いよいよ三が日の献立シリーズもお終いである。
今回は昼と夜とを分けずに一挙にいく。書き飽きたというのもあるが、昼間っから夜中までダラダラ飲み続けてもいたのである。
【鯛のちらし寿司】
正月2日目の大トロちらし寿司に続いての豪華ちらし寿司である。そして、遅ればせながらいよいよ縁起物の王者、鯛様の登場である。
とはいえ、満を持しての真打ち登場ってワケではない。鯛の登場が遅れたのには理由がある。
正月の鯛といえば、めでたいに掛けた尾頭付きの『にらみ鯛』が筆頭だが、御祝儀相場か何だか知んないけど、値段がバカ高くて手が出なかったのである。だったら、自分で焼いてやろうじゃないかと思ったが、肝腎の生の尾頭付きの鯛が全く売ってない。そりゃそうだわな。最も需要のあるこの時期、みんな既に焼かれとるわ。
そんなワケで3日目にして値段が落ち着いてきた柵の刺身を購入。柳刃庖丁で削ぎ切りにする。
昨日は岩下の新生姜を使ったアグレッシブな酢めしだったが、今回は普通の酢めし。錦糸玉子をつくり、酢飯の上をおおって、鯛を乗っける。で、白ゴマと貝割れを散らして出来上がり。器は大トロちらしと同じく古伊万里。
我ながら夢のように美しいね。そして、勿論のこと誠に美味い。
そして、酒バカの一日が始まる。
【紅白なます柚子ヴァージョン】
正月に登場した紅白なますに柚子を加えてみた。
味が劇的に変わるのに自分でも驚く。香りが加わると全然別物になる。柚子って個性強いわ。慌てて少し間引く。柚子の量は控えめがよろし。
【祝い三色蒲鉾】
正月になると、蒲鉾が大量に出回る。しかも、突然高級化してバカ高くなる。普段は百円から二百円くらいなのに、そいつらは何処かに幽閉され、仰々しいのが出てきてズラリと並ぶ。値段は下は四百円くらいから、高いのになると千円を越えてくる。あたしゃ、ここにカマボコ業界の陰謀と闇を感じるね。
写真の蒲鉾は漸く探し出した¥198の三色蒲鉾。紅白の蒲鉾とどちらにするか迷ったが、より目出度そうなので三色を選んだ。
紅白などの蒲鉾が正月の縁起物に使われるのは、半月の形が元旦の日の出を表しているからである。何で紅白が縁起物として喜ばれるかというと、赤は目出度いとか慶びを表し、魔除けの意味も籠められている。一方、白は神聖や清浄を表していると言われている。
緑は、たぶん「芽吹き」の意味だろう。つまり春の訪れを表しているんだね。
食べ方は板ワサと同じ。醤油にワサビを溶いて戴く。
正月であろうと何であろうと、カマボコはカマボコ。味は同じである。
【手綱こんにゃく】
結び蒟蒻とも呼ばれる縁起物。
手綱は馬を御するもので「手綱を締める」などに使われるように心を引き締めるとか、今一度結束力を確かめるといった意味あいで用いられる。つまり武運長久の願いが籠められている。また結び目のある事から、縁をとりなす意味もある。結び蒟蒻も同じ意味で、縁を結ぶといったところだろうか。
短冊に切った蒟蒻の真ん中にスリットを入れ、そのスリットに片方の端を捩じ込んだらこんな形になる。
あとは唐辛子を入れて甘辛く炊けばよろし。
【大根の皮の漬け物】
これはおでんを作った時に厚めに向いた皮と茎の部分を混ぜて作った自家製。大根は捨てる所が無いのである。勿体ないの精神は大切というオイラ風の縁起物ってとこかな。
ビニール袋に材料と塩、昆布の顆粒だしの素を入れて揉み揉みするだけ。お好みで鷹の爪とかレモン汁なんかを入れてもよし。
30分後くらいから食べられるが、一晩くらいおいた方がベターだす。
【サル海老の塩茹で】
サル海老には多くの地方名があり、関西ではジャコエビ、またはトビアラと呼ばれる事が多い。
サル海老にしてはかなり大きめで、値段は三百円くらいだった。元旦はムキエビなんぞで誤魔化したと云うのもあるから、迷わず買った。
キョエッΣ(゜Д゜)❗❗(゜ロ゜ノ)ノ
ラップを破ったら、海老どもが勢いよく飛び出してきて、そこいらでピョンピョン跳ね上がり、メチャメチャびっくりした。まさか生きているとは思わなかったから、相当驚いたよ。
申しワケないと思いつつ、グラグラと煮え立つ塩入りの熱湯に生きたままザバーッとブチ込む。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケ、お主も悪よのぉー、残酷海老殺地獄の釜ぐらじゃよ。
20~30秒ほど茹でて、火を切り余熱で火を通す。
海老は髭が長くて腰が曲がるので、長寿を祈願した縁起物である。腰が曲がるまで長生きしてねと云う意味が籠められている。
まだほんのりと温もりが残るうちに、それを手掴みでワッシ、ワッシと食う。
(⌒‐⌒)甘みがあって美味い。
この海老を食うと、必ずイスタンブールのガラタ橋のことを思い出す。夕暮れになると、どこのレストランのテーブルもこの海老を山積みにした皿だらけになってたっけ…。秋のイスタンブールの少し冷んやりとした空気が懐かしい。
【塩煎り零余子(むかご)】
零余子とは山芋の茎が肥大化した肉芽のことだ。種みたいなもので、土に植えると芽が出る。縁起物とされるのは、その辺りに理由があると思われる。
旬は10~11月だが、存在は忘れてて冷蔵庫の底で眠っておったのである。
一瞬、むかご御飯にでもしようかと思ったのだが、塩と少量の胡麻油とで煎ることにした。
(^_^)乙である。渋い大人の酒のツマミは、こうでなくちゃいかんね。
【霜降り帆立て貝】
ここまでビールで喉を潤し、冷酒、焼酎と進んできたが、この辺りからワインに突入。縁起物もへったくれもなくなってくる。
帆立て貝は、サッと熱湯に潜らせる(有れば酒の方が臭みがとれていいかも)。
狙いはある程度火を通すことによって、帆立の甘みを引き出すためである。
食べる時は塩でも柚子胡椒でも山葵醤油でもよろし。だが、今回はハラペーニョ醤油で食した。ハラペーニョ醤油とは、激辛青唐辛子であるハラペーニョを刻んで醤油に漬け込んだものである。これがピリリとエッジが効いてて嵌まるんである。
【白葱のコンソメ煮】
網で白葱を焦げ目がつくまで焼き、コンソメスープでトロトロになるまで炊いたもの。
これがシンプルだが意外な程に旨い。白ワインにも合う。葱の甘みが際立つのだ。
【ボローニャ・ソーセージ】
ぶっといソーセージであるボローニャ・ソーセージを薄切りにしたものだ。よくビア・ソーセージなんて名前でも売っている。とはいえ、まあ酒なら何にだって合うツマミだ。黒胡椒を挽いてやると、エッジが立ってより旨くなる。
【モルタデッラ】
モルタデッラとは、イタリア・ボローニャ地方伝統のハムの事である。
あれっ?、それってさっきのボローニャ・ソーセージと同じボローニャがついてんじゃん!どう違うの?と訝る向きもあるだろう。
えー、モルタデッラはボローニャ・ソーセージの事です。つまり呼び方が違うだけで、基本的にはどっちも同じボローニャ・ソーセージなのだ。
だが、日本で売られているボローニャ・ソーセージとイタリア本国のものとは製法が違う。日本のものは、基本的に肉の練りが少ないらしい。だから、イタリアに近い製法で作ったものを、あえてモルタデッラと呼んでいるのだろう。断面を見れば、その辺は理解してもらえるだろう。全然違うもんね。
イタリア本国でモルタデッラを食った事はないが、輸入物や日本でモルタデッラと称しているものは、だいたい中にピスタチオだのパプリカだのグリーンペッパーだのが入っている事が多い。これがもう別物と言ってもいい代物で、味が全然違う。勿論、モルタデッラの方が美味い。舌に感じる滑らかさに雲泥の差があるのだ。
最近、気に入ってるのは大山ハムのモルタデッラ。
イオンとかでも売ってるから、値引きしている時などはつい買ってしまう。白ワインにピッタリなのだ。
特徴はチーズが入ってること。
本当はグリーンペッパーとピスタチオが入っているのが一番好きなのだが、コレはコレで別な旨さがある。
最後の方は数の子をチビチビ齧じりながら、再び焼酎を飲んでいた。結局、正月料理の中で一等美味いと思うのは、この数の子様だなと呟く。
外に目を遣ろうとすると、窓にはベッタリと結露が貼り付いていた。
今年の正月も、やっぱり酒浸りの日々だった。
おしまい