2018′ カトカラ元年 その1

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  『不思議のフシキくん』

  Vol.1 フシキキシタバ

 
前回のプロローグに続き、いよいよ第1回である。
とはいえ時間が経っているので、ヒマな人はプロローグを読み返してね。

 
突然、去年からカトカラ(Catocala)に嵌まっている。
キッカケは6月上旬に奈良県大和郡山市の矢田丘陵にシンジュサンを探しに行った折りだった(註1)。

午後11時。水銀灯のそばの柱に、見慣れない蛾が止まっていた。
(;゜∀゜)あっ❗、もしかしてカトカラ❓
直感的にカトカラの中でもキシタバの仲間だと感じた。しかも、見たことがない奴だと思った。インスピレーションが走った時は大概は☝ビンゴだ。
ぞんざいに近づいたら、驚いて僅(わず)かに下翅の鮮やかな黄色を覗かせた。
(;・ω・)びっくりしたなー、もぅー。威嚇かよ。

 
(出展『フォト蔵』)

 
にしても、小憎らしいチラリズムだ。
男と云う生き物は、とってもチラリズムに弱いのだ。
( ☆∀☆)黄色いパンティー🎵
(@_@)黄色い逆さパンティー❤
\(◎o◎)/キャッホーッ💕

去年(2017年)、下翅が黄色い系統のカトカラはジョナスキシタバとキシタバを採った経験があったが(註2)、それらよりも明らかに鮮やかな黄色だと感じた。

少し離れた所にいる小太郎くんを呼ぶ。
彼は蝶屋だけど(ワシも蝶屋だす)、オイラなんかよりも遥かに蛾に詳しいのだ。って云うか、小太郎くんは虫の事だったら何だって詳しい。若いけど尊敬しちゃうよ。蛾初心者のオイラとしては誠に頼もしい存在だ。
 
『これって、キシタバ系じゃなくなくね❓』
 
と尋ねたら、小太郎くんが事もなげに答える。

『あっ、カトカラですね。この時期だと多分フシキキシタバかな。結構珍品ですよ。だとしたら、奈良県での記録はたぶん無かった筈てす。初記録かも。』

あんた、何でも知ってはるなあ。やっぱ、マジ尊敬するよ。いつまで経っても、ワシ二流でぇ~す( ̄∇ ̄*)ゞ

にしても捕らえて確認せねば、どうしようもない。
上から毒瓶をかぶして、薬殺する。
酷い所業だ。これで、アッシも立派なマッド・サイエンティストの仲間入りじゃよ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。きっとロクな死に方をせんじゃろうて。

暫く経って、昇天を確認したところで取り出す。

 

 
表の柄は渋いっちゃ渋いけど、所詮は蛾風情。地味だ。
ならばと、裏返してみる。

 

 
(;゜0゜)おっ❗、この特徴的な黄色と黒の縞模様は間違いなくキシタバの仲間だね。馬鹿なオイラだって、それくらいのことは解る。

小太郎くんが言う。
『間違いなく、フシキですね。』
真面目に名前を聞いてなかったので、改めて何だそりゃ?と思って訊き返す。
『フシキ❓、フシギ(不思議)じゃなくて(・。・;❓』

フシギノモリノオナガシジミとか、また誰かがメルヘンチックな名前でも付けたのかと思ったが、小太郎くん曰く、間違いなくフシギじゃなくてフシキだそうだ。
にしても、語源がワカンねえよ。兎に角、蛾トーシロ(素人)には聞いたこともない名前のキシタバだった。
名前なんて別にどっちゃでもええけど、カトカラはカッコ渋美しいから、蛾にしては好きな方かなと思った。
でも、ことさら集めようという気は起こらなかった。

そういえば、こん時はこんな事も考えてたっけ…。
去年も思ったんだけど、このカトカラグループの柄って、サイケデリックっぽくねっ❓
サイケデリック・アートにはカラフルな渦巻きみたいな柄があって、なんかジッと見てると引き込まれそうというか、(◎-◎;)目が回りそうになる。幻覚系ドラッグやってたら、コレってヤバいくらいにウルトラ立体的に見えるのかな❓(勿論、やんないけどー(^o^))
インドで出会った学生ジャンキーくんは、L・S・D をやったら、そんな風に見えたりすると言ってたなあ…。
アイツ、相当なジャンキーだったけど、まだ生きとんのかなあ…。

んな事を考えつつ、そっと上翅を少し上げてみた。
と、同時に色鮮やかな黄色がバァーンと目に飛び込んできた。
黄色はあまり好きな色じゃないけど、素直にとても綺麗だと思った。でも写真は撮らなかった。そんな事よりも意識はまだ見ぬシンジュサンの方に集中してたからだ。その美しさに心を動かされたとはいえ、所詮は前座だと思っていた。いつシンジュサンが飛んでくるかワカランのだ。かまけているヒマなどない。

その夜、💥ビシッとシンジュサンをシバいて、翌朝に帰った。この日が記念すべきオーバーナイト・モスだったワケだね。冷静に考えてみれば、蛾を求めて徹夜するだなんてビョーキだよなあ。我ながら脱力系で笑ってしまうよ。

一眠りしてから展翅してみて、(;゜0゜)驚いた。
日の光の下で見るそれは、もっと鮮烈な黄色だった。

 
【フシキキシタバ Catocala separans ♂】
(2018.6.7)

 
深くて濃い、どこか透明感のある山吹系の黄色だ。見ようによってはオレンジ色にも見える。
これを見て気持ちが一変した。
カトカラの中の所謂(いわゆる)キシタバと言われるグループは下翅が皆さん黄色くて、日本ではこのタイプのカトカラが圧倒的に多い。でも素人目には、どれも似ていて何が何だかワカンない。区別がつかねえもんは面倒クセー。だから敬遠してた。生来ミーハーだから、カトカラと云えば、こん時まではムラサキシタバしか眼中になかったのである。けんど、こんなに美しいのなら集めてみてもいいなと思った。それにスタートからいきなりの珍品で、しかも奈良県では未記録と云うのも何だか気分が良い。俄然、やる気になった。

後々知ることになるのだが、後翅の黄色部は他の黄色系カトカラと比べて、このフシキキシタバが群を抜いて美しい。その理由は他種と比べて下翅の黒帯が細いことにある。即ち、黄色い領域が広いということだ。少し毛色が違うが、この黄色の美しさに対抗しうるのはカバフキシタバくらいだろう。あと、蛾にしてはあんまりデブじゃないのも好感がもてた。
もしも最初に自分の力だけでゲットしたのが、少し前に発生する地味なアサマキシタバだったとしたら、おそらくカトカラには嵌まっていなかっただろう。いや、嵌まるにしても、もっと後だったかもしんない。
そういえばこの年は、ちょっと前の5月半ばにA木くんに『そろそろアサマキシタバの季節ですよ。今年は蝶の発生が全般的に早いから、もう出てるかもしれませんね。』と言われたのだった。けんど、言われても全然ピンとこなかった。そういうのもいたなあ…と云う程度で、あまり興味が無かったのだ。やっぱ、蒐める気がさらさら無かったのね。

 
後日、♀らしきものも採れた。

 
(2018.6.17)

 
♀の方が帯が細くて、より黄色いね。偶々かなと思ったが、図鑑等で確認すると、その傾向はあるようだ。
とはいえ、雌雄の決定的な違いはおそらく腹だろう。
♂は腹が細長く、その先端に尻毛(毛束)があるが、♀には無い。腹も短くて太い。加えて、翅形は♀の方がやや丸っこい。他にも判別点はありそうだが、蛾はトーシロだからワカンねえや。

とにかくコレを機に、フシキキシタバ、ひいてはカトカラ全般について調べてみようと思った。

フシキキシタバは、かつては大珍品だったようだ。
1889年に記録されてから、近年まで記録が無かったそうだ。それくらいレアだった。再発見されたのは1956年で、場所は兵庫県。何と67年ものインターバルがある。(・o・)何で❓
その後、岩手県、山梨県、北陸地方や近畿地方各地での発見が相次いだそうな。

ネットの『カトカラ全集』の県別カトカラ記録を見ると、小太郎くんの言うとおり奈良県では未記録になっていた。でも、これは単に正式な発表がされてないだけだと思う。とは云うものの、調べれば調べるほど珍品じゃなくなってきてるみたいだし、当然奈良県でも採れているという情報も入っている筈だろう。じゃなければカトカラ界の情報ネットワークが余程狭いのか、愛好者が少ないのか、もしくは管理者の怠慢を疑っちゃうよ。

 
【学名】Catocala separans(Leech,1889)

属名Catocalaの語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
小種名の「separans」は、おそらくラテン語由来。
意味は「分離」だろう。これは上翅と下翅の色が違うことからきてるのかと思ったが、それじゃテキトー過ぎる。他のカトカラもそうだからだ。
想像だが、たぶん下翅中央の黒帯が途中で分離、もしくは分離しがちだからではないかと考える。間違ってたら、ゴメンナサイ。

フシキキシタバは、英国人リーチによって1889年に富山県高岡市伏木と滋賀県長浜から得られたものから記載された。和名の由来はその辺からだと思われるが、なぜナガハマキシタバではなく、フシキキシタバになったのかと云う経緯はわからない。
どうあれ語源は、まさかの地名だったのね。納得だが、ちょっとガッカリだ。想像では、もっと複雑でドロドロしたややこしいミステリアスな命名ストーリーを描いていたからさ。
(-_-)フシキキシタバ殺人事件。ナガハマキシタバを主張した男は消されたな。アカン、また変な妄想がワいてきた。脳を強制停止じゃ。

分布は本州、四国、対馬。北限は青森県だが、その分布は局所的で記録の無い都道府県も結構ある。国外では朝鮮半島、中国北東部、ロシア沿海州にも分布するとされている。

成虫の開張は55㎜。図鑑等には6月初旬から現れ、8月下旬まで見られるとあるが、実際は7月に入ると殆んど見られなくなった。いても、驚く程みすぼらしいボロだった。新鮮な個体を得られる期間は短いのかもしれない。

フシキキシタバは下翅の黒帯が細く、黄色い領域が広いのが特徴だが、実をいうと日本には同じような特徴を持つものがもう1種いる。Catocala duplicata マメキシタバだ。
けど両者の判別は簡単。名前のとおりマメキシタバの方が遥かに小さいからだ(開張46~48㎜)。それに上翅の斑紋が全然違う。発生時期も1ヶ月近く後ろにズレるから、間違うことはまず無いでしょう。マメちゃんが登場する頃には、フシキさんはボロボロなのだ。少なくとも関西から西はそうだろう。

 
【マメキシタバ Catocala duplicata ♀】
(2018.8 大阪府四條畷市)

 
何か野暮ったいなあ…。
たぶん上翅のデザインにメリハリが無いからだ。それに、下翅の黄色にフシキのような透明感のある輝きが感じられない。どこか燻(くす)んで見える。

話をフシキくんに戻そう。
幼虫の食樹はブナ科コナラ属のクヌギ、アベマキ。
飼育する場合、同じコナラ属であるミズナラやコナラ、カシワが代用食になるというが、産地により受け付けない事もあるそうだ。

先にも触れたけど、フシキキシタバは近年までは指折りの大珍品だった。しかし、最近では関東地方の平野部など各地から多産地が見つかっているという。
これは食樹が判明し、灯火にあまり飛来しないこと、樹液によく集まること、発生期が比較的早くて期間も短いこと、昼間の見つけ採りでも得られることが分かったからのようだ。珍種と言われるものでも生態が分かってしまえば、普通種に成り下がることはままある。
とはいえ、かつては不思議キシタバとも言われるくらいに謎多き存在だったみたいだ。謎とかそういうのって掛け値なしに好き。謎があれば、そこには浪漫があるからだ。興味は尽きない。
これは想像だが、不思議だとされたのは、①記載されてから長い間再発見されなかった事。②再発見されてから突然各地で記録が急に増えた事。③蛾の主たる採集法であるライトトラップや外灯にはあまり飛来しない事。④前年には沢山見られたのに、翌年は全く見かけなくなったりする事。そして、⑤幼虫の食樹が何処にでもあるクヌギやアベマキだからだろう。
幼虫の食餌植物がレアなものなら、珍品たる理由も理解しやすい。それが、まさかの何処にでもあるクヌギの木となると、首を傾げざるおえない。

①と②は後回しにして、③からその理由を紐解いてゆこう。カトカラ1年生の空想、戯れ言だと思って聞いて戴きたい。

③だが、灯火にはあまり飛来しないとあるが、自分は灯火に飛来した個体を5頭以上は見た。但し、何れも深夜11時以降(註3)、遅いものは午前4時過ぎに飛来した。因みに飛来が多かったのは、午前1時前後である。
たぶんライトトラップや灯火まわりは、皆さんそれほど深夜遅くまでやらないから、それで会えなかったのではあるまいか。ゆえに灯火にはあまり飛来しないと考えたのではなかろうか。たった1年の経験だが、フシキは灯火への飛来が遅いタイプという可能性はあると思う。

④は、単に大発生した後の次の年には極めて個体数が減るからではないかと思う。大発生じゃなくとも、多かった年の翌年は個体数が減ると思われる。蝶なんかは、そういう例が結構多い。蛾でも有り得るだろう。

⑤が最大の不思議だった。どこにでもあるクヌギやアベマキが幼虫の食樹なのに、なぜ珍品だったのかが謎過ぎる。これを単にカトカラ愛好家の怠慢だと片付けるのには無理がある。クヌギをホストとするカトカラは他にもいるからだ(註4)。となれば、カトカラ愛好家さんたちがフシキキシタバがいるような環境に行く機会は少なくなかった筈だ。のみならず、その環境ならば甲虫屋だって訪れる機会は多い。甲虫屋の多くが蛾に興味を持っているとは思えないが、情報が入る確率はゼロではない。長い年月の間には、情報がもたらされる事もあって然りだろう。それでも稀にしか見つからなかったという事は、やはり昔は極めて稀な種だったと思われる。

発見されにくいのは、発生が比較的早いからだとも考えたが、コヤツの前にアサマキシタバが発生する。また、フシキの後にはすぐワモンキシタバや、ただキシタバ(Catocala patala)も発生する。前後どちらかを採集に行った折りに、会える可能性はそこそこあるだろう。だから、それも理由とはなりにくい。やっぱ不思議だわさ。

とはいえ原因のない結果は存在しない。きっとそこには某(なにがし)かの理由がある筈だ。
例えば、昔と今とでは里山の環境に何か変化はないだろうか❓地球温暖化とか、乾燥化とか、天敵の減少とかさ。
💡ピコリン❗そこで、はたと閃いた。
クヌギは昔から里山に住む人々に利用されてきた。成長が早く、植林から10年ほどで木材として利用できるからだ。材質は硬く、建築材や各種器具、車両、船舶に使われる他、薪や椎茸栽培の榾木(ほだぎ)、炭(薪炭用材)としても用いられてきた。伐採しても切り株から萌芽が更新し、再び数年後には樹勢を回復する事から、持続的利用が可能な樹木の一つとして農村では重宝されていた。それゆえ下草刈りや枝打ち、定期的な伐採など人の手が入ることによって林は維持されていた。これがいわゆる日本人のイメージする雑木林で、里山の風景の典型を成してきた。しかし、近代化と共に日本人の生活様式や農業そのものの有り様が変化した。そして、今では利用されることも少なくなり、放置されることが多くなった。
つまり、雑木林が放置されることにより伐採が減って、クヌギやアベマキの大木が増えたのではないだろうか。
クロミドリシジミの幼虫がアベマキの大木を好むらしい。そして、最近になって各地で増えているとも聞いている。フシキキシタバの幼虫も大木好きで、クヌギやアベマキの成長が進み、それに伴って増えたのではあるまいか❓ それだとキレイに説明がつく。どこにも、そんな事は書いてなかったけど…。

①は、⑤と関連性があるのではないかと思う。
記載されて長い間再発見されなかったのも、昔はクヌギの大木が少なかったからではないかな。

②も⑤とリンクしていて、再発見されてから急に各地で見つかり始めたのも全国的にクヌギやアベマキの大木が増えたからだろう。時代の流れで、里山の生活様式が想像以上に各地でワッと一斉に変わったんだろね。
個体数が増えると、観察される機会も増える。当然、詳しい生態もわかってくる。それが発表されれば、伝播は早い。加速度的に情報量が増えたから、発見が各地で相次いだのではないかと推察する。

再度言うけど、蛾初心者の戯れ言だと思って聞いて戴きたい。
色々と文献をあたってみたけど、調べた限りではこういった推察なり意見なりは見受けられなかったし、奈良県の記録は今年見ても空白のままだ。カトカラ愛好家って、もしかしてシャイなの❓

怒られそうだ。カトカラ愛好家の皆様方、けっして喧嘩を売っているのではござりませぬ。初心者ゆえにワケもワカラズ、素直に疑問をぶつけただけでござる。納得できる説明を御教示してくだされば、直ぐに謝罪、意見を引っ込める所存でありまする。
納得できねば引っ込めませんけどー。ツゥンマセーン。
あっ、このモノ言い、絶対怒られるなあ。
まあいい。どうせ周りでカトカラを集めているのはA木くんくらいしかいないし、滅多に遊んでもらえない。だったら、勝手な事をゴチャゴチャ言う一人ぼっちカトカラ愛好家になろう。
でも、本当は一人で夜出歩くのは嫌なんだよなあ…。
👻お化け、怖いし。

ここまでを酔っ払って一気に書いた。
翌日、読んでみて、ヤバいかなあと思った。偉そうなことを書いちゃったので、不安になってきたのだ。
そういえば、西尾規孝さんの『日本のCatocala』のフシキキシタバの項を読んでないんだよなあ…。去年の秋の終わりに大阪の自然史博物館で読ましてもらったんだけど、既に採った事のあるカトカラは無視して、まだ採ったことのないものを中心に読んだのだ。採ってしまえば、急速に興味を失う性格が仇になっちまっただよ。
とにかく、ここは是が非でも確認せねばなるまい。もう慌てて、ソッコーで自然史博物館に行ってきましたよ。

 
件の本には、アッシの考えたような事がちゃ~んと書いてあった。

「本種は比較的最近になってあちこちで産地が知られるようになった。老齢木にもつくようである。今から20年前にコシロシタバやマメキシタバ、オニベニシタバの多産した上田市のクヌギ林の樹齢は20年前後であった。40年になるとCatocala はつきにくくなるような印象を持っている。老齢木のタンニンは幼虫の成長阻害要因である。ミドリシジミの類の方がもっと顕著で、30年以上のクヌギにはクロミドリシジミ以外はまずつかない。近年の薪炭材の放置による林の老齢化がCatocala相に影響を与え、結果的に本種の多産につながっている可能性がある。」

別項の食樹についての欄にも関連した記述があった。

「幼虫はコシロシタバが特に発生する10年前後の幼齢の木にはほとんど発生しない。20年以上の大木によく発生する。」

Σ( ̄ロ ̄lll)やっベー、もう少しで大恥をかくとこじゃったよ。ちゃんと考えてはる人は、おるんやね。或いはカトカラ好きの間では、こんなの常識だったりして…。
カトカラ愛好家の皆さま、m(__)mゴメンナサイ。

それにしても、この西尾さんの本ってスゴいよなあ。
日本のカトカラについて、これ程までに突き詰めて書かれてある本は他に無い。幼生期も含めて、よくぞここまで調べ上げられたなと思う。生態写真もふんだんに盛り込まれているし、しかもキレイ。これはもうカトカラ界の金字塔的遺産でしょうよ。しかも自費出版なんだから驚きだ。生意気なカトカラ1年生も、その努力と執念、鋭い観察眼には感服させられましたよ。

 
そういえば、裏側の画像を添付してなかったな。

 
(裏面♂)

 
斜めってて、酷いな(笑)
写真を撮るのがテキトーすぎた。撮り直そうかと一瞬思ったが、もう、いいや。面倒クセーもん。
それはそうと、あんまし考えてなかったけど上翅の裏は黄色いんだね。裏はボオーッと見てたわ。もしも翅の表もこのデザインで、色鮮やかだったとしたら相当カッコイイぞー。

 
(裏面♀)

 
下翅は表の柄とある程度は連動してるっぽいな。
となると、キシタバグループの中では一番明るいのかな?とはいえ、表みたいに黄色が鮮やかではないから、どってことないけど。
そういえば、図鑑には裏側の標本写真が殆んど載ってないんだよなあ~。何でかなあ❓そのうち全種揃ったら、一同に並べてやろう。

とにかく、このフシキキシタバをキッカケに、このあとカトカラにハマって邁進する事とあいなった。
結果、1年で17種類が採れた。日本のカトカラは全部で31種類だから、半分は越えている。近畿地方以外の遠征は秋の山梨と長野の2回だけだった事を考えれば、結構頑張った方だと思う。

ここで「おしまい」と書いて、あっさりクロージングする予定だったが、やめた。らしくない。最後に饒舌男の一言を付け足して終りませう。

フシキキシタバは珍品の座を滑り落ちたが、他の場所でその姿を見る事は一度も無かった。今や大珍品じゃないかもしんないけど、分布は今もそこそこ局所的で、けっして普通種なんかではないと思う。誰にもポイントを教わらずに自分の力だけで見つけ出すことはそう簡単ではない筈だ。レア度のランクは下がったやもしれぬが、美しいことに変わりはないし、個人的には特別さはそんなに失われていないと思ってる。
何よりも黄色いカトカラの魅力を最初に教えてくれた種だ。この先、初恋の相手を悪く言うことはないだろう。最初に惚れた女を蔑(ないがし)ろにするような男にだけはなりたくない。
 
                  おしまい

 
追伸
第1回なのに、のっけから攻撃的な回になってしまったなりよ(^o^;)
カトカラ1年生なのに、生意気だよね。途中で書き直そうかとも思ったが、そのままにしておくことにした。理由の一番は面倒くさいからだけど、一旦吐いた(書いた)言葉は呑み込みたくないし、本音を言うのを厭わない方だからコレで良しとした。批判があれば、素直に謝罪なり反論なりすればいいことだ。

展翅は今思うと上翅を上げすぎたなあ。
蝶の展翅の時みたく、触角の角度と上翅との間隔(空間)を重視して展翅したからだろう。
あと、蛾ビギナーなので、図鑑を持っていないと云うのもある。お手本が無いのでイメージが湧かないのである。自然、テキトー俺流となる。
そういえば、蛾だから邪悪な感じにしたかったと云うのもあったな。上翅を上げ気味にした方がそう見えっからね。蝶じゃないから気楽で自由なのさ。蝶ほどに大切ではないゆえ、失敗しても別にいいやと思ってっからチャレンジャーにもなれるってワケ。
段々、思い出してきたよ。踏み込んで言うと、当時は世間の蛾の展翅に対して、あんまキレイじゃないなと云う印象を持っていた。ならば、ルール無用の悪党のワシがトレンドを作っちゃるーくらいの気分だったのである。我ながら尊大なアホだよねぇ(笑)。
でも実際は違った。今では思う。蛾の展翅は蝶よりも遥かに難しい。蛾は形がバラバラで、その造形は多岐に渡る。個性的なのだ。だから、種によってバランスが全然違ったりもする。やってて、何が正解なのか分からなくなってくるのである。おまけに触角にも色々なバリエーションがあるから、ややこしい。でもって、カトカラなんぞは髪の毛よりも細いから直ぐにブチッと切れるし、真っ直ぐになんないし、左右対称にするのは至難の技。ほとんど不可能と言っていい。
そんなワケで、今回のコレはコレで一つのそういうデザインと考えれば、そこそこカッコイイかもしんないと密かに思ってたりもするんだよねぇ…。
けんど、今年は上翅をもっと下げよ~っと。
先ずは基礎を学んでからでないと、トレンドとか崩しもヘッタクレもあらしまへん。遊ぶなら、もっと上手くなってから遊ぼっと。それに、秋田さんに褒めてもらいたいしね。

と、昨日はここまで書いて、註釈も含めてほぼほぼ文章を完成させてから生駒山地にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。テリトリー(占有活動)を張り終える日没近くまでいたから、折角だし樹液が出てる場所を探すことにした。誰もいない真っ暗な山道を懐中電灯を持ってウロウロする。
で、たまたま照らした斜め上にカトカラらしきものが飛んでた。瞬時に反応して片手で網を振り抜いた❗
飛んでる時に裏側が鮮やかな黄色に見えたから、マジ振りである。アサマキシタバではない筈だから、もしやと思ったのだ。勿論、そういう時は滅多とハズさない。
網の中を確かめて、闇に向かって、『俺って、まあまあ天才。』と呟いたよ。

すかさず、毒瓶に放り込む。

 

 
ひゃっほー((o(^∇^)o))❗❗
( ☆∀☆)チラリズムの逆さ黄色いパンチィー❤❤❤
やっぱフシキちゃんだった。

 

 
期せずして、この日は去年初めてフシキキシタバを採った日にちと同じ6月7日だ。

《「この黄色がいいね」とオラが言ったから六月七日はフシキ記念日》

今日から6月7日は『フシキ記念日』と呼ぼう。
\(◎o◎)/おーっ、何と元ネタの俵万智の短歌『サラダ記念日』の日付の七月六日と入れ替わりの反対じゃないか。運命感じるぅー(σ≧▽≦)σ

フザけるのはこれくらいにして、展翅するなりよ。

 

(2019.6.7 東大阪市枚岡公園)

 
出来立て、ほやほやだよ~ん。
上翅の大きさが右側が少し小さいので、ビミョーに変だが、まっ、こんなところでしょうかね。
触角をきっちり整えるのを試みてみたが、(^_^;)無理だわ。これに関しては自然に任す方向で整えるしかないね。

とはいえ、下げたものの全然邪悪感がないなあ。
皆さんは、どっちがカッコイイと思いますぅ―❓
なんだか何が正しいのか、よくワカンナクなってきたよ。

 
(註1)シンジュサンを採りに行った折りに…
そん時のことは、拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題した三回シリーズに書いとります。

 
(註2)ジョナスキシタバとキシタバを採った経験…
2017年の秋にA木くんに、ムラサキシタバを見てみたいとせがんだら、兵庫県北部にライト・トラップ採集に連れてってくれた。その時に採れた。といっても、採らしてもらったと云う方が近い。今でも自分の力では採ったとは思ってない。ようするに、お客さんだったワケだね。もっと言うと、最初は持ち帰る気はさらさら無かった。飛んで来たから思わず網に入れたものの、基本的に蛾は苦手だからどうしたものかと思ったのだ。でもA木くんが『持って帰ればいいじゃないですか。』と言うので、記念として持ち帰った。謂わば、この2017年の採集は、1回切りのお遊びだったワケ。だからがゆえの『2018′ カトカラ元年』なのだ。

 
(註3)深夜11時以降…
シンジュサンの回でフシキの飛来を午後10時半と書いたが、知らぬうちに己の記憶を勝手に都合のいいように改竄していたみたいだ。写真の撮影時刻を確認したら、午後11時過ぎになっていた。感覚と印象だけで言っちゃって、すいません。
ついでに補足しておくと、小太郎くんがシンジュサンを1頭持ち帰ったというのも間違い。持ち帰ったのは別な日で、しかもシンジュサンではなくてオナガミズアオでした。小太郎くんからの指摘で判明した。
人間の記憶なんてものは、思った以上に曖昧らしい。
自尊心と思い込みが強い人間は、気をつけた方がエエですな。

 
(註4)クヌギをホストとするカトカラは他にもいる
クヌギは、マメキシタバ、コシロシタバ、オニベニシタバ、アサマキシタバ、アミメキシタバ、コガタキシタバの食樹でもある。

 
 
《参考文献》

1971 保育社『原色日本産蛾類図鑑 下』-江崎悌三ほか

 
1971年の改訂版を参考にした。このあと1981年に、もう1回改訂版が出ているようだ。因みに初版は1958年の発行です。

 
・2011 むし社『世界のカトカラ』石塚勝巳
 

 
初心者がカトカラの世界を知るには、この本が一番だろう。解りやすくて、よく纏まっている。平易な言葉が使われているし、図版の写真も綺麗。レイアウトもスッキリしている。また、日本のみならず世界のカトカラまで紹介しているから、属全体を俯瞰で見られるところも素晴らしい。

 
・2009『日本のCatocala』西尾規孝
 

 
自信の表れだろうか、シンプルで渋い表装だ。
素直にカッコイイと思う。

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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