『西へ西へ、南へ南へ』第8話

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蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-09 21:07:59

段々、ライヴ配信ではおっつかなくなってきた(当時の原文のまま)。

   ー捕虫網の円光ー
 『西へ西へ、南へ南へ』

(第六番札所・🐍スネーク・パニック)

2011年 9月13日

クーラー無しでは、矢張り夜を越えられなかった。
あまりの寝苦しさに起きた。
コイン投入。温度を激下げにしてやった。
これで切れても、しばらくはもつだろう。

午前7時にアラームが鳴った。
シコシコと文章を書く。
8時に半分やっつけで書き終わる。
用意をして、レンタルバイク屋に電話した。
9時にオープンらしいので、行く旨を伝えて、トラップ作りを開始する。
昨日、帰りにスーパーでバナナと焼酎は購入済みだ。

目星をつけていたサンドイッチ屋で、こだわりカツサンドと玉子たっぷりサンドを買い、レンタルバイク屋に行く。

9時15分。
危ないところだった。焦れて帰るオババを外ですんでのところで捕まえた。
あまりにサンドウイッチがうまそうなので、その場(喫茶室)で半分食ったのが、まずかったね。

24時間 1200円。安っすぅ❗
取り敢えず、2日分の料金を払った。

借りたメットが髑髏でカッコイイ。
オババに不良宣言をして出発した。
長竿B・Jを袈裟懸けして走っているので、気分は佐々木小次郎。サムライみたいでカッチョいい。

やっぱり、原付といえどもバイクは好きだ。運転していると、自然と笑みがこぼれてくる。

今日の狙いは、アカボシ、アマミカラスそれぞれの♀である。基本的にどんな蝶でも♀を採るのは難しい。偶然に頼らざるおえない場合も多い。

【アカボシゴマダラ】

【アマミカラスアゲハ】

北に進路を取る。
和光ダメ、仲勝ダメ、本茶峠ダメ、赤尾木もダメ。
調べておいた産地の何処にもターゲットの姿はない。
不安が走るが、一応♂はそれぞれ完品をGETしているので、焦燥感はさしてない。偵察と思えばよい。バイクを走らせているだけで、今は気分爽快なのだ。
とにかく、蒲生崎を目指そう。

半島に入ると、左手に海が見え始めた。
やっぱり奄美の海は群を抜いて美しい。
ブルーが層になっている。
快適なドライブになった。

手前の手花部で、アマミカラスが目に入った。
バイクを急遽停める。
有名産地どころでは、殆ど姿さえ見なかったのに案外いる。
先日他界された、「閻魔(えんま)」とも称された蝶採り名人・田中さん譲りの赤ネットは、ここ奄美でも絶大の効力だ。アゲハたちが、ザンザンに寄ってくる。
立て続けに3つ採る。空中で綺麗に仕とめるのは気持ちがいい。

2時には出ようと思っていた矢先、横を通過しようとした白い乗用車が急制動で止まった。

事態にチヨットだけ緊張した。
降りてきたのは小太りの中年男だった。
明らかに虫屋の匂いがした。
話しかけられる。
だが、滑舌が悪くて半部以上は何を言ってるのか聞き取れない。何とか聞き取れたお名前は、谷村さん。奄美在住の虫採りのプロらしい。
いきなり、アカボシの♀を千円でどうだと言われた。
基本的に金を出して蝶を買う趣味はないから断った(業界では、蝶を買うのは一般的に普通です)。
勘違いしたのか、笑うくらいに値段がどんどん下がってゆく。
(^。^;)だから、要らないって…。
悪い人ではないが、ちょいイタい人の匂いがした。
アカボシは、採ったのかと訊かれた。
yes。
幾つか?
5つ。
新鮮か?
yes。内、4新鮮。
買うか?
だから、要らないって( ̄ヘ ̄メ)❗❗

まあ、そう害は無かろうと、尋ねられたので電話番号を教えた。
そしたら、急に秘密の場所を教えてやるからついてこいと言い出した。
よくわからないが、ここから近いと言うし、ついてゆく事にする。場所を知っておいて損はなかろう。

あらら、着いたのは完全に民家横の私有地だ。
『バイクを隠せ、網を出すな!』と言われた。
大家が五月蝿(うるさい)らしい。
当たり前だ。君みたいな怪しい奴が勝手に敷地内に入ってきたら、俺だって即座に追い出す。いや、撃ち殺す❗

見ると、アカボシゴマダラの食樹であるリュウキュウエノキ(琉球榎)の立派な木が3本並んでいる。
蛹の脱皮殻も見せられた。すぐ横はミカン畑で、樹液も出ている。たしかに生息条件的には揃ってはいる。

今日は採り尽くしたから、もういないかもと下卑た笑いをして、『このポイントは黙っててね。』と言い残し、彼は程なく去って行った。
こんな面倒な場所教えるか、バーロー(*`Д´)ノ!!

一応、5分いた。
天敵の犬にも吠えられだしたし、長居は無用だろう。不法侵入で通報されたらエライ事だ。
当初の予定通り岬を目指すことにした。

蒲生崎に向かう林道には、いっぱいアマミカラスが飛んでいた。
何だよ、苦労してわざわざ本茶峠まで越えたのに…。ちえっ、拍子抜けだ。
おまけにここのはみんなへなへな、ふわふわ翔びである。楽勝だ。綺麗なものだけを選んで採る。

ゲロッ(;゜∇゜)❗
看板を見つけた。
リアル過ぎる看板だ。
『この辺りは毒蛇(ハブ)が多い。』
って…、モロやん(^_^;)

午後3時にポイントに着いた。
早くもアカボシ2頭がテリトリーを争って追いかけっこをしている。
昨日の場所よりも明らかに敏感で翔ぶのも早いが、止まってくれればそのうち何とかなるだろう。
谷村さんは、蒲生崎なんて今はおらんよと言っていたが、数は結構多い。あんた、ホントにプロかよ❓

だが、食樹が見つからない。
取り敢えず、♀採りの為にパンストに詰めたトラップを良さげな樹にかけて回る。

アカボシゴマダラが快晴の空をバックに滑空する姿は、本当に素晴らしい。
赤が思った以上に鮮烈で、南国の澄んだ青空にスゴくあう。

ジャンジャン、シバいてやった。
全部で16頭。内、♀1頭。
アマミカラス15頭。内♀1頭。

♀は、悲しいことに両方とも新鮮なのに、片方の後翅がザックリと欠けている。多分、鳥にやられたんだろう。

5時半撤退。
帰り道の林道だった。

アギャッ((((;゜Д゜)))❗❗❗
思わず声に出し、悲鳴をあげた。
キキ━━ッ💥❗
急ブレーキをかけ、天然記念物・特産アマミノクロウサギみたいにバイクごと飛び逃げた。
うわっちゃー!Σ(×_×;)❗
ホンマもんのハブデービル(註1)やん❗❗
Σ( ̄ロ ̄lll)凍りついたが、恐る恐る振り向くと既に轢死している。
それにしても、想像以上にデカイ。
ブルッときた。武者震い。
ヤバすぎ。充分、大蛇でオロチ様だ。
しっかり、あの看板のすぐ近くだった。
( ̄▽ ̄;)……あう。
ヘ(・・ヘ)。。。。。。退散。

長く伸びた影を従えて走る。
今度は右手に海が見える。

ほぼフルスロットルで飛ばす。
何人(なんぴと)たりとも抜かせない❗
寧ろ、歩道を使って車も何もかんも牛蒡抜きじゃい!!
乗れてるワシをナメとったらあかんど、ワレ━━。
行きの約半分の55分で、宿まで帰ってきた。

部屋で携帯を見たら、谷村さんから着信が3回もあった。
留守電を聞いてみたら、グズグズ、ボソボソ、グダグタ…。何を言ってるのか全く理解不能。おまけに異常なまでに長いロングメッセージ。
やっぱ、この人イタい。

今日も脇田丸へ。
座って直ぐに谷村さんから電話があった。
明日は、どうするか?と訊かれたので、今日教えて貰ったとこに行くと適当に答えたら、ぼく午前中に行くから午後に行ってと言われた。
アホか、あんたの後だと意味無いじゃん❗ 誰が行くかっ、ボケ(# ̄З ̄)‼‼
長くなりそうだったので、半ば強引に電話を切った。下手に付き合ってるとエンドレス必至だ。

今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)を頼む。
やっぱり絶品❗❗
他にはアカフエダイの刺身(あっさりしていて、上品)。

島の野生の猪(これは❌、固くて血の味がする。処理の仕方が悪いんだろう。)。等々…。あと記憶なし。

また痛飲。
お代は、1270円。
(;゜0゜)何じゃそりゃ⁉の金額。

今日も月が冴えざえとして、美しい。

                 つづく

追伸
 久々の、捕虫網の円光『西へ西へ、南へ南へ』。
今回はあまり文章に手を入れずに済んだ。だいたいにおいてテンポのいい文章はなおさなくて済む。というか、下手に入れると悪くなるから手を入れにくいのだ。

【註1】ハブデービルやん!
ハブデービルとは、沖縄限定で放映されていたローカルヒーロー番組『琉神マブヤー』に出てくる敵方の首領のこと。結構ボケをカマすし、お茶目なところがあって愛すべき怪人。
何でハブデービルなんかが出てきたのかというと、この年の夏には沖縄本島に蝶採りに行っていた。その時にマブヤーを初めて知って、完全にハマったのである。車を運転中にラジオをかけてたんだけど、よくこのマブヤーの主題歌が流れていて、完璧に覚えてしまったのだ。
だから影響を受けて、個人向けに配信していたその時の旅行記(ブログにはアップされてない幻の沖縄・真夏編『ニライカナイの女王』)には、ふんだんにマブヤーネタが散りばめられていた。って云うか、歌の歌詞は出てくるし、沖縄の方言てんこ盛りの捕虫網の円光だったよなあ…。かなりハチャメチャで面白かった記憶があるから、探して読もうっと。
とにかくそんなかんなで、この時もまだ自分の中では琉神マブヤーブームが続いていたのだろう。

🎵琉神、琉神マブヤー
🎵正義のヒーロー、マブヤー AH~
🎵チャッチャーチャララッチャーチャーチャー
🎵チャッチャーチャララッチャーチャーチャー
🎵ウチナーがあぶない デージ超やばい
🎵悪のマジムンやあ~ってくるぅ~
(でーじなとーん❗)
🎵ティーダの力で平和を守るんだ
🎵アチココーのハートで勝利をつかめー

あは(´▽`;)ゞ、全然まだ歌えるやん❗

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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