クロカタビロちゃんが、樹液に来た

 

先日5月18日、蛾の夜間採集に行った折りに樹液にクロカタビロオサムシ Calosoma maximowiczi が来ていて驚いた。
クロカタビロオサムシといえば、樹上性のオサムシで毛虫を食うことで知られているが、樹液を吸うなんて聞いたことがなかったからだ(註1)。

 

 
最初、遠目から見た時はキマワリかと思った。
けど、近づくにつれ、形も鞘羽の質感も違うと感じて直感的にクロカタビロだと思った。

普通、オサムシの多くは羽が退化しており、飛べないんだけど、このカタビロオサムシの仲間にはちゃんと羽があって飛べるんだよね。
目の前で飛んだらヤだなと思いつつ、グッと寄る。スマホで写真を撮るのには相当近づかないと撮れないのだ。したら、嫌がりはって移動。

 

 
わかりにくいので、トリミングしときます。

 

 
これでクロカタビロだと誰が見てもわかるだろうと思って、その場を一旦離れた。
しかし、暇なのでベンチに座って撮った写真をチェックしてみたら、これが酷い。あとで何を言われるか堪ったもんではないので、撮りなおすことにした。

 

 
それでも小さいから、一応トリミングしとくか…。

 

 
前脚の跗節の形からすると、♂みたいだね。
♂はここが幅広いが、♀は細いので判別しやすい。

場所は奈良県大和郡山市の矢田丘陵。
時刻は午後7時過ぎ。この日の日没時刻は7時半くらいだったが、天候がダダ曇りだったせいか辺りは完全に日没後の様相だった。吸汁時間は20~30分くらいだったかと思われる。

クロカタビロオサムシと云えば、アッシのガキの頃は関西では珍品だった。能勢で珠に採れるくらいで、確実に産しているのは兵庫県佐用町の大撫山くらいだったと記憶している。
それが2014年だったか、関西で大発生したんだよね。この年は各地でマイマイガの幼虫が大発生していて、餌が豊富だったからそれに連動してクロカタビロも大発生したのだと言われている。

でも、それって何か変なんだよなあ…。
確かクロカタビロオサムシって成虫越冬だよね。夏の終わりだか秋の初めに幼虫が土中に潜り込み、蛹から成虫になる筈だ。つーことは前年に既に沢山の幼虫がいた事になる。しかし、前年にマイマイガは大量発生していたワケではないよね。他の蛾の幼虫が大発生したというのも聞いていない。だったら計算が合わないじゃないか。前年にクロカタビロの幼虫が大量に生き残るには、餌となる芋虫だの毛虫だのが沢山必要となる。けど、マイマイガの幼虫が大発生するのは翌年なのだ。何でクロカタビロがそんなに生き残ったのかが、よくワカンナイ。
調べてみたら、クロカタビロオサムシは寿命が2年もあるらしい。越冬成虫には前年の成虫と新成虫の両方がいるようだ。一瞬、大発生の前年と前々年との成虫が合わさって、たまたま偶然にスゴい数の成虫が現れたのかと思った。しかし、東北なんかでは蛾の幼虫の大量発生(シャチホコガの1種)とクロカタビロの大発生は連動するらしい。どうやら偶然では無さそうだ。実際、今年も大量の毛虫が湧いてて、各地でクロカタビロオサが頻繁に見掛けられ始めているようだ。

それはさておき、何でクロカタビロちゃんは来年にマイマイガが大発生するって解ってたんだ❓予知能力でもあんのかよ❓
予知能力があるんだったら、スゴいよね。
理解不能だわさ。虫って、宇宙人だな。

 
                 おしまい

 
追伸
情が湧いたのか、このクロカタビロオサムシは採集しなかった。それに尻から臭い液を噴射されんのがヤだったというのもある。
因みに、樹液に来ていたワケではないが、もう1頭樹幹に静止していた個体も見ました。どちらも日没後まもなくだった。或いは夜はその時間帯くらいまでしか行動しないのかもしれない。ワカンナイけど。

一応、参考までに標本写真も添付しようと思ったが
手持ちのものがある筈だが行方不明。仕様がないので、綺麗な展足写真をお借りしよう。

 
【クロカタビロオサムシ♂】
(出展『日本産環境指標ゴミムシ類データベース 里山のゴミムシ』)

 
オサムシにしては、ズングリ型なのが特徴。
カッコイイ。オサムシはフォルムがスタイリッシュなので、基本的に好きだ。北海道にはオオルリオサムシやアイヌキンオサムシなど、美麗な金属光沢に輝くものもいて「歩く宝石」なんて言われたりもする。

 
【オオルリオサムシ】
(出展『井村有希・水沢清行 著『世界のオサムシ大図鑑』』以下、同じ)

 
色のバリエーションが様々なのも魅力だ。

 

 
【アイヌキンオサムシ】

 
似ているが、オオルリオサムシよりも一回り小さい。

   
(註1)樹液を吸うなんて聞いたことがなかった…

クロカタビロオサムシは聞いたことがなかったが、オサムシの仲間ではマイマイカブリやツシマカブリモドキが樹液や果実を発酵させたトラップに集まることが知られている。去年、山梨の大菩薩ではクロナガオサムシの仲間(コクロナガオサムシ?)がトラップに2頭寄って来てた。