第2話のフタオチョウで脱線してしまい、エウダミップスの迷宮、エウダミップスの憂鬱、エゥダミップスの呪縛と三編もの番外編を書いてしまったが、ようやく本編に戻る事が出来た。
やれやれ( ´△`)、先が思いやられるよ。
えーと、手抜きというワケではないのですが、今回から暫くはFacebookに書いた文章を加筆、再構成してお送りしていきたいと思います。
従って、各チョウが属する科は毎回バラバラになるかと思います。その辺は御了承されたし。
それに、タテハチョウでスタートしましたが、何せ台湾のタテハチョウだけでも何十種類といる。ずっとタテハチョウの事ばかり書いてはおれんのである。いくらタテハ好きであったとしても、それは流石に辛いものがある。そこんとこも何卒御理解戴きたい。
第3話 『爽やかハンサムさん』
【Graphium cloanthus タイワンタイマイ】
たぶん下翅内縁と腹の感じからすると、メスだと思う。
グラフィウム(アオスジアゲハ属)のメスには中々出会えない。なぜか普通種であっても珍品だったりするのだ。
上翅をもっと上げたいところだが、頭が翅に埋まるのを避ける為と触角の角度を考えての、このバランスになった。
グラフィウムのバンザイ展翅はダサい。
とかく業界では、上翅の下辺を真っ直ぐにすると云うルールに拘泥し過ぎではないかと最近は思い始めている。翅が上がっているのはまだ良いとしても、下がるのは言語道断という雰囲気がどこかにある。
再度言う。グラフィウムのバンザイはダサい。
今は展翅する際、個体それぞれの美しさのバランスのみを追及しようと思ってる。
翅のバランスだけが展翅の絶対条件ではない。翅だけでなく、触角や頭を含めての総合バランスではないかと考えている。
だから触角を基準に、許せるギリギリまで上翅を下げた。
だったら下げたその分、下翅も下げればいいのである。それでも腹が埋まる事はない。余裕たっぷりだ。
美しければ、それで良し。基本は大事だけど、もっとフレキシヴィルでもええやん。
ついでにオスの画像も添付しておきます。
コチラは上翅の下辺を真っ直ぐにしてもバランスがとれた。
因みに裏面はこんな感じ。
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)
上が♂で、この下のが♀かと思われる。
(2017627 台湾南投県仁愛郷)
爽やかハンサムさんだね(⌒‐⌒)
日本のアオスジアゲハよりも大きくて青緑の部分も広い。尾っぽもあって遥かに優美な姿だ。
飛ぶのも相当速いから、謂わばハンサムで運動神経抜群のイケメンなのだ。
もしこんな男子がいたら、さぞかしモテるだろうね。
英名も『Glassy bluebottle』とお洒落だ。
「硝子(ガラス)の青い瓶」なのである。半透明な翅をガラスになぞらえているのがセンシティブだよね。
もう硝子の青い貴公子みたいなもんさ。💕モテモテ感満載だよ。
一応、一般の人にも解説しておくと、この蝶はアゲハチョウの仲間で、アオスジアゲハのグループに含まれます。
タイマイと云うのは、タイ米の事です。
と云うのは勿論ウソでー(^-^)。おそらく小型の海亀、タイマイ(玳瑁)から来ていると思われる。甲羅が鼈甲(べっこう)の原材料になるウミガメですね。
多分、アオスジアゲハグループにそれっぽい柄の種類がいて、そこから付けられたのだろう。
因みに、コレ全部推測なので、引用する人は気をつけてね。
台湾での名称は「寛帯青鳳蝶」。
ゆったりとした青帯のアゲハチョウって意味でいいのかな?
タイワンタイマイと云う和名がついているが、実を言うと台湾の固有種ではなくて、大陸にも分布しています。
分布図は、こんな感じ。
(出典『原色台湾産蝶類大図鑑』)
インド北部からミャンマー、中国南西部、台湾、飛び離れてスマトラにも分布が知られている。
それにしても前回のフタオチョウといい、こういう分布の仕方をする蝶が多いんだよなあ…。あっ、スマトラは無視しての話ね。
多分、過去の地史や気候と何か関係あるんだろね。
亜種は調べた範囲では4亜種に分けられていた。
cloanthus、clymenus、sumatranum、そして台湾のものにはssp.kugeと云う亜種名がついている(kugeは公家なのかしら?だとしたらお洒落だよね)。
ssp.cloanthus(名義タイプ亜種)はインドに棲んでいるようだ。ssp.clymenusは、何処に分布する亜種を指しているのか今イチわからないが、おそらくインドシナ半島北部から中国南西部の辺りのものだろう。
図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で調べればわかるかなあ?調べる機会があれば、この部分は後々書きなおしますね。
3つめのssp.sumatranumは、学名の綴りからしてスマトラ亜種の事でしょう。それにしても、随分とかけ離れた所に分布してんだなあ…。
どんな奴なんだろ?一応、ググってみっか…。
(出典『蝶の標本 麗蝶』)
ありゃまΣ(゜Д゜)、黄緑色やんか。
僅かながら斑紋にも差異がある。分布も随分と離れてるし、前回のフタオチョウの流れならば、別種とされてもおかしかないよな。
分類って、ややこしい。まあ所詮は人が勝手に引いてる線なワケだから十全ではないのも仕方なかろう。
元々個体数は多くない蝶のようで、自分も台湾以外ではタイ北部で一度見たきりだ。
個人的な印象だが、台湾でもそう多くはなく、アオスジアゲハやミカドアゲハに比べて見る機会は遥かに少ない。そういえば図鑑には♂のみしか図示されてなかったなあ…。
低山地から高地(2800m)にかけて棲み、平地では見られないと云う。自分が見たのは標高700m前後と2000m前後。
飛翔は敏速で止まらないが、吸水(♂のみ)や花に吸蜜に来る時に観察できるチャンスがある。
図鑑では、春型は4~5月頃より発生し、夏型は10月頃まで採集記録があると書かれていたが、ネット情報だと2~11月に見られ、年数回に渡って発生するとあった。一応、『アジア産蝶類生活史図鑑』でも確認しておくか…。
(-_-;)…。記述が微妙に違う。
抜粋してみましょう。
「山地性の種で、標高300―3000mの地域に産する。発生は年2回、5月上旬と7月である。♂はきわめて飛翔が迅速。山頂占有癖も強く、他科の蝶に混じって山頂を高く旋回するのがしばしば目撃される。また♂は好んで吸水に湿地に下りるが、多数の個体が集まることはない。」
たしかにアオスジアゲハやミカドアゲハみたいに吸水に多数の個体が集まる事はない。山頂占有性もあるね。
他の記述はだいたい同じだが、発生期と回数が違う。
ワケ、わかんねー(ToT)
( ̄▽ ̄;)あじゃぱー。しかも分布図にスマトラが入ってない❗
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)
(# ̄З ̄)もー、何でこう毎回、毎回、落とし穴に落ちるのだ。コレ、見てなかったから、そのままスッと終われたのに…。(=`ェ´=)ったく、もー。
発生に関しては、「寛帯青鳳蝶」で検索したら、解決した。どれも一年多代とあったから、多科性で間違いないだろう。
問題はスマトラの奴だ。
類推するに、もしかして、これも日本のフタオチョウ(Polyura weismanni)みたく、最近になって別種になってたりして…。
しかし、ウィキペディアで調べてみても、Graphium cloanthus sumatranum と亜種表記のままだ。
(出典『wikipedia』)
「Graphium sumatranum」で検索したら、そのタクソン(学名)で表記しているサイトも2、3あった。
でも、記載に関しての情報は見つけられなかった。
これ以上探しても泥沼だ。ズブズブにハマる前に撤退あるのみ。
分布図は見なかった事にしよう。
『原色台湾大図鑑』では、幼虫の食餌植物は未知になっていたが、『アジア産蝶類生活史図鑑』にはちゃんと載っていた。
食樹はクスノキ科 クスノキ、ランダイニッケイ、アリサンタブ、オオバゴウバシ。アオスジアゲハとほぼ一緒だね。
因みにタイワンタイマイは、採集記『発作的台湾蝶紀行』では、第20話 「台湾一過」に登場します。
https://ameblo.jp/iga72/entry-12193637539.html
よろしければ、コチラの方も読んで下さいまし。
おしまい
追伸
もっと完璧な♂の展翅画像が出てきたので添付なのだ。