奄美迷走物語 其の五

 
 第5話『(´ε` )何だかなあ…』

 
 2021年 3月23日

 

 
デイゴの花が咲きかけている。
知名瀬トンネルに向かう道の途中で鮮やかな赤が目に入ったので、思わずバイクを停めたのだ。

花が咲くと、こんな感じだ。

 

(出典『FUNPO』)


(出典『okinawaclip.com』)


(出典『てぃだにすま宮古島』)

 
デイゴの花には青空がよく似合う。
ダイビングインストラクター時代に過ごしたサイパンでも咲いてたなあ…。夏になると島の沿岸がオレンジ色に染まるのだ。
戦前、ミクロネシアの島々は日本に統治されていたため、多くの日本人たちが移り住んでいた。そんな故郷を離れた人たちが日本を懐かしみ、この木を南洋桜と呼んでいたと聞いたことがある。

どうせ天気が悪いから蝶は飛びそうにないので、その場で検索ちゃん。

 


(出典『サイパンの花 SEASHORE BLOG』)

 
(・o・;)あれっ❓、何か違うぞ。
てっきりデイゴだと思っていたサイパンの赤い花は、どうやら火炎樹(フレームツリー)という全く違う種類の木のようだ。
でもフレームツリーで検索すると、火炎樹、火焔木、鳳凰木、南洋桜とか色々出てきてワケわからんくなる(註1)。ラチあかんわい。帰ってから再度検索ちゃんだね。気が向いたらの話だけど。

取り敢えず昨日のミカン畑へと向かう。
途中、網を持った爺さんたちがいたので停まって話をする。現地での情報収集は大事だ。聞いといて損はないだろう。

お二人はイワカワシジミ狙いで来たらしい。しかし全く姿を見ずとの事。ついでに去年ここで発生していたシロウラナミシジミの事を訊いたら、すぐ横を指さされた。見ると、川向うに幼虫の食草であるシュクシャが山ほど生えていた。去年の秋に来た時には、その辺で乱舞していたらしい。でも今回は全く見掛けないと言う。

 
【シロウラナミシジミ Jamides alecto】

(2009.11 石垣島)


(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
シロウラナミさんは奄美大島には本来はいない蝶だから、さらに南の島から渡ってきた迷蝶扱いとなる。地球温暖化で、そのまま土着しててもおかしくないんじゃないかと思ってたが、寒さに負けて冬を越せなかったのかもなあ。ターゲットであるアカボシゴマダラやフタオチョウ採りの合間にでもチョチョイと摘んでやろうと思っていたが、アテがハズレた恰好だ。
楽勝と思ってたシロウラナミ如きも採れんのか…(´-﹏-`;)
(´ε` )何だかなあ…。

奥に進むと、もう一人網を持った人がいた。
話を聞くと、蝶も採るけどメインは鳥の写真撮影らしい。蛾もやると言うからアマミキシタバの事を尋ねたら、蛾は蛾でも昼蛾がメインらしくって、モンシロモドキなる蛾をわざわざ見せてくれた。良い人だ。

 
【モンシロモドキ】

(出典『Picuki』)

 
見せて貰っといて申し訳ないが、少しは蝶っぽいもんかと思ったら、どう見ても蛾風情だ。ようは何ら有益な情報は得られなかったというワケだ。(-_-;)何だかなあ…。

ポイントに到着するが、相変わらず空はどんよりだ。昨日ほどではないが気温も低い。予想どおり蝶は何も飛んでいない。

モンシロモドキらしきもん(註2)が飛んで来たので、一応採った。どうせコイツら、曇ってても飛ぶんだろなあ。いまだ蛾には偏見ありなのだ。

 

 
蛾にしてはスタイリッシュな気がしないでもない。
さておき、さっき見せてもらったヤツとは少し違うような気がするぞ。
そういやモンシロモドキにも幾つか種類があると言ってはったなあ。でもどうだっていいや。所詮は蛾なのだ。しかも、こうゆう腹が黄色くて白地に黒い点々がある奴って本能的に気持ち悪いんだよなあ。白と黒に黄色が加わると、とたんに自分にとっては最悪の色の組合せになる。だからユウマダラエダシャク系の蛾を見ると背中がブルッときて、殺意が芽生えるのだ。

 
【ユウマダラエダシャク】

(出典『新・ぼちぼち植物などを』)

 
天気は相変わらずだが、気温が少し上がり始めたのでアゲハ類が飛び始めた。しかし昨日みたいにジャンジャン飛んで来るというワケではなくて散発だ。

 
【アマミカラスアゲハ♂】

 
それに♂はチョボチョボ飛んで来るが、狙いの♀は全然飛んで来ない。プーさん曰く、アマカラは赤い網に寄ってくるというが、フル無視だしさ。よくよく考えてみれば、昔、秋に来た時にも赤網だったけど、寄ってきたという記憶は全然ないもんな。ハッキリと効果があったのはツマベニチョウだけだ。

 
【ツマベニチョウ♂】

 
今回、興味を示すのはモンキアゲハだけだ。かえってそれがウザい。おまんらなんぞ、要らんのだ。
段々、💢イライラしてきた。この場所に来てから、ずっと小バエと云うか目まとい(註3)的なモノどもにタカられっぱなしでストレスが溜まりまくりなのだ。

午後2時。何気に振り返ったら♀が目の前をコチラに向かって飛んで来た。
心が瞬時に沸き立つ。しかし網の柄を目一杯に伸ばしていたから、そのままでは近過ぎて振れない。
けどワシのバッティング技術をナメんなよ💢(-_-メ)❗咄嗟に後ろ足を引いて、野球の内角打ちみたく腕を縮めて左下から右上に振り抜く。
 
∑(=゚ω゚=;)ガビーン❗やってもたー
それでもやっぱ近過ぎて、懐に入られて空振り。しかもスウェーしながら振ったからバランスを崩して後ろ向きに尻餅をついた。
何とも不様な恰好である。それを嘲笑うかのように彼女はゆったりと羽ばたきながら優雅に上へと舞い上がり、やがて梢の向こうへと消えて行った。
そして、それっきり二度と♀は姿を現さなかった。
今思えば一旦スルーして、振り向きざまに後方から網を振るべきであった。柄の長さに合わせて間隔を空けてから落ち着いて振れば何て事なかったのだ。間合いは自分で作るべきものなのだ。それが蝶採りの極意なのだが、まだまだ修行が足らんよ。
ここ数年は蛾のカトカラ採りが中心で、ろくに蝶採りをしとらんからこうなるのだ✿§∞◆〆▲□●♯∌ゴニョゴニョ。我ながら言いワケがましい。自己嫌悪で益々落ち込む。身も心も絶不調だよ。

2時半に諦めて移動。あかざき公園へと向かう。
狙いはアカボシゴマダラとフタオチョウだ。今回のターゲットの蝶に敢えて優先順位をつけるとしたら、1位がイワカワシジミの♀、2位アカボシゴマダラの春型、3位フタオチョウの春型、4位がアマミカラスアゲハの♀という順になる。
奄美大島のイワカワの春型♀は白い紋が発達する特異な型で美しい。2位のアカボシの春型は他の時期のものよりも白くて、翅形も違うから欲しい。3位のフタオは元来がフタオチョウ類大好き男だし、春型は見たことがないからだ。とはいえ、夏型と見た目はあまり変わらないらしいから3位なのだ。アマミカラスアゲハの♀は単に美しいから欲しい。特に春型の♀は美しいからね。これらの採集難易度は自分の中では横一列ってところだろうか。此処ではフタオを除き、それぞれ秋には採っているから基本的な生態は知っているからね。正直、何とでもなると思ってる。強いて言うならば、アカボシの♀だろうか。2011年は♀を採るのにかなり苦労したのだ。滅多に姿を見せないし、採れても鳥のせいで翅が一部損傷していて完品がどうしても採れなかったのだ。ある意味、振り回されたと言ってもいいような状況だったのだ。

 

(出典『SEPT』)

 
一番高台に登る。
アカボシゴマダラは午後3時くらいになると、山頂や尾根で雄同士が縄張り争いをするのだ。奄美大島でのフタオチョウとの遭遇は未体験だが、おそらく同じように縄張り争いをするものと思われる。ようは、それらをイテこましてやろうという算段なのだ。

周囲の木に🍌バナナトラップもかける。アカボシもフタオも成虫の餌は樹液や熟して発酵が始まったフルーツだから、
(☉。☉)おっ❗、こんなとこに甘々の御馳走があるやんけー。(^o^)vラッキ〜
ってな具合で寄ってきたところをテゴメにしてやるつもりなのだ。
ψ(`∇´)ψケケケケケ、悪いオジサンの謀略にハマり、毒牙にかかって何処までも落ちてゆけばいいのだ。
この二段構えの布陣で今度こそ結果を出して、そのまま連勝街道の波に乗ろうじゃないか、🎵フォンテーヌ。

しっかし、3時半になっても飛んで来ん。来る気配すらない。
やっぱ晴れんと飛んで来んかあ…。バナナトラップには蝿一匹来ないし、明日も明後日も天気予報は悪いし、何か絶望的な様相だ。
それに、さっきから矢鱈と手と顔が痒い。
見ると、手の甲がヤバいくらいにパンパンに腫れあがってる。

 

 
顔も痒くて、触るとボコボコだ。きっとケンカでタコ殴りされたみたいになってんだろなあ…。男前が台無しだよ。
たぶん目マトイだと思っていた奴らはブヨだったに違いない。この激しい痒みと腫れあがり、岐阜県にタカネキマダラセセリ(註4)に会いに行った時にボコボコに刺された時と同じ症状だ。

 
【タカネキマダラセセリ】

(出典『Wikipedia』)

 
掻きまくって耳の縁が血だらけになって、揚句にはカサブタでボロボロ。で、当時の彼女に『何それ❓かさぶたデビルイヤーやんか。』と笑われたのだった。だから翌年は万全を期して虫除けクリームを塗りたくって参戦した。おかげで被害はゼロだったんだけど、代わりに現地で会った爺さんに蚊柱ならぬブヨ柱がモウモウと立ってた。そっちに集中攻撃とあいなったワケだね。遠目に見て、アレには笑ったもんな。自分もきっとあんな状態になってんだろなあと思うと、二重にオカシかったよ。

午後4時前。
急に自分のいる場所だけ雲が切れ始めて青空が覗いたと思ったら、サァーと陽が射した。我ながらに、そのスーパー晴れ男振りに驚く。天気予報、関係あらへん人なのだ。とにかく良い兆しだ。今度こそ波に乗れるんじゃないかと期待がボワッと膨らむ。

そして、その5分後くらいだった。
高さ約3メートル、青空をバックに大型の白い蝶が正面から猛スピードで飛んで来た。

(°o°)フタオチョウだ❗しかもメス❗❗

だが、茫然と見送るしかなかった。
突然のことで、何が飛んで来たのか直ぐにはワカランかった。で、フタオだと認識した時には既に頭上を通過しようとしていた。振ったところで間に合わない。そして一直線に背後の東屋を越えて行った。幻のような光景だった。一拍おいて現実に立ち戻り、慌てて反転して追いかけて東屋の向こう側に出るも、しかしその姿は忽然と消えていた…。

(´д`)マジかよ❓

そういや知名瀬で会った爺さんの一人が、このポイントはフタオが飛んで来ても止まらずに通過すると言ってたなあ…。
まあいい。それなら空中でシバけばいいだけの事だ。ワシの鬼神の如き網さばきをナメんなよ(-_-メ)

しかし暫くするとまた曇り始め、二度と飛んでは来なかった。
退屈しのぎでキオビエダシャクでも採ろうかと思うが、突然どこからともなく現れて、止まらずに直ぐにどっかへ飛んで行ってしまう。オマケに飛ぶ位置が高くて、殆んど網が届かない。
キオビエダシャクさえも採れんのかと思うと、何だか情けなくなってきた。(;_;)ベソかきそうだよ。
(´ε` ) 何だかなあ…。

                         つづく

追伸
何だかなあ…の連発である。
でもホント、その時は何度もそんな気持ちになっていたのである。負の連鎖に抗うも、ことごとく返り討ち。どうしようもなかったのだ。

以下、解説編だけど、本文よりも解説の方が圧倒的に長いって、それってどうよ❓
(╯_╰)何だかなあ…。

 
(註1)火炎樹、火焔木、鳳凰木、南洋桜とか出てきて…
調べてみたが、正直ワケわからん。ワカランけどワカランなりに整理して解説しよう。

先ずはデイゴから。
学名 Erythrina variegata。マメ科マメ亜科の落葉高木で、漢字だと梯梧と書くそうだ。
インドからマレー半島が原産。日本では沖縄県が北限とされているが、奄美大島の隣の加計呂麻島の諸鈍海岸には約80本の並木道があるなど、あちらこちらで大木が見られる。これは交易船の航海の目印とするため等で沖縄から植栽されたものだといわれている。
春から初夏にかけて花を咲かせるが、毎年満開となるという保証はなく、年毎の差が大きいそうだ。
近年は、台湾方面から飛来・帰化したとされるコバチの一種デイゴヒメコバチ(Quadrastichus erythrinae)による被害が相次いでおり、問題になっている。このハチはデイゴの葉や幹に産卵して虫こぶを作り、木を弱らせて枯らす場合もあるため、沖縄県では対策を急いでいるらしい。

どうやらフレームツリーと呼ばれている木は2〜3種類あるようで、サイパンのものは火炎樹ではなくて、日本では鳳凰木と呼ばれているモノのようだ。

ホウオウボク(鳳凰木)
学名 Delonix regia。マメ科ジャケツイバラ亜科の落葉高木で、原産はマダガスカル島。樹高は10〜15m。樹形は樹冠が傘状に広がり、葉は細かい羽状複葉。直径10cmほどの5弁で蝶形の緋紅色の花を咲かせる。
熱帯地方では街路樹や公園樹として植えられ、日本でも沖縄県などで導入、植栽されている。しかし、これまたホウオウボククチバという蛾の幼虫による葉の食害が問題となっている。

【ホウオウボククチバ Pericyma cruegeri】

(出典『幻日の雑記帳』)

ヤガ科 シタバ亜科に属するそうだが、汚い蛾だねぇ。
もしワシが被害にあってる街の人だったら、🔥ゴオーッ。確実に憎悪の炎を燃やすね。

ネットを見ていると、ブログなんかは素人が書いているから鳳凰木と火炎樹、フレームツリー等々とかゴッチャになっていて、何が何だかワケわからんくなってる。明らかに間違っている記述も多く、どうみても錯綜状態なのだ。
絶対正しいとは言い切れないが、ここはまだしも信頼できるウィキペディアに頼って書き進めていこう。

次に火炎樹だが、検索すると真っ先に出てくるのがカエンボク(火焔木)だった。

 
【カエンボク】

(出典『Wikipedia』)


(出典『夏の柿の実』)


(出典『かぎけん花図鑑』)

学名 Spathodea campanulata。
ノウゼンカズラ科に分類される花木。別名アフリカンチューリップ。ジャカランダ、ホウオウボクとあわせ世界三大花木と称される。
西アフリカ原産の常緑高木で、樹高は12〜25mほどになる。一年を通じて釣鐘形の赤みがかったオレンジ色の花を咲かせる。大きく派手な花を枝先に多数咲かせ続けるので、世界中の熱帯域で街路樹や庭園木、観賞目的の花木として広く移入されている。

確かにノウゼンカズラと似ていて、葉の形からマメ科じゃないことがよく分かる。

【ノウゼンカズラ】


(出典『あきた森づくり活動サポートセンター』)

花は夏に咲く。目にすると、いつも妖艶だなあと思う。何だか心がざわつく花なのだ。

再びカエンボクの話に戻る。
本種の有するパイオニア性や多産性、強靭な生命力といった特徴は、いずれも侵略的外来種とされる植物に共通するもので、実際アメリカやオーストラリアなど太平洋各地で野生化している。ICUNでは本種を世界の侵略的外来種ワースト100の1種に選定しており、ハワイなど多数の固有種からなる植物相を有する太平洋の島嶼部の生態系への侵入を懸念している。
日本では植物園の温室等の他、沖縄県や小笠原諸島で庭木等として植栽されているが、野生化の報告は2008年現在までない。耐霜性がないところから、沖縄や小笠原以外の地域での日本国内での野生化の可能性は薄いが、沖縄や特に固有種の多い小笠原で野生化する可能性については注意を要すると考えられ、外来生物法の要注意外来生物リストに掲載されている。

このサイトで、和名の錯綜に対する1つの解答を見つけた。以下に抜粋する。

「カエンボク」という和名は、オーストラリア産のオオバヤドリギ科植物ヌイチア・フロリブンダ(Nuytsia floribunda 英名 Christmas tree,flame tree)や同じくオーストラリア産でアオイ科(旧アオギリ科)のゴウシュウアオギリ(学名 Brachychiton acerifolius 英名 Illawarra flame tree)に対して用いられた例もある。また、同じ三大花木の1種であるホウオウボクを「カエンジュ(火焔樹)」と称することがあり、本種(カエンボク)と取り違われることが度々ある。ちなみに中国語で火焰樹というと本種のことを指す。

だいぶスッキリした。でも、また新手が出てきたなあ。

 
【Nuytsia floribunda】

(出典『オーストラリアン ワイルドライフ』)

真正双子葉類ビャクダン目に属すオオバヤドリギ科に分類される。西オーストラリアに見られる半寄生植物で、根から近くの植物の養分を吸い取って成長し、10mほどの大木になる。
この科は殆んどが半寄生の低木からなり、他の樹木の枝に着生する所謂ヤドリギ類に含まれるのだが、根に寄生するものは特異で、この1種のみのようだ。
南半球の夏の間、クリスマスの頃に鮮やかで明るい黄色やオレンジ色の花が咲かせることから、クリスマスツリー、西オーストラリアのクリスマスツリーなどと呼ばれている。
和名を探したが、オーストラリアン・クリスマスツリーとしか出てこず、とくにはないようだ。

 
【ゴウシュウアオギリ】

(出典『Wikipedia』)


(出典『園芸手帳』)

アオギリ科 ブラキキトン属。オーストラリア東部原産の高さ10~30メートルになる半常緑高木。ベル形の真っ赤な花を咲かせる。和名の「アオギリ」は濃緑色の樹皮に由来する。

最後に南洋桜について調べて終わろう。

 
【ナンヨウザクラ】

(出典『Health Benefits times』)


(出典『Wikipedia』)

ナンヨウザクラ(南洋桜、Muntingia calabura)は熱帯アメリカ(カリブ海沿岸からペルー)原産の常緑高木。クロンキスト体系ではシナノキ科であったが、APG植物分類体系ではナンヨウザクラ科とされる。世界の熱帯各地で観賞用や食用に栽培されている。
花は5弁で白い。果実は円い液果で赤く熟し、香りと甘味があって食べられる。和名は見かけがサクラに似るためで、英語でもジャマイカンチェリーなどと呼ばれるが、サクラとの類縁関係はない。また、同じように熱帯アメリカ原産で広く栽培されるテイキンザクラもしばしば同じく「南洋桜」と呼ばれるが、これはトウダイグサ科でやはりサクラとの類縁関係はない。

おいおい、また新たなもんが出てきたよー。すんなり終わらせてくれないよなー。

 
【テイキンザクラ】

(出典『Wikipedia』)


(出典『花と観葉植物』)

テイキンザクラ(提琴桜 Jatropha integerrima)は西インド諸島(中米)原産の常緑低木。トウダイグサ科ヤトロファ(ナンヨウアブラギリ)属に分類される。花は5弁で見かけはサクラに似ており、桃色または鮮紅色。
提琴とはバイオリンのことで、葉の形がバイオリンを連想させることに因む。しばしば南洋桜とも呼ばれる。

ネットで見てると、ナンヨウザクラとテイキンザクラもゴッチャになっている。で、日本ではテイキンザクラを南洋桜と呼んでいるケースの方が多いようだ。

やっと終わったと思ったら、このサイトで又しても次なる刺客が現れた。
あとデイゴに似た海紅豆(アメリカデイゴ)も南洋桜と呼ばれるようなのだ。(-_-メ)しゃらくせぇ。

 
【アメリカデイゴ】


(出典『生きもの好きの語る自然誌』)


(出典『庭木図鑑 植木ペディア』)

アメリカデイゴ(亜米利加梯梧 学名 Erythrina crista-galli)は南アメリカ原産のマメ科の落葉低木。和名はカイコウズ(海紅豆)だが、あまり使われておらず、アメリカデイゴと呼ばれることの方が多い。
沖縄県外では奄美群島のほか小笠原諸島にも自生しており、鹿児島県の県木であり、アルゼンチン、ウルグアイの国花でもある。

待てよ。花の蕾は知名瀬近くで見たデイゴと似てねぇか❓
奄美にも自生していて、鹿児島県の県木とあらば、その可能性はあるだろう。
でも、花期は6~9月頃とあるから、違うのかなあ…。まあ、どっちだっていいけど。もう疲れてて、うんざりなのだ。これくらいで勘弁してくれ。

 
(註2)モンシロモドキらしきもん
帰ってから調べてみるとモンシロモドキではなくて、キハラモンシロモドキという別な種類だった。

キハラモンシロモドキ Nyctemera cenis(Cremer,1777)

(2021.3.23 奄美大島 知名瀬林道)

触角は♂が櫛歯状、♀はそうならないから、この個体は♀だね。


(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

【開張】 38〜45mm。
モンシロモドキに似るが、前・後翅の中室に黒紋を欠くこと、腹部は橙黄色と黒の縞模様を呈することで区別できる。
【分布】 屋久島,種子島,トカラ列島,奄美大島,沖縄本島,石垣島,西表島。国外では東南アジアからインドにかけて広く分布する。
【生態】 6,7,8月に得られている。
【幼虫の食餌植物】未知
【亜種】亜種区分はされていない。

あれっ❓、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』には発生期は3月とは書いてなくて、完全に夏じゃないか。どゆ事❓
ネットで調べたら、沖縄本島ではあるが3月の生態写真があった。そのサイトによると、南方からの偶産蛾ではなくて昔からの土着種で、絶滅危惧種なんだそうな。しかも未知となっていた食草もヌマダイコン(キク科)であることが判明しているようだ。蛾は蝶と比べてまだまだ生態が未知なものが多く、書き変えられる事も多いんだろね。

一応、モンシロモドキのことも解説しておく。

モンシロモドキ Nyctemera adversata (Schallel,1788)

(出典『蝶の図鑑』)


(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

【開張】 約48mm
【分布】 本州,四国,九州,対馬,屋久島,トカラ列島,奄美大島,徳之島,沖永良部島,与論島,久米島,宮古島,石垣島,西表島
【出現期】 3~10月
八重山諸島では一年中。
【幼虫の食餌植物】 キク科ヒメジョオン,タケダグサ,サワオグルマ,コウゾリナ,スイゼンジナ,ベニバナボロギク
【生態】昼行性のヒトリガで花によく集まる。ヒラヒラと飛ぶ姿がモンシロチョウのように見えることからモンシロモドキの名前がある。触角は雌雄共に櫛歯状だが、♀では櫛が短い。

モンシロモドキには他にも幾つか種類がいるようだ。

ツマキモンシロモドキ Nyctemera lacticinia (Cremer,1977)
【開張】 40mm内外
【分布】 種子島,屋久島,沖縄本島,大東諸島,宮古島,石垣島,西表島。国外では東南アジアからインドまて広く分布する。日本での記録は土着ではなく、南方からの偶産蛾だと考えられている。
【生態】 5,6,10月に得られている。
【幼虫の食餌植物】 ヨブスマソウ(キク科)

 
ネッタイモンシロモドキ Nyctemera coleta (Stoll,1781)
【開張】 49mm内外
胸・腹部は白色で末端は橙黄色。
【分布】 屋久島,石垣島,西表島で、それぞれ1頭ずつが採集されているだけである。国外ではインドから東南アジア、オーストラリアにかけて分布する。
【幼虫の食餌植物】未知

 
デバリモンシロモドキ Nyctemera carissma (Swinhoe,1908)

(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

開張45mm内外。
西表島で1963年の3月に得られた1♂のみが唯一の記録。
国外では台湾、中国、インドシナ半島に分布する。

 
オキナワモンシロモドキ Pitasila okinawensis (Inoue,1982)

(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

【開張】 43〜48mm
腹部が白色なので、他のモンシロモドキ区別できる。
【分布】 喜界島,徳之島,沖縄本島,宮古島,石垣島,西表島,波照間島,大東諸島,尖閣諸島。国外からは知られていない。
【生態】 2〜10月に得られている。
【幼虫の食餌植物】 モンパノキ(ムラサキ科)

 
(註3)目まとい、メマトイ

(出典『くまもと自転車紀行』)

誠にもって忌々(いまいま)しい存在だが、特定の昆虫を指すのではなく、人の眼の周りにまとわりつく昆虫の総称とされ、小型のハエを指す場合が多い。代表的な種に春先に山地でシツこく眼にまとわりつくクロメマトイやショウジョウバエ科のマダラメマトイがある。ちなみに画像はクロメマトイで、コイツにタカられるケースが圧倒的に多い。この前も生駒山地でタカられまくってチョウ採りどころではなくなり、ひたすら網に入れてはグシャグシャに網を丸めて潰し続けてた。たぶん300匹くらいはジェノサイド、大量虐殺してやったわい。
眼に飛来するのは涙を舐めるためだと言われ、マダラメマトイは犬や猫、人の眼に寄生するセンチュウ(線虫)の一種である東洋眼虫の媒介者でもある。西日本、特に九州では被害例が多いという。
又あるサイトよれば、コヤツらには虫除けスプレーやハッカ油が効かないらしい。小賢しい限りである。ちなみに吸血はしない。それだけが唯一の救いだが、許せない存在であることには変わりない。思い出してもイラつくわい。

 
(註4)タカネキマダラセセリ


(2014.7.12 岐阜県高山市)

学名 Carterocephalus palaemon (Pallas,1771)
日本では長野県・岐阜県・富山県下の北アルプス(飛騨山脈亜種 ssp.satakei)と山梨県・長野県・静岡県下の南アルプス(赤石山脈亜種 ssp.akaishianus)のみに分布する高山蝶。
標高2000m以上の草原に局地的に棲息する稀少種ゆえに飛騨山脈亜種は長野県で、赤石山脈亜種は全県で採集禁止になっている。
国外ではヨーロッパから東アジア北部と北米大陸北部に広く分布している。ちなみに本文中に貼付した画像はヨーロッパ産のもの。理由は単に写真が綺麗だったからである。
6月下旬から8月にかけて見られ、緑の葉上にチョコンと止まる姿はとても愛らしい。ゆえに個人的にはクモマツマキチョウと並ぶ妖精の化身だと思ってる。
幼虫の食草はイネ科のイワノガリヤスで、成虫になるのに足かけ三年をようする。そんなワケなのか、個体数が多い年と、裏年と呼ばれる数が少ない年とが交互に訪れると言われている。また何年かに一度、極めて個体数が少ない裏裏年というのもあるそうだ。最初に探しに行った時は、この裏裏年で、見事なまでの惨敗を喫した。
なお、タカネキマダラセセリについてはアメブロの方の「蝶に魅せられた旅人」に書いている。捕虫網の円光『奥飛騨慕情』と題した連載モノです。よろしければ、そちらの方も読んでくだされ。

  
ー参考文献ー
◆『Wikipedia』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
◆白水隆『日本産蝶類標準図鑑』