イサキ❓ 聞いたことがない名前である。元ダイビングインストラクターだったから、自慢じゃないけど魚種については詳しい。そのオイラが全く知らないんだから、相当にレアな魚なんじゃないかと思った。
見たところ、この鮮やかさは南方系に見える。しかし、日本だけでなく、サイパンでもインストラクターをしてたのに知らんぞ、コヤツ。

 

(コレ、ワシねっ。)

 
それに、名にイサキとついているが、あのイサキとは色も形もまるで違ってる。

 
【イサキ】

(出展『WEB魚図鑑』)

 
ほらね。似ても似つかないじゃないか。どちらかというと、ハタっぽい。
アンタ、誰〜❓

その場でググろうかとも思ったが、やめた。
邪魔くさいとゆうのもあるが、無粋だ。食材チャレンジャーが予め調べてから買うだなんて、全然チャレンジャーじゃない。それじゃ、羊頭狗肉。タイトルに偽り有りである。

とにかく先ずは買おう。半額になっているから、たったの140円だもんね。

買って帰って、家でパッケージの表示を見て驚く。
ありゃま、何と産地は千葉県と書いてあるではないか。
(゜o゜;えっ❗❓である。まさか海の中では地球温暖化が知らぬうちに大幅に進行しておるのか❓死滅回遊魚も、あったか過ぎて死なんようになってまっただか❓

ここで、よほど赤イサキについてググろうかとも思ったが、我慢する。
もし不味いと書いてあったらショックだし、作る気が失せる。だいち、これもまた無粋だ。鬼が出るか蛇が出るか分からないから面白いのだ。どんな調理法でいくかも腕の見せ所だしね。

でも、結局またガシラと同じく清蒸(チンジョン)にしてもうた。
芸が無いと言われそうだが、頭の部分なんで調理法も限られてくるのだ。まだまだ御託なら並べられるが、書くのが面倒くさいので先へ進む。

調理法は基本的に前回と同じ。
そっちに詳しくあるので、簡単に書いとく。

【作り方】
①魚をサッと洗い、鱗が残っていないか確かめる。軽く水気を拭き、塩を振って、2、30分おく。

②塩を水で洗い流し、キッチンペーパーなどで水気をしっかり拭く。

③皿に乗せ、酒をかけて塩を軽く振ったら、ラップしてレンチン。

④その間に白ネギを切って、白髪ネギを作っておく(今回は万能ネギの根元部分を使った)。

⑤蒸し上がったら、白髪ネギを盛り、上からフライパンで煙が出るくらいにチンチンに熱した胡麻油をかけて出来上がり。
お好みで醤油をチャラッと掛けてもよい。今回は掛けました。

 

 
色が今イチ解りにくいので、反対側からも写真を撮る。

 

 
さあ、食べよう。

あっ、デカいガジラよりも身に弾力がある。ブリブリだ。
味は旨い。上品な旨みでガシラと近いが、より繊細で旨いんじゃないかと思う。そして、皮のとこが美味。旨みに加えて甘みもある。
これが140円って、とてつもない高コスパだな(≧▽≦)
食材チャレンジャー、2勝0敗だねっ。

満足したところで、赤イサキの正体を探ろう。
いつものようにネットで、ぼうずコンニャクさんの『市場魚貝類図鑑』を見て、他のサイトもザッと見た。それらを纏めておく。

全身の姿は、こんなん。

 

(出典『つりまる』)

 
やっぱり、およそイサキの仲間には見えないな。

〈分類〉
スズキ目 ハタ科 ハナダイ亜科 アカイサキ属。

ハタに似てるって言ったのは、いいとこ突いてたってワケだ。
因みに、調べたらイサキはイサキ科でした。全然、両者には類縁関係は無しじゃんか。人生にはよくある事だけど、名前に騙されてはいけないよね。常にフラットで物事を見極めなければいけないやね。

ちょっと驚いたのは、ある程度の大きさまでは雌として生き、大型になると雄に性転換するそうだ。ハナダイも性転換するから、ハナダイ亜科と云うのは理解できるな。但し、学者に拠ってはハナダイ亜科に含めないという。
「雌は赤く、背中に暗い斑紋があり、雄は腹の部分が赤紫を帯びて頭部に黄色い筋模様が走り派手派手しい。」とあるから、今回の奴は紛うこと無き雄ですな。

魚貝の物知り度は、★★★★となっていて、知っていたら達人級なんだそうだ。ワシが知らんかったのも納得だすよ。
味の評価度は、★★★で美味となっていた。ちなみに★4つ以上だと非常に美味という評価になる。

〈漢字〉
赤斑魚、赤伊佐木、赤伊佐磯

〈棲息域と分布〉
海水魚。水深40〜302mの大陸棚縁辺の岩礁域。
兵庫県香住から九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、伊豆半島・伊豆諸島、相模湾〜九州南岸の太平洋沿岸、宮古、八重山諸島。海外では、済州島、台湾、オーストラリア東岸・西岸、ハワイ諸島、チリに分布するとされる。
やはり南方系の魚でした。ここに表記されてない千葉県で獲れてるって事は、やはり地球温暖化のせい?

〈漁法〉
延縄や底引き網、釣りなどで漁獲されているが、本種を狙った漁は行われてはおらず、混獲されているに過ぎないそうだ。従って加工品も無いし、名産とする土地もないみたい。
むしろ釣りで獲られる事が多く、釣り人にはマダイ釣りの外道として、よく知られているそうだ。

〈市場での評価〉
相模湾以南の太平洋側に多い魚だが、専門に狙う漁はなく入荷量は少ない。派手な色合いが嫌われてあまり値段のつかない魚のようだ。しかし、関東では色合いの美しさから値段はやや高値で安定しているという。

〈旬の時期〉
通年漁獲されているようで『市場魚貝類図鑑』には、寒い時期とあった。多くの魚と同じように、旬はやはり脂がのった冬と云うワケだね。
しかし、別な意見もある。この魚、あまり脂がのらず、年間を通してそれほど味は変わらないとも言われ、むしろ市場には夏の方が沢山並ぶそうだ。ゆえに夏が旬だという。また、旬のわかりづらい魚であるとの意見もあった。

旬よりも「この魚、あまり脂がのらない」と云う件(くだり)の方が気に掛かった。そっか…、奇しくも胡麻油を使ったから脂分が補われて美味しかったのね。

〈食べ方・料理法〉
ソテー(ポワレ、バター焼き)、蒸す(剁辣椒蒸、酒蒸)、煮る(煮つけ)、汁もの(潮汁、味噌汁)、焼く(塩焼き)。

調べると、味の評価はバラバラな印象だ。

バター焼き。
「それほど旨味のある魚ではない。バターでソテーして香ばしさを出し、マーガリン(バター)などで油分、風味を加えると味が豊かになる。」
どうやらこの魚は、油を上手く使って調理するのがコツみたいだ。

煮付け。
文句なしに旨いという意見もあれば、そうでもないような意見もあった。

塩焼き。
これこそ、評価が真っ二つ。
「比較的脂の乗りの悪い魚なので焼くと少しパサつく。それを考えても余りあるのが皮の風味。マダイやアマダイに似た味わいがある。」
「姿がタイに負けず劣らず美しい。その上、身がしっとりしていて、身離れがよく、ビックリするくらいにうまい。」
「水分が多くて、焼くと身がカチカチになる。」

塩を振って暫くおいていたから、適度に水分が外に抜けて旨くなったのかもしれないね。

アカイサキの刺身。
「身は滑らかな舌触りで甘味が感じられる。脂も微かにあっておいしい。」
反対に、刺身に関しては淡白で上品ではあるが、旨味に欠けるという意見もあった。
(ب_ب)どっちやねん❓旨いか不味いかワカランわい。

アカイサキの焼霜造り。
「アカイサキのうま味は皮にあり、また皮下の身が一番うまい。」
やはり、皮目が旨いのね。他に皮を炙って握り寿司にすると、絶品との声もあった。

皮霜造り。
似ているが、こちらは皮目に布巾を被せて熱湯をかけ、氷水で締める。
「皮目の赤い色合いが綺麗だし、皮のゼラチン質の食感と甘みが平凡なネタを一級に格上げして、主役級になる。」と云う絶賛してるコメントがあった。
やっぱ、皮が美味しさの重要なファクターのようだね。

アカイサキの味噌汁
「身は痩せるが、良い出汁が出る。」

何か全体的にどっちつかずで、美味いのか不味いのかワカランとこがあるよね。オイラは旨いと思ったけどさ。

そういえば若い頃に、どっちつかずの、かわい子ちゃんっていたな。性格が悪い性悪女ってワケじゃなかったけど、奴を選ぶか、オラを選ぶかハッキリせえやって感じだった。何か河合奈保子の『けんかをやめて』という曲を思い出したわ。
歌詞を口ずさんだら、段々、腹立ってきたよ。(-_-メ)何様やねん!
結果❓ 結果ねぇー、結局オイラが振られましたよ(ToT)
それでまた思い出した。性悪女に天秤にかけられた事もあったわ。1ヶ月後に答えを出すとか言われたんだよね。コチラを徹底的に苦しめて、あげくコントロール下におこうってワケだ。でも、コチラの嫉妬心を煽るためだと読んでいたから、戻って来た時に、その場でバッサリ切ってやったよ。あの時の、彼女の驚愕の表情は今でも忘れられない。恋愛は策に溺れ過ぎてもイカンのだよ、ワトソンくん。
あっ、そんな事、どうでもいいよね。

とにかく、赤イサキを見つけたら、チャレンジしてみては❓
マズくても責任もたないけどさ。

最後に地方名を並べて終わろう。

〈地方名・市場名〉
アカタルミ(和歌山県田辺)、チギノメンドリ、ミハラハナダイ(八丈島)、イサキ(小笠原諸島)、アカマジャー(沖縄県南城市)、ハマイッサキ(福岡県津屋崎)、シマシマ(福岡県福岡市)、カライッサキ(長崎県壱岐)、クマゾメ(静岡県網代)、アカアブラメ(鹿児島県)、サクラダイ(高知県宿毛市・愛媛県宇和郡)、キンギョ(山口県下関市)、ヒコシロ(高知県室戸市)、アカイサギ アカイッサキ アカイセギ(神奈川県三崎・江ノ島・小田原、高知県御畳瀬、長崎県壱岐)、アカゴウシタメ(静岡県静浦)。

ホント、魚介類の名前には地方名が有り過ぎるよね。
イカとかも同じ名前なのに、違う種類のイカのことを指していたりするから、頭の中がウニュウニュになることがある。
時に、ややこしいから統一すればあ❓とも思う。だが、地方名にはそれぞれに名の由来があり、また味わいもある。何でもかんでも効率的にしたがるのは現代人や都会人の悪いクセで。エゴだ。統一なんかしたら、つまらない。地方の文化もあってこその多様性だ。色々あった方が愉しい。

                        おしまい

  
追伸
こういう後から本質に迫ってゆくと云うパターンは、今まで有りそうで無かったかもしんない。
また、使おっと。

 

2019’カトカラ2年生 其の弐(1)

 

  vol.19 ウスイロキシタバ

   『象牙色の方程式』

 
カトカラを本格的に採り始めた2018年は、ウスイロキシタバを探しに行かなかった。
フシキキシタバ(註1)を偶然に採って、カトカラに少し興味を持ち始めたばかりの頃だったので、カトカラ1年生の触り、謂わば黎明期。また本格的にカトカラを集める気なんてサラサラ無かったのである。
だいちウスイロキシタバなんて、カトカラの中でも一番汚い奴っちゃと思っていた。下羽が鮮やかな者が多いこのグループの中にあって、ウスイロは下羽に鮮やかさが微塵も無いのである。
それにカトカラ同好会のホームページ(註2)のウスイロキシタバの項には「関東以北の愛好者にとっては憧れのカトカラだが、関西の愛好者にとってはなんということのない種である」云々といったようなことが書かれてあった。ゆえに、そのうちどっかで採れるだろうと思っていたのだ。
しかし、2018年は結局どこでも会うことはなかった。

それでも2019年には、どうにでもなると思っていた。
そうゆう事実はスパッと忘れていて、いつものように根拠の無い自信に溢れていた。そう、相変わらずのオメデタ楽観太郎になっていたのである。

 
2019年 6月13日
 
夏の青空が広がっている。
時期的にはもう梅雨に入っていてもオカシクない筈だが、ここのところ天気は頗(すこぶ)る良い。この先の予報も晴れ続きだ。何でもかんでも異常気象で片付けるのもどうかとは思うが、やっぱりここ数年の天気は何だかオカシイ。

この日は宝塚方面へ行った。

 

 
第一の目的は、来たるカバフキシタバ(註3)のシーズンに備えての下見だった。ライトトラップを持ってないので、現状は樹液採集に頼らざるおえないのだ。その為には予め樹液の出てる木を探しておきたい。天才肌なので(笑)、いつもは下見なんぞ面倒臭くてしないのだが、天下のカバフ様である。手は抜けない。それに此処にはウスイロキシタバの記録もあるので、あわよくばと云うのもあった。謂わば、一石二鳥の作戦ってワケ。

山を歩き回るが、樹液の出ている木は1本しか見つけられなかった。しかもバシバシに樹液が溢れ出ているような木ではない。誠に心許ないようなチョロチョロ状態だ。もしその木に何も寄って来ないようなら、暗闇の中を山に登って探しなおすしかない。昼間歩いている時に樹液の甘い香りがしたのだが、どの木から出ているのか分からなかったのだ。それを探すしかないってワケ。
実をいうと、樹液の出ている木は昼間よりも夜の方が見つけやすい。カブトムシやクワガタは目立つし、クソ蛾どもが複数飛んでいたら、その周辺から樹液が出ている可能性が高いのだ。それに昼間だと視界が広過ぎて視認センサーが散漫になりやすい。対して夜だと見えるのは懐中電灯の照らす範囲だけなので余計なものは目に入らず、見逃す確率が格段に減るのである。

ようやく暗さが増し始めた午後7時20分、その唯一の樹液ポイントへと行く。
だが、来ていたのはヤガらしいクソ蛾が1頭だけだった。
まあいい。クソ蛾であっても蛾が誘引される樹液であると云う証明にはなる。希望はゼロではないということだ。ゼロと1とでは雲泥の差がある。明るい未来を想像しましょう。

とは言いつつも、正直この木だけでは厳しい。取り敢えず此処は置いといて、新たな樹液ポイントを探しに夜の山道を歩き始める。
10分ほど歩いたところで、空気中に微かな樹液の匂いを感じた。見つけられなかった木は、この辺だったような気がする。立ち止まり、咄嗟に懐中電灯をその方向へと向けた。下から上へと灯りを移動させる。
❗Σ( ̄□ ̄;)ワッ、地上約4mくらいのところでカトカラが乱舞していた。
どうりで見つけられなかったワケだよ。昼間見つけられなかったのは、樹液が出ている箇所が高かったからだね。
それにしても凄い数だ。少なくとも10頭以上は飛んでいる。いや、20頭くらいはいるだろう。こんなに沢山のカトカラが乱舞している光景を見るのは初めてだ。
時期的に考えれば、勿論カバフではないだろう。まだ早い。黄色いからウスイロである可能性も無さそうだ。ウスイロは名前通りに色が薄いのだ。だとしたら、フシキかな❓コガタ(註4)にもちょっと早い気がするしね。あっ、ワモン(註5)の可能性も無いではないね。でもワモンにしても出始めの頃だろうから、こんなに沢山いる筈はない。だいちワモンは何処でも個体数が少ないと言われているので、こんだけ大量にいたら事件だ。可能性、却下だ。逆にアサマ(註6)は、もう姿を消している頃だ。同様に、こんなに大量にいるワケがない。
黄色が鮮やかに見えるし、感じからすっと、たぶん全部フシキキシタバで間違いないだろう。最近、網膜にインプットされた画像と同じに見えるもん。

とやかく考えていても話は始まらない。
網をスルスルと伸ばして、空中でエイやっι(`ロ´)ノ❗と掬い採る。たぶん一度に3つ入った。
中を見ると、予想通りの3つともフシキだった。どうやら飛んでるのは皆、フシキくんのようだ。
どこが珍品やねん٩(๑`^´๑)۶❗嘗(かつ)ては、そうだったらしいけど、今や普通種の域だ。

樹液への飛来時間の謎を解きたいので、ガツガツ採らずに目についた型の良さそうなものだけを選んでチョビチョビ採る。
いくつか採り、落ち着いたところで周辺を見ると、やはり思ったとおり、周囲の木の幹に止まっている個体が複数いた。樹液の出ている木の上部や下部で憩(やす)んでいるものもいる。
おそらく宵になると直ぐに餌を摂りに樹液にやって来て、お腹いっぱいになったら周辺で憩んでいるのだ。で、また腹が減ると、再び樹液に訪れるものと思われる。その合間に交尾も行われるのではなかろうか。それだと、途中でピタリと飛来が止まる謎にもスッキリと説明がつく。餌場はオスとメスとの出会いの場でもあるのだ。

 
【フシキキシタバ】

 
しかし、交尾しているカップルは1つも見つけられなかった。出歯亀作戦、失敗である。

ウスイロキシタバは、結局1頭も飛んで来なかった。
とはいえ、さしたるショックは無かった。昼間に山の植物層を見て、殆んど諦めてたもんね。
ウスイロキシタバの幼虫の食樹はアラカシだと言われている。どうやら、そのアラカシが多く生える豊かな照葉樹林が棲息地みたいなのだ。でも此処は乾燥した二次林って感じで、あまり居そうには見えなかったのである。
まあ、そのうち会えるっしょ。

 
2019年 6月17日

この日から本格的なウスイロ探しが始まった。
でも場所の選定には迷った。『ギャラリー・カトカラ全集』には、関西なら何処にでも居るような事が書いてあったが、調べてみると意外と文献記録が少ないのだ。ネットを見ても、関西のウスイロの記事は少ない。

場所は武田尾方面と決めた。
理由は、わりかし最近の記録があるし、ナマリキシタバの下見もしておこうと思ったのだ。またしても一石二鳥作戦である。虻蜂取らずにならぬ事を祈ろう。

 

 
ここは国鉄時代の旧福知山線が走っていたのだが、跡地が遊歩道になっている。
でもトンネルだらけで、昼間でもメッチャ怖い((( ;゚Д゚)))

 

 
昼間でコレなんだから、夜なんて想像に難くない。チビるに充分なシュチエーションだろう。
いや、超怖がり屋としては恐怖のあまり発狂するやもしれぬ。2年目ともなると夜の闇にもだいぶ慣れてきたとはいえ、トンネルはアカンで、Σ(゚Д゚|||)アカンでぇー。

 

 
トンネルを抜けたら、又トンネルってのが何度も続く。長くて出口が見えないトンネルだってあるから、バリ怖い。カッちゃんだったら、髪の毛ソッコー真っ白やな。

 

 
ナマリキシタバは流紋岩や蛇紋岩の岩場環境に棲息するとされている。ここは流紋岩だろう。この感じ、如何にもナマリが居そうな環境だ。

ナマリの食樹であるイブキシモツケも結構そこかしこにある。

 

 
これでミッション1はクリアだ。ナマリも何とかなりそうな雰囲気だね。7月半ば過ぎ辺りに来れば大丈夫だろう。

メインミッションの方も着々と進んでいた。
アラカシの多い森で、樹液の出ているクヌギの木を1本見つけた。有望なポイントだろう。そして、クヌギが主体だがアラカシも結構混じる雑木林でも樹液がドバドバ出ている木を見つけた。一安心だ。取り敢えず、これで戦える態勢は整った。この2つのうちのどっちかにポイントを絞ろう。

とはいえ夜が訪れるまでには、まだまだ時間がある。ナマリキシタバの幼虫記録は生瀬にもあるから、そこまで歩くことにした。それに生瀬辺りに、行きしの電車の車窓から見て気になる場所があった。山頂に赤い鳥居があって、その山が何か環境的にいい感じなのだ。そこも確かめておきたかった。もしソチラの方が良さげなら、ポイントを変えてもいい。夜の森は何処でも怖いが、トンネルは特別だ。ホラー度マックスなのだ。アソコは避けれるものなら避けたい。それが偽らざる心情だ。
その場でググると、アラカシ林も有るようだ。今日のオラ、冴えてるかも。<( ̄︶ ̄)>へへへ、早くも楽勝気分になる。

だが、生瀬までの道程はつまらなかった。イブキシモツケは結構生えているのだが、如何せん交通量の多い車道沿いなのだ。成虫のポイントとしては使えない。いくら何でも、こんなところで網を振る勇気は無い。危険だし、通報されかねない。気分が少し下がる。

生瀬に到着。
しかし、麓が住宅地で道が入り組んでおり、赤い鳥居の神社への登り口が中々見つけられない。そして、ウロウロしているうちに日が暮れてきたので断念。やむなく武田尾方面に戻ることにした。無茶苦茶歩いてるからヘトヘトだし、何だか雲行きが怪しくなってきた。

迷ったが、アラカシの森を選択することにした。ウスイロの方程式はアラカシの森だ。それに従おう。
午後7時を過ぎて暫くすると、突然闇が濃くなったような気がした。(-_-;)怖っ…。戦々恐々だが、やるっきゃない。

 

 
午後8時を過ぎても、ウスイロは姿を見せない。飛んで来たカトカラはフシキキシタバだけだった。嫌な予感が走る。
このままだと決断を迫られる事になる。此処に残って粘るか、思い切って移動するかを判断せねばならぬ。

8時半になっても、姿なし。どうする❓
この時間になっても飛んで来ないと云うことは、此処には居ないのかもしれない。それに闇の恐怖にも耐えきれなくなってきた。照葉樹の森の中は、ことさらに暗いのだ。
ヽ(`Д´)ノえーい、しゃらクセー。クヌギの雑木林に移動することを決断した。判断に迷ったら「動」だ。攻めよう。何もせずに戦いに敗れるなんて耐えられない。無策に終わる奴は滅びればよい。

樹液がドバドバ出ている木には、いっぱい蛾が集まっていた。
クソ蛾も多いが、カトカラも結構いる。
採ってみると、大半がフシキキシタバだったが、コガタキシタバも混じっていた。

だが、結局ついぞウスイロは1頭たりとも現れなかった。
(ㆁωㆁ)…。闇の中で💥💣爆死。白目オトコと化す。

 
2019年 6月19日

この日も天気が良い。
日付的には、とっくに梅雨に入っている筈なのに連日晴天が続いている。ライト・トラップをするわけではないので、特に問題があるワケではないが、連日の晴れも考えものかもしれない。乾燥し過ぎるのも良くないような気がする。ウスイロキシタバは紀伊半島なんかでライト・トラップをすると、ヤクシマヒメキシタバと一緒に飛んで来るそうなのだが、その際、雨が降ると活動が活発になると聞いたことがある。おそらくヤクヒメと同じく湿気の多い環境を好む種なのではあるまいか。そう思ったりもするからだ。

生瀬駅で降り、あの頂上に赤い鳥居がある場所を目指す。リベンジだ。
前回は北側の斜面からアプローチを試みたのだが、結局登山口を見つけられずに時間切れとなった。だから、今回は駅を出て一旦右に針路をとり、北西側から回り込んでルート探査することにした。

しかし斜面はアホほどキツいし、山へはフェンスで囲まれていて入れない。結構アラカシも生えているし、環境的には悪くないのに何でやねん❓
オマケに直射日光に晒され、((o(∵~エ~∵)o))アジィィ〜 。たちまち汗ダクになる。でもって、再び住宅地に迷い込む。もう最悪である。
結局、ぐるりと歩いて山の南東側までやって来てしまった。このままいくと、前回歩いた所にまで行きついてしまう。だったら、何処から登れというのだ❓もしかして、謎の霊的な山だったりして…。結界じゃよ、結界❗そんな山に、夜一人ぼっちで入るのか❓絶対、魑魅魍魎どもに拐(さら)われるな…(ー_ー;)
また要らぬ事を考えてしまう。基本的に超がつく怖がり屋さんだし、チキンハートのビビりなのだ。

山の南東の端まで降りてきて、やっと道が見つかった。しかも、この前に引き返した辺りだ。まさか学校の裏に登山口があるとは思いもよらなかったよ。(╯_╰)徒労感、激しいわ。ものスゲー遠回りしたし、せっかく登ったのに降りてきて、また登るのかよ。

斜面を登ってゆくが、意外と山は乾燥している。住宅地のそばだし、致し方ないか…。アラカシもあるにはあるのだが、思っていた程にはない。

山頂に辿り着く。

 

 
幟(のぼり)に光照稲荷大明神とある。「あまてらすいなりだいみょうじん」と読むのかと思いきや、まんまの「こうしょういなりだいみょうじん」と読むんだそうな。

 

 
眼下に生瀬の町が見える。
眺めは気持ちいいくらいに抜群に良い。さぞや夜景も綺麗だろう。でもここじゃ、多くは望めそうにない。また惨敗の可能性大だ。

こうゆう事もあろうかと思って、第2の候補地として岩倉山方面の下調べもしてあった。塩尾寺周辺にアラカシ林があるらしい。それに、この近くにもウスイロの記録がある。

麓に降り、宝塚駅まで歩く。郊外の一駅は遠いわ。
甲子園大学の横を抜け、山を登り始める。しかし、あまりにも坂がキツくて半泣きになる。忘れてたけど、六甲山地の斜面はキツイのだ。去年、クロシオキシタバ(註7)の時に散々ぱらそれを味わった筈なのにね。見事なまでに忘れておる。六甲と云えば、あの源平合戦の一ノ谷の戦いの鵯越えで有名なのだ。半端ない坂なんじゃよ。

「人間とは、忘却し続ける愚かな生命体である。」
          by イガリンコ・インタクタビッチ

言葉に含蓄ありそで、全くねぇー。底、浅ぇー(◡ ω ◡)
3歩あゆめば忘れる鶏アタマ。単に阿呆なだけだ。

午後5時半に塩尾寺に到着。

 

 
マジ、しんどかった。
標高は350mだが、平地から一気に登っているので、かなり高いとこまで来た感がある。

寺を越えて尾根道に入る。
樹液の出ている木を探すが、中々見つけられない。クヌギやコナラの木は結構あるのに、何で❓
それに尾根にはアラカシがあまり生えていない。見た感じではアラカシ林はもっと下にあり、そこへゆく道はどうやら無さそうだ。ピンチじゃのう。完全に負のスパイラルに入りつつある。否、既に入っとるわ。

あっちこっち探してるうちに日が暮れ始めた。

 

 
夜になれば見つけられるかもしれないと思って、日没後も探してみたが、ねぇっぺよー(༎ຶ ෴ ༎ຶ)
こりゃダメだと思い、標高を下げることにした。
そこで漸く樹液の出ている木を1本だけ見つけた。しかし、出てる樹液の量は少なく、寄って来るのはクソ蛾のみ。

 

 
夜景が綺麗だが、それも今は虚(むな)しく見える。焦りからか、心に余裕が全然ないのだ。
まだウスイロを採ったことがないので、その方程式が見えない。どうゆう環境を好むのかがワカラナイ。前回に惨敗してるから、尚更イメージ出来なくなってる。もしかしたら、これってオドロ沼にハマったのかもしれん。蝶の採集では、そうゆうことは滅多に無かったからパニックになりそうだ。何で小汚いウスイロ如きが採れんのだ。関西では普通種だと聞いてたけど、ホントかよ(-_-メ)❓
まさかの躓きに、暗澹たる気分に支配される。

午後8時40分。
このままでは惨敗必至だと思った。採れるイメージが全然湧かないのである。この感覚は大事にしてて、そうゆう時は蝶での経験で大概は惨敗に終わると知っている。ここにずっといてもロクな事は無い。ダメな場所でいくら粘ろうともダメなものはダメなのだ。
もう一人の俺が、動けと命令している。
意を決して、ここを離脱することにした。まだ今ならギリギリで何とかなる。駆け足で山を下った。

記憶では、汗ダクになりながら9時20分くらいの武田尾方面ゆきの電車に飛び乗った。
一発逆転。イチかバチかの博打(ばくち)だ。勝負師ならば、大胆に最後の一手を打とう。そこに一縷の望みを賭けよう。

                        つづく
 

追伸
2019年の採集記は1回で終わる予定だったが、結局長くなって2回に分けることにした。毎度ですが、頭の中の草稿構成力が甘い。というか、アバウト過ぎるのだ。よく考えもせず書き始めるから、こうゆう事になる。書いてるうちに構成が決まってきて、それに肉付けしてるうちに結局長くなっちゃうんだよね。熟思黙考には向いてない人なんである。喋ってるうちにするすると言葉が出てきて、自分でも、へーそうゆうこと思ってたんだねと感心しちゃうようなタイプなのだ。

 
(註1)フシキキシタバ

(Catocala separans)

上が♂で下が♀。
詳細は拙ブログの、2018’カトカラ元年シリーズの『不思議のフシキくん』とその続編『不思議なんてない』を読まれたし。

 
(註2)カトカラ同好会のホームページ
ホームページ内の『ギャラリー・カトカラ全集』のこと。
日本のカトカラ各種の写真と簡潔な解説が付与されており、カトカラの優れた入門書になっている。

(註3)カバフキシタバ

(Catocala mirifica)

(♂)

(♀)

日本のカトカラの中では、トップクラスの珍品だが、去年タコ採りしたので、本当にそうなのかな?と思ってる。
これまたカトカラ元年シリーズの『孤高の落武者』と『リビドー全開❗逆襲のモラセス』の前後編を読んでおくれやす。

  
(註4)コガタ=コガタキシタバ

(Catocala praegnax)

(♂)

(♀)

同じくコチラも元年シリーズのvoi.4『ワタシ、妊娠したかも…』と、その続編『サボる男』を読んでけろ。
それにしても、フザけたタイトルだよなあ…。

 
(註5)ワモン=ワモンキシタバ

(Catocala xarippe)

(♂)

(♀)

 
詳細は、元年シリーズのvol.2『少年の日の思い出』と、その続編『欠けゆく月』、続・続編『アリストテレスの誤謬〜False hope knight〜』を読んでたもれ。

 
(註6)アサマ=アサマキシタバ

(Catocala streckeri)

(♂)

最新作の『2019’カトカラ2年生』の解説編の第5章『シュタウディンガーの謎かけ』と第6章『深甚なるストレッケリィ』を読んで下され。暇な人は第一章の『晩夏と初夏の狭間にて』から読みませう。

こうして黄色い下翅のカトカラの幾つかを並べてみると、矢張りアサマだけが雌雄の触角の長さに相違がある。まだ全種の触角を確認してはいないけど、今のところアサマの♀だけが触角が短い傾向がある。これについては第1章から第4章にかけて書いとります。

因みに、この日は1頭だけアサマがいた。勿論、ボロボロでした。

  
(註7)クロシオキシタバ

(Catocala kuangtungensis)

(♂)

(♀)

カトカラ元年vol.9『落武者源平合戦』と、その続編『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』を読んでおくんなまし。

何だか今回は、自分のブログの宣伝ばっかになっちゃったなあ…。

 

デカいガシラを食うざます。

 
やっとカトカラの連載が一段落したので、ようやく食いもんの話が書ける。
少し前の話だけど、読んでたもれ。

6月上旬の事だったと思う。
スーパー玉出で、見たこともないようなデカいガシラが半額で売っていた。

 

 
勿論、ガシラを食ったことは何度もあるけれど、こんだけデカいのを見たのは初めてだった。大体は姿そのままを唐揚げにするか、煮付けにするとかが定番だから、そう大きくないイメージの方が強いのである。

こんだけデカいのは食ったことがないし、半額なんだから、ここは買いでしょう。
けど、頭と尻尾側の両方あって悩んだ。普段なら迷わず頭側を選ぶのだが、どう見ても尻尾側の方が身の量が多かったからだ。ガシラって、頭がデッカチで歩溜まりが悪いんだよなあ。
でも魚と云えば、尾頭付きという言葉もあるし、頭の方が旨いと言われている。ここは矢張り、頭の方を選ぶことにしよう。

あっ、言い忘れてたけど「ガシラ」とは関西地方の呼び名で、正式名称は「カサゴ(笠子)」であります。他にも各地に沢山の地方名があるようだ。日本全国どこにでもいるし、そんだけ昔から親しまれていた魚なんだろね。しかし、普通のスーパーでは滅多にお目にかからない。何でかっつーと、磯の魚で沢山は獲れないし、高級魚だからみたい。昔はそうでもなかったのような気がするけどなあ…。
最近は、そうゆう風に「昔は大衆魚だったけど、今は高級魚です。」って魚、多くないか❓
これは漁獲高が減ったと云うのもあるのだろうが、グルメブームで美味しい魚だと知っている人が増えたと云うのもあるのだろう。供給量は変わってないのに需要が増えれば、高値になってゆくのは道理だかんね。

 

 
家で一番デカい皿に乗せて、ほぼ皿いっぱいの大きさなんだから、やっぱデカい。
全体像は、こんな感じです。↙

 

(出典『みえぎょれん』)

 
頭デッカチだし、全体的にガサガサしててブサイクだ。まあ、ブサイクの魚の方が美味いとは言うけどね。
そう云えば、ウルトラ怪獣のガラモンのモチーフは、コヤツだと聞いた事があるぞ。

 
【ガラモン】

(出典『MEDICOM TOYY』)

 
確かに似てるっちゃ、似てるな。
顔デカいし、唇は分厚くて口角は下がってる。色的にも似てる。

ところで、ガラモンとピグモンはどう違うんだっけ❓
設定的にはガラモンの方がデカかったと思うんだけど、それ以外はワカラン。まあ、所詮は『ウルトラQ』で使ったガラモンの着ぐるみを改造して『ウルトラマン』に登場させたのがピグモンなんだろうけどさ。

スマン、話が逸れた。本文に戻る。
ガシラといえば、締まりの良い白身で脂がのっていて旨い魚だ。クセも無いから、和洋中華ともに様々な料理に使われるといったイメージがある。和食では鍋料理・潮汁・味噌汁といった汁ものや刺身、煮付け、小振りならば唐揚げにされる。また、洋であればブイヤベースやアクアパッツァなどによく使われる魚だ。中華は、あまりイメージがないが、唐揚げの甘酢餡かけとか清蒸(チンジョン)といった辺りかな。

先ずブイヤベースやアクアパッツァは他の具材もいっぱい必要になってくるし、仕込みも邪魔くさい。それに良い出汁が出るまで時間が掛かりそうなのでパス。
鍋も同じ理由で除外。潮汁や味噌汁も似たようなものだ。鮮度的に刺身は無理だし、唐揚げにするにはデカ過ぎる。
中華餡掛けも揚物だし、甘酢なんて甘いもんは酒呑みには言語道断だ。
となると、残るは煮付けか清蒸だ。でも、煮付けも甘酢餡ほどではないにせよ、甘めの味付けだよな…。
とはいうものの、ワタクシ、けっして煮付けが嫌いなワケではない。甘過ぎる煮付けは苦手なだけだ。まあ、甘くしなければいいだけの事なんだけどね。なれば、ここはやっぱ定番の煮付けかな。
しかし、ここで重大な事に気づく。青山椒を切らしているのだ。毎年、山椒の青い実を山で採るか、買うかして冷凍庫に保存しているのだが、今は切らしていて無いのだ。それだとワシの理想の煮付けは作れない。青山椒を入れると、魚の臭みがとれ、味も格段に良くなるのだ。

ハイハイ、自動的にメニューが決まりましたなあ。
但し、清蒸といっても蒸し器とか使って本格的にやるつもりはない。こっちとしては、一刻も早く酒を呑みたいのだ。チンタラやってる暇はない。お手軽清蒸でいく。

それではササッと作っちゃいましょう。

①先ずは魚の裏表に塩を振り、傾けた状態で30分おく。
これは魚の臭みを取るためである。塩を振って暫くおくと、浸透圧の関係で臭み成分が液体となって外に出てくるのだ。傾けるのは、その臭み汁が魚に付かないようにする為である。

ここで、『アンタさっき、一刻も早く酒呑みたいからチンタラやってる暇はないと言ったばかりじゃないか❗』などとソッコーでツッコミが入りそうだけど、御安心めされ。既に、この工程は何の料理にするかグジグジ思い悩んでいる間に済ませておるのじゃ。つまり、何の料理にするにせよ、この臭み抜きは必須工程なんである。
(ΦωΦ)フフフ…、その辺は抜かりがないのだよ、明智くん。

②30分後に水で洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。
でもって皿に乗せ、顆粒の昆布だしをちょっとだけかける。出来れば、昆布を下に敷いた方がいいのだが、あいにく昆布も切らしていたのだ。更にそこに上から酒をオラオラじゃなくて、優しくブッかけて軽く塩を振る。

③あとはラップしてレンジでチンするだけだ。
自分は一度、オートでチンして、もう1回オートでチンするのが基本だけど、熱の入り具合で3回チンする事もある。但し、3回目は様子を見ながら、テキトーなところで止める事も多い。

④その間に素早く白ネギを切って、白髪ネギを作る。
頃合いをみて、フライパンに胡麻油を入れて火にかける。量はお好みだが、ややたっぷりめが宜しかろう。

⑤ラップを取り、白髪ネギを盛る。その上から煙が出るまでチンチンに熱した胡麻油をエイヤ❗とかける。リビドー全開。この瞬間がゾクゾクするくらい気持ちいい。ジュッとかジャッとか心地良い音がした後に、辺り一面に胡麻油とネギの香りが立ち込める。
う〜ん、トレビアーン(☆▽☆)❗

思わず、フランスの古城でワシのモトクロス用のライディングスーツを見たフランス人の紳士に『OHー、トレビアーン❗』と言われたのを思い出したよ。そういえば、別な観光地でも『OHー、サムラーイ❗』と言われたっけ…。
そんな事は、どうでもよろし。ハイハイ、出来上がりましたよーん\(^o^)/

 

 
魚料理って、頭が左側にすることが決まりだというのを思い出して、ひっくり返す。

 

 
あれっ?、これだと頭の上下が逆さまになるじゃないか。
考えてみれば半身なんだから、それも当たり前か…。
そんな事は、どうでもよろし。
早速、食べてみる。
WAOっ❗❗、身がブリンブリンやないの。そして、上品な旨味と甘みが後から追いかけてくる。小さいガシラとは味の趣きが全然違うじゃないか。美味いねぇ〜(≧▽≦)
途中、飽きたら醤油をかけても美味いよ〜ん。
これで約300円って、激安やな。やっぱ、食材チャレンジャーいがは偉いよ。嬉しいから、もう自画自賛なのだ。

残った汁があまりにも旨くて、捨てれなかった。ガシラは骨からメチャメチャ良い出汁が出るのである。なワケで、それをベースにスープを作った。味付けは塩ベースに、ちょっとだけ醤油である。
これまた美味だったので、ラーメンを作ることにした。

 

 
具はネギとモヤシ、温泉卵のみ。ガシラのスープを生かしたかったので、シンプルにしたのだ。
おっと忘れてた。麺はいつものマイ・フェバリットの『マルちゃんの極太中華麺』です。

 

 
(≧▽≦)んニャロメー❗
上品だが、強い旨味と胡麻油のコクがあって、メチャメチャ美味いやんけー。ガシラの出汁、恐るべしである。
これでラーメン屋したら、流行るでぇ〜。
でも、こんなラーメン、一日3杯しか出せへんでぇ〜。
店、ソッコーで潰れるでぇ〜。あんじょう殺したってやぁ〜。

 
                        おしまい

  
追伸
カサゴの旬はいつなのか調べてみると、色んな説があった。
基本は秋から初春が旬という声が多かったが、春や初夏から冬という説もあったりして、ようワカランところがある。
普通の魚の旬は、産卵前だと言われている。その頃が栄養を体にたくさん蓄えているので一番美味しいというワケだ。
更に調べて驚いたのは、カサゴは産卵で子孫を残す魚ではなく、体内受精で稚魚を産むという。秋に交尾したメスは1~3ヶ月後くらいに数万尾の稚魚を産むらしい。ということは、やっぱり旬は冬かな。
でも季節を問わずに、年間を通じてあまり味が落ちないという説もあった。まあ、美味かったから別にいいんだけどね。
いや、とゆう事は冬とかだったら、これよりもっと美味いって事か…。
冬に売ってたら、半額でなくとも買いだね。

 

2019’カトカラ2年生 其の1 最終章

 
   No.18 アサマキシタバ(6)

  『深甚なるストレッケリィ』

 
アサマキシタバの解説編の続きである。でもって、今度こそ最終章である。
前回で最終話になる予定が、ドツボに嵌まって💦トッピンシャン。とんでもない大脱線となった。まさか自分でも最初の項目である【学名】で終わるとは夢にも思わなかったよ。

仕切り直しで、アタマからいく。
今度こそ、石塚さんの『世界のカトカラ(註1)』から画像をパクリまくりである。石塚さん、いつもスイマセン。

 
【アサマキシタバ ♂】

 
【同♀】

 
【♂の裏面】

【♀の裏面】

 
今回、♀の裏面の画像を差し替えた。でも同じ個体です。触角が見やすいようにとマチ針を外したのだ。
オスとメスは一見して、かなり見た目が違うのだが、それについては後ほど別項を設けて書きます。

 
【分類】
ヤガ科 Noctuidae
シタバガ亜科 Catocalinae
カトカラ(シタガバ)属 Catocala

 
【学名】
Catocala streckeri staudinger,1888

学名の属名 Catocala の語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
小種名 streckeri の語源は、おそらくアメリカの昆虫学者ハーマン・ストレッカーに献名されたものだろう。詳しくは前回を参照されたし。

 
【和名】
アサマキシタバの後半部分の「キシタバ」は、下翅が黄色いシタバガの仲間と云うこと。カトカラ(シタバガ)属の中で、このキシタバと名の付くものは下翅が黄色いグループに含まれる。
前半部分の「アサマ」は、たぶん長野県と群馬県とに跨がる浅間山に因んだものだろう。
蝶にもアサマイチモンシ、アサマシジミってのがいて、由来は最初に浅間山周辺で採集されたからだ。たぶん同じようなもんっしょ。とはいえ、浅間山ならぬ浅間さんが最初に見つけたからだったりして…。
何か冒頭から雑いよなあ。きっと文章を書くのに疲れておるのだ。気を取り直して、前へと進めよう。

 
【亜種】
調べた範囲では、亜種は特に記載されていないようだ。
タイプ産地は、おそらくアムールとか沿海州(ロシア南東部)だろう。この辺りの産地と朝鮮半島のものがわりと下翅の黒帯が細く、黄色い部分が広いような気がする。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
上が韓国産で、下がロシア産である。
見た目の印象が結構違う。黒っぽい日本のものよりも、キレイだ。
とはいえ、傾向があると云うだけで亜種区分する程のものではないのだろう。
でもググってると、他にも韓国産のアサマキシタバの画像が出てきた。

 


(出典 2点共『www.jpmoth.org』)

 
う〜ん、こんだけ黄色いのが続くと考えちゃうなあ…。
もし分けるとなると、日本の黒っぽいモノの方が別亜種になるんだろね。どこにも誰もそんな事は書いてないけど、黄色いのと日本のような黒っぽいヤツとは大陸では連続的に分布していて、厳密的には線引き出来ないのかもしれない。そうゆう事にしておこっと。

その後、日本の分布について調べてたら、増井武彦氏の『四国の蛾の分布資料(Ⅷ) オオシロシタバとアサマキシタバの発見(註2)』と云う論文に以下のような記述を見つけた。

「5月下旬に本種の1♀を採集することができた。得られた個体は開張55mmでやや大型であり、コガタキシタバを連想させるほど後翅の黄色帯は濃く、やや中部以北産の個体とは趣を異にしている。」

四国のアサマは他と違ってるのか…❓
それで思い出した。そういえば愛媛産のアサマキシタバも、そんな感じだったような気がするぞ。

 

(出典『南四国の蛾』)

 
やはり、黄色い。
でもなあ…個体差もあるしなあ…。明確には分けれないんだろなあ…。
下手に触れればロクな事がない。一々、疑問を持つからドツボにハマり、文章が長くなるのだ。個体差があって。厳密的には分けれない。やっぱり、そうゆう事にしておこっと。

亜種はいないが、ヨーロッパに小型の近縁種がいるもようだ。

 
【Catocala euychea Treitschke,1835】


(出典『世界のカトカラ』)

 
翅の斑紋がアサマとは全然違うけど、♂の交尾器の構造が似通っているそうだ。
地中海周辺から西アジアに分布し、和名にギリシャキシタバの名がある。

一応、カトカラのDNA解析の系統図を見たら、予想外のウスイロキシタバ(Catocala intacta)のクラスターに入れられていた。系統図からは、かなり近縁な関係に見受けられる。

 

(出典『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』)

 
とはいえ、DNA解析の結果が100%正しいかどうかは疑問なところもある。本能的に違うんじゃないかと思う解析結果も珠にあるのだ。全く違う系統の種が何らかの収斂の結果(例えばカタツムリ食のオサムシ)、互いに見た目が似通うってことはあるのは理解できる。でもそれとは違う、もっと本能的な違和感を珠に感じるのだ。
とにかく、解析のやり方によっては違う結果が出ることもあるだろう。だから結果を鵜呑みにはしないようにしている。
まあ将来的には検査方法が確立されて精度も高まるだろうから、信頼できるに足るようなものにはなってくんだろうけどさ…。
きっと、オラって肉眼で見えてるものしか信じない旧いタイプの人なんだろね。でも肉眼で区別できないものを分類するのって、はたして必要なのかな?全く不必要だとは言わないが、そんなのまで図鑑に載せ始めたら、混乱するだけだろ。いたずらに細分化するのって、疑問を感じるよ。

記事をアップ後、カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんからDNA解析の結果について御指摘があった。折角だから載せておきます。

『引用されているDNA系統樹は、新川さんにやっていただいたミトコンドリアND5をMLで処理したものです。これでアサマとウスイロが近縁と判断するのは誤りです。ここで類縁が指摘されているのはワモンとキララ、オオシロとcerogama、ムラサキとrelicatだけです。そのほかのものは類縁関係は判断できません。おそらくミトコンドリアND5の解析ではカトカラの系統を推定するのは無理なのだと思います。😀』

また、補足のコメントもござった。

『遺伝子解析は有力なデータの一つです。その解析結果をどう解釈するかが問題だとおもいます。』

石塚さんが言ってるんだから、これについては何ら反論は無い。んな事よりも、DNA解析って何なん❓益々、信用でけへんわ。蝶かて、どーよ❓って感じ。サトウラギンとかヤマウラギンとか無視だな。

 
【シノニム(同物異名)】
Ephesia strecceri Hampson, 1913

これは属名が、Ephesiaからcatocalaに変更になったからだろう。
Ephesiaという属名は古い属名で、リンネが鱗翅目を分類した時に命名した4つの属のうちの一つである。

あっ、小種名は字面が似ているから同じ「streckeri」かと思いきや、よく見ると綴りが違うや(・o・)
違うけど、ここは掘り下げないようにしよう。もうウンザリなのだ。こんなの、どうせミスプリントだ。これ以上、迷宮を彷徨うのは御免だ。また前回の学名の項みたくなりたくない。

 
【変異・異常型】
アサマは上翅斑紋が不明瞭なものが多いが、柄にメリハリがあるものもいるようだ。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
他には、稀に後翅の中央黒帯が細まるものや、ほぼ消失する異常型などが知られているそうな。
たぶん、↙こうゆう型のことだろう。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ(註3)』にも異常型が載っていた。

 

(出典 岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』学研)

 
(・・;んっ❓ 何か違和感を感じた。
触角や後脚が違うが、斑紋は全く同じに見える。
もし見当違いならゴメンなさいです。もしかしてコレって同個体で、展翅をやり直しただけなんじゃないのか❓
どっちが再展翅したモノなのかはワカンナイけど、まあ岸田先生と石塚さんは懇意にされてるみたいだから、そうゆう標本の貸し借りみたいな事はよくあるのだろう。勝手な推測だけど。

 
【開張(mm)】
『原色日本産蛾類図鑑Ⅱ』では、52〜54mm。『日本産蛾類標準図鑑』では、47〜54mm内外となっていた。

日本のカトカラの中では、やや小さい部類に入るだろう。

 
【雌雄の判別】
カトカラは基本的に雌雄同型の斑紋なので、雌雄の判別には慣れが必要である。一応、参考までにアサマキシタバの雌雄の判別法を自分なりに書いておきます。

①同定をする場合、先ずは裏返して尻先と産卵管の有無を確認しましょう。その2つが有れば、間違いなくメスです。

 

 
黄色いのが、おそらく産卵管だろう。
以下、確認されたし(画像はピンチアウトすると拡大できます)。

 

 
一方、オスはこんな感じ。

 

  
一見してオスは毛束が多く、スリットは認められない。
 
補足事項として、以下のような雌雄の特徴が傾向として見受けられる。

②オスは腹部が細くて長い。反対にメスは太くて短いものが多い。また、尻先も丸くなる傾向がある。

③オスは尻先に毛束がある。メスも無くはないが、その量は遥かに少ない。

④オスは前脚(第1脚)と後脚(第3脚)が多くの毛に覆われ、モフモフである。特に新鮮な個体ではコレが顕著である。対するメスは毛があるにはあるが、オスよりも明らかに少なく、モフモフ度は低い。

 
(オスの前脚)

 
(メスの前脚)

 
横からの画像も加えておこう。

(オス)

  
前脚だけでなく、後脚なんかもモフモフなのだ。

 
(メス)

 
但し、この判別法は新鮮な個体に限る。飛び古した個体は体毛が抜け落ちるからだ。

④相対的にメスの方が翅に丸みがある。バランスは横長で、胴体の太さも相俟ってか、ずんぐりむっくりな印象を受ける。それと比して、オスは全体的に細くてシャープに見える。

⑤触角は比較的オスの方が長い傾向にある。

これらは上の画像や冒頭の展翅画像でも確認できる。
但し、補足の②〜⑤の各項には例外もあるので、これらを総合的に鑑みて同定することが必要だろう。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬。

本種は、杉(1971)によれば、内陸準乾燥地を好む蛾であり、ミズナラ帯にも進入しているので、中部以北、北海道まで広く産する。ところが、近畿以西の西南日本では、マメキシタバと同様に低標高地で発見されているのが特徴である。
たしかに近畿地方では低山地に多い。『世界のカトカラ』には「一般にあまり多くないが、場所によっては多産する。」とあったが、近畿では広く分布していて、何処にでもいると云った印象がある。一瞬、暖帯を好む種なのかと思ったが、九州地方では稀なので、それは考えられない。となると、幼虫の食樹の分布と関係があるのかもしれない。近畿地方では冷温帯に好んで生えるミズナラが少なく、幼虫は主に低山地に生えるクヌギ、コナラ、アベマキ、ナラガシワ、アラカシ、ウバメガシを食樹として利用しているからなのかもしれない。

わかり易いように分布図を貼り付けとこっと。

 

(出典『日本のCatocala(註4)』)

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
因みに、三重県が空白になっているが、ネットで見ると三重県北部での採集記録がある。また、茨城県太子町、東京都武蔵村山市、千葉県市川市でも見つかっているようだ。

四国では1978年に増井武彦氏によって香川県で初めて分布が確認され、極めて珍しいものだった。しかし近年になって各地で個体数を増やしており、今では四国全県で見られるという。
記録を拾うと、香川県さぬき市前山、高松市藤尾神社、丸亀市。徳島県八方町(文化の森は総合公園)。愛媛県西条市、松山市。高知県いの(伊野)町などがあった。

中国地方でも従来は少ないとされてきたが、近年は増えつつあるようで、『世界のカトカラ』の分布図では空白になっている島根県でも発見され、現在は全県に記録がある。記録が拾えた産地を列挙しておく。
岡山県美作市、奥矢津。広島県宮島市、広島市東区。鳥取県日野郡。島根県太田市三瓶町。山口県秋吉台、小野田市。

九州では長らく分布しないとされてきたが、2006年に大分県深耶馬溪、釈迦ヶ岳で見つかった。その後、同じく大分県九酔渓、佐賀県作礼山、福岡県北九州市平尾台、長崎県対馬でも分布が確認されている。

国外では、アムール、朝鮮半島、中国東北部に分布している。

 
【レッドデータブック】
以下の都道府県が稀少種に指定しているようだ。

滋賀県:絶滅危機増大種
兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)
香川県:準絶滅危惧種

わりと居るとされる近畿地方なのに、2県もランクされているじゃないか。兵庫県なんぞは、淡路島から県中部に広く記録があるのに、なして(・ ・)❓
やっぱレッドデータブックって、トンチンカンなとこあるワ。幼虫の食樹はクヌギなどありふれたものなので、そないに減っているものではないだろう。とはいえ、里山の雑木林は放置されてるから将来的にはわからないけど。

 
【成虫出現期】
日本のカトカラの中では、最も早くに現れる。
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、5E-7(5月終わりから7月)となっているが、『世界のカトカラ』や『日本産蛾類標準図鑑』では5月中旬から現れ、8月中旬頃まで見られるとある。
近畿地方では、5月中旬頃から現れ、6月中旬には殆んど姿を消す。西日本だと何処でも概ねそんな感じだろう。他のカトカラと比べて発生期間が短いように思う。それと比べて図鑑の発生期が長いのは、たぶん東日本では標高が高かったり、寒冷地であったりして、低山地と比べて発生が遅れる地域があるからだろう。
憶測で言うのも何なんで、一応調べとくか…。

西尾規孝氏の『日本のCatocala』によると、「長野県の温暖な地域では5月下旬から、低山地では6月上、中旬から下旬、標高1000m付近のミズナラやカシワ林では6月中旬から7月上旬に出現する。」とあった。予想通りでおましたな。
ついでに北海道も調べたけど、今一つハッキリとした資料は見つけられなかった。しかし、ネットに7月に撮られた写真が載ってて、かなり新鮮な個体だった。なので、おそらく6月下旬から7月上旬に現れるものと思われる。
また『日本のCatocala』では、出現ピークは1週間から10日。寿命は2、3週間と書いてあった。実際、2020年に生駒山地に樹液採集に行った折は、そんなもんだった。最初に行ったのが5月24日で、この日は新鮮な個体ばかりだった。たぶん発生初期だったかと思われる。しかし、16日後の6月9日に行った時は1頭たりとも見なかった。勿論、全く同じ場所である。つまり、たった16日で消えてしまったと云うことだ。そこから類推すると、発生期間はやはりて2週間から3週間と云うことになる。多くのカトカラの寿命が2、3ヶ月だから、極めて短い。
これは、いったい何を意味するのだろう❓
考えられるとすれば、交尾、産卵するまでの間が極めて短く、羽化後すぐに交尾、産卵するという事だろう。多くのカトカラがメスの卵巣が成熟するまでに時間を要するそうだから、これもカトカラの中では異例と言えるだろう。

 
【成虫の生態】
かつては珍品だったようだが、生態が解明されてからは普通種に成り下がったと書いてあるのを各所で見た。けど、何れも具体的な理由については言及されていなかった。おそらく灯火採集よりも樹液採集の方が得やすいと分かったからだろう。あとは、昔は個体数が少なかった可能性も考えられる。また或いは、カトカラに興味を持つものが当時は少なかったと云うのも可能性としてはあるだろう。誰もが、その珍しいと云う記述を鵜呑みにして疑問を持たなかった事は充分考えられるからだ。

灯火にも樹液にも、よく集まるとされる。
しかし個人的には、その時期にライトトラップをした事が無いので、外灯に来たのを1頭くらいしか見たことがない。
但し、時に大発生し、その時は外灯に多数が集まるようだ。長野県では1981年前後と1999年、2005年から2007年にかけて大発生したそうだ。カトカラ2年生のワシは知らんけど、近畿地方でも2015年前後に大発生して、大阪市内や神戸、西宮、宝塚などの市街地、果ては関西空港でも灯下に集まるものが多く見られたという。大阪市内に良好な発生地があるとは思えないから、飛翔力は、それなりに有りそうだね。ちょっと待て。となると、生駒山地で16日後に消えたのは、移動した事も考えられるな。とは言っても、やはり寿命は短いものと思われる。

灯火への飛来時刻は、調べたが明確な答えは見つけられなかった。参考までに言い添えておくと、近畿地方の大発生の時は、日没後、時間帯に関係なく現れたようだ。そんなに珍しい種類ではないので、あまり注視されてなくて、言及もされないのだろう。

ちょっと面白いのは、多くの昆虫が大発生した翌年には大幅に減少するのに対し、連続で大発生することもあると云う点だ。関西でも翌年も結構いたそうだ。
大発生した者の多くが翌年に減少するのは、それに呼応して天敵も増えるからだと言われている。例えばオニベニシタバが大発生した時は、それに連れて卵に寄生する天敵のトビコバチの1種も増えたそうだ。そういえばマイマイガが大量発生した時は、普段は少ない天敵クロカタビロオサムシも大発生したもんな。

樹液には日没後、比較的早くに集まって来る。午後9時前後に飛来が一旦止まり、10時過ぎくらいからポツポツ飛んできて11時から0時にかけてまた飛来数が増えると云う日が多かった。とはいえ、日没後から間もない方が飛来数は多いと云う印象が強い。
しかし、2020年は日没後7時台に数頭飛んできて、飛来がピタリと止まり、9時台になって活性化した。その後、11時まで継続して飛んで来た(11時以降は帰ったので分からない)。たぶん、その日の微妙な気候条件によっても左右されるのだろう。

糖蜜トラップにも飛来する。
2020年に1回だけしか試した事はないが、最初はフル無視されて、樹液にしか反応しなかった。しかし、なぜか10時台になって急に反応し始め、帰った11時までに6例の飛来があった。

樹液の他に、花にも吸蜜に集まる。記録されている花はヤマウルシ、イボタ、カキ(柿)、ウツギ、クリ。
また熟したクワの実やアブラムシの分泌物にも吸汁に訪れるようだ。

成虫は昼間は頭を下にしてクヌギやコナラなどに静止していると言うが、真面目に探した事がないので見たことはない。
驚いて飛び立つと、上向きに着地して直ぐに下向きに素早く姿勢を変えるという。他のカトカラは着地後、暫くしてから向きを変えるものが多いと云うイメージがあるから、ちょっと変わってるかもしれない。

交尾行動も変わっていて『日本のCatocala』によれば、交尾は樹液近くのクヌギの葉裏で観察されている。多くのカトカラが樹幹で交尾するから、これも特異と言っていいだろう。時間帯は午後11時から深夜2時。ブナ科コナラ属を食樹とするカトカラの多くが日没後、比較的早い時間帯に交尾が観察されているから、これも特異かもしれない。但し、野外でカトカラの交尾が観察されることは稀だから、今後、新しい知見がもたらされて覆される可能性はある。
♀腹部内にある交尾曩の精包数から交尾は複数回行われているようだ。

同じく『日本のCatocala』に拠れば、産卵習性も特異だ。
日没後、メス親は食樹であるナラ類の周辺を飛翔し、樹幹に着地する。その後、歩行して枯れた枝にできたカミキリムシやキクイムシがあけた孔に数10卵を産み、更に入口を分泌物で塞ぐそうだ。したがって卵期にはトビコバチなどの天敵は今のところ見当たらないという。また産卵習性が他のカトカラとは異なることが、大発生時の消長の特異性に関わっているかもしれないと書かれている。なるほどね。
西尾氏の観察力は凄いや。よくぞこんな事まで調べたなと思う。真似できない凄い方です。そうゆうワケで、ここから先も西尾氏の『日本のCatocala』に頼りっきりで書く。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のクヌギ、コナラ、アベマキ、ミズナラ、アラカシ。
西尾氏は、この他にカシワ、ナラガシワ、ウバメガシを加えておられる。
低山地に生息するものはクヌギ、コナラ、アベマキ、アラカシなどを、1000m付近の山地に生息しているものはミズナラを利用しているものと思われる。北海道にはクヌギ、アベマキ、アラカシ、ナラガシワ、ウバメガシは自生しておらず、コナラも極めて稀なので、おそらく低地ではカシワ、山地ではミズナラを利用しているものと考えられる。

 
【幼生期の生態】
幼生期については全くのド素人ゆえ、毎度の事だが今回も西尾氏の『日本のCatocala』の力を全面的にお借りする。

卵はカミキリムシのあけた孔に纏めて産まれ、互いが分泌液で接着されている。

 
(卵)


(出典『日本のCatocala』)

まんじゅう型で扁平、他種よりも小さい。卵殻は柔らかく、色は黄白色。
これには驚いた。およそカトカラの卵には見えない。こんな色のツンツルテンの卵は他に類を見ないのだ。カトカラの卵といえば、大体こんな感じだもんね。↙

 


(以上4点共 出典『日本のCatocala』)

上からマメキシタバ、フシキキシタバ、オニベニシタバ、ムラサキシタバである。因みにマメとフシキ、オニベニはアサマと同じく食樹はナラ類である。
とにかく、大概の卵はこんな風に基本は溝付きなんである。それに色も殆んどは淡褐色とか暗褐色だ。こんな目立つ色の卵は他にないのだ。これについて西尾氏は、「卵に対する捕食もしくは寄生などの圧力が殆んどかからず、卵の色彩が隠蔽的になるような進化が起きなかった結果と考えられる。」と推察されておられる。
時に連続的に複数年の大発生が見られるのは、或いはこれが原因なのかもしれない。つまり、あまり発生数が天敵に左右されない可能性があるってことだ。
卵塊で産卵されるのも珍しいようだ。飼育下での話だが、他に卵塊性産卵をすると考えられる種は、カバフキシタバとコガタキシタバくらいらしい。

幼虫は5齢を経て、蛹になる。

 
(終齢幼虫)

(出典『明石の蛾達』)

 

(出典『青森の蝶たち』)

 

(出典『フォト蔵』)

 


(出典『日本のCatocala』)

 
野外の幼虫の色彩変異はやや有り、白粉で覆われるために分かりにくいが、著しく白化したものから色彩のコントラストが激しいものまで連続的に変異が見られる。
幼虫は樹齢15〜40年の壮齢木によく付き、卵塊産卵性があるために1本の木から複数の幼虫が見つかることも少なくないという。
若齡幼虫は日中、葉裏に静止している。終齢幼虫になると、細い枝から太い枝や樹幹に降りてくる。しかし、樹幹にまで降りてくる個体はあまり多くない。

 

 
終齢幼虫の体長は約55mm。頭幅は淡色のものが平均3.4mm。黒っぽいものが平均3.2mmと差異が認められるそうだ。

 
(幼虫の頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
各種カトカラの幼虫の識別は、この頭部の斑紋や色彩が重要な手がかりとなるようだ。

蛹化場所も特異で、他のカトカラが落葉の下など地表部なのに対して、食樹上の葉の重なり合った部分から容易に発見されるという。但し、北海道ではカシワ林の落葉の下から蛹が見つかっている(小木,2002)。
繭の構造も特異で、他のカトカラが1重の粗末な作りなのに対し、丈夫な2重構造になっている。西尾氏は、これと樹上での営繭との関連を示唆されておられる。ようは樹上の方が風雨に晒され、気温の変化も激しいから、それに耐えうるために二重構造となったと云うワケだね。

 
(繭と蛹)


(出典 4点共『日本のCatocala』)

 
下2点が葉っぱを開いたものである。
更に繭を破ると、こんな感じ。↙

 


(出典2点共『明石の蛾達』)

 
アサマキシタバって、カトカラの常識を逸脱している事だらけで面白い。地味なカトカラだし、小馬鹿にしていたが、甚だしく奥深きカトカラなんだね。

                        おしまい

 
追伸
やっと終わりました。
アサマキシタバなんぞに、まさかの六章も費やすとは夢にも思わなかったよ。あの美しき女王、ムラサキシタバの連載だって五章までだったのだ。全くの想定外だったよ。でも調べていくうちに面白くなってきてしまった。アサマって小汚いし、あまり興味がなかったけど、どんだけ変わり者やねん。あんた、メッチャおもろいやんけ。人と同じで、見た目だけで判断しちゃダメだね。

前回にも触れたが、この解説編と第一章は3月にはほぼ出来上がっていた。しかし、触角の件と生態面で確認したい事があって暫く寝かしておくこたにした。それが、再度書き始めると、何だかんだとドえりゃー長くなってしまった。この解説編も、かなり加筆する事になった。次回はすんなり終わることを願おう。

 
(註1)世界のカトカラ

カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんのカトカラ入門書にして、全世界のカトカラをほぼ網羅した図説。出版元は『(有)むし社』。

 
(註2)『四国の蛾の分布資料(Ⅷ)』
「蝶と蛾」vol.30 No.1&2 1979年

 
(註3)『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』

日本蛾類学会の会長でもある岸田泰則先生編著の、日本の蛾類について最も詳しく書かれた図鑑。全4巻からなる。

 
(註4)『日本のCatocala』

2009年に西尾規孝氏により自費出版された。
日本のカトカラに於いては、圧倒的に最も信頼できる文献。日本のカトカラについて全ての面に於いて西尾氏の高い観察眼が発揮されている。幼生期の生態解明を筆頭に、よくぞここまで調べれられたなと思う。驚嘆せざるおえない。
しかし、自費出版なので目に触れる機会は少ない。しかも一冊8万円くらいなので、手が中々出せない代物。誰か発言力のある偉い人が、どっかの出版社に働きかけて廉価版を出してくんないかなあ。このまま蛾の愛好家の人たちの目に滅多に触れられないなんて勿体ないと思うんだよね。

 

2019’カトカラ2年生 其の1 第五章

 
 No.18 アサマキシタバ(5)

『シュタウディンガーの謎かけ』

 
いよいよ最後は解説編です。
えー、今回も石塚勝己さんの『世界のカトカラ(註1)』の画像を借りまくりまする。石塚さん、いつもスンマセン。

 
【アサマキシタバ♂】

【同♀】

【♂裏面】

【♀裏面】

 
【分類】
ヤガ科(Noctuidae)
シタバガ亜科(Catocalinae)
シタバガ属(Catocala)

属名は、愛好家の間ではシタバガ属と呼ばれることは殆んど無く、学名そのままの「カトカラ」が通称となっている。

 
【学名】Catocala streckeri Staudinger, 1888

記載者はドイツ人の昆虫学者・蒐集家・標本商のオットー・シュタウディンガー(Otto Staudinger)であろう。
シュタウディンガーは日本の蝶だと、ウラジロミドリシジミ、アイノミドリシジミ、ヒロオビミドリシジミ、オオゴマシジミの学名の後ろに其の名があるから、ゼフィルス好きの人なら馴染みがあるだろう。

属名「Catocala」の語源は、ギリシャ語の「Cato=下」と「Kalos=美しい」を合わせた造語である。
小種名「streckeri」は、頼みの綱である平嶋義宏氏の『蝶の学名−その語源と解説−』には残念ながら載っていなかった。ようするに「streckeri」と云う学名がついてる蝶はいないようなのだ。
と云うワケで、今回は自力で語源を探(さぐ)るしかない。

小種名「streckeri(ストレッケリィ)」は、おそらく誰かに献名されたものだろう。
なぜなら、人名っぽい「strecker」と云う語尾に「i」が付いているからだ。学名の命名規約上では誰かに献名する場合には、男性だとその名前の語尾にラテン語の属格の「〜i」を付けることが慣わしになっているからである。
だとするならば、問題は「strecker」とは誰かと云うことだ。

最初に候補として考えたのが、ドイツ人化学者のアドルフ・シュトレッカー(Adolph Friedrich Ludwig Strecker)である。
昆虫学者ではないが、シュタウディンガーとは同じドイツ人同士だから何らかの関わりがあったかもしれないと考えたのだ。
まずはシュタウディンガーの生没年だが、西暦1830〜1900年となっていた。シュトレッカーは、1822〜1871年だった。つまり、二人はほぼ同時代に活躍している。であるからして、可能性はある。
しかし、ここで重大な事に気づく。アサマキシタバの記載年は1888年なのだ。まさかのシュトレッカーは既に没しているのである。没後に献名された可能性も無いではないが、没後17年も経ってからの献名は考え難(にく)い。もし二人の親交が深ければ、死んでから時を経ずして献名されていて然りだからだ。
もしかして、シュタウディンガーは1871年から1888年の間に何にも記載していないのでは❓とも考えたが、調べたら、そんなことは全然なかった。結構、この間も蝶や蛾を記載しているのである。A.シュトレッカーの可能性は低いだろう。
😓あ〜あ、ふりだしに戻っちゃったよ。

全然関係ない話だけど、このシュトレッカーの没日は11月7日。この日は、著名な博物学者であるアルフレッド・ウォレスと松村松年が亡くなった日でもある。シュトレッカーはどうでもいいけど、ウォレスと松村松年が同じ日に亡くなったというのは感慨深いものがある。

取り敢えず、他に学名に同じ小種名が使われているものはないかと探してみた。そこから、語源を追えないかと思ったのである。
検索すると「Ficimia streckeri(メキシコフックノーズスネーク)」という蛇がトップに出てきた。
そこからさぐってゆくと、John Kern Strecker junior(ジョン・カーン・ストレッカー・ジュニア)という人物にヒットした。
英語版の Wikipedia を意訳してみる。

ジョン・カーン・ストレッカーは、1875年にイリノイ州で生まれ、13歳でテキサス州ウェイコに移住した。彼の主な関心は爬虫類、特にヘビだった。そして、18歳の時にベイラー大学の博物館のキュレーターとして雇われる。その後、彼は直ぐに各地を旅して博物館の標本収集を始める。彼は鳥、哺乳類、軟体動物、爬虫類、両生類に関する学術論文を発表し、1933年に死去するまで多くの新聞や雑誌の記事を書いた。

いくつかの爬虫類が、彼に因んで名付けられている。

・Ficimia streckeri(メキシコのヘビ)
・Pseudacris streckeri(カエル)
・Sistrurus miliarius streckeri(小型のガラガラヘビ)

 
J.K.ストレッカーは博物館の標本収集をしていたワケだから、昆虫も集めていた可能性はある。だから、この人に献名されたかもと思ったが、生没年的にそれは無さそうだ。1875年に生まれているから、アサマが記載された時はまだ13歳だ。いくらなんでも子供に献名はせんじゃろう。100%と無いとは言い切れないが、確率は極めて低い。他をあたろう。

色々調べていると、新たな鉱脈にブチ当たった。
驚いた事に、シュタウタウディンガーは、アサマキシタバの記載以前にも別な蛾に同じ小種名を付けている。
Kentrochrysalis streckeri(Staudinger, 1880)というロシア原産のスズメガの仲間だ。

 


(出典『http://tpittaway.tripod.com/china/k_str.htm 』)

 
補足すると、記載者と記載年が()括弧で括られているように、属名はシュタウディンガーの名付けたものとは変更になっている。元々の属名は「Sphinx(スフィンクス)」だ。個人的な好みとしては、コチラの方が圧倒的にカッコイイなと思う。

それにしても、同じ人に二度も献名したってことなのかな❓ならば、よほど懇意にしていた人物か…❓

また、この学名はサボテンにも付けられている。しかし、そこからも語源には辿り着けなかった。
何か、どんどんアサマキシタバの話から離れていってるような気がするが、もうここまできたら意地だ。納得いくまで調べてやろう。

延々調べてると、以下のような文を見つけた。

『GrrlScientist
A century of butterflies and moths

Collection Manager Jim Boone takes us on a tour through the Field Museum’s Herman Strecker Moth and Butterfly Collection
GrrlScientist

Historically, insect collecting was (and still is) a widespread and very popular educational hobby. But the earliest insect collectors weren’t professional entomologists — they were hobbyists.

Herman Strecker was a sculptor who lived in Pennsylvania from 1836 to 1901. But his art was not what gave him lasting fame. Instead, it was his hobby. Beginning when he was a teenager, Mr Strecker collected and studied butterflies and moths. Swapping specimens with scientists and specialists around the world brought him into contact with some of the most notable people of his day, such as Grand Duke Nicholas of Russia. Although considered an amateur by today’s standards, Mr Strecker named and described 251 different species of butterflies and moths, mostly in a book he illustrated and published in parts from 1872 to 1900. By the time he died, Mr Strecker had amassed the largest and most important collection of butterflies and moths in the Americas, comprising more than 50,000 specimens. In 1908. the Field Museum in Chicago purchased this collection along with several thousand letters between Strecker and other leading naturalists of the day.

In this interesting video, Collection Manager Jim Boone tells us a little about the history of the moth and butterfly collection held by the Field Museum in Chicago and shows us some its most interesting specimens.』

ざっくり訳すと、こうだ。

『GrrlScientist(進化生態学者・鳥類学者・科学作家・ジャーナリスト)
ー蝶と蛾の世紀ー

コレクション蒐集マネージャーのジム・ブーンが、フィールド博物館のハーマン・ストレッカーの蝶と蛾のコレクションの旅に御案内します。

歴史的に、昆虫の採集は広く普及しており、非常に人気の高い教育的趣味でした。しかし、初期の昆虫採集者は専門家の昆虫学者ではなく、愛好家たちでした。

ハーマン・ストレッカーは1836年から1901年までペンシルベニアに住んでいた彫刻家でした。しかし、彼の芸術作品は永続的な名声を得ることはありませんでした。
その一方で、彼は10代の頃から蝶や蛾を収集、研究しており、標本を世界中の学者や専門家と交換することで、ロシアの大公ニコラスなど、世界中の著名な専門家たちとも親交がありました。
ハーマン・ストレッカーは、現在の基準ではアマチュアと見なされますが、251種類の蝶と蛾に名前を付け、その殆どを1872年から1900年にかけて部分的に出版した本で図示、解説しました。
彼が亡くなった時には、その標本は5万点を超え、アメリカ大陸で最大かつ最も重要な蝶と蛾のコレクションとなっていました。シカゴの自然史博物館は、1908年にこの重要なコレクションを購入しました。また、ストレッカーと当時の他の主要な博物学者との間で交わされた数千通の手紙も得ました。

この興味深いビデオでは、コレクションマネージャーのジム・ブーンが、シカゴ自然史博物館が開催する蛾と蝶のコレクションの歴史について少しお話し、最も興味深い標本をいくつか紹介します。』

ハーマン・ストレッカーの生没年(註2)はシュタウディンガーが生きた時代とも被るから、アサマキシタバの学名はこの人に献名された可能性はある。アメリカ人だと云うのが気になるが、世界的なコレクターだったから、シュタウディンガーと親交があった可能性は高い。だいちシュタウディンガーは世界有数の標本商でもあるのだ。ストレッカーは、その良いお客さんだったに違いない。となると、上客に対する御機嫌とりに献名されたとか、そうゆう可能性は充分あるんじゃなかろうか❓
また、ストレッカーはロシア大公とも親交があったと云うのもアサマキシタバとの関連性が考えられる。おそらくかアサマの記載に使われたタイプ標本はロシア南東部のものだから、大公からストレッカー、もしくはシュタウディンガーの手に渡ったのではあるまいか❓

まあ、これは全てオラの勝手な想像だけどね。
だから、間違ってたら御免よ。

因みに、冒頭で「strecker」と云う学名がついてる蝶はいないみたいな事を書いたが、調べたら、このストレッカー由来の蝶がいた。
「Megathymus streckeri」というバカでかいセセリチョウにも、この小種名が付いている。

 

(出典『Wikipedia』)

 
たぶん英名は「Strecker’s giant skipper(ストレッカーのジャイアントスキッパー)」。
スキッパーはセセリチョウの英名だね。ジャイアントは言うまでもないが、巨大という意味だ。
米国では、モンタナ州南東部とノースダコタ州南西部からテキサス州南部、アリゾナ州北西部からユタ州南西部にかけて見られるそうだ。

 

(出典『Butterflies of America』)

 
🤯ゲゲッ❗、6.3センチもある。
バケモンだな。

記載者と記載年は(Skinner, 1895)となっている。これも()付きなので、Skinnerが記載してから後に属名が変更になったのだろう。

更に調べを進めていくと、このセセリチョウの仲間からストレッカーが記載したものと考えられるものが見つかった。

 
【Megathymus cofaqui(Strecker, 1876)】

 
【同裏面】

(出典『Butterflies of America』)

 
ストレッカーズ・ジャイアント・スキッパーよりも、コチラの方が見てくれはいいな。所詮はセセリだから、どっちも蛾みたいなもんだけどさ。

💡ピコリン。
ここで漸くシナプスが繋がった。
セセリチョウは蛾みたいなもんだと云うことは、もしかしてストレッカーは蝶よりも蛾を中心に蒐集、研究していたのではないか❓
慌てて、石塚さんの『世界のカトカラ』を見てみる。このストレッカーが記載したカトカラも、きっと有る筈だ。

日本には、ストレッカーが記載したカトカラはいなかった。もしあったとしたら直ぐにピンときてた筈だから、期待はしてなかったけどね。
ならばと、旧大陸(ヨーロッパからアジア)に分布するカトカラを調べてみる。
だが、こちらからも残念ながらストレッカーの名前は見い出せなかった。
但し、スタウディンガーの記載がゴチャマンに出てきた。
折角だから並べちゃおう。

 
・Catocala deuteronympha Staudinger,1861 ケンモンキシタバ

・Catocala orientalis Staudinger,1877 ウラルベニシタバ

・Catocala strekeri Staudinger,1888 アサマキシタバ

・Catocala repudiata Staudinger,1888 ネズミベニシタバ

・Catocala desiderata Staudinger,1888 ナガレモンベニシタバ

・Catocala neglecta Staudinger,1888 ヒメウスベニシタバ

・Catocala optima Staudinger,1888 オプティマベニシタバ

・Catocala doerriesi Staudinger,1888 クロゾメキシタバ

・Catocala remissa Staudinger,1891 サバクベニシタバ

・Catocala aestimabilis Staudinger,1891 カシュガルキシタバ

・Catocala eminens Staudinger,1892 チョコレートキシタバ

・Catocala koreana Staudinger,1892 アズミキシタバ

・Catocala abacta Staudinger,1900 トラフキシタバ

 
こんな事やってるから、徒(いたずら)に長くなるんだよなあ…。

さてさて、お次は新大陸である。考えてみれば、ストレッカーはアメリカ人なんだから、アメリカ大陸が1番有望だ。何で北米のお化けセセリチョウの時点でピンとこなかったんだろ?
とにかく、ここにストレッカーが記載したと思(おぼ)しきカトカラが有れば、ビンゴだろう。そして、スタウディンガーと同時代に記載していたならば、アサマキシタバの小種名はストレッカーに献名されたものと断定してもいいだろう。

ワクワクしながら、ページに目を通す。
w(● ̄0 ̄●)wワオッ❗、いきなり1つ目から「Strecker」の文字が目に飛び込んできだ。

アメリカオニベニシタバ Catocala aholibah Strecker,1874 とある。記載年もスタウディンガーの活躍した時代とピッタリ合う。
以下、ストレッカーの記載らしきものが続々と出てきた。

 
・Catocala obscura Strecker,1873 クラヤミクロシタバ

・Catocala agrippina Strecker,1874 アグリピナクロシタバ

・Catocala judith Strecker,1874 ユディトクロシタバ

・Catocala ulalume Strecker,1878 ウラルメクロシタバ

・Catocala dejecta Strecker,1880 ウナダレクロシタバ

・Catocala sappho Strecker,1883 カバフクロシタバ

・Catocala herodias Strecker,1876 マエジロカシベニシタバ

・Catocala hippolyta Strecker,1874 イポリタベニシタバ

・Catocala luciana Strecker,1874 ダイヘイゲンベニシタバ

・Catocala faustina Strecker,1873 ウエスタンベニシタバ

・Catocala delilah Strecker,1874 デリアキシタバ

・Catocala amestris Strecker,1874 テキサスキシタバ

・Catocala jair Strecker,1897 ニセオビナシチビキシタバ

 
何と、14種も記載している。これはスタウディンガーの13種類よりも1つ多い。そして、記載年の殆んどがスタウディンガーよりも早い(こんな事やってるから、徒(いたずら)に長くなるんだよなあとか言ったけど、スタウディンガーが記載したカトカラを抜き出しといたのが役に立ったよ)。
記載年が早いと云うことは、カトカラの記載に於いてはストレッカーの方がスタウディンガーよりも先輩なのだ。寧ろスタウディンガーがストレッカーに教えを乞うていたかもしれない。或いは、二人は互いに切磋琢磨するライバル関係にあったのかもね。
これらの事から、スタウディンガーが尊敬の念を込めて、アサマキシタバの学名にストレッカーの名前を冠したのだろう。

                         つづく

 
追伸
(^o^;)アハハハハ。おいおい、である。
いやー(^^ゞ、まさか解説編が1番最初の【学名】の項で終わるとはね。こんなのシリーズ前代未聞だよ。ドツボに嵌まって、とんでもない大脱線となってしまったおかげで、今回で最終話になる予定が見事にフッ飛んだわ。ホント、学名で力尽きるだなんて夢にも思わなかったよ。

実をいうと、アサマキシタバの第一章と此の解説編は3月には殆んど完成していた。しかし、触角の件と生態の一部に答えが見つからなかったので、寝かせておったのだ。
改めて書き始めると、触角関連で大幅加筆になり、この解説編でも加筆する羽目になった。
「💡ピコリン。ここで漸くシナプスが繋がった…」以降の展開が、この回の新たな加筆部分である。それで、考えざるおえなくなった。この後に更に各項目の文章が続くので、これではあまりにも長いと気づき、分けることにしたのである。
次回こそ、ちゃんと解説編を完結させますんで、宜しく御願いします。

そうゆうわけで、石塚さんの画像は次回にパクリまくりになります。↙コレね。

 
(註1)『世界のカトカラ』

カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんのカトカラ入門書にして、全世界のカトカラをほぼ網羅した図説。出版元は『(有)むし社』。

 
(註2)ハーマン・ストレッカーの生没年
Herman Streckerで検索したら、ちゃんと出てきたよ。

Ferdinand Heinrich Herman Strecker(フェルディナンド・ハインリッヒ・ハーマン・ストレッカー)
「生没年 1836.3.24 30〜1901.11.30」

どえりゃー長い名前だな。
Wikipediaによると、蝶と蛾を専門とするアメリカの昆虫学者とある。で、内容を信じるならば、どちらかというと蛾よりも蝶の研究家だったみたい。予測はハズレましたな。

若い頃からフィラデルフィア自然科学アカデミーの図書館に頻繁に出入りしていたという。興味の対象は、カリブ海、メキシコと中央アメリカの蝶だったそうな。

クソ長い名前から予想はしていたが、両親はドイツ人のようだ。或いはスタウディンガーともドイツ語でやり取りしていたのかもしれないね。
翻訳文では彫刻家としたが、実際にはニュアンス的に墓石屋に近かったらしい。
より詳細を知りたければ、Wikipediaの記事を読んで下され。

 

2019’カトカラ2年生 其の1第四章

 
  vol.18 アサマキシタバ(4)

  『ゲシュタルト崩壊』

 

翌朝、展翅しようとしてみて驚いた。
アンモニア注射した最初の1頭以外の全員が、蘇生していらっしゃったのだ。一瞬、墓から一斉にゾンビの如く這い出してくるアサマちゃん軍団の映像が浮かんだよ。
それはもう皆さん、元気、元気。毒瓶に少々ブチ込んだぐらいでは簡単には死なんのだ。恐るべき生命力である。

もう1回、1匹1匹ブチ殺すのも何か気が進まないので、そのまま2日間くらい放置していた。だが、それでもまだお元気でいらっしゃった。段々、不憫に思えてきて、逃してやりたい衝動に駆られそうになったので、全員アウシュビッツ送り。冷凍庫にブチ込んでやった。結局は悪魔の如き所業、虐殺なのである。酷いもんだ。虫屋は死んだら、全員すべからく地獄行きだな。

翌日、冷凍死体安置所から取り出し、遺体解凍を行なう。書いてて、やってる事が変態サイコ野郎だなと思う。やはり虫屋は間違いなく、全員すべからく地獄行きだな。

合掌してから展翅し始める。
しかし、憐憫の情はここまで。死んだもんは、物に過ぎない。(ΦωΦ)フフフ…、これでオスとメスの触角の長さの違いの有無が明らかになるじゃろう。

先ずはオスから。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♂】

(2020.5.24 大阪府東大阪市 枚岡。以下同所)

取り敢えず、触角は自然な感じに仕上げた。
しかし、展翅した後に気づく。今回は触角の長さが重要なのだ。出来るだけ真っ直ぐに伸ばしといた方が比べ易いかもしれん。

で、頑張ってみたのだが、先っちょの湾曲が直せずにどうしても完全に真っ直ぐにはならない。カトカラって生きてる時は触角が真っ直ぐなのに、何で死んだら曲がっちゃうんだろ❓ マジ、面倒くさいわ。

で、頑張り過ぎた結果、右の触角の根元が折れた(TOT)❗
カトカラの触角って細いから、すぐ切れよる。(`Д´#)ムキーッ、いまいましいざんす。
まっ、いっか。触角の長さを比べるにあたって、これくらいなら問題なさそうだ。

♂は3頭いずれも触角が長いねぇ。
目の悪い人は画像をピンチアウトして拡大してネ。

裏展翅したものも貼り付けておこう。

【♂裏面】

♂は前脚がモフモフだね。何かウサギの頬っぺみたいに見えて、ちょっと笑っちゃったよ。
今回、♂は4頭しか採れなかったのて、補足として去年に採った♂個体も幾つか並べておこう。


(2019.5月 奈良県大和郡山市矢田丘陵。以下同所)

右側の触角を見て少し短いかもと思ったが、左側を見ると矢張り長いね。
関係ないけど、♂はモフモフの前脚を思っきし出した方が邪悪度が増して好きかもしんない。

先端の細い部分が湾曲していて少し分かりづらいが、これまた長い。
最初の個体も同様だが、触角は上反りしている方が邪悪な感じがして好きかも。いや、真っ直ぐな方がいいか…。触角の調整の在り方は今でも悩みの種だ。どれが正しいのか、しょっちゅうワカンなくなる。嗚呼、もー。結局、また触角迷宮に迷い込んどるがな。

これまた先が細くて分かりづらいが、コヤツも長い。
以下、酷い展翅だが貼付しておく。

一番下の個体は左側の触角の先が切れているが、右側は切れてないから充分長いでしょう。分かりにくいから、画像を拡大してネ。
アサマの触角の先って、特別に細くねえか❓少なくとも♂はそんな気がする。他のカトカラと比べてないから、断言するのは危険だけどさ。
否、そんなわきゃないか❓早くも混乱が始まってる感じだな。

ともあれ、こうして去年の♂を並べてみても、矢張り♂の触角は長いと云う印象が強い。

さてさて、ここからが本番だ。
続いて、課題だったメスの展翅を始めよう。去年、もしかして♀の触角は♂よか短くね❓と感じた事から端を発した疑問なのだが、メスのサンプルが2、3頭とあまりにも少なかったゆえ、解決には至らなかったのだ。
その疑問の答えが、いよいよ出る。ちょいと💞ドキドキだ。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♀】

(゜o゜;あっ❗、短いかも。
ちなみに右触角の先は見た目よりも、もう少し長くて白いゴミの所で上に湾曲してます。そのままだとマチ針が邪魔して見えにくいので、画像を拡大してみて下され。

でも1頭じゃ、まだ何とも言えないよね。お次はどうだろ❓

これまた短いような気がするぞ。しかし、まだまだ断言は出来ない。更に展翅を続ける。

ここから先は前のスマホで撮った画像を Bluetoothで転送したものだ。最近になってスマホを買い替えたのだが、勝手に画像修整しよるのだ。上の2頭は本当はこんなに黄色くはない。もしも、こんだけ黄色ければ、カトカラ・カーストにおいて、もっと上位にランクされてもいい筈だもんね。カトカラ内におけるアサマちゃんの人気は高くないのだ。

短い。
いやはや、こりゃ♀は♂と比べて絶対に短いぞ❗
待て待て、まだたった3頭だ。検証の数としては少ない。落ち着いて次の個体へとかかる。

ハイ、これもそうだね。
さあ、どんどん行くぞ。

なぜか、どうやっても触角が真っ直ぐにならなかったけど、コレも長いとは言えないだろう。

さっきは触角の調整がままならなかったので、ムカツときた。だから、次は鬼のごたる気持ちで真っ直ぐにしてやっただよ。しかも、早くも遊び心が出て、如何にも蝶屋的な触角の角度にしてやったわい(笑)
こんだけ真っ直ぐにしてやっても短いんだから、そろそろワシの仮説の証明も現実味を帯びてきたんじゃねーの❓
へへへ( ̄ー ̄)、ゴールは近い。

さあ♀は、あと2つだ。ここは完全勝利のパーフェクトゲームといこうじゃないか。
それはちょっと言い過ぎか。もとい。完封勝利といこうじゃないか。

(・o・)へっ❓、コレって長くねえか❓
(゜o゜;えっ❗❓、(☉。☉)えっ❗❓、\(°o°)/えぇーっ❓❗
慌てて、オスの触角と見比べてみる。

(ー_ー;)微妙だなあ…。確認の為に何度も見比べる。
たぶん♂の方が長い。…ような気がする。
でも見れば見るほど微妙な気がしてきて、段々ワケがワカラナクなってきた。いよいよ、ゲシュタルト崩壊の始まりである。きっと脳がパニックを起こして、判定を拒否しておるのだ。

ここは一旦、冷静になろう。
因みに、この個体の右触角は最初から無かった。そうゆうのも何だかミステリアスだ。それって、これからを暗示する何かのメタファー❓

( ゚д゚)ハッ❗、待てよ。
腹が長いし、もしかしてオスの間違い❓ オデって、てーげーな性格だから有り得るぞっ。
そういえば、展翅前に撮った写真があった筈だ。それ見りゃ、オスかメスかが確実に分かる筈だ。

(@_@)れれれれ…❓、どっちだ❗❓
メスにしては腹が長い気がするし、オスにしては短くて腹太のような気がするぞ。
どうぞ、オスであってくんなまし。オスなら触角が長くとも何ら問題なしなんだもーん。

でも、よく見ると腹先が♂っぽくないような…(詳細は後術するが、尻先から産卵管らしきものが出ている)。

ガビ━━━━Σ(゚Д゚))━━━━ン❗❗

ならば、メスだ。
それに前脚も後脚も♂みたくはモフモフじゃないぞ。
メスであれば、メスなのに触角は間違いなく長いじゃないか。
パタッ(ο_ _)ο=З、死んだ。イガ仮説、崩壊。

そうだ❗、オスの写真も撮ってあった筈だぞ。ソイツと比べてみよう。判断はそれからだ。(ノ`Д´)ノまだ死ねん。

(@_@)アチャー、触角の長さは殆んど変わらん。
何度も見比べるが、そうとしか思えん。このままだとゲシュタルト崩壊が止まらなさそうなので、ブレイクアウト。煙草でも吸うことにした。

ぷはぁ〜(-。-)y-゜゜゜
何だかパーフェクトゲーム直前で、センター前にヒットを打たれたみたいな気分だ。
いんや、まだゲームは終わってない。ゲシュタルト崩壊、何するものぞっ❗

落ち着くために、取り敢えず先に最後の8頭目を裏展翅しよう。

【♀裏面】

♀の前脚は、あんまりモフモフじゃないね。これは雌雄を区別する条件の一つと言っていいだろう。

どれどれ触角はどうだ?
見た感じ、それほど短くはないが、♂と比べると矢張り、やや短い。例外はあるものの、これで雌雄の触角の長さに差異がことを、ある程度は証明できたような気がする。とはいいつつも、何となく引っ掛かるものがある。
なので、去年に採った♀と他の展翅前画像も並べてみることにした。
先ずは去年の♀からだ。

2つとも、どう考えても短いよね。まあ、キッカケになった者たちなんだから、知ってて当たり前なんたけどさ。
これだけ条件が揃ってくれば、そうゆう傾向はあるって言ってもいいんじゃね❓
再び乗ってきたところで、次は残った今年の展翅前画像だ。

腹の形や脚のモフモフ度、触角の長さから、これが♂だよね。
w(°o°)wあっ❗ここで気づく。
さっきの♂だと思って貼付した画像は♀だわさ。♂と♀とでは腹の形が違うのだが、あの画像は腹部の横の影のせいで♂に見えたのだ。

その件(くだん)の画像を明るくしてみよう。

ほらね。完全にメスだわさ。
何だか九回裏、パーフェクト目前でレフトのポール際に大ファールを打たれた気分だよ。いや、ホームランの判定が覆ったと言った方がいいか?とにかく首の皮一枚つながったって感じだ。

よっしゃ、試合再開だ。改めてさっき貼付した♂の画像に戻って、触角を見てみよう。

(ー_ー;)……。長いっちゃ長いけど、触角が前にせり出しているので今イチわからない。
ならば、他の♂画像を確認してみよう。

先程の個体は、やや微妙なところもあったが、コレは明らかに♂だろう。腹の形は勿論のこと、前脚と後脚が超モフモフだしさ。

触角はというと…。
かなり長い。長いんだけど、オスと間違えたメスや触角が片方しかないメスとあまり大差ないようにも見える。いや、少し長いか?

しゃあない、次を見てみよう。

左はまだしも、右の触角は角度的に全く参考にならん。使えん。えーい、次だ。

しかし、探しても無い。どうやらこの3個体しか写真を撮っていないようだ。ならばと、去年の画像も探したが、これまた無い。
もわ〜っ(;゚∀゚)=3、イガちゃん仮説に又しても暗雲が垂れ込める。

仕方ない。他の♀からのアプローチを試みよう。

短いね。
それはさておき、この写真を見るとアサマキシタバの触角は先っぽの方が白っぽくなってるのがよくワカル。印象としては特に♀に、こういうのが多いような気がするが、印象なのでハッキリとは断言できないけど…。
おそらく、この白くなるのは触角の上面かと思われる。裏返すと、大体が先まで黒く見えるからだ。つまり下面は黒いってことだ。それらの画像は面倒なので貼り付けないが、気になる方は前回の章で確認されたし。

あと気づいたのは横からでも産卵管らしきものが見えることだ。腹端から少し飛び出ている(以下の画像でも拡大すれば、それとなく確認できる)。

一見これも短く見えるが、こんなに丸まってると何とも言えない。しかも触角が前向きだから、益々ワカラン。またゲシュタルト崩壊が始まりそうな予感がするよ。

コレもパターンは同じだ。
試しに想像力を働かせて、必死に頭の中で触角を真っ直ぐに伸ばしてみる。アホだ。そんな事が出来るワケがない。たとえ出来たとしても、それじゃ何ら科学的根拠は示せない。つくづく、おバカさんだよ。厳密にはゲシュタルト崩壊ではないけれど、また新たなパターンの脳ミソ崩壊が始まったよ。ぽてちーん\(◎o◎)/

話は逸れるが、こうしてメスの前脚をいくつか見てると、やはり♀のお手手はモフ度が低いわ。

コヤツも前向き触角になってもうとる。先っちょも丸まっとるしなあ…。それでも全体的に何となく♀の方が短いような気もしないでもないが、何とも言えないというのが正直な気持ちだ。
もうこうなれば、1個1個の触角を外して軟化させ、真っ直ぐに伸ばしてノギスで計測するしかないだろう。加えて各個体の上翅前縁の長さも測り、触角との比率まで出さなくては違うと断言できまいて。そんな事までしなくてはならぬとなると、テキトー&てーげーな性格なオイラには到底無理だ。そういう事は我慢強くてキッチリした性格の人がやらないと誰もが納得する明確な差異を示す数値は示せない。そうゆうの、誰か替わりにやってくんないかなあ…。

んっ❓、あれっ❓何言ってんだオレ。コイツら既に展翅して触角が短いって分かってる奴らばかりじゃないか。触角を伸ばすとか、ワケわかんないこと言ってんじゃねえよ。完全に脳細胞がイカレポンチになっとるがな。
とは言うものの、ノギスで測って数値化しようという奇特な方かいれば、是非ともやってもらいたいけど。

それに、ここへきて漸く根本的な問題に気づいたよ。そもそも、たかだかこの程度の頭数を比較してアレコレ宣(のたま)ってるのは、賢(かしこ)な人から見れば失笑ものだろう。去年と合わせて雌雄各10頭ずつ程度で結論づけるのは、あまりに乱暴な論理だからだ。やってる事が雑いのである。検証数は少なくとも50体ずつ、いや100体ずつくらいはないと説得力に欠ける。偶然の入る余地を極力減らさねば、結果に信頼性はないとゆうことだ。

ならばとネットでググるが、これが笑けるほど標本画像が無い。有っても触角とかワヤクチャだから、使いもんになんない。カトカラは蛾の中でもトップクラスの人気者だと言われてるが、悲しいけど現状は所詮そんなもんなのだ。最近は蛾もブームになりつつあるそうだが、蛾に興味を持っている人の分母はまだまだ小さいのだろう。

もうコレは図鑑に頼るしかない。
先ずは岸田せんせの『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』の画像をお借りしよう。

図鑑には3点のアサマキシタバの標本が図示されていた。

♂だね。
触角が怒髪天なので分かりづらいが、長いことには間違いないだろう。にしても、何でこないに傾いてはるのん❓

お次は♀だ。

異常型の♀だが、触角は短いように見える。


(以上3点共 出典 岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

う〜ん、長いかも知んない。でも♂よりかは短いと思うぞ。
こうなってくると、最早、願望がそう見せているのかもしれないと云う疑念が芽生える。段々、疑心暗鬼になってきた。脳ミソは、時に見えてる画像を自分の都合のいいように勝手に改変するというではないか。もしそうならば、もうゲシュタルト崩壊どころの騒ぎではない。そのうち人格の崩壊まで起こるやもしれない。ピッチョ§△◆♮〓✮‡ブチャカエ❡‰≒➽∌アビバビブ✔♯✪〄∀ダリャホセ〜。(ㆁωㆁ)オデ、オデ、コワレタ。

一応、『原色日本蛾類図鑑』も見てみるか…。

画像は、↙この1点のみ。

古い図鑑だけあって、酷い展翅だ。それでも左触角を見れば、長いことは想像に難くない。
それはさておき、名前が平仮名の「あさまきしたば」となっているのが何だか新鮮だな。優しい感じがする。これは古い図鑑の特徴でもあるのだが、一周まわって何かオシャレだよ。

石塚さんの『世界のカトカラ』の画像は既に第一章で使わせて戴いた。

でも何となくパラパラ見てると、海外のカトカラの欄に韓国産とロシア産のアサマキシタバがあった。


(以上2点共 出典 石塚勝己『世界のカトカラ』)

上が♂で下が♀である。コレも♂の方が少し長い気がする。
もう、そうゆうことにしておこう❗
考えてみれば、そこまで触角に拘る必要性は無い。だって、そんな不確実な雌雄の見分け方に頼らないなくとも、他の方法、腹先のスリットと産卵管の有無で100%見分けられるのである(詳しくは前章を参照されたし)。
『バッカみたい』。昔の彼女の声が、耳の奥で聞こえたよ。

出来れば、このままフェイドアウトで終わりたい。終わりたいが、それじゃあまりにもグダグダ過ぎる終わり方だ。ここまで読んでくれた人に対しても申し訳ない。壊れたアタマなりに、何とかまとめて終わらせよう。

もう、結論から言っちゃうからネ。
えー、アサマキシタバのメスの触角はオスよりも短い❗
そう言い切ってしまおう。
でも、あくまでそれは傾向的なもので、微妙なものもいる。野外で採集した時の雌雄の同定には、ある程度は使えるが、絶対的なものではない。コレでどうだろうか❓

雌雄の同定をする場合、先ずは裏返して尻先と産卵管の有無を確認しましょう。その2つが有れば、間違いなくメスです。
補足事項として、以下のような特徴が傾向として見受けられる。

①オスは腹部が細くて長い。反対にメスは太くて短いものが多い。

②オスは尻先に毛束がある。メスも無いではないが、その量は遥かに少なく、尻先がより丸くなる傾向がある。

③オスは前脚(第1脚)と後脚(第3脚)が毛に覆われ、モフモフである。特に新鮮な個体ではコレが顕著である。対するメスは毛があるにはあるが、オスよりも明らかに少なく、モフモフ度は低い。

④相対的にメスの方が翅に丸みがある。バランスは横長で、胴体の太さも相俟ってか、ずんぐりむっくりな印象を受ける。オスはそれと比して、細くてシャープに見える。

⑤触角は比較的オスの方が長い傾向にある。

但し、各項ともに例外もあるので、これらを総合的に鑑みて同定することが必要だろう。

こんなもんで許してけれ。

今回の結果はどうあれ、対象に対してどこか変だな、違ってるんじゃないかと感じる心は大事だと思う。
きっと去年、マホロバ(キシタバ(註1))を発見できたのも、そうゆう感性や姿勢があったからなんだと思う。

                        つづく

 
追伸
次回、やっとこさの種の解説編。
まだ続くんである(笑)。自分でも、いい加減にしろと言いたいよ。次回で終えれることを心から願おう。

 
(註1)マホロバキシタバ
2019年に奈良県で発見された、日本では32番目となるカトカラ。

【マホロバキシタバ Catocala naganoi mahoroba】

  

2019’カトカラ2年生 其の1第三章

 
   vol.18 アサマキシタバ(3)

  『コロナ禍の狭間で(後編)』

 
午後8時を過ぎてもアサマキシタバは飛んで来ない。
いよいよヤバい展開だ。

8時15分。ようやく樹液に飛んで来た。
ものスゴくホッとする。でも、ここで逃したら元も子もない。ゆえに網で採るか毒瓶で採るか迷った。通常ならば翅の鱗粉の損傷を最小限にとどめる為や背中の毛がハゲちょろけにならないように毒瓶を使用すべきところだ。しかし、今回重視しているのは触角だ。この際、完品とかどうだっていい。それに位置的にやや高い。手の長いオイラのことだから届くだろうが、まあまあギリってとこだろう。ならば、ここは確実に採るために網を選択すべきだと判断した。

網枠で幹をコツンと叩いて、驚いて飛んだ瞬間に網の切っ先がマッハで反応した。下から左上へと海老反りでナギ倒すように振る。

【アサマキシタバ Catocala streckeri】

網さばきは今年も健在なりよ(◠‿・)—☆
おっ、この尻の形からするとオスだな。触角は…長いね。
取り敢えず、やはりオスの触角は長いと言っていいだろう。
それにしても、アサマちゃんって相変わらずあまり美しくないね。所詮はカトカラカーストでは下層民なのだ。

ベンチでアンモニア注射で昇天させ、写真を撮って三角紙に収める。いつもこの最初の1頭を三角ケースにしまうと、心の底からホッとする。ゼロと1とでは精神的にどえりゃー差がある。心の余裕が全然違うのだ。

木に戻ったら、もう1頭来ていた。
コヤツも網で難なくゲット。これも♂だった。で、触角は矢張り長かった。

でも、正直オスはもういい。ターゲットはサンプルの足りないメスなのだ。メスの触角を見なければ、アホっぽいオラの仮説も証明できない。

8時半。また樹液に1頭飛んで来た。
やや小さくて、翅が丸く見えた。たぶんメスだ。

今度は低いところに止まったので、毒瓶を被せることにした。
今思うと、確実に網で採れよな。この辺が直ぐにダレちゃうオラの悪いクセだね。基本、てーげーな人なのだ(註1)。

難なくゲット。
♀っぽいね。一応、裏返してみる。

腹が短いし、太いから多分♀に間違いなかろう。

触角を確認してみる。
あっ、♂よりも明らかに短いぞ(画像をピンチアウトすると拡大できます)。
でも毒瓶を被せた時に千切れたとかないだろうか❓ カッコつけて毒瓶なんか使わなければ良かったよ。

ここでピタリと飛来が止まる。
ヤバいよなあ…。このままいくと、あまり数は望めないかもしれない。
カトカラ2年生、まだまだ少ない経験値で言っちゃうと、多くのカトカラは樹液への飛来が7時半くらいから8時台半ばまでは強い活性があって、9時くらいになると一旦飛来がピタリと止まる。そして10時を過ぎたくらいから再びダラダラと飛来が始まり、11時台の半ばあたりから午前0時過ぎにかけて、もう1回活性のピークがあると云うイメージがある。そのパターンからすると、ヨロシクない傾向だ。2回目のピークは1回目よりも弱いしね。

まっ、いっか…。今日は電車ではなく、難波からママチャリで来ているのだ。ゆえに終電を気にする必要はない。じっくりと対峙できる。
とはいえ、10時迄まだ1時間以上もある。11時なら2時間待ちだ。待つことが誰よりも大嫌いな人間にとっては、地獄だな。それまで闇の恐怖と戦わねばならないと思うと、気が重いよ。

覚悟して、大声で怪鳥の鳴き声を真似て発してやった。
闇を切り裂く高音の怪しき声が山に谺する。鵺(ぬえ)の哭く夜は恐ろしいのである。超恐がりとしては、苦肉の策の逆療法なのだ。逆にこの怪鳥音で魑魅魍魎を震撼させてやろうというセコい作戦ですねん。でも闇の恐怖を紛らわすには効果がある。闇の中で黙っていると、ろくな妄想をしかねないのだ。
それに展望台辺りでキャアーキャアー言ってる小娘どもの声がウザいので、ビビらせやろうとも思った。悪の心が恐怖をも凌駕するのだ。
効果があったのか、小娘どもの嬌声のトーンは落ち、ひそひそ声のキャァキャァになった。ψ(`∇´)ψケケケケケ、おまんら死ぬほどビビって山を下りたらええねん。悪いオジサンは、自分の恐怖を紛らわす為だったら、何だってするのだ。

9時10分。
闇と闘うことに漸く折り合いをつけたところで、アサマが樹液に飛んで来た。

(. ❛ ᴗ ❛.)あらま、予想外の嬉しいお越しだよ。
当然、今度は網でシバく。

なあんだ。また♂か。
でも一瞬、触角を見て戸惑った。短くねえか❓
だがよくよく見れば、触角の先が光の反射か何かのせいで白っぽく見えてるだけのようだ。ちゃんと見ると、♂らしい長さだね。
確認のために裏返してみる。

やはり長いね。
けど♂は、もういい。♀をもっと見んと仮説は証明できん。

9時35分。
待望の♀が飛んで来た。

やっぱ、触角は短く見える。

裏返したら、思ってた以上に長い。それでも♂よりも短い気がする。

9時40分。
連続して飛んで来た。しかも3頭。完全に活性が入った。
気分は殺し屋スナイパー。1つ1つ確実に始末していこう。

♀だ。
これも触角が短い。

でも裏返してみたら、そうでもないような気がしてきた。
いやいや、やはり♂よりも短いぞ。とはいえ、何だか頭の中が少し混乱してきたぞ。

お次も、又しても♀である。

やっぱ、どう見ても短いよなー。

裏返してみたら、コレもそうでもないような…。
けれど、同じく♂よりも短い気がするぞ。と言いつつも、更に頭の中が混乱してきた感あり。

それはさておき、もはや裏返せば瞬時に雌雄が見分けれるようになった。
今一度、並べた画像を見て戴きたい。先ず絶対的に違うのは、尻先だ。♀は尻先に縦にスリットが入り、何やら黄色いものが見える。おそらく産卵管だろう。一方、♂は腹先にスリットが入らないし、毛でフサフサだ。黄色いものは見えない。
ここからは相対的で絶対条件ではないが、気づいた他の判別法も並べておく。

その他①
腹の形は♀は短くて太い。対して♂は細くて長い傾向がある。しかし、腹が長く見える個体もあったりするから、どっちか悩むこと有りです。

その他②
♂は前脚が毛でモフモフだ。♀は、それと比べてモフモフ度が低い。
但し、これは新鮮な個体での話だ。飛び古した♂は毛が抜けてるだろうから、その場合は判別には使えないだろう。

図鑑には、この②と腹のスリット&産卵管については何処にも書いてなかった気がする。そもそも裏面画像が添付されてる図鑑は殆んど無いのだ。知る限りでは、唯一あるのは西尾規孝氏の『日本のCatocala』だけだ。それとて雌雄両方の画像は無い。また、文中で前脚とスリット云々については言及されていなかった筈だ。

その他③
♀の方が翅形が円い。対して♂は上翅からシャープな印象を受ける。
また裏返して見ると、♀の方が下翅が円く見える。
とはいえ、微妙な個体もいるから、これも絶対条件ではない。

その他④
♀の方が全体的に小さい。但し、個体差があり、♀でも大きいものはいる。あくまでも相対的だから、これまた絶対条件ではない。けれど、樹液に飛来した時の目安にはなる。それで、だいたい雌雄の目星がつくことが多い。

時を戻そう。
問題は触角である。雌雄に差があるような気がするけど、でも微妙なんだよなあ…。まだ明確な答えは出せない。今度は♂の触角を見たくなってきた。♂の触角をもう一度見ないと判断は下せないと思った。

3頭いたうちの残り1頭は、いつの間にか樹液から消えていた。
さっきから見てると、コヤツら、どうも全体的に樹液滞在時間が短いような気がする。せわしない感じがして、他の個体や蛾が飛んで来たら直ぐに飛び立つ。で、どっか行っちゃう。何か神経質なのだ。でも去年はそうゆうイメージを抱(いだ)かなかったから、今日だけの事なのかもしれない。或いは去年はボオーッと見てたから気づかなかったのかも…。些細な事だけど、そう感じたので一応書いときました。とはいえ、その日によるものと思われる。

しっかし、それにしても糖蜜トラップに対してアンタら完全にフル無視やのう(。ŏ﹏ŏ)
アサマって、糖蜜にはあまり反応しないのか❓いや、でも文献には好んで集まるみたいな事が書いてあった気がするぞ。んっ❓、あれは糖蜜じゃなくて、樹液の方だったっけ❓ あれあれっ、どっちだっけ❓ 事前に復習して来なかったから、ワカラーン。この勉強不足具合、たかがアサマと云う見下し意識が垣間見えとるよ。

いつしか時計の針は午後10時近くを指していた。
9時台でも樹液に結構来るんだね。樹液の飛来時刻の概念が少し変わったよ。
きっと、その日の天気とか温度、湿度、発生の時期、前日の天気等々、様々な条件が関係しているのだろう。基本的なパターンはあるのだろうが、しばしばイレギュラーがあって、その微妙な条件が人間には感知しえないのだろう。

10時ジャスト。
(☉。☉)!ワオッ、遂に糖蜜トラップに来よった❗

証拠の為に写真を撮る。
でも、やっぱり小さくしか写らない。結構近づいてるんだけどなあ…。スマホのカメラじゃ限界あるよね。センチ単位の至近距離まで近づかないと、まともな写真は撮れなさそうだ。

慎重に接近する。
しかし、さあシャッターを押そうとしたら、(+_+)あちゃま、逃げよった。まあ、しゃあないわな…。

10時10分。
別な木だが、またトラップに来た。でも、さっきの個体とは明らかに違う。もっと大きい。たぶん♂だ。

待望の♂である。
おっ、触角はどう見ても♀よりも長いぞ。
♀の触角が短いなんて気のせいだと思ってたけど、ここまで差異が連続すると、仮説が現実味を帯びてきた。

10時20分。
又してもトラップに飛んで来た。おいおい、急にどうしたんだ❓ その急変振り、全くもって理由がワカラン。

♀だね。そして、これまた触角が短い。
っていうか、メチャメチャ短くね❓切れてんのか❓

『キレてないですよ(註2)。』
思わず、長州力ばりに言っちゃったよ。
でも、ちょっと待てよ。ここで漸く気づいた。よく見ると、根元は黒いけど、段々先に向かって白くなっていってんじゃねえか。先が白いから手の平と同化して短く見えたのだ。
(≧▽≦)何だよー、それー。完全に騙されたわ。
皆さんも、画像を拡大して検証してみてね。

急いで、撮った写真を全部確認してみよう。
いや、その前に裏の確認だ。

けど、白いとこを入れても♀の方が、やや短いような気がするぞ。

慌てて撮った写真を確認してみる。
確かに♀は触角が途中から白くなってる個体が多い。でも、やっぱそれでも♂よりも短いような気がする。
けんど、ジッと画像を見ていると、段々ワケがわからなくなってきた。ゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。いや、既に起こしているやもしれぬ。
こんな暗いところで、あーだこうだ考えたところで埒が開かん。帰って、展翅せんと本当のところはワカランぞなもし。

それ以降もアサマはトラップに飛来し、延べ6例の飛来があった。


(PM10:29。ものスゲーピンボケ(笑))

重複個体もあるかもしれないが、少なくとも4個体以上は飛来したものと思われる。そう云うワケだから、アサマキシタバも糖蜜トラップに反応すると云うことは証明できたかと思う。
それはさておき、何で急に反応し始めたのだろう❓空気に触れて、途中から微妙に成分が変わったとか❓まーさかー。

↘上のピンボケ写真の個体。

またもや♀だ。

尚も続けて飛んで来た。
以下、撮影時刻を入れておく。写真屋も偉そうなこと言うなら、撮影時刻くらいチャンと入れろよな(註3)。



(PM10:38)


(PM10:54)

全部メスだ。
しかし、もう触角がどーのこーのと云う思考回路は働かない。完全にゲシュタルト崩壊が起こっておるのだ。もう、うんざりなのだ。

11時前に♂がトラップに来たが、網を構えたら逃げよった。
それで、プッツンいった。触角とか、そんな瑣末な事は、もうどうでもいいわい(ノ`Д´)ノ彡┻━┻❗

今日はチャリで来てるんだから、終電の時刻は気にしなくてもいいんだけど、帰ることにした。とっとと帰って、🍺ビールがぶ飲みじゃい❗

11時過ぎ、撤退。
さあ、光瞬く下界へと降りよう。

翼よ!あれが巴里の灯だ❗(註4)

                        つづく

追伸
その後の話を少ししておく。
真っ暗な坂道を歩いてたら、急に闇への恐怖が芽生えたんだよね。また、口裂け女とか思い出したよ。震撼っす。
降りてきて、11時半に枚岡駅を出発。午前0時半ジャストに帰り着いた。帰りは30分短縮の1時間で帰ってきたってワケ。ママチャリで時速15キロって、速くね❓
えー、何でそんなに早かったのかと云うと、駅ごとに即興で歌を歌って漕いでたからだ。

🎵GO to the つるは〜し(鶴橋)
🎵GO to the つるは〜し
🎵GO GO GO GO GOOー つるは〜し❗

とかね。駅ごとに曲つくって歌ってたのさ。
音楽は力なり(笑)

結局、この日は4♂8♀も採ってしまった。検証の為とはいえ、心情的にはちょっとね。スマヌよ(◡ ω ◡)

本当はこの回で触角問題の解決までいく予定だったが、書いてて長いから力尽きた。今回はあんまり脱線してないのになあ…。
えー、次回いよいよ触角問題の解決編です。

 
(註1)てーげーな人なのだ
「てーげー」とは沖縄県の方言で、物事について深く考えたり、突き詰めて考えたりせず、程々のええ加減で生きていこうという意味の琉球語であり、また概念のこと。
そこには、いい加減を筆頭に「テキトー」「だいたい」「おおよそ」「まずまず」「そこそこ」「なあなあ」といったニュアンスが多分に含まれている。

 
(註2)キレてないですよ
プロレスラー長州力の有名なセリフ。そのモノマネで有名になった長州小力がこのセリフをネタとしており、一時流行った。
しかし、長州自身は実際には『キレてないですよ。』とは言っておらず、正確には『キレちゃいないよ。』と言っている。長州力って滑舌がバリ悪いから、誰もツッ込まないけどね。それに長州自身もバラエティー番組でイジられたら、『キレてないですよ。』と言ってたしね。

 
(註3)撮影時刻くらいチャンと入れろよな
蝶の写真を撮るのを趣味にしている人には、全部が全部じゃないけれど採集する人に対して批判的な人が多い。そうゆう人のブログを見てると、しばしば網を持っている人への強い攻撃性を感じる。最初の頃は同じ蝶屋なんだし、仲良くすればいいじゃないと思っていた。実際、フィールドで会っても仲良く接してきた。だが、最近はブログ内の表現もエスカレードしてきて、採集者を指して『ネットマン』という侮蔑と揶揄たっぷりの底意地の悪い言葉が横行している。それって、如何なものかと思う。マナーの悪い採集者への怒りからだろうけど、ネットマンという蔑称を連発するのもマナーがいいとは言えないよね。
こういう事を書き始めると長くなるし、だいち面倒くさい。なので、冷静でわかり易く書いておられる方の文章をお借りしよう。
リンクを貼っておきます。

『雑記蝶』
https://usubasiro2-exblog-jp.cdn.ampproject.org/v/s/usubasiro2.exblog.jp/amp/21315119/?amp_js_v=a2&amp_gsa=1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#aoh=15911860661393&amp_ct=1591186079462&referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&amp_tf=%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%3A%20%251%24s&ampshare=https%3A%2F%2Fusubasiro2.exblog.jp%2F21315119%2F

テキストエディタだと、リンクを貼るのが上手くいかない。
かといって今更ヴィジュアルエディタで書くとなると、改行をイチから全部やり直さなければならないんだよね。
一応、このままでも上の空白部分をクリックすると記事には飛びます。それで御勘弁を。

もう一つリンクを貼り付けておきます。

『BUTTERFLY BRINGS☆』
https://rpsbetter-exblog-jp.cdn.ampproject.org/v/s/rpsbetter.exblog.jp/amp/21378006/?amp_js_v=a2&amp_gsa=1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#aoh=15912263520122&referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&amp_tf=%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%3A%20%251%24s&ampshare=https%3A%2F%2Frpsbetter.exblog.jp%2F21378006%2F

申し訳ないけど、これも空白部分をクリックして下され。

きっと「ネットマン」と云う言葉は、殺してる者に対する憎悪からの発露だろう。謂わば、正義感だ。おまえらは蝶に対して愛はないのかと云うことだ。でも撮る人だけでなく、採る人も間違いなく蝶に対して愛はあるんだよね。この辺の心情は、昔は採っていたけど、撮る側にまわった人は理解できるかと思う。
問題なのは、撮ることから入った人たちだ。そうゆう人たちは正義感を振りかざしやすい。「生き物を殺してはならない」。この言葉は伝家の宝刀みたいなもので、絶対正義だからだ。何か結局ディスる事になりそうだが、続ける。
怒らないで読んで戴きたい。正義を振りかざす人は大抵が底が浅い。単純だからこそ、猪突猛進。平気で強く批判できる。正しいことをやっていると信じている人は強いのだ。世の中のクレーマーの多くが正義感の上に立って行動しているのと同じだ。最近で言えば、コロナウィルスの「自粛警察」とか「コロナポリス」と呼ばれる人たちが、こういう人種だろう。正義が背景にあるから、正義なんだから何やってもいいと逸脱してしまう輩たちだ。そう云う輩は、もうそれは正義を飛び越えて悪になっているのが分からなくなってるから怖い。盲信だ。ホント、こういうのってタチが悪いんだよね。勿論、写真をやっている人全員がそうではないだろう。そうゆう人は一部の人だとは思うけどね。

話を少し戻す。「生き物を殺してはならない」と云うなら、何も食うなよと云う論理にいきがちだが、言いたいところの本意はそこにあるワケではない。たとえ家畜でも生き物だと言いたいワケでもない。言いたいのは、アナタたちが食ってるものは自然をブッ壊した結果、目の前にありものだと云うことだ。作物を作るにしても、家畜を飼うにしても、森は切り拓かれる。それによって、その場の植物や鳥、哺乳類、昆虫、爬虫類、両生類、土壌生物etc、どれだけの生き物が絶滅していることか。我々が食ってるハンバーガーの、その背後に無数の生き物の死がある事を忘れてやしやせんか❓単に目の前の死だけしか見てなくて発言している人が多いから底が浅いって言いたいってワケ。マクドナルドが1店舗増えるごとに結構な広さの森が失われているのだ。その事を忘れないでほしい。

アレッ❗❓、何か脱線してるなあ…。こんな事を言いたかったワケではない。結局ディスってるし。良くないなあ。
えーと、何が言いたかったんだっけ❓
あっ、そうだ。思い出した。

写真をやってる人たちのブログを見てると、そこに有るのは蝶の写真だけで情報量が少なく、何ら参考にならないものが多い。撮影地の地名を載せてないのは、まだ理解できる。直ぐにワンサカ人が集まって来て荒れるからね。でも撮影環境くらい載せてもいいんじゃないかと思う。その蝶がどんな環境に棲んでるか知りたい人もいるだろうに。あっ、でもその写真だけで場所を特定してしまう鋭い人もいるか…。けど蝶そのものだけでなく、棲息環境の写真あっての生態写真だと思うんだよね。
あれっ?、待てよ。写真やってる人のブログって、生態面に殆んど言及されていないものばかりだぞ。そうゆうのって採集者は大事だと解ってるけど、カメラしかやらない人は興味ないのかな?綺麗な蝶の写真さえ撮れればいいのかな?
それじゃ、オナニーと一緒で何ら博物学に寄与していないじゃないか。考えてみれば、撮影日すら書いてないブログも多い。その蝶が、その地域では何日(いつ)ぐらいに発生しているか記録されていれば、貴重な資料になる。環境写真や生態的知見が書かれていれば、それもまた貴重な資料になるのである。写真を撮っている人にはお願いしたい。せめて撮影日くらいは書きましょうよ。できれば撮影時刻も。なぜなら、撮影時刻からでも蝶の生態が類推できるからだ。それで従来の生態的知見がひっくり返る事だって有り得る。それって、スゲーことじゃん。

撮影する人も採集する人も同じ蝶屋なんだから、ちゃんと情報交換や意見交換して仲良くしましょうよ。蝶が趣味の人なんて、世間から見ればキモい極々少数のマイノリティなんだからさ。いがみ合いしてても、何ら良い事はおまへんで。

 
(註4)翼よ!あれが巴里の灯だ
ビリー・ワイルダー監督、ジェームズ・ステュアート主演の1957年上映のリンドバーグの伝記映画。名作です。
勿論、大阪の街はパリじゃないけど、ぽろっと口から言葉が零れた。何となく、そんな気分だったのだ。