『西へ西へ、南へ南へ』27 番外編2

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-09-12 23:57:55

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』
        番外編その弐

『第二十一番札所・北へ北へ、そして東へ東へ』

  
2011年 9月26日

 港からバスに乗り、鹿児島中央駅へ。
午前9時過ぎ着。降り積もった火山灰が風に巻き上がり、酷いことになっている。
すぐに目の中がゴロゴロしてくる。鹿児島は美味いもんだらけだが、絶対に住めんね。

ここからまた長い時間潰しが始まる。
大阪行きの夜行バスは夜の7時半くらいなのだ。
一応、確認の為に東口高速バス乗り場へ。

だが、7時台の便が見つからない。
(|| ゜Д゜)焦る。

どうもオカシイと思ってメールを確認したら、あれれ?(;゜゜)、出発は西口になっている。
どうやら定期便じゃないバスみたいだ。昔の彼女にネットで安いチケットを探して貰ったのだが、たぶん最近、規制が緩和されて、色んなバス会社が勃興しておるのだろう。
とにかく確認しておいて正解。知らずに東口で待っていたら、また船の時と同じように乗り遅れて怒髪天のエライコッチャになっているところだった。

映画でも見ようかと思ったが、この時期公開されている話題作が思い浮かばない。取り敢えず映画館に行ってみてから考えよう。

見ると、何本かの映画がかかっている。が、特に観たいモノも無い。強いていえば『モテキ(註1)』くらいか…。まあ、こんな時でもなけりゃ、映画館で『モテキ』なんて見る事は絶対にないだろうな。それもまた一興か…。
でも、邦画ってのもなあ…。こういう時は頭カラッポで観れる映画の方がいいんだよなあ。
何れにせよ、どれも上演時間はまだ先の11時台からだ。それまでは何処かで時間を潰さなくてはならない。

昼飯は、行きの時に食い逃した激安マグロ丼にしようかなと考えた。
でも何となく嫌な予感がして、店前まで確認しに行ってみたら、何と定休日❗
まあ、仕方あるまい。昼に期待値マックス完全マグロ脳で行くよか、遥かにダメージは少ない。
だいち、急に1から何を食うか考えなおさければならないのは結構キツイものだ。一度寿司なり焼肉なりのモードになっている脳を別な食いもんにシフトしなおすのは、案外面倒だったりしません?
食べたかった食いもんをグズグズと引き摺って他の食いもん食ったところで、満足できるワケがないのだ。
まあ、今更また魚ってのもなあ…と思っていたから、諦めはつき易いんだけどね。

帰りに何ぞ土産でも買って帰ろうと思い、土産物売場や地下食品売場をウロウロ物色してたら、試食でお腹一杯になった。
船が港に着く直前にカップ麺のソムタム麺(牛テールスープ麺)も食ったしなあ…(具なしで126円って、高くないかあ?)。

そもそもソムタム麺は、大阪行きのフェリーに乗る予定で購入したものである。不味い食堂めしを食うよかカップ麺の方がまだマシだと思ったのだ。
他に同じものがもう一個と焼そば、味噌らーめんも買ったから計4個もあったが、ルート変更により邪魔になったので、脇田丸のスタッフに帰りしなに配った。多分、オカマで独身の福ちゃんの口に入るであろう。
借りはちよっとだけ返したぜ、福ちゃん。

これだけさつま揚げを数店舗で何種類も食えば、逆にさつま揚げは無しだね。正直、さつま揚げを見るのさえイヤになってきた。
とはいえ、とかく旨そうなもんが多いわ、鹿児島。

郵便局に金をおろしに行ってたら、映画の時間に間に合わなくなった。
まあ、次の回でもいいや。

映画を観るとしたら、J・キャメロン制作総指揮の何たらかんたらとかゆうSF映画か、『モテキ』。
だが、実を言うとジェイムス・キャメロンの映画はキライ。娯楽映画としてはよく出来てはいると思うが、どうも性に合わない。暇潰しには最高の映画だろうけどね(『タイタニック』ファンの人、ゴメンナサイ)。
唯一、好きなのは『ターミネーター1』くらい。第1作のターミネーターは低予算のB級映画だが、傑作なのだ。

「モテキ」、キャメロンのSF映画、どちらを観るにせよ、二つとも次回は1時半から2時の間。
何か気分が乗らないので、場合によってはランチも映画もパスかなあ…。

2時前に異様に腹が減ってきた。
蝶採りをしている間は空腹を感じなかったが、やっぱり普通に過ごしていたら、昼になれば普通に腹が減る。
採集している時は、いつも朝飯を食ってからは晩飯まで何も食わない。集中しているせいか空腹感を感じないのだ。だいたい、飯を食う暇さえも惜しい。そんなヒマがあったら、蝶を追い掛ける。

にしても、晩飯を食う事を考えれば中途半端なんで、ランチはパス。紀伊国屋書店に行って時間を潰すことにした。自分は、本屋があればヒマをもて余すことはない。世の中には、数多(あまた)本がある。興味は尽きないのだ。いくらでも時間なんて潰せる。

あっという間に4時半になった。
映画は、予告編のモニターを観て止めた。モテキに一番牽かれたが、何だかかえって落ち込みそうで止めてしまった。恋なんて長らくしてないのだ。観たら、何かと煩悶するに決まっている。

さてさて、何処で夕めしを食うかだね。
あの寿司屋に行きたいが、二週間後に登場ってのは、恥ずかしすぎだもんなあ…。色々と理由を訊かれるのも面倒だ。
買い食いって手もあるんだよねー。
結構、旨そうな酒の肴を見つけたかんなー。

喫煙所で煙草を吸ってると、今までさしてダメージらしいダメージを感じなかったんだけど、アカボシゴマダラの♀の完品が採れなかった現実がジワジワと浸食してきた。
(-。-;)あ~あだ。

それでも寿司を食うつもりでいたが、空腹に耐えきれず、肉巻きおにぎり(300円)と缶ビールを購入。
ホントは昼間に目をつけていた黒豚爆弾おにぎりを食べたかったんだけど、いつの間にか完売していた。
コイツは魅力的な奴で、黒豚ゴロゴロの混ぜ御飯の中心が半熟玉子なんだよな。食えないとなると、何だか口惜しいが、今さら詮なし。

肉巻きおにぎりは、普通に誰が食っても旨いと言うだろう優等生。驚きは特にない。焼いた肉とご飯を合体させれば、さもありなんという味だ。

一度、お腹に物が入ると、胃袋に火がついた。
次のターゲットを物色し始める。
商店街の赤鶏の唐揚げ屋へ。こちらも昼間に目をつけていたものだ。
唐揚げ5個(350円)、手羽元80円×2本と、298円だった蒸し鶏半身を250円にまけてもらい、ビールを買ってベンチでささやかな旅の終わりの宴をする。

何処からともなく、エレクトーンの優しい演奏が流れてきた。
永かったし、随分と遠くまで来てるんだなあとぼんやりと思う。嗚呼…。

 
 西口に向かう途中で小雨が降りだした。
旅の終わりの雨というのも風情があって悪かない。

西口は東口に比べて、あまり拓けていない。簡単に見つけられるかと思ったが、高速バスのターミナルらしきものは無い。多分、民営の不定期便だから、そもそもバスターミナルは無いのかもしれない。
本当に西口に来るのか不安だったが、7時20分になってようやくバスがやって来た。これで、やっと大阪に帰れる。

だが、車内を確認したら何とトイレがない。ここはラオスかよ?(笑)
普通の高速バスなら1万2千円くらいなのに、6800円と格安だから仕方ないか…。
次のトイレ休憩は2時間後。ビール買ったけど、どうすっべ?

7時半キッカリにバスは動き出した。
これから深夜、大阪に向けてひた走るのだろう。
バスではあるが、これもまた深夜特急だ。

延べ、20日間に及ぶ旅が終わろうとしている。
観覧車のネオンが、雨に滲んでいた。

                  つづく

 
(subject 写真解説)

【註1 映画 モテキ】
原作は久保ミツロウの漫画。
監督 大根仁。主演は森山未來。女優陣は長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子。
興行収入22億と、そこそこヒットしたようだ。

後にテレビ放映を見たが、結構面白かった。
あの時、もし観てたらどんな感情になってたんだろう?或いは昔の彼女たちに電話しまくってたかもしれない。そうしてたら、後々の人生も変わっていたかもしれない。今となっては、どうにもならないけど…。
人生は連綿と続く選択の連続だ。ちよっとした事で、大きく変わるんだなと思う。それを知っていたところで、どうにもならないんだけどね。

【肉巻きおにぎり】
テレビのB級グルメ番組でグランプリをとった宮崎市発祥の肉巻きおにぎりは、この頃全国的にブームになりつつあったと云う記憶がある。
だが、最近はあまり見掛けなくなったなあ…。
調べてみたら、発祥の店『元祖 にくまき本舗』は全国展開したが、この2年後の2013年には倒産したらしい。ブームの怖さというものをまざまざと感じるね。ブームはいつか終わるものなのだ。

【観覧車】
画像は西口ではなく、東口から撮ったもの。

この時、ふと口ずさんだ歌があった。
自分にとって観覧車が出てくる歌といえば、甲斐バンドの『観覧車’82』しかない。
「♪雨の日にふたり 式を挙げた」って歌詞から始まるんだよね。口ずさみながら、色んな思い出が浮かんでは消えていった事を覚えている。

 
 雨の日に二人 式を挙げた
 借り物の上着 友達が縫ったドレス
 指輪と花束 ささやかな誓い
 ただそれだけ でも幸福(しあわせ)だった
 おまえは今 家の前
 椅子にすわり 外を見る
 生きることを呪うよに
 悲しみ宿る目で 夜の果てをみてる

 夕暮れの遊園地 憶えてるか
 おまえと二人 暖かな冬の日
 観覧車に乗り 昇ったとき
 不意に壊れ その場に
 置き去りにされた
 手をのばせば届きそな
 星が降る空の中
 俺はおまえを抱きしめ
 二度と離さないと
 固く心に決めた

 
自分の中では、名曲なんだよなあ…。
1982年って、何してたんだろな?
激しく恋してたのは間違いないけど、細かい出来事は、もはや忘却の彼方だ。
そういえば、来た時に泊まったホテルからもこの観覧車が見えたなあ。行きと帰りとでは、同じ観覧車でも違ったように見えるから不思議だよね。
風景は心の在りようによって、全然違ったものに見えると云う証左かもね。

次回、二回目の最終回。と云うか今度こそホントの最終回です。