2020’青春18切符1daytrip 第四章(3)最終回

 

 第3話(最終話) 紀州の春の味

 
 2020年 4月10日(後編)

 
再び「スナック変てこネーミング愛好家」の活動が始まる。
今度は反対側から繁華街へ入ろう。

 

 
『銀ちろ専用二輪車置場』。
店の看板にチャリンコの置き場所を示すだなんて斬新だ。
でも、店本体が見当たらない。謎です。ステルス店舗なのかもしれない。地方に行くと、時空間が時々歪むからね(笑)。

『居酒屋 味心 むそう』。
「むそう」が無双の事なのか、それとも夢想を表しているのかがワカラナイ。いや、両方の意味が込められているからこその平仮名表記なのかも。だったとしたら、そんな掛け合わせをしようなんて考えた店は唯一無二だろうから、無双かもね。

『紅葉』。
「もみじ」もしくは「こうよう」という店名かと思いきや、下に「KREBA」の文字がある。「くれば」だったんだね。
けど、その読み方って無理がないかい❓普通に読めば「くれないば」、もしくは「べにば」だよね。紅に「くれ」という読み方はないのだ。
まあいい。にしても、何でわざわざ秋に限定されるようなネーミングにしたんだろね❓まさか秋限定のオープンなワケでもなかろう。う〜ん、ママさんの名前が「紅葉」でもなければ、解せませぬ。

『SEED』。
種子❓種(たね)は物事の始まりを表すものでもあるからして、理解できなくもない。
いや、まさかのママさんの名前が「タネ」だったりしてね。だとしたら、どんだけオールディーな名前やねん❓
そうじゃなければ、まさかまさかのシードの別の意味でもある「精液」や「精子」だったりしてね。(-_-;)…、だとしたら相当に奥が深い。ハプニングバーとか、とんでもない店だったらいいなあ。

『居酒屋 白百合』
「昭和」を通り越して、もう「大正」の世界だ。
一周回って大正ロマンの香りさえ漂っている。

振り返っても撮る。

 

 
どうやらこの通りは味光路(あじこうじ)というらしい。

 

 
『AGAIN』。
アゲイン。再び。
また来てねという意味か?
他に浮かばないし、段々無理からイチャモンつけるのも面倒くさくなってきたよ。

『LARME』。
ラルムというのはフランス語の「涙」「涙の雫(しずく)」の事でいいのかな。
にしても、そんなマイナス思考のネーミングでいいんすか❓

『スナック すみれ』
何ら奇抜さがない普通のネーミングだ。
でも奇を衒わないところが、かえって新鮮だ。明朗会計に違いなかろう。好感もてます。

『LUSH』。
普通に訳せば、「青々とした」「瑞々しい」だろう。
調べたら他にも意味があって、「大酒呑み」とゆうのが出てきた。たぶん由来はコレだな。
さておき、下の「a new sense bar」とゆうのが引っ掛かる。新しいセンスとは何❓
このネーミングのワケの分からなさにスナック文化の面白みがある。こうしてアレコレ想像するのは楽しい。ネーミングの裏に、その人の人となりが見え隠れするのだ。

『がらくた』。
(☆▽☆)来たー❗、自虐系ネーミング❗
けど、ストレートの平仮名表記である。普通ならば「我楽苦多」などという宛字をブチ込んでくるのがセオリーなんだけどね。その路線にいかないのは、言うほどポンコツではなさそうだ。ただの自虐的な人なのかもしれない。

後ろのビルの看板が横に写っている。気になるからコッチもコメントしておこう。

『Pino』
イタリア語かな❓ならば「松の木」とか「松ぼっくり」という意味になる。可愛さ演出かしら❓
単にお菓子のピノ好きの店主だったりして…。

『Bebe』
普通に考えれば「赤ちゃん」だよね。
ばぶばぶの赤ちゃんプレーの店だったりして…。いかん、いかん。どうしてもエロに走るクセがある。
だとしたら、フランス語の「パートナー」という意味なのかもしれない。豚が2頭向き合ってるしね。
でも、ちょっと待て❗
下には「Boys snack」という文字があるではないか❗❗
とゆうことは、モーホーの集まるスナック❓それもパートナーを探す的な❓しかも赤ちゃんプレーがメイン的な❓
頭がオカしくなってきたところで、目的の店の前に着く。

 

 
ここの向かい側が店となるのだが、惹かれる風情があって、つい写真を撮ってしまったなりよ。
あっ、でも惹かれた理由は風情だけじゃないと直ぐに気づいたよ。

 

 
🎵ホッピー(◠‿・)—☆
久し振りに看板と幟を見たので、テンションが上がる。奴は関東文化圏のもので、関西ではあまり見ないのだ。これは東京に住んでた頃に劇団の先輩に教えてもらったというか、仕込まれた。
えー、ホッピーとは下町のヤサグレ親父たちのフェバリット安酒の事である。
もとい、厳密に云うとホッピーそのものは酒ではない。

 

(出展『Wikipedia』)

 
ホッピー(Hoppy)とは、ホッピービバレッジ(旧・コクカ飲料)が1948年に発売した麦酒様清涼飲料水のこと。平たく言うと、ルートビアみたくビールテイストの炭酸飲料の事ね。でもホッピーといえば、焼酎をこれで割った飲み物を指す場合のことの方が多い。
ホッピーが発売された頃は、まだビールは高価だったそうな。なので、そのビールの代わりにホッピーで焼酎を割って飲む技が編み出された。そして、手軽にビールの満足感を得られる酒として関東圏で急速に広まっていったらしい。そう、ビールモドキなのだ。その辺からして男たちの苦い哀愁が漂うなあ。
ちなみに今でも東京の大衆酒場には必ずと言っていいほど置いてある筈だ。まあ、安く飲める酒の代表選手みたいなもんだすな。飲んでるオヤジたちもイタい人が多かったから、場末感満載なのだ。何だか懐かしい。

又しても脱線してもうた。
いざ、目的の店にゆかん。

 

 
『紀州魚介庵 かんてき』。目的地到着だす。
店はビルの奥まったところにある。

 

 
「かんてき」とは、関西では七輪(しちりん)の事だが、火がカチカチ熾る様から癇癪(かんしゃく)持ちを表す言葉でもある。つまり気が短くて怒り出したら止まらない人で、感情がコントロール出来ないってこと。
たぶん店の名の由来は、この両方で、どちらかとゆうと後者だと推察される。ならば、めんどくさい親父に決まっている。テメェで付けてるくらいなんだから、自他ともに認める性格なのだろう。

口あけだから、客はワシ以外には誰もいない。

 

 
カウンターの真ん中に座る。
店の雰囲気は昔からある居酒屋という感じだ。

 

 
目の前の大将は、よく喋る。
気は如何にも短そうだ。でも本当の癇癪持ちならば、店を長く続けてはこれなかっただろう。ようは気は短いが、気のいいオヤジさんってとこなのだろう。ヤンチャの匂いがしますな。

当然、先ずは何をおいても生ビールから入る。

 

 
付き出しは「イソモン(磯もん)」という地元で穫れる貝。
磯で穫れる貝を総称してそう呼ばれる事が多いが、見たところ1種類だけだから、どうやら地元ではそう呼ばれている貝なのだろう。一瞬、シッタカ(尻高)にも見えたが、似ているけど頂きはシッタカみたく鋭く尖ってないから別な種だね(註1)。

金串で根元を刺し、貝を手でぐるりと回しながら身を取り出す。こうすると、先っちょの肝までキレイにとれる。
味はシッタカとほぼ同じで旨い。肝のホロ苦さがよろしおまんな。所謂サザエの壺焼き系の味だ。それよか柔らかいけど。

 

 
お次は黒ビール。
黒ビールの生を置いてある店は少ないから、飲むことにした。

 

 
久し振りに飲む黒ビールは豊潤で旨い。

 

 
刺身盛合せ。
左は上からモチガツオ、モチガツオ心臓、グレの白子。右はヒトハメ、グレ、ウツボのたたきである。

モチガツオとは紀州の春の味覚の一つ。黒潮に乗って2~5月頃に紀伊半島沖に現れるカツオの中でも午後になると岸近くに寄って来るモノのことをいうそうだ。本来、カツオは遠洋にいるものとばかり思ってたけど、そうゆうカツオもいるんだね。
それを釣り上げて活け締めにして即座に陸揚げしたものは、死後硬直が始まる前のモチモチとした食感が味わえるそうだ。モチモチだからモチガツオと呼ばれてるってワケだね。付け加えておくと、モチガツオと言える状態は短く、水揚げされてから6時間以内なんだってさ。

モチガツオから食べてみる。
\(☆▽☆)/ワオッ❗、確かにモチモチの食感だ。
旨味もあって、(´ω`)うみゃーい。

お次は心臓だ。
艶々してて張りがあり、如何にも鮮度が良さそうだ。
(・o・)あっ、コリコリだ。珍味ですなあ。

続いてグレの白子。
コチラも見るからに鮮度が良い。たぶんグレの白子は初めて食べるんじゃないかな。
うん、臭みは全然ない。期待どおりの味だ。旨い。
とはいえ、鯛やフグの白子の旨さには及ばないけどね。

右側に移ろう。
わかりにくいが、一番上は「ひとはめ」という海藻である。
人をハメちゃうの❓何だか純真な田舎娘をシャブ中にしてソープに売り飛ばす悪いヤクザみたいな名前じゃないか。もしくは妖怪の名前みたい。『悪戯妖怪ひとはめ』。
「雨の日でもないのに道の角を曲がった所に水溜まりをこさえ、人がハマったのを見て、キャッキャッと喜ぶイタズラ系妖怪の事。」とかさ。
スゲー名前だなと言ったら、お女将さんが正式名称は「ヒロメ」だと言って小冊子みたいなのを見せてくれた。

 

 
「それによると、こう書いてあった」と書きかけて、邪魔クサイので画像を拡大する。

 

 
ようするにワカメの親戚みたいなものだ。
ただし細長くなくて、名前のとおり幅が広い。
ちなみに「ヒロメ」の「メ」は海藻(海布)という意味。これはワカメを漢字で書くと「若布」と書くことからも解る。
「ヒトハメ」の方は後で調べてみたら、人をハメるというヤバい由来は全然なくて、〝一つの葉〞で「一葉布」なんだそうな。

 

(出展『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』)

 
(出展『和歌山県ホームページ』)

 
葉部が大きな卵形で切れ込みがなく、メカブを作らないのがワカメとの違いみたい。

味は旨い。
シャキシャキとした食感なのに、部位によっては柔らかくてとろみがあって美味しい。粘質物に含まれる食物繊維「フコイダン」がワカメより多いそうだ。
とはいえ、生のワカメをサッと湯通ししたものと、ほぼ変わらない。黙って出されればワカランだろう。

最近は養殖も試みられており、「紀州ひろめ」というブランド名で販売促進されているという。
しかし近年は温暖化で冬場の海水温が下がらないためか、生育状況が良くなくて、収穫量は年々減少しているという。

ネクスト、その下はグレの刺身。
えー、グレとは関西での呼び名で、関東ではメジナと呼ばれている磯の代表的な魚ですな。
グレにはあまり良い印象を持ってない。磯臭いのだ。特に夏場はゲロ臭い。けど餌が違う冬場は美味であるという話も聞く。
それでも何度か食べた事はあるが、特別旨いという印象はない。
この時の味の感想の方だが、1年近く前の事なのでハッキリとした印象はない。ただ、グレにしては旨かったような記憶が残っている。

最後は「ウツボのタタキ」。
ウツボは見た目が凶暴且つグロテスクで小骨も多いので積極的に食べる地方は少なく、紀伊半島南部の一部と房総半島南部、高知県くらいだろう。
何度か食べた事があるが、タタキとはいうものの、生ではなくて火が結構入っている。レアチャーシューとか、ステーキでいえばミディアムレアみたいな感じに仕上げられたのものが多い。
色は白っぽくて鶏肉に似ていて、身は肉厚で柔らかい。味は淡白ではあるが独特の旨みがある。一方、皮は歯応えがあって弾力が強い。皮下と共にゼラチン質でコラーゲンも豊富そうだ。コチラの部位は、噛むと皮下のゼラチン質から濃厚豊潤な旨みが広がる。この身と皮の2つの異なる風味が合わさった味わいがウツボの最大の魅力かもしれない。
とはいうものの、めちゃくちゃ美味いってワケでもないけどさ。食べる機会があれば、トライしてみてはと云うレベルだ。

 

 
海老団子。
野菜も入っている。呻くほどではないが、旨い。

客は誰も来ない。
4月7日に東京や大阪など7府県に対してコロナウイルスに対する緊急事態宣言がなされていたが、和歌山県は対象外だった。
なのに、この閑古鳥の状態である。こんなとこまで影響力があったんだね。未知の病気だっただけに、当時は皆、相当にビビってたんだろう。あとは下手に調子ブッこいて外出して罹患でもすれば、周囲からの批判に晒され、病人なのに袋叩きに遭いそうな雰囲気があったせいもあるかもしれない。
尚、緊急事態宣言の対象を日本全国の都道府県にまで拡大したのは、もう少しあとの4月16日になる。

そういや、この時期には和歌山市の病院でもクラスターが発生したような気がするなあ。その影響もあったのかも。
結局、この日は他に一組の客しか来なかった。オヤジさん曰く、普段は満杯だそうで、土日などは予約しないと入れないそうだ。心なしか元気がなかったのは、そのせいかもしれない。いつもはもっと威勢がいいんだろね。

その後、和歌山県は知事の仁坂吉伸氏の適切な対応で、2021年の2月現在に至るまで感染は少数で抑えられ続けている。あまり報道されることはないが、その手腕は高く評価されているようだ。
余談だが、この仁坂さん、実を言うと蝶屋である。つまり、趣味は蝶の採集・蒐集・研究なのである。
去年の2020年10月には『ブルネイの蝶 Butterflies of Brunei』(NRC出版)という図鑑も出版されておられる。
定価10,000円+税(送料別)と結構な額の本だが、結構売れていて、在庫わずかだという。
これは蝶の雑誌『季刊 ゆずりは』に連載されていたものが下敷きになっていて、仁坂さんがブルネイ大使を務められていた2003~2006年に採集された標本を整理され、図鑑にしたものである。内容は、標本のカラー図版と各解説、巻末にブルネイの蝶663種のチェックリスト付いている。中には新種の可能性があるものも含まれているようだ。

 

(出展『Amazon』)

 
図鑑そのものは見ていないが、「季刊ゆずりは」の連載は一通り見ている。珍品もそこそこ採られておられるので、正直驚いた。どうせ片手間の何ちゃって蝶屋だと思っていたからである。
さておき、和歌山でも網を振られているのかな❓まあ、この御時世だと、それどころじゃないだろうし、見つかったらボロカス書かれるからなあ…。最近の世の中は、おおらかじゃないから揚げ足をとって、徹底的に叩いてくるからね。嫌な時代だよ。
えー、在庫わずからしいので、購入される予定の人は急ぎNRC出版か南陽堂にホームページにアクセスされたし。

話が逸れた。本道に戻そう。

 

 
お店の自家製カラスミ。
カラスミって魚卵好きには堪らんよね。何であんなに美味いんだろうと、つくづく思う。究極の酒のツマミの一つだろう。
となれば、ここは焼酎だろう。

 

 
勿論のこと、ロックである。

 

 
鹿児島県霧島市の国分酒造の芋焼酎『安田』。
店主曰く、芋麹で造られた全量芋製焼酎で、入手困難ゆえにプレミアが付きつつあるという。
通常の芋焼酎は米を使用して麹を造るのだが、これは麹造りから「芋」を使用しているから全量芋製なのだ。芋麹を用いることによって、より芋の風味が濃厚な仕上がりになるそうだ。
使用しているサツマイモも、通常使われる黄金千貫(こがねせんがん)とは異なり、蔓無源氏という品種で仕込まれている。
この芋は今から百年ほど前に食用として栽培されていたサツマイモで、わずか10本の苗から復活させたという。
尚、「安田」という銘柄の由来は、平成4年より国分酒造の杜氏となった安田宣久氏の名字を冠したものだそうだ。

飲んでみる。
あれっ❓ガツンとくるかと思いきや、優しい。香り豊かでフルーティーなのだ。芋焼酎にしては女性的だ。コレってワイングラスで飲んだ方がいいかもしんない。その方が、より香りを感じられそうだからね。
御託を抜きにして、味は素直に旨い。調子ブッこいてガンガンに飲みそうだ。でも、今日はちゃんと電車に乗って帰らねばならぬ。酒バカにならぬよう、ちっとはセーブしよう。
けどカラスミを少し囓って焼酎を口に含んだら、ブレーキホースが瞬時にブッた切れた。焼酎⇒カラスミ⇒焼酎のエンドレス運動が始まる。
この円環のためには下に敷いてある大根が邪魔だ。マイルドアイテムは要らぬ。酒呑みは口中の濃い塩味と旨味を酒で洗い流すのを旨(むね)としているのだ。大根は大根として別に食うべし。それはそれで旨いのだ。

 

 
こんなの頼んだっけ❓
たぶんカツオの心臓の煮付けだと思うが、食った記憶もない。
まあ味は大体想像つくけどさ。おそらく基本は魚の内臓の味で、ホロ苦かったんだろう。
こうゆう渋い酒のアテは、エンジンがかかりやすい。

 

 
『国分 純芋 醸酎』。
コチラも国分酒造の芋焼酎で、「現代の名工」として国から表彰された安田杜氏が手掛けたものだ。
コレも「安田」と同じく従来の製法を払拭し、麹造りの際に米を使用しないサツマイモ100%の芋焼酎だ。ただし、地元産のさつまいも黄金千貫で芋麹を造り、黄麹で仕込んだものである。蒸留後は無濾過・無調整で1年熟成。加水せずにそのまま蔵出しされたものだそうだ。ゆえなのか、アルコール度数は35度と高い。

飲んでみる。
ふくよかで華やかだ。黄金千貫を贅沢に使い、白麹ではなく黄麹を使用しているからか特徴的な甘みと、まろ味(旨味)も感じられる。こっちも旨いね。甲乙つけ難いが、どちらかというとこっちかなあ。

 

 
蛍烏賊の沖漬けだよね。
これも、あまり頼んだ記憶がない。どうせ焼酎に合うだろうと思ってオーダーしたんだろな。どうみても酒呑みが好きそうなものだもん。

あっという間に時間が過ぎた。
旨い食いもんと旨い酒は時間を忘れさせる。
何で幸せの時間は短く感じるんだろ。解るようで解らない。

すっかり外は夜になっていた。駅の光がまばゆい。
午後8時39分発の和歌山ゆきに飛び乗る。

 

  
23時40分、天王寺に到着。

 

 
23時48分発の大和路線の難波ゆきに乗る。

 

 
ようやくJR難波駅に到着。

 

 
23時56分。期限ギリギリで改札を出た。

 

 
外に出ると、まあるい満月が夜空に掛かっていた。
ここに旅の円は閉じた。
小さく息を吐き、「これにて青春18きっぷの旅、終了。」と呟く。
春のやわらかな夜気は、どこまでも穏やかだった。

                        おしまい

 
追伸
第二章の途中で頓挫していたシリーズだが、何とか再開して10ヶ月後に完結できた。基本的には中途半端なのは嫌いなので、ホッと一安心。ようやく肩の荷が下りたよ。
思えば第一章の福井編が5話、第二章の武田尾・三田編が4話、第三章の山陽道編が2話、第四章の紀州編が3話の計14話も書いている。しかも各話が長い。自分でもよく書いたなと思う。
途中で頓挫したのは、多分この長さゆえだったのではないかと思う。書いてて、進まない終わらないで自分でも途中でウンザリしてきたのだ。そこへきてカトカラシリーズの連載が再開したものだから、そっちに力を注ぐことになったのだろう。
今年度の目標は文章を短くする事かな。でも脱線癖を治さねば無理だね(笑)。
文章を書き慣れない人は長い文章を書くのが苦手だろうが、実を言うと短い文章の方が難しい。慣れれば長い文章は誰でも書けるようになるが、それを削ってコンパクトにする方が遥かに難しいのだ。付け足すよりもソリッドに削る方が、より時間もかかるし、難産なのだ。

例によって、この日の正規運賃を示しておこう。

JR難波⇒道成寺 ¥2310
道成寺⇒紀伊田辺 ¥680
紀伊田辺⇒JR難波 ¥3080

              計 ¥6070

今回のチケットは金券ショップで購入した4回分¥6000(もしかしたら¥5000かも)のものだから、1回分を¥1500とすれば、以下の計算式となる。
¥6070ー¥1500=¥4570
つまり、¥4570もお得だったワケだすな。やっぱ青春18きっぷは、とってもお得なんだね。

そろそろ春も近い。
「かんてき」には、今年も行きたいなあ…。モチガツオと自家製カラスミは、もう1回食べたい。

(註1)シッタカみたく鋭く尖ってないから別な種だね

帰って調べてみたら、正式名称はクボガイのようだ。

 


(出展『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
北海道南部以南の日本各地、朝鮮半島、中国南部にかけて分布する。潮間帯の岩礫地に棲み、藻類を食べる。
「磯もの」や「磯玉」と呼ばれ、シッタカと共に海辺の居酒屋や宿などで茹でたものが出ることがある。身は小さいが、はらわたは磯の風味があり、足は甘みがあって美味。
(『Wikipedia』より抜粋)

参考までにシッタカの画像も貼り付けておきます。

 

(出展『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
正式名称は「バテイラ」というらしい。けどあまり使われてなくて、シッタカの方がポピュラーな名前だす。
それにしても、流石のぼうずコンニャクさんだ。食べられる魚介類は調べりゃ何でも出てくる。ホンマ、重宝しとります。

 

スマの刺身に悶絶するの巻

 
少し前の話である。
スーパーKOHYOに行ったら、見慣れない魚の刺身が数点並んでいた。KOHYOはイオングループなだけに、あまり変わった魚は並んでいないので、最初はスルーしかけた。中トロ鮪だと思ったのである。しかしマグロとは僅かに質感が違うような気がした。
何じゃらほい❓と表示を見たら、「スマ」と書いてある。
(・o・)スマ❓何だったっけ❓
聞いたことがあると脳は反応しているのだが、直ぐにシナプスが繋がらなかった。たぶんコーヨーなんぞにそんなモンがあるワケないという固定観念が思考を邪魔していたのだろう。
程なく記憶が知識のゴミ山の中の1点にフォーカスした。
スマって、あの「幻の魚」とも言われているスマの事か❓
スマの刺身はメチャメチャ美味いという噂は随分前から耳には届いてはいた。しかし「幻の魚」と称されるだけに、中々お目にかかる機会がなかった。それが、まさかこんなところで出会えるとは予想だにしていなかったのだ。

 

 
養殖とあるが、この際もう関係ないだろう。とにかく、どんな味かを知りたい。
それに養殖に成功していたと云うのも、だとしても抜群に旨いと何処ぞに書かれてあったのも脳内にインプット済みだ。そこに一切の迷いはない。

安くなんねぇかなあと思ってたら、直ぐに目の前で半額シールが貼られた。ダブル(◠‿・)—☆ラッキーである。

パッケージの蓋を開けて、ニタつく。
このビジュアル、見るからに旨そうだ。艶(つや)っぽくて、エロティシズムが、しとどに溢れ出している。おたく、ビチャビチャですやん。官能的で、もう見てるだけでも昇天しそうだ。久し振りにエレクトする魚に巡り会ったよ。

織部に盛るか信楽焼に盛るかで悩んだが、土物(つちもの)では失礼だ。ここは高貴さを湛えた有田焼のベッドに横たえるとしよう。ケケケケケψ(`∇´)ψ、じゅる。オジサン、唾を呑み込む。

 

 
見た感じ、マグロとカツオの合の子みたいだ。
質感はトロカツオに近いが、色は赤黒くなくて中トロに近いものがある。🎵フォンティーヌ、なんと艶(なま)めかしいピンクざましょ。
オジサン、もう我慢できない。バルトリン氏腺液、ダダ漏れ気分じゃよ。やおら、箸で乱暴に引っ掴み、たまり醤油にドブンとつける。冒涜だ。綺麗なピンクが黒い醤油まみれになる。穢してやった感にリビドーが屹立する。劣情と背徳感とが錯綜する忘我の喜びに溢れつつ、口に放り込む。

(☆▽☆)♥️あふ〜ん。
体をクネクネさせて、身悶えする。
そして、中空に向けて渾身のパンチ👊💥を繰り出す。
うっめぇ━━━━(≧▽≦)━━━━❗❗

想像を超えて身質は柔らかく、キメが細かくて繊細だ。そして噛むと直ぐに口の中で蕩(とろ)け、旨みがドバドバと口じゅうに溢れ出して蹂躙してくる。甘い❗ そして最後に微かな酸味が鼻腔を心地良く抜けてゆく。
(´ω`)メチャメチャ美味いやんけー❗❗

見た目どうりに食感はトロカツオに近いが、より柔らかい。そしてカツオみたくクセのあるワイルドさはない。どちらかと云うと、やや中トロ寄り。しかも極上クラスのモノの味だが、にしては筋張ったところはなく、身質の繊維が細かくて、しっとりとしている。味は微妙にどちらとも違うのだ。謂わば、両者のエエとこ取りなのである。
オジサン、一発で👼昇天。天に召されましたよ。
以後、愛欲に塗(まみ)れたかのように貪り食う。

世の食いもん好きの皆様、スーパーでも居酒屋でもいい、もしも見掛けたら、少々高くとも何が何でもトライですぞ。

一応、種の解説もしておく。
例によって、ぼうずコンニャクさんの力を主にお借りして編集しやす。

 

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
パッと見は、ほぼカツオちゃんである。
スマにしろキツネガツオ、ソウダガツオにしろ、カツオ系の魚は全員が美味なんだね。中でも断トツだろう。

スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科スマ属に分類される大型魚。大きなものは体長1m前後、体重10kgに達するが、日本で見かけるものは50cm〜60cm程度のものが多い。体型はカツオなどと同様の紡錘形で鱗は眼の後部・胸鰭周辺・側線周辺にしかない。
名前の由来は、カツオの縦縞に対して「横縞鰹」の意味で「しまがつお」と名付けられたものが「スマガツオ」に変化したものとされる。
なお、漢字は「須満」「須万」「縞鰹」が宛がわれている。

ぼうずコンニャクさんの味の評価も5つ星だ。

魚貝の物知り度 ★★★★ 知っていたら達人級
味の評価度 ★★★★★ 究極の美味

脂の乗りが良く、漁獲場所や季節によってはマグロを凌ぐのではと囁かれているほどなんだそうな。
身はカツオに似た赤身で、秋に入って水温が低下すると脂肪を蓄えて白みを増し、鮮やかなピンク色の身になる。

 
【地方名】
ワタナベ(千葉県)、スマガツオ(東京都)、キュウテン(八丈島)、ホシガツオ(高知県)、ヤイト・ヤイトガツオ(西日本各地)、ヤイトマス(和歌山県)、ヤイトバラ(近畿地方)、オボソ(愛媛県愛南町)などがある。
「ヤイト」の異称は、胸鰭下方の腹部に複数ある黒斑を灸の痕に見立てたのが由来。

 
【分布】
インド洋・太平洋の温帯〜熱帯にかけた海域に広く分布する。
日本では千葉県外房、相模湾〜屋久島の太平洋沿岸、北海道日本海側せたな町、兵庫県浜坂など日本海側〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、及び琉球列島沿岸、小笠原諸島に分布する。
国外では朝鮮半島南岸、済州島、インド・太平洋の温帯・熱帯域に生息する。

 
【生態】
肉食性で、魚・甲殻類・頭足類などを捕食する。
カツオほどの大群は作らずに単独か小さな群れで回遊し、南西諸島・小笠原諸島沿岸では通年釣れるが本州太平洋岸では8〜10月に釣期が限られる。相模湾・駿河湾ではソウダガツオ類の群れの中から稀に釣れる程度で、まとまって漁獲されないことから、沿岸の表層をカツオ・ソウダガツオ類・ハガツオなど他のカツオ類に混じって回遊していると考えられている。
産卵期は日本沿岸では夏だが、南方ほど長くなり、北赤道海流沿いでは冬期を除く8か月にわたって産卵が行われる。特定の産卵場は持たず、水面に浮く性質の卵を産む。餌が乏しい外洋域では、約1日で孵化した稚魚は一緒に生まれた兄弟を共食いするという。
寿命は約6年。成長が早く、満1歳で1kgに育ち、満2歳で成熟する。カツオの仲間としては好沿岸性で、島嶼部では磯際まで回遊する。

 
【漁獲法】
カツオ・マグロ・シイラなどを狙った釣り、延縄で漁獲されるほか、巻網、定置網などの沿岸漁業でも混獲される。
フィリピン、マレーシア、パキスタン、インドなどでは重要な漁獲対象となっており、1990年代には年間10万トン前後が水揚げされている。
個体数が少なくて本種単独では大群を作らないため、専門に狙う漁はないが、カツオ・ソウダガツオ類に混じって釣れることが多く、それらと同様に活イワシの泳がせ釣り、一本釣り、ルアー釣りで釣れるほか、島嶼部では磯・防波堤からのカゴ釣り、泳がせ釣りでヒラマサの外道として釣れる場合もある。

 
【旬】
旬は一般的に初秋から春にかけてが旬と言われている。しかし『ぼうずコンニャク市場魚介類図鑑』では冬から夏としている。また夏の産卵後以外あまり味が落ちないとしている。なお、大きい方が美味とされる。

 
【市場での評価】
市場での評価は高く、高級魚として名高い。
季節にもよるが、2キロを超えるものは1キロあたり1500円、時に2000円を超す高値になることもあるようだ。高級魚として名高いノドグロ(アカムツ)の市場価格が1キロあたり1000円後半から2000円台みたいだから、その価格に迫る高級魚だということになる。
関東にはあまり入荷がなく、知名度がまだ低いせいか、やや安いという。

 
【料理法】
熱を通してもあまり縮まない。アラからは良い出汁が出る。
選び方は触って張りのあるもの。硬いもの。
料理法は、刺身、たたき(土佐造り)、なめろう、竜田揚げ、角煮、焼き魚、潮汁、みそ汁、煮つけ、なまり節、炊き込み御飯、粕漬けなど多岐にわたる。
台湾では刺身、スープ、鉄板焼などに利用されている。食用以外にマグロやカジキなどの釣り餌として使われることもある。

尚、ぼうずコンニャクさんは刺身と焼き霜造りを特に絶賛しておられる。

(スマの刺身)
身はしっとりと柔らかく、口に含むと脂が溶け出して、甘い。酸味は少なく、魚らしいうま味がとても豊か。絶品としかいいようがない。

(スマの焼霜造りスマの焼霜造り)
口に入れるととろっとして舌の上に微かな酸味とうま味が強く感じられる。ほどよい食感も楽しめて美味。ここではしょうがとにんにくを添えたが、わさびでもいい。

 
【流通】
高知・室戸岬、鳥取・益田、鹿児島県、長崎県、三重県、和歌山県などで時折水揚げされるが、数が非常に少なく、足の早い魚のために都市部にまで出回ることは殆んどない。

釣りでは、黒潮の通り道の伊豆諸島及び小笠原諸島近海、和歌山県、高知県、鹿児島沖、日本海側の玄界灘や響灘周辺の海域、奄美諸島、琉球諸島などで狙えるそうだ。但し、スマ釣り専門の船はないみたい。カツオやソウダガツオ、ヒラマサ釣りの外道で釣られることが多い。

そんな幻クラスの魚スマだが、近年では愛媛県や和歌山県などで養殖も行われ始めており、味が良くて身質がマグロに近いことから、その代替品として期待されている。
とはいえ、まだ全国に出荷できるほどの水揚げ量ではないようだ。しかし養殖技術も上がってゆくだろうから、そのうち安定して流通し始めるだろう。って云うか、そう願いたいね。

                        おしまい

 

鱸の子と魚卵ばなし

 
前回のカニ出汁の話で書き忘れてた鱸(スズキ)の卵の話である。

スーパー玉出でスズキの卵が売っていた。
値段は280円だったが、半額になっていたので実質140円だ。
しかしデカくてグロいので買うのを躊躇した。でも反芻してみればスズキの子を食べだ記憶がない。となると魚卵好きとしては見逃せない。買うことにした。
ちなみに本体の画像は無い。デカくてグロいから撮る気が起きなかったのだ。それに普段なら切り分けて熱湯に放ち、花型に仕上げるのだが、水っぽい感じがしたので丸のままカニ出汁で茹でたら、よりいっそうグロくなってまっただよ(@_@)。白くてブヨブヨで、まるで何かの幼虫(芋虫)みたいに醜悪なのだ。おまけに血管的なものが黒い筋となって浮き立ち、誠に気持ちが悪い。押すとボワンボワンと体を揺らしよる。
\(ㆁωㆁ)/わちゃ、テメェ生きてやがんな❗思わず後ずさりしちゃいましたよ。醜悪にして邪悪。怖気(おぞけ)ましたがな。
ゆえにそっちの画像もない。

更にイラッ💢ときたのは、10分も茹でたのに切ったら中は大半が生だった。(-_-;)何なんだ、おまえ❓お陰で計25分も茹でたよ。

それを輪切りにし、カニ出汁に酒と味醂、薄口醤油を加えて煮付けにした。

 

 
それを2回に分けて食った。
感想を言うと、不味いもんではないが取り立てて旨いもんでもない。粒が小さくて稠密で、粒々感があまりないし、旨みもやや少ないような気がする。
正直、期待ハズレだ。スズキ自体は旨い魚なのに何で❓
偶々ハズレだったのかもしれないし、一応ネットでの評価も確認しておこう。

ネット上での情報は少なかった。それも釣ったら卵が入ってました的なものが多く、調理法の大半は甘辛く煮付けものだった。
味の評価は微妙。好きな人は好き、嫌いな人は嫌い的な記述もあった。どうやら特別に旨いもんではなさそうだ。まあ納得ってとこかな。

振り返ってみれば、我が半生、今まで随分と魚の卵を食ってきたな。思えば魚卵まみれの人生だよ。だからコレステロール値が異様に高いのだ。

魚卵の筆頭といえば、タラコとイクラだろう。

 
【明太子のスパゲッティ】

 
これは説明不要だろう。
もう、旨いとしか言いようがない。何度も言ってるけど、最初に鱈子スパゲッティを考えた人は偉いですな。表彰されて然るべきだろう。

 
【シラスの鱈子あえ】

 
サッと茹でたニラと和えてもいいツマミになる。
タラコと明太子は万能だ。白ご飯は勿論の事、何にだって合う。チーズとも合うんだから、おそれいります。

 
【自家製イクラの醤油漬】

 
これまた魚卵の王道である。
筋子も旨いよね。ここ数年は高騰してるから、前ほど食べれなくなったけどさ。悲しいやね。
似たようなものに鱒の子や岩魚やヤマメの子があるが、全て同じ方向性に旨い。

 
【雲丹イクラ丼】

 
考えてみれば、雲丹も卵巣(+精巣)なんだから卵だよね。魚じゃないけど、魚介類と考えれば範疇に入るだろう。

 
【数の子】

 
黄色いダイヤとも言われる鰊(ニシン)の卵である。
これも言わずもがなの旨さだ。歯応えが堪りまへん。
『銀平』の道頓堀店で何度か食ったけど、子持ちニシンの塩焼きってのがあって、これが身と卵を同時に味わえて最高なんだよね。
あと子持ち昆布も好きだなあ(´ω`)

よくよく考えてみれば、魚卵ってメジャーなものからマイナーなものまで沢山種類があるんだよなあ…。

 
【平政の子】

 
卵を2センチくらいの輪切りにして熱湯に放つと、こうやって丸まって花のような形になるのである。
紹介順がいきなりの変化球だが、けっこう旨いから頭の方に持ってきた。
ちなみに平政(ヒラマサ)は、旬が夏のブリの仲間です。

 
【平目と鯛の子】

 
左が鯛の子で右が平目の子である。
何故かこの時は、気分で鯛の子の方は花型しなかった。
鯛は魚の王者だけあって身も旨いが卵も旨い。白子も美味いし、アラも皮も旨いから最強の魚だろう。

色が黄色いヒラメの子も旨い。鯛の子に勝るとも劣らない味である。でも市場に出回る事は少ないから、あまりお目にはかからないけどね。単品で売ってることは殆んどなく、アラと一緒にされてることが多い。不当な扱いだと思うが、そのぶん安くなってるからいいんだけどね。

 
【鯛の子の玉子とじ】

 
普通に甘辛く煮付けた鯛の子も旨いが、甘さ控えめにしたコチラの方が好きだ。酒の肴にもなるが、ご飯のオカズにもなる。

 
【鱧(はも)の子と松の葉昆布のパスタ】

 
鱧の子で一番作るのはパスタかな。
作り方の基本はオリーブオイルにニンニク、鷹の爪のアーリオ・オーリオ風に薄口醤油を加えて和風寄りにする。
ちなみに上の画像は松の葉昆布を使ったので、ニンニクと鷹の爪は入れず、油は太白胡麻油を使ったんじゃなかったかな❓
仕上げに松の葉昆布を乗せ、木の芽(山椒の葉)を散らした。

コレはバリ旨だったと思う。スッポンの出汁で炊いた高級昆布の松の葉昆布さえ入れれば、何だって激旨になるからね。

 

 
コレは同じようなレシピの冷製パスタかなあ…。或いは上の残りかもしれない。旨いもんは冷えても旨いのだ。鱧の子は下手したら鯛の子よりも美味かもしんない。旨みがより強いのだ。

そういや生の鱧の子でもパスタを作ったな。

 
【生ハモの子の冷製パスタ】

 
鮮度が良かったので、タラコみたく塩漬けに挑戦してみた。
(☆▽☆)これが絶品❗画像は無いけど、生カラスミに比肩しうる旨さであった。湯がいた鱧の落としの上にも乗っけたし、帆立の刺し身と和えたり、タラコみたく白御飯と食べたりもしたが、全て絶品だった。塩辛の1種みたいなもんだから少々手間と時間がかかったが、その甲斐は十二分にあったよ。

 
【子持ち鮎】

 
我、子持ち鮎偏愛主義者である。
でも出回る時期が限られるので、時期になれば目を光らせるようにしている。ぼおーっとしてたら、すぐ市場から消えてしまうのだ。

そういえば「子うるか」という絶品の高級珍味があるが、マジで美味。うるかといえば内臓の塩辛の「苦うるか」が基本なのだが、稀に鮎の卵の塩辛の「子うるか」と、これまた絶品である白子の塩辛「白うるか」を見かける。見かけるといっても、どちらも何十年とお目にかかってないんだけどね。それくらい珍しいものだ。マジで、酒呑みには堪りまへん代物ですわ。

 
【子持ち鰰(ハタハタ)】

 
ハタハタの卵は「ブリコ」とも言われ、体の割合に比べて卵が大きいのが特徴だ。
しかし、味はガッカリもんだ。旨みがあまりなくて、歯応えもキシキシしてて、お世辞にも旨いとは言えない(一部では評価が高く、好きな人は好きらしい)。
身は美味しい魚なのに何でざましょ❓身が旨い魚は卵も大概は旨いんだけど、時には例外もあるのだ。あっ、シー・バス(スズキ)もそうなるのか。

卵が大きいというので思い出した。次のコレも粒が大きい。

 
【鰍(かじか)の子 明太子風】

 
カジカといっても川にいる奴ではなくて、海にいる奴だ。
コレも鮮度が良かったので塩辛にした。いや、醤油漬けだったかもしれない。
粒が大きくてプチプチで、旨みもあって、かなり美味かったと記憶してる。だが、量が多過ぎて途中で飽きてきた記憶もあるけどね。

 
【鰍と針烏賊の和え物】

 
飽きてきたので、イカの刺身と一緒にしてみたんだと思う。
酒の肴としては身をよじる旨さだ。白御飯の上に乗っけても美味い。炊きたて白飯と一緒にハフハフとカッ込むと、身体くねくねで仰け反りまっせ。

 
【真子の釜玉風チーズ乗っけパスタ】

 
真子とは真鱈(タラ)の卵の事である。ちなみにタラコは、タラはタラでもスケソウダラの卵だ。マダラの卵はタラコとは見た目が全然違ってて、デカくてグロい。

 

 
デカイだけじゃなくて、表面が汚くて全然旨そうに見えないのである。買ったはいいが、途方に暮れた記憶がある。

画像は茹で上がったパスタに真鱈の子、鶏の卵とバターを乗せ、醤油と黒胡椒をかけてグシャグシャに掻き混ぜたものかな…❓
詳しくは拙ブログの『グロい真鱈にゃ気をつけろ』と題して書いてる筈だから、そっちを読んでね。
一応言っとくと、画像に「出典」と入っていないものは、全部それについて書いてる文章が存在します。このワードプレスのブログか同タイトルのアメブロのどっちかに文章があります。暇な人は探して読んで下され。例えば「蝶に魅せられた旅人+イクラ」で検索すれば、それ関係にヒットします。

画像はないが、他にもマイナーな魚卵はそこそこ食ってきた。記憶しているところでは、ブリ、サバ、サワラ、カンパチ、シマアジ、マグロなんかがある。

メジャーどころではボラの卵を干した高級珍味「唐墨(からすみ)」がある。イタリアにも「ボッタルガ」という近いものがあって、パスタと混ぜ合わせて食べたりする。カラスミのスパゲッティは美味いよね。
参考までに言っとくと、ボラの卵で作るのが基本ではあるが、他の魚でもカラスミは作れます。
尚、生カラスミと呼ばれる塩辛があり、これが死ぬほど美味い。

 
【生カラスミ】

(出典『築地魚群』)

 
市販のモノも結構ある。だが旨いけど高いので、自分で作ったことがある。画像は無いけど、悶絶級に美味かった。

他には魚卵といえば、飛魚の卵の飛びっ子、ワカサギ、本シシャモ、カラフトシシャモ(カペリン)あたりは大概の人が知ってるだろう。
ちなみに居酒屋で出てくる子持ちシシャモは、シシャモではなくてカラフトシシャモ。ホンマもんのシシャモとは別種である。どころか分類学的には「科」さえ違う縁遠い間柄だ。付け加えておくと、本シシャモの方が味は遥かに上品で繊細である。カラフトシシャモの方は脂臭い。参考までに言っとくと、シシャモもカラフトシシャモもオスの方が身自体は旨い。

他にポピュラーといえば、カレイかな。煮付けとか干したものに、よく子が入ってる。美味しいよね。

あとはマイナーだけど子持ちニゴロブナというのもあったな。
知ってる人は直ぐにピンときたとは思うけど、このフナが琵琶湖名物「鮒ずし」の原材料だ。

 
【鮒ずし】

(出典『旅ぐるたび』)

 
発酵食品で、クセがメチャメチャ強い。アンモニア系の独特の臭みがあるのだ。例えるとするならば、ウォッシュ系のチーズと相通ずるものがある。

これまたマイナーたが、『フグの糠漬け』とゆうのもある。

 
【河豚の子の糠漬け】

(出典『Foodie』)

 
たしか金沢とか石川県の名物珍味だ。たぶん福井辺りでも作ってた筈だ。
ご承知のとおりフグの卵巣には、肝などと同様に致死性の高い毒素であるテトロドトキシンが多く含まれている。だから、そのままでは食用にできない。
しかし、その卵巣を2年か3年間塩漬け&糠漬けにすると毒素が消えるんだよね。不思議ですな。
猛毒のものをそこまでして食べようという姿勢には頭が下がるよ。試し食いするのにも相当な勇気がいるしね。
そのままだとそう旨いもんではないが、白飯は沢山食える。兎に角、信じられないくらいにしょっぱいのだ。とはいえ、味付けなしで御茶漬けにしたり、パスタに入れると旨い。

こんなもんかなあ…。
魚じゃないなら、前回に取り上げたカニの卵、内子と外子とゆうのがあるし、海老の卵もある。甘海老なんかには、よく緑色の卵が付いてるよね。
烏賊も子持ちイカなんてのが珠に売ってる。そういやタコの卵はあまり知られてないが「海藤花(かいとうげ)」というんだよね。コレは卵が蛸壺などの天井に産まれ、その形が藤の花に似ているからと名付けられた。

 
【海藤花】

(出典『京都錦市場 珍味通販の喜久屋』)

 

(出典『一般社団法人 明石観光協会』)

 
高級珍味ではあるが、騒ぐほど旨いもんではない。産卵前の真ん丸のも食べた事があるが、期待外れだったと記憶している。

おっと、メジャーだけど高級過ぎて食べた事がある人は少なそうなキャビア様の事を忘れてたよ。
キャビアはチョウザメの卵である。サメといっても淡水にいるもので、あの凶悪な鮫とは全く別物の生物である。そもそも歯が殆んど無いんだから、危険度ゼロのおっとりさんなのだ。
たしかカスピ海にはセヴルーガ、オシェトラ、ベルーガという3種類のチョウザメがいて、その順で高級となりベルーガが一番上物だった筈だ。
余談だが、カスピ海沿岸をバイクで走ったことがあるんだけど、綺麗な水色だったんで驚いたなあ。

あとパチモンのキャビアもあったな。ランプフイッシュという深海魚の卵を昔はキャビアと称して売ってたんだよなあ。高級ホテルでも、このパチモンが料理の上にチョコンと乗っかってたもんな。キャビアは黒っぽい灰緑色だが、ランプフイッシュは真っ黒なので見極めるのは簡単なんだけどね。
あっ、でも今はランプフイッシュ・キャビアとイミテーションだと堂々と名乗っているから、より偽装度は上がっているかもしれない。食べれば分かるけどね。あー、でもキャビアを食べた事のない人にはワカランよな。旨かったらキャビアだと言いたいが、それも人によりけりだからなあ…。ホンマもんを一度は食べるしかないです。

そういや思い出した。昔つきあってた彼女からの誕生日プレゼントがキャビアだった事がある。アタシャ、たしかにキャビアは好きだよ。でも何だそりゃ❓である。
悪だくみは天才的、頭の切れるクレバーな女性だったけど、エキセントリックな女(ひと)でもあったもんなあ…。こんなの思い返せば序の口だったよ。
でも考えてみれば寄ってくんのは、そんなエキセントリックなのばっかだったかもしれない。昔から美人で小悪魔的、捉えどころが無くて、取っ掛かりが難しいような不思議系の女性とは縁があるんだよなあ…。多分その不思議さがさして気にならなくて、何となく理解できたからなのかもしれない。
それに小悪魔系は得意分野だった。ワシにはあんまし攻撃が効かなかったし、そのせいかあまり攻撃もされなかったしね。それに悪魔度は、こっちの方が高かったかも。だからボロボロにされた事は殆んどない。一人を除いてはね。
そういや、あの時のキャビアってどうしたんだっけ❓
たぶん…、彼女が「冷製キャビアのカペリーニ」を作ってくれたんだと思う。

 

(出典『* Fleur de Coeur *ココロノハナ』)

 

(出典『エピレシピ リストランテ・アルポルト』)

 
それ以来、今でも「冷製キャビアのカペリーニ」は好きだ。

 
                        おしまい

 
 

作州黑枝豆、見参❗

 
見たことのない品種の黒豆枝豆が売っていた。

 

 
食材チャレンジャーとしては見逃せないところだ。
値段も198円と安めだったし、買うことにした。

岡山の特産品で『作州黒(さくしゅうぐろ)』という品種らしい。
黒豆の枝豆といえば、京都府で作られる「紫ずきん」が有名だけど、枝豆みたく黒豆の枝豆もいよいよ品種改良が本格的になってきたのかな❓

普段なら粗塩で揉んでから茹でるのだが、裏面を見ると、そのまま塩茹でするみたいな事が書いてあった。なので、鍋に大さじ1の塩と水を入れて沸騰させる。
で、5分くらい茹でる。
だだちゃ豆などは茹でてる時も香ばしいような香りがするのだが、特別どーと云う香りはしないようだ。

笊にあげ、塩を振って出来上がり。

 

 
 
実が大粒で肉厚な感じがするね。

 

 
匂いを嗅いでみるが、やはり特段変わったところはない。
早速、食べてみる。

 

 
口に含むと、ブリブリのゴリゴリの肉厚で、噛み応えがある。

作州黑、見参❗
噛んでると、(☉。☉)❗
(☆▽☆)甘っ❗❗

後味がメチャメチャ甘いのである。
(-_-;)ムムッ、「紫ずきん」よか美味いかもしれん。武蔵は小次郎よりも強いのである。

にわかに興味が湧いてきた。
「作州黒」について調べてみよう。

何と「作州黑」といっても、丹波地方の「丹波黑」と全く同じ品種らしい。作州は丹波地方と同じような気候ということで、栽培が始まったらしい。因みに「紫ずきん」は、この丹波黑を食べやすく品種改良もののようだ。
丹波黒大豆は全国の産地でブランド化が進められていて、岡山の勝英地域(美作市、勝央町、奈義町など)で作られているそうだ。

作州黒の枝豆は、何と旬が3回もあるらしい。

◎10月上旬
10月上旬の作州黒の枝豆は「枝豆」と聞いてイメージするような緑の枝豆で、一般的な枝豆とは違い大粒で甘みがあるのが特徴です。

◎10月下旬から11月上旬にかけて
「黒枝豆」らしい少し黒がかった見た目になっていき、味は、よりホクホクとしてまるで栗か銀杏を食べているかのよう、豆の甘さと風味が充分に増した枝豆になります。

丁度、今の時期だね。

◎11月下旬ごろ
外側は茶色くなり、鞘の中の豆は黒く染まる。
見た目は悪いが、地元の通の間では、この時期のものが一番美味しいとされるようだ。
熟度が増すほどに、コクと香りと甘さが強くなり、 豆はプックリ、しっかり茹でればねっとり、味はほっこりとして栗的な風味に様変わりするという。
但し、「見た目が悪い」「傷んでるように見える」と店頭では敬遠され、売りづらくなるので市場に流通させる分は前半のうちに収穫して終わりにしてしまうようだ。

そういえば1/4くらいは、鞘の中の豆が黒くなってるものがあって、食感が違ってたわ。
でもどっちかと云うと真っ黒なものよりも、黒くなり始めたヤツの方が好みだ。黒いのは少し固いのである。やや黒の方が歯応えにネットリ感が少し入るような気がするんだよね。
とはいえ一々中を見て食ってるワケではないから、あくまでもファジーな印象だけどもね。

尚、この時期のものは煮豆にもなるらしい。
「黒大豆は煮豆にしても、見栄えが良いだけでなく風味もよく、なめらかな舌触りが最高で地域のおせち料理にもかかせない逸品となっています。」と書いてあった。
まあ、考えてみれば、当たり前なんだけどね。

売ってたら、買いですよ(•‿•)

                        おしまい
 

追伸
タイトルを「見参❗」としたのは、宮本武蔵をイメージしての事である。武蔵は作州美作の生まれだからね(異説あり)。武蔵のように素朴で荒々しい感じもする黒枝豆なのだ。一方、紫ずきんはもっと洗練された味なのだ。だから佐々木小次郎をイメージした。
ちなみに佐々木小次郎の生まれは不明とされる。だが、豊後(福岡県)や越前(福井県)とする説もあるようだ。自分の中では何となく京都のイメージがあったんだけどなあ…。

 

すだれ貝で、( ̄□ ̄lll)すだれ顔

 
久し振りにスダレ貝に会った。

 

 
特別な印象はあまりないが、そこそこ旨かったような記憶があるし、半額だから買うことにした。だって、たったの140円くらいなんだもーん。それに死んでるならパスだけど、何とか青息吐息で辛うじて生きていそうだった。一応言っとくけど、半額なら何でも買うと云うワケではない。ちゃんと目利きした上での判断だ。
死んでる貝は激クサ死臭で、食ったらマジでヤバいと云うか、下手したらアタるどころか死にまっせ(笑)。けんど、生きててさえいれば、危険度は低いのだ。されども貝毒とゆうのもござるので、絶対セーフではないけどもね。

調理する前にスダレ貝について調べてみよう。
好奇心があると言えば聞こえがいいが、相変わらずメンドくさい性格である。

先ずはいつも御世話になってる『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』を見てみよう。ワケのわからぬ魚介類を調べる時は、このサイトが一番使えるのだ。

魚貝の物知り度 ★★★★★ 知っていたら学者級
味の評価度 ★★★ 美味

どうやら味はまあまあみたいだね。

【分類】
二枚貝綱 異歯亜綱 マルスダレガイ目 マルスダレガイ科 スダレガイ属。漢字で書くと「簾貝」。
スダレガイという名称は、表の殻頂から同心円を描く太い簾(すだれ)状の輪脈(細い筋)に因むそうだ。

【生息域】
海水生。水深10〜40mの浅い砂地に生息し、アサリなどと同じように海水を濾過してプランクトンを摂取している。
分布は国内では北海道南西部から九州に至る沿岸とされ、朝鮮半島、中国大陸南岸にまで及ぶ。

【主な産地と漁獲量】
ほぼ全国の沿岸に生息するようだが、底曳き網などで稀に他の貝類に混じって獲れる程度のようで、産地は非常に限定的。流通に乗せられるほど獲れる地域は殆んどない。

おいおい、そんなに珍しいのかよ。にしては安いよね。

【漁獲時期と旬】
旬は春で、4~6月とされる。
つまり、同じ二枚貝の浅蜊とかと同じって事だね。

【市場での評価】
嫌みのない味の良い二枚貝だが、前述したように生息数が少なくて市場に出回る事は殆んどない。市場で目にする「スダレガイ」と表記されている貝は本種ではなく、だいたいは近縁種のアケガイって貝らしい。
えっ❗、じゃあもしかしてコヤツも、そのアケガイ❓
アケガイと似ているが、本種の輪脈はアケガイのそれよりも段差がハッキリしており、それが殻頂(貝の上の部分)にまで及んでいるのが特徴。アケガイは上部に筋が無く、滑らかでツルツル。また、アケガイの殻の内側は殻頂部辺りが黄色いのに対し、本種は黄色くない。

もうメンドくせーなあ。そのアケガイとやらも調べないと話にならんではないか。その前にスダレガイの見た目って、どんなだっけ❓ギガの使い過ぎで画像の取り込みがメチャ遅いから文字だけコピーして書いているのだ。

 
(スダレガイ)

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
何だよ。全然違うじゃないか。
(-_-;)もしかして…。
慌ててアケガイの方も調べてみる。

 
(アケガイ)

(出典『ぼうずコンニャク魚貝類図鑑』)

 
( ̄□ ̄lll)あちゃー、スダレ顔になったよ。
とゆうことは、ワシが買ったのはアケ貝やんけ(-_-メ)
それにしても、相も変わらず魚介類業界の紛(まが)いもん表記は酷いな。こんなの完全に詐欺でしょうに。
あ〜あ、アケガイで調べ直しじゃよ。    

【分類】
マルスダレガイ目 マルスダレガイ科 スダレガイ属。
貝殻の模様と色は多様で、ベージュ系から濃いブラウン系まで様々。膨らみがやや強く、不規則な同心円肋で被われる。殻頂附近は平滑。
漢字で書くと「朱貝」。名前の由来は、おそらく足の部分が鮮やかな赤だからだろう。

味の方はどうだ❓
評価が低かったらガックシだよなあ…。

魚貝の物知り度 ★★★★ 知っていたら達人級
味の評価度 ★★★ 美味

おっ、スダレガイと変わらんじゃないか。ホッとしたよ。

【地方名・市場名】
アケスダレ(朱簾)、アカガイ(赤貝)、アカゲ、アブラガイ、クワズガイ、コウクイ、コウクリ、コングリ、サネガイ、ジョロガイ、タコガイ、チョウセンガイ、テッポウガイ、トリガイ、ハマグリ、ヒメカイ、ヒメガイ、ヒメサンガイ、ビンゾウ、ベニガイ、ベンクシガイ、ミミスリガイ、ミンガラガイ。
こんだけ名前があると云うことは、何処でも獲れるって事ね。

【生息域と分布】
海水生。水深10〜50mの砂地。
北海道南西部から九州。朝鮮半島、中国。
アサリよりもやや沖合に生息し、三河湾が産地として知られ、主に貝桁引き網で獲られる。
なるほどね。今回のも愛知県って書いてあったわ。

【市場での評価】
内湾で獲れるもので、主にアサリの代用品として利用される。アサリの減少から活貝、加工品として需要が高まっている。国内でも獲れるが、この需要を主に満たしているのが輸入モノ。中国や東南アジアからボイルしたものが冷凍の形で入ってくる。これを佃煮や総菜に加工しているようだ。絶対に「アサリの佃煮」とかって言われて、知らんうちに食わされてるな。
国内産はまとめて入荷することは少ないが、時にまとまって入荷してくる。値段は安い。

【目利き・選び方】
国産は原則として活け。活きのいいもの。貝殻の表面の滑りに透明感のあるもの。貝類は生きているものを選ぶことが前提で、水中のものなら水管を伸ばし、触ると素早く引っこめるものを選び、水から上げられているものは殻を閉じ、だらりと口を開けていないものを選ぶ。

【旬・味わい】
春から夏。
クセがなく旨みがやや薄いが、味的には間違いなく美味しい。
熱を通すと硬くなりやすいのが難点。

長々と書いたが、いい加減に調理にかかろう。
考えるのが面倒くさくて、酒蒸しにすることにした。調理法は基本的に浅蜊と同じだろう。

①ザルなどに入れて流水でザブザブと擦(こす)りながら洗い、水分をよく切る。

ゴシゴシ洗ってたら、足が取れた。

 

 
ちょっと迷ったが、生で食べてみることにする。
浅蜊は毒がある可能性があるから生では食べてはいけないと言われるけど、こんくらいなら大丈夫だろ。醤油をかけて食う。

(☉。☉)あっ❗、甘くて美味いぞ。
いっそ全部、生で食うたろかと思ったが、一々口をコジ開けてなんかいられない。やっぱ酒蒸しでいいや。

②雪平鍋に入れて酒を振りかけ(お好みで生姜を入れてもいい)、蓋をして蒸し焼にする。貝殻が開いたら出来上がり。お好みで三つ葉やネギを散らしてもよい。

この間、1、2分。そう、超簡単なのである。
ニンニクを加えて、白ワインで蒸し上げてもいいと思う。

 

 
見た目は浅蜊よか美しい。
とはいえ、毒々しいと見る向きもありそうだけどね。

食べてみよう。
先ずは出汁を飲む。
浅蜊よりも旨味が弱いような気もするが、旨い。

お次は身だ。
味は良い。でも、これまた浅蜊よか旨味が少ないような気がする。まあ、旨いという範疇には入るとは思うけどさ。
気になるのは食感だ。浅蜊よりも明らかに身質が固い。そこがちょっと残念ところかな。その代わりといっちゃ何だが、アサリと比べて身は大きいので食べごたえは浅蜊よりもある。

残り汁に余っていた卵の白身を入れて飲んだ。

 

 
普通に旨い。
けど、無茶苦茶あうってもんでもない。

それはさておき、ちょっと待てよ。旬は秋じゃなくて春だったな。それで思い出した。確か春先にも食ったような気がするぞ。もしかして、そっちこそ正真正銘のスダレガイだったりして…。

 

 
やっぱ、あった。
日付を見ると、5月23日になっている。

 

  
う〜ん、でもコッチもアケガイだね。
調理法は何だったっけ❓たぶん酒蒸しだったような気がするけど。

 

 
あらあら、器の選択も同じだし、どうやら調理法まで同じみたいだね。
記憶が少し甦った。そういや、この時の方が旨かったわ。やはり、旬は春かもしれないね。

                        おしまい

 
追伸
今回は酒蒸しのみ紹介したが、何にでも使える素材のようだ。
味噌汁、焼きアケガイ、アヒージョ、なめろう、ボンゴレ風パスタ、刺身、寿司、ぬた、かき揚げ、ブイヤベース、佃煮、炊き込みご飯などが紹介されていた。ようはアサリと思えばいいのである。
絶賛している料理があるので、一つだけ紹介しておこう。

◆アケガイの貝汁そうめん
多めのアケガイを酒蒸しにして、そこにめんつゆと水を加えて味を整えて冷蔵庫で冷やす。茹でたそうめんを冷水ですすぎ、水気を切って器に盛る。その上から先のアケガイの汁をかけ、刻んだ大葉とショウガを散らす。

これがことのほか旨いらしい。
今度見つけたら、そうしてみよう。あっ、でも春の方がいいかもね。

 
ー参考資料(ネット)ー

◆『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』

◆『旬の食材百科』

 

満月と月日貝

 
昨日は中秋の名月だった。
だから月日貝(ツキヒガイ)を食べたくなった。しかし、珍しくて中々市場には出回らない貝ゆえ、そうおいそれとは見つからない。
(`・ω・´)シャキーン。しかーし、引きが強い男だから出会っちゃうんだよねー(。•̀ᴗ-)✧

 

 
3枚入ってて、税込みで三百円くらいだった。
何度か買ってるから安いのは知ってたけど、改めて思う。価値を考えると、信じらんないくらいに安いよなー。
マイナーな貝だけあって、誰も手を出さないから安いんだろね。神はチャレンジャーにこそ、褒美を与えたまうのだ。
あっ、今気づいたけど、コレって『食材チャレンジャー、イガがゆく』シリーズの回でもあるよなあ。

因みに左2枚が表で、右の白いのが裏である。
名前の由来は、そこにある。表が濃い赤褐色なのに対して裏は白という対照的な色をしており、これを「月」と「日」になぞらえたそうだ。何か縁起が良さそうだ。

上の写真では裏面がよくワカランだろうから、別な画像を貼っつけておくね。

 

 
ついでに内側の画像も貼っつけておこう。

 

 
内側もオシャレだね。
帆立貝と同じように皿としても使えますよー。

しかし、待てよ。表側のワインレッドの色が何でお月さんなのだ❓ 昔、調べた筈だけど、すっかり忘れとるがな。
気になるので、レアな魚介類を調べる時には絶大なる信頼を置いている『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』で検索した。

流石、ぼうずコンニャクさん、ちゃんと書いてありました。
「武蔵石寿『甲介群分品彙 1836』による。右殻が明るいクリーム色で、左殻が赤味を帯びた褐色であるのを「昼と夜」=「太陽(日)と月(夜)」としたもの。」
なるほどね。疑問があっさり氷解したよ。

ついでだから、ぼうずコンニャクさんの力もお借りして、月日貝について解説しておこう。

ツキヒガイはホタテガイなどと同じイタヤガイ科に含まれ、ツキヒガイ属に分類される大型の二枚貝。殻高12センチ前後で貝殻は薄く、膨らみは殆んどなくて硬い。
近縁種には南方系の「タイワンツキヒ」や「タカサゴツキヒ」などがある。あれ?タカサゴも台湾に関連する言葉じゃん。

獲れる数が少なく、一般のスーパーで見かけることは殆んどない。ちなみに味はメチャメチャ美味い。身はホタテそっくりなのだが、舌触りや味わいが帆立貝の上をいく。謂わば、知る人ぞ知る旨い貝なのだ。味だけでなく、見た目も帆立貝よりも綺麗だ。表面のワインレッドカラーは艶々で美しい。加工したら、何かに使えそうだ。

ぼうずコンニャクさんの評価を並べてみよう。

魚貝の物知り度 ★★★★ 知っていたら達人級
味の評価度 ★★★★★ 究極の美味

(☉。☉)おー、最上級の評価じゃないか。そいでもって、ワシって達人級の人なのだ。

外国名は「Japanese moon scallop」。ようするに日本の月みたいな帆立貝ってことだね。
学名は、Amusium japonicum japonicum(Gmelin,1791)
学名にも日本が入ってんだね。原産は日本ってことかな。

地方名・市場名はアホほどある。
エボシガイ オイオッキ オゼンゲ オツキガイ オツキサマガイ オツキサンガイ カミサラガイ サラゲ ツキミガイ ツッゲ ツキガイ ヒドンゲ ヒノデガイ ヒノマルガイ ヒラガイ ヒロンゲ ホンミミガイ モッゲ。
やはり、月とつくのが多いね。おっ、お誂え向きに「ツキミガイ」ってのもあるや。
あれっ❓、シロガイってのが無いぞ。実を言うと2週間ほど前にも月日貝を食ったのだが、鹿児島産のそれは「白貝」と書いてあったぞ。

 

 
ほらね、パッケージに白貝と書いてあるでしょ。
そして、ご丁寧にも下側の欄外にマジックで月日貝と書いてあるね。

もちろん海水生で、沿岸の水深10〜100メートルの細砂底に棲み、底曳き網漁で得られるそうだ。つまり、コレだけ狙いではない漁って事だよね。だから、あまり沢山は獲れないのだろう。
分布は太平洋側は房総半島以南から九州、日本海側は山陰〜九州までの沿岸部。国外では南シナ海、大韓民国、台湾に分布する。
西日本では比較的見かけるものの、東日本では殆んど見ることがない。とても味の良い二枚貝で、流通量は少ないながら人気があるゆえ、西日本ではやや高値。関東などではあまり評価が高くない。

選び方のコツは、生きていて、触って反応のあるものがよい。キュッと殻を閉めるって事ね。茶色い液体が出ているものや軟体の柔かいものは古い。殻を剥いたものは、貝柱が丸くて膨らみのあるものを選ぼう。
旬は秋から春となっているが、別なサイトでは9月〜11月の秋が旬とあった。まあ、5月に買って食ったら旨かったという記事がネットにあったので、食べた事がない人はチャレンジしてもいいんじゃないかな。貝柱は季節によって大きさが変わるそうだけど、よほど高くない限りは、買ってみなはれ。

貝柱は旨みが強くて、全くクセがない。ヒモなども美味。
調理法は幅広く、刺身、塩焼、バター焼き、フライ、煮物など、何でも旨いとされる。ようするに、食べ方は帆立貝と同じと考えてよい。

ぼうずコンニャクには、代表的な調理法も書いてあったので、載せておく。

(刺身)
イタヤガイ類中もっとも美味。甘みが強く、旨みが濃厚、食感も程好い。ただし貝柱に大小があり、外見からは意外と分かりにくいのが難点。

(ツキヒガイの貝殻焼き)
貝殻のまま焼いて、酒、醤油で味付けする。貝らしい旨みがあり、あまり硬くならない。

(月日貝のバター焼き)
バターで焼くことで旨みが液状になり、ソースをかねる。これをからませながらソテーする。フェンネルなどハーブ類を利用しても美味。

(月日貝のフライ)
揚げると旨みが貝柱の中に溜まり、また柔らかくジューシーに感じる。

(月日貝の煮物)
貝柱、内臓などと一緒に甘辛く煮る。ジャガイモなど野菜と煮ても美味。

 
解説が長すぎたね。そろそろ調理に取り掛かろう。

捌き方は、基本的にホタテと同じだ。
貝の隙間から貝開けの刃を入れる。無ければナイフ、フォークのナイフで代用できる。刃を入れ、殻に沿わせながら片側の貝柱を切断して外す。
砂に棲んでいるため、砂や泥が中に入ってる場合があるので、あれば軽く水で洗い流すべし。流すべし❗
しまった。『明日のジョー』の打つべし病が出たあるよ。

さて、どーしてやろうか〜。こうしてやろうか〜。やってやろうか〜。どーしてやろうか〜。
いかん、今度は指示待ち妖怪の「妖怪どうしたろうかしゃん」と化しとるやないけー。

(ー_ー゛)えー、刺身にします。
刺身で食べる場合は、もう片方の貝柱も断ち切り、貝柱だけを取り出すべし。取り出すべし❗
で、刺身庖丁で適当に切った。思ってた程に貝柱が大きくなかったので、思い切って2つ分を潰してやった。
あとは月日貝の殻に盛り付けるべし。べし❗、べし❗、べし❗、盛り付けるべーしっ❗

 

 
ワシは邪魔くさいからやってないが、殻の下に塩を盛っておけば、安定性が良くなってグラグラしない。

溢れんばかりの期待をもって、食う。
(≧▽≦)うみゃーい❗❗

ホタテよりも甘みと旨みが強く、繊維が少なくて舌触りが滑らかだ。完全に帆立貝を凌駕しておる。ホタテくんには申し訳ないが、数段勝っておるわい。
これで二百円なんだから、コスパもボロ勝ちじゃねえか。

ワタが余っておるので、どうしてやろうか〜、こうしてやろうか〜、どうしてやろうか〜。またしても妖怪どうしたろうかしゃんの登場である。
オリーブオイルにニンニク少々を入れて火にかける。そこにワタをブチ込み、サッと炒めて最後に醤油で味付けした。

 

 
完全に酒のツマミだね。
ほろ苦くて旨い。

最後の1個は、バター焼きにした。
さっきと調理法があまり変わらない気もするが、ここは王道で締めたい。

 

 
バターで焼いて、最後に醤油を垂らすだけ。香ばしい香りが堪らんね。
味は勿論のこと旨い。
旨いんだけど、刺身ほどの感動はないかなあ…。

月日貝、今が旬なんで、見つけたら迷わず買いですよ、奥さん。
あっ、でも鮮度はちゃんと確かめてね。

 
満足至極で外に出ると、教会の屋根から満月が昇ってきた。

                        おしまい