満月と月日貝

 
昨日は中秋の名月だった。
だから月日貝(ツキヒガイ)を食べたくなった。しかし、珍しくて中々市場には出回らない貝ゆえ、そうおいそれとは見つからない。
(`・ω・´)シャキーン。しかーし、引きが強い男だから出会っちゃうんだよねー(。•̀ᴗ-)✧

 

 
3枚入ってて、税込みで三百円くらいだった。
何度か買ってるから安いのは知ってたけど、改めて思う。価値を考えると、信じらんないくらいに安いよなー。
マイナーな貝だけあって、誰も手を出さないから安いんだろね。神はチャレンジャーにこそ、褒美を与えたまうのだ。
あっ、今気づいたけど、コレって『食材チャレンジャー、イガがゆく』シリーズの回でもあるよなあ。

因みに左2枚が表で、右の白いのが裏である。
名前の由来は、そこにある。表が濃い赤褐色なのに対して裏は白という対照的な色をしており、これを「月」と「日」になぞらえたそうだ。何か縁起が良さそうだ。

上の写真では裏面がよくワカランだろうから、別な画像を貼っつけておくね。

 

 
ついでに内側の画像も貼っつけておこう。

 

 
内側もオシャレだね。
帆立貝と同じように皿としても使えますよー。

しかし、待てよ。表側のワインレッドの色が何でお月さんなのだ❓ 昔、調べた筈だけど、すっかり忘れとるがな。
気になるので、レアな魚介類を調べる時には絶大なる信頼を置いている『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』で検索した。

流石、ぼうずコンニャクさん、ちゃんと書いてありました。
「武蔵石寿『甲介群分品彙 1836』による。右殻が明るいクリーム色で、左殻が赤味を帯びた褐色であるのを「昼と夜」=「太陽(日)と月(夜)」としたもの。」
なるほどね。疑問があっさり氷解したよ。

ついでだから、ぼうずコンニャクさんの力もお借りして、月日貝について解説しておこう。

ツキヒガイはホタテガイなどと同じイタヤガイ科に含まれ、ツキヒガイ属に分類される大型の二枚貝。殻高12センチ前後で貝殻は薄く、膨らみは殆んどなくて硬い。
近縁種には南方系の「タイワンツキヒ」や「タカサゴツキヒ」などがある。あれ?タカサゴも台湾に関連する言葉じゃん。

獲れる数が少なく、一般のスーパーで見かけることは殆んどない。ちなみに味はメチャメチャ美味い。身はホタテそっくりなのだが、舌触りや味わいが帆立貝の上をいく。謂わば、知る人ぞ知る旨い貝なのだ。味だけでなく、見た目も帆立貝よりも綺麗だ。表面のワインレッドカラーは艶々で美しい。加工したら、何かに使えそうだ。

ぼうずコンニャクさんの評価を並べてみよう。

魚貝の物知り度 ★★★★ 知っていたら達人級
味の評価度 ★★★★★ 究極の美味

(☉。☉)おー、最上級の評価じゃないか。そいでもって、ワシって達人級の人なのだ。

外国名は「Japanese moon scallop」。ようするに日本の月みたいな帆立貝ってことだね。
学名は、Amusium japonicum japonicum(Gmelin,1791)
学名にも日本が入ってんだね。原産は日本ってことかな。

地方名・市場名はアホほどある。
エボシガイ オイオッキ オゼンゲ オツキガイ オツキサマガイ オツキサンガイ カミサラガイ サラゲ ツキミガイ ツッゲ ツキガイ ヒドンゲ ヒノデガイ ヒノマルガイ ヒラガイ ヒロンゲ ホンミミガイ モッゲ。
やはり、月とつくのが多いね。おっ、お誂え向きに「ツキミガイ」ってのもあるや。
あれっ❓、シロガイってのが無いぞ。実を言うと2週間ほど前にも月日貝を食ったのだが、鹿児島産のそれは「白貝」と書いてあったぞ。

 

 
ほらね、パッケージに白貝と書いてあるでしょ。
そして、ご丁寧にも下側の欄外にマジックで月日貝と書いてあるね。

もちろん海水生で、沿岸の水深10〜100メートルの細砂底に棲み、底曳き網漁で得られるそうだ。つまり、コレだけ狙いではない漁って事だよね。だから、あまり沢山は獲れないのだろう。
分布は太平洋側は房総半島以南から九州、日本海側は山陰〜九州までの沿岸部。国外では南シナ海、大韓民国、台湾に分布する。
西日本では比較的見かけるものの、東日本では殆んど見ることがない。とても味の良い二枚貝で、流通量は少ないながら人気があるゆえ、西日本ではやや高値。関東などではあまり評価が高くない。

選び方のコツは、生きていて、触って反応のあるものがよい。キュッと殻を閉めるって事ね。茶色い液体が出ているものや軟体の柔かいものは古い。殻を剥いたものは、貝柱が丸くて膨らみのあるものを選ぼう。
旬は秋から春となっているが、別なサイトでは9月〜11月の秋が旬とあった。まあ、5月に買って食ったら旨かったという記事がネットにあったので、食べた事がない人はチャレンジしてもいいんじゃないかな。貝柱は季節によって大きさが変わるそうだけど、よほど高くない限りは、買ってみなはれ。

貝柱は旨みが強くて、全くクセがない。ヒモなども美味。
調理法は幅広く、刺身、塩焼、バター焼き、フライ、煮物など、何でも旨いとされる。ようするに、食べ方は帆立貝と同じと考えてよい。

ぼうずコンニャクには、代表的な調理法も書いてあったので、載せておく。

(刺身)
イタヤガイ類中もっとも美味。甘みが強く、旨みが濃厚、食感も程好い。ただし貝柱に大小があり、外見からは意外と分かりにくいのが難点。

(ツキヒガイの貝殻焼き)
貝殻のまま焼いて、酒、醤油で味付けする。貝らしい旨みがあり、あまり硬くならない。

(月日貝のバター焼き)
バターで焼くことで旨みが液状になり、ソースをかねる。これをからませながらソテーする。フェンネルなどハーブ類を利用しても美味。

(月日貝のフライ)
揚げると旨みが貝柱の中に溜まり、また柔らかくジューシーに感じる。

(月日貝の煮物)
貝柱、内臓などと一緒に甘辛く煮る。ジャガイモなど野菜と煮ても美味。

 
解説が長すぎたね。そろそろ調理に取り掛かろう。

捌き方は、基本的にホタテと同じだ。
貝の隙間から貝開けの刃を入れる。無ければナイフ、フォークのナイフで代用できる。刃を入れ、殻に沿わせながら片側の貝柱を切断して外す。
砂に棲んでいるため、砂や泥が中に入ってる場合があるので、あれば軽く水で洗い流すべし。流すべし❗
しまった。『明日のジョー』の打つべし病が出たあるよ。

さて、どーしてやろうか〜。こうしてやろうか〜。やってやろうか〜。どーしてやろうか〜。
いかん、今度は指示待ち妖怪の「妖怪どうしたろうかしゃん」と化しとるやないけー。

(ー_ー゛)えー、刺身にします。
刺身で食べる場合は、もう片方の貝柱も断ち切り、貝柱だけを取り出すべし。取り出すべし❗
で、刺身庖丁で適当に切った。思ってた程に貝柱が大きくなかったので、思い切って2つ分を潰してやった。
あとは月日貝の殻に盛り付けるべし。べし❗、べし❗、べし❗、盛り付けるべーしっ❗

 

 
ワシは邪魔くさいからやってないが、殻の下に塩を盛っておけば、安定性が良くなってグラグラしない。

溢れんばかりの期待をもって、食う。
(≧▽≦)うみゃーい❗❗

ホタテよりも甘みと旨みが強く、繊維が少なくて舌触りが滑らかだ。完全に帆立貝を凌駕しておる。ホタテくんには申し訳ないが、数段勝っておるわい。
これで二百円なんだから、コスパもボロ勝ちじゃねえか。

ワタが余っておるので、どうしてやろうか〜、こうしてやろうか〜、どうしてやろうか〜。またしても妖怪どうしたろうかしゃんの登場である。
オリーブオイルにニンニク少々を入れて火にかける。そこにワタをブチ込み、サッと炒めて最後に醤油で味付けした。

 

 
完全に酒のツマミだね。
ほろ苦くて旨い。

最後の1個は、バター焼きにした。
さっきと調理法があまり変わらない気もするが、ここは王道で締めたい。

 

 
バターで焼いて、最後に醤油を垂らすだけ。香ばしい香りが堪らんね。
味は勿論のこと旨い。
旨いんだけど、刺身ほどの感動はないかなあ…。

月日貝、今が旬なんで、見つけたら迷わず買いですよ、奥さん。
あっ、でも鮮度はちゃんと確かめてね。

 
満足至極で外に出ると、教会の屋根から満月が昇ってきた。

                        おしまい