2019’カトカラ2年生 其の1第ニ章

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   No.18 アサマキシタバ(2)

    『コロナ禍の狭間で』

 
2020年 5月24日

日本はもとより全世界を席捲している新型コロナウイルス禍は少し勢いを減じていた。それでも終息の兆しはまだ見えないと云う状況下、生駒山地の枚岡へと出撃した。

1週間ほど前から、そろそろアサマキシタバが発生しているのではないかと気にはなっていた。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♂】

(2019.5.23 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

だが去年みたく、たかだかアサマキシタバなんぞにフライングしたくなかった。あの二の舞は避けたい。それに今回求めているのはメスだ。少し遅めの始動で丁度よろしかろう。そう考えて、この日を選んだ。

午後5時半。
🚲ママチャリで難波を出る。
そう、アホはチャリで生駒まで行こうとしているのである。ここから枚岡神社まで優に15キロはある。ママチャリで上町台地を越え、生駒山地の途中まで登らねばならぬのだ。
普通の人間だったら、そんなおバカなことは考えない。電車で行けば30分だ。じゃあ何でそんな事を考えたのかというと、アホだからである。と言っては身も蓋もないので、もっともらしい理由を考えよう。
そうそう、運動不足だからである。それに此処にはスミナガシに会うため、5月のアタマに一度ママチャリで来ているのだ。つまり、自分の中ではもう普通の行動範疇なのである。
勿論、出来るだけ人との接触を避けたいと云う気持ちも根底にはあった。コロナを伝染(うつ)されたくないし、伝染したくもない。加えて、あのマスクと云うのが苦手だ。マゾじゃないから、ああゆう拘束具みたいなのは大嫌いなのだ。ストレスが高いわ。
ついでに言っとくと、その浮いた電車賃で高めの食材でも買うたろうかと思ったと云うのもある。今日は帰ったら、美味いもん食って、酒ガブ呑みじゃヽ(`Д´)ノ❗

難波⇒日本橋⇒上本町⇒鶴橋⇒今里⇒布施⇒永和⇒小阪⇒八戸ノ里⇒若江岩田⇒河内花園⇒東花園⇒瓢箪山と近鉄奈良線に沿って走る。しっかし、やっぱマジ遠いわ(;´∀`)
瓢箪山から枚岡駅までは地獄の坂じゃ。途中、立ち漕ぎも出来ないくらいのキツイ坂になった。仕方なくチャリを押して喘ぎながら登る。生駒山地は勾配がキツイんじゃ。日本一勾配のキツイ国道、最大斜度37%の国道308号もすぐ近くを通っておる。もう何で電車に乗らなかったんだろうと後悔しきりである。思えば後悔ばかりの人生だよ、おっかさん。

ようやくチャリが漕げる所まで上がって来たら、夕陽が沈もうとしていた。日が沈むまでには着いちゃる❗
鉄砲玉、ぴゅう━━━(((((((((((((((( ヘ(* – -)ノ

午後7時、ようやく枚岡駅に着いたところで、ちょうど陽が沈んだ。

(||´Д`)ハァハァー、(;;;´Д`)ゼェーゼェー。
ここまで1時間半かあ…。結構かかってる。けど電車だって30分かかる。そのたった3倍の時間で済んでると考えれば、まだ早い方なんじゃないか?

汗だくでヘトヘトだが、息つくヒマもなく準備を始める。
と言っても、懐中電灯をザックから出しただけなんだけどね。

さてさて、ここからが本番じゃよ。
今回の課題は、2つある。

①アサマの♀の触角って、もしかして短くねぇんでねえの❓
②アサマって、はたして糖蜜トラップにも反応しまんの❓

前回を読んでない人のために少し補足説明をすると、オスと比べてメスの触角が短いんではないかという疑念を持った。それを確認しようと云うワケなんである。んなワケなかろうとは思ってるけど。

2つ目は、去年はアサマを樹液でしか採っていないから、はたして糖蜜トラップにも寄ってくるのかどうかを確かめたかったからだ。
多くのカトカラが糖蜜トラップに誘引されるが、殆んど反応しない種もいる。正直、同じカトカラ属といってもワケわかんねぇところが多々あるのだ。例えば去年、カバフキシタバが樹液よりも糖蜜トラップに圧倒的に反応したなんてのは予想外の出来事だった。普通は逆なんである。当然、自然物の樹液に集まる昆虫の方が多いのである。そう云う例もあったゆえ、一通り実験しようと思ったのだ。調べていくうちに、糖蜜に集まる奴と集まらない奴との何らかの差異が見えてくるかもしれないと考えたのである。
また、標高が高いところではカトカラは糖蜜トラップに集まらないと云う定説があるが、ナマリキシタバなんかは標高の低い場所でも寄って来なかったりもする。でも樹液に来た例はあったりする。もうワケワカメなんである。糖蜜トラップをかけ続けることによって、この疑問にも答えが見つかるかもしれない。

枚岡神社を抜け、住宅街を通って椋ヶ根橋までやって来た。
辺りには誰もいない。そら、居るワケないわな。こんな時間に誰が山登りすんねん。

暗き森の入口に立つ。
超ビビリ男、((;゚Д゚))ブルッときた。武者震いだ。
いよいよ今年も始まりましたなあ。闇の絵巻、魑魅魍魎どもが跳梁跋扈する闇世界への潜入捜査が。
今更ながらに一人で夜の山に入るだなんて、どーかしてるぜ。嗚呼、虫採りなんかやめて、一般ピーポーに戻りたいよ。

意を決し、心を鎮めて急坂を登り始める。懐中電灯の光だけが闇を切り取っている。それが現世と幽世(註1)、現実の世界と冥界との境界線だ。要らぬことは考えずに足もとを照らす。勿論、👺👻👹👽魑魅魍魎どもはメチャメチャ怖いが、ここは先ずはマムシなどの🐍蛇に心を砕くべきだ。目の前の現実に集中してさえいれば、化け物どもも怖くない。敵は我が心中にあり。自身の紡ぎ出す想像と妄想こそが一番の敵なのだ。

7時20分。目的の尾根に辿り着いた。

風に木々がザワザワと揺れる。
(||゚Д゚)怖いですねー。(((( ;゚Д゚)))恐ろしいですねー。

ヤバい精神傾向だ。想念を遮断して、樹液の確認に行く。
(゜o゜;ゲッ❗、去年アサマが3頭飛来したクヌギの壮齢木の樹液が渇れとるがな。(++)ヤッベー💦
あと残るは、もう1本。アケビコノハがいた去年最初に見つけた木がダメなら、(@
@)アーパープーパーだ。

よっしゃ、ε-(´∀`*)セーフ。
幸いそのコナラの木の樹液は健在だった。っていうか、去年よりも確実に樹液量が増えていて、コクワガタが3頭も来ている。ちゅー事はアサマキシタバもそのうちやって来るだろう。取り敢えずは一安心だ。でも去年は安心したら、その後に大コケしたので予断を許さない。

( –)/占==3 シュッシュラシュッシュッシュッー。
霧吹きで糖蜜を木の幹に吹きつけてゆく。
辺りに甘い匂いが立ち込める。今回の糖蜜は何が入ってんだっけ❓ 嗅いでみるが、複雑過ぎてワカラン。たぶん焼酎とかビールとかのアルコール類に、甘系ジュースだの酢だのその他モロモロが入っとるんだろなあ。去年、王者ムラサキシタバを採りに行った時(註2)に使った残りだから、憶えてねえや。

何か痒いなと思ったら、🦟蚊がワンサカ寄ってきとるー。
(≧▽≦)しもたー。虫除けスプレーを忘れた。カトカラ開幕戦ゆえに携行品に漏れがあったか…。のっけから躓いた感じでヨロシクない流れだよ。

7時28分。
早くも樹液にアサマキシタバがやって来た。
取り敢えず、写真でも撮っとくか。

しかし、スマホではクソしょーもない写真しか撮れん。被写体が小さくしか写らんし、懐中電灯を照らして片手で撮ってるからブレブレだ。
仕方なく至近距離まで近づいて撮ろうしたら、(-_-)チッ、逃げやがった。
何やってんだ❓、俺。先ずは撮る前に採れよなー。余裕カマし過ぎだぞ。
とはいえ、まあそのうちまた戻って来んだろ。去年の記憶では、1頭飛んで来たら立て続けに飛んで来たもんね。

しかし、後が続かない。
糖蜜トラップには、雑魚キャラのキマワリとヨツボシケシキスイ、名前も知らんクソ蛾とオオクロナガオサムシしか寄ってこん。

誰じゃ、おまはん❓
名前もワカランし、無視する。

クロナガオサムシ系とマイマイカブリは樹液とか糖蜜が好きなんだなと改めて思う。でも、オオオサムシとかヤコンオサムシなどの Ohomopterus属は見たことがない。地面に埋めた糖蜜トラップには来るのに何で❓木に登るのは苦手なのかな❓

デカい百足(ムカデ)もやって来た。
( `ε´ )ったくよー。見た目といい、生き様といい邪悪過ぎるんだよ、テメェ。
そういえば、去年クロシオキシタバを採りに行った折り(註3)、ムカデに耳を思いきし咬まれたんだよなあ…。
突然、💥バチーッと、もう火箸でも押し付けられたんじゃないかと思うくらいの鋭い痛みが走って、飛び上がりそうになった。あとはズキズキした痛みが続いて、涙チョチョ切れだったよ。思い出したら、何かフツフツと怒りが込み上げてきた。復讐のジェノサイド、オドレ、虐殺したろか٩(๑`^´๑)۶
でも小さい奴でもあんだけ痛かったんだから、このクラスだと咬まれたらどんだけ痛いっちゅーねん。ムカデって、どう見ても暴君って感じだもんなあ。やめとこ。君子、危うきに近寄らずである。

8時になった。流石に💦焦ってくる。
アサマって、日没後早めにワッと飛んで来るんじゃなかったっけ❓だとすれば、今はゴールデンタイム。来ないのはどゆ事❓
最悪のシナリオが頭を掠める。
もしもあの、写真なんか撮ってて逃げられた奴が今日の最初で最後の1頭になったりして…。そう思うと顔が強張る。ならば、ここまで必死こいてチャリで来た努力も、闇の恐怖に耐えてきたことも、全ては無駄になる。
いかーん。頭の中で『スターダストクルセイダース』の大悪党、ディオのスタンド(註4)が無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…と高速パンチを繰り出してる映像が浮かんどるやないけー。

何かのメタファー(暗喩)かよ。
木々がまたザワザワと騒ぎだした。
 
                        つづく

 
追伸
3話構成で完結させる予定が、無駄無駄無駄無駄無駄…無駄な事を書き過ぎて4話以上の完結になる事、決定であ〜る。
何やってんだ、オラ。

(註1)幽世
幽世(かくりょ)。隠世とも書き、常世(とこよ)とも言われる。
幽世・常世とは、永久に変わらない神域。死後の世界でもあり、黄泉もそこにあるとされる。「永久」を意味し、古くは「常夜」とも表記した。日本神話や古神道、神道の重要な二律する世界観の一方であり、対義語として「現世(うつしよ、げんせ)」がある。

 
(註2)王者ムラサキシタバを採りに行った折り
拙ブログの、2018’カトカラ元年 其の17第四章に『パープル・レイン』と題して書いた。読まれる方は、第一章から読んでね。クソ長いけど(笑)

【ムラサキシタバ♂】

(2019.9月 長野県松本市)

 
(註3)クロシオキシタバを採りに行った時に
拙ブログにクロシオキシタバの続篇として『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』と題して書いた。

【クロシオキシタバ】

(2019.7月 神戸市須磨区)

註釈を入れるのを忘れたが、カバフキシタバの糖蜜トラップ云々の話(『リビドー全開❗逆襲のモラセス(後編)』)も書いたので、ソチラもヨロシクです。

【カバフキシタバ】

(2019.7月 兵庫県宝塚市)

 
(註4)ディオのスタンド
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」のヒール、ディオのスタンドであるザ・ワールドのこと。アニメの中で無駄無駄…と連呼して連続で攻撃しまくる。めちゃんこ強いのだ。
なお、第5部 黄金の風で、その息子ジョルノのスタンド、ゴールドエクスペリエンスも無駄無駄…と連呼してタコ殴りしよります。

【ザ・ワールド】

(出典 プレステ『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』)

こんな感じっす。


(出典『ミドルエッジ』)

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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