2021’カトカラ5年生 ヤクヒメ編3

vol.28 ヤクシマヒメキシタバ

   『陰翳礼讃』第三話

 
 2020年、初めてのヤクシマヒメキシタバ採集行は姿さえも全く見れずの惨めな2連敗に終わった。自分も小太郎くんも楽勝だと思ってたから、まさかのこの結果に声を失った。
当然、2連敗後も早いうちのリベンジは考えた。本来、汚名はソッコーで晴らしておくと云うのがオラ的セオリーだからだ。どんな事でもそうだが、早期に問題を解決して心の安寧を取り戻しておかなければならない。さもなくば、事態はドンドン悪い方向へ行きかねないからだ。悪い流れは即座に断ち切る事が肝要なのだ。キリシマミドリシジミ(註1)の時が最たる例で、泥沼の5連敗を喰らって、精神的にかなり追い込まれたからね。連戦連勝、どんな稀種であっても狙った獲物は常にその採集行のうちにシバき倒してきただけに、何が何だか解らなくなって半ばパニックに陥ったっけ…。敗退が続くと色々考え込む。しかし考えれば考えるほどドツボ。更なるズブズブの泥濘(ぬかるみ)にハマり易いのだ。去年の阪神タイガースの開幕9連敗(註2)と一緒で、負けグセがつくと止まらなくなる。いや、止められなくなるのだ。
しかし、この年は結局ヤクヒメにリベンジするのを諦めざるおえなかった。その後、二人の都合が合わず、次回に行けるのは10日以上先、つまり時期的には発生期の終盤だったからだ。下手したら、終盤どころか発生が終わっていてもオカシクはない状況でもあった。たとえ行って採れたとしても、ボロばっかでは意味がないし、採れなきゃ、ショックで再起不能になりかねない。忸怩たる思いではあるが、ならば翌年まで持ち越さざるおえない。そう判断するしかなかったのである。
 

2021年 6月28日

 臥薪嘗胆。ようやくリベンジの機会が巡ってきた。小太郎くんと待ち合せて、いざ紀伊半島南部へと向かう。
天気予報は曇りのち小雨。雨を好むというヤクヒメではあるが、かといって本降りでは何かと儘ならないから恰好の天気である。とはいえ、心配なのはワシのスーパー晴れ男振りである。去年は天気予報では雨がちだったのにも拘わらず、2度行って2度とも途中で月が出た。しかも灯火採集には最悪とされる満月。今回は、そうならない事だけを切に祈ろう。

 場所は去年最初に行った三重県の布引の滝(熊野市紀和町)と決めた。
惨敗した場所なのに何故に❓と訝る向きもござろうが、それには理由がある。小太郎くんが布引の滝でヤクヒメを採った事があるという人から重要な情報を得たからだ。それによると、採集した場所は我々が最初に陣取った滝の上部ではなく、下部の麓の方らしい。詳しい設置場所も聞いているという。文献ではない生の情報は貴重だし、こうゆう舞い込んで来たような流れは大切だ。自然な流れは物語なのだ。堰き止めてはならない。流れに任せておけば、自ずと結果が出る事は往々にして多い。ならば、ここは迷わず行っとくべきでしょう。
 採れた数は一晩で6頭との事。飛来した時は、アホほどやって来るというヤクヒメにしては数が少ないのが気になるが、それだけ採れていれば自分としては充分だ。元々バカみたいに数が欲しい人ではないからね。いっぱい採ったら、当然ながら嫌いな展翅を沢山しなきゃならないのじゃ。

ポイントには、かなり早くに着いた。まだだいぶと明るかったから、午後4時半か5時前には着いていたのではないかと思う。
空模様は曇りで、時々小雨がパラつくといった感じで悪くはない。だが、如何せん風が強い。しかも設置場所は橋の上らしいから、より風の影響を受けやすい。ライトトラップには風は大敵なのだ。基本的に風が強いと虫は飛ばないし、たとえ飛んだとしても風に流されてライトまで辿り着けない可能性だってある。それに何よりライトトラップの装置が倒れやすい。もしも倒れて電球が割れでもしたら最悪だ。ジ・エンド、その瞬間に採集が終わる。だがホントは、そんな事よりも水銀灯を失うダメージの方がデカい。水銀灯は高価であるのみならず、現在は生産中止なっているのだ。もはや製造してないんだから、再び手に入れるのは容易ではない。
とにかく暫く様子をみよう。そのうち風もおさまるだろう。2人して車の中で暫し仮眠する。

しかし日没近くになっても、風は一向におさまる気配がない。しかも風の影響なのか気温がグッと下り、かなり肌寒い。風が強くて気温が低ければ、虫たちが活動しない可能性が更に高まる。おいおいである。神よ、又しても我々に試練の道をお与えなさるのか。何故ゆえ、そのような試練をお与えなさるのだ❓意味ワカンナイ。もう半泣き太郎だよ。
仕方なく此処を諦め、風のない場所を探して移動することにした。取り敢えず上に向かって車を走らせる。

だが、特筆すべきようなコレといった良い場所は見つからない。また最初と同じ滝の上部でやる事も考えではなかったが、一度敗退してケチがついた場所だし、カワゲラとかトビケラとかヘビトンボがワンサカ飛んで来るのは気持ち悪いからパス。
そのうち日が暮れてきたので、中腹にある一番マシそうな場所に陣取ることにした。幸いにして風の影響は殆んどない。肚を据えて此処で戦おう。

 午後7時半、点灯。
いよいよ1年越しのリベンジの始まりだ。今日こそは何とかなるっしよ。たかがヤクヒメ風情に、まさかの三連敗は有り得ないだろう。そんなに連敗した話なんぞ、聞いた事がないのだ。
去年の恥ずかしい連敗は、ひとえに月のせいだ。あの全くの想定外だった満月さえ顔を覗かせなければ、採れていた筈なのだ。今日こそは月は出ない、大丈夫だと自分に言い聞かせる。

 

 
例によって、画像はトリミングしてある。小太郎くんから灯火装置が直接映っているのはダメと言われてるからである。

良い感じに小雨が降っているものの、集まる蛾の数は可もなく不可もなくである。顔ぶれも相変わらずの見慣れた面々だ。
唯一の新顔はヒメハルゼミくらい。アンタ、こんなとこにも居たのね。
小太郎くんは、その灯りに寄って来たヒメハルゼミをせっせせっせと摘んでいる。ヒメハルゼミは稀なセミで、各地で採集禁止種に指定、保護している場所も多い。因みに此の地は特に保護されているワケではないし、採集禁止にもなっていないようだ。
それにしても走光性が強い種とは知ってはいたが、ホントだったんだね。セミには走光性のある種が多く、珠にアブラゼミやミンミンゼミなどが灯りに寄って来るのを見ることはあるが、一度にこんなに沢山のセミが寄って来たのは初めて見た。

 
(ヒメハルゼミ♀)


(2019.7月 奈良市)

 
スマン。羽化直後の画像しかない。気になる人はネット検索してけれ。
あっ、そういやヒメハルゼミは成虫だけでなく、羽化前の幼虫にも走光性があるらしい。思わず、幼虫が光に向かってゴソゴソと歩いてるのを想像したよ。「あーっ、そっちに行っちゃダメー❗」。
٩(๑`^´๑)۶え~い、メンドくせー。ヒメハルさんの事は後で註釈欄で解説するつもりであったが、ここでやってしまえ。

 
【ヒメハルゼミ(姫春蝉)】
学名 Euterpnosia chibensis
小種名は千葉に由来する。おそらく最初に発見されたのが、千葉だったからでしょう。
体長はオスが24〜28mm、メスは21〜25mm。6月下旬頃から現れ、8月上旬まで見られる。
名はヒメハルゼミとはつくものの、ハルゼミと大きさは変わらない。外見はハルゼミよりも体色が淡く、褐色がかっている。
主に西日本で見られ、新潟県・茨城県以西の本州・四国・九州・屋久島・奄美大島・徳之島に分布する。しかし生息地が丘陵地や山地のシイ、カシ類からなる人の手があまり入っていない自然度の高い稀少な照葉樹林である事や、飛翔能力が弱く、生活圏を広げようとしない性格も相俟ってか分布は局所的。ようするに生息条件が限られた貴重なセミである。それゆえか分布の北限に近い3ヶ所の生息地(茨城県笠間市片庭、千葉県茂原市上永吉、新潟県糸魚川市・旧能生町)が国の天然記念物に指定されている。他にも自治体レベルで絶滅危惧種や天然記念物に指定されている所が数多くある。
♂が集団で合唱することが知られ、1頭の♂が鳴き出すと、それを合図に周辺に伝播するように「シャー」という合唱が起こる。特に夕刻には頻繁に鳴き、日没前には山全体が大合唱の蝉時雨となる。そのような独特の大合唱は他のセミには見あたらず、その様は「森そのものが鳴いているようだ」とも称される。
 確かに、あの蝉時雨は時に凄まじいばかりで、森の中でその音の塊に包まれていると感動すら覚える。とはいえ、おそらく多くの現代人にとっては雑音にしか聞こえないだろう。つまり、人は自身にとって必要のない音を無意識にカット、遮断するように出来ているからだ。その声をセミの声だと認識してこそ、初めて耳に入ってくる類いのものなのかもしれない。多くの外国人にはセミやコオロギの声が雑音にしか聞こえないとも言うからね。ようはメロディーとして聞こえていないのだ。だから欧米には、虫の音(ね)を愛ずるという文化もないのだろう。とにかく、あの感動は体験した者にしか味わえないものがある。

そんなレアで愛しきセミだが、でも求めているのはキミじゃないんだよねー。どうでもいいざます。欲しいのはヤクヒメだけなのだ。その事で頭が一杯でヒメハルなんぞ採る気にはなれず、自分は結局一つも持ち帰らなかった。

 雨は振ったりやんだりしていたが、やがて完全に上がった。月こそ出ないものの、天候は回復しつつありそうだ。悪い兆候だ。集まって来る虫も相変わらずショボい状況が続いている。そして、ヤクヒメは未だ飛んで来ない。

 

 
ふと思う。ところで、この日の夕方にヒメハルゼミって鳴いてたっけ❓
全然、記憶にない。雨模様だったので鳴いていない可能性は高いものの、単にヤクヒメの事で頭が埋め尽くされてて、鳴いていたのに一切耳に入ってこなかったという可能性は無きにしも非ずである。それだけ何処にライトトラップを設置するかに集中していたのだろう。でもこんな体たらくでは、その集中力や努力も何の意味も持たない。

結局、この日もヤクヒメは1頭も飛んで来なかった。
三連敗決定。地獄の連敗街道、まっしぐらだ。

 
 
2021年 6月30日

 もう小太郎くんもワシも意地になってきた。その2日後には、再び紀伊半島南部に突っ込んでいた。
但し今回はメンバーが一人増えて、藤岡くんも加わった。参戦に至った詳しい経緯は知らない。ただ、小太郎くんから「藤岡くんも一緒でもいいですかあ❓」と言われて、『いいよー。』と答えただけだ。藤岡くんとは古くから顔馴染みだし、彼が加わったトリオでの採集行は去年も経験している。マホロバキシタバが採りたいというので、小太郎くんと案内したし、同じ紀伊半島南部にルーミスとヨシノキシタバを採りにも行ったしね。それに藤岡くんは、のほほんとした何処か浮世離れした人で、控えめな性格だ。ギスギスする事もないだろう。なれば、参加を拒否する理由はない。

 目指す場所は同じ三重県だが、北牟婁郡の谷沿いである。
今回も小太郎くんが仕入れてきた新たな情報に頼る事にした。
そこは絶対に生息しているという鉄板の場所らしい。なのだが、問題がないワケではない。ポイントに向かう途中の橋が老朽化しており、通行止めになっているかもしれないそうなのだ。もしダメなら、現地でポイントを新たに探さねばならない。となると賭けである。雨の多いこの時期だけに、川が増水していて危険な可能性は高いし、それ以前に土砂崩れで前に進めない不安だってある。だけども最も採れる確率が高いのは其処なのだ。もう背水の陣で行くっきゃない。

 天気予報は完全な雨である。けれどワザワザこの日を選んだ。小太郎くんと話し合った結果、ヤクヒメは小雨程度の雨では飛んで来ないのではないかという結論に至ったのだ。

 雨の中、ようやく橋に辿り着いた。
しかし、橋は通行止めになっていた。入口を🚧車止めの看板が塞いでいる。だからといって、ここまで来て誰が引き返してなるものか❗地獄の沙汰も虫次第。絶対に採りたい、採らねばならぬという強い想いが看板を脇へと除けさせる。戻って来て橋が落ちていれば、そん時はそん時のことだ。

 暗く不気味な林道を奥へと詰め、ポイントに到着。

 

 
周囲は鬱蒼としており、深山幽谷の様相を呈している。
手つかずの照葉樹林だと直感する。今まで見てきた、どの照葉樹林よりも深い森だ。此処にヤクシマヒメキシタバが居なくて何処に居るというのだ❓そんな素晴らしいロケーションだ。もう此処で採れなきゃ、腹カッさばくしかあるまい。

 

 
瞬く間に靄が湧き立ち、山肌に天使の薄衣のような薄いヴェールが掛かる。陰翳礼讃。水墨画の世界だ。無駄を排した白と黒の織りなす世界は幽玄で美しい。
とはいえ、傍らに誰かが居てこその風雅の境地だろう。もしも一人ぼっちだったとしたならば、果たしてそんな風に思えていただろうか❓観点を変えれば、これから先に何か悪い事が起きそうな不気味な予兆と取れなくもない風景だ。そう考えれば、とてもじゃないが1人ではこんな所には居れそうにない。日があるうちでも恐ろし気な場所なのだ。ならば夜ともなれば、尋常ではない怖さだろう。絶対に漆黒の闇にイッポンダタラ(註3)とか魑魅魍魎の妖怪どもが跋扈する世界と化すに違いない。

 雨は結構降っている。
どれくらいの量が降っていれば良いのかは分からないが、土砂降りにでもならない限りは大丈夫だろう。とにかく今までの感じでは、小雨程度の雨ではダメだ。これくらいの強さの雨が間断なく振り続ける事を祈ろう。

 日没と同時に点灯。

 
 今回は小太郎くんの許可が下りたので、トリミングなしの画像全面解放である。ライトトラップの、謂わば一つの完成形との事なので、表に出しても恥ずかしくないってワケなのでせう。勝手に半分想像して言ってるけどー(笑)。
 ちなみに今回は本格的な雨を見越して、雨避け用のテント(タープ)が用意された。小太郎くんの発案で買うことになって、購入料金を3人で割った。一人あたりいくらだったっけかなあ❓正確には思い出せないけど、一人三千円くらいの負担だったかな?まあ高くても五千円以内だったと思う。でもそれで快適に採集できるのなら、安いもんだ。

 点灯後、間もなくヤクヒメと同じカトカラ属のウスイロキシタバが飛んで来る。

 
(ウスイロキシタバ♂)


(2021.6月 兵庫県西宮市)

 
が、採らずに無視する。
お前じゃない❗

藤岡くんがおずおずと尋ねてくる。
『コレって貰ってもいいですかぁ❓』
ワシも小太郎も、どーぞどーぞである。ウスイロは前翅のメリハリが効いた美しい種だが、二人とも見飽きていて、もはや眼中にはないのだ。
それにしても、蛾好きの藤岡君なのにウスイロを採ったことがないのね。まあ、紀伊半島南部を除けば分布は局所的で、いる所は限られている。自分も紀伊半島南部以外では1箇所でしか見たことがないから、それも当たり前かあ…。

藤岡くんは次々と飛んで来るウスイロをせっせと取り込んでいる。他の蛾や甲虫もジャンジャン取り込みまくっている。彼は生粋の虫マニアだ。コレクションの中心は蝶と蛾ではあるが、虫とあらば大概は収集対象なのだ。インセクトフェア、いわゆる昆虫展示即売会でも標本を購入しているのをよく見掛ける。だが特定の種類に強い執着は持つことは少ないような気がする。あっ、シジミチョウ科の一部には少しあるかもしれない。けれども特定の種のマニアって感じはしない。例えば小太郎くんだったら、ブルーと呼ばれるシジミチョウの仲間であるゴマシジミやアサマシジミ、ミヤマシジミに対して強い執着心を持っている。他にキマダラルリツバメやギフチョウ、ミヤマカラスアゲハに対する思い入れも強い。あとヒメヒカゲもか…。
自分ならば、タテハチョウ科の中のコムラサキ亜科やフタオチョウ亜科、イチモンジチョウ亜科の赤系や緑系のイナズマチョウ(Euthalia)属やオオイナズマチョウ(Lexias)属に対しての思い入れが強い。で、最近は蛾ではあるが、今回のターゲットでもあるヤクヒメも属するヤガ科Catocala(カトカラ)属にも御執心だ。でも藤岡くんが特に何かを徹底的に集めていると云う話は聞かないからね。とはいえ、羨ましい限りだ。興味の対象が広く全般に渉るのならば、生涯において飽きる心配がないもんね。オラなんか最近は蝶や蛾に対する情熱がすっかり冷めてしまっている。新たな興味対象が見つからねば、業界からフェイドアウトしていきかねない状況だ。虫を趣味にすると意外と金が掛かるし、人生を狂わせてしまうところがある。物事の判断が虫優先になってしまうのだ。例えば、晴れていたら虫採りに行ってしまい、彼女とは曇りか雨の日にしかデートしないとかさ。そりゃ彼女だって怒るわな。で、挙げ句にはフラれる。兎に角、ロクな事がないのだ。

 午後8時過ぎ。
小太郎くんが何か変なのが飛んで来たけど見失いましたー。ヤクヒメだったかも…と言い出す。しかし、灯りの周辺を丁寧に見回るも、らしき姿はない。

 午後8時半。
急に小太郎くんが大声を出す。

『五十嵐さん❗ほら、ソコーッ❗❗』

指差す先の白布の上部に見慣れない小さな蛾が静止していた。
(;・∀・)はあ❓
でも正直、それが何なのかワカンなくて、その場で固まる。

『何してるんすかあ❓ヤクヒメですよ、ヤクヒメー❗❗』

その言葉で、漸く脳のシナプス回路が繋がった。
確かに言われてみれば、ヤクシマヒメキシタバだ。だが、想像していた姿とは随分と違うような気がする。照明のせいで白っぽく見えるせいもあるのだろうが、図鑑等との印象とは相違があるのだ。何より上翅の感じがイメージとは異なる。こんなにもメリハリがあって美しいのか…。百聞は一見に如かずとはよく言ったものである。実物を見ないと、本当の姿はわからない。

『コレがヤクシマヒメキシタバかぁ…。』

絞り出すように言葉が漏れた。
とにかく会えて良かったという安堵の心が広がる。それにしても、いつの間に❓である。仙人は忍者でもあるのかえ❓

暫し見つめていると、再び小太郎くんから声が飛ぶ。
『何ぼぉーとしてるんですかあ❓早く採って下さいよー。逃げちゃいますよー❗』

『(⁠☉⁠。⁠☉⁠)⁠えっ❗❓、オラが採っていいの❓』

最初に見つけたのは小太郎くんだから、採る権利は彼にある。だから手を出さなかったのだ。
『いいですよー。譲りますよ。そのかわり次は採らせて下さいね。』

『(⁠ ⁠;⁠∀⁠;⁠)うるうる。小太郎くーん、アンタってホントいい人だよ。』

譲ってはくれたものの、まだ手中にしたワケではない。ここでもし取り逃がせば、噴飯ものだ。何があっても失敗は許されない。息をひそめて近づき、スーッと体の力を抜いたがいなや毒瓶を上から被せる。

(⁠ノ⁠ ̄⁠皿⁠ ̄⁠)⁠ノ⁠ しゃあー❗❗

やっと採れたよ、お母ちゃん(⁠༎ຶ⁠ ⁠෴⁠ ⁠༎ຶ⁠)
長きイバラの道で御座ったよ。

 

 
毒瓶から取り出して、じっくりと眺める。
渋い美しさだ。図鑑や画像で見る姿よりも遥かに素敵だ。
陰翳礼讃。前翅が雲霧林を彷彿とさせるようなデザインだ。きっと水墨画の世界の住人なんだからだろう。そう思って、妙に納得する。

雌雄を確認するために裏返す。

 
(裏面)

 
尻先に縦にスリットが入っている。多分、♀だね。
それにしても、何だか他のカトカラの♀のスリットとは感じが違う。溝が深いのか広いせいなのかワカランが、黒っぽくてよく目立つ。

 その後、立て続けに飛んで来て、小太郎くんも藤岡くんも無事1つずつゲットした。もし自分一人だけが採れただなんて事になれば申し訳ないから、ホッとする。だが、どちらもスレた個体で、自分の採った♀が一番鮮度が良い。なので次の順番を二人にお譲りする事にする。

思うに、ずっと雨はそこそこ降っているから、やはりシッカリと雨が降らないと活動が活性化しない蛾なのかもしれない。
 
 その後、2人が1頭ずつ採ったところで、ピタリと飛来がやむ。カトカラにはよくある事で、時間を置いて又飛んで来る事は多い。だが、今回も再び活性が入る云う保証はどこにもない。兎に角まだ自分は♀だけしか採っていないから、今度は何とか♂が飛んで来て欲しいと願う。今までイヤというほどボコられてきてるのだ、せめて雌雄くらい揃わなければ、溜飲は下がらない。キイーッ٩(๑òωó๑)۶、早よ飛んで来いやバーロー❗

 午後11:15。
ようやく1頭が飛んで来た。

 

 
だか裏返すと、コチラも尻先にスリット入っている。つまり、残念ながら又♀だ。
その後、2人が1頭ずつ追加したところで、再び飛来が止まった。そして、そのままジ・エンド。雲霧林の仙人は二度と姿を現すことはなかった。

 結果は、自分が2♀。記憶は曖昧だけど、小太郎くんが1♂2♀。藤岡くんが3♂か、もしくは2♂1♀だったと思う。自分だけが♂を採れず、しかも頭数も一番少なかった。鮮度は自分の♀が一番良かったから別にいいんだけど、どこか釈然としない。苦労してやっとこさ採ったわりには、成果があまりにも少ないじゃないか。3人で計8頭というのも期待ハズレだ。ヤクヒメは稀種だが、生息地では個体数が多いと聞いていたからね。とはいえ、胸を撫で下ろしてはいる。兎にも角にも、念願のヤクヒメが採れたのだ。それで良しとすべきなのかもしれない。

 帰途の事はあまり憶えてないけど、雨に長時間濡れて体が冷え切って寒かったと云う記憶だけはある。あっ、そうだ。道の駅で休憩した時に小太郎くんと藤岡くんは着替えたのに、自分だけが着替えを持ってきてなかったのだ。断片ながら少しずつ記憶が甦る。靴の中がグショグショで気持ち悪かったのも思い出したよ。
車窓から明けゆく空を眺めていたね。
そして、心は目的を達成したのに何故か沈んでいたっけ…。

              つづく
 
 
 と、ここで一旦クローズする予定だった。しかし、次回に予定していた翌年の話も続けて書くことにした。何だか分けて書くのが邪魔くさくなってきたのである。
そうなると、もはやタイトルは『2022’カトカラ6年生』とすべきだよね(笑)。でも、まっいっか…である。

 
 
2022年 6月20日

 翌年も、小太郎くんとの紀伊半島詣では続いた。
♂が採れていないので、小太郎くんに同行を頼んだのである。彼の方も鮮度の良い♂は採れていなかったからか、二つ返事でOKが出た。

 日付は1週間早めた。去年は翅がスレや欠けの個体ばかりだったからだ。過去の文献では6月下旬から7月初め辺りが採集適期のような感じだが、地球温暖化の影響で発生が早まっているのだろう。ホンマかいな❓だけど。
場所は去年と同じ場所だ。新たな場所に行きたいのは山々だが、そんな余裕はない。ここは先ずは確実に採れる場所に行くべきだろう。採れなきゃ辛いだけなのだ。骨の髄まで、それを知らしめられたからね。

 とはいえ、新しい場所の探索を怠っていたワケではない。途中、有望そうなダムに寄る。

 

 
四方が照葉樹林に囲まれており、居てもオカシクはないだろう。それに周りが開けているから、ライトトラップを設置するには絶好の場所だ。障害物がないので虫たちが寄って来やすい。山との距離も、そう遠くないから光も充分届きそうだ。そして、下が平らなので、灯火装置も設置しやすい。斜面だと、ライトが不安定で、倒れ易いのだ。

 

 
だが、車に乗ろうとしたら、雲が切れ始めた。そして、あろう事か何と青空が顔を覗かせた。

 

 
(⁠・⁠o⁠・⁠;⁠)おいおいである。
天気予報は雨なのに、どんだけ晴れ男やねん❓
手を合せ、どうぞ雨が降りますようにと願う。農業をやってる人でもないのに雨乞いするだなんて、何か変な話だな思うが、これ以上は回復しない事を祈ろう。心の中で雨乞いの唄を歌う。🎵ピチピチ、チャプチャプ、ランランラン。

 目的地に到着したのは、午後6時前くらいだった。

 

 
相変わらず、素晴らしいロケーションである。
こういう太古から変わらない深い森は、貴重だと思う。ゴイシツバメシジミ(註4)とか、おらんかなあ❓…。紀伊半島では、もう20年くらい記録がないから絶滅したと考えられるが、いるんじゃね❓

 日没と同時に点灯。

 

 
今回も雨よけテント仕様である。
しかし、流石の小太郎くんだ。更に進化させていて、タープの三方に薄布が張られている。ようするに、飛んで来た蛾が止まる面積を大幅増させたと云うワケだ。それに、より光が届くように、ライトが更に上部に取り付けられている。ホントあんたにゃ、感心するよ。マジ偉いわ。

 午後9時半。
何かデカいのが来た。

 

 
トビモンオオエダシャクとか大型のエダシャクの仲間(Biston属)の♀だろう(註5)。たぶん♂は普通種だろうが、Biston属の♀はどれも得難く、珍品揃いと言われている。羽が破れているから迷ったが、持って帰ることにした。

 10時前に漸く最初の1頭が飛んで来た。

 

 
裏返して雌雄を確認する。

 

 
残念ながら、♀だ。それはさておき、その色に驚く。去年採ったものより、明らかに地色の黄色が濃い。となれば、よりコチラの方が鮮度が良いことを示している。この鮮やかな黄色が本来の色なのだ。去年の個体は表側がキレイだったから完品だとばかり思い込んでいたが、実際にはそうじゃなかったと云うことだ。コレってカトカラあるあるなんだけど、羽化から時間が経っているのに、意外と表翅がキレイな個体が居たりするのだ。でも裏はそれなりにスレてるなんて事は儘ある。カトカラの鮮度は、裏で見分けると云うことをすっかり忘れてたよ。

 
 10時半。
白黒の蛾(註6)が飛んで来た。ダルメシアンみたいで洒落てる。こういうシンプルな柄は好きだ。スタイリッシュでカッコいいと思う。

 

 
一瞬、タッタカモクメシャチホコかと思ったが、あんなにゴツくはないし、白っぽくもない。

 
【タッタカモクメシャチホコ】

(2023.3月 奄美大島)

 
白黒の蛾は、他にもキバラケンモンやニセキバラケンモン、ボクトウガ等々何種類か見て知っているが、そのどれとも違うような気がする。
それを合図のように、多種多様な蛾が集まり始める。でもお目当てのヤクヒメは全然飛んで来ない。そして、どんどん時間は過ぎてゆく。雨は降っているし、条件は揃っているのに、どゆ事❓雲霧林のお姫様は、気まぐれで気難しい。ブス姫は性格が悪いのだ。

 午前0時を過ぎても飛んで来ない。みるみる心がドス黒い焦燥感で染まってゆく。

 
 午前0時50分。
やっとこさ飛んで来た。

 

 
でも、又しても♀だ。
表はキレイだけど、裏はさっきの個体よりも少しスレている。
と云う事は、何日か前には既に発生していたという事だ。紀伊半島の採集記録は7月上旬が多いが、採集適期は6月半ばなのかもしれない。

 

 
5分後、また飛んで来た。
待望の♂だ。
しかし、スレ個体だ。翅にスリットも入っている。やはり、少なくとも♂は6月中旬が適期のようだ。
これをきっかけにガンガン飛んで来るかと思いきや、ピタリと飛来が止まる。

 午前1時25分。
やっとこさ飛んで来た。

 

 
裏面も黄色い。やった❗今度こそ完品の♂だ。
これで漸く完品の雌雄が揃った。心底ホッとする。完品の♂と♀が揃わなければ、自分の中の物語はクローズしない。心の何処かが、その場に置き去りにされるからだ。完品が揃うまで訪れ続けなければならないのはシンドいのだ。例えば、ナマリキシタバは未だに♂が採れてないし、ヨシノキシタバは雌雄が揃ってはいるものの、♀のメリハリが効いた美しいタイプの完品は採れてない。そういや、ハイモンキシタバやノコメキシタバも満足しうるような完品がない。

 
【ナマリキシタバ♀】


(2020.7月 長野県松本市)

マイフェバリットの一つ、カトカラBESTファイブに入る美しい種だ。前翅の独特の柄がカッコいい。けど小型種なのがちょっぴり惜しい。もっと大きければ、間違いなくマイフェバリットのNo.1だろう。そんなにゴリゴリ好きなのに。何故だか縁が薄い。今年は何とか沢山採りたいよね。

 
【ヨシノキシタバ♀】

(2020.8月 奈良県吉野郡)

望むのは、こういう型だ。カトカラ属の中でもトップクラスに美しいと思う。コヤツも勿論ベストファイブに入る。
ついでに通常の♀も載せておく。こんなフォームだ。


(2020.8月 奈良県吉野郡)

カトカラの中では、唯一雌雄の柄が違う種で、普通の♀も充分美しい。でもメリハリタイプを見た後では、あまり魅力を感じない。コレだったら、ミヤマキシタバの方がカッコいいと思う。

 
【ハイモンキシタバ】

(2019.8月 長野県上田市)

【ノコメキシタバ】

(2019.8月 長野県上田市)

どちらも背中がハゲちょろけている。カトカラは、このように直ぐにみっともない落ち武者みたくなりよる。クソ忌々しいことに、網の中で暴れただけでこうなるのだ。

 
 夜はゆっくりと更けてゆく。
だが、深き森の姫は再び姿を見せなくなってしまった。飛来時刻は比較的遅めだが、丑三つ刻には打ち止めなのかもしれない。

 午前3時になろうとした時だ。

 

 
月が出た。
小太郎くんに笑われるが、自分でも笑ってしまう。どんだけ晴れ男やねん。まあ、ゴールデンタイムではなかったから全然問題なかったんだけどね。とはいえ、危ねえ危ねえではある。もし数時間でもズレていれば、エラいコッチャだった。

月の出を合図のように片付け始める。
全ての片付けを終えると、再び漆黒の闇が訪れた。深い闇だ。冷気も降りてきているのか、すごく肌寒い。そろそろ魑魅魍魎どもがやって来るに違いない。妖怪どもが跳梁跋扈する前に、急ぎ帰ろうと思った。

                 おしまい

 
追伸
 何せ2年前の話だから、記憶は曖昧だ。思い出し思い出し慎重には書いたが、内容は正確ではないかもしれない。小太郎とも記憶に齟齬がある可能性はあるだろう。読まれた方々には申し訳ないが、それを踏まえた上での文章だと御理解いただきたい。

 ややこしくなったとは思うが、今回からタイトルを「カトカラ4年生」から「カトカラ5年生」に変えた。実質、カトカラの採集を始めて5年目になった時の話だからだ。思うに、カトカラにターゲットを絞って採集を始めた時は、まあまあ天才なんだから、狙ったターゲットを順調に落としていけるだろうと考えていた。だからがゆえに付けたタイトルだったのだろう。それが、あろう事かヤクヒメが採れなくて、まさかの年跨ぎになるとは全くの想定外だった。結果、こう云うややこしい事態を引き起こしてしまった。とはいえ、今さら嘆いたところで詮もない。この先は何とか工夫して時系列を解りやすくして書いていくしかあるまい。自信ないけどー。
と云うワケなので、御迷惑をお掛けするが、今後とも宜しくでやんす。

 
追伸の追伸
 上記は2021年の採集記に対する追伸です。その後、急に2022年の採集記も付け加えたから、追伸も付け足すことにした。だから「この先は何とか工夫して時系列を解りやすくして書いていくしかあるまい。自信ないけどー。」とは書いたが、この話はひとまずお終いなのだ。ゆえに時系列の心配も無くなった。あっ、まだ種の解説編が残ってるか…。となれば、また時系列について考えねばならない。憂鬱だなあ…。

 この採集記は本来ならば、2年前の2021年に書かれるべきものだった。しかしワードプレスの突然の不具合で、記事が全く書けなくなってしまった。アレやコレやと試してみたが、フリーズは解消されず、嫌気がさして放り出してしまったのだ。だからブログが長年更新されなかったってワケ。漸く今年になって再開したが、筆は中々進まなかった。文章と云うものは、毎日のように書いていれば、長文でも慣れでスルスルと書けるのだが、ブランクが空くとそうはいかない。全然調子が出なくて、遅々として筆が進まないのである。ボキャブラリーも浮かんでこないから表現も単調になり、上手く書けない。上手く書けないと気に入らないから益々書く気が失せる。
そいでもって悪い事に、前回を書き終えて直ぐに又してもワードプレスがフリーズした。プレビューが全く見れなくなったのだ。そうなると下書きのレイアウトや貼り付けた画像が見れなくなるので、書くのが困難となる。やる気なし蔵である。
でも、このままだと中途半端に頓挫する事になる。少なくともヤクヒメのシリーズだけでも終わらせたいので、必死に解決方法を探した。そして、回復したのが約1週間前である。長々と言い訳がましく書いたが、少しは書く苦労も解って戴きたいのさ、ガッチャピーン。

 一応、展翅した画像の一部も載っけておこう。

 
【ヤクシマヒメキシタバ♂】

【同♀】

【裏面】

こうして展翅してみると、渋いっちゃ渋いが、冷静に見れば小汚いちゃ小汚い。他の多くのカトカラの下翅は鮮やかな黄色や紅色、紫色だから、それと比べればあまりにも地味だ。お姫様と言うよりも、雲霧林に棲む老婆だ。いや山姥(やまんば)かえ❓でも珍品だと思えば、山深き森に棲む仙人様に見えてくるから不思議だ。できることなら、今年も仙人様に会いに行きたいと思う。

 
 各註釈の解説もしておこう。
 
(註1)キリシマミドリシジミ

(♂ 2010.8.6 滋賀県 霊仙山)

学名 Chrysozephyrus ataxus
前翅長18〜24㎜。シジミチョウ科 ミドリシジミ属に分類される小型の蝶で、ゼフィルス(ミドリシジミの仲間)では、最も美しい種とされる。
♂の翅表は光沢のある金緑色で、♀は黒褐色の地色に青藍斑を持つものが多い。国内では神奈川県西丹沢から九州は屋久島まで見られるが、その分布は局所的。アカガシやウラジロガシ等の食樹が生育する標高400〜1400mの常緑広葉樹と落葉広葉樹の混交林を中心に生息地が知られている。
成虫は年1化、7月上旬〜9月下旬にかけて見られる。♂は午前9時〜午後3時頃に梢上を敏活に飛び回り、縄張り内に侵入した者を激しく追いかけ、再び元の位置に戻る占有性を有する。

ゼフィルス愛好家の中でも、意外と野外で成虫を採集した経験がない人が多いらしい。これは愛好家の間では野外で成虫を採集するよりも、冬場に卵を探し出して飼育する方が遥かに容易に標本が得られるからだ。しかも羽化直後の美しい個体が得られるときてる。ゼフィルス類は激しく飛ぶので、採っても汚損や破損したものが多く、中々完品個体が得られないのである。しかも多くの種が高所で活動するので、採集の難易度は高めだ。中でもキリシマミドリが最も難易度が高いとされている。多くは地上7m以上を飛翔し、しかもそのスピードはゼフィルス類最速と言われる。オマケに回遊する事が多く、あまり枝葉には止まってくれない。にも拘わらず、静止時間が他の種と比べて圧倒的に短いのだ。高い、速い、止まらないの三拍子が揃っている上に、ジッとしていてくれないんだから、お手上げである。思えば5連敗中に会った人で、採れてた人は誰一人いなかったもんね。
しかもコヤツの棲息環境は最悪で、大概がヒルだらけ。常に吸血される恐怖に怯えていなければならぬのだ。終始、気が気でなく、採集に全く集中できない。画像の、初採集した時の霊仙山なんぞはヒルの巣窟で、彼奴らが何十匹と鎌首を擡(もた)げてカモーン、カモーン。ゆらゆらと揺れてる様は阿鼻叫喚モノだった。思い出すだけても、さぶイボ(鳥肌)がサアーッである。

 
(註2)阪神タイガースの開幕9連敗
2022年、我が人生の愛憎の象徴である虎は、開幕試合のヤクルト戦で最大7点差があったにも拘わらず、終盤に大逆転されて負けた。以来、悪夢の9連敗。セ・リーグのワースト記録を塗り替えた。その後も勝てず、何と開幕17試合で1勝しか出来なかった。ホント、毎年の事ではあるが、ファンをやめたくなるよ。しかし、気がつけば今年も応援している。まるでダメ男に貢ぐ愚かなバカ女みたいではないか。いや、ワシは男だから、性悪女に引っ掛かったアホ男と言った方が正しいか。

 
(註3)イッポンダタラ

(出典 『Amazon』)

一本だたら(一本踏鞴)。日本に伝わる妖怪の一種で、熊野地方など紀伊半島南部の山中に棲む。一つ目で一本足の姿とされるが、各地方によって伝承内容に相違が見られる。
和歌山と奈良の県境の果無山脈では、皿のような目を持つ一本足の妖怪とされ、12月20日のみに現れて襲ってくるという。この日は「果ての二十日」と呼ばれる厄日で、果無山脈の名前の由来にもなっている。
奈良県の伯母ヶ峰山でも同様に12月20日に山中に入ると一本だたらに遭うといい、この日は山に入らないよう戒められている。こちらの一本だたらは電柱に目鼻をつけたような姿で、雪の日に宙返りしながら一本足の足跡を残すという。見た目が奇怪な姿の妖怪だが、人間には危害を加えないという。又、この地方では鬼神である猪笹王と同一視される事もある。猪笹王とは、背中に熊笹の生えた大イノシシが猟師に撃ち倒された後に亡霊となったもので、一本足の鬼の姿で山を旅する人々を襲っていたという。しかし丹誠上人という高僧によって封印され、凶行はおさまったと伝わる。但し、封印の条件として年に一度、12月20日だけは猪笹王を解放することを条件とした為、この日は峰の厄日とされたという。
和歌山県の熊野山中では、一本だたらの姿、形を見た者はなく、雪の降り積もった上に残っている幅1尺ほどの足跡を見るのみだという。
和歌山県西牟婁郡では、カッパの一種である「ゴーライ」が山に入ると、山童の一種である「カシャンボ」となり、このカシャンボのことを一本だたらと呼ぶという。
他にも、人間を襲うという伝承が多い中で、郵便屋だけは襲わないという説や源義経の愛馬が山に放たれてこの妖怪に化けたと云う説など、一本だたらの伝承は名前は同じでも、土地ごとによって違いがある。尚、紀伊半島南部以外にも、各地方に似たような妖怪伝承が残されているようだ。
名称の「一本だたら」の「だたら」はタタラ師(鍛冶師)に通ずるが、これは鍛冶師が片足で鞴を踏むことで片脚が萎え、片目で炉を見るため片目の視力が落ちること、一本だたらの出没場所が鉱山跡に近いことに関連するとの説もあるようだ。又、一つ目の鍛冶神、天目一箇神(あめのまひとつのかみ)の零落した姿であるとも考えられている。猶、熊野地方を治める熊野国造は製鉄氏族である物部氏の支流であるそうな。
ちなみに画像の右側の文章は、おそらく水木しげる先生的な一本だたらの解釈であろう。

 
(註4)ゴイシツバメシジミ

(出典『環境省』)

学名 Shijimia moorei moorei
開張19〜26mm。基本的には年1化、7月上旬〜8月上旬に見られるが、部分的に8月上旬から中旬にかけて第2化が羽化する。
和名は翅裏に黒い斑紋が碁石状に並んでいる事に由来する。
1973年に熊本県の市房山で発見され、1975年には国の特別天然記念物に指定された。又、1996年には種の保存法にも指定されており、採集も標本の売買・譲渡も禁止されている。クソが考えたクソ法律、死ねや。
日本では、紀伊半島の奈良県川上村及び九州の熊本県、宮崎県にのみ分布する。しかし、熊本県では毎年発生が確認されているものの、奈良県と宮崎県においては近年その生息が確認できておらず、絶滅したと考えられている。奈良県での発見は1980年で、たしか尊敬を込めて「蝶乞食」とも称される浜さんが最初に見つけたんじゃなかったけかな。
生息地はカシ類などの大木が繁茂する暖帯照葉樹林の原生林の渓流沿いで、幼虫の餌となるシシンランが樹上に着生している場所にのみ見られる。幼虫はシシンランの花や蕾だけを食べて育ち、成虫はノリウツギ、リョウブ、アカメガシワなどの花を訪れて吸蜜する。又、時にヘビやカエルなどの死体、鶏糞から吸汁することもある。

 
(註5)エダシャクの仲間
調べてみたら、オオアヤシャクという名の蛾でした。

【オオアヤシャク♀】

でもって分類は、Biston属ではなくてアオシャク亜科であった。失礼しやした。
開張は♂が42~53mm、♀は58~65mmもあり、アヤシャクの仲間では最大種なんだそうな。北海道,本州,四国,九州に分布し、6~9月に現れる。矢張り♀はともかく、♂は普通種のようだ。確かに、この日も♂は沢山飛んで来た。
幼虫の食樹はモクレン科(モクレン,ホオノキ,タムシバ,オオヤマレンゲ,シデコブシ)とムクロジ科(トチノキ)。
 
 
(註6)白黒の蛾
後で調べてみたら、カラフトゴマケンモンと云う名の蛾でした。

【カラフトゴマケンモン】

学名 Panthea coenobita idae
ヤガ科 ウスベリケンモンガ亜科に属する。
開張43〜52mm。成虫は、年2化。 5〜7月と9月に現れる。
幼虫の食餌植物は、マツ科のトウヒ、モミ、カラマツ。
名前にカラフト(樺太)とつくが、北海道以外の本州,四国,九州,対馬にも分布する。西日本では標高の高い所で得られることが多いようだ。これは西では幼虫の食樹が比較的高い標高にある為だと思われる。しかし、モミの木なんかは低い場所でも時々見掛ける。この採集地も標高は高くはなかった。つまり、特に冷涼な気候を好む種というワケではなさそうだ。
尚、稀種とまでは言えないが、少ない種らしい。

 
ー参考文献ー
◆『日本のCatocala』西尾規孝
◆『世界のカトカラ』石塚勝己
◆『Wikipedia』
◆『日本産蝶類標準図鑑』白水隆
◆『日本産蝶類標準図鑑』岸田泰則
 

鬼と名がつく生物

 

前回のオニベニシタバの回で、オニと名がつく昆虫について触れたが、そこで書き切れなかったことを書こうかと思う。

 
【オニベニシタバ】
(2018年7月 奈良県大和郡山市)

 
前半は前回と重複するところもあるから、前回を読んだ人は暫し我慢して読まれたし。

オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼにオニダルマオコゼ、オニヒトデとかオニヤドガリetc…。
あっ、思い浮かんだのは海の生物ばかりだ。これって、ダイビングインストラクター時代の名残だよね。

改めて思うに、海の生物にはオニの名を冠する強烈なキャラが揃ってるなあ。真っ先にコレらが頭に浮かんだのも納得だよ。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられたそうな。

 
(出典『暮らしーの』)

 
ダイバーには、オニカマスよりもバラクーダの名で親しまれている。バラクーダって言った方がインパクトがあってカッコイイからかなあ❓音の響きが如何にもヤバそうな奴っぽいしさ。

よく群れで泳いでいるが、あれはそんなにデカくない。デカイにはデカイが、まだまだ小物だ。あんまし恐くない。(#`皿´)うりゃあ~と、時々トルネードに割って入って蹴散らしてやるくらいだもんね。
むしろヤバいのは単独でいる奴だ。バラクーダは老魚になると群れないのだ(註1)。それが超デカくて、超怖い。顔もさらに厳(いか)つくなって、目が合ったらオチンチンがメリ込むくらいに縮こまりまする。ヤのつく自由業の方々でも、モノホンの親分さんクラスの静かな威厳と侠気があるのだ。絶対逆らってはいけないオーラである。
それで思い出した。
昔、サイパンのオブジャンビーチで、とてつもなく馬鹿デカイのにお会いしたことがある。水深3~4mくらいの中層で辺りを睥睨するかのように浮かんでおり、優に2mくらいはあるように見えた。そして、その周りには光の束が後光のように無数に射しており、神々しくさえあった。だが、目だけはギラギラと動いていた。
あまりにも強烈なオーラに、その場で固まり、背中がスウーッと冷たくなったのを憶えている。
その日はアシスタントで入っていて、お客さんの後ろにいたから、頭の中で念仏を唱えたよ。もしも、お客さんに向かって泳ぎ出したら、身を呈してガードに行かなければならない。「生ける魚雷」と言われるくらいのハイスピードで泳ぐそうだし、あの鋭い歯だ。片腕一本くらいは持っていかれるのを覚悟したよ。
まあ、幸いその場にジッとしていてくれたから、何事も起こらなかったけどさ。そういえば、お客さん守るようにして後ろ向きに泳ぎながら遠ざかったんだよね。あの時は、もっと見ていたいような、早くこの場から立ち去りたいような複雑な気分だった。脳内に、その時の映像は今でも鮮明に残ってる。

 
オニイトマキエイ(マンタ)は、そのデカさからの命名だろう。

 
(出典『オーシャンズダイブツアー』)

 
マンタは石垣島とかで見たけど、やっぱデカイだす。
一度に何枚も現れると、中々凄い光景である。

 
(出典『オーシャナ』)

 
この画像なんかを見るとバットマンだな。
ちょー待てよ。まるで角のある鬼の影絵にも見えるじゃないか。デカイからだけではなく、名前の由来はこのツノ的なものと、そのシルエットにも関係があるのかもしれないね。

 
お次は、ブサいく鬼チームだ。
オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また背鰭に猛毒もあって危険なことからも名付けられたのではなかろうか。たぶんオニカサゴなんかも同じ意味あいからの命名だろう。

 
【オニオコゼ】
(出典『暮らしーの』)

 
異形(いぎょう)のものだ。
バケモノけだしである。

 
(正面)
(出典『庄内使えるサイト』)

 
顔なんて、ブサ怖い。

 
【オニダルマオコゼ】

 
何度か見たけど、コチラはもっと体が丸い。ゆえにダルマさんなのだ。
海底にジッとしてて、殆んど動かない。英名はストーンフイッシュと言うんだっけ?それくらい岩と同化しているのだ。だから、時々誰かが踏んづけてエライことになる。コヤツも背鰭に猛毒があるからね。アホほど足が腫れるらしい。

 
(正面)
(出典 2点共『暮らしーの』)

 
怨念が籠った顔だ。
創造主である神に対する激しい憎悪やもしれぬ。
(#`皿´)ワシをこんなにも醜い姿で世に産み落としやがって…って顔だ。

 
【オニカサゴ】
(出典『HONDA 釣り倶楽部』)

 
前二つほどではないが、コチラもブサいくだ。
背鰭に毒もある。赤いのも鬼っぽい。
猛毒ブサいく三姉妹ってところか…、最悪だよな。
でも彼女たちの名誉のために言っておくと、皮を剥いだ身は透き通るような白だ。でもって、味はメチャメチャ美味い。刺身に良し、鍋に入れて良し、揚げて良しの高級魚だ。
よくオコゼはブサいくな人へのフォローに使われ、「見た目は悪いけど、付き合ってみたら最高のパートナー」みたく言われる。まあ、理解はできるわな。人は見かけで判断しちゃダメだよね。
そういえばアッシの知り合いのお姉さんの友達に、エゲつない三姉妹がいることを思い出したよ。金魚ちゃん、ミッちゃん、イカスミちゃん(全て仮名)っていうんだけど、何れもデブでブサいくで性格が破綻している。因みに長女の金魚ちゃんは性格は悪くないけど極端に内向的で、何を尋ねても要領を得ない。三女のイカスミちゃんは天の邪鬼(あまのじゃく)且つワガママで性格がネジ曲がっている。二女のミッちゃんが一番ヤバくて柄の悪いトラックの運ちゃんみたいだ。とにかく口が悪くて、直ぐに暴力に訴えかけてくる。粗暴で凶暴なのだ。酒飲むと、ロンパリになって目が据わるしね。でもって何かと絡んでくる。ほんと、タチが悪いのだ。顔も表情も似てるから、ゴマモンガラを思い出したよ。

 
【ゴマモンガラ】
(出典『えいこのモルディブここだけの話&どうでもいい話』)

 
コヤツ、シャブ中患者とかキ○ガイみたく、目が完全にイっちゃってるんである。三白眼っていうのかなあ…、白目がちなんである。それがギョロギョロと落ち着きなく左右バラバラに動く。いわゆるロンパリ的な眼なんである。焦点がどこに合っているのか分からないから恐い。
それに泳ぎ方も変だ。真っ直ぐ泳げなくて、右に左にとヨレて急に横倒しになったりする。完全に狂った者の動きだ。しかも体は50㎝以上、大きなものは1m近くもあるというから恐い。形や色柄も変だし、おぞましいとしか言い様がない。もしも、コヤツの名前にオニがついていたとしても納得するよ。

 
(出典『wikimedia』)

 
この魚、一般の人にはあまり知られてないけれど、ダイバーの間では有名でサメやオニカマスよりも恐れられている。サメとかバラクーダは、のべつまくなしには襲ってこないが、ゴマモンガラはムチャクチャ気性が荒くて、無差別に噛みついてくる。アタマ、オカシイんである。ゴツい歯で指を食いちぎられたとか、ウェットスーツを食い破られて血だらけになったなんて話はよく聞いた。実際、自分の知り合いにもレギュレーターホースを食いちぎられたっていう人がいる。
デブでブサいくまではいいけれど、性格まで悪い女の人には、やっぱ近づかないでおこ~っと。

 
オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てているようだ。

 
【オニハタタテダイ】
(出典『沖縄の魚図鑑』)

 
とはいえ、角は小さい。オニというには、ちょいショボい。しかし、オニハタタテダイはチョウチョウウオやハタタテダイを含む近縁の仲間うちでは、かなりデカイ。最大種か、それに近かったような気がする。どちらかというと、そちらがオニと命名された理由なのかもしれない。いや、両方の合わせ技かな?

 
オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。

 
【オニヒトデ】
(出典『水槽レンタル神奈川マリブ』)

 
👿悪そう~。
僕、正義の味方ですぅ~と言われても、誰も信じないだろう。それくらい悪の匂いがビンビンである。
そういえぱ、沖縄発特撮ヒーローもん『琉神マブヤー』の敵役に「オニヒトデイビル」ってのがいたなあ…。結構ボケ倒しの憎めない奴だったけどさ。

 
(出典『おもしろ生物図鑑』)

 
色が赤いのも、如何にも鬼的だ。
但し、色には他にもヴァリエーションがあって、下の画像みたいなものや紫色のもいるようだ。

 
(出典『マリンピア日本海』)

 
性格も荒いそうだ。
ふと思ったのだが、トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。
まあ、どうみても邪悪以外の何者でもないことを体現してるよな。沖縄の珊瑚とかガリガリ食いまくってたしさ。

 
オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな❓

 
【オニヤドカリ】
(出典『日淡こぼれ話』)

 
コヤツも邪悪そのものだ。
色が赤いのも鬼と言われるに相応しい。
そう云えばコイツ、宮古島にダイビングに行った時にいたわ。綺麗な宝貝を水深5~6mで見つけたので拾ったら、デカいヤドカリが宿借りしていた。貝の中身はたぶんコヤツが食って、その貝殻を羽織ったのだろう。強盗殺人みたいなもんだ。やってる事が凶悪なギャングなんである。

 
(出典『極!泳がせ道』)

 
貝殻から出すと、下半身は驚くほど短小だ。ちょっと情けない。巨漢の男が実を云うと…的みたいで笑ったよ。
でもここが美味い。刺身で食うと、エビ・カニ系とホタテ貝を混ぜたような味なのだ。残った頭とかは味噌汁にブチ込むと良いダシが出る。

旨いで思い出したが、こんなのもいたね。

 
【オニエビ】
(出典『休暇村 竹野海岸』)

 
ゴジラエビとかモサエビなんて呼ばれ方もするが、オニエビも含めて全部その土地土地での地方名だ。
正式名称はイバラモエビという。イバラは植物の棘(茨・荊)から来ているし、ゴジラはあの怪獣ゴジラの背鰭からだ。モサは猛者から来ている。オニエビも、その背中のギザギザ由来だろう。
そういえば、兵庫県の香住ではサツキエビと呼ばれていた。これは五月(さつき)の頃によく水揚げがされるからだ。
この時は生きているのを食った。ても期待していた程には美味くなかった事を覚えている。
実をいうと、海老は新鮮だからといって旨いワケではない。車海老の踊り食いなんてのがよくあるが、あんなもんはプリプリの食感がいいだけで、味はたいしたことない。旨味と甘みが足りないのだ。生きてるボタンエビも食ったことがあるけど、同じようなものだった。魚やイカでもそうなんだけど、必ずしも生きているイコールが最上のものではないのだ。美味いと思っている人は、新鮮=美味と云う思い込み、つまり脳で食ってるからなんである。別にそれはそれで間違いではないけどさ。本人が旨いと思っていれば、それでいいってところは否定できないからね。
肝心なことを言い忘れた。死後硬直がとれたばかりの生はメチャメチャ美味い。甘いのだ。甘エビよりも甘い。焼いても天婦羅にしても美味くて、これまた甘みが強い。クッソー、食いてぇー(T△T)

  
 
植物ならば、オニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジ辺りが代表ってところかな。

 
【オニユリ】
(出典『Horti』)

 
オニユリの名の由来は、花が大きくて豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。

 
【オニツツジ】
(出典『身近な植物図鑑』)

 
オニツツジなんかも由来は同じようなもんだろう。
因みにオニツツジは俗称で、正式名はレンゲツツジという。この植物、実を云うと有毒である。根や葉茎だけでなく、花やその蜜にまでも毒があるとされている。調子に乗って、子供の頃みたいにツツジの蜜をチューチューしたら死にまっせ(笑)
この毒があるというのも、鬼と冠される理由なのかもしれない。

 
オニアザミやオニバスは、その棘(トゲ)と大きさに由来する。

 
【オニアザミ】
(出典『白馬五竜高山植物園』)

 
オニアザミという言葉は、葉の鋸歯の鋭い大型のアザミの仲間の総称としても使用される。最近はアメリカオニアザミという、もっとトゲトゲの奴があちこちに蔓延(はびこ)り始めているようだ。

 
【アメリカオニアザミ】
(出典『ありのままの風景を』)

 
外来種で、鹿も牛も食べないそうだから激増しているらしい。

 
【オニバス】

(出典 2点共『福原のページ』)

 
葉だけでなく、花や実までトゲトゲなのだ。

 
【オニグルミ】

(2点とも 出典『森と水の郷あきた』)

 
おそらく実ではなく、内部の種(核)が語源だろう。
核面のデコボコが著しく、そのゴツゴツした外観と固さが鬼のようだからだと命名されたと推察する。 

 
 
オニとつく昆虫について書くつもりが、海の生物と植物につい力が入ってしまった。哺乳類と鳥類は駈け足でいこう。

とは言うものの、哺乳類でオニと名のつくものは意外と少ない。ソッコーで片付きそうだ。

 
【アフリカオニネズミ】
(出典『wikipedia』)

 
デカイねぇ~。もう、こんなのウサギじゃん。
コヤツは地雷の除去に貢献しているので、知っている方もおられよう。
タンザニアの団体APOPOはアフリカオニネズミの優れた嗅覚に着目し、その一種であるサバンナアフリカオニネズミを訓練して地雷の探知・除去に役立てる事業を展開している。体重が軽いために地雷に乗っても爆発する可能性が低く、金属探知機よりも高効率で地雷の探索が出来るらしい。凄いぜ、ネズっち。機械よりもネズミの方が優れているなんて、何だか痛快だ。
でも動物虐待だとか言って、正義感を振りかざすバカなのがいそうだなあ…。だったらオマエら、肉も魚も野菜も一生食べんじゃねぇーぞ(#`皿´)

主だったところでは、あと哺乳類はオニテンジクネズミ(カピバラ)くらいだ。これは説明不要だろう。日本にも帰化してるし、動物園でも人気者だもんね。

ところで、何で哺乳類にはオニと名のつく動物が少ないのだろうか❓ 解るような気もするが、いざ答えるとなると明確には答えにくい。まあ、敢えてつける必要もないのだろうとだけ言っておこう。

 
お次は鳥類。

 
【オニオオハシ】
(出典『ナチュマライフ』)

 
オオハシ類の最大種。南米に生息し、その色鮮やかな美しい体色から「アマゾンの宝石」とも呼ばれている。巨大で特徴的な嘴(くちばし)は、体長に占める割合が全鳥類中で最大なんだそうな。

見た目は可愛くて、鬼のようには見えない。おそらくそのグループの最大種ゆえのネーミングだろう。

鳥は他にもオニとつくものが結構多い。
オニゴジュウカラ、オニアオバズク、オニカッコウ、オニヤイロチョウ、オニミズナギドリ、オニクロバンケンモドキ等があるが、如何せんどれもマイナーだ。鳥好き以外で名前を知っている人は少ないだろう。しかも、どれも大型種ではあるが、全然鬼っぽく見えない。厳つくないのだ。強いて鬼っぽいと言えば、オニカッコウぐらいかな。

 
【オニカッコウ】
(出典『wikipedia』)

 
青黒くて目が赤い。ゴツくはないが、精悍な感じだ。
目が紅蓮の炎の如く真っ赤な青鬼に見えなくもない。
だとしたら、由来としてはカッコイイ。
でもおそらくは、名前をつけた人はそんな事までは考えてなくて、単にカッコウ・ホトトギスの仲間の中では大型種だからと云う理由でつけたのだろう。
因みに画像はオスで、メスは茶色い。

 
そろそろ昆虫に行きたいところだが、先ずは他の節足動物から入ろう。

 
【オニサソリ】
(出典『SciELO』)

 
別にオニとつけなくとも、サソリは見てくれがもう全ての種類が十分な鬼的だ。攻撃性が強くて毒もあるから、鬼的要素がほぼ揃っている。
ムカデなんかもそうだろう。因みにオニムカデという和名を持つ種はいないようだ。でも、どっかで聞いたことがあるなあ…と思ったら、ゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)にオニムカデというキャラがいたわ。

 
【オニグモ】
(出典『弘子の写真館』)

 
邪悪だなあ。
オニグモ属最大種にして、属名の基準種でもある。
クモも、そもそも見た目が鬼的だ。なのに、オニグモはそれを強化具現させたかのような存在だわさ。
オニグモ属には数種いて、何れ劣らぬ鬼っぷりである。

 
【キバナオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

(出典『北海道の生物図鑑』)

 
黄色が入ると、鬼感が増幅されるねー。
野原で遭遇したら、ギョッとするだろう。
鬼とは、そもそもがこの世の者ならざる異形(いぎょう)な存在の総称なのかもしれない。だから、オニとつけるのならば、驚愕される存在であるべきじゃないかと思う。

 
【ヤマシロオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
万歳している👽宇宙人みたいだ。
或いは腹の下の方は、笑っている猫みたいにも見える。

 
【ヤマオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
黒いと邪悪度が増すなあ…。
でもカッコイイっちゃ、カッコイイ。何だかハカイダー(註2)を思い出したよ。

 
【イシサワオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
赤っぽいのも邪悪な感じがする。黄色もそうだけど、赤も警戒色なのである。あたしゃ、危険ですよという印だ。

 
【アカオニグモ】
(出典『まーしーのフォトアルバム』)

 
もっと赤いのもいた。
赤鬼様は毒々しい。しかし、邪悪度も上がるけれど、同時に美しさ度も上がる。見方を変えれば、デザインはポップでさえある。

赤鬼がいるのなら、青鬼もいるんじゃないかと思った。
で、一応調べてみたら、いた。

 
【アオオニグモ】
(出典『博物雑記』)

 
予想に反して青鬼は可愛いかった。
プリプリの白いお尻が、髭のおじさんのコケシ頭みたいだ。邪悪というよりもユーモラスだね。

オニグモって面白いなあ。
ついつい、めっちゃネットサーフィンしてしまったよ。
けど、いつまでこんな事やってんだ?いい加減にクロージングしないとマズイなあ…。

 
長々と書いてきたが、ようするにオニと名がついている生物には、基本的に以下のような特徴があるようだ。

①大きい
②刺(トゲ)、もしくは角がある
③見た目が厳(いか)つい
④凶暴・獰猛である
⑤毒々しい。或いは毒がある
⑥色合いが鬼に似ている
⑦勇壮

思うに、この何れかの特徴を有しているものが、オニと名付けられた模様だ。
言い加えると、①の大きいと⑦の勇壮は重複するところもあるが、大きいからといって勇壮とは限らないので、あえて分けた。

 
扨て、いよいよ昆虫である。
でも書き疲れて、正直どうでもよくなってきた。
と云うワケで、虫のオニ関係は次回後編に回します。

 
                     つづく

 
と、一旦クロージングしたんだけど、後編を書くのならば、導入部でまた前回の流れを汲む説明をしないといけない。それが正直、面倒くさい。しゃあないから、踏ん張って続けて書くことにした。たぶん、前半よか長くなるので、ここまで読んで疲れちゃった人はここで一旦読みのをやめて、二回に分けて読みましょうね(笑)。マジで。

始めるにあたって、今一度鬼の定義を確認しておこう。
ウィキペディアには、こう書いてあった。

『日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「大きな」といった意味の冠詞として使われる場合もある。(中略)。現在、一般的に描かれる鬼は、頭に二本、もしくは一本の角が生え、頭髪は細かく縮れ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。色は赤・青・黒などさまざまで、「赤鬼(あかおに)」「青鬼(あおおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。』

OK。自分が指摘したものとだいたい合っている。これを今一度脳ミソにブッ込んで、続きを読まれたし。

さあ、既にどうでもよくはなってきてはいるけれど、本当に言いたいことに向かって書き進めよう。
 
前回、オニシタバの回で書いた要旨はこうだ。
「昆虫でオニといえば、オニヤンマ、オニクワガタ辺りが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止(とど)めておく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。」
この言葉に対しての異論もあるようなので、理由を書きます。

繰り返すが、昆虫でオニといえばポピュラーなのは、オニヤンマとオニクワガタだろう。

 
【オニヤンマ】
(出典『自然観察日記』)

 
(出典『あにまるじゃんくしょん』)

 
日本最大の勇壮なトンボだから、一般の人でも知っている人は多いだろう。

 
(出典『廿日市市の自然観察』)

 
エメラルドグリーンの眼がとても美しいけど、よく見ると顔は厳(いか)めしい。

 
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
歯もゴツい。
コイツで、あの凶暴なスズメバチなんかもガリガリ食う。オニヤンマは日本有数の肉食昆虫でもあるのだ。
そういえば思い出したよ。随分前に当時の彼女と赤穂方面に旅行に行った時の事だ。龍野市でオニヤンマの巨大なメスが空中でシオヤアブ(註3)をガシッと捕まえて飛んで行った事がある。あれはインパクトあったなあ…。シオヤアブもスズメバチを襲うくらいの凶暴な奴である。その両者が互いに正面から飛んできて、ガチンコで相まみれたのだ。僅かな攻防があった次の瞬間には、アブがバキーッいかれとった。で、そのまま飛んで近くの電線に止まり、ガシガシと囓じり始めた。あまりの迫力に、彼女と二人して震撼。口あんぐりで見てたよ。

和名は、この巨大さと厳つい顔つき、凶暴性から名付けられたのだろう。また、黒と黄色の縞模様から虎皮のパンツを履いた鬼を連想して名づけられたという説もあるようだ。しかし、これはたぶん後付けでしょう。
あっ、二枚目の正面写真も鬼っぽくねえか❓
背中の柄がツリ目で出っ歯の鬼の顔に見えなくもない。これも名前の由来になってないのかなあ❓
とにかく、これだけ鬼の要素が揃っているのである。ネーミングに異論は無かろう。

それに対して、オニクワガタにはガッカリだ。

 
【オニクワガタ】
(出典『THE KAYAKUYA』)

 
たぶん顎の感じが鬼の角みたいだからと名付けられたのだろうが、小さくてマジしょぼい。2、3センチしかないのだ。クワガタといえば、昆虫界のスター軍団だ。デカくてゴツゴツした奴が綺羅星の如くいる。その中にあって、オニクワガタは鬼の名前を冠するのにも拘わらず、どうにも地味なのだ。こんな奴にオニとつけるんなら、タテヅノマルバネクワガタ(註4)とかの方がよっぽど相応しい。断然デカイし、珍しい。今や天然記念物だもんね。
それにオニクワガタはブナ林の中の道をひょこひょこ歩いてるのを時々見かける。結構、普通種なのだ。見ても全然感動がない。

とはいえ、横から見ると確かに鬼的ではある。

 
(出典『フォト蔵』)

 
角の形が鬼を彷彿とさせる。
これならば、オニという名前でもギリギリ許せる範囲内だ。
とはいえ、小さい奴にはあんまりオニとはつけて欲しくないなあ。
オニクワガタというのなら、⬇コレくらいの迫力はあって欲しいものだ。

 
【ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ】
(出典『W.B.B-01◆KING◆ブログ』)

 
オウゴンオニクワガタは幾つかの種に分けられているが、この種はインドネシア・ジャワ島に棲むもので、体長は大きなものは80㎜くらいもある。まさに黄金の鬼である。ゴージャス鬼だ。

オニとつくクワガタといえば、コヤツの存在も忘れてはならないだろう。
 
 
【オニツヤクワガタ】
(出典『ゲストハウス プリ/Guest House Puli』)

 
画像は台湾産のオニツヤだ。大きなものだと体長90㎜を軽く越えるものもいるという。

メスでもデカイ。

 

 
メスだってオニクワガタよか遥かにデカイのじゃ。
充分、鬼である。

幼虫がエグい。

 

 
これまた鬼なのである。下手したら成虫よりも凶悪な感じがする。

これら3点の画像は台湾中部、埔里で世話になったナベさんにお借りした画像だ。
ナベさんは埔里でゲストハウスを経営する大のクワガタ好きなのだ。2016年、初めて台湾に蝶採りに訪れた折り、ナベさんのゲストハウスに泊まっていたのだが、その時にこれらの画像を興奮気味に見せてくれたのだった。ナベさん曰く、気性が荒く凶暴なんだそうな。
コヤツは実物を是非この目で見てみたい。次に台湾に行くときは本気で探そうと思う。

因みに、ナベさんは渡辺さんではなくて渡部さんで、渡部と書いてワタベと読む。ワタナベさんではないのだ。でも呼びやすいから勝手にナベさんと呼んでたら「間違ってるけど、もうそれでいいですよー(# ̄З ̄)」と言われた。だから、ナベさんでいいのである。

 
どんどん行こう。

 
【オニオサムシ Carabus barysomus 】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
体長29~50㎜。
分布はインド北西部カシミール地方、パキスタン北東部。
光沢の強い漆黒の地に、顕著な上翅彫刻と亜属中最大の体長を有する。本亜属の基準種でもある。

ピンチアウトして画像の拡大は出来るけど、分かりやすいようにトリミングしよう。

 
【ssp.hazarensis&ssp.huegeli】

 
黒い鬼だ。この点刻が厳つさを増幅させ、鬼感を醸し出している。デカイと云うのも鬼でしょう。オニの名に異論なしだ。
図示したものは原記載亜種(ssp.barysomus)ではなく、左がカガン渓谷亜種(ssp.hazarensis)で、右がスリナガル東方亜種(ssp.huegeli)である。

 
【ssp.heroicus】

 
コチラも同じくオニオサムシだが、最大かつ最も特殊化したものとされる。ピル・バンジャン山脈西部のブーンチ北方の産する亜種で、こっちも負けず劣らずカッコいい。

 
【カシミールオニオサムシ Carabus caschmirensis】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村・水沢)

 
体長27~38㎜。
これは wittmerorum というパキスタン北部・スワート地方の亜種で、緑青色を帯びており、とても美しい。
カシミールの青鬼だな。因みに、原記載亜種は黒い。

オニオサムシ亜属(Imaibius)は、大半がインド北西部のカシミール地方からパキスタン北部の標高2000~3000mの高所に棲む。背後は7千、8千メーター峰が連なるカラコルム山脈とヒマラヤ山脈だ。そういうところも、鬼が棲むに相応しい異世界って感じでいい。
スリナガルは当時も旅行者には閉ざされていて、結局行けなかった。でもパキスタン北部にはバイクでユーラシア大陸を横断した折りに立ち寄った。標高四千くらいまでは行ったと思う。もし、その頃に虫採りをやってたとしたら、コヤツらも採れたかもしんない。ヨーロッパに始まり、アフリカを経由してアジアまで旅したから、会おうと思えば相当ええ虫に会えてたんだろうなあ…。モロッコの砂漠なんかにも行ったから、ニセマイマイカブリとか、カッコいいゴミムシダマシにも会えたかもしんない。勿体ねー。

 
【オニミスジ Athyma eulimene 】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
見よ、怒れる鬼の形相を想起させるこの出で立ちを❗
オオアカミスジなんていう普通過ぎるダサい和名もあるけど、塚田悦造氏が大図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で採用しているオニミスジを断固として推す。
なぜなら前翅長が42㎜くらいはあり、ミスジチョウやシロミスジの仲間の中では最大、もしくは最大級の種だからだ。翅も他のミスジチョウと比べて遥かに分厚いし、体も太くて頑健だ。デカくてゴツいのだ。そして飛ぶのもクソ速い。だから、採った時は到底ミスジチョウの仲間には思えなかった。

 

 
背中に光る金緑色が美しい。
何だか、まるで鬼火のようじゃないか。

 
【ミドリオニカミキリ】
(出典『cerambycodea.com』)

 
南米のカミキリムシだが、鬼そのものとも言える見てくれだ。残虐非道の青鬼様なのだ。
大きさは75㎜もあるそうだ。この厳つい顔、そして前胸のトゲトゲ、青緑色にギラギラ輝く感じ。そこに大きさも加わるのだから、鬼と呼ぶに申し分ない。性格も絶対に悪辣凶暴、極悪に違いなかろう。
オニの名がある虫の中では、コイツが一番鬼を具現化させたような存在じゃないかな。カミキリムシだから、肉食じゃないけどさ。

 
外国の昆虫はコレくらいにして、日本のオニと名のつく虫に戻ろう。

 
【オニホソコバネカミキリ】
(出典『リセント[RECENT]』)

 
(出典『ムシトリアミとボク』)

 
見た目が黄色と黒だし、毛むくじゃらなところは鬼と言って差し支えないだろう。カミキリなのにハチに擬態していると云うのも、何となく邪悪っぽい。
学名は Necydalis gigantea。その学名からカミキリ愛好家たちの間では、ギガンティア、ギカンと呼ばれている。ギガンティアとは、ラテン語で「巨大な」を意味する言葉である。その名のとおり、ネキ(=ネキダリス=ホソコバネカミキリ属)の最大種でもある。まさに鬼の名に相応しい。これも異論なし❗

 
オニクワガタはまあ置いておくとしても、ここまではオニと名付けられていることに何ら違和感のない昆虫たちだ。問題はここからである。
とはいえ、問題視しているのはワテだけかもしれん。ゆえに、ここから先の文句たらたらの文章は、あくまでも個人的見解であることをおことわりしておく。

 
【オニユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長22.0~31.2㎜。ユミアシゴミムシダマシの中の最大種である。
ユミアシというネーミングはセンスいいなと思う。
奈良の春日山と九州の大隅半島、福江島(五島列島)くらいでしか採れないようだから珍稀度も申し分ない。脚が太く、見た目もガッツリした感じで黒光りしているから、邪悪な黒鬼に見えなくもない。魅力的なのは認めよう。
だが、この見た目が問題だ。他のユミアシゴミムシダマシの仲間と見てくれはあんまし変わんないのである(註5)。つまりオニユミアシだけが特に鬼っぽいワケではないのだ。
あとはオオユミアシゴミムシダマシやアマミユミアシゴミムシダマシと大きさ的には、さほど差はないというのも気にかかる。オニというからには、圧倒的に巨大であって欲しいという願望があるのだ。
とはいえ、オニユミアシは自分の中では一応セーフかな。オニと名乗ってくれても強く反対はしないし、いたらゼッテー採るもん。

 
【オニヒゲナガコバネカミキリ】
(出典『長野県産カミキリ図鑑』)

 
ちっちゃ❗
調べたら、6~14㎜しかない。
ヒゲナガコバネカミキリの仲間では大きいから名付けられたようだけど、オニってのはどうよ❓小さ過ぎやしないか❓
見てくれは鬼っぽいといえば、鬼っぽくはあるけどさ。

 
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
でも、カッコいいなあ(о´∀`о)

 
【オニヒラタシデムシ】
(出典『東京昆虫館』)

 
オニとつくのに、体長はたった1㎝くらいしかない。
普通のヒラタシデムシ類でも1.5~2㎝くらいはあるのに解せない。
という事は背中の彫刻柄が鬼みたいってことなのかな❓にしても、オニというほどの複雑怪奇な彫刻柄ではない。鬼というほどのインパクトはあらへん。ネーミングに異議ありだ。
まあ、コイツらシデムシ(死出虫)は字の如く動物の死体に集まるから、その意味では鬼的ではある。鬼みたく死肉を屠(ほふ)るのである。気味悪いが、腐敗菌の蔓延を防ぐ掃除屋でもあるから、必要な存在ではあるんだけどもね。

 
【イシガキオニハネカクシ】

どうやらキシモトツノツツハネカクシの石垣島亜種の別称のようだ。でもイシガキオニハネカクシの画像がダウンロードできない。キシモトツノツツハネカクシの画像も見つからない。と云うワケで、ある程度近いであろうフトツノツツハネカクシの画像を添付してお茶を濁しときます。

 
【フトツノツツハネカクシ】
(出典『フォト蔵』)

 
イシガキオニの頭はこんなにデカくはないけど、だいたいこんな感じだ。角もあるし、見てくれは邪悪な感じがしてオニと言ってもいいだろう。
けどさあ、ハネカクシって、そもそも皆さん鬼的な見てくれだよねぇ。

 
(出典『コトバンク』)

 
しかし、如何せんやっぱり小さい。だいたいハネカクシ全体がチビッコだらけなのだ。

 
【ツツオニケシキスイ】
(出典『最上の自然』)

 
オニケシキスイ亜科 ヨツボシケシキスイ亜属に含まれる。
元々ケシキスイは矮小だけれど、4~6㎜くらいしかない。調べた限りでは他にこの亜属にはオニとつくものが2種、オニケシキスイ亜属にコオニと名のつくものが5種類あった。何でオニケシキスイ亜属がコオニで、ヨツボシケシキスイ亜属の奴らがオニケシキスイなのだ❓謎だよ。さっぱりワカランわ。
一瞬、この黒と赤が鬼を連想するゆえのネーミングかなと思ったが、考えてみればヨツボシケシキスイだって赤と黒なのだ。益々ワカランわ。

 
【オニメクラチビゴミムシ】

画像が見つからなかったので、別種のズンドウメクラチビゴミムシの画像を貼っておく。

 
(出典『俺流エンタメ道場』)

 
見た目はどれもこんな感じの形で赤茶色なので、雰囲気は何となく解ってもらえるかと思う。
メクラチビゴミムシはチビゴミムシ亜科のゴミムシのうちで、地下生活に強く適応した結果、複眼を失った一群の総称である。ようするに盲目なのである、
約300種以上が知られ、多くが体長5㎜前後の小さな昆虫だ。
画像は見つけられなかったが、学名は判明した。
Trechiama oni というらしい。小種名が、まんまの「oni=鬼」じゃねえか。よほど鬼っぽい姿なのかとワクワクしたが、そんなに特異なものならば、もっと言及もされている筈だ。しかし、目ぼしい情報がてんで見つからない。画像も見つけられなかった。
ってゆうことは、それほど特筆すべき奇怪な姿ではないのだろう。となると、鬼的要素として考えられるのは、属内最大種である公算が高い。でも、んな矮小なものにまでオニとつける必要性が果たしてあるのだろうか?

話は変わる。この一連の和名に対して、巷では差別だという批判の声が少なからずあるようだ。過去には改名騒動さえ起こったらしい。
確かに知らない人から見れば、メクラでチビでゴミみたい存在だと言っているように聞こえる。そんなの虫だからって名付けていいのかよ?それって差別だろって事なのだろう。ても、その考え方がメンドくせー野郎だなと思う。
掲げた画像のズンドウメクラチビゴミムシだって、ズンドウ(寸胴)は決して誉め言葉ではない。むしろ、その逆だろう。だからって、何だというのだ。メンドクセー。たかが虫だろ❓虫は悲しんだり傷ついたりはしない。

ウィキペディアには、続けてこうあった。
「和名に差別的に聞こえる要素があるため、日本の昆虫学の研究者の間でも改名すべきか否かで議論が絶えない。」
驚いた事に一般ピーポーではなく、玄人筋からのクレームだったのね。何だそりゃ?である。
クレームをつけている研究者はハッキリ言ってバカだ。言葉に対する感覚がズレている。こういう正義感ぶってる奴に限って、差別を助長していたりするから始末に悪い。所詮は虫なんだから、ありのままでいいのにね。
この手のセンスのない輩どもが、真面目で長ったらしくてクソ面白くもないつまらん和名を乱発しているのだろう。

ウィキペディアでは、それに対して更にこう続けている。
「現在のところ、このグループの研究を日本で牽引してきた上野俊一が、実際の差別と言葉は無関係であり、標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招くとする改名反対の主張を強く行っているため、当面改名されない模様である。」
上野さん、天晴れである。おっしゃる通りだ。
だいたいメクラも盲目も、所詮は同じ意味じゃないか。言い方を変えただけにすぎない。こんなの言葉狩りだろ。メクラという言葉にはそれ相応の歴史があり、その成立過程には様々な物語もあった筈だ。言葉を葬り去るということは過去の歴史をも闇に葬り去るということだ。負の遺産も人類の遺産なのだ。消してしまえば、根本の本当のことはわからなくなる。
そういえば、イザリウオなんかも差別用語だといって、知らぬ間に「カエルアンコウ」にされちゃったんだよねぇ。ようするに、イザリという言葉も葬り去られたワケだが、アレを言葉で説明するの大変だし、面倒くさいぞ。しかも、説明するとなると喋る方も聞く方も妙にリアルな嫌悪感情になるのは避けられんでしょう。
ホント、自主規制とかって馬鹿馬鹿しい。言葉が誕生したのには、それなりの理由があるのだ。

 
【アカオニミツギリゾウムシ】
(出典『昆虫データバンク』)

 
ミツギリゾウムシかぁ…。この仲間は海外で何度か見たけど、変な形だなあと思った記憶がある。コイツはそれよかもっと変な奴だな。触角とか、かなり変わってる。
調べた限りでは分布は狭く、福岡、愛知、奈良、京都の各府県でしか見つかっていないようだ。かなりの稀種なんだね。
灯火に飛来すること以外、生態は未解明だが、アリの巣と関係があるらしい。好蟻性昆虫なのか…、謎だらけだな。何か面白そうだ。

日本では、他にツヤケシオニミツギリゾウムシ、キバナガオニミツギリゾウムシの2種がいるが、これらも稀種のようだ。何れもネットでは五万円の値がついていた。とはいえ情報が少ないから、本当にそれだけの価値があるのかどうかはわからない。生態が分かってないし、探してる人も少ないから、単に需要と供給の問題だけなのかもしれない。

情報が少ないから、語源を探るのも大変だ。それだけマイナーな存在なんだろね。
ツヤケシオニミツギリってのは黒い。キバナガは赤い。勝手に想像すると、日本ではツヤケシが最初に見つかって、次に赤いのが見つかったからアカと名づけたのかな? で、キバナガはその次に見つかり、顎が長いのでキバナガとつけられたと推察する。
しかし記載年を確認したら、アカオニが1963年、ツヤケシが1976年、キバナガが2009年となっていた。見事に読みがハズレましたな。
それにしても何でオニなんだろ?ミツギリゾウムシの中では最大なのかなとも思ったが、たった10㎜くらいしかない。日本にいるミツギリゾウムシには、もっと大きいのが沢山いるから、それも当てはまらない。
オニアカは前胸中央に溝があるのが顕著な事から、セスジミツギリゾウムシという別名がある。もうそっちでいいと思うんだよね。正直、チビッコだし、鬼には見えないもん。

 
【オニコメツキダマシ】
(出典『虫つれづれ@対馬V2』)

 
前胸背の凹凸の彫刻柄が鬼の顔に見えることからついた種名のようである。
でもコレが鬼に見えるって、どんだけ想像力が逞しいねん。大きく張り出した前胸の顔はお地蔵さんにしか見えん。体全体もお地蔵さんやんけー(# ̄З ̄)
しかも、体長は5~11.5㎜と笑けるほど小さい。でもって、ド普通種らしい。
学名 Hylochares harmandi に秘密が隠されているのかと思いきや、そうでもなさそうだ。これはおそらく著名な博物学者のアルマン・ダヴィドに献名されたものだろう。余談だが、アルマンといえば、アルマンオサムシ(ホソヒメクロオサムシ)など多くの昆虫にその名が学名としてつけられている。余談ついでに言っとくと、学名には名前はないけれど、有名なのは中国で博物学調査を行い、ジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報じた人物でもありんす。

 
【オニツノキイロチビゴミムシダマシ】
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
ちっちゃ❗
チビとついてあるだけのことはある。

奄美大島にしかいない稀種なんだそうな。奄美って、固有種とか日本ではこの島にしかいないと云う虫が多いよね。フェリエベニボシカミキリとかアカボシゴマダラとかさ。あっ、アカボシゴマダラは今は本土にもクソ品のないクズ外来種がいるな。(# ̄З ̄)死ねばいいのに…。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
まさか触角が鬼に見えるとかじゃないだろうなあ。
だとしたら、無理無理じゃん。
あっ、でもよく見たら角があるわ。

しっかし、クソ長い名前だニャア。どれか1つくらい端折(はしょ)ることが出来なかったのかなあ❓
虫の名前には、とてつもなく長いものが結構ある。アレって、何とかならんのかね❓細かく特徴を現したいのだろうが、かえってワケわかんなくなってないか❓ハッキリ言う。長い和名はダサい。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
( ̄~ ̄;)う~む…。こりゃ、確かに鬼だわさ。
オニの名を認めてもいいような気がしてきた。
でも、それならオニかツノかのどっちか1つにしてもらいたいよね。
けど、オニとするには、やっぱ如何せんちっちゃ過ぎるわ。

 
【オニエグリゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこがオニなのか、さっぱりわからない。
単に属最大種なのかな❓
でも体長が10.7~12.3㎜しかないし、果たしてオニとつける意味ってあるのかな❓まだまだ昆虫素人にはワカンないや。自分の預かり知らぬ裏事情とかあるのかしら❓

 
【オニツノゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこに角あるねん(#`皿´)❗と思ったら、ちゃんとある奴も発見。

 
(出典『昆虫採集記』)

 
どうやら角はオスにしか無いようだ。もしくはオスの方が発達してる?

体長は10.8~18.5㎜。コレまた小さい。
属最大種かと思いきや、近縁のミツノゴミムシダマシ(コヅノゴミムシダマシ)の方が13.5~18.5㎜と大きいぞ。昆虫界のオニの基準って何なのさ❓

 
【オニクビカクシゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
頭に鬼的突起があるが、申し訳程度だ。鬼というよりも猫耳だ。ネコミミクビカクシゴミムシダマシの方が可愛くて良いのになあ…。
待てよ。そもそもコレって角なのか?小腮か何かじゃないのか❓
まあいい。おそらく猫耳は関係なく、属の最大種なのだろう。けれど、やはり小さい。体長は8.3~10.5㎜しかない。
とはいえ、クビカクシってのは中々秀逸なネーミングかもしんない。特徴をよく捉えていると思う。
 
 
【オニササキリモドキ】
(出典『日本のバッタ・コオロギ・キリギリス』)

 
属の最大種かと思いきや、そうでもないようだ。たった8~10.4㎜しかない。どこがオニやねんである。
調べてゆくと、愛媛県の鬼ヶ城山という地名がボツポツ出てくる。そこで最初に見つかったからなのか❓だとしたら、紛らわしい事この上ない。だったら、オニガシロササキリモドキにしろよなー(# ̄З ̄)
けど、調べるとどうやら基産地は鬼ヶ城山ではなく、篠山という所みたいだ。益々、ワケわかんねえや。
因みに、分布は愛媛県と高知県だけみたい。そこそこ珍しい種なんだろう。しかし、それとオニのネーミングは関係ないんだろなあ…。

 
【オニヒメタニガワカゲロウ】
(出典『ZATTAなホームページ』)

 
鬼なのに姫って、何じゃそりゃ❓である。
オニは主に最大種、ヒメは小型種につけられるのが生物界の常識だが、一般ピーポーにとっては何じゃそりゃ❓である。ミックスされたら、ワケわかんねえだろう。
これはおそらくヒメタニガワカゲロウの最大種であるから、頭にオニとつけられたのだと推測される。
でもヒメタニガワカゲロウというのが、探しても見つからない。フザけんなよである。ヒメは小さいという意味でつけられただけで、属レベルではタニガワカゲロウというワケなんだろね。もう面倒だから確認しないけど。

画像を見てもわかるとおり、葉っぱの大きさと比して大変小さい。ヒメと呼ぶに相応しいと言える。
だとしたら、オニの部分は大きさではなく、その形態によるネーミングではなかろうか?
そういう目で見れば、確かに頭部に突起らしきものがある。それを鬼に模して名付けられた可能性はある。とはいえ、申し訳程度だ。こんなもんがオニと言えるかね。せいぜいツノでよかったんじゃないの~❓

 
【オニヒメテントウ】
(出典『東京23区内の昆虫2』)

 
だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなっつーの(# ̄З ̄)
ヒメテントウの最大種らしいが3㎜しかないし、どこがオニやねん。もー、どいつもコイツもチビッコの鬼ばっかじゃねえか。

  
他にもオニヒメハネカクシ(だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなよ)、オキナワニセオニハネカクシ、アシナガオニゾウムシ、オニツヤハダチャイロコメツキとか、オニとつく昆虫はまだまだいるけれど、これくらいにしておこう。どうせ皆んなチビだろうしさ。

ようは、簡単に何でもかんでもオニって名前をつけるのはどうかと思うよと言いたいワケ。特にチビッコの虫にオニってつけるのは、もうやめません❓って事なのである。オニとつけるなら、それに相応しい存在であるべきだと思う。オニは鬼らしくである。
それを言うのに、ここまで長い文章を書くのは自分でも御苦労なこったである。( ̄∇ ̄ )ゞまっ、いっか…。

あっ、忘れてたよ。そういえば日本のオサムシにもオニの名を冠したのがいたなあ。

 
【オニクロナガオサムシ】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
正式には種ではなく、キュウシュウクロナガオサムシの東広島亜種で、その通称がオニクロナガオサムシである。
どうせキュウシュウクロナガオサムシの中で一番デカイから名付けられたんだろうと思っていた。実際、種の中では一番大きいのだが、甲虫屋のAさんから名前の由来を聞いて驚いた。何とオニは人のニックネームから来てるみたいなんである。
これは蛾の著名な研究者、特にシャチホコガの研究で高名な中臣謙太郎氏のアダ名なんだそうである。
長いが、学名を記そう。
Carabus(Leptocarabus)kyushuensis cerberus。
括弧内は、たぶん新たな分類を用いた場合の学名かな?
小種名の cerberus は冥界もしくは地獄の番犬ケルベロス(註6)のことだ。
Aさん曰く、中臣さんの顔が鬼みたいだったからオニの和名がついたそうだ。そんなん有りかいな(笑)。
その鬼に連動して小種名もついたようだ。その辺の事は詳しくは訊いてないけど、或いはケルベロス的な激しい性格の持ち主でいらっしゃるのかもしれない。でも、たとえそうだったとしても、鬼とかケルベロスとかとつけられるのを許した中臣さんは心が広い。

こう云うオニの命名の仕方は想定外だった。目から鱗である。由来が分かりにくい紛らわしいネーミングをすんなよとは思いつつも、でもちょっと愉しい。この由来ならば、納得です。エスプリが効いている。是非残して欲しい和名だよ(註7)。
もしかしたら、他にもコレ的イレギュラーな由来のオニ昆虫もいるかもしれないなあ…。
たぶんいないとは思うけど(笑)。

 
                    おしまい

 
追伸
他人の画像を借りまくりの回になった。自分の画像ってオニベニシタバとオニミスジしかないもんなあ…。ちょっと気が引ける。とにかく、画像を御使用させて戴きました方々、有り難う御座います。礼 m(__)m

今回は頭からケツに順には書かなかった。バラバラに書いて、あとから繋ぎ合わせた。最初に前回の元になる文章を入れて、植物から書き始め、次に海の生物の部分を膨らませていった。あとはオニオサムシの草稿、ついで鳥、戻って哺乳類、クモと書き、オニヤンマからオニツヤクワガタまでを一気に書いた。でもってミドリオニカミキリ、オニホソコバネカミキリを続けて書き、オニミスジを途中に挿入した。で、オニオサムシの稿を完成させた。そこからまた戻ってオニササキリモドキ、オニヒメタニガワカゲロウの項を書いた。してからに、オニクロナガの事とその前にある今回の主題である物言い(文句)を置いた。そして、最後にオニユミアシからゴミムシダマシの項までを順不同でバラバラに書いた。
だから、所々でトーンが微妙に変わっている。こういう書き方は珠にするけど、こごまで継ぎはぎだらけで書いたのは初めてだ。飽きれば別のところを書けばいいので、お陰で長文のわりにはあんまし苦痛ではなかった。でもそのせいで、ウンザリするくらいの長い文章になってしまったけどね。最後まで読んで下さった方には、ただただ感謝である。

 
(註1)バラクーダは老魚なると群れない

当時、先輩インストラクターにはそう聞かされていたのだが、これは間違い。単独行動の奴と群れている奴は別種なんだとさ。単独でいるデカイのがオニカマスで、群れているのはオオカマスだという。大型カマス類には何種類かあるのだが、ダイバーの間では全部ひっくるめてバラクーダと呼ばれている。だから種類が混同されているのだ。ブラックフィンバラクーダとかも、学術的には別種なんだろね。

 
(註2)ハカイダー
(出典『プレミアム バンダイ』)

 
特撮番組『人造人間キカイダー』及び『キカイダー01』に登場した悪役キャラクター。ダーティヒーローだ。
フィギュア、欲しいなあ…。

 
(註3)シオヤアブ
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
双翅目ムシヒキアブ科。体長23~30mm。
時にスズメバチをも襲う。オニヤンマも襲われることがあるみたい。返り討ちにあうことも多いそうだけど。

 
(註4)タテヅノマルバネクワガタ
(出典『気ままに昆虫採集』)

 
以前はチャイロマルバネクワガタ以外の全種全亜種が「タテヅノマルバネクワガタ」として、ひと括りにされていた。
現在はアマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、オキナワマルバネクワガタ、ヤエヤママルバネクワガタ、ヨナグニマルバネクワガタの5種類に分けられている。
マルバネクワガタは見たことがない。蝶屋だから夜は虫採りなんかしなかったのだ。そういえば、ヨナグニマルバネは禁止になる前年に与那国島にいて、しかもベストシーズンだった。それ狙いの人も沢山来ていた。今思うと、毎晩呑んだくれてる場合じゃなかったよ。
wikipediaには「今日知られる分類は水沼哲郎氏の熱心な研究によるところが大きい。」とあった。水沼さんは優しくて飄々としたお爺ちゃんだけど、やっぱスゴい人なんだね。

 
(註5)他のユミアシゴミムシダマシとそう変わらない

一見したところ、他の大型ユミアシゴミムシダマシとあまり変わらない。体長もそれほど大きな差はない。

 
【オオユミアシゴミムシダマシ】
(出典『こんなものを見た』)

 
体長21.8~27.9㎜。
そういえば初めてユミアシゴミムシダマシを採ったのは小学生の頃で、場所は長居公園の臨南寺だった。大阪のド真ん中だけど、まだ小規模ながら古い社寺林が残っていた時代だ。一部は原始に近い照葉樹林で、そこにはオオゴキブリやマイマイカブリ、オオゴミムシとかオオスナハラゴミムシなどの大型ゴミムシ、そういえばオオゴモクムシなんかもいた。オニユミアシは古くて豊かな照葉樹林にいるみたいだから、もしかしたらアレはオニユミアシだったりしてね。残念ながら標本は残っていないから確かめようがないけれど。

 
【アマミユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長23.8~29.3㎜。
前述したが、オニユミアシは22.0~31.2㎜。つまり大きさはオニユミアシ、アマミユミアシ、オオユミアシの順となる。

 
(註6)ケルベロス
(出典『世界の神話・伝説』)

 
ギリシア神話に登場する犬の怪物。冥界の入口を守護する番犬で、三つの首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬とされる。また、文献によって多少の差異はあるが、三つ首プラス竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれることが多い。
学名はラテン語なので、読み方はケルベルス。英語では読みはサーベラスとなる。

 
(註7)是非、残して欲しい和名だよ
実際、消えてゆく和名も多い。特にオサムシは亜種名にも和名をつける慣習があるからだ。オニクロナガも今ではキュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種と表記される機会が増えている。これは日本産オサムシ図説(井村・水沢, 2013)で、この亜種独自の和名を見直し「(種和名+主要分布地域名)亜種」という方式で和名を記載することが提唱されたからだ。この方式は従来方式の和名が「種を指すのか亜種を指すのか明確でない」という見解からだろう。確かに一見合理的ではある。
しかし、分布地域名の表記をなるべく正確かつ統一的なものしようとするあまり、やたらと長くなっているものが数多く見受けられるのも事実だ。従来の方式ならば、表記も喋るのも短くて済む。オニクロナガで済むところを、一々キュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種なんて言わなきゃならないなんて、どっちが合理的なのかワカンナイぞ。だいち、今は旧名と新名が混ざくりあって、益々何が何だかワカンなくなってて、かえって混乱を引き起こしてねぇか❓また、従来の和名は紀伊とか阿波なとの旧国名や地域名といった歴史ある地名を冠したものが多く、山河による地理的隔離により亜種分化をしてきたオサムシの和名に相応しいものともなっていた。しかし、それを継承しなかった新名もあり、亜種分化の歴史を掴みずらくしてしまったケースもある。オサムシはその形態よりも地方名がついたものが多い。これは見てくれが似たようなのばっかだからそうなったのだろうが、面白いし、かえって合理的でもある。言葉一つで何処に分布する種なのか解るもんね。形態を必死こいて表そうとして、無機質でクソ長ったらしくなった和名よか、余程こちらの方がいいや。
それとは関係ないけど中臣さんの名前を冠したらしきオサムシが、オニクロナガが以外にもう1つある。チュウゴククロナガオサムシ(キュウシュウクロナガオサムシ中国地方亜種)だ。
学名は Carabus (L.) kyushuensis nakatomii 。もしかしたら、オニクロナガも中臣さんに献じようと思ったが、既に nakatomii を使用しているのでアダ名を使ったのかもしれない。

 

『特別展 昆虫』に行ってきた

 

先日、大阪市自然史博物館で開催されている『特別展 昆虫』に行ってきた。

   

 
網とカブトムシ(アクタエオンゾウカブト)を持って嬉しそうにしてるのは、俳優で虫大好きの香川さんだ。
これも彼の昆活の一環なのだろう。虫はマイナーだから、啓蒙活動ガンガンやってね。
よく彼を批判する虫屋がいるけど、賛成できない。たしかに虫屋としては三流かもしんないけど、香川さんの熱い気持ちはよく解る。言い方は悪いけど、こういう広告塔をやってくれる人には素直に感謝すべきだと思う。我ら虫屋が少しでも市民権を得る為には、こういった有名人がいた方がいい。大局が見えてない細かい事をゴチャゴチャ言うのは、虫屋の最も悪い性向だ。

 

 
この企画は去年、東京で大盛況だったから気になっていたし(44万人以上の動員があったらしい)、今月末には終わってしまうので、博物館の図書室で調べものをするついでに行ってみた。

入口はこんな感じ。

 

 
スタッフに確認してみたら、中で写真を撮るのは基本的にはOKみたい。ナイスだね。何でもかんでも禁止にしたがる最近の風潮からすれば素晴らしいよ。
但し、映像はダメとのこと。たぶん著作権の問題があるからだろう。そこは致し方なかろう。

 

 
入っていきなり、ミツバチの巨大模型があった。
そこそこリアルで、中々良くできてると思う。
こういうのは結構好き。もし本当にこれくらいの大きさのミツバチがいたら、どう戦ってやろうかとマジで考えるのは楽しい。ワシとがっぷり四つで戦っている様を想像したら、何だかo(^o^)oワクワクしてきたよ。
あっ、こんな事、思う人はあんましいないか…❓
脳ミソの基本構造がお子チャマ仕様なのかもしんない。

 

 
日本の国蝶であり、世界最大級のタテハチョウとも言われるオオムラサキだ。
ワタクシの守護蝶でもあるので、個人的には親しみを込めて「ムラさん」と呼んでいる。
でも、この模型はミツバチと比べてクオリティーが低い。何かオモチャ的で多々不満がある。
オモチャとは全然戦う気は起きんわい(=`ェ´=)。回し蹴りで一発粉砕じゃ❗

まず羽の質感が全然表せてない。こんなベタで薄い紫色、ちっとも美しくないわい。ニセモンだ。ちょっと虫を知ってる子供が見ても同感じゃろう。
本来は構造色なんだから、角度によって色が変わるくらいやれよなー。今の技術なら、そう難しくはなくなくねぇか❓

目も死んでる。実物はもっと透明感のある黄色だ。せめてガラス玉とかにしろよなー(・ε・` )

胴体のふさふさの毛も無い。ツルッツルッだわさ。
こんなんだったら巨大化する意味あんのかよ。細かなところをリアルに再現してこそ、「わっ、こうなってんだね。」と解り、驚きと発見があるのだ。そこにこそ、巨大化する意味があるんじゃないのかね。子供たちがそれを自由に触れるようにすれば、なお面白いじゃないか。

 

 
ミンミンゼミじゃ。
緑色の質感が本物と比べてくすんでいるが、コヤツなら充分戦える。
後ろから羽交い締めにして、(ノ-_-)ノ~┻━┻ おりゃーと後ろに倒してやったら、すかさずマシンガンキックの嵐じゃ。

 

 
言わずと知れたオオクワガタ様じゃよ。
デカイと怪獣感増すなあ。ウルトラマンの怪獣アントラーズを思い出したよ。
勿論、コヤツなら戦える。相手にとって不足なしじゃ。

先ずは正面から睨み合い、互いの出方を探りあって円を描くように動く。儀式の如き前哨戦だ。そして次の瞬間、グワシャ❗互いの両手をガッツリ組み合っての力競べじゃ。
(#`皿´)ヌオーッ、ガガカ…、ギギギ…。均衡のなかで、彼奴の最大の武器である屈強な大顎がカチカチ鳴りながらワイの頭部へとググッと迫ってくる。
(|| ゜Д゜)マズイ、ピンチじゃけぇ。だが気持ちは負けてない。どころかコチラも頭を近づけ、おもいきしバチコーン💥、パチキ(頭突き)をカマしてやる。
ダアリャーッ、両者飛び退くように離れる。
( ̄~ ̄;)うぬ~、力勝負では分が悪い。ここはスピード勝負じゃ❗蝶のように舞い、蜂のように刺ーすっ❗軽(かろ)やかなステップで、左右に細かに動きながら、右から左からと千手観音の如くパンチとチョップを、アチョー、アタタタタアーと連続で繰り出す。御陀仏せえや。
(@_@;)痛ってぇ━━━❗❗
わちゃΣ(゜Д゜)、我が手を見ると血だらけじゃないか。お前、硬いよー。反則なくらい硬いよー(T-T)。
クソッ、卑怯な程の防護プロテクターじゃねえか。
ならばコチラも反則の火焔放射器じゃ❗
🔥ゴオーッ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψほれほれ~、業火に焼かれるがよいわ。そのまま黒焦げになってしまえ、(*≧∀≦*)ケケケケケケケ…。
しかし、オオクワガタの奴、びくともしない。その黒い甲冑様なもの、熱にも強いのか…。手強い。

その後も、拮抗した攻防は続いた。
そのなかで見えてきた。弱点は足だ❗オオクワガタの脚は体のわりには細い。そこを攻めてバランスを崩させれば勝機はある。でもコイツ、何でオオクワガタなのに立ってるの❓ふつう立ってないっしょ。
この際、細かい事はいい。死ねばもろとも、攻撃をかいくぐって果敢に内側に入り、スライディングして足元をすくう。
ぐらり。バランスを崩して前のめりに倒れてくる。迫って来るそれを巧みに避(よ)け、グワシャーン❗倒れたところをすかさずマウント。馬乗りになって、コレでもかコレでもかと雨あられの如く死ぬほど打撃を加えてやった。
(* ̄○ ̄)ハー、ハー、ゼェー、ゼェー。タコ殴りにしてやったワイ。ざまぁー見さらせ。
奴は、やがて意識を喪い、グッタリとなった。
落ちたな。しゃあー❗、拳を天に突き上げて雄叫びを上げる。イガちゃん、\(^o^)/大勝利ぃ~。おどれら、みんな死ねや~。

何をやっとるんじゃ( ・◇・)❓
妄想が酷い。我ながら、やってる事がアホ過ぎる。フザけるにも程がある。

 

 
ツノゼミだ。
コチラはガラスケースに入った模型で巨大ではない。
しかし、倍率をからすればオオクワガタやミンミンゼミと変わらないかもしれない。それだけ実際の大きさは小さい虫だってことだ。
まあ、コヤツがたとえ更に巨大化したとしても、楽勝で勝てそうだけどね。このワケのワカラン、何に役立っているのかも不明な飾りを掴んで捩じ切ってやれば、闘争心も萎えて大人しくなるじゃろう。勝負有りじゃ。
しかし、まだ予断は許せない。コヤツの意味不明の役割の頭部の飾りから💥ブシャーと毒液が飛び散り、目潰しを喰らうやもしれぬ。
(・┰・)アカン。まだ妄想暴走列車は走り続けとるやないけー。

 

 
この写真はそうでもないけど、平日のわりには結構人が多い。スタッフの数も多い。
正直、美術館じゃないんだから、そんなにスタッフいるか❓とは思う。

 

 
あっ、最近話題の野村ホイホイの実物だ。
画期的なトラップとして、とみに評価が高い。
けど、甲虫や蜂などには良いだろうが、鱗翅類のチョウやガには使えないよなあ…。おそらく、コレだと羽がボロボロになっちまうだろう。何か鱗翅類でも使えるような改造方法はないかえ❓

 

 
コレは蝶だが、甲虫とか他にも標本はそこそこあった。
でも、東京の時よか標本の出展数は減っているらしい。規模が小さくなってるとも聞いてるのは、そのせいかな❓
あんまり詳しいことは知らないけど、東京では標本を供出した人に対して一切ギャラが支払われなかったようだ。当然香川さんにはギャラが支払われているだろう。なのに標本を貸した人間はノーギャラというのはオカシイと思った人たちが何人かいたようだ。そのせいで、大阪では標本を貸す人がだいぶと減ったと聞いている。あくまでもまた聞きの噂話だから間違ってたらゴメンナサイ。話半分程度で聞いて下さればエエかと存じます。
まあ、この業界はアマチュア精神の善意で成り立っているから、標本を無料で提供するのが慣わしではある。しかし、コレは官の大阪市自然史博物館独自のオリジナルの企画ではないようだから、民間の企業の金儲けのイヴェントだろう。主催者の欄に読売新聞社と関西テレビ放送とあるからね。つまり基本的には営利目的だ。ならば、主催者側はギャラを払って然るべきだと思う。

結構、面白かったけど、入場料は¥1400は、ちょっと高いよね。そんなにボルなら、スタッフを削ってでも、標本を提供した人にギャラを支払うのが筋だと思うな。

昨日、酔っ払ってここまで書いたところで力尽きた。
でも朝起きて酔いも醒めると、果たしてここまで勝手な憶測を書いていいものかと考え直した。
このイヴェントには一ミリたりとも全く関わっていないから、裏事情とか本当の事は全く知らないのだ。
だから、何もわかっちゃいない人間の戯れ言だと思って読み流してけれ。
何かトーンダウンのグダグダの終わり方でスンマセン。

 
                   おしまい

  
追伸
今回も青春18切符の回と同じく、当初は写真だけ並べてサラッと最後にコメントを書いて終わる筈だった。
しかし、戦うとか妄想おふざけモードになってから止まらんくなった。おまけに事情を何も知らないのに噛みついてる。ホント、悪い癖だよ。

 

昆虫スゴいぜ! お正月スペシャル

 
(出展 NHK Eテレ『昆虫スゴいぜ!』。以下、全部同番組より)

 
なんと、元旦から香川さんの「昆虫スゴいぜ!」が見られるとは思わなかった。しかも特番だぜ。この番組もかなり世間的に認識されつつあるよね。Eテレ、凄いぜ。こんなマニアックなジャンルを、よくぞここまで引っ張ってきてくれたなと思う。虫好きとしては、ただ、ただ、Eテレと香川さんには感謝だよ。
しかも、バカみたいに内容が面白い。教育番組というよりも、もう完全なバラエティだ。大物俳優だからこそ許されるがゆえの、その自由奔放なハチャメチャ振りが突き抜けている。誰も香川さんの熱き思いと暴走を止められないのが矢鱈と可笑しいのだ。

正直、虫好きには市民権が無い。誰も虫の事なんて詳しくは知らないし、興味も無い。それどころか忌み嫌われ、毛嫌いされる存在だ。だからこそ、尚さら照之は過剰なまでに奮闘するのである。今まで培ってきた俳優人生が瓦解しかねないその傾(かぶ)きっぷりと狂気に、香川さん大丈夫かあ?と時々心配せずにはおられないよ。

番組をやるキッカケは、2016年の春に放送されたTBSの『櫻井・有吉のTHE夜会』。
ここで、今後どう云う事をやりたいですか?云々的なことを訊かれた香川さんは、Eテレで昆虫番組をやりたいと答えて、突然火がついたように熱く語り出すのである。

 

 
『草むらを見るとムラムラする』

この番組、たまたま偶然に見てたんだけど、何を言い出すんだと思った。

 

 
芸能界では哀川翔が虫好きとして有名だけど、この時はまだ香川さんも虫好きだとは知らなかった。

 

 
そして、カマキリの着ぐるみでポーズを決める照之。
とはいえ、この着ぐるみは漫画チックで気に入らなかったんだよね。彼の求めるのはリアルなカマキリなのだ。香川さんは、そういう科学を無視した虫に対する世間の無知ぶりにも憤慨しておられるのだ。

右上のテロップを見ると、最初は『昆虫サンキュー』ってタイトルを予定してたんだね。
Eテレがタイトルを変更したのは正解だったと思う。虫屋(昆虫好きのことをそう呼ぶ)にとって、昆虫サンキューという気持ちは常に底辺にある。いつも色々と楽しませてくれて、虫さんたちアリガトねという気持ちだ。でも我々にとってはそんなの当たり前で、わざわざ前面に出してまで言うほどの事じゃない。しかも、そういった昆虫愛を一般人が理解できるとは思えない。
それよりも昆虫たちの多種多様な姿、形やその生態に驚かされ、心動かされる事の方が多い。何年経っても新たにビックリする事、しばしばなのである。ホントに虫たちはスゴいのである。だから虫好きにとって、昆虫スゴいぜ!の方が尊敬と畏敬の念が籠っているタイトルだと言えよう。

しかし、この段階では香川照之のただのおフザけだとばかり思っていた。NHKが民放の一番組の冗談まがいの問いかけを本気にするとは思えないし、たとえ作ることになったとしても香川本人が出演するとは考えられなかったからだ。演技派俳優として確固たる地位を築いている役者が、常時昆虫の被り物をしてTV番組に出演するだなんて普通では有り得ない。だいち本人がよくても、そんなの事務所が許さないだろう。
けど、たまたま番組を観てたNHKのディレクターが本気にしちゃってオファーをかけた。それも驚きだが、何と有ろうことか香川本人が快諾しちゃったのである。きっと事務所の人は反対しただろうなあ…。でも、照之が迸(ほとばし)る熱情をぶつけて強硬に押し通したんだろなあ…。相手がヘトヘトになるまで昆虫愛を語ったのが目に浮かぶよ。

そんな香川照之の『昆虫スゴいぜ!』のお正月スペシャルがコチラ。

 

 
番組冒頭は年頭の挨拶から始まるのだが、その前に左上から妙なオッサンの絵が出てきて、変な感じでびよんびよん動く。番組とは全く関係ないオッサンだと思うし、意味不明なのだが、コレでもう心をワシ掴みにされてしまった。

『皆さん、明けましておめでとうございます。香川照之です。』
厳かに始まったかと思いきや、即ワケのワカンナイ思いの丈を力強くブチまける香川先生。

『今年も虫を採って、採って。昆虫、昆虫、また昆虫。ずっと昆虫を採り続ける、昆虫スゴいぜ!の時間がやって参りましたあ。』

何か今年も凄い意気込みだぞ( ; ゜Д゜)

そして、今回のテーマの発表。
その場でマジックでサラサラと絵を書く照之。

 

 
平成最後の先生作。オオクワガタ。
どうやらクワガタムシの成虫が今回のターゲットらしい。
香川さん、けっこう絵が上手い。しかも描写が正確だ。そこが、彼が何ちゃって昆虫好きの人ではないことを証明している。ホンマもんの虫好きなのだ。

 

 
『さあ、何てつけましょうかね、名前を。』
って、クワガタに名前つけるんかぁーい❗❗

 

 
『平成の2文字を入れまして、平鍬 成(ひらくわ せい)。』

 

 
『こんにちわー、平鍬 成です。』

(;゜∀゜)えっ、平泉 成さんのモノマネですか❓
しかも結構似てる。笑てまうわ。

 

 
『平泉 成の弟です。』

Σ( ̄ロ ̄lll)弟なんかいっ❗❗

 

 
で、上の画像にアフレコが入る。平鍬 成は、俳優の平泉 成的な声で喋るんだそうである。
香川さん、のっけから思いっきりフザけてんなあ。しかも、ギンギンのノリノリだよ。

ここで漸くお決まりのオープニング曲が流れ始める。
昭和後半の名曲、クリキン(註1)の『大都会』だ。
もう堪んないよね、この選曲。一挙に期待値がハネ上がる。

 

 
遠くから走ってくる照之。
毎度のカット割り無し、長回しのワン・ショットだ。
先生、このワン・ショットにいたく拘っているのだ。映画人を自称する男の面目躍如だぜ。

で、やっとこさのタイトルコール。

 

 
魂の叫びで、タイトルを読み上げる(冒頭のポーズとってる写真がソレね)。
サブタイトルは『カマキリ先生 冬の森で初暴れ』。
今回も暴れるつもりなんだね、照之さん。

ここで『一富士、二鷹、三カマキリ❗』など、また戯れ言をのたまうが割愛。

えー、雑木林で朽木を割ってクワガタの成虫を探すのが今回のミッションでごわす。

 

 
でっかいカマキリがクワガタを探してると思ったら、不覚にもプッと吹き出してしまった。もう教育番組ではなく、完全にお笑い番組を見てる感覚だ。

斧を渡され、はしゃぐ先生。

 

 
コーエン兄弟だのベニチオ・デル・トロだの(註2)細かい小ネタもカマしてくる。

『すげー!かわいい!』

 

 
さっそくクワガタの幼虫発見。
バックのBGMは、クィーンの「Born to the love you」。(^_^;)苦笑い。でも、その選曲嫌いじゃない。

  

 
で、香川さん、スタッフに向かって言う。

 

 
『名前はわかっているだろうな。』

 

 
『おはようございます。冬眠から覚めた平小鍬 成です。ヨロシクお願いします。』

又しても声色を使っての平泉 成ネタである。ボケまくりやがな。
だが、すかさずスタッフに、今回は幼虫じゃなくて成虫がターゲットですよね云々とツッコまれる照之。

ここで、ナゼに香川先生が成虫に拘るのかということで、未公開シーンが挿入される。

 

 
先生がホワイトボードを使って、虫の講義をするというコーナーである。題字も香川さん作で、文字の先が跗節(甲虫等の爪先部分の節のこと)になっているところが何とも心憎い。

それにしても、サブタイトルが「クワガタと人生」って…(笑)。
これは初回の「トノサマバッタ」の回の時に収録したものみたいだが、永らく倉庫に眠っていたという。講義が長すぎて到底おさまりきらずに、全部カットになったらしい。

 

 
自説を熱く語る照之。クワガタの人生は「人間の生き方に通底する」とおっしゃる。
オオクワガタやコクワガタなど横から見ると角が平べったいクワガタは越冬するが、ノコギリクワガタやミヤマクワガタなどの湾曲した角を持つものは越冬できないという指摘だ。香川さん、中々鋭い。
そして、そこから論理が飛躍する。ノコギリクワガタやミヤマクワガタは樹液やメスを争って激しく闘うが、オオクワガタやコクワガタは比較的おとなしい。それが両者の寿命の長短の原因であると、センセは考えた。ゆえに、オオクワやコクワ達のように体力を温存して生きようではないかというところに繋がり、そこが人間の生き方にも通底するというワケである。ようするにセンセは、謙虚な生き方をすることが、長生きにつながると言いたいワケだね。

映像が流れ終えたあと、スタッフに文句を言う照之。

 

 
『今、やっとお目見えだよ。どんだけ待ったか。クワガタは越冬してもいいけど、俺のコーナーは越冬させる必要はないんだよ。』
笑いのジャブを繰り出してくる。

再びコクワの幼虫、発見。

 

 
『まぶしいよ 助けてくれよ~』

懲りずに又も平泉 成のモノマネをカマしてくる。コッチも又、性懲りもなく笑ってしまう。

しかし、この後探しまくるも成虫は見つからない。次第に壊れてゆく照之。
形が似てるからって、ついに割った朽木を持ってニッコリ笑い、クワガタだと言い始める始末。

 

 
そして次の瞬間、死んだ目のモノ凄い不機嫌な形相になる。

 

 
あらあら、完全に心が折れちゃったよ、香川さん。
その豹変振りに笑ったね。さすが名優である。 

結局、幼虫は出てきても成虫はオオクワガタどころかコクワガタ一匹さえ出てこなかった。

ハッキリ言って香川さんは知識は豊富だけども、今のところ虫捕りは下手ッピーだ。でも、そこが逆に面白い。必死なところが笑えるんであって、ものすごく上手かったりなんかしたら興ざめだ。それに、中々捕まえられないから昆虫採集は難しくて面白いのである。そこが視聴者に伝わらなくては、昆虫採集復権の啓蒙活動にはならない。たかが虫、されど虫なのだ。
因みに、香川さんの事を今のところ下手と書いたのは、将来的には上手くなる可能性はあるって事ね。なぜなら、情熱があって頭が良い人だからである。何たって香川さんは東大卒なのだ。長くなるから詳しくは書かないけど、頭を使わないと虫は採れない。知識と経験、工夫に勘。気力に体力、運動神経に判断力etc…。虫採りには、ありとあらゆる能力が必要とされるのである。

ロケはまだまだ終わらない。

 

 
あとはスタジオ収録すればいい内容なのに、ナゼか番組は野外で続く。
その他のお題は、こだわりタイトルコール、ガチがうんだ奇跡、ばっさりカット未公開、カマキリ先生からのクレーム、昆虫2ショット、捕獲ウラ話、実験ウラ話、2019 カマキリ準備中と盛りだくさんだ。

先ずは実験ウラ話。

実験とは、照之自らの肉体を使って昆虫の能力を検証するというコーナーである。
1回目はトノサマバッタだったが、ムチャクチャ面白いので、次回、稿を改めて書きます。

2回目はモンシロチョウ。

 

 
4mの羽を身につけて羽ばたこうとするも、パワーが全然足んないし、風の抵抗が大きくて羽を全く動かせなかった。宙吊りにされたまま、照之は『ちょうちょ、スゴいぜ!』と叫ぶのであった。

3回目はオニヤンマ。

 

 
『エイドリアーン❗』

もちろんBGMは『ロッキー』だ。
ヤンマは空中で飛んでくる獲物を捕らえるという事で、又してもクレーンで宙吊りにされ、バンバンに打ち込まれるバレーボールをキャッチすると云う実験だ。さんざんぱらボールを打ち込まれて、やっとキャッチしてのエイドリアーン❗なのである。

4回目はクマバチ。

 

 
クマバチは1秒間に304回も羽を羽ばたかせるらしい。だからこそ、ホバリングできるんだね。しかし、センセは1秒間に3回のみ。やっぱ、昆虫スゴいぜ。

で、一番最近の5回目がハンミョウ。

 

 
ハンミョウはメチャンコ走るのが速い。1秒間に13回も手足を動かして走るそうである。
センセはその秘密を足の長さにあると睨んだ。だからがゆえの竹馬。でも、丸っきしダメ。そんなもん、小学生でも解るわい!と思うのだが、お笑い番組なんだから、それでいいのである。

続けて未公開のニホンミツバチの熱殺蜂球もあったのだが、期待したのに熱湯風呂に落ちなかったので割愛。

因みに、この実験も含めて撮影は4日間もかけているらしい。香川さんが喋りまくりだから、未公開の映像も増えるワケだ。

 

 
お次は「こだわりのタイトルコール」だが、既に言及しているので割愛して、「ガチがうんだ奇跡」のコーナー。
マレーシアで、最悪だった天気予報が奇跡的にハズレてロケができたという話。

 

 
また、奇跡的にプロの昆虫ハンターの爺さんにも会えたという話で盛り上がる。放送当時は、どうせヤラセで仕込んでんだろうなと思っていたが、そうではないらしい。爺さんに会ったのは本当に偶然だったようだ。
この爺さんには4年前と8年前に会っている。小さなビニール袋を網がわりに竿の先に付けて虫採りをするんだけど、そんな粗末な道具なのに信じられないくらいにメチャクチャ虫採りが上手いんだよね。

(・。・;ん❗❓、ちょっと待てよ。コレって、爺さんの網が普通の網になってないかい❓

 

 
別の画像で確認してみたら、ありゃま(;・ω・)、やっぱり普通の網になってるぞ。この何年間で、爺さんにいったい何が起こったのだ❓誰かがプレゼントしたのかなあ❓そういえば爺さん、60年間ずうっと虫採りをしてると言ってたなあ…。ならば普通の網にチェンジする機会はいくらでもあった筈だ。どんな心境の変化があったのだろう❓いずれにせよ、きっと匠の虫ゲット率が益々上がってるに違いないね。

爺さんは、結構いい人です。自分はガイドは誰も雇ったことはないけど、頼むならこの爺さんがお薦めかな。他はガイド料をフッ掛けてきたり、口ばっかで全然虫を見つけられないとか胡散臭い奴が多いとよく聞く。自分もそういう印象を持っている。

そして、「こだわりの2ショット」のコーナー。
ここで再び照之の狂気が噴き出す。

深夜午前0時から5時の放送休止の時間帯に、自分の撮った貴重な昆虫ツーショット写真を流し続けろという無茶な事を要求しだした。でも、コイツら貴重って程のもんでもないんだよね(笑)。

 

 
ゴジラVSメカゴジラになぞらえての力説である。
論理の正当性をドえらいとっから引っ張ってくるなあ。

  

 
オープニングはオニヤンマだ。

 

 
そしてギンヤンマの画像へと移り。

 

 
次にラジャ・ブルック。マレーシアの国蝶、アカエリトリバネアゲハだ。

この順番で映像を流し、フイニッシュはこのお二方で締めることを要望。

 

 
そう、叶姉妹さまである。
センセ自らが二人の撮影に赴くという気合いの入れようだ。

 

 
見たいなあ、香川さんが叶姉妹を撮影してるとこ。けっこうスゴい絵になりそうだ。o(^o^)oワクワクするよ。コレ、マジで実現してくんないかなあ。
視聴率をバッチリとれると豪語してる事だし、NHKさん、流してあげたら❓

ここで再び「バッサリ未公開」のコーナー。

 

 
どうやら視聴者の質問コーナーみたい。
そういえば、茶色カマキリのヴァージョンもあったんだよね。

 

 
先生は、好きな昆虫は何ですか?の問いにエンジンがかかる。

そこで少年の頃の1975年と現在の2018年のベストスリーを発表すると宣言。
しかし、勢いで4番目を書こうとしたところで、スタッフに『あれっ?、ベストスリーでは?』とツッコまれる。

 

 
『10位くらいまで書くつもりではいるんだけどね※◆☆#£グジュグジュグジュ…』

と口を尖らせる香川先生。
これで照之の暴走にスイッチが入った。

2018年のベスト5は以下のとおり。

 

 
ベスト3のカマキリ、オニヤンマ、クマゼミは解る。カマキリは一番好きだと公言しているし、オニヤンマとクマゼミは以前にボディーが黒くてデカイから好きだと言ってたから、これも解る。だが、モンキアゲハとキリギリスが今一つ理解に苦しむ。

キリギリスは和の風情があるからだそうだ。たしかに鳴き声は雅(みやび)だから和に通ずるところはある。
問題はモンキアゲハである。羽がキレイだからと云うのが理由らしいが、モンキアゲハはアゲハの中では取り立てて綺麗な部類じゃない。クマゼミとかオニヤンマとか黒いのが好きだとおっしゃていたから、それだからかな❓モンキアゲハも基本的には黒いもんね。
💡そっか、ひらめいた。それにクマゼミにしろモンキアゲハにしろ、昔は関東には殆んどいなかったからじゃないか❓おまけにどちらも日本ではそのグループの最大種であり、デカイ。謂わばモンキアゲハも憧れの昆虫だったのではないかな❓それが根底にあるのかもしれない。
もっとも最近は地球温暖化の影響で、モンキアゲハもクマゼミも関東でも見られるようになったらしいけどさ。その辺のことを、まだ香川さんは知らないんだろね。

1975年、当時10歳の時のベスト5は以下のとおり。

1位 カマキリ

2位 エゾゼミ

3位 クマゼミ

4位 ミヤマクワガタ

5位 タマムシ

 
この辺は子供に人気ありそうで解りやすい。
しかし、たぶんエゾゼミを知っている人はそう多くはないだろう。ものごっつスタイリッシュでカッコいいセミで、香川さんもこのセミについては熱く語っていた。自分も、このセミには最大級に憧れていた。なのに一般的に知られていないのは、あまり人の目にふれる事のないセミだからなのだ。山地性で、そこそこ高い山にいる。しかも木の高いところで鳴いていることが多い。おまけに何処で鳴いているのかが、よくワカンナイ。音の出所が特定しにくいのだ。必死に目を凝らしてもナゼか見つけられない。

 

 
何か色が悪いね。赤っぽいからアカエゾゼミかと思ったよ。実物はもっと黄色っぽくてカッコイイです。

これで終わりかと思いきや、暴走機関車はまだ止まらない。あろうことか2040年のベスト5まで予想しだした。20年先とは、もう無茶苦茶である。意味が全然ワカラナイ。

 

 
でも内容はカットされていた。きっと長いからだ。このベストスリーの件(くだり)だけで、何と40分も喋っていたそうである。

ホワイトボードを見る限り、次の5つが選出されていたようだ。

1位 タマムシ

2位 モルフォチョウ

3位 アカエリトリバネアゲハ

4位 オウゴンオニクワガタ

5位 ケンランカマキリ

 
何とカマキリが1位から陥落してる。
でも、5位に外国のカマキリが入っている。外人の姉ちゃんに浮気ですか?、香川しゃん。
因みにモルフォチョウは南米にいる世界屈指の美麗蝶。オウゴンオニクワガタは黄金色のクワガタで、ケンランカマキリは豪華絢爛な色鮮やかなカマキリだ。これってもしかしたら、香川さんのもう一回マレーシアに連れてけっていうアピールなんじゃないか❓
オウゴンオニもケンランカマキリもアカエリもマレーシアにいる。あのロケ地の場所にもいる。タマムシだって日本のタマムシじゃなくて、東南アジアにいるもっと大型でキラキラした奴かもしれぬ。おまけに大物コーカサスカブトだって生息している。考えてみれば、あの時は雨季でロクな虫が見つからなかったのである。リベンジの画策は有り得なくはない。だとしたら香川さん、かなり頭脳的プレーである。

最後は「2019 カマキリ準備中」のコーナー。

何やらスタッフにカマキリを大量に捕獲させて飼育しているらしい。内容は明らかにされてないけど、どうやらカマキリの或る生態を確かめたいようだ。これが次回の放送になるのかな❓

番組は、ここで終了。

 
とにかく今回も笑わせて戴きました。
でも実を云うと、初回が一番面白かったんだよね。それはもう衝撃的だった。
そうだ、最後に一応今まで放送された各回のテーマを並べておこう。コレを見て、どうしても視聴したい人は、NHKオンデマンドとかで見られるんじゃないかな。

 
1時限目 トノサマバッタ
2時限目 モンシロチョウ
特別編  出動!タガメ捜査一課(タガメ)
3時限目 オニヤンマ
特別編  カマキリ先生☆マレーシアへ行く
4時限目 クマバチ
特別編  実録!完全変態(カブトムシ・オオムラサキ)
5時限目 ハンミョウ

 
もう5時限目かあ…。
Σ( ̄ロ ̄lll)えーっ、ってことは、もしかして次の6時限目で番組終了❗❓
学校の授業は6時限目までだもんね。有り得るなあ…。やだなー、それ。タマムシとかミヤマカラスアゲハとかダイコクコガネとか取り上げるべき昆虫がまだいるでしょがあ❗❗
でも香川さん、ボクシングマニアでもあるんだよな。
今度は『ボクシング凄いぜ!』とかいうマニアックなボクシング技術を解説する新番組になったりして…。

 
                 おしまい

 
追伸
残念ながら「捕獲ウラ話」と「カマキリ先生からのクレーム」はカットのようです。近い将来、そのうち未公開映像として放送されることを祈りましょう。

この文章は、正月の二日にざあーっと下書きを書いた。その時点では長い文章になる予定ではなかった。しかし、本格的に手を入れてるうちにどんどん長くなり、イヤになって一度頓挫。再び気をとり直して何とか書き終えたのがこの稿である。でも結局、当初の5倍以上の長さになってしまったなりよ。正直、ウンザリだ。酒をしこたま飲んでる時に文章を書き始めるとロクな事がない。
でも続編を書くと宣言したから、書く予定です。だって、初回のトノサマバッタ編が一番面白いんだもん。

(註1)クリキン
クリスタルキングの事。1970年代後半から80年代にかけて活躍したツインボーカルのバンド。『大都会(1979年)』『蜃気楼(1980年)』、アニメ「北斗の拳」の主題歌『愛をとり戻せ!!(1984年)』などのヒット曲がある。

(註2)コーエン兄弟だのベニチオ・デル・トロだの
アメリカの兄弟映画監督と俳優。コーエン兄弟の映画で、斧といえば『フィーゴ』かなあ…。観てないけど『バスターのバラード』も斧が出てくるみたいだ。この正月スペシャルの撮影時期を考えると、香川さんが後者の映画に影響された可能性の方が高い。
デル・トロと斧との関係性はよくワカラナイ。香川さん的には如何にも持っていそうだからと名前を出したのかなあ…。因みにデル・トロはコーエン兄弟の映画に出演したことは無いそうだ。意外だね。

 

くまモン蝉

 
今回の台湾では蝶だけでなく、甲虫やこんなもんまで採っちまった。

(* ̄∇ ̄)ノういーっす❗
片手がたまたま上がってるから、んな感じに見えてしゃあない。

おっ、そうだ。Facebookでは使わなかった斜め横からの画像も添付しておこう。

(2017.6.20 台湾南投県仁愛郷 本部渓)

赤と黒といえば、スタンダールの『赤と黒』。
う~ん(σ≧▽≦)σムッシュ~、文学的スタイリッシュだね。
フフフ…(  ̄▽ ̄)、学識高いワタクシなどはついつい偉大なる文学作品を思い出してしまう事はあっても、絶対に岩崎良美の歌謡曲なんかは思い出したりはしないのであ~る。
『🎵あ~、赤と黒みたいな~ あ~、恋をしていま~すぅ~』

兎に角、こういうシンプルな美しさはとても好きだ。
このセミ、バリカッケーぞぉー。

でも何かに似てるんだよなあ…。
そう思って頭を巡らせていると、Σ( ̄ロ ̄lll)ハッ❗、シナプスがコペルニクス的転回のフランソワーズ・トリュフォー、「突然、🔥炎の如く」のように繋がった。
コレって、あの熊本県のゆるキャラでいまだに絶大なる人気を博しておる「くまモン」に似てんじゃねえの❓

取り敢えず名前もワカンナイし、勝手に「くまモンゼミ」と呼ぶ事にした。蝶以外の名前は全然ワカランのである。
もっとも、蝶の知識もいまだに(;゜∇゜)何じゃコリャー❗❓の連発でたいした事ないんだけどさ…。

コイツは標高約1000mの尾根筋の草の上にちょこんと止まってはった。
すう~っと無意識に何とな~く手掴みでゲッチュー(^^)v
蝉といえばフツーは敏感な筈なのに、まるで緊張感の無いやっちゃであった。
それに捕まえても『Σ(゜Д゜)ギャアー❗』とか、『(T△T)ビィー❗』とか一切鳴かなかった。セミのクセに拍子抜けする程のおとなしさだったのさ。
因みに、上の画像はアップだから分かりにくいけど、ホントはチビッ子ゼミで2センチくらいしかない。

鳴かないし、チビッ子なのでオモロないやっちゃの~と思って、やがてその存在は忘却の彼方へ。
しかし、最近ふと思い出してFacebookに画像をアップした。そうなると俄(にわか)にコヤツが何者なのかを知りたくなってきた。

調べてみると、どうやらHuechys sanguineaと云う種類のようだ。和名もあってハグロゼミと云う名前がついていた。
羽が黒いから羽黒蝉なんだろうけど、ハッキリ言ってイマイチな和名だ。肝心な赤は無視かよ❓それじゃ片手間というもんでしょがあー(ノ-_-)ノ~┻━┻

思うんだけど、和名ってダサい名前が圧倒的に多い。コレって何とかならんのかね❓
いっそのこと和名審議委員会なるものでも作って、そこを通過しないものは認めないとかしたらいいのにと思う。
でも、審議委員会なんか作っても、センスの無い頭の硬いお偉いさん方がズラッと並んでたら意味無いもんなあ…。
『名前には正確性を求めます❗』とか言って、矢鱈と長ったらしいものになったり、意味不明ワケワカンナイ名前になったりするんだよねー。トゲナシトゲトゲ❗(註1)
んでもって喧々ガクガク、益々モメてシッチャカメッチャカになりそうだ。知識が有るからといって、ネーミングセンスが良いとは限らないのだ。
いっその事、まるで知識の無い若い女の子を審議委員に加えたらいいんでねえの❓なんて思ったりもする。変な常識が無いだけに、インスピレーションで斬新かつグッドなネーミングとかが出てくるやもしれない。
でも乙女チック過ぎて、「フシギノモリノオナガシジミ」とかメルヘンチックなのも困るよなあ…。

まあ、どうあろうとその審議委員会では『くまモンゼミ』は絶対に通らんだろうナ。そんな名前を提出したら、『おまえ、ナメてんのか(--)❓』と言われるのは火を見るよりも明らかだ。
『くまモンゼミ』。メッチャクチャ解りやすい名前だと思うんだけどなー。
しかし、考えてみればくまモンがこの先も後世に残っていくと云う保証はどこにもないもんなあ…。もし人気が下火となって人知れず消えてしまえば、それこそ後世の人たちは語源が何なのかワカランだろう。
熊紋蝉❓熊の紋には全然見えんぞ(-
-#)云々とか言われるのが関の山だ。
じゃあ、例えばミッキーマウスとかドラえもんが名前に入っているならどうだ❓この2つならば50年後でも誰もが知っているに違いない。ミッキーマウスクワガタとかは形態的にも有り得るもんな。ドラエモンゼミだって可能性は無いことは無い。

あっ、思い出した。
コレ↓なんてドラエモンゼミでも納得してくれる人はいるかもしんないぞ。

(2014.3.25 ラオス・シェンクワン)

例によって正式な名前は全然ワカンナイ。
大きさはエゾゼミくらいはあった。セミの事はワカランけど、案外エゾゼミに近い種類なのかもしんない。
んー、久し振りに画像を見たけど、カッコいいセミだなあ。
けど、ドラえもんゼミってつけたら訴えられるだろうなあ…。くまモンゼミだって訴訟を起こされる可能性大だ。う~む、それを忘れておったわい。世の中、アタマかたいよねー。

ところで、このセミって行先はどこだっけ❓
たしかセミ好きの長谷さんに進呈するつもりだったと思うんだけど…。
💡そうだ❗、タイミングを逸して渡しそこねたんだよね。だから、きっとまだ三角紙に入ったままなんだろなあ…。

あっ、ここまで書いきてハタと思った。
もしかしたら肝心要の『くまモン』が何者なのかワカランままで、この文章を読んでいる御仁もいるやもしれぬ。
一応、くまモンの画像も添付しておくか…。

(出典『くまモン公式オフィシャルサイト』)

ちょうちょと戯れるくまモンなのだあー。

 
(出典『藤城清治ファンのページ』)

一番左のイラストなんかは、完全に『くまモンゼミ』と同じ配色だな。

とここまで書いてまた気づく。
コレって完全な脱線じゃないか。本当はくまモンゼミ、もといハグロゼミそのものについて書きたかったのに…。
( ̄。 ̄)ふぅー、妄想癖と脱線グセが全然なおってないじゃないか。行き当たりバッタリなのは相変わらずだわ。
取り敢えず気持ちを切り変えて進めよう。

調べてみると、ハグロゼミはインド、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ボルネオ、スマトラ、中国南部、台湾などに分布するチッチゼミの仲間のようだ。
ほうー、日本にもいるチッチゼミの仲間なのかあ。だから小さいんだね。
とは言いつつ、オラってチッチゼミの生きてる姿を一度も見た事が無いんだよなあ。
たしかチッチゼミって秋に発生するんだよね。でもって、『チッチ、チッチ…』とおよそセミらしくない鳴き方をするらしい。だから縁が無かったのかもなあ。チッチゼミ、1回くらいはこの眼で見てみたいよなー。

【チッチゼミ】
(出典『ふしあな日記』)

そういえば何年か前に知ったんだけど、年を喰うと高い音が聞きとれなくなるらしい。それが若者と年寄りの分岐点なんだとさ。
だから、ジジババになるとキリギリスやらコオロギやらのバッタ類やセミなど鳴く虫の声の一部が聞こえなくなると長谷さんが言ってたなあ…。比較的高い音で鳴くニイニイゼミはまだ辛うじて聞こえるが、もっと高い音で鳴くチッチゼミは全然聞こえないと嘆いていらっしやった。
あ~(|| ゜Д゜)、そういえばオラここ何年もニイニイゼミの声を聞いてないぞー。もしかしたら、既に一生チッチゼミの声が聞こえない体になってるのかもしれん…。声が聞き取れないのなら、一人では採集不可能じゃないか。さよなら、チッチー。

また話が逸れた。本題に戻そう。
学名の小種名sanguineaは、ラテン語のサングイア(血)から来ているらしい。スペイン語で言うところのサングレだね。なるほど納得の学名だすな。
因みに英名はRed-nosed Cicada。つまり「赤いお鼻のセミ」だね。まあ、コレも納得の範囲内だ。
ついでに言っとくと、台湾名は和名をそのまま漢字にしたものと同じ羽黒蝉。
命名は和名が先なのか台湾名が先なのかはワカラナイ。台湾の昆虫は、かなりの種が日本人によって命名されているので、和名をそのまま台湾名(漢字)に置き換えた種も多いからだ。
それでは中国ではこのセミを何て呼んでいるのかというと、コレが黒翅蝉。羽黒蝉と意味は全く同じだ。つまらん。

だが、調べていくと紅娘子(こうじょうし)と云う言葉に行き当たった。どうやらこのセミは漢方薬の材料になるようなのだ。乾燥したものを磨り潰して使うらしい。効能は活血、抗毒。狂犬病や腰痛、無月経に用いられるとあった。
更に読み進めると、何とこのセミ、カンタリジンなる毒を体内に含むらしいのだ。で、刺激すると皮膚から毒液を分泌すると書いてあるではないか❗その為、採取の際は手袋やマスクをつけるらしい。
エ━━━ ( ̄□||||━━━ッ❗❗❗、マジ❗❓
ワシ、素手で掴んだでぇ━━━━ (@_@;)

ぼおーっとした奴やったから、何も起こらんかったんやろね。多分、ふわっと掴んだのも刺激せずに済んだのじゃろう。ウリャー(#`皿´)とか言ってワシ掴みしとったら、💦どぴゅーとか毒液が飛んで目に入り、失明していたやもしれぬ。
危ねぇ、危ねぇ。やっぱ知らんもんは無闇に触ってはイケマセンなあ。
チャン、チャン。

                おしまい

追伸
何か散々引っ張っといて、酷いシメ方だなあ…。
まっ、いっか。

そういえばラオスでも似たようなセミを採ったことを思い出した。


(2011・4・17 ラオス・サムヌア)

別種だが、同じハグロゼミの仲間に違いなかろう。
一見してコイツも毒持ちだろうね。
よくよく考えてみれば、日本と違って東南アジアには派手なセミが多い。ド派手なアブラゼミなんかには毒が有ると聞いた事があるような気もする。
ようするに赤と黒とか、黒と黄色、オレンジ、黄緑色とかの配色の生物は『あたしゃ、毒ありまっせー。食うたら死にまっせー👿』と警告しておるのである。だから、あえてワザと目立つ色をしておるんでしょうな。

この画像を探してたら、あらま(◎-◎;)
もう1つ見つかった。

(2011・5・6 タイ・チェンマイ)

なあ~んだ、シッカリ以前にも採ってるじゃないか。
ホント、健忘太郎だね。
コイツらチビッコ蝉は全員、何れも標高1000m前後で採れたから、その辺りが垂直分布の中心なのかもしれない。そして、みんな草に止まっていたから樹上性のセミではなさそうだ。ほんでもって全員が鳴かなかった。基本的には鳴かないセミなのかもしれない。

それにしてもワテ、(|| ゜Д゜)毒ゼミ触りまくりやんかあ。
この時は毒瓶なんか持って無かったから、バリバリ生きてるのを手に乗っけてたりしてた。知らないって事は、怖いもの知らずって事でもあるんだね。そして、阿呆だ。

  
追伸の追伸
トゲナシトゲトゲを解説するのを忘れてた。

(註1)トゲナシトゲトゲ
トゲハムシ亜科の甲虫。この仲間はトゲを持つ種が多い事から、従来「~トゲトゲ」と呼ばれていた。しかし、トゲの無いものもあり、この名がついたと云うワケである。
でも、コレじゃワケワカンナイということでトゲナシトゲハムシと名付けなおされたらしい。けど、コレでもワケワカンナイぞーと云うことで、最近はホソヒラタハムシと云う名を提唱しているようだ。
でもここまできたら、もうトゲナシトゲトゲでエエんでねえの❓と思えてきた。だってトゲナシトゲトゲって、何だそりゃ❓って感じで面白いし、自家中毒を起こしている名前なんて滅多にないから、かえって記憶に残る。もう、その自己矛盾に満ちたネーミングは哲学的ですらあると感じ始めているくらいだ。ホソヒラタハムシなんて全然魅力の無い名前だ。ワシ、断然トゲナシトゲトゲに一票❗
因みに、トゲアリトゲナシトゲトゲなんて更にワケワカンナイ奴もいるらしい。正直、吹き出したよ。

もし、ハグロゼミに名前をつけ直すとしたら、ムネアカハグロゼミとかアカハラハグロゼミとつけるのが妥当な線なんだろうなあ…。
なあ~んか、それはそれでツマンナイ名前だよね。