青き Lampides

 
ひと月ほど前にシルビアシジミの事を書いたが、その折りに標本箱から変わったシジミチョウが出てきた。
すっかり忘れていたが、思い出深い蝶の一つだ。

 

 
コレ、なあ~んだ❓
見て直ぐに何者なのかが解る人もいれば、解らない人もいるだろうが、ド普通種のウラナミシジミだ。
因みに色の違いに言及しとくと、写真は外光など部屋の明かりの具合(光の射す角度)や背景の色によって写り方が変わってくる。強いて云えば、上から見たら、一番下の画像のように見えることが多いかな。

ラベルを見ると、まだまだ蝶屋も駆け出しだった頃の「2011年11月13日 大阪府豊中市勝部」となっている。ふわっと記憶が映像となって甦る。

夕方4時くらいだっただろうか、大阪空港の豊中市側をシルビアシジミを探して歩いていた。
ここは知る人ぞ知る、飛行機の着陸が物凄く間近で見られる場所だ。

 

 
すっかり傾いた太陽の光が、その長い指を伸ばし、辺りの風景に美しい陰影を与えていた。
そんな折りだった。🍀クローバーだらけの足元から小さな蝶が驚いて飛び上がった。何だろう?と思っ次の瞬間に、右からの淡い斜光に反射して羽がキラリと光った。
( ☆∀☆)青い❗それも物凄く青いと感じた。
Σ( ̄ロ ̄lll)何じゃ、ありゃ❗❓
咄嗟に走り出しながらも、刹那に脳ミソの片隅で考える。小さいといってもシルビアやヤマトシジミにしては大きい。ツバメシジミも同様だ。それに、それらの青とは違うもっと明るい青に見えた。しかも金属光沢があるように感じた。じゃ、何❓ もしかして迷蝶❓ だったとしたら、まだ見ぬどえりゃあ~珍なるモノかもしれない。

2、3歩ダッシュして、網を持つ片手を目一杯伸ばし、前に突んのめりながらもゲット。
で、ドキドキしながら中を見て、びっくり。全然、予想外の奴だった。裏面はどう見ても、ド普通種のウラナミシジミだったからだ。ウラナミシジミって、青というよりも藤色じゃなかったっけ❓あんな青く見えるワケないよな。

 
【Lampides boeticus ウラナミシジミ♂】

 
【同♀】

 
【裏面】

  
締めて、羽を開いてみると、やっぱ青い。どうやらメスのようだ。メスはオスと比べて色が青系だ。といっても青い部分は少なく、金属光沢が全く無いワケじゃないが、かなり弱い。とにかく、こんなに綺麗なもんじゃないのだ。だから、その時は異常型なんじゃないかと思った。

しかし、そこはまだまだ駆け出しの蝶屋。ウラナミシジミに低温期型ってのがあるなんて、まるで知らなかった。帰って調べてみて、漸くそういうのがいるってのを初めて知ったのだった。当時も今も、なあ~んも知らんのである。

今回、改めて見ると、正面からはあまり青く見えないのだが、傾けるとワッと青が浮き上がってくる。構造色なんだね。傾ける角度によって、微妙に色が変わる。

 

 
下翅の外縁部まで青い鱗粉が乗っていて、非常に美しい。黒い紋もよく発達しているね。
更に傾けると、また色が変わり、輝きも強くなる。

 

 
一応、ノーマルの♀も同じように傾けてみた。

 

 
藤色だ。色も薄いし、金属光沢も弱い。
全然、綺麗じゃない。でも、ウラナミシジミの♀って、こんなもんだよな。普通種だし、人気がないのも致し方ないよね。

ねんの為に、低温期型の裏面も確認してみた。

 

 
下翅の帯が太くなり、上翅の波柄にメリハリがあるように感ぜられる。

コレって低温期型にしても、特別美しくないかえ❓
でも、これ以外に低温期型のウラナミシジミなんて見たことがない。って云うか、真面目に探した事などない。或いは、こんなクラスはいくらでもいるのかもしれない。気になったので、ネットでググってみた。

低温期型って結構珍しいのかと思いきや、わりかし記事が出てくる。ちょっとガッカリだ。
でも、ここまで青いのは少ないんじゃないかと思う。
いや、やっぱ真面目にウラナミシジミなんて採ったことないから、ワカンねぇや。どれくらいの頻度で出るのかが、実体験として無いもんね。
よし、来年は低温期型をマジで探そう。これくらい美しいなら、採る価値はある。
とは言っても、どうせ秋になったら忘れてそうだけど…。

                    おしまい

 
追伸
『2018′ カトカラ元年』の新作が遅々として進まないので、こんなんでお茶を濁しております。

書き忘れた。
『日本産蝶類標準図鑑』によると、「早春に発生する個体は後翅裏面の白帯は広く、斑紋は不鮮明。後翅肛角部の橙色斑は著しく減退する。」とあった。
たぶん、こういうのを指しているのだろう。↙

 
(出展『g-hopper.ne.jp』)

 
だとすれば、秋冬型とも言える今回のは低温期と言えるの❓言えないの❓(@_@)ワケ、わかんねえや。

 
(註1)ウラナミシジミ
英名『long-tailed blue butterfly』
鱗翅目シジミチョウ科ヒメシジミ亜科。前翅長17mm内外。裏面に褐色の波状紋が密にあるため、その名がある。表面は雄では藤紫色であるが、雌では基半部にのみ青みを帯び、外半は暗褐色。後翅には細い糸状の尾状突起がある。英名はコレに由来する。幼虫はマメ科の栽培種や野生種の花や若い果実などを広範に食害する。暖地性で、本州では房総半島南部、伊豆、紀伊半島などで越冬し、夏から秋にかけてこれらの地方から本州各地,ときには北海道南部まで世代を繰返しながら北上する。しかし冬を越すことはできず、死滅する。四国南部、九州南部と西部、琉球列島などではほぼ一年中みられる。日本以外にも分布は広く、アジア南部、南太平洋の島々、オーストラリア、ハワイ諸島、ヨーロッパ中・南部、アフリカ北部に及ぶ。(参考資料『コトバンク』)

猪名川の河川敷以外でも、淀川や大和川の河川敷なんかでもよく見かける。関西では、平地の河川敷なら何処にでもいるって感じだ。それほど多くはないが、大阪市内でもちょくちょく見かける。そういえば、今年は近所の公園(難波)にもいたな。