『西へ西へ、南へ南へ』15 すべてはミックスジュースのように曖昧になってゆく

Pocket

 
ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-22 20:16:58

     

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

(第十一番札所・すべては、ミックスジュースのように曖昧になってゆく)

 
2011年 9月18日

旅に出て10日が過ぎた。
時間の感覚が無くなりつつある。
いつ帰るとも知れないと、益々自分の輪郭が形を失い、朧(おぼ)ろになってゆく。
今日は何曜日だっけ❓

いつの間にか、また真っ黒になっている。もはや土人だね。

朝6時に起き、昨日のスミナガシ・谷村ポイントに行った。トラップの見廻りの為だ。
しかし、スミナガシもアカボシもいない。ルリタテハが来ていたが、完全に無視。
今回、トラップが全く役に立っていない。
アカボシは6月以外はトラップにほとんど来ないと聞いていたが、やっぱりそうなのか…。

9時に諦め、帰って支度し直した。
台風なので先は読めない。読めないが前に進む。
ずぶ濡れはもう経験済みだ。どうとでもなれだ。契約を延長して、今日もバイクを駆ることにした。
止まってたまるか❗失速しない為には駆け続けるしかない。
男は蒲生崎にバイクのフェンダーを向けた。

アカボシもアマミカラスも個体数はここが一番多い。あれだけ♂がいるんだから、♀だって同数いる筈だ。
完品のレッドスター・レディーを何としても手中にするのだ。

天気は今日もいつしか快晴。
台風男ではあるが、やっぱり晴れ男なのだ。
取り敢えず、谷村さんに教えて貰った民家横のポイントへ。
ミカンの木の樹液に1頭ボロ♂が来ていたが、リリースしてやる。以降、この個体を計3回も掴まえてしまう。
矢張り父っちゃん坊や谷村氏に一網打尽されてしまったか…。
エノキの木に蛹の脱皮殻が3つほどあったので、蛹を探してみたが発見出来なかった。

集落の更に奥を目指した。
コーナーを曲がったら、突然眼下に青い海と白いビーチが飛び込んできた。
夢のような美しいビーチだ。
日本じゃないみたい。
奄美の海は、この条件下でもこれだけ美しいんだからスゴい。

蒲生崎には午後1時に着いた。
相変わらずアマミカラスが一杯翔んでいるが、ことごとく♂だ。翅に光が真上から当たるとキラキラ青光りして宝石みたいに美しい。

1時半、真っ青な空をバックに大きなアカボシが真上を優雅に通過して行った。
デカかった…。多分♀だろう。
必死に周囲を探してみたが、結局見つからなかった。

2時くらいから風が強くなった。
雲がビュンビュン通過してゆく。
風の音が不気味である。人を不安にさせる音だ。

2時半、1頭だけアカボシがテリトリーに翔んできた。しかし、単発であった。
本格的に翔びだしたのは、やはり3時からだった。これで昼間は基本的に飛ばないという事が決定的になった。
それにしてもこの蝶、風が強くても構わず飛んでいる。雨さえ降らなければいいようだ。それよか、昼間飛べよなー(# ̄З ̄)
近縁のゴマダラチョウは昼間でもジャンジャン翔んでるぞ。どっちかというと、やっぱり性格はオオムラサキ的だね。

14、5頭、ネットインしたが、半分はリリースした。奄美に来て約1週間、段々ボロが増えてきた。

4時過ぎ。移動しようとしたら、アマカラの♀らしき影がカラスザンショウの木に翔んできた。葉っぱに止まり、お尻を曲げている。産卵だ。完品のようだ。
ごめん、悪いがネットイン。
一部、スリットが入っているが、今迄で一番綺麗な♀だ。

だが、あまり感動はない。
アマカラは♂の方が綺麗だと思う。

4時20分。それで出発が遅れた。
谷村ポイントに一縷の望みを賭けて行ってみたが、既に陽が陰ってしまい、ジ・エンド。
本日も彼女に袖にされた。
レディーは、いったい何処に行けばいるの?(T_T)

一日回転寿司に浮気したが、今日も脇田丸へ。

本日のチャレンジ・メニュー。

【イラブチャー(アオブダイ)の唐揚げ(390円)】

巨大なエビ天みたいになっとりまんなあ。
一応、沖縄辺りでは味が良いとされ、高級魚だったんじゃないかな。でもトロピカルブルーの魚だから、本土の人間にはかなり引く見てくれだ。

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

沖縄や八重山で何度か刺身で食ったことはあるが、唐揚げは初めてだ。

皮に弾力があって美味い。
が、ハリセンボンちゃん(アバス)には敵わない。
それにしてもこの店、揚げ方が上手いよなあ。毎回感心する。外はカラッと、中はジューシーなのだ。

グルクン(タカサゴ)の塩焼き(390円)。
沖縄だけじゃなく、奄美でもグルクンと呼ぶんだね。
大体、唐揚げにすることが多い魚だから、塩焼きは珍しい。多分、初めてだ。
ふむふむ。塩焼きも中々のもの。味は同じ青魚系のアジに近いが、身質はもっと弾力がある。
一匹丸々で、この値段だから嬉しい。

ボトルを飲みきったので、今日はひたすらラガーの中瓶を飲んでいた。
前カノから電話があり、嬉しくて痛飲。へべレケで帰った。
お代は1960円。いつもながらにクソ安い。

今日も沖縄発の船は全便欠航。
沖縄では海が荒くれてんのかなあ…。

酔っぱらいながらの帰り道。
信号機が濡れた舗道に映り、艶やかに滲んでいるのを見てふと思った。
帰れないことは、不幸ではない。
寧(むし)ろ、此処に長くいれる事はしあわせなんだと。

                   つづく
 

【subject】

奄美大島のビーチ。

海が荒れると、海中は濁る。
台風が近づいていると云う状況下で、この美しさはハンパない。
自分は昔ダイビング・インストラクターをやっていて色んな海に潜ってきたが、その中でも奄美地方の海の綺麗さは三本の指に入る。それくらいに美しい。

奄美のビーチ・その2。

ビーチには一家族しか居なかった。
贅沢です。

おまけ画像です。
お洒落にミラーに海を入れようとして失敗。

 
【追伸】
イラブチャーをアオブダイとしましたが、正確にはナンヨウブダイ。アオブダイはパリトキシンという猛毒があり、食用には向かないようだ。
両者は似てるし、ナンヨウブダイをアオブダイと表記する事もあるから、ややこしい。でも、これだけ混同されると、ヤバイじゃないの❓和歌山なんかにもいるそうだから、釣人は注意されたし。結構、死亡例も多いぞー。
あっ、本土の人はこんな派手派手の魚は食わないか?

Pocket

投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください