あおはる1day trip その壱

   『お城とデジタル蛾』

 
青春18切符が1回分残っている。
昔の彼女とぶらりと何処かへ行く予定だったが、ドタキャンを喰らったのだ。それも酷い形で。昔の男なんてものは女性にとって所詮は過去の遺物で、身分カーストからすれば底辺の存在なのだ。男にとって過去の甘い思い出は大切でも、女にとっては記憶のガラクタにすぎない。男たちは過去に思いを馳せ、女たちは未来を見ているのだ。
男は往々にして歴史好きだけど、女はあまり歴史に興味がないのは、きっとそのせいだろう。

まあどうあれ、切符は使わなくては勿体ない。
だが、どう活用して何処へ行くかを考えあぐねているうちに期限の9月10日になった。
こうなるともう、大の字。何も考えずに心の赴くままに任せてしまおう。その場その場、その時の気分で行く場所を決めればいい。出たとこ勝負の行き当たりばったりなのが旅というものだ。旅と旅行は違うと思う。普段もそれに近いものがあるけれど、それは殆んどが虫捕りだ。たまには本当にあてどのないワンデイ・トリップも悪かない。

先ずは大阪駅まで行き、そこで東へ行くか西へ行くかを決めよう。でも、この青春18切符で長野県白馬方面と岐阜県飛騨高山方面に行ったから、正直もう東にはウンザリだ。西は赤穂辺りまで行って、久し振りに日本一美味いとも言われる『さくらぐみ』のピザでも食おうか…。
とにかく今日は、腹がハチ切れんばかりにパンパンになるまで各地の美味いもんを食って食って食いまくってやる。

Σ(-∀-;)ハッ、でも痛恨の二度寝(-.-)Zzz・・💤
慌てて用意して何とか9時前に家を出た。
(×_×;)もう何だか先が思いやられるよ。

 

 
しかしJR難波駅に行くも、大和路線で何かあったみたいで、電車が止まっている。スタートから前途多難である。
(=`ェ´=)クソがっ❗、あのアマが全部悪い。

遅れは心配するほどでもなく、5分ほどで動いた。
しかし、乗換駅の新今宮駅でも大和路線のダイヤの乱れのせいで環状線が遅延していた。
(=`ェ´=)クソがっ❗、全部あのアマのせいだ。

ここでも10分程待って何とか電車に乗ることができた。

 

 
はあ~い\(^_^)/
午前11時13分。ナゼか東の彦根駅に到着。
おいおい、東やないケー。もうムチャクチャ言うてた事とちゃうやんかというツッコミが入りそうだが、コレにはそれなりのワケがある。
何でこないな事になったのかと云うと、大阪駅で突然神の啓示の如く彦根城に行こうと思い立ったのである。
実を云うと、何度も電車の車窓から彦根城は見ているものの、近くまでは一度も行ったことがない。今年の信州方面への計4度の行き帰りでも毎回その事が心のどこかで引っ掛かっていた。つまり、その思いが突然噴き出しちやったのだ。
それに鮎を食いたいというのもあった。店の名前は忘れたけど、彦根城下に鮎料理の専門店があることを思い出したのだ。
オイちゃん、無類の鮎好きなのに今年は殆んど食ってないんである。どうしても美味い鮎の塩焼きが食いたーい\(^o^)/
以上、ってなワケなのさ。

先ずは観光案内所に行き、地図とグルメガイドをゲットする。現地でその場で得る情報は大事だ。この先どうするかに大きく関わってくる。優れた男は、アバウトにして緻密なのさ(* ̄∇ ̄)ノ
一応、オバサンにお薦めの店を訊く。しかし、今日は火曜日で夢京橋キャッスルロードのお店は殆んどが休みだと聞かされる。どうやらそこに食べ物屋が集中しているらしい。
嫌な予感がした。そこに鮎の店もあったような気がする。
ガイドブックで確認したら、やはり怖れたとおりに目的の店『あゆの店きむら』はその何たらロードにあり、定休日になっていた。
また、コケた。これもあれも全ては、あのアマのせいじゃ(=`ェ´=)❗そう云う事にしておこう。
クソッ、今度アユおごれや( ̄ヘ ̄メ)

又しても躓くが、まあこれも行き当たりばったりの愉しさだと取ろう。予定は未定であってしばしば変更。何があるかワカラナイ方が旅は面白くなるというものだ。

 

 
駅前に銅像があった。
「桜田門外の変」の井伊直弼❓
でも上下(かみしも)じゃなくて、武将の格好だから違うな。だいち直弼は世間的には悪役にされてるからなあ…。
近づいてみると、井伊直政とあった。
なるほどね。直政といえば徳川四天王の一人である。徳川十六神将、徳川三傑にも数えられ、家康の天下取りを支えた功臣として知られている。しかもたいそう美男だったそうな。けど性格がキツくて嫌な奴だったみたい。皆に好かれてたら、もっと有名になってた筈だもんね。

 

 
10分ほど歩いて中堀に辿り着く。
中々ええ感じのロケーションだ。堀って、何だか落ち着く。
しかし、城よりも先ずはメシだ。早めに食っとかないと、この先、食間のインターバルが短くなる。間がタイトになればなるほど、食べまくるにはキツい。

歩く道すがら、グルメガイドで次の店の候補をいくつかピックアップした。

 

 
『献上伊吹蕎麦 つる亀庵』。
あまり聞いたことがない伊吹そばと云うのが気になった。江戸の町で評判だった蕎麦で、井伊家から将軍家への献上品だったそうな。この店がその蕎麦を復活させた店だというのに惹かれた。古(いにしえ)の歴史あるモノは旅情を掻き立ててくれる必須アイテムなのだ。ロマンチストさんは、そういうの大好物なりよ。
もう一軒気になる店があるから、そちらも見てから決めようと思ったが、店前の「びわ鱒の漬け丼」の幟が目に入った。それが有無を言わさぬ決定打となった。ビワマスは食べた事がないから、かねてから是非食べてみたいと思っていたのだ。
ビワマスとは琵琶湖に棲む鱒のことで、アマゴ(ヤマメ)の海降型亜種である。海降型というのは本来陸封型のアマゴが川を下って栄養たっぷりの海で育ち、サケみたくデッカクなったものだ。東日本のサクラマス、長良川に代表される西日本のサツキマスが有名だが、琵琶湖でも一部のアマゴが琵琶湖に下り、デッカクなる。それが幻とも言われる稀少なビワマスと云うワケなのさ。

 

 
店内は結構お洒落。
蕎麦付きの『びわ鱒漬け丼セット』をオーダーする。
お値段は¥1750(税別)と、ちとお高いが天下のビワマス様だ。この程度の金額は致し方あるまい。
でも後でミニびわ鱒漬け丼¥480ってのを見つけた。それと、もり蕎麦¥750を頼めばよかったかなあと軽く後悔する。

 

 
そば茶と、お茶うけの蕎麦の揚げたのが出てきた。
そば茶は香りが良くて結構好きだ。蕎麦の揚げたのは珠に見掛けるが、どってことない代物だ。しょっぱくもない甘くもないどっちつかずの野郎で、食べると正直な話し軽くイラッとくる。こんなもん、蕎麦崇拝主義者しか有り難がらんわ、ボケッ(=`ェ´=)

 

 
テーブルに三種類もの七味が並んでいた。
どれも見たことがある有名な七味だ。

 

 
へぇー、コヤツらが日本三大七味なのね。
左から東京は浅草寺の「やげん堀」、京都・清水寺の「七味家本舗」、長野・善光寺の「八幡屋磯五郎」。
それぞれどこかで何かにかけた記憶があるけれど、特にどうのという味の記憶はない。七味なんてウドンにかけてしまえば、純粋な味なんぞワカランのだ。
ヒマだし、試しに手のひらに振りかけて味見してみた。

(・。・;あっ、それぞれ全然違うや。
その違いに驚くが、相手がいないので心の中でキャッキャッする。
やげん堀は黒胡麻が効いていて香ばしい。七味家本舗は京都だから山椒の味が強い。善光寺のものは解説通りに一番辛い。しかも唐辛子の辛さがいつまでも舌に残る。そっかあ…。こりゃ料理により適した七味があって然りだね。勉強なりましたわ。

一人で妙にテンションが上がり始めたところで、御膳が運ばれてきた。

 

 
奥から琵琶湖三大珍味。右手に蕎麦、左手にびわ鱒漬け丼。これに味噌汁とそば湯がつく。

 

 
左から滋賀名物の赤コンニャク、モロコの佃煮、川海老と豆の佃煮である。
赤コンニャクは歯応えがあると言われるが、言うほどではない。モロコは焼いて食うと珍味だが、佃煮にしてしまえば、上品とはいえ所詮は佃煮だ。川海老と豆の佃煮は滋賀ではよく見かけるが、食べた事が殆んどない。
感想としては思った以上に良い組み合わせだが、膝を叩いて唸るほどのものではない。「あっ、こういう味なんだ。好きな人はきっと好きなんだろなー。」とは思う、そんなようなもんだす。

 

 
さて、蕎麦だ。
取り敢えず、ごく一部にちょい塩を振ってそのまま食べてみる。
うむ、香りはそこそこ良い。

お次に塩➕山葵でいってみる。
(-_-)…。山葵がクソだ。コレは本ワサビを擦ったものではなく、ホースラディッシュとかを混ぜ合わせた紛いものだろう。ワサビ本来の香りも味もしない人工的な味がする。(#`皿´)偽物めがっ❗、世の中の大半のワサビは信用ならんわい。

そして、ワサビ抜きでつけ汁につけてすする。
あっ、(^o^)美味い。コシがあって喉越しもいい。決して強くはないが、香りも鼻からいい具合に抜ける。
伊吹蕎麦って、期待してた以上に美味いぞ。長野の上田で行列に並んでまで食った蕎麦よりも百倍は美味いわい。
蕎麦って、ウドンよりもクオリティーの落差が激しいんだよなあ。そのわりには割高だったりするから腹が立つことが多い。何か蕎麦は通っぽい世界でカッコつけてる感じだしさ。時々、鼻につく。
どうあれ、美味い。嗚呼、レギュラーサイズのもり蕎麦とミニびわ鱒漬け丼にすれは良かったかなあ…。

そして、いよいよ琵琶鱒漬け丼である。

 

 
見た目はサーモンみたいに鮮やかなオレンジ色ではない。どちらかと云うと、くすんだようなピンク色だ。
感じ的にはサーモンというよりも鮭的。もっといえば、時鮭(時知らず)の刺身に近い。

期待をもって頬張る。
( ☆∀☆)うみゃい。味は脂は乗っているのだが、サーモンみたくシツコクない。脂の抜けがいいのだ。味的には時鮭に近い気がする。
でも御飯の量とのバランスが悪い。御飯の量に対してヅケの量が少ないのだ。やはり蕎麦➕ミニ漬け丼が正解だったかも。日々、勉強である。

味噌汁飲んで蕎麦湯も飲んだら、腹パンパンになった。この先、バカみたいに食べまくる自信が早くも崩れ落ちそうじゃよ。

 

 
赤松かなあ❓大木が奥まで続いている。
思わず、カバフキシタバはいないかと幹を凝視する。
虫屋の悲しい性だ。何だって虫とリンクさせて考えてしまう。

看板を見ると、いろは松と呼ばれているみたいだ。これは、かつてはいろはの文字数と同じ47本の松が並んでいたからだそうだ。土佐から持ってこられた松で、根が地上に出ないから人馬の往来の妨げにならないとということで植えられたという。確かに根がゴツゴツしていない。

 

 
佐和口多聞櫓。
青空と白壁のコントラストが目に眩しい。

表御門跡・馬屋の横で木のベンチに座ろうとしたら、その上で何かがピョンと跳んだ。で、ズズズイと動いた。目の錯覚かなと思い、暫く凝視する。
(・。・;何だこりゃ❗❓小さいがデジタルでカラフルな場違いなものじゃが、見たことあるような気もする。

 

 
更に一拍おいてから、ようやく思い至った。
コレって、ビロードハマキじゃね❓
だとしたら、蝶採りを始めた頃の2009年とかそれくらいの頃に生駒の枚岡で見た時以来の二度目の遭遇だ。
それにしても、インバクトのある蛾だなあ。伊藤若仲のデジタルな画を具現化させたようなデザインだ。こんなもんを世に落とせし神のデザインセンスには感服せざるおえんよ。

ベンチの上から毒瓶を被せる。
コレまた虫屋の性。目的が虫採りじゃなくとも虫捕り道具一式は持ってたりするのだ。コレは虫捕りという一種のビョーキだ。このビョーキに罹患すると、救いようのないバカになるのである。少なくとも世間一般的に見れば、およそ理解されない病理じゃろう。

 

 
んっ❓、どっちが頭なのじゃ❓
一瞬ワカンなくなるが、オレンジじゃない方が頭だ。思うに、コッチが頭だと鳥が勘違いして啄んだ隙に逃げるのじゃろう。
それにしても。一般ピーポーからすれば蛾とは思えないような謎の形だ。自分でも本当に蛾なのか自信が無くなってきて、確認のために裏返してみる。

 

 
やっぱ蛾だな。下翅がどんなんだろ?と思っていたが、おそらく蛾にしては綺麗なんじゃなかろうか❓

金800円也を支払って、城の核心部へと向かう坂道を登る。

 

 
やがて城郭が現れる。
石垣が、ええ感じだ。

 

 
登りきると、天秤櫓に続く橋が見えた。

 

 
美しい。見事なバランスだ。

 

 
橋の下から木組みをのぞむ。
機能美が芸術的なデザインを産む一つの証左だろう。

ぐるりと回り込み、橋の手前まで来た。
横に看板があり、ここでしか見られない植物の事が書かれてあった。

 

 
「オオトックリイチゴ」というんだとさ。
何だ、イチゴかよ(‘ε’*)
バラ科 キイチゴ属の一種で、彦根城以外では知られていない固有種のようだ。こんな狭いとこにスゴいやんと思ったが、自生の「ナワシロイチゴ」と中国・朝鮮半島原種の「トックリイチゴ」が自然交配したものらしい。なあ~んだ、雑種かよ(# ̄З ̄)

 

 
確かにイチゴの葉だわさ。
コレだけを食うチョウとかガの幼虫っていないのかなあ❓いたら、相当の稀種になるよね。
あっ(;・∀・)、また虫屋の性が何でも虫とくっつけて考えとるわい。

 

 
天秤櫓。

 

 
橋の真ん中で城下を見下ろす。
ちょっとだけ殿様気分~🎵

 

 
門をくぐる。
扉に歴史を感じる。築城は1604年に始まり、1622年に完成したそうな。四百年も前だ。そりゃ、歴史も感じる。扉は四百年前のモノじゃないとは思うけどさ。
あ~、この分厚い門扉に手裏剣投げてぇー。

 

 
道はジグザグに、各所で鋭角的に曲がって登ってゆく。
クソ暑い。汗がバカみたいに滴り落ち始める。気温はもう35℃を越えてるやもしれぬ。スーパー晴れ男も考えものじゃよ。

 

 
この造りは、ようするに戦(いくさ)の時の為だね。角の部分で敵兵が歩留まり、ごった返したところで、上の櫓から矢だの鉄砲の弾だのが雨あられと降り注ぐという寸法だ。攻める側からすれば、堪ったもんじゃありやせん。城というものは、そもそもが要塞だから、攻め手側の観点で天守閣を目指すと結構面白い。

漸く天守と御対面。
ひこにゃんもいる。

 

 
といっても、看板だけど。

 

 
モノホンのひこにゃん、そこいらに居ねえかなあ。
いたら、後ろから羽交い締めにするか、脇腹に一発蹴りを入れてやんのになあ。これ、マジで(笑)。

 

 
雲一つない青い空をバックに、たおやかに建っている。荒々しさは無く、むしろ優美でさえある。
天守は小さいが、変化のある破風が重なりあって美しい。さすが国宝じゃな。
これで国宝天守4つめだ。姫路城、松本城、犬山城は過去に行っているから、残りはあと松江城だけだな。

窓(花頭窓)が特徴的で、寺に見られるような粋な形だ。でも周囲を巡る廊下とか欄干が無いなあ。殿様ごっこが出来ねぇでねぇか。

中に入る。

 

 
物凄い急な階段だ。見た目は殆んど垂直。壁だ。
番をしている爺さんに訊いたら、62度もあると言う。

『こんなのお子ちゃまや爺さん、婆さんとか大丈夫なんですか❓登りはまだしも降りられますのん❓』

『時々、立往生しやはる人もおますな。そういう時は後ろ向きにか、座って一段、一段降りてもらいます。』

なるほどね。後ろ向きはまだしも座って降りるという発想は無かったわ。

 

 
意外と中の廊下は幅広い。

  

 
梁の木組みが面白い。
ぐにゃぐにゃ曲がってる木もある。

上から回廊に落ちる光が美しい。
日溜まりが耀いている。

 

 
窓から屋根をのぞむ。

 

 
詳しくはないが、屋根も個性的な気がする。

 

 
最上階まで昇ってきた。

 

 
琵琶湖が見えた。
この国も湖もワシのものじゃあ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ
暫し、殿様気分を満喫じゃよ。

降りて、西の丸に回る。

 

 
フォルムがいい。
裏から見た方が好きかもしんない。

そのまま西の丸、三重櫓、続櫓を経由して玄宮園へと廻るつもりだったが、通行止めになっていた。仕方なく来た道を戻り、玄宮園へ。

 

 
百日紅(さるすべり)には夏空がよく似合う。

 

 
玄宮園入口。

 

 
手前右側に見えるのは稲穂である。
最近になって復元されたようだ。五穀豊穣の祈願とかなのかな?

 

 
いわゆる池泉回遊式庭園というやつだね。

 

 
ここが一番のビューポイントかな。
木はカエデだから、秋深くには一層美しい姿になるだろう。

 
ここも美しい。

 

 
背後に天守閣が見える。
お月見にも良さそうなロケーションだ。

 

 
隣の楽々園。復元の途中のようだ。
ここも秋には美しいだろう。

彦根城って、中々ええやんか。結構、楽しめたよ。
それはさておき、今何時だろう?
確認したら、もう1時半である。1時には電車に乗ってる予定だったのに、あらあら知らぬ間に時間が経ってたのね。
さてさて、次は何処へ行きますか…。
長浜で久し振りに旨い親子丼を食ってもいいし、敦賀の気比の松原なんてのもある。もっと足を伸ばして若狭方面ってのも有りだ。小京都とも言われる小浜も捨てがたい。鯖街道の起点でサバを食うのだ。或いは福井まで行ってソースカツ丼とか越前蕎麦なんてのも悪かない。あっ、蕎麦は昼に食ったからもういいか。

候補をあれこれ考えながら駅へと続く道を歩く。
まあいい。行き先は、駅に着いてからその場の気分で決めよう。

 
                    つづく

 
追伸
写真を並べてサクッと終わらせるつもりが、ついつい文章を書いてしまい、長くなってしまった。
次回からは、もちっとサクサクいこう。

冒頭に青春18切符の画像を持って来るつもりだったのだが、なぜだか切符が見つからない。使い終わってるとはいえ、捨てた記憶は無いんだけどなあ…。
たぶん、神隠しだな。

 
 

秋の夕陽とメトロン星人

 
昨日の夕陽は、ちょっと珍しい夕陽だった。

 

 
とっても眩しい。

 

 
空の殆んどが雲の絨毯に覆われていたが、水平線の近くだけが空いていた。そこにデッカイ秋の夕陽が沈んでいったのだが、雲に邪魔されて光が拡散されることなく目映い束になって爆発していた。
メトロン星人がその向こうから現れそうな気がした。そう、メトロン星人とウルトラセブンが戦った名シーンも、こんな色の夕陽だったような気がする。季節もきっと今くらいの時期を想定して製作されたのではないかと思いたい。そんな空気感のある夕暮れだった。

 
(出典『植物屋 風草木』)

 
メトロン星人とダン(ウルトラセブン)がボロいアパートで、卓袱台で向かい合って語るシーンは哲学的でさえあった。神回と言っていい。メトロン星人はメチャンコ賢いけど、どこか人間的で魅力的な奴だったなあ。でもカッコつけて逃亡を謀ったはいいものの、アイスラッガーだっけ❓とかでセブンに真っ二つにされるんだけどね。何か子供心にも複雑な終わり方だった憶えが残ってる。

こういう夕陽というのは有りそうで案外見られない。
自称夕陽評論家としては、レアなケースにあげたい。

 

 
雲がオレンジ色に染まっている。
このまま上まで雲がこの色で染まってくれれば壮絶な夕暮れになるだろう。

  

 
しかし、残念ながら期待した光景にはならなかった。
心が震える夕陽には、そう会えるものではない。

                   おしまい
 

青き藩王シュレイベル

 
 
一年近く展翅板で超ほったらかしになっていた佳蝶シュレイベルを発見す。我ながら雑も雑の酷い性格だ。

 
【シュレイベルヒメフタオ Polyura schreiber 】

 
西ジャワ産の原記載亜種 ssp.schreiber の♂である。
時間が経っているせいか、展翅が微妙に狂ってる。

コレって、三角紙標本で300円ポッキリで売ってたんだよね。安いのは有り難いのだが、シュレイベルを冒涜するような低価格だ。正直安過ぎて、なんだか物凄く腹が立つ。現地に行っても滅多に会えない蝶なのに何で❓
きっと西ジャワから大量に入ってきた結果、値崩れしたんだろなあ…。西ジャワには、そんなにウジャウジャいるのかなあ❓それとも大量に養殖してんのかなあ❓ 或いは、それが一番正解っぽかったりして…。
そういえば幼虫の食樹は基本はマメ科植物(註1)だけど、最近は果物のランブータン(ムクロジ科)も大いに利用していると聞いたことがある(シンガボール辺りでは、街路樹にもなっているらしい)。だったら苗木を買ってきて、大量に飼育も可能だもんな。街路樹で発生しているとしたら、もっと楽勝だ。そうだとすれば、益々ガッカリだ。養殖もんは、どっか貧弱で魅力に欠けるところがあるような気がしてならない。この個体も小さいのは養殖だからかえ❓

それに比して♀は大きい。

 
【Polyura schreiber schreiber ♀】
(西ジャワ産)

 
尾状突起が長くなり、横幅も広がる。日本には、こういう形の蝶はフタオチョウ(Polyura weismanni)しかいないから、蝶採りを始めた頃はごっつ憧れましたなあ。

これも値段は700円くらいと激安だった。これって、昔からすると考えられない値段だろうな。当時いったいどれくらいしたのかはワカンナイけど、万単位のかなりの高額で売買されていたに違いない。フタオチョウの仲間はどの種も♀は得難く、珍品揃いなのだ。
不思議なんだけど、普通種のフタオチョウ(Polyura eudamipps)やベルナルダスフタオだって、野外で♀を見たことすらない。唯一見たことがあるのは交尾していたアタマスヒメフタオ(Polyura athamas)くらいだ。ナゼか♀は果実トラップにもあまり誘引されないんだよなあ…。もしかしたら、時間帯とかあるのかもしれない。寄ってくるのは日没寸前前後とか、早朝とかさ。♀は天敵に食われたら子孫を残せないので、きっと、より臆病なんだろね。
でも日本のフタオチョウの♀は昼間にトラップに寄ってくるのを観察した事がそこそこある。そう云う意味でも、日本のフタオは特異な存在なのかもしんない。
いや、もとい。記憶を思い起こすと、真っ昼間はあんまり来なくて、午後3時以降から飛来してたな。で、一番活発に飛来したのは夕刻5時以降だったわ。あと、♂は朝6時半くらいとかにも寄って来てたな…。

ところで♂って、こんな小さかったっけ❓過去に自分で採ったシュレイベルの画像を探してみる。

あった。コレだな。

 
【ssp.tisamenus】
(2011.2月 Malaysia)

 
やっぱ断然大きいじゃん。
これには ssp.tisamenus という亜種名が冠されている。学名の由来はワカラン。地名かな?

東南アジアには何度か旅してるけど、実をいうと野外でシュレイベルを見たのはたった2回だけである。
そして、上の個体が最初に出会ったものだ。場所はマレーシアのキャメロン・ハイランドの麓である。渓谷で吸水に来ていた。蝶採りを始めてまだ3年で、バカだから勢いで一人で海外採集に行ったんだよね。勿論、同行者無しのガイドも無し。外国の蝶の知識もまるで無かった。
ゆえに、このシュレイベルとかヤイロタテハを見た時は( ☆∀☆)カッケーとは思ったが、価値は全然解ってなくて採った。緊張はしたけど、自然にゲットできた。今思えば、これがその後の海外採集のスタイルの基本になった。メインのターゲットを除き、あまり知識を入れずに行った方がピュアな気持ちで臨めるから純粋に楽しいのだ。知らない事のマイナス面よりも、見る蝶、見る蝶が新鮮な方が寧ろ愉快なのである。後々、色々と発見もあるしね。後で何者かを調べるのは、ちょっとしたワクワク感があって面白い。

この一個体だけでは何とも言えないけど原記載亜種と比べて翅形が幅広く、ガッシリしている。帯も少し太いような気がする。

もう一つも探そう。

 
【ssp.assamensis ♂】
(2014.4月 Laos vangvieng)

 
コチラもござった。でも、小さいなあ…。
まあ、自分で採ってるから小さいとは知ってたけどさ。

 

 
場所はラオス・バンビエンの渓谷である。岩上のカビカピになっていた獣糞に来ていた。
当時は単なる矮小個体だと思ってたけど、或いはもしかしたら、これが標準サイズなのかもしれない。なるほど、ならば和名ヒメフタオの語源はそれに起因していると理解できなくもない。
大きさに対する認識は、ともすれば最初にマレーシアで採ったもののインパクトが強過ぎたのかもしれない。イスワラモンキアゲハとかゴッドフレイワモンチョウなど、マレー半島では蝶が全般的に大型化する傾向があるゆえ、マレーシアのシュレイベルも特別にデカイのやもしれぬ。

ファジーな個人の見立てを書いてても埒が開かないので、塚田さんの図鑑『東南アジア島嶼の蝶(註2)』で確認してみよう。

亜種 tisamenus の分布はマレー半島とシンガポール。特徴は大型で前翅端の小白紋は消えかかり、中央帯か少し太まるみたいだ。
おっ、我ながら見立てはイイ線いってたな。

ついでだから、図版の♀の画像も添付しておこう。

 
(出典『東南アジア島嶼の蝶』)

 
もう一方のインドからインドシナ半島に棲む亜種 assamensis は、やや小型で中央条や裏面の亜基条も少し細まり、前翅端の小白紋がよく出るとされる。
コチラも♀の画像を貼り付けておこうと思ったが、ナゼか塚田図鑑には標本写真が一つも図示されていなかった。

順番を違(たが)えたが、ジャワ島産の原記載亜種 ssp.schreiber の特徴も書いておこう。
小型で前翅端は鋭く尖り、外縁の湾曲も強い。白帯は発達し、青灰色鱗もよく出る。
おー、何となくそう感じてはいたけれど、言われてみれば確かに前翅端は湾曲が強くてシャープな感じだ。

亜種は、これだけでは終わらない。何と塚田図鑑では21亜種にも分けられている。そんなに細分化する必要性が果たしてあるのかね❓
他亜種については、余裕があればの話だが、別掲する予定でありんす。

言い忘れだが、シュレイベルは裏面もカッコイイ。

 

 
何か写りが暗い。
明るくしてみよう。

 

 
この複雑な幾何学模様が美しいのだ。
思うに、フタオチョウの仲間は表も美しいが、裏の方がより複雑且つ個性的で美しいものが多いように感じる。だから、いつものっけから表展翅よか裏展翅したくなる衝動に駆られる。1頭しかないと、さすがに堪えるけどさ。
因みに上はラオス産だから、ssp.assamensis。下は西ジャワ産だから、原記載亜種 ssp.schreiber の裏面である。
比較の為に、マレー半島亜種 tisamenus の裏面も塚田図鑑から拝借しよう。

 

 

ここでフタオチョウ類の展翅について一言。
フタオチョウの展翅は正直ウザい。めちゃんこマッチョな筋肉質なので、バネが強くて翅を上げても簡単に戻ってしまうのだ。左翅を上げて、さあ右翅を上げようとすると、あっという間に左翅が簡単にズリ下がる。誠にもって忌々しい。だりゃあー(ノ-_-)ノ~┻━┻。で、時々マジ発狂する。
無理に強引に上げようとすると、蝶に真っ直ぐに刺していた筈の針が上に引き上げられて、横から見たら思いっきり斜め上になってたりもする。だから、それを見越してワザと針を手前に傾けて刺すだなんて云う面倒な裏技も使わなくてはならない。
それと、無理に上翅の下辺を真っ直ぐにしようとすると触角が上手く収まらなくなって、天突く形になってしまう。これはそもそもフタオの上翅の下辺は湾曲しているので、真っ直ぐにしようとする事じたいが間違いなのだ。胴体基部の翅が始まる一点と後角部の角を結んだ線が真横になるイメージで展翅すると上手くいきやすい。もしくは触角に合わせて翅の上下を調整するとよい。これはべつにフタオに限った事ではなく、殆んどの蝶に当てはまるセオリーではないかと思う。昔から言われてる上翅の下辺を真っ直ぐ真一文字にすると云う教えは、今やナンセンスだと思う。基礎としては間違ってないけれど、絶対条件ではないということだ。
あっ( ̄0 ̄;、全然一言で終わってないでやんす。

 
【学名】Polyura schreiber (Godart, 1824)

和名にイチモンジフタオの名があるが、あまり使われていない。おそらくネーミングが普通過ぎて、何の面白味もなくてツマラナイからだろう。それに他にも縦一文字柄のフタオチョウの類は幾つもいるのだ。
ルリオビフタオという和名もあるようだが、そう悪くないネーミングだけど浸透はしていない。ゆえか、蝶好きの間ではシュレイベルフタオと呼ばれる事が多く、ヒメは省略される傾向にある。おそらく長いし、ヒメという程には小さくはない亜種もいるし、♀は決して小さくはないからではなかろうか。
和名って混乱を招き易いし、国内の昆虫にはまあ必要だとしても、外国産の昆虫には、もう無理矢理つけるのは止めた方がいいと思う。その無理から名前が複数あったら最悪だ。何が何だかワカラナクなる。
外国産の昆虫には、いっそ学名そのままの和名でいいのではないかと思う。その方が現地の人にも伝わる。シュレイベルなら通じるが、ルリオビフタオチョウなんて現地で言ったところで全く通じないのだ。和名なんて、ぶっちゃけ日本以外では要らないのだ。

頼みの綱、平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と由来-』には小種名 schreiber の語源が載っていなかった。
仕方がないので自分で調べてみると、読み方はシュレイベルの他にシュライバー、シュライベル、シュレイバー、シュレイベール、シュレーベル、シュレベールと数多(あまたは)の候補があることに驚く。のっけから頭イタイよ。実際、ネットなんかを見てるとシュライバーヒメフタオやシュレイバーヒメフタオの記述も散見されるから混乱してきた。いったい、どれが正しい読み方やねん(=`ェ´=)❓何だか憂鬱になってくる。
でも学名の発音の基本はラテン語読みだから、たぶんシュレイベル、もしくはシュライバルがあってるのではないかと思う。

じゃあ、シュレイベルとは何ぞや❓ その学名にはどういう意味が込められているのだろう❓
勘だと、おそらくこれは人名で、シュレイベルさん、もしくはにシュライバーさんに献名されたものではないかと思う。で、綴りと音感の感じからすると、その人はドイツ人ではなかろうか❓

Schreiberは、もともと schreiben という動詞の名詞形と云う記述もあったが、多くで schreiben は「書く」という意味の動詞だと書かれていた。
またドイツ語の姓の一つでもあり、「作家、著述家、吏官」などの意味がある。ようは文筆に関わる仕事を生業とする人たちのことだね。
語源はラテン語の scribo。英語の scribe(書く)の語源でもあるようだ。
だが、ここまでが限界。それ以上の事はワカラン。ワシの推理が果して真実かどうかは責任持たないよ➰ん。

英名は blue nawab(ブルー・ナワーブ)。
ナワーブはムガール帝国における各地の地方長官の称号であるが、この語は18世紀以降に普及した語であり、ムガール帝国期のインドの知事ともされる。
イギリス統治下ではナワーブは『藩王』の称号の一つであり、ニザームやマハラジャと同等に使われていたようだ。まあ知事とするか藩王とするかは、単なる訳し方なんだろね。でも古い時代に付けられた学名だし、知事とするよりも藩王とした方がしっくりくる。それに現代のイメージだと、知事なんてものには威厳も重厚さもまるで足りない。あまり尊敬されてる感じがしないもんね。東京都知事の桝添とか猪瀬とか酷かったもんな。そういえば芸人上がりの大阪都知事は、女性のケツ触ってセクハラで訴えられて辞めたもんなあ。でも、あの時は大阪府民は言うほどノックさんに対して怒ってなかったんだよね。辞める理由が汚職とかではなくて、女の尻を触ってだもんなあ。前代未聞だよ。何か、皆さん怒る気がしないというか、エロ蛸坊主の辞め方のオチとして笑えたというか、脱力して怒る気にもなれなかったというか…。

 
シノニム(同物異名)が、そこそこある。

・Nymphalis schreiber(1824)
・Charaxes schreiberi(1944)
・Eulepis schreiber schreiber(1899)
・Eriboea schreiber schreiber(1914)
・Polyura schreiber Stichel(1939)

 
同じフタオチョウ族(Charaxini)の Charaxes属に含まれるとする見解もあったんだね。

 
【亜種と分布】
一応、ウィキペディア(Wikipedia)でも調べてみた。

◆ Polyura.ssp.schreiber
◆ P. ssp.balambangana
◆ P. ssp.bilarensis
◆ P. ssp.ikami
◆ P. ssp.lindae
◆ P. ssp.luzonica
◆ P. ssp.malayica
◆ P. ssp.mentawaica
◆ P. ssp.niasica
◆ P. ssp.praedicta
◆ P. ssp.assamensis
◆ P. ssp.tisamenus
◆ P. ssp.wardii

 
うわっ💦、いまだに13亜種もある。現在もあまり整理集約されずに残ってるんだね。
いや、それでも21亜種が13亜種なってるんだから8亜種も減ってる事になる。むしろ、かなり整理されてると言った方がいいかもしんない。

面倒だけど、前言したとおり塚田図鑑の各亜種の解説を要約しよう。
先ずは各亜種の分布図を転載するっぺよ。

 
(出典『東南アジア島嶼の蝶』)

 
種のそのものの分布は、南インド、アッサムからテナッセリウム、ミャンマー、そしてインドシナ半島を経由して中国南部からフィリピンにまで達し、南はマレー半島からインドネシアのボルネオ、ジャワまでと広い。しかし、棲息地は極めて局所的で、従来どの産地でも珍品とされてきた。
 
 
【ssp.niasica ♂】

【同♀】
(出典『東南アジア島嶼の蝶』以下同じ)

ニアス島亜種(ssp.niasica)は中央帯が細く、周辺の青灰色部が広まったもので、裏面の銀白色鱗が発達し、褐色地が黄緑色を帯びる。

 
【ssp.mundus】

シンケップ・ビンタン島亜種(ssp.mundus)は大型で、翅表地色が濃く青黒い。♂の前翅端の小白紋は殆んど消失し、裏面の褐色地は緑色を帯びて後翅の黒い細条が太まる。mundusは「上品な」の意。

 
【ssp.entheatus】

ビリトン亜種(ssp.entheatus)は、小型で白帯が細い。裏面の地は白っぽく、斑紋はやや赤みを帯びる。

 
【ssp.andamanica】

アンダマン諸島・南島亜種(ssp.andamanica)の♀は前翅第5、6室の白斑が大きく、裏面亜基部の褐色条が太くなる。
図版には、このボロ♀しかなかった。レアな亜種って事なんだろね。
 
 
【ssp.malayica】

ボルネオ島亜種(ssp.malayca)は、マレー半島・シンガボール亜種 tisamenus に似るが、尾状突起の発達がやや悪く短めで、裏面の褐色地に少し赤みを帯びるもの。

 
【ssp.praedicta】

フィリピン南部のパラワン島亜種(ssp.praedicta)は、malayicaに似るが、裏面第3、4室に出る臙脂色斑が退化するという。
しかし、図鑑にはナゼか裏面画像は載っていなかった。

 
【ssp.valensius】

北スマトラ亜種(ssp.valensius)の♂はやや小型で尾状突起も短く、前翅端の白紋は消える。♀はこの小白紋が大きくなって、裏面の暗黄褐色条が細まる。

 
【ssp.notus】

南スマトラ亜種(ssp.notus)の♀は、やや小型で地色が濃色で中央白帯が細まる。学名は「南風」の意。
♂の画像は無かった。

 
【ssp.caesius】

ナツナ島亜種(ssp.caesius)は、中央白帯が細く、両翅小白紋はよく出て、裏面の地色に青味を帯びるもので、学名は青緑色の意。

 
【ssp.glaucus】

アナンバス諸島カリマタ島亜種(ssp.glaucus)は、中央白帯が細く、外側に青灰色鱗を幅広く、裏面が少し赤みを帯びた暗褐色となる。学名は青灰色の意。

 
【ssp.kitaharai】

バリ島亜種(ssp.kitaharai)は、ジャワの基亜種 schreiber に似るが、白帯が少し細まる。裏面地色が原記載亜種が黄色味を帯びるのに対し、黒味が増してメリハリがある。

 
【ssp.lusonica】

フィリピン北東部のものは特化しており、ルソン島亜種(ssp.lusonica)は小型で、前翅端の尖りは強く、外縁の湾曲も強い。白帯は極めて細く、周辺の青灰色鱗が広がる。マリンドゥッゲ、マスバテ島産もこれに含まれる。

青いし、湾曲が強くて尾状突起が長く無茶苦茶カッコイイ。これはいつか自分の手で採りたいと思う。
でもなあ…フィリピンなんだよなあ。実を云うとフィリピンには行ったことがない。行きたいんだけど、治安が悪いイメージが強いから中々踏ん切りがつかないのだ。ダイビングインストラクターをやっていた頃、勤めていた店にフィリピン支店があって、そこで銃乱射事件が起こった。詳しいことは長くなるから書かないけど、その事件でスタッフの一人が死亡した。現場にいたお客さんに、床に伏せた時に薬莢が顔の横に転がってきたとかリアルな話を聞いたのがトラウマになっているのかもしれない。
フィリピンにはヒカルゲンジイナズマとかサトラペスオオイナズマ、ブランカカザリシロチョウ、センペリィアケボノアゲハ、アカネアゲハ、コウトウキシタアゲハ等々の魅力的な蝶が沢山いるんだよなあ。行きてぇなあ。
原則、海外に行くときは一人だけど、誰かフィリピンに一緒に行ってくんないかなあ…。

 
【ssp.mizunumai】

ネグロス島亜種(ssp.mizunumai)は、スンダランドのものに似るが、尾状突起の発達がよい。白帯も太まり、青灰色部が後翅後中央部に広く出る。
亜種名は標本商であり、クワガタ、カブト界の巨人でもある水沼さんに献名されたっぽいけど、どうなのかな?

 
【ssp.bilarensis】

 
レイテ島亜種(ssp.bilarensis)は、翅表地色が褐色を帯びるもので、後翅のオレンジ斑はよく出るが、裏面の臙脂色斑の出かたは小さいもの。サマール、ボホール島産もこれに含まれる。

 
【ssp.delicatus】

ディナガット島亜種(ssp.delicatus)は、地色が bilarensis と同じであるが、白帯は細まり、後翅のオレンジ斑が広く発達する。学名は「優美な」の意。

 
【ssp.toshikoe】

ミンダナオ島亜種(toshikoe)は、delicatus によく似たものであるが、白帯が太まる。また裏面の褐色条に少し赤みを帯びる。

 
【ssp.cyaneus】

バウェアン島亜種(ssp.cyaneus)は小型で、♂♀共に白帯が細く、前翅第5、6室の白斑が明瞭。後翅のオレンジ条は♀によく出る。また後翅裏面の臙脂色の半月状斑の発達が良い。両翅端はいずれも外縁よりも突出し、ゴリゴリした感じになる特異なもの。学名は青いの意。

 
【ssp.wardii】
南インド産亜種(ssp.wardii)は中央白帯が前翅に長く伸びたもので、普通は第4室止まりなのに第5、6室にまで及ぶ。後翅亜外縁の赤茶条も太く鮮やか。

こうして塚田図鑑に解説があるのにも拘わらず、画像は載っていなかった。図鑑のコンセプトの分布範囲外だし、おそらくスペースの問題もあったのだろう。
他にも一部♂が無かったり、♀が無かったり、裏面が無いのは決してアチキが端ょっているワケではないので、あしらからず。

因みに、同じ図版に並んでいる次の画像には一瞬驚かせられた。

 

 
こんな変わった亜種もいるんだなあと思ったら、何とスラウェシ島の固有種であり、別種のコグナトスフタオ(Polyura cognatus)だった。
これは bellona という島南部の亜種で、自分の採った亜種と雰囲気が違ったからだ。原名亜種と比べて尾状突起が細くて長いし、上翅の湾曲の反りも大きい。全体のフォルムがシュレイベルのフィリピン方面のモノに近いのだ。

 
【原名亜種 ssp.cognatus】

(2点とも 2013.2月 スラウェシ島 タナ・トラジャ)

 
裏なんかも両者はかなり雰囲気が似ている。だから、シュレイベルもコグナトスと同じくクギヌキフタオ種群に含まれるとばかり思っていた。だが、どうやら違うらしい。塚田図鑑では、シュレイベルをこの1種のみの種群としているのだ。
確かにコグナトスの♀の尾突起の湾曲具合は、クギヌキフタオ(Polyura dehanii)と同じ系統の種である事を示唆している。

 
【Polyura cognatus yumikoe ♀】 

 
【Polyura cognatus cognatus ♀】

 
裏面だが、参考までにクギヌキフタオ(註3)の画像も添付しておこう。

 
【クギヌキフタオ Polyura dehanii ♀裏面】
(2010.5月 西ジャワ)

 
相変わらず、鬼のごたる様な斑紋で激カッコ美しい。
一方シュレイベルの♀には、その湾曲徴候があまり見られない。その辺が別の種群とされた理由なのかもしんない。
でもシュレイベルとコグナトスの裏面は、どう考えても類縁関係があると思うんだよね。因みにシュレイベルとクギヌキフタオはジャワ、スマトラで分布が重なるが、スラウェシ島にはシュレイベルはおらず、コグナトスのみしか分布していない。或いは、もしかしてシュレイベルの一部がクギヌキフタオに進化して、スラウェシ島に侵入したシュレイベルがコグナトスに進化したとは考えられないだろうか❓だから南部のモノ(bellona)はシュレイベルに似ているのかもしれない。けどなあ…、似ているのはフィリピン北東部方面のシュレイベルだから辻褄が今一つ合わない。酔っ払った思いつきでテキトーに書いてるから、やはり論理に穴があるなあ。まあ、だからどうした?って話だけどもね。

 
ウィキペディアに載ってない亜種は、caesius、toshikoe、delicatus、entmeminus、kitaharai、mundus、notus、valensius、andamanica、caesius、glaucus、mizunumai だな。
(◎-◎;)あれあれー、12もあるじゃないか。それによく見ると、ウィキペディアには lindae、ikami、balambangana、mentawaica と、4つもの新たな亜種が挙げられているぞ。もうワケわかんねぇよ。
( ̄▽ ̄;)あちゃー、下手に首突っ込んじまっただ。参ったなー。こう云うのってさあ、どちらも正しいと言えるし、どっちも間違ってると言えたりもするから、どうしようもないんだよなあ…。学者によって見解も違うしさ。それを己の力で今から検証するの❓
ウン、そりゃ無理だぁー。そんな力は無い。このまま放ったらかしにしよっと。気になる人は自分で調べてね。

 
【生態】
産地では周年発生するようだが、インドでは1~5月に最も多いという。因みに自分の捕らえた2個体は、それぞれ2月と4月で、雨季と乾季という別々の季節だった。
低地を好み、市街地でも見掛けることがあるという。
シンガポールなどでは街路樹にランブータンが使われていて、そこそこいるらしい。だとしたら妙に清潔で、人工的な感じがしてつまんないシンガポールでも、また行ってやってもいいかな。とはいえ、実際に行ってみると、そう甘くはないんだろうけどさ。
おそらく本来の棲息環境は緑豊かな低山地の渓谷沿いだろう。捕らえた個体はどちらも渓谷沿いで、標高は何れも700M以下だった。

♂♀共に飛翔は極めて敏速で、樹林の上空を高く飛ぶ。♂は高い梢に静止して占有域を保持する習性が強く、中々降りて来ないことから捕獲は容易ではないとされる。
飛んでいる姿は一度も見たことないけれど、フタオチョウの1種なんだから、そこは容易に想像はつく。フタオの仲間は殆んどの種が筋力がバキバキに強いので、まあ当たり前だろね。群を抜いて飛翔力が強いのだ。こんなのがジャノメチョウ科に近いだなんて、俄(にわか)には信じ難いよな。遺伝子解析を益々疑いたくなってくるよ。
とにかく、この仲間は飛翔はマッハなので、空中で捕らえるのは至難の技だ。とはいえ、熟して発酵した果物(腐果)や動物の糞尿、死体などに集まる習性があるので、幸運にもそう云う場面に遭遇したならば、わりと楽勝で採れる。大概は吸汁に夢中で、アホになっているのだ。網を被せても微動だにしないことさえある。だから、慣れれば手でも採れる。その方が翅も傷まないし、採り方としてはベストなのだ。ラオスやタイでは、結構手で採ってた。コツは心頭を滅却し、オーラを消して後ろからスウーッと手を伸ばして、💥電光石火でガシッと掴む。パワーがあるので、しっかり掴まないと弾かれるので注意されたし。

シュレイベルに限らず、皆とにかくフタオは卑しい。悪食なのだ。💩ウンコに小便、揚げ句は死体だもんなあ。それを必死になって採ってる自分も自分だけどさ(笑)。アタマ、オカシイよね。
おまけに三角紙の中で大量のお漏らしをする。で、綺麗な翅が台無しになる。〆たら直ぐにアンモニア注射とかを射った方がいいかもしんない。でも海外で注射器なんか持ってたら、麻薬中毒を疑われそうだしなあ…。
ウンコ、小便、お漏らし、注射器…。それにしても出てくる言葉が一々酷いな。スカトロプレイじゃん。アブノーマル、完全に変態さんの世界でんがな。
このグループは美しくて品もあって大好きだけど、謂わば一見淑女に見えて娼婦なのだ。でも、そう云う女性は男子の理想でもあるよね。重度の変態女はちょっと考えるけど、昼は淑女、夜は娼婦なんて女性は最高だすな。そういえば、そういう娘、いたなあ…。
過去の事を思い出して、思わず語り出しそうになったけど、何を書き始めるかワカランし、大脱線必至なので今回は自制しておきます。後半、官能小説ってのはかなり斬新だけど、人間性疑われそうだしなあ…。

そういえば、あの娘は青いワンピースがとてもよく似合ってた。夏の終わりの湖で、その裾が風にそよそよと揺れてたっけ…。それが二人の最後の夏だった。
嗚呼…、人は失ってみないと、そのモノの本当の存在価値は解りはしないのだ。

                   おしまい

 
追伸
最初のタイトルは『シュレイベルの憂鬱』だったが、本ブログに『エウダミップスの憂鬱』というタイトルの回があるので変更した。エウダミップスも同じフタオチョウ属(Polyura)の種であり、タイプの違う姉妹みたいなもの。学名は Polyura eudamippus。日本のフタオチョウも最近まではこの学名だった(現在は別種 P.weismanni)。『エウダミップスの憂鬱』は、その日本のフタオチョウを含めた全亜種について書いたものだ。ヒマな人は台湾のフタオチョウの回と合わせて読んでみて下され。
次に考えたタイトルが『群青色の狙撃手(スナイパー)』だった。悪くはないと思ったけど、カッコつけ過ぎかなと思って取り下げた。だいち飛んでる姿は一度も見たことがないのだ。盛り過ぎじゃろう。
そして、考えあぐねて捻り出したタイトルが『青き藩王』。これでいこうと思ったのだが、本文を書いてる途中で、急にやっぱシュレイベルという言葉を入れたくなって、現在のものに落ち着いた。

本当は『台湾の蝶』シリーズを再開させようかと思ったのだが、書き方忘れたあー( ̄∇ ̄*)ゞ
それに再開するとなると、また過去文を見直さねばならない。どの台湾の蝶を紹介したのかも忘れたしぃー。
正直、考えただけでも面倒くさい。憂鬱だ。だいたいこの雨続きのジメジメした毎日に、そんな気力が湧くワケないんである(8月後半の雨続きの時期に草稿を書いていたのだ)。

 
(註1)マメ科植物
インドからは Leguminosae マメ科 のWagatea spicata と Connaraceae マメモドキ科の Rourea santaloides が食餌植物として記録されている。
他に Adenanthera pavonina、Nephelium lappaceum などの記録もある。
元々 Polyura属の基本食樹はマメ科で、そこから多くの種が食性を広げ、食樹転換をしている例は多い。本種がランブータンを利用するようになったのは、比較的最近のことかもしれない。

 
(註2)東南アジア島嶼の蝶
稀代のコレクターである塚田悦造氏により、1980年から1991年にかけて刊行された5巻からなる図鑑。インドネシア・スラウェシ島からスマトラ島域内の島々の蝶に的を絞った特化した図鑑だが、枠外の周辺亜種をも網羅した金字塔とも言える大図鑑である。アゲハチョウ編、シロチョウ・マダラチョウ編、ジャノメチョウ・ワモンチョウ・テングチョウ編、タテハチョウ編(上下巻)までは刊行されているが、シジミチョウ編、セセリチョウ編は発行されておらず、未完。シリーズが刊行されてから、もう30年以上も経っているので、おそらく未完のままで終わるだろう。シジミとセセリは膨大な種があるから、断念したのかもしれない。セセリなんて人気がないから、採算も合わないだろうしね。

 
(註3)クギヌキフタオ
ジャワ島とスマトラ島に分布する佳蝶にして怪蝶。
クギヌキフタオについては拙ブログに『Rucifer Rising』と題した詳しい文があるので、興味のある方は併せてソチラも読んで下され。