深夜にキンキの刺身

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箕面公園に春の三大蛾(註1)を探しに行ったおり、偶然カッちゃんに会った。
で、車で送ってもらう事になったのだが、あの男のオネエ言葉が伝染(うつ)ってワケわかんない変なノリになってまっただすよ。
そのせいなのか、ナゼか超怖がりやの二人が心霊スポットでもある妙見山の山頂に行くことになってしまった。もう或る意味ムチャクチャで、それはそれで面白かったのだが、二人の名誉を傷つけることになりかねないので今回は内容を割愛させて戴く。

で、結局大阪まで戻ってきたら、丑三つ刻の午前2時半になってまっただ。別れた後、ついその足で24時間営業のスーパーに寄ってみた。したら、高級魚キンキの刺身だけが唯一ポツンと売れ残っていた。
その売れ残り方が何だか不自然だった。そのスペースには刺身だけでなく切身とかも含めて他に一切の魚が無かったのだ。違和感を抱きつつ視線をもう一度キンキの刺身パックを戻したら、あれ⁉️と思った。位置がさっきと少し変わっているような気がしたのだ。目の錯覚か?…。まさかキンキの刺身が自らの意志で動くことなどあるまいて…(-_-;)

ここから「深夜に禁忌の刺身」と云う、深夜に絶対に食べてはいけない世にもオゾましい刺身の奇妙奇天烈な話が始まると思ったアナタ。

 
(ㆁωㆁ)ウソでぇーす❗

  
(≧▽≦)ハハハ、タイトルだけ見て今回は『深夜に禁忌の刺身』と云うホラーとか怪奇モノの話だと想像した人はゴメンナサイなのだ。但し、動いたと云うのだけが嘘で、他は一切ウソを吐(つ)いてはいない。時間も売れ残っている様も本当の事だった。

スマン、スマン。ここからマジメに本編を書きます。

そのキンキの刺身、しかも値段は340円と激安価格に値下げされていた。何故にキミのような器量良しが売れ残るのだ❓
たぶん一般ピーポーの大半は、この魚の美味さを知らないのであろう。高級魚で値段が高いと云うのもあろうが、思うに世の中、保守的な人が多いんだろね。そういえば、或る居酒屋の店主も言ってたなあ。耳馴れない名前の魚は、皆さんあまり注文しないって。どんな魚なのか尋ねる人さえ殆んどいないそうだ。
きっと、たのんで失敗するのがイヤなんだろね。
キミたちには好奇心とかチャレンジ精神と云うものが無いのかね❓ツマンナイ奴らだ。
とは言っても、無知で好奇心もチャレンジ精神もない人ばかりな御陰で、こうして旨い魚が安く手に入るのだから文句は言えまい。お願いだから、アンタたちゃ一生チマチマとそうしてなさい。

早速、皿に盛り付ける。

キンメダイと同じく、赤くて目が大きい。そして眼が澄んでいて、性格良さそうだ。キンメとキンキは魚業界では1、2位を争う正直者の良い奴に違いない。もし魚に生まれ変わったとしたら、キンキくんとキンメくんとは仲良くなりたいね。楽しいフイッシュ・ライフを送れそうだ。

因みに、世の中にはキンキとキンメダイを混同している人や同類と思ってる人が結構多いらしい。だが、2つは分類学的には仲間ではない。両者ともども深海魚ではあるが、キンキはカサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科(あるいはメバル科)に属するが、キンメダイはキンメダイ目キンメダイ科に属する。科レベルならまだしも「目(もく)」まで違うとあらば、相当縁戚関係は遠い。完全なる他人の空似だ。

 

 
先ずは塩とレモンとで食す。
噛んでるうちに奥から甘みと旨みが溢れ出してくる。

お次は醤油で。
コレはコレで醤油の旨みが加わって旨い。

しかしながら、魚体が小さいので期待を上回るものではなかった。キンキはデカイ方が断然旨いのである。

おっと、大事なことを書き忘れておった。
キンキと呼んでるけど、正式名称はキチジ(喜知次、吉次、黄血魚)です。
コレは漁獲高の多い北海道でキンキの名で広く流通しているからだろう。それが全国に伝播したと云うワケやね。謂わば、ノドグロと同じパターンだ。ノドグロも正式名称はアカムツなんだけど、漁獲高のある島根県とか北陸ではノドグロと呼ぶから、ソチラの方が有名になった。

キンキでちょっと驚いのは、その分布。駿河湾以北からオホーツク海、ベーリング海に見られ、日本海側には分布しないんだそうな。これは意外だった。ナゼに日本海にはいないんだろね❓ 蝶や蛾の話じゃないから、理由は掘り下げないけどさ。一般ピーポーにアホと思われるのは構わないが、虫屋にアホと思われるのは許せないのだ。

主に深海200~500mに生息し、そこで海老類を中心にエサを食ってはるそうだ。魚体が赤いのは、この海老に含まれるアスタキサンチンという色素によるものである。天然の真鯛が赤いのも海老を食ってるからだと言われちょります。海老を食ってる魚介類は美味いのだ。納得だよ。

旬は秋から冬とされるが、夏場に食っても遜色はさほど感じない。つまりは通年に渡って美味なる魚だと言えよう。

捨てるのも勿体ないので、頭は火を入れることにした。
煮付けにするか、酒蒸しにするか迷ったが、煮付けを選択。

 

 
甘ったるくはしたくなかったので、砂糖は入れずに出汁と酒のみで上品に仕上げて、木の芽を飾って完成。

w(°o°)wハッ❗
一口食って、今更ながらに思い出す。
キンキは刺し身よか、火を入れた方が圧倒的に美味い❗❗
脂は乗っているのだが、マグロの脂のようにベタベタといつまでも口に残らなくて、スッと消える。しつこくないのだ。謂わば、キレのいい上品な脂なのだ。刺し身なんぞで喜んでた己の愚かさに臍(ほぞ)を噛む。
返す返すもキンしゃぶ、すなわちキンキしゃぶしゃぶにすべきであった。深夜にて、脳ミソが回っていなかったとはいえ、断腸の思いだ。

ふと思う。
それにしても、深夜にこんな事でブツブツ言ってるワシって、何なんだ❓どうみても変人だな…。何だか自分でも笑えてきたよ。
たぶん、変な人カッちゃんのせいだ。
そうゆうことにしておこう。

                        おしまい

 
追伸
とはいえ、カッちゃんのお陰で、安くキンメが食えたのだ。変態さんに感謝なのだ。

この文章は、ちょっと前にバアーッと一気に書いたもので、記事をアップするのを忘れてた。日付を確認すると、4月4日になっていた。
世間のコロナ騒動振りに、何となくお蔵入りにしようかと思ったが、せっかく書いたことだしアップすることにした。

 
(註1)春の三大蛾
オオシモフリスズメ、エゾヨツメ、イボタガのこと。
拙ブログに『2017年 春の三大蛾祭』と『2018年 春の三大蛾祭』と題したシリーズ連載文があります。宜しければソチラも読んで下され。そっちはホンマのホラー仕立てになっておりまする。特に2017年版の方ね。

 
【オオシモフリスズメ】

(2018.4月 兵庫県宝塚市武田尾)

 
もう形からして禍々しい。オマケにデカイわ、脚に鋭い棘と云う凶器を持ち合わせている。尻を持ち上げる威嚇姿もオドロオドロしい。しかも鳴きよる。でも、慣れたらあまりにも邪悪を具現化しているのに鈍臭いので、段々可愛くなってくる。

 
【エゾヨツメ】

(2018.4月 大阪府箕面市)

 
春の蛾のマドンナだろう。
フォルムも優美だが、何といっても深淵のブルーアイズが美しい。

 
【イボタガ】

(2018.4月 兵庫県宝塚市武田尾)

 
その唯一無二の洒落たデザインには感服する。自然の造形物の中で、これほど洗練されたものはそうはないだろう。

 

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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