鬼と名がつく生物

 

前回のオニベニシタバの回で、オニと名がつく昆虫について触れたが、そこで書き切れなかったことを書こうかと思う。

 
【オニベニシタバ】
(2018年7月 奈良県大和郡山市)

 
前半は前回と重複するところもあるから、前回を読んだ人は暫し我慢して読まれたし。

オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼにオニダルマオコゼ、オニヒトデとかオニヤドガリetc…。
あっ、思い浮かんだのは海の生物ばかりだ。これって、ダイビングインストラクター時代の名残だよね。

改めて思うに、海の生物にはオニの名を冠する強烈なキャラが揃ってるなあ。真っ先にコレらが頭に浮かんだのも納得だよ。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられたそうな。

 
(出典『暮らしーの』)

 
ダイバーには、オニカマスよりもバラクーダの名で親しまれている。バラクーダって言った方がインパクトがあってカッコイイからかなあ❓音の響きが如何にもヤバそうな奴っぽいしさ。

よく群れで泳いでいるが、あれはそんなにデカくない。デカイにはデカイが、まだまだ小物だ。あんまし恐くない。(#`皿´)うりゃあ~と、時々トルネードに割って入って蹴散らしてやるくらいだもんね。
むしろヤバいのは単独でいる奴だ。バラクーダは老魚になると群れないのだ(註1)。それが超デカくて、超怖い。顔もさらに厳(いか)つくなって、目が合ったらオチンチンがメリ込むくらいに縮こまりまする。ヤのつく自由業の方々でも、モノホンの親分さんクラスの静かな威厳と侠気があるのだ。絶対逆らってはいけないオーラである。
それで思い出した。
昔、サイパンのオブジャンビーチで、とてつもなく馬鹿デカイのにお会いしたことがある。水深3~4mくらいの中層で辺りを睥睨するかのように浮かんでおり、優に2mくらいはあるように見えた。そして、その周りには光の束が後光のように無数に射しており、神々しくさえあった。だが、目だけはギラギラと動いていた。
あまりにも強烈なオーラに、その場で固まり、背中がスウーッと冷たくなったのを憶えている。
その日はアシスタントで入っていて、お客さんの後ろにいたから、頭の中で念仏を唱えたよ。もしも、お客さんに向かって泳ぎ出したら、身を呈してガードに行かなければならない。「生ける魚雷」と言われるくらいのハイスピードで泳ぐそうだし、あの鋭い歯だ。片腕一本くらいは持っていかれるのを覚悟したよ。
まあ、幸いその場にジッとしていてくれたから、何事も起こらなかったけどさ。そういえば、お客さん守るようにして後ろ向きに泳ぎながら遠ざかったんだよね。あの時は、もっと見ていたいような、早くこの場から立ち去りたいような複雑な気分だった。脳内に、その時の映像は今でも鮮明に残ってる。

 
オニイトマキエイ(マンタ)は、そのデカさからの命名だろう。

 
(出典『オーシャンズダイブツアー』)

 
マンタは石垣島とかで見たけど、やっぱデカイだす。
一度に何枚も現れると、中々凄い光景である。

 
(出典『オーシャナ』)

 
この画像なんかを見るとバットマンだな。
ちょー待てよ。まるで角のある鬼の影絵にも見えるじゃないか。デカイからだけではなく、名前の由来はこのツノ的なものと、そのシルエットにも関係があるのかもしれないね。

 
お次は、ブサいく鬼チームだ。
オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また背鰭に猛毒もあって危険なことからも名付けられたのではなかろうか。たぶんオニカサゴなんかも同じ意味あいからの命名だろう。

 
【オニオコゼ】
(出典『暮らしーの』)

 
異形(いぎょう)のものだ。
バケモノけだしである。

 
(正面)
(出典『庄内使えるサイト』)

 
顔なんて、ブサ怖い。

 
【オニダルマオコゼ】

 
何度か見たけど、コチラはもっと体が丸い。ゆえにダルマさんなのだ。
海底にジッとしてて、殆んど動かない。英名はストーンフイッシュと言うんだっけ?それくらい岩と同化しているのだ。だから、時々誰かが踏んづけてエライことになる。コヤツも背鰭に猛毒があるからね。アホほど足が腫れるらしい。

 
(正面)
(出典 2点共『暮らしーの』)

 
怨念が籠った顔だ。
創造主である神に対する激しい憎悪やもしれぬ。
(#`皿´)ワシをこんなにも醜い姿で世に産み落としやがって…って顔だ。

 
【オニカサゴ】
(出典『HONDA 釣り倶楽部』)

 
前二つほどではないが、コチラもブサいくだ。
背鰭に毒もある。赤いのも鬼っぽい。
猛毒ブサいく三姉妹ってところか…、最悪だよな。
でも彼女たちの名誉のために言っておくと、皮を剥いだ身は透き通るような白だ。でもって、味はメチャメチャ美味い。刺身に良し、鍋に入れて良し、揚げて良しの高級魚だ。
よくオコゼはブサいくな人へのフォローに使われ、「見た目は悪いけど、付き合ってみたら最高のパートナー」みたく言われる。まあ、理解はできるわな。人は見かけで判断しちゃダメだよね。
そういえばアッシの知り合いのお姉さんの友達に、エゲつない三姉妹がいることを思い出したよ。金魚ちゃん、ミッちゃん、イカスミちゃん(全て仮名)っていうんだけど、何れもデブでブサいくで性格が破綻している。因みに長女の金魚ちゃんは性格は悪くないけど極端に内向的で、何を尋ねても要領を得ない。三女のイカスミちゃんは天の邪鬼(あまのじゃく)且つワガママで性格がネジ曲がっている。二女のミッちゃんが一番ヤバくて柄の悪いトラックの運ちゃんみたいだ。とにかく口が悪くて、直ぐに暴力に訴えかけてくる。粗暴で凶暴なのだ。酒飲むと、ロンパリになって目が据わるしね。でもって何かと絡んでくる。ほんと、タチが悪いのだ。顔も表情も似てるから、ゴマモンガラを思い出したよ。

 
【ゴマモンガラ】
(出典『えいこのモルディブここだけの話&どうでもいい話』)

 
コヤツ、シャブ中患者とかキ○ガイみたく、目が完全にイっちゃってるんである。三白眼っていうのかなあ…、白目がちなんである。それがギョロギョロと落ち着きなく左右バラバラに動く。いわゆるロンパリ的な眼なんである。焦点がどこに合っているのか分からないから恐い。
それに泳ぎ方も変だ。真っ直ぐ泳げなくて、右に左にとヨレて急に横倒しになったりする。完全に狂った者の動きだ。しかも体は50㎝以上、大きなものは1m近くもあるというから恐い。形や色柄も変だし、おぞましいとしか言い様がない。もしも、コヤツの名前にオニがついていたとしても納得するよ。

 
(出典『wikimedia』)

 
この魚、一般の人にはあまり知られてないけれど、ダイバーの間では有名でサメやオニカマスよりも恐れられている。サメとかバラクーダは、のべつまくなしには襲ってこないが、ゴマモンガラはムチャクチャ気性が荒くて、無差別に噛みついてくる。アタマ、オカシイんである。ゴツい歯で指を食いちぎられたとか、ウェットスーツを食い破られて血だらけになったなんて話はよく聞いた。実際、自分の知り合いにもレギュレーターホースを食いちぎられたっていう人がいる。
デブでブサいくまではいいけれど、性格まで悪い女の人には、やっぱ近づかないでおこ~っと。

 
オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てているようだ。

 
【オニハタタテダイ】
(出典『沖縄の魚図鑑』)

 
とはいえ、角は小さい。オニというには、ちょいショボい。しかし、オニハタタテダイはチョウチョウウオやハタタテダイを含む近縁の仲間うちでは、かなりデカイ。最大種か、それに近かったような気がする。どちらかというと、そちらがオニと命名された理由なのかもしれない。いや、両方の合わせ技かな?

 
オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。

 
【オニヒトデ】
(出典『水槽レンタル神奈川マリブ』)

 
👿悪そう~。
僕、正義の味方ですぅ~と言われても、誰も信じないだろう。それくらい悪の匂いがビンビンである。
そういえぱ、沖縄発特撮ヒーローもん『琉神マブヤー』の敵役に「オニヒトデイビル」ってのがいたなあ…。結構ボケ倒しの憎めない奴だったけどさ。

 
(出典『おもしろ生物図鑑』)

 
色が赤いのも、如何にも鬼的だ。
但し、色には他にもヴァリエーションがあって、下の画像みたいなものや紫色のもいるようだ。

 
(出典『マリンピア日本海』)

 
性格も荒いそうだ。
ふと思ったのだが、トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。
まあ、どうみても邪悪以外の何者でもないことを体現してるよな。沖縄の珊瑚とかガリガリ食いまくってたしさ。

 
オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな❓

 
【オニヤドカリ】
(出典『日淡こぼれ話』)

 
コヤツも邪悪そのものだ。
色が赤いのも鬼と言われるに相応しい。
そう云えばコイツ、宮古島にダイビングに行った時にいたわ。綺麗な宝貝を水深5~6mで見つけたので拾ったら、デカいヤドカリが宿借りしていた。貝の中身はたぶんコヤツが食って、その貝殻を羽織ったのだろう。強盗殺人みたいなもんだ。やってる事が凶悪なギャングなんである。

 
(出典『極!泳がせ道』)

 
貝殻から出すと、下半身は驚くほど短小だ。ちょっと情けない。巨漢の男が実を云うと…的みたいで笑ったよ。
でもここが美味い。刺身で食うと、エビ・カニ系とホタテ貝を混ぜたような味なのだ。残った頭とかは味噌汁にブチ込むと良いダシが出る。

旨いで思い出したが、こんなのもいたね。

 
【オニエビ】
(出典『休暇村 竹野海岸』)

 
ゴジラエビとかモサエビなんて呼ばれ方もするが、オニエビも含めて全部その土地土地での地方名だ。
正式名称はイバラモエビという。イバラは植物の棘(茨・荊)から来ているし、ゴジラはあの怪獣ゴジラの背鰭からだ。モサは猛者から来ている。オニエビも、その背中のギザギザ由来だろう。
そういえば、兵庫県の香住ではサツキエビと呼ばれていた。これは五月(さつき)の頃によく水揚げがされるからだ。
この時は生きているのを食った。ても期待していた程には美味くなかった事を覚えている。
実をいうと、海老は新鮮だからといって旨いワケではない。車海老の踊り食いなんてのがよくあるが、あんなもんはプリプリの食感がいいだけで、味はたいしたことない。旨味と甘みが足りないのだ。生きてるボタンエビも食ったことがあるけど、同じようなものだった。魚やイカでもそうなんだけど、必ずしも生きているイコールが最上のものではないのだ。美味いと思っている人は、新鮮=美味と云う思い込み、つまり脳で食ってるからなんである。別にそれはそれで間違いではないけどさ。本人が旨いと思っていれば、それでいいってところは否定できないからね。
肝心なことを言い忘れた。死後硬直がとれたばかりの生はメチャメチャ美味い。甘いのだ。甘エビよりも甘い。焼いても天婦羅にしても美味くて、これまた甘みが強い。クッソー、食いてぇー(T△T)

  
 
植物ならば、オニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジ辺りが代表ってところかな。

 
【オニユリ】
(出典『Horti』)

 
オニユリの名の由来は、花が大きくて豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。

 
【オニツツジ】
(出典『身近な植物図鑑』)

 
オニツツジなんかも由来は同じようなもんだろう。
因みにオニツツジは俗称で、正式名はレンゲツツジという。この植物、実を云うと有毒である。根や葉茎だけでなく、花やその蜜にまでも毒があるとされている。調子に乗って、子供の頃みたいにツツジの蜜をチューチューしたら死にまっせ(笑)
この毒があるというのも、鬼と冠される理由なのかもしれない。

 
オニアザミやオニバスは、その棘(トゲ)と大きさに由来する。

 
【オニアザミ】
(出典『白馬五竜高山植物園』)

 
オニアザミという言葉は、葉の鋸歯の鋭い大型のアザミの仲間の総称としても使用される。最近はアメリカオニアザミという、もっとトゲトゲの奴があちこちに蔓延(はびこ)り始めているようだ。

 
【アメリカオニアザミ】
(出典『ありのままの風景を』)

 
外来種で、鹿も牛も食べないそうだから激増しているらしい。

 
【オニバス】

(出典 2点共『福原のページ』)

 
葉だけでなく、花や実までトゲトゲなのだ。

 
【オニグルミ】

(2点とも 出典『森と水の郷あきた』)

 
おそらく実ではなく、内部の種(核)が語源だろう。
核面のデコボコが著しく、そのゴツゴツした外観と固さが鬼のようだからだと命名されたと推察する。 

 
 
オニとつく昆虫について書くつもりが、海の生物と植物につい力が入ってしまった。哺乳類と鳥類は駈け足でいこう。

とは言うものの、哺乳類でオニと名のつくものは意外と少ない。ソッコーで片付きそうだ。

 
【アフリカオニネズミ】
(出典『wikipedia』)

 
デカイねぇ~。もう、こんなのウサギじゃん。
コヤツは地雷の除去に貢献しているので、知っている方もおられよう。
タンザニアの団体APOPOはアフリカオニネズミの優れた嗅覚に着目し、その一種であるサバンナアフリカオニネズミを訓練して地雷の探知・除去に役立てる事業を展開している。体重が軽いために地雷に乗っても爆発する可能性が低く、金属探知機よりも高効率で地雷の探索が出来るらしい。凄いぜ、ネズっち。機械よりもネズミの方が優れているなんて、何だか痛快だ。
でも動物虐待だとか言って、正義感を振りかざすバカなのがいそうだなあ…。だったらオマエら、肉も魚も野菜も一生食べんじゃねぇーぞ(#`皿´)

主だったところでは、あと哺乳類はオニテンジクネズミ(カピバラ)くらいだ。これは説明不要だろう。日本にも帰化してるし、動物園でも人気者だもんね。

ところで、何で哺乳類にはオニと名のつく動物が少ないのだろうか❓ 解るような気もするが、いざ答えるとなると明確には答えにくい。まあ、敢えてつける必要もないのだろうとだけ言っておこう。

 
お次は鳥類。

 
【オニオオハシ】
(出典『ナチュマライフ』)

 
オオハシ類の最大種。南米に生息し、その色鮮やかな美しい体色から「アマゾンの宝石」とも呼ばれている。巨大で特徴的な嘴(くちばし)は、体長に占める割合が全鳥類中で最大なんだそうな。

見た目は可愛くて、鬼のようには見えない。おそらくそのグループの最大種ゆえのネーミングだろう。

鳥は他にもオニとつくものが結構多い。
オニゴジュウカラ、オニアオバズク、オニカッコウ、オニヤイロチョウ、オニミズナギドリ、オニクロバンケンモドキ等があるが、如何せんどれもマイナーだ。鳥好き以外で名前を知っている人は少ないだろう。しかも、どれも大型種ではあるが、全然鬼っぽく見えない。厳つくないのだ。強いて鬼っぽいと言えば、オニカッコウぐらいかな。

 
【オニカッコウ】
(出典『wikipedia』)

 
青黒くて目が赤い。ゴツくはないが、精悍な感じだ。
目が紅蓮の炎の如く真っ赤な青鬼に見えなくもない。
だとしたら、由来としてはカッコイイ。
でもおそらくは、名前をつけた人はそんな事までは考えてなくて、単にカッコウ・ホトトギスの仲間の中では大型種だからと云う理由でつけたのだろう。
因みに画像はオスで、メスは茶色い。

 
そろそろ昆虫に行きたいところだが、先ずは他の節足動物から入ろう。

 
【オニサソリ】
(出典『SciELO』)

 
別にオニとつけなくとも、サソリは見てくれがもう全ての種類が十分な鬼的だ。攻撃性が強くて毒もあるから、鬼的要素がほぼ揃っている。
ムカデなんかもそうだろう。因みにオニムカデという和名を持つ種はいないようだ。でも、どっかで聞いたことがあるなあ…と思ったら、ゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)にオニムカデというキャラがいたわ。

 
【オニグモ】
(出典『弘子の写真館』)

 
邪悪だなあ。
オニグモ属最大種にして、属名の基準種でもある。
クモも、そもそも見た目が鬼的だ。なのに、オニグモはそれを強化具現させたかのような存在だわさ。
オニグモ属には数種いて、何れ劣らぬ鬼っぷりである。

 
【キバナオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

(出典『北海道の生物図鑑』)

 
黄色が入ると、鬼感が増幅されるねー。
野原で遭遇したら、ギョッとするだろう。
鬼とは、そもそもがこの世の者ならざる異形(いぎょう)な存在の総称なのかもしれない。だから、オニとつけるのならば、驚愕される存在であるべきじゃないかと思う。

 
【ヤマシロオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
万歳している👽宇宙人みたいだ。
或いは腹の下の方は、笑っている猫みたいにも見える。

 
【ヤマオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
黒いと邪悪度が増すなあ…。
でもカッコイイっちゃ、カッコイイ。何だかハカイダー(註2)を思い出したよ。

 
【イシサワオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
赤っぽいのも邪悪な感じがする。黄色もそうだけど、赤も警戒色なのである。あたしゃ、危険ですよという印だ。

 
【アカオニグモ】
(出典『まーしーのフォトアルバム』)

 
もっと赤いのもいた。
赤鬼様は毒々しい。しかし、邪悪度も上がるけれど、同時に美しさ度も上がる。見方を変えれば、デザインはポップでさえある。

赤鬼がいるのなら、青鬼もいるんじゃないかと思った。
で、一応調べてみたら、いた。

 
【アオオニグモ】
(出典『博物雑記』)

 
予想に反して青鬼は可愛いかった。
プリプリの白いお尻が、髭のおじさんのコケシ頭みたいだ。邪悪というよりもユーモラスだね。

オニグモって面白いなあ。
ついつい、めっちゃネットサーフィンしてしまったよ。
けど、いつまでこんな事やってんだ?いい加減にクロージングしないとマズイなあ…。

 
長々と書いてきたが、ようするにオニと名がついている生物には、基本的に以下のような特徴があるようだ。

①大きい
②刺(トゲ)、もしくは角がある
③見た目が厳(いか)つい
④凶暴・獰猛である
⑤毒々しい。或いは毒がある
⑥色合いが鬼に似ている
⑦勇壮

思うに、この何れかの特徴を有しているものが、オニと名付けられた模様だ。
言い加えると、①の大きいと⑦の勇壮は重複するところもあるが、大きいからといって勇壮とは限らないので、あえて分けた。

 
扨て、いよいよ昆虫である。
でも書き疲れて、正直どうでもよくなってきた。
と云うワケで、虫のオニ関係は次回後編に回します。

 
                     つづく

 
と、一旦クロージングしたんだけど、後編を書くのならば、導入部でまた前回の流れを汲む説明をしないといけない。それが正直、面倒くさい。しゃあないから、踏ん張って続けて書くことにした。たぶん、前半よか長くなるので、ここまで読んで疲れちゃった人はここで一旦読みのをやめて、二回に分けて読みましょうね(笑)。マジで。

始めるにあたって、今一度鬼の定義を確認しておこう。
ウィキペディアには、こう書いてあった。

『日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「大きな」といった意味の冠詞として使われる場合もある。(中略)。現在、一般的に描かれる鬼は、頭に二本、もしくは一本の角が生え、頭髪は細かく縮れ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。色は赤・青・黒などさまざまで、「赤鬼(あかおに)」「青鬼(あおおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。』

OK。自分が指摘したものとだいたい合っている。これを今一度脳ミソにブッ込んで、続きを読まれたし。

さあ、既にどうでもよくはなってきてはいるけれど、本当に言いたいことに向かって書き進めよう。
 
前回、オニシタバの回で書いた要旨はこうだ。
「昆虫でオニといえば、オニヤンマ、オニクワガタ辺りが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止(とど)めておく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。」
この言葉に対しての異論もあるようなので、理由を書きます。

繰り返すが、昆虫でオニといえばポピュラーなのは、オニヤンマとオニクワガタだろう。

 
【オニヤンマ】
(出典『自然観察日記』)

 
(出典『あにまるじゃんくしょん』)

 
日本最大の勇壮なトンボだから、一般の人でも知っている人は多いだろう。

 
(出典『廿日市市の自然観察』)

 
エメラルドグリーンの眼がとても美しいけど、よく見ると顔は厳(いか)めしい。

 
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
歯もゴツい。
コイツで、あの凶暴なスズメバチなんかもガリガリ食う。オニヤンマは日本有数の肉食昆虫でもあるのだ。
そういえば思い出したよ。随分前に当時の彼女と赤穂方面に旅行に行った時の事だ。龍野市でオニヤンマの巨大なメスが空中でシオヤアブ(註3)をガシッと捕まえて飛んで行った事がある。あれはインパクトあったなあ…。シオヤアブもスズメバチを襲うくらいの凶暴な奴である。その両者が互いに正面から飛んできて、ガチンコで相まみれたのだ。僅かな攻防があった次の瞬間には、アブがバキーッいかれとった。で、そのまま飛んで近くの電線に止まり、ガシガシと囓じり始めた。あまりの迫力に、彼女と二人して震撼。口あんぐりで見てたよ。

和名は、この巨大さと厳つい顔つき、凶暴性から名付けられたのだろう。また、黒と黄色の縞模様から虎皮のパンツを履いた鬼を連想して名づけられたという説もあるようだ。しかし、これはたぶん後付けでしょう。
あっ、二枚目の正面写真も鬼っぽくねえか❓
背中の柄がツリ目で出っ歯の鬼の顔に見えなくもない。これも名前の由来になってないのかなあ❓
とにかく、これだけ鬼の要素が揃っているのである。ネーミングに異論は無かろう。

それに対して、オニクワガタにはガッカリだ。

 
【オニクワガタ】
(出典『THE KAYAKUYA』)

 
たぶん顎の感じが鬼の角みたいだからと名付けられたのだろうが、小さくてマジしょぼい。2、3センチしかないのだ。クワガタといえば、昆虫界のスター軍団だ。デカくてゴツゴツした奴が綺羅星の如くいる。その中にあって、オニクワガタは鬼の名前を冠するのにも拘わらず、どうにも地味なのだ。こんな奴にオニとつけるんなら、タテヅノマルバネクワガタ(註4)とかの方がよっぽど相応しい。断然デカイし、珍しい。今や天然記念物だもんね。
それにオニクワガタはブナ林の中の道をひょこひょこ歩いてるのを時々見かける。結構、普通種なのだ。見ても全然感動がない。

とはいえ、横から見ると確かに鬼的ではある。

 
(出典『フォト蔵』)

 
角の形が鬼を彷彿とさせる。
これならば、オニという名前でもギリギリ許せる範囲内だ。
とはいえ、小さい奴にはあんまりオニとはつけて欲しくないなあ。
オニクワガタというのなら、⬇コレくらいの迫力はあって欲しいものだ。

 
【ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ】
(出典『W.B.B-01◆KING◆ブログ』)

 
オウゴンオニクワガタは幾つかの種に分けられているが、この種はインドネシア・ジャワ島に棲むもので、体長は大きなものは80㎜くらいもある。まさに黄金の鬼である。ゴージャス鬼だ。

オニとつくクワガタといえば、コヤツの存在も忘れてはならないだろう。
 
 
【オニツヤクワガタ】
(出典『ゲストハウス プリ/Guest House Puli』)

 
画像は台湾産のオニツヤだ。大きなものだと体長90㎜を軽く越えるものもいるという。

メスでもデカイ。

 

 
メスだってオニクワガタよか遥かにデカイのじゃ。
充分、鬼である。

幼虫がエグい。

 

 
これまた鬼なのである。下手したら成虫よりも凶悪な感じがする。

これら3点の画像は台湾中部、埔里で世話になったナベさんにお借りした画像だ。
ナベさんは埔里でゲストハウスを経営する大のクワガタ好きなのだ。2016年、初めて台湾に蝶採りに訪れた折り、ナベさんのゲストハウスに泊まっていたのだが、その時にこれらの画像を興奮気味に見せてくれたのだった。ナベさん曰く、気性が荒く凶暴なんだそうな。
コヤツは実物を是非この目で見てみたい。次に台湾に行くときは本気で探そうと思う。

因みに、ナベさんは渡辺さんではなくて渡部さんで、渡部と書いてワタベと読む。ワタナベさんではないのだ。でも呼びやすいから勝手にナベさんと呼んでたら「間違ってるけど、もうそれでいいですよー(# ̄З ̄)」と言われた。だから、ナベさんでいいのである。

 
どんどん行こう。

 
【オニオサムシ Carabus barysomus 】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
体長29~50㎜。
分布はインド北西部カシミール地方、パキスタン北東部。
光沢の強い漆黒の地に、顕著な上翅彫刻と亜属中最大の体長を有する。本亜属の基準種でもある。

ピンチアウトして画像の拡大は出来るけど、分かりやすいようにトリミングしよう。

 
【ssp.hazarensis&ssp.huegeli】

 
黒い鬼だ。この点刻が厳つさを増幅させ、鬼感を醸し出している。デカイと云うのも鬼でしょう。オニの名に異論なしだ。
図示したものは原記載亜種(ssp.barysomus)ではなく、左がカガン渓谷亜種(ssp.hazarensis)で、右がスリナガル東方亜種(ssp.huegeli)である。

 
【ssp.heroicus】

 
コチラも同じくオニオサムシだが、最大かつ最も特殊化したものとされる。ピル・バンジャン山脈西部のブーンチ北方の産する亜種で、こっちも負けず劣らずカッコいい。

 
【カシミールオニオサムシ Carabus caschmirensis】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村・水沢)

 
体長27~38㎜。
これは wittmerorum というパキスタン北部・スワート地方の亜種で、緑青色を帯びており、とても美しい。
カシミールの青鬼だな。因みに、原記載亜種は黒い。

オニオサムシ亜属(Imaibius)は、大半がインド北西部のカシミール地方からパキスタン北部の標高2000~3000mの高所に棲む。背後は7千、8千メーター峰が連なるカラコルム山脈とヒマラヤ山脈だ。そういうところも、鬼が棲むに相応しい異世界って感じでいい。
スリナガルは当時も旅行者には閉ざされていて、結局行けなかった。でもパキスタン北部にはバイクでユーラシア大陸を横断した折りに立ち寄った。標高四千くらいまでは行ったと思う。もし、その頃に虫採りをやってたとしたら、コヤツらも採れたかもしんない。ヨーロッパに始まり、アフリカを経由してアジアまで旅したから、会おうと思えば相当ええ虫に会えてたんだろうなあ…。モロッコの砂漠なんかにも行ったから、ニセマイマイカブリとか、カッコいいゴミムシダマシにも会えたかもしんない。勿体ねー。

 
【オニミスジ Athyma eulimene 】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
見よ、怒れる鬼の形相を想起させるこの出で立ちを❗
オオアカミスジなんていう普通過ぎるダサい和名もあるけど、塚田悦造氏が大図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で採用しているオニミスジを断固として推す。
なぜなら前翅長が42㎜くらいはあり、ミスジチョウやシロミスジの仲間の中では最大、もしくは最大級の種だからだ。翅も他のミスジチョウと比べて遥かに分厚いし、体も太くて頑健だ。デカくてゴツいのだ。そして飛ぶのもクソ速い。だから、採った時は到底ミスジチョウの仲間には思えなかった。

 

 
背中に光る金緑色が美しい。
何だか、まるで鬼火のようじゃないか。

 
【ミドリオニカミキリ】
(出典『cerambycodea.com』)

 
南米のカミキリムシだが、鬼そのものとも言える見てくれだ。残虐非道の青鬼様なのだ。
大きさは75㎜もあるそうだ。この厳つい顔、そして前胸のトゲトゲ、青緑色にギラギラ輝く感じ。そこに大きさも加わるのだから、鬼と呼ぶに申し分ない。性格も絶対に悪辣凶暴、極悪に違いなかろう。
オニの名がある虫の中では、コイツが一番鬼を具現化させたような存在じゃないかな。カミキリムシだから、肉食じゃないけどさ。

 
外国の昆虫はコレくらいにして、日本のオニと名のつく虫に戻ろう。

 
【オニホソコバネカミキリ】
(出典『リセント[RECENT]』)

 
(出典『ムシトリアミとボク』)

 
見た目が黄色と黒だし、毛むくじゃらなところは鬼と言って差し支えないだろう。カミキリなのにハチに擬態していると云うのも、何となく邪悪っぽい。
学名は Necydalis gigantea。その学名からカミキリ愛好家たちの間では、ギガンティア、ギカンと呼ばれている。ギガンティアとは、ラテン語で「巨大な」を意味する言葉である。その名のとおり、ネキ(=ネキダリス=ホソコバネカミキリ属)の最大種でもある。まさに鬼の名に相応しい。これも異論なし❗

 
オニクワガタはまあ置いておくとしても、ここまではオニと名付けられていることに何ら違和感のない昆虫たちだ。問題はここからである。
とはいえ、問題視しているのはワテだけかもしれん。ゆえに、ここから先の文句たらたらの文章は、あくまでも個人的見解であることをおことわりしておく。

 
【オニユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長22.0~31.2㎜。ユミアシゴミムシダマシの中の最大種である。
ユミアシというネーミングはセンスいいなと思う。
奈良の春日山と九州の大隅半島、福江島(五島列島)くらいでしか採れないようだから珍稀度も申し分ない。脚が太く、見た目もガッツリした感じで黒光りしているから、邪悪な黒鬼に見えなくもない。魅力的なのは認めよう。
だが、この見た目が問題だ。他のユミアシゴミムシダマシの仲間と見てくれはあんまし変わんないのである(註5)。つまりオニユミアシだけが特に鬼っぽいワケではないのだ。
あとはオオユミアシゴミムシダマシやアマミユミアシゴミムシダマシと大きさ的には、さほど差はないというのも気にかかる。オニというからには、圧倒的に巨大であって欲しいという願望があるのだ。
とはいえ、オニユミアシは自分の中では一応セーフかな。オニと名乗ってくれても強く反対はしないし、いたらゼッテー採るもん。

 
【オニヒゲナガコバネカミキリ】
(出典『長野県産カミキリ図鑑』)

 
ちっちゃ❗
調べたら、6~14㎜しかない。
ヒゲナガコバネカミキリの仲間では大きいから名付けられたようだけど、オニってのはどうよ❓小さ過ぎやしないか❓
見てくれは鬼っぽいといえば、鬼っぽくはあるけどさ。

 
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
でも、カッコいいなあ(о´∀`о)

 
【オニヒラタシデムシ】
(出典『東京昆虫館』)

 
オニとつくのに、体長はたった1㎝くらいしかない。
普通のヒラタシデムシ類でも1.5~2㎝くらいはあるのに解せない。
という事は背中の彫刻柄が鬼みたいってことなのかな❓にしても、オニというほどの複雑怪奇な彫刻柄ではない。鬼というほどのインパクトはあらへん。ネーミングに異議ありだ。
まあ、コイツらシデムシ(死出虫)は字の如く動物の死体に集まるから、その意味では鬼的ではある。鬼みたく死肉を屠(ほふ)るのである。気味悪いが、腐敗菌の蔓延を防ぐ掃除屋でもあるから、必要な存在ではあるんだけどもね。

 
【イシガキオニハネカクシ】

どうやらキシモトツノツツハネカクシの石垣島亜種の別称のようだ。でもイシガキオニハネカクシの画像がダウンロードできない。キシモトツノツツハネカクシの画像も見つからない。と云うワケで、ある程度近いであろうフトツノツツハネカクシの画像を添付してお茶を濁しときます。

 
【フトツノツツハネカクシ】
(出典『フォト蔵』)

 
イシガキオニの頭はこんなにデカくはないけど、だいたいこんな感じだ。角もあるし、見てくれは邪悪な感じがしてオニと言ってもいいだろう。
けどさあ、ハネカクシって、そもそも皆さん鬼的な見てくれだよねぇ。

 
(出典『コトバンク』)

 
しかし、如何せんやっぱり小さい。だいたいハネカクシ全体がチビッコだらけなのだ。

 
【ツツオニケシキスイ】
(出典『最上の自然』)

 
オニケシキスイ亜科 ヨツボシケシキスイ亜属に含まれる。
元々ケシキスイは矮小だけれど、4~6㎜くらいしかない。調べた限りでは他にこの亜属にはオニとつくものが2種、オニケシキスイ亜属にコオニと名のつくものが5種類あった。何でオニケシキスイ亜属がコオニで、ヨツボシケシキスイ亜属の奴らがオニケシキスイなのだ❓謎だよ。さっぱりワカランわ。
一瞬、この黒と赤が鬼を連想するゆえのネーミングかなと思ったが、考えてみればヨツボシケシキスイだって赤と黒なのだ。益々ワカランわ。

 
【オニメクラチビゴミムシ】

画像が見つからなかったので、別種のズンドウメクラチビゴミムシの画像を貼っておく。

 
(出典『俺流エンタメ道場』)

 
見た目はどれもこんな感じの形で赤茶色なので、雰囲気は何となく解ってもらえるかと思う。
メクラチビゴミムシはチビゴミムシ亜科のゴミムシのうちで、地下生活に強く適応した結果、複眼を失った一群の総称である。ようするに盲目なのである、
約300種以上が知られ、多くが体長5㎜前後の小さな昆虫だ。
画像は見つけられなかったが、学名は判明した。
Trechiama oni というらしい。小種名が、まんまの「oni=鬼」じゃねえか。よほど鬼っぽい姿なのかとワクワクしたが、そんなに特異なものならば、もっと言及もされている筈だ。しかし、目ぼしい情報がてんで見つからない。画像も見つけられなかった。
ってゆうことは、それほど特筆すべき奇怪な姿ではないのだろう。となると、鬼的要素として考えられるのは、属内最大種である公算が高い。でも、んな矮小なものにまでオニとつける必要性が果たしてあるのだろうか?

話は変わる。この一連の和名に対して、巷では差別だという批判の声が少なからずあるようだ。過去には改名騒動さえ起こったらしい。
確かに知らない人から見れば、メクラでチビでゴミみたい存在だと言っているように聞こえる。そんなの虫だからって名付けていいのかよ?それって差別だろって事なのだろう。ても、その考え方がメンドくせー野郎だなと思う。
掲げた画像のズンドウメクラチビゴミムシだって、ズンドウ(寸胴)は決して誉め言葉ではない。むしろ、その逆だろう。だからって、何だというのだ。メンドクセー。たかが虫だろ❓虫は悲しんだり傷ついたりはしない。

ウィキペディアには、続けてこうあった。
「和名に差別的に聞こえる要素があるため、日本の昆虫学の研究者の間でも改名すべきか否かで議論が絶えない。」
驚いた事に一般ピーポーではなく、玄人筋からのクレームだったのね。何だそりゃ?である。
クレームをつけている研究者はハッキリ言ってバカだ。言葉に対する感覚がズレている。こういう正義感ぶってる奴に限って、差別を助長していたりするから始末に悪い。所詮は虫なんだから、ありのままでいいのにね。
この手のセンスのない輩どもが、真面目で長ったらしくてクソ面白くもないつまらん和名を乱発しているのだろう。

ウィキペディアでは、それに対して更にこう続けている。
「現在のところ、このグループの研究を日本で牽引してきた上野俊一が、実際の差別と言葉は無関係であり、標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招くとする改名反対の主張を強く行っているため、当面改名されない模様である。」
上野さん、天晴れである。おっしゃる通りだ。
だいたいメクラも盲目も、所詮は同じ意味じゃないか。言い方を変えただけにすぎない。こんなの言葉狩りだろ。メクラという言葉にはそれ相応の歴史があり、その成立過程には様々な物語もあった筈だ。言葉を葬り去るということは過去の歴史をも闇に葬り去るということだ。負の遺産も人類の遺産なのだ。消してしまえば、根本の本当のことはわからなくなる。
そういえば、イザリウオなんかも差別用語だといって、知らぬ間に「カエルアンコウ」にされちゃったんだよねぇ。ようするに、イザリという言葉も葬り去られたワケだが、アレを言葉で説明するの大変だし、面倒くさいぞ。しかも、説明するとなると喋る方も聞く方も妙にリアルな嫌悪感情になるのは避けられんでしょう。
ホント、自主規制とかって馬鹿馬鹿しい。言葉が誕生したのには、それなりの理由があるのだ。

 
【アカオニミツギリゾウムシ】
(出典『昆虫データバンク』)

 
ミツギリゾウムシかぁ…。この仲間は海外で何度か見たけど、変な形だなあと思った記憶がある。コイツはそれよかもっと変な奴だな。触角とか、かなり変わってる。
調べた限りでは分布は狭く、福岡、愛知、奈良、京都の各府県でしか見つかっていないようだ。かなりの稀種なんだね。
灯火に飛来すること以外、生態は未解明だが、アリの巣と関係があるらしい。好蟻性昆虫なのか…、謎だらけだな。何か面白そうだ。

日本では、他にツヤケシオニミツギリゾウムシ、キバナガオニミツギリゾウムシの2種がいるが、これらも稀種のようだ。何れもネットでは五万円の値がついていた。とはいえ情報が少ないから、本当にそれだけの価値があるのかどうかはわからない。生態が分かってないし、探してる人も少ないから、単に需要と供給の問題だけなのかもしれない。

情報が少ないから、語源を探るのも大変だ。それだけマイナーな存在なんだろね。
ツヤケシオニミツギリってのは黒い。キバナガは赤い。勝手に想像すると、日本ではツヤケシが最初に見つかって、次に赤いのが見つかったからアカと名づけたのかな? で、キバナガはその次に見つかり、顎が長いのでキバナガとつけられたと推察する。
しかし記載年を確認したら、アカオニが1963年、ツヤケシが1976年、キバナガが2009年となっていた。見事に読みがハズレましたな。
それにしても何でオニなんだろ?ミツギリゾウムシの中では最大なのかなとも思ったが、たった10㎜くらいしかない。日本にいるミツギリゾウムシには、もっと大きいのが沢山いるから、それも当てはまらない。
オニアカは前胸中央に溝があるのが顕著な事から、セスジミツギリゾウムシという別名がある。もうそっちでいいと思うんだよね。正直、チビッコだし、鬼には見えないもん。

 
【オニコメツキダマシ】
(出典『虫つれづれ@対馬V2』)

 
前胸背の凹凸の彫刻柄が鬼の顔に見えることからついた種名のようである。
でもコレが鬼に見えるって、どんだけ想像力が逞しいねん。大きく張り出した前胸の顔はお地蔵さんにしか見えん。体全体もお地蔵さんやんけー(# ̄З ̄)
しかも、体長は5~11.5㎜と笑けるほど小さい。でもって、ド普通種らしい。
学名 Hylochares harmandi に秘密が隠されているのかと思いきや、そうでもなさそうだ。これはおそらく著名な博物学者のアルマン・ダヴィドに献名されたものだろう。余談だが、アルマンといえば、アルマンオサムシ(ホソヒメクロオサムシ)など多くの昆虫にその名が学名としてつけられている。余談ついでに言っとくと、学名には名前はないけれど、有名なのは中国で博物学調査を行い、ジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報じた人物でもありんす。

 
【オニツノキイロチビゴミムシダマシ】
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
ちっちゃ❗
チビとついてあるだけのことはある。

奄美大島にしかいない稀種なんだそうな。奄美って、固有種とか日本ではこの島にしかいないと云う虫が多いよね。フェリエベニボシカミキリとかアカボシゴマダラとかさ。あっ、アカボシゴマダラは今は本土にもクソ品のないクズ外来種がいるな。(# ̄З ̄)死ねばいいのに…。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
まさか触角が鬼に見えるとかじゃないだろうなあ。
だとしたら、無理無理じゃん。
あっ、でもよく見たら角があるわ。

しっかし、クソ長い名前だニャア。どれか1つくらい端折(はしょ)ることが出来なかったのかなあ❓
虫の名前には、とてつもなく長いものが結構ある。アレって、何とかならんのかね❓細かく特徴を現したいのだろうが、かえってワケわかんなくなってないか❓ハッキリ言う。長い和名はダサい。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
( ̄~ ̄;)う~む…。こりゃ、確かに鬼だわさ。
オニの名を認めてもいいような気がしてきた。
でも、それならオニかツノかのどっちか1つにしてもらいたいよね。
けど、オニとするには、やっぱ如何せんちっちゃ過ぎるわ。

 
【オニエグリゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこがオニなのか、さっぱりわからない。
単に属最大種なのかな❓
でも体長が10.7~12.3㎜しかないし、果たしてオニとつける意味ってあるのかな❓まだまだ昆虫素人にはワカンないや。自分の預かり知らぬ裏事情とかあるのかしら❓

 
【オニツノゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこに角あるねん(#`皿´)❗と思ったら、ちゃんとある奴も発見。

 
(出典『昆虫採集記』)

 
どうやら角はオスにしか無いようだ。もしくはオスの方が発達してる?

体長は10.8~18.5㎜。コレまた小さい。
属最大種かと思いきや、近縁のミツノゴミムシダマシ(コヅノゴミムシダマシ)の方が13.5~18.5㎜と大きいぞ。昆虫界のオニの基準って何なのさ❓

 
【オニクビカクシゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
頭に鬼的突起があるが、申し訳程度だ。鬼というよりも猫耳だ。ネコミミクビカクシゴミムシダマシの方が可愛くて良いのになあ…。
待てよ。そもそもコレって角なのか?小腮か何かじゃないのか❓
まあいい。おそらく猫耳は関係なく、属の最大種なのだろう。けれど、やはり小さい。体長は8.3~10.5㎜しかない。
とはいえ、クビカクシってのは中々秀逸なネーミングかもしんない。特徴をよく捉えていると思う。
 
 
【オニササキリモドキ】
(出典『日本のバッタ・コオロギ・キリギリス』)

 
属の最大種かと思いきや、そうでもないようだ。たった8~10.4㎜しかない。どこがオニやねんである。
調べてゆくと、愛媛県の鬼ヶ城山という地名がボツポツ出てくる。そこで最初に見つかったからなのか❓だとしたら、紛らわしい事この上ない。だったら、オニガシロササキリモドキにしろよなー(# ̄З ̄)
けど、調べるとどうやら基産地は鬼ヶ城山ではなく、篠山という所みたいだ。益々、ワケわかんねえや。
因みに、分布は愛媛県と高知県だけみたい。そこそこ珍しい種なんだろう。しかし、それとオニのネーミングは関係ないんだろなあ…。

 
【オニヒメタニガワカゲロウ】
(出典『ZATTAなホームページ』)

 
鬼なのに姫って、何じゃそりゃ❓である。
オニは主に最大種、ヒメは小型種につけられるのが生物界の常識だが、一般ピーポーにとっては何じゃそりゃ❓である。ミックスされたら、ワケわかんねえだろう。
これはおそらくヒメタニガワカゲロウの最大種であるから、頭にオニとつけられたのだと推測される。
でもヒメタニガワカゲロウというのが、探しても見つからない。フザけんなよである。ヒメは小さいという意味でつけられただけで、属レベルではタニガワカゲロウというワケなんだろね。もう面倒だから確認しないけど。

画像を見てもわかるとおり、葉っぱの大きさと比して大変小さい。ヒメと呼ぶに相応しいと言える。
だとしたら、オニの部分は大きさではなく、その形態によるネーミングではなかろうか?
そういう目で見れば、確かに頭部に突起らしきものがある。それを鬼に模して名付けられた可能性はある。とはいえ、申し訳程度だ。こんなもんがオニと言えるかね。せいぜいツノでよかったんじゃないの~❓

 
【オニヒメテントウ】
(出典『東京23区内の昆虫2』)

 
だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなっつーの(# ̄З ̄)
ヒメテントウの最大種らしいが3㎜しかないし、どこがオニやねん。もー、どいつもコイツもチビッコの鬼ばっかじゃねえか。

  
他にもオニヒメハネカクシ(だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなよ)、オキナワニセオニハネカクシ、アシナガオニゾウムシ、オニツヤハダチャイロコメツキとか、オニとつく昆虫はまだまだいるけれど、これくらいにしておこう。どうせ皆んなチビだろうしさ。

ようは、簡単に何でもかんでもオニって名前をつけるのはどうかと思うよと言いたいワケ。特にチビッコの虫にオニってつけるのは、もうやめません❓って事なのである。オニとつけるなら、それに相応しい存在であるべきだと思う。オニは鬼らしくである。
それを言うのに、ここまで長い文章を書くのは自分でも御苦労なこったである。( ̄∇ ̄ )ゞまっ、いっか…。

あっ、忘れてたよ。そういえば日本のオサムシにもオニの名を冠したのがいたなあ。

 
【オニクロナガオサムシ】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
正式には種ではなく、キュウシュウクロナガオサムシの東広島亜種で、その通称がオニクロナガオサムシである。
どうせキュウシュウクロナガオサムシの中で一番デカイから名付けられたんだろうと思っていた。実際、種の中では一番大きいのだが、甲虫屋のAさんから名前の由来を聞いて驚いた。何とオニは人のニックネームから来てるみたいなんである。
これは蛾の著名な研究者、特にシャチホコガの研究で高名な中臣謙太郎氏のアダ名なんだそうである。
長いが、学名を記そう。
Carabus(Leptocarabus)kyushuensis cerberus。
括弧内は、たぶん新たな分類を用いた場合の学名かな?
小種名の cerberus は冥界もしくは地獄の番犬ケルベロス(註6)のことだ。
Aさん曰く、中臣さんの顔が鬼みたいだったからオニの和名がついたそうだ。そんなん有りかいな(笑)。
その鬼に連動して小種名もついたようだ。その辺の事は詳しくは訊いてないけど、或いはケルベロス的な激しい性格の持ち主でいらっしゃるのかもしれない。でも、たとえそうだったとしても、鬼とかケルベロスとかとつけられるのを許した中臣さんは心が広い。

こう云うオニの命名の仕方は想定外だった。目から鱗である。由来が分かりにくい紛らわしいネーミングをすんなよとは思いつつも、でもちょっと愉しい。この由来ならば、納得です。エスプリが効いている。是非残して欲しい和名だよ(註7)。
もしかしたら、他にもコレ的イレギュラーな由来のオニ昆虫もいるかもしれないなあ…。
たぶんいないとは思うけど(笑)。

 
                    おしまい

 
追伸
他人の画像を借りまくりの回になった。自分の画像ってオニベニシタバとオニミスジしかないもんなあ…。ちょっと気が引ける。とにかく、画像を御使用させて戴きました方々、有り難う御座います。礼 m(__)m

今回は頭からケツに順には書かなかった。バラバラに書いて、あとから繋ぎ合わせた。最初に前回の元になる文章を入れて、植物から書き始め、次に海の生物の部分を膨らませていった。あとはオニオサムシの草稿、ついで鳥、戻って哺乳類、クモと書き、オニヤンマからオニツヤクワガタまでを一気に書いた。でもってミドリオニカミキリ、オニホソコバネカミキリを続けて書き、オニミスジを途中に挿入した。で、オニオサムシの稿を完成させた。そこからまた戻ってオニササキリモドキ、オニヒメタニガワカゲロウの項を書いた。してからに、オニクロナガの事とその前にある今回の主題である物言い(文句)を置いた。そして、最後にオニユミアシからゴミムシダマシの項までを順不同でバラバラに書いた。
だから、所々でトーンが微妙に変わっている。こういう書き方は珠にするけど、こごまで継ぎはぎだらけで書いたのは初めてだ。飽きれば別のところを書けばいいので、お陰で長文のわりにはあんまし苦痛ではなかった。でもそのせいで、ウンザリするくらいの長い文章になってしまったけどね。最後まで読んで下さった方には、ただただ感謝である。

 
(註1)バラクーダは老魚なると群れない

当時、先輩インストラクターにはそう聞かされていたのだが、これは間違い。単独行動の奴と群れている奴は別種なんだとさ。単独でいるデカイのがオニカマスで、群れているのはオオカマスだという。大型カマス類には何種類かあるのだが、ダイバーの間では全部ひっくるめてバラクーダと呼ばれている。だから種類が混同されているのだ。ブラックフィンバラクーダとかも、学術的には別種なんだろね。

 
(註2)ハカイダー
(出典『プレミアム バンダイ』)

 
特撮番組『人造人間キカイダー』及び『キカイダー01』に登場した悪役キャラクター。ダーティヒーローだ。
フィギュア、欲しいなあ…。

 
(註3)シオヤアブ
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
双翅目ムシヒキアブ科。体長23~30mm。
時にスズメバチをも襲う。オニヤンマも襲われることがあるみたい。返り討ちにあうことも多いそうだけど。

 
(註4)タテヅノマルバネクワガタ
(出典『気ままに昆虫採集』)

 
以前はチャイロマルバネクワガタ以外の全種全亜種が「タテヅノマルバネクワガタ」として、ひと括りにされていた。
現在はアマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、オキナワマルバネクワガタ、ヤエヤママルバネクワガタ、ヨナグニマルバネクワガタの5種類に分けられている。
マルバネクワガタは見たことがない。蝶屋だから夜は虫採りなんかしなかったのだ。そういえば、ヨナグニマルバネは禁止になる前年に与那国島にいて、しかもベストシーズンだった。それ狙いの人も沢山来ていた。今思うと、毎晩呑んだくれてる場合じゃなかったよ。
wikipediaには「今日知られる分類は水沼哲郎氏の熱心な研究によるところが大きい。」とあった。水沼さんは優しくて飄々としたお爺ちゃんだけど、やっぱスゴい人なんだね。

 
(註5)他のユミアシゴミムシダマシとそう変わらない

一見したところ、他の大型ユミアシゴミムシダマシとあまり変わらない。体長もそれほど大きな差はない。

 
【オオユミアシゴミムシダマシ】
(出典『こんなものを見た』)

 
体長21.8~27.9㎜。
そういえば初めてユミアシゴミムシダマシを採ったのは小学生の頃で、場所は長居公園の臨南寺だった。大阪のド真ん中だけど、まだ小規模ながら古い社寺林が残っていた時代だ。一部は原始に近い照葉樹林で、そこにはオオゴキブリやマイマイカブリ、オオゴミムシとかオオスナハラゴミムシなどの大型ゴミムシ、そういえばオオゴモクムシなんかもいた。オニユミアシは古くて豊かな照葉樹林にいるみたいだから、もしかしたらアレはオニユミアシだったりしてね。残念ながら標本は残っていないから確かめようがないけれど。

 
【アマミユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長23.8~29.3㎜。
前述したが、オニユミアシは22.0~31.2㎜。つまり大きさはオニユミアシ、アマミユミアシ、オオユミアシの順となる。

 
(註6)ケルベロス
(出典『世界の神話・伝説』)

 
ギリシア神話に登場する犬の怪物。冥界の入口を守護する番犬で、三つの首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬とされる。また、文献によって多少の差異はあるが、三つ首プラス竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれることが多い。
学名はラテン語なので、読み方はケルベルス。英語では読みはサーベラスとなる。

 
(註7)是非、残して欲しい和名だよ
実際、消えてゆく和名も多い。特にオサムシは亜種名にも和名をつける慣習があるからだ。オニクロナガも今ではキュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種と表記される機会が増えている。これは日本産オサムシ図説(井村・水沢, 2013)で、この亜種独自の和名を見直し「(種和名+主要分布地域名)亜種」という方式で和名を記載することが提唱されたからだ。この方式は従来方式の和名が「種を指すのか亜種を指すのか明確でない」という見解からだろう。確かに一見合理的ではある。
しかし、分布地域名の表記をなるべく正確かつ統一的なものしようとするあまり、やたらと長くなっているものが数多く見受けられるのも事実だ。従来の方式ならば、表記も喋るのも短くて済む。オニクロナガで済むところを、一々キュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種なんて言わなきゃならないなんて、どっちが合理的なのかワカンナイぞ。だいち、今は旧名と新名が混ざくりあって、益々何が何だかワカンなくなってて、かえって混乱を引き起こしてねぇか❓また、従来の和名は紀伊とか阿波なとの旧国名や地域名といった歴史ある地名を冠したものが多く、山河による地理的隔離により亜種分化をしてきたオサムシの和名に相応しいものともなっていた。しかし、それを継承しなかった新名もあり、亜種分化の歴史を掴みずらくしてしまったケースもある。オサムシはその形態よりも地方名がついたものが多い。これは見てくれが似たようなのばっかだからそうなったのだろうが、面白いし、かえって合理的でもある。言葉一つで何処に分布する種なのか解るもんね。形態を必死こいて表そうとして、無機質でクソ長ったらしくなった和名よか、余程こちらの方がいいや。
それとは関係ないけど中臣さんの名前を冠したらしきオサムシが、オニクロナガが以外にもう1つある。チュウゴククロナガオサムシ(キュウシュウクロナガオサムシ中国地方亜種)だ。
学名は Carabus (L.) kyushuensis nakatomii 。もしかしたら、オニクロナガも中臣さんに献じようと思ったが、既に nakatomii を使用しているのでアダ名を使ったのかもしれない。

 

2018′ カトカラ元年 その八

 
 Vol.8 オニベニシタバ

    『嗤う鬼』

 
彼女に、ちゃんと会えたのは意外と遅かった。
「ちゃんと」とわざわざ書いたのは、既に2017年の9月の終わりに会っているには会っているからだ。A木くんにハチ北にライトトラップに連れていってもらった時、帰り道のコンビニにいたのだ。
A木くんに要ります?と訊かれたが、要らないと答えた。ボロボロだったし、元々カトカラなんて集める予定はなかったからだ。この日の目的は、あくまでもムラサキシタバの実物を見ることだけだったのだ。

そもそも自分にとって蛾は基本的に忌み嫌うべき存在だった。チョウは好きなのに、ガは見ただけでオゾける。大の大人が女の子みたいにキャッと言って飛び退くぐらい怖かったのだ。おそらくこれは幼少の頃に植えつけられた蛾に対する負の概念の刷り込みだろう。通常、そう云うものは生涯変わることはない。概念として、脳髄の奥の奥まで染み込んでいる。それがまさか翌年には蛾を追っかけてることになろうとは夢にも思わなかった。カトカラは美しいものが多いとはいえ、青天の霹靂である。

あかん。このままいけば脱線確実なので、話を本筋に戻す。

そういえば、A木くんがオニベニなんて…みたいな言い方してたなあ。それで普通種なんだと認識した記憶がある。
翌年の初夏、小太郎くんにも『ド普通種だから、いっぱいいますよ。下手したら、ただキシタバ(C.patala)よか多いんじゃないですかね。』と聞かされていたから、やっぱ普通種なんだという認識をより強くした思いがある。だから7月に入れば、そのうち何処かで会えるだろうと思っていた。
しかし、なぜだか何処でも姿を見なかった。
(;・ω・)あれれ❓、オニベニって普通種じゃなかったのー❓
そうこうするうちに、7月も下旬になった。まさかである。このままだと新鮮な個体が得られない。それに、小太郎くんにも『えっ?まだオニベニを採ってないんですか?』と言われかねない。それも癪だ。
そんなマジで焦り始めていた頃のことだった。

 
2018年 7月26日。

2週間振りに矢田丘陵にやって来た。
日没直後にいつもの森へと入る。ここに樹液のドバドバ出ているクヌギの大木がある。そこには様々な虫が寄ってくる。昆虫酒場だ。カブトムシやクワガタをはじめ、各種の昆虫たちでいつも賑やかだ。勿論、カトカラたちも集まってくる。

木の前まで来ると、アカアシオオアオカミキリ(註1)がワチャワチャと軍団で群れていた。均整のとれた美しいカミキリムシで、かなりカッコイイんだけれども、こんだけいるとウザい。
カトカラは、見飽きまくって最近は憎悪さえ感じるパタラしかいない。何処にでもいるし、図体がデカイから邪魔なのだ。ゆえなのか、小太郎くんなんかは酷い仕打ちをしている(この辺のくだりは本シリーズの「続・キシタバ」の回に詳しく書かれています。おもろいから読んでね)。

何でオニベニいないのー(ノ_・。)❓
まさか今年から突然大減少したとか?でも、そんな事ってあるの?ワケわかんねえやと思って、ふと何気に隣の木に目をやった。
体の動きが止まる。あっ(゜ロ゜)、何かおる…。
そこには、翅を閉じて木肌と同化している蛾がいた。
見た瞬間、カトカラだと云う直感があった。種は特定出来ないものの、他の糞ヤガではないと感じたのだ。でも最初はどの種類のカトカラなのかは分からなかった。けど、大きさと上翅の色柄からして消去法で考えてゆくと、オニベニシタバではないかと云う予感はあった。
どうであれ、初めて見るカトカラだと感じれば、それなりに緊張感は走る。
でも、網を使った記憶がないんだよなあ…。

多分、この最初の1頭は毒ビンを被せて採ったものじゃなかろうか❓
書きながら、段々思い出してきた。高さは低かったから毒ビンを直接使ったのだ。どうせオニベニだろうから、たとえハズしてもこの先いくらでもチャンスはあるだろうとでも思ったのだろう。全然見つからなくて、しかも最初の1頭のわりには心の余裕があったのネ。
とはいいものの、この毒ビンを上から被せて採るという方法は苦手なので、それなりに緊張した感覚は残っている。
毒ビンを上から被せるのって、慣れてないから妙に緊張するのだ。網を振る時みたいに心を上手くコントロールできない。その緊張が相手にも伝わるのだろう。だいたいすんでのところで逃げられる。手で蝶を採るのは得意なんだけど何でだろ❓
蝶は心頭を滅却すれば、わりかし簡単に手掴みで採れる。そんな神技みたいなことができて、何で毒ビンを被せるのが下手なのかなあ…。そっちの方が簡単な筈なんだけどね。やっぱ慣れるしかないのかなあ…。

完全に思い出した。やはり最初の1頭は毒ビンで採ったわ。でも当日写した画像がない。どうやら写真を撮らなかったようだ。
と云うことは、さしたる感動もなかったのだろう。
周りに言われたり、図鑑等を読んでオニベニシタバ=ド普通種という概念が植え付けられてたんだろね。
こういうのは、あまりヨロシクない。情報が自分本来の素直な感性で見る心を阻害してしまっている。虫採りは感動があってこそ面白い。なのに、それを自ら放棄するのは勿体ないことだ。

で、翌日に取り敢えず撮ったのがコレ。

 
(2018.7.26 大和郡山市 矢田丘陵)

 
あっ、この画像を見て思い出したよ。
想像してたよりも美しいなと思ったのだ。皆がクソミソに言ってた程には汚くはない。渋い美しさがある。
下翅が同じ紅色系統のベニシタバと比べて色が暗くて鮮やかさに欠けるから、下に見られがちなんだろうけど、コレはこれで美しいなと思った。
もしも、日本にベニシタバやエゾベニシタバがいなければ、それなりに高い評価とか人気を得ていただろうに…。オニベニくんって、何だか不憫な存在だな。同情するよ。

昔、小学生の頃、クラスに松宮という性格の悪い嫌な奴がいた。小学校6年生か5年生の時だ。そいつが理科の天才とモテ囃されていた。しかし、Mくんという転校生がやって来てから、事態は一変した。彼がもっと理科の天才だったからだ。理科の授業中、先生の質問に何でもスラスラと答えたのである。松宮が先にあてられて、答えられなかった後だっただけにクラスに衝撃が走った。その時の、松宮の醜く歪んだ顔は忘れられない。恥と屈辱がベッタリと貼り付いていた。
Mくんは性格もいい奴で、瞬く間にクラスの人気者になった。当然、松宮の株は暴落した。松宮は嫌な奴だけど、その凋落振りは目を覆いたくなるような残酷な感じで、他人事ながら気の毒だった。先生も難しい問題は真っ先にMくんをあてるようになったからね。
自分はそんな目にあった事は一度もないけれど、もしもそんな立場になったとしたら、相当キツいと思う。自分だったら確実に今よりも性格がネジ曲がっていたに違いない。別人格になっていたのではないかと思うと、マジ怖い。今よりも数段イヤな奴になっていた自信がある。実際、松宮は益々イジけた陰険な野郎になった。中学生になってから、俺様に陰湿な方法で牙を剥いてきた時には驚いたよ。俺、全然関係ないのに、女の子の事で謂れのないトバッチリを受けた。無視したけどね。おまえの好きな女の子が俺の事を好きだからって、陰で悪口をある事ない事その娘に吹き込むんじゃねえよ。そのせいで、別な俺の好きな女の子にも嫌われそうになった。まあ、陰湿で人気のない奴だったから、皆が自分に味方してくれて、それ以上悪い方向にはいかなくて済んだけどさ。

いつもの如く、話が逸れた。
もちろん、オニベニシタバは松宮みたく性格は悪くはない。むしろ、いい方だ。カトカラの中では性格は素直な方だと思う。だから、採るのはそんなに難しくはない。ムラサキシタバなんかは結構性格が悪いもんな。異常に敏感だし、ライトトラップには中々近くまで寄ってこなくて、寄ってきたと思ったら、採りにくい変な所に止まるとかって、よく聞くもんね。

 
(2018.7.26 大和郡山市 矢田丘陵)

 
真ん中の黒帯が細くて、ジグザクになっているのがオニベニさんの特徴だ。色よりも、この黒帯の形で他の近似種と区別する方が同定間違いはしにくい。なぜなら、古い標本や飛び古したものは色が褪せているからだ。あとは翅形も違う。ベニやエゾベニは上翅が横長で、先端が尖る。オニベニはここが他の2種と比べて丸い。この二点さえ抑えておけば、判別間違いすることはないだろう。

この太い腹の形からすると、たぶん♀だろう。
でも、オニベニは♂もデブだから雌雄の区別は意外と難しい。

それにしても、やっぱり一年目の展翅は酷いな。上翅が上がり過ぎてる。まあ、カトカラ1年生だし、しゃあないか…。

この日は、他にも何頭か採った。

 

 
たぶん、コチラが♂だろう。
♀よりも腹が若干細くて長い。先端もやや丸い。でも他のカトカラの♂みたく尻先にいっぱい毛束があるワケではないから、やはり分かりにくい。

あっ、これは上翅に白い紋が入るタイプだね。こっちの方がカッコイイ。
どうやら前翅斑紋は個体変異に富むようだ。何処にも書いてないけど、この白紋が出るのは♂の方が多いような気がするが、本当のところはどうなんだろ?まだカトカラ2年生なので、断言できないけど…。
どちらにせよ、クロシオキシタバとかコガタキシタバ程にはヴァリエーションはないようだ。

裏面が意外と美しい。

 

 
そういえば、初めて飛んでいるのを下から見た時は、数秒間その場で固まった。何だかワカンなかったのだ。シロシタバにしては小さいし、白もオフホワイトではなくて真っ白だったからだ。因みに飛翔中は赤い部分は意外と目立たない。白の方に目がいくのだ。
答えは、コレまた消去法でオニベニにゆきついた。

 

 
赤、白、黒のコントラストが効いていて、素晴らしい。色の配分も申し分ない。
ベニシタバやエゾベニシタバには表の美しさでは負けるが、裏はオニベニが一番美しいと思う。

次に出会ったのは、四條畷だった。
シロシタバ探査の折りで、昼間にウワミズザクラを探していたら、突然飛んで逃げた。結構早いスピードだった。この日はコシロシタバも見たけど、やっぱり早かった。カトカラは夜に樹液に飛来する時はパタパタ飛びで遅いけど、昼間は飛ぶのが速いと知ったのは、この時が初めてだったかもしれない。マジ飛びのカトカラは速い。
それで、突然思い出した。カトカラを初めて見たのは、A木くんに連れて行ってもらったハチ北で見たジョナスキシタバではないや。実を云うと、もっと早い時期にオニベニシタバを見ていることを、まじまじと思い出したよ。間違いなくそれがカトカラとのファーストコンタクトだ。しかも、真っ昼間に見ているのだ。
あれって、ちょっとした白昼夢的だったよなあ…。

詳しい年月は憶えてない。
でも、おそらく2011年か2012年のどちらかの8月だ。場所は生駒山地だった。目的はオオムラサキ(註2)の♀狙いだった。
その場所は誰にも知られていないオラだけの秘密の樹液ポイントで、必ず複数の♀がゲットできた。樹液がドバドバ出ているクヌギの大木に、多い時では♂が一同に10数頭も集まっていたこともある。

時刻は午前10時過ぎだったと思う。
パンパンに膨らんだ期待を胸に、その木に向かって真っ直ぐに斜面を降りてゆく。オオムラサキの♀は綺麗じゃないけど、バカでかくて笑けるほど迫力があるので、その頃は毎年会いに行っていたのだ。
で、目の前まで来て、ゲゲッΣ( ̄ロ ̄lll)、見たら大きめの蛾たちがベタベタと樹液の出ている所に止まっていた。元々、大の蛾嫌いだったから激引きした。
向こうも驚いたようで、複数が下翅をパッと開いた。どひゃ\(◎o◎)/❗❗茶色かと思いきや、突然ビビットな赤が悪魔の口のように開いた❗
ヘ(゜ο°;)ノひっ、思わず飛び退いたよ。( ; ゜Д゜)ビックリしたなあ、もー。
キシタバは普段色鮮やかな下翅を隠して止まっており、天敵に襲われそうになったら、パッとそれを見せて相手を威嚇すると言われている。毒々しい鮮やかな色なので、相手が怯むのだ。それにまんまと引っ掛かったというワケだ。あたしゃ、しっかり怯みましたよ。

やや遠目から様子を伺う。数えたら5、6頭はいた。
コレが何とかシタバとか云う名前の人気のある蛾のグループの1種なんだろうなと思った。
ミーハーなので、人気があるものには興味がある。ちょっと悪魔的で怖くはあるけれど、綺麗といえばキレイだ。だから、採ろうかどうか悩んだ。でも、蛾だから採ったら暴れて、鱗粉を辺りにその辺に撒き散らす光景が目に浮かんだ。((((;゜Д゜)))ブルッときたよ。
だいち、蛾なんて元来よう触らんのだ。網に入れても、心がワヤクチャになってパニックになるやもしれぬ。考えた結果、採集は見送ることにした。
とはいえ、オオムラサキが飛んで来たら邪魔だ。排除せねばならぬ。
一旦、深呼吸をしてから、再び木に小走りで近づき、勢いをつけて思いきし前蹴りしてやった。
Σ(゜Д゜)ヒッ、(゜ロ゜;ノ)ノヒッ、Σ(T▽T;)ヒィーッ❗全員驚いて飛びやがった。それを狙ったんだけども、思った以上にシッチャカメッチャカ四方八方に飛んで横をかすめていったので、発狂しそうになっただよ。
(´д`|||)キモ~。一瞬、背中が凍りついたわ。体に異常なまでの変な力が入っていたようで、その場で肩で息したよ。

その日の夜、夢を見た。
何十頭ものオニベニシタバが、自分の周りを飛び交っている夢だ。下翅の赤い色がチカチカと明滅する。それが鬼の口が開いたり閉じたりして、まるでケタケタ嗤(わら)っているように見えた。嗤う鬼軍団だ。怖すぎる。
アキャーo(T□T)o、魘(うな)されて、恐怖のあまり飛び起きた。
もちろん、パジャマは汗ビッショリだった。

今宵、貴方の夢にもオニベニが乱舞するやもしれませぬぞ。

 
                   おしまい

 
 
今回も続編は書かない。前回と同じく解説は後回しの、2019年版をくっ付けたヴァージョンでいきます。

 
【学名】Catocala dula (Bremer, 1861)

小種名の「dula」は、ネットで調べたがワカランかった。dula じゃなくて、dura というのが矢鱈と出てくる。
頼みの綱の平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』にも載っていなかった。
ヒカゲチョウ属に、Lethe dora オビクロヒカゲ という似ているのがあったけど、綴りが微妙に違う。
ついでだから言っとくと、ドゥーラの語源はラテン語で「堅い、鈍感な」という意味。梵語由来ならば「遠い、長い」です。

ワカンねぇから、ここから先はいい加減な推測を書く。
たぶん、これは誰かに献名されたものではなかろうか❓おそらく女性の名前で、ドゥーラじゃなくて、ダラと読むんではないかな。ダラとかって、アメリカ人女性の名前とかに多くねえか❓
綴りがそれだと違うよな気がするが、もういいや。ゴメンナサイ。ワッカリまっしぇーん\(ToT)/

 
【和名】
オニベニシタバという和名は悪くないと思う。
たぶん赤鬼から来ているのだろう。その鬼の赤と下翅の色とを重ね合わせたのだと思われる。
いや、待てよ。オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼ、オニダルマオコゼ、オニハタタテダイ、オニヒトデ、オニヤドガリ…。あっ、思い浮かんだのは、海の生物ばかりだ。これはダイビングインストラクター時代の名残だね。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられた。オニイトマキエイは、そのデカさからだろう。オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また猛毒があり、危険なことから名付けられたものだと思われる。オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てたようだ。オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。性格も荒い。トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな?
植物ならオニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジなんかが有名だ。
オニユリの名の由来は、花が大きく豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。オニアザミやオニバスは、その棘と大きさに由来する。以下は面倒くさいので、省略する。
ようするに生物に鬼の名がつく場合は「①大きい。②刺、角がある。③見た目が厳つい。④凶暴・獰猛である。⑤色合いが鬼に似ている」の何れかの理由から付けられている模様だ。
昆虫はといえば、オニヤンマ、オニクワガタが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止めとく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。

話をオニベニの和名に戻そう。
オニベニシタバの和名には、色合いだけでなく、厳ついと云う意味も込められているのではないかと思う。オニベニは翅に比して胴体が太い。ゴツいんである。その体躯と赤黒い翅とが相俟って、鬼っぽく見えるといえば見えなくもないのだ。初めて会ったあの日の昼間は、その姿に兇々(まがまが)しい感じを受けたもん。

 
【開張】 65~70㎜
カトカラ全体の中では大きい部類に入るが、他の下翅が赤いグループ(ベニシタバ、エゾベニシタバ)の中では一番小さい。でも腹と胴がデブだからか、あんま大きさは変わんない印象がある。人だって身長が低くてもデブだと迫力があるから、そんなに小さく見えないんだよね。あっ、コレってデブ批判じゃないからね。迫力があった方が得です。
因みに、同じ下翅が紅いグループでも、オニベニシタバとベニシタバ&エゾベニシタバとは分類学的に系統が違うようだ。下翅が紅いだけで、あとは形態や斑紋、幼虫の食樹も異なるから、言われてみれば納得だすな。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬。
九州南部には分布していないようだ。ということは暑さや湿気には弱く、どちらかというと北方寄りの種なのかもしれない。低山地のカトカラというイメージがあったから、南方系とまでは言わないまでも、暖かい地域を好むカトカラだと勝手に思ってたけど、違うんだね。そういえば去年、長野県の標高1700mぐらいのとこでも採ったことあるわ。
因みにレッドデータブックだと「千葉県:D(一般保護生物)、高知県:準絶滅危惧、長崎県:絶滅危惧IA、大分県:情報不足」となっているようだ。こんなもんと言っては失礼だが、稀な地域もあるんだね。
あっ、長崎、大分、高知が入っているから、やはり温暖なところには、あまりいない種なんだ。納得だよ。

参考までに言っとくと、国外ではアムール(ロシア沿海州)、樺太、朝鮮、中国(中北部)に分布が知られる。

  
【成虫出現期】 6~10月
近畿地方では6月下旬辺りから現れるとあるが、実際見る機会が多いのは7月上旬からだろう。その頃から次第に個体数を増やし、8月半ば迄よく見かけた。

 
【生態】
クヌギの木が多い比較的乾燥したに二次林でよく見られる。コナラ主体の雑木林や常緑カシ林には少ない。
クヌギ、ヤナギ、ハルニレの樹液によく飛来する。また、ブドウなどの果実にも好んで集まるようだ。
樹液への飛来時刻は比較的早く、日没後すぐに現れる。但し、直接樹液には寄ってこず、近くの木に頭を上向きにして止まっていることも多い。
糖蜜トラップは、オニベニ狙いで試したことはないので、効果の程は分からない。とはいえ、おそらく反応するものと思われる。

発生初期は他のカトカラと同じく夜間に活動するが、8月に入って繁殖期になると昼間でも活発に活動し、昼夜を問わず樹液やブットレアなどの各種花にも吸蜜に訪れる。昼間に活動するカトカラは他にあまりいないので(註3)、カトカラの中では得意な生態を持つ種だと言えよう。
発生初期の昼間は、頭を下向きにして木の幹に止まっており、驚いて飛ぶと他の木に頭を上向きにして着地し、ややあってから下向きとなる。しかし、交尾期になると頭を上向きにして止まる個体が多いという。

灯火にもよく誘引されるようだ。けれど、灯火に来ているものを見たことが殆んどない。数えるくらしかした事がないけれど、ライトトラップでも見たことは一度もない。だから、光に寄ってくるという実感は個人的にはあまりない。
あっ、思い出した。標高1700mで採った奴は車のライトに飛んで来たわ。

 
【幼虫の食餌植物】
食樹はクヌギ、ミズナラ、カシワ、コナラなどブナ科コナラ属全般だが、少ないながらもアラカシなど常緑カシ類も利用している。
幼虫はクヌギを最も好み、以下ミズナラ、カシワの順に嗜好するが、コナラはあまり利用されていないようだ。これはコナラの芽吹きが早く、若葉がかたくなるのが早いからだと推察されている。マメキシタバやアサマキシタバも同様の傾向があるという。
樹齢15~30年くらいのものによく付くが、大発生するような年には老齢木にも幼虫が見られるそうだ。

 
2019年は、驚いたことに2頭しか採っていない。

 
(2019.7.10 奈良市白毫寺町)

 
こうして見ると、上翅があんま魅力的じゃないよなあ。その辺もベニやエゾベニに比べて、一段劣る評価になってんだろな。

裏面の写真もあった。

 

 
胸がもふもふだね。もふもふ大好き~(^o^)

この個体を採ったの時のことは、場所もシチュエーションもよく憶えている。
場所は白毫寺町東山緑地の雑木林で、日没後すぐの時間帯に樹液に寄ってきていた。小太郎くんが来るまでヒマだったので、新たな樹液ポイントを探している時に見つけたんだよね。
しかし、シチュエーションの記憶がこれだけ鮮明なのに、なぜだか日付の記憶はどうにも曖昧だ。
日付を確認してみると七月十日になっていた。七月十日といえば、日本で初めて見つかったカトカラ、新亜種マホロバキシタバ(註4)を発見した日だ。
と云うことは、そっちのインパクトが強すぎて、それ以前のオニベニの記憶がその日からフッ飛んでたみたいだ。

 
(2019.7.10 奈良市 白毫寺町)

 
♀かなあ…。だと思うんだけど。
今年は展翅もだいぶとマシになった。触角をどうするかは今だに迷ってて模索中だけどね。前脚も気分で出したり出さなかったりと、統一されてない。
コレは前脚出しいの、アンテナ真っ直ぐ寝かしーのパターンだす。
下の2頭目の個体も、同じパターンの展翅だね。

 
(2019.7.16 奈良市 高畑町)

 
これは住宅街で捕らえたんだよね。だから、ちょっとドキドキした。夜に住宅街で網持ってたら、怪しまれて当然なのだ。

2頭とも♀だと思うけど、見てると段々自信が無くなってきたよ。

それにしても、何で2頭しか採っていないんだろう❓
別に採るのをサボってたとかスルーしてたワケではないのにね。つまりこれは、それだけ今年は見ていないって事だ。多い時期に、去年一番個体数の多かった矢田丘陵に行っていないと云うのもあるかもしんないけど…。
或いは、意外といる所には沢山いるけれど、いないとこにはいないカトカラなのかもしれない。たった二年間でのモノ言いだけどさ。
でも、もしかしたら雑木林が放置されて老齢木ばかりになってきていて、幼虫が好む樹齢15~30年くらいの木が減っているのかもしれない。
ド普通種だとバカにしてたら、そのうち段々減っていって、いつの間にか絶滅危惧種になってたりしてね。

 
               おしまいのおしまい 
 
 
追伸
書くことが、あまりないから楽に終わるかと思いきや、そうでもなかった。松宮の事なんて思い出したのが間違いだったよ。そこから、何だかエンジンがかかっちゃって、どんどん長くなっていった。

最初のタイトルは『紅の鬼豚』だった。宮崎駿の映画『紅の豚』がモチーフだ。オニベニってデブでピンク系だからって安易につけた。自分でも笑ったわ。
テキトーにつけたけど、どうやってこのタイトルとオニベニをリンクさせんねんと思いながら書き始めた。まあ、どうせゼッテーまたフザけた方向にいくねんやろなあと思ったけどさ(笑)
因みに、そこから派生した『紅の鬼嫁』と云うのも候補としてあった。益々、どうやって本文とリンクさせるねんって感じだよね。輪をかけてムチャクチャな展開になること、明白である。
で、そのうち過去のファーストコンタクトの記憶が甦ってきて、今のタイトル『嗤う鬼』に落ち着いたと云うワケ。

 
(註1)アカアシオオアオカミキリ
(2018.7 大和郡山市 矢田丘陵)

 
夜行性。夏場、わんさか樹液に寄ってくる。今年も多かった。

 
(註2)オオムラサキ
世界最大級のタテハチョウの1種。日本の国蝶でもある。

 
【♂】

 
【♀】

 
下はブルーオオムラサキのスギタニ型。

 
(註3)昼間に活動するカトカラは他にあまりいない

エゾベニシタバやオオシロシタバなどに例があるが、通常の生態ではない。おそらく大発生した時などに限った生態ではないかと推察される。

 
(註4)マホロバキシタバ

【Catocala naganoi mahoroba ♂】

 
日本で32番目に見つかったカトカラ。
詳しくは月刊むしの2019年10月号を見て下され。

 
《参考文献》
▪西尾規孝『日本のCatocala』自費出版
▪石塚勝己『世界のカトカラ』月刊むし社
▪江崎悌三ほか『原色日本蛾類図鑑』保育社

 

天王寺で寿司を食う

 
先日、天王寺で用事があった。
ちょうど昼飯時だったので何か食おうと思った。
それで思い出したのが、あべのハルカス(近鉄百貨店)にある『すし 古径』。
店名の由来は、おそらく日本画家の小林古径だろう。

 

 
夏八月に来た時に、ここの鰯がメチャメチャ美味かった。それを思い出したのだ。

先ずは小手調べにツマミ三種をたのむ。
寿司を握ってもらう前に、ツマミで刺身をたのむ人が多いが、自分は滅多なことではたのまない。これから寿司食うのに、何で刺身を食わなきゃならんのだ?と思ってしまうのだ。

 

 
左から蛸のやわらか煮、高野豆腐、小針魚(サヨリ)の昆布絞めである。
蛸はタコでないくらいに物凄くやわらかい。美味しいけど、蛸に弾力を求める者には特に感銘はない。
高野豆腐はガキの頃はスポンジやんけと思っていたが、大人になると出汁次第だと解った。高野豆腐は出汁を食う料理なのだ。
サヨリの昆布絞めは侮れない旨さだ。地味にメチャ美味い。あまり締め過ぎていないので、身がかたくなってなくて、刺身に近いフレッシュな感じが残っているのがいい。

昼間なので、あまり酒は飲めないゆえに早々と握ってもらう。
関西ではあまりお目にかかれない小肌があったので、少し迷ったがたのんでみた。

 

 
見た感じは艶があって期待が持てる。コハダはセクシーでなければならぬ。
ここは醤油を自分でつけて食べる店ではなく、こうして職人が煮切り醤油を刷毛で塗って出してくるタイプの店である。所謂、職人がネタに仕事をするという江戸前寿司ってヤツだね。

因みに煮切り醤油とは、濃口醤油、又はたまり醤油に酒、味醂などを加えて火にかけてアルコール分をとばしたものである。店によって調合は違い、それぞれ工夫が施されていたりもする。

小肌は旨い不味いの落差が一番あるタネである。
旨いと思うことよりも、ガッカリさせられることの方が遥かに多い。だから少したのむのを迷ったのだ。

手でスッと持ち上げ、ちらりと見て、さっと口に入れる。

(ー_ー;)う~む。
悪くはない。悪くはないんだけど、やはり今回も期待値を下まわった。酢がややキツい。自分にとっては締め過ぎである。好みは浅締めなのだ。酢に浸ける時間が長いと身がかたくなる。それがあまり好きではないのだ。きずしとか鯖寿司とかも、これは同じである。酢締めのネタって、微妙な世界なんである。この状態が好みで、良しとする人もいるだろう。所詮、食いもんなんてものは、突き詰めれば最後は好みなのだ。

とにかく、それでやや気落ちして写真を撮るのを止めた。この先、期待はできないなと思ったのだ。

次にたのんだのは鯛。
塩に柑橘の絞り汁をキュッと垂らしてもらった。
鯛はこの食べ方が一番美味い。鯛の旨みと甘みを一番感じられるからだ。噛めば噛むほどに旨みが増す。

これも悪くはないものの、感動を呼び起こすほどのものではなかった。時期もあまり宜しくないのだろう。美味しくなるのは、気温が下がってゆくこれからだろう。

続いてたのんだは縞鯵(シマアジ)。
座って、ネタケースに並んでいるのを見た時から目を引いた。ネタがぴかぴかに輝いていたのだ。良い素材は表面が光っているように見えるものだ。食べてよ、食べてよとアピールしてくる。冗談ではなく、これはホントだ。わかる人にはわかる。どんなものでも、ホンマもんには美が宿るのだ。

これは抜群に美味かった。身がイカっているのに、噛むと歯切れがよく、あとから旨みがグングン追いかけてくる。
イカってる魚は歯応えはいいけど、旨みには欠ける事が多い。それがないのに驚いた。旨みが噛んでるうちに心地好く舌に広がってゆくのだ。
元々、シマアジは身質的にそういう魚ではあるけれど、参った。たぶん、秘密は切身の絶妙な厚さだろう。寿司ネタには、それぞれの、その時々の最良の厚さというものがあり、またシャリとのバランスがあるのだ。

この手の魚のカンパチ、ヒラマサ、ブリ等の中ではシマアジが一番美味いと思う。最近のブリとかハマチとかって、生臭くて食えたもんではない。だから、天然か、それに近い寒ブリしか食わない主義だ。昔は、ハマチが大好きだったのなあ…。オジサンになると、好みも変わるのだ。

このシマアジで考えを改めなおした。
好きなものを勝手にたのむのではなく、職人さんのお薦めを訊いてからオーダーすることにした。段々、寿司屋にも行けない人になってきたので、セオリーを忘れてたよ。悲しいやね。

そう云うワケで、次は薦められたカマスを素直にたのんだ。
でもカマス❓とは思った。カマスなんて魚は水っぽいから、寿司には向かないネタだと云うイメージがあったからだ。カマスといえば、一夜干しでしょうよ。
でも、出されたカマスの炙りは、悶絶するくらいにメチャメチャ美味かった。香ばしさが最初に鼻腔をくすぐり、上品なのに甘みと旨みが強い。そして、最後にもう一度、香ばしさが鼻から抜けてゆく。
カマス、ナメてました。脱帽。今まで寿司屋で食ったカマスの中では、ナンバー1と言ってもいい。

というワケで、写真も復活。

 
【剣先烏賊】

 
やわらかくて、旨みと甘みが半端ない。
イカ本来の甘みもさることながら、細かい包丁が入っているがゆえだろう。おそらく身の裏面にも隠し包丁が入っていた筈だ。イカは繊維を断ち切れば切るほど旨みと甘みが舌に感じ易いのだ。

 
【鯵】

 
わかりづらいから、反対からも撮る。

 

 
上に生姜が添えられている。
これも美味かったが、縞鯵の感動には及ばない。
但し、そもそも同じアジと言っても全く違う魚だ。そう思えば、アジとしてはそれなりに完成しているかもしれない。順番が逆ならば、もっと好評価だっただろう。寿司は食う順番も大事なのだ。

 
【アワビ】

 
煮アワビではなくて、生である。
普通にメッチャ旨い。メッチャは言い過ぎだけど、コリコリの中に貝独特の旨みがあって、よろし。
江戸前だから、火が入ったアワビかと思いきや。生しかないと言われた。でも好みとしては煮アワビよりも生のアワビの方が食感があって好きだから問題ないのさ。
煮アワビって、時々カマボコ的だなと思ってしまう。そう思ったら、おしまいだ。有り難みが無くなる。

 
【土瓶蒸し】

 
秋だすなあ…。しみじみ美味いよ。
土瓶蒸しは大好きだ。あんまり食べる機会はないけどさ。中を覗くと、ちゃんとハモも入ってた。ハモが入っていない土瓶蒸しは土瓶蒸しと認めない。全然、味が違うからである。ハモが入ると、出汁の旨みが格段に出て、尚且つ上品さを失わないと云うところがマストなのだ。
海老も入っていた。これは正直いらないと思っている。松茸とハモの極上のハーモニーを壊しかねない存在だと思ってる。重ねて言う。土瓶蒸しに海老はいらない。

 
【茶碗蒸し】

 
茶碗蒸しって良いよねぇ。
何だか心の底からホッとする。癒しの食いもんだ。このクオリティのもんだったら、毎日食ってもいいや。
茶碗蒸しと土瓶蒸しを考えた人は天才だと思う。

 
写真も撮ってない事だし、もう一回シマアジをたのんだ。

 
【縞鯵】

 
これもわかりづらいから、反対からも撮る。

 

 
最初と比べれば驚きがない分、感動は薄れるが、やはり美味い。

 
【カマスの炙り】

 
カマスも写真が無いので、もう一回たのんだ。
コチラは、遜色ないくらいの感動を味わえた。メチャメチャ美味い。この日のマイ・フェバリットは、間違いなくカマスだろう。

〆は穴子にしようと思ったのだが、生憎のところ売り切れとのこと。残念至極だ。

 
【ツブ貝】

 
生のツブ貝を久しく食べていない気がしたので、たのんだ。
歯触りは良いが、旨みが足りない。これも、もう少し季節が進んだ方が美味くなるのだろう。それぞれの旬は、ちゃんと覚えておいた方がいいやね。でも、同じ魚でも旬は場所によって違うから、世間で言われている旬が絶対ではないんだよね。

 
【トロ鉄火】

 
最後は、トロ鉄火で〆た。
やっぱ、トロ鉄火って最高だ。もちろんマグロは旨いけど、この海苔が堪らん。パリッとした食感と磯の仄かな香りがマグロの旨みを極限にまで引き出してくれるのだ。うめぇ~…。腹いっぱい。ノックアウトである。
それにしても、マグロと海苔の相性って抜群だな。わかっているのに、毎回一々感心することしきりである。
相性抜群の誰か現れてくんないかなあ…。ノックアウトされたいよ。

 
                    おしまい

 

戻り鰹に唸る

 
戻り鰹の季節になってきた。

たまたまスーパーで、これはという生のカツオが目に入った。そこそこ大きさがあって、モノが良いのに片身下半分(4分の1)の柵が¥398だった。安い。
量的には多いので迷ったが、カツオはデカイ方が旨い。それに、たとえ今日食べきれないであろう半分を捨てたとしても、安い。買わない手はない。

帰ってきてパックを開けたら、やはり予想通りの皮付きであった。正直、面倒くさい。でも、新鮮な証でもある。皮付きの生は、よほど自信が無いと店頭に出せないのだ。銀色が禿げて輝きを失ったモノは、目を背けたくなるくらいにみすぼらしい。

鮮度が良いので、皮を引いてもいいかなと思ったが、綺麗な銀色だったので、タタキにすることにした。大概の魚は、この皮と身の間に旨味が詰まっているのだ。
とはいえ、最上とされる藁焼き鰹のための藁なんて持ってるワケないし、たとえ有ったとしても、煙と炎が半端なく出るからマンションでは御法度だ。
そう云うワケだから、金串を打って、ガスの直火で皮めを焼くことにした。
焦げ過ぎないように気をつけて焼いたら、すかさず氷水に浸ける。普段はそこまでしないのだが、今回はモノが良いので万全を期した。旨いもんにありつきたかったら、手を抜いてはならない。

周りの水気をキッチンペーパーで丁寧に拭き、庖丁で厚めにスパッ切る。ここ、大事。カツオの刺身は厚めの方が旨いのだ。そして刺身はよく切れる包丁で、手前から刃先へと刃渡りを全部使う気持ちで引いて切る。前後に包丁をコキコキ動かして切るのは言語道断だ。断面がグチャグチャになって、味と食感が格段に落ちる。どんな良い素材でも、見事なまでに台無しになってしまうのだ。知らなかった人は、今後、肝に命ぜられよ。
その為には第一歩として、ケチらずによく切れるそこそこ高い包丁を買いましょうね。

 

 
切った瞬間には気づいていたが、見よ、この断面の輝き❗(ゴメン、ワードプレスに記事をアップすると、ナゼだか画質が極端に落ちるから、中々伝わらないとは思うけど)。

薬味は、過去に何度も同じような事を書いているが、ニンニクと茗荷、貝割れ大根が基本。土佐仕様が宜しい。

 

 
今回は葱も除外した。葱は香りが強いので、生魚の臭みを消してくれる効果がある。でも、今日は寧ろ邪魔だ。かえって鰹の本来の風味が消してしまいかねない。生姜も似たような理由で選択外とする。
甘ったるいタタキのタレなんぞは、当然使わない。ポン酢も醤油もいらない。鮮度の良い鰹は塩に限る。

最初の歯触り、噛むほどに押し返してくる微妙な弾力。じわりと感じる旨味。申し分ない。(´∇`)至福じゃよ。

余ったカツオを軽くヅケにしておいた。
で、翌日は状態をみて、ネギを登場させることにした。それだけカツオは足が早いのだ。一日経てば、グンと鮮度が下がる。だから、漁場が近い高知で食うカツオが美味いというワケなのさ。

ネギに煙が出るくらいに高温熱々チンチンにした胡麻油をかけたものを乗っける。あっ、そのままじゃなくて冷ましたヤツね。
アカン、読み返して「煙が出るくらいに高温熱々チンチン」のところで、一人で吹き出してしまう。意図して書いたワケではないが、🔥マグマのような燃え盛るオチンチンを想像してしまったのである。何が目的なのだ❓浮気した女への腹いせか❓それとも、新手のB級ヒーローかあ❓
実にバカバカしい。バカバカし過ぎて、もう1回笑てもうたワ

 

 
薬味は他に茗荷と貝割れ大根。
何か耐えきれずに、わちゃわちゃわちゃーと薬味を上からばらまいてやった。

 

 
それをTVでCS(クライマックスシリーズ)を観ながら食う。
味は、昨日のカツオと比ぶべくもない。
でも、創作系としては、まあまあかな。
クッソー(‘ε’*)、阪神、ますます巨人に点差を広げられてゆくやんけー。やっぱクソ弱いわ。
カツオが、どんどん不味くなる。

 
                    おしまい

 
追伸
昨日からそうだったけど、どちらかというと同時に放送されているソフトバンクVS西武の試合にチャンネルを合わせている時間の方が長い。なぜなら、試合として全然面白いからだ。正直、パ・リーグの方が野球のレベルが高いわ。

 

 

 

カニカマメンマ

  
何か、カニカマメンマって舌噛みそうだ。
ハイ、早口で5回続けてカニカマメンマと言ってみましょう\(^o^)/

2週間ほど前だったと思うが、TVの『マツコの知らない世界』で、カニカマを取り上げていた。一年365日間、ずーっとカニカマを食べ続けてるカニカマおばさんが、カニカマの魅力を伝えると云う内容だ。

その中でカニカマを使った料理も紹介されていた。その一つがカニカマメンマという代物だ。
酒のツマミとして紹介されたものだが、マツコ絶賛で、しかも超簡単に作れそうなので気になった。

で、作った。

 

 
たしかに超簡単だった。

材料はカニカマとメンマ、白髪ネギ。あと調味料の白胡椒、胡麻油だけである。
カニカマは一正蒲鉾の「カニ風味スティック」、メンマは桃屋のメンマ「やわらぎ」を使った。

 
【一正蒲鉾 カニ風味スティック】

 
イオングループでは、コヤツがだいたい山積みになっておる。味は安定して旨い。

  
【桃屋のやわらぎメンマ】 

 
あれば、もっと穂先をふんだんに使った柔らかいモノの方がいいと思う。

作り方はホントに超簡単で、これらを混ぜ合わせるだけである。あっ、カニカマは縦に裂かなきゃいけんし、ネギも切らなきゃイケんけど。

味は、不味くはない。そこそこ旨い。
でも劇的に旨いかと訊かれたら、首を傾げる。そこそこ旨いけど、何かチープな味なんである。

カニカマもメンマもまだ残ってるし、二日後にもう一回作った。

 

 
白髪ネギは3分の2を混ぜて、残りを上に飾った。
見た目がいいかなと思ったのさ。

でも、食うときは結局全部混ぜ合わせるんだけどね。

 

 
慣れてくると、これはこれで有りかもなあ…。
この味はハマる人はハマりそうな気がする。
でも2回目なんだから、今思えばもっとアレンジすべきだったかもなあ…。
けど、何をどうすればいいのかワカラン(?_?)

そういえば、番組では進化系カニカマって事で、🍊みかんカニカマとかも紹介されてたよなあ。

何じゃ、こりゃ❗❓だったので、スーパーで思わず写真撮っちやったよ。だから画像が残ってる。

 

 
どんな味なんだろ❓
気にはなったから、正直買うかどうかを迷ったよ。
でも結局買わなかった。
冷静になって考えてみたら、「んなもん、旨いワケないじゃないか(*`Д´)ノ❗」と思ったのである。

けど、マツコは結構旨いような事を言ってた。
そんなにミカン、ミカンしてなくて、仄かにミカンを感じるから違和感は思ってた程には無いそうだ。
そっか…ミカンと聞けば拒否反応が起きるが、考えたらミカンも柚子やレモンと同じ柑橘系だもんな。気づかんかった…。

実をいうと、その前にはソーダ味とかも売ってた。
コレも思わず写真を撮ってもうた。
一正蒲鉾よ、何処に行こうとしてるのだ❓
カニカマ業界1位の会社だけど、アンタら大丈夫かあ❓と思ったよ。

 

 
食いもんの色として、青は絶対タブーでしょうよ。
全然食欲が湧かないない色の筆頭だ。しかもソーダ味って、「ガリガリくん」かよ。攻め過ぎだよ。カニ味とソーダ味が混ざった味って、ゼッテー旨いワケないじゃん。想像しただけでも、嫌な気分になる。

でも、気になるなあ…。どんだけ不味いか知りたいよ。売れたのかなあ…。大量に残ってしまって大損してたら笑うなあ。

今度また変なのを出してきたら、買おっかなあ…。

 
                   おしまい

 
追伸
カニカマといえば、圧倒的にスギヨが作っているカニカマが旨い。カニカマを世に送り出した会社だしね。
そういえば、カニカマおばさんがカニカマにハマるキッカケがこのスギヨの「大人のカニカマ」だった。カニカマの中で一番旨いとも言っていた。
そのスギヨのカニカマが、昨日半額で売ってたから買ったんだよなあ…。「大人のカニカマ」じゃなくて、「かにちゃいまっせ」だけど。

 

 
まだメンマも白ネギもあるし、もう一回作れないことはない。でもなあ…、そのまま食って旨いのに、わざわざ変に手を加えて不味くなったら腹立つよなあ…。

 

2018′ カトカラ元年 その六

   
  vol.6 マメキシタバ

    『侏儒の舞』

  
2018年 7月某日。

夜の森へと足を踏み入れる。
7月も半ばになると、夜でも蒸し暑い。立ってるだけで汗がジットリと額から滲み出してくる。

樹液がドバドバ出ている御神木にぞんざいに近づいたら、黄色系のカトカラたちが驚いて一斉に飛び立った。結構な数で、ちょっとしたワチャワチャの乱舞の様相だ。

『あっ、マメキシタバもいますよ。あのチビこい奴、ほら、アレ。』と小太郎くんが言う。
でも、オイラはそれに特に反応する事もなく見送る。
『えっ、マメ採らないんですか❓五十嵐さん、まだ採った事ありませんよね❓』と小太郎くんが怪訝な顔で訊いてくる。
それに対して面倒くさそうに返す。
『無いけど、そのうち採れるやろ。どうせまた戻ってくるっしょ?』。
『やる気、全然ないですねー。』
と小太郎くんは言うが、クソ暑いんである。たかがマメキシタバに気合いなんぞ入るワケがない。
イガちゃん、ヒドイねー。まだ一つも採った事もないクセに、こんな事を言うなんてやっぱ虫採りをナメてる男なのである。

以前、フシキキシタバ、ワモンキシタバという美しいカトカラに連続して出会った事がキッカケでカトカラにハマったと書いたが、実をいうとあれは半分は本当だが、半分は嘘である。
カトカラの美しさには目覚めはしたが、正直言うと一部の美しいものにしか興味がなかった。近畿地方で採れるものは、前回に登場したカバフキシタバと他はシロシタバ、ムラサキシタバくらいにしか真の意味での興味はなかったと云うのが偽らざる気持ちだった。
それゆえカバフを仕留めたところで、何だか腑抜けになっていたのだ。カトカラを全種を集めるとは言ったが、日本の蝶をコンプリートしてやろうという気持ちに比べれば、モチベーションは遥かに低い。勢いで言っただけで、本当はそれほど強い決意はなかった。
だからか、マメキシタバを最初に採った時の記憶というものがゴッソリと欠落している。見事なまてに全然憶えてないのだ。
探してみたが、どうやら最初に採った時の証拠写真さえない。ようするに写真も撮っていないのだ。たぶん撮る気さえ起こらなかったのだろう。
一応、今年は辛うじて撮っているので、替わりにそちらの画像を添付しておこう。でも、これとて撮ったことさえ完全に忘れていた。

 

(2019.7.5 兵庫県宝塚市)

 
去年、最初に展翅したらしきモノの写真は一応残ってはいる。

 

 
♂だね。
どうやらファースト・ゲットはボロボロの個体だ。
冒頭の場所、矢田丘陵で採れたものかどうだかは定かではない。或いは他の所だったかもしれない。ボロゆえかラベルも無いのである。記憶ゼロだ。
それにしても、やはり一年目の展翅は酷いね。上翅を上げ過ぎてしまっているし、触角も今イチだ。

他の個体も並べておこう。

 

 
これは兵庫県六甲山地西部の個体だ。コチラも♂である。
採った記憶は全然ないが、これにはラベルがあるから間違いなかろう。

後翅はオレンジの地に黒い帯が楕円を描くようにあり、内側の帯の中心に薄い1本の黒い線が走るのが特徴である。
下翅はオレンジの領域が広く、フシキキシタバに似ている。しかし、上翅の色柄が違うので区別は容易。だいち両者は大きさが全然違う。マメキシタバの方が遥かに小さい。加えて発生時期も異なる。フシキキシタバの発生の方が1ヶ月くらい早いから、両者を同時に見る機会は殆んどないと言っていい。仮にあったとしても、フシキはその頃にはボロボロだから見間違えることはほぼ無いと言えよう(フシキキシタバについては当ブログに詳しく書いたので、画像等含めてソチラを見てくだされ)。

 

 
腹部が短くて太いから♀だね。
コヤツは上翅の模様にメリハリがあるなあ。ネットの情報なんかだとマメキシタバの上翅の模様は結構バリエーションがあるらしいけど、あまり意識した事はない。コガタキシタバやクロシオキシタバなんかの方が余程変化に富んでいるからだ。それらと比べると正直ツマンナイ。バリエーションも、どこか地味なのだ。

次のは、上翅がやはり上がり過ぎてはいるものの、比較的マシな展翅かな。問題は多々あるが、バランスはそう悪くはないだろう。

 

 
裏展翅した写真も出てきた。
ボロいし、裏展にでもしとくか…てな感じが色濃く滲み出ているようなテキトー展翅だ。

 

 
上2つが♂で、一番下が♀である。
何れも生駒山地北部のものだ。
この時の事はよく憶えている。樹液から驚いて飛んだマメキシタバたちが、アチキの周囲で何頭もがくるくると優雅に舞ったのである。侏儒の舞だ。でも小人どもの舞というよりかは、妖精たちの舞に見えた。
中々に幻想的な光景で、ほんの僅かな間だったが何となく嬉しい気持ちになったのをよく覚えている。こんな気分になれたのは、マメキシタバならではだと思う。珍しい種類ならば、それどころではない。興奮して、そんな優雅な気分に浸っている余裕などない。
また、これがもしパタラキシタバ(C.patala)、いわゆる普通キシタバならば、きっと腹を立ててムチャクチャに網を振り回して全員撃墜させていたかもしれない。デカイから、そんなのに囲まれて飛び回られたりしたら不気味だし、めちゃんこ気持ち悪いじゃないか。悪夢だ。何かの呪いじゃよ。想像しただけでも恐ろしいや。

今年、2019年に採ったものも並べておこう。少しは展翅もマシな筈だ。

 
(2019.8.11 大阪府四條畷市)

 
♂だね。8月も半ばだが、この時期でも結構新鮮な個体がいる。

 
(2019.7.5 兵庫県宝塚市)

 
これも♂である。
この場所では個体数が少なかった。稀種とされるカバフキシタバの方が、よっぽど多かった。

 
(2019.7.25 大阪府四條畷市)

 
これは♀だね。
ここは比較的個体数が多いが、去年よりかは少なかったと思う。

お次は裏面。

 

(2点とも 2019.8.11 大阪府四條畷市)

 
あらあら、全部でこんだけかい。もっと見た記憶があるのになあ…。何だかマメキシタバに対しての興味の度合いを如実に表しているようじゃないか。きっと見てもロクに採ってないってワケだな。
と云うワケなので、ネタも無いし、続編は書きましぇん。( ̄∇ ̄*)ゞあはは…、扱いがホントないがしろだニャア(ФωФ)
マメちゃん、ゴメンね、ゴメンねー。

 
【和名】
和名マメキシタバは、ヤクシマヒメキシタバと並び国内のカトカラの中では最も小さい事から名付けられたのだろう。これに関しては、べつに文句はない。豆電球や豆皿、豆柴(犬)に豆ダヌキ等々、昔から日本では小さいものの名前に豆を冠するという伝統があるからだ。虫だってマメコガネやマメゾウムシ等々があるし、特に違和感はない。まあ予定調和過ぎて面白くはないけどね。
あっ、今思い出したけど、スズキキシタバという和名が付けられたこともあるようだ。でもダサ過ぎて、コメントする気にもなれないや。

そういえば大学生の頃、男同士何人かで恋ばな(恋話)になったら、必ず最後のオチはいつも『何だかんだ言ってもー、結局マメが一番❗』と云う全員の唱和で終わってたっけ…。話が終盤になると、誰かが『何だかんだ言ってもー』と言えば、あとの句を皆が唱和して、しゃんしゃんでお開きになるのだ。
この時代の皆の悩みごとの大半は恋愛で、今にして思えば、とってもピュアだった。青春だったなあ…。
老いも若きも世の男性諸君❗恋愛の極意は、マメでっせ❗これに尽きます。今も昔も、モテる男は女の子の背中の痒い所に手が届くようなマメ男なのだ。自分は性格上、そういうの無理だけどさ。

 
【学名】Catocala duplicata (Butler,1885)

ネットで「duplicata 語源」で検索すると、ズラリと英語の「duplicate」の意味が出てきた。

①同一物の)2通の一つ[控え]、副本
②写し、複製、複写、複製物
③重複の、二重の、一双の
④まったく同じ、うりふたつの

ようするにコピーと云うワケである。だから、偽物、紛い物、贋作なんて意味もあるようだ。自分だってマメキシタバにぞんざいな扱いをしといて何だが、偽物とか紛い物ってのは酷いやね。もし語源がそっちなら、気の毒なくらいに不当に低い扱いだ。同情を禁じえないよ。
平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』を紐とくと、タテハチョウ科イチモンジチョウ属のナガサキイチモンジの亜種に Ladoga helmanni duplicata と云うのがいた。それに拠ると、duplicata(ドゥプリカータ) はラテン語由来で duplicataus の女性形とある。意味は「2倍の、重複した」となっていた。
2倍はまだしも、学名に重複したって意味が込められているとしたら、やっぱりネガティブなネーミングだよね。マメキシタバって不憫なカトカラだなあ…。

それは置いといて、ナゼにこのような学名がつけられたのだろう❓全然想像がつかないや。
そもそも2倍ってのがわからない。2分の1ならまだしも、チビッコなくせに2倍って何でやねん❓まさか哲学的なメタファーが込められているワケでもあるまいに。謎だよ。
もしかして他にシャム双生児みたくソックリな奴がいて、そいつと比べての命名❓
ならばと『世界のカトカラ』で探してみると、モンゴルヒメキシタバ Catocala proxeneta と云う、ちょっと似ているのが見つかった。しかも、ページこそ違えど、同じグループに入れられている。
しかし、記載年を確認したら、マメキシタバよりも後の記載になっている。となると、ブー。推察には当てはまらない。マジ、謎だよ(;・ω・)
考えても、他に考えうる理由がてんで思い浮かばない。
(ノ-_-)ノ~┻━┻ や~めた。スマンがマメキシタバの事なんぞ、どうだっていい。本音を言ってしまえば、全然興味ないのだ。

余談だが、ナガサキイチモンジについて少し書いておこう。
察しのいい方ならばナガサキイチモンジと云う和名からピンとくるかもしれないが、このチョウ、実をいうと日本の長崎で採られている。過去に Leechによる古い採集記録があるのだ。しかし、それが本邦における唯一の採集記録である。謂わば、幻のチョウなのだ。
かなり謎の記録だが、妥当に考えれば、おそらく迷蝶だろう。なぜなら亜種 duplicata の分布はアムール、ウスリー、北東中国、韓国とあるからだ。風に乗って飛んで来る可能性は有り得る。
ところで、今でもその標本って存在するのかなあ❓意外と同定間違いだったりしてね。もしくは日本での採集品の中に韓国や中国のものが混入してしまったなんて事だって無きにしもあらずだ。
因みにナガサキイチモンジは現在は属名が変わっいるようで、Limenitis helmanni という新しい学名になっている。

 
【開張(mm)】
46~48㎜。
小さい。それゆえなのか、どっか有り難みがないんだろねぇ。人気も今イチだ。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬、朝鮮半島、中国。

分布は広いが、産地はやや局所的であるとされている。でも、自分の中では普通種と云うイメージがある。けれど、2年目の経験も加えると、どこにでもいるというワケではなさそうだ。生息する場所では比較的多産する印象があるが、全く見ない場所や個体数の少ないところも結構ある。
そういえば意外だったが、九州などの暖地では少ない種らしい。カトカラは西日本寄りの分布のものと東日本寄りに分布するものがいるから、西日本寄りのものは九州には沢山いるかと思いきや、そうでもないんだね。そういえば実際、沖縄などの南西諸島にはアマミキシタバくらいしかいないもんね。カトカラは南方系ではないと云うことだ。かといって北海道には産しないカトカラもいるから、元々寒冷地の蛾とも言い切れないところがある。意外と温帯を好む狭適応型の蛾なのかもしれない。テキトーに言ってるけど(笑)。

 
【成虫出現期】
近畿地方では6月中下旬頃から現れ、生き残りは10月中旬頃まで見られる。最盛期は7月上旬から半ばといったところかな。

 
【生態】
クヌギ、コナラを主体とした低山地の二次林を好む。
垂直分布の限界はミズナラ帯に準ずるものと思われる。おそらく標高1200~1500m辺りだろう。
灯火にも樹液にもよく集まり、糖蜜トラップにもよく反応する。樹液への飛来時刻は早く、日没後、真っ先にやって来る種の一つだろう。吸汁時は他のカトカラのように下翅を開かないとされるが、そうでもない印象がある。確かに開かない個体は多いが、開く個体もそこそこ見てる。吸汁が終わると、近くの木に止まっていることが多い。これはその日のうちに再び樹液に訪れる為だからと思われる。他のカトカラも同じ習性を持つものは多い。樹液が出ている木を見つけたら、その木だけではなく、周囲の木も探査しといて損はない。

昼間は頭を下向きにして樹幹などに静止している。
結構敏感で、近づくと素早く反応して飛び立ち、意外と採れない。着地時は上向きに止まり、数十秒以内に下向きになるという。夜間は他のカトカラと同じく上向きに止まっている。

因みに、石塚勝己さんは『世界のカトカラ』で、見た目が全然違うエゾシロシタバと近縁関係であることを示唆しておられる。西尾氏も『日本のCatocala』の中で、両者の幼虫の見てくれと生態が酷似していることを報告されているから、見た目以上に近い間柄なのかもしれない。
反対に他人の空似なんて事もあるから興味深い。ただキシタバ(C.patala)とコガタキシタバなんぞは見た目がかなり似ているし、幼虫の食樹も重なるから、近い関係にあるかと思いきや、系統的にはかなり離れているらしい。生き物って面白いやね。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のクヌギ、コナラ、アベマキ、ナラガシワ、ミズナラ、アラカシが知られている。
食樹はどこにでもあるようなものだが、それと呼応してどこにでもいるワケではないので、やや不思議な感がある。
西尾氏の言によると、幼虫は樹齢10~30年の木を好むそうだから、その幼虫の嗜好性が分布と何らかの関わりがあるのかもしれない。また、その著書によると、アラカシ食いの個体群は上翅が暗化する傾向があるそうだ。

とここまで書いて、クロージングの仕方がワカンなくなった。
思い入れがないから、いつもみたいにカッコつけのモノローグで終わるワケにもいかんしなあ…。 
と云うワケで、このままグダグタで終わります。

 
                    おしまい

 
追伸

文中と小タイトルに「侏儒」と云う言葉が出てくるが、タイトルをつける時に浮かんだのが、芥川龍之介の箴言集『侏儒の言葉』と半村良の壮大な伝奇ロマン小説『妖星伝』だ。どちらも中学生の頃に読んだ小説だから、あんまし中身は覚えてないけれど、『妖星伝』はワクワクした記憶がある。地下世界で小人どもが暗躍、蠢くのだ。そういえば半村良には『侏儒の黄金宮』と云う作品もあった筈だ。読んでないけど。
因みに侏儒の意味だが、体の小さい人、小人とされる。また知識のない人の蔑称でもあるようだ。本タイトルとは関係ないけどさ。マメちゃんのことは蔑視しがちだけど、そういう意味をタイトルに込めたワケではない。
補足しておくと、箴言とは戒めの言葉。教訓の意味をもつ短い言葉。格言である。これまたタイトルとリンクしているワケではないので、あしからず。

追伸の追伸
Facebookに記事のリンクをあげたところ、カトカラ研究の第一人者である石塚勝己さんから以下のような御指摘があった。そのやり取りを記しておきます。

(石塚さん)
ブログの「去年、最初に展翅した・・・」て、コガタキシタバのように見えますが?
帯の形ですよねぇ…。

(ワシ)
でも胴体が細いし、小さかったのでマメかなと…。(ここでは書き忘れたが、帯が細くて黄色い領域も広い)

(石塚さん)
前翅亜基線の形状はマメではなくコガタのように見えますし、基部はマメより黒く見えます。後翅中央黒帯の形状もマメよりコガタに似ていますよね。
大分擦れている個体ですが、頭部から肩部の毛の色、こげ茶に見えるので、コダタではないかと思います。

こんなボロい個体でも見抜くなんて流石である。
プロはやっぱ凄いや。そう思っただすよ。
石塚さん、有り難う御座いました。

 

水茄子を愛する男

 
10月に入って、遂にスーパーの漬物売場から水茄子が姿を消した。ちょっぴり残念だ。

それにしても今年はよく水茄子を食った。
春先の三月からコンスタントに水茄子を食い続けていた。水茄子といえば夏のイメージが強いが、意外にも春先にはもう姿を見せ始めるのである。人気があるゆえ、最近はハウス栽培とかも増えているのかもしれない。

 

 
水茄子は関西ではポピュラーな存在ではあるが、全国的にはまだまだあまり知られていないとも思われるので、一応解説しておこう。

 
【泉州水茄子】
(出展『川崎農園』)

 
主に大阪府南部の泉州地域で栽培されており、形は普通の茄子よりも丸みを帯びる。果肉に多くの水分を含む事から、この名がある。
やったことあるけど、手で、うりゃ(#`皿´)と搾ると、驚くほど大量の水が出てくる。農家の人は、喉が渇いたら時々水がわりに搾って飲むらしい。高級🍆ナスだから、最近はやる人あまりいないと思うけど。

糠漬けや浅漬けで食べられることが多いが、生でも食べられている。
本来、茄子はアクが強くて生食には向かない野菜であるが、水茄子はアクが少なくて水分を多量に含んでいる。ゆえに生食も可能なようだ。
生で食べると、ほのかな甘みと爽やかな香りがある。シャリシャリ感もそれなりにあって、ちょっと青リンゴっぽい。実際、その特徴からか、江戸時代には果物扱いされていた時期もあったようだ。
なぜにそんなに水分が多いのかというと、主な栽培地である泉佐野市や貝塚市は水はけがよく、海が近いために地下水にも塩分が混じる。加えて温暖な気候ゆえ、蒸発していく水分を補うために大量の水分を貯め込むようになったものと考えられている。

これは知らなかったが、水茄子にも多くの品種があり、泉州地域でも地区によって栽培品種が異なるようだ。
例えば大阪府貝塚市の「幻の水茄子」と呼ばれ、めったに市場に出回る事のない「馬場なす」、同じく貝塚市の水茄子の原種とされる「澤なす」などがある。

 
取り敢えず、今年食べた水茄子を並べていこう。

 

 
上が浅漬け。下が糠漬けである。
夏らしいガラスの器を使おう使おうと思って、結局使ったのは9月も半ばだった。面倒くさがり屋の性格がモロに出とるがな。

浅漬けの方がフレッシュ感があって、生に近い風味がある。一方、糠漬けはそれと比べて味が濃い傾向にある。どちらが好きかと問われたら、答えに苦しむ。どちらも好きだからだ。
但し、より水茄子らしさを味わいたくば、浅漬けかなあ…。

 

 
基本は、何もつけない。
それが一番美味しいと思うからだ。

 

 
こう云う風に手で裂くのが正しいとされる。
けど、食感こそ微妙には違うものの、云うほど味がメチャンコ変わるワケではないと思う。
でも、コレという良い水茄子が手に入った時は、間違いなく包丁で少し切れ目を入れてから裂くけどね。

 

 
これも当然のこと水茄子かと思いきや、絹かわ茄子という別物だった。

 

 
ウィキペディアによると、絹かわ茄子とは愛媛県の西条地区だけで古くから自家消費用として栽培されてきた在来品種で、明治時代には既に栽培が行われていたという記録が残っているそうである。この地域特有の「うちぬき」と呼ばれる湧水を使った栽培によりふっくらと瑞々しくアクが少ないナスなんだそうな。
水茄子にも、最近はこの系統の茄子の血が入ってきてるという。

食ったら、味も殆んど同じだった。

 

 
お約束だし、見た目もあって生姜は一応添えるが、味を邪魔するから個人的には要らないと思う。
とはいえ、生姜が合わないと言っているワケではない。それはそれで旨いのだ。水茄子そのものを楽しむには邪魔だと言ってるだけだかんね。

 

 
気分で、たま~に鰹節なんぞも添える。
鰹節をかけて不味くなることはない。しかし、個性が強過ぎて水茄子の良さが失われがちだ。

 

 
糠漬けだね。上は醤油をかけてみた。気分で、たま~にかける。
これも不味くなるワケがない。しかし、かけ過ぎると、これまた水茄子の個性が消える。

 

 
夏の最盛期になると、糠漬けも色んなメーカーのものが並ぶ。特にどこというのは決めてない。しかし、上のメーカーが一番数が並んでいるので、自然、口にする機会も多い。
糠は捨てずに、適当に野菜を入れて一回だけ糠漬けをつくる。

 

 
この時は人参だったようだね。手でパリポリやってたら、あっという間に無くなったことを思い出したよ。

 

 
あれぇー❓
思ってた程には画像が残ってないぞー。もっと食ってる筈なのになあ。
暫し考えてから、答えに思い至る。ようするに写真を撮ってないんである。だって、いくら撮ってもビジュアル的というか、絵的に一緒。さして変わらんのである。何の面白味もない。

来年は、もっとアグレッシブな盛り付けにしてやろっと。全然思いつかないから自信ないけど。

 
                    おしまい

  
追伸
画像を消したいがゆえの、愛する男シリーズである。
ても、思ったほど消せんかった。

 
 

続・カバフキシタバ(後編)

 

『リビドー全開❗逆襲のモラセス』後編

  
2019年 7月4日。

当初は奈良にリベンジしに行く予定だったが、急遽方針を転換して六甲へ。
勘ではあるが、天気予報も含めて考えた結果だ。
予定は未定であって、しばしば変更。虫採りは常にフレキシブルでなくてはならない。特に天候に関してはビビットであるべきだと思う。

今日は下見の時とは違う別ルートを探すも、やっぱり幼虫の食樹であるカマツカの木は見つけられなかった。近くにカバフの記録はあるが、ホンマに此処におるんかいのお❓ このままの流れだと、再び辛酸ナメ子さんになりかねない。見えないけど、恐怖を好物とする性格の悪い小人くんたちが、傍らでクスクス笑いをしてそうだ。テメエら(=`ェ´=)、人の人生に悪さすんじゃねえぞ。

夜がやってきた。
暗い山道を黙々と登る。夜になってもクソ暑い。瞬く間にTシャツが汗でビッチャビチャになる。

午後7時半。
ようやく樹液ポイントに到着した。さあ、今日こそカバフを手ゴメにしてやろう。

が、(◎-◎;)ゲロゲロー。
あろうことか、半月程前にあれほどカトカラが乱舞していたコナラの木の樹液が止まっていた。
(・_・)……。見事なまでに何もいない。嘘でしょ❗❓
三連敗という現実が目の前にグッと迫ってくる。

暫く様子を見てみたが、やっぱ何も飛んで来ーん。
( ̄ロ ̄lll)まさかである。これってさあ、世間的に言うところの、見事に思惑が外れるってヤツだよね…。惨敗の予感は益々濃厚となる。
だが、備え有れば愁いなし。昼間、用心のために別な場所で新たな樹液ポイントを見つけておいた。オデ、だいたいアホだけど、たま~に賢いのである。
僅かな期待を抱き締めて、そちらへと移動する。

Σ(◎-◎;)アキャア━━━。マジかよ❗❓
けんど、糖蜜を吹き掛けるための霧吹きが一回使用しただけで、早々と詰まった。やること為(な)すこと上手くいかない。再び暗雲が垂れ込める。惨敗の予感、ダダ黒モジャモジャだ。

コシュコシュ、コシュコシュ。コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュー…、(ノ-_-)ノ~┻━┻ ダアーッ❗何度やっても霧吹きから何も出てこん(#`皿´)❗
気が短い男ゆえ、ダンダンダーン(*`Д´)ノ❗、思わず破壊の衝動に駆られる。
(; ̄ー ̄A 落ち着け~、(; ̄ー ̄A 落ち着け~、俺。

🎵( ̄ー ̄)落ち着いたあ~、お~れ~。
と云うワケで、わりかし簡単に冷静になったワタクシは、一旦アタマの部分を取り外し(ワシの頭やないでぇ~、霧吹きでっせー)、管も抜いてお茶をブッかけてみた。
でもって、Ψ( ̄∇ ̄)Ψこちょこちょ~、Ψ( ̄∇ ̄)Ψこちょこちょ~。魔法の愛撫をしてやる。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψええんか、Ψ( ̄∇ ̄)Ψええんかあ~。

装着しなおして、再度シュコシュコやってみる。
暫くやってたら、ピュッ💦と出た。
❤あっはあ~ん。💕うっふ~ん。とれびあ~ん。
<(`^´)>ふっか~つ❗❗オイラ、🎵\(^o^)/てくにしゃあ~ん。
ぬははははΨ( ̄∇ ̄)Ψ、エロ男の超絶テクニックをナメんなよである。リビドー全開だぜ❗
これで思う存分、ブッカケてやれる。その辺の木を、まみれまみれのヌチョヌチョのネチャネチャにしまくってやらあ。男のリビドー、💥爆発じゃーい❗

だが寄ってくるのは糞キシタバのパタラ(C. patala)とチョコチョコ歩き回る糞ヤガのみ。この歩き回るところが💢癇(かん)に障る。イラッときて、石を投げつけたくなる。
名前はたぶんカラスヨトウって奴だ。ヨトウというのは漢字で書くと「夜盗」らしい。だから泥棒みたく歩き回るのか?、(=`ェ´=)小癪なっ。もしも携帯用殺人レーザービームとかがあったら、1匹1匹ピンポイントで八つ裂きにしてくれるのに(-_-)
人間、焦りが募ると心が荒れてくる。きっと闇の中の今の顔は、焦燥がベットリと貼り付いた醜い顔になっているに違いない。

午後8時26分。
樹液に何やら他とは違うカトカラが飛来していた。
でも結構高い位置だし、角度的にも真横に近くてよく見えない。おまけに手前の葉っぱが邪魔で下側が見えづらい。下翅を僅かに開いていそうだが、それも確認できない。持ってる懐中電灯が100均で買ったモノだから、光量が弱いというのも相俟って(註1)、兎に角よくワッカラーン。
でも消去法でいくと、マメキシタバにしては大きいし、パタラにしては小さい。アサマキシタバやフシキキシタバは季節的にもう終わっているし、ウスイロキシタバもそうだろう。ワモンキシタバも関西では終わりかけの時期だ。見たところ鮮度は良さそうだから、コヤツらも除外していいだろう。反対にアミメキシタバやクロシオキシタバには時期的にまだ早い。となると、残るはカバフキシタバとコガタキシタバしかいない。大きさ的にもそれくらいだ。でもコガタキシタバは最近ちょくちょく見ているから、雰囲気的に違うような気がする。ということはカバフ❓だよね❓
けど、そもそもカトカラじゃないと云う可能性もあるなあ…。上翅の見た目は似てるけど、下翅に色鮮やかさが無い糞ヤガの一種かもしれない。ヤガ科全般の知識がないから、それも充分有り得る。採ってはみたものの、下翅がドドメま○こ色でしたーという残念なパターンは往々にしてある事なのだ。

まあここでグダグダ考えていても埒が開かない。
取り敢えず採ってみっか。4m竿をするすると伸ばす。
それなりに緊張感はあるものの、それは通常のもので、過度な緊張感は無い。どうせ糞ヤガだろうという気持ちが心のどこかに有るからだ。きっと連敗で打ちひしがれていて、マイナス思考になっているのだ。糠喜びで、更なる落ち込み簾(すだれ)男になるのは避けたいという深層心理が無意識に働いてるんだろね。

高さを慎重に合わせて、💥叩く。
飛んで逃げた形跡はないから、たぶん網に入った筈だ。竿をすぼめて、中を覗く。

あらま(@ ̄□ ̄@;)❗、カバフやんかあ。
急に緊張感が高まる。今度は何があっても逃すワケにはいかない。もし又やらかしたら、その場で首カッ切って息絶えねばならぬ。慎重に慎重を期して、毒ビンに取り込んだ。

 

 
とはいえ、思っていた程の高揚感はない。何か拍子抜けした感じだ。奈良と京都の惨敗があったから、次の出会いはもっとドラマチックな展開を想像してたからだろう。背水の陣での戦いを覚悟していたのだ。それがまさかのシチュエーション曖昧の棚ボタ的だったから、どこかガッカリ感は否めない。虫採りにロマンとドラマ性を求める者としては、肩スカシを喰らったような気分だ。
それに背中の毛が落武者禿げチョロケになっているのに、途中で気づいちゃったと云うのもあるかもしれない。憧れていた美人さんが実をいうと円形脱毛症だった…。なんて事は万に一つも無いことだろうから、喩えとしては無理があるとは思うけど、そんな感じだ。

 

 

 
そんなに暴れてなかったし、取り込みも早かったのになあ…。何でやのん…❓

でも1頭いるということは複数いる可能性が高い。気を取り直して、糖蜜を集中的に撒いた場所へと移る。

(@ ̄□ ̄@;)あっ❗こっちにもおった。
今度は糖蜜トラップに来てるから、目の高さだ。
楽勝じゃん。テンション⤴上がるうーっ(о´∀`о)
しかし、ネットを構えかけてやめた。この高さだと毒ビンを直接かぶせる事ができる。ならば暴れる時間も短い。さすれば落武者化も防げる可能性が高い。そう踏んだのさ。

ヘッドライト、スイッチ・オーン。
準備万端。毒ビンを持ち、そっと近づく。
幸い、夢中で甘汁を吸っている。油断しているスキに背後からガバッじゃ❗でもって、カクカクカクカク…、手ゴメにしたるぅー(=`ェ´=)

だが、カブしたが紙一重。すんでのところで飛んだ❗
あちゃーΣ(×_×;)、また失敗かよう。俺、この毒ビンを被せるやり方って苦手なんだよネー。いつも、すんでのところで逃げられる。慣れてないから、下手に緊張感とか殺気が出ちゃうんだろなあ。蝶を手で採るのは得意なのになあ…。心を無にするには、対象に対して、それなりの経験値が必要だ。蝶には慣れていても、カトカラに対しての慣れはない。もう少し時間が必要そうだ。

逃したが、飛び方はパタパタ飛びだから目で追える。懐中電灯を拾って、あとを追う。
普段、カトカラはビュンビュン飛びで、かなり飛翔速度が高い。夜空を飛んでいる時などはスズメガの仲間かと見紛うばかりだ。しかし、なぜか樹液や花に飛来する時や、そこを飛び去る時はパタパタ飛びで遅い。ホバリングや方向転換が下手で、なんか鈍クサイ飛び方なのだ。急発進できないというか、トップスピードになるのに時間がかかり、急にスピードを落とす事も出来ないのだろう。
原因は体が重いのかな?とも思ったが、それほど特別に胴体がデカイわけではないのにナゼ❓胴体はスズメガの仲間とさして変わらんぞ。いや、寧ろスズメガよか細いくらいだ。はて…、何でやろ❓
もしかしたら、翅の形と厚さが関係しているのかも…。種類にもよるが、スズメガの方が上翅がより横に長くて、下翅がコンパクトだ。翅も分厚い。その辺に答えがあるのかもしれない。

目で追っていると、10mほど飛んで木の幹に止まった。
今度もわりと低い位置だ。毒ビンを被せる事も出来よう。しかし、位置をシッカリと確認してから網を取りに戻る。毒ビンで採る自信が無かったのだ。今度またハズせば、せっかく気分が乗りかけてたのに再び暗黒ビチャグチョの精神世界に沈みかねない。もうこれ以上、カタルシスが無い日々が続くのは辛いのだ。虫は採れてこそ、面白い。

幹を💥ブッ叩き、なんなくゲット。
しかし、又もや禿げチョロケ。まあ、いいや。採れないよかマシだろ。仕方なく、裏面写真を撮ることにする。

 

 
カバフは、裏も微妙にいいねぇ。
それを三角紙におさめてる時に、またカバフが糖蜜に飛んで来るのが視界に入った。

 

 
今度は、もっとハゲ~(ToT)
これは裏展翅ゆきだろなあ…。

その後も立て続けに飛んできた。
カトカラ国内No.1の稀種であるカバフキシタバを怒濤の20分間で3♂1♀ゲット❗❗
相変わらず無傷の背中フサフサさんは採れてないが、気分は悪かない。カバフの1日最高ゲット数のレコードをも射程内なんじゃないの~(^o^)v

と思ったけど、それでピタッと止まった。その後、11時前くらいまで粘るも飛来なし。
まあ、一日で複数採るのも難しいとされる稀種がこれだけ採れれば、いいだろ。
ところで、1日最高ゲット数っていくつなのだ❓ 最高ゲット数のレコードも射程内とか言っといて、知らんのだ。所詮は何も考えとらんテキトー男の、テキトー発言なのだ(笑)

 
一応、展翅画像も貼付しておこう。

 
【カバフキシタバ ♂】

 
無惨なハゲ度合いだが、カバフは美しい。
カバフキシタバの特徴と云えば、その特異な上翅のデザインだが、下翅も個性的だ。他のキシタバ類に比して下翅が明るい黄色で、しかもその領域が広い。珍しくて個性的で、しかも美しいとあらば、特別な存在とされるのも理解できる。

 
【カバフキシタバ ♀】

 
何か黄色の色が違うような気がするので、撮り直す。

 

 
( ̄~ ̄;)ん~っ、今イチ再現できてないが、まっいっか…。
 
雌雄の見分け方は、♀の方が♂よりも大きく、翅は全体的に丸みがある。また♀は腹部が太くて短く、先っちょの毛束の量も少ない。

 

 
裏展翅もした。
でも酷い写真だな。

 
【裏面】

 
裏面は他のキシタバ類と比べて劇的に違うワケではない。全体的に黄色みが強くて白っぽいところがあまりなく、領域も広い印象がある。但し、一つ一つ仔細に見たワケではない。同定するにあたって、裏を見る必要性がないし、特異とまで言える程の斬新性はないからである。

 
7月5日。

そこそこ満足したとはいえ、やはり落武者ハゲちょろけじゃない完品が欲しい。
と云うワケで、翌日も六甲に出掛けた。

午後8時17分。
最初の1頭が糖蜜に飛んできた。
その後、立て続けに4頭飛来。何れも糖蜜に寄ってきた。京都で採った最初の1頭も飛んできたのは8時半くらいだったし、どうやらカバフは日没直後には飛んで来ないようだ。基本的には8時を過ぎないと現れないと思われる(註2)。

15分程で一旦飛来が止まり、午後9時過ぎに1頭追加。その後、午後9時50分に1頭、10時15分に1頭が飛来して終了。

 


 

 
Ψ( ̄∇ ̄)Ψふはははは…、糖蜜、樹液に完勝❗
周囲には樹液が出ている木が計3本あるが、今日は樹液には1頭も来ず、7頭全てが糖蜜に寄ってきた。オラの作ったモラセス(糖蜜)ってスゴくねっ❓

レシピはテキトー&且つ複雑過ぎて正確なところは、教えたくともお教えできない。だから、たぶん二度と同じものは作れないだろう。
ベースはカルピス➕麦焼酎。そこに酸味として酢を足し、バヤリースオレンジジュースを加えた。しかし、今一つ匂わない。そこに飲み残しのビールを足したが、やっぱ今一つ。もうヤケクソでバナナを皮ごとグジャグジャにして入れてみた。焼酎も増量。これで香りにエッジが立った。イガちゃんスペシャルモラセスの誕生である。
もし真似するなら、ちゃんと濾してから使いましょうね。ワシみたいにエエ加減に作ると、霧吹きが詰まりもうすぞ。

流石に7頭も採れば、落武者じゃないのも採れる。

 

 
仔細に見たら、ナゼにこんなにも禿げチョロケになるのかが、概(おおむ)ね解ってきた。どうやらカバフちゃんの背中の真ん中の毛が元々薄いようなんである。毛が短くて、他と比べてフサフサ度が低いと思うんだよね。だから、すぐ円形脱毛症みたくなるんじゃないのかなあ…。

比較のために、参考として他のキシタバの画像を貼付しておきませう。

 

 
上がアサマキシタバ、下がコガタキシタバである。
毛が長いのが、お解り戴けるかと思う。
たぶん、普通のキシタバやフシキキシタバなんかも長い方だと思われる。
反対に短いタイプは他にもいるかもしれない。ムラサキシタバなんかも禿げちょろけ易いので、短いのかもなあ…。沢山採ったワケではないので、全然言い切れませんけど…。
或いは毛が長いタイプと短いタイプの2系統に分かれるとかないんだろうか❓
でも書いてて、段々自信が無くなってきた。所詮は印象で言っているだけの事で、数多くの個体を検証したワケではない。それに野外品ではジャッジメントの線引きが難しい。検証には不向きだ。こう云うのは、厳密的には各種を飼育、羽化させて比較してこそ、検証可能なものだろう。だから、この件に関しては半分以上は戯れ言として聞き流して戴けると有り難い。
但し、カバフに関してだけは、そこそこ当てはまってると思うんだけどなあ…。

今回も、展翅した画像を貼っておきます。
但し、便宜的に適当に選んだ写真なので、採集日は違うかもしれないです。

 

 
この時期は触角を自然な感じにするのが、マイ・トレンドだったんだろうなあ…。来年は真っ直ぐにしよっと。

 
7月6日

今日こそ、奈良でカバフをシバく予定だった。
しかし天気予報を見ると、生憎(あいにく)そっち方面の天気は思わしくない。どうやら、にわか雨があるようなのだ。雨はヨロシクない。網が濡れて、取り込む時に翅の鱗粉が剥がれてしまい、ボロ化しやすいのだ。当然、背中の毛も禿げ易いだろう。
それで急遽、昨日、一昨日のポイントにチェンジした。まさかの三連続出勤である。
また、7頭のうちの2頭は♀だと思ったのに、全部♂だったというのもある。これでは10♂1♀じゃないか。蝶や蛾は基本的に同柄ならば、♀の方が圧倒的に魅力があるのだ。♀、ぽちぃ~。

カバフは8時を過ぎないと飛来しないことが解ってきたので、今日は出発を30分ほど遅らせた。
今日もまた、エッチらオイラ…、じゃなくてエッチラオッチラと駅から長い坂道を歩く。

午後7時半、ポイントへと向かう入口に到着。
でも三日目ともなれば落ち着いたもんだ。念入りに全身に虫避けスプレーを散布して、毒瓶二つを両ポケットに捩じ込む。ヘッドライトを装着後、左手に捕虫網と懐中電灯、右手には糖蜜入りの霧吹きを持って夜の山へと入る。

寄って来たがる木にも好みがあるようで、昨日、一昨日を踏まえて、実績のある木を中心に8ヶ所に糖蜜を吹き付けた。辺りに、甘い香りが立ち込める。

2日間で11頭得ているので、気持ちは楽だ。
しかし、不安が全くないワケではない。虫採りに油断は禁物。常に予断は許せぬものなのだ。2日間でそこそこの数を得たからといって、翌日にまた同じように採れるという保証はどこにも無いのである。条件は変わらないのに、なぜだか1頭も採れない、姿さえ見ないということは往々にしてある事なのだ。況(ま)してや珍品で、個体数が少ないと言われているカバフキシタバである。この2日間で採り尽くした可能性も無いワケじゃない。
でも、♀は一つしか採れてないから、これからは♀の時期になってゆく可能性も無きにしも非ずとも考えられる。まだチャンスはある筈だ。

夕焼け空が次第に色を失い、群青色からやがて漆黒の闇へと移りゆく様は、いつ見ても飽きない。このカトカラを待つあいだの時間は、毎回特別な時の流れの中にあると思う。美しい風景と期待や不安が混じった感情が、不思議な感覚を一時(いっとき)与えてくれるのだ。マジックアワーとでも呼びたくなる素敵な時間だ。
少しニュアンスは違うが、これは昼間の蝶採りの時でも基本は同じだ。中学生がデート相手の女の子を待つみたいな気分なのだ。そこには期待と不安、ワクワクとドキドキ、胸を締め付けるようなものがある。
大人になると、そんな心持ちになれる事は滅多に無くなる。この歳になっても、そのワクワクを味わえるのは幸せなことだ。だから、蝶採りにハマったのかもしれない。
但し、待ち人きたらずで、心がズタズタになる事も多いんだけどね。

午後8時過ぎ。
早くも樹液に来ているカバフを発見。今日は飛来が早い。
でも矮小個体の♂だ。驚いたことにマメキシタバくらいしかない。思わず、二度見したよ。
カバフって、大小の個体差が大きい種なのかもしれないないと思う(註3)。

しかし、あとが続かない。
どうやらフライング個体だったようだ。まさか、これでおしまいってワケじゃないよね❓不安が擦過する。

8時22分。糖蜜トラップに漸く1頭が飛来。
この8時半前後が、カバフのゴールデンタイムの口火の時間なのだろう。

昨日、編み出した下コツッの採集方法で、難なくゲット。
そこから怒濤のラッシュが始まった。
9時前まで間断なく糖蜜トラップにやって来て、休む暇も無かった。あっという間に10頭をゲット。
その後も時折飛んできて、そこからあとは数を数えるのも面倒くさくなって、いくつ採ったかわからなくなった。
しかも、最初の矮小個体1頭以外は全部我がスペシャル糖蜜に来たものだ。ほぼ完勝と言っていいだろう。この三日間を合わせれば、モラセス(糖蜜)の圧倒的勝利だ。
ふははははΨ( ̄∇ ̄)Ψ、モラセスの逆襲だぜ❗

 

 
生息地は局所的で個体数も少ないと言われるカバフキシタバを、この日は結局17頭も採ってしまった。
1日で17頭って、それこそレコードじゃねえの❓(註4)

前の2日間も合わせると計28頭だ。
カバフって、ホンマに珍品かいな(;・ω・)❓

 

 
 
7月7日。

カバフをタコ採りしてやったので、溜飲も下がった事だし、この日はお休みにする予定だった。
しかし昨日、調子に乗って小太郎くんに自慢メールを送ってしまった。

小太郎くんは20代後半の若者で、基本的には蝶屋だが、虫全般について詳しい。驚くほど何だって知っているのだ。若いけど、かなりレベルの高いオールラウンダーだ。ゆえに、結構バカにされている(笑)。でも虫歴は向こうの方が長いし、レベルも高いから仕方がないのだ。それにカトカラの最初の先生だしさ。
彼は蛾にもそこそこ詳しくって、カトカラの事も基本的な事はだいたい知っている。最初にカトカラに興味を持ったのも、彼に影響されたところが大きい。中でもカバフの美しさと珍しさについての熱弁は印象に残っている。彼は基本的にカトカラは採らないし、採っても誰かに進呈するみたいだけど、カバフだけは別格らしい。アレだけは、人にはあげないと言ってた。
その彼から案内して下さいと言われて断るワケにはいかない。そう云うワケで、御案内申しあげた。まさか、まさかの四連チャンである。

今宵も我がモラセスは鬼のごたる効力を発揮した。
小太郎くんも、その効果を素直に認めたくらいである。ただし、この日は樹液に飛んできたヤツもそれなりにいた。

この日もそこそこの数が飛んできたが、正確な数はわからない。おそらく10頭ちょっとは飛んできたのではないだろうか❓前半は小太郎くんの採集と撮影のサポートをしていたので、正確な数を把握していなかったのである。

 

(写真提供 小太郎くん)

 
小太郎くんが満足したところで、最後に自分も幾つか採ったと思うけど、数は定かではない。それさえもあんまり憶えてないのだ。たぶん、急速にカバフに対して興味を失っていたのだろう。

カバフキシタバは稀種と言われてるけど、それに対しての疑問を明確に自覚したのは、この日からではないかと思う。本当はそれほど珍品ではなくて、意外と何処にでもいるんではないかと思ったのだ。それと同時に、食樹に対しての疑念も芽生えた。自分の目が節穴という可能性もあるが、随分と注意してカマツカの大木を探したつもりだが、結局1本も見つけられなかった。にも拘わらず、こんなにも成虫が採れたのである。
カバフの幼虫はカマツカの大木を好むと言われ、それが個体数の少なさの原因だと推測されてきた。けど、こんだけ採れりゃあ、別に大木じゃなくても発生するんじゃないかと疑ったのである。大木を意識するあまり、小さな木を見逃していた可能性はある。
また、こうも考えた。或いは此処ではカマツカ以外の植物も食樹として利用していて、見つからないのは、そのせいではないかと。
しかし、これはあくまでも推測に過ぎない。大ハズレの可能性もあるからね。

 
7月10日。

漸く奈良のカバフにリベンジする日がやって来た。
カバフに対するモチベーションは、かなり下がっているけど、奈良で享けた仇は奈良で返す❗やられたら、やり返す。それが人生のモットーだからだ。負けたままでは終われない性格なのだ。
とはいえ、返り討ちにされないとも限らない。勝つパーセンテージは少しでも上げておくべきだ。早めに行って、新たに樹液が出ている木を探しておいた。

この日は、家が近い小太郎くんにも声をかけておいた。日没後に合流する。
そこで、あのカトカラのニュー、マホロバキシタバ(註5)と出会ったのである。アミメキシタバともクロシオキシタバとも違う何じゃこりゃ❓のそれで、その日はカバフどころではなくなった。リベンジする事すら、頭から消えていたのである。

 
7月某日。

マホロバの発見で、蛾界の一部が騒然となった。
完全にカバフどころではなくなって、マホロバの分布調査にいそしむ事となる。
でも心の奥底では、通っているうちにそのうち何とかなるだろうと思っていた。それがこの日だった。

樹液の出ている木のそば、別な木に翅を閉じて静止していた。
でも、リベンジという意識はあまりなくて、『あっ、カバフおるやんか。』と云う感じで、さしたる興奮はなかった。特別緊張も無いから、なんなくゲット。

 

 
でも落武者になっとるー( ̄∇ ̄*)ゞ。
せやけどワシのせいちゃいまっせ。最初からやった。やっぱ、カバフは驚く程すぐ禿げチョロけるのねー。

時間は正確には憶えてないけど、たぶん8時は絶対過ぎていたと思う。
因みに、結局この周辺では糖蜜に飛来したものはゼロだった。もっとも、樹液がバンバン出ていたので、あんまり真面目に糖蜜採集やってなかったけどさ。

ここまで書いて、はたと気づいた。
7月某日だなんて、何で日付がハッキリわからんねやろ?と。
それで、上の展翅写真のデータを見直した。すると、何と日付が7月11日となっていた。と云うことはマホロバを見つけた日、つまりリベンジ初日の7月10日に、ちゃんとカバフを採っていたと云うことになる。Facebookに上げた記事もマホロバの記事を最初にあげた翌日(12日)の昼間になっている。12日は、小太郎くんが用事があるとかで、一人で訪れている。となると、10日に採っている可能性が極めて高い。

慌てて小太郎くんに電話して確認を取ったら、「その日かその前かはどうかは微妙ですけど、マホロバを採る前だったと思いますよ。」と云う答えが返ってきた。このカバフを採った時には、小太郎くんも一緒にいたのだ。
7月7日に彼と一緒にカバフを採りに行ってから、何処にも行ってない筈だ。ましてや奈良に行っていたとしたら、記憶がないワケがない。たとえパープリンの記憶喪失男だったとしても、小太郎くんが一緒に居たことは間違いないワケだから、それは有り得ない。
たぶん、マホロバの発見が強烈過ぎて、その日カバフを採った記憶がフッ飛んでいるのだ。
その後、なかなか次の1頭が得られなかったので、記憶がソチラに引っ張られたのかもしれない。奇しくも、如何に人間の記憶が曖昧なのかの証左を突きつけられた感じだ。思い込みとは恐ろしい。
何はともあれ、リベンジ一発目でカバフを採ったんだね。俺ってやっぱ、やる時はやる男やんか。何かプライドが強化されたようで、得した気分(о´∀`о)

その後、岸田先生がマホロバの分布調査に送り込んできた刺客、小林真大くんが若草山近辺でもカバフを見つけて、複数採った。そういえば、彼が言ってたなあ。糖蜜にソッコー来たそうだが、樹液には一つも来なかったって。カバフは樹液よりも、モラセス好きなのかもしれない。
自分も、後に赤松の幹に止まっているのを見つけた。カバフは赤松の木が好きで、昼間よく止まっていると聞いてたけど、この時初めて見た。真大くんも赤松の木で見つけたと言っていたから、やはり赤松好きなのだろう。もしかして、アカマツも食樹だったりしてね(笑)。日本のカトカラは基本的に針葉樹を食わないだろうから、それは無いとは思うけど…。
それで思い出したが、若草山近辺にもカマツカの木はそれなりにあるようだ。自分も2本くらい見た。探せば、もっと北や東にもあって、カバフもいるんじゃないかと思う。

自分の六甲でのタコ採り、奈良近辺での採集数、それに松尾さんが兵庫県西部で相当数のカバフを見ていることから、今年は大発生なのではと云う意見もあるようだ。しかし、果たして本当にそうなのかな?と疑問に感じている。それ以外で、他にはあまり例を聞かないからだ。たまたま沢山いる所が見つかって、情報が強調されたにすぎないんじゃないかと思ってる。間違ってたら、ゴメンナサイ。

思ったんだけど、大発生とかではなくて、寧ろ今まであまり調査されてこなかっただけの事ではなかろうか。意外とカバフは何処にでもいて、個体数も思われているほど少なくないのではないか。単にベストな採集方法が分かってなかっただけではないかと云う考えに傾き始めている。
今までカバフがあまり目に触れてこなかったのは、採集を主に外灯に来たものやライトトラップ、或いは昼間に静止しているもの、樹液への飛来に頼ってきたせいではなかろうか❓
カトカラの中でも、カバフは特徴的な上翅をしているから見つけ易いとは言われているが、にしても昼間の見つけ採りは決して効率が良いとは言えないだろう。樹液にも、個体数のわりには寄って来ないのかもしれない。自分の経験値と真大くんの見解を併せれば、樹液で採るよか、糖蜜の方が遥かに有効である可能性はあると思う。
しかし、糖蜜トラップでカバフを採ったという話はあまり聞かない。常識的に考えれば、糖蜜よりも樹液の方に寄ってくると考えるのは当たり前だろう。が、その当たり前が常に正しいとは限らないと云うことだ。
ライトトラップにも、そもそもあまり寄って来ない種なのかもしれない。或いは寄って来るのが遅い時間帯と云うのも有り得る。皆が皆、そんなに夜遅くや明け方までライト・トラップをやってないだろうからね。撤収した後がゴールデンタイムと云う可能性も無くはないか❓

結局、奈良でも六甲でもライトトラップを試してないから、ライトへの飛来に関しては本当のところはわからない。あれだけの数が糖蜜で採れて、ライトトラップにはあまり寄って来なかったとしたら、走光性が低いという可能性がある。
同地で、糖蜜とダブルで試してみたら、事実の一端が見えてくるかもしれない。どちらが有効であるか、来年試す価値はあると思う。
でもさあ( ̄∇ ̄*)ゞ、おいらライトトラップの道具持ってないんだよねー。

 
                   おしまい

 
追伸
計3話に渉る長々としたクソ文章にお付き合いくださいました方々、御拝読ありがとうございました。
相変わらずフザけまくるは、生意気に意見するわでスンマセンm(__)m

夏の強烈な日射し、荘厳なる夕暮れ、木々を揺らす風、部活動をする学生たちの声と楽器の音、タールのような漆黒の闇、儚く光る蛍たち、溶けそうな蒸し暑さ、糖蜜の甘い香り、帰り道の静まりかえった夜の街、そして灯りの中で明滅するカバフキシタバの鮮やかな黄色。
この長い文章を書いている間、色んな風景や温度、その他もろもろがフラッシュバックした。
来年も、カバフキシタバに会いに行きたい。

 
(註1)100均の懐中電灯
100均の懐中電灯はショボい。でも、敢えて使っている。何でかっつーと、照らしてもカトカラがあまり逃げないからなのである。カトカラは敏感だ。強い光を当てるとビックリして飛びがちなのだ。光量があって性能が良い懐中電灯は素晴らしいと思う。が、性能が良過ぎて、あまりヨロシクないんである。あくまでワタクシ的感想ですが。

 

 
ただしコヤツ、100均だけあってマジしょぼい。すぐに接触不良を起こして調子悪くなるのだ。で、しばしばブラックアウト。ドツいて、また光だすというポンコツ振り。電池が無くなりかけると、驚くほど光量が落ちるしさ。だから、予備電池は必須アイテム。お陰で、初期の頃は夜の山中で懐中電灯が消えかけて半泣きになったことが何度かある。一人ぼっちだったし、チビりそうになった。

 
(註2)8時を過ぎないと現れないと思われる
そんな事、図鑑とか何処にも書いてないけど、少なくとも関西では間違いなかろう。今夏、他人の採集も含めて知っている範囲では、50近い飛来数のうちで例外は一つもない。

 
(註3)カバフって大小の個体差が大きいのかもしれない

展翅した一部を並べてみた。

 

 
特別そうだとは言えないだろうが、それなりにはあると思う。

それよりも気づいたのは、♂と♀の下翅の斑紋の違いである。
今一度、並べてきた展翅写真を見て戴きたい。下翅の真ん中の黒帯が♂の方が細い傾向がある。だから、♂の方が黄色っぽく見える。そんな事、どこにも書いてなかったよね?
とはいえ、微妙なのもいる。同定の際の決定的な相違点とはならないだろうが、その一助にはなると思う。♂か♀なのか微妙な個体の場合には、使えるかもしんない。

 
(註4)それこそレコードじゃねえの❓
調べたら、石塚勝己さんの『世界のカトカラ』によると、島根県で143頭も採れた記録があるらしい。物凄い数だにゃあ。ケタが一桁違うわ。
但し、よくよく見たら外灯(水銀灯)に来たもので、しかも1959年から1960年の二年間での総数のようだ。
成虫の発生期間を少なく見積もって1ヶ月として、2年間で60日としよう。単純に143を60で割ったとしたら、2.83だ。つまり1日3頭も採れていないことになる(それでもスゴい数字とは言える)。となると、1日17頭って、凄くねえか❓レコードも有り得るよね。もちろん単純計算に過ぎないから、天候不順の日だってあるだろうし、飛来日数はもっと少ないかもしれない。けど、カトカラは雨でも全然飛んで来るからね。また、1日3頭ずつコンスタントに飛んで来るワケではなかろう。中には爆発的に集まって来る日もあっただろう。にしても17と云う数字は、かなりいい線いってると思うんだけどなあ。
因みに3日間で28頭だから、それを3で割ると平均は約9である。9×60=540だ。圧勝じゃん❗
小太郎くんと行った日も10頭くらいは採れているから、仮に38÷4としても9.5である。コチラの方がもっと凄いことになる。
まあ、何だかんだ言っても、所詮は机上の理論に過ぎないんだけどね。
とはいえ、少なくとも樹液&糖蜜採集の数としては、レコードに近いんじゃなかろうか❓

 
(註5)マホロバキシタバ

 
学名 Catocala naganoi mahoroba 。
日本で32番目に見つかったカトカラ。詳しいことは『月刊 むし』の10月号を見てくだされ。不肖ワタクシの発見記も有るでござる。

 

続・カバフキシタバ

  
随分と間があいたが、連載『2018’カトカラ元年』シリーズの再開である。
何でこんなに開いたのかと云うと、日本では未知のカトカラ、Catocala naganoi mahoroba マホロバキシタバ(註1)を目っけてしまったからである。
この発見にはカバフキシタバが深く関わっており、それでマホロバの記載が終わるまでは下手な事は書けなくなった。奈良県で見つけたカバフとマホロバの生息地が同一である事から、情報漏れを防ぐために自粛したのである。

と云うワケで、今回は前回のカバフキシタバの続編でありんす。
(-o-;)ん~、何かちょいややこしくなってるかもなあ。いっそ各カトカラの続編は『2019年’ カトカラ二年生』というタイトルに変えてやろうか…。でもそれはそれでゴチャゴチャになって、ややこしくなりそうだ。それに前に書いた続編シリーズのタイトルも全部書き直さないといけないしさ。面倒くさいし、とりあえずは暫くはこのまま2018年版と2019年版を交互に書いていくスタイルでいこう。

前半部は月刊むしの2019年10月号掲載の『マホロバキシタバ発見記』の文章が下敷きになっています。
もちろん「てにをは」を含めて微妙には変えるつもり。というか、遠慮してマイルドになったところも書き直すつもりの増補改訂版になろうかと思う。
完成すれば、たぶん時間が経ってる分、コチラの方が文章はコナれていると思う。ヒマな人は微妙な違いを探してね。とはいえ、書いてるうちに大幅に改変するかもしんないけど。

前置きが長くなった。取り敢えずタイトルを新たにつけて、前へと話を進めよう。

 
『リビドー全開❗逆襲のモラセス』

 
2018年、8月の終わり頃だったと思う。
カミキリムシ・ゴミムシダマシの研究で高名な秋田勝己さんが、Facebookに奈良県でのゴミムシダマシ探査の折りに、たまたまカバフキシタバを見つけたと書いておられた。
その年にカトカラ採りを始めたばかりの自分は、既に京都でカバフは得てはいたものの、来年はもっと近くで楽に採りたいと思った。それで、秋田さんとは殆んど面識はないものの、勇気を出してメッセンジャーで連絡をとった。
秋田さんは気軽に応対して下さり、場所は若草山近辺の昆虫採集禁止区域外だとお教え戴いた。また食樹のカマツカは奈良公園や柳生街道の入口付近、白毫寺周辺にもある旨のコメントを添えて下された。

ところで、奈良県にカバフの記録ってあったっけ❓
ネットで調べてみる。てっとり早いのは『ギャラリー カトカラ全集』だ。このサイトには各都道府県別のカトカラの記録の有無が表にされているのだ。
それによると、奈良県にカバフの記録は無いようだ(註2)。こういう誰も採った事が無い的なものは大好物だ。それで、俄然やる気が出た。根が単純なので、だったらオラが最初に採ったろやないけー❗となるのである。

その年の秋遅くには奈良公園へ行き、若草山、白毫寺と歩き、幼虫の食樹であるカマツカと樹液の出ていそうな木を探しておいた。

 
【カマツカ】
(於 奈良公園)

 
この画像を『コレがカマツカで、よござんすか❓』と秋田さんに送ったところ、正解との御墨付きを戴いた。
因みに月刊むしの原稿で、秋田さんが「こやつ、カマツカも知らんとカバフを探しとんのか❓イモかよ。」的なニュアンスの事を書かれていたが、まあその通りかな。
だってカトカラ1年生だし、飼育なんて蝶さえ殆んどしないから、植物には疎い。ましてや蛾の食樹だ。んなもん、知るワケないもーん<(`^´)>
そんなオイラだが、引きだけは強くて日本でも海外でも何か知らんけど珍しい蝶や甲虫だのを採ってきてしまう。海外なんかは現地にいる虫の事をろくに下調べもせず出掛けて行って、ガイドも雇わないというテキトー振りでだ。だから、周りに冷ややかな目で見られ、『おまえ、虫採りナメとんのか。』と御叱りを受けるのである。
まあ、皆さんが怒るのも解るけど、採れるんだから仕方がないのさ( ̄▽ ̄)ゞ。そないに叱られてもなあ…。
 
そんなオイラだが、翌年は秋田さんのお陰もあって、万を持して始動。

2019年 6月25日。

先ずは若草山近辺を攻める。しかし秋田さんに教えて戴いていた樹液の出てる木はゴッキーてんこ盛り。
Σ( ̄ロ ̄lll)キショっ、皮膚が粟立ち、おぞける。
一瞬、意地の悪い秋田さんのことだから、もしかしてワザとゴッキーだらけの木を教えたんじゃないかと疑う。
しかし、悪魔のような秋田さんといえども、たぶんそこまで手の込んだことはすまい。
そう思うが、一応『(=`ェ´=)秋田の野郎~。』と呟いとく(秋田さん、ゴメンナサイ)。

霧吹きで糖蜜を撒き散らすも、全然ダメ。小汚いクソ蛾どもと、ただキシタバ(パタラキシタバ)しか来ない。カバフが飛んで来る気配というものがまるでないのだ。
この気配を感じる感じないかは、謂わば勘みたいなものだ。言葉にするのは難しいが、その勘というものを自分は大切にしている。今回もそれに従おう。ダメなもんはダメ。決断は早い方がいい。チラッと若草山からの夜景を見て、午後9時過ぎには諦めて白毫寺へと向かった。

 

 
周囲は原始の森だ。真っ暗闇の中、長い坂道をひたすら下る。忍耐である。
勿論、人っ子一人いない。闇の奥で、何かあずかり知らぬ者どもが蠢いていそうな気がしてくる。マジで、こういう古い森は精霊とかがいそうだ。でも精霊が皆が皆、良い精霊だとは限らない。中には邪悪な精霊もいるかもしれない。でもって、ゴブリン、ゴブリン。小人で、人相がゼッテー悪いんだな。そうに決まってる。そいでもって滑舌が悪くって、何言ってるか解らないのだ。
一人で暗闇の中を歩いていると、色んな思いが去来して、どんどん心が磨り減ってゆく。コレが結構キツイ。ボディーブロウのように心身を次第に蝕んでゆくのだ。「こんなとこで、ワシ何やっとんねん❓」である。
冷静に考えれば、やってる事が一般ピーポーから見ると狂人の域だ。フツーの人は怖すぎて絶対に夜の森を一人でなんて歩き回りゃしません。そんなの、アタマおかしい人か犯罪者くらいだ。
でも、それに耐え忍ばねば、甘い果実は得られない。虫採りとは、勘と忍耐である。

白毫寺に着いたのは午後10時くらいだったと思う。
目星をつけていた樹液の出ているクヌギの木を見ると、結構カトカラが集まっている。
しかしカバフの姿はない。取り敢えず周辺の木に糖蜜を吹きかけてやれと、大きめの木に近づいた時だった。
高さ約3m、懐中電灯の灯りの端、右上方に何かのシルエットが見えたような気がした。そっと灯りをそちらへ持ってゆく。

そこには、あの特徴的な姿があった。
だが、脳が現実なのか幻なのか直ぐには判断てきなくて、頭の中で時間が止まる。ややあってから、目と脳の認識が漸く一つに重なりあった。
間違いない、カバフキシタバだっΣ( ̄ロ ̄lll)❗
瞬間フリーズ。ゴーゴンかメデューサの凶眼に射すくめられたかのように、その場で石化する。体が動かない。
だからといって、いつまでも🐍ヘビ女の呪縛に雁字搦めに囚われているワケにはゆかぬ。懸命に心を鎮め、ゆっくりと後ずさりする。7、8mほど離れてから反転。音を立てないようにして忍者の如く爪先立ちで走る。心は高揚感で乱れに乱れている。
30mほど後ろの荷物が置いてある場所まで戻った。離れたことにより、少し心を落ち着かせることが出来た。
しかし、ここからが仕切りなおしの本当の勝負だ。大きく一回、深呼吸をして気を整える。
焦ったら負けだ。逸る心を抑えて網を組み立てる。
Σ(T▽T;)ヒッ、でも手が覚束なくてネジに真っ直ぐ入れれな━━い。落ち着こう、俺。ここで焦ってどうする。ネジがバカになったら元も子もないではないか。もう一回深呼吸する。だいたい立ってやってるからダメなんだ。しゃがんでやろう。
それで何とか装着することができた。すっくと立ち上がる。もう大丈夫だ。侍魂がフツフツと甦ってくる。
いよいよ、ここからが本チャンの闘いが始まるかと思うと、背中がブルッとくる。武者震いってヤツだ。このギリギリ感、溜まんねえや。これがあるから虫採りはやめられない。我が愛刀、蝶次郎で必ずや斬る❗
軽く息を吐き、ゆっくりと一歩を踏み出す。落葉がカサカサと乾いた音をたてる。静かな夜の森に、その音が奇妙に誇張されて響く。彼奴を刺激しないように、懐中電灯の光を直接当てずに慎重に近づいてゆく。

この木だったな。
歩みをやめ、ゆっくりと懐中電灯を止まっていた辺りにズラしていく。再び緊張感が高まる。
ピピピピピピッ……、ロックオーン❗
ほっ( ̄▽ ̄)=3、逃げずにまだいる。よっしゃ、ゲーム続行だ。
けれども刹那、どう網を振るか迷う。ダメだ。その一瞬の躊躇が負の連鎖を呼び起こしかねない。自念する。迷いは捨てろ。何も考えるな。メンタルの弱い奴には幸運など降りてきはしない。
蝶次郎の柄を握り締める。そして次の瞬間、息を詰め、大胆に幹をバチコーン💥❗思いっきしブチ叩く。
秘技✴嵐流狼牙斬鉄剣❗❗

手応えはあった。
空中で網を素早く捻り、地べたへと持ってゆく。
どうだ❓ 波立つ心で、慌てて懐中電灯を照らす。
そこには、シッカリ網の底に収まっている彼奴の姿があった。しかも暴れる事なく大人しく静止している。安堵がさざ波のように拡がってゆく。
やっぱ俺様の読みが当たったなと思いつつ、半ば勝利に酔った気分で近づき、ぞんざいに網に毒瓶を差し込んだ。まあまあ天才をナメんなよ(`◇´)、狙った獲物はハズさないのさ。

しかし、取り込むすんでのところで物凄いスピードで急に動き出して、毒瓶の横をすり抜けた。
(|| ゜Д゜)ゲゲッ、えっ、えっ、マジ❓
ヤバいと思ったのも束の間、パタパタパタ~。網から抜け出して飛んでゆくのがチラッと見えた。
嘘でしょ❓嘘であってほしい。慌てて周りを懐中電灯で照らすも、その姿は忽然とその場から消えていた。
(;゜∇゜)嘘やん、逃げよった…。ファラオの彫像の如く呆然とその場に立ち尽くす。
(-“”-;)やっちまったな…。大ボーンヘッドである。あんま普段はこういうミスはしないので、ドッと落ち込み、「何でやねん…。」と闇の中で独り言(ご)ちる。己の詰めの甘さに心の中が急速にドス黒い後悔で染まってゆく。

結局、その日は明け方まで粘ったが、待てど暮らせどカバフは二度と戻っては来なかった。ファラオの呪いである。

しかし、その時はまだこのボーンヘッドが後のマホロバキシタバの発見に繋がろうとは遥か1万光年、露ほども想像だにしていなかった。
運命とは数奇なものである。ちょっとしたズレが、その後の結果を大きく左右する。人生は紙一重とはよく言ったものである。おそらくこの時、ちゃんとカバフをゲット出来ていたならば、今シーズン再びこの地を訪れる事は無かっただろう。そしてニューのカトカラを見つけるという幸運と栄誉も他の誰かの手に渡っていたに違いない。

閑話休題。
でも、この時点では後にそんな大発見に至るとは知らないという前提で話を先に進めまする。

 
2019年 7月2日。

天気や個人的な用事もあり、あれから約1週間のインターバルがあいてしまった。

この日は奈良にリベンジをしに行く事も考えだが、その前に去年カバフを採った京都市左京区へ行くことにした。

  
【カバフキシタバ Catocala mirifica ♂ 】

(2018.7.15 京都市左京区)

 
去年、人為的にボロにしてしまった1♂のみしか採れなかったとはいえ、先ずは実積のある場所で確実におさえておきたかったからである。
ここなら寄ってくる樹液も知っているから、楽勝である。♂♀の完品が採れれば、気分はだいぶと楽になる。その後でジックリ奈良を攻めればいい。

 
今年もまだ有りまんな、ビビらす看板。

 

 
去年の、あの真っ暗闇の世界と謎の動物の咆哮を思い出したよ。超ビビりまくったんだよなあ…。マジあん時は恐かったもんなあ。怖すぎて逆ギレしてたっけ…。
しかし、あれからコチラもそれなりに闇の経験を積んできている。今回は二度めの来訪だし、あの時の恐怖感と比べれば、どって事ない。鬼採りでイテこましてくれるわ。今日こそ、まあまあ天才の実力をとくと見せてくれようぞ(=`ェ´=)

去年、カバフの食樹であるカマツカかなと思っていた木はウワミズザクラだった。

 

 
木肌の感じからしても間違いないかと思われる。
さっきも言ったけど、一年も経てばアチキだってそれなりに進化しているんである。植物の知識も少しは増えているのだ。
だが、その後歩き回るもカマツカの木が一つも見つからない。嫌な予感が、サッと撫でるようにして走る。もしかして、個体数が元々少ない場所だったりして…。

夜の帳が降りると、やっぱ真っ暗になった。

 

 
でも今年は蛍が沢山いた。
去年は一つも見なかったのに、不思議だ。
だから最初見たときは、🔥鬼火かと思って腰くだけになりそうになっただよ。京都って、妖怪だの幽霊だのの魑魅魍魎が跳梁跋扈してそうじゃん。そういうイメージがある。それに、この辺は昔は刑場とか墓場だったと聞いたことが有るような気がしてきた。だから、マジで出たなと思った。
稀代の怖がり屋としては、熊よか鬼火の方が余っぽど怖いんである。もちろん熊も怖いけど、まだ現実の存在だから対処のしようもある。マウントされたとしても、脇に息が出来ない程の強烈なフックをおみまいしてやることだって出来る。けれど、お化けだったら対処のしようがない。いらぬ想像力が増幅して、恐怖が異様に膨れ上がってのお地蔵さんだ。動けるか、ボケッ❗急に得体の知れないものがボオーッと闇から浮き出てきて、口から緑色の液をジャーと吐きでもしたら、どうするのだ❓オチンチン、激りんこメリ込むわい。この世のものならざる者は、あきまへーん(T▽T)

蛍は源氏も平家もいた。川沿いにはゲンジボタル、真ん中の水田にはヘイケボタルと、棲み分けしていて、時々その境界線で両者が絡まって飛ぶ。道ならぬ恋。ちょっとした幻想的風景だ。
それで、心にフッと上手い具合に隙間が空き、何だか心が休まってくる。このリラックスした気分で、カバフをジャンジャン採りまくるけんね。

 

 
(-o-;)……。
夜が明けた。

嫌な予感が当たってしまった…。
夜通し探し回り、明け方まで粘ったのにも拘わらず、1頭たりとも見ることすらできなかった。まさかの返り討ち、又しても大惨敗を喫してしまう。
見もせんもんは、如何にワシでも採れん。やはり、此処は個体数が少ないのかもしれない(註3)

結局、採れたのはコカダキシタバと、まあまあ渋いんでねえのと思って採った、この蛾くらいだった(註4)。

 

 
けど、いまだに展翅すらしていない。
如何せん渋過ぎるのだ。

何にせよ、(◎-◎;)ショックで身も心もボロボロじゃよ。徒労感、半端ない。

やがて、朝日が昇ってきた。
無駄に眩しい。
日の光に照射されたヴァンパイアの如く、いっそ、その場で灰になってしまいたかった。

やはりカバフ採りは、甘くないのか…。
珍品と言われたる所以が解ったよ。

                     つづく

 
追伸
スランプで、思うように筆が進まない。
気に入らなくて何度書き直したことか…。
そう云う時は必要以上に長くなるし、気持ち的にもシンドイ。なので一旦前編で切ることにした。

そういえば思い出した。朝まで粘ったのは、今年はこの連続の二回だけだった。
両日ともに、あまりにも退屈過ぎて、睡魔と戦いながらずっと一人シリトリをやってたんだよね。何処にも到達しない、未来永劫救われることのない無益なシリトリだ。
アレは今思い出しても辛かった。そりゃ、ドラキュラみたく灰になりたくもなるよ。

 
(註1)マホロバキシタバ

 
新種になりかけた時期もあったが、結局は台湾のみに分布が知られていた Catocala naganoi の新亜種におさまった。
マホロバに関しては、またいつか書く機会はあろうが、まだカトカラ No.5なので、まだまだ先のことになりそうだ。

(註2)奈良県にカバフの記録は無いようだ
「大切にしたい奈良県の野生動植物2016 改訂版」には、カバフキシタバが絶滅危惧種としてリストアップされている。記録地の詳細は書かれていないが、大阪と奈良の県境、信貴山辺りでも採れているみたいだし、記録は間違いではないだろう。
「ギャラリー カトカラ全集」の都道府県別のカトカラ記録表は参考にすべきものではあるが、それをそのまま鵜呑みにしてはならないと思う。例えばフシキキシタバは奈良県から記録が無いとされているが、実際にはアホほどいるからね。

(註3)個体数が少ないのかもしれない
もしかしたら、まだ未発生でフライングだった可能性はある。去年の採集日よりも2週間くらい早い出陣だったし、今年は蝶の発生が1週間以上遅れていたようだからだ。それからすると、蛾の発生も遅れていた可能性は充分ある。
とはいえ、今のところ来年リベンジしに行くつもりはない。ごっつ真っ暗なとこだし、謎の動物の咆哮も怖いので、行くとしても来年はもう一人では行かないと思う。

(註4)この蛾くらいだった
たぶん、Phalera minor クロツマキシャチホコという蛾かと思われる。
あまり見かけない蛾だが、幼虫の食樹はブナ科コナラ属のウバメガシ、クヌギ、コナラ、アラカシとなってるから、そんなに珍しくはなさそうだ。