vol.11 シロシタバ act4
『2019さまよえるパンチラ捜索隊』
いつもなら種解説でクロージングして、2019年の事は『続・~』として別項で書くのだが、今回は思うところがあって趣向を変えてみようと思う。2019年の事も組み込む形にして、一つに纏めてみたい。その方が最後の種解説をスムーズに書けるのではないかと考えたのである。
2019年 7月20日
カトカラ1年生だった2018年は、7月半ばからシロシタバを狙って探していたが、場所の選定を誤ってしまった。
らしくない事に、その場所に変に拘ってしまい、諦めて別な場所を探す決断が大幅に遅れてしまった。その為、最初に採集できたのは8月も下旬近くだった。既に採集適期は終わりかけており、個体数は多かったものの翅が擦れ、欠け、ボロの個体ばかりだった。それでも完品の♂♀が採れたから良いようなものの、完全なる作戦ミスだったと言えよう。
今年は同じ轍は二度と踏むまいと肝に銘じていた。だから7月中旬には始動しようと考えていた。しかし、あろうことかニューのカトカラなんぞを見つけてしまった。のちにマホロバキシタバ(註1)と名付けられる日本で32番目となるカトカラである。発見者の一人としては、当然分布調査をせざるおえず、と云うかしたい。そう云うワケで大幅に計画が狂い、シロシタバは後回しにせざるおえないと覚悟していた。
この日も朝から分布調査で、小太郎くん、マオくん、そしてナゼか甲虫界の重鎮である秋田勝己さんも参戦して下さった。それぞれ手分けして分布調査を行ったのだが、そんな折り、奈良市東部の調査を担当していた小太郎くんから、LINEで『こんなん採れましたあー。』と云うメールが画像付きて送られてきた。
(写真提供 小太郎くん)
( ☆∀☆)おー、もう出てるんかあ❗
しかも、型の良さそうなド完品の個体じゃないか。
小太郎くん曰く、杉の木に逆さま(下向き)に止まっていたそうだ。しかも2頭並んで。昼間だから、勿論のこと下翅は開いていなかったそうだ。
クソー、マホロバの調査にも飽きてきたし、うかうかしてらんねーや。
2019年 7月25日
何とか時間を遣り繰りして、やっとこさ5日後に四條畷のポイントを訪れた。出歯亀探偵、始動である。
今回も四條畷お約束の分厚い「フレスコ名物 自家製カツサンド」の画(え)から入る。
もはやコレを買うのはゲンかつぎの儀式みたいなもんである。そうでなくともメチャンコ旨いから絶対買うんだけどもね。
あっ、考えてみれば、ほぼ一年振りの再会じゃないか。q(^-^q)へへへへ、楽しみだな。
えー、味云々は書きまへん。興味のある方は当ブログに『フレスコのカツサンド』と題して書いてあるので、そっちを読んでたもれ。
話には全然関係ないけど、道中なぜか道端にド完品のゴマダラチョウが落ちてた。他で使えそうにない画像だから、勿体ないので無理矢理貼り付けとく。
【ゴマダラチョウ♂】
死んだ直後って感じで、まだ柔らかく、目の色も生きている時そのままの透明感のある黄色だった。ちょっと謎。
話をシロシタバに戻す。
去年はルッキングと樹液のみでの採集だったが、今年は糖蜜トラップを用意した。
甘酸っぱい液を(^.^)/占==3 シュッシュッシューと霧吹きで木の幹なんぞに噴きつけて誘い込み、寄ってきたところをエイやι(`ロ´)ノと手ゴメにしてしまうと云う卑怯千万な作戦である。
卑怯だが、樹液は毎年同じ木から出ているとは限らないのだ。謂わば保険をかけたってワケだ。カトカラ2年生ともなれば、ちぃーとは進化もしているのだ。
真っ暗になってから、その糖蜜トラップに向かってシロシタバが1頭飛んできた。
飛んで来た瞬間は、あまりに馬鹿デカイんで笑ったよ。一年振りだから忘れてたけど、やっぱシロシタバとムラサキシタバは日本のカトカラの中では規格外の大きさだ。
しかし今年最初の1頭目、気合いが入り過ぎてコチラの殺気がメチャンコ出てたのかもしれない。( ̄∇ ̄*)あちゃー、止まらずに慌てて逃げてった。
ふ~ん、なあんだ早い時間帯にもちゃんと甘汁に来るんじゃねえか。去年は一度しか樹液に飛来せず、しかも10時過ぎと云う遅い時間帯だった。だからワケわかんなくなったけど、日没後しばらくしてやって来るなら、他のカトカラ類と同じじゃないか。
逃したのは惜しいが、一つ問題、というか疑問が解決した可能性がある。それだけでも儲けもんだ。気持ちを切り替えよう。そのうちまた飛んで来るじゃろう。それに、どうせそろそろパッカーンと下翅がパンチラになるから見つけるのは簡単ホイホイだもんねー(^^)
そんな感じで、まだこの時点では楽勝気分で余裕ブッこいてた。
しか~し、全然見つかれへーん。仕方なく探す範囲を広げて歩き回るも全然だ、成果なし。
糖蜜トラップに寄って来るのも、キシタバ(C.patala)やマメキシタバ、コシロシタバ、名も知らぬ糞ヤガどものみ。いずれもそこそこの個体数が集まってくるのにも拘わらず、ナゼだかシロシタバだけが姿を見せない。もしかして、さっき糖蜜トラップに寄ってきたのは別に糖蜜に引き寄せられたのではなく、偶然飛んでて、そこに止まりかけただけじゃなかろうか❓また頭の中が(?_?)はてなマークだらけだわさ。
(|| ゜Д゜)次第に焦り始める。或いは、まだ出始めで個体数か少ないのか❓…。
小太郎くんが採った奈良市の場所よりもコッチの方が標高は高い筈だ。その可能性はある。それに今年はチョウの発生が1週間以上も遅れているというではないか。ガだって同じ鱗翅類だ。発生時期が去年とズレていても何らオカシクない。
午後8時半、ようやく山道をフラフラ飛んでいるのを見つけた。
ロケットスタートでダーッシュ💨 タタタタタタッ、走りながら繰り出す。夢想神影流居合🔥陰陽麗斬剣❗ うりゃ💥、マッハで横振りじゃあ❗
おほほ(⌒‐⌒)、ワテの必殺技をナメんなよである。
鮮やかな太刀筋で決まったぜよ。
やっぱシロシタバって、カッケー( ☆∀☆)
嬉しくって、バシャバシャ写真を撮っちまう。
一応、裏面も撮っとこっと。
【裏面】
けれど、後が続かない。
探し回るもパンチラなし。もしかして去年のパンチラ行動は偶然だったのだろうか❓でも偶然が二日も続くかね❓ だいちオッピロゲ状態のは、少なくとも十数頭、下手したら20頭近くは見たぞ。
午後10時過ぎ、帰る間際の時間ギリギリで、やっと糖蜜トラップに1頭が飛来した。最初に来た奴だろうか❓ でも時間が経ってるので分かんない。それにしても、飛来時間が遅いじゃないか。(|| ゜Д゜)えーっ、やっぱりシロシタバは樹液や糖蜜に寄って来るのが遅いのぉー❓ 頭が混乱する。問題、疑問が全然解決してないじゃないか。
でもそれを今考えたところで仕様がない。とにかく採ろう。自分の身長に合わせて糖蜜トラップを噴き付けてあるゆえ、ごっつeasyな高さだ。慎重に毒ビンを被せた。
(^o^)v楽勝でGET。だが浸っているヒマはない。終電の時間を考えて迅速に動く。ここは一刻も早くニべアちゃんを死に至らしめねばならぬ。デカいだけに毒ビンだと死ぬのに時間がかかるのだ。
マッドな注射器💉をすかさずセット。ある程度弱ったところで、毒ビンから取り出し、ブスッ&ブチューとアンモニア液を注射。安楽死させ、ソッコー回収して闇濃い坂道を下った。
翌日、展翅する前に写真を撮っておいた。
日の下で見ると、また感じが違うからだ。
ベルベットのような白い下翅が美しい。
上翅の樹皮についた苔のようなデザインも渋いね。
♂だな。たぶん2頭めに採った方だ。
展翅は、こんな感じ。
【Catocala nivea シロシタバ♂】
カトカラ2年生ともなると、展翅も上手くなってまんがな。一年目みたいに上翅が上がり過ぎていないし、触角も整っとる。カトカラ大明神 石塚先生(註2)の展翅を参考にしたら、格段に上手くなったでごさんすよ。トサカ大明神のカトカラ展翅は世界一とも言われておるのだ。本も貰たし、(^人^)感謝、感謝。
但し、翅のバランスと触角を真っ直ぐするのは参考にはしたけど、触角の角度は先生よりも鋭角にして、下翅をほんの少しだけ下げた。そのまんまのパクリだと芸が無いというのもあるが、元来は蝶屋なので蝶屋的触角バランスの方がカッコイイと思うからだ。賛否はあるだろうが、暫くはこのままのパターンでいく事にした。以下、今年採ったシロシタバの展翅は自分的には完璧に近いかな。
と言いつつも、来年になると去年はまだまだやったなとか宣ってそうだけどさ(笑)。いや、その反対の下手クソに戻ると云うのも有り得るな。だって、そもそも展翅って面倒くさいから嫌いなんだもーん(# ̄З ̄)
もう1頭、最初に採った方が♀だな。
良い♀なのにナゼに裏面❓と思ったら、あとで裏展翅にしてたわ。最初からそのつもりで裏返し写真を撮ったんだね。でもどうして♂ではなく、あまり採れない♀なのだ❓
どうせ何も考えてなかったんだろな。性格がテキトーなのだ。
【裏面展翅♀】
完璧を期す為に、脚までキッチリ揃えてやったぜ。
それにしても裏はダメダメだなあ。全然キレイじゃない。
2019年 8月5日
青春18切符で長野まで遠征した。
まあまあ天才を自負していたが、白馬でボコられ、カトカラ歴の短さと経験値の足りなさを痛感する。関西ではそれなりに結果を出してきてるから、ここまでボコボコの結果は予想外だった。カトカラなんそドヤツでも楽勝で鬼採りじゃいと思ってたけど、ここ信州では気合いとかセンスとか根性では何ともならん事を知る。西とは事情が全然違ってて、オラのスペシャルブレンドの糖蜜が思った程には効かんかったのだ。カトカラの種類や糖蜜のレシピにもよるのだろうが、東日本では糖蜜の効力が西日本よりも低いのかもしれない。
遠征4日目。この日は湿原にいた。
ハンノキが、沢山生えてる。
狙いはミヤマキシタバだったんだけど、それについては後日また改めて書く。
で、シロシタバも1頭だけ糖蜜トラップに来た。コレは全く想定していなかったから、遠目に見て一瞬何じゃらホイ❓と思ったよ。ひと呼吸おいてシロシタバだと分かって、ガッカリしながらぞんざいに採った。やはり東日本のシロシタバは小さい。四條畷のものと比べて断然小振りだったので、あまり心が踊らなかったのだ。なのか、採った時の画像はない。
飛来時間は正確には覚えていないが、遅い時間帯だったことは確かだ。午後10時は確実に過ぎていたと思う。下手したら11時台だったかもしれない。
ミヤマキシタバに集中していたので、この時は気にも止めなかったけど、今思えば飛来時間はやっぱ遅い。そんなワケないと思うのだが、シロシタバは早い時間帯には樹液や糖蜜に飛来せず、遅い時間に現れる説がドンドン補完されていくじゃないか。
一応、その時に採った個体の展翅画像を添付しておこう。
♀だったんだね。全然、記憶にないや。
にしても、キレイな個体だね。展翅もバッチリだしさ。
2019年 8月11日
今日もゆくゆく、パンチラ捜索隊。再び、四條畷のポイントに立つ。
前回、結局採れたのは糖蜜トラップに来たのと空中シバキの2頭だけ。シロシタバは、夜になると下翅をオープンにするという生態的特徴を証明できなかった。
去年、偉そうに周りに吹聴していただけに、このままだと狼少年のレッテルを貼られかねない。それは何としてでも避けたいところだ。とにかく歩き回って出来るだけ多くの個体を見て、正しいか間違っているかの答えを出したい。白黒ハッキリと片をつけたいのだ。もし間違いだったら、素直に謝れぱいい。いずれにせよ、その為には事実を積み重ねてゆくしかない。
そうは言いながらも、気持ち的には楽勝気分である。日付的に今日なら大丈夫だろう。最盛期な筈だから、去年みたいにそこそこの数は見られる筈だ。今日一日で一挙に問題解決といこうじゃないか。
しかれども、今日も状況は芳しくない。日没からだいぶ経ってるのに、まだ1頭も見ないでいる。
\(◎o◎)/どゆ事~❓ワケがワカンナイじゃないか。まさか空中から農薬とか撒いたんじゃねぇだろなー。
午後9時半。やっと最初の1頭が糖蜜トラップにやって来た。
やっぱ、飛来時刻は遅めだなあ。日没前から糖蜜を撒き散らしているのに、早い時間帯には1頭も来なかったもんなあ…。って事は、益々樹液や糖蜜にやって来る時間は遅めという説が濃厚になってくる。
う~ん、本当にそうなのかなあ…。でも結論づけるのには、まだ早すぎるような気がする。たまたま偶然が重なっただけなんじゃないかと、まだまだ疑ってる。
(^o^)v楽勝でget。このままだと Null(ヌル(註3))になりかねなかったから嬉しくなくはないが、捜してるのはパンチラさんなのだ。ややガッカリ( ´△`)
ありゃ❗、鮮度は悪くないものの、左下翅が少し欠けとる。そろそろ傷み始めの個体が出てきたって事か…。その割りには個体数が少ないよなあ。
少しホッとして、さあここからだと歩き始めた矢先だった。懐中電灯の光が何か白いものを捉えたような気がした。慌てて照準を合わせ直す。距離は約15メートル。なんちゃって千里眼を持つ男だ。ハッキリ見える。間違いない、シロシタバだ❗
\(^o^)/💥パッカーン、おっぴろげジャ━━ンプ❗
( ☆∀☆)フォンテ~~ヌ❤💕 ようやくパンチラ個体を見つけたよ。
あっ、書いてて今、おっぴろげなんて言葉を使うようになった原典が解ったよ。たぶん、っていうか絶対に永井豪の漫画『けっこう仮面(註4)』の影響を受けている事は間違いあるまい。このマンガ、女子から見ればサイテーのエロ漫画である。しかも少年誌の月刊ジャンプに連載されていた筈だ。ジャーンプ!で少年ジャンプを思い出して、芋づる式に記憶が甦った。
笑けるほど下品でバカバカしい漫画で。必殺技のおっぴろげジャンプなんぞは、その極みだもんね。嗚呼、オラもおっぴろげジャンプ喰らいてぇー。悶絶、気絶(◎-◎;)してぇー。だって世の中に、あんなに男子にとって嬉しい必殺技は他にないもんね。
でも現在の社会状況ならば、コンプライアンス的に大問題だろなー。今の世の中、何でもかんでも規制するって感じだもんな。ホント、ツマンねぇ世の中になったよ。清濁、両方相俟ってのメディアが正常だと思うんだけどね。嘘の上に乗っかった清廉などクソ喰らえだ。わしゃ、エログロ復権を断固望むι(`ロ´)ノ❗
めんご、めんご。こう云うどうでもいいような脱線が話を長くしちゃうんだわさ。本編に帰ろう。
慎重に距離を詰める。
腰の辺りと高さは低い。見覚えのある木だ。この木の前は何度も通っている。だから樹液が出ていない事は知ってる。だいち細い。こんな若い木から樹液は滅多な事では出ない。それに、そもそも木の種類が樹液が出るような木ではない。明らかに照葉樹だ。しかも樹液が出るカシ類ではない。
逃げる素振りはない。更に間隔を詰めて確認すると、吸汁のためのストロー(口吻)は出していない。微動だにせず、静止している。つまり樹液を吸っていないのにも拘わらず、下翅を開いていらっしゃるのだ。
となれば、証拠写真をフライデーする絶好のチャンスである。そっと至近距離まで近寄り、スマホを構えて💥パシャ。💥バシャ💥バシャ💥バシャ💥バシャ💥パシャ…。気分は連写で撮ってるエロエロカメラ小僧だ。拙者、接写で撮りまくっておりまする。
やっぱ、夜は羽開いてるのが普通なんじゃねぇか。
兎にも角にも、これで証拠写真は撮れた。取り敢えずは一安心だ。
♂っぽいね。でも上翅が完全に破れてんなあ。やっぱ、いよいよシーズンも終わりかけって事なのか…。
この日は、コレで終了。
参ったなあ。どうも上手くいかないや。長野では後半持ち直したものの、らしくない絶不調っぷりだったし、秋田さんの言うようにマホロバキシタバの発見で運を使い果たしたのかもなあ…。岸田先生まで、そんなこと言ってたしなあ。この俺様に限って、んなワケあるかいと思ってたけど、何だか段々そんな気になってきたよ。
因みに、この日採ったのは最初の翅が少し欠けていた個体1頭のみ。展翅はしていない。フォトジェニック、2頭めの完全に羽が破れてたのはスルーした。
2019年 8月24日
パンチラの証拠写真はおさえたとはいえ、まだたったの1頭だ。これでは夜間パンチラを証明するのには、まだ弱い。もっと証拠写真を撮影しといた方が良いだろうと考え、またもや四條畷に出掛けた。
しかし、今宵も中々姿を現さない。パンチラ捜索隊の前途に暗雲が垂れ込める。
まあ、そのうち会えるだろうと思ってたけど、無常にも時間は刻一刻と削られてゆく。時間と共に焦りが増大する。いったい何が起きているのだ❓ワケ、ワカメーやんかあ(T△T)
れれれー(@_@;)、あろうことか、10時になっても1頭も見ずやんけー。この流れだと、ゼロで終わりかねない。出歯亀探偵、窮地に陥る。
去年は多産地だと思ってたけど、考え直さなくてはならぬ。たまたま去年の発生が多かったのかなあ❓これが常態なの❓それとも今年が特別少ないの❓
どちらにせよ、今のところ現実の成果はゼロだ。このままでは帰れない。終電にあう間に合うギリギリまで粘ることにした。最悪の場合、走って山を下りればいい。
(-“”-;)いない…。
フォースの暗黒面に陥りそうな気分だった。
👿自然破壊魔王、その辺の枝を叩き折りまくりたい衝動に駆られる。そこを何とか踏み堪えて、夜の道を足早に歩く。顔がどんどん歪んでゆくのが自分でもわかる。マジ卍~、ホンマに今年の運を使い果たしてしまったのかもしれない。
(´д`|||)脱力。諦めかけて帰ろうとした10時半。
ぶわ~ん❗と、浮き上がるかのように突然白いものが目の中にジワリと飛び込んできた。ぼやけていた焦点が、ゆっくりと合い始める。
そこには、懐中電灯の光にピン・スポットで照らし出された、白き女王の姿が在(あ)った。
シャーι(`ロ´)ノ、やっと1頭めっけー。
しかも、大サービスでおっぴろげてくれている。
これで夜は下翅を広げて止まっていることを完全に証明できるんじゃないかなと思った。止まっているのは杉の木だから、絶対に樹液に来た個体ではないからだ。
しかしパンチラ写真は撮らなかった。と云うか、撮れなかった。静止している場所が高くて撮影するのには無理があったのだ。遠目でもいいから撮ろうかと思った。けれど、暗すぎてフラッシュを焚いても映らない可能性が高い。それに帰る時間も差し迫っていた。アレやコレやと考えているヒマは無い。直ぐに諦め、ソッコーでネットインして、ソッコーでアンモニア注射を打って〆る。
一応、写真を撮り、慌ててブツを回収して真っ暗な坂道を走るようにして下った。
今日は暗闇が全然恐くなかった。👻お化けも魑魅魍魎も恐くなかった。そんな事よりもコケたりして大ケガする事の方が余程恐かったから、そっちに集中してて、それどころではなかったのだ。慎重を期しつつも、大胆に駆け降りる。
🎊パンパカパーン\(^o^)/、最速記録更新~。
結局、何事もなく山を降り、終電にも間に合った。
けんど、あんなに苦労して持ち帰った1頭がコレ↙。
採った時は完品だと思ったが、左下翅に何か変な2本の線が入っとるぅー(T△T)
一瞬、変異個体かと思ったが、たぶん単なる傷だろう。それに右の触角も折れとるぅ~(ToT)
とにかく、これでシロシタバは夜になると樹液などに吸汁に来なくとも下翅を開くという事をある程度は証明できたかと思う。少なくとも此処ではそうだ。今年も翅を閉じているものは1頭も見ていないのだ。去年と二年連続だし、両年合わせれば相当数のパンチラ個体を見ている。どう考えても、一過性のものではないだろう。
そういえば、樹液に飛来した個体を1頭たりとも見ていない。あてにしていた木からは、ちゃんと今年も樹液は出ていて、他の種類のカトカラは変わらず集まって来てたのにね。コレまた謎のままだ。
前述したが、それにしても、もう8月も終わりだというのに、極めて個体数が少ない。今年は何処へ行ってもチョウが少ないと嘆く御仁も多いようだから、ガも少ないのかもしれない。それとも、たまたま去年は発生数が多かったって事なのかな❓
でも、真相は来年にならないと分からないや。それにパンチラ問題の調査もまだ充分とは言えないし、此処には又来るっきゃないな。とはいえ、こんなに個体数が少なければ今年はもうダメだろう。来年、また来ることにしよう。
2019年 9月2日
再び旅に出た。
今回も青春18切符の旅だ。
しかし、今回はパンチラ捜索隊の任務ではない。
夕方、岐阜県・平湯温泉に到着。
いつもの宿で温泉に入って、キンキンに冷えたビールを飲んでから出陣。
探すはエゾベニシタバ、目指すは白谷方面。
しかし、真っ暗けー。
ここには妖精クモマツマキチョウを採りに何度か訪れているが、夜はこんなにも真っ暗だなんて予想だにしていなかったよ。
【クモマツマキチョウ(雲間褄黄蝶)♂】
【裏面】
(2019.5.26 岐阜県高山市新穂高)
【展翅画像】
そういえば思い出した。白谷では、そのクモツキ採りの時に熊の親子連れを見てるわ。此処には、確実に森のくまさんがいるのである。
真っ暗だし、熊は黒い。背後から襲われでもしたら、お手上げだ。((((;゜Д゜)))ブルッとくる。
🎵ラララ…星き~れい~、とか何とか口に出して歌ってはみるが、恐い。マジ卍で熊も闇も恐い。
幸い❓なことに川沿いの道にトラップを噴きつけるのに適した木がないので撤退。温泉の反対側に行くことにした。
その時に採れたシロシタバがコレ。
写真は二枚だが、同じ個体である。
キレイな個体だ。四條畷では傷み始めたものが多かったけど、コチラでは9月に入ってもまだまだキレイなんだね。やはり西日本よりも発生が遅いのかな❓それとも、どこかに書いてあったように、この辺では夏眠するからなのかな❓
比較的早い時間帯に採れた記憶があるが、それでも9時は軽く過ぎていたと思う。あっ、写真があるから撮影時刻のデータが拾えるか…。
(|| ゜Д゜)ゲッ、確認したら、午後11時09分になってた。どんだけワシの記憶ってエエ加減やねん。
あっ!、これも又もや遅い時間の飛来である。コレだけ糖蜜への飛来時間が遅い例ばかりだと、そんなワケないと思ってたけど、考え直さざるおえない。でもなあ…、そんなカトカラっているのかね❓ 何で遅くにやって来る意味もワカンないしさ。
この日は、この1頭のみ。勿論、糖蜜に来ていたから下翅は開いていらっしゃった。
♀である。
そして、これが今年最後のシロシタバとなった。
つづく
追伸
結局、パンチラ問題の証明はある程度は出来たが、まだまだ不充分ではある。引き続き来年も、この件に関しては観察を継続していこうと思う。
その流れで思ったのだが、誤解を怖れずに言う。
蛾屋って、ライト・トラップに頼り過ぎてないかい❓
それで多くの蛾は採集できるかもしれないけど、それだけでは本当の生態は分からない。
真正の蛾屋でもない自分がこう云う事を言うと、激怒される方もいらっしゃると思うが、それって採集方法が片寄ってないか❓ ライト・トラップ自体を否定するつもりは毛頭ないけれど、ターゲットの蛾をライト・トラップで採ると、それだけで満足してしてしまう人が多いのではないかと疑っている。採れたからと、それ以上の生態的興味を失ってしまってないか❓ 勿論、そうでない方も沢山いるだろうけど、どうもそういう気がしてならない。とにかく灯火採集で解るのは生態の極く僅かな一面に過ぎない。もっと自然な状態での生態を観察しなければ、本質は何も見えてこないんじゃないかと思う。各種蛾の生態解明があまり進んでいない原因の一つは、採集をライト・トラップに頼り過ぎているからなのではなかろうか。
つまり、ライト・トラップだけに頼らず、もっと他の方法でも採集、生態観察をする努力をすべきではないかと思うのである。長々とこのシリーズを書いてきた理由の一つは、これが言いたいが為の布石だったとも言える。
図鑑の記述を丸呑みせず、わからない事や疑問があれば積極的に自分で調べる姿勢が必要ではないだろうか。
チョウと比べて、ガには解明されていない事が多い。新たな発見は、まだまだあるだろう。そこにこそ面白味がある。愛好家が生態解明を争うような時代になるように、もっとベテランの人たちの啓蒙活動も必要ではなかろうか。そうなれば、新たに蛾に興味を持つ人の裾野も広がりはしまいか。
今ひとつ上手く言えてないが、言いたい事の根幹はそういうことだ。
追伸の追伸
最後の一文は叱られそうだなあ…。まっ、いっか。
叱られるのは構わないが、怒らずにこのシロシタバのパンチラ生態を他の場所でも観察、証明して欲しい。勿論、間違っている事の逆証明でも大歓迎だ。それが不遜、わたくしの願いです。
今回の小タイトルは単なる思いつき。
だから一人でも捜索隊でいいのだぁー。あんましっていうか、全然理屈になってないけど…。
でも、2回も連続でタイトルにパンチラって付けたら、けしからんと思う人もいるんだろなあ…。
もう一言つけ加えておくと、小タイトルは別なものも考えていた。カッコつけた『天鵞絨の~(何ちゃらかんちゃら)』だ。『天鵞絨(びろうど)の刻印』とかさ。けれども、どうしても捜索隊を付けたかったのだ。かといって『天鵞絨捜索隊』じゃあ、漢字だらけでヨロシクないものね。中国のバードウオッチングの団体とか中国雑伎団の名前みたいで、ヤ。
当初は本文に種解説を加えて、今回で最終回にしようと考えてた。けんど、また要らぬ事を沢山書いて長くなってしまい、早々と断念。
(^_^ゞ次は必ずやクロージングしまーす。
(註1)マホロバキシタバ
2019年7月に奈良県で見つかった新しいカトカラ。
学名 Catocala naganoi mahoroba。惜しくも新種とはならず、新亜種となった。とはいえ、現在のところ分布が確認されているのは、台湾と日本の奈良県の一部のみ。
詳細は「月刊むし」の2019年10月号(No.584)に掲載されてありますので、そちらを読んで下され。
(註2)石塚先生
カトカラの世界的研究者である石塚勝己氏のこと。
著書『世界のカトカラ』には美しい展翅標本が並んでいる。それを参考にしたでごわす。
トサカ大明神と、うっかり言ってしまったのはモヒカン頭だから。まだお会いしたことはないけれど、嘘かと思ってたら本当らしい。ファンキー・モスラ・ジジイとは、めちゃめちゃカッコ良すぎるぜd=(^o^)=b
(註3)ヌル(Null)
ドイツ語で、Nullは数値の0(ゼロ)を意味し、発音は /nʊl/である。一方、英語においてNullは/nal/と発音される。日本においては「ヌル」という発音が定着しているが、英語読みに近い「ナル」という発音で呼ばれる場合もあるようだ。
初めてこの言葉を蝶屋の先輩達から聞いた時には、意味がワカンナイだけでなく、にゅるっとした感じで何か気持ち悪い言葉だなと思った。しかもダサい。カッコつけたい人が使いだしたのだろうが、カッコつけといてダサいって、どーよ(# ̄З ̄)❓せめてスペイン語のNada(ナーダ)とかにしろよなー。意味は英語でいうところの、nothingにあたり、無し、ゼロってこと。また「虚無」と云う意味でも頻繁に使用されてるようだ。採集しに行って、一つも採れない時などは、まさしく心は虚無。こっちの方が断然良いと思うんだけどね。蝶屋のあいだで流行らしたろかしら(笑)
そう云うワケで、ヌルという言葉は普段は使わない。基本的には、釣りでお馴染みの「ボウズ」を使ってる。
(註4)けっこう仮面
ダウンロードした画像を添付しようとしたら、seacretほにゃららみたいな英語の表示が出て不可能でおました。こりゃ、おっぴろげジャンプの画像なんて載せようものなら、何らかのベナルティーを受けかねないな。どうしても見たい人は、ネットで検索しましょうね。