Floating in the blue〜青にゆらめく〜

 
今、書いている途中の『青春18切符oneday‐trip 春』の第一章 第5話にスキューバ・ダイビングを始めた頃の写真を使おうと思って探した。

しかし、結局その時代の写真は見つからず、代わりにダイビング・インストラクター時代の面白い写真が出てきた。

 

 
まるで空に浮かんでいるかのようである。

これは下が白い砂地になっているから、こう云う風に写るのだろう。白い雲のようなものは特定できないけど水中の陽だまりかな? それとも何らかの理由でそこだけ砂が白いのかもしれない。
でも当てずっぽうで言ってるだけで、写真を撮った本人の橋本ミホに訊かないと本当のところは分からない。

場所は石垣島か波照間島だったと思う。下が白い砂地で比較的浅瀬のようだから、波照間かな❓
波照間島の海はウルトラスーパーブルーで、港のすぐ横でも透明度が半端ない。世界各地の色んな海に潜ってきたけれど、一番綺麗な海は何処か?と問われれば、この波照間か奄美大島の南部、加計呂麻島の外洋と答えるだろう。それくらい美しい。上記の他にも慶良間諸島、与那国島、久米島、南大東島の海もメチャメチャ青かったけど、波照間と加計呂麻が群を抜いて透きとおっていた。
有名海外リゾートの海は美しいが、日本の海だって世界的にみてもトップクラスに美しいのだ。南西諸島だけに限らず、日本海や北海道の海も美しい。多くの日本人は意外とそのことを知らない。グレートバリアリーフやサイパン、地中海、インドネシアの海にも負けてないのに、日本の海が世界よりも劣っていると勝手に思い込んでいるのである。奥ゆかしいと言われればそれまでだが、日本人は自国の海の美しさをもっと誇るべきだと思う。

画像が暗いので、もう少し明るくしてみよう。

 

 
我ながら、足が長いなあ(笑)。
しかも、上めから撮っててこれだけ長く見えるもんね。
自慢じゃないが手足は長い。昔はカゲで「生意気手長猿」と揶揄されていたくらいなのさ。だからチビだけど速い球が投げられた。高ニで最速135kmが投げられたからね。あっ、腕の長さはスピードにはそれほど関係ないか…。

言っとくけど、腕を組んでいるのはべつにカッコつけているからではない。単に寒いからである。インストラクターともなると、水中で殆んど体力を使わないから寒いのだ。

因みにこの状態は水中でタテにピタリと止まっているのだが、フィンは一切動かしていない。プロは足で水をかかずとも、こうしてホバリングすることができるのである。
この縦に微動だにせず停止するのが中性浮力の究極系である。例えば10円玉を水に沈めるのを想像してみてほしい。10円玉を横にして沈めるのと縦にして沈めるのとでは全く落ちるスピードが違うことは容易に理解できよう。付け加えておくと、お望みとあれば、Floting zazenman 水中浮遊の座禅だって組めた。たまにブリーフィングで「もし貴方たちの日頃の行いが良く、運も良ければ、もしかしたら水中で仏に会えるやもしれません。その時は拝むように。」と言っといたら、拝んでる人、結構いたなあ…。もう教祖様みたいなもんなんである。

ダイビングをやったことがない人もいると思われるので、ここで中性浮力について簡単に説明しておくと、浮きも沈みもしない状態のことをいう。つまりウエイト(重り)など重力で下に引っ張られることもなく、空気による浮力で上に引っ張られているワケでもない両者のバランスが完璧に保たれている状態だ。だから抵抗が無い分、フィンを軽く漕いだだけでもスウーッと前へ進む。あまり力が要らないのだ。初心者ダイバーは、この中性浮力を取れておらず、大概はオーバーウエイトで潜らされる。クソみたいなやり方だが、その方がガイドやインストラクターにとっては管理しやすいからだ。ゆえに初心者ダイバーは下に働く重力に抗って必死になってフィンを動かして進まねばならないのである。謂わば飛行機が落ちない原理と同じだ。飛行機は速いスピードで飛び続けることによって落ちないのである。下から引っ張られてる状態なのに前へ泳ぐって、そんなのしんどいに決まっているのだ。だから折角ライセンスを取ってもやめてしまう人も多い。ウエイトを減らすことをシッカリ教えないダイビングショップはクソだ。

ここまで説明したら、もう少し詳しく書いておこう。さっきタテに止まって水中で微動だにしないと書いたが、実際は数センチから数10センチ単位の上下動はある。見た目には殆んど分かんないけどね。
極意は肺で空気の量を調節しているからだ。種を明かすと、息を吐くと空気が減るので沈みがちになる。反対に息を吸うと浮力が生まれる。但し、水中では数秒のタイムラグがある。簡単に言うと、息を吐き切っても直ぐに沈まないし、息を胸いっぱいに吸っても直ぐには浮かばないと云うことだ。このタイムラグを利用して沈み始める直前に息を吸い始め、浮き始める前に息をゆっくりと吐き始めるのだ。
補足すると、コレは水深にもよるからBCジャケットの助けも借りねばならない。アルキメデスの原理ですな。深く潜れば潜るほど浮力は失われるからね。微調整が必要って事ね。勿論、これらはウエイトを減らしてこその話だ。BCは必要だが、出来るだけ自分の肺でコントロールした方が実感があって楽だからね。

冒頭で「まるで空に浮かんでいるかのようである。」と書いたが、それゆえ中性浮力が完璧に取れていれば、本当に空に浮かんでいるかのような感覚を味わうことができる。宇宙遊泳と言い換えてもよい。今は行われているかどうかワカンナイけど、昔の宇宙飛行士の訓練にはダイビングが必須項目だったらしいからね。感覚的には、無重力にかなり近いんだろう。

水深3M〜5Mの中層でこうして浮かんでいるのが、とても好きだった。青に包まれ、水の流れに任せて揺らめいていると身も心もするすると解(ほど)けてゆく。そして光の束が波に翻弄され、目まぐるしく形を変える様をぼおーっと眺める。それを見てると、いま自分が神々の世界にいるのではないかとさえ思えてくる。天国って、こんな感じかなあと思うのである。

鳥瞰。また体を横にすると鳥の視線も得られるから、空を飛んでいる気分にもなれる。まるで鷹や鷲が上昇気流に乗って辺りを睥睨するかのような王者の気分も味わえるのだ。

 

(出典『マリンダイビング・ウエブ』)

 
潮の流れがある時などは本当に飛んでるみたいだ。しかも、羽ばたかずともいい。

まだダイビングをやった事がない人は、ぜひチャレンジしてみてほしい。世界観が変わるかもしんないよ。

                        おしまい

 
追伸
但し、このタテに完璧に静止できるのはスチールタンクでの話である。アルミタンクだと、段々後ろに倒れてゆく。なぜなら、スチールタンクよりもアルミタンクの方が長いからだ。つまり、両者の重心が違うのである。