香箱蟹

 
目の前で脚がグワッと大きく動いた。
不意だったので、(ΦωΦ)ビクッとして一瞬固まったよ。
生のセイコガニだと頭の隅では認識してたけど、どうせスーパー玉出のカニだから死んでるとばかり思っていたのだ。あとはセイコガニの漁は12月一杯で終わっている筈だから、生きてる奴がいるワケがないという考えも底にあった。ようは冷凍品を解凍したものだとばかり思っていたのだ。
見ると、パッケージのラップに穴があちこち開いている。きっと尖った脚先が突き破ったのだろう。
ちなみにセイコガニとは、別名セコガニとかコウバコガニ、コッペガニと呼ばれるズワイガニのメスの事ね。ズワイガニはそのままの名前で呼ばれることはあまりなく、松葉ガニ、越前ガニを筆頭に加能ガニ、間人ガニ、津居山ガニ等々多くの異名があり、それぞれにブランド化しておるのだ。まあオスがそんなだから、メスだってコレくらい異名があって然りなんだろね。

産地は宮城産とある。それで謎が解けた。ズワイガニは日本海のモノだというイメージが強いが、茨城県以北の北太平洋でも水揚げされてるのだ。そして日本海側の産地では珍重され、資源保護のためにメスの漁期が2ヶ月と厳しく制限されているが、他の産地ではそれ程でもないみたいなのだ。だから、この時期でも生きてるメスが出回るのだろう。

値段は2杯で498円。
脚はそれぞれ2本ずつ取れているが安い。買いである。メスなんて足が小さいから1〜2本取れてたところで、どって事ないのだ。そもそもメスの価値は卵にあるもんね。

外部の袴部分の内側にある赤黒い卵を外子、甲羅内にある鮮やかなオレンジ色の卵巣(未成熟の卵)を内子と呼ぶ。
外子はプチプチのシャキシャキ。内子はみっちり、ねっとり、こってりの濃厚な味わいがある。

 

(出典『山陰のおみやげ本舗なかうら』)

 
個人的には蟹味噌と同居する内子の方が断然美味いと思う。
そういや、今頃からが旬のワタリガニ(ガザミ)のメスの内子も美味いんだよなあ。

さて、御託はこれくらいにして調理にかかるか。

①圧力鍋に水1.5L、塩大さじ2を加えて沸騰させる。
生きてるからちょっと気が引けるが、蟹を腹を上にしてブチ込む。してからに落し蓋をして圧力鍋の蓋もしめる。落し蓋をするのはカニが浮いてこないようにするためだ。で、15〜20分茹でる。

②茹で上がったら、冷水で締める。これは見離れをよくするためだ。
あとは甲羅に外子とほじった身を詰めてゆく。これを金沢辺りでは香箱と呼ぶのである。

しっかし、この蟹の身をほじるのって苦痛である。正直、死ぬほど面倒くさい。プラモデル作りや蝶の展翅とかが嫌いなのも辛気臭いからだ。性格上向いてないのである。あ〜、もしかしたら料理もそうかも…。
それでもちゃんと出来るのは、けっして苦手ではないからだ。自分で言うのも何だが、そこそこセンスはあるのじゃよ。あとはプライドかな。スポーツでも何でも自分が出来ないのが許せない人なのだ。あまり努力しなくとも出来ちゃう人なんだけどね。人は、そうゆうアタクシを器用貧乏と呼ぶんだけどもね。

ブツブツ言いながらも完成。

 

 
上からカニ酢と醤油をチビッとかける。

(´ω`)うま〜。
蟹の甘みとカニ味噌のホロ苦さ、内子の旨味との絶妙なるハーモニーだ。そして外子のプチプチした食感がアクセントになっており、至福の時間が訪れる。香箱、最高だな(人´∀`)。゚+
苦労して身をほじった甲斐があったよ。

食べながら、ふと思い出す。そういえば香箱蟹については過去にも書いてる筈だ。
調べたら、やはりあった。『名残りと走りの献立』、『2016年 初冬の献立』と題して書いている。但し、このサイトではなくてアメブロの方の『蝶に魅せられた旅人』だけどね。

 

 
来年は艶っぽいお姉さんと日本海の鄙びた温泉に行って、熱燗で挿しつ挿されつ、しっぽりしながら蟹を食いたいよなあ…。

                        おしまい

 
追伸
そういや昔、当時の彼女が株か何かで儲かったとかで、日本海に蟹食いに連れてってくれたんだよね。
たしか鳥取県の岩井温泉。そこのいい感じの旅館だったな。
💡そうだ、思い出したわ。『岩井屋』だ。1200年もの歴史がある老舗旅館なんだよね。源泉100%かけ流しで、立って入る風呂があったな。もちろん蟹もデカくて美味かった。
あそこだったら、また行きたいよなあ…。