アーリオ・オーリオ・浅蜊と萵苣のパスタ

 
冷蔵庫と冷凍庫の残り物を処理していかねばならぬ。
アホな性格なので、スーパーに行くと冷蔵庫の中にあるものを忘れて、つい要らぬものを買ってしまう。で、冷蔵庫が食材で溢れてゆくのである。
なので、気がつけば食材が傷み始めている事が多い。これは多分、完全にオカンの遺伝だろう。オカンもよく古い食材を無視して買物してたから、冷蔵庫の奥から衝撃の形態の食材が発掘されてたからね。で、当然の事ながら廃棄される。
しかし、オカンと違うのはオトンのセコい遺伝子も受け継いでいるという事だ。オヤジはアッシがトイレに行ってるすきに部屋の電気を消して回るような過度なミミッちい精神をもっていた。自分はそこまで酷くはないが、その遺伝子もあるから、つい捨てずに何とかしようと思ってしまうのである。もう毎日が、賞味期限&消費期限という名の食材と時間との戦いである。

今回はそれほど酷い状態ではなかったが、冷蔵庫で萵苣(レタス)が一部茶色に変色しつつあった。そして浅蜊は冷凍庫で3か月、いや半年近く放置されていた。取り敢えず、この2つが当面のところ最も早急に消費せねばならぬものたちだ。

はてさて、どうしたものか(-_-;)❓
頭に浮かんだのは浅蜊とキャベツとアンチョビのパスタだ。そこにニンニクと鷹の爪を加えれば、間違いなく旨いからね。ようはキャベツをレタスで代用できないかと考えたのだ。しかし冷蔵庫で5年間鎮座していたアンチョビは、こないだ使い切っちゃったからない。
まあ、何とかなるっしょ。

フライパンに浅蜊を入れて、半解凍になったところで、ニンニク2片分をスライスする。このニンニクも剥き身で大量に安く売っていたので、つい買ってしまったものだ。それをオリーブオイルに漬けて保存していたものだが、これとて3ヶ月以上は経っているから褒められたものではない。
鷹の爪も入れる。鷹の爪は乾燥品だから、これは特に問題ないだろう。

パスタが茹で上がる4分前から、オリーブオイルと浅蜊、ニンニク、鷹の爪の入ったフライパンを火にかける。
火は弱火である。これはオイルにニンニクの香りを移すためである。パスタのニンニクをカリカリにしてしまうのは日本だけだ。それはそれで料理によっては有りなのだが、この場合は苦味が油に移ってしまうからヨロシクないのねんのねん。

パスタを表示茹で時間の2分前にフライパンに移す。同時にパスタの茹で汁をテキトーに加え、レタスもブチ込む。で、塩と昆布の顆粒だしで味付けする。昆布だしを入れたのは、アンチョビの代わりの旨味成分になるんじゃないかと思ったのだ。
途中でオリーブオイルを少し垂らして混ぜ合わせ、乳化させたら完成。

 

 
(☆▽☆)バチ旨やんけ❗
自慢じゃないが、めちゃんこ美味い。昆布だしのおかけで旨味は申し分ないし、レタスのシャキシャキ感がアクセントになってて、頗るヨロシイ。下手したらキャベツよか良い仕事をしてるかもしんない。
コレ、簡単だし作ってミソ。料理下手の若い子でも楽勝で出来ると思うよん♥️

ちなみに料理名をペペロンチーノではなく、アーリオ・オーリオとしたのには意味がある。
薀蓄をひけらかしちゃうと、日本でも今や定番のペペロンチーノの正式名称は「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」。イタリア語でアーリオはニンニク、オーリオは油、ペペロンチーノはトウガラシを意味し、塩ゆでしたスパゲティをニンニクとオリーブオイルだけで調味したものに唐辛子を加えたものだ。そして、日本では唐辛子入りのレシピが最初に紹介されたために、いつしか「ペペロンチーノ」と略して呼ばれるのが当たり前のようになった。
しかし諸外国では、この「ペペロンチーノ」という略称は全く通用しない。なぜなら、あくまでもアーリオ・オーリオのバリエーションの一つとして捉えられているにすぎないからだ。つまり、略し方としては正しくないとゆうことだ。「アーリオ・オーリオ」と略す方がまだしも正しい。
補足しておくと、アーリオ・オーリオはイタリアを始めとする欧米では料理の範疇には入らない簡易な軽食という認識があり、和食に例えれば「塩むすび」のような扱いみたいだ。なので、レストランのメニューとして並ぶ事は殆んどないそうだ。
実際、自分もバイクでイタリアの西の国境から入り、トリノ、ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリと主要な都市を駆け抜けてギリシャへと渡ったが、その3週間くらいの間でメニューに載っているのを見たことは一度たりともない。
日本って極東だから、間違って伝わるものも多い。例えばスパゲッティをスプーンとフォークで上品ぶって食べる女子は多いが、これとてイタリア本国では子供しか、そうゆう食べ方はしない。ようはチャイルドはスパゲッティを上手く食べられないから、そうゆう食べ方が許されてるってワケ。だから大人がそうゆう食べ方をすると、お子チャマだと笑われるのだ。

そういえばニンニクをカリカリに焼くという調理法は、イタリアの一部に逆輸入しているみたいだすよ。
日本では、良いも悪いも何かと極端に独自進化してしまう。古くは天ぷらとかカレー、豚カツ、コロッケ、オムライスも日本で独自進化して別な料理になったものだ。外国には、これらの起源となったものはあるものの、そのものの料理はない。
近いところでは明太子スパゲッティなど和風パスタもそうだし、ラーメンもそうだろう。照り焼きバーガーやライスバーガーも独自進化したもので、逆に海外で定番になってたりする。
食べ物以外でもそうゆうものが多いから、どうやら大概のモノが日本に入ってきたらメタモルフォーゼしてガラパゴス化するのだろう。
面白いから、まあそれはそれでいいとは思うけどね。

                        おしまい

 
追伸 
ちなみにレタスのことを昔の日本では、萵苣と書いて「ちしゃ」と呼んでいた。
「萵」は中国語で古代の国名を表していて、「苣」は葉っぱを意味している。つまり「萵苣」とは「古代の萵という国が原産の葉っぱ」という意味。
萵苣は中国語読みではワキョと読み、日本ではこの漢字をチサ・チシャと読んでいたそうだ。これはレタスを切ったときに出る粘り気のある白い液体のことを表している。由来は「乳草」で、ちちくさ→ちさ(ちしゃ)と変化した読み方なんだそうだ。つまりは「萵の国の葉っぱ」という意味の漢字に「乳草」を表す「ちさ(ちしゃ)」という読みが付加されたものが萵苣って事みたい。
ちなみにレタス(lettuce)の語源は牛乳を表す「Lac」というラテン語からの来歴なので、日本でもヨーロッパでもレタスの呼び名は切ったときに出る白い液体が共通の由来のようだ。
そういや、この乳液には麻薬成分が入っていて、レンチンしたものを「レタス・オピウム」といって、一部のジャンキーが合法ドラッグとして愛用していると何かの本で読んだ事がある。オピウムは「阿片」のことだから、幸せダウナーになるのかなあ❓
やんないけどさ。