エウダミップスの憂鬱

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       台湾の蝶 番外編
    『エウダミップスの迷宮』後編

 
もう主タイトルも「エウダミップスの迷宮」から「エウダミップスの憂鬱」に変わっとるやないけー(笑)
迷宮で彷徨(さまよ)っているうちに嫌んなってきて、ポチは憂鬱になりましたとさ。
でも、とにかく何らかの形で終わらせねば仕様がないのだ。頑張って書きましょうぞ。

え~と、何だっけ?
ごめん、アマタが上手く働かないのである。脳ミソが思考を拒んでいるのやもしれぬ。
まあいい。その整理出来てない腐った脳ミソで、ポンコツはポンコツなりの気概を持ってフォースの暗黒面に立ち向かおうぞ。

先ずは前回のおさらい。
従来、日本のフタオチョウは台湾や大陸に広く分布するフタオチョウ Polyura eudamippus の亜種とされてきた。しかし、ごく最近になって日本のフタオチョウがそこから独立して別種 Polyura weismanni となった(でも誰がいつどこで記載したのかは不明。謎です。)。

(;゜∇゜)ほんまかえー?と思ったポチは、成虫のみならず幼虫・卵、蛹、幼虫の食餌植物、生態等々あらゆる面からその検証を行った。
そして、ポチ捜査員が出した見解はこうだった。

『問題点は幾つかあるが、取り敢えずは別種でエエんとちゃいまっしゃろか。まあ、厳密的にいえば別種になる一歩手前の段階と言えなくもないんだけどね…。
でもさー、そんなことを言い始めたら収拾がつかん。
別種、別種~、日本のフタオチョウは独立種です❗』

だが、オラにここで新たな疑問が湧いてきた。
台湾のフタオチョウと日本のフタオチョウは似ているが、原名亜種(名義タイプ亜種)を含むインドシナ半島から西に分布するものは、同種とは思えんくらいに見た目も大きさも全然違うんだよなあ…。

と、ここまでが前回までのあらすじ。
で、こっからが新たなる展開なのだ。

オイチャンは思ったね。
だったら、そのインドシナ辺りから西の奴らと台湾とその周辺の中国の奴らもさー、この際、別種として分けちやってもエエんとちゃうのん❓

でもポチ捜査員、冷静にカンガルー。もとい、考える。
とは言うものの、たぶん台湾からインドまで連続して分布するから、明確には分けられないのだろう。
つまり、分布の東から西へ少しずつ見た目が変わってゆき、その境界線が判然としない。だから、別種とまでは言えなくて、全部を亜種扱いにせざるおえないと思われる。
しかし、だとしたらどこいら辺りに台湾とインドシナとの中間的な特徴を持つ個体群がいるのだろうか❓
そういえば、そういうオカマちゃん的な標本を見た記憶がないんだよなあ…。

取り敢えず、参考までにインドシナ半島、台湾、沖縄の個体を並べておこう。

先ずはタイ・ラオス北部等に分布する亜種から紹介しよう。

【Polyura eudamippus nigrobasalis 】

【裏面】

(2点共 2011.4.1 Laos Tadxaywaterfall )

続いて台湾亜種。

【Polyura eudamippus formosana 】

【裏面】
(2点共 2016.7.7 台湾南投県仁愛郷)

続いて沖縄のフタオチョウ。

【Polyura weismanni 】

【裏面】
(2点共 出典『ニライカナイの女王』)

ねっ、インドシナ半島のものは、見た目がだいぶ違うでしょ?
もう断トツに白いのである。尾状突起も遥かに長くて優美だ。そして、大きさがまるで違う。日本や台湾のものと比べて圧倒的にデカイんである。
個人的にはコッチの白い奴の方がカッコイイと思う。
双尾と呼ぶに相応しい尾突といい、そのタージ・マハルを連想させる白といい、断然ソフィスケートされてる。迫力も雲泥の差だ。体はゴツいし、飛翔力も半端ねぇ。

上の画像では大きさがわからないだろうから、採集した時の写メを添付しておこう。

【台湾産フタオチョウ】

【ラオス産フタオチョウ】

これで大体の大きさは理解してもらえたかと思う。
けどなあ…ちよっと解りづらいかもしれないなあ…。
面倒くさいけど、もっとハッキリ解るように両者の標本を並べておきましょう。

順番が逆になったが、上がラオス産フタオチョウで、下が台湾産である。
もう説明は不用だろう。まるで大人と子供だ。勿論、両方とも♂である。因みにラオス産フタオの♀はバカでかい。Polyura界の女王様だ。
但し、オラは野外で姿を見た事は一度たりともない。
メスは珍品なのである。オスはそこそこいるんだけど、メスはトラップにも殆んど来ないし、いったい何処で何してんだろ?大いなる謎だよ。
そういえば沖縄や台湾のフタオは、そう機会は多くないとはいえ、それなりにメスは見られるようだ。
生態的に違えば、それ即ち別種だとは言い切れないけれど、それも別種とする一因として考えられなくはない。とにかく、メスの生態は日本や台湾のフタオとは違い、今のところ未知に近いのだ。

あっ、幼虫はどうなのだ❓
台湾と沖縄のフタオは、幼虫の形態がかなり違ってた。それも別種とされた理由の1つに違いない。ならば、もしラオス産フタオの幼虫形態が全然違ってたら、別種となりはしないか❓

いかん(;゜∀゜)、カウパー腺液チョロチョロの先走りじゃよ。
取り敢えず、幼虫云々は後回しだ。その前にエウダミップスの分布と各亜種を整理しておこう。そこんとこ、ちゃんと言及しておかないと、後々、益々何が何だか解らなくなる。

【フタオチョウの分布図】
(出典『原色台湾産蝶類大図鑑』)

古い図鑑なので日本産も地図に入っている。
それはさておき、分布が西北ヒマラヤからインドシナ半島、マレー半島、中国を経由して台湾にまで達しているのがお解りになられるかと思う。
但し、実際にはこんなにベタに何処にでもいるワケではなく、分布の空白地帯もある筈だ。わかる範囲ではマレー半島の産地は飛び離れていて、高所にのみ分布していたと記憶する。
だいたい分布図なんてものは、大まかなんである。
特に広い範囲を示す分布図はざっくりだ。情報を鵜呑みにしてはならない。

あっ、そういえば『アジア産蝶類生活史図鑑』にも分布図があった筈だ。そちらの方が新しいから、まだしも正確だろう。

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

あっ、やっぱりマレー半島だけ分布か飛び離れている。あとは中国北部が少し膨らむ程度で、大体同じだね。

ここまで書いて、不意に微かな記憶が甦る。
そういえばエウダミップスには乾季型と雨季型というのがあって、雨季型は小型になり、且つ黒っぽくなって尾突も短くなる。そうどこかで聞いた事があるような気がする。
おいおい、亜種に加えて更に季節型まであるとなると、ワケがわからぬわー(ノ-_-)ノ~┻━┻

この際、それは取り敢えず置いておこう。シッチャカメッチャカになるから、先ずは亜種区分からだ。

『原色台湾産蝶類大図鑑』では、以下のように11亜種に分けられていた。

①Polyura eudamippus eudamippus(原名亜種)
西北ヒマラヤ、ネパール、シッキム、ブータン、Naga Hills、Khasia Hills。
最後2つの横文字は、おそらくインド東部の地名のことだろう。

②P.eudamippus jamblichus
テナッセリウム(アンナン)。
テナッセリウムは、たぶんミャンマー南部の街の事かな?でも、アンナンというのがわからない。

③P.eudamippus nigrobasalis
シャム、ビルマ(Shan States)、カンボジャ。
シャムは現在のタイのことだろう。かなり古い図鑑である事を実感するよ(1960年発行)。ビルマも現在はミャンマーという国名である。Shanというのはおそらく北東部のシャン州の事を指していると思われる。カンボジャはカンボジアの事だね。

④P.eudamippus celetis
アンナン。
はあ?、またアンナンが出てきた。ワケわかんねえよ。

⑤P.eudamippus peninsularis
マレイ半島。
マレー半島の事だね。

⑥P.eudamippus whiteheadi
海南島。
中国南部のハイナン島の事だろう。

⑦P.eudamippus kuangtungensis
南支那(広東省北部)。
勿論、支那とは現在の中国の事だけど、それっていつの時代の呼び名やねん!とツッコミたくなるよ(笑)

⑧P.eudamippus cupidinius
雲南。
中国の雲南省の事だろね。

⑨P.eudamippus rothschildi
西~中部支那。
中国西部から中部でんな。

⑩P.eudamippus formosana
台湾。

⑪P.eudamippus weismanni
琉球(沖縄本島)。

最後の⑪は別種になったから、全部で10亜種って事か。結構、思っていた以上に多い。

一応、ネットでも調べてみたら、wikipediaに解説があった。

へぇー、英名は『Great Nawab』っていうんだね。
Nawabって聞いたことあるなあ…。何か地位ある偉い人の事だったと思う。気になるので、そちらを先に調べてみる。
辞書には、Nawabとはインド・ムガール帝国時代の地方長官(代官)、知事、太守、領主、蕃王とある。
頭にグレイトと付くんだから、この場合は蕃王や領主を表しているとみえる。日本人には、大名とでも訳すのが解りやすかろう。
たぶん最初にインドで見つかって記載された(原名亜種)から、こういう英名がついたんだろうね。

亜種の話に戻ろう。
ウィキペディアでも、日本の「weismanni」を除けば10亜種になっていた。

③の「e.nigrobasalis」の分布は、タイ、ミャンマーときて、なぜかカンボジアが消えてて、他にインド、中国、雲南省南部が加えられている。カンボジアが消えたのは解せないが、他は単に新たな産地が見つかったから加えられたのだろう。
でも近隣のベトナムがスコッと抜けてるなあ。ベトナムだけいないということは考えられない。それに分布図では、しっかりベトナムの所にも生息を示す斜線が引かれてたぞ。謎だよなあ…。

あれれー(@ ̄□ ̄@;)!!
しかし、ウィキには④の亜種「celetis」ってのが無い❗ 分布がアンナンとある亜種だ。
その替わりに「splendens」という未知の亜種があった。分布は雲南とある。
ワケわかんねえや。そもそもアンナンって何処や?
ミャンマー南部とちゃうんけ?
だいたい雲南省とミャンマー南部はかけ離れているじゃないか。という事は、両者は全くの別物と云うことになる。
これで、産地に雲南省とある亜種が3つもある事になるやんけ(-“”-;)…。
もしかして、雲南省ってバカみたいに広いの?
はてな、はてな(??)❓の嵐が吹き荒れる。
シクシク(ノ
<。)、また迷路じゃよ。

取り敢えず、アンナンを調べてみた。
ここは小さな疑問から片付けていくしかあるまい。

あっ、アンナン(安南)ってベトナムやん!
フランス統治時代のベトナム(北部~中部)の事を、そう呼んでいたらしい。
でも、ベトナムって越南じゃなかったっけ?

アンナンが判明したはいいけど、今度は②の亜種「jamblichus」のテナッセリウム(アンナン)という表記がワケワカメじゃよ。
だってミャンマー(ベトナム)って事になるじゃないか。そこ、どこやねん(@_@;)❓

何だかテナッセリウムまで何処なのか不安になってきたよ。しゃあない、これも調べよう。

コチラはあっていた。テナッセリウムはミャンマー最南部地方の旧名のようだ(現在の地名はタニンダーリ地方)。近くの山脈にテナッセリウム山脈と云う名が残っている。

まあ、ウィキペディアでは、亜種「jamblichus」の分布は南ミャンマーとなっているから、アンナンはたぶん誤記ということにしておこう。

それよりも問題なのは、分布地が雲南とある亜種が3つもあるという事である。
③の亜種「nigrobasalis」はタイ北部とラオスが分布の中心で、それが雲南省南部にも及んでいると解釈すればいいか…。

⑧の亜種「cupidinius」は、図鑑もウィキペディアも分布地は雲南省とだけある。それが雲南省の何処を指すのかは特に書いていない。そして、ウィキペディアに載っている「splendens」と云う亜種も産地は雲南省としかない。そこにはやはり北部とも西部とも書いていないのだ。
もう(◎-◎;)何のコッチャかワカラン。少なくとも3つの亜種がモザイク状には分布しているワケはないから、それぞれ南部なり北部なりの東西南北の何処かに棲み分けてるという事か…。
いや待てよ、この雲南とある2つの亜種のどっちかが高地に隔離されたもので、独自に進化した奴と云う可能性もありはしないか?
何れにせよ、そんだけ雲南省に亜種が幾つもあると云う事は、もしかしたらエウダミップスの祖先種が此処で生まれ、ここから亜種分化が始まったのかもしれない。そして、やがて東西南北に拡がっていき、それぞれの地で更に亜種分化していったとは考えられないだろうか?

(* ̄◇ ̄)=3ふぅ~。ここいらまでが、オラのパープリン頭で考えられる限界だ。
いよいよ自然史博物館にでも行って、塚田図鑑(東南アジア島嶼の蝶)で調べるしかないか。
まあそれで、大概の事は片がつくだろう。

げげっΣ( ̄ロ ̄lll)、アカンわ。
よくよく考えてみれば、塚田図鑑はジャワやスマトラ、ボルネオ、小スンダ列島等に分布している蝶しか載っていないのだ。そこにさえ分布している蝶ならば、マレー半島やインドシナ半島に分布する亜種も解説されているだけだと云うことをすっかり忘れてた。
頼みの綱の塚田図鑑が使えないとあらば、取り敢えずググって探すしかないか…。何だかエライところに足を突っ込んじやったなあ。

それはさておき、先ずは原色台湾産蝶類大図鑑にしか載ってない「celetis」と云う謎の亜種だ。
だが、ググっても「splendens」は出てきても、「celetis」は全く出てこない。
コヤツは、分布がアンナン(ベトナム)となっている事だし、大方は近隣の「nigrobasalis 」に吸収合併されて消えた亜種名なのだろう。もう、そう解釈させて戴く。
その証拠にウィキペディアでは、「nigrobasalis」の分布に中国、雲南省が加わっている。ベトナムはラオスにも雲南省にも極めて近いのだ。

それはそうと、この「nigrobasalis」、ウィキではインドにも分布するとある。えっ、でもインドには名義タイプ亜種の「eudamippus」がいるじゃないか。
ハイハイ、「eudamippus」の分布域より更に東のインド東部の端っこに辛うじて分布が掛かっていることにしよう。
もう勝手に都合よく解釈していくことにした。
でないと、正直、やっとれんのである(# ̄З ̄)

さあ、前へ進もう。フォースの暗黒面に囚われてはならぬ。ルーク・スカイウォーカーは前進あるのみ。

あとは各亜種がどんな姿なのか確認していこう。
それによって、黒っぽくて小型の台湾産と白っぽくて大型のインドシナタイプの中間的な亜種が見つけられるかもしれない。そもそもは両者の分水嶺を知り得る事が最大の目的なのである。でないと、別種だとかどーだとかは論じられない。

各亜種の画像を探していこう。
先ずは原名亜種(名義タイプ亜種)から。

(出典『Annales de Lasociete entomologique 』)

(出典『insectdesigns.com』)

これは原名亜種だけに簡単に見つかった。
パッと見は、図示したラオス産のモノとさして変わらない。強いて言えば、白い部分が多いかな?
あと上翅の白い所にある黒いL字紋の形も特徴的かもしれない。

あっ、そういえばラオスかタイだっけかで、変なエウダミップス(nigrobasalis)を採ったなあ…。

(2011.4.7 Laos vang vieng)

小型で翅形が縦型なんである。
あっ、いらんもん出してもた。これは自分レベルでは言及でけまへん。変異として片付けてしまおう。

次に反対側の、台湾から近い中国の亜種の画像を探そう。

【e.rothschildi 中国・北中西部亜種】
(出典『ebay』)

ハッキリ亜種名は書いてないけど、思った通りに台湾のモノと近い黒いタイプだ。
あれっ?、よく見ると台湾の奴よりも黒っぽいぞ。むしろ日本のモノに近い印象だ。
多分、「rothschildi」だろう。
黒いのは、分布緯度が同じくらいだからなのかもしれない。北に行くと黒化する特性とかがあんのかなあ?

こんな画像も見つかった。

(出典『Bulletin of British Museum』)

図版の47が『rothschildi』だ(画像をタップすると拡大できます)。
これでさっきの黒っぽいのは、「rothschildi」とほぼ言い切ってもよいだろう。
因みに48は台湾の「Formosana」で、46は名義タイプ亜種の「eudamippus」です。

裏面の画像もあった。

図版63が「rothschildi」、64が「formosana」だ。そして、62が「eudamippus」。
w(゜o゜)wありゃま、表は似てても、裏面が台湾の奴とは全然違うじゃないか❗
「rothschildi」の裏面は、どっちかというとインドシナ寄りだなあ…。
そっかあ…、まさかそんな事は考えもしなかったよ。
表と裏の特徴が一致しないとは夢にも思わなかった。
ん~、似てるから中国の亜種も台湾の亜種も同じ亜種に含めてもいいんじゃないかと思っていたが、こりゃ別亜種にもなるな。
それにしても、この事実をどう解釈すればよいのだろうか❓(-.-)ワカラン。

次にその南側の中国亜種「kuangtungensis」を探そう。

だが、画像が全然見つからなくて、ようやくらしきモノにヒットしたのがコレ。

【e.kuangtungensis? 中国南部亜種】
(出典『www.jpmoth.org』)

亜種名の表記が無く、ただchinaとしか書いていないし、画質が悪くて右下の字も読めない。
けんど、先程の「rothschildi」よりも白い部分が多くて台湾産に似ている。「kuangtungensis」の分布域は台湾から一番近いし、両者が似るのは自然だ。ゆえにコレで間違いないと思うんだよね。

裏面もあった。

これも、どう見ても白系エウダミップスの裏面だ。
と云う事は、台湾や日本のフタオの裏面の方が特異なんだね。迷路がまた1本増えましたとさ。

お次は海南島の「whiteheadi」だね。

【e.whiteheadi 海南島亜種】
(出典『proceedings of general meetings』)

印象的には、中国のモノよりもインドシナに近い。
でも、よく見ると前翅の白い部分はインドシナ辺りのモノと比べて減退している。上翅の基部が黒いのも目立つ。しかし、これは雨季型の特徴なのかもしれない。
これがもしかしたら、黒いのと白いのの中間的な亜種になるのかもしれない。
あとは下翅外縁の青みが強いか…。
これだけ青いと美しいな。乾季型の白いのがいるとしたら、見てみたいね。最も美しいエウダミップスになるかもしれない。

他の亜種も探すが、中々画像が見つからない。
もう、うんざりだ。

そして、ようやく見つかったのが、この白黒の古い図版。

(出典『Bulletin of the British Museum 』)

ここに雲南亜種「cupidinius」とマレー半島亜種の「peninsularis」がおった。

図版154が原名亜種「eudamippus」。
以下、155 タイ・ラオス亜種「nigrobasalis」。
156 雲南亜種「cupidinius」。
157 海南島亜種「whiteheadi」。
158 日本「weismanni」。
159 マレー半島亜種「peninsularis」。

こうして並ぶと、別種となった「weismanni」って、やっぱり相当変わってるように見えるなあ。

「peninsularis」は、唯一他の亜種とは分布域が連続しない亜種で、種内では最も南のキャメロン・ハイランドなどの高地に局所的に棲んでいる。
他と形態的差異が大きければ別種となりそうだが、見た目は白系エウダミップスだ。しかし、よく見ると前翅の黒い部分の中にある白斑が著しく減退している。百万年後には、別種だな(笑)

注目は、雲南の「cupidinius」だ。
この亜種と「splendens」がどんな姿をしているのかが、一番知りたかったのだ。

でも、一見したところ「nigrobasalis」とあまり変わらない。やや黒い印象があるくらいだ。
まあ、タイ・ラオスと雲南なんだから地理的には近い。代わり映えしないのも当たり前か…。
しかし、よくよく見ると下翅の黒帯が明らかに太い。全体的にもやや黒っぽくは見える。そう云う意味では中間的特質であると言えなくもない。
もう1つの雲南亜種「splendens」が気になるところではあるが、多分さして変わらないんだろなあ。
もうちよっと劇的な結果を期待してたけど、まあ納得はできたよ。
台湾からインドにかけて少しずつ形態が変わっていってるワケだから、まとめてeudamippusとせざるおえず、それなりに違いのあるものを亜種としたのは妥当な分類だと言わざるおえない。

Σ(◎o◎lll)ぎょへー❗❗
一応、残りの亜種「splendens」と「jamblichus 」の画像を探してたら、エライもんにブチ当たってしまった。
何と他にも亜種記載されているもんが有ったのである。
光が見えたと思ったら、再びダークサイドの真っ只に引き摺りこまれてもうたやんけ。
「エウダミップスの泥沼」、いや底無し沼じゃよ。

分布域はわからないが、以下の5つの亜種を見つけた。亜種名の後ろの()内は記載年と記載者の名前である。

◇ e.lemoulti(1916 Joicey&Talbot)
◇ e.major(1926 Lathy)
◇ e.nigra(1926 Lathy)
◇ e.noko(1939 Matsumura)
◇ e.eclpsis(1963 Murayama&Shimonoya)

(# ̄З ̄)ざけんなよー。5つってかあー?
もう迷宮どころじゃない。ホント、マジ憂鬱。

でも記載年が古いところからみると、結局は誰も認めずに消えていったものだろう。
( ̄∇ ̄)気にしない、気にしない。
「celetis」が見つからないのも、(* ̄ー ̄)気にしない、気にしない。

その後、結局「splendens」の画像は、ついぞ見つけられなかった。
(○_○)気にしない、気にしない。
もはや、達観の域なのだ。

「jamblichus」は、或る文献から辛うじて一点だけ見つかった。
その文献で「lemoulti」、「major」、「nigra」の謎も一応解けた。

画像を取り出せないので、URLを添付しておきます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yadoriga/1977/91-92/1977_KJ00006297222/_pdf

森下和彦さんが日本鱗翅学会の機関誌『やどりが』91・92号に書かれた「フタオチョウ」と題した記事です。
白黒のかなり古い記事で、発行は1977年とある。
そこにエウダミップスの分布図があった。

それによると、「major」は北ベトナム亜種となっており、「nigra」は南ベトナム亜種となっていた。
但し、「nigra」は、差異が軽微で強いて亜種区分するものではないと書いてあった。
もっとも「major」も特に形態的特徴は書かれておらず、「北ベトナム Tonkin」と産地名だけしか無かった。
多分、「major」も「nigrobasalis」とさして変わらず、吸収されて名前が消えたのだろう。
因みに、両者とも画像は無しでした。

「lemoulti」は、原名亜種eudamippusの北部に分布するようだ。「rothschildi」に似るが大型、尾突も長いと書いてあった。
あれー、白い「eudamippus」に近い場所なのに、何で黒系の「rothschildi」に似てるの?
何か、それもワケワカメだよなあ。
何れにせよ、両者の中間的な姿なのだろう。でも画像が添付されてないんだよねぇ…。

南ミャンマー亜種「jamblichus」の画像はあった。
一見して特に白いことが解る。解説には「小型で黒色部は少なく、後翅亜外縁の白紋は大型」とあった。
確かに外縁部の白帯が他と比べて太い。

この結果、さらにそれぞれの亜種の特徴が連続した中での変異である事が解った。
中国の亜種が絶滅でもして、ポッカリと分布に空白域でも出来ない限りは、別種には出来ないだろう。

ところで、幼虫形態の方はどうなのだ❓
けど、『アジア産蝶類生活史図鑑』には、日本と台湾でしか食樹が見つかっていないと書いてあったしなあ…。期待は出来ないだろう。
まあ一応、調べてみっか。

わちゃ!Σ( ̄□ ̄;)、あった❗❗
げげっ(@ ̄□ ̄@;)!!、沖縄のものとも台湾のものとも明らかに違う❗
胴体の帯が1本じゃよ。沖縄のP.weismanniは帯なし。台湾のe.formosanaは帯が2本なのだ。
顔も他は模様があるのに、コヤツには全然無い❗

No.28 Great Nawab Caterpillar (Charaxes (Polyura) eudamippus, Charaxinae, Nymphalidae)

画像をそのまま添付出来ないので、見れない人は上のURLをクリックね。

表記には「yunnan」とあるから、産地は中国・雲南省だろう。
葉っぱは、何食ってんだ?
マメ科か?それともニレ科?、クロウメモドキ科?
植物の知識が無いから、さっぱりワカラン。

あっ、でも台湾の奴って、若令期に帯が1本しか無い時期ってなかったっけ?

その前に日本のP.weismanniと台湾のe.formosanaの終令幼虫の画に、再度御登場願おう。

【Polyura weismanni 沖縄】

(出典『日本産蝶類図鑑 幼虫・成虫図鑑 タテハチョウ科編』)

【Polyura formosana 台湾】

(出典『世界のタテハチョウ図鑑』)

あった❗
1本の奴がいる。

(出典『flikr.com』)

やっぱ、3令幼虫は帯が1本だ。
でも、同じ帯が1本でも感じはだいぶと違う。帯がショボいのだ。とても同じ種だとは思えない。

あー、も~、七面倒クセー(#`皿´)。
どりゃー(ノ-_-)ノ~┻━┻💥
知るか、ボケーΣ( ̄皿 ̄;;
別種、別種。もう別種でいいじゃん。
少なくとも、ワシの中ではそうとしよう。
もう、それでええやん。

                 おしまい

 
追伸
( ̄∇ ̄*)ゞいやあー、とうとう最後は匙を投げちまいましたなあ(笑)

それにしても、出口の見えない長いシリーズでした。
正直、書いている意味を見い出だせなくなった時もしばしば御座いました。

赤ん坊はもう疲れたよ。
いつまでも壊れたオモチャで遊びすぎたからね。
もう、サヨナラをするよ。

追伸の追伸
フタオチョウの研究で有名な勝山礼一朗さんから、Facebookにて御指摘がありました。

亜種splendens、celetis、nigra、majorは、全てssp. nigrobasalisのシノニム(異名同種)とするのが一般的だそうです。
因みに斑紋構成上、沖縄のものに最も近いと思われるのはssp. rothschildiとの事。
あと、rothschildiとして引用した一番目の画像(出典『ebay 』)は、ssp. kuangtungensisの間違いだそうです。Ssp. rothschildiに似るが、白色帯がより白く、前翅の基部の黒色部が青い幻光を発すらしい。
確かに画像をよく見ると、青い幻光色らしきものがある。カッコ良かとです。

また新海彰男さんから、ssp.eudamippusだけが年1化(春期)の発生で、他の亜種は皆、多化性だと御教授戴きました。

御指摘、御教授くださいました両氏に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
有難う御座いました。

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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