vol.19 ウスイロキシタバ
『2020′ 象牙色の方程式』
2020年 6月12日
夏の扉が開いた。
日増しに陽射しも強くなり、ここのところ蒸すような暑さが続いている。いよいよ、今年もカトカラの発生が本格的に始まるんだなと思った。
去年、ウスイロキシタバは採れたものの、たった5頭のみだった。しかも新鮮な完品個体は1つも採れなかった。それにその生態、謂わば象牙色の方程式もまだ解けていなかった。今年はその答えも見つけたい。
問題はいつ先陣を切るかだ。文献に拠れば、九州や四国だと6月の上旬には発生するらしい。近畿地方ではどうなんだろ? 情報量が少ないので何とも言えないところがあるが、おそらく6月上旬の後半辺りには発生しているものと思われる。但し近年は気候の温暖化に伴い、虫たちの発生も年々早まっていると言われている。かといって春先の天候によっては発生が遅れる年もあったりするから判断が難しいところではある。今年の蝶の発生は、途中からやや遅れているとも聞いているしね。
去年、最初に採った日付が6月19日。鮮度はまずまずの♀だった。しかし、羽にスリットが入っていた。そこから逆算すると、フライング無しで新鮮な♂をゲットしたくば、その1週間前が頃合いではないかと考えた。そんなワケで、満を持してこの日に開戦することを早々と決めていた。
テキトーな性格なわりに意外と慎重なのは、単に何度も行きたくないからだ。これはあまり言った事かないけれど、金も労力も最低限で何とかしたがる効率重視の人でもあるのだ。
しかし当日にネットで天気を確認したら、夕方から夜にかけての予報は微妙だった。各社まちまちで、夕方から雨のところもあれば、そのままずっと曇りとしているところもあったりする。また雨としている予報にしても、丸っきり同じではなく、それぞれ降る時間帯にズレがある。予測雨量もバラバラだった。1mmのところもあれば30mmのところもある。それだとポツポツとザァーザァーくらいの違いがある。出掛けるとなると、博奕だろう。悩むところだ。
しかし、日が経てば経つほど彼女たちの羽はボロくなる。そろそろ行っとかないとヤバい。賭けではあるが、出掛けることにした。場所は去年と同じ武田尾渓谷。先ずは実績のあるところで確実に仕留めようという手堅い作戦だ。
車窓からずっと空の様子を見ていたが、福知山線 川西池田駅辺りで不穏な感じになってきた。北側の一部が帯のような黒雲に覆われている。悪意の塊のような不気味な雲だ。不安がよぎる。でもここは祈るしかない。現地が何とかあの雲から逸れることを願おう。
駅を降りて、歩き始める。
けんど、おら自慢のお天気センサーは判断を保留している。この先の天気が読めないのだ。おいらの肌で天気の変化を敏感に察知するセンサーは、自慢じゃないが精度が高い。だから日本でも海外でも雨でズブ濡れになったことは殆んどない。事前に察知して、早めに避難するからだ。それでも今回は何とも言えないという状況だ。この先は夜だし、森の中だし、空の微妙な変化がワカラン。
黒雲は微妙な位置にある。ここから外れてはいるが、雲の流れによっては、いつ近づいて来てもおかしくない位置関係だ。
『お願いだから、あっち行ってね。』と小さく呟く。
アラカシの森には午後7時15分くらいに着いた。
日没直後の仄かに残る光のなか、素早く網を組み立て、ヘッドライトを装着。毒瓶を両ポケットに突っ込む。網と糖蜜トラップを片手に、もう片方に懐中電灯を持って準備万端、森に入る。
さあ、夜会の始まりだ。
今宵も闇の世界で戯れよう。
去年、樹液が出ていた木には何もいなかった。どうやら今年は樹液が渇れているようだ。まあいい、ワシのスペシャルな糖蜜トラップなら何とでもなる。その威力、今回も存分に見せてくれようぞ。
( – -)/占==3 シュッシュラシュッシュッシュー。
昨年の記憶を頼りに、実績のあった木を中心に糖蜜を吹き付けてゆく。
午後7時28分。
早くも糖蜜トラップに飛来した。特徴的な上翅のデザインと色とで、すぐにウスイロだとわかった。この色の上翅のカトカラはカバフキシタバ(註1)とコヤツくらいなのだ。けど、両者は羽のデザインが全く違うし、発生時期も違う。同時期に見られることは、ほぼほぼ無いから間違えようがない。
毒瓶を上から被せるか、網で採るか迷ったが、ここは確実にゲットする為に網を選択した。毒瓶を被せる方法は未だままならない。どうしても殺気が出てしまい、相手にそれが伝わるようで結構逃げられる。下手に慎重になり過ぎてるところもヨロシクない。恋愛でも何でも自信が無い時は上手くいかないものだ。世の中、大体の事柄は心の有りようによって正否が決まるのだ。
網をターゲットの下まで持っていって軽くコツンとやり、驚いて飛んだのを⚡電光石火で左から右へ払うようにして振る。
(•‿•)難なくゲット。
(ΦωΦ)フフフ…。去年とは違うのだよ、去年とは。幹にいるカトカラを採る手法は去年のこの時期よりも格段に進歩しておるのだ。前の網ごと面で叩く方法でも高打率だったが、今やこの方法で百発百中の域だ。
やはり、上翅が美しい。コントラストが効いたオシャレなデザインだ。だが、羽が僅かに欠けている。
裏返す。
腹の感じからすると、どうやら♀だね。
♀で、やや欠けているとなると、やはり発生は6月上旬の後半には始まっていた可能性が高い。出動がやや遅かったか…。
とはいえ、幸先のいいスタートだ。このまま雨さえ降らなきゃ、タコ採りじゃねえの(◠‿・)—☆
他のキシタバたちもやって来た。
フシキ❓それともコガタ❓(註2)
けど今年はまだどちらも見ていないので、判断に迷う。フシキの季節の真っ只中だが、コガタもそろそろ出ててもおかしくない時期だ。見た感じでは、たぶん両方混じっていそうだ。どっちもべつに要らないけど、確認の為に採ってみることにする。
楽勝でゲット。
ಡ ͜ ʖ ಡデヘデヘのスカートめくりみたく、羽を持ち上げれば区別がつくのだろうが、頑な感じで閉じているので、裏返す。
黒っぽいね。フシキはこんなに黒くないし、もっと明るい黄色だった筈だから、おそらくコガキシタバだろう。
8時8分。
2頭目が飛来した。さっきとは違う木だが今度も糖蜜トラップに寄ってきた。ワシのスペシャル糖蜜、絶好調やん(^_^)v
これは毒瓶を直接カポッと被してゲット。死ぬまではタイムラグがあるので、地面に転がしておく。
移動を始めたと同時にポツリときた。雨かと思ったら、もうポツポツきだした。マイセンサーがヤバいと言っている。雨粒が大きめなので、コレは来るなと思った。慌てて折り畳み傘を取り出す。時は急を要する。毒瓶を回収しに戻る寸暇が仇になりかねない。地面に放置したまま、その場をマッハで離脱した。
トンネルに逃げ込んだところで、バケツをひっくり返したような激しい雨がやって来た。ギリ、セーフといったところだ。
雨は、あっという間に辺りを水浸しにしてゆく。無情の雨だ。これからという時に…何でやねん( ;∀;)❓ 恨めしげに空を見上げる。
恨めしいといえば、怨めしや〜である。
ここに着いた時から背後のトンネル内の漆黒の闇が気になってしかたなかった。引き摺り込まれそうな深く濃い闇で、尋常ならざるくらいにメッチャ怖い(´-﹏-`;)
暗闇の一部が、突然ぼおーっと白くなり、白い着物の幽霊が浮かび上がってきたりして…。或いは、奥からぬらりと此の世のモノならざる奴👹が出てきそうで、怖気(おぞけ)る。そして、想像力はどんどん逞しくなる。もし鎌をもった鬼首(おにこべ)おりんが高速で走ってでも来たら、ε=ε=ε=ε=ε=┌(TOT;)┘うわ〜ん、涙チョチョギレで逃げねばならぬ。捕まったら、確実に此の世とおさらばだ。見たくないけど、何度も後ろを振り返る。
雨は40分程で小雨になった。これはセンサーで予測してた。このまま止むだろう。
怖えし、出る。
森に戻る頃には、雨は完全にやんだ。
ゴールデンタイムを棒に振ったが、雨上がりには活性が入ると聞いたことがあるし、ここは一つ期待するとしよう。
でも気温はだいぶ下がったから、それがどう影響するかだ。たとえダメだとしても、それも一つの結果であって、己の経験値にはなる。けっして無駄にはならないだろう。こんなこと言えるのは、既に2つゲットしているから心に少しばかり余裕があるのだ。
先ずは転がしていた毒瓶を回収する。
中に水が侵入しているのではないかと心配していたが、大丈夫だった。胸を撫でおろす。そうゆう惨事が起こると、流れは一挙に悪い方向へと行きかねないからね。
今度も♀だった。もしかして、もう♀の時期❓だとしたら、♂は既に擦れてたりして…。
どちらかと云うと、♂が欲しいのになあ。フライング覚悟で、もっと早くに訪れるべきだったかもしんない…。
9時過ぎに1頭飛んできたが、懐中電灯を下に置いてヘッドライトを赤外線に切り替えてる隙に忽然と消えていた。
他の蛾もボチボチとしか飛んで来ないし、特に活性は入っておらんようだ。
9時40分過ぎに漸く1頭飛んできた。
(-_-メ)待たせやがって、次は何があってもシバいたるわい。
(ノ∀`)アチャー。網で採ったゆえ、取り込みにやや手間どったせいか、背中の毛が抜けとる。(-_-メ)チッ、落武者になっとるやないけー。
しかも、♂っぽくねえか?
裏返した。
腹を見ると、やはり♂だね。
クソー、折角の♂だったのに…。ガックシやわ。
けどまあいい。鮮度は悪くない。とゆうことは、まだまだチャンスはあるって事だ。ここからダイナマイト打線💥爆発といこうではないか。
(ー_ー゛)……。
だが、後が続かず、この日はこれで終わりだった。
ライトトラップならまだしも、糖蜜採集に雨上がりはヨロシクないようだ。糖蜜が流れるしさ。また一つ勉強したなりよ。
翌日、この日に採った個体を展翅した。
先ずは♂から。
やっぱり、シッカリ背中が禿チョロけておる。
よほど腹の毛を移植してやろうかと思ったが、秋田さんに叱られそうなのでやめた。
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♂】
ハゲちょろけなので裏展翅しようかとも考えたが、表にした。しかも、蝶屋的な展翅。触角をV字にしてやったわい(笑)
【同♀】
今度は蛾屋的な展翅にした。
この中間を目指そうかな…。どうせ、どっちがいいのか途中でワカンなくなるんだろうけどさ。
【♀裏面】
3つめは裏展翅にした。鮮度が良いものを早めに裏展にしておこうと思ったのだ。
ウスイロを裏展翅するのは初めてである。
表は象牙色なのに、裏は明るめの黄色なんだね。他のカトカラとはデザインの印象がだいぶ異なる。蛾の場合、図鑑でさえも大概は裏面が載せられていないが(註3)、同定するにあたって裏面は重要である。無視できない。表よりも違いがハッキリ出たりするからね。
黒帯が細くて、黄色い領域が広い。色も、他のキシタバと比してやや薄めの黄色だ。ここまで黒帯が細い種は他に見た記憶が無い。その形もかなり変わってる。これだけ黒帯が細くて線が単純なのは、たぶん他にはヤクシマヒメキシタバ(註4)くらいしかいないだろう。実物はまだ見たこと無いけどさ。
2020年 6月15日
完品の♂を求めて再度武田尾渓谷へ。
そして、初のライトトラップも試みた。小太郎くん曰く「ウスイロは樹液採集よりもライトトラップの方がジャンジャン採れますよ。」と聞かされていたからである。
7時45分。無事点灯。
とはいっても、誠にもってショボい屋台でおま。
けど、高出力UV LEDライトというから期待してみよう。結果が良ければ、軽いし点灯時間もそこそこ長いようだから充分な戦力になる。
ライトトラップ設置後に糖蜜トラップを撒く。設置にそんなに戸惑ったワケではないが、散布はこないだよりも30分ほど遅れた。だったら早よ来いよという話だが、性格に難ありなので仕方がないのである。いい加減でナメた性格なもんで、この前と同じ時間に家を出たのさ。基本は、なあ〜んにも考えてないんである。
この日は8時15分に最初の飛来があった。
寄ってきたのは糖蜜である。因みに前回に渇れていると言った木は復活。少ないながらも樹液が出始めていた。
♀っぽい。(´-﹏-`;)ガッカリだよ。
メスが要らないワケじゃないけど、オスが欲しいんだよー。
やっぱもうメスの時期に入っちゃってるのかなあ❓
9時前後に活性が入って、連続で飛んで来た。
前回は途中から土砂降りになったので、飛来時間の傾向はまだハッキリとは掴めていない。とはいえ。特別顕著な傾向は無いとみる。
またメスだな。
(;´Д`)おいおいだよ。
ならば、これはどっちだ❓↙
オスっぽく見えるけど、何か段々ワカンなくなってきた。
ウスイロは他のキシタバみたく雌雄の腹の長さや太さが明らかに違うワケではないようだから、夜だと今イチ同定に自信が持てない。オスの尻先の毛もボーボーじゃないしさ。
↓コヤツはどっち❓
腹が太いからメスに見えるけど、腹先にスリットが入ってないような気もする。老眼入ってきてるんで、細かいとこまで見えないよ、せにょ〜る┐(´(エ)`)┌
9時35分。
ライトトラップの様子を見に行くと、(⑉⊙ȏ⊙)あら、いるじゃないのよー💖
しかし証拠写真を撮ろうと近寄ったら、(ノ∀`)アチャー。飛んで逃げた。しかも暗くて何処へ飛んでったかワカンナイ。💦焦る。
(@_@)アッチャッチャー、そんなに遠くへ行ってない筈だと思って辺りを探しまくるが居なーい。
諦めかけたところで、(・o・;)ありゃま。灯台もと暗しのカメラの三脚に止まっていやはった。光にターンバックしちゃう虫の悲哀だね。紫外線の力には抗えはしないのだ。
しかし、よく見ると翅の先が欠けている。写真を撮って、そのまま放置。コヤツが呼び水とかになんねえかな?
飛来が止まって退屈なので、ウスイロキシタバの好む環境について考えてみた。
幼虫の食樹であるアラカシなんて関西でも何処にだってあるのに、どうして何処にでもいないのだろう❓ ワモンキシタバ(註5)みたく個体数は少ないながらも広く分布すると云うワケでもなさそうなのだ。自分の調べた限りでは記録された場所は案外少ない。
となると、アラカシの大木があるような古い起源の照葉樹林でしか生きられないのかもしれない。しかも、ある程度の広さの森を必要とするのかも。でもって、照葉樹林といえども小さい社寺林では生きていけなかったりして…。
だとしたら、理由は何だろう❓ もう少し掘り下げてみよう。
もしかしたら、幼虫は大木を好むのかもしれない。大木好きならば、ある程度の広さの古い森が必要だろう。でも待てよ。規模の小さい社寺林にも大木はある。でも広い森ならば、林内の中心部は乾燥しにくいのではなかろうか❓ 一方、もし小規模の社寺林には居ないのだとすれば、狭いゆえに乾燥しているのが理由とはならないだろうか❓
そういえば、紀伊半島ではヤクシマヒメキシタバの採集の折りに、ウスイロもよく得られるという。つまり空中湿度が高い場所を好むのではあるまいか❓
考えてみれば、ここも直ぐ傍には川が流れている。そして、森の中は、どちらかというと湿ってる。
整理しよう。ウスイロは本来、アラカシの大木があるような古くて広い照葉樹林に棲むカトカラで、加えて渓間など空中湿度の高い湿潤な環境を好む種なのではあるまいか…。
10時前後にまた糖蜜に飛んでき始めた。
飛んで来るとなると、何でこう示し合わせたように同時的にいらっしゃるのかね❓あんたらテレパシー持ちかよ。
蝶でもそうゆうことはよくあるんだけど、その細かい条件がサッパリわからへん。それ分かったら、楽だろね。けど、つまんなくなりそうだけどさ。解らないことは面白いのだ。
こりゃ完全にメスだな。尻先から産卵管が見えている。
10時20分にライトトラップに2頭目が飛来した。
しかし、上から毒瓶を被せようとしたら、敏感に察知して逃げよった。で、暗いから又どこ行ったかワカンなくなる。補助ライトとか必要かもなあ…。でも荷物が重たくなるから絶対買わないと思うけど。
まあ、そのうち戻ってくんだろ。でもって、暫く放ったらかしにしとけば落ち着くっしょ(・∀・)
けれど帰る時間を考えれば、あと10分とか15分くらいで消灯しなければならない。何せ初めてのライトトラップだ。後片付けは余裕をもって行いたい。慣れてないから何が起こるかワカランのである。そーゆーとこは慎重なのだ。ちゃんと考えてる。己の失態で帰れんくなるとか、そーゆーのは絶対にヤな人なのだ。
煙草を吸い始めたら、また戻ってきた。それを横目で見ながら、ぷか〜( ´ー`)y-~~。
しっかし、もし誰かがこんな怪しき青白い光の横で立ってる男を見たら、怖いだろなあ…。絶対、心臓が止まりそうになんだろなあ。誰か来たら、ワザと絶叫してやろうかしら。相手はチビるどころでは済まないぞ。阿鼻叫喚、その場で絶叫して脱兎の如く逃げるやもしれん。それを全速力で怒号の声を上げながら追尾するのだ。
想像すると、何だか笑けてきた。驚かす側に回れば、闇は怖くはないのである。闇への恐怖は、おのが自身の心の有りようにこそ在る。
アホな妄想をしている間にウスイロくんは落ち着いたようだ。
難なく毒瓶を被してゲット。
今度は羽は欠けていない。
裏返してみる。
しかも、こりゃ完全にオスだね。
腹がやや細めで長いし、尻先に毛束があるように見える。
ほぇ〜(◍•ᴗ•◍)✧*。やっとオスが採れたよ。ヨッシャである。
それにライトトラップにはあまり期待してなかったから、嬉しい。2頭も来れば御の字だろう。設置場所もベストと言えるとこじゃなかったしね。頑張った方だよ。
さあ、とっとと店じまいしよう。迅速に片付けに入る。
でも、白布にはビッシリ細かな虫たちが付いている。それに全身ダニまみれのシデムシもいる。正直、むちゃンコ気持ち悪い。ライトトラップって、やっぱ向いてないかもしんない。
けど片付けなければ帰れない。ビビリながら消灯し、意を決して白布を引っぺがしてバサバサやる。矮小昆虫たちの乱舞だ。マジ、とっても(〒﹏〒)キモいでござる。
帰る間際に樹液と糖蜜トラップを確認しに行くと、また活性が入った感じだった。林内で飛んでるのを2頭も見た。けど、電車に乗り遅れそうなので一つだけゲットして毒瓶にソッコーでブチ込み、そのまま闇の帝国を脱出した。
さあ、次は他の産地で見つけて、象牙色の方程式を完全に解いてやろうじゃないか。
つづく
この日に採った個体を並べておこう。
展翅していて驚いたのは、思いの外に♂が多かった事だ。
【♂】
(♂裏面)
オスがあんま採れないと嘆いていたが、5♂も採っとるやないけー。結果は5♂3♀だったから、半数以上が♂だったワケだ。我ながら節穴メクラ男だ。あっ、メ○ラは放送禁止用語か。すまぬ。我ながら節穴盲目男だ。何かシックリこんなあ。世の中、益々言葉狩り化してて、どんどん窮屈になってる。べつに言葉がどうあれ、その意味するところは同じだよね。問題は、そこ(使う側)に悪意があるか無いかだろう。言葉そのものにではなく、問題は単に文脈にあるんだと思うんだけど…。世の中、何か色々とオカシな方向に行ってて気持ち悪いや。
雌雄が結構わかりにくいのは、オスの腹があまり細く長くないからだろう。それに毛束も他種の♂と比べて少ないような気がする。一番上の個体は野外でも直ぐに♂と判ったのは、♂の特徴がよく出ていたからだと思われる。
【♀】
何か下翅の色が肉眼で見る色と違うように写っちゃう。
まだしも実際の色に近いのはコレかな。
最後の1頭は帰り際に慌てて採ったので、上翅が欠けている事に気づかなかった。ゆえにリリースせずに持って帰ってきてしまった。なので、これは修復用に取っとこうと思って展翅しなかった。
♀は腹が太く、尻先に毛が少なくて尖ったように見える。
裏面から見て、産卵管が確認出来れば♀と断定していいだろう。しかし、野外では判別に熟練を要するかもしれない。
追伸
今回はザアーッと一挙に下書きを書いたのだが、その後が書き直しに次ぐ書き直しの連続でムチャクチャ時間がかかった。ウスイロの季節も終わりかけになってまって、すまぬ。
次回、2020年の続きです。で、その後の解説編で完結予定です。結局、又もや5章になっちゃうなあ…。
(註1)カバフキシタバ
(2019.7月 兵庫県宝塚市)
早いところでは6月下旬、通常は7月上旬に現れる。ウスイロキシタバは6月中に殆んど姿を消すので、同時に見られることは稀だろう。
(註2)フシキキシタバ❓コガキシタバキシタバ❓
【フシキキシタバ♂】
(出展『狭山市の昆虫』)
なぜか下翅を開いてる手持ちのパンチラ写真が一枚も無い。
なので、ネットから画像をお借りした。黄色いね。キレイに撮ってはる。
以下、この項は自分の撮った写真。
(2019.6.12 兵庫県宝塚市)
(裏面)
(2018.6月 奈良県矢田丘陵)
【コガタキシタバ♂】
(2020.6月 兵庫県宝塚市)
(裏面)
(2019.6月 兵庫県西宮市)
両者の上翅には差はあるものの、似てるので羽を閉じて静止してる場合は判別困難だ。下翅は展翅すると明らかに違うが、樹液吸汁時には少ししか開かない場合もあるし、これまた判別に悩むところがある。フシキの方が黄色い領域が多くて明るい色で、コガタは黒帯が太いのだが、個体差もあるから夜だと一瞬ワカラン。
だが、採ってしまえば、裏側で一発でわかる。
それにしても、酷い裏展翅だな。こりゃ今年、しっかり裏展翅をし直そうと思ったが、フシキは時期的にもう無理だすな。裏展翅が出来なくはないけれど、季節的にもう擦れているだろう。カトカラは裏から翅の鮮度が落ちるのだ。ゆえに表翅の見た目よりも裏側を見れば、本当の鮮度がわかる。
(註3)図鑑でさえも裏面が載せられていないが
蝶と比べて蛾は圧倒的に種類数が多い。ゆえに裏面まで載せると膨大な紙数を要する。長大になれば値段も高くなるというワケだ。それらの事情は誠にもって理解できる。しかし、蛾に興味を持つ人も増えてきてる事だし、そろそろ裏面を載せた図鑑も必要なんじゃねえの❓分冊にするだとか、従来の図鑑の装丁を見直すなど何とか工夫してやれば、出来ないことはないと思うんだよね。今の時代なら印刷にしても格段に進化してるからね。安価にあげる方法はあると思う。事情知らずが勝手なこと言いますけど…。
因みに、カトカラに関しては唯一、西尾規孝氏の『日本のCatocala』のみが裏面写真を載せておられる。
(註4)ヤクシマヒメキシタバ
【Catocala tokui♀】
(出展『www.jpmoth.org』)
上翅は結構、変異の幅か広いようだ。ノーマルタイプは、こんなにカッコよくない。
(裏面)
(出展『日本のCatocala』)
屋久島で最初に発見され、1976年に記載されたカトカラ。
分布は紀伊半島、四国、九州、屋久島、対馬とされているが、最近になって兵庫県西部でも発見された。
裏面はウスイロに似てるね。図鑑でも並んで載ってるし、おそらく近縁関係にあるのだろう。
(註5)ワモンキシタバ
【Catocala xarippe ♂】
(2020.6月 奈良県平群町)
北海道から本州全土(唯一、鳥取県に記録が無い)、四国の一部までと分布は広いが、どこでも多数の個体が得られることはないと言われてる。自分も一度に沢山採ったことはない。大体が1頭で、多くて3頭しかない。