ススキと夕陽とキミへの想い

 
薄(すすき)は、見ていて飽きない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
穂が陽光を浴びて輝くのも美しいし、風に揺れる姿には心が和む。

でも、最近はあまり見掛けなくなった。
そういえば大阪市の公園管理局の人に聞いたことがある。葉を不用意に触ると子供が手を切るからという苦情がくるので、大阪の公園にはススキを植えないそうである。アホである。親もアホだが、それを簡単に受け入れる公園管理局もアホだ。最近はテレビにしろ何にしろ、こういう事ばかりだ。クレーマーはごく一部のおかしな人間なのに、それが人々の総意のようになってしまう。世の中、どんどんつまらなくなるよね。

 
新井孝雄さん程じゃないけど、空を見るのは好きだ。
中でも夕陽を見るのが好きで、日課にしていると言ってもいいくらいである。だから勝手に夕陽評論家を自負していたりなんかもする。人には黙ってるけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
刻々と移り変わりゆく風景は、ずっと眺めていられる。そして、一つとして同じ夕陽はない。全てが一期一会なのだ。時に凄まじいまでの美しい夕陽に出会うことがある。そんな時は、スペクタルと言ってもいいくらいにドラマチックな展開になるのだ。毎日、西の空に目を向けるのに飽きることなど無いだろう。

 
昔、誰かが言ってた。

『夕陽を見ている人に話しかけてはならない。
なぜなら、その人は夕陽の向こうにいる人と話しているから。』と。

 
                  おしまい

 
追伸
奈良県河合町にある馬見丘陵公園シリーズの第3弾にして、最終回です。

 

10月のよく晴れた日曜は…

 
10月のよく晴れた日曜の公園は、しあわせそのものだと思う。

 

 

 

 

 

 

 
空は高く、青い。
雲は白く、綿菓子みたい。
そして、その下で戯れる人々は、皆とても楽しそうだ。
友だち同士もいる。恋人たちもいる。もちろん家族連れもいる。その誰しもが、空気の澄んだ秋の晴天の一日を笑顔で過ごしている。

 

 
大学生たちがシャボン玉を吹いて写真を撮っていたので、自分も撮らせてもらった。

 

 
シャボン玉の背後にお母さんと小さな女の子が写っている。小さな女の子が一生懸命に歩いているのを、お母さんが心配そうに追いかけていた。その姿がとっても微笑ましかった。

 
冒頭の言葉は、20代の頃に読んだ村上春樹の小説に同じような言葉が書かれていて、それがモチーフになっている。
その一節を読んで以来、10月の天気の良い休日になると、この言葉を探して公園へ行く。
きっと多分、この先も10月のよく晴れた休日の公園を求めて、そんな場所へと出かけていくだろう。
家族を持たない者は、その幸せそうな姿を遠くから見て、少しばかりのおこぼれを貰って帰るのがささやかな慰めなのだ。

                 おしまい

 
追伸
場所は前回に引き続き奈良県河合町にある馬見丘陵公園です。

 

ダリアとシンジュキノカワガ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、イチモンジセセリさんと一緒に休憩。
普段は無視だけど、この日は和ませてもらいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
何と、これぜ~んぶダリアです。
色んなダリアがあるんだね。でも黒いダリアから後はダリアとは思えないようなダリアだな。

ダリアはキク科(Asteroidear) ダリア属(Dahalia)に分類され、原産地はメキシコだそうである。メキシコの国花でもある。
1789年にメキシコからスペインに移入され、そこで多種多様の品種改良がなされたそうだ。

花言葉は「華麗」「優雅」「威厳」「移り気」「不安定」「感謝」「栄華」。
花言葉って、いつも思うんだけど、そんなにぎょーさんあってどないよ(# ̄З ̄)❓ワッケわかんねーよ。意味あんのかね。

因みに、日本では当初テンジクボタン(天竺牡丹)という名で呼ばれたていたらしい。確かに大輪の花は、まるで牡丹みたいだなと思った。
ついでに言っとくと、食用のダリアもあるらしい。塊根を食べるようだけど、レンコンに近い食感なんだとさ。他に花や葉がサラダなんかにも利用されてるみたいだね。

写真は2018年 10月8日に奈良県河合町の馬見丘陵公園で撮ったものだ。
何で、こんなに沢山ダリアの花の写真を撮ったのかというと、ヒマつぶしなんである。
この日の目的は他にあった。ものスゴく珍しい蛾、シンジュキノカワガを探しに来たのである。

【シンジュキノカワガ Eligma narcissus】
(出典『青森の蝶たち』以下2点とも)

 
ゾクゾクくるエキゾチックさだ。

 

 
羽を閉じると渋い魅力になる。
外側の太い縁どり線は妖しい緑色なのもいい。

 

 
裏側もスタイリッシュだ。鮮やかな黄色とデニムの青のとのコントラストが素晴らしい。

この蛾は南方系の蛾で、基本的には日本には棲んでない。たま~に外国のどっかから飛んで来るようだ。
蛾のパイセンが、コイツを2年前に此所で採ったと言う。しかも、2頭も。トイレの灯りに飛んできたらしい。それで、のこのこと出てきたワケだ。昼間から来ていたのは幼虫の食樹であるシンジュ(ニワウルシ)もあると聞いたからだ。この蛾は食樹のそばで見つかる事も多いみたいだから、何とかなんでねーのと思ったのさ。
でも、エエかげんな性格のパイセン、公園中を探しても食樹なんて1本もありゃしない。公園事務所の植物担当の爺さんに訊ねても、「知らんなあ。そんな木、たぶんないで。」と言われたよ。

結局、夜の公園を夢遊病者の如く徘徊したけど、会えなくて惨敗。
どころか、新月なのに他の蛾さえも殆んど何も飛んで来なかった。
暗い夜道をとぼとぼと駅に向かって歩いている間、ずっとダリアの花々が脳裏で浮かんでは消えていった。

                 おしまい

 
追伸
残念だが、この日はまだ皇帝ダリア(キダチダリア)は咲いていなかった。

 

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(出典『樹木好き!I❤Trees』)

皇帝ダリアが咲くのは11月。カイザーは満を持して最後に現れるのだ。

 

台湾の蝶25『淋しき豹柄女』

 
   第25話『豹斑』

 
ヒョウマダラに初めて会ったときは、何じゃこりゃ❗❓と思った。
咄嗟には何者だか解らず、軽いパニックに陥ったのだ。

 
【Timelaea albescens ♀】
(2016.7.5 南投県仁愛郷)

 
(出典『den531.pixnet.net』)

 
(裏面)
(2016.7.5 南投県仁愛郷)

 
和名は、そのヒョウのような模様(斑紋)を表している。
でも豹柄だからって、ヒョウみたいな性質をしているワケではござらん。しなやかだとか敏捷だとか、猛スピードで移動するとか、そういうの一切なし。もちろん獰猛さの欠片(かけら)もない。むしろ、その逆でトロい。飛ぶスピードもフワフワ飛びで遅い。

 
【Timelaea albescens ♂】
(出典『圖錄檢索』)

 
なぜか外で撮った♂の表側写真が無いので、ネットから引っ張ってきた。
雌雄の違いは、♂が全面ほぼオレンジ色で、♀は下翅の内側が白くなる。また、♂と比べて翅が丸みを帯びる。
裏面は一見したところ、素人風情ではコレといった大きな差異は見当たらない。たぶん下の画像が♂の裏側だと思うんだけどなあ…。

 
(裏面)
(2027.6.26 南投県仁愛郷)

 
話は冒頭に戻る。
何じゃこりゃ❗❓とは思いつつも、その存在を全く知らないと云うワケではなかったような気がする。
だが、発作的に3、4日前に突然台湾ゆきを決めて来島したので、頭の中から完全に消えていた。所詮は雑魚キャラなのである。来島にあたって図鑑にザッと目を通したその残像の端に辛うじて引っ掛かっていたにすぎない。
初めての台湾の、初採集日の帰り際に採れたんだったんじゃないかな?もう少し記憶を遡ろう(註1)。
林道から少し奥まったところ、木陰の葉っばに止まっているのがたまたま目に入った。正直、見つけた瞬間は蝶か蛾か判断がつかなかった。でも直感で蛾ではないような気がした。この辺は感覚的なもので、何で解ったかと言われても説明は難しい。そう感じたから、そうとしか言い様がないのだ。センスってのは、そうゆうもんだろ。

あっ、この最後の辺りのくだりは草稿の時点で、確実に酔っ払って書いてるな。面倒くさくなって説明放棄したに違いない。
説明しなおすと、たぶん瞬時にターゲットの特徴を分析したのだろう。蝶には蝶、蛾には蛾の、それぞれ固有の特徴があるのだ。とはいえ、考えたっていうのとは違う。感じたっていう方が近い。感覚的に漠然と何処か雰囲気が違うと感じるのだ。虫捕りをしていると、後から考えて何故あの時ああ判断できたんだと自分でも驚くことはよくある。シックスセンス。第六感みたいなものかな。これは虫捕り以外の他の事でもそうだから、役に立つ事が多い。小さいお子さんをお持ちのお母さんは、是非とも情操教育のために子供に虫捕りをさせて欲しいと思う。変人になる可能性も高いけど…(笑)

のっけから、横道に逸れる悪い癖が出た。話を前に進めよう。
改めて展翅写真を並べてみる。

 
【ヒョウマダラ ♂】

 
【ヒョウマダラ ♀】

 
たぶん完品の♀も採ってる筈なんだけど、写真が無い。
きっと面倒くさくて撮らなかったのだろう。もしくは展翅すらしてなかったりして…。
ぞんざいな扱いだよなあ。完全に雑魚キャラポジションだわさ(笑)。

この属には、他に中国にもう1種類いる。

 
【タイリクヒョウマダラ Timelaea maculata】

 
(出典 上2点とも『新浪博客』)

 

 
(出典 上2点とも『ぷてろんワールド』)

 
似ているが、ヒョウマダラよりも黒斑が小さく、全体的に密な感じがする。上翅中室の斑紋数も多い。裏面の白の入り方も違うと思う。
後述するが、両者が似かよっている事もあって誤同定も多く、分類上、様々な混乱が引き起こされてきた。

それにしても、ヒョウマダラをコムラサキの仲間だと看破した白水先生と三枝先生(註2)は偉いと思う。こんなの、見てくれはどうみてもヒョウモンチョウの仲間だと思うよね。飛び方だって、とてもコムラサキグループの蝶だとは思えないゆるゆる飛びで、胴体も細いしさ。

 
【ホソバヒョウモン Clossana thore】
(2013.6.23 北海道 芽室町 伏美仙峡)

 
【コヒョウモン Brenthis ino】
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
【ヒョウモンモドキ Melitaea scotosia】
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
これらは科(亜科)とか属が違うのに、ヒョウマダラによく似てるよね。
実際、長い間ヒョウモンチョウ亜科(Argynninae)とかヒョウモンモドキ属(Melitaea)の仲間だと思われてきた。
ヒョウマダラの分類の変遷史は波瀾万丈とも言うべきもので、まつわる話には事欠かない。
とはいえ、自分の力では到底上手く伝え得ない。ここは先達の優れた論文の力をお借りしようと思う。
長いが、増井さんと猪又さんの論文(註3)から抜粋させて戴こう。

 
「本属は発見以来長い間 Melitaea(ヒョウモンモドキ)、Argynnis(ヒョウモンチョウ)といった草原性のタテハチョウのグループに属すると思われてきた。本属をめぐっては斑紋が一見似ているだけの理由で生じた分類上の混乱に満ちている。このことについては歴史的に少し詳しく述べておく必要があろう。
Timelaea属が草原性タテハチョウグループと分類上近い位置にはないことは、古くからFruhstorfer (1913)が外部形態の点から気づいていたようである。
しかし、その後長い間にわたって本属の分類についてはあまり関心が払われなかったと思われる。ユンクのカタログ(Stichel,1938)やLe Moult(1950)のコムラサキ亜科のRevisionでも本属は見落とされている。台湾産のヒョウマダラが全く意外にもコムラサキ亜科に所属すべきであることを♂交尾器の形態に基づいて最初に指摘したのは白水(1960)である。図示された異様に長いphallusとsaccusはまさしくコムラサキ亜科のものである。台湾産のヒョウマダラがコムラサキ亜科に属することは、この時点ではっきりしたものの、Timelaeaの分類にはまだ問題が2つ残されていた。台湾産ヒョウマダラの学名についてである。
台湾産のヒョウマダラの最初の記録はT.albescens(Miyake,1906)である。
続いて Fruhstorfer(1908)によりfomaosanaという亜種名が与えられたが、種名はalbescensではなく、maculataとされた。
これはSeitz Vo1.9(Fruhstorfer,1913)でも踏襲されており、ここには台湾からの最初の発見者としてH.Sauterの名が記されている。しかし、既にLeech(1892)及びSeitz Vol.1にalbescensとmaculata(タイリクヒョウマダラ)が別種として正しく記載図示されていることから考えるとまことに不注意なことで、後年に与えた影響は大きかった。
平山(1939)や白水(1960)も台湾産ヒョウマダラに対して種名maculataを用いたので、以後も多くの文献がこれに従うことになった。しかし、台湾産のヒョウマダラは明らかに種albescensに帰属すべきものであり、これを指摘したのはNiepelt(1916)、Gabriel(1932)などかあるが、いずれも個人的な出版物において公表されているため普及性に乏しく、少なくとも日本の研究者にはOkano(1984)の指摘で初めて一般化したと言ってよい。
次の問題は、Timelaea属に分類されてきた種nana(Leech,1892 TL:Moupin,Wa −shan,Omei-shan,Chia−kou−hou,Huang-mu-chang)の分類上の所属についてである。Leech
(Pl.23)やSeitz(Vol.1,Pl.71)の図を見れば確かにnanaは上記のヒョウマダラ属と似ているが、本種はそもそもタテハチョウ科ではなく、シジミタテハ科に属する。これが斑紋の類似によってTimelaeaに紛れ込んだものであって、Okano(1985)によりシジミタテハ科の新属Takashia(白水 隆博士への献名による)に移されて整理が終わったのである。
こうした知識をもってヒョウマダラ属2種を眺めてみれば、コムラサキ特有の後翅第2室の眼状紋も黒斑の分離として明瞭であるし、チビコムラサキの♀やキゴマダラグループ(Sephisa属)との斑紋上の類似性も認められる。
幼生期は台湾産と浙江省産のヒョウマダラ(T.albes cens)について知られている。幼虫、蛹ともコムラサキ亜科の特徴を明瞭に表しており、もはや分類上の疑問を差し挟む余地は全くない。
しかしながら、振り返れば、白水(1966)以後も本属
がコムラサキ亜科であることを多くの著者が見落としている上に、種 maculataとalbescensの誤同定が繰り返されているのはまことに残念なことである。例えばD’Abrera(1985)では台湾産ヒョウマダラをヒョウモンチョウ亜科の位置に図示した上、種名 maeulataを宛てているし、塚田(1991)でもコムラサキ亜科全属リストからTimelaeaが欠落している。 最近の中国の図鑑では、西北農学院による陝西省の 図鑑(1978)で種maculataが正しく同定されているものの、ヒョウモンチョウ類の位置に図示されている。王治国らによる河南省の図鑑(1990)では図示されたmaculataがalbescensと誤同定された上、同じくヒョウモンチョウ類の位置に図示されている。こうした原因は、白水隆の名著“原色台湾蝶類大図鑑”が、日本語で書かれていたこと、また、ヒョウマダラがコムラサキ亜科の位置に図示されなかったために多くの人々の注意を引かなかったことによると思われる。せっかく御自身で分類上の位置を定めておきながら、どうしてその位置に図示しなかったかについては、御記憶にないとのことであった(私信)。
なお、本属のコムラサキ亜科における分類上の位置は、久保(1967)と小岩屋(1989)が幼虫の形態に基づいて指摘しているように、Rohana(チビコムラサキ)に近縁と考えられる。」

 
ややこしいねぇ。
そのややこしさは今も続いていて、ネットでも両種の同定間違いや学名の間違いをしばしば見かける。いや、ネット社会だからこそ、新たなる混乱の拡散が危ぶまれる。
そのややこしいというワードで、更なるややこしい事を思い出した。この蝶、分類がややこしい上に似たような蛾(ガ)もいるのだ。

 
(2016.7.13 南投県仁愛郷 尖台林道)

 
おそらくシャクガ科のエダシャクの仲間だろう。
飛んでいる時は、大きさといい飛び方といいヒョウマダラとソックリだった。両者が擬態関係にある事を強く疑ったね。
これは蛾がヒョウマダラに似てるんじゃなくて、ヒョウマダラが蛾に似せているというのが正解だろう。
エダシャクの仲間ならば、体内に毒を持っている確率が高い。それにより天敵である鳥から身を守っている。鳥は賢いから食ってみてクソ不味いものは吐き出して二度と食わない。これは最初の1頭は犠牲にはなるが、他は狙われないと云う高度な生き残り戦術なのだ。だから、毒のある者はたいてい捕食者の記憶に強烈に残るような派手な色をしている。つまりヒョウマダラの生き残り戦術は、自身には毒は無いものの、毒のある蛾に我が身を似せる事によってドサクサで生きのびようと云う更なる高等戦術だといえよう。

余談だが、網の上から写真を撮っているのは蛾が怖かったから。当時は蛾が気持ち悪くて近づく事すらままならなかったのである。

次の蛾は、もっとヒョウマダラと似ている。

 
(2017.7.2 南投県仁愛郷 青青高原)

 
一番最初の奴は簡単に見破ったが、コヤツは暫く凝視したよ。大きさも形も、ほぼ同じ。飛び方も同じだった。
参考のために再度ヒョウマダラの画像に御登場願おう。

 

 
とんでもない擬態精度である。下翅に黒斑があるかどうかの違いだけである。
こんなもん、飛んでたら殆んど一緒だ。
ヒョウマダラの♂の表はあまり白くないから、明らかに♀は、より蛾を意識して進化したとしか思えない。
それにしても、似せたいと思ったからって、そこまで似せれるものかね?だとしたら、女の一念、巖(いわお=岩)も砕くってヤツだね。

この蛾の表側のデザインにも驚いた。

 
(2017.7.2 南投県仁愛郷 青青高原)

 
コッチも相当似ている。♀にソックリだ。
豹柄女のフェイク、恐るべし❗❗

余談だが、写真はさっきと違って採集してちゃんと網の上に乗っけて撮ってる。コレはこの年の春に「春の三大蛾(イボタガ・オオシモフリスズメ・エゾヨツメ)」を採りに連れていってもらったので、ある程度の免疫がついていたからだ。とはいえ、持って帰ってきたかどうかは分からない。記憶にないのだ。どうあれ、展翅をしていないのは確かだすな。

一応、蛾の名前も調べてみよっかな。
あ~、また面倒くさいとこに足を踏み入れそうだよ。

 
撒旦豹紋尺蛾
Epobeidia lucifera extranigricans
(Wehrli, 1933)
(出典『圖錄檢索』)

(出典『gaga.biodiv.tw』)

 
前回のタイワンキゴマダラの回でも擬態相手として紹介した奴だ。学名のLuciferaって、Lucifer由来だよなあ。ルシファーと云えば、魔王サタンの堕天使前の名前だ。台湾名の撤旦は、サタンの宛て字でしょう。
結構、デカそうだ。
裏面の画像をダウンロードできなかったけど、網の中に入れて写真を撮った方の蛾にかなり似ている。大きさ的にどうだったかな?特別大きいという記憶はないんだよね。よくよく見れば翅の尖り方も違うし、たぶんサタンと同一種ではないな。

 
狹翅豹紋尺蛾
Parobeidia gigantearia marginifascia
(Prout, 1914)
(出典『圖錄檢索』)

(出典『gaga.biodiv.tw』)

 
コヤツもデカそうだ。画像の背景から推察すると、さっきの魔王と大きさ的には変わらないような気がする。
あっ、学名がgiganteariaだ。ギカンティアということは、コレも間違いなく大きいだろう。学名にギガとかメガとかつく奴は99%デカブツなのだ。

 
大斑豹紋尺蛾
Obeidia tigrata maxima
(Inoue, 1986)
(出典『gaga.biodiv.tw 』)

(出典『圖錄檢索』)

 
(裏面)
(出典『woodman 秘密花園』)

 
網の中に入れて写真を撮った蛾と似ているが、白い部分の黒斑が大きいね。

因みに香港には、亜種なのかヒョウマダラの♂みたいなのもいる。

 
(出典『以自然為本』)

 
♀ほどではないにせよ、♂だって擬態の精度は高い。きっとこの手の黄色系(&白)のエダシャクは、他にも何種類もいるんだろうなあ。だとしたら、ヒョウマダラってメチャメチャええとこに目をつけたね。毒持ちの似たようなのが沢山いればいるほど、その身は安全だ。生きるためにそこまでしてコムラサキグループの生き方を捨てれるって、ある意味あっぱれだ。
ヒョウマダラは普通種だと言われる。思うに、普通種というのは某(なにがし)かの生存戦略がたまたま大当たりして繁栄した者たちなのだろう。

コイツらも大型種のような気がするなあ…。
だいたい亜種名が「maxima(マキシマ)」って時点でデカいわな。

ここでシナプスが繋がった。
コレって、日本でも中国地方なんかで珠に採れてるキベリゴマフエダシャクに似てねえか❓

調べてみたら、やっぱそうだったよ。

 
キベリゴマフエダシャク
Epobeidia tigrata leopardaria
(Oberthür, 1881)

(出典 2点とも『廿日市の自然観察』)

 
でも、亜種名が違うな。leopardalisか…。
ようするに英語のレパード。豹だね。

(´д`|||)クソー、結構似たような奴がいるなあ。
やっぱ、ややこしいじゃないか、(`ロ´;)バーロー。

 
豹紋尺蛾
Obeidia vagipardata albomarginata Inoue, 2003
(出典『圖錄檢索』)

 
網の中の奴はコレっぽいなあ。
たぶん、コレだろ。そういう事にしておこう。キリがない。
あとは、もう1つの翅のもっと丸っぽい蛾の正体を暴いて、とっとと終わらせよう。

 
波尺蛾與豹紋蝶
Euryobeidia largeteaui (Oberthür, 1884)
(出典『gaga.biodiv.tw』)

 
(*`Д´)ノよっしゃー❗、決定打じゃろう❗❗

 
(出典『nc.biodiv.tw』)

 
大きさもヒョウマダラと同じくらいみたいだし、きっとコレだな。間違いなかろう。
そういえば、居た環境も同じような様子の林道沿いだったわ。いやはや、このミミクリー度はスゴイやね。

しつこく擬態精度に拘ったけど、実際は大きさの大小は擬態効果にはあまり関係ないのではないかと思う。細かい斑紋の違いも関係ないだろう。酷似しているに越したことはないけれど、鳥がそこまで厳密に見て判断しているとは思えない。もし鳥が毒のあるエダシャクを食ったとしよう。それが非常にマズかったら、たぶん大小に関係なく似たようなものは全て食べないだろう。そこまでリスクを冒す必要性は無いからだ。
あなたに質問です。もしAの皿には毒の無いフグが盛られていて、Bの皿には毒のあるフグが盛られていたとしよう。見てくれは少しばかり違うとして、あなた、食べますか❓
んなもん、どっちも選ばんでしょうよ( ̄ヘ ̄メ)

 
【学名】
Timelaea albescens (Oberthür, 1886)

タテハチョウ科 コムラサキ亜科のヒョウマダラ属に分類される。
属名のTimelaea(ティメラエア)はMelitaea(ヒョウモンモドキ属)のアナグラム(言葉あそび)。
小種名のalbescens(アルベスケーンス)は「白くなった」の意で、ラテン語のalbesco(白む)の現在分詞。これは♀の白い部分が目立つことからだろう。
亜種名formosanaは「台湾の」という意味。
前の学名であり、混同されてきたmaculata(マクラータ)は、ラテン語で「斑点のある」を意味する。

因みに『アジア産蝶類生活史図鑑』では、学名が違っていて「Rohana albescens」が採用されている。
この図鑑は、しばしば従来知られている学名とは違うものが採用されているので注意が必要だ。
Rohanaはチビコムラサキの属名である。おそらく幼虫が互いに似ているからだろう。ようするに、幼生期の観点からの分類なのだ。学名が違うのは困るけれど、アプローチとしては面白い。その姿勢は、けっして間違ってはいないと思う。

英名は特に無さそうだ。小さくて地味というのもあるだろうが、おそらくインド・ネパール・パキスタンなどの英語文化圏には生息していないからだろう。
英名をつけるとしたら、何がいいだろう。
例えば『Leopard Baron(豹男爵)』なんてどうだ?
盛りすぎのような気もするが、こういうのは少しくらいジャッキアップしといた方がよろし。タキシードにシルクハット、でも顔はヒョウそのものなんてのを想像しちゃったんだよね。みんなも勝手に英名を想像してみれば?けっこう遊べますよ。
何れにせよ、名前にLeopardがつくのは必至だね。

 
【台湾名】白裳貓蛺蝶

貓蛺蝶というのは、Timelaeaヒョウマダラ属のこと。属名にも、この漢字が使われている。
小さいから豹ではなくて猫なんだね。猫的タテハチョウかあ…。オデ、馬鹿だから、蝶の羽を有した猫がバッサバサ羽ばたいているのを想像したよ。
白裳の白は、この蝶かタイリクヒョウマダラと比べて白いからだろうか?「裳」は古代のスカート、袴(はかま)のこと。
別称としては、他に豹紋蝶、豹斑蛺蝶、白斑蛺、豹紋蛺蝶などがある。

 
【分布と亜種】

亜種は現在のところ、2つに落ちついているようだ。

◆Timelaea albescens albescens
(Oberthür, 1886)名義タイプ亜種
中国

◆Timelaea albescens formosana
(Fruhstorfer, 1908)
台湾亜種

原名亜種 T.albescens albescensは、増井さんたちの論文によると、台湾の対岸から四川省にかけての狭い分布域であろうと述べている。

「大陸における産地は、確実な報告が少なく、Obe
thurによる基産地Chfipa(四川省)、Leech(1892)に述べられたWa−ssu−kow(四川省)のほか、成虫の写真を示した童雪松ら(1986)と幼虫を示した小岩屋(1989)による浙江省での記録以外は採用できない。著者は浙江省の標本しか実見していない。」

杉坂美典さんのブログでは、中国の南西部・中部・南部・東部に分布していると書かれている。
記録は陳西省、山東省、河北省、遼寧省、河南省、四川省、貴州省、広西自治区、湖南省、広東省、福建省にあり、かなり広い。これは、中国での分布調査が進んだせいなのかもしれない。とはいえ、T.maculataとの誤同定も多いから疑わしい記録もあるだろね。
参考までに、杉坂さんの分布図を載せておこう。

 
(出典 杉坂美典『台湾の蝶』)

 
増井さんは狭いと書いていたけど、全然狭くない。
あれっ?、この分布図って何処かで見たような記憶がある。

 

 
『原色台湾蝶類大図鑑』のヒョウマダラの分布図だ。
コレって、学名がT.maculataになってるけど、タイリクヒョウマダラを含めた分布図なのか、それともヒョウマダラだけの分布図として載せたのか、どっちだ?

因みに、こういう分布図も見つけた。

 
(出典『www.jpmoth org』)

 
もうどっちだっていいや。なんだか段々面倒くさくなってきたよ。

( ´△`)あー、やだ、やだ。
更にややこしいのは、ネットで見るといまだに亜種が他にあげられている事である。

◆ssp.obscurior (Hall 1935)

上の分布図にこの亜種の画像があった。

(出典 2点とも『www.jpmoth org』)

真面目に比べたワケじゃないけど、一見してどう違うのかワカラン。どうせ亜種にする程の大きな差違はないでしょう。

◆ssp.orientalis (Belter 1942)

◆ssp.reticulata (Matsumura 1939)

◆ssp.albescens (Oberthür, 1886)

◆ssp.formosana (Fruhstorfer, 1908)

下に記すシノニムと被ってるヤツもあるね。
何れにせよ、記載年代が古いから原名亜種に集約されたのだろう。

シノニム(同物異名)には、以下のようなものがある。

◆Timelaea albescens muliebris
(Fruhstorfer, 1912)

◆Timelaea albescens confluens
(Nire, 1917)

◆Timelaea albescens reticulata
(Matsumura, 1939)

あと、抜けてるけど、シジミタテハのssp.nanaなんかもシノニムかな?それは、maculataのシノニムかえ❓

ssp.muliebrisは冬〜春型で、後翅表裏の白化が顕著なものという(白水,1960,0kano,1984)
台湾産の本種には個体の大きさや、後翅中央部の白化 の程度に変異が大きい。そのために多くのフォーム名が記載されたようだ。

 
【生態】
開張50~62mm。台湾では全土に分布し、海岸から2000mを越える高地まで広く見られるが、1000m以下の低山地に多い。4月~10月に亘って数回の発生を繰り返すが、1月でも飛び古した個体を見かけるという。
飛翔は緩やかで、すぐに止まる。♂は路上や崖などに止まるほか、湿地で吸水する。♂♀ともに樹液や腐った果実に集まり、アカメガシワの樹液やギランイヌビワの果実の吸汁を行うことが観察されている(福田 1975)
因みに、自分の記憶ではフルーツトラップには一度も訪れていない。
原色台湾蝶類大図鑑には「樹液に集まる習性からも本種がヒョウモンチョウ亜科の種でないことが推定される」と書いてあるが、台湾のヒョウマダラのサイト(圖錄檢索)を見ると、生態欄に「會訪花」とあった。花に吸蜜に訪れるとしたら、ヒョウモンチョウみたいではないか。俄(にわか)には信じがたい。普通、コムラサキ亜科の蝶は花には訪れない。う~ん、だとしたら、やっぱりコムラサキ亜科のクセに変なやっちゃのう。どんどんグループから離れていって、そのうち別属にまで進化するかもしれんぞ(;゜∇゜)

そう珍しくない普通種みたいだが、産地での個体数は少ないという記述もある。言われてみれば、そんな気もしないでもない。とはいえ、見つけたら楽勝で採れます。

 
【幼虫の食餌植物】
台湾では、Vlmaceae(ニレ科) エノキ属をホストとしている。

・Celtis formosana タイワンエノキ
・Celtis sinensis エノキ
・Celtis nervosa コバノエノキ

幼生期については『アジア産蝶類生活史図鑑』に詳しい解説があるので、一部転載させて戴こう。

【卵】
(出典『随意窩』)

 
♀は2m以下の小型の食樹の葉裏に1個ずつ卵を産みつける。
前回、前々回に取り上げたSephisa キゴマダラ属とは違い、縦に筋が入る如何にもコムラサキ系タイプの卵だ。但し、色はオオムラサキやコムラサキみたいに緑色ではないね。たぶん卵は真っ白。上が紫がかってるのは幼虫の孵化が近いせいだと思う。

【2齢幼虫】
(出典『随意窩』)

 
(о´∀`о)可愛ゆすぅ~。
角(つの)のギザギザ度が強いね。

幼虫は葉の裏面に糸を吐きつけて台座をつくり、頭を葉柄に向けて静止する。越冬は3齢。食樹の枝につく枯葉の巣の中で冬を越す。
越冬幼虫は枯れ葉色に変色するのだろうか?
でも調べた限りでは、緑色のものしか見つけられなかった。

 
【終齢幼虫】
(出典『随意窩』)

 
コムラサキ亜科特有のナメクジ型だが、下ぶくれで、ブサいくでやんの。どーでもいいけど、なんか小さい時は可愛いらしい女の子だったのに、大人になったらブサいくになってましたー。みたいな感じじゃないか。
ともあれ、この形からチビコムラサキに近いと判明したんだね。

 
(出典『My Chat 敷位男女』)

 
顔がダダに似てなくね❓
顔面をアップしてみよう。

 

 
目の辺りが、ダダのブツブツみたいだな。
全然、可愛くねぇよ。

春になると摂食を開始し、幼虫は台座を築いた葉を食わず、他の葉へ移ってこれを食う。これはオオムラサキやゴマダラチョウと同じ習性だね。

蛹化は食樹の低い位置の葉裏で行われる。

 
【蛹】
(出典『随意窩』)

 
コムラサキ亜科典型の蛹だけど、背中がギザギザだあー。こうゆうのって、角の形と連動するのかな?

図鑑では、ヒョウマダラの幼生期について次のようなことを指摘している。
「本種の生活の特徴は「葉裏産卵➡葉裏生活」すなわち全幼生期を通じて葉裏生活(隠れる生活)をすることにある。これは「葉裏産卵➡葉表生活」のHestina ゴマダラチョウ属、「葉表産卵➡葉表生活」(表面に身をさらす生活)のAptura コムラサキ属などと対比すれば興味深い。」

言われてみれば、そうだ。でも何で葉裏型と葉表型があるのだろう?普通に考えれば裏にいた方が天敵に見つかりにくいだろうに。でもエノキの葉っぱは日の光の下では照り映えるから、意外と幼虫はそれと同化して見つかりにくいのかもしれない。

ヒョウマダラは、コムラサキの1種なのにずっとヒョウモンチョウの仲間に入れられたまんまだったり、学名はたらい回しと云うか間違えだらけにされてたりと、何だか不憫だよなあ…。
コムラサキグループからは「おめぇ、俺たちのグループじゃねえだろ?」と言われ、ヒョウモンチョウ軍団からは「おめぇ、ホントにワシらの仲間かあ?」と疑われる図を絵本的に想像してしまったよ。なあ~んか一人ぼっち感があって、淋しいだろね。
あまり注目されてないし、蝶屋からも無視されがちで、愛も足りないよね。ホント、淋しい蝶だよ。
自分だったら、こんな扱いをされたら淋しくって泣いちゃうね。

 
                  おしまい

 
追伸
べつにヒョウマダラが淋しいワケじゃない。
ヒョウマダラ本人は、そんなこと露とも思っていないだろう。生きることで精一杯なのだ。そう見えるのは自分の勝手な憶測にすぎない。豹柄て淋しいのは、豹柄を纏った女だけだ。
何でこんなタイトルにしたかと云うと、豹柄を纏った若い女性が淋しいと思ったからだ。正確を期すならば、タイトルは「豹柄女は淋しい」とすべきだったろう。しかし、タイトルを「豹柄女は淋しい」としてしまえば、身も蓋もない。

あれっ❓、おいら何が言いたかったんだろう❓
ようは豹柄は若い女性にとっての武装のアイテムなのだ。
しかし、決して攻撃的ではなく、寧ろ敵から身を守るためのものだ。変な男が近づいて来ないようにしているのである(それを見抜いてアプローチをかける♂もいる)。
豹柄を着ている女にアプローチする男はあまりいない。
そこには、いくつかの理由が考えられる。とりあえず、ここではヒョウ柄のオバチャンは除外して説明する。そこをシッカリ留意しておいて戴きたい。アレはまた別な生き物で生態も違うから、別種と考えるべきなのだ。

①ケバい。

豹柄=派手のイメージだ。金好きのワガママな女というイメージも加味される。
そういう女は、大抵が面倒くさい。押し込みが強かったり、物をねだるのも上手い。近づかないに越したことはない。
そして、一緒に歩いていて恥ずかしい。
『アイツなあ、こないだ豹柄女を連れて歩いとったでぇ~』
こう言われるのがオチである。その場合、決して良い意味では使われない。変な女を連れていたという意味だ。アイツ、騙されとるんちゃうかあ?とか、趣味悪いなあとか、そんな意味が込められている。

②親や友だちに紹介できない。

上記の理由に加えて、家庭的なイメージが無いために周りからの交際反対必至である。男は最終的に家庭的な女を結婚相手に選びたがるのである。

③ヤのつく自由業の恐い人の情婦という可能性

今時、美人局(つつもたせ)なんて流行らないが、後で恐いお兄さんが出てきて、脅される可能性は無きにしもあらずなのである。もしくは前カレがパイオレンス系のお方で、ボコボコにシバかれるというケースも考えられる。さわらぬ神に祟りなし。豹柄女には、常にトラブルのイメージがついてまわるのだ。

④精神的に不安定
ここが「豹柄女は淋しい」という論理に繋がる。
経験上、豹柄女はかまってもらいたい人が多い。それがゆえの豹柄なのだ。常に注目されていたいタイプだ。だから、ちょっとでもぞんざいに扱おうものなら、心が不安定になり、泣いたり喚いたりする女性が多い。かまってもらいたいがゆえのエキセントリックな行動なのだ。豹柄女は淋しいのだ。そして、面倒くさい。

とはいえ、正直言うと豹柄女はそんなに嫌いじゃない。扱いさえ間違わなければ、一緒にいて楽しかったりもする。
そういえば、一時(いっとき)だけど、昔、都会の街が豹柄の姉ちゃんたちで溢れかえったことがある。何事かと思って驚いたけど、これは当時若い女性に絶大なる影響力を持っていたあゆ(浜崎あゆみ)が豹柄の服を着ていたからだと、少しあとで解った。
また豹柄のお姉ちゃんが増えないかなあ。見てる分には楽しいもんね。

邪魔くさいが、一応ヒョウ柄好きのオバチャンたちの事も分析しておこう。さっきの若い豹柄女と被るところがあるが、別種(別物)である。

 
(出典『blog.goo.ne.jp』)

 
47人からなる大阪のニューヒーロー『オバチャーン』なんだとさ。アメちゃんを配りまくるらしい。
強烈やわ。スゴイね。
「オバチャーン」は気になるが、本題に入ろう。

『なぜ、大阪のオバチャンがヒョウ柄が好きなのか』

①派手好き
関西といっても、各府県でフアッション傾向に違いがある。他府県の事は置いといて話を進める。
とにかく大阪のオバチャンは派手好き。派手がカッコイイと思っているのである。目立ってなんぼなのだ。その目立つ最たるアイテムがヒョウ柄なんである。そこには淋しさなんて要素はコレっぽちも無い。
その目立ちたい精神は、同じブランド品でも東京なんかと比べてブランドのロゴ、ドオーンのものを圧倒的にお好みあそばすことでもわかる。上品な神戸や京都のオバサマはドン引きなのだ。

余談だが、ヒョウ柄オバチャンのコメントに「一度ヒョウ柄で味わったゴージャス感がやみつきになってしまった」というのがある。
そっかあ…。ヒョウ柄には中毒性があるのだね。ヒョウ柄は麻薬と一緒なのだ。大阪はヒョウ柄の服が店頭に並ぶことが他府県よりも圧倒的に多い。アレはヒョウ柄オバチャンの購買欲を限りなく掻き立てる店側の作戦なんだね。シャブ漬けの如くヒョウ柄中毒になったオバチャンは、オートマチックに買ってしまうのであろう。大阪ヒョウ柄黒社会だ。

②威嚇
大阪のおばちゃんのヒョウ柄には威嚇の意味がある。
自分を鼓舞する戦闘服でもあろう。
上品ぶる神戸や京都のオバサマに対して「アンタら、なに上品ぶっとんねん。」なんである。

大阪のオバチャンの大半はアクが強くて言いたいことをズケズケ言う。押しが強いのだ。その中で、それに対抗するためには派手な服やアクセサリーが必要なのだ。それがヒョウ柄なのである。ヒョウ柄は着ることによって己の精神をも強化できる、謂わばバトルスーツの役割を担っているのである。
ヒョウ柄を着ているオバチャンにインタビューしたら、次のような答えが返ってきたという。

「テンション上がる」
「闘争心が起こってくる」
「勝てそう」
「怖いものがなくなる」

きっと買い物で値切る時などにも活躍している筈だ。ヒョウ柄のオバチャンがゴリゴリで攻めてきたら、値引きせざるおえないだろう。
そこには、若い女の子が健気(けなげ)に自分を強くみせようとする弱さみたいなものは微塵も存在しない。

③お金持ちに見せたい
ヒョウ柄といえば、本来は毛皮である。数ある毛皮の中でも最高にゴージャスに見えるのがヒョウ柄の毛皮だ。最高級のお金持ちファッションのイメージですな。ヒョウ柄の服は、そのお手軽廉価版なのだ。オバチャンたちは毛皮より安いのにお金持ちに見えるといった理由で着ているんだとさ。でも、それって成金趣味にしか見えないよね。オバチャンたちが望んでいる上品なお金持ちには到底見えまへんえー。

ヒョウ柄ってフェイクだなあ~。
謂わばオバチャンたちも擬態してるんだね。

④スタイルを隠すため
昔と比べて醜くなったスタイルを補うためにオバチャンたちはヒョウ柄を着ると、何かの記事で読んだことがある。心理学的アプローチで、どーのこーのと書いてあった。
うろ憶えだが、要旨はこんな感じだったかと思う。
ヒョウはしなやかなイメージを持ち、ウエストが細く、歩く時にお尻を振って歩いているように見えるため、セクシーさの象徴である。
もう色気がなくなったと感じているオバチャンたちは無意識にヒョウ柄の持つセクシーパワーの助けを借りて、まだまだ私は女性なのよとアピールしているとか何とかって書いてたっけ。
無理矢理なこじつけのような気もしないでもないが、確かに若い女の子はあまりヒョウ柄を着ない。充分に色気があるから必要ないのだとも言える。

そういうヒョウ柄好きの大阪のオバチャンたちだが、最近は減ってきているようだ。マスコミが、あーたらこーたら取り上げるので恥ずかしくなったのかもしれない。だとしたら、残念なことだ。大阪のオバチャンとヒョウ柄は今や文化である。消えてゆくのは寂しい。大阪までもが個性を失って、平準化の波に呑み込まれていく時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。だとしたら、つまんねえ世の中だよなあ。

 
(註1)もう少し記憶を遡ろう
アメブロにある採集記には、ヒョウマダラ関連の記事が4編あります。よろしかったら、読んでくだされ。
下の青文字をクリックすると、記事に飛びます。

発作的台湾蝶紀行6 豹柄女はフェイクなのさ

発作的台湾蝶紀行9『空飛ぶ網』

発作的台湾蝶紀行43『白水さん大活躍、ワシ虐待男』

発作的台湾蝶紀行46『大名様のお通りだーい』

 
(註2)白水先生と三枝先生
九州大学の師弟コンビ、白水隆と三枝豊平両氏のこと。この二人の共同研究という形で、ヒョウマダラがコムラサキだと看破した論文が書かれたようだ。
白水先生は蝶界の巨匠みたいな人だが、数年前にお亡くなりになられた。お会いしたことはないけど、合掌。

 
(註3)増井さんと猪又さんの論文
増井暁夫・猪又敏男『世界のコムラサキ(3)』。
やどりが 148号(1992)

 
(註4)ダダ
(出典『プレミアムバンダイ』)

 
ウルトラマンの怪獣(星人)。
オイチャンは、コレとケロニアが泣くほど怖いのだ。

 

蛍烏賊が好き!!

 
ホタルイカが好きである。
タイトルは、その気持ちをストレートに表したものである。
高橋留美子の漫画『うる星やつら』に出てくる浜茶屋のオヤジ(註1)がよく『海が好き!』って叫んでたなあ。アレって、ワケわかんないけど好きだったなあ。気分はソレに近いものがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
これは去年1年間で食ったホタルイカである。
それにしても、食いに食ったりである。
どんだけホタルイカが好きやねん(笑)

見ると、殆んどバリエーションが無い。
ほぼほぼ芥子酢味噌あえだ。
それ以外は、せいぜい生姜醤油くらいなものだろう。

芥子酢味噌は圧倒的にコレだ。

『岡ぼんのからし酢味噌』である。
コレを知ると、他の酢味噌には浮気できなくなる。
何っつーのかなあ…、一言で言うならば、変に甘ったるくなくてバランスがいいのである。
自分で作った方が旨いんじゃねえかと思う時もあるけど、いつも上手く作れるワケではない。出来にムラがあるのだ。だいち手間を考えれば、断然、岡ぼんのからし酢味噌に軍配が上がる。

話は変わるけど、食べる前に必ず目玉と薄い骨(烏賊骨)は取り除きましょう。コレだけで随分と美味しさが変わる。変態的な人は、口の部分の烏口(からすぐち)まで取り除くようだけど、自分はそこまではしない。
兎に角これらを取り除かないと食感が悪くなるから、面倒でもそれくらいはやりましょうね。

そろそろホタルイカの新物も出始めている。
さあ、今年もホタルイカ三昧の日々を送るぞ❗

                 おしまい

 
追伸
とは言っても、まだまだこの時期のは小さい。ホタルイカは大きい方が美味いのだ。パンパンに膨れたのが、いと美味し。中でも富山湾で獲れたものが最高である。少々、値がはるが、その辺のホタルイカよか断然美味いから、見つけたら買うべしでっせ。

(註1)浜茶屋のオヤジ
(出典『だからオイラはダメなんだ。』)

今、見ても破壊力のあるキャラだよなあ。

竜之介の父。腹巻き姿に「海が好き」とプリントされたステテコとかTシャツを着ており、先祖代々浜茶屋を経営している。跡継ぎに息子を欲していた為に、娘に「竜之介」と名付け、息子として徹底的に男のように育てた。しかし、それが原因で日々壮絶なケンカを繰り返している。腕っぷしも強いが、汚ない奸智にも長けており、それがまた笑える。妻の名前は真砂子。

 

茶振赤海鼠地獄柚子釜

 
この漢字の羅列「ちゃぶりあかなまこじごくのゆずがま」と読む。
何だか「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」みたいだにゃあ。
by ちかまつもんざえもーん(近松門左衛門)なのだ。

久し振りに赤ナマコを一匹買いした。
青ナマコは買わない。ただでさえグロいのに、青はよりグロいから気が進まないのだ。
巷説だと、関東は青ナマコが珍重され、関西では赤ナマコが珍重されている。これは別種ではなくて、住んでる環境が違うかららしい。一方は砂場、一方は岩礁にいるから色が変わるという。

ナマコを洗って、口と尻の硬い部分を包丁で落とし、腹側に縦一文字に切れ目を入れて内臓を取り出す。今回は無かったが、腸管があれば、珍味このわたになるので取っておきませう。
一連の見てくれは、あまりにグロいので画像は無しです。

下処理が終わったら番茶を沸かす。グラグラに沸騰したところで、そこにナマコをブチ込む。地獄絵図じゃね。
で、1、2、3、(*`Д´)ノ!!!トゥリャアー。
3秒で取り出し、素早く氷水なり冷水につけて急速冷却する。今の季節なら水道水だって大変チビたいので、冷水でよろしかろう。なお、10秒以上熱茶でゆがくのは厳禁。表面がぐにゅぐにゅになるので注意されたし。まあ、そのぐにゅぐにゅが好きな変態さんは好きなだけ茹でなはれ。

熱がとれたら、表面の水気をとって切りに入る。
ここからが重要だ。普通は薄切りするのだが、茶ぶりしてあるのでサイコロ状に切る。こうすると、外グニュ、中コリッの抜群の食感になる。

おーっと、順番が逆だった。本来ならば柚子釜を先に用意しておくべきですな。
柚子の上3分の1から4分の1を横に切る。上はあとで蓋になるので、捨てないでね。
次に柚子の果肉部分を取り出す。これは難しそうに見えて簡単。柚子は皮と果肉の間に隙間があって、手で簡単に果肉を取り出すことができるのだ。取り出した果肉は柚子ポン酢にするなり、サラダにするなりすればよろし。

で、ナマコと大根おろしを和える。
あとは空洞になった柚子釜に入れて、ポン酢をかければよろし。お好みで七味なり、かんずりなり、柚子胡椒なり、貝割れ大根をあしらって完成。

 

 
どれも決め手にかける画像なので、並べてみた。
う~ん、画像とか何かよりも柚子釜の上の方を切りすぎたのが失敗。もっと下で切った方が口が広くなって見栄えが良かったのにね。

食う。
( ☆∀☆)うみゃーい❗❗
噛んだ時に、最初に歯にグニュっとしたのがきて、続けてナマコ本来のコリコリがやって来る。奇跡の食感じゃよ。

これはもう、日本酒だな。

 

 
福島県の大七の純米だ。
冷やでやる。辛口で旨い。

お猪口はユーラシア大陸をバイクで横断した時に知り合った高橋さんか焼いてくれたもの。

 

 
この月と星のデザインはトルコの国旗がモチーフだ。
きっとトルコで出会ったからだね。
何でこれを選んだかというと、ナマコといえぱナゼか月を連想するからだ。たぶん、その形と海月という漢字が頭の中でゴッチャになっているのだと思う。海月はナマコではなくて、クラゲと読むんだけどね。ナマコの海鼠という字と海が被るからかなあ?

 

 
ナマコは去年の暮れ辺りから、珠に食っている。

 

 

 
オラって、ナマコ好きなんだね。

                 おしまい

 
追伸
思った以上に簡単だから、作ることをお薦めします。
ただし、婦女子はナマコ本体を見て、卒倒したり固まったりするかも。( ̄∇ ̄*)ニヤリ。

台湾の蝶24『日光菩薩』

 
 
  第24話『大名黄胡麻斑』

 
前回のキゴマダラが月光菩薩ならば、ダイミョウキゴマダラはさしづめ日光菩薩(註1)ってところだろうか。
色が輝くような橙色だから太陽の光(日光)を連想させるし、台湾特産種だ。それくらいの称号を与えてもいいだろう。しかも、かなり珍しい。自分もたった一度しか出会ったことがない。

 
【Sephisa daimio ダイミョウキゴマダラ♂】

 
何で片羽だけの画像かって❓
理由は、こうなのさ。

 

 
♂の新鮮な個体なのに、片方の羽がザックリいかれとるのよ。たぶん鳥に啄(ついば)まれたんだろね。
これにはマジ、ガッカリした(´д`|||)
しかも、羽を閉じて止まっている時は破れていない方の面が見えていたから、完品だと思って心の中で小躍りした。それが採ってみたら、コレだもん。(ToT)泣いたよ。

 

 
(2016.7.14 南投県仁愛郷 alt.1900m)

 
この時の採集記『大名様のお通りだーい』(註2)はアメブロにあるので、よろしかったらソチラも読んで下され。リンク先を文末に貼っておきます。

 

 
裏がまたカッケーんだよなあ。
白とオレンジの組み合わせって、上品な感じがする。
♀は表にも白が入り、橙色が淡くなるから、さらに高貴なるお姿だ。

 
(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
キゴマダラほど顕著ではないが、一応雌雄異型。
♀は更に稀で、長年その存在が未知だったようだ。
上の原色台湾蝶類大図鑑に図示されたものが最初に世に出た画像なんだそうだ(1960年)。ネットでググっても、今でも写真が極めて少ないし、生態写真となると、もっと少ない。しかもロクなものがない。唯一、美しい写真を撮られているのは杉坂美典さんだけだ。
リンク先を貼っておきます。クリックでサイトに飛びます。

 
杉坂美典『台湾の蝶』

 
ちょっと画像をお借りさせて戴こう。

 

 
(出典 2点とも杉坂美典『台湾の蝶』)

 
高貴とまで思えてしまうのは、稀種ゆえの思い入れからかもしんないけど、やっぱカッコイイもんはカッコイイ。

こうして鮮明な画像を見ると、本種は同属他種と比べて前後翅外縁に並ぶ斑紋列が顕著な楔(くさび)型になるのがよくわかるね。この特徴は本種のみにある。

ふつうはタテハチョウ科の蝶は♂に比べて♀は大型になるのだが、インドキゴマダラ(Sephisa dichroa)と同様にそれほど大型にはならないという。なお、♂と見紛うような♀の黄色型は、今のところ例が無いみたいだ。

 
【学名】Sephisa daimio (Matsumura,1910)

タテハチョウ科 コムラサキ亜科のインドキゴマダラ属に分類される。
属名のSephisa(セフィーサ)の語源は不詳。
小種名のdaimioは「大名」を意味する。あの戦国大名の大名だ。これは日本人である松村松年が命名したから。蝶の立派さを大名で表したかったのだろう。つまり、日本人的感性でつけられた名前なのである。
松村松年は日本の近代昆虫学の礎を築いた人で、日本の昆虫の和名を統一し、自らも多くの昆虫に和名をつけた人でもある。
台湾の昆虫の学名には、日本人によって命名、記載されたものが数多くある。これには時代背景があって、当時の台湾が日本の統治下にあった事を物語っている。かつては台湾は日本の領地だったのである。また、当時の台湾で昆虫を本格的に研究している人などいない時代だったと云うのもあるだろう。
そういう背景があったとしても、蝶の名前に大名という立派な名がついているのは、日本人の自分としては何だか嬉しい。daimioだなんて、外国人からすれば何のこっちゃだと思うだろうけどさ。

因みに、学名にこの大名が使われている種は他にもいる。日本にいるダイミョウセセリ Daimio tethysとベニシジミの日本亜種 Lycaena phlaaeas daimio である。
ダイミョウセセリは日本以外にも、朝鮮半島、済州島、中国北部~東北部、ロシア南東部、中国中部~南部、中国西部・チベット、中国雲南省からインドシナ半島北部と台湾にもいて、亜種区分もされている。もしも豊臣秀吉の朝鮮侵攻が成功し、さらに領地を拡大していたならば、朝鮮大名とか支那大名、雲南大名、西蔵(チベット)大名、露西亜(ロシア)大名、暹羅(シャム。タイの旧名)大名とかだよなあと想像したら、笑ってしまった。みんなチョンマゲなのだ。
もし別種のDaimio属のセセリチョウが他にもいるとしたら、それぞれフィリピン大名とかジャワ大名、マレー大名、ビルマ大名になるね、なっちゃいますね(笑)。
アジア群雄割拠の大名祭りだよ~ん\(^o^)/
いかん、また話が横道大介になってもた。本筋に戻そう。

増井さんと猪又さんの論文(註3)を読むと、ダイミョウキゴマダラの学名には紆余曲折があり、興味深いので要約してみよう。

「1908年に松村松年がSephisa princepsの亜種として記録したのが最初である。その2年後に同氏によって、Sephisa属の新種として記載された。松村の命名に遅れること1ヶ月、Wileman(1910)も新種として「Sephisa taiwana」の名で発表したが、これは、S.daimioのシノニム(同物異名)となった。しかし本種はその後、1913年にFruhstorferによって、S.dichroaの亜種とされた。それ以降、全ての研究者がこれに従った。本種を再び独立種として扱ったのは白水(1944)である。」

蝶一つとっても、歴史を紐解くと色々あるんだね。
ダイミョウキゴマダラが一時期は亜種とされていたのは理解出来なくもない。たしかにこのグループは互いに似ているのだ。今一度、Sephisa属を整理しておこう。

 
【Sephisa dichroa インドキゴマダラ】

本種は、Sephisa属の中で最も西寄りのヒマラヤ西北部から中部の南側の樹林帯(ネパール・インド・パキスタン)に分布する稀種。地理的変異は特に知られていないようだ。
小種名dichroaは、多分だがラテン語で「二つの色」と云う意味だろう。これは植物のジョウザンアジサイの属名としても使われている。

 
(インドキゴマダラ♂)
(出典『Butterflies of India』)

 
(出典『wikipedia』)

 
雌雄同型、♂も♀も斑紋が同じなので、♀の画像は割愛させて戴いた。

 
(裏面)
(出典『Butterflies of India』)

 
(出典『Wikipedia』)

 
【Sephisa princeps カバイロゴマダラ】

本種の分布はSephisa属の中で最も北寄りに偏る。
その分布域は広く、南限の雲南省から中国全土(西部の砂漠地帯は除く)・朝鮮半島・ウスリー・アムール地方にまで至る。
小種名の、princeps(プリンケプス)はラテン語の「支配者・君主」の意。

 
(カバイロゴマダラ♂)
(出典『LEPIDPOTELISTES DE FRANCE』)

 
(出典『jpmoth.org 』)

 
(裏面)
(出典『jpmoth.org』)

 
♂はS.dichroa(インドキゴマダラ)と物凄くよく似ている。実際、ネットでも両者がグチャグチャに混同されていて、同定は間違いだらけだ。dichroaとしている画像の、その殆んどがprincepsのものなのだ。
自分もデータを鵜呑みにしてて、やらかした。前回のキゴマダラ編で、dichroaの雌雄同柄の例としてあげた画像は、princepsの♂2頭並びだった。お陰で、あとで別な画像に差し換えなおしたよ。
両者の違いとして先ずあげられるのが、前翅中室の三角形のオレンジ紋。ここの紋がprincepsはdichroaと比べて内側(基部)に一つ多い。だからdichroaは、そこだけポッカリ空いたような感じに見える。また、前翅上端部の斑が白っぽくなる。一方、princepsは翅外縁部の明色斑列が明瞭で、紋が全てオレンジ色になる。

 
【カバイロゴマダラ♀】
(出典『sunyou.vo.kr』)

 
♀はこんなにカッコいいんだ…。知らなかったよ。
薄青い幻光色が出る個体もいるという。
たとしたら、( ☆∀☆)スッゲー。ポチ、欲しいよ。

Princepsはキゴマダラと同じで雌雄異型なんだね。S.dichroaは雌雄同型なのに、不思議だよねぇ~。
♀はきっと毒系の蛾に擬態してるな。この手の柄の蛾は居て当然な気がする。
しかし、調べていくと、♂と同柄の黄色型の♀もいるようだ。ウスリーや朝鮮半島は全て白色型で、中国中部辺りから西にいくにつれて黄色型が増え、雲南省や四川省までくると黄色型が優勢になるようだ。
おそらくカバイロゴマダラが種として誕生した場所は西ヒマラヤで、きっとその辺りでSephisa属の祖先種からdichroa、chandra、そしてprincepsが分化したのだろう。たぶんだがdichroaが祖先種に近く、そこからprincepsが分かれて東へと分布を拡大したのではないかな。前回のキゴマダラの回でも触れたけど、東へ進む段階で♀は徐々に擬態と云う武器を獲得していったとは言えまいか❓
ダイミョウキゴマダラは、princepsが台湾に到達し、長年隔離される中で独自進化したものだろね。
ところでこの属って、遺伝子解析はされてるのかな❓
されてたら、類縁関係が一発で解るのになあ。

 
(出典『www.guri.go.kr』)

 
【Sephisa chandra キゴマダラ】
分布はネパールからインドシナ半島北部、中国南部を経て台湾に至る。飛び離れてマレー半島にもいる。
小種名chandraは梵語由来で「月・月の神」を意味する。

 
(キゴマダラ♂)

 
(裏面)

 
一見して他とはかなり違う印象をうけるけど、上翅の白斑をオレンジにすれば、他とそう変わらない雰囲気になるかもしれない。

 
(キゴマダラ♀)

 
(裏面)

 
流石にキゴマダラの♀は特異だすな。
擬態化すると、個性が際立ってくるんだろね。

  
【Sephisa shizuyai ヒメキゴマダラ】
ミャンマー・サガイン州

 
(出典 2点とも『月刊むし』2016 11月号)

 
記載されたものの1♂?のみで、♀は未知。
異常個体ではないかという意見もあるようだ。たぶん、別種のような気がするけど、複数個体と♀が発見されないと何とも言えないね。

 
【台湾名】臺灣燦蛺蝶

蛺蝶はタテハチョウの事を指すから、燦(きら)びやかな台湾のタテハチョウってことだすな。
他に、臺灣黃斑蛺蝶、臺灣繚斑蛺蝶、臺灣黃胡麻斑蛺蝶、高砂黃斑挾蝶、臺灣帥蛺蝶、白裙黃斑蛺蝶という別称がある。
漢字でだいたいの雰囲気がつかめるが、いくつかわかりづらいものもある。
「繚」には、まとう・まつわる・めぐる・めぐらすと云う意味があり、百花繚乱にも使われている。よくわからないが、百花繚乱の華やかさを表しているのかもしれない。
「高砂」は山岳民族である高砂族のことだろう。
「帥」の字は将軍を表す。
「白裙」の裙は裳(もすそ)や裙子(くんす)のことで、僧侶がつける黒色で襞(ひだ)の多い下半身用の衣服。裙(くん)、内衣(ないえ)、腰衣(こしごろも)。これは、外縁の楔形の紋のことを言ってるのかなあ。
それはそうと、台湾名には大名の文字は使われていないんだね。残念だ。きっと中国語では大名は通じないんだろう。

 
【英名】
特に無いようだが、キゴマダラに倣いそれに準じるならば、「Formosa Courtier」ってところだろうか。
Courtierは宮廷や朝廷に仕える人、朝臣、廷臣、公家を指し、Formosaは欧州での旧い台湾の呼び名だから、さしづめ『台湾の宮人(みやびと)』といったところだろうか。
でも大名なんだから、もう少し威厳のある名前であってもいいと思うけどねぇ。
例えば「Orange Feudal Lord」なんかはどうだろう。Feudal Lordは、封建時代の君主って意味だから「オレンジの君主」。きっとオレンジ色の派手な甲冑を纏っているのだ。でも、甲冑って、大概がそんな感じの色やんけ( ̄∇ ̄*)ゞ
大名なんだから、そのまま「Orange Daimyo」とか、日光菩薩由来で「God-Sunshine Daimyo」とかさ(笑)。あっ、仏さんは神様じゃないか。
でも日光菩薩には、別にちゃんとした英名があるのではないかと思って調べてみたら、やはりありました。「Suryaprabha」というらしい。何かピンとこないわ。もっ、いっか。

それにしても何で学名はdaimyoじゃなくて、daimioなんだろう。ためしにdaimioで検索したら、すぐに大名と出てきた。ここで漸く解ったような気がした。学名の基本は英語ではなくてラテン語なのだ。daimioはラテン語表記なのかもしれない。相変わらず、どうでもいい事が気になる人だよなあ。だから、徒(いたずら)に文章が長くもなるのである。ビョーキだ。

 
【生態】
開張57~67㎜。台湾特産種で、中北部より中南部の標高500m~2500mで記録されている。だが、おそらく垂直分布の中心は1200~2300mくらいかと思われる。低地での記録は偶産だろう。
発生地は局所的で、個体数も少ないとされる。
成虫は4月下旬~9月に年1回発生すると言われるが、圧倒的に7月の記録が多いという。自分が採ったのも7月だった。見たのもその一度きりなので、やはり個体数は少ないのだろう。
杉坂さんのブログによると、飛び方は速いが、すぐに地上に止まるので撮影はしやすかったと書いておられる。けど正直、自分にはわからない。なんせ、果物トラップに止まっているのしか見たことがないのだ。因みに飛来時間は不明だが、採集した時刻は10時20分である。再度言うが、この時の顛末はアメブロに書いたので、文末を御参考あれ。

他に詳しい生態を書いた資料が見つからないが、その生態は概(おおむ)ねキゴマダラと似たようなものだろう。花には飛来せず、樹液や獣糞、熟して発酵した果物に集まるものと思われる。ちょっと驚いたのは、吸水には雌雄ともに集まるようなのだ。この点は♀が殆んど吸水に来ないキゴマダラとは違う。近縁種なのに不思議なもんだね。
♂はキゴマダラのようにテリトリー(占有行動)を張るのだろうか❓でもなあ…聞いたことがないし、もしそうだとしたら、もっと採集例があってもよさそうなもんだよね。

『アジア産蝶類生活史図鑑』を見たら、近縁のカバイロゴマダラと生態は変わらない云々と書いてあった。
カバイロゴマダラの生態部分を抜粋してみよう。

「♂は日当たりのよい樹梢を数mの高さで活発に飛ぶ。また乾いた路上に静止する。動物の死体や腐った果実などに止まるものも見られる。♀の飛翔は緩慢で、Quercus(シイ・カシ類)の梢を高く飛ぶ。好んで腐った果実に飛来する。産卵はおそらく食餌植物のかなり高い位置で行われるのではないかと想像される。台湾に産する近縁のダイミョウキゴマダラもほとんど上記と同じ習性を示す。」

♀の飛翔は緩慢と云うことは、何か毒のあるものに擬態している可能性がある。体内に毒をもつマダラチョウには似たような種類はいないから、擬態しているとしたら蛾だろう。

  
【幼虫の食餌植物】
未知のようだが、おそらく他のSephisa属と同じくブナ科 コナラ属であることはほぼ間違いないだろう。
因みに他のSephisa属からは以下の食樹が記録されている。

-キゴマダラ-
Quercus glauca(アラカシ)
Quercus morii(モリガシ)
Quercus acata(アカガシ)
Quercus monholica(モンゴリナラ)
Quercus incana

-インドキゴマダラ-
Quercus incana

-カバイロゴマダラ-
Quercus mongolica(モンゴリナラ)
Quercus variabilis(ワタクヌギ)
Quercus crispula?(ミズナラ)

飼育では、Quercus serrata(コナラ)、Q.dentata(カシワ)、Q.gluca(アラカシ)などを広く受け容れたという。
カバイロは常緑カシ類ではなく、主に落葉性のナラ類をホストにしてるんだね。とはいえ、変な産卵習性を持ってて、他の昆虫の丸めた巣の空き家に卵を産むから、ナラ・カシ類だったら何だっていいのかもしれない。

調べた限りでは、唯一ダイミョウキゴマダラの飼育記録があるのは、台湾の蝶の幼生期の解明に多大な功績を残された内田春男さんの1例のみ。
1990年7月29日に南投県で採集した♀により、三角紙内に産卵された卵が孵化、現地でQuercus glauca(アラカシ)により飼育されたようだ。この一部が3齢まで生育したが、結局越冬には至らず死亡したという。
その後、解明が進まなかったのは、本種の♀が珍しいために人工採卵も儘ならないからだろう。

とはいえ、その幼生期はおそらくカバイロゴマダラとかなり近いものと考えられる。参考までにカバイロの幼生期を紹介しておこう。

 
【幼生期】
『アジア産蝶類生活史図鑑』の記述を要約しよう。

♀の産卵行動は、前回のキゴマダラと似ている。
人工採卵させた場合、Quercusの葉をラッパ形に丸めたり、2つに折ったりしたものに産みつけるという。キゴマダラと違うのは、筒の中よりも周辺の葉の重なった狭い隙間や折れ曲がったわずかな空間を選ぶことだ。そこに40~50個の卵を押し込むように産み付ける。
卵は他の蝶のように底辺が平らではないので葉に固定することはなく、互いに表面を覆う粘膜で付着しあっている。
孵化した幼虫はコムラサキ亜科の典型的スタイルで、いわゆるナメクジ型。強い群居性を示し、食餌植物の表面に静止する。
これはキゴマダラの幼虫の習性と同じだね。おそらくSephisa属は皆さんそうで、ダイミョウキゴマダラも同じだと推察される。
越冬は3齢で行われる。これもキゴマダラと同じだ。
越冬幼虫は枝に糸を結びつけられた枯れ葉の皺や重なった部分に体を寄せあって静止する。気温が上がったり、刺激を受けると冬季でも容易に動き始める。

 
(幼虫)
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
キゴマダラと比べて、背中の白いぺラッとした突起物が1対少ない。ダイミョウキゴマダラは、はたしてどうな姿なんだろね。突起物は同じ数なのか、もしくは多いのか、或いは色がピンクだったりしてね。

 
(幼虫正面図)
(出典 『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
キゴマダラとよく似ている。キゴマダラは、ほっぺがピンクだったけど、カバイロは目の回りがピンクなんだね。正直、キゴマダラの方が可愛い。ダイミョウキゴマダラがどんなんなのか楽しみだなあ。顔全面ピンクで、体全体も( ☆∀☆)どピンクだったりして。

群居性は5齢になると失われ、単独で葉の表面に静止する。その際、きわめて大量の糸を葉の表面に張るので、幼虫を剥がすことは容易ではないという。

 
(蛹)
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
蛹も基本的にコムラサキ亜科のそれだね。
キゴマダラと比べると、背中の盛り上りが弱く、スリムな感じがする。色も白っぽい。また頭の耳みたいなのが長めだ。
ダイミョウキゴマダラは蛹全体がピンクで…。
ええ加減フザけるのはやめましょう。

面倒だから飼育したいとは思わないけど、♀は是が非とも自分の手で採ってみたい。でも7月中・下旬って他の蝶があんまり期待できないんだよなあ…。適期といえば、シロゴマダラシジミくらいしか思い浮かばない。
あっ、幻のマレッパイチモンジがいるじゃないか。
ダイミョウキゴマダラの♀とマレッパならば、浪漫がある。コケるリスクが高いけど、ならばこそのロマンだ。行きたいなあ。行けるかなあ…。
虫採りにロマンを持てなくなったら、網を置くときだと思う。
 
                 おしまい

 
追伸
ここまで書いて、ふと気づいた。♀は擬態している可能性があると書いたけど、ならばモデルは何だろう❓

調べてみたら、シャクガ科(Geometridae)のエダシャク亜科(Ennominae)に、こんなのがいた。

 
撒旦豹紋尺蛾
Epobeidia lucifera extranigricans (Wehrli, 1933)
(出典『圖録檢索』)

(出典『gaga.biodiv.tw』)

 
結構、大型のエダシャクなんじゃないかな。
エダシャクならば、毒を体内に持っている可能性が高い。擬態のモデルとしては申し分ないだろう。

 
狹翅豹紋尺蛾 Parobeidia gigantearia marginifascia Prout, 1914
(出典『圖録檢索』)

(出典『gaga.biodiv.tw』)

 
もしコイツらだったとしたら、擬態精度はそんなに高くないよね。まあ、それでも飛んでる時はかなりの効果があるだろう。
実をいうと、もっと高い精度でこの手のエダシャクにソックリな蝶が他にいる。次回は、その蝶を紹介する予定です。

 
(註1)日光菩薩
日光菩薩(にっこうぼさつ)は、仏教における薬師如来の左脇に控える一尊であり、月光菩薩と共に薬師三尊を構成している菩薩のことである。
『薬師経』に依れば、日光菩薩は一千もの光明を発することによって広く天下を照らし、そのことで諸苦の根源たる無明の闇を滅尽するとされる。
月光菩薩と対になるように対称的に造形される。つまり、日光菩薩が右腕を上げて左腕を垂らす場合は、月光菩薩は左腕を上げて右腕を垂らすといった具合である。また、その上げた方の手の親指と人差指で輪を作る例が多く、宝冠と持物に太陽を表す標幟を表現されることも多い。

 
(註2)この時の採集記

発作的台湾蝶紀行46 大名様のお通りだーい

 
(註3)増井さんと猪又さんの論文
増井暁夫・猪又敏男『世界のコムラサキ(6)』やどりが 157号(1994)

1994年かあ…、25年も前なんだね。
それにしても25年も経っているのに、まだ幼生期が解明されていないの❓信じられないや。
でもネットで検索しても幼生期の画像が一切出てこない。それって、やっぱそうゆう事なんだろね。

 

台湾の蝶23『月光菩薩』

 
  第23話『黄胡麻斑』

 
キゴマダラは、とても好きな蝶の一つだ。
そのせいか、過去に『ネイビーブルーの衝撃』『東洋の宮人』などの採集記を含めた幾つかの文章を書いている。文末にリンク先を貼り付けておくので、興味のある方は読んで下され。

 
【分類】
蛺蝶科    Nymphalidae(タテハチョウ科)
閃蛺蝶亞科  Apaturinae(コムラサキ亜科)
燦蛺蝶屬   Sephisa(インドキゴマダラ属)

キゴマダラの他にオオムラサキやゴマダラチョウなどの胴体が頑健なものをまとめて、Euripus属群と呼ぶ場合もあるようだ。

 
Sephisa属には、以下のような種が含まれる。
 
◆Sephisa chandra  キゴマダラ
◆Sephisa dichroa インドキゴマダラ
◆Sephisa princeps カバイロゴマダラ
◆Sephisa daimio ダイミョウキゴマダラ

また近年、新たにミャンマーから新種が加えられた。
◆Sephisa shizuyai ヒメキゴマダラ(註1)
 
この中ではダイミョウキゴマダラが台湾にも生息する。というか台湾特産種だ。これについては次回に書く予定です。でもメスがまだ採れてないからなあ…。予定は未定であって、しばしば変更なのである。あまり期待はしないで下され。

 
【Sephisa chandra androdamas キゴマダラ♂】
(2017.6.15 南投県仁愛郷南豊村)

 
鮮やかな橙黄色と黒に限りなく近い紺色とのコントラストが美しい。

 
(裏面)
(2016.4.18 Laos oudomxay)

 
裏も美しい。下手したら裏の方が渋キレイなんじゃないかと思う。
なぜか台湾産の裏側の野外写真が無いので、仕方なくラオス産を貼付しときました。

 
【キゴマダラ♀】
(2017.6.21 南投県仁愛郷南豊村)

 
一方、メスは深い群青色に青や橙色が配され、落ち着いた美しさを醸し出している。そしてオスよりも一回り以上あって、かなり大きい。
採れた時は指先が震えたっけ。虫採りはエクスタシーなのだ。最近は滅多に味わえなくなったけど、この陶酔感と達成感と安堵が入り混じった感覚は何にも代えがたい。それくらい気持ちいい。謂わば麻薬的なのだ。だから虫採りはやめられまへーん。

 
(裏面)
(2017.6.20 南投県仁愛郷南豊村)

 
この蝶は、知らない人が見たら同種とは思えない程にオスとメスとでは色彩斑紋が著しく違う雌雄異型なのである。メスにはヒサゴスミナガシと云う別名もあるから、当初は同じ蝶とは思えず別種と考えられていたのかもしれない。
雌雄異型の蝶は大概どちらかが汚い。オスもメスも美しいものは案外少ないし、裏も表も美しいと云う蝶はさらに少ないと思う。おまけに分布は局所的で、中々会えないときているから、オジサンは( ☆∀☆)萌え~なのだ。
とはいえ、台湾ではオスならまだ比較的会えるチャンスがある。他の生息地域よりも個体数も多いと思う。
但し、台湾でもメスには滅多な事では会えない。

メスは個体変異が多く、それもコレクターの魂を揺さぶるようだ。

 
(2017.6.20 南投県仁愛郷南豊村)

 
一番最初に示した個体は全体的に斑紋が発達しており、上翅の亜外縁に白斑が出ている。時にここが著しく白化するものもいるようだ。
一方、上の写真の個体は全体的に斑紋の発達が悪く、暗い印象を受ける。でも、これはこれで渋い美しさがあって嫌いじゃない。

 
(2017.6.20 南投県仁愛郷南豊村)

 
これは新鮮な個体ではないが、下翅の青紋が比較的発達しているかな。

 
(2016.7.15 南投県仁愛郷南豊村)

 
コレも下翅の青紋が発達したタイプだ。しかし、上翅中室のオレンジの紋が最も小さい。

因みに、上翅が白化した個体はこんなの。

 

(出典 2点とも『季刊ゆずりは』)

 
このタイプは北タイなどに多く見られるようで、半数近くが白化するという。
台湾産のメスは黒色と青色が発達する暗色傾向にあり、青紋の上に灰色の鱗粉が乗ることから他地域のメスと区別ができるという。

他の変異としては、前翅と後翅の青色紋が白色に置き代わる型がある。
たぶんコレだろう。

 
(出典『Wikipedia』)

 
この型は北東インド・シッキム・ネパールなどの分布 域西部にのみ分布するとされ、白色部は時に黄色くなり、♂と見紛うばかりの個体まで現れるという。

 
台湾産の標本写真も貼付しておこう。

 
【♂】

(♂裏面)

 
【♀】

(♀裏面)

 
【学名】Sephisa chandra

平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』によると、属名のSephisa(セフィーサ)は語源不詳で、意味のない造語であろうとしている。
小種名chandra(チャンドラ)は、サンスクリット(梵語)由来で、Candra(月)や月の神を意味する。月の化身だね。カッコイイ学名だ。やはり、佳い蝶には良い名前がつく。因みに平嶋氏は命名者のMoorが語頭のCを発音通りのchに置き換えたものだとしている。
台湾産は亜種「androdamas」とされるが、その語源は不詳。
但し、前半部のandroはギリシア語では「人間」、特に男性を表し、強健という意味としても使われるようだ。一方damasはスペイン語で女性を指す。スペイン語もラテン語由来の言語だから、ラテン語やギリシア語でも女性を意味する言葉として使われていた可能性は高い。
つまりandrodamasは、andro+damasの造語とは考えられないだろうか❓男性と女性の両方とが合体した名前ならば、雌雄異型のこの蝶の学名にはふさわしい。それに強健というのもこの蝶のイメージと合致している。
まあ、あくまでワタスの妄想ですが…。

 
【台湾名】燦蛺蝶
「燦」は中国語の繁体字で、略字の簡体字だと「灿」と書く。意味は日本語の燦然と輝くなどの用法と同じで、鮮やかに輝く様である。蛺蝶はタテハチョウの事だから、燦(煌)めくようなタテハチョウってことだね。中国でも最大級の賛辞が送られておるのだ。

他に多くの別称がある。参考までに並べておこう。

帥蛺、黃斑蛺、蝶雌黑黃斑挾蝶、黃胡麻斑挾蝶、黃胡麻斑蛺蝶、雌黑黃斑蛺蝶、櫟繚斑蛺蝶、東方帥蛺蝶。

漢字からだいたいイメージできるが、一部わかりづらいかと思うので、少し補足しておこう。
帥蛺蝶の「帥」は日本では大宰府の長官と云う意味でもあるが、概ね将軍とか統率者(リーダー)といった意味で使われる。中国でも同じく将軍を表す字のようで、現代ではイケメン(ハンサム)を指す言葉としても使われているみたい。イケメンの将軍って、最大の賛辞だよな。ちょっと想像してみた。
( ☆∀☆)女子萌え~だよね。

帥蛺蝶がオスを表しているならば、雌黒黄斑蛺蝶はメスを主題とした名前だね。でも実物の蝶を知らなければ、漢字だけだとワケわかんない姿が目に浮かびそうだ。

櫟繚斑蛺蝶の「櫟」はクヌギを意味する。カブトムシが集まる木だね。またイチイにもこの漢字が宛がわれている。イチイとはイチイガシの事で、ようするにブナ科コナラ属の植物を表している。つまり、この蝶の幼虫がこの樹木類をホストとしている事からの命名だろう。
「繚」は百花繚乱にも使われる語だから、美しいとかと云う意味で使われているのかなと思った。ところがドッコイ、どうやら糸がもつれる様を表しているようだ。縁起悪りぃ~。他に、まとうと云う意味もある。衣服を身に纏うとかのまとうだ。にしても意味的には、どうもスッキリしない。
う~ん、困ったな。櫟繚で検索すると、オーク風という訳が出てきた。オークとはカシとかナラの木のことだ。
ここで行き詰まった。それほど重要な問題でもないし、まあ、もうええやろ。

 
【英名】Eastern Courtier
Courtierは宮廷や朝廷に仕える人、朝臣、廷臣、公家を指し、Easternは東の、東国のと云った意味だから、さしづめ『東洋の宮人(みやびと)』といったところだろうか。中々に優雅だ。但し、Courtierには御機嫌とりとか、おべっか使いという意味もあるようだ。英語名が一番敬意が払われておりませんな。

 
【分布と亜種】
(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
従来、キゴマダラの分布図といえば、こうだった。『アジア産蝶類生活史図鑑』の分布図もほぼ同じだ。
インドシナ半島北部一帯とマレー半島、台湾と分布が極端にかけ離れている。
しかし、杉坂美典氏のブログ『台湾の蝶』では全然違う分布図になっていたので驚いた。

 
(出典 杉坂美典『台湾の蝶』)

 
調べてゆくと、どうやら近年になって中国で続々と新たな産地が見つかっているようだ。この飛び離れたような特異な分布に対して浪漫と畏敬の念を抱いていたから、正直残念でならない。何だか特別感が減っちゃったなあ…。憧れてた女性が、意外と「させ子」ちゃんだった…みたいなガッカリ気分になるよ。
コムラサキ亜科に詳しい研究者として知られる増井暁夫氏の論文(註2)によれば、主に中国南部で見つかっているようで、浙江省と海南島のものは亜種として記載されている。
杉坂さんは、他に雲南省、四川省、貴州省、広西自治区、湖南省、広東省、福建省を産地としてあげられている。
おいおい、結構おるやんけー(>o<“)
とはゆうものの、中国でもその分布は局所的で稀種である事には変わりはないようだ。
従来の生息域以外では、他にテナッセリム、ブータン、香港、南ベトナムでも発見されているようだ。
因みに分布の西限はネパール中部。

亜種には以下のようなものがあるとされる。

 
◆Sephisa chandra chandra
Moor,1858
原名亜種(シッキム・アッサム・インドシナ半島北部)

 
(2016.4.21 Laos oudomxay)
 
(2016.5.2 Laos oudomxay)

(2011.4.16 Thailand Changmai)

 
◆Sephisa chandra androdamas
Fruhstorfer,1908
台湾亜種

 
(2017.6.19 南投県仁愛郷)

 
ん~、表はそれほど大きな違いは感じられない。
強いていえば、原名亜種と比べて黒色部が発達傾向にあり、全体的に紋が小さくなって下翅の真ん中の黒点大きい。また、下翅外縁の紋も消失している。
裏面はまだ違いが分かりやすくて、全体的に黒い部分が多く、下翅に白斑が入っている。
とはいえ、多くの標本を検したわけではないから、何とも言えない。見立てが間違ってたらゴメンナサイ。

 
◆Sephisa chandra stubbsi
Corbet,1941
マレー半島亜種(マレーシア)

 

 
画像が小さくて分かりづらいかもしれないけど、表側下翅の黄色い部分が広い。裏側はさらに黄色くて明らかに他とは区別できる。もしかしたら、キゴマダラは表よりも裏に亜種の特徴が出るのかもしれない。

 
(出典 2点とも『ぷてろんワールド』)

 
画像はないが、♀は表側前翅中室のオレンジ斑が消失し、全体的に青色部が減退傾向にあり、これも他地域のものとは明確に区別できるようだ。

 
◆Sephisa hainanensis
Miyata & Hanagusa,1993
海南島亜種(中国)

海南島産は、かなり黒化が進んだ個体群とされる。
だが増井氏によると、ホロタイプ(正模式標本)は極めて黒化した個体で、他の海南島産の標本を検した結果(7個体)、黒化の程度はホロタイプ程ではなく、黒化が進んでいない個体も混じるようだ。
因みに、対岸のベトナムでも黒化が進んだ個体が得られるという。どうやら黒化傾向の強い個体は北ベトナムから海南島にかけて分布し、その傾向がハッキリしているのが海南島ということらしい。両地域の変異幅はかなり重なっているという。

これ、黒いなあ。↙

(出典『Wikipedia』)

 
でも産地は書かれてなかったけど海南島産ではないと思う。以前にKSLオークションで見たものは、こんなに黒くはなかったからだ(画像はダウンロード出来なかった)。
ちょっと待てよ。コレって♀じゃねえか?もしかしたらコヤツが♂の斑紋みたいな♀って奴かな?

日をおいて、しつこく探してたら、KSLオークションから新たな画像が見つかった。

 
(出典『昆虫専門KSLオークション』)

 
一番下が海南島亜種のようだ。
しかもパラタイプ(副模式標本)である。
画像をトリミングしてみよう。

 

 
確かに下翅外側の紋や上翅先端付近の紋が消失しかかっている。でもどう見ても黒化してるって感じじゃない。前に見たKSLの画像もこんなだった。
どっからどこまでを黒化と認じるかは人によって違うって事なんだろね。
もしかしたら裏が黒いのかとも思ったが、残念ながら裏の画像は無い。でも、よくよく考えればダウンロード出来なかった方の個体も黒化してるってほど特に黒いとは思わなかった。黒化って何だよ?謎だよなあ。

言い忘れたが、3頭並んだ画像の右上は北ベトナムのTam Dao産で、左上は西マレーシア産。
ということは西マレーシアのものはマレー半島亜種だね。やっぱり下翅の黄色い部分が広い。コレは変異が解りやすいから亜種区分されて当然かもしれない。

 
◆Sephisa chandra zhejiangana
Tong,1994
中国亜種(浙江省)

ググってみたが情報が得られなかった。浙江省は地理的には台湾の対岸上方にあって比較的近いから、それに準じた変異のものだと思われる。とはいえ、予想外のモノ凄く変わった奴かもしれん。ワカラン。断言は避けときます。

増井暁夫さんの論文によると、♂の地理的変異としてはブータン産のものが、かなり変わっているようだ。
一部を抜粋してみよう。

「前翅頂の内側にある白点列が黄色くなり、前翅第2室の眼状紋が明瞭に分離し、かつ翅型も丸みを帯びる。これと全く同一の特徴を有する個体が矢崎ら(1985)にも図示されている。前翅を見るかぎりSephisa dichroaと類似した斑紋といえる。図示 した個体が本種であることは、裏面の特徴から判断した。ブータン産の♀は未知と思われ、是非とも同地における変異が詳しく解明されることを望む。」

日本蝶類学会のブログで、らしきものを見つけた。

 
ブータンのキゴマダラ
(出典『BSJ BLOG』)

 
映像には文章も添えられている。
「キゴマダラはまだまだ整理がされていないようで、本種に詳しい当会の増井暁夫理事によれば隠蔽種や新亜種の可能性も秘めているという。その一つの例がブータンのものである。図示したミャンマー産の標本(原名亜種?)と動画を見比べていただければ分かると思うが、前翅表面の亜外縁の斑紋が、ブータンのものはすべてオレンジ色を呈している。増井理事によればこの変異が見られるのはブータンだけだそうで、今後の詳しい検討が待たれるところである。」

参考までに言っておくと、隠蔽種というのは見た目がほぼ同じで同種や亜種と考えられていたものが、実をいうと別種だったというパターン。例えば1種類だと思われていた日本のキマダラヒカゲには2種類が混じっている事が判明して、サトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲに分けられたなんてのがそれにあたる。見た目は同じでも、遺伝子解析してみたら、全然別物だったなんて例もポチポチ出始めている。遺伝子解析で全てがスッキリすると思っていたが、新たな混乱が生じているのだ。種って、何ぞや❓と思うよ。

一応、参考までにSephisa dichroa インドキゴマダラの画像も貼付しておこう。

 

(2点とも出典『Butterflies of India 』)

 
(出典『Wikipedia』)

 
インドキゴマダラは雌雄異型ではないんだよね。
キゴマダラ以外のSephisa属は、皆さん♂♀同型なのだ。なぜにキゴマダラだけがそう進化したんだろね。

 
シノニム(同物異名)に以下のようなものがある。

◆Sephisa chandra albofasciata
(Sonan,192)
◆Sephisa chandra hirayamai
(Nakahara,193)
◆Sephisa chandra horishana
(Matsumura,1929)
◆Sephisa chandra pandularis (Matsumura,1909)
◆Sephisa chandra rex
(Wileman,1908)
◆Sephisa chandra scurrae
(Murayama,1961)

随分とシノニムが多い。
理由は色々あるんだろなあ…。想像するに、たぶん功名心に駆られた学者たちが、よく調べもせずに無闇矢鱈と記載を競い合った結果ではないだろうか。それが後(のち)に、分布が連続する亜種間の境界地域では両者の区別がつかない事が判明したりして、亜種としては認められなくなったんじゃないかな?

 
【生態】
台湾では標高200~2700m付近の間で得られているが、その生息域の中心は中海抜の標高500~1000m前後だろう。マレー半島では1200m以上の高地に限って生息する。いずれの地方でも得られる個体数は少なく、特に♀は稀である。台湾では3月下旬から12月上旬にかけて見られ、年3回以上の発生をするものと考えられる。埔里周辺では、♂は6月中旬には鮮度が落ち始め、7月に入るとボロばっかだった。♀は6月中、下旬に鮮度の良い個体が多かった。
♂の飛翔はきわめて敏速で、特に山頂に飛来するものは速い。頂上占有癖が強く、山頂の樹梢上に静止しているところへ他の個体が接近すると激しく追尾するという。しかし、自分は占有行動を見た事がなく、多くは谷沿いや林道で見られた。
♀の飛翔は♂に比べると遥かに緩慢で、樹梢の高位置で静止もしくは飛翔するという。
とはいえ、午前中に一度モノ凄いスピードで上から降りてきて地面に一瞬止まったかと思ったら、またモノ凄いスピードで飛んでいった事がある。たぶん♀は他の毒持ちの蝶や蛾に擬態しているから、普段はゆったりと飛ぶのではないかと思う。これはケースによっては♂にも当てはまる。
それで思い出した。タイのチェンマイでの事である。初めてこの蝶の♂に会った時は、最初は蛾だと思ったのだ。派手で緩やかに飛んでいるから、てっきり昼行性のシャクガかトラガの仲間だろうと思って無視していた。しかし、ひょろひょろと近づいてきて、目の前に止まった。何気に見たら、蛾がいきなり蝶に変わった。その時はまだ蝶屋3年目でキゴマダラの存在さえも知らなかったから、死ぬほどおったまげた。

 
(2011.4.16 Thailand Changmai)

 
黄色いゴマダラチョウみたいだと思った。
上から熱帯の強烈な光が降り注いでいたから、もの凄く黄色く見えたのを憶えている。
ラオスで吸水しに飛んできた多くの個体も、普段とは違うひらひら飛びだったから、♂も毒のある蛾に擬態している可能性は充分に考えられる。

見間違えた蛾の画像を探してみた。

 
(出典『Wikipedia 』)

 
そうそう、コレ、コレ。
たぶん、Dysphania militaris だろう。トラシャクという昼行性の蛾の仲間で、東南アジア各所で吸水に集まっているところをたまに見かける。

キゴマダラの♂は、体内に毒を持つスジグロカバマダラ(以降スジカバと略す)に擬態しているという説があるようだが、可能性はあるものの、そういう風に見えたことは一度もない。
スジカバは沖縄でも何度も見ているので、脳が学習していて容易に識別できてしまう可能性が無きにしもあらずだけどね。

 
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
でも考えてみれば、そもそもスジカバとキゴマダラの好む環境は違うじゃないか。スジカバはオープンランドの蝶で、人里付近の明るく開けた場所を好む。一方、キゴマダラは森の蝶だ。だから、両者が同じニッチ(環境&空間)に同時にいる事は稀だろう。ならばキゴマダラがスジカバに擬態する意味はあまりない。
だから、むしろ蛾の方に似せているような気がするんだよね。前にFacebookにキゴマダラについて書いた折りに、どなたかがトラシャクには毒があるっておっしゃってたし、どちらかというと擬態対象はこっちだと思うんだよな。
幼虫だって、いかにもワタシ、毒ありますって感じだもんなあ。

 
(出典『香港蛾蝶網』)

 
だいたいにおいて、派手な奴には毒があると云うのが自然界の法則なのだ。捕食者にヤバい奴だと認識してもらう為に、ワザと目につきやすい派手派手信号を送っているのである。蜂とか工事現場の看板みたいなもんだ。いわゆる警戒色ってやつだね。

そういえば台湾でトラガを一瞬だけだけど、キゴマダラの♂に間違えかけた事があったっけ…。

 
【Chelonomorpha formosana❓】
(2017.6月 南投県仁愛郷)

 
細かい柄や翅形は違うけど、飛んでいる時は直ぐには見抜けないものだ。
とはいえ、このトラガに毒があるかどうかは分からないけどさ。

そういえば♀も一度毒蝶のルリマダラと間違えた事があった。
横からふらふらと飛んできた時は、(=`ェ´=)ケッ、ルリマダラかよと思った。しかし次の瞬間にはどこか違うと感じて咄嗟に網を振った。中を見て、キゴマダラの♀だったのでバキ驚いたんだよね。

 
【ルリマダラ】
(2017.6.20 南投県仁愛郷)

 
厳密的にはそれほど似ていなくとも、飛び方さえ似せていれば、かなり騙されると云うことだ。

♀はルリマダラだけでなく、毒のある蛾にも擬態している可能性があるだろう。
例えばサツマニシキ(註3)なんかはどないだ❓
毒持ちだしアジアに広く分布しているから、擬態の対象としては有望かもしれない。
コイツ、捕まえると体の横から青酸の泡をブクブク吹き出しよんねんでー。(T△T)気味悪いったら、ありゃしない。

 
(出典『島平の自然だより』)

 
そこそこ似ているから、間違えることもあるだろう。
とはいえ、ソックリとまではいかない。
もっと似ている奴が他にいる筈だ。

コレなんか、どうだ❗❓

 
(出典『隨意窩』) 

 
Sanguiglua viriditincta という蛾。
裏面だけど、似てるよね。この蛾も昼行性の蛾だから、擬態相手の可能性は充分にある。
おそらくマダラガ科の蛾だろう。サツマニシキもマダラガ科だし、いかにも毒が有りそうだ。

種としてのキゴマダラはチベットの辺りで誕生したと言われている。想像するに、最初の頃は他のインドキゴマダラ属と同じように雌雄同型だったと思われる。たまに♂と同柄の♀が現れるのはその証左であり、先祖返りみたいなものかもしれない。擬態するという生存戦略を得て、東へと分布を拡げる中で、おそらく土地、土地の擬態相手に似せることで多くのフォームが生まれたのだろう。きっと北タイには上翅の先端部が白い毒持ちの蛾がいるに違いない。

話が生態から、だいぶ逸れた。本題に戻そう。

♂は吸水に地上に下りるほか、樹液や爛熟した果実、獣糞に飛来する。そういえば台湾でゆっくり飛ぶ♂を見たことがないなあ…。吸水に来る時も素早く飛んで来るし、地上に降りても敏感で容易に近づけない。
あるいはトラガって毒が無いのかもしれない。そもそもトラガって、吸水に来るのかあ?来るイメージが全然ない。調べた限りではトラシャクは台湾にはいないようだし、台湾の♂は特に何かに擬態しているわけではないのかもしれない。
♀も樹液や熟した果実を好むが、吸水の観察例はない。♀は吸水に来ないし、あまり飛び回らずに木の高い位置で静止しているから、出会うチャンスが少ないのだろう。基本的に♀はトラップでもかけない限り採れまへん。

 
【幼虫の食餌植物】
コムラサキ亜科の大半がアサ科 Celtisエノキ属(註4)を好むのに対し、唯一このSephisa属の蝶のみがブナ科コナラ属(Quercus)を食する。
南方では常緑カシ類、北方では落葉性のナラ類を利用しているようだ。食餌植物として記録されているものに、以下のようなものがある。

Quercus glauca 校欑  アラカシ
Quercus morii 赤柯   モリガシ
Quercus acata      アカガシ
Quercus mongolica   モンゴリナラ(ミズナラ)
Quercus incana

おそらく上2つが台湾での食樹であろう。

【卵】

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

♀は食餌植物の周辺をゆるやかに旋回して、ゾウムシなどその他昆虫が丸めてつくった筒状の巣の放棄されたものを見つける。そしてこの筒の中に尾端をさし入れて15~20個の卵を産みつける。この習性はカバイロゴマダラの産卵にも見られるものである。産卵位置は地上2~5m。
♀の腹端が腹面側に大きく湾曲しているのは、この変わった産卵習性がゆえの進化だろう。それにしても、他の虫が丸めた葉を探すのは大変だろうなあ。と云うことは、たとえ食樹があったとしても葉を丸めてくれる虫が生息していなければ生きていけないって事だ。難儀な生き方をしてはるなあ。分布が限られ、個体数が少ないのは、そのせいなのかもしれない。

 
【幼虫】
(出典『アジア産蝶類生活歴史』)

(出典『蝴蝶的幼蟲圖鑑』)

 
角は短めだがいわゆるナメクジ型で、日本のオオムラサキやゴマダラチョウの幼虫とよく似ている。間違いなくコムラサキ亜科の仲間だと云うことがよく解るね。

顔はどうだろう❓

 
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
エイリアンだ(笑)
オオムラサキなんかと比べて顔の黒点が横にあるので、あんまし可愛くない。ほっぺがピンクなのに惜しい。

『アジア産蝶類生活史図鑑』に、幼虫について詳しく書かれてあるので、長いがそのまま引用しよう。

「孵化した幼虫は群居性が強く、1齢から終齢に至るまで常に葉の表面に身を寄せあって静止する。越冬は台湾においては3~4齢期に行われるものを観察した。越冬幼虫は体色濃緑色のままで変色せず、食餌植物の葉の表面に群居して静止する。寒さが増すと、上方に他の葉が被さる位置に移るか或いは裏面に移動する。気温が-6℃まで下がっても死ぬ個体はなかった。そして直射日光が当たると動き始める。越冬中も生命を維持するのに必要な最小限の摂食を続けるが成長はしない。3月上旬に脱皮して終齢となる。孵化直後から終齢に至るまで若葉を好まず終始して硬く成長した葉を食う習性は珍しい。終齢幼虫は単独、あるいは2匹が共生するのが見出だされる。終齢幼虫は葉の表面に大量の糸を吐いて台座を設けるが、この糸は左右両端だけしか葉に付着せず、中央部は葉の表面から離れている。したがってここに静止する幼虫の体は葉の表面には触れず宙に浮いている。幼虫は常に葉柄に頭を向けて静止する。4月の上旬~中旬に至り、幼虫は食餌植物の葉の裏面で蛹化する。」

幼虫の習性は、どうせオオムラサキやゴマダラチョウと同じようなものだろうとタカを括っていたが、かなり違うのでビックリした。
まさか群居するとは思いもよらなかったよ。日本のコムラサキ亜科の蝶は全て単独で生活しているのだ。国外のコムラサキ亜科の蝶だって、大半はそうだろう。

 
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
結構グロいなあ…(^o^;)
集まって暮らすだなんて、まるで蛾じゃないか。
きっとそんなひねくれ者は、コイツくらいなもんじゃねえか❓

越冬期になっても体の色が変わらないというのも驚きだった。オオムラサキやゴマダラチョウなどは冬になると木を下り、根元の落葉の裏で越冬する。ゆえに目立たないように枯れ葉色に変色するのだ。コムラサキのように根元には降りないものもいるが、越冬時に変色するのがコムラサキ亜科の特徴だとばかり思っていた。
でも考えてみれば理にかなっている。葉っぱの上で越冬するんだから、色が変わる必要性がないのだ。
いや待てよ。インドシナ半島北部などに分布する原名亜種は、落葉性のブナ科植物(コナラ属)を食うというじゃないか。だとしたら、木の根元で越冬する可能性もある。となると変色するに違いない。もしかしたら台湾のものだけが樹上越冬で、体色変化がないのかもしれない。だとしたら、生き物って面白いよなあ。

 
【蛹】
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
蛹も如何にもコムラサキ亜科って感じである。
オオムラサキなんかと比べたら、少しスリムかな。

 
こうして改めて雌雄の成虫が並んだ画像を見ると、美しき夜空とでも呼びたくなる。♀の羽模様はゴッホの蒼黒い夜空だ。そこにオレンジ色の星が銀河に彩りを添える。青い流れ紋は流星群のようだ。♂は夜空に浮かぶ月ってところか。羽のデザインを横に並べると、なんだか一幅の絵みたいではないか。まるで夜空の絵巻だ。さらに思念は自由に広がり、飛躍する。その夜空から冴えざえとした月光が降り注ぎ、神々しき月光菩薩(註5)の姿が重なるようにして浮かび上がってくる。手を合わせて拝もう。
この蝶にはいつ出会っても、会えた悦びにありがたやと云う感謝の気持ちが湧いてくる。
そう、菩薩なのだ。

                 おしまい

 
追伸
いやはや、ラストは空想太郎で終わってまっただよ。

今回は調べものが多くて、書くのに随分と時間がかかった。長げえし、やめてぇなあ…、このシリーズ。

メインタイトルにも悩んで、中々決まらなかった。
最初はアメブロで使った『ネイビーブルーの衝撃』だった。けれど、これはメスだけを表しているタイトルだからボツ。
次に考えたのが『阿修羅男爵の~』だった。
阿修羅男爵とは、永井豪の漫画『マジンガーZ』に出てくる半身が男で半身が女の悪役キャラのこってすな。
「阿修羅男爵の秘密」「阿修羅男爵と陽気な仲間たち」「哀愁の阿修羅男爵」「阿修羅男爵に恋して」「阿修羅男爵の華麗なる生活」etc……Σ( ̄皿 ̄;;フガー。
でも、ほにゃららの部分(~のこと)がどうしてもフザけたフレーズしか思い浮かばず、断念。
続いて浮上したのが『月の化身』とか『月の女神』。悪かないが、何だかシックリこない。こういうタイトルは、どちらかというとオオミズアオなど蛾のイメージの方が強い。
で、最後の最後に今のタイトルになった。とはいえ、一度は『夜空の絵巻』に書きかえたんだけどね。

思えば、まだ台湾以外では♀を採った事がない。
タイは個体数が少ないから厳しいが、ラオスならば何とかなるかもしれない。
生きている白っぽい♀をこの目で一度は見てみたいものだ。

アメブロの過去記事5編です。
青文字をタップすると記事に飛びます。

東洋の宮人

発作的台湾蝶紀行56『ネイビーブルーの衝撃』

発作的台湾蝶紀行11『幻の美女』前編

発作的台湾蝶紀行43『白水さん大活躍、ワシ虐待おとこ』

全然採れる気がしない

 
(註1)Sephisa shizuyai ヒメキゴマダラ
ミャンマー・サガイン州で得られた♂によって記載された。♀は未知。キゴマダラ(前翅長37~38㎜)と比べて34㎜と小さいらしい。

 

(裏面)
(出典『月刊むし』No.549 Nov.2016)

 
キゴマダラの異常型に見えるが、小岩屋さんは斑紋パターンが異常型のそれではないと述べられている。
何れにせよ、新たに複数の個体が採れないとこんなの分かんないよね。その後、3年くらい経ってるけど、採れたのかなあ?

(註2)増井暁夫氏の論文
増井暁夫・猪又敏男『世界のコムラサキ(6)』やどりが 157号

(註3)サツマニシキ
名前を漢字にすると、薩摩錦であろう。日本屈指の美しい蛾だと言われてる。薩摩は現在の鹿児島県にあたるから、たぶん最初に発見されたのがその辺りだったんだろう。
関西では、紀伊半島のみに生息するところからみると、南方系の蛾である事は間違いないだろう。

(註4)アサ科 Celtisエノキ属
Celtis属は、かつてはニレ科とされていたが、最近のAPG分類体系(遺伝子解析)ではアサ科となっている。
 
(註5)月光菩薩
月光菩薩は「がっこうぼさつ」と読み、仏教における菩薩の一つ。日光菩薩と共に薬師如来の脇を務め、薬師三尊を構成している。
月光菩薩は月の光を象徴する菩薩で、日光菩薩と共に薬師如来の教説を守る役割を果たしているといわれる。
余談だが、月光仮面のモデルは、この月光菩薩だそう。

節分に思う

 
昨日は節分だった。
スーパーに行くと、恵方巻きを求める人でごった返していた。(-。-;)うんざりだ。
海苔業界とスーパー&コンビニ連合が結託した陰謀なんぞに騙されてたまるかである。
で、おじさんはそんな新参者には目もくれずに鰯を食うことにした。

 

 
本来なら焼くべきなのだが、煮付けにした。
だって鰯を焼いたら臭いんだもーん(# ̄З ̄)
わざと甘辛い味付けにした。味は勿論完璧だす。
(^o^)v旨いで~す。

昔は立春が正月だった。つまり節分は旧正月の前日の大晦日にあたる。古来から節分は、一年の終わりに厄災や邪気を追い払い、良い新年を迎えるための準備をする日だったわけだね。
厄災や邪気というのは、疫病や飢饉、家内に悪いことをもたらすものだが、これらを連れてくるのが『鬼』とされてきた。まあ災いの象徴みたいなもんだね。
そこでこの鬼が家内に入らないようにという意味で使われたのが『鰯』なのだ。
鰯は焼くと煙が生臭い。その匂いを鬼が嫌がり、近寄ってこないというワケだね。

また、玄関口に柊(ひいらぎ)と鰯の頭を飾る慣習も同じような意味が籠められている。柊の葉には鋭いトゲがあり、コレが鬼を撃退するというワケだ。『おどれ、目ぇ、突いたろかー』なのである。一種の魔除けなんだね。

 
(出典『京都九条山の観察日記』)

 
とはいえ、節分に鰯を飾ったり、食べたりする習慣は西日本(主に関西)のものだ。
関東辺りでは『はあ(;・ω・)❓』なのである。
でも最近は、この魔除けもすっかり見かけなくなったなあ…。今どきの人は、そんな風習を知らないから無気味がられるだけなんだろね。だいち臭いしさ。
こうして日本の古い習わしがどんどん消えてゆくのは嘆かわしいことじゃよ。

そんな事を言いつつも、ヘタレはやっぱり恵方巻きを食べたくなった。オイラ、本来が寿司好きの海苔巻き好きなんである。
夜遅くにスーパーにダッシュで駆け込む。
しかあ~し、既にほぼ売り切れていた。残ったものはどれも奇をてらった変化球の巻物ばかり。肉を巻いた海苔巻きなんぞ、そんな邪道なもん、誰が食うかいボケナスがあー(ノ`皿´)ノ~┻━┻なのである。

で、帰ってコレをふんずと投げる。

 

 
豆まきなのじゃあ~。
うりゃ、うりゃ、うりゃあ~Σ( ̄皿 ̄;;
鬼畜米英、魑魅魍魎撃滅。鬼畜米英、魑魅魍魎退散❗
Σ(´□`;)ハア、ハアー。Σ(´□`;)ハア、ハアー。
大人げない…。

 

 
もちろん大豆なんて投げない。落花生だ。殻つきのピーナッツだね。コレなら後で普通に食べられる。
そういえば小さい頃は、この豆まきがあまり好きじゃなかった。年の数だけ豆を食うのが面倒くさかったし、何より大豆が嫌いだった。たぶん今でも好きじゃない。

もちろん豆をまくのも鬼を追い払うためだね。これは鰯と違って誰でも知っているだろう。
知ってはいても、豆まきって今でも家庭内でちゃんと行われているのかなあ…。

                 おしまい

 
 

2017′ 麺の亡霊たち(幽霊蕎麦編)

 
 
シリーズ第3弾は、蕎麦である。
今回も溜まったストレージを減らすためにガンガン画像を乗っけて、ガンガン消すのだ。

 
【竹の子そば】

 
自分で茹でた筍であることは間違いない。
となると、春だ。日付を確認したら、やはり4月だった。何と年末年始から4ヶ月間も蕎麦を食っていない事になる。
大阪人だなあ…と思う。

おそらく出汁は若竹煮の煮汁がベースかと思われる。
2年半以上前の事だから記憶がないけど、きっと旨かったんだろなあ。今年も作ろっかなあ。

 
【もり蕎麦】

 
一瞬、冷やかけ蕎麦とか、ぶっかけ蕎麦とかと言いそうになったけど、『それってウドン的発想でんがな』と心の中で一人ツッコミを入れる。
じゃあ何なんだ❓と頭の中が混乱しそうになったけど、海苔が乗ってないからざる蕎麦ではなくて「もり蕎麦」だね。
『いやいや、厳密的には笊に乗ってないからもり蕎麦とは言えないね』と言われてしまえば、ハイ、そうですかと即時撤回するけど、まあ中身は同じようなもんでしょ。

蕎麦はコレね。↙

 
【香味 越前そば】

 
これがさあ…、でもガッカリの蕎麦なんだよなあ。
不味いとまでは言わないけど、パッケージの職人風のオッサンを見たら、期待しない方がオカシイじゃないか。何たって越前そばである。全国的にも有名だし、だけな事に実際旨い。だから、ギフチョウ(註1)を採りにそっち方面に行った時は必ず食う。
中でも、おろし蕎麦が好きだ。越前そばと言えば、おろし蕎麦。辛みの効い大根おろしが蕎麦の旨さを引き立たせてくれるのだ。
話が逸れた。とにかくコヤツはその越前そばの味の記憶を見事に打ち砕きよった。蕎麦独特の香りも味も期待値を遥かに下回るものだった。
スーパーに売っている蕎麦に期待する方が間違っていると言わわれば、これまたハイ、そうですかの返す言葉もないのだが、(´Д`)ガックリきたよ。

 
【かき揚げ蕎麦】

 
そういえば、かき揚げ蕎麦って外で食ったことなんか有ったっけ❓そもそもかき揚げ蕎麦って、あるのかね❓海老がデーンと乗った天ぷら蕎麦しか頭に浮かばない。
いや、考えてみれば、立ち食いの天ぷら蕎麦といえばこのタイプだよな。頭がこんがらがりそうだよ。

味の方は、まあそこそこには旨かったような気がする。
蕎麦は、どこの蕎麦かな❓

 

 
あちゃー、またもや「香味 越前そば」だ。
半額だから、つい買っちゃったんだろね。
喉元過ぎれば何とやら。人間は忘却の生き物なのだ。
もっとも、反省ばっかしててマイナス要素を忘れられないで溜め込んでいると、人は生きてゆくことが辛くなる。それもまた事実だ。忘れることは人間を守るシステムの一つでもあるのだ。過去を忘れるからこそ、人は生きてゆけるのだ。落ち込んだままだと、新しい恋だって出来やしない。

一応、日付を確認してみる。
Σ(゜Д゜)ワオッ❗何と9月初めだ。前回から5ヶ月も間が開いているじゃないか。
関西人、特に大阪人は蕎麦はあんま食わないんである。その辺のオッサンなら『蕎麦なんかマズくて食えるかボケ。ほんなもん食うとるヒマがあったら、うどん食っとるわい❗あほんだら』なのである。
一応、蕎麦の名誉のために言っとくけど、蕎麦は美味い。自分も東京に住んでいる時は、うどんを食わずにもっぱら蕎麦ばっか食ってた。とはいえ、ほぼ「もり蕎麦」一本だったけど…。
汁は置いとくとしても、東京の蕎麦は美味い。逆に言うと、大阪の蕎麦は不味い。だから、さっきのその辺のオッサンのコメントのようになるのである。
最近は大阪にも美味いと言える蕎麦屋が随分と増えた。しかし、全体から比べれば、まだまだ少ない。それに美味い蕎麦屋はエラソーで高い。あの値段の高さは何なんだろね。ちょちょと申し訳程度にカッコつけて盛った蕎麦が1枚千円以上するって、どないやねん❗❓と思う。東京みたいに立ち食い蕎麦屋が美味くないと、関西に蕎麦文化が定着することは永遠にやって来ないと思う。
あ~、神田の『かめや』に行きてぇー。
神田のダイビングショップに勤めていた頃は、頻繁にこの「かめや」に行ってた。他の立ち食い蕎麦屋にもよく行った。当時、神田は立ち食い蕎麦屋の聖地と呼ばれていたのだ。きっと今でもそうだろう。そうである事を切に願うよ。

 
【かぼす蕎麦】

 
毎年つくってるんだなあと思う。ちょっと感慨深い。
もちろん、これは冷たい系の蕎麦ね。
冷たい出汁に氷水でキリッと締めた蕎麦を入れ、スライスしたカボスを並べて茗荷を飾った。
残暑厳しい折りには、最高の食いもんだと思う。
この一杯の味は憶えてないけど、普通に作っておれば、鉄板で美味い代物。しかも作るのは簡単なのだ。
まあ、騙されたと思って、作ってみなはれ。

蕎麦はコレだね。↙

 
【剣山のそば】

 
これは蕎麦が安かったとか、そういう理由ではなくて、どうしてもスダチとかの柑橘系の冷たい蕎麦が食べたかったから買ったに違いあるまい。
たまに使うけど、前(さき)の越前そばよりかは美味いと思う。

一応、ネットでググってみた。
剣山といえば徳島県の最高峰にして百名山にも名を連ねる名峰だから徳島県の会社かと思いきや、香川県のサンヨーフーズという会社だった。しかも坂出市。徳島に隣接さえしていない。こういうのって胡散臭いよねー。
それにしても、うどん県なのに、なして蕎麦なの❓
調べてゆくと、うどんの製法を蕎麦に導入した麺で、ツルツルなのが特徴のようだ。
言うほどツルツルとは思わないけどさっ。

 
【たぬき蕎麦】

 
天カスが乗ったシンプルな蕎麦だ。
因みに天カスとは、東京でいうところの揚げ玉の事ね。
ここまで書いて、この蕎麦をたぬき蕎麦と呼んだ事に対して『大阪人のクセに、東京に魂を売りやがって、ボケナスがあー』とか言われそうだが、あくまで便宜上の事なので、ちゃんと説明しますね。
たぬき蕎麦の概念は地方によって異なる。この蕎麦と天カス(揚げ玉)の組み合わせは東日本や北海道でのもので、金沢辺りでもそう呼ぶ習わしだ。しかし、西日本では全く違うものがたぬき蕎麦と呼ばれている。
たとえば京都を除く関西では、きつねうどんの蕎麦版、つまり甘辛く煮た揚げと蕎麦の組み合わせをたぬき蕎麦と呼んでいる。きつね蕎麦とは、けっして呼ばないのだ。ただし、京都だけは違っていて、お揚げさん+あん掛け麺の組み合わせをたぬきと呼んでいる。うどんと蕎麦の区別は特になく、どちらもたぬきである。
一方、九州ではこの天カスと麺の組み合わせをハイカラと呼ぶのが普通らしい。京都と同じで、おそらくうどんと蕎麦の区別は特に無いだろうが(勝手な推測です)、うどん文化の土地だろうから、概ねうどん版のハイカラうどんがハイカラそのものを指しているものと思われる。
関西でもこの天カスの入ったうどんの事をハイカラうどんと呼んでいた。呼んでいたと書いたのは、最近はあまり耳にしないからだ。そういえば幼少の頃は、たぬき蕎麦とハイカラうどんが頭の中で時々ゴッチャになってたよなあ…。
あっ、思い出した。天カス+うどんを「たぬきうどん」と呼んでいた店もあったなあ…。だから、頭がゴチャゴチャになっていたのかもしれない。
四国や中国地方では、どう呼ばれているのかは知らない。調べれば分かりそうだけど、面倒くさいのでやめておきます。まあ、おそらく関西寄りだとは思うけど、ポツンと関東・東日本の影響を受けている所があるかもしれない。東日本と西日本の呼称の境界線も知らない。関ヶ原辺りだとは思うけど、微妙に入り組んでいる可能性はある。どうしても気になる人は、自分で調べましょう。
こういうものは実体の掴めない、謂わば幽霊みたいなものだ。たとえ各県での呼称がわかったとしても、なぜそう呼ばれるようになったのかと云う経緯まで突き詰めだすと、益々得体の知れないものになってゆくだろう。
タヌキは化かすとゆうしさ。

 
【かぼす蕎麦 その2】

 
2食入りの2食目はコレだな。
柑橘系の蕎麦の汁は、これくらいの量が正しかろう。さっきのは少なすぎた。とは言いつつ、それはあくまでも見てくれだけの話であって、家で普通に食うなら汁の量が少々足りなかろうが、さして問題はない。

思うに、この年辺りから柑橘系の麺のマイブームが始まり、夏場になるとせっせと作り始めたんじゃなかろうか。

 
【かき揚おろし蕎麦】

 
蕎麦は、どこのかなあ❓

 

 
メーカーは違うが、またしても越前そばである。
しかも、かぼす蕎麦から3、4日しか経ってない。
4ヶ月、5ヶ月と連続で長い間が開いて、今度は激ショートのインターバルだ。何を考えていたのかね?、ボキは。

今度は、越前そば定番のおろし蕎麦をちゃんと作っとるだがね。
かき揚げはどうかとは思うけど、取り敢えず冷蔵庫にあったものを気分で乗っけたんじゃろう。
しょっちゅう言ってるけど、大根おろしは辛くなくては大根おろしではない。そもそも薬味やで、辛くて当たり前なのじゃ。オコチャマと辛いのが苦手な人たちは、一生大根おろしは食わなくてよろし(=`ェ´=)

 
【鶏&かき揚げ蕎麦】

 
またかき揚げだよ。盛付けも酷い。鶏そばにしときゃいいものの、何でかき揚げまで乗っけるかね。しかも、そのかき揚げの色が絶望的なまでに悪い。きっとオーブンで焼いたのだろう。
特にかき揚げを偏愛しているワケでもないのに、なぜにこんな頻度で出てくるのかサッパリわからん。

どうやら蕎麦は、うどんすきの名店『美々卯』のものだね。

 

 
美々卯と言えばうどんだが、蕎麦も作ってんだ…。
買ったのはイオングループのコーヨー。
ごっつええ紙を使っているパッケージからして高級そうだが、マジ高い。たしか定価は四百円台だったと思う。スーパーに並んでいる蕎麦としては断トツに高い。あっ、半額シールが貼ってあるから、くしくも値段がわかるじゃないか。423円。やっぱ高けえよ。

前回にうどん版は登場している。詳しくはそちらを読んで下さればいいのだが、端的に言えば、さすが老舗店。うどんは旨かった。ゆえに蕎麦にも期待して買ったに違いない。過去の自分の心理を自分で紐解くって、何だか変な気分だ。当時はどんな気持ちで生きていたんだろ❓

蕎麦もそこそこのクオリティーだった筈だ。なのに、上のようなダサい蕎麦にしてしまったのか…。ノータリンの脳足りんだ。二年前に遡って残念でならない。
しかし、2食入りだろうから、もう1食ある筈だ。まさかそいつまで、あんな酷い仕打ちにはしていないだろう。探してみよう。

なぜか画像が埋もれてて、探すのに苦労した。

 

 
今度こそ、正真正銘の「もり蕎麦」だ。
記憶が少し甦ってきた。特別唸るほどのことは無かったものの、そこそこ旨かったような覚えがある。

 
【鶏せせり南蛮蕎麦】

 
肉の形状からして、鶏のセセリだろう。
あっ、カタカナで書くと蝶のセセリ(註2)みたく思えてくるから、以後は「せせり」で通す。
せせりとは、鶏の首肉のことである。弾力と旨味があって、好きな部位だ。

 

 
鶏南蛮には普通のモモ肉や胸肉よりも、せせりの方が向いてるんじゃないかと思う。この弾力は間違いなく蕎麦の食感とマストだ。

たぶん、コレが年越し蕎麦だろう。
と思ったが、日付を見たら、まだ12月半ばの12月16日だった。

麺は何じゃらほい❓

 
【もち麦DE生日本蕎麦】

 
覚えてはいるけど、何じゃらほいのものだ。
もち麦って何やねん❓っていうか、ネーミングの「もち麦DE日本蕎麦」ってどーよ❓色々盛り込んで失敗している例の典型だ。だいたい日本蕎麦って、日本までつけて強調する意味あんのかね❓中華そばは中華蕎麦とは書かないから、蕎麦で充分伝わる筈だ。意図してるとこがワカランよ。
DEは「~で」の「で」だと推察するけど、まさかコム・デ・ギャルソンとかのDEを意識してとか、オシャレ感を出そうとしてはいるまいな。(-_-;)恐ろしいよ。
んっ、待てよ。念のためにギャルソンの綴りを確認しておこう。
あらま、COMME des GARCONSじゃねえか。deの横に「S」が入るのか。
ならば、コムサ・デ・モードでどうだ❓
でも、これも確認したら、COMMECA DU MODEだった。まあ、いい。でも、どうせその辺を意識したんだろ。って事にしておこう。
このままこの商品の説明をスルーしてもいいんだけど、一応調べとくか…。読んでる人は説明を期待しているだろうし、自分も気にはなる。

先ずは「もち麦」ね。
ダイエットとか健康に良いと、一時ブームになってたから名前こそ知ってるけど、具体的にどんなものかは知らなかった。
えー、もち麦は大麦です。で、もちもちした食感の麦をもち麦と呼ぶらしい。これはお米のうるち米(普通の米)と糯米(餅米・もち米)の関係みたいなもんらしい。
もち麦はプチプチとした食感と香り高い味わいが特徴らしい。また、食物繊維と栄養価が高いという。だから、ブームになったんだね。

お次は「もち麦DE生日本蕎麦」。
おわっとΣ(-∀-;)、「剣山のそば」と同じ会社サンヨーフーズじゃねえか。しかも池上製麺所と書いてある商品がいくつもある。池上製麺所といえば、るみばあちゃんの店で、激安の有名店だよね。
(・o・)えっ、池上製麺所の別会社❓まさか、そんなこたあ有るまいと思ったので、さらに調べてみたら解ってきた。
やはり、名前を借りてのライセンス生産だと判明した。しかし、味は全然違うようだ。そういえば昔、池上製麺所と書いたうどんを同じイオン系統のスーパー(コーヨー)で買って食ったけど、店の味とは似ても似つかないものだった。二度と買わないと思ったものだ。池上製麺所のうどんが食いたかったら、現地香川の店に行くことを強くお薦めする。

さあ、お次は年越し蕎麦でフイニッシュだ。
と思ったら、ゲッ(_;、画像が無い。さっきので、おしまいだったようだ。
ちゃん、ちゃん( ̄∇ ̄*)ゞ

                  つづく

 
追伸
このシリーズは、まだまだ続く予定なんだけど飽きてきた。と云うワケで、暫くお休みして次回は別な食いもんの事を書きます。正月が明けてからも、日々色んな旨いもんを作っているのだよ。
ヘヘヘ…Ψ( ̄∇ ̄)Ψ、アレとかコレとか、あんたもんだったり、こんなもんだったりさー。

(註1)ギフチョウ
春の女神と呼ばれ、日本を代表する蝶の一つで人気が高い。

(2017.4.14 兵庫県武田尾)

 
(註2)蝶のセセリ
セセリチョウ科の蝶のこと。多くは小型で敏捷。

(裏面)
(2017.5.5 大阪府四條畷市)

画像はアオバセセリ。セセリチョウの中では美しい方で、殆どの種類は茶色や黒など地味なものが多い。
しかし、それは日本国内での事で、世界には華美なくらい美しいセセリチョウがいくつもいる。