そうだ、ソウダガツオを食おう

 
長崎産のソウダガツオが激安で売っていた。

 

 
何と、たったの298円である。しかもピッカピカの鮮度で、半身でこの値段である。
当然、買いであると言いたいところだが、手が止まる。ソウダガツオという名前はあくまでも総称で、分類学的にはヒラソウダガツオとマルソウダガツオという2種類がいて、両者の味には格段の差がある事を思い出したのだ。
確かヒラソウダの方が旨かった筈だ。見分ける方法は上側の模様とかだったよな…。でも、この状態じゃワカラン。上身がひっくり返されてパッキングされておるのだ。

ニッキュッパッだし、まっいっか。もしマルソウダなら、生利節にでもすりゃあいいや。買お〜っと。

帰ってきて、ソッコーで上身をひっくり返して確認する。

 

 
コレって、どっちだっけ(・o・)❓
模様を見ても、ヒラソウダなのかマルソウダなのかワカラン。久し振りの御対面なので、見分け方を忘れてるわ。所詮は3歩あるけば忘れてしまうニワトリ脳ゆえ、んなモン憶えているワケないんである。

調べようかと思ったが、断面、特に皮の下に脂があるのを見て、たぶんヒラソウダだと思った。写真は撮ったんだから、必要とあらば後で調べりゃいいだろう。

取り敢えず金串を刺し、表面をガスの直火で焼く。
皮目を焼いたら、スゲー脂が出た。美味そうだ。もはやヒラでもマルでもどっちだっていいや。旨けりゃ文句はない。
セオリーならば、ここで氷水につけて素早く冷やすのだが、脂が水で洗い流れそうな気がして、そのまま冷凍庫にブチ込む。
粗熱が取れたら、出しゃあいいんである。真似する人は、くれぐれも出すのを忘れないでね。凍らせてしまうと、味が台無しになるよん。

冷蔵庫で冷やしている間にググッてヒラソウダかマルソウダかを確認しとくか。

漢字で書くと宗田鰹、もしくは騒多鰹となる。
「広辞林」によれば、ソウダガツオの名前の由来は「鰹に似たれば(鰹だそうだ)と言いしを、倒置したる魚名(=カツオに似た魚)」とある。
また、群集して水面にしぶきを立てながら小魚を捕食し、集まって騒ぐ=騒々しいということで、騒々しく騒ぐ鰹としてソウダガツオと呼ばれるようになったという説もある。

画像をネットからお借りしよう。

 
【マルソウダガツオ】

(出典『つりまる』)

 
【ヒラソウダガツオ】 

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』)

 
こりゃ、模様からヒラソウダだな。ヒラソウダの方が旨いし、漁獲高が少なくて珍しいそうだから当りだ。
ヒラソウダはマルソウダに比べて血合いが少なくて脂肪分が多い魚で、関東地方の卸売市場には秋〜初冬に流通するそうだ。だが混獲されるカツオよりも鮮度が落ちやすい(マルソウダも同じ)のが難点みたい。
ただ鮮度保持にさえ注意すれば、とても美味な魚で、産地では刺身用として人気の魚である。新鮮なものは刺身・タタキ(土佐造り)・なめろう・ヅケなど生食で賞味でき、煮付け・竜田揚げ・塩焼き・みりん干し・生利節など加熱調理でも美味である。
本種は晩秋から冬が旬であるが、中でも皮の下に白い脂肪の層があるものは脂が乗って非常に美味で、旬の時期には水温低下に伴い皮下脂肪を増やす。
脂肪云々とあるし、やはりヒラソウダに間違いなかろう。

『隔週刊つり情報』の石川皓章氏は、著書『海の魚大図鑑』(日東書院本社)にて本種を「肉質はマルソウダよりはるかに上等で1kg前後まで育つとかなり美味。特に1.5kg前後まで大型化した個体は同サイズのカツオより美味い」と高く評価している。
ぼうずコンニャク株式会社代表取締役・藤原昌高氏は、本種の食味を以下のように非常に高く評価している。
「寒い時期の刺身は絶品」「刺身は『赤身魚の最高峰』『本マグロを超える』とも評価される」。
そして、味を満点の★星5つの最高評価『究極の美味』としている。そして、サバ・カツオ類ではもっとも旨いと評する声もあるとも書いている。

生での食味も書いてあった。

本種を握り寿司にした場合の味
「カツオより酸味が少なく、皮下の層になった脂の甘み・その下の赤身のうまみは寿司飯と相性抜群。濃厚なのに後味も良く、秋の大型個体は間違いなくマグロ以上にうまい」。
脂が乗っていない時期でもタタキ、カルパッチョにして食べると美味であるほか、タマネギ・春菊と共に切り身を煮込んで食べる炒り焼(魚すき)にも向く。

むちゃくちゃ褒めとるがな。心が逸るよ。
よっしゃ、調理開始だ。
先ずは薬味から切ってゆく。取り敢えず細ねぎを切る。茗荷は今回は無し。買い忘れたのだ。次にニンニクを薄切りにする。
生姜も考えたが、カツオの時もパスなので除外。生姜が合わないと言ってるワケではない。カツオに生姜という定番の図式は鮮度が落ちたカツオの味を誤魔化すためから始まったものと推察する。鮮度が良いものには、生姜は要らんのだ。

そして、いよいよのヒラソウダの切りつけ。
量が多いので、上身と下身、それぞれの半分を使う事にした。
カツオと同じく刺身庖丁で厚めに切り分ける。この厚めに切るというのが重要だ。カツオは厚めの刺身の方が美味いのだ。
でもって、古伊万里に盛り付け、薬味と冷蔵庫で眠っていた黄熟したカボスを添えた。

 

 
当然の如く、先ずは塩のみで食う。

(≧▽≦)美味いねぇー。
もっちりしてて、舌にまとわりつくような感じで旨味が強い。ただ、思っていたほどには脂が乗ってない。程好いといえば程好いし、少し物足りないといえば物足りないような気もする。このへんは好みの分かれるところだろう。
正直な感想を言えば、ブログにも書いたキツネガツオの方が旨かった。また、鮮度の良いカツオには叶わないとも思った。鮮度の落ちるモノや冷凍モノならヒラソウダの方に軍配が上がるけどね。
いや、断定するには早いかもしれない。まだ旬の走りで、この先もっと脂が乗って旨くなってゆくかもしれない。今年は暖かいからね。季節の推移が遅れてる可能性は大だ。

塩のみの次は、塩+薬味。続いて醤油のみ、醤油+薬味の順にローテーションで食っていく。醤油も甲乙つけがたいくらいに旨い。勿論、柑橘系も合う。

この一皿でお腹いっぱい。これ以上は量が多くて食べきれそうにない。残しておいた半分はヅケにしようと思った。
ヒラソウダを調べる過程で、こんな事実も知ったからだ。
「カツオの漁場である三重県伊勢志摩地方では、漁師がカツオ漁の折に獲れたヒラソウダ(カツオより安い)を船上でブツ切りにして醤油に漬け、あらかじめ用意した酢飯と混ぜて即席のまかない料理として食べたが、同地方の郷土料理であるちらし寿司の一種「手こね寿司」はこの漁師料理が起源とされる。」

おいちゃん、この手こね寿司が大好物なのである。それにしても、その手こね寿司の起源がヒラソウダとはねぇ。初めて聞いたよ。最近は手こね寿司もカツオじゃなくて、マグロを使うようになってきて、邪道じゃと立腹していたが、カツオも邪道だったのね。

しかし、自家製の茗荷の甘酢漬けがあった事をすんでのところで思い出した。酢締めにするのも悪くないかも…。ヅケだと、おおよその味が想像つくもんなあ。よし、方針転換だ。
甘酢茗荷を刻み、ラップの上に乗せる。その上にヒラソウダを乗せ、更に上から茗荷を乗っけ、甘酢漬けの汁をチビッとかけてラップして冷蔵庫で一晩寝かせた。

翌日、米を炊いて酢飯を作る。
人肌に冷めたところにヒラソウダと茗荷を盛り付け、三つ葉を飾って完成。

 

 
コレに醤油かけて食った。

酢で〆た分、さっぱりとした味になった。驚くような旨さではないが、充分に旨い。途中で辛子を付けて食ったら、なお旨しだった。

今からが旬だから、見つけたら買いですぞ。

                       おしまい

 
追伸
それにしても酷いセンスの駄洒落タイトルである(笑)
まあいい。センスがないんだから仕方がないのだ。

都会の市場で見掛けることは、まずないので、どうしても食べたい人はネットで探すと見つかると思うよ。
ちなみに売っていたのは「スーパー玉出」だ。このスーパーは珍しい魚が激安で並ぶので、一応スーパー回りのローテーションに入っている。但し、一匹買いや今回のように柵になったものを買われることをオススメする。なぜなら一番鮮度が良くて安いからだ。見てると、鮮度が落ちてきたものから切身にされてゆく傾向があるからだ。

参考までにマルソウダガツオについても書いておく。
『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』では、★4つになっていた。かなり評価が高い。但し、脂が少なくて血合いが多いらしい。
そうゆうワケで、マルソウダは主に宗田節の材料にされるようだ。逆にヒラソウダは脂が多くて宗田節の原料には向かないみたい。

ついでだから宗田節についても解説しておこう。
マルソウダはイノシン酸などの旨味成分が多く、濃厚な出汁が取れるため、鰹節と同様の方法で宗田節に加工される。関東風のそばつゆなど濃いめの日本料理に利用されることが多いそうだ。鰹節より濃厚でコクのある風味が特徴で、やや厚めに削った削り節はめんつゆ・タレなどを作るのに用いられる。特に愛知県名古屋以西で好んで利用され、愛知県では同県名物のきしめんに利用されるほか、名産の八丁味噌に合うことからも好まれている。
ソウダガツオの一大産地であり、「市の魚」にも指定されている高知県土佐清水市では、沖合がソウダガツオの産卵場になっており、宗田節の7割以上が生産されている。同市では宗田節は「メジカ節」とも呼ばれ、マルソウダの生利節を燻製にしたものが「姫がつお」として売り出されている。

 
ー参考資料ー

◆ウィキペディア

◆『ぼうずコンニャクの市場魚貝図鑑』