奄美迷走物語 其の12

 
第12話『手のひらの中の黄色いモスラ』

 
2021年 3月28日 ―夜編―

昨晩、虫屋ツイッター界で有名なSくんに、明日は灯火採集へ連れていってくれとせがんだ。自分の何ちゃってライトトラップよりも遥かに強力なライトセットを持っていると知ったからである。彼は基本的には蝶屋で、今回の主目的はフタオチョウ&アカボシゴマダラ採集のようだが、蛾のハグルマヤママユ(註1)も狙っていて、その為にライトを持参していたのだ。
正直、度重なる惨敗により、自分のライトでは限界を感じていた。何ちゃってなだけに光が届く範囲がメチャンコ狭いのだ。

 

 
となれば、遠くの者は惹き寄せられない。イコール、集まって来る蛾の数や種類数もたかが知れている。徒手空拳だ。日々、その絶望的なまでの貧果に半ば途方に暮れていたのである。ようするに、メインターゲットの1つであるアマミキシタバを採るのは極めて困難な状況下におかれているという事だ。

 
【アマミキシタバ】

(出展『世界のカトカラ』)

 
このままだと惨敗必至だ。負け犬という名の犬が、舌を出してヘラヘラ笑いながら近づいて来るのが目に浮かぶ。いくら上手い言いワケで取り繕ったところで、採れなければ💩ウンチくんだ。もう形振(なりふ)りなんて構ってらんない。どんだけカッコ悪かろうとも千切れんばかりに尻尾を振ってやるぜ。
それに自分もハグルマヤママユは一度は見てみたかった。ヤママユの仲間は蛾にしては好きな方だし、恋い焦がれるという程ではないにせよ、そこそこには憧れてはいたのだ。アマミキシタバが採れて、ハグルマヤママユまで見られれば、万々歳じゃないか。加えて、もう夜の森に一人ぼっちで行くのはウンザリなのだ。マジ怖くて嫌なのだ。
頼むぅー、連れてってくれよー(´ε` )
心の声を、そこまで露骨には言っていないが、それとなくストレートには言った。

『自分のライトでは2時間しか保ちませんが、それでもいいですか❓ 夜遅くまでは付き合いませんよ。』
(☆▽☆)よろしゅうございますとも旦那様。連れて行って下さるのなら何だっていいでがんす。

雨が心配だったが、予報では何とかなりそうな雰囲気だったので出動決定。Sくんの車で知名瀬林道へと向かう。

午後6時半頃、日没と同時にライト点灯。
HIDライトは想像以上に強烈だった。光の束の指先が遠く離れた山肌にまで届いている。コレだけ強い光ならば、かなり遠くにいる蛾も呼び寄せることができるだろう。

実際、すぐにライトの周りは蛾だらけになった。ワシの何ちゃってライトとは効力に天と地ほどの差がある。やっぱ軽くて安いアイテムで、お手軽に済まそうなどというセコい根性では良い虫は採れない。

点灯後、10分と経たずに真っ黄っきーの蛾が向こう正面から近づいて来た。(・o・)何じゃらホイ❓ 遠いし、直ぐには脳のシナプスが繋がらなかった。

Sくんが声を上げる。
『あっ❗、ハグルマヤママユ❗❗』
(☉。☉)えっ❓、あれがそうなの❓もっと大きいものを想像してたよ。

それにしても飛び方がワチャワチャで軌道が無茶苦茶だ。ヤママユガの仲間は飛び方が雑(ザツ)くて、落ち着きがない。最後は地面を転げ回るようにしてライトへ近づいて来るケースも多い。ひっくり返ってジタバタしてたりもするからソッコーで回収しなければならない。でないと、あっという間にボロボロになりかねないのだ。
Sくんも、そのワチャワチャに翻弄されてキャッチできない。ボロにしたくはないから焦ってSくんまでもワチャワチャな動きになっとる(笑)。でも人のことは笑えない。ワシだってエゾヨツメ(註2)の時は、あんな風にドジョウすくいのオッサンみたくなってた可能性が高いからね。
彼が数度空振りして見失った。でもってライトから離れて飛んで行きそうだったゆえ、咄嗟に網を伸ばして入れてしまった。
フォローのつもりだったので、網のままSくんに差し出す。
『悪かったかな❓逃げそうだったからさ。』
人によっては自分で採らないと気が済まなくて、他人が網に入れたものを貰うのを嫌がる人もいるからね。
幸いSくんはそうゆう人ではなくて、問題なく素直に受け取ってくれた。めでたし、めでたしである。アマミキシタバが飛んで来たら貰おうという下心があるから、彼の機嫌を損なうことは絶対に避けねばならぬのじゃ。あっし、アマミキシタバの為なら滅私奉公するのも厭わない所存でごわす。

せっかくだから、写真を撮らせてもらう。

 

 
黄色いチビっ子モスラだ。
思ってた以上に鮮やかな黄色で、思ってた以上に小さい。大きさはヒメヤママユくらいだろう。いや、もっと華奢なような気がする。

彼が直ぐに2頭めを採ったところで、また飛んで来たのでネットイン。
したら、Sくんが
『いいですよ。持ってて下さい。』
と言ってくれた。
優しいねー。アリガトねー(☆▽☆)

 

 
掌の中におさまってしまうサイズだ。
ミニチュアの黄色いモスラみたいでカワイイ💖
さあ、あとはアマミキシタバ様だ。五感爆発、目を皿のようにして飛んで来る蛾たちを素早くチェックする。先に見つけて採ってしまえば、Sくんも進呈してくれるだろうというセコい算段なのだ。まあ、Sくんはアマミキシタバにはあまり興味がなさそうだから、彼が採ったとしても恵んではくれそうなんだけどもね。
でもさあ…、貰うと流石に自分で採ったとは言えないよな。あっ、この言い草ではワシの方が余っぽど自分で採らないと気が済まない主義の人じゃないか。幾つになっても心に余裕が無いわ。誠にお恥ずかしいかぎりである。

そういえばこのあと、自分に向かって飛んで来た大型の蛾がいたなあ…。まだまだ蛾は恐いので、一瞬ビビッて後ろにバックステップしたんだよね。しながらも網先は反応していて、右から左に撫で斬りにしてやった。目ぼしいものがいたら採ってお渡しするという滅私奉公の気持ちを忘れるところじゃったよ。気持ちが悪いので危うくスルーするところだったわい。
Sくんに、「こんなん採れたよー」と網ごと持ってったら、
『コレ、友だちに頼まれてたんですよー。しかも♀じゃないですかあ❗』
という意外な返答が返ってきた。まさか、んなもんに価値があるとはね。何だか知んないけど、お手柄やん、オラ。
どうぞどうぞ、持ってておくんなせぇーだったけど、今にして思えば、アレっていったい何だったのだろう❓
Sくんは種名を口にした筈だが、興味が無かったからインプットされていないのだ。シャチホコガの仲間だったような気がするが、南方系のヤガだったかもしれない。今になって急に気になってきたよ。結構、レアな奴だったかもしれん(-_-;)
べつに惜しくはないけれど、何だったかを知りたいよ。

午後8時過ぎ。月が昇ってきた。

 

 
天気予報では晴れるだなんて情報は皆無だったから驚きだ。
昼間ならば、スーパー晴れ男の面目躍如だと宣いところだが、最悪だ。Sくんも嘆いている。灯火採集に月はヨロシクないのだ。月の光に影響されて、ライトに飛んで来る虫の数がガクンと減るのである。だから曇りの日や新月などの月が隠れた条件の方が断然に良いとされている。
ってことは、
ダァーッ(T0T)、
アマミっち、飛んできぃひんがなー❗

案の定、ピタリと飛来が止まった。
そして、ついぞアマミキシタバはその姿を現す事はなかった。
又しても敗北である
でも、そんなに悪い気分ではなかった。
初めてハグルマヤママユが見れたのは嬉しかったし、Sくんが湯湾岳の灯火採集にも連れてってくれると約束してくれたからね。湯湾岳が一番アマミキシタバが採れる可能性が高いのだ。あそこに行ってSくんのライトがあれば、勝利は半分は約束されたようなものだ。月さえ出なければ何とかなるだろう。
流れは良くなってきている気がするし、
シャアー(ノ`Д´)ノ❗
明日こそは絶対にリベンジしてやる❗

まあるい月を眺めながら、そう心に固く誓った。

                         つづく

 
追伸
午後9時過ぎには撤退した。
この日に採れたハグルマヤママユは、Sくんが4♂、自分が2♂の計6頭で、♀の飛来は無かった。♂の鮮度は良かったような気がするから、或いは♀は未だ羽化していなかったのかもしれない。あくまでも素人的な考えだけどさ。

どうでもいいような事だが、この日に帰って来て食ったものを載せておく。

 
【イカ下足(げそ)とニラの炒め】

 
夕方、キオビエダシャクを採った帰りにスーパーに寄って値引されていた烏賊ゲソを買ったのだ。ニラは前日に2束60円で買ったものの残りだ。
味付けの詳細は忘れたが、旨かったという記憶だけはある。そういや「サトウの御飯」的なものをレンチンしたなあ。たぶん最初は酒の友で、最後には御飯のお友になったんだろね。
あっ、ゴメン。もといです。それは翌日だったわ。残ったものを白飯に乗っけて食ったのだ。この日の炭水化物は↙️コレでげす。

 
【高菜ラーメン】

 
コレもスーパーで買ったものだ。
値段は確か98円だったと思う。安かったのもあるが、九州ローカルのカップ麺だったからだ。
旅に出ると、日本でも海外でも割りと積極的にカップ麺を食う事にしている。その地でしか中々出会えないものだし、現地で食うと旨いような気がするのだ。遠く離れた場所にいるという確固たる証拠みたいなものだから、あ~遠くまで来たんだなあ…というしみじみ旅情にも浸れるしね。

 

 
九州といえば、高菜漬けである。と思って買ったのだが、可もなく不可もなくのフツーの味でした。っていうか、何だか虚しい気持ちになったのを思い出したよ。
考えてみれば全然外に飲みに行けてないじゃないか。行ったのは来島初日の「脇田丸」だけだ。それも小1時間だけで、タケさんも辞めてて全然楽しくなかった。改めて気づいたけど、旅の醍醐味は晩飯を何処で、そして何を食うかなんだよなあ。美味いもん食って、酒をガンガンに飲んで、現地の人たちと話すのが楽しいのだ。それが結局はカタルシスにもなっていたのだ。ひいては翌日の採集にも良い影響を与えていたに違いない。

 
(註1)ハグルマヤママユ
ヤママユガ科(Saturniidae)
ヤママユガ亜科(Saturniinae)
Loepa属

 

 
🥰美しいねー。
鮮やかな黄色にピンク色の眼状紋が配されている。このビビットなコントラストがいい。ボップだ。黄色にピンクというのは可愛らしさ感が満載なのだ。
それを引き締めるかのような黒い波状線がまた何とも心憎い。しかも波状線は黒だけでなく、白や青みを帯びた銀もある。艶やかにして粋(いき)。この美しさには誰しもが瞠目せざるおえないだろう。
ヤママユガ科の蛾は美しいものが多いが、中でもハグルマヤママユはトップクラスに美しいと思う。ヤママユガの中では小さいと云うのもキュートな感じがして好ましい。惜しむらくは尾状突起がない事だ。もしも長い尾っぽがあれば、世界の美しいヤママユたちにも引けを取らない存在になっていただろう。

 
【♂】

 
触角が上手く整形できてないから65点の展翅だな。
なんか面倒くさくなってきて、妥協したのだ。蛾の殆んどの種が触角整形ウザすぎ。ビシッと蝶みたくには決まってくれないのである。たとえ決まったとしても、時間が経つと狂ってくるしさ。そうゆうとこも忌々しい。

【学名】Loepa sakaei Inoue, 1965
属名”Loepa”の由来は調べたがワカラン。
小種名”sakai”は、たぶん人名由来で、坂江?栄?坂枝?漢字はワカランがサカエさんという方に献名されたものだろう。

【和名】
漢字で書くと、たぶん「歯車山繭」となるのだろう。
ヤママユの仲間は皆さん眼状紋があるけど、周りの波状の線のせいで動的に見えるから歯車ってつけたのかな❓いや、単純に波状線がギザギザだから、それが歯車みたく見えるって事か…❓
由来はさておき、中々良い和名だと思う。早口言葉で三回続けて言うと絶対に噛みそうだけどね。
っていうか、ワシなんて早口だと1回だけでも「ハグルママヤヤム」になってしまう。
そういや、ヒメヤママユの事を何度も「ヒメマヤヤム」と発音してしまって、小太郎くんに『それってワザとでしょう❗』とツッコまれたなあ…。しかし、断じてそのような事はござらん。少なくとも最初の頃は完全にナチュラルです。

【英名】GOLDEN EMPEROR MOTH
ゴールデンエンペラーモスということは「黄金の皇帝蛾」ってワケか…。「黄金の」というのはまだ理解できるが、「皇帝」というには小さすぎるよね。せめて”small”は入れて欲しかった。それならば、逆説的な含蓄もあって、惹きつけるネーミングだと思うけどね。

【分布】 奄美大島,徳之島,沖縄本島北部
他に最近では宮古島でも採れているみたいだ。
ハグルマヤママユの類は東南アジアに広く分布しており、似たようなのが沢山いて、従来は”tkatinka”としてひと纏めにされていた。日本のものも、その1亜種とみなされてきたのだが、近年になって分類が進み、その多くが種に昇格したという。日本産も現在は別種とされ、日本固有種となったようだ。

【レッドデータブック】
・国:準絶滅危惧(NT)
・沖縄県:D(希少種)

【開張】♂80mm内外。♀83mm内外。
♀は、より大型で翅に丸みを帯び、触角の枝が短い。また腹部も太いことから、判別は比較的容易みたいだ。

【成虫の発生期と生態】
3月から11月まで見られ、数度にわたって発生を繰り返すという。発生回数と時期は図鑑によって微妙に異なるが、概ね3〜4月、5月下旬〜6月、8〜9月の発生が基本で、10〜11月にかけても少数が発生するのだろう。だが、年3化なのか4化なのかはハッキリわかっていないらしい。
尚、個体数が多いのは5月下旬と9月だという見解があるが、鵜呑みにはしていない。場所やその年の天候にも左右されるだろうし、蛾は有名種でも蝶みたく生態が詳細には解明されていないものが多いからね。
さておき、改めて思ったんだけど、南方系の種だけあって年3化以上もするんだね。本土のヤママユガの仲間は年1化が基本で一部が2化だから、何だかイメージに齟齬を感じるよ。

山間部に見られ、麓ではあまり見られないそうだ。
灯火採集をすると、日没後すぐに飛んで来る。Sくん曰く、一挙に飛んで来て、その後は次第に数を減らし、午後9時を過ぎると殆んど飛んで来ないらしい。だとしたら、エゾヨツメと飛来パターンの傾向が同じだね。個人的見解だが、おそらく採集するには日没後1時間が勝負なのだろう。
 
【幼虫の食餌植物】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、ブドウとあり、ヤブカラシ(ブドウ科)でも飼育できるとあった。しかし『日本産蛾類標準図鑑』には、シマサルナシ(マタタビ科)とあった。補足すると『いもむしハンドブック』には、ツタ(ブドウ科)でも飼育可能と書いてあった。
幼虫は5齢が終齢で、カレハガの幼虫に似ている。ヤママユらしからぬ茶色モジャだす。かなり厳(いか)つくて😱恐いだすよー。
尚、越冬態は何でか知らんけど不明のようだ。

 
(註2)エゾヨツメ


(2017.4 兵庫県宝塚市 武田尾)


(2018.4 兵庫県宝塚市 武田尾)

 
ヤママユガ科(Saturniidae)
エゾヨツメ亜科(Agliinae)
Aglia属

【学名】 Aglia japonica Leech, 1889
属名の”Aglia”は、おそらくギリシャ神話の、輝きを象徴する女神である「Aglaea(アグラエア)」あたりが語源だろう。間違ってたらゴメンやけど…。
小種名の”japonica”は「日本の」という意味である。たぶん最初に日本(北海道)で発見されたからだろうね。
以前は北海道のものを原記載亜種とし、それより南に分布するものには「microtau」という亜種名が与えられていた。しかし明確に区別が出来ない事から、現在では原記載亜種に統一され、この亜種名は使われていない。

【和名】
漢字で書くと「蝦夷四ツ目」となる。つまり北海道で最初に発見され、青い眼状紋が4つあることからの命名でしょう。

【開張】 ♂65mm内外 ♀95mm内外
♀は♂よりも大型で、地色がくすんだ茶色なので雌雄の判別は容易。
とはいえワタクシ、恥ずかしながら未だに♀を採った事がない。だから展翅画像もないんである。
一度、外灯で♂が♀を追いかけ回してるのを見た事があるんだけど、思わずキレイな方を採ってしまったなりよ。採ってから汚い方は♀だったんだと気づいたんだよね。(・o・;)あちゃーって感じだったけど、♀は汚いんでガッカリ感はあまりなかった。だからリベンジしにも行ってないんである。

【分布】 北海道,本州,四国,九州
北海道産はやや小さいそうだ。

【成虫の出現時期】 4〜5月
春の三大蛾の1つとされ(他の2つはオオシモフリスズメとイボタガ)、ヤママユガの仲間では最も早くに現れる。年1化。
猶、エゾヨツメと春の三大蛾については、拙ブログに2017年版と2018年版を書いているので、ヒマな人は読まれたし。

【幼虫の食餌植物】
カバノキ、イヌシデ、ハンノキ(カバノキ科)、ブナ、クリ、コナラ、カシワ(ブナ科)、カエデ(カエデ科)などが記録されている。

 

奄美迷走物語 其の11

 
 第11話『ラーメンとゴア様』

 
2021年 3月28日

この日は朝から完全に雨模様だった。
当然ながら採集には出れないのだが、心の底では少しホッとしていたりもする。目的の蝶が採れない日々が続いているので心が疲れきっているのだ。むしろブレイクが入ることで、かえって気持ちがリセットされるかもしれない。心がリセットされれば、この悪い流れも良い方向へと変わるかもしれない。

午前11時前にリビングに降りる。
昨日、若者二人とラーメンを食いに行く約束をしたのだ。
そのラーメン屋というのは、第3話の『ラーメン大好き小池くん』の回でも書いたが、ゲストハウスのオジー曰く、最近できた店で行列が絶えないんだそうだ。しかし一週間ほど前の月曜にラーメン大好き小池くんと来た時は定休日で食べられなかった。今日はそのリベンジというワケである。店頭に貼ってある写真を見た限りでは二郎系の店っぽかった。
ちなみにニ郎系ラーメンとはラーメンニ郎の系列店、及びそのリスペクト店の事を指し、平打ち太麺で、野菜てんこ盛りのガッツリ豚骨醤油ラーメンの系統の事をいう。

だが、リビングの直ぐ横の若者の泊まっているドミトリー部屋からは何の物音もしない。明らかに起きている気配がない。たぶん💤絶賛爆睡中なのだろう。
外で煙草を1本吸って戻ってきたが、相変わらず中はシーンとしているのでドアを叩いて起こした。
待たされるのは死ぬほど嫌いな性格だから💢イラッときた。けれどメシは一人で食うよりも誰かと食う方が旨い。それに、よくそんだけ爆睡できるなあと思うと何だか怒るのがアホらしくなってきた。
爆睡できるのは若者の特権である。オジさんなんて直ぐに目が醒めてしまう。5時間以上は眠りたくとも眠れないのだ。きっと眠るのも体力がいるのだ。羨ましいかぎりだ。

 

 
『自家製麺 きんぐす豚』。
名前はキングストンに掛けているのだろう。キングストンとは「王の町」という意味で、アメリカをはじめ世界各地に同様な名称の土地がある。また人名にも付けられる事があるから、店主はそのどちらかに強い思い入れがあるのだろう。

 

 
午前11:15くらいに着いたが、我々が一番乗りだった。
ちなみに右が若者Aのドロムシ屋の子(東京在住)で、左の若者Bがカブクワ屋の大阪の子だ(註1)。

改めて店先に貼ってあるラーメンの写真を見ると、やはりビジュアルは二郎系に見える。3月3日にオープンしたらしいが、まさか奄美大島に二郎系のラーメン屋ができるとはね。全く頭になかったから、ちょっとした驚きだよ。きっと島民にとってはもっと衝撃的だったろうから、行列になるのも頷ける。
とはいうものの、開店15分前で一番乗りってどうよ❓通常は行列のできるラーメン屋だったら、15分前には長蛇の列になってて然りだろう。もしや早くも島民に飽きられたのか❓となると、一回食えばいい程度のクオリティーのラーメン❓
しかし10分前になると続々と客がやって来て、開店前には20人くらいの行列になった。なるほど島人のおおらかな性格が表れてるんだね。そうゆう「てーげー(テキトー)」な土地の方が好きだなあ。自分は時間にルーズではないけれど、それはあくまでも表向きであって、根はルーズだ。ゆるい方が心地よいのだ。だから南の島が好きだ。沖縄とかサイパンの時間の流れの方が自分には合ってる。

 

 
Iターンで開業した店だけあって時間通りに開店。一番に店内に入る。もしかしたら行列の先頭で店内に入るだなんて、人生初なんじゃないか❓なんだかプチ嬉しいぞ。一番を目指して前日の夜から並ぶ人の気持ちがチ○チンの先っちょ5ミリ分だけ解ったよ。そこには、確かにカタルシスとかエクスタシーがあるのだ。

店内は最近のラーメン屋らしく、そこそこにお洒落だ。今や女性が入りやすい店作りは当たり前の時代なのだ。それを否定するつもりはないが、昔ながらのラーメン屋の方が断然落ち着くんだよなあ。

席に座ると、先にこのラーメン屋に行った小池くんの感想が思い返された。
『やはり二郎系でしたね。けど二郎系にしては少し味が薄めでしたね。俺、二郎系についてはウルサイんすよー。テーブルに醤油ダレみたいなのがあるので、それ入れたら丁度良くなりました。』
流石、ラーメン大好き小池くんである。コメントからラーメン偏差値の高さが伺える。バカにしていたが、小池くんは本当にラーメン大好き小池さんだったのだ。

メニューは『豚そば』と『まぜそば』の2種類のみ。
値段はどちらも¥850。小盛は50円引きで大盛は100円増し。肉増しは+200円とある。
ここはポピュラーに定番の『豚そば』だろう。若者Bくんも同じく豚そばを選択。若者Aくんは『まぜそば』をオーダーした。えっ❓、この期に及んで❓と思ったが、さすがマイナーなドロムシなんかに興味を持つ男だ。凡人のワシとは脳ミソの構造が違うのである。ちなみにAくん曰く、まぜそばはかなり旨かったらしい。そういえば、まぜそばナゼか大盛りができなかったんだよね。彼がそれを嘆いてから憶えているのだ。

店員に背脂と野菜を増し増し(無料)にするかと尋ねられる。
ここはノーマルかなと思った。モヤシが塔のようにそそり立ってたら食えるかどうか自信かないし、背脂ギトギトだとコッテリすぎてオジサンにはキツイかもと思ったのだ。だが、若者Bの大阪の子が即座にキッパリと「お願いします❗」と言ったので、つられて「ワシもお願いします。」と言ってしまった。

 

 
想定内ではあるが、\(◎o◎)/けっこうガッツリだ。普通の店なら間違いなく大盛り仕様だ。
言っとくと、味玉はオープン記念ということで無料でした。

先ずはスープを飲む。
小池くんは薄いと言っていたが、自分にとっては濃いめかな。でも丁度良い濃さの範疇内で、期待に違わぬ味だ。旨いわ。
自家製の麺は太くて食べ応えがある。歯を押し返す弾力が心地よい。自分好みの麺で、これまた旨いと思う。
チャーシューは薄くもなく、分厚くもない。旨いが、特筆する程のものではない。味玉は、中の黄身がドロッで(≧▽≦)うみゃーい。

全体的にバランスが良くて、量に苦しむことなくワッシワッシと食べ進むことができて苦労せずに完食。スープまで飲み干してやったわい。これで¥850は安い❗ 腹パンパン、満足至極だ。
でも今後、味玉がトッピングになって+150円とかだったら安くないよなあ…。ラーメンで千円以上したら、心情的に許せないのだ。そんなの、もはや庶民の食いもんではない。だから納得できない。ラーメンが高級化していってる昨今の風潮には疑問を持たざるおえない。

店を出て歩き始めたら、すぐ目の前をキオビエダシャク(註1)が飛んでいった。
一瞬、心が曇る。そういやフタオチョウ、アカボシゴマダラ、イワカワシジミだけでなく、楽勝だろうと思っていたコヤツでさえも採れていないのだ。あかざき公園や根瀬部で、それなりの数を見ているのだが、1頭も採れていないのである。他の蝶待ちだったし、飛ぶ位置が高くて結構スピードも速いから気づいた時には射程外で見送る機会が多かったのだ。ターゲットとしては六の次くらいで、真剣には狙っていなかったとはいえ、我ながら情けない。
だが、さして悔しくはない。殴られっぱなしのような結果が続いているから心が鈍感になっているのだ。パンチドランカーは、どうせ曇ってるから活発に飛んでるんだろう程度にしか思わなかった。台湾では今日みたいな雨上がりの日に沢山飛んでいたのだ。当時は大の蛾嫌いだったから、けっこう怖気(おぞけ)る記憶だった。

宿に帰ったら、再び雨が降り出した。
今日は完全休業日だね。体も心も休めてリフレッシュしよう。

夕方に雨が上がった。
そこで、ハタと思った。もしかしたら、キオビエダシャクは住宅街の方が簡単に採れるんじゃないか❓考えてみれば、台湾でも住宅街にいたのだ。今頃気づくとは、やっぱりヤキが回ってる。

午後5時。
住宅街に入って、すぐに飛んでいる個体を発見。あとをついてゆくと複数が飛んでいる場所に出た。
そして、食樹のイヌマキもあった。家々の、そこかしこに植えられている。

 

 
九州や奄美では、イヌマキが庭木や生け垣として植栽されているようだ。ようは住宅街が発生地だったというワケだね。
で、一部の個体が山を昇ってあかざき公園にまで飛んで来るんだろうね。٩(๑`^´๑)۶よっしゃ、害虫駆除じゃ❗

あかざき公園よりもかなり低い位置を飛ぶが、それでも基本的な高さは3〜4Mくらいだ。飛ぶ速度も、そこそこ速い。おまけに蛾道みたいものはあるのだが、蝶道ほどにはコースが明確でなく、待つ立ち位置を絞り込むのに苦労する。
あとは心理的な障壁も邪魔した。大の大人が住宅街で大きな網を振り回していたら、誰しもが奇異な目で見るだろう。完全にアタマがイカれた変人のオジサンだ。恥ずかしさも相俟って集中できない。人に会えば、勿論のこと挨拶はしていたが、遠目に人の姿が見えたら、物陰にコソコソ隠れたりしていたのだ。
しかし、そんなんでは採れない。それに時刻が進めば、基本的には昼行性の蛾だから、そのうち居なくなりかねない。
恥も外聞もかなぐり捨てる。こんなもんも採れないようなら、フタオチョウもアカボシゴマダラも採れるワケがない。そんな奴は馬に蹴られて、とっとと引退した方がよかろう。

気合い一発、💥空中でシバく。

 

 
美しいとは思うが、ちょっとキショイ。どこか毒々しいのだ。おそらく体内に毒を有しているのだろう。派手な出で立ちをする事によって鳥の捕食を免れようとする生き残り戦略だ。つまり毒有りならば、当然ながら食べても不味い。知らずに食べた鳥は、その見た目と共に強烈に学習する。よって以降は見向きもしないという事だ。最初の1頭は犠牲になるものの、他は襲われにくくなるってワケだ。

この蛾を見ると、なぜかゴア様(註2)を思い出す。幼少の頃、最も怖かった存在だ。
オカンに『アンタ、そんな悪さばっかりしてたらゴア様が来るでぇー。』と言われたら、即座にいうことを聞いたらしい。ワシにとっては、それくらい恐ろしかったのだろう。

 
【ゴア】

(出展『特撮アラフィー!!〜50オヤジのコレがたまらん!』)

 
この顔面のラメラメの感じとオバハンパーマに瞬きしないギョロ目、そして迫力あるガタイに超ビビッてた記憶がある。

 

 
♀かなあ❓

次第に慣れてきて、恥ずかしさも薄れてきた。
挙げ句には、住民に会っても、
(`・ω・´)ゞ、イヌマキの害虫のクソ蛾を採っとりまんねん。
とか言って、イヌマキがどれかを説明してたりしてた。
えー、皆さん、もしも住宅街で網を振る場合は、ちゃんと挨拶だけはしましょう。あとは住民の迷惑となる行為は慎みましょうね。それが出来ない人が多いから、虫屋は敵視されるのだ。ただでさえ虫採りなんて一般ピーポーのあいだでは市民権ゼロなんだから、これ以上嫌われるような行為はよしましょう。
それが出来ない人は、クズです。

                         つづく

 
追伸
この日は灯火採集にも行ったが、次回に回すことにしました。
思ってた以上に長くなったからです。まあ、想定以上に長くなるのは、いつもの事だけどね。

 
(註1)ドロムシ屋とカブクワ屋
水性甲虫のドロムシの愛好家とカブトムシ&クワガタ類の愛好家の呼称。

(註2)キオビエダシャク

 
シャクガ科の昼行性の蛾で、イヌマキの害虫として知られる。
成虫は濃い紺色に黄色の帯があり、それが和名の由来だろう。日本では南西諸島に多い蛾で、近年になって生息域を拡大させており、九州では定着しているようだ。おそらく地球温暖化の影響だろう。あとは南九州地方では、旧武家屋敷などで生垣としてイヌマキが植えられていることが多く、それも関係しているのかもしれない。


(2017.6.台湾 南投県埔里)
 
台湾で採ったものだ。町なかの花が咲いてる木に沢山集まってた。台湾2度目の来訪の採集初日だったんだけど天気が悪くて、つい採ってしまったのだ。メタリックで美しいとは思いつつも、当時は精神的な蛾アレルギーだったので、背中がゾワゾワで採ってたっけ…。

あれ❓、そういや展翅した覚えがないなあ…。
(;・∀・)あっ、展翅してないわ。たぶん冷凍庫で眠っておられるな。
それはさておき、奄美のものとは下翅の帯部分の感じが違うんじゃね❓黄帯が細くて、外縁にまで達していない。或いは黒斑が連なって帯状になっている。コレって亜種区分とかされてるのかな❓…。
この程度で解説を終えようと思っていたが、気になるから調べておくか…。でもメンドクセーからウィキペディアから引用&編集しよう。

【分類】
シャクガ科(Geometridae)
エダシャク亜科(Ennominae)
Milionia属

【学名】Milionia basalis Walker, 1854
成虫の開帳は50~56mm。光沢を帯びた濃紺の地色に鮮やかな黄色の帯状斑紋のある翅を有する。
幼虫はシャクトリムシ型で、終齢時の体長は45~55mm。頭部、前胸、脚および腹脚、腹部側面、尾端の橙色が目立つ。

【分布】インド、マレー半島、台湾、日本
日本には亜種”ssp. pryeri”が分布する。南西諸島および九州で発生が認められるほか、四国でも成虫が確認されたことがある。

Wikipediaの英語版には、以下のものが亜種として列記されていた。

■Milionia basalis basalis
■Milionia basalis sharpei (Borneo)
■Milionia basalis guentheri (Sumatra)
■Milionia basalis pyrozona (Peninsular,Malaysia, Burma)
■Milionia basalis pryeri (Japan)

台湾のは亜種じゃないのかな❓ Wikipediaの情報って結構間違い多いんだよなあ。だから鵜呑みにするとロクな事はないから、怪しいと思えば調べ直した方がいい。もー、メンドクセーなあ。

調べてみると、変なのが出てきたよ。

「橙帶枝尺蛾 Milionia zonea pryeri Druce, 1888」

台湾の蝶と蛾を調べる時に最も利用する「DearLep圖錄檢索」というサイトに書いてあったのだが、小種名が違うから一瞬別種かと思ったよ。だが亜種名は日本のものと全く同じだ。つまりはコレはシノニム(同物異名)って事なのか❓ クソー、又しても迷宮に足を突っ込んだみたいだ。毎度の事だが、藪ヘビ🐍だよなあ。

英語版のWikipediaにシノニムがズラリと並んでおり、そのものではないが、らしきものがあった。

Milionia zonea Moore, 1872
Milionia guentheri Butler, 1881
Milionia latifasciata Butler, 1881
Milionia pyrozonis Butler, 1882
Milionia butleri Druce, 1882
Milionia sharpei Butler, 1886
Milionia pryeri Druce, 1888
Milionia ochracea Thierry-Mieg, 1907

一番目と下から二番目が、それにあたる。
にしても、そうなるとだな、台湾のものと日本のものは同じ亜種となる。ならば、帯の相違はどう解釈すればいいのだ❓また新たなる藪ヘビ迷宮地獄じゃよ。

しかし、もしやと思い再度「DearLep圖錄檢索」にアクセス。画像を見てみると、簡単に問題解決した。


(出展『DearLep圖錄檢索』)

なんの事はない。日本のモノと同じだ。つまりは自分が台湾で採って撮影したものが、たまたま変異個体だったという可能性大だ。そうゆう事にしておこう。行方不明の台湾のキオビエダシャクを冷凍庫から探し出してきて確認なんざあ、絶対やめておこう。探すこと自体がかなりの労苦だし、それをまた軟化して展翅するのが面倒だというのもある。だが何よりも恐れているのは、複数ある個体の全部が同じような特徴を有しているケースだ。もしもそうなら、亜種群の可能性が出てきて、新たな迷宮に突っ込んでゆく事になる。スマンがキオビエダシャクのために、そこまでの労苦を負いたくはないのだ。

【生態】
成虫は昼行性。花蜜を摂取するため、さまざまな植物に訪花する。夜間、人工の灯りにも飛来する。産卵は主に食樹の樹皮の裂け目や枝の付け根に行われる。
幼虫はナギ、イヌマキ、ラカンマキの葉を摂食するほか、マレーシアでは Dacridium属(マキ科)の摂食が確認されている。幼虫は振動に敏感で、振動を感知すると吐いた糸にぶら下がって植物上から離れる。また、食草から二次代謝産物のイヌマキラクトンおよびナギラクトンを取り込み、外敵に対する防御に役立てている可能性が示されている。成熟した幼虫は土中で蛹化する。
思った通り、やっば毒持ち風情なんだね。

【人との関係】
突発的に大発生し、食草を大規模に食害する傾向があり、特に生垣や防風林などに用いられるイヌマキの害虫として重要視されている。大発生時は樹皮にまで食害が及び、被害を受けた木は枯死する。南西諸島では古くから大発生が起きていたと考えられ、1910年代から断続的な大発生の記録が残されている。九州南部では1950年代ごろに初めて侵入・発生が確認されたが、当時の侵入個体群は数年で絶滅したとされる。その後、再度侵入した個体群は近年、不安定ながら継続した発生が認められている。沖縄および九州南部では最大で年4回の発生が可能であることが明らかになっているが、九州南部では、本来南方系である本種の発育調整メカニズムが気候に適応できておらず、成虫越冬ができない。にも拘らず、冬に羽化する個体が出るなどの不安定な季節消長が見られる。

 
(註3)ゴア様

(出展『特撮アラフィー!!〜50オヤジのコレがたまらん!』)

このラメラメ顔が超絶怖かったのだ。

ゴアとは、手塚治虫の漫画『マグマ大使』を原作としたテレビ特撮番組に登場する悪役のこと。
2〜3億個の星を乗っ取り、悪事を尽くしてきた征服者。アース(30億年前に地球を作った創造者で、マグマ大使も作った)と同じくらい長く生きている。人間体はあくまで仮の姿で、本体は肉食恐竜型とクモ&ムカデ合体型の2パターンを持つ。宇宙の悪魔と言われる反面、子供には甘いという一面がある。

 

奄美迷走物語 其の十

 
第10話『メリーゴーランドは回り続ける』

 
2021年 3月27日

夜は天気が悪かったが、朝になると再び晴れだした。
誤算続きだが、それだけがまだしもの救いだ。

連日通った根瀬部に行くか、それとも朝からあかざき公園に行くか迷ったが、あかざき公園を選択した。
理由の第一は、根瀬部でフタオチョウを狙っても網が届かない事を痛いほどに知らしめられたからだ。今のところ、それに対する打開策もない。となれば、行っても結果はまた同じで、返り討ちになりかねないと判断したのだ。
と言っても、あかざき公園のフタオのポイントは知らない。知らないが、樹高は根瀬部よりも比較的低い。ゆえにポイントを探しあてれば、何とかなるんじゃないかと考えたのだ。

 
【フタオチョウ 夏型♀】

 
第二の理由は、昨日あかざき公園でアカボシゴマダラを見たからだ。根瀬部では見ていないから、まだ発生していない可能性がある。つまり、あかざき公園ではフタオとアカボシの両方を見ているだけに、2種類とも採れるチャンスがあるのではないかと考えたのだ。

 
【アカボシゴマダラ 夏型♀】

 
第三の理由は、あかざき公園にはイワカワシジミの食樹が沢山ある。なのでフタオを早々とゲットできれば、素早くそっちの探索に切り替えられると思ったのだ。この2種が落とせれば、あとは一番難易度が低いアカボシだ。夕方に占有活動をとるから、それに会えさえすれば何とかなる。あかざき公園のアカボシは何度も採っているので、ワシの網でも届く場所を知っているのだ。判断が置きにいってるきらいもあるが、決めたならば突き進むしかなかろう。3種類とも採れれば、走者一掃の逆転スリーベースだ。今までの誤算と失態を全てチャラにできる。俺なら、それが出来る❗キャシャーンがやらねば誰がやる❗

 
【イワカワシジミ】

 
今回の旅では、朝からあかざき公園に来るのは初めてだ。
意外にもアマミカラスアゲハが結構いる。

 
【アマミカラスアゲハ 春型♀】

 
道路沿いが蝶道になっており、飛ぶ高さも低い。取り敢えず♂でもいいから採りたいという人には、お薦めの場所かもしれない。
けれどもミカンの花は見た限りではないから、♀を採るのは難しいかもしれない。ちなみにアゲハ類が好きなツツジの花は一部で沢山咲いている。しかし吸蜜に訪れたものは雌雄ともに一つも見ていない。但し、ずっと花場で張っていたワケではないから偶然見かけなかっただけなのかもしれない。ゆえにコレに関しては情報を鵜呑みにはなさらぬように。

取り敢えず、道路の一番奥まで行ってみた。ここまで入ったのは初めてだ。実を言うと、秋に来た時には直ぐにアカボシのポイントが見つかったので、ポイントを探して公園全部を隈なく歩いてはいない。

 

 
やっぱ、奄美の海はキレイだ。
たぶん半島の左側の集落が知名瀬で、山の向こう側が根瀬部だろう。
海の手前の林縁の連なりを暫し見渡す。いかにもフタオやアカボシがいそうな環境に見えたからだ。ここなら見渡しが良いから、ワシの千里眼ならば居ればすぐにワカル。段々ヤル気が出てきたよ。本気になれば、新たなポイントも見つかるだろう。

しかし、30分くらい居たけど姿なし。仕方なく他を探すことにする。(・o・)何で❓ 結構、ポイントを読む能力には自信あったのになあ…。どうやら完全に迷路の住人だ。足元の砂が波に崩れてゆくような感じだ。徐々に自信と時間が削り取られてゆく。

 

 
そういやレンタルバイクの写真を1枚も撮ってないなあ。
そう思って、今更ながらに撮る。ようするにヒマなのである。フタオもアカボシもイワカワも1つもおらん。

 

 
思うに、この赤いメットが全ての元凶なのかもしれない。以前は名瀬でレンタルバイクを借りていたのだが、その時にいつもカブっていたメットが験担ぎ(げんかつぎ)のアイテムみたいになっていた。

 

 
(-_-メ)ワリャ、シバキ倒すぞ❗
である。

 

 
この💀ドクロマークが気にいってて、当時は何かパワーの源みたいになっていたのだ。謂わば気合い注入装置みたいなもので、これをカブると心にビシッとキックが入ったのだ。でもって、バンバンに蝶が採れたのである。
だが、そのレンタルバイク屋は廃業したから、今や借りたくとも借りられない。べつにモノに頼って採集しているワケではないけれど、ある程度はモノや物事には依拠はする。自分の心を強化するために使えるものは何でも使う主義なのだ。前向きになれる材料を積極的に取り込まなくては、弱い人間は簡単に心が折れかねないのだ。
世の中には、本当の意味で強い人間は存在しない。いるのは、弱い人間と強い振りができる弱い人間だけだ。

今まで気にも止めていなかったが、ふと見るとナンバープレートが可愛い。なので、つい写真を撮ってしまう。

 

 
デザインにアマミノクロウサギとヒカゲヘゴがあしらわれている。そして下側には「世界自然遺産へGo!!」の文字がある。
そういや、宿のオジーが「島では、十年ほど前から毎年のように世界遺産、世界遺産と騒いでいるが、もはや何も期待していない」云々みたいなことを言ってたな。
その後、大阪に帰ってから奄美大島と徳之島、沖縄本島北部が世界自然遺産に7月に選定されることが5月にほぼ確実になった。喜ばしい事ではあるが、観光客がドッと押し寄せて来て、かえって自然破壊が進まないことを祈ろう。
そして正式決定すれば、どうせ採集禁止種や禁止区域がまた増えるんだろね。そのくせリゾートホテルの建設とかは野放しで、平気でバンバンに木を伐って、ポコポコ建ちそうだけどさ。所詮、世界遺産も経済の発展を目論んでのもので、それ無くしては推進されない面があるのだ。嘆かわしいが、金儲けが全てにおいて優先されるのが現代社会なのである。
エコとかも、所詮は金儲けの手段にすぎないと思ってる。ヤシの実洗剤やヤシの実石鹸のせいで、どれだけの貴重な森が伐採されてパーム椰子(アブラヤシ)畑に変えられた事か。今や東南アジアは何処もパームとゴムの木だらけだ。何が「手肌と地球に優しい」だ。偽善じゃないか。正義の御旗を偉そうに振る奴にロクな者はいない。

結局、探しあてられずに慰霊塔へ行く。

 

 
でも、見せ場なしのノールック、ノーチャンス。
結局、フタオ、アカボシ、イワカワのどれ1つとさえ見ること叶わなかった。見もしないものを採れるワケがない。
だとしても、何が「キャシャーンがやらねば誰がやる❗」だ。ちゃんちゃらオカピーだ。偉そうに啖呵(タンカ)切っといて、結果がコレかよ。
(;_:)あー、もう何をどうしたらいいのかワカンナイや。
まるで同じところを延々と回り続けるメリーゴーランドの馬に乗ってるような気分だ。何処にも行けないし、何処にも辿り着けない。

                         つづく

 
追伸

話は尚も続く。
ネットの天気予報の全てが夜からは雨マークだったので、今宵も夜間採集には出ないことにした。たとえ雨じゃなくとも、どうせ多くは望めない。こんな体たらくだと、さらなる返り討ちにあって、益々惨めな気分にさせられるだけだ。

今朝にはラーメン大好き小池くんも東京に帰ってしまったし、ゲストハウス涼風には誰も今夜も遊びに来ない。連日のパーリーがウソだったんじゃないかと云うくらいの落差だ。
それでも昨日よりかはマシか…。入れ替わりに、新しく東京から来た医大生と二人組の若者が増えた。何れも虫屋である。医大生のSくんに、若者2人が興奮していた。虫屋でツイッターをしている者ならは、誰でも知ってる有名人らしい。そうゆうSくんも、ブログやFacebookでワシのことを知っていたので驚いた。まあまあワシも有名らしい。ホンマかいな❓
若者2人は最近になってツイッターで知り合い、それぞれ大阪と東京に住んでいるのにも拘らず、奄美大島に一緒に来たという。意気投合したのだろうが、ネット上で知り合って、しかもまだ日が浅いのによく二人で旅行なんて出来るよな。知らない人がネット上でワシのことを知っているという事も含めて、オジサンには考えられない世界だ。時代は虫屋の世界でも急速に変貌しつつあるのだ。
ちなみに医大生は蝶屋、若者2人は甲虫屋で、大阪の子がカブトムシとクワガタ好きの所謂(いわゆる)カブクワ屋。東京の子は驚きの「ドロムシ屋(註1)」だった。あっ、ドロムシ云々は間違ってたらゴメン。たぶんそれであってる筈だけど、あまりにも興味がなかったゆえ、テキトーにしか話を聞いていなかったから断言はできない。それでも水溜まりとかにいる極小の甲虫だと言ってた覚えがあるので、ドロムシ&ヒメドロムシハンターであってると思う。

それはさておき、若いのにいきなりマイナーな虫から入るってのも驚きだ。通常は蝶とかカブクワとかカミキリムシなどのメジャーな虫から入って、徐々にマイナーな虫へと興味の対象が移行してゆくものだからね。小太郎くんから、最近はそうゆう若い子が増えていて、知識量も相当あるとは聞いてはいたが、ホントだったんだね。そういや、医大生くんはドロムシの話に全然ついていけてたな。小太郎くんもそうだけど、若い子はオールラウンダーが多いのかもしれない。だとしたら、ポテンシャルは高い。

若者二人組が唐揚げ(何の唐揚げだったかは忘れた。或いは天ぷらだったかもしれない)を作り始めた。でも料理作りに慣れていないせいか、見てらんないくらいの出鱈目っぷりだった。本人たちからすれば上手くいったみたいだが、オラからすれば、どうみても失敗作だ。
かなり酔っ払っていたが、それを見て若者たちに美味いもんを食わせてやろうとカッコつけたのがいけなかった。ここで、この日最後にして最大の誤算が起こる。
タコに軽く火を入れて霜降りの半生状態にしようと思い、酒と水とでサッとボイルした。それをザルにあけて冷水で冷やすために鍋をシンクに素早く移動させようとイキってノールックで振り返った時だった。

💥( ゚∀゚)o彡ガッシャーン❗

あいだにあった洗い物の山にガーンと鍋がぶつかって、その勢いで熱湯が大きくハネて、ワシの胸に思いきしかかったのだ。
酔っ払ってるので、そんなに熱くは感じなかったが、一応洗面所に行って水で冷やした。
しかし時間が経つにつれてジンジンと痛みだした。それでも酔っ払ってるので、その時はたいした事ないだろうと思ってた。でも翌朝みたら、『北斗の拳』のケンシロウみたく左胸の上から右胸の下にかけて、斜めザックリに大きな火傷キズができてた。
誤算のドミノ倒し、ここに極まれり。まさか自分が奄美大島に来て火傷を負うとはミジンコほどにも思ってなかったよ。目的の蝶が採れないのも全くもって想定外ではあったが、大きな枠組からみれば想定内ではある。天気がずっと悪かったとか、網がブッ壊れただとかのアクシデントは、パーセンテージとしては低いものの、充分あり得るからね。でも火傷するなんてウルトラ想定外の大誤算だ。又しても誤算続きの一日で、最後の最後にはコレかよ❓
(ㆁωㆁ)白目、剥きそうやわ。
迷走と誤算のループは、リインカネーションのように負のエネルギーを再生し続けている。

                     つづくのつづく

 
一応、その時の料理の画像を貼っつけておく。

 
【蛸の霜降り ニラ醤油漬け】

 
勿論、若者たちには好評であった。
しかし、今となっては細かい記憶が曖昧だ。
ニラはスーパーで2束60円くらいで売ってたものだ。それは憶えているのだが、酔っ払ってたせいか肝心の料理のレシピが思い出せない。火傷したんだから、流石にタコを霜降りにしたのは憶えてる。問題は味付けだ。ワシが醤油だけで味付けするなんて事は有り得ないから、酒とか味醂を入れたのだろう。或いは冷蔵庫にあった袋入りの何かのタレ的なものを使って醤油と混ぜて調整したのかもしれない。
あと、画像を見ると上に香辛料らしきものが乗っている。コレの正体もワカラン。全く記憶にないのだ。色からして生姜や辛子ではない。となると柚子胡椒か山葵だろう。
まあ、若者二人は喜んでくれたし、自分の記憶でも旨かったという事だけは残ってるから、まっいっか。
 
今回もカタルシスがなくて、誠に申し訳ない。特に今回は何ら盛り上がるシーンもなかったから、尚のこと読み手側はツマランかっただろう。ホンマ、すいませんm(_ _)m
しかし事実であってフィクションではないんだから、仕方がないのである。

 
(註1)ドロムシ屋
ドロムシとは、ドロムシ科とヒメドロムシ科に属する甲虫の総称。世界各地に分布し、一部を除き水生で、夜間に活動する。日本にはドロムシ科が3種、ヒメドロムシ科が45種前後産することが知られている。

 
【ムナビロツヤヒメドロムシ】

(出展『mongoriz‐2のブログ』)

 
極小昆虫だ。下に方眼紙が敷いてあるので、如何に小さいかがよくわかりますな。敬意を込めて言うが、こんなの採るなんて変態だ。裏を返すとスゴい事だと思う。探すの大変そうだもんね。とてもじゃないが、自分には真似できない。
で、そのドロムシやらヒメドロムシの愛好家のことを「ドロムシ屋」と呼ぶ。虫好きの間では、この「〜屋」という言葉がしばしば用いられ、各ジャンルのマニアの称号として後ろに付けられる。例えばワシならば「蝶屋」だ。つまり蛾好きなら「蛾屋」、カミキリムシ好きなら「カミキリ屋」、カブトムシ&クワガタ好きならば「カブクワ屋」ってワケだすな。

冒頭の説明では簡素すぎるし、ちょっと興味が湧いたので、もう少し調べてみることにした。

ネットの『山陰のヒメドロムシ図鑑』によると、以下のように書いてあった。
「分類上はコウチュウ目のヒメドロムシ科・ドロムシ科に属しています.体長1-5mmほどの小さな甲虫です.川の底にすんでいて,石や流木などに,鋭いツメでつかまっています.呼吸は水中の酸素を直接取り込むとされています.外見からはあまり水生昆虫らしく見えませんが,高度な呼吸方法を持っている昆虫なのです.山陰の川にはたくさんのヒメドロムシがすんでいますが,あまりに小さいため,これまでほとんど注目されていませんでした.さらに調査を行えば,きっとたくさんの発見をすることができるでしょう.」

高度な呼吸法について補足すると、この類は一般に体の下面に微毛が密生し、そこに蓄えられた空気の薄い層が気門と連なることによって水中で呼吸が可能なんだそうだ。なので水底にある石に付着したり、砂中に潜っていることができるんだとさ。尚、幼虫も同じく水生である。

いずれも10ミリメートル以下の小さな甲虫で、殆んどの種が長めの楕円形から細長い形であるが、卵円形のものもいる。殆んどの種が暗色だが、淡色紋を有するものや全体が明るい褐色のものもいる。肢は細長いが、ツメは大きく発達し、岩などに掴まるのに適している。触角は多くは糸状であるが、一部の種、特にドロムシ科では太くて短く、棍棒状をなす。

ドロムシ・ヒメドロ類を採集するには大きく二つの方法があるそうだ。一つは灯火採集法(ライト・トラップ)。多くの種が灯りに集まる習性があるので、それを利用するというワケだね。
しかし灯りには来ない種もいるから、そういう種は川から直接採集する。謂わば正攻法ですな。これが2つ目の採集方法。
成虫は川底の石などにくっ付いているから、川底を撹拌してやると体が浮き上がって下流へと流されてゆく。しかし鋭いツメを持っているので、すぐさま石や流木などに掴まることができる。その直ぐモノに掴まる習性を利用して、流れ下るのを底に穴をあけた目の細かなネットや手ぬぐいなどの白布を使ってキャッチするんだとさ。
ふ〜んである。世の中には色んな虫がいて、それを工夫して採られている方もいるんだね。

余談だが、以前は奄美のムナビロツヤヒメドロムシは別亜種とされてきたが、近年になって別種として分けられ(Jung&Bae 2014)、「リュウキュウムナビロツヤヒメドロムシ」という新たな和名が付けられている。東京のドロムシ屋の子は、たぶんコレを採りに来たんだろね。
それにしても、クソ長い名前だよなあ。なんと数えたら16文字もあったわい。亜種から別種に昇格したゆえ、やむなしなところはあるが、もちっとネーミングに工夫があってもいいんじゃないかと言いたくなる。このクソ長い和名問題は他にも多数あるから、そうゆうのを見るたびに軽い苛立ちを感じるよ。虫屋って全体的にセンス悪い人が多いんじゃないかと勘ぐりたくもなる。まあ、子供の名前も同じようなものだから、虫屋だけじゃないんだろうけどさ。