続フシキキシタバ(2)不思議なんて無い

 
2018年 6月12日。
生駒山地から約1週間後、矢田丘陵の様子も見ておくことにした。小太郎くんにも声を掛ける。

この日、現地に到着したのは遅めの午後9時だった。
しかし、樹液には何も来ていなかった。去年からの観察だと、カトカラはだいたいこの時間帯に一度樹液への飛来が止まる傾向があるようだ。日没と同時に飛来し、一旦9時前後にいなくなる。そして10時くらいから又ポツポツと集まり始める。けれど、これはあくまでも傾向であり、その日の天気や温度、湿度、風の有無などによって状況は変わるものと思われる。

何でおらんねん(=`ェ´=)❓
ちょいムカつく。最近は昔ほど珍品じゃないらしいけど、やっぱ基本的には少ない種なのかなあ…?まさか、まだ発生してないと云うワケは無いよねなどと思いつつ、所在なげにその辺をウロウロする。

『あっ、いましたよ。』
と小太郎くんが言った。懐中電灯が照らす方向を見ると、幹に鮮やかな下翅をチラ見させているフシキキシタバがいた。相変わらずの逆さパンティーじゃのう(^。^)
高さは約3m。網で幹をドツき、難なくゲット。驚いたカトカラが反動で網に飛び込んで来るという採集法だ。コツは躊躇(ためら)わないこと。慎重という名のチキンハートはあきまへんえー。中途半端にかぶすと横から逃げられる。とはいえ、バカみたいに強すぎると網が壊れるから、気をつけなはれ。

暫くして、また小太郎くんが幹に止まっているのを見つけた。彼は見つけるのが上手いから助かる。
今度は4mくらいの位置だった。これも難なくネットイン。

思うに、これは樹液に来ていた奴がお腹いっぱいになって憩(やす)んでいるのではなかろうか。だから、一回飛来が止まると考えれば、説明がつく。つまり、カトカラは樹液にやって来るのは一晩に一回だけではなく、複数回吸汁に訪れるのではないかと想像する。そういえば、去年もキシタバが周辺の木にベタベタ止まっていたことがあったっけ…。時々、居なくなったと思ったら、樹液に来ていた事があったな。
経験上、カトカラはたとえ樹液には居なくとも、周辺の木を探せば案外採れると思うぞ。図鑑等には、そんな事は全然書いてないけどさ。

でも、小太郎くんが言った。
『フシキって、日没後の早い時間帯にしか樹液に飛んで来なくて、皆それを知らなかったから中々採れない稀少種になってたそうですよ。でも、この習性がわかってからはわりと採れるようになったみたいですね。』

それも「不思議キシタバ」と言われる由縁なのかな?
(・。・;ふ~んと相槌を打ちながらも、(# ̄З ̄)ホントかよーと心の中で思う。
だとしたら、カトカラ愛好家は早い時間帯に樹液採集に行かなかったの❓それが事実だったとしたら、ダサ過ぎない❓センスを疑うよ。いくらなんでも、そんなワケないと思うんだよなあ…。虫屋はアタマいい人、多いしさ。絶対、早い時間帯にも行ってる筈だ。
そんな偉そうなことを言っといて、実を言うとオイラ、去年は樹液では1頭も採ってない。「去年は」ということは、まだ一度も樹液に来たフシキキシタバを採ってないとゆうことだ。我ながら、よくそれで諸先輩方に向かってエラソーな事が言えるよね。自分でもあまりの尊大振りに笑っちゃうよ( ̄∇ ̄*)ゞ

それはさておき、この日採った2頭はこんなの。
先ずは♂。

 

 
図鑑的お手本の展翅ってところかな。
続いてコチラ↙が♀。

 

 
コヤツは人為的にボロにしてしまったなりよ。
ピカピカの完品だったと思われるが、網の中で暴れまくって、挙げ句に網の横から外に飛び出しよった。で、落葉に止まったのを慌てて上から毒瓶を被せて仕留めた。したら、こないな風になりよった。小太郎くんに、ひどいなーという顔で笑われたよ。やってる事が全般的にぞんざいなのである。

こちらは触角を真っ直ぐにしてみた。
まっ、んなもんじゃろ。

 
6月13日。
翌日も矢田丘陵へ行った。
フシキキシタバは本当に早い時間帯にしか樹液に飛来しないのかを確かめたかったのである。だから、今回は誰かに行動を影響されない単独行なのだ。

日没と同時に1頭が飛んで来た。

 

 
フシキ、樹液での初ゲットである。
暫くして、更にもう1頭が飛んで来た。いい感じだ。
しかし、これでピタリと飛来が止まった。やはり小太郎くんが言った通りなのか❓…。それとも元々個体数が少ないのかなあ❓

埒が開かないので、新たな樹液ポイントを探すことにした。幸いな事に比較的短時間で新たな樹液ポイントを見つけることができた。
ここでは3頭ゲットできた。2頭が樹液で、あとの1頭は前日と同じように近くの木の幹に止まっていた。
しかし、それっきりだった。10時半まで待ったが新たには飛んで来なかった。最後に採った時刻は午後9時過ぎだ。おいおい、まさかの小太郎くんの言ってた説が有力になってきたぞ。
いや、待てよ。単に周辺にいる個体を採り尽くしたと云うのは考えられまいか。この日の個体も全部ピカピカの完品。昨日、今日と全部が羽化したてのような鮮度でボロがいないということは、それも有り得る。翌日には、また新たなものが羽化してくる筈だ。

それでは、この日採った個体の展翅。
先ずは♂。

 

 
触角は自然な蛾眉系。上翅を上げ気味、下翅をやや下げ気味にしてみた。

 

 
続いて上がり蛾眉系。上翅をやや上げて、下翅も上げてみた。

 

 
お次は触角を鬼っぽい弓ぞり上がり系にしてみた。

 

 
こちらも蛾眉系かな。バランス重視の展翅にしてみた。

こうやって並べて見ると、上翅の柄が個体によって微妙に違うんだね。中でもこの個体がメリハリが一番美しい。

続いて♀。

 

 
段々、やや上翅が上がりめに見えるバランスになってきた。但し、これを自分は上げ気味だとは思っていない。蝶でもそうなんだけど、上翅の後縁(下辺)を真っ直ぐにするのが絶対的に正しいとは思わないからだ。

例えばマルバネルリマダラなどは、その法則に従って展翅すると、バンザイ展翅になってしまう。

 

 
まだマシな方だけど、こんな感じだね。これでも下辺はまだ下がっている。だから、ネットの画像なんかを見ると、無理矢理に下辺を真っ直ぐにしようとして、もっと超バンザイなのがわりとある。

お手本にするには、やや気に入らないが、こんな感じが正解に近いのではないかと考える。

 

 
つまり下辺は参考にはするが、それよりも翅の付け根の起点と後角部(外縁の一番下の角)を結んだ線が真っ直ぐになるのを重視している。強いて言えば、それよかちょっとだけ上げ気味にする。この方式にすると、大概の蝶ならバランスがとれる。

ヤマキチョウの仲間やコノハチョウなんかも、それでだいたいバランスがとれる。

 
【タイワンヤマキチョウ】

 
【台湾産コノハチョウ】

 
だからコノハチョウなどは下辺が下がり気味になる。但し、触角とのバランスや左右の翅の間の空間との関係性もあるから厳密的にはこれも絶対ではない。

話をカトカラの展翅に戻そう。ようするにカトカラもよく見ると、上翅根元の起点付近が真っ直ぐな線ではなく、やや内側にラウンドしている。ゆえに羽の起点は見た目よりも上にある。だから見た目が上げ気味に見えるのである。

とはいえ、まあこんなのは好みの問題なので、その人がカッコイイと思う展翅であれば全然いいんだけどさ。

とはいうものの、解説しだしたので途中で止めるのもなんだし、最後まで続けよう。

 

 
今度は下翅をやや下げてみた。上翅と下翅を詰め過ぎて寸詰まりになるのは、あまり好きではないからだ。それに寸詰まりにすると、個体が小さく見えちゃうと思うんだよね。

因みに前脚を前に出したり、出さなかったりするのは気分。今のところ、どちらが良いのかは微妙なところかな。でも、やや前脚を出す方に傾きかけている。自身の中には蝶の展翅法が基準にあるから、上翅の間の空間が空き過ぎると不安になると云うか、落ち着かないところがあるのだ。

 
6月17日
この日は宝塚市の行者山へ行った。
目的は稀種カバフキシタバの為の下見である。ちょこっとだが複数が採れているようだから、数は少ないにせよ居るのは確実だと読んだ。それに此所はウスイロキシタバの記録もあるので、あわよくばとも考えていたのだ。あと、ウラキンシジミ(註1)の様子も見ておきたかったと云うのもある。

ウラキンのポイントに着くも、栗の木が弱っていて、あまり花が咲いていない。でもそこいらで夕暮れまで待てば、やがて飛び始めるだろう。しかし、今回のメインの目的はウラキンではない。そんな時間までその場にとどまっていれば、黄昏になる。ここでカバフの幼虫の食樹カマツカと樹液が出ている木を探すのが本来の目的なのだ。ウラキンなんぞ、この際どうでもよろし。気持ちを切り替えて、白瀬川源流コースを降りることにした。

しかし、思ってた以上に道が険しい。多くの場所に補助ロープが張られていて、結構危険な箇所もある。夜にここに入るのにはリスクが有り過ぎる。それに結局、カマツカの木も樹液の出ている木も見つけられなかった。思惑が完全にハズレた。ポイントから除外せざるおえないだろう。

この山には何本も登山ルートがあるので、片っ端から探ってみることを覚悟した。
されど、中々良さげな樹液が出ている木が見つからない。唯一、見つけた木は根元近くから樹液が出ているだけで、何とも心もとない。

そのうちに日が沈んだ。
だが、日が沈んでも直ぐには暗くならない。

 

 
漸く暗さが増し始めた7時20分に、その唯一の樹液ポイントへ行く。だが、ヤガらしいクソ蛾が1頭いただけだった。まあいい。クソ蛾であっても、蛾が誘引される樹液ではあると云う証明にはなる。希望はゼロではないということだ。ゼロと1とでは、格段の差がある。

取り敢えず此処はおいといて、新たな樹液ポイント探して夜の山道を歩き始める。今日は万全を期して、あの戦慄を引き起こした恥ずかしい動画は消しておいた。あとは六甲方面はイノシシが多いから、遭遇しないことを祈ろう。イノブタよかイノシシの方が恐い。

5分ほど歩いたところで、空気中に微かな樹液の匂いを感じた。立ち止まり、咄嗟に懐中電灯をその方向へ向けた。下から上へと灯りを動かす。
❗Σ( ̄□ ̄;)ワッ、地上約4mくらいのところでカトカラが乱舞していた。少なくとも10頭以上は飛んでいる。こんなに沢山のカトカラが乱舞している光景を見るのは初めてだ。
時期的に考えればカバフではないだろう。まだ早い。黄色いからウスイロである可能性も無さそうだ。だとしたら、フシキかな❓コガタにもちょっと早い気がする。あっ、ワモンの可能性も無いではないね。でも感じからすっと、おそらくフシキだろう。最近、網膜にインプットされた画像と同じに見えるもん。

とやかく考えていても時間の無駄だ。
網をスルスルと伸ばして、空中でエイやι(`ロ´)ノ❗と掬い採る。たぶん一度に3つ入った。
中を見ると、予想通りの3つともフシキだった。どうやら飛んでるのは皆フシキのようだ。どこが珍品やねん❓こないにおったら普通種やんけー。

樹液への飛来時間の謎を解きたいので、ガツガツは採らずに目についた型の良さそうなものだけを選んでチョビチョビ採る。
いくつか採り、落ち着いたところで周辺を見ると、やはり周囲の木の幹に止まっている個体が複数いた。樹液の出ている木の上部や下部で憩んでいるものもいる。

 

 
下翅は開いていたり、この個体のようにビッタリと閉じているものもいる。勘だが、お腹いっぱいなど気分的にユルい時に翅が開きがちになるような気がする。あとは樹液で夢中で吸汁している時は、ほぼほぼ下翅を見せている。ようは身の危険を感じるなど緊張状態にあると、翅を閉じるのではなかろうか?
この個体も最初は下翅を見せていたが、写真を撮るために近づくと途端に閉じた。
因みに昼間は、ほぼ100%が翅を閉じている。昼間に派手な下翅を見せていれば、目立つ。つまり翅を閉じるのは、天敵に襲われるのを回避する為だろう。だから上翅の柄は木の幹に擬態、同化しているものと思われる。

8時を過ぎても乱舞は続いている。これで9時頃にピタッと飛来が止まったとしたら、小太郎くんが言ってた説に間違いないだろう。
だが、9時を過ぎても数は減ったものの、相変わらず樹液に飛来し続けていた。全然途切れる気配がない。
そして、そろそろ帰らなければならない10時を過ぎても飛来は間断なく続いていた。
これで「フシキキシタバ、早い時間帯にしか樹液に飛んで来ない説」は崩れた。んなワケねーと思ってたよ。
とはいえ、個体数が多すぎるゆえの異常行動とも考えられる。それに、まだたった1回だけの例だ。もっと観察を続けないと、断言は出来ないだろう。

翌日、採った数を数えると何と15頭も採っていた。
合間にちょぼちょぼ採っていたつもりだが、いつの間にかそんなに採ってたんだね。
ということは採ろうと思えば、ゆうに30以上、下手すりゃ50以上採れたかもしんない。
どこが稀種やねん❗Youにはガッカリだよ。こんなもん、ド普通種やないけー(# ̄З ̄)
でもなー、たまたま今年は大発生ってのも有り得るから、本当のところはワカンナイよね。

 
今回の展翅画像も先ずは♂から。

 

 
上翅が黒い。

 

 
上翅を上げ過ぎない方がバランスはいいかもしんない。

 

 
触角の整形は出たとこ勝負なところがある。カトカラの触角はとても細いので無理にいじり過ぎると、直ぐに切れるのだ。諦めが肝心だと心得る。

 

 
段々、触角が上がり気味になってくる。

 

 
ここまでは蛾眉系で、次は触角の先が内側に巻く弓反り系。

 

 
上翅をやや下げ気味にしている。

 

 
触角を下げて、下翅も下げてみた。次第に何が正解なのかワカンナクなってきた。

 
そして♀。

 

 
意外と弓反り系が何となく好きになってきたかなあ…。ちょっと悪魔が入るのがお好みかもしんない。

 
6月17日。
西宮市名塩へと向かう。
この日の目的は未だ採ったことのないウスイロキシタバだった。確実な情報は無いが、勘で場所を決めた。

何とか樹液が出ている場所を2ヶ所見つけた。➕アルファで今回は糖蜜トラップも用意している。この前みたいに樹液が出ている木が上手く見つけられるかどうかの保証は無いと感じたからだ。
糖蜜トラップは思いの外、活躍してくれた。樹液に勝ってんじゃねーの❓というくらいによく効いたっぺよ。
中身は去年作って冷凍庫にブチ込んでたもんだから、詳しいレシピは覚えてない。匂いと色からすると、黒砂糖は確実に入ってる。あとはおそらく焼酎と酢ってとこかな…(・o・)❓

両ポイントは歩いて10分程度離れているが、両方ともフシキはいた。計5~6頭が採れた。
時間帯は7時過ぎから11時過ぎまで。それぞれのポイントの滞在時刻は7時から8時半くらいと8時半くらいから11時過ぎまで。ピタリと飛来が止まる時間は少しあったが、日没後、直ぐに飛来して、あとは全く来なくなるということは無かった。帰る直前の11時でも糖蜜トラップにいた。
これで「フシキは早い時間帯にしか飛んで来ない説」を否定する材料がまた増えた。
そーだよなー。んな事あるワケないと思ってたもん。

  

 
 
♂である。何だか展翅も落ち着いてきた。触角は弓反り傾向が進行。上翅はやや上げ、下翅は下げ過ぎないといったところか。

そして♀。

 

 
とはいえ、原点に帰って触角を真っ直ぐ系にしてみた。一番カッコイイかもしんない。でも、真っ直ぐにするには時間が掛かって正直面倒くさいんだよなー。

 
中にちょっと変な奴が混じっているなと思ったら、出始めのコガタキシタバだった。もう出てるんだね。

 

 
下翅の黒帯がフシキよりも太いし、途切れない。
もう♀も出ていた。

 

 
蝶の発生は今年は1週間は遅れていると言われているが、カトカラは通常通りか、下手したら少し早いかもしんない。

 
6月19日。
この日は西宮市の生瀬を探索することにした。
ターゲットはやはりウスイロキシタバである。
しかし、良い環境が見つからないので、宝塚市の塩尾寺(えんぺいじ)・岩倉山を目指すことにした。ここを更に進むと、先に登場した行者山に至るコースだ。状況如何によっては、再び行者山に行くことも視野に入れている。

でも、樹液が出ている木がロクに無く、あってもショボい。糖蜜トラップに対する反応も薄い。こりゃダメだと思い、大返しで、また名塩へ行った。予定は未定であって、しばしば変更なのだ。決断と判断の迅速さは雌雄を決す。すったもんだのその話については、この先ウスイロキシタバの回を書く機会があれば、詳しく書こうかと思う。このシリーズも書いててシンドイからワカンナイけど。

名塩のポイントには、午後9時40分くらいに着いた。
着いた時は樹液には何もいなくて、たぶん10時くらいから活性が入った。滞在時刻は11時半までだった。
この日に採ったフシキは2♂1♀だったかと思う。つまり、日没後の早い時間帯ではないと云うことだ。
ハッキリ言おう。カトカラ愛好家たちの間の「フシキキシタバは早い時間帯にしか樹液に飛んで来ない」という説は嘘だ。ガセネタだ。全否定する。
(# ̄З ̄)ブウーッ、誰もその説に対して疑問に思わなかったのかよ❓

とはいえ、昔は個体数が少なかったから、そういう説が流布したのかもしれない。確かに日没直後から8時くらいまでに飛来する個体が多い傾向はあるような気がする。昔みたく絶対数が少ないならば、分母が小さいゆえに他の時間に得られる個体は極めて少なかったのかもしれない。だから、カトカラ愛好家の人たちがそう考えたのも無理もない事なのかもしれない。
にしても何でそんな説が、まことしやかに流布したのだろう❓誰も検証しようとは思わなかったの❓
もしかして、樹液採りは樹液が出ている木を探すのが大変だし、夜に山を徘徊しなければならず、しんどいし、怖いし、面倒クセーから、灯火採集ばっかしてたとか無いでしょな(¬_¬)❓
汗、かかない虫屋はダメだぜ。
まあいい。単に昔から噛みつきたい性格なのだ。それが己の原動力やら推進力にしているところがある。深く自己検証したことはないが、あえてとか、ワザとやっているフシがある。性格が天の邪鬼なのだ。
だから、けっして本気でケンカを売っているのではござりませぬ。気分を害された方は、単に口の悪い奴だと思って、お許し下され。

それでは展翅コーナー。
だいぶと飽きてきて、♂♀1つずつだけ展翅した。

  

 
♂だ。まあ、こんなもんか。

 

 
何か触角が弓反りに落ち着いてきた。真剣に展翅する時は触角は真っ直ぐ、それ以外は弓反り系にして、気分によっては蛾眉系ってことでエエんでねえのと思うことにした。
やっぱオラって、展翅するのが本来的にキライみたい。段々、ぞんざいになってきてる。

 
6月20日。
池田市五月山へ行く。
狙いは同じくウスイロキシタバ。
予測はしていたが、こんなとこにもフシキがいた。

 

 
もう最後は裏展翅にしたよ。
たぶん3頭ほど見たと思うけど、持ち帰ったのはこの1頭だけ。他は羽が傷んでいたからだ。この日は今年初の普通のキシタバもいたので、そろそろフシキの時期も終わりが近づいているようだ。

 
6月23日
箕面公園の大惨敗を挟んで、再び名塩へ。
そして、ダメ押しのフシキキシタバ。

 

 
寸詰まりも試してみた。
これが正しい展翅だ思う人もいるんだろなあ…。
人の好みは千差万別です。

 

 
最後に美しい♀が採れたけど、この頃になると極端に数が減り、一部の♀を除いて残っているものは羽がボロなのばかりだ。ほとんどはリリースした。
って云うか、もうオマエら、いらん(=`ェ´=)

                  おしまい

 
追伸
長々と三回にも亘ってフシキキシタバについて書いた。たぶんプロローグの回でも触れているだろうから、それも含めれば計4回にもなる。
しかし、これを書き終えて、今やフシキキシタバにはこれっぽっちの興味も無くなった。けっして嫌いになったワケではない。美しいカトカラだと云う思いに、今も変わりはない。何か過去の女になったみたいな気分だなあ…。
まあ、カトカラを始めるキッカケとなった種だから、最初に付き合った彼女みたいなもんかもしれない。想いは大事にしなければならないね。

次回からも『2018′ カトカラ元年』を上梓したのちに、2019年にも採れたものに関しては『続・何ちゃらかんちゃら』と題して文章を書くという方式になってゆくかと思う。
本当は2019年のカトカラ関係の文章は別タイトルで書く予定だったが、ややこしくなりそうなのでやめた。2019年の採集記は『2019′ カトカラ2年生』と題して一つに纏めて出版する予定です(ゴメン、嘘です)。

今回のタイトル「不思議なんて無い」は、フシキキシタバは不思議キシタバとも言われ、謎が多いキシタバだったことを意識したものです。不遜なタイトルだけど、この3話を通してだいぶと謎が解けたのではないかと思ってつけてみた。でも、本当は不思議なんて無いとは思っていない。幼生期も含めて、きっと調べれば調べる程、また新たな不思議が出てくるでしょう。生き物は何だって不思議だと思う。

最後に大きさについて少し言及しておきたい。

 

 
結構、大きさに幅がある。
もちろん基本的には♂より♀が大きいのだが、中には♀に迫る大きさの♂もいるし、♂と変わらない大きさの♀もいる。
一番小さい♂で50㎜に満たない48㎜だった。一方、一番大きな♀は60㎜もあった。全体の平均は55㎜ってところだろう。
あっ、言い忘れたけど、一部フシキキシタバとは関係のない別種の蛾も入ってます。

斑紋についても触れておこう。
上翅については多少の個体差はあるが、コガタキシタバやアミメキシタバなどのように大きな変異幅はなく、比較的安定している。
下翅だが、以前、♀の方が真ん中の黒帯が細くなると書いたが、それほど顕著に差があるワケではないようだ。但し、極端に細いものは♀だと言ってもいいと思う。

 
(註1)ウラキンシジミ

(2017.6.10 行者山)

(註2)ウスイロキシタバ