続フシキキシタバ(1)ダミアンの闇

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去年は蛾ビギナーゆえに、カトカラの展翅も手探り状態だった。図鑑なんて持ってねえし、自己流でやるっきゃなかったぺよ。
けど自分で言うのも何だが蝶の展翅ならば、そこそこ上手い。だから、蛾なんぞ楽勝だと思ってた。ネットで見ても蛾の展翅は酷いものが多いし、何ならワシが蛾の展翅の新たなトレンドを作っちゃるわい(# ̄З ̄)❗みたいな気分さえあった。
しかれども、やればやるほど自分でも下手なのか上手いのかようワカランくなってまっただよ(@_@;)
ちゅーワケで、今年はカトカラの展翅を真面目にやり直すことを決意した。
その第一弾として、キシタバグループのファースト・インパクトだったフシキキシタバを探しに行った。

とはいえ、同じ場所から始めたくない天の邪鬼な性格。矢田丘陵にいるのならば、生駒山地にもいるとふんだ。
詳しいことは何ちゃらワカランし、来年か再来年かも知らぬが、大阪昆虫同好会で生駒山地の昆虫相を調べて本にするようだ。その協力もやんわりと打診されていたから枚岡公園へ行くことにした。
それに枚岡なら通い慣れたフィールドだ。ついでにウラジロミドリ(註1)の様子も併せて見る事も出来る。

 
2019年 6月6日。

もう一つ6が揃えば、悪魔の子ダミアン(註2)だなと思いつつ、夕方に出掛ける。

 

 
尾根筋でテキトーにウラジロミドリシジミと遊んだ後、展望台に向かっておりる。時刻は7時を過ぎている。そっかウラジロに夢中で気づかなかったが、確実に6月6日午後6時6分6秒と云うズラリと6が並んだ時間を此処で過ごしていた事になる。変な事が起こらない事を祈ろう。

夕闇の中で、外国人たちがボソボソ喋っている。
眼下には大阪平野の夜景が広がっている。綺麗だ。

 

 
にしても、生駒山中に外国人かあ…。
しかもこの時間帯とは時代も変わったもんだなと思う。こんなとこまで外国人観光客がやって来る時代になるとは考えもしなかった。ジャパンはこの先どうなってゆくのだ❓

暗闇の中、懐中電灯を照らして木を小まめにチェックしてゆく。実を云うと、昼間よか夜の方が樹液の出ている木は見つけやすい。なぜなら、ある種の蛾やクワガタとかカブトムシは夜に樹液に集まるからだ。懐中電灯を照らすと、カブトやクワガタはデカイだけに、よく目立つのである。蛾も飛び方で何となく樹液に寄って来たのだと解る。それらを観察していれば、樹液が出ている場所を特定できる。

いくつか樹液が出ている木を見つけた。
しかし、寄って来たのは矮小クワガタや何処にでもいるアケビコノハと名も知らぬクソ蛾どもだ。

梅園に降りる道が封鎖されていたので、仕方なく椋ヶ根橋へと繋がるルートに入る。

 

 
暗い。木々の間から僅かに街の灯が垣間見える。
道は尾根道から逸れ、やがて谷へと下ってゆく。街の灯りが届かず、真っ暗闇だ。この辺はイノブタ(猪豚)が出没するから注意せよという看板があったことを思い出してブルッとくる。いわゆる武者震いである。
そして、こんな暗い夜道。しかも山道を一人で歩いているだなんて、つくづく自分でも阿呆だなと思う。それも蛾を探して…。オイラ、頭オカシイぜ。
そもそもアチキは、子供の頃から夜の闇がメチャンコ怖くて一人でトイレにも行けなかったし、蛾もパニックな存在で、見たら飛び退くのが常だったのだ。しかも、この2つは時にリンクする。もう最悪パターンである。

しかし、げに恐ろしきは虫採り魂である。狂気の沙汰も虫次第。虫が採りたいという強い欲望が恐怖心をも凌駕してしまうのである。心頭滅却、恐怖心さえ排除して、対象物にのみに神経を集中させられるだなんて、我ながらスゴい心理コントロールじゃないか。ちょっとしたゾーンに入ってるのかもしんない。これって、まるでトップアスリートや武術の達人の領域だじょー(´▽`;)ゞ

懐中電灯の光の束が忙(せわ)しげに闇を走る。
一応蛾を探してはいるものの、イノブタへの警戒心も怠(おこた)っていないのだ。心なしが背中の毛が逆立っているような気がする。久し振りに恐怖心が芽生え始めていた。
オデ、オデ、イノブタ、怖いよー(T_T)。

そんな折り、何となく気配を感じた。
慌てて懐中電灯を照らす。
その先、頭上斜め上で蛾がくるくると飛んでいた(イノブタと思った人、残念ハズレでぇーす)。
下から黒と黄色の縞模様が見えた。
カトカラだ( ̄□ ̄;)❗
しかも、明るい黄色だからアサマキシタバではない。たぶんフシキだ。
瞬時に片手で網を左から右へとナギ払った。

手応えはあった。出会い頭の居合い殺法には自信がある。昔から運動神経と反射神経はいいのだ。
網の中を見ると、色鮮やかなオレンジが明滅している。間違いない。フシキキシタバだ。

 

 
ところで、生駒山地ってフシキキシタバの記録あんのかな❓初記録だったりして。

その場にしゃがんで、闇の中でスマホで写真を撮り、ブツを三角紙におさめる。
もし、こんな時間、こんなところでしゃがみ込んでる男に出くわしとしたら、きっと怖いだろうなあ…。行動が得体が知れなさ過ぎるよ。もしも傍らまできて急に襲い掛かれたとしたら…と思うとゾクゾクくる。足が確実に止まるね。で、追い掛け回されたりでもしたら、確実に髪の毛があっちゅー間に真っ白になるに違いない。

スマホを足元に転がるザック内の小ポケットに戻し、立ち上がって煙草に火をつけようとしたその時だった。
人の声がしたような気がした。
その場で凝固した。
(・。・;気のせい❓いや、ハッキリと聞こえた。
こんな山の中の暗闇で、人❓でも誰かが近づいて来た気配なんて無かった筈だ。なのに、いつの間に❓
もしかして、悪魔の子ダミアンの声(|| ゜Д゜)❗❓
しかも男女二人のようだ。
Σ( ̄ロ ̄lll)ハッ、ダミアンが二人❓
どわっ( ̄□ ̄;)❗❗、それとも双頭のシャム双生児的ダミアン❓それはアカン過ぎるやろ。
懐中電灯の光が激しく前後左右に振られる。
(;゜∀゜)誰だ❗❓何処にいる❗❗
女の喘ぎ声が聞こえたてきた。
背中が凍りつく。お化け❓妖怪❓それとも何かの霊❓
何にしろ、出たなと思った。
(ToT)チップス先生、さようなら。皆さん、お世話になりました。

けれど、何やら音が小さい。
しかも足元近くから聞こえてくる。
(・。・)小人❓
そして女の喘ぎ声も、どう考えても呪詛の声というよりかはアッチ系の声だ。

『あん、あん、あん、あっふぅ~ん❤』

(;・ω・)はあ❓
ザックに近づき、スマホを取り出す。
その画面には若い娘が歓喜の嗚咽を漏らして激しく交(まぐ)わっている映像が映っていた。
それは紛れもなく自分がダウンロードしたアダルト動画だった。それがザック内のポケットに無理矢理押し込んだ時に、偶々(たまたま)、変なところの触れて起動したのだろう。

恐怖はドッと解き放たれた。
安堵と同時にバカバカしくなって、声を出して笑ってしまった。
闇の中で、その笑い声は辺りに奇妙に反響し、やがて何事もなく静寂が訪れた。

                  つづく

 
追伸
その時のフシキキシタバの個体はコチラ。

 

 
♂である。
上翅を下げて、皆が良しとしそうなパターンでやってみた。
まあ、んなもんじゃろう( ̄З ̄)

因みに、去年の展翅はこんな感じだった。

 

 
鬼的なものを意識して展翅した。この頃は、まだまだ深層心理では蛾を畏怖する存在として捉えていたのかもしれない。

だいふと前に既に『2018’カトカラ元年』の2種めの原稿はほぼ書き上げているのだが、去年の自分のカトカラの展翅に少なからずショックをおぼえた。故にこの文章を書く気になっただす。後々、展翅写真がズラリと並ぶ予定なので、どれが正しい展翅なのか忌憚なき意見をお伺いしたい。
それと、フシキキシタバじたいに対する考えも今年は去年とは変わってきた。次回は、その辺りにも言及しようと思う。

 
(註1)ウラジロミドリ
ウラジロミドリシジミ(Favonius saphirinus)のこと。

 

 
(註2)悪魔の子ダミアン

1976年のホラー映画『オーメン』に登場した悪魔の子ダミアンのこと。
6月6日午前6時に生まれ、頭に666のアザを持つ少年ダミアンを巡る奇妙な物語。 監督はリチャード・ドナー。
1978年に続編『オーメン2/ダミアン』、1981年に『オーメン/最後の闘争』、1991年に『オーメン4』とシリーズ化されており、2006年には1976年版をリメイクした同名映画『オーメン』も製作された。2016年にはその後を描くテレビドラマにもなっている。

生まれたのは午前6時だったんだね。
考えてみれば、午後6時は18時だもんね。でも、この時はそんな事を考える余裕は無かった。だいたい午前6時って朝じゃんか。全然怖くない。一方、午後6時は昼と夜の狭間の黄昏(誰ぞ彼)の時間であり「逢魔が刻」なのである。その時間にダミアンが誕生したと記憶するのもしゃあないっしょ。

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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