食材チャレンジャー、イガがゆく①丸蟹


スーパー玉出に行ったら、見たこともないカニが1パックだけ売っていた。
値段は¥298。食材チャレンジャーとしては当然買いである。



世の中、食に関しては保守的だ。世の主婦たちは見たこともない食材は、たいがい敬遠する。新しい食材に挑むチャレンジャーは少ないのだ。食べ方とか調理法もワカンないしね。それも解らないでもない。
だから、そうゆう変わったものは売れ残ることが多い。よって漁師や店側も安い値段をつけがちである。安けりゃ、ダメ元で買う人も少しはいるだろうって算段だね。高くてマズけりゃ、誰だって立腹するが、安ければ諦めもつくってもんだ。クレームも少ないだろう。その辺をちゃんと計算してるんだね。
つまり、そうゆう保守的な人が多数派だから、お陰様でコチラは恩恵を享けていると云うワケである。ガキの頃から常に保守的な考えは唾棄すべきものと思ってきたが、食に関してはその方が有り難い。世の中、そこんところはおおいに保守的でよござんす。皆さん、一生食い慣れたものを食うてなはれ。
だって美味しいとわかれば、途端に人は堰を切ったように買い始め、あっという間に値も跳ね上がるのである。今やこれは国内のみならず、外国の市場とも絡んでいる。カッコつけて言えば、グローバル経済なのだ。グローバル経済なんて言葉、使ったことないから、何か賢くなった気分だじょ<( ̄︶ ̄)>
例えば、ご近所の自分勝手で謝らない彼の国が格好な例だ。その国の民が大挙してやって来て、多くの人が日本の美味いもんを知る事となった。その恩恵を享けている人も多いけれど、言ってしまおう。
秋刀魚の漁獲量が激減したのは、その彼の国が原因だ。エチケット知らずで、我がの事しか考えない無礼者が多いという国民性だから、サンマが北上する前にゴッソリ獲っていってしまうのである。原因はそれだけではないにせよ、それが大きな理由になっていることは間違いなかろう。このそもそもの出発点は何かと言うと、ようは日本を訪れた多くの観光客がサンマの味を覚えて帰るからだ。その人たちが自国でも食べたいから、大きな需要があるのである。彼の国の欲望、恐るべしだな。
余談だが、台湾国内でも同じ理由でサンマが大ブームになったらしい。ゲストハウス埔里のナベさんが、そう言ってた。台湾は好きだけど、それはちょっとなあ…とは思う。けど、そんな手前の海域で獲れるサンマは脂が乗ってなくて旨くないから、直ぐにブームは去ったみたいだけどね。

(-_-;)しまった。のっけからの大脱線である。話を本筋に戻そう。

帰って改めてパックの表示を見ると「福島県産 まるカニ」と書いてある。
でも、これはマイナーな地方名の可能性もある。日本の魚介類は地方名が多くてワケワカランことになっとるのだ。
早速、『ぼうずコンニャクの魚貝類図鑑』でググってみる。このサイトにはいつも御世話になっている。ワケのわからぬ食用魚介類の正体を知るには、このサイトが圧倒的に便利で優れておるのじゃよ。

とは言いつつも、探すのにそこそこ苦労するだろと思ってた。しかし、一発でヒットした。流石、ぼうずコンニャク先生である。




(出典『ぼうずコンニャクの魚貝類図鑑』)

間違いないね。コヤツだわさ。
背中に特徴的なH型の紋があるし、一番下の脚の色も同じような紫色だ。
画像の下の解説にも「甲幅10cm前後になる。甲は丸みを帯び、背中にH型の白いくぼみがある。」と書いてるし、大きさ的にもそんなもんだからビンゴだろう。

どうやら正式名称はヒラツメガニ(平爪蟹)というらしい。
評価は以下の通りになっていた。

魚貝の物知り度  ★★★★
味の評価度    ★★★★ 非常に美味

5つ星が満点である。ちなみに一番上の「魚貝の物知り度」とは、知っていたら達人級度である。つまりレア度を表している。ようするにマルガニを知ってたら、アンタはんは達人級レベルでっせ。そゆ事なのだ。
ともあれ非常に美味とあるから、期待値が⤴️急上昇だべさ。

以下、『ぼうずコンニャクの魚貝類図鑑』とWikipediaを組み合わせて要約、解説していこう。

【分類】
節足動物門
甲殻上綱軟甲綱(エビ綱)真軟綱亜綱(エビ亜綱)
エビ上目十脚目短尾下目
ガザミ上科ガザミ科
ヒラツメガニ属

ふ〜ん、ガザミ(ワタリガニ)の仲間なんだね。確かに形はワタリガニっぽい。

【英名】Swimming clab
スイミング・クラブとはいっても、水泳教室ではない。泳ぐカニさんだよん。たぶん、ガザミの類は水面を泳ぐからだね。だから、ワタリガニ(渡り蟹)という和名もあるのである。
でもコレって、ガザミそのものの英名じゃなかったっけ❓

Wikipediaをみると、やはり「Swimming crab」となっていた。ほらねっ、言ったでしょ。
他に、Japanese blue crabとも書かれていた。
では、ぼうずコンニャクだとガザミの英名はどうなってるのかと思って確認してみると、Japanese blue clabとGazami clabと表記されていた。まっ、どっちがどうであろうが知ったこっちゃないけどね。

【学名】Ovalipes punctatus (De Haan,1833)
蝶や蛾じゃないんだから、学名の由来は追っかけない。気になる人は自分で調べてね。

【和名】ヒラツメガニ
第五脚は遊泳脚となっており、爪先が平たいことから平爪蟹の名が付いたそうである。
なるほど、本体を確認したらそうなっとるわ。

【地方名・市場名】
ぼうずコンニャクを見たら、無茶苦茶ある。
マルガニの他にヒラガニ、ヒラカニ、アカガニ、エッチガニ[Hガニ]、シラガニ、ヘラガニ、ホウボウガニ、ホンダ、ホンダガニ、スケベガニと11個もあった。
エッチガニとスケベガニは、おそらく背中のH紋からだろね。ホンダガニには首を傾げたが、よくよく考えてみれば、あのHONDAの事なんじゃないかとハタと気づいたよ。きっとホンダ車のマーク、もっと言えばエンブレムに似てるからだね。
Wikipediaに拠れば、地方名が多いのは一般の流通量が少なく、地元消費されるカニであるために地方名が多いそうである。
以下、Wikipediaでの解説。
「北海道稚内市ではヘラガニ、青森県の八戸市、おいらせ町ではヒラガニと呼ぶ。ひたちなか市や九十九里町ではキンチャクガニと呼び、鹿島灘から外房では丸ガニまたは「丸」と呼び、内房など各地では甲羅の模様をHの字に見立ててエッチガニと呼ぶ。山形県庄内地方ではシロガニと呼ぶなど、多様な呼び名で呼ばれる」。
福島県の海は鹿島灘に近いから、丸ガニと呼んでるんだろね。

また、近隣諸国でも食べられているようである。
中国での正式な漢名は「細点圓趾蟹」だが、市場では「沙蟹」や「台湾蟹」などと呼ばれる事が多い。韓国では「깨다시꽃게 ケダシコッケ」と呼ばれている。

【生息域と分布】
海水生。波打ち側から水深350mまでの砂泥地に生息するが、浅い海域を好み、特に波打ち際から水深20m程度に集中する。大きさは小さいが潮干狩りでも獲れることがある。
普段は砂や岩陰でじっとしているが、夜行性であり、小魚やエビ等を捕食する。
分布は北海道南部以南、九州、沖縄、八重山諸島。朝鮮海峡、黄海、渤海、東シナ海と広い。日本では主に東日本で食用される。
なるほど、だから大阪生まれのアチキには馴染みがないんだね。

ここからは、ぼうずコンニャク先生の解説を主体に書きます。

【基本情報と市場での評価】
日本各地で水揚げされる小型のカニで、主に底曳き網漁で捕獲される。量的には少ないものの、時にまとまって獲れるので比較的安く売られている。
なあんだ、基本的に安いものなのね。

ガザミ類でも本種だけは活けを見ないそうだ。これは水揚げすると、すぐに弱ったり死んでしまうからみたい。よって、活けでの輸送には向いておらず、氷水に入れられて入荷することが多い。
とはいえ、大都市にはあまり流通していないようだ。産地は主に北海道、福島県、茨城県、岩手県などだが、漁獲量、流通量が多くないために海沿いで地元消費されることが多く、ソッコーで浜ゆでにされちゃうみたい。
なるほど、だから東京でも見なかったんだね。納得です。

ちなみに、特に好んで食べる地域は無く、名物料理としている所もないようだ。ゆえに加工品も無いそうだ。

【旬】
秋から春。

何とかギリで旬に入ってる。よしよしである。
しかし、秋から冬と書いてあるサイトも見つかった。
繁殖期は秋~春であるが、主に10月〜11月、2月〜4月に抱卵する個体が多いとも書いてあった。つまり、ガザミと旬は同じってワケか。確かに卵を持っている時期のワタリガニのメスって美味いんだよなあ…。
まっ、いっか。コイツらは、きっとオスだ。そうゆうことにしておこう。気にしない、気にしない。

【選び方】
持って重さを感じるもの。

とは言ってもなあ…。1パックしか売ってなかったから比べようがなかったよ。

【料理法】
(味噌汁)
カニは味噌との相性が非常にいい。身を半割りにして水からアクを取りながら煮ていく。火が通ったところで味噌を溶く。ネギなどは必ずしも必要ではない。カニのミソなどから実に味わい深い濃厚なダシが出る。カニの身も甘味があって、とても旨いそうである。

(塩ゆで)
塩水で約10分ほど茹でるが、大きさや身の入り具合などによって茹で時間は変わる。殻が軟らかいので容易に身を取り出すことができ、甘味があってとても美味しい。

上は、ぼうずコンニャクからの引用だが(漢字等、一部は編集している)、Wikipediaの解説文も載せておこう。

ヒラツメガニの味噌汁(日本)
中型のカニであるが、美味であり癖がないため色々な料理に用いられる。特にカニミソが美味であるため、日本、特に東日本の産地ではぶつ切りにしたものを味噌汁や鍋料理として食べることが多い。

よっしゃ、よっしゃ。ようは旨いんだな。更に期待値がハネ上がるっぺよ。

海外での調理法も紹介されていた。
「渤海から東シナ海沿岸の中国山東省、浙江省、福建省や台湾、韓国などでも消費されている。韓国だと鍋料理(チゲ)、味噌汁(テンジャンクク)などにされるが、中国では蒸したり、炒めて食べる事が多い。」

何と、ぼうずコンニャクには釣り情報まである。完璧だな。

【釣り情報】
本種は砂浜などからの投げ釣りで釣れる。カニ網という重りを付けたナイロンの網にイワシやサンマのアラのぶつ切りを入れるポケットがついた仕掛けをつけて投げる。投げて、ただただ待てばいいのである。九十九里、鹿島灘、相模湾などで盛ん。

さてさて、御託はコレくらいにして調理にかかろう。
問題は味噌汁にするか塩ゆでにするかだが、答えは解説を読んでいる途中で早々と決めていた。
ズバリ、塩ゆででござる。何があってもワシ、それでいくかんねっヽ(`Д´#)ノ
味噌汁なんぞにしたら、本体がワカンなくなる。インスタ映えもせんわい。それに味噌汁なんぞにしようものなら、他の具材を入れたくなるではないか。益々インスタ映えしない。やはりここは姿そのままで、カニ本来の味を知るために極力シンプルな調理法を選ぶのが正しかろうて。

①先ずはカニちゃんを洗う。
この時点で早くも嫌な予感が走る。一匹は水に沈むが、もう一匹はプカプカ浮くんである。これは中に空気が入っているからではないかと思った。ようするに中身がスカスカじゃないかと疑ったのだ。まあ、今更どうしようもないから忘れることにする。ここまできたら、どう足掻こうと成るようにしかならんのだ。

②塩茹で用の塩水をつくる。
ネットでみると、塩水のレシピは意外と幅広く、水200mlに対して塩を小さじ1/3から1とある。今回は慎重を期して、この幅の中間、やや薄めのレシピで1リットル分を用意した。
舐めると、それでも相当しょっぱい。海水はしょっぱいのだ。海の男だった時代を思い出したよ。

③塩水を沸騰させたら、蟹をブチ込む。
浮くヤツは小皿を被せて沈めた。溺死させる殺し屋気分じゃ。ほりゃほりゃあ〜ψ( ̄ー ̄)ψ、あんじょうブチ殺されたってやあ〜。
とは言っても、既に死んどるんだけどね(笑)

で、吹きこぼれないように火加減を調整して10分間ゆでる。

④10分たったらザルに上げて、冷ませば完成。
でもって、恭しく古伊万里に盛る。




何かバンザイになっとって、わーい、わーいの小躍りしてるみたいだ。ワシの心も小躍りじゃよ(人*´∀`)。*゚+
当然だが、茹でると色は赤くなった。美味そうだ。
取り敢えず、浮いてたダメそうなのから手をつける。

(ー_ー゛)……。
何か異様に軽い。甲羅を押したらペコペコだった。再び嫌な予感が広がる。
けんど、開けてみなけりゃワカランばい。半ばヤケクソ気味で己を励まし、一縷の望みをもってハサミの部分を割ってみる。
(ㆁωㆁ)あちゃー❗、スッカスカやんけー。身が申しワケ程度にしか入っていない。大ハズレじゃけん。
悪い予感って、だいたい当たるよね。
多分だけど、これは水蟹(みずがに)ってヤツではないかな❓ 水蟹とは、脱皮後まだ甲羅が固まっていないカニのことを言う。だから、殻がペコペコだったのだ。脱皮直後のカニは柔らかくて殻ごと食べられて旨いが、少し時間が経ったカニは身が詰まってなくてダメだとカニ屋の爺さんが教えてくれたのだ。
ところで、あれって何処だったっけ❓
あっ、そうだ。鳥取だわさ。当時の彼女と旅行で行った時だ。確か彼女が株か何かで儲けたとかで、奢りで老舗温泉旅館に泊まったのだ。名前も思い出したぞ。岩井屋(註1)だ。あん時の松葉ガニ、デカくて美味かったなあ(*´ω`*)…。風呂も良かったしさあ。今思えば、彼女は美人で楽しい性格の人だったから、結婚しときゃ良かったよ。

気を取り直して、もう一匹の沈んだ方のハサミを割る。
(☉。☉)❗おっ、こっちはちゃんと身が詰まっとる。これで完敗は免れそうだ。たとえコレ一匹で298円だったとしても、そんなに割高ではなかろう。妥当な値の範疇だ。そう思うと、気持ちは楽になった。買ったのは決して間違いではないっ❗

身をせせり出して、食ってみる。
(☆▽☆)甘いっ❗❗ カニらしい風味のあとに、優しい甘みが広がる。旨味も強い。身質はしっとりで稠密だ。ズワイガニやタラバガニみたくは解(ほど)けなくて、限りなくワタリガニの味わいに近い感じだ。と云うか、ほぼ同じと言っても差し支えないだろう。
そのままで充分に旨いが、一応用意していたカニ酢にもつけてみる。
うん、こっちも中々イケる。どっちが合ってるかは意見が分かれそうだ。このへんはまあ、個人の好みだね。ちなみに自分は、塩ゆでした蟹には何にもつけない派です。

安心したところで、再び水蟹に戻って解体してゆく。
やはり脚には殆んど身がない。だから、歯でしがんでエキスだけを味わってゆく。そして、甲羅を外す。
蟹ミソを舐めてみると、(☆▽☆)うんめぇー❗
濃厚でコクがあって、旨味タップリだ。仄かな苦味もアクセントになっている。それを純米吟醸の冷酒で洗い流す。
(≧▽≦)きゅーっ、堪りまへんなあ。やっぱ、蟹には日本酒でござんすよ。こっちの土座右衛門蟹には全く期待してなかっただけに嬉しい誤算だよ。

次に胸側の身にとりかかる。2つに割ろうとした瞬間、指先にみっちりとした感触が伝わった。
割ってみると、こちらは身がギッシリと詰まっている。これまた嬉しい誤算だ。身が甘いねぇ(#^.^#)

小一時間かけてほじくり出した身を小皿に盛る。





上が水蟹で、下がそうではなかったヤツだが、胸身があったせいでそれほど身の量に大きな差はなかった。全然、OKじゃないか。損してるって程ではない。これでニッキュッパッの298円なんだから、結果的には激安の買い物だったじゃないか。
めでたし、めでたしである。
 
                        おしまい

追伸
過去に『食材ハンター、伊賀蔵が行く』的なタイトルの記事をいくつか書いたが、よくよく考えてみればハンターな時は少ないワケで、ハンターとは言い難い。なので、今回新たにシリーズ名を変更して再出発することにした。ネタは結構あるんで、気が向けば本格的なシリーズ化もあるかもよ。

そんなもん書いてるヒマがあったら、台湾の蝶シリーズやカトカラ元年シリーズを再開しろってか❓
お叱りはごもっともだが、とは言ってもねぇ…。一応、鋭意努力しまあーすとでも言っときます。


(註1)岩井屋
鳥取県岩美町岩井温泉にある創業130年 江戸時代末期から続く山陰最古とも言われる温泉旅館。貴重な足元湧出湯として知られる。


(出典『温泉手帖♨』)

こんなんだったっけ❓ あまり記憶にないや。


(出典『4travel.jp』)

ここの風呂は個性的な造りだったから、よく憶えている。湯船の中央が深くなっており、立って入れるのだ。下には底板が敷いてあり、その間からプクプクと湯が湧き上がってくるのである。だから、他では見られない独自の源泉かけ流しなのだ。
館内はレトロなのだが、モダンでもあった。和なんだけど、お洒落なのだ。料理にも定評があり、尚かつそれほど高くなかったような気がする。改めて彼女に感謝です。