2018′ カトカラ元年 プロローグ

 

突然、去年からカトカラ(Catocala)に嵌まっている。
そのキッカケとなったのが、あるカトカラだった。

カトカラとは、ヤガ上科 シタバガ(catocala)属に属する蛾の1グループのことで、学名の属名が総称として使われることが多い。以前はヤガ科 Noctuidae シタバガ亜科に属していたが,現在では Erebinae トモエガ亜科に属するとされる(Zahiri,2011;Regier, 2017)。
Catocala の語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
ついでに言っとくと、英名は「underwing」。コチラも下翅に注視したネーミングだ。
日本には31種類がいて、美しいものが多いことから人気の高いグループだ。
とは言っても、所詮は蛾愛好者の間だけのことで、一般の虫好きには見向きもされないと云うのが現状だろう。自分も元々は蝶屋だから、存在は知ってはいたものの、さして興味は無かった。というか、元来は一般ピーポーと同じく生粋の蛾嫌いだから(註1)、おぞましいとさえ思っていた。

しかし、2017年に春の三大蛾の灯火採集に連れて行ってもらってから、少し蛾に興味を持ち始めた。
この辺のことは当ブログに『2017’春の三大蛾祭り(註2)』と題して書いたので、よろしければ併せて読んで戴きたい。格調高い純文学風に仕上げてみました(笑)。いや、ホラー小説風かな❓
えー、ワシが如何に蛾嫌いだったのかも、読めばわかりますです、ハイ。

そういうワケで、その年の秋にはAくんにカトカラで最も人気の高いムラサキシタバの灯火採集に連れて行ってもらった。

 
【ムラサキシタバ Catocala fraxini】
(2017.9.23 兵庫県美方郡香美町)

 
とは云うものの、カトカラ全体に対しての興味は未だ薄かった。ムラサキシタバはカトカラの帝王とも言われ、最も美しくてデカいと云うから、一度くらいは実物を見てみたかっただけだ。

その日、結局ムラサキシタバは1頭しか飛んで来ず、それを空中でシバいたAくんが手に乗せて見せてくれた。それで充分だった。一度でも見とけば、『あれ、デカくてカッコイイですねー。』と言えるのである。ミーハーなので、昆虫界のスター的な種は一応実物を見ておきたい派なのだ。

この日はムラサキシタバ以外にもシロシタバ、ベニシタバ、キシタバ、ジョナスキシタバが飛来した。
持って帰る気はあまりなかったが、Aくんの薦めで一応ムラサキシタバ以外は持って帰った。だから、カトカラの標本は一応持ってはいる。けど、所詮は蛾。わざわざ集めたいとは全然思わなかった。

しかし、6月に奈良県大和郡山の矢田丘陵にシンジュサンを探しに行った折りに、気持ちが一変したのであった。

 
                  つづく

 
追伸
台湾の蝶シリーズも取り上げねばならぬ蝶がまだまだあるというのに、新たなシリーズを始めてしまうのである。節操がないのだ。
でも、こないだのキアゲハですっかり疲弊しちゃったので、リハビリが必要なのである。そのうち気が向いたら、そっちの方も再開する予定です。

ムラサキシタバの画像が酷いので、彼女の名誉のために美しい画像も貼り付けておきます。

 
(出展『昆虫情報センター』)

 
たぶん♀だね。
下翅の美しさはもとより、上翅の複雑な柄も渋美しい。

 
(註1)元来は一般ピーポーと同じく生粋の蛾嫌い

世間が蛾嫌いなのは、たぶん幼少の頃の刷り込みからだろう。
周囲が、蛾を見て『Σ( ̄ロ ̄lll)ひっ❗』とか呻いて仰け反るのを見て、子供は蛾って気持ち悪いもんなんだと学習しちゃうんだろね。海老とか蟹とか雲丹やナマコだって、冷静に見れば相当グロい。我々はそれが食って旨いと知っているから、美味しそうに見えるだけだ。
話が逸れた。ようはファーストインプレッションで学習したそこに、蝶より地味で汚い、主に夜に活動するので不気味、目が光って妖しい、胴体が太くて気持ち悪い、家に飛び込んできて粉(鱗粉)を撒き散らす、毒を持ってそう、毛虫が醜い等々の悪いイメージが重なり、どんどん補完されてゆくと云うワケだ。それにしても、見事なまでの負のイメージのてんこ盛りだすなあ(笑)。
大人になって蝶採りを始めた頃も蛾嫌いなのは変わらず、突然飛び出してきたら一々飛び退いて背中に悪寒を走らせていた。
蛾も蝶と同じ鱗翅目に含まれ、分類学的にも両者の境界は曖昧だ。だから、ヨーロッパでは厳密に区別せず、蝶も蛾も庶民の間では同じものとして認識されているようだ。なのに、日本では何故か蝶は善、蛾は悪というレッテルが貼られている。驚いたことに、蝶屋(蝶愛好家)でさえも蛾嫌いは結構多い。
何で(・。・;❓
これは、おそらく近親憎悪ではあるまいか❓
蝶をこよなく愛する者にとっては、蛾は汚ないし、気持ち悪いし、世間のイメージが悪いから、深層心理で鱗翅類の面汚しだとでも思っているのかもしれない。視点を変えれば、蛾にも美しいものは多いんだけどね。

 
(註2)2017’春の三大蛾祭り

その壱.青天の霹靂編、その弐.悪鬼暗躍編、その参.闇の絵巻編、その四.魑魅魍魎編の四部作で構成された長編。
他に姉妹作『2018’春の三大蛾祭り』というのもあるので注意されたし。