『西へ西へ、南へ南へ』14 迷走男と迷走台風

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蝶に魅せられた旅人アーカイブス

     ー捕虫網の円光ー
   『西へ西へ、南へ南へ』

   (第十番札所・迷走男と迷走台風)

2011年 9月17日

起きたら、意外と天気が良い。風もない。
まさか、台風が忽然と消えたりなんかしたりして…。
どっちでもいい。とにかくこの晴れ間を逃すわけにはいかない。

8時半に慌てて出て、らんかん山の登山口に行った。
入口横の民家に大きなリュウキュウエノキがある。 ここがアカボシゴマダラの発生地と睨んだ。ということは、♀が卵を産みにくるんじゃないかと予測したのだ。

【アカボシゴマダラ奄美大島亜種】

しかし、陽が射しても♀は現れない。
9時半まで待ったが、姿はない。
仕方なく上に様子を見に行った。

♂も翔んでいない。
だが、テリトリーを張る場所の松の枝に1頭が静かに止まっているのが見えた。アカボシの♂だ。
この蝶、何故か松が好きな変わり種だ。普通の蝶は、松にはあまり止まりたがらない。そもそも、針葉樹に止まる蝶は少ないのだ。
記憶にあるのは、杉や桧にわりと停まるギフチョウとヒサマツミドリシジミ。あとはハイマツに止まるタカネヒカゲ等の高山蝶くらいだろう。

【タカネヒカゲ】

網を近づけたら、めんどくさそうに他の枝に移った。もう一度近づけたら、再びめんどくさそうに梢の向こうに消えていった。
春と夏とではどうか分からないが、この蝶、やっぱり日中は不活発なんじゃないかと思う。昼間に翔んでいるのを未だ見たことがない。

10時過ぎ、どんどん晴れ間が拡がってきた。
昨日の天気予報では完全に雨だったから、この先まったく天候が読めないが、駄目元でチャレンジしようと思った。
一度、部屋に帰り、レンタルバイク屋に電話して借りる旨を伝えた。

昨日、酔っ払って買った半額ぶっかけウドンを急いでカッ込み、10時半にバイク屋へ。

最初はアカボシの個体数が一番多い蒲生崎に行く予定をしていたが、スミナガシ、イワカワシジミも狙える南東部の西仲間、三太郎峠に変更することにした。
出来れば行った所のない違う場所の方がいい。未知なる場所は新鮮だから楽しい。ようするに飽き性なのだ。

58号線は、海岸線みたいにアップダウンがないから楽だ。そのかわりにトンネルが多い。涼しくて良いのだが、3〜4㎞と長いトンネルばかりで、案外疲れる。それにトンネルって、ちよっと気持ち悪い。

西田、小湊、西仲間と回るが成果はあがらない。
せめてイカワカワシジミの幼虫でもとクチナシの木を見て回るが、実がほとんど無い。
よく見ると誰かが採集に入ったような形跡があり、所々枝先がカットされている。有望なクチナシの実を持って帰ったのだろう。これじゃイワカワシジミの幼虫は全く期待できない。

三太郎峠にも行った。
だが、嫌な予感が的中して、崖崩れで通行止めだった。

さらに南の湯湾岳まで行ってしまうことも考えたが、名瀬まで帰ってくるには遠すぎる。
それに一応、台風が向かって来ているのだ。いつ天候が豹変し、荒れ狂いだすとも限らない。南部は山ばっかで避難できる場所も少ないのだ。こないだみたいに雨風に晒され続けて走る苦難は避けたい。

思案の末、とっちゃん坊やの谷村さんがぼわっと教えてくれた微妙なポイントに行くことにした。
名瀬からは比較的に近いので、最悪の事態は免れるだろう。雨宿りできる場所もあるし、天候が急変したとしても被害は最小限に食い止められる筈だ。

午後3時。
勘で林道を上がって行った。
尾根近くまで上がってきたら、( ̄□ ̄;)❗
ここじゃないか?という環境に出た。
と同時に黒い影がよぎった。
スミナガシだ❗

伊達にスミナガシを採ってきていない。生息環境を読む力は、だいぶ上がっている。
更に上を見上げると、アカボシも翔んでいるではないか。
谷村さん、アカボシがいるなんて一言も言ってなかっぞー。(# ̄З ̄)あんにゃろー。

きっと、あんまり教えたくなかったんだろう。
だから、曖昧にしかポイントを教えなかったんだろうなあ…。
フンッ(=`ェ´=)、見つけられるわけないと思っていたようだが、ところがドッコイ、まあまあ天才をなめて貰っては困るのだよ( ̄^ ̄)V

周りをみると、吊り下げ型のフルーツ・トラップもあった。ここに間違いない。

スミナガシは枯れ枝の真ん中に止まっている。
アカボシもかなり高い所を滑空している。どちらも網が届きそうにない。

一応、トラップを幾つか掛けて廻り、そそくさとその場を後にした。もっと上に良い場所がある筈だ。

読み通り、少し開けた切通しでスミナガシたちが追っかけっこをしていた。
楽勝だヽ(^。^)ノ

だが、なかなか止まってくれない。
おまけに敏感だ。本州なら正面から被せればイージーなのだが、ここでは網を被せる前に気付いて翔んでいってしまう。
赤い網が悪いのかと思い、緑に付け替えるが、結果は同じ。
止まったら、素早く横振りでいくしかない。
何度か外した。蚊にいっぱい咬まれたし、(#`皿´)イライラしてくる。

いいかげん怒りに🔥火が入った。
翔ぶ軌道をあらかじめ予測すりゃいいんだろ、ボケがっ( ̄ヘ ̄メ)。空中で仕留めたるわい❗

んなろー、小癪なっ💥❗❗
気合いを入れたら、一発で決まった。
怒った方が採れるって、どゆこと❓でも、そっちの方が案外成績良かったりするんだよねー( ̄∇ ̄*)ゞ
結局のところ、原動力は喜怒哀楽の怒なのだ。

擦れ、欠け、ボロが3つ。綺麗なのが2つ。計5頭採れた。
だが、一昨日のよりも此処のはみんな小さい(註1)。本州の春型と同じくらいだ。
でも、一つかなり蒼いのが採れたから嬉しい。

アカボシも別なもっとイージーな場所を見つけて、駆け込みで2♂捕らえた。
やっぱり、3時から5時というのが♂の占有活動の時間帯のようだ。

山を降りて、道路沿いの回転寿司屋(註2)に行った。
どうしても、寿司が食いたくなったのだ。

だが、失敗。
こんなところで美味い寿司が食えるわけがない。行くなら、ちゃんとした寿司屋に行くべきだった。

(@_@)
飲酒運転で帰る。

結局、軽い夕立があったが、ほぼ晴れの一日だった。
台風どこ?

                   つづく

追伸
えー、今回は四番だっけ?五番札所だっけ?かに続き、アメブロでは抜けてた回でした。
色々理由はあるのだが、多分当時はやらされてた感があったのだろう。共同経営の店の為のブログだったのだ。

(註1)一昨日のより小さい…。
部屋に帰ってからようやく気づいたのだが、一昨日に採れたのは♀でした。

(註2)奄美大島の回転寿司屋
当時は、多分ここが島唯一の回転寿司屋だったのではないかと思う。地魚は全然無くて、ヤケクソのようにマグロばっか食ってやった。
でも、普通のマグロ。せめて近代マグロなら、まだマシだったんだけど…。単なる冷凍マグロでおました。

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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