2週間前の話。
季節は、もうすっかり初夏の趣である。
魚辺に春と書く鰆(さわら)の季節も、そろそろ終わりである。
上は韓国産の鰆のたたき。国産のもあったけど、値段が倍近くしたので断念。それに、見た感じでは韓国産の方が元の魚体が大きくて美味しそうに見えたというのもある。
( ☆∀☆)うみゃーい❗
鰆のたたきって、ホント美味いよねー。
最初、ねっとりとした食感が歯にからみつき、香ばしい香りが鼻に抜けたかと思ったら、あとから旨味のつまった濃密な脂が口に中にじんわりと広がる。
(о´∀`о)溜まんないよね。
数日後、国産ものも試してみた。
予測では値段ほど美味いものではないと思ったが、食ってみないと本当のところはわからない。
予想通りだった…。
韓国産の方が遥かに美味い。
どこが違うかというと、脂と旨味が足りないのである。これは予想した通り元の魚の大小によるところが大きいと思われる。どうゆうことかと云うと、鰆は大きければ大きいほど脂がのって美味いのである。
そう云うワケだから、その後はもっぱら韓国産のものばかり食ってた。
もちろん国産のものでも丸々と太っているものならば、そちらの方がより鮮度は良い筈だから少々お高くとも買う用意はあった。だが、なぜかそれに見合うようなものを見掛けなかったのである。
もしかしたら韓国産の方が、この時期は美味いのかもしれない。
そういえば思い出したよ。鰆はその漢字の字面から、春が旬だと云うイメージが強いが、実をいうと本当の旬は最も脂の乗る秋から冬である。だから「寒鰆(かんざわら)」なんて云う言葉もあるのだ。
それでまた思い出した。対馬で秋に食った寒鰆がメチャクチャ美味かったんだよなあ~(о´∀`о)
対馬って、かなり韓国に近いよね。ってことは韓国周辺で獲れる鰆は特別美味いのかなあ…❓
あんま、聞いたことないけどさ。
鰆の旬が春だと言われるようになったのは、どうやらその時期に瀬戸内海で鰆が沢山獲れるからみたいだ。沢山獲れるということは、庶民の口に入る機会も多い。ゆえに必然、旬と言われるようになったのだろう。また、鰆の本当の旬は冬だとは言ったが、春の鰆が極端に味が落ちると云うワケではない。春でも充分美味いのである。それも旬たる由縁になったのだろう。
鰆の刺身を普段あまり見ないのと、見てもたたきが多いのには、これも実をいうと理由がある。
先ず第一にに、鯖の親戚だからか足が早い。傷みが早いので、よほど新鮮なものでないと刺身にはならないのだ。
たたきにする理由も同じでもあるが(すぐに表面を焼くと鮮度の保ちが良い)、もっと言えば、鰆の身が割れやすいからだろう。つまり、周りを焼くことによって身崩れを防ぐためなのである。
鰆の刺身を最初に食べたのは、大学1年の時だった。
女の子と行った初めての旅行だったから、よく憶えている。
場所は広島県の鞆の浦。
レトロな町で、昭和の古い時代にタイムスリップしたかのようだった。町には、漸く寒さがゆるんだホッとした雰囲気が漂っていた。柔らかな陽射しが溢れ、赤い椿がたおやかに咲いていた。
たぶん春休みだったのだろう。ということは3月だ。
そこの旅館の夕食に出てきたのが鰆の刺身だった。
たたきではなかったと記憶する。分厚く切られたもので、四角いブロック型だった。おそらく大きな鰆の一番分厚くて良いところを贅沢に切り出したものだったのだろう。
その頃はまだ鰆の刺身なんて聞いたことがなかったし、鯛とは違う濁った白っぽい色にとまどった。そう云うものだとは知らないから、鮮度が到底良さそうには見えなかったのだ。
恐る恐る口に入れて、食べた時の驚きと衝撃は今でも忘れられない。あまりの美味さに頬っぺたが、痛いくらいギュンとなった。
彼女もその美味しさにビックリしてたっけ…。
あの時の衝撃と感動を越える鰆の刺身には、その後、出会えていない。
ファーストインプレッションにして、最高峰。
どこか恋愛にも通ずるものがある。
おそらく、あれを越えるものには、生涯出会うことはないだろう。
おしまい
追伸
『消えたキアゲハ 完結編』にあまりにも時間を要してしまい、書けなかった文章。
ホント、蝶の話は時間がかかってアホらしい。食べ物の文章なら、ものの30分もあれば下書きが出来上がるのにさ。
そういえば、今年は鰆の味噌焼もつくってみた。
甘いのはあまり好きじゃないし、わざわざ西京焼きの為に白味噌を買うのもイヤだし(西京焼きじたいは好き)、普通の味噌に酒と味醂少々と刻んだネギを加えて漬け込んでみた。
しかし、アホだから存在を完全に忘れてて、気づいたのは2週間後。
周りに付いた味噌を落とし、弱火でじっくり焼いてみた。それを、ややビビりながら口に運んだ。
(・。・)えっ、メッチャ旨いやんか❗
腐った様子もないし、全然イケる。普通に塩焼きしたものよりも断然に美味い。味噌の力には、とても感心したよ。発酵食品、恐るべし❗
少々、味が濃いが、むしろ日本酒のアテにはビッタリだった。勿論、白ごはんにも抜群に合う。
これからは、余った魚は味噌漬けにしょっと(^o^)v