台湾の蝶1ヒメフタオチョウ

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去年と今年、台湾で採った蝶を順次紹介してゆく予定の新シリーズです。
でも稀種も含めて予想以上にアレコレ採れちやったので、結構な種類数になった。ゆえに飽き性な性格としては途中で厭きて放り出すかもしれません。計画の途中頓挫は毎度お手のものなのだ。
申し訳ないが、そこんとこ、つとに御理解のほど宜しくお願いしますネ(v^ー°)

いやはや最初から言いワケがましい防御線を張るところをみると、前途多難ですなあ( ̄∇ ̄*)ゞ

さてさて、前置きはこれくらいしておいて、取り敢えず始めてみますか…。おいどん、全然ビジョンが無かばってん。例によっての行き当たりバッタリでいくですたーい。ごっつあんです❗
早くも迷妄意味不明のスタートである。

えー、出来るだけ各回にタイトルをつけようかと思っちょります。
理由は特にあるはワケではない。何となくだ。

 
 
     第1回『裏面に美あり』

 
Polyura narcaea meghaduta
ヒメフタオチョウ(姫双尾蝶)台湾亜種♂裏面

 
初回からいきなり裏面から始めるとは、我ながら天の邪鬼だよなあ(笑)

一般の人はあまり知らないと思うけど、実を言うと裏面の方が綺麗な蝶は案外多い。特にジャノメチョウやワモンチョウの仲間、一部のシロチョウ科は裏面の方が圧倒的に美しかったり渋かったりする。それゆえ、それらは裏側展翅にされる事か多い。
しかし、他の科の蝶でも美しい裏面を持つ者はいる。
一般的には表側を展翅するのが通例であるタテハチョウ科やシジミチョウ科の仲間にも、裏面が美しいものが結構いるのだ。たが、表と裏どちらかが一方的に美しいという例は意外と少ない。そこが問題だ。
だからタテハチョウの仲間なんかは表側で展翅するか、裏展翅するのかでちょくちょく悩む。表にも裏にも捨て難い美しさがあるのだ。

表側も紹介しないと論が進まないので、表写真も添付しておこう。

 

 
表は表でシックな美しさがある。
でも惜しいことに、裏面下翅にある臙脂色(ワインカラー)が表側には無いんだよなあ…。
まあ、良し悪しの意見は分かれるかもしれない。

フタオチョウ類は表も裏も美しいものが多いが、密かに自分は裏面の方が美しいのではないかと思っている。

 
Polyura cognatus コグナトスフタオ♂

(2013.1.17 Indonesia Sulawesi)

 
上が表で、下が裏面である、
表もカッコイイが、裏面の方が複雑怪奇な紋様だから、より惹かれる。

ついでにもっと顕著なのも並べておこうか。

 
Polyura dehaanii クギヌキフタオ

(west jawa 上♂ 下♀)

 
コチラも上が表で、下が裏面である。
これはもう、裏面の方が圧倒的なる存在感だ。この複雑怪奇な出で立ちは、あらゆる蝶を凌駕する鬼のごたくある美しさでごわす。悪魔的ですらあるその姿を初めて見た時は、この世のモノとは思えずに震撼した。大袈裟でなく、マジでグワッΣ(-∀-;)と後ろに仰け反った記憶がある。

しかし、両種とも裏面展翅される事はあまりないんだよなあ…。何でだろう❓全然ワカンナイ。
もしかしたら、自分と人とは美の観点が違うやもしれぬ。

(ノ-o-)ノ┫ ダリャ━━━━ッ (ノ-_-)ノ~┻━┻

(#`皿´)バッカじゃないのー❓、どこ見とんのじゃワレ❗と言いたいところだが、まあよろし。美しいと感じる心は、人によって個人差があるのだ。

結論めいたものが出たことたし、書き飽きてもきたので、ついでに野外で撮ったヒメフタオの写メをバシャバシャ貼って終わるとすっか…。
初っぱなからこの調子だと、先が危ぶまれるなあ(笑)

 
(2016.7.9 台湾南投県仁愛郷)


(2017.6.26 二点共 台湾南投県仁愛郷)

 
やっぱ標本なんかよりも、まだ生命が宿っている時の蝶の方が断然美しい。

                        おしまい

と終わりかけて、おっとっと( ̄∇ ̄*)ゞ、すっかり本題の種解説をするのを忘れておったわい。

ヒメフタオは何処にでもいるという蝶ではないが、台湾ではそれほど珍しいという蝶でもなさそうだ。山村の人家付近でも見かけたりする。

中型のチョウで、♂は開張38~39㎜。♀は一回り大きくて開張44~45㎜。♀は♂と比べて翅形が丸くなり、2つの尾突が外側に開くと云う特徴があるから区別は容易だ。
台湾北部から中南部にかけての標高100m~1800mの山地に分布するとされるが、実際には1000m以下の低中山地が垂直分布の中心だろう。印象では、600m前後の標高に多かったような気がする。

台湾中部では成虫の羽化は3月から始まり、夏季に個体数を増し、9月に入ると数を減じ、10月には完全に姿を消す。おそらく基本は年2化で、一部が3化すると見受けられる。
越冬態は蛹だが、暖めてやると羽化するという。

幼虫の食餌植物は、台湾ではネムノキなどのマメ科植物数種が知られている。
他に食餌植物として記録があるのは、マメ科タマザキゴウカン。
なんだそりゃ?玉裂強姦?いや、玉崎強姦か❓何にしてもスゴい名前だ。金玉を裂いて強姦するだなんて、あまりに猟奇的過ぎるじゃないか。ド変態のサイコ野郎だ。恐いねー。そんな人には会いたくないねー。それはそうと、その強姦魔は果たして男なのかね?それとも女なのかね❓出来ればまだしも女性であってほしいものだ。また、語源が玉崎の方だったとしたら、玉崎が強姦されるの❓それとも玉崎本人が強姦魔って事なの❓いやいや、玉崎って、そもそも男なのか?女なのか?どっちなんだ❓考えたら、夜も寝られなくなっちゃうよ。何れにせよ、ムチャクチャなネーミングだな…。
他にトウダイグサ科 マルヤマカンコノキ、バラ科 タカサゴイヌザクラ(高砂犬桜❓これも酷いネーミングだな…)など。

成虫の飛翔は敏速。♂♀共に樹液、腐果(発酵した果物)、蛙やミミズなどの死体、獣糞に集まる。
フタオチョウの仲間は美しいものが多いが、コヤツら、とんでもない悪食なのである。今回取り上げたコグナトスフタオやクギヌキフタオなんかも同じ習性を持っている。
例えれば、見た目超キレイな物凄い美人が、話してみたら中身オッサンだったり、ものごっつ下品だったみたいなものだ。
たま~にギヤップ有り過ぎの美人っているよね(^-^;
まあ、自分はそういうの嫌いじゃないけど…。

オスは樹上でテリトリー(占有行動)を張ったり、地面に吸水に来るので比較的観察しやすい。但し、吸水していても近づくのは難しい。かなり敏感なので、一定の距離内に入るとサッと飛び去ってしまうのである。まあ浅ましい蝶だから、暫くしたら又舞い戻っては来るんだけどネ。
因みにメスは吸水には来ないし、オスがテリトリーを張る場所にも滅多に現れないとされる。つまりオスはさておき、メスは結構珍品なのだ。自分もまだ一度もお目にかかった事がない。
タテハチョウ科のメスは、他の科のチョウに比べて基本的に得難いものだが、特にこのPolyuraと呼ばれるフタオチョウ属のメスは採れないようだ。姿を滅多に見せないし、トラップをかけても殆んど飛来しないようなのだ。自分も海外では殆んど会った事がない。普通種であってもメスは全然見かけないから、普段どこにいるんだろと思う。森の中を歩いてても飛び出したりする事はほぼ皆無だから、もしかしたら高い木の梢辺りでじっとしているのかもしれない。
この属でメスが頻繁にトラップに飛来するのは、沖縄本島のみに棲息するPolyura weismanni フタオチョウくらいなものだろう。
そういえば、台湾ではオスさえもトラップに来なかったなあ…。あまりヒメフタオにはトラップの効果がないのかしらん❓
否、でも1000m以上の標高でしかトラップを仕掛けなかったから、ヒメフタオの垂直分布の中心域からは外れている。真偽の程はワカランだろう。

あっ、台湾以外の分布を書き忘れてたよ。
相変わらずの行き当たりバッタリだすな( ̄∇ ̄*)ゞ

こんな感じです。

 
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
台湾から中国、インドシナ北部、インド東部のアッサム州辺りまで分布するようですな。

あっ( ̄□ ̄;)!!、それで思い出したよ。
そういえば、ラオス産のヒメフタオっぽいのがあったな。確か写メに撮った筈じゃ。拙速に探してみよう。

ありました。ありましたよ。

(2016.4 Laos Phonsavan)

 
ゲッ!Σ( ̄□ ̄;)、白くて全然違うじゃないか。
別種じゃないの❓一瞬、もしかして大珍品ポシドニウスフタオ Polyura posidonius じゃないのー❓と思った。
でも落ち着いて考えてみれば、あれは確か標高3000mとかの局所にいて、分布は中国だった筈だからそれは無いね。多分、ヒメフタオの亜種なのだろう。
コレは確かめてみるしかあるまい。思いの外(ほか)、面倒くさくなってきたぞー(-_-;)

ヒメフタオで検索したら、似たような見た目のが『ぷてろんワールド』から見つかった。
どうやら、thawagawaと云う亜種のようだ。やっぱヒメフタオだったのね(それにしても、ワシの持ってるヤツの方がもっと白いぞー)。

しかし、次の瞬間にアレッと思った。学名の小種名が、narcaeaではなく、narcaeusとなっているのである。えっ、別種なの❓でも和名はヒメフタオチョウとなっている。ぷてろんワールドが間違ってんのかあ❓
一応確認しとくか…。あー、七面倒クセー。
『台湾産蝶類大図鑑』や『アジア産蝶類生活史図鑑』では、narcaeaになっていた。単なる綴り間違えか…。だが何となく引っ掛かるものがあったので、Polyura narcaeusと入れて検索してみた。
したら、何とウィキペディア(wikipedia)で解説が出てきたじゃないか。ウィキで出てくるという事はコチラの学名が正しいって事なのー❓
( ̄0 ̄;ありゃま、御丁寧にちゃんと亜種名までも羅列されているよ。
因みに6亜種に分けられているようだ。

・narcaeus(原名亜種) 中国、ナガヒル、アボール渓谷、ミャンマー北部
・menedemus 中国雲南省
・meghaduta 台湾
・aborica アッサム北部、チベット南東
・thawgawa 中央ミャンマーからベトナム、中国雲南省
・lissainei アッサム~タイ

ナガヒルってインド東部のアッサム州にあるんじゃなかったっけ?だとすればアッサムが3ヶ所も出てくる。どゆ事?いや、ナガヒルはナガランド州だったっけか?どちらにせよお隣の州だからアッサムとは近い。おまけに中国も3亜種が産地になっている。コレじゃ、亜種の生息域がゴチャゴチャに重なってて、亜種区分の仕方がサッパリわからんぞ。
まあそれはこの際どうでもよろし。そんな事よりも大事なのは台湾亜種の表記である。
ふむ、亜種名が同じmeghadutaとなってる。という事は、ラオス産のものと台湾産のモノは亜種関係であって、別種では無さそうだ。う~む、何だかややこしい事になってきたぞ。

次にPolyura narcaeaと入れて検索してみた。
ゲロゲロー(@_@;)、こっちはウィキペディアのページが無いじゃん❗❗
えっ、それってどいうこと❓どちらかがシノニム(同種異名)って事になるのかあ❓じゃあ、narcaeaとnarcaeusのどっちがシノニムで、どっちが本当の学名なのだ❓…。ワケワカランわ。

しかも、驚いた事に『ぷてろんワールド』には、もう1つヒメフタオチョウなる蝶が載っているではないか。
学名はPolyura arjaとなっておる。
小型のPolyura属のグループは、アタマスヒメフタオやヤリサスヒメフタオなどの和名がつけられている。という事は、arjaというヤツは最初に見つかった小型のフタオだから、そんなシンプルな和名がついたのかな❓誠にややこしいネーミングじゃよ。
しかも、更にややこしい事には、このアタマスヒメフタオなどの種群は、台湾のヒメフタオ(eudamippus種群)とはまた違う系統の種群だと思われるから、ややこしい事益々この上ない。
それだけじゃない。Polyura属そのものを総称してヒメフタオ属とも呼んだりもするので、もう何が何だかワカンナイ。Polyura属には大型種も含まれるので、ヒメが入るこの和名はあまり適しているとは思えないし、悪戯に混乱を誘発するだけだろう。
何だか書いてて(@_@;)自分でも混乱してきたよ。段々、何を言ってのか分かんなくなってきた。

取り敢えず、小型のフタオチョウにはチビフタオという別称もあるので、小さいヤツはもう全部そっちに統一しちやった方がいいんじゃないの~❓
ホント、和名は便利でもあるけれど💩クソだな。同一種なのに複数の和名があるのも問題だし、正確をきそうとして矢鱈と長ったらしくなって、かえって何が何だかワカラン意味不明な和名になってるモノも多々ある。
もう無理に和名をつけるのはやめた方がええんでねえの❓せいぜい学名そのままに近いコグナトスフタオとかでええのんとちゃうのん❓
あっ、でもクギヌキフタオとかは中々良い和名だな。となると、無碍(むげ)にダメだとも言えない。困ったこってすな。

しまった。このまま和名云々にまで突っ込んでゆけば底無し沼だ。あっさり終わる筈が、完全に泥沼に嵌まってもうたやんけー。
しかも、肝心なヒメフタオの学名問題が解決しとらんがな。

えーっと、もう(;´Д`)へとへとなので、最後に挿入し忘れたPolyura arjaと思われるモノの画像を図示して終わりまあーす。

(2015.5.20 Laos Laksao)

上が♂で、下が♀である。この2つは交尾しているのを偶々(たまたま)見つけた。網を振ろうとしたら逃げやがって、木の高い所に止まったので結構苦労して採った思い出がある。

それにしても、これってホントにPolyura arjaなのかね❓どうも自信が無くなってきた。裏面を見れば、たぶん判るんだろうけど…(識別点は裏の方が顕著なのだ)。
でも心がどうしようもなく疲弊しているから、標本箱から探してこようなどとは1㎜たりとも思わない。
この辺で、どろん≡3させてもらいます。

                  おしまい

 
追伸
いやあ~、いつもにも増してグダグダの終わり方でしたなあ。
今回のシリーズはサラッとシンプルにカッコよくいくつもりが、この体たらくだ。もう初回にして、続けていくことに自信が無くなったあるよ。

訂正があるので、追記しておきます。
本文でヒメフタオの事を普通種であるかの如く書いたが、『台湾産蝶類大図鑑』の解説に拠れば埔里周辺(ワタスの行った所)では稀ではないが、一般には個体数は多くないと書いておりました。
観察するなら、埔里周辺の低山地をお奨めします。

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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