未だ見ぬ日本の美しい蛾1

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年末に岸田先生の『世界の美しい蛾(註1)』について書いたが、今回はその続編。
本には海外の美麗蛾のみならず、日本の美しい蛾も数多く紹介されている。

大概の蛾は知っていたから驚きはあまり無かったが、コレには目を見張った。
 

【ダイセツヒトリ Grammia quenseli daiset】

 
ヒトリガ科(Arctiidae)・ヒトリガ亜科(Arctiinae)。
北海道の大雪山系に棲む高山蛾だ。昼行性の蛾だから、高山植物のお花畑なんかに飛んでるのかな?
国外では、ヨーロッパからアラスカにかけての寒冷地、高地に棲息する。
存在を知らないワケではなかったけれど、認識不足だった。小さいし、もっと地味なイメージを持っていたんだけど、拡大された画像を見て驚いた。まさか、こんなにも渋カッコイイとはね。シンプルだけど、とても洗練されたデザインだ。
そういえば棲息地である大雪山系に行った事があるけど、見なかったなあ。時期的には6月下旬だったから、見ていてもおかしくないんだけどね。或いは蝶以外は眼中に入ってなかったのかも。

調べたら、何と頻繁には飛ばずに地面を歩き回ることが多いようだ。おいおいである。お花畑を優雅に飛ぶのを想像してたからガッカリさんだ。しかも地表の地衣類なんかにジッとしてて、保護色になって見分けがつかんらしい。道理で目にしない筈だ。まあ、それでも次回行く事があったら、真面目に探してみよう。

 
【トラガ】

 
そういえば、トラガは台湾で採ったな。
花に吸蜜に来ていた。トラガは昼間に活動する蛾なのだ。
昼行性の蛾はこのように派手な柄のものが多いような気がする。毒のある奴が多いのかな?
とも思ったが、そうでもなさそうだ。毒のある者もいるが、無い者も結構いるみたい。このトラガも調べた限りでは毒持ちではないようだ。考えてみれば、昼間飛んでいる派手めの蝶に毒があるかといえば殆んど無いもんね。日本で毒があるものは、ベニモンアゲハとツマベニチョウくらいしか思い浮かばない。

 
(2017・7月 南投県仁愛郷)

 
(・。・;ん❗❓
よく見りゃ、微妙に全然違うぞ。翅形も違うし、柄も
似てるが仔細に見れば異なる。
あ~、そうだ。これってトラガじゃないや。別種だったよね。忘れてたわ。
たしか、Epistene lectrix(選彩虎夜蛾)って奴だったっけ…。近縁種なのかな❓トラガの学名を調べてみよっと。
あれれ❓、Chelonomorpha japana となっている。属名だって全然違うじゃないか。
どちらもNoctuidae(ヤガ科)・Agaristinae(トラガ亜科)だとは思うんだけど、よくワカンナイや。下手に足突っ込むと、またエライことになりそうなのでスルーしとこっと。

兎に角、本チャンのトラガはまだ見た事がない。いや、見た事はあるかもしれないが、眼中に無しでスルーしてた可能性は高い。何れにせよ、採ったことがないと云うのが現実だ。今年は、ぽいのを見掛けたら採ることにしよう。でも、この柄って気持ち悪いっちゃ、気持ち悪いんだよなあ…。腹が黄色いとか赤いのもゾワつく。

他に本の中で紹介されている日本の蛾は、オオシモフリスズメ、キョウチクトウスズメ、クロメンガタスズメ、ギンモンスズメモドキ、キマエコノハ、ベニモンコノハ、ハグルマヤママユ、エゾヨツメ、ヨナグニサン、イボタガ、サツマニシキ、オキナワルリチラシ、キオビエダシャク、シンジュキノカワガ、ヒトリガ、ジョウザンヒトリ、イチジクヒトリモドキ、シロシタバ、ムラサキシタバ。
思ってた以上に意外とオラ、結構採ってるぞ。

とはいえ、採った事が無いものも多い。
採ってないものは、キマエコノハ、ベニモンコノハ、シンジュキノカワガ、クロメンガタスズメ、キョウチクトウスズメ、ギンモンスズメモドキ、ハグルマヤママユ、ヒトリガ、ジョウザンヒトリ、イチジクヒトリモドキ、ハグルマヨトウかあ…。

 
【キマエコノハ Eudocima salaminia】
(出展『outsvx.com』)

 
画像は岸田さんの本ではなく、他の人のブログから拝借した。
この方の展翅が一番美しくカッコイイからだ。他の蛾の展翅だって美しいしね。文章も好きだから、よく読まさせて戴いている。
そういえば思い出した。ネットでこの画像を見て、初めてキマエコノハの存在を知って、カッケー( ☆∀☆)と思ったんだよね。
あと、この画像を選んだ理由としては、あまり先生の本の画像をお借りすると御迷惑を掛けそうなので、適宜ちょいちょい入れてく事にした(特に出展と記していない画像は『世界の美しい蛾』からの引用)。
載せてないのは、本を買って見てくだされ。

話を本筋に戻す。
見たことない蛾で一番会いたい筆頭は、今のところこの蛾かなあ…。
色も綺麗だし、配色もいい。形もシャープな感じがして好きだ。全体的にエキセントリックというか、攻めたデザインで、巨大化させれば怪獣としても充分通用するだろう。「毒蛾怪獣キーマエコノハー」、結構人気出ると思うよ。あっ、キマエコノハには毒持ちじゃないと筈だけどさ。

分類はヤガ科(Noctuidae)・Eudocima属。
補足として、エグリバ類(Calpinae)ともあった。
アッシは今も蝶屋だし、純粋な意味での蛾屋ではないから、これが何を意味するのかはワカラン。きっと蛾の分類は蝶よりもややこしいんだろなあ。

南方系の種で、日本での分布は主に南西諸島のようだ。しかし最近は地球温暖化に伴って分布を西へ拡大しており、九州や四国、本州西部での記録が増えているようだ。とはいえ、まだ迷蛾の部類で、定着はしていないだろう。国外の分布はインド、南大平洋諸島、オーストラリアなど。

ライトトラップにもパイナップルやバナナなどのフルーツトラップに寄って来るそうだ。沖縄・奄美諸島に行けば何とか会えそうだなあ。でも、出来れば近畿地方で狙って採りたいものだ。

生態面で、ちょっと面白いなあと思ったのはコレ↙

 
(出展『与那国フィールドノート』)

 
昼間は、こんな風に葉っぱに止まってるらしい。
この画像を見て、一瞬何が何だか解らなかったよ。どう見ても、落ちた緑の葉が枯れかけて外側が丸まり始めたようにしか見えない。まるで3D的だまし絵みたいじゃないか。
(´∇`)嗚呼、アナタに騙されてみたい。

 
【ベニモンコノハ Phyllodes consobrinus】

 
分類は(Noctuidae(ヤガ科)・Catocalinae(シタバガ亜科)。あらま、かなりキマエコノハに近いものかと思いきや、案外遠い❓

上翅は地味でどって事ないけど、下翅は美しいね。
日本の国旗、日の丸みたいだと思ってたら、本にも「その紋様から標本商の間では「日の丸」と呼ばれることもある。」と書いてあった。

 
(出展『断虫亭日乗』)

 
(;゜∇゜)ワオッ❗、思ってた以上にデカイね。
デカいのは好きだ。ハンター気質としてはモチベーションが上がる。蝶採りを始めて10年ちょっと、蛾採りを始めて2年だが、基本はミーハーなのでデカくて綺麗くてカッコイイのはシバく意欲が湧く。

生態的にちょっと変わってると思ったのは、ライトトラップには殆んど誘引されないようだ。蛾だからって、何でもかんでも光に集まるワケじゃないんだね。その代わり、パイナップルなどのフルーツトラップにはよく集まるようだ。

岸田さんの解説には、分布はインド、インドネシア、中国南部、日本で、日本のものは小型で別亜種だとあった。しかし文献を漁っていると、基本的には迷蛾で、日本には土着していない可能性が高いとする向きもある。
2011年に奄美大島で纏まって採れたそうだが、二町一成氏他の論文(註2)によると、偶々海外から飛来したものが、その年に二次発生した可能性が高いとある。自分も論文を読んだ限りでは、概ねその論に賛成だ。おそらく中国辺りからの飛来したもので、狙って採れるものではないだろう。その理由は長くなるのでここでは詳しく書かない。知りたい方は註2の論文にアクセスされたし。

ネットサーフィンしてて、ゲッΣ( ̄ロ ̄lll)❗❗
グワッと仰け反り、笑ってもうた。幼虫の姿が、どえりゃーエグいのだ。厳密的にはベニモンコノハそのものではない近縁種のようだが、キマエコノハの幼虫とさして変わらんらしい。

 
(出展『カラパイア』)

 
何とも珍妙な姿に、(;゜∇゜)ハア❓って感じ。
最初はフザけたペリカンかよ❓って思った。どこか漫画っぽい。誰かが考え出した想像上の生き物みたいだ。そういえば、その記事にはポケモンのキャラ的感想が添えてあった。ポケモンに関しては詳しくはないけど、それって解る気がする。グロなんだけど、キモ可愛いところがあるのだ。

疲れてきたので、続きはまた次回。

                      つづく

 
追伸 
以後、不定期にこのシリーズはちょこちょこ書いていく予定です。

 
(註1)世界の美しい蛾

2019年にグラフィック社から出ています。
ジュンク堂など大きな書店に行くと売っとります。

(註2)ベニモンコノハの論文
『2011年 奄美大島にて多数採集されたベニモンコノハ』やどりが 2013 236号

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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