スルメイカの湯通し

 
何年か前からスルメイカの姿を見る機会が減ってきている。どうやら不漁は続いているようである。烏賊の塩辛を作ってる会社は大変だろうなあ。

小さめのスルメイカ1匹が半額で売っていたので、購入する。値段は税別100円に満たなかった。
あっ、イカは1匹と数えなくて、1パイと数えるんだったね。

軽く洗ったイカを熱湯にブチ込む。
ここからが時間勝負だ。イカは火を通し過ぎると、かたくなるからだ。
熱湯にイカを数秒から数十秒入れたら氷水に放ち、急速に熱をとる。しかし、氷水を用意するのが面倒クセーので、熱湯に入れる時間を短くした。この辺はもう勘とか感覚。

今回は前日食った鰹のタタキのたれを味付けに使ってみた。そのままでは甘酸っぱすぎるので、多めのすり下ろし生姜を加え、醤油も足した。
皿の下にそれを入れて、あえて皿からはみ出すくらいの勢いでイカを盛る。とはいえ、繊細な盛り付けだ。

 

 
旨いっ❗
やわらかくて、火入れも完璧に近い。
ビールでと酎ハイでもバリあいそうだ。
夏の酒肴には、最高の一番のバッターの一つだ。

                  おしまい

 
追伸
今にして思えば、エキストラ・ヴァージンオイルをちょい垂らせば、完璧だったかもしんない。

 
  

続フシキキシタバ(2)不思議なんて無い

 
2018年 6月12日。
生駒山地から約1週間後、矢田丘陵の様子も見ておくことにした。小太郎くんにも声を掛ける。

この日、現地に到着したのは遅めの午後9時だった。
しかし、樹液には何も来ていなかった。去年からの観察だと、カトカラはだいたいこの時間帯に一度樹液への飛来が止まる傾向があるようだ。日没と同時に飛来し、一旦9時前後にいなくなる。そして10時くらいから又ポツポツと集まり始める。けれど、これはあくまでも傾向であり、その日の天気や温度、湿度、風の有無などによって状況は変わるものと思われる。

何でおらんねん(=`ェ´=)❓
ちょいムカつく。最近は昔ほど珍品じゃないらしいけど、やっぱ基本的には少ない種なのかなあ…?まさか、まだ発生してないと云うワケは無いよねなどと思いつつ、所在なげにその辺をウロウロする。

『あっ、いましたよ。』
と小太郎くんが言った。懐中電灯が照らす方向を見ると、幹に鮮やかな下翅をチラ見させているフシキキシタバがいた。相変わらずの逆さパンティーじゃのう(^。^)
高さは約3m。網で幹をドツき、難なくゲット。驚いたカトカラが反動で網に飛び込んで来るという採集法だ。コツは躊躇(ためら)わないこと。慎重という名のチキンハートはあきまへんえー。中途半端にかぶすと横から逃げられる。とはいえ、バカみたいに強すぎると網が壊れるから、気をつけなはれ。

暫くして、また小太郎くんが幹に止まっているのを見つけた。彼は見つけるのが上手いから助かる。
今度は4mくらいの位置だった。これも難なくネットイン。

思うに、これは樹液に来ていた奴がお腹いっぱいになって憩(やす)んでいるのではなかろうか。だから、一回飛来が止まると考えれば、説明がつく。つまり、カトカラは樹液にやって来るのは一晩に一回だけではなく、複数回吸汁に訪れるのではないかと想像する。そういえば、去年もキシタバが周辺の木にベタベタ止まっていたことがあったっけ…。時々、居なくなったと思ったら、樹液に来ていた事があったな。
経験上、カトカラはたとえ樹液には居なくとも、周辺の木を探せば案外採れると思うぞ。図鑑等には、そんな事は全然書いてないけどさ。

でも、小太郎くんが言った。
『フシキって、日没後の早い時間帯にしか樹液に飛んで来なくて、皆それを知らなかったから中々採れない稀少種になってたそうですよ。でも、この習性がわかってからはわりと採れるようになったみたいですね。』

それも「不思議キシタバ」と言われる由縁なのかな?
(・。・;ふ~んと相槌を打ちながらも、(# ̄З ̄)ホントかよーと心の中で思う。
だとしたら、カトカラ愛好家は早い時間帯に樹液採集に行かなかったの❓それが事実だったとしたら、ダサ過ぎない❓センスを疑うよ。いくらなんでも、そんなワケないと思うんだよなあ…。虫屋はアタマいい人、多いしさ。絶対、早い時間帯にも行ってる筈だ。
そんな偉そうなことを言っといて、実を言うとオイラ、去年は樹液では1頭も採ってない。「去年は」ということは、まだ一度も樹液に来たフシキキシタバを採ってないとゆうことだ。我ながら、よくそれで諸先輩方に向かってエラソーな事が言えるよね。自分でもあまりの尊大振りに笑っちゃうよ( ̄∇ ̄*)ゞ

それはさておき、この日採った2頭はこんなの。
先ずは♂。

 

 
図鑑的お手本の展翅ってところかな。
続いてコチラ↙が♀。

 

 
コヤツは人為的にボロにしてしまったなりよ。
ピカピカの完品だったと思われるが、網の中で暴れまくって、挙げ句に網の横から外に飛び出しよった。で、落葉に止まったのを慌てて上から毒瓶を被せて仕留めた。したら、こないな風になりよった。小太郎くんに、ひどいなーという顔で笑われたよ。やってる事が全般的にぞんざいなのである。

こちらは触角を真っ直ぐにしてみた。
まっ、んなもんじゃろ。

 
6月13日。
翌日も矢田丘陵へ行った。
フシキキシタバは本当に早い時間帯にしか樹液に飛来しないのかを確かめたかったのである。だから、今回は誰かに行動を影響されない単独行なのだ。

日没と同時に1頭が飛んで来た。

 

 
フシキ、樹液での初ゲットである。
暫くして、更にもう1頭が飛んで来た。いい感じだ。
しかし、これでピタリと飛来が止まった。やはり小太郎くんが言った通りなのか❓…。それとも元々個体数が少ないのかなあ❓

埒が開かないので、新たな樹液ポイントを探すことにした。幸いな事に比較的短時間で新たな樹液ポイントを見つけることができた。
ここでは3頭ゲットできた。2頭が樹液で、あとの1頭は前日と同じように近くの木の幹に止まっていた。
しかし、それっきりだった。10時半まで待ったが新たには飛んで来なかった。最後に採った時刻は午後9時過ぎだ。おいおい、まさかの小太郎くんの言ってた説が有力になってきたぞ。
いや、待てよ。単に周辺にいる個体を採り尽くしたと云うのは考えられまいか。この日の個体も全部ピカピカの完品。昨日、今日と全部が羽化したてのような鮮度でボロがいないということは、それも有り得る。翌日には、また新たなものが羽化してくる筈だ。

それでは、この日採った個体の展翅。
先ずは♂。

 

 
触角は自然な蛾眉系。上翅を上げ気味、下翅をやや下げ気味にしてみた。

 

 
続いて上がり蛾眉系。上翅をやや上げて、下翅も上げてみた。

 

 
お次は触角を鬼っぽい弓ぞり上がり系にしてみた。

 

 
こちらも蛾眉系かな。バランス重視の展翅にしてみた。

こうやって並べて見ると、上翅の柄が個体によって微妙に違うんだね。中でもこの個体がメリハリが一番美しい。

続いて♀。

 

 
段々、やや上翅が上がりめに見えるバランスになってきた。但し、これを自分は上げ気味だとは思っていない。蝶でもそうなんだけど、上翅の後縁(下辺)を真っ直ぐにするのが絶対的に正しいとは思わないからだ。

例えばマルバネルリマダラなどは、その法則に従って展翅すると、バンザイ展翅になってしまう。

 

 
まだマシな方だけど、こんな感じだね。これでも下辺はまだ下がっている。だから、ネットの画像なんかを見ると、無理矢理に下辺を真っ直ぐにしようとして、もっと超バンザイなのがわりとある。

お手本にするには、やや気に入らないが、こんな感じが正解に近いのではないかと考える。

 

 
つまり下辺は参考にはするが、それよりも翅の付け根の起点と後角部(外縁の一番下の角)を結んだ線が真っ直ぐになるのを重視している。強いて言えば、それよかちょっとだけ上げ気味にする。この方式にすると、大概の蝶ならバランスがとれる。

ヤマキチョウの仲間やコノハチョウなんかも、それでだいたいバランスがとれる。

 
【タイワンヤマキチョウ】

 
【台湾産コノハチョウ】

 
だからコノハチョウなどは下辺が下がり気味になる。但し、触角とのバランスや左右の翅の間の空間との関係性もあるから厳密的にはこれも絶対ではない。

話をカトカラの展翅に戻そう。ようするにカトカラもよく見ると、上翅根元の起点付近が真っ直ぐな線ではなく、やや内側にラウンドしている。ゆえに羽の起点は見た目よりも上にある。だから見た目が上げ気味に見えるのである。

とはいえ、まあこんなのは好みの問題なので、その人がカッコイイと思う展翅であれば全然いいんだけどさ。

とはいうものの、解説しだしたので途中で止めるのもなんだし、最後まで続けよう。

 

 
今度は下翅をやや下げてみた。上翅と下翅を詰め過ぎて寸詰まりになるのは、あまり好きではないからだ。それに寸詰まりにすると、個体が小さく見えちゃうと思うんだよね。

因みに前脚を前に出したり、出さなかったりするのは気分。今のところ、どちらが良いのかは微妙なところかな。でも、やや前脚を出す方に傾きかけている。自身の中には蝶の展翅法が基準にあるから、上翅の間の空間が空き過ぎると不安になると云うか、落ち着かないところがあるのだ。

 
6月17日
この日は宝塚市の行者山へ行った。
目的は稀種カバフキシタバの為の下見である。ちょこっとだが複数が採れているようだから、数は少ないにせよ居るのは確実だと読んだ。それに此所はウスイロキシタバの記録もあるので、あわよくばとも考えていたのだ。あと、ウラキンシジミ(註1)の様子も見ておきたかったと云うのもある。

ウラキンのポイントに着くも、栗の木が弱っていて、あまり花が咲いていない。でもそこいらで夕暮れまで待てば、やがて飛び始めるだろう。しかし、今回のメインの目的はウラキンではない。そんな時間までその場にとどまっていれば、黄昏になる。ここでカバフの幼虫の食樹カマツカと樹液が出ている木を探すのが本来の目的なのだ。ウラキンなんぞ、この際どうでもよろし。気持ちを切り替えて、白瀬川源流コースを降りることにした。

しかし、思ってた以上に道が険しい。多くの場所に補助ロープが張られていて、結構危険な箇所もある。夜にここに入るのにはリスクが有り過ぎる。それに結局、カマツカの木も樹液の出ている木も見つけられなかった。思惑が完全にハズレた。ポイントから除外せざるおえないだろう。

この山には何本も登山ルートがあるので、片っ端から探ってみることを覚悟した。
されど、中々良さげな樹液が出ている木が見つからない。唯一、見つけた木は根元近くから樹液が出ているだけで、何とも心もとない。

そのうちに日が沈んだ。
だが、日が沈んでも直ぐには暗くならない。

 

 
漸く暗さが増し始めた7時20分に、その唯一の樹液ポイントへ行く。だが、ヤガらしいクソ蛾が1頭いただけだった。まあいい。クソ蛾であっても、蛾が誘引される樹液ではあると云う証明にはなる。希望はゼロではないということだ。ゼロと1とでは、格段の差がある。

取り敢えず此処はおいといて、新たな樹液ポイント探して夜の山道を歩き始める。今日は万全を期して、あの戦慄を引き起こした恥ずかしい動画は消しておいた。あとは六甲方面はイノシシが多いから、遭遇しないことを祈ろう。イノブタよかイノシシの方が恐い。

5分ほど歩いたところで、空気中に微かな樹液の匂いを感じた。立ち止まり、咄嗟に懐中電灯をその方向へ向けた。下から上へと灯りを動かす。
❗Σ( ̄□ ̄;)ワッ、地上約4mくらいのところでカトカラが乱舞していた。少なくとも10頭以上は飛んでいる。こんなに沢山のカトカラが乱舞している光景を見るのは初めてだ。
時期的に考えればカバフではないだろう。まだ早い。黄色いからウスイロである可能性も無さそうだ。だとしたら、フシキかな❓コガタにもちょっと早い気がする。あっ、ワモンの可能性も無いではないね。でも感じからすっと、おそらくフシキだろう。最近、網膜にインプットされた画像と同じに見えるもん。

とやかく考えていても時間の無駄だ。
網をスルスルと伸ばして、空中でエイやι(`ロ´)ノ❗と掬い採る。たぶん一度に3つ入った。
中を見ると、予想通りの3つともフシキだった。どうやら飛んでるのは皆フシキのようだ。どこが珍品やねん❓こないにおったら普通種やんけー。

樹液への飛来時間の謎を解きたいので、ガツガツは採らずに目についた型の良さそうなものだけを選んでチョビチョビ採る。
いくつか採り、落ち着いたところで周辺を見ると、やはり周囲の木の幹に止まっている個体が複数いた。樹液の出ている木の上部や下部で憩んでいるものもいる。

 

 
下翅は開いていたり、この個体のようにビッタリと閉じているものもいる。勘だが、お腹いっぱいなど気分的にユルい時に翅が開きがちになるような気がする。あとは樹液で夢中で吸汁している時は、ほぼほぼ下翅を見せている。ようは身の危険を感じるなど緊張状態にあると、翅を閉じるのではなかろうか?
この個体も最初は下翅を見せていたが、写真を撮るために近づくと途端に閉じた。
因みに昼間は、ほぼ100%が翅を閉じている。昼間に派手な下翅を見せていれば、目立つ。つまり翅を閉じるのは、天敵に襲われるのを回避する為だろう。だから上翅の柄は木の幹に擬態、同化しているものと思われる。

8時を過ぎても乱舞は続いている。これで9時頃にピタッと飛来が止まったとしたら、小太郎くんが言ってた説に間違いないだろう。
だが、9時を過ぎても数は減ったものの、相変わらず樹液に飛来し続けていた。全然途切れる気配がない。
そして、そろそろ帰らなければならない10時を過ぎても飛来は間断なく続いていた。
これで「フシキキシタバ、早い時間帯にしか樹液に飛んで来ない説」は崩れた。んなワケねーと思ってたよ。
とはいえ、個体数が多すぎるゆえの異常行動とも考えられる。それに、まだたった1回だけの例だ。もっと観察を続けないと、断言は出来ないだろう。

翌日、採った数を数えると何と15頭も採っていた。
合間にちょぼちょぼ採っていたつもりだが、いつの間にかそんなに採ってたんだね。
ということは採ろうと思えば、ゆうに30以上、下手すりゃ50以上採れたかもしんない。
どこが稀種やねん❗Youにはガッカリだよ。こんなもん、ド普通種やないけー(# ̄З ̄)
でもなー、たまたま今年は大発生ってのも有り得るから、本当のところはワカンナイよね。

 
今回の展翅画像も先ずは♂から。

 

 
上翅が黒い。

 

 
上翅を上げ過ぎない方がバランスはいいかもしんない。

 

 
触角の整形は出たとこ勝負なところがある。カトカラの触角はとても細いので無理にいじり過ぎると、直ぐに切れるのだ。諦めが肝心だと心得る。

 

 
段々、触角が上がり気味になってくる。

 

 
ここまでは蛾眉系で、次は触角の先が内側に巻く弓反り系。

 

 
上翅をやや下げ気味にしている。

 

 
触角を下げて、下翅も下げてみた。次第に何が正解なのかワカンナクなってきた。

 
そして♀。

 

 
意外と弓反り系が何となく好きになってきたかなあ…。ちょっと悪魔が入るのがお好みかもしんない。

 
6月17日。
西宮市名塩へと向かう。
この日の目的は未だ採ったことのないウスイロキシタバだった。確実な情報は無いが、勘で場所を決めた。

何とか樹液が出ている場所を2ヶ所見つけた。➕アルファで今回は糖蜜トラップも用意している。この前みたいに樹液が出ている木が上手く見つけられるかどうかの保証は無いと感じたからだ。
糖蜜トラップは思いの外、活躍してくれた。樹液に勝ってんじゃねーの❓というくらいによく効いたっぺよ。
中身は去年作って冷凍庫にブチ込んでたもんだから、詳しいレシピは覚えてない。匂いと色からすると、黒砂糖は確実に入ってる。あとはおそらく焼酎と酢ってとこかな…(・o・)❓

両ポイントは歩いて10分程度離れているが、両方ともフシキはいた。計5~6頭が採れた。
時間帯は7時過ぎから11時過ぎまで。それぞれのポイントの滞在時刻は7時から8時半くらいと8時半くらいから11時過ぎまで。ピタリと飛来が止まる時間は少しあったが、日没後、直ぐに飛来して、あとは全く来なくなるということは無かった。帰る直前の11時でも糖蜜トラップにいた。
これで「フシキは早い時間帯にしか飛んで来ない説」を否定する材料がまた増えた。
そーだよなー。んな事あるワケないと思ってたもん。

  

 
 
♂である。何だか展翅も落ち着いてきた。触角は弓反り傾向が進行。上翅はやや上げ、下翅は下げ過ぎないといったところか。

そして♀。

 

 
とはいえ、原点に帰って触角を真っ直ぐ系にしてみた。一番カッコイイかもしんない。でも、真っ直ぐにするには時間が掛かって正直面倒くさいんだよなー。

 
中にちょっと変な奴が混じっているなと思ったら、出始めのコガタキシタバだった。もう出てるんだね。

 

 
下翅の黒帯がフシキよりも太いし、途切れない。
もう♀も出ていた。

 

 
蝶の発生は今年は1週間は遅れていると言われているが、カトカラは通常通りか、下手したら少し早いかもしんない。

 
6月19日。
この日は西宮市の生瀬を探索することにした。
ターゲットはやはりウスイロキシタバである。
しかし、良い環境が見つからないので、宝塚市の塩尾寺(えんぺいじ)・岩倉山を目指すことにした。ここを更に進むと、先に登場した行者山に至るコースだ。状況如何によっては、再び行者山に行くことも視野に入れている。

でも、樹液が出ている木がロクに無く、あってもショボい。糖蜜トラップに対する反応も薄い。こりゃダメだと思い、大返しで、また名塩へ行った。予定は未定であって、しばしば変更なのだ。決断と判断の迅速さは雌雄を決す。すったもんだのその話については、この先ウスイロキシタバの回を書く機会があれば、詳しく書こうかと思う。このシリーズも書いててシンドイからワカンナイけど。

名塩のポイントには、午後9時40分くらいに着いた。
着いた時は樹液には何もいなくて、たぶん10時くらいから活性が入った。滞在時刻は11時半までだった。
この日に採ったフシキは2♂1♀だったかと思う。つまり、日没後の早い時間帯ではないと云うことだ。
ハッキリ言おう。カトカラ愛好家たちの間の「フシキキシタバは早い時間帯にしか樹液に飛んで来ない」という説は嘘だ。ガセネタだ。全否定する。
(# ̄З ̄)ブウーッ、誰もその説に対して疑問に思わなかったのかよ❓

とはいえ、昔は個体数が少なかったから、そういう説が流布したのかもしれない。確かに日没直後から8時くらいまでに飛来する個体が多い傾向はあるような気がする。昔みたく絶対数が少ないならば、分母が小さいゆえに他の時間に得られる個体は極めて少なかったのかもしれない。だから、カトカラ愛好家の人たちがそう考えたのも無理もない事なのかもしれない。
にしても何でそんな説が、まことしやかに流布したのだろう❓誰も検証しようとは思わなかったの❓
もしかして、樹液採りは樹液が出ている木を探すのが大変だし、夜に山を徘徊しなければならず、しんどいし、怖いし、面倒クセーから、灯火採集ばっかしてたとか無いでしょな(¬_¬)❓
汗、かかない虫屋はダメだぜ。
まあいい。単に昔から噛みつきたい性格なのだ。それが己の原動力やら推進力にしているところがある。深く自己検証したことはないが、あえてとか、ワザとやっているフシがある。性格が天の邪鬼なのだ。
だから、けっして本気でケンカを売っているのではござりませぬ。気分を害された方は、単に口の悪い奴だと思って、お許し下され。

それでは展翅コーナー。
だいぶと飽きてきて、♂♀1つずつだけ展翅した。

  

 
♂だ。まあ、こんなもんか。

 

 
何か触角が弓反りに落ち着いてきた。真剣に展翅する時は触角は真っ直ぐ、それ以外は弓反り系にして、気分によっては蛾眉系ってことでエエんでねえのと思うことにした。
やっぱオラって、展翅するのが本来的にキライみたい。段々、ぞんざいになってきてる。

 
6月20日。
池田市五月山へ行く。
狙いは同じくウスイロキシタバ。
予測はしていたが、こんなとこにもフシキがいた。

 

 
もう最後は裏展翅にしたよ。
たぶん3頭ほど見たと思うけど、持ち帰ったのはこの1頭だけ。他は羽が傷んでいたからだ。この日は今年初の普通のキシタバもいたので、そろそろフシキの時期も終わりが近づいているようだ。

 
6月23日
箕面公園の大惨敗を挟んで、再び名塩へ。
そして、ダメ押しのフシキキシタバ。

 

 
寸詰まりも試してみた。
これが正しい展翅だ思う人もいるんだろなあ…。
人の好みは千差万別です。

 

 
最後に美しい♀が採れたけど、この頃になると極端に数が減り、一部の♀を除いて残っているものは羽がボロなのばかりだ。ほとんどはリリースした。
って云うか、もうオマエら、いらん(=`ェ´=)

                  おしまい

 
追伸
長々と三回にも亘ってフシキキシタバについて書いた。たぶんプロローグの回でも触れているだろうから、それも含めれば計4回にもなる。
しかし、これを書き終えて、今やフシキキシタバにはこれっぽっちの興味も無くなった。けっして嫌いになったワケではない。美しいカトカラだと云う思いに、今も変わりはない。何か過去の女になったみたいな気分だなあ…。
まあ、カトカラを始めるキッカケとなった種だから、最初に付き合った彼女みたいなもんかもしれない。想いは大事にしなければならないね。

次回からも『2018′ カトカラ元年』を上梓したのちに、2019年にも採れたものに関しては『続・何ちゃらかんちゃら』と題して文章を書くという方式になってゆくかと思う。
本当は2019年のカトカラ関係の文章は別タイトルで書く予定だったが、ややこしくなりそうなのでやめた。2019年の採集記は『2019′ カトカラ2年生』と題して一つに纏めて出版する予定です(ゴメン、嘘です)。

今回のタイトル「不思議なんて無い」は、フシキキシタバは不思議キシタバとも言われ、謎が多いキシタバだったことを意識したものです。不遜なタイトルだけど、この3話を通してだいぶと謎が解けたのではないかと思ってつけてみた。でも、本当は不思議なんて無いとは思っていない。幼生期も含めて、きっと調べれば調べる程、また新たな不思議が出てくるでしょう。生き物は何だって不思議だと思う。

最後に大きさについて少し言及しておきたい。

 

 
結構、大きさに幅がある。
もちろん基本的には♂より♀が大きいのだが、中には♀に迫る大きさの♂もいるし、♂と変わらない大きさの♀もいる。
一番小さい♂で50㎜に満たない48㎜だった。一方、一番大きな♀は60㎜もあった。全体の平均は55㎜ってところだろう。
あっ、言い忘れたけど、一部フシキキシタバとは関係のない別種の蛾も入ってます。

斑紋についても触れておこう。
上翅については多少の個体差はあるが、コガタキシタバやアミメキシタバなどのように大きな変異幅はなく、比較的安定している。
下翅だが、以前、♀の方が真ん中の黒帯が細くなると書いたが、それほど顕著に差があるワケではないようだ。但し、極端に細いものは♀だと言ってもいいと思う。

 
(註1)ウラキンシジミ

(2017.6.10 行者山)

(註2)ウスイロキシタバ

 

続フシキキシタバ(1)ダミアンの闇

 
去年は蛾ビギナーゆえに、カトカラの展翅も手探り状態だった。図鑑なんて持ってねえし、自己流でやるっきゃなかったぺよ。
けど自分で言うのも何だが蝶の展翅ならば、そこそこ上手い。だから、蛾なんぞ楽勝だと思ってた。ネットで見ても蛾の展翅は酷いものが多いし、何ならワシが蛾の展翅の新たなトレンドを作っちゃるわい(# ̄З ̄)❗みたいな気分さえあった。
しかれども、やればやるほど自分でも下手なのか上手いのかようワカランくなってまっただよ(@_@;)
ちゅーワケで、今年はカトカラの展翅を真面目にやり直すことを決意した。
その第一弾として、キシタバグループのファースト・インパクトだったフシキキシタバを探しに行った。

とはいえ、同じ場所から始めたくない天の邪鬼な性格。矢田丘陵にいるのならば、生駒山地にもいるとふんだ。
詳しいことは何ちゃらワカランし、来年か再来年かも知らぬが、大阪昆虫同好会で生駒山地の昆虫相を調べて本にするようだ。その協力もやんわりと打診されていたから枚岡公園へ行くことにした。
それに枚岡なら通い慣れたフィールドだ。ついでにウラジロミドリ(註1)の様子も併せて見る事も出来る。

 
2019年 6月6日。

もう一つ6が揃えば、悪魔の子ダミアン(註2)だなと思いつつ、夕方に出掛ける。

 

 
尾根筋でテキトーにウラジロミドリシジミと遊んだ後、展望台に向かっておりる。時刻は7時を過ぎている。そっかウラジロに夢中で気づかなかったが、確実に6月6日午後6時6分6秒と云うズラリと6が並んだ時間を此処で過ごしていた事になる。変な事が起こらない事を祈ろう。

夕闇の中で、外国人たちがボソボソ喋っている。
眼下には大阪平野の夜景が広がっている。綺麗だ。

 

 
にしても、生駒山中に外国人かあ…。
しかもこの時間帯とは時代も変わったもんだなと思う。こんなとこまで外国人観光客がやって来る時代になるとは考えもしなかった。ジャパンはこの先どうなってゆくのだ❓

暗闇の中、懐中電灯を照らして木を小まめにチェックしてゆく。実を云うと、昼間よか夜の方が樹液の出ている木は見つけやすい。なぜなら、ある種の蛾やクワガタとかカブトムシは夜に樹液に集まるからだ。懐中電灯を照らすと、カブトやクワガタはデカイだけに、よく目立つのである。蛾も飛び方で何となく樹液に寄って来たのだと解る。それらを観察していれば、樹液が出ている場所を特定できる。

いくつか樹液が出ている木を見つけた。
しかし、寄って来たのは矮小クワガタや何処にでもいるアケビコノハと名も知らぬクソ蛾どもだ。

梅園に降りる道が封鎖されていたので、仕方なく椋ヶ根橋へと繋がるルートに入る。

 

 
暗い。木々の間から僅かに街の灯が垣間見える。
道は尾根道から逸れ、やがて谷へと下ってゆく。街の灯りが届かず、真っ暗闇だ。この辺はイノブタ(猪豚)が出没するから注意せよという看板があったことを思い出してブルッとくる。いわゆる武者震いである。
そして、こんな暗い夜道。しかも山道を一人で歩いているだなんて、つくづく自分でも阿呆だなと思う。それも蛾を探して…。オイラ、頭オカシイぜ。
そもそもアチキは、子供の頃から夜の闇がメチャンコ怖くて一人でトイレにも行けなかったし、蛾もパニックな存在で、見たら飛び退くのが常だったのだ。しかも、この2つは時にリンクする。もう最悪パターンである。

しかし、げに恐ろしきは虫採り魂である。狂気の沙汰も虫次第。虫が採りたいという強い欲望が恐怖心をも凌駕してしまうのである。心頭滅却、恐怖心さえ排除して、対象物にのみに神経を集中させられるだなんて、我ながらスゴい心理コントロールじゃないか。ちょっとしたゾーンに入ってるのかもしんない。これって、まるでトップアスリートや武術の達人の領域だじょー(´▽`;)ゞ

懐中電灯の光の束が忙(せわ)しげに闇を走る。
一応蛾を探してはいるものの、イノブタへの警戒心も怠(おこた)っていないのだ。心なしが背中の毛が逆立っているような気がする。久し振りに恐怖心が芽生え始めていた。
オデ、オデ、イノブタ、怖いよー(T_T)。

そんな折り、何となく気配を感じた。
慌てて懐中電灯を照らす。
その先、頭上斜め上で蛾がくるくると飛んでいた(イノブタと思った人、残念ハズレでぇーす)。
下から黒と黄色の縞模様が見えた。
カトカラだ( ̄□ ̄;)❗
しかも、明るい黄色だからアサマキシタバではない。たぶんフシキだ。
瞬時に片手で網を左から右へとナギ払った。

手応えはあった。出会い頭の居合い殺法には自信がある。昔から運動神経と反射神経はいいのだ。
網の中を見ると、色鮮やかなオレンジが明滅している。間違いない。フシキキシタバだ。

 

 
ところで、生駒山地ってフシキキシタバの記録あんのかな❓初記録だったりして。

その場にしゃがんで、闇の中でスマホで写真を撮り、ブツを三角紙におさめる。
もし、こんな時間、こんなところでしゃがみ込んでる男に出くわしとしたら、きっと怖いだろうなあ…。行動が得体が知れなさ過ぎるよ。もしも傍らまできて急に襲い掛かれたとしたら…と思うとゾクゾクくる。足が確実に止まるね。で、追い掛け回されたりでもしたら、確実に髪の毛があっちゅー間に真っ白になるに違いない。

スマホを足元に転がるザック内の小ポケットに戻し、立ち上がって煙草に火をつけようとしたその時だった。
人の声がしたような気がした。
その場で凝固した。
(・。・;気のせい❓いや、ハッキリと聞こえた。
こんな山の中の暗闇で、人❓でも誰かが近づいて来た気配なんて無かった筈だ。なのに、いつの間に❓
もしかして、悪魔の子ダミアンの声(|| ゜Д゜)❗❓
しかも男女二人のようだ。
Σ( ̄ロ ̄lll)ハッ、ダミアンが二人❓
どわっ( ̄□ ̄;)❗❗、それとも双頭のシャム双生児的ダミアン❓それはアカン過ぎるやろ。
懐中電灯の光が激しく前後左右に振られる。
(;゜∀゜)誰だ❗❓何処にいる❗❗
女の喘ぎ声が聞こえたてきた。
背中が凍りつく。お化け❓妖怪❓それとも何かの霊❓
何にしろ、出たなと思った。
(ToT)チップス先生、さようなら。皆さん、お世話になりました。

けれど、何やら音が小さい。
しかも足元近くから聞こえてくる。
(・。・)小人❓
そして女の喘ぎ声も、どう考えても呪詛の声というよりかはアッチ系の声だ。

『あん、あん、あん、あっふぅ~ん❤』

(;・ω・)はあ❓
ザックに近づき、スマホを取り出す。
その画面には若い娘が歓喜の嗚咽を漏らして激しく交(まぐ)わっている映像が映っていた。
それは紛れもなく自分がダウンロードしたアダルト動画だった。それがザック内のポケットに無理矢理押し込んだ時に、偶々(たまたま)、変なところの触れて起動したのだろう。

恐怖はドッと解き放たれた。
安堵と同時にバカバカしくなって、声を出して笑ってしまった。
闇の中で、その笑い声は辺りに奇妙に反響し、やがて何事もなく静寂が訪れた。

                  つづく

 
追伸
その時のフシキキシタバの個体はコチラ。

 

 
♂である。
上翅を下げて、皆が良しとしそうなパターンでやってみた。
まあ、んなもんじゃろう( ̄З ̄)

因みに、去年の展翅はこんな感じだった。

 

 
鬼的なものを意識して展翅した。この頃は、まだまだ深層心理では蛾を畏怖する存在として捉えていたのかもしれない。

だいふと前に既に『2018’カトカラ元年』の2種めの原稿はほぼ書き上げているのだが、去年の自分のカトカラの展翅に少なからずショックをおぼえた。故にこの文章を書く気になっただす。後々、展翅写真がズラリと並ぶ予定なので、どれが正しい展翅なのか忌憚なき意見をお伺いしたい。
それと、フシキキシタバじたいに対する考えも今年は去年とは変わってきた。次回は、その辺りにも言及しようと思う。

 
(註1)ウラジロミドリ
ウラジロミドリシジミ(Favonius saphirinus)のこと。

 

 
(註2)悪魔の子ダミアン

1976年のホラー映画『オーメン』に登場した悪魔の子ダミアンのこと。
6月6日午前6時に生まれ、頭に666のアザを持つ少年ダミアンを巡る奇妙な物語。 監督はリチャード・ドナー。
1978年に続編『オーメン2/ダミアン』、1981年に『オーメン/最後の闘争』、1991年に『オーメン4』とシリーズ化されており、2006年には1976年版をリメイクした同名映画『オーメン』も製作された。2016年にはその後を描くテレビドラマにもなっている。

生まれたのは午前6時だったんだね。
考えてみれば、午後6時は18時だもんね。でも、この時はそんな事を考える余裕は無かった。だいたい午前6時って朝じゃんか。全然怖くない。一方、午後6時は昼と夜の狭間の黄昏(誰ぞ彼)の時間であり「逢魔が刻」なのである。その時間にダミアンが誕生したと記憶するのもしゃあないっしょ。

 

イベリコ豚の生姜焼き

 
前回の新玉ねぎの話で思い出したんだけど、新玉ねぎを使って生姜焼きもつくった。

えー、玉ねぎは切って直ぐ使ったらあきまへんで。
切って暫くしないと血流をよくすると言われるアリシンが活性化されないらしい。

今回は生姜の調味液には漬けこまないことにした。
生姜の辛みと風味を最大限に生かそうと思ったからだ。
調味液は擦った生姜とニンニク、醤油、酒、味醂、昆布だしをテキトーに混ぜたもの。但し、味醂は量を控えめにした。目指すは大人の生姜焼きなのである。

玉ねぎを炒めて半透明になったら、イベリコ豚を入れて焼く。で、七分程度火が通ったら、調味液を入れて、サッと炒める。肉はかたくなると美味しくないので、ギリの火入れ。最後に生姜の細切りを入れて軽く混ぜる。で、死にかけのキャベツとトマトの横に盛りつけたら出来上がり。

 

 
酷い画像だ。あん
まり美味しく見えない。
死にかけキャベツの罪は重いな。でも渾身の生姜焼きの前では、んな事は気にならない。

( ☆∀☆)うみゃーい❗
マジで生姜焼きって、ホント美味いなあ~(⌒‐⌒)

実を云うと、オラの生姜焼きデビューは遅い。何でかっつーと、オヤジが大の生姜嫌いだったのである。だから、おそらく豚の生姜焼きが家の食卓にのぼったことは一度たりとも無い筈だ。ホント、親の食べ物の好き嫌いって、子供に影響大だよね。結局、オヤジの嫌いなものは、後々全部旨いもんやと知ったわ。
最初に生姜焼きを食べたのは高校くらいだったかなあ…。とはいえ、本格的に虜になったのはダイビング・インストラクター時代のサイパンだった。
近所の飯屋スラブ、いや本当はブラスだっけか?
当時、周りはこの店を逆さまに呼んでいたのである。とにかく、そこのポーク・ジンジャー(生姜焼き)がメチャメチャ美味かった。
生姜がビシッと効いていて、豚肉は絶妙の厚さだった。生姜焼きの豚肉は、やや厚めが美味い。
それ以来、完全に生姜焼きフリークになったのだった。

んなことを思い出しつつ、食べ進める。しかし、美味いには美味いんだけど、何かが足りないような気がしてきた。結構、完璧に近いデキなのになあ…。何でざましょ?

食べ終わってから、ようやく気づいた。
生姜焼きには、マヨネーズが添えられるべきだと云うことをすっかり失念していたよ。
最初はそのままで食い進め、中盤でマヨネーズと絡めて食うのが美味いんである。マヨネーズと生姜焼きのタレが絡むと別の次元の美味さに生まれ変わるのである。もちろん、ごはんあっての話です。

生姜焼きって、時々無性に食べたくなるよね。
書いてて、また生姜焼きが作りたくなってきた。

 
                  おしまい

 
追伸
次回は蝶かカトカラのはなし。

新玉ねぎに刮目す

 
もうシーズンは終わっちゃたけど、例年になく今年は新玉葱を食った。
きっかけは、おかんが新玉にハマってて、如何に旨いかを力説していたからである。で、1個くれた。
おまけに、後日レシピまで送ってきた。

「玉ねぎとベーコン炒めは、玉ねぎは輪切り、オリーブオイルを少し垂らしてシオコシヨウで味を整えます。」

ここまでしてくれると、素直に作ろうと思った。
それにシンプルだし、簡単そうだ。

 

 
かあ様、おっしゃる通りでした。
新玉、マジで美味いわd=(^o^)=b
とにかく、玉葱の自然な甘さに驚いた。甘いものは苦手だけど、自然な甘さは抵抗感なく美味いと思う。
シャキシャキした歯応えもいい。

そんなワケで、新たに新玉葱を買って食い続けた。
画像は豆苗入りだが、基本的には新玉とベーコンだけ。シンプル・イズ・ザ・ベストを貫こうと思ったのである。

しかし、最後だけウィンナーを入れるヴァージョンになった。ウィンナーの賞味期限が迫っていた為でやんす。

 

 
これはこれで旨かった。
ウィンナーじたいも旨かったからかもしんない。

 

 
日本ハム 『アレーグリ マッサ』。
世界を旅するというアンティエシリーズの一つで、他に2種類があるようだ。

「赤パプリカの深いコクと旨み」惹句がある。ポルトガルとか無塩せきの文字もあるから、気になって調べてみた。

アレーグリ マッサの「マッサ」とは、赤パプリカの塩漬けペーストのことで、ポルトガルの万能調味料らしい。「アレーグリ」は陽気って意味みたいだね。
「無塩せき」とは、発色剤を使わずに仕上げる製法だそうである。逆に普通のウィンナーは発色剤を使ってるのか❗❓発色剤って、何だ(・。・;❓

日本ハムと大山ハムのサイトに発色剤についての説明があった。日本ハムの方が消費者の質問に答える形になっていて解りやすいので、そちらを抜粋しよう。

『発色剤には、大きく分けて次の3つの働きがあります。

1.原料肉の色素を固定し、ハム・ソーセージ特有の色調を与えます。
《着色料のように色を付けるのではなく、お肉の中のミオグロビンやヘモグロビンといったお肉自身がもっている赤い色素を固定し、加熱・酸化による褐色化を防ぎます。》

2.原料肉のもつ獣臭さを消し、ハム・ソーセージ特有のフレーバー(風味)を与えます。
《発色剤の使用されていない焼豚などと比較すると、その風味の違いがよく分かります。》

3.細菌の増殖を抑える働きがあります。特に恐ろしい食中毒菌としてよく知られているボツリヌス菌の増殖抑制効果があります。

発色剤を用いない無塩せき(むえんせき)の商品群は、加熱した肉そのものの褐色であり、一般にあまり日持ちがせず、また原料肉そのものの匂いを感じます。』

なるほどね。一応、納得の説明だ。
でも、この発色剤は発ガン性があるとも言われている。それに対しての回答も載せておこう。今度は大山ハムのサイトのものを抜粋しよう。

『「亜硝酸ナトリウム」に発ガン性物質生成の可能性があるといわれていますので、これを気にする人も多いでしょう。
しかし、食品に使うことのできる添加物の量は、食品安全委員会や国際的な機関が無害と確かめた量1/100の量を、毎日食べつづけても安全な量としています。さらに、この量よりずっと少なくなるように法律で使用基準がきめられています。
当社では、さらに低い使用基準を設け、安全性確保に努めています。
また、ビタミンC(酸化防止剤)と一緒に取ることで、発色反応を促進させ、亜硝酸残存量を減らします。そのため、「発色剤」と「酸化防止剤」はセットで添加されます。
発ガン性物質が生成しやすい条件はpHが3.6の時で、食肉製品の多くは、pHが6以上のため、現状ではほとんど生成されないことがわかっています。』

なるほどね。
更にネットサーフィンしていると、『シルフレイのふたり言』というサイトに、こんな発言もあった。

『「当社のハムは、安心・安全のために発色剤は使っていません!」という謳い文句を目にすることがあります。こういうメーカーは、よほどのアホか腹黒いかどちらかなのですが、嬉々として手にとってしまう消費者の方が多いでしょうね。」
中略。
ところで「発色剤不使用」のハムやソーセージは岩塩を使用していることが多いです。「天然の岩塩を使用!」と偉そうに書いてあったりしますが、本当の理由は、岩塩に硝酸塩が含まれているからです(笑)。そもそも岩塩で塩漬けするとキレイに発色される、ということに気づいた先人の知恵から、岩塩に含まれる硝酸塩による発色の仕組みが明らかになったのです。

残念ながら岩塩には金属や石膏などの不純物も含まれます。先人の知恵を利用しつつも、岩塩を使うかわりに、精製塩と硝酸塩を使うというは安全かつ効果的な優れた製法と言えます。「伝統製法」というのは得てしてこういうもので、そのまま使おうとしても、安全性や品質とは両立しないことが多いのです。

「天然にこだわって岩塩で作った安心・安全の発色剤不使用のハム!」などという商品が、いかにデタラメなものかお分かりいただけると思います。無論、作る側は、分かっていてやっていることですね。』

因みに、このサイトには大山ハムの広告が貼り付けてあった。付け加えると、大山ハムのサイトの発色剤使用の説明には、発色剤の必要性が強調した論調に感じた。興味のある方は、そちらも覗いてみるがよかろう。

自分的には、この問題についてはどっちだってよくなってきた。こちとら、発ガン性がメチャメチャ高い煙草を毎日パカパカ吸っているのだ。発色剤の発ガン性なんぞ、屁の突っ張りにもならんわ(=`ェ´=)

あ~、また脱線だ。
今回は短くしようと思ったのになあ…。
気を取り直して、話を新玉に戻して終わろう。

新玉葱を今まであまり食ってこなかったのは、何となくインパクトに欠ける水っぽいイメージがあったからだ。辛みが少なくてマイルドだから、オニオンスライスくらいにしか使えないと思い込んでいたのだ。
でも、( ☆∀☆)刮目したよ。新玉葱は美味いっ❗❗
そっかあ…、新玉葱は熱を加えてこそ美味いんだね。

  
                  おしまい

 

明石で寿司を食う

  
明石で寿司を食った。

 

 
魚の棚に行くと、無性に寿司を食いたくなるのだ。
だから毎回、名物の明石焼きはスルーである。並ぶのも嫌だしさ。

魚の棚商店街のメインストリートから少し入った寿司屋『鮨 縁』へ行く。
「縁」と書いて「えにし」と読む。
扉を開けると、店内は静かな音楽が流れるお洒落な空間だった。白木の一枚板のカウンターが奥へと伸びている。席は、そのカウンターのみの8席。
一枚板の白木のカウンターは大好き。頬ずりしたくなるくらい手触りが良いからだ。こういう店は店主の拘りを感じるから期待値も跳ね上がる。
付け台も一枚板で、その向こうが板場になっており、職人の仕事がよく見えるようになっている。所謂(いわゆる)、割烹スタイルだね。こういう劇場型の店は見てて飽きないから楽しい。
聞けば、店のデザインは若い店主御本人とのこと。寿司職人の前は建築関係の仕事をされていたらしい。

日曜日限定の「おまかせ3000円コース」をチョイスした。
先ずはビールで喉を潤し、ガリに手を伸ばす。

 
【ガリ】

 
ガリは2種類ある。ちょっと珍しい。色も濃い。
奥がお馴染みの薄切りの甘酢漬け、手前が棒状のものである。どちらも見た目通りの濃い味で、味の系統は似ている。しかし、食感が違う。特に棒状のはポリポリで、酒のツマミにもなる。これは普通の土生姜(根生姜)ではなく、はじかみなどに使われる谷中生姜(葉生姜)なんだそうな。なるほどね。土生姜よか歯の当たりが柔らかい。

 
【剣先烏賊】

 
トップバッターは剣先いかの昆布〆。
表面に細かく切れ目が入れられており、それがイカの甘さを引き出している。だが、惜しむらくは表側は柔らかいが裏は硬いこと。裏側に隠し包丁が入っていなかったのではないかと思われる。

 
【明石鯛】

 
これも昆布〆だったかな。
噛めば噛むほど、奥から旨みが立ち上がってくる。
明石といえば、鯛。日本一の鯛の名産地だ。だから旨くて当然なのだ。養殖とはひと味もふた味も違う。
昔、東京のお寿司屋さんで聞いたことがある。鯛に関しては圧倒的に西の方が味が良くて、特に明石のものは最上、とても敵わないとおっしゃってた。潮が速いから、ムチャクチャ運動量が多くて身質が格段に良いのだと言う。
そういえば、明石の鯛はよく泳ぐから尻尾の骨が一部ボコッと瘤状に盛り上がってるらしい。

 
【縞鰺】

 
シマアジはカンパチ、ヒラマサ、ハマチ(ブリ)とは親戚関係だが、中でもシマアジが一番好きだ。
コリコリとした歯応えがあって、脂と旨みに上品さがある。しつこくないのだ。
ハマチの養殖モノなんて、脂臭くてダメ。だから最近は全く食わなくなったし、ブリも天然のモノしか食わない。どうにも生臭くて苦手なのだ。昔は好きだったんだけどなあ…。それだけ舌の経験値が上がってるのかなあ、それとも単に歳喰っただけなのかなあ…。

 
【鰯】

 
真鰯は大きいと脂が乗りすぎててしつこいが、これくらいの大きさだと丁度良い塩梅(あんばい)だ。
脂が舌に広がったあと、すうーっと余韻を残して消えてゆく。
これも昆布〆だったっけか?
言い忘れたが、この店はネタには全部仕事がなされている。だからカウンターには醤油は無くて、刷毛で塗られて供される。

 
【甘海老】

 
これも昆布〆。
昆布〆系が続くが、まあ好きだから文句はない。
甘海老の昆布〆といえば、富山を思い出す。金沢や富山は昆布〆文化だから、何でも昆布〆にすると云う印象がある。チーズの昆布〆だって見たことがある。
でも、昆布の旨みが身に移るから利には叶っている。美味いし簡単だから、自分でも珠に家で作る。
因みに、この店ではネタにより昆布の産地を使い分けているそうだ。羅臼や利尻など昆布によって全然味わいか異なってくるらしい。

ここでビールから日本酒へチェンジ。
この店は日本酒が売りでもあるようだ。
当然、辛口をお願いする。

 

 
新潟 青木酒造『鶴齢』。
酒器は切子である。
厚みが無いので薩摩切子ではなく、江戸切子だろう。
涼しげでいいね。切子を見ると、もう夏だなと思う。

 

 
新潟の酒と云えば淡麗辛口だが、フルーティーで辛口というよりかは、どちらかと云うと旨口である。そういえば最近はまた日本酒がブームになってきてるね。ホント、今はスパークリングとか色々ある。ボトルもおよそ日本酒とは思えないものも多い。

 
【鳥貝】

 
子供の頃は、この鳥貝がマイ寿司ネタランキングの最下層だった。見た目がジジむさいし、大して旨くねえし、あの上に塗られた変に甘ったるい煮ツメが嫌いだった。それに何より、噛んでてガムみたいにクチャクチャといつまでも口に残るのが最悪だった。だからか、いつも最後には鳥貝が寿司桶に残っていたという記憶がある。
そういえば、最近は寿司ネタで見ないようになったような気がする。経緯は分からないが、今は高級食材になっているようだ。回転寿司で見ないのも、コストに見あわないからだろう。

小振りの鳥貝だから、どうかと思ったが旨い。
貝の仄かな香りもして、歯切れもいい。久し振りに美味い鳥貝を食ったよ。

 
【鯖寿司】

 
薄い昆布が乗ってるから、関西で言うところの「バッテラ」だね。但し、シャリには色々入っている。
海苔で包み、手渡しされる。この海苔で包むと云う発想がいい。手渡しもアクセントになってて面白い。
けど、鯖は酢で〆過ぎかな。身が硬くなるし、酢もキツく感じるから、もっと生っぽい方が好みなのだ。

 
【漬け鮪】

 
調味液に漬け込んだ時間が絶妙。程好い柔らかさと味の入り方だ。ヅケ鮪は漬け込み時間によって味が大きく変わる。漬け込み過ぎると身が硬くなるし、浅いと調味液が沁みないのだ。

 
【穴子】

 
煮てから炙ったようだ。
でも、申し訳ないが自分好みではない。穴子はとろとろに柔らかくて、口に入れたら溶けるような奴が好きなのだ。

 
【赤だし】

 
出汁が効いてて美味い。
ホッとする。三つ葉以外は具が入ってないというのもいい。余計なものが入っていない方が、かえってシメとしては寿司の味が脳裡に蘇る。

これで三千円は安いと思う。
しかし、誠に残念なのがシャリ。
シャリが赤酢なのは、まあいい。しかし、ちょっと味が濃い。自分はギリ大丈夫だが、酢がキツイと感じる人は多いかもしれない。
一番の問題点はシャリのかたさ。兎に角、かたい。前半は米に芯が残ってるものも多かった。ネタには良い仕事をしてるだけに、物凄く勿体ない。シャリの大きさはシャリ駒で、ネタとのバランスも悪くないしさ。
まあ、大将はまだ若いし、そのうちそれも改善されてゆくだろう。
シャリが改善されたなら、三千円はメチャクチャ安いと思う。

 
船着き場に寄って、たこフェリーの復活を確認し、明石城跡に行った。

 

 
あらら、高速艇になってるのね。
昔のたこフェリーが懐かしい。乗り場も新しく綺麗になってたから、ノスタルジィーの人としてはちょっぴり悲しい。でも、何はともあれ復活したんだから喜ばしい事だ。

明石城跡でベンチに寝転ぶ。
風が渡ってゆく。
正面には駅のフォームが見える。列車を待つ人々も見える。
城から駅がこんなに近くに見える所は無いと思う。そして、駅からお城がこんなに近く見えるところも他には無いと思う。
明石って、素敵なところだ。

 
                  おしまい

  

山菜の話②コシアブラの天麩羅

  
山菜の女王といえば、コシアブラである。

  

 
と言っても、一般ピーポーにはあまり知られていない。たぶんスーパーなんかにゃ売ってねーからだ。
流通するのは田舎の「道の駅」や高速道路のサービスエリアとかで、殆んどが近辺で採取された地(じ)のものであろう。ようするに天然物で、多くは地元で消費されるものだろね。つぅーか、従来は地元の人が必要な分だけを取って食べるもんでしょうな。だから都会には出回らない。
これはつまり、我々が市場やスーパーマーケット、デパートなどで見る山菜は天然物ではないと云う裏返しでもある。タラの芽やコゴミ、ウドにワラビ、ふきのとうに山ブキ、ウルイ、ゼンマイetc…、みんな、み~んな所詮は養殖物なのだー。あっ、野菜だから養殖とは言わないか。栽培物ですな。どちらにせよ、人が育てたもんってワケだね。
ぶっちゃけ、山菜は天然物と栽培もんは味も香りも全然ちゃうでー。

コシアブラはウコギ科ウコギ属の落葉木。タラの芽やウドもこのウコギ科に属する。タラの芽と同じく春先に出る木の芽の部分を食べます。
因みに漢字だと「濾し油」と書く。名前の由来は、昔はこの木の樹脂(あぶら)を絞り、濾したものを漆(ウルシ)のように塗料として使っていたからだね。
北海道から九州まで沖縄を除く全国に広く自生していて、比較的明るく開けた雑木林などで見られる。関西では、標高にもよるが4月~5月が採取の適期だろう。
とはいえ、ウルシなんかと間違えるケースもあるので、お気をつけあそあせ。
コシアブラは特有の香りがするから、慣れれば分かるんだけど、もしもウルシならば触ったらカブれるでぇー。下手に匂った時には手遅れかもよ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ

前置きはこれくらいにして、肝心の食べ方である。
といっても、コシアブラは天ぷらに尽きる❗
ナゼかっつーと、天ぷらが圧倒的に美味いからだ。それに天ぷらにすれば、アク抜きをしなくてもよい。むしろアクが油で揚げられることによって旨味に変わるのではないかと思われるフシがある。

今回は、こんな天ぷら粉を使いましたー。

 

 
オーマイの『ちょっとの油でカラッとおいしい 油少なめ天ぷら粉』。商品名を見て、即購入決定。
天ぷらは揚げ終わった後の残った天ぷら油の処理が問題だ。だから少ない油で揚げれるにこした事はない。
とは云うものの、少ない油だと上手く揚がらなかったりするから、そこが悩みの種だ。

他の山菜も一緒に天ぷらにすることにした。

 

 
取り敢えず、試し揚げしてみよう。

 

 
手前がコシアブラ。右上がコゴミで隣がどんこ生椎茸。油は良さげな感じだ。まあ、こんな感じで揚げてけば大丈夫そうだ。

 

 
先ずは塩をかけて食う。
やっぱ、( ☆∀☆)美味いねーっ❗❗
シンプル・イズ・ザ・ベスト。仄かな苦みと旨みが相俟って、鼻から香りが抜ける。堪んないよ。まさに山菜の女王だと思う。タラの芽よりもコッチの方が断然好きだ。
すかさず🍺ビールをゴクゴクやる。
(σ≧▽≦)σぷひょー、至福の極みじゃよ。
蝶採りの盟友であるプーさんが、時期になるとコシアブラ、コシアブラとうるさいのも解るわ。
流石、山菜の女王と言われるだけの事はある。

そういえば、近所に住むサッちゃんにもお裾分けしたんだよね。彼女は食通だが、コシアブラは食べたことが無いと言ってたのを思い出したのだ。
渡して、少しばかり飲みに行った。いや、少しばかりじゃないな。二人が集まれば、痛飲必至なのである。とはいえ、その日はまだ早めの11時くらいには帰った。
翌朝、サッちゃんからの電話履歴に気づいた。履歴は夜中の2時くらいとある。爆睡してたのて気づかなかったのだ。何かあったのかな?と少し心配になって電話してみた。

『あのなあー、昨日なー、帰って夜中にその山菜の女王とか言うのを天ぷらにしてん。ほんだらなー、ムチャクチャ美味しかってなー、感動して電話してん。』

コシアブラの力、恐るべしである。

だが、サッちゃんに渡したのにまだあって、翌日と翌々日にも食った。おかんに渡すつもりだったが、連絡が取れなかったのである。

 

 
つけ加えておくと、コシアブラは味も香りも割りと直ぐに落ちるそうだから、その日のうちとか翌日とかの出来るだけ早めに食べることをお薦めします。

最後は試しにパスタにもしてみた。

 

 
アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ仕様を選択。

 

 
所謂、ニンニクと鷹の爪のパスタですな。
ゴチャゴチャした味にするよりも、シンプルな方が出来の正否が解りやすいと思ったのだ。
だが、シンプルがゆえに難しい面もある。
ニンニクと鷹の爪を低温で火を入れて、油に香りを移す。ここは割りと大事だ。日本ではニンニクを高温でカリカリにしたがるが、イタリアでは誰もそんなペペロンチーノの作り方をしない。
そして、パスタの茹で汁とオリーブオイルを如何に乳化させるかが最大のポイントだ。ここで仕上がりの良し悪しが決まる。

 

 
ちゃんと乳化は出来たと思うが、ハッキリ言って天ぷらの足元にすら及ばない。
過去におひたしなんかも試した事があるけど、天ぷらが旨過ぎて落差が激しいわ。その分、落胆が大きい。
よし、来年は天ぷら一本でいこう。
でもさぁ…、いくら旨くともギンギンの若者じゃあるまいし、油っこ過ぎて天ぷらばっか食えないんだよなあ…。オジンになったよ。

                  つづく

 

2018′ カトカラ元年 その1

 
  『不思議のフシキくん』

  Vol.1 フシキキシタバ

 
前回のプロローグに続き、いよいよ第1回である。
とはいえ時間が経っているので、ヒマな人はプロローグを読み返してね。

 
突然、去年からカトカラ(Catocala)に嵌まっている。
キッカケは6月上旬に奈良県大和郡山市の矢田丘陵にシンジュサンを探しに行った折りだった(註1)。

午後11時。水銀灯のそばの柱に、見慣れない蛾が止まっていた。
(;゜∀゜)あっ❗、もしかしてカトカラ❓
直感的にカトカラの中でもキシタバの仲間だと感じた。しかも、見たことがない奴だと思った。インスピレーションが走った時は大概は☝ビンゴだ。
ぞんざいに近づいたら、驚いて僅(わず)かに下翅の鮮やかな黄色を覗かせた。
(;・ω・)びっくりしたなー、もぅー。威嚇かよ。

 
(出展『フォト蔵』)

 
にしても、小憎らしいチラリズムだ。
男と云う生き物は、とってもチラリズムに弱いのだ。
( ☆∀☆)黄色いパンティー🎵
(@_@)黄色い逆さパンティー❤
\(◎o◎)/キャッホーッ💕

去年(2017年)、下翅が黄色い系統のカトカラはジョナスキシタバとキシタバを採った経験があったが(註2)、それらよりも明らかに鮮やかな黄色だと感じた。

少し離れた所にいる小太郎くんを呼ぶ。
彼は蝶屋だけど(ワシも蝶屋だす)、オイラなんかよりも遥かに蛾に詳しいのだ。って云うか、小太郎くんは虫の事だったら何だって詳しい。若いけど尊敬しちゃうよ。蛾初心者のオイラとしては誠に頼もしい存在だ。
 
『これって、キシタバ系じゃなくなくね❓』
 
と尋ねたら、小太郎くんが事もなげに答える。

『あっ、カトカラですね。この時期だと多分フシキキシタバかな。結構珍品ですよ。だとしたら、奈良県での記録はたぶん無かった筈てす。初記録かも。』

あんた、何でも知ってはるなあ。やっぱ、マジ尊敬するよ。いつまで経っても、ワシ二流でぇ~す( ̄∇ ̄*)ゞ

にしても捕らえて確認せねば、どうしようもない。
上から毒瓶をかぶして、薬殺する。
酷い所業だ。これで、アッシも立派なマッド・サイエンティストの仲間入りじゃよ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。きっとロクな死に方をせんじゃろうて。

暫く経って、昇天を確認したところで取り出す。

 

 
表の柄は渋いっちゃ渋いけど、所詮は蛾風情。地味だ。
ならばと、裏返してみる。

 

 
(;゜0゜)おっ❗、この特徴的な黄色と黒の縞模様は間違いなくキシタバの仲間だね。馬鹿なオイラだって、それくらいのことは解る。

小太郎くんが言う。
『間違いなく、フシキですね。』
真面目に名前を聞いてなかったので、改めて何だそりゃ?と思って訊き返す。
『フシキ❓、フシギ(不思議)じゃなくて(・。・;❓』

フシギノモリノオナガシジミとか、また誰かがメルヘンチックな名前でも付けたのかと思ったが、小太郎くん曰く、間違いなくフシギじゃなくてフシキだそうだ。
にしても、語源がワカンねえよ。兎に角、蛾トーシロ(素人)には聞いたこともない名前のキシタバだった。
名前なんて別にどっちゃでもええけど、カトカラはカッコ渋美しいから、蛾にしては好きな方かなと思った。
でも、ことさら集めようという気は起こらなかった。

そういえば、こん時はこんな事も考えてたっけ…。
去年も思ったんだけど、このカトカラグループの柄って、サイケデリックっぽくねっ❓
サイケデリック・アートにはカラフルな渦巻きみたいな柄があって、なんかジッと見てると引き込まれそうというか、(◎-◎;)目が回りそうになる。幻覚系ドラッグやってたら、コレってヤバいくらいにウルトラ立体的に見えるのかな❓(勿論、やんないけどー(^o^))
インドで出会った学生ジャンキーくんは、L・S・D をやったら、そんな風に見えたりすると言ってたなあ…。
アイツ、相当なジャンキーだったけど、まだ生きとんのかなあ…。

んな事を考えつつ、そっと上翅を少し上げてみた。
と、同時に色鮮やかな黄色がバァーンと目に飛び込んできた。
黄色はあまり好きな色じゃないけど、素直にとても綺麗だと思った。でも写真は撮らなかった。そんな事よりも意識はまだ見ぬシンジュサンの方に集中してたからだ。その美しさに心を動かされたとはいえ、所詮は前座だと思っていた。いつシンジュサンが飛んでくるかワカランのだ。かまけているヒマなどない。

その夜、💥ビシッとシンジュサンをシバいて、翌朝に帰った。この日が記念すべきオーバーナイト・モスだったワケだね。冷静に考えてみれば、蛾を求めて徹夜するだなんてビョーキだよなあ。我ながら脱力系で笑ってしまうよ。

一眠りしてから展翅してみて、(;゜0゜)驚いた。
日の光の下で見るそれは、もっと鮮烈な黄色だった。

 
【フシキキシタバ Catocala separans ♂】
(2018.6.7)

 
深くて濃い、どこか透明感のある山吹系の黄色だ。見ようによってはオレンジ色にも見える。
これを見て気持ちが一変した。
カトカラの中の所謂(いわゆる)キシタバと言われるグループは下翅が皆さん黄色くて、日本ではこのタイプのカトカラが圧倒的に多い。でも素人目には、どれも似ていて何が何だかワカンない。区別がつかねえもんは面倒クセー。だから敬遠してた。生来ミーハーだから、カトカラと云えば、こん時まではムラサキシタバしか眼中になかったのである。けんど、こんなに美しいのなら集めてみてもいいなと思った。それにスタートからいきなりの珍品で、しかも奈良県では未記録と云うのも何だか気分が良い。俄然、やる気になった。

後々知ることになるのだが、後翅の黄色部は他の黄色系カトカラと比べて、このフシキキシタバが群を抜いて美しい。その理由は他種と比べて下翅の黒帯が細いことにある。即ち、黄色い領域が広いということだ。少し毛色が違うが、この黄色の美しさに対抗しうるのはカバフキシタバくらいだろう。あと、蛾にしてはあんまりデブじゃないのも好感がもてた。
もしも最初に自分の力だけでゲットしたのが、少し前に発生する地味なアサマキシタバだったとしたら、おそらくカトカラには嵌まっていなかっただろう。いや、嵌まるにしても、もっと後だったかもしんない。
そういえばこの年は、ちょっと前の5月半ばにA木くんに『そろそろアサマキシタバの季節ですよ。今年は蝶の発生が全般的に早いから、もう出てるかもしれませんね。』と言われたのだった。けんど、言われても全然ピンとこなかった。そういうのもいたなあ…と云う程度で、あまり興味が無かったのだ。やっぱ、蒐める気がさらさら無かったのね。

 
後日、♀らしきものも採れた。

 
(2018.6.17)

 
♀の方が帯が細くて、より黄色いね。偶々かなと思ったが、図鑑等で確認すると、その傾向はあるようだ。
とはいえ、雌雄の決定的な違いはおそらく腹だろう。
♂は腹が細長く、その先端に尻毛(毛束)があるが、♀には無い。腹も短くて太い。加えて、翅形は♀の方がやや丸っこい。他にも判別点はありそうだが、蛾はトーシロだからワカンねえや。

とにかくコレを機に、フシキキシタバ、ひいてはカトカラ全般について調べてみようと思った。

フシキキシタバは、かつては大珍品だったようだ。
1889年に記録されてから、近年まで記録が無かったそうだ。それくらいレアだった。再発見されたのは1956年で、場所は兵庫県。何と67年ものインターバルがある。(・o・)何で❓
その後、岩手県、山梨県、北陸地方や近畿地方各地での発見が相次いだそうな。

ネットの『カトカラ全集』の県別カトカラ記録を見ると、小太郎くんの言うとおり奈良県では未記録になっていた。でも、これは単に正式な発表がされてないだけだと思う。とは云うものの、調べれば調べるほど珍品じゃなくなってきてるみたいだし、当然奈良県でも採れているという情報も入っている筈だろう。じゃなければカトカラ界の情報ネットワークが余程狭いのか、愛好者が少ないのか、もしくは管理者の怠慢を疑っちゃうよ。

 
【学名】Catocala separans(Leech,1889)

属名Catocalaの語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
小種名の「separans」は、おそらくラテン語由来。
意味は「分離」だろう。これは上翅と下翅の色が違うことからきてるのかと思ったが、それじゃテキトー過ぎる。他のカトカラもそうだからだ。
想像だが、たぶん下翅中央の黒帯が途中で分離、もしくは分離しがちだからではないかと考える。間違ってたら、ゴメンナサイ。

フシキキシタバは、英国人リーチによって1889年に富山県高岡市伏木と滋賀県長浜から得られたものから記載された。和名の由来はその辺からだと思われるが、なぜナガハマキシタバではなく、フシキキシタバになったのかと云う経緯はわからない。
どうあれ語源は、まさかの地名だったのね。納得だが、ちょっとガッカリだ。想像では、もっと複雑でドロドロしたややこしいミステリアスな命名ストーリーを描いていたからさ。
(-_-)フシキキシタバ殺人事件。ナガハマキシタバを主張した男は消されたな。アカン、また変な妄想がワいてきた。脳を強制停止じゃ。

分布は本州、四国、対馬。北限は青森県だが、その分布は局所的で記録の無い都道府県も結構ある。国外では朝鮮半島、中国北東部、ロシア沿海州にも分布するとされている。

成虫の開張は55㎜。図鑑等には6月初旬から現れ、8月下旬まで見られるとあるが、実際は7月に入ると殆んど見られなくなった。いても、驚く程みすぼらしいボロだった。新鮮な個体を得られる期間は短いのかもしれない。

フシキキシタバは下翅の黒帯が細く、黄色い領域が広いのが特徴だが、実をいうと日本には同じような特徴を持つものがもう1種いる。Catocala duplicata マメキシタバだ。
けど両者の判別は簡単。名前のとおりマメキシタバの方が遥かに小さいからだ(開張46~48㎜)。それに上翅の斑紋が全然違う。発生時期も1ヶ月近く後ろにズレるから、間違うことはまず無いでしょう。マメちゃんが登場する頃には、フシキさんはボロボロなのだ。少なくとも関西から西はそうだろう。

 
【マメキシタバ Catocala duplicata ♀】
(2018.8 大阪府四條畷市)

 
何か野暮ったいなあ…。
たぶん上翅のデザインにメリハリが無いからだ。それに、下翅の黄色にフシキのような透明感のある輝きが感じられない。どこか燻(くす)んで見える。

話をフシキくんに戻そう。
幼虫の食樹はブナ科コナラ属のクヌギ、アベマキ。
飼育する場合、同じコナラ属であるミズナラやコナラ、カシワが代用食になるというが、産地により受け付けない事もあるそうだ。

先にも触れたけど、フシキキシタバは近年までは指折りの大珍品だった。しかし、最近では関東地方の平野部など各地から多産地が見つかっているという。
これは食樹が判明し、灯火にあまり飛来しないこと、樹液によく集まること、発生期が比較的早くて期間も短いこと、昼間の見つけ採りでも得られることが分かったからのようだ。珍種と言われるものでも生態が分かってしまえば、普通種に成り下がることはままある。
とはいえ、かつては不思議キシタバとも言われるくらいに謎多き存在だったみたいだ。謎とかそういうのって掛け値なしに好き。謎があれば、そこには浪漫があるからだ。興味は尽きない。
これは想像だが、不思議だとされたのは、①記載されてから長い間再発見されなかった事。②再発見されてから突然各地で記録が急に増えた事。③蛾の主たる採集法であるライトトラップや外灯にはあまり飛来しない事。④前年には沢山見られたのに、翌年は全く見かけなくなったりする事。そして、⑤幼虫の食樹が何処にでもあるクヌギやアベマキだからだろう。
幼虫の食餌植物がレアなものなら、珍品たる理由も理解しやすい。それが、まさかの何処にでもあるクヌギの木となると、首を傾げざるおえない。

①と②は後回しにして、③からその理由を紐解いてゆこう。カトカラ1年生の空想、戯れ言だと思って聞いて戴きたい。

③だが、灯火にはあまり飛来しないとあるが、自分は灯火に飛来した個体を5頭以上は見た。但し、何れも深夜11時以降(註3)、遅いものは午前4時過ぎに飛来した。因みに飛来が多かったのは、午前1時前後である。
たぶんライトトラップや灯火まわりは、皆さんそれほど深夜遅くまでやらないから、それで会えなかったのではあるまいか。ゆえに灯火にはあまり飛来しないと考えたのではなかろうか。たった1年の経験だが、フシキは灯火への飛来が遅いタイプという可能性はあると思う。

④は、単に大発生した後の次の年には極めて個体数が減るからではないかと思う。大発生じゃなくとも、多かった年の翌年は個体数が減ると思われる。蝶なんかは、そういう例が結構多い。蛾でも有り得るだろう。

⑤が最大の不思議だった。どこにでもあるクヌギやアベマキが幼虫の食樹なのに、なぜ珍品だったのかが謎過ぎる。これを単にカトカラ愛好家の怠慢だと片付けるのには無理がある。クヌギをホストとするカトカラは他にもいるからだ(註4)。となれば、カトカラ愛好家さんたちがフシキキシタバがいるような環境に行く機会は少なくなかった筈だ。のみならず、その環境ならば甲虫屋だって訪れる機会は多い。甲虫屋の多くが蛾に興味を持っているとは思えないが、情報が入る確率はゼロではない。長い年月の間には、情報がもたらされる事もあって然りだろう。それでも稀にしか見つからなかったという事は、やはり昔は極めて稀な種だったと思われる。

発見されにくいのは、発生が比較的早いからだとも考えたが、コヤツの前にアサマキシタバが発生する。また、フシキの後にはすぐワモンキシタバや、ただキシタバ(Catocala patala)も発生する。前後どちらかを採集に行った折りに、会える可能性はそこそこあるだろう。だから、それも理由とはなりにくい。やっぱ不思議だわさ。

とはいえ原因のない結果は存在しない。きっとそこには某(なにがし)かの理由がある筈だ。
例えば、昔と今とでは里山の環境に何か変化はないだろうか❓地球温暖化とか、乾燥化とか、天敵の減少とかさ。
💡ピコリン❗そこで、はたと閃いた。
クヌギは昔から里山に住む人々に利用されてきた。成長が早く、植林から10年ほどで木材として利用できるからだ。材質は硬く、建築材や各種器具、車両、船舶に使われる他、薪や椎茸栽培の榾木(ほだぎ)、炭(薪炭用材)としても用いられてきた。伐採しても切り株から萌芽が更新し、再び数年後には樹勢を回復する事から、持続的利用が可能な樹木の一つとして農村では重宝されていた。それゆえ下草刈りや枝打ち、定期的な伐採など人の手が入ることによって林は維持されていた。これがいわゆる日本人のイメージする雑木林で、里山の風景の典型を成してきた。しかし、近代化と共に日本人の生活様式や農業そのものの有り様が変化した。そして、今では利用されることも少なくなり、放置されることが多くなった。
つまり、雑木林が放置されることにより伐採が減って、クヌギやアベマキの大木が増えたのではないだろうか。
クロミドリシジミの幼虫がアベマキの大木を好むらしい。そして、最近になって各地で増えているとも聞いている。フシキキシタバの幼虫も大木好きで、クヌギやアベマキの成長が進み、それに伴って増えたのではあるまいか❓ それだとキレイに説明がつく。どこにも、そんな事は書いてなかったけど…。

①は、⑤と関連性があるのではないかと思う。
記載されて長い間再発見されなかったのも、昔はクヌギの大木が少なかったからではないかな。

②も⑤とリンクしていて、再発見されてから急に各地で見つかり始めたのも全国的にクヌギやアベマキの大木が増えたからだろう。時代の流れで、里山の生活様式が想像以上に各地でワッと一斉に変わったんだろね。
個体数が増えると、観察される機会も増える。当然、詳しい生態もわかってくる。それが発表されれば、伝播は早い。加速度的に情報量が増えたから、発見が各地で相次いだのではないかと推察する。

再度言うけど、蛾初心者の戯れ言だと思って聞いて戴きたい。
色々と文献をあたってみたけど、調べた限りではこういった推察なり意見なりは見受けられなかったし、奈良県の記録は今年見ても空白のままだ。カトカラ愛好家って、もしかしてシャイなの❓

怒られそうだ。カトカラ愛好家の皆様方、けっして喧嘩を売っているのではござりませぬ。初心者ゆえにワケもワカラズ、素直に疑問をぶつけただけでござる。納得できる説明を御教示してくだされば、直ぐに謝罪、意見を引っ込める所存でありまする。
納得できねば引っ込めませんけどー。ツゥンマセーン。
あっ、このモノ言い、絶対怒られるなあ。
まあいい。どうせ周りでカトカラを集めているのはA木くんくらいしかいないし、滅多に遊んでもらえない。だったら、勝手な事をゴチャゴチャ言う一人ぼっちカトカラ愛好家になろう。
でも、本当は一人で夜出歩くのは嫌なんだよなあ…。
👻お化け、怖いし。

ここまでを酔っ払って一気に書いた。
翌日、読んでみて、ヤバいかなあと思った。偉そうなことを書いちゃったので、不安になってきたのだ。
そういえば、西尾規孝さんの『日本のCatocala』のフシキキシタバの項を読んでないんだよなあ…。去年の秋の終わりに大阪の自然史博物館で読ましてもらったんだけど、既に採った事のあるカトカラは無視して、まだ採ったことのないものを中心に読んだのだ。採ってしまえば、急速に興味を失う性格が仇になっちまっただよ。
とにかく、ここは是が非でも確認せねばなるまい。もう慌てて、ソッコーで自然史博物館に行ってきましたよ。

 
件の本には、アッシの考えたような事がちゃ~んと書いてあった。

「本種は比較的最近になってあちこちで産地が知られるようになった。老齢木にもつくようである。今から20年前にコシロシタバやマメキシタバ、オニベニシタバの多産した上田市のクヌギ林の樹齢は20年前後であった。40年になるとCatocala はつきにくくなるような印象を持っている。老齢木のタンニンは幼虫の成長阻害要因である。ミドリシジミの類の方がもっと顕著で、30年以上のクヌギにはクロミドリシジミ以外はまずつかない。近年の薪炭材の放置による林の老齢化がCatocala相に影響を与え、結果的に本種の多産につながっている可能性がある。」

別項の食樹についての欄にも関連した記述があった。

「幼虫はコシロシタバが特に発生する10年前後の幼齢の木にはほとんど発生しない。20年以上の大木によく発生する。」

Σ( ̄ロ ̄lll)やっベー、もう少しで大恥をかくとこじゃったよ。ちゃんと考えてはる人は、おるんやね。或いはカトカラ好きの間では、こんなの常識だったりして…。
カトカラ愛好家の皆さま、m(__)mゴメンナサイ。

それにしても、この西尾さんの本ってスゴいよなあ。
日本のカトカラについて、これ程までに突き詰めて書かれてある本は他に無い。幼生期も含めて、よくぞここまで調べ上げられたなと思う。生態写真もふんだんに盛り込まれているし、しかもキレイ。これはもうカトカラ界の金字塔的遺産でしょうよ。しかも自費出版なんだから驚きだ。生意気なカトカラ1年生も、その努力と執念、鋭い観察眼には感服させられましたよ。

 
そういえば、裏側の画像を添付してなかったな。

 
(裏面♂)

 
斜めってて、酷いな(笑)
写真を撮るのがテキトーすぎた。撮り直そうかと一瞬思ったが、もう、いいや。面倒クセーもん。
それはそうと、あんまし考えてなかったけど上翅の裏は黄色いんだね。裏はボオーッと見てたわ。もしも翅の表もこのデザインで、色鮮やかだったとしたら相当カッコイイぞー。

 
(裏面♀)

 
下翅は表の柄とある程度は連動してるっぽいな。
となると、キシタバグループの中では一番明るいのかな?とはいえ、表みたいに黄色が鮮やかではないから、どってことないけど。
そういえば、図鑑には裏側の標本写真が殆んど載ってないんだよなあ~。何でかなあ❓そのうち全種揃ったら、一同に並べてやろう。

とにかく、このフシキキシタバをキッカケに、このあとカトカラにハマって邁進する事とあいなった。
結果、1年で17種類が採れた。日本のカトカラは全部で31種類だから、半分は越えている。近畿地方以外の遠征は秋の山梨と長野の2回だけだった事を考えれば、結構頑張った方だと思う。

ここで「おしまい」と書いて、あっさりクロージングする予定だったが、やめた。らしくない。最後に饒舌男の一言を付け足して終りませう。

フシキキシタバは珍品の座を滑り落ちたが、他の場所でその姿を見る事は一度も無かった。今や大珍品じゃないかもしんないけど、分布は今もそこそこ局所的で、けっして普通種なんかではないと思う。誰にもポイントを教わらずに自分の力だけで見つけ出すことはそう簡単ではない筈だ。レア度のランクは下がったやもしれぬが、美しいことに変わりはないし、個人的には特別さはそんなに失われていないと思ってる。
何よりも黄色いカトカラの魅力を最初に教えてくれた種だ。この先、初恋の相手を悪く言うことはないだろう。最初に惚れた女を蔑(ないがし)ろにするような男にだけはなりたくない。
 
                  おしまい

 
追伸
第1回なのに、のっけから攻撃的な回になってしまったなりよ(^o^;)
カトカラ1年生なのに、生意気だよね。途中で書き直そうかとも思ったが、そのままにしておくことにした。理由の一番は面倒くさいからだけど、一旦吐いた(書いた)言葉は呑み込みたくないし、本音を言うのを厭わない方だからコレで良しとした。批判があれば、素直に謝罪なり反論なりすればいいことだ。

展翅は今思うと上翅を上げすぎたなあ。
蝶の展翅の時みたく、触角の角度と上翅との間隔(空間)を重視して展翅したからだろう。
あと、蛾ビギナーなので、図鑑を持っていないと云うのもある。お手本が無いのでイメージが湧かないのである。自然、テキトー俺流となる。
そういえば、蛾だから邪悪な感じにしたかったと云うのもあったな。上翅を上げ気味にした方がそう見えっからね。蝶じゃないから気楽で自由なのさ。蝶ほどに大切ではないゆえ、失敗しても別にいいやと思ってっからチャレンジャーにもなれるってワケ。
段々、思い出してきたよ。踏み込んで言うと、当時は世間の蛾の展翅に対して、あんまキレイじゃないなと云う印象を持っていた。ならば、ルール無用の悪党のワシがトレンドを作っちゃるーくらいの気分だったのである。我ながら尊大なアホだよねぇ(笑)。
でも実際は違った。今では思う。蛾の展翅は蝶よりも遥かに難しい。蛾は形がバラバラで、その造形は多岐に渡る。個性的なのだ。だから、種によってバランスが全然違ったりもする。やってて、何が正解なのか分からなくなってくるのである。おまけに触角にも色々なバリエーションがあるから、ややこしい。でもって、カトカラなんぞは髪の毛よりも細いから直ぐにブチッと切れるし、真っ直ぐになんないし、左右対称にするのは至難の技。ほとんど不可能と言っていい。
そんなワケで、今回のコレはコレで一つのそういうデザインと考えれば、そこそこカッコイイかもしんないと密かに思ってたりもするんだよねぇ…。
けんど、今年は上翅をもっと下げよ~っと。
先ずは基礎を学んでからでないと、トレンドとか崩しもヘッタクレもあらしまへん。遊ぶなら、もっと上手くなってから遊ぼっと。それに、秋田さんに褒めてもらいたいしね。

と、昨日はここまで書いて、註釈も含めてほぼほぼ文章を完成させてから生駒山地にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。テリトリー(占有活動)を張り終える日没近くまでいたから、折角だし樹液が出てる場所を探すことにした。誰もいない真っ暗な山道を懐中電灯を持ってウロウロする。
で、たまたま照らした斜め上にカトカラらしきものが飛んでた。瞬時に反応して片手で網を振り抜いた❗
飛んでる時に裏側が鮮やかな黄色に見えたから、マジ振りである。アサマキシタバではない筈だから、もしやと思ったのだ。勿論、そういう時は滅多とハズさない。
網の中を確かめて、闇に向かって、『俺って、まあまあ天才。』と呟いたよ。

すかさず、毒瓶に放り込む。

 

 
ひゃっほー((o(^∇^)o))❗❗
( ☆∀☆)チラリズムの逆さ黄色いパンチィー❤❤❤
やっぱフシキちゃんだった。

 

 
期せずして、この日は去年初めてフシキキシタバを採った日にちと同じ6月7日だ。

《「この黄色がいいね」とオラが言ったから六月七日はフシキ記念日》

今日から6月7日は『フシキ記念日』と呼ぼう。
\(◎o◎)/おーっ、何と元ネタの俵万智の短歌『サラダ記念日』の日付の七月六日と入れ替わりの反対じゃないか。運命感じるぅー(σ≧▽≦)σ

フザけるのはこれくらいにして、展翅するなりよ。

 

(2019.6.7 東大阪市枚岡公園)

 
出来立て、ほやほやだよ~ん。
上翅の大きさが右側が少し小さいので、ビミョーに変だが、まっ、こんなところでしょうかね。
触角をきっちり整えるのを試みてみたが、(^_^;)無理だわ。これに関しては自然に任す方向で整えるしかないね。

とはいえ、下げたものの全然邪悪感がないなあ。
皆さんは、どっちがカッコイイと思いますぅ―❓
なんだか何が正しいのか、よくワカンナクなってきたよ。

 
(註1)シンジュサンを採りに行った折りに…
そん時のことは、拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題した三回シリーズに書いとります。

 
(註2)ジョナスキシタバとキシタバを採った経験…
2017年の秋にA木くんに、ムラサキシタバを見てみたいとせがんだら、兵庫県北部にライト・トラップ採集に連れてってくれた。その時に採れた。といっても、採らしてもらったと云う方が近い。今でも自分の力では採ったとは思ってない。ようするに、お客さんだったワケだね。もっと言うと、最初は持ち帰る気はさらさら無かった。飛んで来たから思わず網に入れたものの、基本的に蛾は苦手だからどうしたものかと思ったのだ。でもA木くんが『持って帰ればいいじゃないですか。』と言うので、記念として持ち帰った。謂わば、この2017年の採集は、1回切りのお遊びだったワケ。だからがゆえの『2018′ カトカラ元年』なのだ。

 
(註3)深夜11時以降…
シンジュサンの回でフシキの飛来を午後10時半と書いたが、知らぬうちに己の記憶を勝手に都合のいいように改竄していたみたいだ。写真の撮影時刻を確認したら、午後11時過ぎになっていた。感覚と印象だけで言っちゃって、すいません。
ついでに補足しておくと、小太郎くんがシンジュサンを1頭持ち帰ったというのも間違い。持ち帰ったのは別な日で、しかもシンジュサンではなくてオナガミズアオでした。小太郎くんからの指摘で判明した。
人間の記憶なんてものは、思った以上に曖昧らしい。
自尊心と思い込みが強い人間は、気をつけた方がエエですな。

 
(註4)クヌギをホストとするカトカラは他にもいる
クヌギは、マメキシタバ、コシロシタバ、オニベニシタバ、アサマキシタバ、アミメキシタバ、コガタキシタバの食樹でもある。

 
 
《参考文献》

1971 保育社『原色日本産蛾類図鑑 下』-江崎悌三ほか

 
1971年の改訂版を参考にした。このあと1981年に、もう1回改訂版が出ているようだ。因みに初版は1958年の発行です。

 
・2011 むし社『世界のカトカラ』石塚勝巳
 

 
初心者がカトカラの世界を知るには、この本が一番だろう。解りやすくて、よく纏まっている。平易な言葉が使われているし、図版の写真も綺麗。レイアウトもスッキリしている。また、日本のみならず世界のカトカラまで紹介しているから、属全体を俯瞰で見られるところも素晴らしい。

 
・2009『日本のCatocala』西尾規孝
 

 
自信の表れだろうか、シンプルで渋い表装だ。
素直にカッコイイと思う。

 

山菜の話①

 
少し古い話だが、4月の終わりに能勢方面に姐さんと山菜探しに行った。

えー、最初に言っておきます。蝶に関しては10年経ったので高校生くらいの実力。蛾に関しては去年から真面目に取り組み始めたので小2レベル。そして山菜においてはド素人のピカピカの一年生、小1風情なのだ。だから冒頭で山菜採りとは言わず、山菜探しと言ったのである。
と云うワケなので、この先の記述に間違いも多々あるかと思われます。何せ小1レベルなんすから。その辺はトーシロの意見として大目にみてくだされれば幸いざんす。

先ずは道の駅に立ち寄った。
これには3つの理由がある。
1番目は道の駅ならば、山菜が売ってるんじゃないかと考えたからだ。山菜ド素人ゆえ、山に入っても何も見つけられない可能性がある。そうなると、なあ~んも楽しくない。同行の姐さんにも申し訳ない。謂わば保険をかけたようなものだ。たとえ採れなくとも食えると思えば、気持ちは楽になる。

2番目はサンプルが必要だと感じたから。
セリに対してのドクゼリ、ミツバに対してのドクミツバ、コシアブラと間違えやすいウルシetc…、植物にはソックリさんが結構たくさんあって、一方には毒があるなんてことは多々あるのだ。素人がそれを見極めるのは困難だ。間違って変なもん採取して食ったら、おっ死にましたー(○_○)じゃ、洒落になんない。
ゆえにサンプルがあった方がいいと思ったワケだすな。図鑑やネット情報も役立つとは思うが、百聞は一見にしかず。実物に勝るもの無し。写真からは香りが立たないのだ。この香りと云うのが同定の大きな鍵となると思ったんだよね。
おで、バカだけど、時々カシコイ。

3番目の理由は昼飯の調達である。
何か食いもんが売っている筈だと踏んだのだ。事前にコンビニで買うことも考えたが、それじゃ味気ない。ギャンブルだが、予定調和なんぞクソ喰らえだ。面白くない。

オラの読みはバッチリ当たった。
道の駅には、たくさん山菜が売っていた。そこで、コシアブラ、コゴミ、ゼンマイ、セリ、クレソンを購入した。タラの芽やワラビ、木の芽(山椒の葉)も売っていたが、それくらいはワシだって分かるので買わなかった。
それにしても驚いたのは、9時のオープン前から結構な行列が出来ていた事だ。前に並ぶオジサン夫婦に訊いたら、去年は10時に来ても何も無かったそうだ。
(;゜0゜)マジっすか❓、マジスカポリス❗
えっと、マジスカポリスとはミニスカポリスのパクり。ミニスカートのお色気警官ではなくて、何かあったら『マジっすか❓マジっすか❓』を連発する身長140センチの小太り下膨れ顔の警官です。

9時ピッタリに入口が開いた。
おーっΣ( ̄ロ ̄lll)、お言葉通りにオープンと同時に雪崩れのように人が売場に押し寄せてゆく。
マジっすか、マジスカポリス❗❓ みんな走っとるやんけー。つられてオイちゃんも走る。走りながら笑ってしまう。あまりにみんな必死なので、何だか可笑しくなってきたのだ。
見る間に売場は人でゴッタがえし、まるでバーゲンセールの会場みたいになった。何だか楽しい(^▽^)
姐さんに『吟味するな。躊躇するな。数を多めに確保せよ。迷ったものは全部カゴに入れろ。あとで必要のないものは元に戻せばいい。』と檄を飛ばす。

この売場には、タケノコ御飯も売っていた。
入口でアマゴ(ヤマメ)の塩焼とアマゴめしも売っていたので、それもゲット。
読み以上の収穫があった。幸先が好い。

ここまで書いてて、画像が一つも無いことに気づく。
でも、考えてみれば写真をロクに撮ってない。姐さん相手にバカ話ばっかしてたのだ。ボケ倒せる相手はそうはいないから、ここぞとばかりのボケの垂れ流しに余念がなかったのじゃ。

写真はこんなのくらいしか無いや。

 
【買った山菜(一部)】

 
真ん中がコシアブラ、右上がゼンマイ、左下コゴミ。
左上のは、生のどんこ椎茸なんだけど、これは道の駅で買ったもんじゃなかとです。

 
【タケノコ御飯とアマゴめし】

 
タケノコ御飯は、可もなく不可もなくフツー。
アマゴめしは旨かった。塩焼も旨かったし、さすが渓流の女王と呼ばれるだけのことはある。
因みに、下のアマゴめしの箸はオジサンの手作り。箸袋にアマゴちゃんがいて、飛び出てる。オジサンに『これって、もしかして自分で作りはったん❓』と尋ねたら、照れくさそうに頷いた。何だか、ほのぼの(o^O^o)したよ。

山菜探しについては、今回は結果だけ記しておこう。
色々あって面白かったんだけど、書くとまた長くなるんで割愛。おいおい書く予定の各山菜の回にちょこちょこブチ込んでゆくつもりです。

コシアブラ、コゴミ、ゼンマイは結局見つけられなかった。タラの芽はあったけど、時期が遅すぎた。成長が進んでてダメ。フキノトウも同じ理由でダメ。
見つけられたのは、セリ、クレソン、ミツバ、山椒、ノビル、ワラビ。まあ、初心者としては頑張った方だと思う。

スンマセン。コレも画像がこんなのしかない。

 

 
ノビルである。
これに関しては色々面白かったし、書きたい気持ちもあるので、おいおい書くことになるかと思う。
ゲットした他の山菜の料理も併せて紹介していくつもりです。

                  つづく

 
追伸
スマホのストレージが溜まってて、料理の写真を消したいから書き始めたんだけど、これじゃ全然消せないじゃないの(笑)。

 

三日月の女神・紫檀の魁偉ー完結編

 
 
第3話である。ようやく完結編だけんね。今度こそ、ちゃんとクロージングさせまっせ。

 
思えば、シンジュサンにはまさかの惨敗に次ぐ惨敗だった…。

 
2018年 6月7日。
この日は午後3時くらいに東大阪市の枚岡公園に出掛けた。ウラジロミドリシジミの様子を見るためである。
まだウラジロミドリを採ったことが無いという中学生に会ったので、ポイントに案内してあげる。
今どき虫採りをしている若者なんざ絶滅危惧種だから、大事にしないといけんのだ。

しかし、個体数は例年よりも多いものの発生が早かったようで、既に傷んだ個体ばかりだった。
それでも中学生は採って感激してくれていた。自分も最初の1頭には震えた事を思い出した。
フィリップ・マーロウの言葉を借りれば、『初めてのキスには魔力がある。2度めには、ずっとしていたくなる。だが、3度めには感激がない。』である(註1)。最初の1頭にこそ価値があるのだ。少々羽が破れていても関係ない。もちろん完品が望ましいが、ファーストインプレッションは必ずしもそうであることが絶対条件にはならない。
どうあれ、よかった。百聞は一見にしかず。狙った虫は、採らなきゃ何も始まらないのだ。虫捕りは恋愛とよく似ているかもね。

 
夕陽を眺める男女を囃し立てて写真を撮らしてもらい、山をおりる。

 

 
枚岡公園から転戦。今宵も矢田丘陵へ。
そう、又しても懲りずにシンジュサンを求めての灯火巡りなのだ。何としてでも6連敗は阻まねばならぬ。これ以上の連敗は自信喪失、心がポッキリと折れかねない(現在のヤクルトスワローズみたいに15連敗もしたら、虫採りなんかやめるね)。

名前がワカランがスタイリッシュで、シャレ乙な蛾がいた(註2)。

 

 
採るかどうか迷ったが、そのままにしておく。
邪魔くさいので、チビッ子蛾はフル無視なのだ。

小太郎くんがコチラに来る道中でバカでかいスッポンを拾ってきた。

 

 
写真はビニール袋を破って逃亡を企てている様子。
持ってみたら驚くほど重かった。このデカさは主(ぬし)クラスだわさ。売ったら、相当な値がつくだろう。

スッポンはスープが絶品なんだよなあと呟いたら、
小太郎くんが『さばきます?』と言ってきた。
(゜ロ゜;ノ)ノそれは絶対無理❗❗

夜10時半。
ヒマ潰しに樹液ポイントを回って戻ってきたら、柱に見慣れぬ蛾が止まっていた。
(;゜∀゜)あっ!、もしかしてカトカラ❗❓
何となく勘でそう思った。

 

 
採って裏返したら、特徴的な黄色と黒の縞々模様がある。やはりカトカラくん(キシタバの仲間)だった。

 

 
キシタバはカッコ渋美しいから嫌いじゃないけど、正直どうだっていい。今はシンジュサン以外は眼中にない。あとは皆、所詮は雑魚だ。
袖にされまくって、いつしか心はシンジュサンに奪われている。そう、恋い焦がれていると言ってもいい。
世の中の、うら若き女子に告ぐ。口説いてくる男子は1回は振っておきましょう。さすれば、バカな男子は貴方により熱を上げまするぞ。2回目のアプローチが無くとも責任持たないけどさ(^o^)

 
気温が高くなってきたせいか、格段に飛来する蛾の種類数と個体数が増えてきている。

 

 
これはトモエガの仲間(註3)だね。
昔は感覚的に気持ち悪かったけど、今や蛾に対する免疫も少しづつ出来てきたので初ゲットしてみる。

 

 
わっΣ(゜Д゜)、裏が鮮やかな紅(くれない)なのね。
紅蓮の🔥炎じゃよ。地獄の業火の色だ。この感じ、まるで地獄の使者みたいじゃないか。
でも同時に素直に美しいと思う。今まで飛び退いてて、ゴメ~ン。

そういえば、台湾に蒼くて糞カッコイイ綺麗なトモエガがいるみたいなんだよね(註4)。生来の青好きとしては、あれはマジで採りたい。でも、名前も何処へ行けば採れるのかもワカラン。アレに会えたら、蛾世界にも素直に入っていけるかもしれんのにのぅ(# ̄З ̄)。
きっと人生には、時に何かを飛び越えるキーワードとか、切っ掛けが必要なんだよね。

  
時刻は既に午後11時を過ぎている。
車が無いので、本来ならば帰らないといけない時刻だ。しかし、今日は背水の陣で臨んでいる。朝まで粘ると決めた。ここまでくれば、もう意地である。執念が無ければ欲しいものは手に入らない。

午前0時前。
小太郎くんとしゃがみこんで、網に入れたクソ蛾についてグダクダ言っている時だった。
視界の端で何かが飛んだ。と同時に『来た❗❗』と叫んでクソ蛾を網に入れたまま走り出していた。💨猛ダッシュだ。久々に体内でアドレナリンが💥爆発しているのが自分でも解る。

夜空に、恋い焦がれていたシンジュサンが舞っていた。
だが、思ってた以上に飛翔速度が速い。しかも、飛ぶ軌道がメチャクチャだ。
背後に小太郎くんがいる気配を背中で感じる。ここで振り逃がしたら笑い者だ。何があってもハズせない。それに、もしハズせばグダクダとあーだこーだと言いワケしかねない。いや、絶対するに決まっている。そうなれば、そこにどう正当な理由があろうともカッコ悪いことには変わらない。結果を出さなければ、クソだ。
緊張と慎重の狭間で構える。脳が躊躇はするなと命令する。両肩にグッと力が入る。距離を詰めた。迷いは禁物だと肝に命ずる。スウィングの始まった瞬間に目の前で左下に急降下した。内角を抉ってくるシンカーの軌道だ。(|| ゜Д゜)えっ、マジ❗❓
その落ち際を💥一閃、左から右へと振り抜く。スローモーションでターゲットがネットに吸い込まれてゆく。すかさず網を捻り、逃亡を防ぐ。
乾坤一擲。鬼神の如き網さばきで、一振りで鮮やかに決めた。超気持ちイイー。
 
しかし、クソ蛾とシンジュサンの両方が網の中で暴れており、(;゜0゜)わっ💦、(;゜0゜)わっ💦、(@_@;)わっ💦、あたふたする。
『どっち❓、どっち❓どっちを先に〆たらいいのー❓』
軽くパニくっちゃってて、小太郎くんにワケのワカランことをのたまってしまう。
『何言ってるんすかー❗❓ クソ蛾よか当然シンジュサンでしょうよ。』
( ・∇・)☝そりゃ、そーだー。
クソ蛾なんぞ、どうなってもいい。2匹が絡んでシンジュサンの羽が傷んだらエライコッチャである。何ならクソ蛾の方は踏みつけて、それを阻止したっていいのだ。
でも、そこまで悪人にはなれないので、手で網を押さえて両者を分かち、その間に小太郎くんにアンモニア注射を打ってもらう。

💉ブチュー❗
一発で👼昇天じゃよ。
虫屋って、やってることがマッドで変態やなあ。

網から取り出す。この僅かな時間がもどかしい。でも同時にその刹那は歓喜へ通ずるプレリュードでもある。

そっと手のひらに乗せる。

 

 
💕やっと会えたよ、シンジュサン。
全身に多幸感がゆっくりと広がってゆく。
4枚の羽一つ一つに三日月紋が配されているね。
シンジュサンの学名の小種名は「cynthia(シンシア)」。ギリシア神話の月の女神に由来している。だったら、神が遣(つか)わし三日月の女神だね。

狙った獲物をシバいた時の❤エクスタシーは堪んないよね。これこそが虫捕りの醍醐味じゃけぇ。
(о´∀`о)ぽわ~ん。我、今年最初の多幸感に包まれり。

『いやあー、普段はチンタラしてるのに、マジ反応早かったですねー。しかもダッシュが半端なく🚀ロケットスタートでしたわ。』
小太郎くんが笑いながら言う。
誉め言葉と取ろう。小太郎くん、蛾好きでもないのに付き合ってくれてアリガトねー。

とにかくコレで何とか一つの種の連敗記録の更新を免れた。5連敗したのはキリシマミドリシジミとコヤツだけ。2連敗したのが、ベニモンカラスシジミとタカネキマダラセセリで、あとは運と引きの強さで全部その日のうちに仕留めてきたのだ。打たれ慣れてないから泣きそうだったけど、これでまたヘラヘラ笑えるよ。

初の出会いの興奮が醒めやらぬうちに、シンジュサンは立て続けに飛んできた。
 
2頭目はデカかった。
さすが日本で2番目に大きいと言われる蛾だ。
羽の厳(いか)ついデザインも相俟って、魁偉と言ってもいい姿かたちだろう。
とはいえ、冷静に見れば、想像してた程の大きさではない。他のヤママユガ科の蛾たちと比べて胴体が細く、羽も薄いので、やや迫力に欠けるきらいがある。ヤママユの方が羽が分厚いし、腹もぽってりで迫力がある気がする。厳ついとかゴツいというよりも、寧ろ優美かもしんない。
いや待てよ。それはあくまでも見る側の視点の置き所にすぎないだけかも…。蛾を怖れる女子やお子ちゃまにとっては、充分恐ろしい姿に見える筈だ。ならば、やはり魁偉と言えよう。

そして、更に続けて飛んで来たのは、何じゃこりゃのチビッ子シンジュサン。大きさにかなりの個体差があるのに驚く。

 

 
他のヤママユガ科の蛾は、だいたい大きさが揃っている印象があるのだが、コヤツらは大きさに落差があり過ぎる(註5)。

午前0時前から約30分間で怒濤の計5頭が飛来。
その後、パッタリと来なくなって、やがて朝を迎えた。
明けてくる菫色の空が美しかった。
爽やかな微風が頬を撫で、背後の森の木々たちを静かに揺らした。
それを合図かのように立ち上がり、駅へとゆっくりと歩き始めた。

 
                 おしまい

 
追伸
ゲットして、懐中電灯を照して撮った写真があまりにも酷くて、全然その美しさが伝わってないような気がする。
と云うわけで、自然光で撮りなおした。

 

 
灯火の下ではオリーブグリーンに見えたが、こうして日の光のもとで見ると、だいぶと印象が変わる。
エレガントだ。何ともいえない淡い赤紫に惚れ惚れとする。でも単純な赤紫色ではない。もっと相応しい色の表現がある筈だ。
そして思い浮かんだのが、紫檀色。これは高級タンスなんかにもよく使われる紫檀(したん)の木の色から来ている。紫檀色って、ちょっと高貴な感じがしてピッタリじゃないか。

 
(出展『伝統色のいろは』)

 
(-_-;)むぅー、でもシンジュサンの写真の色と見比べてみると、違うなあ…。頭の中の記憶ではこういう色に見えた筈なんだけどなぁ…。写真の映りが悪いのか、それとも脳内で勝手に色を増幅させたのかにゃあ…。
ι(`ロ´)ノえーい、この際そんな事どっちだっていい。わたしゃ、イメージ重視の人なのだ。記憶の中の色こそが、リアルな色だ。

因みに、紫檀の木は英名をローズウッドという。
今はコチラの呼び名の方が、紫檀よりもポピュラーかもしんない。

 
(出展『伝統色のいろは』)

 
木の方は更に赤く見える。
けど、これは木にもよるだろう。
例えば、こんなのもあった。

 
(出展『エコロキア』)

 
噺は変わって、羽の先は鉤状に湾曲している。

 

 

 
コレを蛇、もしくは蛇の頭の形に擬態しているとする説が誠にしやかに流布されているが、ホントかよ❓と思う。
んなもんで、鳥が騙されてくれるかね❓それって、無理からでねーの❓所詮は言い出した人の願望であって、こじつけじゃねえの❓
日本の学者とか研究者は、何でもかんでも擬態にしたかる傾向があるような気がするんだけど、おいらの思い過ごしかなあ…。

それにしても、この個体だけ腹ボテで群を抜いてデカいから、てっきりメスだとばかり思ってたけど、触角の形はオスなんだよなあ…。オカマかえ?
たぶん、♂だとは思うけどさ。去年は♀が採れてないから、今年は採らんといかんな。

それでは、恒例の(´・ω・`)もふぅ~。

 

 
🐰うさぴょんみたいだ。
シンジュサンもヤママユの仲間なので、もふ度は高しで可愛いい。前足とか、もこもこやんか💕

 
(註1)フィリップ・マーロウ「初めてのキスには魔力がある…」

レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の主人公の名前。セリフはハードボイルド小説の金字塔『長いお別れ』の中でのもの。

 
(註2)シャレ乙な蛾がいた
アカスジシロコケガというコケガの1種かと思われる。
美しいが、特に珍しいモノではないようだ。

 
(註3)トモエガの仲間

【ハグルマトモエ Spirama helicina ♀】

 
分類はヤガ科(Noctuidae) シタバガ亜科(Catocalinae) Spirama属とある。
漢字にすると、おそらく「歯車巴」と書くのだろう。
歯車みたいな巴紋をもつ蛾ってことだろね。

トモエガの仲間としたのは、この時点ではハグルマトモエとオスグロトモエの♀との区別がつかなかったからだ。両者は、ホントよく似ているんである。

 
【オスグロトモエ ♀】
(出展『北茨城周辺の生き物』)

 
違いはハグルマトモエと比べて巴紋がやや小さくて、全体的にメリハリがないところ。

 
(註4)台湾の糞カッコイイ青いトモエガ

調べたら、Erebus albicincta obscurata という蛾らしい。台湾名は「玉邊目夜蛾」「玉邊目裳蛾」「白邊魔目夜蛾」など複数があるようだ。

 
(出展『Wikimedia commons』)

(出展『Xuite日誌 随意窩』)

 
バリ、カッケー( ☆∀☆)
結構珍しい蛾のようで、そこそこ高い標高に生息しているみたいだ。誰か採れる場所と採り方を教えてけれ。

(註5)大きさに落差が有りすぎる

 
大人と中学生と小学生くらいに大きさが違う。
自然状態でコレくらい個体差がある鱗翅目って、他にあったっけ❓
たぶん、いる筈だが、ちょっと浮かばない。

ついでに各々の展翅写真も添付しておこう。

 

 
上から大中小である。
それにしても展翅が酷いね。特に1頭目は最初にした展翅だから、上翅を上げすぎてる。慣れない蛾の展翅でバランスがワカランかったのさ。以下、少しづつマシになってゆくのは、上の順の時系列で展翅したから。それがそのまま出ている。パープリンといえど、ちょっとは学習能力があるんである。
今年採れたら、もう少しマシな展翅しよっと。

ついでに展翅板から外した画像も添付しとくか。

 

 
バランスはそんなに悪くはないんだけど、やっぱダメだな。

この日は全部で5頭飛来したのだが、1頭は小太郎くんが持ち帰った。残りの1頭は羽が結構破れていたので展翅していない。修復用にとってあるのだ。けど、こんだけ大きさが違うと、使えんのかね?
この蛾、飛び方の軌道が無茶苦茶で雑い。すぐ地面に落ちて暴れまわるし、木々の中を縫うようにして飛ぶ。おまけに羽が薄いときてる。ゆえに羽が損傷しやすいのだろう。小太郎くん曰く、中々完品に出会えないというのは、そういう事からだろう。

生態面を付け加えておくと、灯火への飛来はこの日が一番多く、他の日は全部1頭のみの飛来だった。何れも飛来時間は遅く、午後11時から午前4時の間であった。
で、後日採れたのは、全て羽が破れていた。採集適期は短いと思われる。

さあ、これでやっとカトカラシリーズに取りかかれる。乞う、御期待あるよ(^o^)