青春18切符 1daytrip 春 第二章(1)

 

第1話 往年のギフチョウ

 
2020年 4月6日

JR難波から今宮駅まで行き、環状線に乗り換えて大阪駅へ。
この今宮駅で乗り換えるのが七面倒臭くて、毎回イヤんなる。本来、大阪駅に行くならば、地下鉄の御堂筋線もしくは四ツ橋筋線のなんば駅から乗るのが常道である。なんばから梅田(大阪駅)まで一直線の最短距離を走るから、その方が圧倒的に早い。しかも本数も多いから断然便利なのだ。
一方、JRを使う場合は一旦今宮もしくは新今宮駅まで南下し、そこから環状線で大回りに弧を描いて大阪駅へと向かわなければならない。つまり距離的にも遠いし、乗り換え時間もあるから倍以上の時間を要するのである。
これはひとえにJR難波駅が終着駅であるからだ。
ここ難波周辺に住むようになってからは、JRが難波と大阪駅とで直かに繋がっていないのは不便極まりないことに改めて気づかされた。なぜに延伸させなかったのかなあ?という疑問が一挙に噴出したのである。
とはいえ平野区に住んでいた時は、さほど気にならなかった。JR難波駅はその昔は難波駅ではなかったからだ。25年程前までは湊町駅(註1)という駅名だったので、難波駅じゃないんだから、それも致し方ないのかなあと思っていたのである。繁華街とはちょっと離れているがゆえ、エリア外として線引きされても仕様がないと理解してたってワケ。それが地下駅となり、名前もJR難波と改称された時には強い疑問を持った。憤然、そのまま地下を掘り進めて大阪駅に繋げればいいではないかと思ったのである。

しかし、それが将来的には解消されることをつい最近になって知った。どうやら新大阪まで繋がる路線の工事が始まっているらしい。


(出典『Response』)

「なにわ筋線」といい、梅田貨物駅跡地に新しく「北梅田駅」を新設し、従来からある貨物線を利用して新大阪駅まで繋げるという構想らしい。南海電鉄(南海なんば駅)と阪急電車(十三駅)との相互乗り入れも決定しているという。つまり新大阪から関西空港までの直通電車が誕生し、大幅にアクセスが良くなるってワケだ。
但し、工事の完成予定は2031年になるそうだ。果たしてそれまでここに住んでいるのかね❓何か恩恵を受けずじまいになりそうな気がするよ。

それはさておき、こうして地図を改めて見ると驚かざるおえない。赤線の新線左横のグレーの膨らんだ線が、おそらく環状線だろう。だとしたら、難波から梅田まで如何に遠回りしているかが今更ながらよく解るじゃないか。
とはいえ、今日は御堂筋線に乗る気はない。なぜなら青春18切符の旅とは、やむおえない場合を除いては一筆書きであらねばならぬという強い信念があるからだ。そして、どんだけJRを乗り倒してやったかが、自分の中で重要なのだ。そこに何となく達成感みたいなのがあるのである。青春18切符に便利という視点は要らない。むしろ不便さとその苦難に耐え、途中下車も有りいので、ジワジワと目的地に近づいてゆくところに醍醐味があるのである。

のっけから物凄く話が逸れた。
いつもの悪い癖だ。ロクに構想無しで思いつくままに書いているから、ついつい興味のある方に引っ張られてしまい、こうして脱線してしまうのである。(^~^;)ゞまっ、今回は電車の話を書いているので脱線も致し方ないか(笑)。
あっ、いかん、いかん。電車に脱線は洒落にならんな。以後、努めて脱線なきように書き進める所存である。

大阪駅で宝塚線の丹波路快速に乗り換える。
比較的乗り慣れてる電車なので、写真を撮り忘れた。ゆえにネットから画像を拝借させて戴こう。


(出典『フォト蔵』)

名塩駅で普通に乗り換え、次の武田尾駅で下車する。
青春18切符を使うわりには近場じゃないかとツッコミが入りそうだけど、それなりの理由がある。当初は別なところに行く予定だったのだが、前夜になって急遽やめたのだ。理由をあげれば他にも色々あるのだが、単純に言うと路線検索のアプリが調子悪くて💢ブチギレたのである。

降りて直ぐ、バスに乗り換える。
今回もギフチョウの採集が目的だ。
武田尾といえばギフチョウの往年の名産地である。1970年頃までは多産しており、シーズン中は何十人もの採集者が押しかけていたそうだ。しかし、それ以後は開発や里山の放置による荒廃等により激減し、訪れる人もめっきり減ったという。

 
【ギフチョウ】

手乗りギフチョウだね。

それから約半世紀、現在はと云うと確実に増えている。
但し放蝶によるものである。ゆえに訪れる者は今も少なく、大多数の採集者はお隣の三田市に集まっている。蝶屋(蝶愛好家のこと)と呼ばれる人種たちは、放蝶されたものを極端に嫌うのである。憎養殖モノを良しとしないっていう概念が強いのだろう。まあ、言ってみれば大きな生け簀で釣りするのと同じだと考えれば、解るような気がするけどさ。
でも地図を見ると、武田尾と三田は連なっているから両所を移動していることは充分に考えられる。互いの血が混じっている可能性は結構あるのではないかと思う。とはいえ、自然由来か養殖モノかを区別するのは困難だ。その線引きは、斑紋が異なる他産地のものが放蝶でもされていないかぎりは事実上不可能だろう。
そんな放蝶されたギフチョウに何で会いに来たのかというと、べつに往年の名産地である此の地域のギフチョウがとりわけ欲しかったワケではない。産地ラベルのコレクターではないしね。僕ちゃん、ギフチョウを見つけて採る行為じたいが楽しいだけの人なのだ。だから理由を簡単に言っちゃうと、三田は人が多そうだと思ったからである。場所取りとか面倒くさいのだ。加えて、三田駅から採集ポイントまでの道中を考えると萎えた。途中、とんでもなくキツい坂を登らねばならぬのである。アレがホント辛くてイヤ。
それに今回は青春18切符での移動というのもある。乗り放題なので電車賃を気にすることなく、いつでも三田に転戦が可能なのだ。ここがダメなら、移動すれぱいいのである。その気楽さが此処を選ばせた。

実を云うと、もう一つまだ理由がある。
ここは春の三大蛾であるオオシモフリスズメ、エゾヨツメ、イボタガが3つとも産する。次回ライト・トラップをするにあたり、今一度、場所の選定を考えてみようと思ったのだ。謂わば下見である。そして、密かにあわよくば昼間でも見つけられまいかと思っていた。昼間に隠れている場所さえ見つかれば、わざわざ夜にライト・トラップをしなくても済む。夜の山ん中はおぞましくて怖いんだもん。この時期、夜はまだまだ冷えるしさ。

バスは急勾配を苦しそうに登ってゆく。
こりゃ、歩いては夜にライト・トラップする場所までは行けないなと思った。それも確認調しておきたかったのだ。
ちょっと憂鬱な気分で車窓の外に目をやる。これでギフチョウまでいなけりゃ、場所選びは大失敗だなと思った。

                         つづく

 
追伸
のっけからの脱線で疲れてしまって、ここで力尽きたなりよ。第二章は2話で終える予定が、この調子だとまだまだ続きそうである。これからは極力、脱線せぬよう鋭意努力しよっと。って云うか、このシリーズ、完結するのかよ❓道のりは遠いわ。

 
(註1)湊町駅
関西本線の終着駅である。あっ、今は大和路線と呼ぶんだっけか?いや、大和路線は愛称だっけか?ややこしいなあ。どっちかに統一しろよな。

どんな駅だったっけ❓と思い、当時の画像を探してみた。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

こんなだったっけ❓ 全然、記憶にない。
年号は平成6年(1994)9月とある。どうやらこの時に駅名が「湊町」から「JR難波」に改称されたようだ。
この地上駅の「JR難波」は地下化までわずか1年半しか存在しなかったんだそうだ。余談だが、JR西日本ではこの難波駅が初の地下駅だったんだそうな。

ちなみに現在の駅はこんなの。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

およそ駅に見えない、もう丸っきりの別モンである。
今は近所に住んでるから関係ないけど、昔と比べて改札口は歓楽街から遠くなったからムカついた記憶あり。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

最初の画像とあまり変わりないが、湊町駅みたい。そう言わてみれば、何となく記憶の隅に画像がある気がしてきた。
高速道路の工事に支障があるために、平成元年(1989)12月に駅舎を移転したそうだ。そういえば駅の位置がズレたと云う記憶があるや。さっきより少し記憶の輪郭が鮮明になりかけてきてる。
移転の日付を見て気づく。その頃には東京に住んでいたから、あまりこの駅舎には馴染みがないのだろう。それでも1、2回は帰省していたから、年2、3回くらいは利用していた筈だ。


(出典『さいきの駅舎訪問』)

あっ、コレだね。これこそ記憶の中の湊町駅だ。強く印象に残っているのはこの駅舎だよ。
ミナミで遊んでて、終電に乗るのによくここまで走ったっけ…。
昭和24年(1949)3月改築とある。たぶん数え切れないほど、この駅の改札を通ってるんだろな。


(出典『懐かしい駅の風景〜線路配置図とともに』)

そうそう、改札を抜けると右手にコノ字型のプラットフォームがあったんだよなあ。


(出典『懐かしい駅の風景〜線路配置図とともに』)

誰もいないね。


(出典『アルベース』on twitter)

改札からプラットフォームまでの雰囲気がとても好きだった。人でゴッタ返していても、どこか風情があった。


(出典『ゲイの鉄道マニア・カシオペアの個人的趣味シャベレ場』)

この白い鉄骨、懐かしい。


(出典『交野が原道草』)

こんな感じで、電車がよく停まっていた。
でも、だいたいの記憶は夜か夕方だけどね。遊びに行くから、行きは夕方、帰りは深夜なのだ。


(出典『つるさんの鉄ブロ温泉』)

103系らしい。
そういえば東京に初めて出てきた時には、この電車が山手線を走ってたから何だか変な気分だった。
それはさておき、こんなのが快速電車として走ってたんだね。そういえば、微かだけど記憶にあるや。


(出典『新快速東京行き@外出自粛中』)

駅名の看板も懐かしいが、背後の景色がもっと懐かしい。そういや、こんな風景だったわ。でも多分、殆どの建物は今は無い。
タイムマシーンがあったら、この時代に帰りたいよ。

 
追伸の追伸
ありゃー、舌先が渇かぬうちに早くも註釈で脱線だわさ。
脱線は、もう宿痾のビョーキなのかもしれない。次回はちゃんとギフチョウの事、書きまあーす。

  

『燃えよ麺助』ってどーよ❓


先日、念願だった『燃えよ麺助』に行った。
この店、大阪では超有名なラーメン屋で行列が絶えない。
トリップアドバイザーの評価では5点満点の「4.5」、食べログでも「3.78」という高得点で、2017年と2018年には『食べログラーメン百名店WEST』にも選出されている。
そして『ラーメンWalkerグランプリ2019』では並居る名店を押し退けての総合部門1位にも輝いている。
また、姉妹店『麦と麺助』は同年にミシュランガイドのビブグルマン入りも果たしている。ついでに言っとくと、『秘密のケンミンSHOW』でも取り上げられていたそうだ。
そこまで評価が高いのならば、自ずと期待値もマックスにならざるおえない。

場所は大阪駅から1つ先、環状線の福島駅を降りて直ぐにある。



夕方の部の開店時間午後6時の5分程前に店前に着く。
(☉。☉)あっ❗、並んでる人が少ない。
新型コロナの影響だろうが、2、3人しかいないじゃないか。予測は何となくしていたけれど、思ってた以上に少ない。
実をいうと、去年この店には一度だけ並んだ事がある。しかし並ぶの大の苦手な男ゆえ、10分で痺れを切らして行列から離脱した。



コロナ対策のせいか今日は入口が開いているが、前回来た時は閉まっていた。だから全体が白壁で窓らしい窓がなく、一文字型の細い窓から辛うじて店内が覗けた。つまり、およそラーメン屋とは思えない外観なのである。 それで思い出した。このカッコつけた外観にも嫌な感じがして、行列から離脱したのだった。



暖簾が短くて、お洒落でやんす。

程なくして、店員に促されて店内に入る。
しかし、ここで💢イラッとくる。一見丁寧な接客なのだが、どこか偉そうで慇懃無礼な匂いを感じた。客に対して食わしてやってるみたいな雰囲気が嗅ぎ取れたのである。まあいい、若者だ。有りがちの事だろ。若者ってもんは、店の看板という虎の偉を借りて猫なのに虎になった気分に成りがちってもんだ。かまへん、かまへん。だいち、そんな些事で自らラーメンを不味くしてしまうのは愚かなことだ。心を平静にリセットするっぺよ。

入って直ぐ右手に自動券売機があり、そこでチケットを買う方式になっている。この自動券売機パターン、あまり好きではない。後ろに人が並ぶので、どこか急かされたような気持ちになるからだ。それにそもそも背後につかれる事を極端に嫌う男でもある。世が世ならば、振り向きざまに袈裟がけにしかねない危ない人なのだ(笑)。

この店は「紀州鴨そば」と「金色貝そば」の二本柱。前回並んだ時に、それくらいは学習している。そこで思い出した。前回並んだ時は前にいたカップルの男の方が、横のブスに如何に「紀州鴨そば」が「金色貝そば」よりも旨いかを力説しておったのだ。それも相俟ってか💢イラッときて離脱したんだったわさ。短気だね〜。
しかし、ここは素直に彼の言に倣って鴨そばにしよう。
でも小さな字がズラズラと並ぶボタンを見て、一瞬パニくりかける。この辺も自動券売機が嫌いなところである。
何とか見つけたものの、再び選択を迫られる。「紀州鴨そば」¥890と『味玉紀州鴨そば』¥990のどちらかにするか迷ったのだ。ちょいとお高いが、もともと味玉好きだし「味玉紀州鴨そば」の方をチョイスする。
それにしても、最近のラーメンって高いよなあ…。千円前後が当たり前になりつつある。スープなど素材に金が掛かってるのだろうが、どこか納得いかないところがある。昭和の男は安くて旨いのがラーメンって云う概念が強いからだ。その辺の食堂の定食よか高いって、どーよ❓
とはいえ、時代も変わりつつあるのだろう。そのうち千円越えのラーメンが当たり前の世界になるかもしれない。全ての料理の調理技術を注入した究極の料理がラーメンだとか芸術作品だとか言い始めたら、そうなりかねない。けど千円越えのラーメンなんて食ってたまるかの所存だけどね。

店内はカウンター10席のみ。思ってた以上に狭い。
そりゃ、行列にもなるわな。きっと店の戦略なのだろう。
これは行列効果というもので、バンドワゴン効果とも呼ばれている。多くの人がある選択肢をとると(この場合は行列)、さらにその選択肢をとる人が増えていく現象を指す。つまり、人は行列=人気があると感じ、よっほど旨いんだろうなと考える。で、「とりあえず多くの人に同調しておこう」と云う心理が働き、情報をあまり吟味せずに並んでしまうと云う心理効果のことをいう。ワシもそれに完全に引っ掛かっとるワケやね。
店としての戦略なんだから、べつにそれを否定しているワケではない。自分が逆の立場だったら、同じこと考えるもんね。

驚いたことに、こんな狭いのにスタッフが4人もいる。
多くないかい❓この店の規模なら3人で充分だと思うんだけど…。
人件費は意外と高い。店の経費の多くを占めている。勿論、それはラーメンの価格にも反映されて然りだろう。スタッフを一人減らせば、ラーメンの価格も安くなりそうなもんだけどね。

店内にはジャズが静かに流れている。こういうお洒落風情のラーメン屋って、最近やたらと増えてねえか❓ 目の前には、スタイリッシュな金属のコップと脇には透明でデザイン性の高い水入れ。何処までもお洒落路線である。
気づいてはいたが、目の前のスタッフもまるでシェフみたいなユニフォームである。解った、解ったよ。コンセプトはそうゆうことなのね。店主の目指すところが、よくワカリマシタ。自分の店なんだから、大いになさってよろしである。店をどうしようが、それは店主の特権だかんね。ただ、自分は洒落たラーメン屋が何となく気持ち悪いだけだ。
そこでまた記憶がフィードバックする。といっても、もっと時間的には近い話である。さっき来る時にたまたま筋を一本間違えて店の裏を通った。その時、このスタッフたちが裏通りでたむろしてたわ。あくまでも私見だが、その感じは嫌なものだった。だるそうな雰囲気で、客をナメた人たちだとセンサーは反応していた。料理人のバックステージなんてものはどこも似たようなものだが、目についたから覚えていたのであろう。

コロナウィルスの影響か、こういうのもカウンターにあった。



3列目が引っ掛かる。 「咳、くしゃみエチケットを守ってくださいますようお願いいたします(原文のまま)」
一瞬、「、」が無いから、くしゃみエチケットって何ぞや?と思ったが、咳やクシャミはエチケットを守って下さいという事 なのだろう。でも、このエチケットというのが今ひとつよくワカラン。咳やクシャミをするなって事なのか❓でもこの2つは咄嗟に止められるものではないだろう。どうせよというのだ❓咳やクシャミをしても迷惑をかけない為にマスクがあるのではないか❓マスクしてても、咳やクシャミはしてはいけないのか❓それとも咳やクシャミをするなら、手で口や鼻を覆うのではなく、欧米のエチケットみたく自分の肩に鼻と口を付けてせよって事なのか❓はたまた、コレはマスクをしていない人に対して言ってるのか❓だったら、マスクしてない人の入店を断れよ。入口にその旨、張り紙なさい。
何か、ものを食うには最悪の精神状況になりつつあるが、忘れよう。そういう負の感情は切り捨ててリセット、ここはラーメンに集中しよう。ラーメンさえ旨けりゃ、そんなもんは払拭される。お洒落であろうが無かろうが、その他云々も関係ない。そんなものに味のジャッジメントが影響されてはならない。それが昔からのモットーだ。例えば、どんだけムカつくオヤジの店であったとしても、旨けりゃいいのである。そこに人間性は関係がない。旨けりゃ、再訪するだけのことだ。問題はない。そうゆうスタンスなのだ。

5分と経たずしてラーメンがやって来た。驚くほど早い。



運ばれて来た時に、微かに柚子の香りがした。矢張り、そっち系か…。とはいえ、柚子は好きなので全然許せる。

見た目はインスタ映えしそうなお洒落なレイアウトだ。
具はレアチャーシュー、鴨肉、支那竹(メンマ)、白ネギ、三つ葉ってところだ。そこにトッピングと言ってもいい、味玉が加わる。

先ずはスープから。
レンゲで一口すすって、🙄アレレ❓と思った。期待していた程には旨くないのである。
ならばと丼鉢を持って直接すすってみる。スープ表面の脂との関係で、そうした方がスープ本来の旨さが解るからである。
しかし、やっぱり感動するような旨さはない。
一瞬、ワシもコロナを発症したのではないかと思ったよ。でも味も香りもするから、冷静に考えればコロナではない。首を傾げる。
名前通りの鴨と、たぶん鶏ベースの醤油味かな?…。けど、それだけではない複雑な味わいがあるから、他に魚介系と昆布の出汁も少し入っていそうだ。
旨味とコクはあるがどこかサッパリとしており、上品な顔のスープだ。女子の評価が高そうである。
けど正直、鴨だしって感じがあまりしない。自分が知っている鴨だしとは遠い。鴨なら、もっと深みと旨味があって、鴨独特の脂が感ぜられる筈だ。
それに何よりいけないのが、如何せん口に残る後味が甘い。一瞬、鴨の甘みかな?とも思ったが、それにしては違和感大だ。素材の自然な甘みではないような気がする。
(-_-;)うーむ、これはおそらく四国や九州で好まれる甘い醤油を使っているからではなかろうか❓そう思った。あの、醤油に大量の砂糖を入れた甘醤油、昔からどうも好きになれないんだよねぇ。関西の西の端あたりから、この甘い醤油が幅を効かせており、皆さん、刺身とかにも好んでかけらっしゃるのだ。
それにしても世の中、こんなにも甘いもん好きの人が多いのかね❓ラーメンに甘みは、野菜の甘み以外は要らんだろ❓ そりゃ、長らくスィーツブームだって続くわさ。
とはいえ、途中で柚子を混ぜたらバランスが少し良くなった。

麺は中細のストレート麺。コシがあり、心地好い歯ざわりがある。スープとの絡みも良い。感覚的に加水率は高くないようだし、個性的な麺と言っていいと思う。
思うに、何となく蕎麦の雰囲気もある麺だ。柚子や三つ葉が入っているせいもあるし、スープも相俟ってか途中から段々ラーメン食ってる気かしなくなってきた。頭の中がちょっと混乱する。麺も旨いような、そうでもないような気がしてきて、益々混乱が広がる。
そして、何だか麺が途中からどんどんスープを吸っていく感じがして、段々マズくなっていってるような気もしてきた。

スープと麺を別々に評したので、説明がバラバラになってしまっているきらいがあるが、今さら書き直すのも面倒だ。このままの路線でいく。具についても個別にコメントしていこう。

レアチャーシューは素直に旨い。でも感動する程ではない。
味玉も旨い。味の染み具合といい、黄身の半熟度合いといい申し分ない。たぶん何処かのブランド玉子なのだろう、黄身がオレンジ色でコクがあり、旨味が強い。
それらをも凌駕するのが、支那竹だ。「しな」と打っても支那と出てこない。今どき、その名称って差別用語でマズイんだっけ❓たかが食いもんにまで差別とか言う世の中って、恐いよな。今や言葉狩り社会だ。
スマン、スマン。また危うく大脱線するとこじゃったよ。この手の話をしだすと終わんなくなっちゃうからね。変換が面倒だし、以後メンマで通します。
このメンマ、極太で唯一無二なくらいに美味い。よくある甘ったるくて濃くてどうでもいいようなオマケ的存在のメンマではないのだ。抜群に歯応えがあり、噛むとスープとは別な系統の洗練された出汁が溢れ出す。存在感があって、メチャンコ美味いのである。これにはマジ感動したよ。
しかし、炙り鴨がそれらのハーモニーを致命的にブチ壊した。
口に入れた瞬間に直ぐ違和感を感じて、本能的に解った。傷んでて腐りかけているのである。その場で、よほど吐き出そうかとも思ったが、カッコ悪いので我慢して飲み込んだ。気分、最悪である。こんなもんを客に出すって言語道断だろう。全てを台無しにするダーク・インパクトな代物だ。
一応フォローしておくと、もし傷んでなかったら、それなりに評価されて然るべきものだとは容易に想像がつく。おそらく、前日に余ったモノの保存状態がよろしくなかったのであろう。

このラーメンの自分の印象を一言で纏めてしまうと、パンチがない。ドロドロ濃厚なラーメンは好きじゃないけれど、上品なラーメンもあまり好きではないのかもしれない。意外と自分のラーメンの好みのレンジは狭いのかもね。ようはラーメンほど各人の好みが分かれる食いもんはないものと思われる。だから。あそこは美味いけど、ここのは認めないなどという各人バラバラの意見が飛び交うのだろう。

結果、ディスりまくってしまったが、ゴメンやけど嘘はつけない。正直、これなら店主の弟が出した店、近鉄の難波(大阪難波)駅構内にある「なにわ麺次郎」の方がまだ旨いと思ったよ。



コッチもジャズが流れるお洒落系ラーメン屋である。




まあ、コチラでは貝だしの「金色貝そば」を食ったから、比べることじたいがフェアではないんだけどね。

さらに言えば、同じ福島ならジャンルは違うけど、個人的には鶏白湯麺が売りの「ラーメン人生JET」の方が好きかな。店を出て、正直そっち行っとけば良かったと思ったよ(ちなみに煮干しラーメンで有名な『烈志笑魚油 麺香房 三く』もあまり好きじゃない)。
もっと言うと、店を出た前、斜め隣にある「大洋軒」の唐揚げ定食を食っときゃ良かったと思った。行ったことないけど、その店は「第8回からあげグランプリ」中日本醤油だれ部門金賞を受賞してもいるのである。オラ、唐揚げフリークだかんね。
因みに唐揚げ定食は¥780である。それからすると、やはりラーメンが¥990って納得いかんなあ…。

帰って食べログの口コミ欄を見たら、何と大半の人が★5つとか4つを付けていた。皆の舌がオカシイのか、ワシの舌がバカなのかマジで悩んだよ。 しかし少数だが、★2つとか3つの意見もあった。読むと、スープが甘いとかワシの感想と近いものもあった。それで少しホッとしたよ。ワシのような感想を持った人もいるってことは、全く的外れな意見ってワケでもないからね。 とはいえ、世間の評価が高いのも事実だ。嫌味でもなんでもなく、行きたい人はワシの意見など無視して行かれるがよろしかろう。こんだけ評価が高いなら、かなり満足できる筈だ。
ワシは二度と行かんけどね。

                        おしまい

追伸
因みにあとで調べたら、店主は「金久右衛門 本店」の御出身のようだ。
金久右衛門といえば「大阪ブラック」が有名で、食べログ大阪ベストラーメン3年連続No.1(2009〜2011年)、関西1週間大阪ベストラーメン受賞、大阪ラーメン覇王決定戦 準優勝、東京ラーメンショー2012 第一幕優勝など数多くの受賞歴を持つ関西を代表する醤油ラーメン専門店である。
自分も本店と道頓堀店に行ったことがあるけど、納得の旨さだった記憶がある。でも醤油の甘さは記憶にない。たぶん九州や四国の醤油もブレンドして使っているのだろうが、ようは気になるか気にならないかは、味のバランスにもよるのだと思われる。気にならない程度の甘さはラーメンのスープには必要なのかもしれない。

スープには紀州鴨と阿波尾鶏の鶏ガラ、魚介のスープ、昆布だしが入っているらしい。一応ビンゴのようだが、古い記事も混じっているだろうから今もそうなのかはワカラナイ。現在は違っている可能性はあるだろう。真面目な店ならば現状に満足せず、日々スープも改良を重ねているからね。因みに或る記事には、ポルチーニ茸オイルも入っているとか書いてあった。全然ワカランかったけど。
醤油ダレは小豆島の醤油に数種の醤油をブレンドしているようだ。小豆島の醤油ならば、瀬戸内だから甘い可能性大だね。醸造元が分からないから何とも言えないけどさ。
いや、待てよ。小豆島は香川県だけど、たしか四国みたく醤油は甘くなかった筈だ。となると、このスープの甘さは醤油由来のものではないと云うことか…❓でも、あの甘ったるさは鴨ダシ由来ではないと思うんだよなあ…。だったら何なのだ❓ワッカリマセーン\(◎o◎)/

麺は、昔は森製麺に特注したものを使っていたようだが、現在は自家製麺。全粒粉と最近流行りの高級小麦「はるゆたか」もブレンドして使っているそうだ。そのわりには、あまり小麦の香りを感じなかったけど。

味玉は「赤うま卵(旨赤卵?)」という鹿児島の卵を使っているらしい。やはりブランド卵だったのね。

メンマは、無添加熟成メンマを4日間かけて戻し、鰹だしに一晩つけたそうだ。

炙り鴨の鴨ロースは和歌山県湯浅町「太田養鶏場」にて育てられた純国産紀州鴨で、藁(わら)で炙っているそうな

レアチャーシューは豚肩ロースを特製塩ダレに漬け、香ばしく焼き上げた後に低温でじっくりと火を通したみたい。

驚いたのは、香辛料として胡椒と祇園「原了郭」の黒七味が置いてあると云う記述が散見されたことだ。そんなもんはワシの目の前には無かったぞ。あったら、絶対に黒七味かけまくり必至であったろうに。誠にもって無念じゃよ。
しかしそれは昔の話であって、現在は置かれていないのかもしれない。もしかして、うちのラーメンは旨いんだから、何にもかけんなよって事かね❓客には味変する権利も自由も与えられないってワケね。それって餃子屋に何も調味料が置いてないのと同じじゃないか。味が付いてますのでそのままどうぞと言われても、飽きてくるから醤油やラー油、胡椒、酢をつけたい人だっているだろうに。せめて胡椒か山椒、七味のどれか一つくらいは置いて欲しいな。人間の舌は皆同じじゃないんだからさ。ブツブツ(ー_ー゛)
何か結局最後までディスりまくりで終わってしまったよ。店主さん、ごめんなさいね。バカ舌男の戯れ言だと思って許してつかあさい。

話は全然変わる。
実を云うと、ラーメンを食ったのは伊丹空港周辺にシルビアシジミの様子を見に行った帰りです。しかもミナミの難波からママチャリ🚲で。

【シルビアシジミ♂】


今年は発生が早かったようで、ゴールデンウィーク後半のこの日には既にボロ個体ばかりだった。おそらく4月下旬が適期だったのだろう。しかも1箇所を除いて個体数も少なかった。但し、晴れだったけど風が強かったから何とも言えない部分がある。風が強いと蝶はあまり飛ばないからね。
個体数が多いところは♀ばかりだった。バルボキア感染は継続して起こっているようだ。このバルボキア感染について知りたい方は、拙ブログ『シルビアの迷宮』の第三章 バルボキアの陰謀の回を探して読んで下され。URLを貼り付けるのは面倒なので、申し訳ないけど自分で探してね。
そういうワケだから、今回は1つも持ち帰らなかった。あまりにボロばっかなので早々と諦め、蝶の写真を撮っていた爺様とずっと喋っとりました。

帰りにスカイパークにも寄った。



関空なんかの画像をTVで見てると飛べない飛行機がズラズラと並んでいるが、そんな様子は見受けられなかった。通常通りとは言えないが、思ってた以上に飛行機の離着陸がある。

調度着いたところで、ボーイング777-200/-200ERの離陸が始まった。ラッキーである。現在の大阪空港ではジャンボ機は就航しておらず、こやつとボーイング777-300/-300ERくらいしか大型機は見られないのだ。



スピード、遅くねえか❓
ドタドタと重そうに滑走路を走ってゆくのを見て、よくこんな鉄の塊が空に浮かぶなと思う。小さい飛行機ならまだしも理解できるが、このクラスの大きさになると俄に信じ難い。飛行機嫌いの、あんな鉄の塊に乗れるかい云々の意見も解るような気がしたよ。

そうだ❗天とじ丼を作ろう

 
😁そうだ❗天とじ丼を作ろう。
前回は念願の福井・敦賀で幻の「天とじ丼」を食うと云う話だったが、旨かったので自分でも作ろう、作れんじゃないかとふと思ったのである。

言ってしまえば海老の天ぷらを卵でとじるというシンプルなものだ。この自称まあまあ天才の何ちゃって料理びと、やってやれないワケがない。あれくらいのレベルのものなら自分でも楽勝で作れると思った次第なのだ。相変わらず傲岸不遜な男である。

そんなわけで、ナメきった男はスーパーの惣菜売り場で出来合いの海老天を買ってきた。それでも何とかなると思ってしまうところが、自称まあまあ天才の愚かさであり、傲岸不遜たる所以である。
 
先ずは玉ねぎをスライスし、15分以上無視する。これはべつに玉ねぎをイジメたいワケではなく、或る種の変態放置プレーの一環でもない。玉ねぎを切って直ぐに火を入れてはいけないのだ。
なぜならば、玉ねぎには硫化アリルという物質が含まれており、ビタミンB1の吸収を高め、新陳代謝を盛んにする作用があるのだが、切ってすぐ調理するとそれが失われるのである。けど、切ってから室温で15分〜30分程放置しておくと、加熱してもアリルくんが壊れなくなるのさ、(^3^♪プップップー。
他にもプラス効果はある(以下、どーでもいい人は読み飛ばされたし)。放置すると、プロペルニルジスルフィドという舌を噛みそうな類いのものが新しく生成され、そやつには糖尿病で高くなった血糖を下げる作用や発ガン抑制作用がある。これを加熱すると、また別の物質トリスルフィド類やセパエン類に変わるのである。これらは心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる中性脂肪や悪玉コレステロールの値を下げると言われている。血管を詰まらせる血栓を溶かすことも確認されていて、血液をさらさらにし、動脈硬化を防ぐ作用もあるようだ。また、玉葱を加熱調理すると解毒代謝が促進されて、体内の有害物質を排泄するそうだ。
書いてて、そこまで考えてメシ食えんよとは思ってるけどね。
クソッ、またどうでもいい事を書いてしまったなりよ…。

かつお昆布出汁に薄口醤油、酒を入れ、みりん少々を加えて火にかける。砂糖を入れるかどうか迷ったが、甘くなり過ぎるのは嫌なのでやめとく。沸騰する前に玉ねぎを加え、ある程度くたくたになるまで火を入れる。丼モンの生っぽい玉ねぎは苦手なのだ。
その間に卵2個をとく。海老は電子レンジのオーブン機能で温めておく。
ここからは一気呵成だ。玉ねぎ入りの出汁じるが頃合いになったら、とき卵を2回に分けて入れる。これは白身が生でズルズルなのは嫌だし、かといって卵が固まり過ぎるのもヤだからだ。
その僅かな時間の間にご飯を丼鉢によそい、海老を乗せる。そして玉子とじをすかさずダイブさせ、木の芽を飾って出来上がり。

 

 
幻の天とじ丼は海老天が2本だったが、コッチは奮発して3本である。オマケに海老のみで獅子唐だのサツマイモなどと云う余計なものも入っておらんし、卵もたっぷりじゃ。もう勝ったも同然の気分でカッ込む。

(--;)…。
ب)…。
悪かない…。悪かないのだが、どって事ない。そこそこ旨いんだけど、敦賀の「千束(ちぐさ)そば」のクオリティーには程遠いレベルと言わざるおえない。海老に感動は無いし、玉子もあんなにフワフワではない。自称まあまあ天才、「千束そば」に完敗である。

ならばと数日後、本気で臨むことにした。リベンジである。このままではプライドが許さない。ここでおめおめと引き下がるわけにはゆかぬのだ。
満を持して今回は生の海老を買ってきて、自分で海老天を揚げることにした。そもそも市販の海老天って、衣が厚くて中身が驚くほど細かったりする。ようはひょろひょろの詐欺まがいのものばかりだから失敗したんじゃないかと考えたのだ。だから、今回は高級天ぷら屋並みのギリギリの火通しで勝負しようではないか。本気出せば、楽勝じゃい(ノ`Д´)ノ彡❗

他の行程は基本的には同じだが、出汁の配合を少し変えてみた。甘みが少し足りないかもと思ったので、ちょっとだけ味醂を増量する。卵は同じ2個だが、とろとろ感の柔らかさを再現するために、片栗粉を加えた。こうすれば、卵が固まりにくくなると踏んだのだ。
 
衣薄めの海老天を揚げる。予熱で火を通すので、揚げ時間は短めで油から取り出す。したらば、素早く予め作っておいた玉ねぎ入りの出汁じるを火にかける。沸騰するまでの間に海老天に塩を付けて摘み食いする。
(☆▽☆)うんめぇー❗火入れ完璧やん❗❗
出汁が沸騰してきたら、片栗粉の入った卵液を掻き混ぜ、2回に分けて入れる。
それを横目で見ながら、電光石火で御飯をよそい、海老天を乗っける。んでもって、卵が完全に固まらないうちに玉子とじをドバーッと上からかけ、九条ネギを添えて怒涛のうちに完成。

 

 
この見た目、「千束そば」を超えたんじゃね❓
フフフ<( ̄︶ ̄)>。我ながら、やる時はやる男なのだ。

並々ならね期待を込めて食う。

(^3^♪旨いっ。
海老もプリプリだし、玉子もトロトロだ。レベルは前回よりも確実に上がっている。
しかーし、残念ながら千束そばの領域には及んでいない。あの旨さを知らずして食ったてたら、そこそこ自画自賛してもいいところだが、あっちの方が断然に美味いと認めざるおえないのだ。

せにょ〜る┐(´д`)┌、いったいどこが違うというのだ❓
今一度、『千束そば』の画像を引っ張り出してきて見比べてみる。

 

 
原因は海苔か❓…。九条ネギも要らんかったかも。
しかれども海苔が入ってないところも食ってる筈だけど、変わらず美味かったぞ。だから、それが決定的な味の違いの理由とは思えない。もっと根本的な違いがあると言わざるおえない。
たぶん、大元は出汁なんだろなあ…。でも老舗蕎麦屋の出汁の再現は難しいよな。やっぱプロは凄いのだ。

諦めて、素直にまた来年食べに行こっと。

                        おしまい

 

青春18切符oneday-trip春 第一章(5)

 

 第5話 みんな一人ぼっち


思いのほか変な名前の店探しに没頭してしまった。
店の開店時間である午後5時を少しだけ過ぎてから入店するつもりが、時刻はもう5時半になろうとしている。
暮れ始めた町をやや早足で歩く。店の場所は午前中に駅の観光案内所で教えてもらっていたし、この町に入った時に早々と確認済みだ。

 

ここを訪れるのは、たぶん20年くらい振りである。

『千束そば』と書いて、ちぐさそばと読む。
おかげで店の名前が頭の中で長い間ずっと定まらなかった。みんなは「ちぐさそば」と呼んでいたような気がするが、看板の字は「千草そば」では無かった筈だと云う記憶がある。だから店名が脳内で「千何とかかんとかそば」で宙に浮いたままだった。名前に自信が無くて、オマケにいつも車で行っていたから敦賀とだけしかわからず、その店が敦賀のどの辺りに位置するかも分からなかったのだ。敦賀といっても広い。駅を経由したこともないし、住宅街みたいなところにあったゆえ、駅から近いのか離れているのかさえもまるで見当がつかなかった。お手上げである。
ここで一言つけ加えておくと、昔はスマホなんぞ普及していなかったから、今みたくお手軽に検索なんて出来なかった時代だったことを御理解戴きたい。
そう云うワケで行きたくとも行けず、いつしか記憶の隅へと追いやられていった。

今朝、敦賀駅に降り立った時に、その店の記憶が突然甦った。 そこの天とじ丼が死ぬほど美味かったことを思い出したのだ。 その時点で、今回の旅の目的の第一義がギフチョウ採集ではなくなった。



もうかれこれ20年くらい前の事だろうか。ダイビングのインストラクターになろうと思い、スキューバ・ライセンスを取ったダイビングショップに勝手に押しかけた。当時、お師匠さんは越前で講習を行っており、わざわざそこまで相談に行ったのだ。
その師匠、オーナーのオヤジは女好きでオチャメで、ちょっと近寄り難くて怖いけど、海をこよなく愛するとても魅力的な人だった。そして、人を見抜く力と言霊を持っていた。それが怖さや威厳に繋がり、また崇められてもいたのだろう。
まあ、ワテの性格だからすんなりと懐に入ったけどね。ごく近しいスタッフだけが呼んでいた「おやっさん」と云う呼び名を直ぐに使いだしても叱られなかったしさ。可愛がられていたのだ。それを周りのスタッフは、よく思っていなかったみたいだけどね。まあ、そんなの知るかだけどさ。
とり巻きなんてもんは、たとえ賢くはあっても、だいたいは嫉妬深くてクソなのだ。ルールや常識に縛られているツマンない奴ばかりだ。とはいえ、憎んでるという程ではないし、大多数はそうなので上手く付き合うけどね。人それぞれだし、そういうもんだと思ってれば、ストレスはそんなにない。

おやっさんは言葉に含蓄があり、やたらと人望もあったから、新興宗教の教祖みたいな人でもあった。言ってしまえば、人蕩し(ひとたらし)なのだ。今思えば、自分にとってのお手本だった。優れたインストラクターたる者、初めて会った人でも性格や特性をソッコーで見抜くかなくてはならないのだ。そして、群れを動かすリーダーとは、かくあるべきだという指針を示してくれた。人の上に立つ者は統率力だけでなく、オチャメでなくてはならない。発想力豊かで常識に囚われず、おバカでムチャクチャなところがあるのが理想だ。
でも、そんなおやっさんも何年か前に死んじゃったけどね…。



結局、スタッフが多過ぎて面倒をみてはくれず、その後サイパンに行くことになるのだが、それでも準スタッフみたいな扱いで4、5回は越前に帯同させてもらった。その帰りに、この「千束そば」に必ず寄っていたのである。

入口へと向かう。

 

懐かしいと言いたいところだが、こんな入口だったっけ❓
来店はいつも夜だったので、記憶と重ならない。

店内を見回す。記憶があるような無いような微妙な感覚にとまどう。

壁には有名人のサイン色紙が幾つも貼り付けてある。
わかるところでは、料理の鉄人 道場六三郎、落語家の桂 南光、黒焦げシンガー松崎しげる、映画監督の山田洋次、五大路子(演歌歌手)と大和田伸也(俳優)、タレントの渡辺文雄、女優の岡江久美子あたりだろうか。(この時はまさか岡江さんが、その後に新型コロナウィルスで亡くなるとは思ってもみなかった。だから、ちょっとショックだった。陰ながら、岡江さんの御冥福をお祈りします。)

 

安倍総理の色紙もあり、写真もあった。森喜朗前首相もいる。
何か微かだが、この色紙と額縁写真は記憶があるぞ。
(それはそうと最近のアベちゃんは政治家として酷いな。コロナ対策の迷走ぶりと未来を示せない姿勢は政治家としてクソだわさ。それにコレを書いている5月5日の時点で、まだアベノマスクは届いとらんぞ❗大阪のド真ん中でさえもそんなんだから、地方の状況は想像に難くない。森友問題といい、桜を見る会の件といい、限りなく黒に近いグレーだし、最低だな。でも野党にも全く期待が出来ないから、どうしようもない。日本がどんどんダメになっていってる気がしてならないよ。)

しかし、色紙には覚えがあるものの、店内の造りが違うような気がする。たしか広間があった筈だ。そこでスタッフ皆でワイワイと飯食ってたのだ。
アレって2階だったのかなと思い、店のオバサンに訊いてみる。
しかしオバサン曰く、2階は無いと言う。
w(°o°)wえーっ、もしかしてこの店じゃないのー❗❓
パニックになりそうになる。
その時、奥の閉められた板戸に目がいった。もしやと思い、再び訊ねてみる。

『あの閉まってる奥って、座敷じゃなかったですかね❓』
『そうですよ。今は普段は使ってないけどね。』

その瞬間にシナプスが繋がり、鮮やかに記憶が甦ってきた。そうだ、そうだ。2階ではなく1階の座敷で、大きなテーブルがデーンとあったのだ。改めて見ると、上り框(あがりかまち)の感じにも見覚えがある。たぶん、この店で間違いなさそうだ。
安堵の心が広がる。これで何とか、あの究極とも言える天とじ丼にありつけそうだ。

心が落ち着いたところで、メニューを見てみる。
この店は蕎麦で有名なのだが、実をいうと蕎麦は一度も食ったことがない。その頃はまだ若かりし頃だったので、蕎麦の良さが理解できてなかったのだ。おいら、うどん文化で育ってきた人間だしさ。
そんなワケで、いつも天とじ丼にするか、カツ丼にするか迷ってたんだよね。この店のカツ丼もムチャクチャ旨いのだ

だが、丼のページを見て、\(◎o◎)/ゲロゲロー❗

😱天とじ丼が無いっ❗❗


まさか、まさかの展開である。慌ててオバサンに訊ねる。

『昔、天とじ丼ってありませんでした❓』
続けてカクカクシカジカと事情を必死こいて話す。
するとオバサンは、ちょっと懐かしそうな口調で答える。
『それね、だいぶ前にメニューから外したんよ。』

(@_@)マジかよ、それ❗❓
でもここで引いてはならじと、(ノ`Д´)ノ必死になって如何に天とじ丼が美味かったかを力説して、特別に何とか作ってもらえまいかと半泣きで懇願する。
もうウルウルの目でオバサンを見つめちゃったもんね。
その甲斐あってか、何とか料理長に出来るかどうかを訊いてもらえる事になった。

答えはOK(◠‿・)—☆👍 やったね。
((o(´∀`)o))ワクワクしてくる。これでやっと念願の天とじ丼に会える。あの懐かしくて魅力的な姿に会えるのだ。このワクワクだが、ソワソワした感じ、何だか昔の彼女に会うみたいだ。



運ばれてきた❗
蓋付きでやって来たぞ。丼から僅かに海老の尻尾が顔を覗かせている。期待値がビンビンにハネ上がる。
💞ドキドキしながら蓋を開けてみる。

 

(☉。☉)れれれっ❓
記憶では玉子と海老だけのシンプルなものだったが、色々乗っかっている。おそらく天丼を卵でとじただけのものだ。再び、本当にこの店なのかという疑念が頭をもたげてくる。

でも、旨そうではある。

ここで四の五と言っても始まらない。取り敢えず食ってみよう。
そっからまた考えればいい。といっても、お手上げだとは思うけど…。

(・o・)あっ、美味い❗
玉子のとじ方が柔らかくて絶妙だ。老舗蕎麦屋ならではの少し甘めのつゆの味も相俟って、かなり美味い。
惜しむらくは玉子の量が少ない。記憶では、もっと丼全面にたっぷりと玉子がバアーッって広がっていた。それに海老以外の獅子唐とかの具材が邪魔だ。
にしても、美味いには美味いんだよなあ…。味も記憶と近い。
今度また来る時は、ダメ元で玉子増量、海老以外のものは排除で海老3本にしてもらえるよう頼もう。

レジでお金を払う時に、持ち帰り用の無料の天カスが目に入った。



それで、この店が間違いなく記憶の店と同じ店だと確信した。その天カスの事はハッキリと憶えていたのである。最初は喜んで持ち帰ってたけど、段々持ち帰らなくなったのだ。旨い天カスだけど、そうしょっちゅう持って帰っても家の者だって喜ばんのだ。

支払いは1100円に消費税が加算されて1210円だった。
これくらいなら、たとえ海老と玉子が増量になっても2千円以内に収まりそうだ。ならば、次回は絶対にそうしよう。

記憶の天とじ丼とはちょっと違ったけど、かなり満ち足りた気分で店を出る。
だいぶ日が長くなった。まだ外は夕暮れは続いていた。



スナックなど店の看板も変なのが多かったが、幼稚園まで個性的なんだね。

寂れた昭和ノスタルジーの町を抜け、駅前まで戻ってきた。
と同時に日が沈んだ。電車の時間にはまだ間があるので、喫茶店の前にある無料喫煙所で煙草を吸うことにする。

煙草の煙が宙で一瞬躊躇したようにたゆたい、風に流されてゆく。少し感傷的になっているのかもしれない。何もかもが流転するのだと思った。
すると突然、喫茶店の外部スピーカーから馴染みのあるイントロが流れてきた。

ボズ・スキャッグスの名曲『ウィアー・オール・アローン(註1)』だ(下の赤い再生ボタンを押すと曲が流れます)。

 

 

曲を聞きながら、ぼんやりと夕暮れの街を眺める。



音楽と夕景が一つに溶け合う。
この曲は『シルク・ディグリーズ』と云うアルバムに収録されていた曲だ(YouTubeの画面がジャケットカバーです)。

不意に友達の姉ちゃんのことを思い出した。メチャメチャ綺麗な大学生の姉ちゃんで、ボズ・スキャッグスが好きだった。その姉ちゃんに『ボズを聴くなら、これが入門作よ。』と言われて、このアルバムを借りたんだっけ…。 中学生から見れば大人のお姉さんって感じで、会うたびに💕ドキドキした。

そう云えば、すぐあとに当時話題だった新作アルバム『ミドル・マン』も貸してくれたな。

 
(出典『Amazon』)

セクシーでお洒落なジャケットデザインが印象的で、よく憶えている。名曲揃いで、ボズのアルバムでは一番好きだ。
このジャケットデザインとお姉さんの存在がリンクして、何だか心の中がぞわぞわした。
そういえば、彼女が横を通ると、いつも物凄く良い匂いがしたんだよ。女の人の華やかな匂いを初めて意識したのは、或いはこの時が初めてだったかもしれない。

音楽と匂いは有無を言わさぬ力があって、人を瞬時に記憶の海へと連れ出す。時にそれは暴力的で痛みさえ伴うことがあるが、懐かしさに満たされるその感情は悪かない。

色んな人の顔が浮かぶ。おやっさんの顔も浮かんだ。
We’re All Alone。でも結局、人は皆、一人ぼっちなのだ。

駅のフォームに上がる。



かなり大規模そうな工事をやっているなと思ったら、北陸新幹線の駅を作っているようだ。いや高架橋か。どちらにせよ敦賀まで延伸されるって事なのね。そんな計画があっただなんて全然知らなかったよ。日々、世の中は変化しているのだ。

午後6時48分発の姫路行きの新快速に乗る。
改めて思うけど、敦賀から姫路まで一本でいくなんて凄いな。つい忘れがちだが、東海道線って他の線と比べて突出して便利だ。特に新快速は長い距離を走るだけでなく、急行並みに速い。オマケに本数も多い。コレは東京から神奈川方面までもそうだし、静岡方面から名古屋方面でも同じだ。如何に東海道が日本の大動脈なのかがひしひしと解るよ。きっと田舎もんは都会に出てきて、ビックリするんだろな。

大阪駅で下車。環状線に乗り換え、更に今宮駅で難波行きに乗り換える。

 

あと少しで長い1dayトリップもお終いだ。
春だとはいえ、ひんやりとした夜気が肌寒い。

 

午後9時45分。難波駅に到着した。
何だかんだと濃い一日だった

 

残りあと3回、さあ次は何処へ行こうか。

                         つづく
 

追伸
青春18切符の正規料金は5枚綴で12050円。これを5で割ると1回あたり2410円と云う計算になる。
一方、今回チケットショップで購入した青春18切符は4520円。しかも4回分のものを2回分の料金にしてもらった。2回分を探していたのだが4回分のものしかなかったから、仕方なく立ち去ろうとしたら、2回分の金額でいいと言われたのだ。売れなければ丸損になるゆえの苦渋の提案だったのだろう。新型コロナウイルスの影響で全然チケットが売れていなかったものと思われる。
これを4で割ると、1回あたり1130円となる。2で割ったとしても2260円。2回分でも正規運賃よりも安い。皮肉にも新型コロナウィルスのお陰で普通では考えられないような破格の金額となったってワケだ。

参考までに本日の正規運賃を並べておこう。

JR難波〜敦賀 片道 ¥2650
敦賀〜今庄 片道 ¥330

これをそれぞれ往復したので✕2とすると、以下の計算となる。
¥5300+¥660=合計¥5960。1回分のチケット料金は1130円だから、計算すると、5960円ー1130円=4830円。何と4830円も得したワケやね。どころかチケットの購入額は¥4520だから、この1回だけで料金的にはペイしたことになる。

今回は書くのに時間がかかって、前回と間があいた。思い入れのある回だけに、色々と考えて書きあぐねていたのである。だから、食いもんとか他の文章を書いたりしていたのだ。

次回から第二章に入ります。また要らんこと始めたよ(TдT)
この調子だと、シリーズの完結は遠い。そもそも投げ出さずに完結できるのかよ?とも思う。

 

(註1)ウィアー オール アローン We’re All Alone
ボズ・スキャッグスの1976年に発売されたスタジオアルバム『シルク・ディグリーズ』の収録曲で、後にシングルカットされた。 当初は「リド・シャッフル」のB面曲という扱いであったが、多くのアーティストによってカバーされ、後述するリタ・クーリッジのカバーのヒットによって再評価されることとなり、現在では代表曲のひとつに数えられている。
日本では、日産・サニーRZ-1の新発売当初のCMソングとしてリタ・クーリッジのカバー版が使用された。また、スキャッグスによる本家バージョンも日産・ローレルのCMで使われたから聞き覚えのある方も多いだろう。

また日本ではアンジェラ・アキがカバーし、日本語の歌詞が付けられているが「みんな一人ぼっち」を意味する内容となっている。 ボズ・スキャッグスの原曲には当初『二人だけ』という日本語の題名がつけられていた。その後、リタ・クーリッジがカバーした際の日本語題は「みんな一人ぼっち」となった。現在では原曲・カバーともに日本語題をつけず、原題そのままに「ウィアー・オール・アローン」と表記されている。
これらの解釈は現在でも割れており、たとえばNHK Eテレの「アンジェラ・アキのSONG BOOK」で取り上げられた際は、We’re All Alone は「二人きり」と「しょせん一人ぼっち」という意味の両方の解釈が可能とされている。

また本記事の英語版によれば、リタ・クーリッジのカバー版はオリジナルが “Close your eyes Amie and you can be with me” となっている行を “Close your eyes and dream and you can be with me” と歌っているため、「会う事を夢見る」に曲の意味を替えたのであれば「みんな一人ぼっち」と訳せるかもしれないという。 なお、2007年の『シルク・ディグリーズ』復刻盤に寄せたライナーノーツでスキャッグス本人は「この曲のタイトルを個人的な話と普遍的なテーマを両立させるものとしたが、両者の意味が同時に成立するような歌詞にするのに苦労した」と語っており、上記のような複数の解釈が可能なように最初から歌詞が設定されていたことが明らかとなった。しかしながら同時に歌詞づくりが非常に難航し、レコーディングが始まっても完成せず、書き足しながら録音したことを明かしたうえで、「この曲の意味は自分の中でも完全にはわかっていない」と語っている(以上、Wikipediaより抜粋再編集)。

尚、アルバム『シルク・ディグリーズ』はAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の歴史がここから始まったとも言われる金字塔的作品であり、ボズ・スキャッグスの名を一躍世界的なものにした7作目。全米アルバム・チャートで2位を記録。グラミー賞を受賞した「ロウダウン」(全米3位)も収録されている。
 
また、このアルバムに参加したスタジオミュージシャンのデヴィッドペイチ、デヴィッド・ハンゲイト、ジェフ・ポーカロ達が後にTOTOを結成することになる。