2019’カトカラ2年生 其の1

No.18 アサマキシタバ 前編

『晩春と初夏の狭間にて』

 
2018年にカトカラ(シタバガ属)を集めようかと思い始めた頃には、既にアサマキシタバの時期は終わっていた。
なので、2019年はまだ見ぬアサマくんからのスタートとあいなった。

思えば、カトカラを追い掛けるキッカケになったのはシンジュサン探しからだった。
蝶採りにも飽きてきて、この年はまだ見ぬ有名な昆虫たち、例えばオオトラカミキリとかオオチャイロハナムグリなんかを探そうと思っていた。予定調和は面白くない。未知なるモノを全智全能を傾けて採るから楽しいのだ。
そのリストの中にシンジュサンも入っていた。つまり、恥ずかしながらも実物のシンジュサンを一度も見た事がなかったのである。虫捕りを始めた時には、そう珍しいものではないだろうから何処かでそのうち会えるだろうと思っていたが、なぜか一度も出会えなかった。
で、この年は真面目に探し始めたんけど、これがどうにも見つからない。んなわけなかろうと、途中から必死モードになったんだよね(笑)。たぶんシンジュサンって、今や普通種じゃないんでねえの❓
その辺の苦労話は拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題して書いたので、宜しければ読んでつかあさい。

【シンジュサン(神樹蚕)】


(2018.6月 奈良市)

その折りに、副産物としてフシキキシタバとワモンキシタバが採れて、ちょっとカッコイイかもしんないと思ってしまった。それが黄色いカトカラに本格的に興味を持ち始めた切っ掛けになった。
そういえば、その1ヶ月程前の5月中旬くらいにシンジュサンが見たくてA木くんにせがんでライト・トラップをしてもらったんだった。
場所をお任せしたら、彼は金剛山地の持尾方面を選定した。
だが。結局飛んで来たのはベニスズメとかコスズメくらいで、そのうち雨が強くなって早々と撤退。結局、シンジュサンは見れずじまいだった。
その時に、A木くんから『もう、アサマキシタバも出てるかもしれませんよ。』と言われたんだっけな…。
でも、アサマキシタバと言われてもピンとこなかった。よくワカンなかったから、生返事しか出来なかったように思う。言われてキシタバの仲間だろうと云う事くらいは何となく想像できたが、頭の中には図鑑等でインプットされた画像は一切無かったのである。
だから、もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったならば、黄色い系のカトカラには全く興味を持たなかったかもしれない。正直、アサマキシタバは黄色いカトカラ類の中にあっては一番小汚いのだ。蛾は基本的に忌むべきものだったから、(`ェ´)ケッと思ったに違いない。汚いのは蛾の概念の域を出ない気色の悪い存在でしかないのである。

 
2019年 5月18日

小太郎くんに『アサマは見られる時期がわりと短いですよ。鮮度の良いキレイな個体を採りたければ、早めに行っといた方がいいんじゃないですか。』と事前には聞かされていた。たしかに去年ここを最初に訪れた時は6月上旬だったけど、ボロでさえも一つも見なかった。
今年は蝶の発生が例年よりも早いと言われているし、もう出ているだろうと思い、この日はその奈良県大和郡山市の矢田丘陵へと出掛けた。

この季節を人々は初夏と呼ぶが、自分の中では晩春だ。なぜなら、1年を夏は6,7,8月。秋は9,10,11月。冬を12,1,2月。そして、春を3,4,5月と便宜上区切っているからだ。だから、3月1日がどんなに寒かろうとも春だと自分に言い聞かせて気持ちを切り替えるようにしてきた。
とはいえ現実の感覚とか心は、けっしてそんな風には割り切れないところがある。今日はまだ5月だが、既に気分は半分夏だ。あれっ?自分で何を言いたいのかワカンなくなってるぞ。
まあいい、いつも通り構成を考えずに書き始めておるのだ。そのうち思い出すだろう。

ポイントへ行く道すがら、アルテミスと出会った。ギリシャ神話の月の女神だ。

【オオミズアオ】

あっ、今はアルテミスじゃないんだったな。本種の日本産の学名は Actias artemis から Actias aliena に変わっちゃんだよね。ものスゴくガッカリだよ。別種になったみたいだから、致し方ないんだろうけどさ。

そんな事はどうあれ、その儚き翠(みどり)はいつ見ても幽玄で美しい。
もうオイラの心の中ではアルテミス、月の女神でいいじゃないか。そうゆう事にしておこう。と云うワケなので、女神に会ったんだから幸先良いスタートだ。たぶん、この調子でアサマも余裕のヨッちゃんで楽勝ゲットだろう。前向き軽薄男は御都合主義のプラス思考なのだ。

(ー_ー゛)……。
しかし、去年カトカラがわんさか集まっていた樹液出まくりのクヌギの大木には何にも居なかった。
たぶん樹液が出ていないのだ。😰あっちゃっちゃー。そんな事はまるで予測していなかったので、ものスゴ〜く💦焦る。どうせ樹液で採れるからと糖蜜トラップは持ってきてないし、此処では外灯に集まって来る個体は樹液に集まるものよりも遥かに少ないからだ。余裕のヨッちゃん気分が一気にフッ飛ぶ。

オラ、もう必死のパッチで他に樹液が出ている木を探しましたよ。そいだらこと縁起が悪いべよ。開幕戦からー、コケるのはー、何としてでもー、避けねべならねっ。
で、何とか3本の木を見つけることが出来た。しかし、どれも少量の樹液しか出ていない。もしもコクワガタくんが来てくれていなけりゃ、見つけられんかったよ。それくらい心もとない樹液滲出状況なのだ。
こりゃ採れんかもしれん…。林内の闇の中空に、行き場を失った不安が所在なげに浮遊する。
いかん、いかん。悲観的な考えは後で恰好な言い訳の材料になる。ダサいぞ、俺。そんなもんは直ぐ様うっちゃって、プラス思考に切り替えよう。でないと、益々採れんくなる。
樹液状況が芳しくないとはいえ、コクワガタくんが来てるんだから大丈夫っしょ。飛んで火に入る夏の虫、デヘデヘ🥵。悪意に満ちたストーカー変態男が待伏せているとも知らずに、そのうちノコノコやって来るっぺよ。
危うしアサマくん、Σ(゚∀゚ノ)ノキャアー、逃げてぇー。
ひとしきり一人遊びしたところで、いつもの前向きオチャラケ男に戻る。

(ー_ー;)……。
(。ŏ﹏ŏ)……。
༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽……。

けれども、待てど暮せどアサマキシタバはいっこうに姿を見せない。
もしかしてフライング❓ それとも今年はムチャクチャ発生数が少ないとか❓ 或いは何らかの理由で、ここでは既に絶滅してたりとか❓ だから去年、6月上旬でも見れなかったのかもしれない…。頭の中をあっちゃこっちゃ色んな思考が駆け巡る。

とにかく、まさかの展開である。アサマって嘗ては珍品だったらしいけど、最近は普通種に成り下がったと聞いていたし、2015年には大発生したみたいで、その時の話も散々ぱら聞かされてもいた。何と大阪市内や神戸市内、果ては関西空港の外灯にもいたらしい。そんなワケだから、戦う前から楽勝気分だったのだ。
もしかして、樹液に来るのはメチャメチャ遅い時間だったりして❓ 前向きに考えるも、でもそんな情報、聞いたことがない。だいち、もしもそんな特異な生態をもっていたならば、沢山採ったことのある小太郎くんが必ずや言及している筈だ。

🙀ゲロゲロー。
結局、樹液に来たのはコクワガタとクロカタビロオサムシくらいだった。
クロカタビロオサムシが樹液を吸汁するなんて聞いたことがなかったから、一応証拠写真を撮っとくことにした。オサムシ屋さんにとっては、多分それなりに価値ある例だろう。オイラ、こう見えても小学生の時は、日浦(勇)さんに「オサムシ少年」と呼ばれていたのだ。オサムシの知識のベースはそれなりにある。

【クロカタビロオサムシ】

(2019.5.18 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

この画像を Facebookに載せたら、オサムシの研究で知られる神吉正雄さんからワザワザ連絡があったくらいだから、かなり珍しい例のようだ。と云うことで、この写真はニュー・サイエンス社の学術誌『昆虫と自然』にも掲載された。
エヘヘ(^^)ゞ、タダではコケない男なのである。

(ノД`)グスン。そんなこと言ったって、所詮は負け犬の遠吠えである。現実は惨敗なのだ。夜道を1時間半、暗澹たる思いで駅まで歩いて帰ったよ。

 
2019年 5月23日

前回採れなかったので、満を持して5日後に再訪した。
5月下旬ならば、絶対に発生している筈だ。それでも会えないとなれば、ここには居ないということだ。捜索は振出しに戻る。つまりイチから場所の選定をし直さなければならない。

まさか、そんなわきゃなかろう。たかだかアサマキシタバだ。大丈夫だろう。そうは思うが、正直なところ半信半疑だった。
夜の森を一人でウロウロしてるだけでもストレスなのに、また採れないとなると最悪な気分になること必至だ。それだけは何としてでも避けたいところだ。
それにアサマで2連敗なんかしたら、小太郎くんあたりに何を言われるかワカったもんではない。もし今日も採れなかったら、黙っておこう。2連敗の事実は闇に永遠に葬り去ろう。

午後7時。
やがて日が沈んだ。この黄昏から夜へと移る時間帯は毎回心がゾワゾワする。逢魔が刻(おうまがとき)なのだ。この時間帯が暗闇よりも寧ろ恐かったりもする。これは来たるべく黒い闇を怖れて心が敏感になっているからだろう。口裂け女が現れるのも、この時間だというしね。

『ワタシ、キレイ❓』

😱ゾクッときた。口裂け女のセリフを思い出して、背中に悪寒が走ったのだ。そして、もしも口裂け女が出たらと想像してしまったのである。マジ、それ怖すぎー😭。
あんなもんに横走りで追い掛け回されたら、😭涙チョチョギレで超マッハで走らねばならぬ。でも口裂け女は100メートルを5秒で走るというから、小学校6年間と中学3年間、ずっとリレーの選手でトップかアンカーをつとめ、100メートルを12秒フラットで走れたワシでもソッコー追いつかれるだろう。そして、そして…。
次々と、その後のヤバい展開の映像が浮かんでくる。
いかん。恐怖の連鎖反応じゃ。恐怖が恐怖を呼んでおる。想像力こそが恐怖を増幅させるのだ。これ以上想像したら、発狂してしまう。
 
負の脳内物語を全て頭から遮断し、心頭を滅却させる。
 
٩(๑`^´๑)۶、ヤアーッ❗

『臨、兵(びょう)、闘、者、皆(かい)、陣、烈、在、前(ざん)、オンソワカー❗』(註1)
 
左腰から右上に手刀でキレッキレで、空を「九字切り」する。
念の為に同じ呪文を唱えながら、神様の形を真似て手指を結び、「契印(手印結び)」も行う。
もう気分は、陰陽師 安倍晴明じゃよ。式神も出したろか、ワレ。
  
7時20分。
空はまだ仄かに明るかったが、森の中は真っ暗になった。
闇の物語の始まりじゃあ〜と思ったら、らしきものが直ぐにパタパタと飛んで来た。そして、先日クロカタビロオサムシがいた木と同じところに止まった。
たぶんアサマキシタバで間違いなかろう。この時期にいるカトカラはアサマしかいない。何だかε-(´∀`*)ホッとする。

ヘッドライト、オーン💡
網を構えて距離を詰める。緊張感は、さしてない。会えたと云う安堵の心の方が強かったのだろう。
取り敢えず、💥ダアリャー。網を幹に強く叩きつける。すると、驚いた彼奴(きゃつ)は自ら網の中に飛び込んできた。
もう、この採り方もお手の物である。網の面を正確に幹と合わせる事と、力加減さえ間違えなければ、ほぼ百発百中だ。

今思えば、この頃(2019年初夏)はまだ、こんな博奕度の高い採り方をしてたんだね。もっと楽勝の採り方を編み出したのは、もう少し後の事だったわ。たぶんカバブキシタバかマホロバキシタバの時だね(註2)。

素早く毒瓶にブチ込み、〆る。
暫く経ったところで取り出し、手の平に乗せる。

【アサマキシタバ ♂】

(裏面)

冒頭に『もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったなら、黄色いカトカラには興味を持たなかったかもしれない。』と書いたように、その第一印象は酷いものだった。カトカラを本格的に集めようと思っていたから、採れたのは素直に嬉しかったが、一方、右脳は別な評価を下していた。
『チビだなあ…。それに何だよ、コイツの下翅。黄色いとこが少ないし、オマケにその黄色に鮮やかさがまるて無いじゃないか。薄汚れてて美しくないなあ。それに何だか毛深いや。』
正直、お世辞にも全然魅力的には見えなかったのである。

その後、この日は4、5頭程が飛来した。
ド普通と聞いてたけど、今回そうでもないと実感したよ。その年により発生数の増減が激しい種なのかもしれない。

 
2019年 6月3日

♀があまり採れていなかったので、もう1回訪れた。
この日は小太郎くんも参戦してくれた。

コナラにウスタビガの幼虫がいた。

【ウスタビガ 終齢幼虫】

一瞬、持って帰ったろかと思ったが、やめた。
面倒くさがりやの自分には飼育は向いていないからだ。それに、尻の一部が茶色い。小太郎くん曰く、寄生されてるかも…と云う意見もあったしさ。

この日も日没後、暗くなったら、アサマくんたちが樹液に飛来した。やはり飛来時刻は早い。
で、いくつか連続でゲットしてソッコー飽きた。

 
2019年 6月6日

この日は、夕方に生駒山地の枚岡にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。

【ウラジロミドリシジミ ♂】

こんなに美しいのに、酷い和名だなと思う。
何で、この色にフォーカスしないのさ。

たぶん、この裏面からのネーミングだと思うけど、もっと他に名付けようがあっただろうに。
学名は、Favonius saphirinus。小種名の語源は宝石のサファイアだぜ。学名が先に有りきの和名の命名だろうから、より想像力の欠如と言わざるおえない。

折角だからと、ゴージャスな夕日を見て帰ることにした。

けど、ついでに夜までいた。
 

 
べつに夜景を見たかったワケではない。理由は他にある。
生駒山地の昆虫調査をしている東さんが、フシキキシタバの記録が無いと言っていたのを思い出したのだ。
矢田丘陵にフシキキシタバがいるなら、隣の生駒山地にいないワケがなかろう。それって、蛾屋の怠慢じゃないか❓だったら、それをお茶の子さいさいで証明してやろうと云う心が芽生えたのである。負けず嫌いのイヤらしい性格なのだ。
しかし、同時にこうも思っていた。東さんは協力者が少ないのに真面目に調査してはるみたいだし、世話になってるところもあるから少しは貢献しようとも思ったのである。嘘じゃなくて、そう云う殊勝な心もちゃんとあったんだかんね。

それに樹液が出ている木を探しておいて損はない。
10年ここに通っているが、いまだもってスミナガシ(註3)の♀が一度も採れていないんである。どころか見たことさえ殆んど無い。どうやらメスは、ほぼ樹液でしか採集は望めないようなのだ。でも、枚岡って意外と樹液がバシバシ出てるような御神木的な木が無いのだ。だから、そういう木を昔から探しているのだが、標高の低いイージーな場所では、ナゼか見つからない。昼間に樹液の出ている木を探すのは意外と難しいのだ。むしろ夜の方が意外と見つけ易かったりする。その事に気づいたのは、カトカラ採りもするようになった去年(2018年)だった。夜は視界が制限されるから、かえって集中力が高まるし、蛾、特にヤガの仲間は懐中電灯の光が当たると目が光るから目印になるのだ。また昼間よりも樹液に集まる昆虫が多いので、目につきやすい。昼間はあまり見ない夜行性のカブトムシやクワガタなどの大型甲虫も集まるから、よく目立つのである。

日没後、ウロウロしていると懐中電灯の光がアケビコノハの姿を捉えた。

【アケビコノハ】

(2019.6.13 )

コヤツが木に下翅を開いて止まっていると云うことは、樹液が出ている証拠だ。(^3^♪オホホ、ソッコーでフシキがおることも証明したるわい(ノ`Д´)ノ❗

そして、別な木だが樹液に来てるアサマも3頭見つけた。
しかし、3頭とも羽が傷んでいたのでリリース。場所は違えど、初見からまだ10日だぞ。ボロになるのが早過ぎやしないか❓
 
アサマがいるなら、フシキも採れんだろ。採れなきゃ採れないで、いないって逆証明にもなりうる。ただ、季節的には発生初期だろうから、まだ発生していない可能性もある。かりに発生していても、出始めで個体数は少ないだろう。

結局、フシキキシタバは樹液には来なかった。
だが、帰りの夜道で飛んでるのをシバいたった。

【フシキキシタバ ♂】

やはり、いたね。
ザマー、見さらせである。センスを証明されたいがために虫採りやってんのかもなあ。
 
 
2019年 6月12日

この日はアサマではなく、フシキキシタバを探しに矢田丘陵へとやって来た。

ガクアジサイがひっそりと咲いており、夕暮れのそよ風に嫋(たお)やかに揺れている。

予想したとおり、フシキキシタバは最盛期に入ろうとしていた。

【フシキキシタバ♂】

どれも新鮮な個体ばかりだ。

【同♀】

アサマと比べたら、遥かに美しい。

アサマも飛んで来たが、既に古びたボロ個体ばかりで数も少なかった。見たのは2頭だけだ。初見から20日足らずで、この状態とあらば、やはりアサマって発生期間が短いようだね。
 
 
2019年 6月13日

翌日に兵庫県宝塚市にカバブキシタバの下見に行った時も、大量のフシキキシタバに混じってボロボロのアサマを1頭だけ見た。この例からも、成虫の発生期は他のカトカラと比べて、比較的短いのではないかと思う。

2019年に採ったアサマキシタバの展翅画像を貼り付けておこう。

【Catocala streckeri アサマキシタバ♂】

形はカッコイイと思うんだけど、下翅が汚い。
それにしても、酷い展翅だな。上から3、4つまではまあまあだけど、段々酷くなっていってる。

【同♀】

更にメスは目を覆いたくなるような出来だよ。このテキトーさ加減、対象に対する愛が感じられないねぇ。これは年を越えたゆえ、カトカラに対する概念がリセットされて、アサマを見て改めて所詮は蛾だと云う認識に逆戻りしたのかもしれなーい。オイラ、元々は生粋の蛾嫌いなのだ。

それはさておき、何か♀の触角が短くないかい❓

【♂裏面】

【♀裏面】

裏展翅のコレも♀の触角が短いぞ。
気になるから、石塚さんの『世界のカトカラ』を開いてみた。

♂と比べて、やっぱ少し短くなくねぇか❓
今一度、アチキが展翅した♂の画像と見比べて戴きたい。明らかに♂の触角は長いよね。でも、この一つだけじゃ何とも言えない。慌てて他の♀画像に目を転じる。

あっ、コレも短い。と一瞬思ったが、左の触角はそうでもない。
٩(๑`^´๑)۶ハッとさせんじゃないよ。

一瞬、これも短いと思ったが、コチラは右の方の触角が長い。
長い方が本来の長さだろうから、たぶん♀の触角が短いなんて気のせいだろう。

あっ、短い❗とコレも思ったが、よく見れば左側が少し長いな。やっぱ、きっと気のせいなんだろうな。
 
それはさておき、しかしこうも触角の先って切れるもんかね❓
何か理由があるのかもしれない。元々メスは左右の触角が同じじゃない個体が多いとか、メスって極めて触角の先が折れやすいとかさ…。
(ノ´・ω・)ノ ミ ┻━┻、んなワケあるかーい。理由として論理的に苦しいわ。アカンな。
 
おーっと、そうだ。オスも見てみよう。
 

 
ヽ(`Д´#)ノクソッ、コイツもかよ。右の触角が折れとるのか短いじゃないか。アサマって、そんなにも触角が折れやすい種なのか❓
それはさておき、左の触角はメスよかオスの方が長いような気がする。けど、微妙な長さではあるんだよね。上から3番目、番号10のメス個体も触角が長めだからなあ。
ならばと他のオスを探すが、(・o・)ありゃま。でも他にオスの標本が図示されてない。オスはこの1個体だけなのだ。それじゃサンプルが少な過ぎて、これ以上は何とも言えないや。
 
異常型だが、メスをもう1点。


(以上すべて、石塚勝己『世界のカトカラ』より)

これは明らかに短いような気がするぞ。
けど短い感じたものが偶々(たまたま)連続したから、そうゆう印象を最初に持ってしまっただけなのかもしれない。こんなどうでもいいような事をグダグダ書いてたら、レベルが低いと笑われそうだな。声高に論じるテーマとも思えんしなあ…。

まあ気のせいだとは思うけど、今年(2020年)、確認しに行こう〜っと。
 
                         つづく
 
 
追伸
終わりそうで終わらない物語みたいでヤだけど、アサマキシタバの話は尚も続きます。このままいくと3話構成にはなる。3話で終わることを祈るよ。

えー、この文章は3月の時点で下書きが粗方出来上がっておりました。でも、触角問題と生態面でハッキリとしないところがあって一旦お蔵入りになってました。そこにある程度の目処(めど)がついたので、晴れて蔵出しとあいなったワケである。
けんど、シリーズ初回にも拘らず、改めて文章の手直しを始めだら、大脱線。要らぬところで筆が止まらず、大幅訂正加筆の1.5倍以上に膨れ上がってしまった。我ながら、愚かじゃよ。

愚か者ゆえに、次回は触角問題に切り込むでぇ〜。まだ一行も書いてないけどー。
嗚呼、次もどうせ大脱線になりそうだ。自分にウンザリだよ。
 
 
(註1)『臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前』オンソワカ
悪霊退散の呪文の1つ。九字を唱える事でその場を清め、結界を張ることも出来る。
これは「仏の言葉」や「秘密の言葉」と言われる真言の一種で「神様の軍隊が通るため、立ち去るように」という最終通告を意味している。
また九字護身法には、悪霊や邪気、災いを祓う浄化効果だけでなく、その人が持つ霊力を高めて幸福へと導く開運効果もあるとされている。

オンソワカの「オン」は、真言の頭につける慣用句。「帰命する」という意味。
「ソワカ」は聖句の末尾につけられ、「成就あれ」の意味。

 
(註2)カバブキシタバかマホロバキシタバの時だね

【カバブキシタバ】


(2019.6 兵庫県宝塚市)

上がオスで、下がメスである。次のマホロバも同じ。

 
【マホロバキシタバ】


(2019.7 奈良市)

木の幹に止まったカトカラの簡単採集法は、たぶんカバブキシタバの時の後半辺りで気づき、マホロバの時に確立した。採り方は、マホロバの回の時にでも詳しく書くつもりだ。まあ、蛾捕りの天才であるマオ(小林真央くん)も、その採り方を実践してたから、知ってる人は知ってんだろうと思うけどね。

 
(註3)スミナガシ 
タテハチョウ科に属するチョウの一種。

【スミナガシ 春型♂】

 
(裏面)

(2018.4.28 東大阪市枚岡公園)

名前の由来は、平安時代から続く伝統的な芸術技法であり、遊びの一種でもある「墨流し」から。墨汁を水に垂らした際に出来る模様、及びそれを紙に写したもので、その模様を布に染めた物のことも指す。

 

🎶カ〜ニ🦀だし続くよー、ど〜こまでもー

 
まだまだ続く丸蟹の茹で汁Cookingである。しつこくてスマン。そうゆう性格なのだ。
 

前回、その丸蟹の茹で汁で塩ラーメンを作ったが、それでもその時のカニスープはまだまだ残っていた。1.5Lくらいはあったんだもん。ラーメン程度では消費しきれんのだよ。
はてさて、どうしたものか……。

たまたま、そんな折りに剥き身のエンドウ豆が安く売っていた。エンドウ豆は鞘(さや)から出すと一挙に鮮度が落ちることは知ってはいたが、2パックて196円だったもんでつい買ってしまったなりよ。あと、エンドウ豆は海老・蟹ダシに合うようなイメージも何となくあったからだ。

しかし、帰ってきて厨房に立ってみて、そのイメージの原典がサッパリわからん事に気づく。よくよく考えてみれば、カニとエンドウ豆の料理なんて聞いたことがないじゃないか。何となくそう思っていただけという己の意識の曖昧模糊さとポンコツ具合いに我ながら驚かざるおえない。
一瞬、恥をしのんでカニとエンドウ豆の料理をググッてやろうかと思った。けど面倒だし、無かったら己のバカさ加減を見せつけられるから調べないけどー(≧▽≦)
まあ、人間なんてものは、大概の人はそこまで厳密に考えて生きてはおらんのだ。もとい。多分そうじゃない厳密的で立派な方もおられるだろうけど…。
おまえと一緒にするな。誰も彼もがオマエみたいにいい加減だと思ったら大間違いだ。このボケ、カス❗と言われても困るので、一応防御線を張っといた。

で、結局のところ発想貧困男は蟹だしスープを使って豆ごはんを作ったらええやんと云う短絡的結論に至った。炊き込みご飯なら、そこそこ大量に出汁が使えんじゃね❓と思ったワケである。
 
だが、米2合を洗おうとして手が止まった。
豆ごはんといえば、米を洗ってダシ汁とエンドウ豆を入れて、ただ炊くだけというイメージだったが、ふと思い出したのだ。どっかに、それだと豆がシワシワになって見た目がよろしくないと書いてあったような気がするぞ。
けど、どうすんだったっけかなあ…。
 
されとて今更ググる気にはなれない。ここで調べてしまえば、何か負けた気がするではないか。だったら最初っからカニとエンドウ豆の料理でググッときゃ良かったと後悔するのがヤなんである。絶対、ついでにそっちもググりそうだしさ。後悔という感情は人を弱らせるだけだ。何もいい事なんかない。
 
記憶を辿ると、たぶん豆を軽く出汁で煮たら取り出し、その汁で御飯を炊く。で、炊き上がってから豆を入れて、暫くおいとくんじゃなかったっけ❓仕上げは予熱とか、そんなだ。
その方が豆にシワがよらないだけでなく、色も鮮やかに仕上がると書いてあったような気がするじょー(・3・)
それであってそうだし、調べ直すのもダルいし、そのように進めてゆくことにした。
 
エンドウ豆をカニ出汁にブッ込み、弱火で煮る。
かたさを確かめながら3〜4分、やや固めに仕上がったところで火を切る。で、しばらく放ったらかしにして冷ます。
そいでもって、録画していた『チア☆ダン』なんぞを観ることにする。
 
広瀬すずちゃんは、やっぱ可愛いよねー💖 中条あやみちゃんもカワイイ💖
半分ほど観たところで豆を取り出し、残った汁を米に入れる。まあ、1時間も置いときゃ、米が汁をたっぷり吸うじゃろう。
ほいでもって、『チア☆ダン』の続きを観る。
 
😭オーイ、オイオイオイ。😭オーイ、オイオイオイ。
おじさん、(ToT)ダダ泣き。天海祐希にも泣けたー( ;∀;)
 
観終わったところで、豆ごはんなんぞ炊いとる場合かと思いつつ炊飯器のスイッチを入れる。
映画の影響で何かオラも頑張らねばと思うのだが、スイッチを入れてしまえば最早する事なし。放ったらかして待つしかないのだ。それがもどかしい。
かと言って、すぐさまスイッチを切り、気合い入れて土鍋で炊こうなどという気はサラサラない。だって今更ながらに言っちゃうけど、ワシって豆ごはんに対する思い入れなんぞコレっぽちも持ち合わせていないのである。ってゆーか、むしろ苦手。根本的には嫌いと言ってもいい。
今でこそ食べられるようになったけど、ワシって幼少の頃から豆が大の苦手なんである。グリーンピースを筆頭に大豆、いんげん豆、そら豆、小豆、豆菓子etc…、殆どが敵であった。味もさることながら、あの歯に当たる粉っぽい感じがどうしても許せなかったのである。正直、食えるのはピーナッツなどのナッツ類と枝豆くらいだったのだ。
じゃあ、何で豆ごはんを2合も炊くのだ❓と言われれば、乗り。人間、魔がさすことだってあるのだ。
 
炊き上がったところで、エンドウ豆を素早く投与。再び蓋をして、6〜7分ほど蒸らす。
 
けたたましくタイマーが鳴った。うるせーんだよな、うちの百均のタイマー。時々、床に叩きつけてやりたい衝動に駆られるよ。
チッ(-_-)、んな事はどっちだっていい。とにかく完成だ。
 
蓋を開けると、豆の良い香りがものスゴくした。コレって、もしかして作戦正解の成功なんじゃねえの❓
 
(^O^)/ハイハイ、出来上がりましたよー。
 

 

 
(◠‿・)—☆イェーい。炊きあがりは上々。豆もシワがよってない。
食べてみると、豆の甘いような仄かな香りがして、美味い❗

でもなあ、美味いんだけど、そこにカニはあまり感じられない。それってカニ出汁で炊いた意味あるのかね❓まさかの結果である。
噛みしめているとカニ出汁の味がしないでもないが、視覚に映るのが豆ごはんなので、脳がそれに追っつかない。カニの身でも入ってりゃ、また違うんだろうけど…。
 
( ´ー`)フゥー。2合なんて1回では食いきれないので、残りはまた翌日にでも食うことにした。
 
だが翌日になって、また同じもん食うのかよと思った。そう思うと、益々食いたくなくなってくる。
と云うワケで、一計を案じた。
エンドウ豆といえば、卵とじである。この2つはそれくらい定番の組み合わせだ。そこからヒントを得て、玉子とエンドウ豆の雑炊を作ることにした。
 
工程①
豆ごはんを鍋に入れ、そこに最後に残ったカニの出汁をひたひたに入れる。かき混ぜて味を見て、ほんの少しだけ塩を加えた。それを火にかける。
 
工程②
沸騰してとろみが少し出たら、とき卵を投与。すかさず蓋をして火を消す。そして、1〜2分待てば出来上がり。
 

 
(☆▽☆)ぴゃあ〜、普通にメチャメチャ旨いやんけー。
今度は、ちゃんとカニの風味もするぞ。
 
そろそろエンドウ豆の季節も終わりだけど、まあ一度、試してみりゃれ。
そんなに都合よくカニの茹で汁があるとは思えないけどさ。
 
                        おしまい

 

丸蟹だしの塩ラーメン


前回はマルガニ(ヒラツメガニ)を塩ゆでにした。

【マルガニ(ヒラツメガニ)】


その時の茹で汁を捨てかけて、手がとまった。ものスゴ〜く蟹の香りがするのである。素直に勿体ないなあと思った。
でも、その汁は塩水なんだから相当しょっぱい事は知っている。さて、どうしたものか……(-_-;)
突っ立ったまま悩んでても仕方がないので、取り敢えず再度味見してみることにする。
わっ(+_+)❗、しょっぺっ❗❗
でもやっぱり、ものすごーく良い出汁が出てんだよなあ。
コレって、薄めて何とかでけんのかのう❓
みみっちくてセコい男なのである。結局、金と時間と労力の無駄になりかねないが、そんなワケでトライしてみることにした。

先ずは鍋にテキトーに酒を入れて火にかける。
温まってきたところで、顆粒の昆布だしの素をテキトーに入れる。
溶けたら、しょっぱ蟹だしをテキトーに加えて混ぜる。
味をみて、水をテキトーに足す。
まだしょっぱいので、もう1回テキトーに水を足す。
\(°o°)/わっ、テキトー過ぎた。今度は薄くなる。
このままテキトー、テキトーで、テキトー男をやり続けてると、テキトーあほあほ仮面になりかねない。テキトー星人のテキトーお告げによって、真面目にテキトーにやることにした。

テキトーを連発し過ぎて、自分でも何言ってんのかワカンなくなってきた。おフザけは封印。ここからが仕切り直しである。耳元で囁いてくる👾テキトー星人をブン殴って、少しずつ慎重に微調整をしていこう。

少しだけ蟹だしを足したら、いい感じに傾いた。
でも味に深みがない。と云うワケで若竹煮の残り汁をちょい足す。つまり、鰹ダシや微量の味醂が加わったと云うワケである。

ふむふむ、塩っ気が少し丸くなったぞ。でも、まだまだ深みが足りない。と云うワケで焼き茄子を浸したダシ汁も参戦させることにする。因みに、この汁はさっきの若竹煮の煮汁を焼き茄子に浸して一晩おいたものである。だから焼き茄子の旨味エキスが入っておる。

(☉。☉)おっ!、段々いい感じになってきたぞ。
ここで秘密兵器投下❗ 冷蔵庫の海老を殻ごと汁にブチ込んでやった。щ(゚д゚щ)ウシャシャシャシャーッ、謂わば追い鰹ならぬ、追い甲殻である。すかさず火を消し、海老が固くならないように予熱で火を通す。
( ̄ー ̄)ニヤリ。オジサン、やる時はやるんである。

だが、ここで安心して手を弛めてはならない。さらに第2の秘密兵器を投入して一気呵成にカタをつけちゃるわい❗





第二の刺客は霜降り平茸さん(註1)だ。期待の新人である。
これは従来からあった日本の平茸とヨーロッパ産の平茸の仲間を掛け合わせて品種改良したものだ。最近は、どこのスーパーでも見かけるようになったから、知っている人も多いだろう。
海老を取り出し、スープに霜降り平茸を投入、再び火にかける。ひと煮立ちしたところで火を消して放置。録画していた『逃げ恥(逃げるが恥だが役に立つ)』のムズキュン特別編なんぞを観る。観終えて、ガッキーにキュンキュンしたところで、冷めたスープの味見にかかる。

(^O^)よし、だいぶと良くなってきたぞ。ゴールは近い。
ここでリーサルウェポン、最終兵器の登場だ。
白醤油をちょっとだけ投下。少量でも劇的変化の隠し味じゃ❗それにこれなら普通の醤油と違い、ダシ汁がドドメ茶色化せんじゃろうて。オラって、まあまあ天才だね、(*ノω・*)テヘ。

考えてみれば、旨味オールスターだ。カニとエビの旨味成分である遊離アミノ酸類からして錚々(そうそう)たるメンバーである。エビカニ甲殻軍団の甘さを司るアデニル酸を筆頭家老に、グルタミン酸、グリシン、アラニン、クレアチンと云う旨味の権化の面々が並んでいらっしゃる。そこに、昆布のグルタミン酸の旨味、鰹節のイノシン酸、霜降り平茸のグアニル酸、醤油のアスパラギン酸の旨みスーパースター達が加わるのである。更にそこにはタケノコや焼き茄子の旨味エキスも混じっている筈だ。旨味のオンパレードじゃよ。それらが複雑に絡まっておる二度と作れぬだろうスープじゃよ。テキトー星人👾をブン殴って、真面目に取り組んどいて良かったよ。
これで、ほぼ完成じゃが、まだまだ味がバラバラで馴染んどらんところがある。とゆうワケで、冷蔵庫で1日半ほど寝かせてやることにした。

翌日、味見をしてみた。ふむふむ。全体的に角がとれて馴染んでおる。旨みオールスターたちの見事な融合じゃよ。それを確認したところで、いざ勝負へと参る。

①先ずはスープを温める。
ある程度、温まったところで火を弱め、沸騰しないように火加減を調節する。並行して、その間に麺を茹でる。
麺は、もう生麺はコレしか買わないと云うくらいに偏愛しているマルちゃんの『極太中華麺』3食入りだ。



茹で時間は3分〜5分とあるが、かための3分にセッティングする。シュワッチO=(%)o、ウルトラマン❤ハートでいくぜ。3分間で、ねじ伏せてくれようぞ。

②熱湯に麺をブチ込んだら、丼に湯を入れて温めておく。季節に関係なく、熱い食いもんは熱く、冷たい食いもんは冷たくが料理の鉄則だ。
次に具材をいつでも盛り付けできるようにスタンバらせる。麺料理を作るのは時間との勝負だから、万全の体制で臨むべし❗、臨むべし❗ 明日のためのその1、やや内角をねらい、えぐるようにして、打つべし❗打つべし❗ 矢吹丈ばりに、宙に向かって🥊ジャブを繰り出す。戦闘態勢、万全だぜ。

③麺が茹で上がると同時に、スープが沸騰するように火加減を調整する。

🚨ピコン、🚨ピコン、🚨ピコン…心の中でカラータイマーが鳴り始める。
3分たった❗すかさず麺をザルにあけて、湯を切ろうとして頭の中にラーメン屋の兄ちゃんの画像がよぎる。ここで、その兄ちゃんの真似をして、何とか落とし的なワザ系湯切りをしたいという衝動と誘惑に激しく駆られる。
やっちゃだめだ。やっちゃダメだ。やっちゃダメだ…エヴァの主人公の碇シンジくんばりにブツブツ繰り返して、グッとこらえて何とか踏みとどまる。そんな事をしたら、麺は空中で四散プータ、ボテッと床に落ち、惨めな気持ちになる事は明白だからである。素人が調子に乗ってもロクなことはないのだ。

いつも通りに湯をチャッチャッと切り、湯を捨てた丼に⚡電光石火で麺をダイブさせる。な、いなや、どすこーい❗そこに熱々のスープを流し入れる。そして麺を一度、箸で持ち上げて形を流れるように美しく整える。と言いたいところだが、それは忘れた。気づいた時には既に盛り付けに入っておった。
まあいい。そんなことでリズムを崩してはならない。平静を保って順に具材をソッコーで盛りつけていく。

ヽ(=´▽`=)ノ出来たぁー❗❗







具は霜降り平茸、海老、パクチーである。
何故にネギではなく、パクチー❓
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻うっせー、こっちはネギは邪魔だと判断したのである、バーロー❗
スマン、スマン。冷静になろう。前から思っていたのだが、塩ラーメンには青ネギは合わないと思うのだ。青ネギは個性が強過ぎる。あの青臭さは繊細な塩ラーメンのスープの味を台無しにするのではないかと常々思っていたのである。もし入れるのなら白髪ネギだろう。それなら邪魔するどころか、スープを引き立ててくれるところがある。でも今回、冷蔵庫に白髪ネギさんはいらっしゃらなかったのだ。と云うワケで、パクチーさんに代打をお願いした。狙いは時々エスニックなのさ。

先ずはスープを飲む。
(☆▽☆)ぴゅあ〜、奇跡的に旨い❗
何か、よりまろやかになっとる。
次の麺をすする。知ってはいたけど、旨い。極太麺の弾力が堪んねぇよ。スープとの相性も勿論のこと抜群だ。

続いて海老を食う。蟹だしラーメンなのに海老って何か変な気分だけど、旨い。霜降り平茸は旨みと歯応えがあって文句なしだ。
暫し食い進めて、パクチーと一緒に麺を食べてみる。
(≧▽≦)う〜ん、エスニーック❗一挙に口の中は東南アジアの世界になる。海老なんかと一緒に食えば、益々東南アジア化しよる。嗚呼、タイの屋台に行きてぇー。一瞬、唐辛子粉(一味唐辛子で代用)とかプリックナムソム(唐辛子の酢漬け)、ナムプラーを入れてやろうかとも思ったが、やめた。やはり最後は、あくまでも蟹だし塩ラーメンで終えたい。

(^。^)ふぅーっ、御馳走さまでした。美味しかったでござんす。
皆さんもカニを茹でた汁は捨てずに、それでラーメンを作りませう。
但し、失敗しても責任は持たないけどね。

                        おしまい

追伸
実を云うと、このマルガニの茹で汁にはまだ後日談がある。
そのうち書くと思う。いや、書くかなあ❓…。


(註1)霜降り平茸
ひらたけは味の良いきのことして昔から親しまれてきました。しかし、ブナシメジやエリンギに席巻され生産量が減少傾向にありました。傘が薄くて柔らかいため、流通過程において物理的な損傷を受けやすく、日持ちが良くないことも原因の一つと考えられています。 当研究所では、日本産ひらたけとエリンギなどのヨーロッパ産ヒラタケ属との種間交配に成功しました。さらに交配育種による品種改良を重ね、従来のひらたけよりも傘が肉厚で日持ちがよく、収量性の良い「HOX 1号」を開発しました。 傘に独特の霜降り模様が見られることから、商品名を「霜降りひらたけ※」として2012年秋から販売を開始しました。 霜降りひらたけは特に旨味が強く、歯ごたえの良い美味しいきのこです。
(出典『ホクト株式会社』)

しかし、ワシは普通の平茸の方が好き。まあ、食感は負けるけどね。
かやく御飯(炊き込みご飯)やキノコ御飯を作る時は平茸を使う。平茸の方が良い出汁が出ると思うからだ。

食材チャレンジャー、イガがゆく①丸蟹


スーパー玉出に行ったら、見たこともないカニが1パックだけ売っていた。
値段は¥298。食材チャレンジャーとしては当然買いである。



世の中、食に関しては保守的だ。世の主婦たちは見たこともない食材は、たいがい敬遠する。新しい食材に挑むチャレンジャーは少ないのだ。食べ方とか調理法もワカンないしね。それも解らないでもない。
だから、そうゆう変わったものは売れ残ることが多い。よって漁師や店側も安い値段をつけがちである。安けりゃ、ダメ元で買う人も少しはいるだろうって算段だね。高くてマズけりゃ、誰だって立腹するが、安ければ諦めもつくってもんだ。クレームも少ないだろう。その辺をちゃんと計算してるんだね。
つまり、そうゆう保守的な人が多数派だから、お陰様でコチラは恩恵を享けていると云うワケである。ガキの頃から常に保守的な考えは唾棄すべきものと思ってきたが、食に関してはその方が有り難い。世の中、そこんところはおおいに保守的でよござんす。皆さん、一生食い慣れたものを食うてなはれ。
だって美味しいとわかれば、途端に人は堰を切ったように買い始め、あっという間に値も跳ね上がるのである。今やこれは国内のみならず、外国の市場とも絡んでいる。カッコつけて言えば、グローバル経済なのだ。グローバル経済なんて言葉、使ったことないから、何か賢くなった気分だじょ<( ̄︶ ̄)>
例えば、ご近所の自分勝手で謝らない彼の国が格好な例だ。その国の民が大挙してやって来て、多くの人が日本の美味いもんを知る事となった。その恩恵を享けている人も多いけれど、言ってしまおう。
秋刀魚の漁獲量が激減したのは、その彼の国が原因だ。エチケット知らずで、我がの事しか考えない無礼者が多いという国民性だから、サンマが北上する前にゴッソリ獲っていってしまうのである。原因はそれだけではないにせよ、それが大きな理由になっていることは間違いなかろう。このそもそもの出発点は何かと言うと、ようは日本を訪れた多くの観光客がサンマの味を覚えて帰るからだ。その人たちが自国でも食べたいから、大きな需要があるのである。彼の国の欲望、恐るべしだな。
余談だが、台湾国内でも同じ理由でサンマが大ブームになったらしい。ゲストハウス埔里のナベさんが、そう言ってた。台湾は好きだけど、それはちょっとなあ…とは思う。けど、そんな手前の海域で獲れるサンマは脂が乗ってなくて旨くないから、直ぐにブームは去ったみたいだけどね。

(-_-;)しまった。のっけからの大脱線である。話を本筋に戻そう。

帰って改めてパックの表示を見ると「福島県産 まるカニ」と書いてある。
でも、これはマイナーな地方名の可能性もある。日本の魚介類は地方名が多くてワケワカランことになっとるのだ。
早速、『ぼうずコンニャクの魚貝類図鑑』でググってみる。このサイトにはいつも御世話になっている。ワケのわからぬ食用魚介類の正体を知るには、このサイトが圧倒的に便利で優れておるのじゃよ。

とは言いつつも、探すのにそこそこ苦労するだろと思ってた。しかし、一発でヒットした。流石、ぼうずコンニャク先生である。




(出典『ぼうずコンニャクの魚貝類図鑑』)

間違いないね。コヤツだわさ。
背中に特徴的なH型の紋があるし、一番下の脚の色も同じような紫色だ。
画像の下の解説にも「甲幅10cm前後になる。甲は丸みを帯び、背中にH型の白いくぼみがある。」と書いてるし、大きさ的にもそんなもんだからビンゴだろう。

どうやら正式名称はヒラツメガニ(平爪蟹)というらしい。
評価は以下の通りになっていた。

魚貝の物知り度  ★★★★
味の評価度    ★★★★ 非常に美味

5つ星が満点である。ちなみに一番上の「魚貝の物知り度」とは、知っていたら達人級度である。つまりレア度を表している。ようするにマルガニを知ってたら、アンタはんは達人級レベルでっせ。そゆ事なのだ。
ともあれ非常に美味とあるから、期待値が⤴️急上昇だべさ。

以下、『ぼうずコンニャクの魚貝類図鑑』とWikipediaを組み合わせて要約、解説していこう。

【分類】
節足動物門
甲殻上綱軟甲綱(エビ綱)真軟綱亜綱(エビ亜綱)
エビ上目十脚目短尾下目
ガザミ上科ガザミ科
ヒラツメガニ属

ふ〜ん、ガザミ(ワタリガニ)の仲間なんだね。確かに形はワタリガニっぽい。

【英名】Swimming clab
スイミング・クラブとはいっても、水泳教室ではない。泳ぐカニさんだよん。たぶん、ガザミの類は水面を泳ぐからだね。だから、ワタリガニ(渡り蟹)という和名もあるのである。
でもコレって、ガザミそのものの英名じゃなかったっけ❓

Wikipediaをみると、やはり「Swimming crab」となっていた。ほらねっ、言ったでしょ。
他に、Japanese blue crabとも書かれていた。
では、ぼうずコンニャクだとガザミの英名はどうなってるのかと思って確認してみると、Japanese blue clabとGazami clabと表記されていた。まっ、どっちがどうであろうが知ったこっちゃないけどね。

【学名】Ovalipes punctatus (De Haan,1833)
蝶や蛾じゃないんだから、学名の由来は追っかけない。気になる人は自分で調べてね。

【和名】ヒラツメガニ
第五脚は遊泳脚となっており、爪先が平たいことから平爪蟹の名が付いたそうである。
なるほど、本体を確認したらそうなっとるわ。

【地方名・市場名】
ぼうずコンニャクを見たら、無茶苦茶ある。
マルガニの他にヒラガニ、ヒラカニ、アカガニ、エッチガニ[Hガニ]、シラガニ、ヘラガニ、ホウボウガニ、ホンダ、ホンダガニ、スケベガニと11個もあった。
エッチガニとスケベガニは、おそらく背中のH紋からだろね。ホンダガニには首を傾げたが、よくよく考えてみれば、あのHONDAの事なんじゃないかとハタと気づいたよ。きっとホンダ車のマーク、もっと言えばエンブレムに似てるからだね。
Wikipediaに拠れば、地方名が多いのは一般の流通量が少なく、地元消費されるカニであるために地方名が多いそうである。
以下、Wikipediaでの解説。
「北海道稚内市ではヘラガニ、青森県の八戸市、おいらせ町ではヒラガニと呼ぶ。ひたちなか市や九十九里町ではキンチャクガニと呼び、鹿島灘から外房では丸ガニまたは「丸」と呼び、内房など各地では甲羅の模様をHの字に見立ててエッチガニと呼ぶ。山形県庄内地方ではシロガニと呼ぶなど、多様な呼び名で呼ばれる」。
福島県の海は鹿島灘に近いから、丸ガニと呼んでるんだろね。

また、近隣諸国でも食べられているようである。
中国での正式な漢名は「細点圓趾蟹」だが、市場では「沙蟹」や「台湾蟹」などと呼ばれる事が多い。韓国では「깨다시꽃게 ケダシコッケ」と呼ばれている。

【生息域と分布】
海水生。波打ち側から水深350mまでの砂泥地に生息するが、浅い海域を好み、特に波打ち際から水深20m程度に集中する。大きさは小さいが潮干狩りでも獲れることがある。
普段は砂や岩陰でじっとしているが、夜行性であり、小魚やエビ等を捕食する。
分布は北海道南部以南、九州、沖縄、八重山諸島。朝鮮海峡、黄海、渤海、東シナ海と広い。日本では主に東日本で食用される。
なるほど、だから大阪生まれのアチキには馴染みがないんだね。

ここからは、ぼうずコンニャク先生の解説を主体に書きます。

【基本情報と市場での評価】
日本各地で水揚げされる小型のカニで、主に底曳き網漁で捕獲される。量的には少ないものの、時にまとまって獲れるので比較的安く売られている。
なあんだ、基本的に安いものなのね。

ガザミ類でも本種だけは活けを見ないそうだ。これは水揚げすると、すぐに弱ったり死んでしまうからみたい。よって、活けでの輸送には向いておらず、氷水に入れられて入荷することが多い。
とはいえ、大都市にはあまり流通していないようだ。産地は主に北海道、福島県、茨城県、岩手県などだが、漁獲量、流通量が多くないために海沿いで地元消費されることが多く、ソッコーで浜ゆでにされちゃうみたい。
なるほど、だから東京でも見なかったんだね。納得です。

ちなみに、特に好んで食べる地域は無く、名物料理としている所もないようだ。ゆえに加工品も無いそうだ。

【旬】
秋から春。

何とかギリで旬に入ってる。よしよしである。
しかし、秋から冬と書いてあるサイトも見つかった。
繁殖期は秋~春であるが、主に10月〜11月、2月〜4月に抱卵する個体が多いとも書いてあった。つまり、ガザミと旬は同じってワケか。確かに卵を持っている時期のワタリガニのメスって美味いんだよなあ…。
まっ、いっか。コイツらは、きっとオスだ。そうゆうことにしておこう。気にしない、気にしない。

【選び方】
持って重さを感じるもの。

とは言ってもなあ…。1パックしか売ってなかったから比べようがなかったよ。

【料理法】
(味噌汁)
カニは味噌との相性が非常にいい。身を半割りにして水からアクを取りながら煮ていく。火が通ったところで味噌を溶く。ネギなどは必ずしも必要ではない。カニのミソなどから実に味わい深い濃厚なダシが出る。カニの身も甘味があって、とても旨いそうである。

(塩ゆで)
塩水で約10分ほど茹でるが、大きさや身の入り具合などによって茹で時間は変わる。殻が軟らかいので容易に身を取り出すことができ、甘味があってとても美味しい。

上は、ぼうずコンニャクからの引用だが(漢字等、一部は編集している)、Wikipediaの解説文も載せておこう。

ヒラツメガニの味噌汁(日本)
中型のカニであるが、美味であり癖がないため色々な料理に用いられる。特にカニミソが美味であるため、日本、特に東日本の産地ではぶつ切りにしたものを味噌汁や鍋料理として食べることが多い。

よっしゃ、よっしゃ。ようは旨いんだな。更に期待値がハネ上がるっぺよ。

海外での調理法も紹介されていた。
「渤海から東シナ海沿岸の中国山東省、浙江省、福建省や台湾、韓国などでも消費されている。韓国だと鍋料理(チゲ)、味噌汁(テンジャンクク)などにされるが、中国では蒸したり、炒めて食べる事が多い。」

何と、ぼうずコンニャクには釣り情報まである。完璧だな。

【釣り情報】
本種は砂浜などからの投げ釣りで釣れる。カニ網という重りを付けたナイロンの網にイワシやサンマのアラのぶつ切りを入れるポケットがついた仕掛けをつけて投げる。投げて、ただただ待てばいいのである。九十九里、鹿島灘、相模湾などで盛ん。

さてさて、御託はコレくらいにして調理にかかろう。
問題は味噌汁にするか塩ゆでにするかだが、答えは解説を読んでいる途中で早々と決めていた。
ズバリ、塩ゆででござる。何があってもワシ、それでいくかんねっヽ(`Д´#)ノ
味噌汁なんぞにしたら、本体がワカンなくなる。インスタ映えもせんわい。それに味噌汁なんぞにしようものなら、他の具材を入れたくなるではないか。益々インスタ映えしない。やはりここは姿そのままで、カニ本来の味を知るために極力シンプルな調理法を選ぶのが正しかろうて。

①先ずはカニちゃんを洗う。
この時点で早くも嫌な予感が走る。一匹は水に沈むが、もう一匹はプカプカ浮くんである。これは中に空気が入っているからではないかと思った。ようするに中身がスカスカじゃないかと疑ったのだ。まあ、今更どうしようもないから忘れることにする。ここまできたら、どう足掻こうと成るようにしかならんのだ。

②塩茹で用の塩水をつくる。
ネットでみると、塩水のレシピは意外と幅広く、水200mlに対して塩を小さじ1/3から1とある。今回は慎重を期して、この幅の中間、やや薄めのレシピで1リットル分を用意した。
舐めると、それでも相当しょっぱい。海水はしょっぱいのだ。海の男だった時代を思い出したよ。

③塩水を沸騰させたら、蟹をブチ込む。
浮くヤツは小皿を被せて沈めた。溺死させる殺し屋気分じゃ。ほりゃほりゃあ〜ψ( ̄ー ̄)ψ、あんじょうブチ殺されたってやあ〜。
とは言っても、既に死んどるんだけどね(笑)

で、吹きこぼれないように火加減を調整して10分間ゆでる。

④10分たったらザルに上げて、冷ませば完成。
でもって、恭しく古伊万里に盛る。




何かバンザイになっとって、わーい、わーいの小躍りしてるみたいだ。ワシの心も小躍りじゃよ(人*´∀`)。*゚+
当然だが、茹でると色は赤くなった。美味そうだ。
取り敢えず、浮いてたダメそうなのから手をつける。

(ー_ー゛)……。
何か異様に軽い。甲羅を押したらペコペコだった。再び嫌な予感が広がる。
けんど、開けてみなけりゃワカランばい。半ばヤケクソ気味で己を励まし、一縷の望みをもってハサミの部分を割ってみる。
(ㆁωㆁ)あちゃー❗、スッカスカやんけー。身が申しワケ程度にしか入っていない。大ハズレじゃけん。
悪い予感って、だいたい当たるよね。
多分だけど、これは水蟹(みずがに)ってヤツではないかな❓ 水蟹とは、脱皮後まだ甲羅が固まっていないカニのことを言う。だから、殻がペコペコだったのだ。脱皮直後のカニは柔らかくて殻ごと食べられて旨いが、少し時間が経ったカニは身が詰まってなくてダメだとカニ屋の爺さんが教えてくれたのだ。
ところで、あれって何処だったっけ❓
あっ、そうだ。鳥取だわさ。当時の彼女と旅行で行った時だ。確か彼女が株か何かで儲けたとかで、奢りで老舗温泉旅館に泊まったのだ。名前も思い出したぞ。岩井屋(註1)だ。あん時の松葉ガニ、デカくて美味かったなあ(*´ω`*)…。風呂も良かったしさあ。今思えば、彼女は美人で楽しい性格の人だったから、結婚しときゃ良かったよ。

気を取り直して、もう一匹の沈んだ方のハサミを割る。
(☉。☉)❗おっ、こっちはちゃんと身が詰まっとる。これで完敗は免れそうだ。たとえコレ一匹で298円だったとしても、そんなに割高ではなかろう。妥当な値の範疇だ。そう思うと、気持ちは楽になった。買ったのは決して間違いではないっ❗

身をせせり出して、食ってみる。
(☆▽☆)甘いっ❗❗ カニらしい風味のあとに、優しい甘みが広がる。旨味も強い。身質はしっとりで稠密だ。ズワイガニやタラバガニみたくは解(ほど)けなくて、限りなくワタリガニの味わいに近い感じだ。と云うか、ほぼ同じと言っても差し支えないだろう。
そのままで充分に旨いが、一応用意していたカニ酢にもつけてみる。
うん、こっちも中々イケる。どっちが合ってるかは意見が分かれそうだ。このへんはまあ、個人の好みだね。ちなみに自分は、塩ゆでした蟹には何にもつけない派です。

安心したところで、再び水蟹に戻って解体してゆく。
やはり脚には殆んど身がない。だから、歯でしがんでエキスだけを味わってゆく。そして、甲羅を外す。
蟹ミソを舐めてみると、(☆▽☆)うんめぇー❗
濃厚でコクがあって、旨味タップリだ。仄かな苦味もアクセントになっている。それを純米吟醸の冷酒で洗い流す。
(≧▽≦)きゅーっ、堪りまへんなあ。やっぱ、蟹には日本酒でござんすよ。こっちの土座右衛門蟹には全く期待してなかっただけに嬉しい誤算だよ。

次に胸側の身にとりかかる。2つに割ろうとした瞬間、指先にみっちりとした感触が伝わった。
割ってみると、こちらは身がギッシリと詰まっている。これまた嬉しい誤算だ。身が甘いねぇ(#^.^#)

小一時間かけてほじくり出した身を小皿に盛る。





上が水蟹で、下がそうではなかったヤツだが、胸身があったせいでそれほど身の量に大きな差はなかった。全然、OKじゃないか。損してるって程ではない。これでニッキュッパッの298円なんだから、結果的には激安の買い物だったじゃないか。
めでたし、めでたしである。
 
                        おしまい

追伸
過去に『食材ハンター、伊賀蔵が行く』的なタイトルの記事をいくつか書いたが、よくよく考えてみればハンターな時は少ないワケで、ハンターとは言い難い。なので、今回新たにシリーズ名を変更して再出発することにした。ネタは結構あるんで、気が向けば本格的なシリーズ化もあるかもよ。

そんなもん書いてるヒマがあったら、台湾の蝶シリーズやカトカラ元年シリーズを再開しろってか❓
お叱りはごもっともだが、とは言ってもねぇ…。一応、鋭意努力しまあーすとでも言っときます。


(註1)岩井屋
鳥取県岩美町岩井温泉にある創業130年 江戸時代末期から続く山陰最古とも言われる温泉旅館。貴重な足元湧出湯として知られる。


(出典『温泉手帖♨』)

こんなんだったっけ❓ あまり記憶にないや。


(出典『4travel.jp』)

ここの風呂は個性的な造りだったから、よく憶えている。湯船の中央が深くなっており、立って入れるのだ。下には底板が敷いてあり、その間からプクプクと湯が湧き上がってくるのである。だから、他では見られない独自の源泉かけ流しなのだ。
館内はレトロなのだが、モダンでもあった。和なんだけど、お洒落なのだ。料理にも定評があり、尚かつそれほど高くなかったような気がする。改めて彼女に感謝です。


青春18切符1daytrip 春 第二章(2)

第2話 流水桃花物外春


前回は『往年のギフチョウ』と題しておきながら、殆んど鉄道の事とJR湊町駅について紙数を費やしてしまった。スマン、スマン。
というワケで、今度こそ往年のギフチョウについて書きまする。謂わば、今回は『往年のギフチョウ』の後編ってワケね。


9時前にポイントに着く。









三葉躑躅(ミツバツツジ)が満開だ。
このミツバツツジとギフチョウの発生期は重なるから、おそらく今日も楽勝じゃろう。

ツツジの中では、ミツバツツジが一番か二番目に好きだ。
葉が芽吹く前に先んじて花が咲くから綺麗だし、基本的には野生のものだからだ。春先のまだ茶色っぽい山肌の所々を鮮やかにポッと染めているのを見ると、何だか心がホッとする。ほのぼのと春なんだなと実感できるのだ。
ツツジといえば、世間では公園などに植えられている平戸躑躅のイメージだろう。だが、あの多分バチバチに品種改良されたであろう大振りのピンクの花が好きじゃない。人工的な感じがするからだ。派手なんだけど、品のない女みたいで好きくないのだ。野生のものなら、また違った意見を言いそうだけど…。

尾根筋のギフチョウが如何にも好きそうな小ピークに陣取る。
程なくして20mほど遠くで飛ぶ姿が見えた。さあゴールデンタイムの始まりだ。天気や気温にも左右されるが、この9時くらいから10時半くらいまでがギフチョウの動きが一番活発になるのである。
でも走り出すこともなく、余裕のヨッちゃんでスルーする。
煙草に火を点けたばかりだったし、そのうちバンバンに飛んで来るだろうから、まっいっかと思ったのである。

しかし、その後ジャンジャンに飛んで来る筈が全く姿を見せない。気温も上がってるし、何で❓ もしかして個体数が少ないとか❓
やや焦り始める。余裕カマして煙草なんぞ吸ってたワシって、もしかして救いようのない愚か者❓

9時半を少し回ったところで、ようやく2頭目が飛んで来た。
(・o・)あれっ❓、何か黄色いくないかい❓ 一瞬、イエローバンド(註1)とかじゃねえかと思って気合が入った。慎重に距離を詰めて💥一閃、鮮やかに振り抜く。



(裏面)


でも網の中を見て、直ぐに普通のギフチョウだと気づく。
福井の黒っぽいギフチョウに目が慣れてたから、そう見えただけだったんだね。ここいらのギフチョウは比較的黄色い部分が多く、明るく見えるという事を完全に忘れてたよ。
とは言っても往年の名産地である武田尾のギフチョウの完品だ。前に来た時は時期が遅くて全てボロだったから、ちょっと嬉しい。余談だが前回の手乗りギフチョウの写真は、その時に撮ったものだ。ボロばっかだったから、そういう遊びごとが出来たってワケ。

コレをキッカケにジャンジャン飛んで来た。しかし、どれも翅が欠けてたり、擦れてたりと鮮度があまりヨロシクない。今年は噂通りに発生が早かったのだろう。何度も同じ個体を採るのもイヤなのでリリースせずに生かしたまま三角紙に收めてゆく。

10頭数頭を採ったところで、完全に飽きてきた。
このまま続けていても同じ事の繰り返しだろうから、春の三大蛾(註2)であるイボタガやオオシモフリスズメ、エゾヨツメの探索に切り替えようかとも思った。
けど、よくよく考えてみれば、まだメスが採れてない。どうせ三田のモノと変わりあるまいとは思いつつも此処のメスがどんな型なのか見ておきたいし、もう少し粘ることにした。

しかし、10時半頃にピタリと飛来が止まった。
蝶って、示し合わせたかのように飛び始めたら一斉に飛び始めるし、飛ばなくなったら全く姿を見せなくなるって事がよくある。日照、気温、風、湿度等々ほとんど条件が変わってないのに何で❓と思う事しばしばなのである。また昨日と今日の気象条件がほぼ同じでも、昨日は沢山いたのに今日は全然見かけないなんて事もよくある。あれって、何ざましょ❓
おそらく人間には感知しえない微妙な変化があるのだろう。何らかの条件によりスイッチが入ったり、反対にOFFになったりするんだろうけど、それが何だか解らないケースも多々あるのだ。

11時過ぎ、ようやく1頭が姿を現した。
正面から飛んで来たのを仕留める。



(裏面)




あっ、メスだわさ。
しかも完品のキレイな個体だ。
ギフチョウの雌雄の区別は比較的簡単だ。メスの方が大きく、翅形が丸くて優しい感じがする。人も女性の方が体の線が丸いから同じだね。これって基本的に生物の普遍的な法則なのだろう。例外も結構あると思うけど。
他には背中の毛がメスはオスに比べて短くて赤っぽい事、裏面の色にコントラストがあって鮮やかな事、また上翅裏面の外縁上部が濃い黄色になることで区別できる。あと、尻先に交尾囊(受胎囊)があれば、間違いなくメスだ。これは交尾した時にオスが他のオスとの交尾を阻害するために分泌物で蓋をしたものである。これにより一度交尾をしたメスは、もう交尾することが出来ないと言われている。謂わば、貞操帯みたいなもんである。
ギフチョウって、人間で言えば独占欲が強くて相手を縛りたがる嫉妬深い男みたいだ。それって病的で怖いなあ…。あんまし何でもかんでも人間目線で見ちゃいけないんだけどね。

再び静寂が訪れる。
その後も、とんと姿を見せない。
何処へ行ったの❓、ギフチョウちゃん。

ようやく見つけたと思ったら、何とナミアゲハくんだった。



ギフチョウ並みに小さい個体だったし、しかもギフチョウみたく地面に止まったからマジ間違えたよ。普通はナミアゲハが地面に翅をベタッと広げて止まることなど滅多とないからね。折角だからと、ヤラせ写真を撮る。



本当にこんな風に止まったのだ。
そりゃ一瞬、間違うでしょうよ。

その後もやはり姿は見られず、正午には諦めてその場を離脱することにした。
2♂1♀のみを残して、あとは全部リリースする。
何が起こったか、ちょっと解らないような顔で暫し指先に止まり、何かを思い出したかのようにふわふわと飛んでゆく。その後ろ姿を見送り、どうか無事生き延びて欲しいと願う。

いつもライト・トラップをしている場所に移動して、三大蛾を探す。

【春の三大蛾】

(オオシモフリスズメ)


(エゾヨツメ)


(イボタガ)


しかしコヤツら皆、この季節の枯れた風景に溶け込むような色柄だ。容易に見つかるわけがない。我慢が足りない人だから直ぐにダレてきて、小一時間ほどで早々とやめにすることにした。現実的にも性格的にも、どだい無理な話であった。

枝垂れ桜が綺麗だ。





風にそよそよとなびく様を暫く見てた。
桜はいつまでも見てても飽きない。
こうやって往く春を見送る気持ちも悪かない。

午後2時過ぎ。
バス停まで戻ってきたが、時刻表を見るとバスはさっき出たばかりのようだった。困ったことに、次のバスまでかなり時間がある。
はてさて、どうしたものか…。
でもこんなとこで、ぼおーっと待ってるのは性に合わない。元来、待つことが死ぬほど嫌いな男なのだ。歩き回って疲れてはいるが、この際、歩こう。駅まで歩ける距離なのかどうかも確かめたいしね。ライト・トラップするのに行きはバスで、バス便のない帰りは歩きで戻れる可能性の可否を知っておいて損はないだろう。道中で無理だと思ったら、途中のバス停から乗ればいい。

駅の近くで飛んでいるギフチョウを見た。道路標識の青色に反応して一瞬だけ纏わりついて飛んで行った。なあ〜んだ、駅の周辺にもいるじゃないか。たぶん放蝶ものだろうけどさ。

午後3時。
思ってた以上に遠かったが、何とか駅にたどり着いた。
行きの時は直ぐにバスが出発しそうだったのでゆっくり見れなかったが、満開の桜が綺麗だ。その向こうにはラムネ色の川が流れている。



       浮雲柳絮人間世
       流水桃花物外春(註3)

世間はコロナ騒動でそれどころではないけれど、桜はどこ吹く風と変わらずに咲いている。当たり前の事だが、不思議な気持ちに囚われる。季節の推移はそんな騒動とは関係なく粛々と進んでいるのだ。

さてさて、どうしたものか…。午後3時と中途半端な時間になったから三田に転戦するには遅過ぎるし、次の目的地に行くにはまだ早過ぎる。
まあいい。電車に乗ってから考えよう。今回は青春18切符を持っているのだ。その日のうちならば、何処へなりと行ける。風の赴くまま、心の赴くままに。

                         つづく

一応、この日に採って展翅したものを並べておく。

(♂)




(♀)


福井産と比べてやや大型で、後翅中央黒帯が細く、下の黒点との間隔が開く。ゆえに黄色い領域が広くて全体的に明るく見えるのだろう。また赤紋が福井産よりも厚い傾向にある。

参考までに『ギフチョウ88か所めぐり』の「武田尾」の項にあるギフチョウの特徴を書いておく。
それによれば、「京都〜大阪北部の集団と、兵庫県の山陽側の集団とはかなり印象が異なるが、ここらあたりが接点となる。斑紋は基本的には兵庫県山陽型であるが、京都〜大阪北部型も混じる。」。因みに此処の幼虫の食草はヒメカンアオイである。
お隣の「三田」のギフチョウについても言及されているので、それについても書いておこう。
「兵庫県の瀬戸内側、三田市から西脇市あたりにかけてのヒメカンアオイ食いのギフチョウはやや変わった一集団である。この産地では尾状突起が短く、丸い翅形の個体が多い。」
(☉。☉)あら、武田尾とは違うんだね。けど、ホントかね❓ ニブいアッシにはワカランかったよ。実を云うと、それほど変異には興味がない人なのである。でも言われてみれば、尾突起は短かかったような気がしないでもない。

比較のために福井産のモノも貼付しておきます。

(♂)






後翅中央の黒帯が太くて、3つめの個体などは下の黒紋と完全に繋がっている。小太郎くん曰く、こう云う型を「ジジヒゲ(爺髭)型」と言うんだそうだ。
福井産は、この様に黄色い領域が狭い個体がわりと多く、また縁毛が黒くなりがちなせいもあって黒っぽく見えるのだろう。
とは言っても、あくまで傾向であって、例外も多々あることをつけ加えておこう。

右面上翅がH型のこれなんかは↙、一見すると福井のモノに見えない。
とはいえ、分かる人には一発で福井南部のものと判別できるんだろうけどさ。



(♀)





メスも同じような傾向があるが、これまた例外もある。
2つめの赤上がりの個体は黒帯があまり太くないし、下の黒紋との間隔も開きがある。

一応、コチラも参考までに『ギフチョウ88か所めぐり』の福井県越前産のギフチョウについて書かれた箇所を示しておこうと思った。けんど、(-_-;)あちゃーだった。
福井県の産地は5箇所(丹生郡、勝山市、大野郡、南城郡)が紹介されているのだが、そのうちの3箇所が手元にない。随分前に本からコピーしたものなので、あえてその部分を複写しなかったのか、それとも最初からその部分が抜け落ちていたのかは分からない。取り敢えず「南条町 杣山」の項に「異常型(杣山型のこと)の血が混じっているせいか、黒条に何らかの乱れをもつ個体が多い。」という記述があった。
なるほどね。形質がバラバラという印象があるのは、そう云うワケなのね。此処がギフチョウ発祥の地で、ここから全国に広まったりとかしてね。いい加減なこと言ってるけど(笑)。
また文中には「黒条の乱れる程度にはさまざまな段階があるようだが、前後翅のいちばん基部側の黒条が太くなり、前翅ではその外側の黒条が薄れ、後翅では短い黒条が細く線状になる点が共通している。」とも書かれている。加えて『日本産蝶類標準図鑑』によれば、「日本海側では秋田〜新潟県までは前後翅とも黄色部がよく発達し、明るい印象を受ける。新潟上越地方〜富山県あたりになると徐々に黄色部が減退し、福井県北部で顕著になってゆく。福井県若狭地方〜島根県中部では、縁毛も黒色の割合が増え、黒い印象を受けるようになる。」。
ようするに、ここいらのは黒いってワケだ。

スルーするつもりだったけど、三田のギフの画像も探してみっか…。


(2018.4.13 兵庫県三田市)


(2015.4.3 三田市)

以外と写真が残ってない。
展翅画像に至ってはコレだけだった。



翅形が丸いといえば、丸いような気もする。尾突起も短いっちゃ短い。でもこの個体1つだけじゃ何とも言えないよね。
けど、もうウンザリだ。やさグレる。本音は、んな事どっちだっていい。どうしても気になる方は自分で調べてくれたまえ。

ついでだから、ギフに見間違えたナミアゲハの画像も貼り付けとこっと。



最近は蛾の展翅の影響で上翅が下げ気味になってきてるが、これは蝶屋の展翅らしく前翅を上げ気味にした。
矢張り、こう云う上げ気味なのが好きだなあ…。

も一つ次いでに、ギフチョウと並んだ展翅画像も貼り付けとこう。



ねっ、ナミアゲハにしては小さいでしょ。


追伸
本稿は当初『往年のギフチョウ(後編)』と題して書き進めていたが、記事のアップ直前に『流水桃花物外春』に改題した。構成をロクに考えずに書き始めるから、こう云うことはままある。ワタクシにおいては、万事が日常茶めしごとなんである。何をするにも計画がアバウト。緻密な計画を立てようと思うのだが途中で放り出してしまうのだ。向いてない。
しかし、こうも思う。綿密に計画を立てたところで、だいたいがその通りにはいかないじゃないか。だったら緻密とか綿密な計画など立てる必要など無いではないか。そもそも、たとえその通りにいったとしても、それって果たして面白いか❓とも思ってしまう。まあ、立てた計画がピッチリ進んでゆくことに無上の喜びを持ってる人もいるとは思うけどさ。それはそれで楽しいとは理解できる。
そういえば知り合いにデートの前の週に下見に行く奴がいたなあ。自分には真似できないから尊敬はするけど、んな事は絶対一生やんないだろな。そこまでシュミレーションしてて計画通りにいかなかったら、絶対に女の子に苛つきそうだもん。となると、当然上手くいかないよね。細かくスケジュール管理する男は嫌われるのだ。
因みに、ワテは待ち合わせ場所だけ決めといて、そこで行く所を決めることも多い。で、その場その場の局面で物事を決めてゆく。時に導線も無視する。無茶苦茶だが、自分でも先がどうなるかは分からないから面白いのだ。女の子だって先が読めないからドキドキしたりする。ようは自分も楽しめて、女の子も楽しければいいのだ。勿論、女の子からの信頼があってこその話だけどもね。だから、これは恋愛慣れしてない人は絶対にやめといた方がいい。ノープランって、基本的には最悪だからね。女の子に嫌われるパターンの典型でもあるから、フレキシブルに動けない人は綿密な計画を立てましょうね。


(註1)イエローバンド




(2013.5.8 長野県開田高原)


(下はクモマツマキチョウ)

縁毛が黄色くて美しい。ギフチョウの型の中でも最も美しいものの一つだろう。
この型は各地に稀に見られるが、長野県白馬産のものが出現頻度が高いことで有名である。因みに、この個体はその白馬産を飼育放蝶としたと言われている長野県開田高原産のものである。とかく蝶屋は放蝶されたものに対して厳しい意見だが、こう云うのは全然OKな人もいるみたいで採りに行かれる人は多い。綺麗だから、ワシも全然許す。白馬ではギフチョウが採集禁止だしさ。


(註2)春の三大蛾
本ブログにて『春の三大蛾祭』と題して2017年と2018年に詳しく書いた。なので、宜しければソチラを読んで下され。


(註3)浮雲柳絮人間世 流水桃花物外春
第19代 内閣総理大臣だった原 敬(はら たかし)の書(漢詩)。
おそらく「禹山傍繞翠爭新兩澗平分月有鄰木紗柴開如看畫構陰苔徑欲凝塵浮雲柳藥人間世流水桃花物外春杯酒狂歌極浩蕩野煙晴樹望中勺春日遊山」という漢詩からの引用であろう。
一応、訳しておこう。
「柳の綿種がふわふわと浮かぶように、人の世は儚い。けれど川の水はそんな俗世間とは関係なく滔々と流れ、桃の花咲く変わらぬ春だ。」

当時は世界的にスペイン風邪(インフルエンザ)が流行し、日本でも約39万から44万人もの人が死んだと言われている。原自身も、この死の病に罹患した。これは、その時の事を思って書かれたものだとされているようだ。しかし、スペイン風邪では死ななかったものの、1921年に東京駅で暗殺されちゃうんだけどね。


青春18切符 1daytrip 春 第二章(1)

 

第1話 往年のギフチョウ

 
2020年 4月6日

JR難波から今宮駅まで行き、環状線に乗り換えて大阪駅へ。
この今宮駅で乗り換えるのが七面倒臭くて、毎回イヤんなる。本来、大阪駅に行くならば、地下鉄の御堂筋線もしくは四ツ橋筋線のなんば駅から乗るのが常道である。なんばから梅田(大阪駅)まで一直線の最短距離を走るから、その方が圧倒的に早い。しかも本数も多いから断然便利なのだ。
一方、JRを使う場合は一旦今宮もしくは新今宮駅まで南下し、そこから環状線で大回りに弧を描いて大阪駅へと向かわなければならない。つまり距離的にも遠いし、乗り換え時間もあるから倍以上の時間を要するのである。
これはひとえにJR難波駅が終着駅であるからだ。
ここ難波周辺に住むようになってからは、JRが難波と大阪駅とで直かに繋がっていないのは不便極まりないことに改めて気づかされた。なぜに延伸させなかったのかなあ?という疑問が一挙に噴出したのである。
とはいえ平野区に住んでいた時は、さほど気にならなかった。JR難波駅はその昔は難波駅ではなかったからだ。25年程前までは湊町駅(註1)という駅名だったので、難波駅じゃないんだから、それも致し方ないのかなあと思っていたのである。繁華街とはちょっと離れているがゆえ、エリア外として線引きされても仕様がないと理解してたってワケ。それが地下駅となり、名前もJR難波と改称された時には強い疑問を持った。憤然、そのまま地下を掘り進めて大阪駅に繋げればいいではないかと思ったのである。

しかし、それが将来的には解消されることをつい最近になって知った。どうやら新大阪まで繋がる路線の工事が始まっているらしい。


(出典『Response』)

「なにわ筋線」といい、梅田貨物駅跡地に新しく「北梅田駅」を新設し、従来からある貨物線を利用して新大阪駅まで繋げるという構想らしい。南海電鉄(南海なんば駅)と阪急電車(十三駅)との相互乗り入れも決定しているという。つまり新大阪から関西空港までの直通電車が誕生し、大幅にアクセスが良くなるってワケだ。
但し、工事の完成予定は2031年になるそうだ。果たしてそれまでここに住んでいるのかね❓何か恩恵を受けずじまいになりそうな気がするよ。

それはさておき、こうして地図を改めて見ると驚かざるおえない。赤線の新線左横のグレーの膨らんだ線が、おそらく環状線だろう。だとしたら、難波から梅田まで如何に遠回りしているかが今更ながらよく解るじゃないか。
とはいえ、今日は御堂筋線に乗る気はない。なぜなら青春18切符の旅とは、やむおえない場合を除いては一筆書きであらねばならぬという強い信念があるからだ。そして、どんだけJRを乗り倒してやったかが、自分の中で重要なのだ。そこに何となく達成感みたいなのがあるのである。青春18切符に便利という視点は要らない。むしろ不便さとその苦難に耐え、途中下車も有りいので、ジワジワと目的地に近づいてゆくところに醍醐味があるのである。

のっけから物凄く話が逸れた。
いつもの悪い癖だ。ロクに構想無しで思いつくままに書いているから、ついつい興味のある方に引っ張られてしまい、こうして脱線してしまうのである。(^~^;)ゞまっ、今回は電車の話を書いているので脱線も致し方ないか(笑)。
あっ、いかん、いかん。電車に脱線は洒落にならんな。以後、努めて脱線なきように書き進める所存である。

大阪駅で宝塚線の丹波路快速に乗り換える。
比較的乗り慣れてる電車なので、写真を撮り忘れた。ゆえにネットから画像を拝借させて戴こう。


(出典『フォト蔵』)

名塩駅で普通に乗り換え、次の武田尾駅で下車する。
青春18切符を使うわりには近場じゃないかとツッコミが入りそうだけど、それなりの理由がある。当初は別なところに行く予定だったのだが、前夜になって急遽やめたのだ。理由をあげれば他にも色々あるのだが、単純に言うと路線検索のアプリが調子悪くて💢ブチギレたのである。

降りて直ぐ、バスに乗り換える。
今回もギフチョウの採集が目的だ。
武田尾といえばギフチョウの往年の名産地である。1970年頃までは多産しており、シーズン中は何十人もの採集者が押しかけていたそうだ。しかし、それ以後は開発や里山の放置による荒廃等により激減し、訪れる人もめっきり減ったという。

 
【ギフチョウ】

手乗りギフチョウだね。

それから約半世紀、現在はと云うと確実に増えている。
但し放蝶によるものである。ゆえに訪れる者は今も少なく、大多数の採集者はお隣の三田市に集まっている。蝶屋(蝶愛好家のこと)と呼ばれる人種たちは、放蝶されたものを極端に嫌うのである。憎養殖モノを良しとしないっていう概念が強いのだろう。まあ、言ってみれば大きな生け簀で釣りするのと同じだと考えれば、解るような気がするけどさ。
でも地図を見ると、武田尾と三田は連なっているから両所を移動していることは充分に考えられる。互いの血が混じっている可能性は結構あるのではないかと思う。とはいえ、自然由来か養殖モノかを区別するのは困難だ。その線引きは、斑紋が異なる他産地のものが放蝶でもされていないかぎりは事実上不可能だろう。
そんな放蝶されたギフチョウに何で会いに来たのかというと、べつに往年の名産地である此の地域のギフチョウがとりわけ欲しかったワケではない。産地ラベルのコレクターではないしね。僕ちゃん、ギフチョウを見つけて採る行為じたいが楽しいだけの人なのだ。だから理由を簡単に言っちゃうと、三田は人が多そうだと思ったからである。場所取りとか面倒くさいのだ。加えて、三田駅から採集ポイントまでの道中を考えると萎えた。途中、とんでもなくキツい坂を登らねばならぬのである。アレがホント辛くてイヤ。
それに今回は青春18切符での移動というのもある。乗り放題なので電車賃を気にすることなく、いつでも三田に転戦が可能なのだ。ここがダメなら、移動すれぱいいのである。その気楽さが此処を選ばせた。

実を云うと、もう一つまだ理由がある。
ここは春の三大蛾であるオオシモフリスズメ、エゾヨツメ、イボタガが3つとも産する。次回ライト・トラップをするにあたり、今一度、場所の選定を考えてみようと思ったのだ。謂わば下見である。そして、密かにあわよくば昼間でも見つけられまいかと思っていた。昼間に隠れている場所さえ見つかれば、わざわざ夜にライト・トラップをしなくても済む。夜の山ん中はおぞましくて怖いんだもん。この時期、夜はまだまだ冷えるしさ。

バスは急勾配を苦しそうに登ってゆく。
こりゃ、歩いては夜にライト・トラップする場所までは行けないなと思った。それも確認調しておきたかったのだ。
ちょっと憂鬱な気分で車窓の外に目をやる。これでギフチョウまでいなけりゃ、場所選びは大失敗だなと思った。

                         つづく

 
追伸
のっけからの脱線で疲れてしまって、ここで力尽きたなりよ。第二章は2話で終える予定が、この調子だとまだまだ続きそうである。これからは極力、脱線せぬよう鋭意努力しよっと。って云うか、このシリーズ、完結するのかよ❓道のりは遠いわ。

 
(註1)湊町駅
関西本線の終着駅である。あっ、今は大和路線と呼ぶんだっけか?いや、大和路線は愛称だっけか?ややこしいなあ。どっちかに統一しろよな。

どんな駅だったっけ❓と思い、当時の画像を探してみた。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

こんなだったっけ❓ 全然、記憶にない。
年号は平成6年(1994)9月とある。どうやらこの時に駅名が「湊町」から「JR難波」に改称されたようだ。
この地上駅の「JR難波」は地下化までわずか1年半しか存在しなかったんだそうだ。余談だが、JR西日本ではこの難波駅が初の地下駅だったんだそうな。

ちなみに現在の駅はこんなの。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

およそ駅に見えない、もう丸っきりの別モンである。
今は近所に住んでるから関係ないけど、昔と比べて改札口は歓楽街から遠くなったからムカついた記憶あり。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

最初の画像とあまり変わりないが、湊町駅みたい。そう言わてみれば、何となく記憶の隅に画像がある気がしてきた。
高速道路の工事に支障があるために、平成元年(1989)12月に駅舎を移転したそうだ。そういえば駅の位置がズレたと云う記憶があるや。さっきより少し記憶の輪郭が鮮明になりかけてきてる。
移転の日付を見て気づく。その頃には東京に住んでいたから、あまりこの駅舎には馴染みがないのだろう。それでも1、2回は帰省していたから、年2、3回くらいは利用していた筈だ。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

あっ、コレだね。これこそ記憶の中の湊町駅だ。強く印象に残っているのはこの駅舎だよ。
ミナミで遊んでて、終電に乗るのによくここまで走ったっけ…。
昭和24年(1949)3月改築とある。たぶん数え切れないほど、この駅の改札を通ってるんだろな。


(出典『懐かしい駅の風景〜線路配置図とともに』)

そうそう、改札を抜けると右手にコノ字型のプラットフォームがあったんだよなあ。


(出典『懐かしい駅の風景〜線路配置図とともに』)

誰もいないね。


(出典『アルベース』on twitter)

改札からプラットフォームまでの雰囲気がとても好きだった。人でゴッタ返していても、どこか風情があった。


(出典『ゲイの鉄道マニア・カシオペアの個人的趣味シャベレ場』)

この白い鉄骨、懐かしい。


(出典『交野が原道草』)

こんな感じで、電車がよく停まっていた。
でも、だいたいの記憶は夜か夕方だけどね。遊びに行くから、行きは夕方、帰りは深夜なのだ。


(出典『つるさんの鉄ブロ温泉』)

103系らしい。
そういえば東京に初めて出てきた時には、この電車が山手線を走ってたから何だか変な気分だった。
それはさておき、こんなのが快速電車として走ってたんだね。そういえば、微かだけど記憶にあるや。


(出典『新快速東京行き@外出自粛中』)

駅名の看板も懐かしいが、背後の景色がもっと懐かしい。そういや、こんな風景だったわ。でも多分、殆どの建物は今は無い。
タイムマシーンがあったら、この時代に帰りたいよ。

 
追伸の追伸
ありゃー、舌先が渇かぬうちに早くも註釈で脱線だわさ。
脱線は、もう宿痾のビョーキなのかもしれない。次回はちゃんとギフチョウの事、書きまあーす。

  

『燃えよ麺助』ってどーよ❓


先日、念願だった『燃えよ麺助』に行った。
この店、大阪では超有名なラーメン屋で行列が絶えない。
トリップアドバイザーの評価では5点満点の「4.5」、食べログでも「3.78」という高得点で、2017年と2018年には『食べログラーメン百名店WEST』にも選出されている。
そして『ラーメンWalkerグランプリ2019』では並居る名店を押し退けての総合部門1位にも輝いている。
また、姉妹店『麦と麺助』は同年にミシュランガイドのビブグルマン入りも果たしている。ついでに言っとくと、『秘密のケンミンSHOW』でも取り上げられていたそうだ。
そこまで評価が高いのならば、自ずと期待値もマックスにならざるおえない。

場所は大阪駅から1つ先、環状線の福島駅を降りて直ぐにある。



夕方の部の開店時間午後6時の5分程前に店前に着く。
(☉。☉)あっ❗、並んでる人が少ない。
新型コロナの影響だろうが、2、3人しかいないじゃないか。予測は何となくしていたけれど、思ってた以上に少ない。
実をいうと、去年この店には一度だけ並んだ事がある。しかし並ぶの大の苦手な男ゆえ、10分で痺れを切らして行列から離脱した。



コロナ対策のせいか今日は入口が開いているが、前回来た時は閉まっていた。だから全体が白壁で窓らしい窓がなく、一文字型の細い窓から辛うじて店内が覗けた。つまり、およそラーメン屋とは思えない外観なのである。 それで思い出した。このカッコつけた外観にも嫌な感じがして、行列から離脱したのだった。



暖簾が短くて、お洒落でやんす。

程なくして、店員に促されて店内に入る。
しかし、ここで💢イラッとくる。一見丁寧な接客なのだが、どこか偉そうで慇懃無礼な匂いを感じた。客に対して食わしてやってるみたいな雰囲気が嗅ぎ取れたのである。まあいい、若者だ。有りがちの事だろ。若者ってもんは、店の看板という虎の偉を借りて猫なのに虎になった気分に成りがちってもんだ。かまへん、かまへん。だいち、そんな些事で自らラーメンを不味くしてしまうのは愚かなことだ。心を平静にリセットするっぺよ。

入って直ぐ右手に自動券売機があり、そこでチケットを買う方式になっている。この自動券売機パターン、あまり好きではない。後ろに人が並ぶので、どこか急かされたような気持ちになるからだ。それにそもそも背後につかれる事を極端に嫌う男でもある。世が世ならば、振り向きざまに袈裟がけにしかねない危ない人なのだ(笑)。

この店は「紀州鴨そば」と「金色貝そば」の二本柱。前回並んだ時に、それくらいは学習している。そこで思い出した。前回並んだ時は前にいたカップルの男の方が、横のブスに如何に「紀州鴨そば」が「金色貝そば」よりも旨いかを力説しておったのだ。それも相俟ってか💢イラッときて離脱したんだったわさ。短気だね〜。
しかし、ここは素直に彼の言に倣って鴨そばにしよう。
でも小さな字がズラズラと並ぶボタンを見て、一瞬パニくりかける。この辺も自動券売機が嫌いなところである。
何とか見つけたものの、再び選択を迫られる。「紀州鴨そば」¥890と『味玉紀州鴨そば』¥990のどちらかにするか迷ったのだ。ちょいとお高いが、もともと味玉好きだし「味玉紀州鴨そば」の方をチョイスする。
それにしても、最近のラーメンって高いよなあ…。千円前後が当たり前になりつつある。スープなど素材に金が掛かってるのだろうが、どこか納得いかないところがある。昭和の男は安くて旨いのがラーメンって云う概念が強いからだ。その辺の食堂の定食よか高いって、どーよ❓
とはいえ、時代も変わりつつあるのだろう。そのうち千円越えのラーメンが当たり前の世界になるかもしれない。全ての料理の調理技術を注入した究極の料理がラーメンだとか芸術作品だとか言い始めたら、そうなりかねない。けど千円越えのラーメンなんて食ってたまるかの所存だけどね。

店内はカウンター10席のみ。思ってた以上に狭い。
そりゃ、行列にもなるわな。きっと店の戦略なのだろう。
これは行列効果というもので、バンドワゴン効果とも呼ばれている。多くの人がある選択肢をとると(この場合は行列)、さらにその選択肢をとる人が増えていく現象を指す。つまり、人は行列=人気があると感じ、よっほど旨いんだろうなと考える。で、「とりあえず多くの人に同調しておこう」と云う心理が働き、情報をあまり吟味せずに並んでしまうと云う心理効果のことをいう。ワシもそれに完全に引っ掛かっとるワケやね。
店としての戦略なんだから、べつにそれを否定しているワケではない。自分が逆の立場だったら、同じこと考えるもんね。

驚いたことに、こんな狭いのにスタッフが4人もいる。
多くないかい❓この店の規模なら3人で充分だと思うんだけど…。
人件費は意外と高い。店の経費の多くを占めている。勿論、それはラーメンの価格にも反映されて然りだろう。スタッフを一人減らせば、ラーメンの価格も安くなりそうなもんだけどね。

店内にはジャズが静かに流れている。こういうお洒落風情のラーメン屋って、最近やたらと増えてねえか❓ 目の前には、スタイリッシュな金属のコップと脇には透明でデザイン性の高い水入れ。何処までもお洒落路線である。
気づいてはいたが、目の前のスタッフもまるでシェフみたいなユニフォームである。解った、解ったよ。コンセプトはそうゆうことなのね。店主の目指すところが、よくワカリマシタ。自分の店なんだから、大いになさってよろしである。店をどうしようが、それは店主の特権だかんね。ただ、自分は洒落たラーメン屋が何となく気持ち悪いだけだ。
そこでまた記憶がフィードバックする。といっても、もっと時間的には近い話である。さっき来る時にたまたま筋を一本間違えて店の裏を通った。その時、このスタッフたちが裏通りでたむろしてたわ。あくまでも私見だが、その感じは嫌なものだった。だるそうな雰囲気で、客をナメた人たちだとセンサーは反応していた。料理人のバックステージなんてものはどこも似たようなものだが、目についたから覚えていたのであろう。

コロナウィルスの影響か、こういうのもカウンターにあった。



3列目が引っ掛かる。 「咳、くしゃみエチケットを守ってくださいますようお願いいたします(原文のまま)」
一瞬、「、」が無いから、くしゃみエチケットって何ぞや?と思ったが、咳やクシャミはエチケットを守って下さいという事 なのだろう。でも、このエチケットというのが今ひとつよくワカラン。咳やクシャミをするなって事なのか❓でもこの2つは咄嗟に止められるものではないだろう。どうせよというのだ❓咳やクシャミをしても迷惑をかけない為にマスクがあるのではないか❓マスクしてても、咳やクシャミはしてはいけないのか❓それとも咳やクシャミをするなら、手で口や鼻を覆うのではなく、欧米のエチケットみたく自分の肩に鼻と口を付けてせよって事なのか❓はたまた、コレはマスクをしていない人に対して言ってるのか❓だったら、マスクしてない人の入店を断れよ。入口にその旨、張り紙なさい。
何か、ものを食うには最悪の精神状況になりつつあるが、忘れよう。そういう負の感情は切り捨ててリセット、ここはラーメンに集中しよう。ラーメンさえ旨けりゃ、そんなもんは払拭される。お洒落であろうが無かろうが、その他云々も関係ない。そんなものに味のジャッジメントが影響されてはならない。それが昔からのモットーだ。例えば、どんだけムカつくオヤジの店であったとしても、旨けりゃいいのである。そこに人間性は関係がない。旨けりゃ、再訪するだけのことだ。問題はない。そうゆうスタンスなのだ。

5分と経たずしてラーメンがやって来た。驚くほど早い。



運ばれて来た時に、微かに柚子の香りがした。矢張り、そっち系か…。とはいえ、柚子は好きなので全然許せる。

見た目はインスタ映えしそうなお洒落なレイアウトだ。
具はレアチャーシュー、鴨肉、支那竹(メンマ)、白ネギ、三つ葉ってところだ。そこにトッピングと言ってもいい、味玉が加わる。

先ずはスープから。
レンゲで一口すすって、🙄アレレ❓と思った。期待していた程には旨くないのである。
ならばと丼鉢を持って直接すすってみる。スープ表面の脂との関係で、そうした方がスープ本来の旨さが解るからである。
しかし、やっぱり感動するような旨さはない。
一瞬、ワシもコロナを発症したのではないかと思ったよ。でも味も香りもするから、冷静に考えればコロナではない。首を傾げる。
名前通りの鴨と、たぶん鶏ベースの醤油味かな?…。けど、それだけではない複雑な味わいがあるから、他に魚介系と昆布の出汁も少し入っていそうだ。
旨味とコクはあるがどこかサッパリとしており、上品な顔のスープだ。女子の評価が高そうである。
けど正直、鴨だしって感じがあまりしない。自分が知っている鴨だしとは遠い。鴨なら、もっと深みと旨味があって、鴨独特の脂が感ぜられる筈だ。
それに何よりいけないのが、如何せん口に残る後味が甘い。一瞬、鴨の甘みかな?とも思ったが、それにしては違和感大だ。素材の自然な甘みではないような気がする。
(-_-;)うーむ、これはおそらく四国や九州で好まれる甘い醤油を使っているからではなかろうか❓そう思った。あの、醤油に大量の砂糖を入れた甘醤油、昔からどうも好きになれないんだよねぇ。関西の西の端あたりから、この甘い醤油が幅を効かせており、皆さん、刺身とかにも好んでかけらっしゃるのだ。
それにしても世の中、こんなにも甘いもん好きの人が多いのかね❓ラーメンに甘みは、野菜の甘み以外は要らんだろ❓ そりゃ、長らくスィーツブームだって続くわさ。
とはいえ、途中で柚子を混ぜたらバランスが少し良くなった。

麺は中細のストレート麺。コシがあり、心地好い歯ざわりがある。スープとの絡みも良い。感覚的に加水率は高くないようだし、個性的な麺と言っていいと思う。
思うに、何となく蕎麦の雰囲気もある麺だ。柚子や三つ葉が入っているせいもあるし、スープも相俟ってか途中から段々ラーメン食ってる気かしなくなってきた。頭の中がちょっと混乱する。麺も旨いような、そうでもないような気がしてきて、益々混乱が広がる。
そして、何だか麺が途中からどんどんスープを吸っていく感じがして、段々マズくなっていってるような気もしてきた。

スープと麺を別々に評したので、説明がバラバラになってしまっているきらいがあるが、今さら書き直すのも面倒だ。このままの路線でいく。具についても個別にコメントしていこう。

レアチャーシューは素直に旨い。でも感動する程ではない。
味玉も旨い。味の染み具合といい、黄身の半熟度合いといい申し分ない。たぶん何処かのブランド玉子なのだろう、黄身がオレンジ色でコクがあり、旨味が強い。
それらをも凌駕するのが、支那竹だ。「しな」と打っても支那と出てこない。今どき、その名称って差別用語でマズイんだっけ❓たかが食いもんにまで差別とか言う世の中って、恐いよな。今や言葉狩り社会だ。
スマン、スマン。また危うく大脱線するとこじゃったよ。この手の話をしだすと終わんなくなっちゃうからね。変換が面倒だし、以後メンマで通します。
このメンマ、極太で唯一無二なくらいに美味い。よくある甘ったるくて濃くてどうでもいいようなオマケ的存在のメンマではないのだ。抜群に歯応えがあり、噛むとスープとは別な系統の洗練された出汁が溢れ出す。存在感があって、メチャンコ美味いのである。これにはマジ感動したよ。
しかし、炙り鴨がそれらのハーモニーを致命的にブチ壊した。
口に入れた瞬間に直ぐ違和感を感じて、本能的に解った。傷んでて腐りかけているのである。その場で、よほど吐き出そうかとも思ったが、カッコ悪いので我慢して飲み込んだ。気分、最悪である。こんなもんを客に出すって言語道断だろう。全てを台無しにするダーク・インパクトな代物だ。
一応フォローしておくと、もし傷んでなかったら、それなりに評価されて然るべきものだとは容易に想像がつく。おそらく、前日に余ったモノの保存状態がよろしくなかったのであろう。

このラーメンの自分の印象を一言で纏めてしまうと、パンチがない。ドロドロ濃厚なラーメンは好きじゃないけれど、上品なラーメンもあまり好きではないのかもしれない。意外と自分のラーメンの好みのレンジは狭いのかもね。ようはラーメンほど各人の好みが分かれる食いもんはないものと思われる。だから。あそこは美味いけど、ここのは認めないなどという各人バラバラの意見が飛び交うのだろう。

結果、ディスりまくってしまったが、ゴメンやけど嘘はつけない。正直、これなら店主の弟が出した店、近鉄の難波(大阪難波)駅構内にある「なにわ麺次郎」の方がまだ旨いと思ったよ。



コッチもジャズが流れるお洒落系ラーメン屋である。




まあ、コチラでは貝だしの「金色貝そば」を食ったから、比べることじたいがフェアではないんだけどね。

さらに言えば、同じ福島ならジャンルは違うけど、個人的には鶏白湯麺が売りの「ラーメン人生JET」の方が好きかな。店を出て、正直そっち行っとけば良かったと思ったよ(ちなみに煮干しラーメンで有名な『烈志笑魚油 麺香房 三く』もあまり好きじゃない)。
もっと言うと、店を出た前、斜め隣にある「大洋軒」の唐揚げ定食を食っときゃ良かったと思った。行ったことないけど、その店は「第8回からあげグランプリ」中日本醤油だれ部門金賞を受賞してもいるのである。オラ、唐揚げフリークだかんね。
因みに唐揚げ定食は¥780である。それからすると、やはりラーメンが¥990って納得いかんなあ…。

帰って食べログの口コミ欄を見たら、何と大半の人が★5つとか4つを付けていた。皆の舌がオカシイのか、ワシの舌がバカなのかマジで悩んだよ。 しかし少数だが、★2つとか3つの意見もあった。読むと、スープが甘いとかワシの感想と近いものもあった。それで少しホッとしたよ。ワシのような感想を持った人もいるってことは、全く的外れな意見ってワケでもないからね。 とはいえ、世間の評価が高いのも事実だ。嫌味でもなんでもなく、行きたい人はワシの意見など無視して行かれるがよろしかろう。こんだけ評価が高いなら、かなり満足できる筈だ。
ワシは二度と行かんけどね。

                        おしまい

追伸
因みにあとで調べたら、店主は「金久右衛門 本店」の御出身のようだ。
金久右衛門といえば「大阪ブラック」が有名で、食べログ大阪ベストラーメン3年連続No.1(2009〜2011年)、関西1週間大阪ベストラーメン受賞、大阪ラーメン覇王決定戦 準優勝、東京ラーメンショー2012 第一幕優勝など数多くの受賞歴を持つ関西を代表する醤油ラーメン専門店である。
自分も本店と道頓堀店に行ったことがあるけど、納得の旨さだった記憶がある。でも醤油の甘さは記憶にない。たぶん九州や四国の醤油もブレンドして使っているのだろうが、ようは気になるか気にならないかは、味のバランスにもよるのだと思われる。気にならない程度の甘さはラーメンのスープには必要なのかもしれない。

スープには紀州鴨と阿波尾鶏の鶏ガラ、魚介のスープ、昆布だしが入っているらしい。一応ビンゴのようだが、古い記事も混じっているだろうから今もそうなのかはワカラナイ。現在は違っている可能性はあるだろう。真面目な店ならば現状に満足せず、日々スープも改良を重ねているからね。因みに或る記事には、ポルチーニ茸オイルも入っているとか書いてあった。全然ワカランかったけど。
醤油ダレは小豆島の醤油に数種の醤油をブレンドしているようだ。小豆島の醤油ならば、瀬戸内だから甘い可能性大だね。醸造元が分からないから何とも言えないけどさ。
いや、待てよ。小豆島は香川県だけど、たしか四国みたく醤油は甘くなかった筈だ。となると、このスープの甘さは醤油由来のものではないと云うことか…❓でも、あの甘ったるさは鴨ダシ由来ではないと思うんだよなあ…。だったら何なのだ❓ワッカリマセーン\(◎o◎)/

麺は、昔は森製麺に特注したものを使っていたようだが、現在は自家製麺。全粒粉と最近流行りの高級小麦「はるゆたか」もブレンドして使っているそうだ。そのわりには、あまり小麦の香りを感じなかったけど。

味玉は「赤うま卵(旨赤卵?)」という鹿児島の卵を使っているらしい。やはりブランド卵だったのね。

メンマは、無添加熟成メンマを4日間かけて戻し、鰹だしに一晩つけたそうだ。

炙り鴨の鴨ロースは和歌山県湯浅町「太田養鶏場」にて育てられた純国産紀州鴨で、藁(わら)で炙っているそうな

レアチャーシューは豚肩ロースを特製塩ダレに漬け、香ばしく焼き上げた後に低温でじっくりと火を通したみたい。

驚いたのは、香辛料として胡椒と祇園「原了郭」の黒七味が置いてあると云う記述が散見されたことだ。そんなもんはワシの目の前には無かったぞ。あったら、絶対に黒七味かけまくり必至であったろうに。誠にもって無念じゃよ。
しかしそれは昔の話であって、現在は置かれていないのかもしれない。もしかして、うちのラーメンは旨いんだから、何にもかけんなよって事かね❓客には味変する権利も自由も与えられないってワケね。それって餃子屋に何も調味料が置いてないのと同じじゃないか。味が付いてますのでそのままどうぞと言われても、飽きてくるから醤油やラー油、胡椒、酢をつけたい人だっているだろうに。せめて胡椒か山椒、七味のどれか一つくらいは置いて欲しいな。人間の舌は皆同じじゃないんだからさ。ブツブツ(ー_ー゛)
何か結局最後までディスりまくりで終わってしまったよ。店主さん、ごめんなさいね。バカ舌男の戯れ言だと思って許してつかあさい。

話は全然変わる。
実を云うと、ラーメンを食ったのは伊丹空港周辺にシルビアシジミの様子を見に行った帰りです。しかもミナミの難波からママチャリ🚲で。

【シルビアシジミ♂】


今年は発生が早かったようで、ゴールデンウィーク後半のこの日には既にボロ個体ばかりだった。おそらく4月下旬が適期だったのだろう。しかも1箇所を除いて個体数も少なかった。但し、晴れだったけど風が強かったから何とも言えない部分がある。風が強いと蝶はあまり飛ばないからね。
個体数が多いところは♀ばかりだった。バルボキア感染は継続して起こっているようだ。このバルボキア感染について知りたい方は、拙ブログ『シルビアの迷宮』の第三章 バルボキアの陰謀の回を探して読んで下され。URLを貼り付けるのは面倒なので、申し訳ないけど自分で探してね。
そういうワケだから、今回は1つも持ち帰らなかった。あまりにボロばっかなので早々と諦め、蝶の写真を撮っていた爺様とずっと喋っとりました。

帰りにスカイパークにも寄った。



関空なんかの画像をTVで見てると飛べない飛行機がズラズラと並んでいるが、そんな様子は見受けられなかった。通常通りとは言えないが、思ってた以上に飛行機の離着陸がある。

調度着いたところで、ボーイング777-200/-200ERの離陸が始まった。ラッキーである。現在の大阪空港ではジャンボ機は就航しておらず、こやつとボーイング777-300/-300ERくらいしか大型機は見られないのだ。



スピード、遅くねえか❓
ドタドタと重そうに滑走路を走ってゆくのを見て、よくこんな鉄の塊が空に浮かぶなと思う。小さい飛行機ならまだしも理解できるが、このクラスの大きさになると俄に信じ難い。飛行機嫌いの、あんな鉄の塊に乗れるかい云々の意見も解るような気がしたよ。

そうだ❗天とじ丼を作ろう

 
😁そうだ❗天とじ丼を作ろう。
前回は念願の福井・敦賀で幻の「天とじ丼」を食うと云う話だったが、旨かったので自分でも作ろう、作れんじゃないかとふと思ったのである。

言ってしまえば海老の天ぷらを卵でとじるというシンプルなものだ。この自称まあまあ天才の何ちゃって料理びと、やってやれないワケがない。あれくらいのレベルのものなら自分でも楽勝で作れると思った次第なのだ。相変わらず傲岸不遜な男である。

そんなわけで、ナメきった男はスーパーの惣菜売り場で出来合いの海老天を買ってきた。それでも何とかなると思ってしまうところが、自称まあまあ天才の愚かさであり、傲岸不遜たる所以である。
 
先ずは玉ねぎをスライスし、15分以上無視する。これはべつに玉ねぎをイジメたいワケではなく、或る種の変態放置プレーの一環でもない。玉ねぎを切って直ぐに火を入れてはいけないのだ。
なぜならば、玉ねぎには硫化アリルという物質が含まれており、ビタミンB1の吸収を高め、新陳代謝を盛んにする作用があるのだが、切ってすぐ調理するとそれが失われるのである。けど、切ってから室温で15分〜30分程放置しておくと、加熱してもアリルくんが壊れなくなるのさ、(^3^♪プップップー。
他にもプラス効果はある(以下、どーでもいい人は読み飛ばされたし)。放置すると、プロペルニルジスルフィドという舌を噛みそうな類いのものが新しく生成され、そやつには糖尿病で高くなった血糖を下げる作用や発ガン抑制作用がある。これを加熱すると、また別の物質トリスルフィド類やセパエン類に変わるのである。これらは心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる中性脂肪や悪玉コレステロールの値を下げると言われている。血管を詰まらせる血栓を溶かすことも確認されていて、血液をさらさらにし、動脈硬化を防ぐ作用もあるようだ。また、玉葱を加熱調理すると解毒代謝が促進されて、体内の有害物質を排泄するそうだ。
書いてて、そこまで考えてメシ食えんよとは思ってるけどね。
クソッ、またどうでもいい事を書いてしまったなりよ…。

かつお昆布出汁に薄口醤油、酒を入れ、みりん少々を加えて火にかける。砂糖を入れるかどうか迷ったが、甘くなり過ぎるのは嫌なのでやめとく。沸騰する前に玉ねぎを加え、ある程度くたくたになるまで火を入れる。丼モンの生っぽい玉ねぎは苦手なのだ。
その間に卵2個をとく。海老は電子レンジのオーブン機能で温めておく。
ここからは一気呵成だ。玉ねぎ入りの出汁じるが頃合いになったら、とき卵を2回に分けて入れる。これは白身が生でズルズルなのは嫌だし、かといって卵が固まり過ぎるのもヤだからだ。
その僅かな時間の間にご飯を丼鉢によそい、海老を乗せる。そして玉子とじをすかさずダイブさせ、木の芽を飾って出来上がり。

 

 
幻の天とじ丼は海老天が2本だったが、コッチは奮発して3本である。オマケに海老のみで獅子唐だのサツマイモなどと云う余計なものも入っておらんし、卵もたっぷりじゃ。もう勝ったも同然の気分でカッ込む。

(--;)…。
ب)…。
悪かない…。悪かないのだが、どって事ない。そこそこ旨いんだけど、敦賀の「千束(ちぐさ)そば」のクオリティーには程遠いレベルと言わざるおえない。海老に感動は無いし、玉子もあんなにフワフワではない。自称まあまあ天才、「千束そば」に完敗である。

ならばと数日後、本気で臨むことにした。リベンジである。このままではプライドが許さない。ここでおめおめと引き下がるわけにはゆかぬのだ。
満を持して今回は生の海老を買ってきて、自分で海老天を揚げることにした。そもそも市販の海老天って、衣が厚くて中身が驚くほど細かったりする。ようはひょろひょろの詐欺まがいのものばかりだから失敗したんじゃないかと考えたのだ。だから、今回は高級天ぷら屋並みのギリギリの火通しで勝負しようではないか。本気出せば、楽勝じゃい(ノ`Д´)ノ彡❗

他の行程は基本的には同じだが、出汁の配合を少し変えてみた。甘みが少し足りないかもと思ったので、ちょっとだけ味醂を増量する。卵は同じ2個だが、とろとろ感の柔らかさを再現するために、片栗粉を加えた。こうすれば、卵が固まりにくくなると踏んだのだ。
 
衣薄めの海老天を揚げる。予熱で火を通すので、揚げ時間は短めで油から取り出す。したらば、素早く予め作っておいた玉ねぎ入りの出汁じるを火にかける。沸騰するまでの間に海老天に塩を付けて摘み食いする。
(☆▽☆)うんめぇー❗火入れ完璧やん❗❗
出汁が沸騰してきたら、片栗粉の入った卵液を掻き混ぜ、2回に分けて入れる。
それを横目で見ながら、電光石火で御飯をよそい、海老天を乗っける。んでもって、卵が完全に固まらないうちに玉子とじをドバーッと上からかけ、九条ネギを添えて怒涛のうちに完成。

 

 
この見た目、「千束そば」を超えたんじゃね❓
フフフ<( ̄︶ ̄)>。我ながら、やる時はやる男なのだ。

並々ならね期待を込めて食う。

(^3^♪旨いっ。
海老もプリプリだし、玉子もトロトロだ。レベルは前回よりも確実に上がっている。
しかーし、残念ながら千束そばの領域には及んでいない。あの旨さを知らずして食ったてたら、そこそこ自画自賛してもいいところだが、あっちの方が断然に美味いと認めざるおえないのだ。

せにょ〜る┐(´д`)┌、いったいどこが違うというのだ❓
今一度、『千束そば』の画像を引っ張り出してきて見比べてみる。

 

 
原因は海苔か❓…。九条ネギも要らんかったかも。
しかれども海苔が入ってないところも食ってる筈だけど、変わらず美味かったぞ。だから、それが決定的な味の違いの理由とは思えない。もっと根本的な違いがあると言わざるおえない。
たぶん、大元は出汁なんだろなあ…。でも老舗蕎麦屋の出汁の再現は難しいよな。やっぱプロは凄いのだ。

諦めて、素直にまた来年食べに行こっと。

                        おしまい

 

青春18切符oneday-trip春 第一章(5)

 

 第5話 みんな一人ぼっち


思いのほか変な名前の店探しに没頭してしまった。
店の開店時間である午後5時を少しだけ過ぎてから入店するつもりが、時刻はもう5時半になろうとしている。
暮れ始めた町をやや早足で歩く。店の場所は午前中に駅の観光案内所で教えてもらっていたし、この町に入った時に早々と確認済みだ。

 

ここを訪れるのは、たぶん20年くらい振りである。

『千束そば』と書いて、ちぐさそばと読む。
おかげで店の名前が頭の中で長い間ずっと定まらなかった。みんなは「ちぐさそば」と呼んでいたような気がするが、看板の字は「千草そば」では無かった筈だと云う記憶がある。だから店名が脳内で「千何とかかんとかそば」で宙に浮いたままだった。名前に自信が無くて、オマケにいつも車で行っていたから敦賀とだけしかわからず、その店が敦賀のどの辺りに位置するかも分からなかったのだ。敦賀といっても広い。駅を経由したこともないし、住宅街みたいなところにあったゆえ、駅から近いのか離れているのかさえもまるで見当がつかなかった。お手上げである。
ここで一言つけ加えておくと、昔はスマホなんぞ普及していなかったから、今みたくお手軽に検索なんて出来なかった時代だったことを御理解戴きたい。
そう云うワケで行きたくとも行けず、いつしか記憶の隅へと追いやられていった。

今朝、敦賀駅に降り立った時に、その店の記憶が突然甦った。 そこの天とじ丼が死ぬほど美味かったことを思い出したのだ。 その時点で、今回の旅の目的の第一義がギフチョウ採集ではなくなった。



もうかれこれ20年くらい前の事だろうか。ダイビングのインストラクターになろうと思い、スキューバ・ライセンスを取ったダイビングショップに勝手に押しかけた。当時、お師匠さんは越前で講習を行っており、わざわざそこまで相談に行ったのだ。
その師匠、オーナーのオヤジは女好きでオチャメで、ちょっと近寄り難くて怖いけど、海をこよなく愛するとても魅力的な人だった。そして、人を見抜く力と言霊を持っていた。それが怖さや威厳に繋がり、また崇められてもいたのだろう。
まあ、ワテの性格だからすんなりと懐に入ったけどね。ごく近しいスタッフだけが呼んでいた「おやっさん」と云う呼び名を直ぐに使いだしても叱られなかったしさ。可愛がられていたのだ。それを周りのスタッフは、よく思っていなかったみたいだけどね。まあ、そんなの知るかだけどさ。
とり巻きなんてもんは、たとえ賢くはあっても、だいたいは嫉妬深くてクソなのだ。ルールや常識に縛られているツマンない奴ばかりだ。とはいえ、憎んでるという程ではないし、大多数はそうなので上手く付き合うけどね。人それぞれだし、そういうもんだと思ってれば、ストレスはそんなにない。

おやっさんは言葉に含蓄があり、やたらと人望もあったから、新興宗教の教祖みたいな人でもあった。言ってしまえば、人蕩し(ひとたらし)なのだ。今思えば、自分にとってのお手本だった。優れたインストラクターたる者、初めて会った人でも性格や特性をソッコーで見抜くかなくてはならないのだ。そして、群れを動かすリーダーとは、かくあるべきだという指針を示してくれた。人の上に立つ者は統率力だけでなく、オチャメでなくてはならない。発想力豊かで常識に囚われず、おバカでムチャクチャなところがあるのが理想だ。
でも、そんなおやっさんも何年か前に死んじゃったけどね…。



結局、スタッフが多過ぎて面倒をみてはくれず、その後サイパンに行くことになるのだが、それでも準スタッフみたいな扱いで4、5回は越前に帯同させてもらった。その帰りに、この「千束そば」に必ず寄っていたのである。

入口へと向かう。

 

懐かしいと言いたいところだが、こんな入口だったっけ❓
来店はいつも夜だったので、記憶と重ならない。

店内を見回す。記憶があるような無いような微妙な感覚にとまどう。

壁には有名人のサイン色紙が幾つも貼り付けてある。
わかるところでは、料理の鉄人 道場六三郎、落語家の桂 南光、黒焦げシンガー松崎しげる、映画監督の山田洋次、五大路子(演歌歌手)と大和田伸也(俳優)、タレントの渡辺文雄、女優の岡江久美子あたりだろうか。(この時はまさか岡江さんが、その後に新型コロナウィルスで亡くなるとは思ってもみなかった。だから、ちょっとショックだった。陰ながら、岡江さんの御冥福をお祈りします。)

 

安倍総理の色紙もあり、写真もあった。森喜朗前首相もいる。
何か微かだが、この色紙と額縁写真は記憶があるぞ。
(それはそうと最近のアベちゃんは政治家として酷いな。コロナ対策の迷走ぶりと未来を示せない姿勢は政治家としてクソだわさ。それにコレを書いている5月5日の時点で、まだアベノマスクは届いとらんぞ❗大阪のド真ん中でさえもそんなんだから、地方の状況は想像に難くない。森友問題といい、桜を見る会の件といい、限りなく黒に近いグレーだし、最低だな。でも野党にも全く期待が出来ないから、どうしようもない。日本がどんどんダメになっていってる気がしてならないよ。)

しかし、色紙には覚えがあるものの、店内の造りが違うような気がする。たしか広間があった筈だ。そこでスタッフ皆でワイワイと飯食ってたのだ。
アレって2階だったのかなと思い、店のオバサンに訊いてみる。
しかしオバサン曰く、2階は無いと言う。
w(°o°)wえーっ、もしかしてこの店じゃないのー❗❓
パニックになりそうになる。
その時、奥の閉められた板戸に目がいった。もしやと思い、再び訊ねてみる。

『あの閉まってる奥って、座敷じゃなかったですかね❓』
『そうですよ。今は普段は使ってないけどね。』

その瞬間にシナプスが繋がり、鮮やかに記憶が甦ってきた。そうだ、そうだ。2階ではなく1階の座敷で、大きなテーブルがデーンとあったのだ。改めて見ると、上り框(あがりかまち)の感じにも見覚えがある。たぶん、この店で間違いなさそうだ。
安堵の心が広がる。これで何とか、あの究極とも言える天とじ丼にありつけそうだ。

心が落ち着いたところで、メニューを見てみる。
この店は蕎麦で有名なのだが、実をいうと蕎麦は一度も食ったことがない。その頃はまだ若かりし頃だったので、蕎麦の良さが理解できてなかったのだ。おいら、うどん文化で育ってきた人間だしさ。
そんなワケで、いつも天とじ丼にするか、カツ丼にするか迷ってたんだよね。この店のカツ丼もムチャクチャ旨いのだ

だが、丼のページを見て、\(◎o◎)/ゲロゲロー❗

😱天とじ丼が無いっ❗❗


まさか、まさかの展開である。慌ててオバサンに訊ねる。

『昔、天とじ丼ってありませんでした❓』
続けてカクカクシカジカと事情を必死こいて話す。
するとオバサンは、ちょっと懐かしそうな口調で答える。
『それね、だいぶ前にメニューから外したんよ。』

(@_@)マジかよ、それ❗❓
でもここで引いてはならじと、(ノ`Д´)ノ必死になって如何に天とじ丼が美味かったかを力説して、特別に何とか作ってもらえまいかと半泣きで懇願する。
もうウルウルの目でオバサンを見つめちゃったもんね。
その甲斐あってか、何とか料理長に出来るかどうかを訊いてもらえる事になった。

答えはOK(◠‿・)—☆👍 やったね。
((o(´∀`)o))ワクワクしてくる。これでやっと念願の天とじ丼に会える。あの懐かしくて魅力的な姿に会えるのだ。このワクワクだが、ソワソワした感じ、何だか昔の彼女に会うみたいだ。



運ばれてきた❗
蓋付きでやって来たぞ。丼から僅かに海老の尻尾が顔を覗かせている。期待値がビンビンにハネ上がる。
💞ドキドキしながら蓋を開けてみる。

 

(☉。☉)れれれっ❓
記憶では玉子と海老だけのシンプルなものだったが、色々乗っかっている。おそらく天丼を卵でとじただけのものだ。再び、本当にこの店なのかという疑念が頭をもたげてくる。

でも、旨そうではある。

ここで四の五と言っても始まらない。取り敢えず食ってみよう。
そっからまた考えればいい。といっても、お手上げだとは思うけど…。

(・o・)あっ、美味い❗
玉子のとじ方が柔らかくて絶妙だ。老舗蕎麦屋ならではの少し甘めのつゆの味も相俟って、かなり美味い。
惜しむらくは玉子の量が少ない。記憶では、もっと丼全面にたっぷりと玉子がバアーッって広がっていた。それに海老以外の獅子唐とかの具材が邪魔だ。
にしても、美味いには美味いんだよなあ…。味も記憶と近い。
今度また来る時は、ダメ元で玉子増量、海老以外のものは排除で海老3本にしてもらえるよう頼もう。

レジでお金を払う時に、持ち帰り用の無料の天カスが目に入った。



それで、この店が間違いなく記憶の店と同じ店だと確信した。その天カスの事はハッキリと憶えていたのである。最初は喜んで持ち帰ってたけど、段々持ち帰らなくなったのだ。旨い天カスだけど、そうしょっちゅう持って帰っても家の者だって喜ばんのだ。

支払いは1100円に消費税が加算されて1210円だった。
これくらいなら、たとえ海老と玉子が増量になっても2千円以内に収まりそうだ。ならば、次回は絶対にそうしよう。

記憶の天とじ丼とはちょっと違ったけど、かなり満ち足りた気分で店を出る。
だいぶ日が長くなった。まだ外は夕暮れは続いていた。



スナックなど店の看板も変なのが多かったが、幼稚園まで個性的なんだね。

寂れた昭和ノスタルジーの町を抜け、駅前まで戻ってきた。
と同時に日が沈んだ。電車の時間にはまだ間があるので、喫茶店の前にある無料喫煙所で煙草を吸うことにする。

煙草の煙が宙で一瞬躊躇したようにたゆたい、風に流されてゆく。少し感傷的になっているのかもしれない。何もかもが流転するのだと思った。
すると突然、喫茶店の外部スピーカーから馴染みのあるイントロが流れてきた。

ボズ・スキャッグスの名曲『ウィアー・オール・アローン(註1)』だ(下の赤い再生ボタンを押すと曲が流れます)。

 

 

曲を聞きながら、ぼんやりと夕暮れの街を眺める。



音楽と夕景が一つに溶け合う。
この曲は『シルク・ディグリーズ』と云うアルバムに収録されていた曲だ(YouTubeの画面がジャケットカバーです)。

不意に友達の姉ちゃんのことを思い出した。メチャメチャ綺麗な大学生の姉ちゃんで、ボズ・スキャッグスが好きだった。その姉ちゃんに『ボズを聴くなら、これが入門作よ。』と言われて、このアルバムを借りたんだっけ…。 中学生から見れば大人のお姉さんって感じで、会うたびに💕ドキドキした。

そう云えば、すぐあとに当時話題だった新作アルバム『ミドル・マン』も貸してくれたな。

 
(出典『Amazon』)

セクシーでお洒落なジャケットデザインが印象的で、よく憶えている。名曲揃いで、ボズのアルバムでは一番好きだ。
このジャケットデザインとお姉さんの存在がリンクして、何だか心の中がぞわぞわした。
そういえば、彼女が横を通ると、いつも物凄く良い匂いがしたんだよ。女の人の華やかな匂いを初めて意識したのは、或いはこの時が初めてだったかもしれない。

音楽と匂いは有無を言わさぬ力があって、人を瞬時に記憶の海へと連れ出す。時にそれは暴力的で痛みさえ伴うことがあるが、懐かしさに満たされるその感情は悪かない。

色んな人の顔が浮かぶ。おやっさんの顔も浮かんだ。
We’re All Alone。でも結局、人は皆、一人ぼっちなのだ。

駅のフォームに上がる。



かなり大規模そうな工事をやっているなと思ったら、北陸新幹線の駅を作っているようだ。いや高架橋か。どちらにせよ敦賀まで延伸されるって事なのね。そんな計画があっただなんて全然知らなかったよ。日々、世の中は変化しているのだ。

午後6時48分発の姫路行きの新快速に乗る。
改めて思うけど、敦賀から姫路まで一本でいくなんて凄いな。つい忘れがちだが、東海道線って他の線と比べて突出して便利だ。特に新快速は長い距離を走るだけでなく、急行並みに速い。オマケに本数も多い。コレは東京から神奈川方面までもそうだし、静岡方面から名古屋方面でも同じだ。如何に東海道が日本の大動脈なのかがひしひしと解るよ。きっと田舎もんは都会に出てきて、ビックリするんだろな。

大阪駅で下車。環状線に乗り換え、更に今宮駅で難波行きに乗り換える。

 

あと少しで長い1dayトリップもお終いだ。
春だとはいえ、ひんやりとした夜気が肌寒い。

 

午後9時45分。難波駅に到着した。
何だかんだと濃い一日だった

 

残りあと3回、さあ次は何処へ行こうか。

                         つづく
 

追伸
青春18切符の正規料金は5枚綴で12050円。これを5で割ると1回あたり2410円と云う計算になる。
一方、今回チケットショップで購入した青春18切符は4520円。しかも4回分のものを2回分の料金にしてもらった。2回分を探していたのだが4回分のものしかなかったから、仕方なく立ち去ろうとしたら、2回分の金額でいいと言われたのだ。売れなければ丸損になるゆえの苦渋の提案だったのだろう。新型コロナウイルスの影響で全然チケットが売れていなかったものと思われる。
これを4で割ると、1回あたり1130円となる。2で割ったとしても2260円。2回分でも正規運賃よりも安い。皮肉にも新型コロナウィルスのお陰で普通では考えられないような破格の金額となったってワケだ。

参考までに本日の正規運賃を並べておこう。

JR難波〜敦賀 片道 ¥2650
敦賀〜今庄 片道 ¥330

これをそれぞれ往復したので✕2とすると、以下の計算となる。
¥5300+¥660=合計¥5960。1回分のチケット料金は1130円だから、計算すると、5960円ー1130円=4830円。何と4830円も得したワケやね。どころかチケットの購入額は¥4520だから、この1回だけで料金的にはペイしたことになる。

今回は書くのに時間がかかって、前回と間があいた。思い入れのある回だけに、色々と考えて書きあぐねていたのである。だから、食いもんとか他の文章を書いたりしていたのだ。

次回から第二章に入ります。また要らんこと始めたよ(TдT)
この調子だと、シリーズの完結は遠い。そもそも投げ出さずに完結できるのかよ?とも思う。

 

(註1)ウィアー オール アローン We’re All Alone
ボズ・スキャッグスの1976年に発売されたスタジオアルバム『シルク・ディグリーズ』の収録曲で、後にシングルカットされた。 当初は「リド・シャッフル」のB面曲という扱いであったが、多くのアーティストによってカバーされ、後述するリタ・クーリッジのカバーのヒットによって再評価されることとなり、現在では代表曲のひとつに数えられている。
日本では、日産・サニーRZ-1の新発売当初のCMソングとしてリタ・クーリッジのカバー版が使用された。また、スキャッグスによる本家バージョンも日産・ローレルのCMで使われたから聞き覚えのある方も多いだろう。

また日本ではアンジェラ・アキがカバーし、日本語の歌詞が付けられているが「みんな一人ぼっち」を意味する内容となっている。 ボズ・スキャッグスの原曲には当初『二人だけ』という日本語の題名がつけられていた。その後、リタ・クーリッジがカバーした際の日本語題は「みんな一人ぼっち」となった。現在では原曲・カバーともに日本語題をつけず、原題そのままに「ウィアー・オール・アローン」と表記されている。
これらの解釈は現在でも割れており、たとえばNHK Eテレの「アンジェラ・アキのSONG BOOK」で取り上げられた際は、We’re All Alone は「二人きり」と「しょせん一人ぼっち」という意味の両方の解釈が可能とされている。

また本記事の英語版によれば、リタ・クーリッジのカバー版はオリジナルが “Close your eyes Amie and you can be with me” となっている行を “Close your eyes and dream and you can be with me” と歌っているため、「会う事を夢見る」に曲の意味を替えたのであれば「みんな一人ぼっち」と訳せるかもしれないという。 なお、2007年の『シルク・ディグリーズ』復刻盤に寄せたライナーノーツでスキャッグス本人は「この曲のタイトルを個人的な話と普遍的なテーマを両立させるものとしたが、両者の意味が同時に成立するような歌詞にするのに苦労した」と語っており、上記のような複数の解釈が可能なように最初から歌詞が設定されていたことが明らかとなった。しかしながら同時に歌詞づくりが非常に難航し、レコーディングが始まっても完成せず、書き足しながら録音したことを明かしたうえで、「この曲の意味は自分の中でも完全にはわかっていない」と語っている(以上、Wikipediaより抜粋再編集)。

尚、アルバム『シルク・ディグリーズ』はAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の歴史がここから始まったとも言われる金字塔的作品であり、ボズ・スキャッグスの名を一躍世界的なものにした7作目。全米アルバム・チャートで2位を記録。グラミー賞を受賞した「ロウダウン」(全米3位)も収録されている。
 
また、このアルバムに参加したスタジオミュージシャンのデヴィッドペイチ、デヴィッド・ハンゲイト、ジェフ・ポーカロ達が後にTOTOを結成することになる。