続・コガタキシタバ

    『サボる男』

 

2019年6月17日。
ウスイロキシタバを西宮市に探しに行った。
樹液の出ている木を何とか見つけて、そこで待っていたら日没後すぐにフシキキシタバ(註1)がやって来た。
フシキにはとっくに厭きているけど、目的のウスイロは来ないし、退屈だから見映えの良さそうなものを選んで採っていた。
4頭めに採ったヤツを見て、何か違うと感じた。
大きさは同じだが、よく見ると下翅の黒帯が太い。
それに上翅の感じも何となく違う。裏返してみると、こりゃ全然違うなと思った。帯が太くて全体的に黒っぽいのだ。
何だこりゃ( ・◇・)❓

 

 
しばし考えたところで、ようやく思い至った。コレって、もしかしてコガタキシタバじゃなくなくね❓
コガタキシタバは6月下旬発生のイメージだったけど、考えてみれば今はもう6月中旬も後半だ。有り得るよね。

それからは何となく雰囲気の違うものを選んで採ったら、全部同じようなヤツだった。それで確信した。おそらくコヤツらはコガタキシタバで間違いないだろう。

裏側が黒っぽくて、黄色が薄いのがコガタキシタバだと理解した。反対に、全体的に黄色っぽくて黄色と黒のコントラストがハッキリしているのがフシキキシタバだ。慣れると飛んでるのを下から見ても見分けがつく。

 

 
羽を閉じて止まっている時は一瞬どっちか迷う。でも何となく違うと感じたものは、採ってみたら全部コガタだった。この辺は感覚的なもので、センスとしか言い様がない。
そういえば図鑑か何かで、このカトカラは上翅の柄がヴァリエーション豊富であると書いてあったことを思い出した。コガタキシタバは去年1頭しか採ってないから大きなことは言えないけど、少なくとも上翅の真ん中が白いのは100%コガタキシタバだということは知ってる。

あと、樹液を吸汁し始めると下翅を開くので、その黒帯が太ければコガタ、細ければフシキだと考えてほぼ間違いなかろう。

この日は3♂3♀の計6頭が採れた。
その後、池田市の五月山公園、矢田丘陵、京都市左京区、宝塚市などにもいた。正直、どこでもいるという感じだ。
だが西宮市のこの場所を除いては、総じて個体数は少ない。その日見るのは、せいぜい1頭から3頭って感じだった。

 
【コガタキシタバ Catocala praegnax ♂】

 
出始めの新鮮な個体なので、前脚がもふもふである。それを強調してみた。
この前脚を出す出さないは意見の分かれるところだが、オラはそんなのどっちだっていい。気分で出したり出さなかったりする。

  

 
触角を更に怒髪天にしてみた。
👿邪悪な感じになるね。蛾にもだいぶ慣れてきたけど、いまだに蛾=闇の使者➡邪悪というイメージが心のどこかにある。幼少期に刷り込まれた概念は中々払拭できないもんだね。

  

 
今度は触角を横に寝かせてみた。
たぶん、この中間が正解なんだろな。

以上が♂である。
基本的に♂は尻が細くて長く、尻先に毛束がある。

前翅の柄は『世界のカトカラ』によれば、「前翅基部は黒化し、内横線と外横線の間が白化傾向になる個体が多い。」とある。なるほどね。確かにそんな感じだわさ。

ここから下が♀。

 

 
この個体は上翅にメリハリがない。白帯も薄い。

それはそうと、やっぱデブだよなあ。
デブだと蛾感が増すから、好きになれないのかもしんない。

 

 
これもメリハリが弱い。
結構、バリエーションがあるんだね。

 

 
これは少し白帯が出てるかな。
♀って、あんま白帯が出ないのかなあ❓

 

 
あっ、これは出てるなあ…。
どうやら白帯の出る個体は、♂♀関係ないようだね。

 

 
コレなんかはメリハリもハッキリしていて、♂よりも顕著だ。カッコいい。
こんなのばっかだったら、もっと評価されるのにね。図鑑や各種のコメントなど、コガタキシタバを熱烈に褒めるものを見たことがない。あんま、人気ないんだろなあ。アチキもコガタはどうでもいいっちゃ、どうでもいい存在だ。
でも、そう思うと何だか不憫だ。同情するよ。自分がもし、こういう評価や扱いをうけたらキツいなあ…。でも世の中、大部分がそういう人たちだったりもする。
やめとこ。今はそんな事を考えても栓かない。

そうだ、裏展翅もしたな。

 

 
前回に載せた裏展翅はもっと薄い色の印象があるが、より黒っぽくて、黄色と黒のメリハリかある。
カトカラって標本にして時間が経つと色褪せるのかなあ…❓

Σ(゜Д゜)あれぇー、そんな事よりも採ったのって、たったコレだけかあ❓
最初に6頭だよね。で、展翅したのは9頭しかない。
計算が微妙に合わなくねえか❓
けど、3頭は展翅してないのは自分でも知ってる。にしても案外採ってないぞ。他の場所で如何にサボってたかが、如実に表れてる。考えてみれぱ、途中から見ても結構スルーしてたなあ…。
飽き症なのだ。最初の3、4つを採ると、途端に集中力もやる気もなくなる人なのだ。
そういえば皆が憧れる蝶の一つクモツキ(クモマツマキチョウ)でさえも、5分で3頭採って雪渓で寝てたっけ…。

 
【クモマツマキチョウ(雲間褄黄蝶)♂】

 
『イガちゃん、クモツキやで、クモツキ❗ 妖精クモツキにもう飽きたん❓ 信じられへんわー。』

そんなことを言われるような男なのだ。世にいう『イガちゃん3頭伝説』である(笑)。以前から3頭採ったら飽きるイガちゃんと揶揄されていたのだが、それがクモツキでさえもそうだったって話だすな。

またこんな事もあった。
師匠に中国地方にゴマシジミを採りに連れていってもらった時のことだった。
斜面で、その日会った人と何となく立ち話をしていたら、下から師匠の大声が飛んできた。

『こらあー、何サボっとんねん❗喋ってるヒマがあったら採れー❗』
 
立て続けに『おまえ、いくつ採ったんじゃあ❗』という声が飛ぶ。

『10頭でぇーす❗』

『(ー。ー#)それくらいやったら、まあええわ…。』

叱られる事は予想していたので、まあまあ頑張っていたのである。短時間ならば、合格の数字だろう。

みんなにもっと採らなきゃダメだと言われ続け、実際自分でも後でもうちょっと採っとけばよかったと後悔することしきりなので、最近は流石に3頭以上は採るようにはしている。それでも惰性になるのは早い。5頭目辺りからモチベーション急降下。いくつ採ったか、数さえワカンなくなる。

ダメな男である。

 
                おしまい

 
追伸
次回、いよいよシリーズ前半のハイライト、カバフキシタバだっちゃ。そもそもこのカバフとムラサキシタバの事が書きたいから、始めた連載なのである。
シリーズ渾身の一作、乞う御期待❗
まだ一行たりとも書いてないけどー( ̄∇ ̄*)ゞ

 
(註1)フシキキシタバ

(裏面)

(裏面)

 
フシキキシタバの関しての詳しいことは、第1話『不思議のフシキくん』を読んでくだされ。

 
《参考文献》
石塚勝己『世界のカトカラ』 むし社