クリスマスの献立第三弾である。
今日のメインの酒はシャンパン(スパークリングワイン)だから、鶏肝をペースト状にしてパテか何かにしようと思った。
けど、考えてみれば邪魔くさいし、和食にも合うスパークリングっていうんだから、手抜きする事にした。
鶏の肝煮である。
作り方は簡単。
①肝を軽く水洗いする。
鍋に肝、水、だしの素(昆布かつお)、酒を入れて火にかける。ちなみに鶏の肝は牛や豚のレバーと違って臭みはないから、牛乳なんぞに漬けなくともよい。
②火が通ったら、仕上げに醤油と味醂を加えて火を消し、冷ます。しばらくおいて味を馴染ませたら、粉山椒を振って葱を散らして出来上がり。
(☆▽☆)旨いっ❗
コチラもスパークリングワインとの相性は抜群だ。
我ながら天才じゃないかと思う(笑)。
スパークリングワインは、モマンドール・エクストラドライ。
値段は680円。値段のわりには旨いと思う。辛口で料理の邪魔をしない。
続けて、赤目芋。
赤目芋と云う名前を知っている人は少ないだろうけど、里芋の仲間である。
(°o°)あー、でも芋の写真を撮り忘れた。なので、画像をお借りしよう。
(出典『たべるご』)
こうして芽が赤いのが特徴なので、本当は「赤芽芋」と書くのが正解だろう。でも「赤目芋」と書いてあるケースが多いような気がする。他に「大吉芋」なんて呼称もあるが、これは「赤目大吉」という品種があるからかもね。あっ、赤目芋の名称もコレの影響が大かもしれんね。この品種が主流みたいだしさ。
作り方は以下のとおり。例によって調味料は目分量だ。
①先ずは芋の皮を剥く。で、塩を付けて擦する。したら、鍋にそのまま入れて、水(できれば米の研ぎ汁)から下茹でする。これは最初から出汁で煮ると味が入りにくいからだ。串を刺して中まで火が通ったことを確認したら、火を切って煮汁を捨て、軽く水で芋を洗う。
②あとは芋を出汁で煮るだけだ。
出汁は鱧を湯引きした時の煮汁に、昆布(顆粒だしでも可)を入れたものがベースだ。そこに芋、酒ドバドバ、味醂少々、薄口醤油を適当に入れて、さっき言い忘れたけど圧力鍋で煮る。その方が時短になるし、芋がふっくらと仕上がるのだ。
三つ葉を添えて完成。
(☆▽☆)旨いねぇ〜。柔らかくてホクホクじゃよ。
身質は里芋と比べて粉質でヌメリが少ない。食感はどっちかというと海老芋とかに近いかも。
問題は泡との相性だ。マッシュルームや鶏の肝との相性に心配はなかったが、はたして里芋なんぞに合うのかね❓
すかさず、スパークリングワインを飲む。
✌️(≧▽≦)イケますぅー❗
全然、相性大丈夫っすー。
肝心な事を言い忘れたが、赤目芋の正式名称はセレベス。
昔、日本に帰化したセレベス侯爵が故郷のホゲメネラ王国を懐かしく思い、母国から送らせたものが日本に定着した…。
と云うのは真っ赤なウソでぇー、名前の由来はインドネシアのセレベス島から伝わったとされるからだ。補足しておくと、セレベスは昔の呼び名で現在はスラウェシ島と呼ばれている。
スラウェシといえば、ウォーレシアとも呼ばれ、東洋区とオーストラリア区の間に位置し、島の両側に生物境界線のウォレス線とウェーバー線が引かれている。で、そこにいる生物は変と云うか不思議な進化をしていて、興味深い。
(出典『蝶の百科 ぷてろんワールド』)
赤いのがウォレス線でオレンジがウェーバー線。
何で2本あるのかというと、最初にウォレスさん(註1)が提唱して、のちにウェーバーさんが淡水魚の分布から『ウォレスさん、アンタそれちゃいまんでー。』と新たな境界線を引いたってワケ。
でもこれはどちらかが間違ってるというワケではなくて、どちらも正しい。どういう事かというと、ある種の生物はウォレス線を境に分布しなくなるけど、別な生物はウェーバー線を境にいなくなるって事だね。だから、明確に1本の線は引けないって事なのさ。
現在ではウォレス線の西側は東洋区、ウェーバー線の東側はオーストラリア区の生物が生息すると云う事で落ち着いているようだ。で、スラウェシ島には東洋区の蝶もオーストラリア区の蝶もいるんだけど、これは最近の研究では東洋区の島とオーストラリア区の島が💥ガチンコで合体して出来たかららしい。
その後、何千万年か何億年かは知らんが、長い年月を経て生物相が融合し、独自に進化していったのではないかと言われているようだ。
実際、スラウェシ島の蝶はとっても変だ。同じ種類でもなぜか他地域のものよりデカくなる傾向があり、翅が尖んがって湾曲化する傾向も強い。あと、黒化といって翅が黒っぽくなる種類も多いのだ。何でそないなるかは、学者はんらも説明できないみたい。
日本にもいるアオスジアゲハは、東アジア〜東南アジア、オーストラリアにもいて、スラウェシの西側、たぶん隣のボルネオ島にもいる。
【アオスジアゲハ】
前述したようにオーストラリアにもいるから、どちら側からかは分からないが(とは言っても多分アジア側からだろう)、スラウェシに侵入して独自進化してミロンタイマイになったんじゃろうね。
【ミロンタイマイ】
(2013.1 バンティンムルン)
そういや並べた画像もあったな。
ねっ、巨大化して前翅が湾曲してるざましょ。
黒化とはまた違うが、青緑の紋も減退していて黒っぽい。
スミナガシも巨大化&湾曲化している。
【Dichorragaia nesimachus pelurius】
(2013.1 タナトラジャ&palopo)
下のデカいのは、裏展翅である。
それにしても、何で裏展翅なんかしたんだろう❓こんなデカい個体を裏展にするなんて勿体ないよなあ。上の小っちゃいのを裏展にすべきだった。アンテナも気に入らんし、ひっくり返して展翅しなおしてやろうか❓でも、めんどくせーなあ。
今思えば、最初からもうちよっと考えて展翅しておくべきだった。相変わらず、なあ~んも考えていないんである。
フラッシュを焚いたら、こうなった。
うわっ(;゜∇゜)、色と斑紋にメリハリがスッゲーついた。
光をあてると、こんなに複雑な色柄なんだ…。
おそらくペルリウスっていう亜種だと思うが、やっぱさすがスラウェシ島である。スミナガシもかなり変わっている。巨大化&前翅湾曲の所謂(いわゆる)スラウェシ仕様の特徴を具現化していらっしゃるのだ。こんなに変わっててカッコイイなら、もっと真面目に採るべきだったなあ…。とは言いつつも、珠に見る程度だったけどさ。スミナガシはアジアに広く分布してるけど、日本みたく沢山いるとこは見た事がない。何処でもレアなのだ。
リュウキュウムラサキの仲間にも巨大化した奴がいる。
(2013.1 タナトラジャ)
下の奴だけど、名前はディオメアムラサキだったかな。場所はタナトラジャだったと思うけど、コレはカッコイイからもっと採りたかった。ちなみに上は比較用のリュウキュウムラサキだす。
他にもオビモンアゲハ、アオネアゲハ等々が巨大化&湾曲化している。
【ギゴンオビモンアゲハ】
(2013.2 palu)
模様はオビモンアゲハと殆んど変わらないが、バカでかい。
オビモンアゲハとは別種だとされているが、どう考えてもオビモンアゲハが進化したものだ。
【アオネアゲハ】
(2013.2 palu)
コチラも巨大化が著しいが、別種ではなく、亜種扱いになっている。補足しておくと、青色の部分は本当は緑色。光の当たる角度によっては、こうゆう風に青色にも見えるのだ。
【アンドラノドルスオナガタイマイ】
(2013.1 palu)
模様はオナガタイマイとソックリだが、コチラもアホみたいに大きくて王者の風格がある。
アンドラノドルスは美しい。川の真ん中の水面スレスレを飛ぶ姿は優美にして優雅だ。
だが、優雅とはいっても速いし、岸辺には寄って来ないから採るのは大変だった。
【ミリナハレギチョウ】
(2013.1 タナトラジャ)
(2013.1 バンティンムルン&タナトラジャ)
ハレギチョウもスラウェシでは湾曲化&巨大化してる。
上は南部のもので下は中部のもの。北に行けば行くほど青くなってゆき、北部では青色になる。で、たぶん別亜種になるんじゃなかったかな。
他には、ベニシロチョウが巨大化プラス翅先トンガリになったオオベニシロチョウなんかも典型的な例だろう。画像は撮ってないから無いけど。
巨大化はしていないが、前翅は湾曲しているのも結構いる。
左上はシロモンチャイロイチモンジで、右上はクロクモイチモンジ。下はセレベスアサギゴマダラかな。
シロモンもそうだけど、クロクモの湾曲が激しいね。
(2013.1 タナトラジャ)
また、このように湾曲プラス擬態関係に有りそうなモノも数多くいるから楽しい。
上がユベンタヒメゴマダラで下がイスマレカバマダラ。両方ともマダラチョウの仲間で、おそらく互いに毒があるからミュラー型擬態だね。ようは、こうゆう柄のチョウは毒があると天敵に刷り込ませる機会を増やす作戦だね。
あっ、たぶん前の画像の中のセレベスアサギゴマダラも、おそらくマダラ系の奴に擬態しているものと思われる。
(2013.1 palopo)
右が、たぶん毒のあるマダラチョウだろう。左は無毒のヒカゲチョウの仲間だ。コチラは毒の無いモノが毒のあるモノに似せるというベイツ型擬態だね。先程、言及したセレベスアサギゴマダラも、このベイツ型にあたる。
このヒカゲには完全に騙された。横から飛び出してきた時は普通種のマダラチョウだと思ったが、咄嗟だったので体がつい反応して、瞬間的に思わず網を振ってしまったのだ。で、網の中を覗いてみて、何じゃこりゃ❓だった。
名前、何だったっけ❓
あっ、そうだ。確かインケルタダマシヒカゲだ。えーと、えーと、もう一つはねー、ビトレアヒメゴマダラだと思う。
そういやブルメイもオビクジャクアゲハが巨大化したものだったよな。
【フィリピンオビクジャクアゲハ】
(出典『蝶の標本 麗蝶』)
オビクジャクアゲハ(ルリオビアゲハ)はマレー半島で採ってるけど、ボロばっかなので展翅写真を撮ってない。なワケで画像を探したけど、ロクなのが無い。とゆうワケで、ソックリさんのフィリピンオビクジャクの画像を貼付した。それに、この方の展翅はキレイだからね。
ブルメイはオビクジャクと比べて馬鹿デカく、倍近くあるイメージが残っている。
【ブルメイアゲハ(オオルリオビアゲハ)】
(2013.1 palopo?タナトラジャ?)
タナトラジャでも採ったけど、コレは♀だから多分パロポ産だろう。
そういやタナトラジャからパルまでローカルバスで移動したんだけど、アレはスーパー地獄だった。エアコンどころか扇風機も無いオンボロバスで、しかも超満員で何故か現地のガキがずっとワシの膝の上に乗ってた。で、パルに着いたのは25時間後。オマケに郊外だった。そっから更にバイタク(バイクタクシー)の糞コスい親父と交渉して市内まで行った。もう、泣きっ面に蜂だったよ。
スラウェシ島ってデカいんだよね。確か世界で11番目に大きい島だった筈だ。
辛いことだらけの旅だったけど、スラウェシには、また行きたい。固有の凄い蝶がいっぱいいるのだ。
スラウェシには、およそ557種類の蝶がいて、日本の倍以上の蝶が生息するが、それでも隣のボルネオ島に比べて少なく、反対に1/2倍以下の種類数しかいない。しかし固有種は全体の約45%を占め、その割合は極めて高い。だから面白い。固有種ではなくとも分化が進んでおり、見る蝶、見る蝶が変なのだ。
また、マダラチョウ類の分化が激しく、38種もいて、世界でも有数なマダラチョウのホットスポットとなっている。
【コグナトスフタオ】
(裏面)
(2013.1 palu)
コグナトスは裏面がカッコイイ。表も悪くないけど、この複雑怪奇な柄が素晴らしい。
【アマンダベニボシイナズマ】
(2013.1 バンティンムルン)
アマンダもベニボシイナズマの中では、デカい(特に下の♀)。
♂は糞速くて、マッハで飛ぶ。
【タンブシシアナオオゴマダラ】
怪蝶だ。オオゴマダラの仲間は皆デカい巨人軍団だが、一番デカいバケモノ。これは自分では見た事も採った事もないから、いつか大空を飛ぶ姿を見てみたい。
【マルスフタオ】
フラッシュを焚くと、こんな感じ。
下翅のオレンジは傾けるとピンク色になる。幻光色なのだ。
軍神マルスも自分で採ってない。この2つとジョルダンアゲハは採ってないから、やっぱスラウェシには、もう1回行かないとね。
(ㆁωㆁ)あっ、しまった。大脱線じゃよ。
やっぱり虫の事を書き始めると長くなるわ。
芋の話に戻そう。セレベスは親子兼用品種で、親芋、子芋共に食用になり、子芋も大きく、収量が多い事でも知られている。
セレベスの旬は、秋から冬。9月中旬頃からけ1月頃まで出荷されます。食べ頃の旬は11月から12月。
まだ間に合うから、里芋好きは見つけたら買いですぞ。
つづく
追伸
大晦日だというのに、クリスマスの話を書いているのである。しかし、まだ話は続くのである。
書き忘れたけど、黒化する代表はスジグロカバマダラなんかが代表だ。画像は無いけど、オレンジの部分が黒ずむ。
(註1)ウォレスとウォレス線
アルフレッド・ウォレス[1823-1913]
イギリスの探検家。1854年から1862年にかけて東南アジアで生物の研究をしている折り、海峡を境に生物の特徴が変わることに気づき、インドネシアの動物の分布を二つの異なった地域に分ける分布境界線、ウォレス線を特定した(1868年)。生物地理学の父と呼ばれることもあり、ダーウィンとは別なアプローチで自身の自然選択を発見し、ダーウィンに理論の公表を促した。一説によれば、功を焦ったダーウィンが慌てて『進化論』を発表したとも言われる。
今日(こんにち)では、自然選択説の共同発見者であると同時に、進化理論の発展のためにいくつか貢献をした19世紀の主要な進化理論家の一人とされる。その中には自然選択が種分化をどのように促すかというウォレス効果と、警告色の概念が含まれる。
なお、ウォレス線の定義はバリ島とロンボク島(ロンボク海峡)、ボルネオ島とスラウェシ島、ミンダナオ島とモルッカ諸島からスラウェシ島の西側、マカッサル海峡を通り東に走り、フィリピンのミンダナオ島の南に至る線である。
一方、オランダ人の母とドイツ人の父を持つ動物学者マックス・ウェーバー[1852-1937]は貝類や哺乳類の分布の違いを基準に1902年にウェーバー線を提唱した。
この2つの線で生物層が異なるのは、氷期には海面が下降したからだと考えられている。海面下降により、東南アジア半島部からボルネオ島、バリ島までの一帯がスンダランドと呼ばれる陸続きとなっていた。同様に、パプアニューギニアとオーストラリアはサフルランドを形成していた。しかし、スンダランドの東側とサフルランドの西側は陸続きにはならなかったことから、それぞれの生物が交流する事なく独自に進化し、その状態が現在に至るまで続いていると云うワケ。
参考までに言っとくと、ウォレスについてはアメブロのブログ(蝶に魅せられた旅人)に『古代ギリシャの七賢人』と題して書いてる。
またスラウェシのスミナガシに関しては、同じくアメブロの捕虫網の円光シリーズに『墨流し』の回で触れている。