2020’カトカラ3年生 ミヤマキシタバ

Pocket

 
   vol.21 ミヤマキシタバ 第三章

       『真夜中の訪問者』

 
あえて2020年のことは従来の『続・ミヤマキシタバ』と云う形はとらず、解説編と併せて綴りまする。

2019年はミヤマキシタバをギリ何とか採ったはものの、背中の毛をハゲちょろけにさせてしまった個体も多かった。裏展翅もしてないし、それにカトカラとしては遅い午後8時半以降という糖蜜への飛来時刻の事も気にかかってる。はたして、その行動が通常のものだったのかどうかも確かめたい。そう云うワケで、まだまだシンデレラへのモチベーションは下がってはいなかった。
だが、連日の猛暑続きで気持ちが萎えてたのと、やんごとなき個人的な事情も相俟って、うだうだと出発を決断できないままでいた。
そんな折、『(☉。☉)えーっ❗、今からあ❓』という急な小太郎くんからの長野方面へのお誘いがあった。渡りに船と言いたいところだけれど、あくまでも彼のターゲットは蝶とナマリキシタバだった。ではガッカリかといえば、そうでもなかった。なぜなら自分も優先順位としてはナマリの方がミヤマよか上だったし、久し振りに真面目に蝶採りもしたかったのだ。ゆえに二つ返事でお誘いに乗っかった。まあミヤマは来年でもよろしかろう。一人だと、熊(・(ェ)・)恐えーしさ。

それに蝶屋としての矜持も取り戻さねばとも思った。
最近はブログでも蛾の事ばかり書いてるし、実際、蝶採りも前ほどには熱を入れてやってない。なので、今では周りの蝶屋たちに蛾屋だと囃したてられ、ニヤけた顔でアレやコレやと揶揄されてる始末なのだ。
何かさあ、蝶屋と云う人種は蛾に少しでも興味を示すと、蔑んだような目で見てくる人が多いんだよねぇ。これはきっと近親憎悪みたいなもんで、蛾を「同じ鱗翅類なのに、どうしてお前らは粉だらけで、汚らしくて、ぶっとくてキモいのだ。大半が夜行性なのも気味悪いや。」とでも思われているのだろう。
本来的にはワシも蝶屋なので、その気持ちは解らないでもないけれど、「もうオマエは蝶屋じゃねぇ、蛾に染まった穢れた存在だ」的な態度は酷いやね。
まだ蛾に関しては初心者なのに偉そうに言わしてもらうと、蛾には蝶にはない渋い美しさがある。またデザインは蝶よりも多種多様で、その世界は蝶よりも奥深そうだ。
思うに、どうやら蝶屋には選民意識があるみたいだね。同じ鱗翅類なのに、蛾のことは一段も二段も下に見ているところがある。とはいえアッシも生来の蛾嫌いで、そうゆうところは多々あった。だから、ワシはあくまでもカトカラ屋であって、今のとこ蛾屋になんか転身してないと言い返している自分がいたりもする。
本当はわざわざ蝶と蛾を線引きするのって、狭小でツマンナイ概念なんだろね。とはいっても世間的にみれば、蛾=悪。蝶イコール正義という構図は厳然として存在するからね。
例えば蝶を採っていると言えば、軽蔑されたり、言われなき注意や説教をされる事がある。可愛い蝶ちょを捕まえて殺すとは何事かとゆうワケだ。一方、たとえ蝶を採っていたとしても蛾を採っていると言えば、気味悪がられるだけで文句を言われる事はまずない。むしろ頑張って殲滅してくれとハッパをかけられる事さえある。だから「何を採っているんですか❓」と尋ねられたら、邪魔くさい時はこう答えるようにしてる。

🦋蛾ですっ❗
もしくは、
(ΦωΦ)猫ですっ❗
と。
これで大体は嫌な顔か怪訝な顔をして、その場から去っていってくれる。この手は真面目に答えるのが面倒くさい時によく使うのだが、撃退法としては中々の効力でっせ。興味のある方は使ってみなはれ。結果、どうなるかは責任持たないけどさ。

話が逸れた。とにかく、その時点でミヤマの事はすんなりと諦めてた。一度でも手ゴメにした女には興味がない。とまでは言わないまでも、モチベーションは下がらずにはおえまい。
(-_-;)あっ❗、ちょっと待て。このような物言いだと、まるでワシが女性をモノ扱いしてる酷い人になるではないか。いやいや、そうゆうつもりじゃなくてー。(༎ຶ ෴ ༎ຶ)お姉さ〜ん、冗談ですよ、ジョーダン。

早くも脱線気味だが、今回はその2020年の採集記と種の解説編です。

 
2020年 8月4日

小太郎くんとの遠征二日目。
この日はオオゴマシジミに会いに長野と岐阜の県境の峠へ行った。

 
【オオゴマシジミ】

 
小太郎くん曰く、これはゴマ無しオオゴマという珍しい型らしい。上翅の黒点の大半が消失しかかっている。
参考までに通常のオオゴマシジミの画像を貼り付けておこう。

 

(2014年7月 岐阜県高山市)

 
全然違うことが御理解戴けるかと思う。
でも変異にはあまり興味がないゆえ、小太郎くんとこにお嫁入り。虫でも人でも喜ばれる所に行くのが一番だかんね。価値のわからんワシなんかが持ってても宝の持ち腐れなのだ。

午後になって奈川村へと移動し、ゴマシジミと御対面。
御対面と書いたのは、奈川ではゴマちゃんが採集禁止だからである。と云うワケで写真だけ撮った。

 
【ゴマシジミ】

 
ゴマちゃんって、何だか可愛い💕
改めてゴマシジミって好きな蝶の一つなんだなと思う。オオゴマもゴマも何故だか会うと親愛なる友だちみたいな感じに思えるのだ。だから、あまりオラオラで手ゴメにしてやろうとは思わない。

 

 
小太郎くんなんかはゴマシジミを愛し過ぎて、手乗りゴマとかまでしてた。

オオゴマにもゴマシジミにも会うのは久し振りである。たぶん4、5年振りだ。よくよく考えてみれば、一日のうちで両方とも会ったのは初めてだ。何だかんだ言っても、やっぱ蝶と戯れるのは楽しい。

奈川から松本方面か木曽方面のどっちに行くかと云う事になった。灯火採集を何処でするかと云う話なのだが、どちらも良い場所なだけに迷うところだ。でも小太郎くん所有のライトトラップなので、最終的な決定権は彼にある。
小太郎くんはヤンコウスキーキリガが採れる可能性のある松本方面に行きたそうだったけど『どっちでもいいですよ。』と言うので、遠慮なく木曽町をグイと強く推させて戴いた。なぜなら、勘が木曽に行けと言っていたからだ。自分は己の勘に絶大なる自信を持っている。だから、たいした実力も無いのに何処へ行っても良い虫が採れる。引きが強いと言われるのは、そうゆう事なのである。ようは「お告げ式採集法」なのだ(笑)。
あとは松本よりも木曽町の方が生息するとされるカトカラの種類数が多い事、少しでも関西方面に近い方が帰りが楽だというのもあった。

木曽町には4時前に着き、アイスクリーム屋でソフトクリーム食って、ヤマキチョウとツマジロウラジャノメのポイントの様子を見てから灯火採集が出来そうな場所を探した。

 

 
やがて夕日は声も無く山並みの向こうへと沈んで行った。
そして今宵も虫たちの夜会が始まる。

珍しく日没前にライトトラップを設置する事ができたので、早めに点灯。

 

 
けっして天候は灯火採集に適しているというワケではなかったが、暫くして虫がアホほど飛んで来た。流石、ワシの勘でんがな。「お告げ式採集法」、絶好調だよ(^3^🎵

 

 
小太郎くんが木曽町には多分いないでしょうと言っていたヤンコウスキーも来たもんね。
自分が先に見つけたけど、お譲りもうした。いつも小太郎くんには譲ってもらっているからさ。まっ、お互い様ちゃ、お互い様だけどもね。

午後8時過ぎ。
背後から飛んで来たカトカラがライトの2mほど手前でボトッと地面に落ちた。
止まった姿を見て、すぐに分かった。
と同時に叫んでいた。

(☆▽☆)ミヤマやっ❗❗

でも二人して慌てて近づいたら、\(◎o◎)/アチャー、驚いてどっか行っちゃった。
まあいい。そのうちまた飛んで来んだろう。

此処にミヤマの記録はあるのは知ってたけど、本当に飛んで来るとは思いもよらなかったよ。この周辺には蝶採りで何度も来てるけど、食樹であるハンノキのイメージなんて全然なかったからさ。それにミヤマは夜中にならないとライトに飛来しないと聞いていたからね。謂わば真夜中の訪問者なのだ。まさかこんな時間に飛んで来るとは思ってないゆえ、ちょい驚いたよ。ふ〜ん、こんなに早い時間帯にも来る事があんのねって感じ。

でも、ふと思う。ホントに真夜中の訪問者なのかね❓
何か蛾はあんまり調べられていないせいなのか、図鑑等に書かれてる事が間違ってる場合もチョコチョコあんだよね。だから記述を極力そのまま鵜呑みにはしないように心掛けてる。
まあ、とはいえおそらく偶然近くに居たのだろう。そういや、すぐそばに食樹であるヤマハンノキらしき木があったしさ。

その後、ミヤマっぽい奴が2度ほど飛んで来たが止まらず、どっか行っちゃった。たぶん同一個体だろう。チッ(-_-メ)、クソ忌々しいかぎりである。
どうして珍しい奴に限って、そうゆうのばかりなのだ❓
いわゆる普通種とされる何処にでもいるものは、どいつもこいつも鈍感なのにね。全く逃げない奴や、中には寄って来る奴さえいる。たぶん熱愛する蝶やカトカラの前に立つと、知らぬうちに体から殺気とかがバリバリ出てんだろね。で、体がガチガチになってるから振り逃す人が多いのかも。自分はまだミスショットは少ない方だとは思うけど、それでも時々やらかす。アレってキツいよね。持っていきようのない怒りと落胆度が半端ない。
これって何だか恋愛と似てるね。好き過ぎて全身から焦りまくりの変なオーラが出ちゃって、揚句に空回りして好きな女の子に嫌われるというのは往々にしてありそうな事だもんね。ようは蝶採りでも蛾採りでも、心に余裕がないとダメって事やね。おのが心をコントロールする強い精神力と、その場その場で臨機応変に対応する力がないと女の子にはモテないし、蝶(蛾)も採れないってことだ。勿論、その前段階での緻密な戦略も必要だろう。
あらあら、ますます恋愛と似てるじゃないか。あっ、でもワシには緻密な戦略なんて無いけどね。はじめは完璧な戦略を立てようとは思うのだが、途中で段々面倒くさくなってきて放り出し、いっつも最後は出たとこ勝負なのだ。考え過ぎると、それが呪縛になってかえって自爆しかねないので、恋も虫捕りも結局はその場その場で戦略を組み立ててくタイプみたい。

話が逸れた。自分の恋愛タイプなんぞどうでもよろし。本筋に戻そう。稀な種は敏感という話だったね。
原因は殺気だけではないだろう。もしくは少ない種は捕まえられてしまうと、即それが種の存続の重大な危機に繋がる。死なないためには敏感にならざるおえない。蝶でも個体数が多い年は全体的に鈍感だけど、反対に少ない年には矢鱈と敏感になる傾向があるからね。生きるって大変なのだ。

ようやく見つかったのが、9時ピッタリだった。ライトトラップの裏側の少し離れた所に止まっていた。
小太郎くんを呼んで、採ってもらおう。譲ったのは、彼がまだミヤマキシタバを採った事がないと知っていたからだ。
隙間の変な所に止まっていたけど、無事ゲット。小太郎くん曰く、変なとこに止まってたせいで背中が落ち武者化したそうだけど、鮮度の良い♂だったそうな。
コレで気合入った。次は譲らなくていいから、又ビシッと見つけて手ゴメにしてやろう。オジサン、変態凌辱男へと変貌す。ψ( ̄ー ̄)ψホレホレ〜、ψ( ̄ー ̄)ψホレホレ〜。ワシの毒牙にかかるがよいわ〜。

しかしその後、深夜の11時になっても、日を跨いだ午前0時を過ぎても真夜中の訪問者は現れない。
遅い時間にしか飛んで来ないって、ホントかね❓再び疑問の首がもたげてくる。

午前1時。
何か気配を感じて振り向くと、背後の闇にキシタバ系のカトカラが飛んでいた。ちょっと違和感を感じた。ようやく真夜中の訪問者のお出ましかも(・∀・)❓…
高さ約2m。羽の裏側がハッキリ見えた。次の瞬間にはミヤマだと脳が認識した。と同時に鋭いステップを切って、五、六歩前へと走って左から右へと網を撫で斬りにする。
手に真芯で捕えた感触があった。腰が入った渾身のスウィングだ。野球のバッティングと同じで、こういうキレイな軌跡で網を振れた時は、まず間違いなくスタンドインだ。

中を見る。

へへへへ(。•̀ᴗ-)✧
∠(`Д´)/シャーーーー❗❗
(^o^)v召し捕ったりぃ〜❗

立ったまま毒瓶を網に突っ込み、迅速に取り込む。去年から取り込み方法も少しは進化しているのだ。ハゲちょろけ率は格段に下がってる。

 
【ミヤマキシタバ♀】

 
たぶん新鮮な♀だ。
しかも落ち武者化してない完品だわさ。ケロケロ🐸
お美しい。前翅の複雑な紋様がベキベキに(☆▽☆)キャッコイイじゃないか。この上翅の美しさはカトカラ屈指のものだろう。中でも♀が綺麗。たぶん、絶対♀の方が紋にメリハリがあるやね。

裏返す。

 
【同裏面】

 
ミヤマキシタバは裏面の黄色味が強く、縁が白っぽく見えるのが特徴だ。だから飛んで来た時にすぐにそれと分かったのだ。
こういう裏面は知る限りではフシキキシタバくらいだろう。

 
【フシキキシタバ】

(2019年 6月 東大阪市枚岡)

 
でもこの時期にはフシキはもう姿を消している筈だから間違えることはない。あとナマリも縁が白っぽいけど、断然小さいから区別は容易だ。それにナマリの裏面はこんなに鮮やかな黄色ではない。

腹と尻先の形からすると、やはり♀だね。
♀は腹が太くて短い。また尻先が♂みたく毛ボーボーではなくて、お毛々少なめでスリットが縦に入り、産卵管らしきものがあるのだ。

帰りの事を考えて午前1時半には撤収の予定だったが、この飛来で小太郎くんから延長の申し出があった。もちろん願ったり叶ったりの吝(やぶさ)かではない。午前2時くらいが飛来のピークだと言われているし、期待値が否応なく膨らむ。
さあ、ここからが本番だ。Hey❗、щ(゜ロ゜щ)カモーン。ジャンジャン飛んで来なさーい。悪辣😈連続強姦魔として化してくれるわい❗

だが、一番飛来数が多いと言われている午前2時を過ぎても1つも飛んで来やしなかった。ホントに基本的には深夜に寄って来るカトカラなのかえ❓

疑問符を頭に抱えたまま午前3時にはクローズする事とあいなった。午前2時にバンバン飛来すると云う情報はガセかよ❓
勿論、ガセではないだろう。好んでそんな情報を流す人はいないからだ。いたとしたら、どうしようもないクズだ。クワガタじゃないんだから、ライバルを手の込んだやり口で情報撹乱する必要性があるとは思えない。蛾はマイナーだからね。
結局のところ、蝶と違って蛾の生態はまだまだ調べられてない事だらけなんじゃなかろうか❓だから、その日によって飛来時間が違うことも多いのかもしれない。
蛾ってワケわかんないや。そう思いつつ、蛾まみれの屋台をバラしていった。

 
                        つづく

 
この日、採ったミヤマキシタバの展翅画像を載っけとこう。

 

 
今回は触角を怒髪天ではなく、真っ直ぐにした。
蝶屋的な展翅だと揶揄する向きもあろうが、ほぼ理想通りの出来だ。美しい。
今年採ったのは結局この1頭のみだったので、来年はもっと採りたいな。

 
追伸
「あえて2020年のことは従来の『続・ミヤマキシタバ』と云う形はとらず、解説編と併せて綴りまする。」
冒頭にはこう書いたが、思いのほか長くなってしまったので、思い切って分けることにした。よって種の解説編は次回にまわします。
なので、この文章を『2019’カトカラ2年生 其の四(2)』から『2020’カトカラ3年生 ミヤマキシタバ』と改題して第三章とする。そして次回の解説編を第二章とし、『2019’カトカラ2年生 其の四(2)』とします。
ややこしい話で申し訳ないのだが、ようするに発表の順番が逆になると云うワケだ。ごめんなさい。解説編が上手く書けなくて、こないな事になってまっただよ(╥﹏╥)

今回も草稿を書き終えてからメチャメチャ書き直す破目になった。段々このシリーズを書くのにも飽きてきたから、調子が乗らないのである。書いてて文章に冴えがないからシックリいかず、アレやコレやといじくっているうちに収集がつかなくなった。

数えたら、まだ書いてないのが11種も残ってる。
+α、ボロしか採ってなくてロクな知見も無いのに書いた種が3種もあるから、その改訂版も書かねばならないだろう。
やれやれだ。考えたら、何だか憂鬱になってきた。とはいえ、台湾の蝶シリーズみたく頓挫するのも何だし、年内には新たに2種分くらいは何とか書きたいかなあ…。

 

Pocket

投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください