シルビアの迷宮 第一章

  
   第一章 『可憐な少女』

 
11月初め、伊丹にシルビアシジミの様子を見に行った。

 
(2019.11.5 伊丹市猪名川河川敷)

 
しかし、河川敷のポイントは草刈りされた直後だった(写真とは違う場所です)。
なのかどうかはワカンナイけど、飛んでいるのはヤマトシジミばっかで中々見つからない。
飛んでいる時の姿はヤマトシジミと非常に紛らわしい。だが、慣れると若干シルビアシジミの方が小さく、♂は翅表がより青っぽく見えるので、おおよその区別はできる。飛び方もヤマトよりも敏捷で、地面を這うように飛ぶものが多い。地這いシジミだ。ヒメシルビアシジミ、ハマヤマトシジミもそんな飛び方なので、個人的には「地這いシジミ三姉妹」と呼んでいる。
けど、草が刈られているせいか、ヤマトも地這い飛びしてる。それに数も多くて、ちょっと青っぽいのや小さい個体もいるので段々ワケわかんなくなってきた。

各ポイントを回り、辛うじて3頭だけ確認できた。
そのうちの2つを持ち帰る。

 

 
相変わらず、ちっちゃいねー。
なんで、拡大しときます。

 

 
シルビィーちゃん、可愛ゆす~(о´∀`о)
あっ、自分は個人的に愛着を込めて、そう呼んでます。
秋型だ。春型と同じく裏面がグレーっぽくなるから、採りさえすれば、この時期は近縁のヤマトシジミとは区別し易くなる。

一応、表側はこんな感じです。

 
【シルビアシジミ♂】
(2017.4.26 伊丹市)

 
表側は、もっと可愛い。

シルビアシジミ。いい名前である。
覚えやすいし、響きもいい。また如何にも可憐な少女をイメージさせるところがある。実際小さいし、ピッタリな名前だと思う。
そういえば、その名前の由来も素敵だったね。和名は、或る蝶の研究者が夭逝した自分の娘の名前をつけたんだよね。
でもその程度の知識で、詳しいことは知らない。
んなもんで、一応ネットでググってみた。したら、諸説ある。大まかなところでは同じなのだが、細かいところが異なっているのだ。どうせ皆さん、アタイと同じく孫引きで、自分の勝手な見解も入ってんだろね。

その折りに学名を見て、あれれっ( ゜o゜)❓と思う。学名の小種名が silvia ではなくて、otisってなってるぞ。またエライところに触れてもうた。もう勘でわかる。こんなの調べ始めると泥沼だぞ。
けんど、このまま蓋をしてスルーするのも癪だし、更に詳しく調べてみることにした。

で、やっと見つけたのが、中村和夫氏の『中原シルビア嬢の小墓碑』と題した文章である。これが一番詳しく書かれているから、由来の正伝と捉えることにした。以下、その文の要約と補足である(一部他の知見も入ってます)。

「シルビアシジミの和名はガン学者中原和郎(1896~1937)の夭折した一人娘 Sylvia Nakahara の名に由来する。
しかし、シルビアシジミの最初の発見者は実をいうと別にいる。
東京大学で英語教師をしていたモンタギュ・アーサー・フェントン(Fenton 1850~1973)は、教え子の一人である田中舘の郷里、岩手県福岡村(現 二戸市)へ向かう徒歩旅行の途上,栃木県氏家町(現 さくら市)上阿久津で本種を採取した。奥州街道と鬼怒川が交差する地点である。フェルトンは昆虫の知識も豊富で、これをヤマトシジミとは別種と考え、河床地に限るという生息地の特性をも見抜いた。
そしてフェントンは学生たちと共に周辺を調査し、その食草も突き止めた。ヤマトシジミの幼虫はカタバミなどを食すが、このチョウの幼虫はミヤコグサを食草としていることが判明したのである。フェントンは1880年に帰国し、これを Lycaena alope(Butler 1881)として新種記載した。

フェントンがこの蝶を発見してから約40年後、中原和郎は米国イサカ市のコーネル大学の大学院に留学。米国女性と結婚し、二女シルビアが誕生する。しかし、生後8カ月(7ヶ月説もある)で亡くなってしまう。
その2年後、中原は日本の友人から送られた1920年兵庫県佐用郡久崎町で得られた上記と同一のものを未記載種(新種)と考えた。彼は娘を悼んで、それに Zizera sylvia(Nakahara 1922)の名を与えた。
しかし、Butler、Nakahara、何れの記載も英文誌に発表され、日本では注目を浴びなかった。また英文誌であるゆえに、和名もつけられていなかった。
余談だが、中原氏は癌研究の権威でもあり、国立がんセンター(現国立がん研究センター)の名誉総長も務めた人だ。

話は尚も続く。
旧制成城高校・中学生の成富安信は健康を害し、療養中に蝶を採集していた。そして1938年、知人の紹介で理研の中原に指導を受けるようになった。その時、成富は友人が1940年岡山県下で採集した種名不詳の蝶を中原宅へ持参した。それは中原が記載したものと同じものだった。この再発見を喜んだ中原が成富に要請し、新称シルヴィアシジミの和名が記録された(成富1941)。しかし、この時もフェルトンの記載には未だ気付いていない。
太平洋戦争終了後,古い記録を精査していた昆虫学者の白水隆(1950)が上記の記載が同一種であることを突き止め、世に明らかにした。そして、新たに学名をZizina otisとした。よって学名の sylvia はシノニム(同物異名)になり、無効となってしまう。
また、同一の種にタイワンコシジミ、ヒメシジミの和名が重複して与えられていたが、江崎・白水(1950)は和名としてシルヴィアシジミを採用する。その後,現代カナ遣いでシルビアシジミの表記が用いられるようなった。」

物語があって、素敵な響きのある和名は愛されるという典型だね。
時々、和名なんて海外では全く通用しないから要らないと思うけど、こういう素敵な和名を前にすると、やはり和名はあってよしだと思う。

しかし、これで話は終わらない。
「さらにその57年後には、日本・本州一帯の本種の学名は矢後(2007)のDNA情報に基づく整理によって、新たな学名 Zizina emelina(delʼOrza 1869)が与えられる事となる。」とも書いてあったのだ。
Σ(゜Д゜)何じゃそりゃ❗❓である。
そう思ったが、よくよく考えてみると、従来シルビアジジミの南西諸島亜種とされてきたものが、数年前に別種ヒメシルビアシジミになったんだよね。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
古い標本で、色が褪せている。
展翅もド下手。小さ過ぎて匙を投げた事を思い出したよ。

話を戻そう。
で、今までの学名 Zizina otis はヒメシルビアに付けられて、本土産のシルビアには、Zizina emelina という新たな学名が宛がわれたってワケやね。
一瞬、emelinaって何由来の命名❓と思ったが、これはどうやら本土産の亜種名だったemelinaが、そのまま種名に昇格したようだ。
でも沖縄亜種の亜種名は、riukyuensis(「琉球の」という意)だった筈だ。これは昇格しないのか❓ 何で otis になったのだ❓ だいち、そもそもフェルトンが最初に見つけたものに命名された Lycaena alope は何処へ行ったのだ❓ Lycaenaは属名が変更されたのだろうが、alope は何処へ消えたの❓ワケわかんねえや。
たぶん、これもシノニムになってんだろうなあ…。
フェルトンの記載は1881年だけど、Zizina otisの原記載は Zizina otis otis(Fabricius,1787)となっているから1787年だろう。となると、もっと古い。だから、otisの方に名前の先取権があるのだろう。
あっ、そっか…。何となく謎が解けてきたぞ。沖縄のヒメシルビアの学名が「otis」になっているのは、これが従来の Zizina otis に組み込まれて、むしろ本土産が別種となったのだ。つまり亜種名が消えたワケではなくて、Zizina otis riukyuensis になったってワケだね。一件落着だわさ。

けんど、すぐに新たな疑問が湧いてくる。
emelinaの記載年は1869年になっていて、別種に分けられた年の2007年ではない。つまり、新種ではないことになる。また、フェルトンが記載した1881年とも合致しない。ならば、シルビアシジミが最初に見つかったのは日本ではないことになる。だったら、原記載は何処の国のシルビアなのだ❓ 謎が謎呼ぶシルビアちゃんだ。

探したら、『Lean About Butterflies』というサイトに、Zizina emelina はチベットと中国西部のみに生息するとあった。のみ❓
( ; ゜Д゜)おいおい、日本には居ないことになってるぞ。益々、謎が謎を呼ぶ展開になってきた。藪蛇ってヤツだ。エライとこ、突っついてしまったなりよ。

探しまくって、ようやく『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)という長ったらしいタイトルの論文を見つけた。
そこには「シルビアシジミ Zizina emelina emelina(以下、本種)は、日本と韓国に分布し、…」という記述があった。ということは韓国で初めに見つかったということになるのかな?…。もう、そういうことにしておこう。

また、「Zizina-nic.funet.it」というサイトでは、下のような記述も見つけた。

Zizina emelina emelina; Yago, Hirai, Kondo, Tanikawa, Ishii, Wang, Williams & Ueshima, 2008, Zootaxa 1746: 32

Zizina emelina thibetensis; Yago, Hirai, Kondo, Tanikawa, Ishii, Wang, Williams & Ueshima, 2008, Zootaxa 1746: 32

たぶん矢後氏他の記載論文か何かだろう。
これでチベットと中国西部のみの分布という謎も解けた。つまり、この記述からすると、チベットと中国西部産のものは別亜種 thibetensis となるワケだ。
ようは、チベットと中国西部のみに生息しているとした『Lean About Butterflies』の記述は間違いだったって事だね。亜種なんだから、チベットや中国のシルビアは最初に見つかった原記載されたものではない。

このサイトは、Zizina属についても言及しているので、ついでに意訳したものを訂正、補足して載せておこう。

「Zizina属には5種が知られています。最も一般的で、広く分布しているのがインドからアジアに分布するotisです。他は以前は全てotisの亜種と見なされていましたが、現在では異なる種として認識されています。Z.antanossaはアフリカ北西部・東部・マダガスカルに見られ、Z.labradusはオーストラリア、Z.oxleyiはニュージーランドに分布しています。」

で、最後に「emelinaはチベットと中国西部にのみ限定されて分布するようです。」と書いてあった。あっ、自信が無いのか断言はしていないね。

但し、この属の分類には他の見解もあって、Zizina属に含まれるアフリカからアジア、オーストラリア、ニュージーランドまで分布するもの全てを同一種とし、それぞれを代置関係にある亜種とする考えも根強くあるようだ。

ついでのついでで、wikipediaにあったのも載せておこう。学名の下側は英名である。

・Zizina antanossa (Mabille, 1877)
dark grass blue or clover blue

・Zizina labradus (Godart, [1824]) common grass blue, grass blue, or clover blue

・Zizina otis (Fabricius, 1787)
lesser grass blue

・?Zizina similus

・?Zizina emelina

あれれ?、気づかんかったけど、Z.oxleyiというのが無くて、替わりにZ.similusってのが入ってんぞ。おまけに❓マーク付きだわさ。emelina にも❓マークが付いてる。ウキ(wikipedia)を書いた人も、不明で扱いに困ったんだろね。

結局、similusというのは、探しても見つけられなかった。近いのが「Zizina-nic.funet.it」にあった下のコレ。

Unknown or unplaced taxa
Polyommatus similis Moore, 1878; Proc. zool. Soc. Lond. 1878 (3): 702; TL: Hainan
Cupido similis; [NHM card]

しかし、similisとなってて、綴りが微妙に違う。しかも、Unknown or unplaced taxaとなっている。ようするにワッカリマセーンってことやね。不明で、定義できない分類群ってワケだすよ。
oxleyiというのは色んなサイトに出てくるから、たぶん5種のうちの一つはコチラが正しいんだろね。

ついでのついでのついでで、Z.otis(ヒメシルビアシジミ)の亜種名も並べておこう。
因みにwikipediaでは、シルビアシジミ(本土産)の学名が Z.emelinaではなく、Zizina otisのままになってるんだよなあ。ネットの多くのサイトでも、シルビアシジミ=Zizina otisとなってるものが多いんだよねぇ…。そりゃ、混乱も呼ぶわいな。
もう、いっか…。謎を掘り進むのにも疲れてきたよ。取り敢えずヒメシルビアの亜種を並べて、この迷宮の出口を探そう。

・Z. o. annetta (Toxopeus, 1929
・Z. o. aruensis (Swinhoe, 1916)
・Z. o. caduca (Butler, [1876])
・Z. o. indica (Murray, 1874)
・Z. o. kuli (Toxopeus, 1929
・Z. o. lampa (Corbet, 1940)
・Z. o. lampra (Tite, 1969)
・Z. o. luculenta (Kurihara, 1948)
・Z. o. mangoensis (Butler, 1884)
・Z. o. oblongata (Kurihara, 1948)
・Z. o. oriens (Butler, 1883)
・Z. o. otis (Fabricius, 1787)
・Z. o. oxleyi (C.& R.Felder, 1865)
・Z. o. parasangra (Toxopeus, 1929)
・Z. o. riukuensis (Matsumura, 1929)
・Z. o. sangra (Moore, 1866)
・Z. o. soeriomataram (Kalis, 1938)
・Z. o. tanagra (Felder, 1860)

wikipediaには、加えて下のような記述がある。

and possibly 2 undescribed subspecies from Sulawesi/Selayar and Banggai.

おそらくコレはインドネシアのスラウェシ/スラヤール島とバンガイ諸島からの2つの未記載の亜種があるって事だね。
何だ❓その曖昧模糊とした言い方は。何で未記載なのだ。わかってんなら記載しろよな。理由がワカラナイ。謎だよ。

それにしても凄い数の亜種だ。
面倒なので各亜種の分布地は調べない。どうせ新たなる謎にブチ当たるに決まってんである。シノニムも仰山あるに違いない。これ以上はもう御免だ。気になる人は自分で調べてね。ほいでもって謎地獄の迷宮に迷い込めばいいのだ。Ψ( ̄∇ ̄)Ψほほほほほ。

よせばいいのに、そういえば学名ではググってなかったなと思い、やってみた。
したら、こんなん出てきましたー。

Molecular systematics and biogeography of the genus Zizina (Lepidoptera: Lycaenidae)
Apr 2008 Masaya Yago、Norio Hirai、Mariko Kondo

見たら、これがどうやら矢後氏他の記載論文だろうと勝手に想像してたものだ。
しかし、そうではなくて、Zizina属のDNA解析の論文のようだ。
そこには、画像もあった。

 

(a:表、b:裏)
5 Zizina emelina emelina 兵庫県小野市
6 Z.emelina thibetensis 雲南省(中国)
7 Z.otis otis 広西チワン族自治区(中国)
8 Z.otis otis ハブロック島、南アンダマン島(インド)
9 Z.otis riukuensis 沖縄県大東島
10 Z.otis ssp フローレス(インドネシア)
11 Z.otis indica マイソール、カルナタカ州(インド)
12、Z.otis antanossa アブリー(ガーナ)
13、Z.otis labradus ケアンズ(オーストラリア)
14、Z.oxleyi ノースカンタベリー(ニュージーランド)

 
論文はDNA解析の結果、Z.labradusとZ. antanossaは種から亜種に降格、Z.otisの亜種としている。すなわち5種が3種に整理されたワケやね。
Z.otis、Z.oxleyi、Z.emelinaの3種は、約250万年前に共通の祖先から分岐したと推定している。
そして、Z.oxleyiとZ.emelinaの祖先は温暖な気候に適応して北半球と南半球で分岐し、それぞれニュージーランドと東アジアで現存する種になったと仮定している。対照的に、Z.otisの祖先は主に熱帯および亜熱帯地域に適応し、現存するものはアフリカ大陸、東洋およびオーストラリアの地域に分散したものだと考えている。またニュージーランドのZ.oxleyiの分布は、Z.otisの侵入に脅かされているという。

( ̄З ̄)う~む。emelinaはotisから種分化したものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。やはりシルビアとヒメシルビアは別系統なのね。

一段落したと思い、坂本女氏の論文を読み始める。
したら、また新たな疑問も生じてきた。ヒメシルビアとの交雑実験とボルバキア感染なんて話まで出てきたのだ。また、他にもネット情報でヤマトシジミとの自然状態でのハイブリットの話まで飛び出す始末。頭が(◎-◎;)💫クラクラしてきたよ。調べれば調べるほど謎が出てくるシルビア蟻地獄じゃ。
でも、論文をチラッと見てアレルギー反応が出た。ウンザリで、真面目に読む気にもならない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
                     つづく

 
追伸
書いているうちに、どんどん深みに嵌まってゆき、ムチャクチャ長くなってしまった。もう泥沼ぬかるみである。というワケで分載することにしました。
アチキ、このあと更に迷宮で彷徨。ノタ打ち回ることになりんすよ。

 

子持ち鮎

子持ち鮎が売ってた。
しかも、4匹で298円だった。激安である。どうせ養殖だろうが、それでも安い。
鮎は養殖もされてるから、今や年中出回るようになった。しかし、子持ち鮎を味わえるのは秋の年1回だけである。だから、たとえ養殖であろうと貴重だ。

塩焼きをしている間に、子持ち鮎でググってみた。
したら、現在アユの危機が言われているらしい。コレって鮎好きとしては捨て置けないので、書いておこう。
各地に放流される鮎は琵琶湖産が多いという。しかし、琵琶湖のアユは普通のアユとは違い降海しないものが多いらしい。琵琶湖が海の替わりになっているのだ。長年の間で、一部は海水では生きていけない体質になってしまっているそうである。そもそもアユの生態は降海型で、卵から孵ったアユは一旦海に下る。で、栄養を蓄えてから、また河川に戻る。
ここで問題なのが、現在、琵琶湖産のアユを他の河川に放流しているケースが多い。これらが、もともとのアユと交雑した場合、その稚魚もまた、海では生きられない性質となる事が分かってきているようなのだ。本来のアユがそれにより激減する危惧が唱えられていると云うのだ。つまり、将来的にはアユの漁獲量が減る可能性があるって事なのさ。
もしそうなれば、嘆かわしいことである。鰻は既に高騰しているし、アユまで高値となれば悲しすぎるよ。

卵で思い出した。
鮎には塩辛もあり、ウルカ、または鮎うるかとも呼ばれている。ウルカにも色々あるが、鮎の内臓のみで作る苦ウルカ(渋うるか、土うるか)が基本だ。他に内臓にほぐした身を混ぜる身ウルカ(親うるか)、内臓に細切りした身を混ぜる切りウルカ、卵巣(卵)のみを用いる子うるか(真子うるか)、精巣(白子)のみを用いる白ウルカ(白子うるか)等がある。
どれも高価だが、中でも卵のみの子ウルカと白子の子ウルカは滅多に見掛けないし、より高価である。
これが高価なだけに、めちゃんこ美味いんである。自分も2度ほどしか食ったことかないが、死ぬほど日本酒とか焼酎に合う。メチャメチャ食いてぇ~。

そうこうするうちに、焼けた。

 

 
魚焼きグリルもないし、魚焼き網もロクなのがないから、忸怩たる仕上がりになった。

 

 
おまけに、盛り付けも決まらない。
まあいい、今回のメインは卵だ。焼き方の上手い下手は、身よりも多少の失敗は許されるのではないかと思っている。
しか~し、一部卵の火入れが不十分だった。
しゃあないので、その部分だけ、あとでレンジでチンした。

 

 
これにはエクストラ・ヴァージンのオリーブオイルと醤油をかけてみた。あっ、旨いわ。
何したって、子持ち鮎は美味い。

                    おしまい

 

紫ずきんでござる

 
 

 
拙者、紫ずきんでござる。
この世の悪を憎~み、この世の腐った体制を愁~う。
テメエら、叩きっちゃる(*`Д´)ノ❗

何か江戸時代の旗本の裏の姿が勧善懲悪のヒーロー武士「紫ずきん」でしたー、ってな事が頭の中で躍動する。ストーリーとかも浮かび始めた。いかん、いかん。相変わらずの低能おバカ脳である。
しかし名前の由来はそうではなくて、豆の薄皮が薄紫色で、頭巾のような形をしていることから名付けられましたんだとさー。(>o<“)残念なりよ。

ちゃんと説明すると、高級食材の丹波黒豆を枝豆用に品種改良したものだ。
驚いたのは、その産地である。黒豆といえば篠山近辺というイメージを持ってたから、てっきりその辺が産地かと思いきや、主な産地は亀岡市、綾部市、福知山市なんだそうである。微妙に持っているイメージの丹波とはズレている。つまり、場所は兵庫県ではなくて、これら全ての市町村は京都府なのだ。
でも、ここでふと疑問が浮かんだ。そういえば松茸や栗といえば丹波=京都のイメージもある。
同時に思い出したのが、市町村合併で氷上郡の地域が丹波市と名乗り始めた事に拠り、篠山市が丹波ブランドの搾取だと怒って揉めてたんだよね。最近、負けじと篠山市も丹波篠山市と改名をしたから、一応問題は沈静化したようだけどさ。
丹波って、そもそも何処よ❓
気になったので、調べてみた。

Wikipediaによると、山陰道で、相当する領域は京都府中部、兵庫県北東部、大阪府北部となっていた。
やはり京都の一部も丹波だったんだね。驚いたのは、大阪の一部も丹波なの❓混乱してきたぞ。

さらに読み込んでゆこう。
「丹波国は大まかに言って亀岡盆地、由良(福知山)盆地、篠山盆地のそれぞれ母川の違う大きな盆地があり、互いの間を山地が隔てている。このため、丹波国は甲斐や信濃、尾張、土佐のように一国単位で結束した歴史を持ちにくい性質があり、丹波の歴史を複雑化した。地域性として亀岡・八木・園部の南丹(口丹波)地方は山城・摂津と、福知山・綾部の中丹は丹後・但馬と、篠山は摂津・播磨と、氷上は但馬・播磨に密接に係わる歴史を持った。」

丹波くんって、何だか複雑でややこしいんだねぇ…。
また、こうとも書いてあった。

「丹波の範囲は、現在の兵庫県側は丹波篠山市及び丹波市で、人口・面積ともに全体の2割弱。京都府側は亀岡市、南丹市、船井郡京丹波町、綾部市、福知山市であるため、兵庫県部分より京都府部分のほうが広大である。「兵庫丹波」「京都丹波」と分類するのは、丹波が2府県にまたがるためである。
そもそも丹波は、中央集権体制を進める明治政府の大久保利通らにより、但馬・丹後を含め似通った地域性を無視して2府県に分けられた。」

へぇ~、京都側の方が広いのね。でも兵庫県側に丹波市と丹波篠山市があるから、いつの間にか自分の中ではそちらの印象が強くなってたんだね。
それにしても、クソッ、またしても大久保の野郎の仕業かよ。またしてもと書いたのは、首都が東京になったのも大久保の策略なのだ。歴史の裏には常に大久保の暗躍ありである。西郷さんを裏切ったイメージもあるから、嫌われて当然かもな。薩摩人(鹿児島県民)でさえも、嫌ってるらしいぞ。廃藩置県、気に入らねぇ~。三重県とかも関西か東海かよくワカンなくなってんのも、たぶん大久保のせいだな。四日市は東海だと思うけど、伊賀は関西じゃろうがっ(=`ェ´=)

それはさておき、パッケージの裏を見ると、茹で時間は5分~10分とある。どんだけ幅が広いねん❗「茹で時間はお好みで」とはあるが、それってどうよ❓
枝豆はどちらかと云うと硬めが好きで、やわいのは好きではない。かといって生茹では避けたい。間をとって茹で時間を7分に設定した。

軽く洗って、塩をシッカリ揉み込む。
腹が立つのは、黒豆の枝豆って大概一部が腐っている事だ。今回は3個ほどアウトだった。何でやねん❓

熱湯が沸いたら、ブチ込む。

 

 
いい感じだ。ぷっくりしてて、旨そうだ。
早速、茹でたてを食べてみる。

予想していた以上に柔らかい。慌てて団扇で煽って冷ます。黒豆の枝豆は茹で時間が結構難しいことを思い出したよ。
でも甘みがある。しかも枝豆よかコクもある。そしてボリューミーだ。このボリュームが紫ずきんの魅力の一つだろう。それを考えれば、硬さ的にはベストに近いのかもしれない。これ以上硬ければ、ボリュームがかえって邪魔になりそうな気もする。甘さも出にくいかもしれない。茹で加減は来年の課題だね。

豊潤さを噛み締め、ビールを喉に流し込む。
秋も深まり始めましたなあ。

                    おしまい

 
追伸
残りを冷蔵庫で一晩おいて食ってみたら、何だか丁度よくなった。
馴染んで塩の回りも良くなって、冷えて硬さも良い具合になった。そして、ナゼか香りも増した。枝豆も含めて鞘系の豆を茹でるのは難しいし、奥が深い。
因みに、中はこんな感じ。

 

 
ドドメ紫ずきんじゃ。
黒っぽい中に緑の部分があるから、それが頭巾を被っているようだって事ね。言われなきゃ、ワカランわ。言われても無理あるよね。
 

ゼフィルスなんて、どうでもいい

  
ゆえあってカトカラの連載がひと月ほど書けないので(註1)、キアゲハの回で力尽きていた『台湾の蝶』の連載を再開させる気になった。
再開するに辺り、何をテーマにするかを考えた。
あまり地味過ぎるのも何だし、ここは一発、勢いづけに派手な奴から始めよう。そう考えた。で、今まで一度も取り上げてこなかったゼフィルス(ミドリシジミ類)にしようかなと思った。綺麗だし、とても人気のあるグループだから、再開の第1回目には相応しい。謂わば、再開に花を添えるような存在だと思ったからだ。
因みに、ゼフィルス(Zephyrus)とは「西風」もしくは「西風の妖精」という意味である。

だが、画像を探してるうちに、ワケわかんなくなってきた。整理してなくてグッチャグッチャに並んでるのだ。
これって、何だっけ❓

 

 
エサキミドリシジミ(Chrysozephyrus esakii)❓
でも、よくよく見れば、どうやらただのミドリシジミ(Neozephyrus japonicus)のようだ。
念の為に展翅した日付から野外写真を探すと、間違いなくミドリシジミであることが判明した。

 
(2018.5.27 京都市)

 
スマン。情けないが、ミドリシジミの類って、いまだに同定に自信がないのだ。
正直、ハヤシミドリシジミとヒロオビミドリシジミ、エゾミドリシジミ、ジョウザンミドリシジミの♂を並べられて、『ハイ、どれがどれでしょう❓』と尋ねられたら、すぐにテキパキとは答えられないと思う。ジッと見て考えてからでないと、正しい答えは導き出せないだろう。
♂はまだ何とかなる。♀なんか正しく答えられるかどうか、まるで自信がない。
ゼフィルス好きの人からみれば、ダッせー、アホちゃうかと言われそうだが、蝶屋にしてはゼフ(こう略称するのが通例)なんてどうでもいいと思っているのである。

蝶好きの間の中で最も人気のあるグループといえば、ギフチョウとこのゼフが双璧ではないかと思う。

 
【ギフチョウ】

 
シーズンになると、皆さんゼフの仲間を嬉々として採りに行くし、冬場は卵探しに余念がない。完品の標本を得る為に卵から飼育するのだ。蝶の中で最も飼育されているのがゼフィルスではないかと思う。それくらい人気があるのである。
でも、自分は正直、熱量が低い。宝石のように美しいし、可憐だとは思う。だから嫌いじゃない。寧ろ好きだ。けれど日本産ゼフィルス全種を採ってからは、急速に興味を失った。
正直、採っててあまり楽しくないのである。
ゼフィルスの成虫採りといえば、それぞれの♂が縄張り行動(占有活動)をする時間帯に行って採ると云うのが基本である。これが嫌いだ。だいたいが木の高い所で飛び回るから長竿が必要になってくる。最低でも7mくらいはないと勝負にならない。中には10m以上を持つ猛者もいる。自分のような非力なものは、これを振り回すのがしんどい。シャープに振れないのも苛つく。一閃💥電光石火の如く振り抜きたい性質(たち)なのだ。また、たとえ振り回せたところで、しなるからそれを計算して網を振らなければならない。これが難しい。
それに目線は上になる。下から見ると人の目は距離感が狂うようだ。そのままの視覚で網を振ると、大概は手前を振ってしまうのだ。中には蝶が枝先に止まっているのに、とんでもない手前を振っている輩もいる。つまり、これまた修正、計算しなくてはならないのである。
そして、最も嫌いなのが上をずっと見てるから首が痛くなることだ。自分のような細くて美しい流麗な首を持つものには(笑)、これが誠にもって辛い。

あっ、もっと嫌いなことがあるわ。
ゼフィルスはテリトリーを張る時間帯があって、主にその時間帯に採集するという事を既に述べた。じゃあ、それ以外の時間はどうやって採るのかというと、「叩き出し」と言われる手法が使われる。これはどんな方法なのかというと、網で木の枝先を叩きまくって、驚いて飛び立たせるという戦術だ。やがて蝶はどこかに止まるから、位置を確認して採るのである。
しかし、これが儘ならない。飛び立った蝶が思い通りの場所に止まってくれるとは限らないのである。更に上、網の届かない所に行ってしまう場合も多いし、見失ってしまうケースも多々ある。それに叩けば幾らでも飛ぶというものではない。叩いた回数に対して、蝶が飛ぶ回数は圧倒的に少ない。ダメな時は、どんだけ叩いても全く飛ばないなんてことはよくあるのだ。
夏のクソ暑い、しかも一番湿気の多い時期に上を向き、首の痛みと腕の痛みに耐えてひたすら叩くのである。その頑張りに与えられる対価は極めて低い。殆んど罰ゲームの域である。
これを自分は「労働」と呼んでいる。囚人の無益な労働だ。そこにはクリエイティブなものは無い。自分の好きな採集スタイルではないのだ。

でもなあ…、今年は結局一度もゼフ採りに行かなかったんだよなあ。そうなると何だか淋しい。
あの美しい輝きは何にも変えがたいのだ。『森の宝石』と言われるだけのことはある。
来年は「労働」を厭(いと)わず、会いに行こう。

  
                    おしまい

 
追伸
この文章は7月に書き始めて、途中で投げ出したものである。こんなこと書くと、ゼフィリストに無茶苦茶罵られるのではないかと思ったのである。もとより好んでワザワザ揉め事を起こしたくはない。
しかし、折角書いたのに破棄するのも勿体ないと考え直した。と云うワケで加筆して完成させたのが、この文章である。
ゼフィリストの皆さん、怒らないでネ。

 
(註1)ゆえあってカトカラの連載がひと月ほど書けないので

カトカラのニュー、マホロバキシタバを発見しちゃったので、「月刊むし」に発表されるまでは書けなくなった。連載の次作はカバフキシタバだったのだが、マホロバの発見にカバフが深く関わっていたのである。カバフの事を書くとならば、どうしても場所に触れなければならない。そうなると勘のいい人ならば、マホロバの産地を特定できる可能性が出てくる。まさかそんな事はあるまいとは思ったが、それを見つけて先に記載される可能性が無いとはいえない、との事で、関係者の間で箝口令が敷かれていたのだ。
因みに、月刊むしの10月号は無事に発行され、記載も完了した。一方、カバフの回の方も書き終えることができた。拙ブログに『2018′ カトカラ元年』と題して書いた連載の第5話とその続篇に、その辺のことは書いてあるから御興味のある方は読まれたし。

 

2018′ カトカラ元年 其の九

 
 vol.9 クロシオキシタバ

   『落武者源平合戦』

  
2018年 7月23日。

次のターゲットはアミメキシタバだったが、何だかんだと用事があったので行く暇がなかった。
それでクロシオキシタバも抱き合わせで採れる場所を探した。で、候補に上がったのが両方の記録のある明石城跡公園だった。ここは明石にフツーに遊びに行った折りに何度か訪れているし、駅からも近い。何せプラットホームから丸見えなのさ。山登りもしなくて済むし、楽勝じゃん。
それに明石といえば魚の棚商店街があるから、昼網の新鮮な魚介類が堪能てきるし、名物の明石焼きだってある。夕方早めに行って、寿司か明石焼きを食ってから採りに行く事だって可能だ。或いはトットと採ってソッコー切り上げて、ゆっくりと酒飲みながら旨いもん食うと云う手も有りだ。
あっ、( ̄∇ ̄)それがいいわ。と云うワケで飯食うのは後回しにして、先に下見をすることにした。

探すと、結構樹液が出ている木がある。
カナブンや見たことがないハナムグリが群れている。
下調べの段階で知ったが、コヤツがキョウトアオハナムグリって奴だね。

 
【キョウトアオハナムグリ♂】
(出典『フォト蔵』)

 
このハナムグリは結構珍しい種みたいなんだけど、この明石公園に多産することが分かってからは価値が激落ちしたようだ。記念に1頭だけ採って、あとは無視する。

クロシオの幼虫の食樹であるウバメガシはあまりない。しかし、大木があった。常緑カシ類はどれも似たようなものばかりで区別が苦手だけど、コヤツは簡単にわかる。なぜなら、この木は葉が硬くて生垣によく使われるからそれなりに見慣れている。それに樹肌がお婆ちゃんみたいなのだ。漢字で書くと姥目樫。ようするに老女に見立てている。老女のようなシワシワの木肌だもんね。但し、ウバメガシの新芽、あるいは若葉が茶色いことからきているとする説もある。

櫓の向こうに夕陽が落ちてゆく。

 

 
余談だが、明石城は江戸幕府2代将軍徳川秀忠の命で小笠原忠真が元和5年(1619)に築城したとされる。
因みに天守閣は無い。焼失したとかそういう事ではなくて、最初から無いのだ。勿体ない。
理由は諸説あるが、ここでは書かない。こんな初めの方から大脱線するワケにはいかないのだ。

 

 
夕陽を見送り、いよいよ戦闘体制に入る。
しっかし、ちとやりにくい。けっこうイチャイチャ💕カップルがいて、ベンチの大半を占拠しておるのだ。ベンチの近くに樹液の出ている木もあるから正直気が引ける。それに何度も行ったり来たりしていたら、確実に怪しい人だと思われるだろう。で、そこで網なんか出しでもしたら、益々アンタ何者なんだ?ということになるに決まってんである。

で、そわそわマインドで探し回ったけど、結局飛んで来たカトカラはクソただキシタバのパタラ(C.patala)のみだった。
暇ゆえ、カップルへの意趣返しにカブトムシの交尾にちょっかいをかけてた。
(*`Д´)ノアンタたちー、ここで乳繰り合うのは許しませぬぞ❗

  

 
葉っぱ付きの枝でコチョコチョしたり邪魔して遊んでたら、あっちゅー間にタイムアップ。
結局、寿司も明石焼きも御預けになってしまい、終電で帰った。しょっぱいわ(;つД`)
やはり楽しちゃダメって事だね。イージーに採ろうとしたので、きっと神様にお灸をすえられたのだろう。

 
8月1日。

この日は須磨方面へ行くことにした。
考えた揚げ句、関西でウバメガシが一番多いところをネットで探すことにした。それが須磨周辺だった。
ウバメガシが一番多い場所も特定できたし、地図も手に入れた。準備万端だ。これを電撃⚡黒潮作戦と名付けよう。ここで採れなきゃ神様の胸ぐらを掴んでやるわい(*`Д´)ノ❗❗

海が見える。

 

 
長い間、海を見ていなかった気がする。
やっぱ海はいい。何だかホッとする。

歩きながら、ここへは一度来たことがあるのを思い出した。何年か前、プーさんにウラキンシジミ(註1)の採集に連れて来られたのだった。
しかし、結局1頭も見ずじまいだった。失意のままキツい傾斜を下りたんだよなあ…。須磨は大阪から案外遠いから、時間も電車賃も割合かかるし、徒労感はかなりあった記憶がある。
あの坂を上がるのかあ…。ウンザリだよ。それに此処はそんなワケだから鬼門かもしれない。ナゼか相性の悪い場所ってのはあるのだ。
もしも採れなかったら、神様の胸ぐらを掴むだけじゃすまない。そのまま、(#`皿´)オラオラオラー、テメエどうしてくれんだよーと激しく揺すって揺すぶって、揺すりたおしてやるよ。

15分ほどアスファルトの道を登ると、ウバメガシがチラホラ散見できるようになった。生息地は近い。
で、本格的な登山道に入ったと思ったら、いきなり深いウバメガシ林になった。(;・ω・)えっ、もう❓ これなら当たりをつけていた遠い尾根まで行かなくとも済むかもしんない。
と思ってたら、何かが慌てたように目の前を飛んで逃げた。間違いなく蛾だ。しかもカトカラっぽい。クロシオ❓ やがて、7~8m飛んで木の幹に止まった。
⤴テンションが上がる。ザックからネットと竿を取り出し、迅速に組み立てる。時刻はまだ4時半。明るいうちに採れれば、気分はグッと楽になる。トットと終らせようぜ、イガちゃん。んでもって、三宮辺りで旨いもんでも食おう。

慎重に距離を詰め、止まった辺りを凝視する。
いたっ❗かなり大きい。えっ、もしかして糞パタラ❓でも横向きだし、種を特定できない。けれど、ここはウバメガシ林だ。パタラよりもクロシオの可能性の方が高い。とにかく採ろう。採らなきゃワカランわい。
一歩踏み出し、網を振ろうとした時だった。
( ̄□||||❗❗ゲッ、また飛んだ❗(|| ゜Д゜)あちゃー、何たる敏感さ。慌てて後を追いかける。
しか~し、ガビ━━━ Σ( ̄ロ ̄lll) ━━━ン。森の奥へと消えて行った。
( ̄0 ̄;マジかよ…。やはり此処は鬼門なのか…。
己に言い聞かす。まだ4時半だ、時間はたっぷりある。チャンスはまだまだある筈だ。メゲずにいこうぜ。

暫く進むと、両側が石垣の道になった。そこを歩いていると、左側からいきなり何かが飛んだ。咄嗟にヒュン💥電光石火で網を振った。
手には、入ったと云う確信がある。
覗くと、おった( ☆∀☆)
いえ~d=(^o^)=b~い。運動神経と反射神経がよくて良かったー。

 

 
一見、パタラに似ているが、やや小さい。上翅の柄もパタラとは違うような気がする。それに何よりも色が違う。パタラは緑か茶色っぽいが、コイツは青っぽいのだ。おそらく、コヤツで間違いないだろう。キミがクロシオキシタバくんだね。

ホッとする。1頭でも採れれば、人には一応採ったと言える。その事実さえあれば、最低限のプライドは保たれる。嵌まりかけているとはいえ、いくら蛾の世界では人気があろうと、所詮は蛾風情だ、そうそう連敗するワケにはいかぬ。

さてとぉ~、この先どうすべっか…。
まだ午後4時40分なのだ。日没にはまだまだある。ここにいることはハッキリわかったのだから、この場所で張ってても問題ないだろう。駅にも比較的近いし、帰りも楽だ。でも、あと2時間以上も此処にいるのは精神的にキツい。時間を潰すのが大変だ。それに、動きたい、他にもポイントを見つけたいという生来の性格が此処にとどまることを許さない。だいち樹液の出ている木をまだ見つけていない。となると、闇の中での空中戦になる。それでは満足な数が採れる確率は低かろう。とにかく時間はまだたっぷりある。最初に地図で当たりをつけていた場所まで様子を見に行こう。その途上で樹液の出ている木も見つかるかもしんないし、他にも有望なポイントが見つかるかもしれない。ダメなら、戻ってくればいいだけの事だ。

山頂に向かって歩き始める。斜度は思っていたとおりキツい。あっという間に汗ビッショリになる。でも時折、心地好い海風が吹き、悪くない気分だ。

山頂にもウバメガシの木は沢山あった。でも次のクロシオが目っけらんない。樹液の出てる木も見つからん。
さらに尾根づたいに歩いてゆく。しかし、段々ウバメガシの木が減ってきた。相変わらず樹液の出ている木も見つからない。
道はさっきから下り坂になっている。それなりに傾斜はキツい。これを登り返すのかと思ったら、ゲンナリしてきた。

目指す森まであと3分の1というところで考えた。
帰りのことを考えれば、その森から駅まで戻るのは大変だ。登り返しだし、そのあと今度はキツい下り坂が待っている。時間的ロスもかなりあるだろう。さっきの場所ならば、その心配はない。でもこのまま目的地まで進めば、引き返す時には途中で日没になっている公算が高い。夜道を急いで戻るのは得策ではないし、何らかのトラブルを起こす確率も間違いなく上がるだろう。引き返すならば、今だ。それに道はどんどん狭まってきている。いわゆる痩せ尾根だ。

 

 
そういえば、この辺りが源平合戦で有名なところだったな。あの源義経が大活躍した一ノ谷の戦いは、この麓で行われたのだ。そして、この今いる場所から急峻な斜面を馬で駈け下りるという大奇襲作戦が勝負を決した。あの有名な、世にいう「鵯(ひよどり)越えの逆(さか)落とし」という奴である。平家は有り得ないと思っていた背後からの奇襲に大パニック、そのまま総崩れ、敗走を余儀なくされたのだった。

本当にこんな急斜面を馬で駈け下りたのだろうか❓俄かには信じ難い。絶対、ハナシ盛ってんな。
そういえば昔、TVで本当にそんな作戦が可能だったのかを検証すると云う番組があったな。ここと同じ斜度の別な場所で実験してた。たぶんサラブレッドではなく、ちゃんとその時代の馬に近い丈の低い種類の馬まで用意して実験は行われていた。
結果は途中棄権。確か限りなくアウトに近いものだったと思う。乗馬では無理で、実際は馬を牽いて下りたのではないかとも言ってたっけ…。
そんなことを思い出してたら、突然、心の中を恐怖が擦過した。もしかしたら、平家の亡霊に谷底に引き摺り込まれるやもしれぬ。o(T□T)o落武者じゃあ~。怖いよぉ~。落武者に山中で追いかけ回される映像が瞼の裏に浮かんだ。怖すぎだろ、ソレ。アメユジュトテチテケンジャア~(T△T)(註2)
んでもって、痩せ尾根から足を踏み外し、斜面を止めどなく転がってゆくのだ。最低でも骨折、打ち所が悪けりゃ、あの世ゆきだ。
あっ、でもウチの御先祖は平家だ。それはないでしょうよ。仲間じゃん。でもそんなこと言ったって、片目から目ん玉がドロリと落ちかけた落武者に必死コイて説明、懇願したところで聞いてくれる保証はどこにも無いよね。(ノ_・。)グスン。
そのうち源氏の亡霊どもも続々と現れて、合戦が始まるやもしれぬ。夜な夜な此処ではそんな事が行われてたりして…。そうなったら、もう阿鼻叫喚だ。木の根元で縮こまって震えてるしかない。
それに、落武者は扨ておき、もしも懐中電灯が途中で切れたなら、危険過ぎてその場から動けなくなる。膝小僧を抱いてシクシク泣きながら夜が明けるのを待つしかあるまい。そうなると、落武者以外にも魑魅魍魎がお出ましになるやもしれぬ。いや、ゼッテーおどろおどろしい色んなのが大挙して押し寄せて来るに決まってるんである。やっぱ予備の懐中電灯とか電池は持っとくべきだなあ…。性格なんだろうけど、その辺がいい加減というかユルい。

でも、足は意に反して前へ前へと出る。もしかしたら、何か得体の知れない者に誘(いざな)われているのやもしれぬ…。
冷静になろう。単に性格的に途中で中途半端に引き返すのがイヤなだけなのかもしれん。今まで歩いた分が勿体ないじゃないか❗と云うワケだ。しかし、理由が自分でもどっちがどっちなんだかワカンナクなってくる。( ̄~ ̄;)も~。

目的地が近くなってくると、またウバメガシが増え始めてきた。やがてウバメガシの純林とも言える状態になった。こりゃ、アホほどいるじゃろう。ここを目指したのは正解かもしんない。そう思って歩いてたら、老木にペタペタと何かが付いているのが目に入った。

 

 
あっ、カナブンやんか❗
ということは、樹液が出ているということだ。よく見ると何ヵ所かから樹液が出ている。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψフフフ…、賭けに勝ったな。もし此処に飛んで来ないなら、この森にはいないと云う事になる。しかし、これだけ大規模なウバメガシ林にいないなんて有り得ないだろう。それこそ七不思議の落武者の呪いだ。

もう一度樹液の出ている場所を丹念に確認してゆくと、木肌の或る箇所に違和感を覚えた。あらま、木と同化して、既にカトカラくんらしきものが下翅を閉じて止まっているではないか。何だろう❓大きさ的にはフシキとかコガタキシタバくらいの大きさだ。いや、もっと小振りか…。しかも上翅の感じはそれらとは違うような気がする。何かもっと茶色っぽい。とはいえ、下翅は見えないからカトカラじゃない可能性だってある。下翅が小汚い糞ヤガどもも上翅は似たような感じなのだ。
悪いクセだ。グダグダ思い煩う前にさっさと採ろう。

網でドツいて、難なくゲット。

 

 
あっ❗、コレってもしかしてアミメキシタバじゃね❓
また新しく1種増えた。らっき~(^o^)v
そっかあ…、アミメは幼虫の食性の幅が確か広かった筈だ。おそらくウバメガシも食樹になっているのだろう。よし、ならばここに居座ることは、もう決定だな。

夕暮れになっても歩いている人がちょこちょこいる。
さすが六甲だ。住宅街のすぐ上が山なのだ。住民が手軽に来れるというワケだ。
そこで考えた。それだけ登山者が多いと云うことは道も多い筈だ。正直、帰りはもう一回来た道を戻るのはしんどい。所要時間もそれなりにかかるだろう。ならば、この周辺から下へ下りられないか?その方が登りもないし、時間の短縮にもなるだろう。そこで訊いてみることにした。
人の良さそうなオジサンに声を掛ける。そのオジサンによると、一ノ谷を下りる道があるという。分岐も此処から近いそうだ。
でも歩いたことのない道だ。しかも、ましてや夜である。道に迷う可能性は大いにある。下手したら、やっぱりその場で膝小僧を抱いてシクシク泣きながら、夜明けを待つことになりかねない。当然、落武者と魑魅魍魎どもとも戦わねばなるまい。賭けではある。
よっしゃ、決めた。一ノ谷を下りよう。鵯越えの逆落としを義経張りに鬼神の如く勇猛果敢に下ってみせよう。あっ俺、平家だけどいいのか(・。・;❓
まっ、いっか。細かいことは、この際忘れよう。

やがて、闇が訪れた。

 

 
撮影事故ではござんせん。
ライト💡オーフ。試しに懐中電灯を消してみたら、一瞬にして目の前がマジで黒一色の世界になったのだ。エコエコアザラク、エコエコザメラク。
たぶんウバメガシ林が密過ぎて、街の灯が全く届かないから真っ暗けなのだ。京都以来のホラーな漆黒の闇、再びである。
まあ、ここは熊はいないだろうから惨殺されることはないゆえ、あの時ほどの恐怖は無いんだけどさ。
と思った次の瞬間には思い出していた。確かに此処には熊はいないけれど、イノシシがワンサカいるのだ。六甲といえばイノシシというのは有名だ。毎年、人がイノシシに襲われる事件が頻発しているのだ。住宅街にだってウロウロしているくらいなのさ。クソッ、落武者に魑魅魍魎、それにリアル猪かよ。ったくよー(# ̄З ̄)

日没後、すぐにカトカラがワンサカ集まって来た。
作戦的中。ざまー見さらせである。取り敢えずアミメをジャンジャン採る。時期的に最盛期を越えた感じなので、翅が欠けていたり擦れている奴が多い。ゆえに鮮度の良い奴の確保を優先したのだ。
パタラも多数飛来してきた。ウザい。ほんま、オマエら何処にでもおるのぉー(# ̄З ̄)
にしても、パタラの幼虫の食樹はフジなどのマメ科だ。なのに、こんなウバメガシしかないところにもいるんだね。あっ、でも翅がある生き物だもんね。樹液が出てりゃ、余裕で麓から飛んで来るわな。
ここで段々、疑問が芽生えてきた。夕方にクロシオだと思って採った奴は、もしかしたらパタラ、ただのキシタバなんじゃねえか❓それで今一所懸命に採ってるのがアミメではなくて、クロシオなんじゃねえの❓
そもそもクロシオって、そんなに大きかったっけ❓ 付け焼き刃の知識には、そんなことインプットされてないぞ。えー、(ToT)どっちなんだよー。頭の中がこんがらがってグチャグチャになる。この辺がカトカラ1年生のダメなところである。知識と経験値がショボい。
今にして思えば、これが落武者の呪いというか、落武者の悪戯だった。

混乱したままタイムリミットが来た。
急いで尾根を少し戻り、一ノ谷へと下る道に入る。いよいよ鵯越えの逆落としだ。果敢に攻めて、見事下りきってやろうではないか。
しかし、あまり使われていない道のようで、かなり荒れている。おまけに細い。泣く子も黙る更なる超真っ暗闇の中、思考は世話しなく動く。あらゆる物事に対して神経を研ぎ澄ます。闇では己の五感が頼りだ。
やがて崖崩れで道が寸断しかかっている所に出た。
ステップは足幅一つ分である。それが6、7mくらいは続いている。咄嗟に下を見る。真っ暗な崖底が不気味に口を開けている。
どうする❓リスクを冒してそのまま突っ切るか、それとも引き返すべきか…。だが、迷っている時間はない。えーい(*`Д´)ノ、行ったれー❗源氏ではないが、武士の血が流れている男だ。ここで引き下がるワケにはゆかぬ。
慎重に足を置き、バランスを崩さぬよう一気に崖崩れ地帯を渡る。
セーフ❗そのままの勢いで足早に駈け下ってゆく。

その後も所々寸断しかかってる急峻な坂道を慎重且つ大胆に駈ける。いやはや、流石のキツい傾斜だ。闇夜を一人歩くのはスリル満点っす。
分岐と枝道が多く、途中何度かロストしかけた。だがその都度、野生の勘と抜群の方向感覚で何とか乗り切る。

駅に着いた時には汗だくだった。
安堵感がジワリと広がる。無事に間に合った事だけでなく、闇の恐怖やミッションに対するプレッシャーから解放されて、ドッと体の力が抜けたよ。

翌日、展翅しようとして、愕然とする。
アミメはそこそこの個体数を採っているのに、クロシオは、たったの1頭しかなかったのだ。そう、夕方に最初に採った奴だけである。(@_@;)アチャー、やってもた~。パタラと思って無視していた奴、あれがようするにクロシオだったのである。カトカラ1年生、大ボーンベッドである。

それが、この1頭である。

 
【クロシオキシタバ Catocala kuangtungensis】

 
たぶん♂だね。
カトカラ1年生、やっぱり酷い展翅だな。上翅を上げ過ぎてしまっている。

「1頭でも採れたからいいじゃないか。そもそもアンタ、蝶屋でしょ?蛾なんだし、カトカラも所詮はヒマつぶしで採ってんでしょ?そこまで頑張ることないやん」と心の中でもう一人の自分が囁く。
確かにそうかもしれない。でも、このままでは引き下がれない。己のアホさをこのまま捨て置きはできぬ。そんなもんはプライドが許さないのだ。リベンジしてこその自分だ。それが無くなったら自分じゃなくなる。
🎵ボク~がボクであるためにぃ~ 勝ち~続けなきゃ~ならない

三日後、再び同地を訪れた。

 
8月4日。

 
ビーチだ。須磨の海水浴場でありんす。
思えば此処には高校生の頃からの思い出が沢山詰まっている。青春時代の夏と言えば、もう海水浴場っきゃない。ビール、ラジカセ、海の家、日焼けローションの香り、そしてそしての水着GALである。Tバックのお姉ちゃんたちが闊歩していたあの光景は、今考えると異様な時代だったよなー。Tバックのお姉さんの背中にローション塗るだなんて、高校生にとっては刺激が強過ぎて、もう頭の中が💥大爆発でしたよ。
そういえば夜に花火やってて、地元の奴らとモメて乱闘になりかけた事もあったよなー。オイラが原因を作っといて、オイラがその場を治めるというワケがワカンナイ無茶苦茶な展開だった。
何はともあれ、古き良き時代だった…。
このあと水着GALのいるビーチには目もくれず、夜の山に一人で蛾を採りに行こうとしてるんだから隔世の感しきりである。人生って、先のことはわかんないよね。

にしても、須磨の海岸も随分と様変わりした。
須磨といえば水着のお姉ちゃんだらけだったのに、夏真っ盛りというのにも拘わらず、家族連ればっかだ。きっと、今時の女の子は日焼けなんてしたくないのだろう。むしろ今は肌なんて出したくない美白の時代なのだ。嘆かわしい事だ。夏といえば若者の欲望が渦巻いてて当たり前だろ。こんなんじゃ、ナンパでけへんやんか。エロ無くして、日本の未来はないぞ。

 

 
また、キツい斜面をえっちらおっちら登ってきた。

 

 
淡路島が見える。
もう少しすれば、明石海峡大橋の向こうに夕陽が沈んでゆくんだね。六甲山地は山の上から海が見えるのがいいよね。

先日とは違い。不安が無いから気分にザワつきはない。クロシオが採れて当たり前の予定調和だ。採れないワケがない。そのゲット率は100%ではないが、それに近いだろう。突然、雷雨がやってでも来ない限りは大丈夫な筈だ。

美しい夕暮れが空を茜色に染め、やがて色を失い、闇が浸食してくる。
この一瞬に、ちょっとだけ不安がよぎる。物事には絶対はないからだ。もしクロシオが飛んで来なかったとしたら、心は行き場を失うだろう。怒りをどこに持ってゆけばいいのか想像がつかない。

心配は杞憂に終わった。
闇が訪れると、直ぐにジャンジャンやって来た。楽勝だ。それを確実にゲットしてゆく。

この日は神戸の港で花火大会が行われていて、花火を打ち上げる音がボンッ、ボンッと、ものすごーくよく聞こえてくる。しかし、鬱蒼としたウバメガシ林が邪魔して何も見えない。音だけで聞く花火ってのは、人を妙な気分にさせる。不思議な感覚に教われる。歓声を上げたりして、みんな楽しそうに花火を見ているのだろう。一方、自分は一人ぼっちで闇の中で蛾を採っている。何だ、この落差あり過ぎの孤独感は…。
しかし、お陰で闇の恐怖は確実に薄れている。闇の国、異界に隔絶されたような感覚は消え、現世(うつつよ)と繋がっているのだという安心感があるのだ。

乱舞するカトカラを採りまくって、溜飲が下がったところで撤退。帰路につく。

 

 
漆黒の闇地帯を抜けると、燦びやかな夜景が眼前に広がった。花火大会は、とっくに終わっている。
でもやっぱ神戸の夜景は綺麗じゃのう。昔だったらキスしまくりじゃわい。それが蛾とのランデブーとは隔世の感あり。全くもって(^_^;)苦笑しきりである。
とはいえ、やはり神戸の夜景は美しい。
満ち足りた気分で、ゆっくりと坂道を下りる。たぶん、明日も晴れるだろう。何となく、そう思った。

 
                    おしまい

 
クロシオキシタバは上翅にバリエーションがある。

 

 
ここまでが普通の型で、上翅が青っぽい。
上2つが♂で、一番下が♀である。♀は紋にメリハリがあって美しい。

 

 
こういう茶色っぽいのもいる。

 

 
これは白い紋が出るタイプである。カッコイイ。
これも♀である。

上翅がベタ黒のもいた。

 

 
一瞬、黒化型かと思ったが、下翅は別に黒くはないから、黒化型とは言えないだろう。
これも♀だ。もしかしたら、♀の方が変わった型が出やすいのかな❓

 
(裏面)

 
それにしても、全般的に展翅が下手ッピーだ。黒いのなんかは結構珍しいタイプそうなのに勿体ない。
一応、今年の展翅も載せておくか…。

 

 
だいぶ上達している。
触角の整形が、まだまだ甘いけどね。

今回のお題クロシオキシタバは久し振りに2019年版の続編を書きます。自分にとっては最悪だが、他人からすればたぶん笑える話なので、乞う御期待❗

それでは種の解説と参ろう。

 
【学名】
Catocala kuangtungensis sugii(Ishizuka, 2002)

小種名「kuangtungensis」は最後にsisとあるので、おそらく地名由来の学名だろう。kuangtungenで検索したら、広東省と出てきた。きっと最初に広東省で見つかったんだろうね。
亜種名「sugii」は最後に「i」で終わっているので、これは人名由来だろう。たぶん蛾の研究で多大なる功績を残された杉 繁郎氏に献名されたものと思われる。

 
【和名】
和名のクロシオは黒潮から来ている。次項で詳述するけど、これは分布が黒潮が流れる太平洋沿岸部だからでしょう。種の特性を上手く表現していて、良い和名だと思う。

 
【分布】
本州、淡路島、四国、小豆島、九州、屋久島。

本種は1960年代に高知県室戸岬、静岡県石廊崎で発見され、のちに幼虫の食樹がブナ科のウバメガシであることが判明し, この植物の分布するところには多産することが明らかになった。このため日本での本種の産地はウバメガシの分布域と重なり、九州から伊豆半島までの太平洋側沿岸部に見られる。東限はその伊豆半島となり、知多半島、紀伊半島、瀬戸内海沿岸部と家島、淡路島、小豆島などの島嶼、四国南部、屋久島などの産地が知られている。九州本土では少なく、大分、宮崎県下の沿岸部のみで得られているようだ。
飛翔力があり、成虫の寿命も長いことから、ウバメガシが自生しない場所でも稀に見つかる。中には長野県開田高原の地蔵峠など、発生地から150㎞も離れた場所での発見例がある。他に福井県、群馬県に記録がある。
食樹が判明するまでは、かなりの珍品だったようだ。今ではそう云うイメージは無くなってしまっているが、それでも全国的に見ると局地的な分布で、豊かなウバメガシ林があるところ以外では極めて稀な種だろう。

国外では中国南部広東省に原名亜種を産し、陝西省や四川省のような内陸部にも分布している。
👍ビンゴだね。やはり、学名は最初に発見された広東省から来てるんだね。それはさておき、内陸にも分布していると云うのは意外だった。クロシオというイメージからハズレちゃうね。食樹は判明してるのかな?やっぱウバメガシなんかな?でもウバメガシって、そんなに内陸部にあるのかしら?もし食樹が別なものだとしたら、極めて似通った別種の可能性もあると思うんだけど、どうなんだろ❓
とはいえ、日本でも和歌山県大塔山、香川県大滝山など、植生によってはかなり内陸部にも見られるらしいからなあ…。にしても、数十キロだ。中国の内陸産とは、海岸からの距離はとてつもない差があるとは思うけどさ。

 
【亜種と近縁種】
▪Catocala kuangtungensis kuangtungensis(Mell,1931)
中国・広東省の原記載亜種。

▪Catocala kuangtungensis sugii(Ishizuka, 2002)
日本亜種。

▪Catocala kuangtungensis chohien(Ishizuka、2002)
陝西省・四川省亜種。

四川省には、他にも小型の別種 Catocala dejeani(Mell,1936) がいるが、クロシオキシタバの亜種とする研究者もいるようだ。従来、台湾産のクロシオキシタバとされてきたものは、コヤツなんだそうじゃよ。

 
【開張】
大型のキシタバの1つで、パタラキシタバ(C.patala)の次に大きい。なぜかどこにも前翅長が書いていない。これはおそらく『原色日本蛾類図鑑』に大きさが載っていないからだろう。ワシも含めて、みんな孫引きに違いない。誰か自分で測る奴が一人もおらんのかよ。(# ̄З ̄)ったくよー。
と云うワケで、自分で計測してみようとしたが、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』にはちゃんと載っていて、開張58~68㎜となっていた。そんなもんだと思う。流石、岸田せんせである。

前翅は青灰色の鱗粉が広がり、内横線の外側に白色を帯びた淡色部がある。後翅の外側の帯は内側の帯と接触し、内縁角では黒色紋が分離する.

 
【レッドデータブック】
滋賀県:要注目種、大阪府:準絶滅危惧、兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)、香川県:準絶滅危惧、宮崎県:準絶滅危惧(NT-g)

 
【成虫出現期】
6月下旬~9月下旬まで見られる。
関西では7月初めから出現し、7月中、下旬に多い。8月に入ると傷んだ個体が増えるので、新鮮なものを得たければ7月中に狙うべきである。
成虫の寿命は長く、室内飼育では2ヶ月間も生きた例があるようだ。

 
【成虫の生態】
豊かなウバメガシ林に見られ、そういう場所では個体数が多い。
昼間は頭を下にして暗い場所の樹幹、岩石、石垣などに静止している。湿った暗い場所が好きなようで、生息地の冷んやりした石垣に止まっているのをよく見た。その際は敏感で、近づくと直ぐに飛び立つ。着地時は上向きに止まり、暫くして逆さまになるそうだ。
ウバメガシやクヌギなどの樹液に好んで集まる。また糖蜜にも寄ってくる。しかし、今のところは樹液の方を好む傾向がある。まあ、レシピ次第ではあろうけどね。
吸汁中は下翅を開く個体が多い。パタラキシタバも下翅を開くので、紛らわしい。しかし、慣れれば上翅の色と柄で区別できる。但し、アチキがやらかしたように、懐中電灯の灯りの色によっては間違うので、注意が必要。
日没直後から姿を現し、吸汁に満足すると、その木や周辺の木に翅を閉じて憩んでいる。おそらくその後数度にわたり吸汁に訪れるものと思われる。
灯りにもよく集まるそうだが、ライトトラップをした事がないので見たことはない。
前述したが、飛翔力があり、成虫の寿命も長いことから、ウバメガシが自生しない場所でも稀に見つかるそうだ。2019年は食樹が殆んどない奈良市若草山近辺や大和郡山市信貴山でも見つかっている。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のウバメガシ(Quercus phillyraeoides)。
 
ウバメガシは日本産の常緑カシ類では、葉が特に丸くて小さく、また硬い葉を持つカシである。
暖かい地方の海岸部から山の斜面にかけて多く見られ、特に海岸付近の乾燥した斜面に群落を作るのがよく見かけられ、しばしば密生した森を作る。トベラやヒメユズリハとともに、日本の暖地では海岸林の重要な構成樹種の一つとなっている。また乾燥や刈り込みに強いことから生垣や街路樹などとしてもよく使われている。その材は密で硬く、備長炭の材料となることでも有名である。和歌山県では、最高級の炭である紀州備長炭の材料ゆえ、計画的に植栽されている。

 
(出典『庭木図鑑 植木ぺディア』)

 
(出典『イーハトーブ火山局』)

 
しっかし、よくこんな硬い葉っぱ食うよな。若葉だって硬いらしい。でも、クロシオは黄色い系のカトカラの中では二番目に大きいんだよね。不思議だよ。
そういえば、ウラナミアカシジミの亜種とされるキナンウラナミシジミ(註1)は、このウバメガシを食樹としている。ウラナミアカよか小さいのは、通常の食樹であるクヌギやアベマキが無いので、仕方なしにウバメガシを食うも、葉っぱが硬いから大きくならないと言われている。クロシオは関係ないのかな❓
自然状態では、ウバメガシ以外の食樹は見つかっていないが、クヌギなどのナラ類でも容易に飼育できるそうだ。その場合は、どうなのだろう❓巨大化するのかな❓でも、そういう事は聞いたことがない。まあ、飼ったことがある人はそう多くはないと思うけどさ。カトカラは蛾の中では人気種とはいえ、蝶愛好家に比べれば圧倒的に少ないのだ。その中で飼育もするという人となると、数も限られてくるだろう。

ここまで書いて、ふと思った。キナンウラナミって、何でワザワザそんな硬い葉のウバメガシなんか食ってんだ❓紀伊半島ならば、アカガシやイチイガシ、アラカシ、ブナとか他にもブナ科の木はあるじゃないか。何でよりによってウバメガシ❓
気になったので、Wikipediaを真面目に最後まで読むことにした。
それで目から鱗ちゃん、漸く理由が理解できた。ウバメガシは日本に自生するカシ類の中では唯一のコナラ亜属(subgenesis Quercus)に属し、他に日本に自生するアカガシ亜属(subgenesis Cyclobalanopsis)のカシよりはナラ類に近縁なんだそうだ。常緑だし、見た目からしても、全く想像だにしていなかったよ。アカガシやアラガシなんかよりも、クヌギやアベマキに近いんだ。納得です。
また、他の疑問も解けた。ウバメガシの分布は本州の神奈川県以南、四国、九州、それに琉球列島にも分布するとあったから、クロシオは沖縄や奄美大島にはいないのかな?と云う疑問を持っていたのだ。これも沖縄県では伊平屋島と伊是名島、それに沖縄本島から僅かな記録があるのみという事が判明した。つまり南西諸島では珍しい植物なのだ。クロシオの分布は完全に否定できないものの、極めて可能性が低いことを示唆している。
また、日本国外では中国中部、南部、西部とヒマラヤ方向へ分布が広がっている。また、沖縄県が分布の南限である。これでクロシオが中国内陸部でも分布する理由がわかった。また沖縄が分布の南限ということは、その辺りが分布の限界であり、クロシオにとっても生育には適さない環境なのだと想像できる。おそらく暑すぎるのだ。

 
 
追伸
書いてて、ふと思った。
もしかしたら、明石公園で見たパタラキシタバの一部はクロシオだったのかもしれない。一年以上経って初めてその可能性に気づいたよ。おバカだ。我ながら、抜けている。でも、全部パタラだったと思うんだよなあ…。
しかし、これが怪我の功名だったかもしれない。お陰でアミメキシタバが須磨で採れた。もしも明石でクロシオが採れていたら、アミメは大阪の八尾辺りで探し回っててエラい目にあってたかもしんない。あの辺は山が荒れてて、道があまり良くないし、メマトイだらけだしさ。

前述したが、クロシオキシタバについては久し振りに2019年版の続編を書きます。そこで見た目が近いアミメキシタバと日本で初めて見つかったニューのカトカラであるマホロバキシタバの違いについても言及する予定。あっ、アミメの時の方がいっか。いや、マホロバの時でいっか…。まだまだ先の話だけど。

今回のタイトルは、最初『黒潮の詩』『暖流の民』とかを考えていたのだが、どこかシックリこなかったので『電撃⚡黒潮大作戦』で書き始めた。結局、途中で今のタイトル『落武者源平合戦』に変えた。でも、今もって納得はいってない。

 
(註1)ウラキンシジミ
(2017.6月 宝塚市)

 
この時は、何週間か前にプーさんがウラキンシジミの終齢幼虫をパラシュート採集で結構採ったので、成虫もそこそこいるだろうと出掛けたのであった。しかし、結果は惨憺たるものだった。

 
(註2)アメユジュトテチテケンジャア~
宮沢賢治の詩集「永訣の朝」の1節。
拙ブログの過去文にも度々登場し、ピンチの時に発せられる崩壊状態を示す言葉。

 
(註3)キナンウラナミアカシジミ(裏面)
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
Japonica saepestriata gotohi(Saigusa,1993)紀伊半島南部亜種。
ウラナミアカシジミの名義タイプ亜種と比べると、前翅長が短く(小さい)、裏面の黒条が発達していて、尾状突起が長いなどの特徴がある。
でもクヌギなどを与えるとウラナミアカ並みの大きさに育ち、名義タイプ亜種と区別がつかないという。そのことから亜種ではなく、一つのフォーム(型)とする見解もある。しかし、若干大きくなるだけで、紀伊半島中部産の名義タイプ亜種の大きさには達しないとする意見もある。

 

禁断のマリアージュ

 

先日、奈良漬けが半額になっていたから、思わず買ってしまった…。
勿論、奈良漬けの基本は瓜だから、瓜の奈良漬けだ。
でも奈良漬けなんて正直どうでもいい存在なのを、買ってから気づく。

 

 
「甲南漬け」と書いてあるが、名前が違うのは神戸は灘で作っているから奈良漬けとは言えないのだろう。でも中身は奈良漬けそのものと言っていい。
因みに「甲南漬け」は、関西ではそこそこ有名だ。
そういえば昔、CMとかやってたな(註1)。全然、画像が動かないで、音だけが流れてるヤツ。

🎵灘のめーいさぁ~ん(名産)、甲南づけー、甲南づけ~

あっ、ちゃんと歌えるやん。ガキの頃の記憶力ってスゴいな。最近は何でもすぐ忘れるのにさ。
あっ、ここで気づく。甲南漬けの文字の横にちゃんと平仮名で「ならづけ」と書いてあるわ。んっ?「甲南ならづけ」ってことか。昔は奈良漬と書いてなかったような気がするけど、創業140年余年のプライドを捨てたのかな?(甲南漬けさん、昔から書いてあったならゴメンなさい。)

一応言っとくと、奈良漬けとは野菜を塩漬けにし、何度も新しい酒粕に漬け替えながら作る漬物の事ね。酒粕をふんだんに使ってるから、お酒に弱い人などは奈良漬を食っただけで酔っ払うらしい。
そういえば、昔は飲酒運転の検問で止められたら、『ワシ、さっき奈良漬食いましてん』とか言いワケするオヤジが結構いたようだけど、現代ではそんな言いワケをする人は皆無に近いだろう。
それで思い出した。昔、酒飲んだあとに何人かで先輩の車に乗って移動してる時に検問で止められ、咄嗟に『先輩、車に乗る前にウィスキーボンボンを食ったでしょう?あきまへんがなー。』とかデタラメを言って乗り切ったことがあったなあ…。飲んでない人間が多かったとはいえ、あんなウソっぱちがよく通ったなと自分でも驚いたんで、よく覚えている。

話が逸れた。戻そう。
で、奈良漬けと云えば鰻かなと思って、しゃあなしに奮発して鰻丼をつくった。

 

 
あっ、錦糸玉子の鰻玉丼を作ったんだね。忘れてたよ。最近は忘却の人なのだ。ボケないことを祈ろう。

奈良漬の位置が決まらないので、ちょいと変えてみる。

 

 
あんま変わらんなあ。茶色で限りなく地味なので、きっと位置を変えても誰も気づかんでござるよ。

鰻丼は美味しゅうございました。
けど、鰻丼に奈良漬はそんなには必要ない。せいぜい3、4切れで事足りるから、当然の如くかなり余った。かといって、そうしょっちゅう高価な鰻丼は食えない。

(・。・;…。さて、どうしたものか❓
奈良漬けは嫌いじゃないけど、好きでもない。あえて言うなら、寧ろ嫌いな範疇に近い。困ったなあ…。

考えてたら、思い出した。そういえば奈良漬けとクリームチーズが意外と合うということを何かの媒体で聞いたことがある。とはいえ、ちょっと変態的組み合わせの禁断のマリアージュである。
(@_@)デヘデヘ。オデ、オデ、おめぇの事さ、ずっとめぇから好きだったべさ。そのキレイな肌さ、触らせてくんろ。😱👩キャア ━━━━━━━━━ ❗
真っ白やわ肌のクリームチーズが、ずっと風呂入ってません的なオッサン奈良漬けにエッチな悪戯をされてる図を想像してしまった。

相変わらず妄想が過ぎる阿呆である。
しかし見方を変えれば、コレこそ千載一遇のチャンスかもしれない。🎵行け行けドンドン、行けドンドン。流れ的には躊躇する理由はない。保守的な考え方を否定するつもりはないけれど、自分のなかでは余程の事がないかぎりは唾棄すべきものだ。今回なんぞは所詮は危険と隣り合わせの選択ではない。死ぬワケではないんだから、迷わずゴーでしょう。

とにかく、いっちょ試してみるか…。
クリームチーズを買いに行く。

 

 
クリームチーズといえば、Kiriクリームチーズである。とはいえ、だいたいクリームチーズはコレしか売ってないんだけどね。

それに合わせる酒は日本酒にするか、ワインにするか迷った。何か国際結婚の図を想像した。一方は頑なに日本酒を飲んでる新郎チームで、もう一方はワインを頑なに飲んでるフランス人の新婦チーム。両者が左右のテーブルに分かれて、この奈良漬クリームチーズを前にして、どちらの酒と合うか、その優位性を口角泡飛ばして主張しあってる図である。揉めてまんなあ。
国際結婚も大変そうだな。あの時、しなくて良かったよ。
まあ、酒はどっちでも合いそうだけど…。

というワケで仲良くしましょう。
両方、買っちゃいました。

 

 
富山県は黒部市、銘酒の誉れ高い皇国晴酒造の『幻の瀧』の純米吟醸である。
「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」の「食中酒部門」で、3年連続の金賞受賞をしているらしい。
何度か飲んだ事があるが、スッキリとした辛口で、どんなツマミにも合う。名水で仕込んだ酒が不味いワケがないんである。

ワインはコチラ⬇。

  

 
サンタ・ヘレナ・アルパカ・シャルドネ・セミヨン。
これは大手スーパーやコンビニでも売ってるから知っている方も多かろう。アサヒビールが輸入する一番有名なチリワインである。値段も1コインの500円くらいと激安だから売れるんだろね。お手軽なんで、自分も珠に買う。
品種は、“白ワインの女王”とも称される「シャルドネ」と貴腐ワインの原料でもあり、糖度が高く酸味は穏やかな「セミヨン」をブレンドしたものだ。
味は一応辛口となっているが、辛口派としては結構甘い。セミヨンが入っているから当然かもね。まろやかなのも、そのせいだろう。でも、この値段でこの味なら文句はない。飲みやすいのだ。
但し、これは3、4年前のものである。先日、流しの下の闇の食料貯蔵庫に長い間眠っていたものが発掘されたのである。

奈良漬けを小さく切り、半ばヤケクソ気味でクリームチーズに合わせてみる。

 

 
結構、イケる。奈良漬がレーズンみたいな役割を果たしているのだ。甘みとアクセントとなる歯応えがあって、レーズンよりもいいかもしんない。
日本酒にもワインにもバッチリ合う。
ここに禁断のマリアージュ、成立せりである。

 
翌日も食べた。
しかし、クリームチーズを足して、もう少し奈良漬の個性を和らげることにした。それでも、真っ白なクリームチーズが、うっすらと茶色がかってしまっている。デへデへおじさんはしつこくてパワフルなんである。

 

 
今回は赤ワインをチョイス。
Clacson Le Rouge 2016(クラクソン ル・ルージュ)。

  

 
フランス産のワインだ。
産地は Languedoc-Roussillon(ラングドック-ルシヨン=通称ラングドック)。プロヴァンス地方からピレネー山脈、さらにスペインとの国境に至る南仏沿岸地域の旧地域圏名で、フランスの主要なワイン生産地の一つでもある。この辺はバイクで、走ったよなあ…。懐かしいね。そういえばワイン畑もそこそこあったような気がする。
ブドウの品種は、merlot(メルロー)、Syrah (シラー)、Grenache(グルナッシュ)。

価格は1500円くらいだったと思う。あんまり憶えてないのは、これも流しの下の闇の食料貯蔵庫に眠っていたからである。

色はガーネットレッド。香りはバニラとベリー系やチェリー系が混ぜあわさったような感じで、味はそれらベリー系のフルーティーさにスパイシーさが加わる。タンニン(渋み)はそれなりにあるが、強くはない。フルボトルという程にはドッシリとしてはいなくて、ミディアムの範疇だろう。しかし、自分にしてはちょっと甘いかな。

ワインを一口飲んで、食べてみる。
あっ、( ´∀`)旨いわ。赤ワインとも相性がいい。この甘さが、チーズの良さを引き立たせてくれてるような気がするなあ。白よか赤を推すよ。

 
数日後、さらにそこにアホカドを加えてみた。
アホカドがそろそろ食べないといけない頃合いだったし、以前にアホカドとクリームチーズが合うとも聞いていたからである。
アホカドの変色を防ぐためにレモン汁を少し搾って、混ぜ合わせてみる。

 

 
緑色になったよ。
少しは見てくれが良くなった。お洒落になったかも。華麗なる変身である。デへデへおじさん色はだいぶ軽減された。

今回は白ワインを用意した。アホカドには白が合うと何となく思ったからだ。

 

 
マルケス・デ・テナ メルセゲラ・ソーヴィニョン・ブラン(Marques de Tena Merseguera-Sauvignon Blanc)。
スペイン産の白ワインである。これも闇の食料貯蔵庫出身なのでうろ覚えだが、確かバレンシアのワイナリーのものだったように思う。名前からすると、お馴染みのソーヴィニョン・ブラン種とマイナーな感のあるメルセゲラ種をブレンドしたもののようだ。
ラベル等含めて品のある感じで高そうに見えるが、実をいうと安い。たぶん、500円くらいだったと思う。
味はフルーティーで華やかな感じで、爽やかさと酸味も適度にある。青リンゴのような匂いも仄かに香る。ライトなのだが渋みもややあって、値段の割りには満足度は高い。色も輝けるような黄金色で綺麗だ。

お約束のようにワインを一口飲んで、食べてみる。
あっ、これも結構旨いかも。白ワインにも合う。
奈良漬とクリームチーズとアホカドなんて、ある意味ムチャクチャな組み合わせだな。
しかし、これまた禁断のマリアージュじゃよ。
でも、これって重婚じゃね❓
重罪だね。益々もって禁断だすなあ。

                   おしまい

 
追伸
って書いといて、特に言うことはない事に気づく。
つい、クセで追伸と入れちゃったのだ。

(註1)甲南漬けのCM
今でもサンテレビでは流れてるらしい。ちゃんと画像は動くみたいだ。

 
 

鬼と名がつく生物

 

前回のオニベニシタバの回で、オニと名がつく昆虫について触れたが、そこで書き切れなかったことを書こうかと思う。

 
【オニベニシタバ】
(2018年7月 奈良県大和郡山市)

 
前半は前回と重複するところもあるから、前回を読んだ人は暫し我慢して読まれたし。

オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼにオニダルマオコゼ、オニヒトデとかオニヤドガリetc…。
あっ、思い浮かんだのは海の生物ばかりだ。これって、ダイビングインストラクター時代の名残だよね。

改めて思うに、海の生物にはオニの名を冠する強烈なキャラが揃ってるなあ。真っ先にコレらが頭に浮かんだのも納得だよ。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられたそうな。

 
(出典『暮らしーの』)

 
ダイバーには、オニカマスよりもバラクーダの名で親しまれている。バラクーダって言った方がインパクトがあってカッコイイからかなあ❓音の響きが如何にもヤバそうな奴っぽいしさ。

よく群れで泳いでいるが、あれはそんなにデカくない。デカイにはデカイが、まだまだ小物だ。あんまし恐くない。(#`皿´)うりゃあ~と、時々トルネードに割って入って蹴散らしてやるくらいだもんね。
むしろヤバいのは単独でいる奴だ。バラクーダは老魚になると群れないのだ(註1)。それが超デカくて、超怖い。顔もさらに厳(いか)つくなって、目が合ったらオチンチンがメリ込むくらいに縮こまりまする。ヤのつく自由業の方々でも、モノホンの親分さんクラスの静かな威厳と侠気があるのだ。絶対逆らってはいけないオーラである。
それで思い出した。
昔、サイパンのオブジャンビーチで、とてつもなく馬鹿デカイのにお会いしたことがある。水深3~4mくらいの中層で辺りを睥睨するかのように浮かんでおり、優に2mくらいはあるように見えた。そして、その周りには光の束が後光のように無数に射しており、神々しくさえあった。だが、目だけはギラギラと動いていた。
あまりにも強烈なオーラに、その場で固まり、背中がスウーッと冷たくなったのを憶えている。
その日はアシスタントで入っていて、お客さんの後ろにいたから、頭の中で念仏を唱えたよ。もしも、お客さんに向かって泳ぎ出したら、身を呈してガードに行かなければならない。「生ける魚雷」と言われるくらいのハイスピードで泳ぐそうだし、あの鋭い歯だ。片腕一本くらいは持っていかれるのを覚悟したよ。
まあ、幸いその場にジッとしていてくれたから、何事も起こらなかったけどさ。そういえば、お客さん守るようにして後ろ向きに泳ぎながら遠ざかったんだよね。あの時は、もっと見ていたいような、早くこの場から立ち去りたいような複雑な気分だった。脳内に、その時の映像は今でも鮮明に残ってる。

 
オニイトマキエイ(マンタ)は、そのデカさからの命名だろう。

 
(出典『オーシャンズダイブツアー』)

 
マンタは石垣島とかで見たけど、やっぱデカイだす。
一度に何枚も現れると、中々凄い光景である。

 
(出典『オーシャナ』)

 
この画像なんかを見るとバットマンだな。
ちょー待てよ。まるで角のある鬼の影絵にも見えるじゃないか。デカイからだけではなく、名前の由来はこのツノ的なものと、そのシルエットにも関係があるのかもしれないね。

 
お次は、ブサいく鬼チームだ。
オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また背鰭に猛毒もあって危険なことからも名付けられたのではなかろうか。たぶんオニカサゴなんかも同じ意味あいからの命名だろう。

 
【オニオコゼ】
(出典『暮らしーの』)

 
異形(いぎょう)のものだ。
バケモノけだしである。

 
(正面)
(出典『庄内使えるサイト』)

 
顔なんて、ブサ怖い。

 
【オニダルマオコゼ】

 
何度か見たけど、コチラはもっと体が丸い。ゆえにダルマさんなのだ。
海底にジッとしてて、殆んど動かない。英名はストーンフイッシュと言うんだっけ?それくらい岩と同化しているのだ。だから、時々誰かが踏んづけてエライことになる。コヤツも背鰭に猛毒があるからね。アホほど足が腫れるらしい。

 
(正面)
(出典 2点共『暮らしーの』)

 
怨念が籠った顔だ。
創造主である神に対する激しい憎悪やもしれぬ。
(#`皿´)ワシをこんなにも醜い姿で世に産み落としやがって…って顔だ。

 
【オニカサゴ】
(出典『HONDA 釣り倶楽部』)

 
前二つほどではないが、コチラもブサいくだ。
背鰭に毒もある。赤いのも鬼っぽい。
猛毒ブサいく三姉妹ってところか…、最悪だよな。
でも彼女たちの名誉のために言っておくと、皮を剥いだ身は透き通るような白だ。でもって、味はメチャメチャ美味い。刺身に良し、鍋に入れて良し、揚げて良しの高級魚だ。
よくオコゼはブサいくな人へのフォローに使われ、「見た目は悪いけど、付き合ってみたら最高のパートナー」みたく言われる。まあ、理解はできるわな。人は見かけで判断しちゃダメだよね。
そういえばアッシの知り合いのお姉さんの友達に、エゲつない三姉妹がいることを思い出したよ。金魚ちゃん、ミッちゃん、イカスミちゃん(全て仮名)っていうんだけど、何れもデブでブサいくで性格が破綻している。因みに長女の金魚ちゃんは性格は悪くないけど極端に内向的で、何を尋ねても要領を得ない。三女のイカスミちゃんは天の邪鬼(あまのじゃく)且つワガママで性格がネジ曲がっている。二女のミッちゃんが一番ヤバくて柄の悪いトラックの運ちゃんみたいだ。とにかく口が悪くて、直ぐに暴力に訴えかけてくる。粗暴で凶暴なのだ。酒飲むと、ロンパリになって目が据わるしね。でもって何かと絡んでくる。ほんと、タチが悪いのだ。顔も表情も似てるから、ゴマモンガラを思い出したよ。

 
【ゴマモンガラ】
(出典『えいこのモルディブここだけの話&どうでもいい話』)

 
コヤツ、シャブ中患者とかキ○ガイみたく、目が完全にイっちゃってるんである。三白眼っていうのかなあ…、白目がちなんである。それがギョロギョロと落ち着きなく左右バラバラに動く。いわゆるロンパリ的な眼なんである。焦点がどこに合っているのか分からないから恐い。
それに泳ぎ方も変だ。真っ直ぐ泳げなくて、右に左にとヨレて急に横倒しになったりする。完全に狂った者の動きだ。しかも体は50㎝以上、大きなものは1m近くもあるというから恐い。形や色柄も変だし、おぞましいとしか言い様がない。もしも、コヤツの名前にオニがついていたとしても納得するよ。

 
(出典『wikimedia』)

 
この魚、一般の人にはあまり知られてないけれど、ダイバーの間では有名でサメやオニカマスよりも恐れられている。サメとかバラクーダは、のべつまくなしには襲ってこないが、ゴマモンガラはムチャクチャ気性が荒くて、無差別に噛みついてくる。アタマ、オカシイんである。ゴツい歯で指を食いちぎられたとか、ウェットスーツを食い破られて血だらけになったなんて話はよく聞いた。実際、自分の知り合いにもレギュレーターホースを食いちぎられたっていう人がいる。
デブでブサいくまではいいけれど、性格まで悪い女の人には、やっぱ近づかないでおこ~っと。

 
オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てているようだ。

 
【オニハタタテダイ】
(出典『沖縄の魚図鑑』)

 
とはいえ、角は小さい。オニというには、ちょいショボい。しかし、オニハタタテダイはチョウチョウウオやハタタテダイを含む近縁の仲間うちでは、かなりデカイ。最大種か、それに近かったような気がする。どちらかというと、そちらがオニと命名された理由なのかもしれない。いや、両方の合わせ技かな?

 
オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。

 
【オニヒトデ】
(出典『水槽レンタル神奈川マリブ』)

 
👿悪そう~。
僕、正義の味方ですぅ~と言われても、誰も信じないだろう。それくらい悪の匂いがビンビンである。
そういえぱ、沖縄発特撮ヒーローもん『琉神マブヤー』の敵役に「オニヒトデイビル」ってのがいたなあ…。結構ボケ倒しの憎めない奴だったけどさ。

 
(出典『おもしろ生物図鑑』)

 
色が赤いのも、如何にも鬼的だ。
但し、色には他にもヴァリエーションがあって、下の画像みたいなものや紫色のもいるようだ。

 
(出典『マリンピア日本海』)

 
性格も荒いそうだ。
ふと思ったのだが、トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。
まあ、どうみても邪悪以外の何者でもないことを体現してるよな。沖縄の珊瑚とかガリガリ食いまくってたしさ。

 
オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな❓

 
【オニヤドカリ】
(出典『日淡こぼれ話』)

 
コヤツも邪悪そのものだ。
色が赤いのも鬼と言われるに相応しい。
そう云えばコイツ、宮古島にダイビングに行った時にいたわ。綺麗な宝貝を水深5~6mで見つけたので拾ったら、デカいヤドカリが宿借りしていた。貝の中身はたぶんコヤツが食って、その貝殻を羽織ったのだろう。強盗殺人みたいなもんだ。やってる事が凶悪なギャングなんである。

 
(出典『極!泳がせ道』)

 
貝殻から出すと、下半身は驚くほど短小だ。ちょっと情けない。巨漢の男が実を云うと…的みたいで笑ったよ。
でもここが美味い。刺身で食うと、エビ・カニ系とホタテ貝を混ぜたような味なのだ。残った頭とかは味噌汁にブチ込むと良いダシが出る。

旨いで思い出したが、こんなのもいたね。

 
【オニエビ】
(出典『休暇村 竹野海岸』)

 
ゴジラエビとかモサエビなんて呼ばれ方もするが、オニエビも含めて全部その土地土地での地方名だ。
正式名称はイバラモエビという。イバラは植物の棘(茨・荊)から来ているし、ゴジラはあの怪獣ゴジラの背鰭からだ。モサは猛者から来ている。オニエビも、その背中のギザギザ由来だろう。
そういえば、兵庫県の香住ではサツキエビと呼ばれていた。これは五月(さつき)の頃によく水揚げがされるからだ。
この時は生きているのを食った。ても期待していた程には美味くなかった事を覚えている。
実をいうと、海老は新鮮だからといって旨いワケではない。車海老の踊り食いなんてのがよくあるが、あんなもんはプリプリの食感がいいだけで、味はたいしたことない。旨味と甘みが足りないのだ。生きてるボタンエビも食ったことがあるけど、同じようなものだった。魚やイカでもそうなんだけど、必ずしも生きているイコールが最上のものではないのだ。美味いと思っている人は、新鮮=美味と云う思い込み、つまり脳で食ってるからなんである。別にそれはそれで間違いではないけどさ。本人が旨いと思っていれば、それでいいってところは否定できないからね。
肝心なことを言い忘れた。死後硬直がとれたばかりの生はメチャメチャ美味い。甘いのだ。甘エビよりも甘い。焼いても天婦羅にしても美味くて、これまた甘みが強い。クッソー、食いてぇー(T△T)

  
 
植物ならば、オニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジ辺りが代表ってところかな。

 
【オニユリ】
(出典『Horti』)

 
オニユリの名の由来は、花が大きくて豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。

 
【オニツツジ】
(出典『身近な植物図鑑』)

 
オニツツジなんかも由来は同じようなもんだろう。
因みにオニツツジは俗称で、正式名はレンゲツツジという。この植物、実を云うと有毒である。根や葉茎だけでなく、花やその蜜にまでも毒があるとされている。調子に乗って、子供の頃みたいにツツジの蜜をチューチューしたら死にまっせ(笑)
この毒があるというのも、鬼と冠される理由なのかもしれない。

 
オニアザミやオニバスは、その棘(トゲ)と大きさに由来する。

 
【オニアザミ】
(出典『白馬五竜高山植物園』)

 
オニアザミという言葉は、葉の鋸歯の鋭い大型のアザミの仲間の総称としても使用される。最近はアメリカオニアザミという、もっとトゲトゲの奴があちこちに蔓延(はびこ)り始めているようだ。

 
【アメリカオニアザミ】
(出典『ありのままの風景を』)

 
外来種で、鹿も牛も食べないそうだから激増しているらしい。

 
【オニバス】

(出典 2点共『福原のページ』)

 
葉だけでなく、花や実までトゲトゲなのだ。

 
【オニグルミ】

(2点とも 出典『森と水の郷あきた』)

 
おそらく実ではなく、内部の種(核)が語源だろう。
核面のデコボコが著しく、そのゴツゴツした外観と固さが鬼のようだからだと命名されたと推察する。 

 
 
オニとつく昆虫について書くつもりが、海の生物と植物につい力が入ってしまった。哺乳類と鳥類は駈け足でいこう。

とは言うものの、哺乳類でオニと名のつくものは意外と少ない。ソッコーで片付きそうだ。

 
【アフリカオニネズミ】
(出典『wikipedia』)

 
デカイねぇ~。もう、こんなのウサギじゃん。
コヤツは地雷の除去に貢献しているので、知っている方もおられよう。
タンザニアの団体APOPOはアフリカオニネズミの優れた嗅覚に着目し、その一種であるサバンナアフリカオニネズミを訓練して地雷の探知・除去に役立てる事業を展開している。体重が軽いために地雷に乗っても爆発する可能性が低く、金属探知機よりも高効率で地雷の探索が出来るらしい。凄いぜ、ネズっち。機械よりもネズミの方が優れているなんて、何だか痛快だ。
でも動物虐待だとか言って、正義感を振りかざすバカなのがいそうだなあ…。だったらオマエら、肉も魚も野菜も一生食べんじゃねぇーぞ(#`皿´)

主だったところでは、あと哺乳類はオニテンジクネズミ(カピバラ)くらいだ。これは説明不要だろう。日本にも帰化してるし、動物園でも人気者だもんね。

ところで、何で哺乳類にはオニと名のつく動物が少ないのだろうか❓ 解るような気もするが、いざ答えるとなると明確には答えにくい。まあ、敢えてつける必要もないのだろうとだけ言っておこう。

 
お次は鳥類。

 
【オニオオハシ】
(出典『ナチュマライフ』)

 
オオハシ類の最大種。南米に生息し、その色鮮やかな美しい体色から「アマゾンの宝石」とも呼ばれている。巨大で特徴的な嘴(くちばし)は、体長に占める割合が全鳥類中で最大なんだそうな。

見た目は可愛くて、鬼のようには見えない。おそらくそのグループの最大種ゆえのネーミングだろう。

鳥は他にもオニとつくものが結構多い。
オニゴジュウカラ、オニアオバズク、オニカッコウ、オニヤイロチョウ、オニミズナギドリ、オニクロバンケンモドキ等があるが、如何せんどれもマイナーだ。鳥好き以外で名前を知っている人は少ないだろう。しかも、どれも大型種ではあるが、全然鬼っぽく見えない。厳つくないのだ。強いて鬼っぽいと言えば、オニカッコウぐらいかな。

 
【オニカッコウ】
(出典『wikipedia』)

 
青黒くて目が赤い。ゴツくはないが、精悍な感じだ。
目が紅蓮の炎の如く真っ赤な青鬼に見えなくもない。
だとしたら、由来としてはカッコイイ。
でもおそらくは、名前をつけた人はそんな事までは考えてなくて、単にカッコウ・ホトトギスの仲間の中では大型種だからと云う理由でつけたのだろう。
因みに画像はオスで、メスは茶色い。

 
そろそろ昆虫に行きたいところだが、先ずは他の節足動物から入ろう。

 
【オニサソリ】
(出典『SciELO』)

 
別にオニとつけなくとも、サソリは見てくれがもう全ての種類が十分な鬼的だ。攻撃性が強くて毒もあるから、鬼的要素がほぼ揃っている。
ムカデなんかもそうだろう。因みにオニムカデという和名を持つ種はいないようだ。でも、どっかで聞いたことがあるなあ…と思ったら、ゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)にオニムカデというキャラがいたわ。

 
【オニグモ】
(出典『弘子の写真館』)

 
邪悪だなあ。
オニグモ属最大種にして、属名の基準種でもある。
クモも、そもそも見た目が鬼的だ。なのに、オニグモはそれを強化具現させたかのような存在だわさ。
オニグモ属には数種いて、何れ劣らぬ鬼っぷりである。

 
【キバナオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

(出典『北海道の生物図鑑』)

 
黄色が入ると、鬼感が増幅されるねー。
野原で遭遇したら、ギョッとするだろう。
鬼とは、そもそもがこの世の者ならざる異形(いぎょう)な存在の総称なのかもしれない。だから、オニとつけるのならば、驚愕される存在であるべきじゃないかと思う。

 
【ヤマシロオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
万歳している👽宇宙人みたいだ。
或いは腹の下の方は、笑っている猫みたいにも見える。

 
【ヤマオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
黒いと邪悪度が増すなあ…。
でもカッコイイっちゃ、カッコイイ。何だかハカイダー(註2)を思い出したよ。

 
【イシサワオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
赤っぽいのも邪悪な感じがする。黄色もそうだけど、赤も警戒色なのである。あたしゃ、危険ですよという印だ。

 
【アカオニグモ】
(出典『まーしーのフォトアルバム』)

 
もっと赤いのもいた。
赤鬼様は毒々しい。しかし、邪悪度も上がるけれど、同時に美しさ度も上がる。見方を変えれば、デザインはポップでさえある。

赤鬼がいるのなら、青鬼もいるんじゃないかと思った。
で、一応調べてみたら、いた。

 
【アオオニグモ】
(出典『博物雑記』)

 
予想に反して青鬼は可愛いかった。
プリプリの白いお尻が、髭のおじさんのコケシ頭みたいだ。邪悪というよりもユーモラスだね。

オニグモって面白いなあ。
ついつい、めっちゃネットサーフィンしてしまったよ。
けど、いつまでこんな事やってんだ?いい加減にクロージングしないとマズイなあ…。

 
長々と書いてきたが、ようするにオニと名がついている生物には、基本的に以下のような特徴があるようだ。

①大きい
②刺(トゲ)、もしくは角がある
③見た目が厳(いか)つい
④凶暴・獰猛である
⑤毒々しい。或いは毒がある
⑥色合いが鬼に似ている
⑦勇壮

思うに、この何れかの特徴を有しているものが、オニと名付けられた模様だ。
言い加えると、①の大きいと⑦の勇壮は重複するところもあるが、大きいからといって勇壮とは限らないので、あえて分けた。

 
扨て、いよいよ昆虫である。
でも書き疲れて、正直どうでもよくなってきた。
と云うワケで、虫のオニ関係は次回後編に回します。

 
                     つづく

 
と、一旦クロージングしたんだけど、後編を書くのならば、導入部でまた前回の流れを汲む説明をしないといけない。それが正直、面倒くさい。しゃあないから、踏ん張って続けて書くことにした。たぶん、前半よか長くなるので、ここまで読んで疲れちゃった人はここで一旦読みのをやめて、二回に分けて読みましょうね(笑)。マジで。

始めるにあたって、今一度鬼の定義を確認しておこう。
ウィキペディアには、こう書いてあった。

『日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「大きな」といった意味の冠詞として使われる場合もある。(中略)。現在、一般的に描かれる鬼は、頭に二本、もしくは一本の角が生え、頭髪は細かく縮れ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。色は赤・青・黒などさまざまで、「赤鬼(あかおに)」「青鬼(あおおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。』

OK。自分が指摘したものとだいたい合っている。これを今一度脳ミソにブッ込んで、続きを読まれたし。

さあ、既にどうでもよくはなってきてはいるけれど、本当に言いたいことに向かって書き進めよう。
 
前回、オニシタバの回で書いた要旨はこうだ。
「昆虫でオニといえば、オニヤンマ、オニクワガタ辺りが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止(とど)めておく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。」
この言葉に対しての異論もあるようなので、理由を書きます。

繰り返すが、昆虫でオニといえばポピュラーなのは、オニヤンマとオニクワガタだろう。

 
【オニヤンマ】
(出典『自然観察日記』)

 
(出典『あにまるじゃんくしょん』)

 
日本最大の勇壮なトンボだから、一般の人でも知っている人は多いだろう。

 
(出典『廿日市市の自然観察』)

 
エメラルドグリーンの眼がとても美しいけど、よく見ると顔は厳(いか)めしい。

 
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
歯もゴツい。
コイツで、あの凶暴なスズメバチなんかもガリガリ食う。オニヤンマは日本有数の肉食昆虫でもあるのだ。
そういえば思い出したよ。随分前に当時の彼女と赤穂方面に旅行に行った時の事だ。龍野市でオニヤンマの巨大なメスが空中でシオヤアブ(註3)をガシッと捕まえて飛んで行った事がある。あれはインパクトあったなあ…。シオヤアブもスズメバチを襲うくらいの凶暴な奴である。その両者が互いに正面から飛んできて、ガチンコで相まみれたのだ。僅かな攻防があった次の瞬間には、アブがバキーッいかれとった。で、そのまま飛んで近くの電線に止まり、ガシガシと囓じり始めた。あまりの迫力に、彼女と二人して震撼。口あんぐりで見てたよ。

和名は、この巨大さと厳つい顔つき、凶暴性から名付けられたのだろう。また、黒と黄色の縞模様から虎皮のパンツを履いた鬼を連想して名づけられたという説もあるようだ。しかし、これはたぶん後付けでしょう。
あっ、二枚目の正面写真も鬼っぽくねえか❓
背中の柄がツリ目で出っ歯の鬼の顔に見えなくもない。これも名前の由来になってないのかなあ❓
とにかく、これだけ鬼の要素が揃っているのである。ネーミングに異論は無かろう。

それに対して、オニクワガタにはガッカリだ。

 
【オニクワガタ】
(出典『THE KAYAKUYA』)

 
たぶん顎の感じが鬼の角みたいだからと名付けられたのだろうが、小さくてマジしょぼい。2、3センチしかないのだ。クワガタといえば、昆虫界のスター軍団だ。デカくてゴツゴツした奴が綺羅星の如くいる。その中にあって、オニクワガタは鬼の名前を冠するのにも拘わらず、どうにも地味なのだ。こんな奴にオニとつけるんなら、タテヅノマルバネクワガタ(註4)とかの方がよっぽど相応しい。断然デカイし、珍しい。今や天然記念物だもんね。
それにオニクワガタはブナ林の中の道をひょこひょこ歩いてるのを時々見かける。結構、普通種なのだ。見ても全然感動がない。

とはいえ、横から見ると確かに鬼的ではある。

 
(出典『フォト蔵』)

 
角の形が鬼を彷彿とさせる。
これならば、オニという名前でもギリギリ許せる範囲内だ。
とはいえ、小さい奴にはあんまりオニとはつけて欲しくないなあ。
オニクワガタというのなら、⬇コレくらいの迫力はあって欲しいものだ。

 
【ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ】
(出典『W.B.B-01◆KING◆ブログ』)

 
オウゴンオニクワガタは幾つかの種に分けられているが、この種はインドネシア・ジャワ島に棲むもので、体長は大きなものは80㎜くらいもある。まさに黄金の鬼である。ゴージャス鬼だ。

オニとつくクワガタといえば、コヤツの存在も忘れてはならないだろう。
 
 
【オニツヤクワガタ】
(出典『ゲストハウス プリ/Guest House Puli』)

 
画像は台湾産のオニツヤだ。大きなものだと体長90㎜を軽く越えるものもいるという。

メスでもデカイ。

 

 
メスだってオニクワガタよか遥かにデカイのじゃ。
充分、鬼である。

幼虫がエグい。

 

 
これまた鬼なのである。下手したら成虫よりも凶悪な感じがする。

これら3点の画像は台湾中部、埔里で世話になったナベさんにお借りした画像だ。
ナベさんは埔里でゲストハウスを経営する大のクワガタ好きなのだ。2016年、初めて台湾に蝶採りに訪れた折り、ナベさんのゲストハウスに泊まっていたのだが、その時にこれらの画像を興奮気味に見せてくれたのだった。ナベさん曰く、気性が荒く凶暴なんだそうな。
コヤツは実物を是非この目で見てみたい。次に台湾に行くときは本気で探そうと思う。

因みに、ナベさんは渡辺さんではなくて渡部さんで、渡部と書いてワタベと読む。ワタナベさんではないのだ。でも呼びやすいから勝手にナベさんと呼んでたら「間違ってるけど、もうそれでいいですよー(# ̄З ̄)」と言われた。だから、ナベさんでいいのである。

 
どんどん行こう。

 
【オニオサムシ Carabus barysomus 】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
体長29~50㎜。
分布はインド北西部カシミール地方、パキスタン北東部。
光沢の強い漆黒の地に、顕著な上翅彫刻と亜属中最大の体長を有する。本亜属の基準種でもある。

ピンチアウトして画像の拡大は出来るけど、分かりやすいようにトリミングしよう。

 
【ssp.hazarensis&ssp.huegeli】

 
黒い鬼だ。この点刻が厳つさを増幅させ、鬼感を醸し出している。デカイと云うのも鬼でしょう。オニの名に異論なしだ。
図示したものは原記載亜種(ssp.barysomus)ではなく、左がカガン渓谷亜種(ssp.hazarensis)で、右がスリナガル東方亜種(ssp.huegeli)である。

 
【ssp.heroicus】

 
コチラも同じくオニオサムシだが、最大かつ最も特殊化したものとされる。ピル・バンジャン山脈西部のブーンチ北方の産する亜種で、こっちも負けず劣らずカッコいい。

 
【カシミールオニオサムシ Carabus caschmirensis】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村・水沢)

 
体長27~38㎜。
これは wittmerorum というパキスタン北部・スワート地方の亜種で、緑青色を帯びており、とても美しい。
カシミールの青鬼だな。因みに、原記載亜種は黒い。

オニオサムシ亜属(Imaibius)は、大半がインド北西部のカシミール地方からパキスタン北部の標高2000~3000mの高所に棲む。背後は7千、8千メーター峰が連なるカラコルム山脈とヒマラヤ山脈だ。そういうところも、鬼が棲むに相応しい異世界って感じでいい。
スリナガルは当時も旅行者には閉ざされていて、結局行けなかった。でもパキスタン北部にはバイクでユーラシア大陸を横断した折りに立ち寄った。標高四千くらいまでは行ったと思う。もし、その頃に虫採りをやってたとしたら、コヤツらも採れたかもしんない。ヨーロッパに始まり、アフリカを経由してアジアまで旅したから、会おうと思えば相当ええ虫に会えてたんだろうなあ…。モロッコの砂漠なんかにも行ったから、ニセマイマイカブリとか、カッコいいゴミムシダマシにも会えたかもしんない。勿体ねー。

 
【オニミスジ Athyma eulimene 】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
見よ、怒れる鬼の形相を想起させるこの出で立ちを❗
オオアカミスジなんていう普通過ぎるダサい和名もあるけど、塚田悦造氏が大図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で採用しているオニミスジを断固として推す。
なぜなら前翅長が42㎜くらいはあり、ミスジチョウやシロミスジの仲間の中では最大、もしくは最大級の種だからだ。翅も他のミスジチョウと比べて遥かに分厚いし、体も太くて頑健だ。デカくてゴツいのだ。そして飛ぶのもクソ速い。だから、採った時は到底ミスジチョウの仲間には思えなかった。

 

 
背中に光る金緑色が美しい。
何だか、まるで鬼火のようじゃないか。

 
【ミドリオニカミキリ】
(出典『cerambycodea.com』)

 
南米のカミキリムシだが、鬼そのものとも言える見てくれだ。残虐非道の青鬼様なのだ。
大きさは75㎜もあるそうだ。この厳つい顔、そして前胸のトゲトゲ、青緑色にギラギラ輝く感じ。そこに大きさも加わるのだから、鬼と呼ぶに申し分ない。性格も絶対に悪辣凶暴、極悪に違いなかろう。
オニの名がある虫の中では、コイツが一番鬼を具現化させたような存在じゃないかな。カミキリムシだから、肉食じゃないけどさ。

 
外国の昆虫はコレくらいにして、日本のオニと名のつく虫に戻ろう。

 
【オニホソコバネカミキリ】
(出典『リセント[RECENT]』)

 
(出典『ムシトリアミとボク』)

 
見た目が黄色と黒だし、毛むくじゃらなところは鬼と言って差し支えないだろう。カミキリなのにハチに擬態していると云うのも、何となく邪悪っぽい。
学名は Necydalis gigantea。その学名からカミキリ愛好家たちの間では、ギガンティア、ギカンと呼ばれている。ギガンティアとは、ラテン語で「巨大な」を意味する言葉である。その名のとおり、ネキ(=ネキダリス=ホソコバネカミキリ属)の最大種でもある。まさに鬼の名に相応しい。これも異論なし❗

 
オニクワガタはまあ置いておくとしても、ここまではオニと名付けられていることに何ら違和感のない昆虫たちだ。問題はここからである。
とはいえ、問題視しているのはワテだけかもしれん。ゆえに、ここから先の文句たらたらの文章は、あくまでも個人的見解であることをおことわりしておく。

 
【オニユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長22.0~31.2㎜。ユミアシゴミムシダマシの中の最大種である。
ユミアシというネーミングはセンスいいなと思う。
奈良の春日山と九州の大隅半島、福江島(五島列島)くらいでしか採れないようだから珍稀度も申し分ない。脚が太く、見た目もガッツリした感じで黒光りしているから、邪悪な黒鬼に見えなくもない。魅力的なのは認めよう。
だが、この見た目が問題だ。他のユミアシゴミムシダマシの仲間と見てくれはあんまし変わんないのである(註5)。つまりオニユミアシだけが特に鬼っぽいワケではないのだ。
あとはオオユミアシゴミムシダマシやアマミユミアシゴミムシダマシと大きさ的には、さほど差はないというのも気にかかる。オニというからには、圧倒的に巨大であって欲しいという願望があるのだ。
とはいえ、オニユミアシは自分の中では一応セーフかな。オニと名乗ってくれても強く反対はしないし、いたらゼッテー採るもん。

 
【オニヒゲナガコバネカミキリ】
(出典『長野県産カミキリ図鑑』)

 
ちっちゃ❗
調べたら、6~14㎜しかない。
ヒゲナガコバネカミキリの仲間では大きいから名付けられたようだけど、オニってのはどうよ❓小さ過ぎやしないか❓
見てくれは鬼っぽいといえば、鬼っぽくはあるけどさ。

 
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
でも、カッコいいなあ(о´∀`о)

 
【オニヒラタシデムシ】
(出典『東京昆虫館』)

 
オニとつくのに、体長はたった1㎝くらいしかない。
普通のヒラタシデムシ類でも1.5~2㎝くらいはあるのに解せない。
という事は背中の彫刻柄が鬼みたいってことなのかな❓にしても、オニというほどの複雑怪奇な彫刻柄ではない。鬼というほどのインパクトはあらへん。ネーミングに異議ありだ。
まあ、コイツらシデムシ(死出虫)は字の如く動物の死体に集まるから、その意味では鬼的ではある。鬼みたく死肉を屠(ほふ)るのである。気味悪いが、腐敗菌の蔓延を防ぐ掃除屋でもあるから、必要な存在ではあるんだけどもね。

 
【イシガキオニハネカクシ】

どうやらキシモトツノツツハネカクシの石垣島亜種の別称のようだ。でもイシガキオニハネカクシの画像がダウンロードできない。キシモトツノツツハネカクシの画像も見つからない。と云うワケで、ある程度近いであろうフトツノツツハネカクシの画像を添付してお茶を濁しときます。

 
【フトツノツツハネカクシ】
(出典『フォト蔵』)

 
イシガキオニの頭はこんなにデカくはないけど、だいたいこんな感じだ。角もあるし、見てくれは邪悪な感じがしてオニと言ってもいいだろう。
けどさあ、ハネカクシって、そもそも皆さん鬼的な見てくれだよねぇ。

 
(出典『コトバンク』)

 
しかし、如何せんやっぱり小さい。だいたいハネカクシ全体がチビッコだらけなのだ。

 
【ツツオニケシキスイ】
(出典『最上の自然』)

 
オニケシキスイ亜科 ヨツボシケシキスイ亜属に含まれる。
元々ケシキスイは矮小だけれど、4~6㎜くらいしかない。調べた限りでは他にこの亜属にはオニとつくものが2種、オニケシキスイ亜属にコオニと名のつくものが5種類あった。何でオニケシキスイ亜属がコオニで、ヨツボシケシキスイ亜属の奴らがオニケシキスイなのだ❓謎だよ。さっぱりワカランわ。
一瞬、この黒と赤が鬼を連想するゆえのネーミングかなと思ったが、考えてみればヨツボシケシキスイだって赤と黒なのだ。益々ワカランわ。

 
【オニメクラチビゴミムシ】

画像が見つからなかったので、別種のズンドウメクラチビゴミムシの画像を貼っておく。

 
(出典『俺流エンタメ道場』)

 
見た目はどれもこんな感じの形で赤茶色なので、雰囲気は何となく解ってもらえるかと思う。
メクラチビゴミムシはチビゴミムシ亜科のゴミムシのうちで、地下生活に強く適応した結果、複眼を失った一群の総称である。ようするに盲目なのである、
約300種以上が知られ、多くが体長5㎜前後の小さな昆虫だ。
画像は見つけられなかったが、学名は判明した。
Trechiama oni というらしい。小種名が、まんまの「oni=鬼」じゃねえか。よほど鬼っぽい姿なのかとワクワクしたが、そんなに特異なものならば、もっと言及もされている筈だ。しかし、目ぼしい情報がてんで見つからない。画像も見つけられなかった。
ってゆうことは、それほど特筆すべき奇怪な姿ではないのだろう。となると、鬼的要素として考えられるのは、属内最大種である公算が高い。でも、んな矮小なものにまでオニとつける必要性が果たしてあるのだろうか?

話は変わる。この一連の和名に対して、巷では差別だという批判の声が少なからずあるようだ。過去には改名騒動さえ起こったらしい。
確かに知らない人から見れば、メクラでチビでゴミみたい存在だと言っているように聞こえる。そんなの虫だからって名付けていいのかよ?それって差別だろって事なのだろう。ても、その考え方がメンドくせー野郎だなと思う。
掲げた画像のズンドウメクラチビゴミムシだって、ズンドウ(寸胴)は決して誉め言葉ではない。むしろ、その逆だろう。だからって、何だというのだ。メンドクセー。たかが虫だろ❓虫は悲しんだり傷ついたりはしない。

ウィキペディアには、続けてこうあった。
「和名に差別的に聞こえる要素があるため、日本の昆虫学の研究者の間でも改名すべきか否かで議論が絶えない。」
驚いた事に一般ピーポーではなく、玄人筋からのクレームだったのね。何だそりゃ?である。
クレームをつけている研究者はハッキリ言ってバカだ。言葉に対する感覚がズレている。こういう正義感ぶってる奴に限って、差別を助長していたりするから始末に悪い。所詮は虫なんだから、ありのままでいいのにね。
この手のセンスのない輩どもが、真面目で長ったらしくてクソ面白くもないつまらん和名を乱発しているのだろう。

ウィキペディアでは、それに対して更にこう続けている。
「現在のところ、このグループの研究を日本で牽引してきた上野俊一が、実際の差別と言葉は無関係であり、標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招くとする改名反対の主張を強く行っているため、当面改名されない模様である。」
上野さん、天晴れである。おっしゃる通りだ。
だいたいメクラも盲目も、所詮は同じ意味じゃないか。言い方を変えただけにすぎない。こんなの言葉狩りだろ。メクラという言葉にはそれ相応の歴史があり、その成立過程には様々な物語もあった筈だ。言葉を葬り去るということは過去の歴史をも闇に葬り去るということだ。負の遺産も人類の遺産なのだ。消してしまえば、根本の本当のことはわからなくなる。
そういえば、イザリウオなんかも差別用語だといって、知らぬ間に「カエルアンコウ」にされちゃったんだよねぇ。ようするに、イザリという言葉も葬り去られたワケだが、アレを言葉で説明するの大変だし、面倒くさいぞ。しかも、説明するとなると喋る方も聞く方も妙にリアルな嫌悪感情になるのは避けられんでしょう。
ホント、自主規制とかって馬鹿馬鹿しい。言葉が誕生したのには、それなりの理由があるのだ。

 
【アカオニミツギリゾウムシ】
(出典『昆虫データバンク』)

 
ミツギリゾウムシかぁ…。この仲間は海外で何度か見たけど、変な形だなあと思った記憶がある。コイツはそれよかもっと変な奴だな。触角とか、かなり変わってる。
調べた限りでは分布は狭く、福岡、愛知、奈良、京都の各府県でしか見つかっていないようだ。かなりの稀種なんだね。
灯火に飛来すること以外、生態は未解明だが、アリの巣と関係があるらしい。好蟻性昆虫なのか…、謎だらけだな。何か面白そうだ。

日本では、他にツヤケシオニミツギリゾウムシ、キバナガオニミツギリゾウムシの2種がいるが、これらも稀種のようだ。何れもネットでは五万円の値がついていた。とはいえ情報が少ないから、本当にそれだけの価値があるのかどうかはわからない。生態が分かってないし、探してる人も少ないから、単に需要と供給の問題だけなのかもしれない。

情報が少ないから、語源を探るのも大変だ。それだけマイナーな存在なんだろね。
ツヤケシオニミツギリってのは黒い。キバナガは赤い。勝手に想像すると、日本ではツヤケシが最初に見つかって、次に赤いのが見つかったからアカと名づけたのかな? で、キバナガはその次に見つかり、顎が長いのでキバナガとつけられたと推察する。
しかし記載年を確認したら、アカオニが1963年、ツヤケシが1976年、キバナガが2009年となっていた。見事に読みがハズレましたな。
それにしても何でオニなんだろ?ミツギリゾウムシの中では最大なのかなとも思ったが、たった10㎜くらいしかない。日本にいるミツギリゾウムシには、もっと大きいのが沢山いるから、それも当てはまらない。
オニアカは前胸中央に溝があるのが顕著な事から、セスジミツギリゾウムシという別名がある。もうそっちでいいと思うんだよね。正直、チビッコだし、鬼には見えないもん。

 
【オニコメツキダマシ】
(出典『虫つれづれ@対馬V2』)

 
前胸背の凹凸の彫刻柄が鬼の顔に見えることからついた種名のようである。
でもコレが鬼に見えるって、どんだけ想像力が逞しいねん。大きく張り出した前胸の顔はお地蔵さんにしか見えん。体全体もお地蔵さんやんけー(# ̄З ̄)
しかも、体長は5~11.5㎜と笑けるほど小さい。でもって、ド普通種らしい。
学名 Hylochares harmandi に秘密が隠されているのかと思いきや、そうでもなさそうだ。これはおそらく著名な博物学者のアルマン・ダヴィドに献名されたものだろう。余談だが、アルマンといえば、アルマンオサムシ(ホソヒメクロオサムシ)など多くの昆虫にその名が学名としてつけられている。余談ついでに言っとくと、学名には名前はないけれど、有名なのは中国で博物学調査を行い、ジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報じた人物でもありんす。

 
【オニツノキイロチビゴミムシダマシ】
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
ちっちゃ❗
チビとついてあるだけのことはある。

奄美大島にしかいない稀種なんだそうな。奄美って、固有種とか日本ではこの島にしかいないと云う虫が多いよね。フェリエベニボシカミキリとかアカボシゴマダラとかさ。あっ、アカボシゴマダラは今は本土にもクソ品のないクズ外来種がいるな。(# ̄З ̄)死ねばいいのに…。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
まさか触角が鬼に見えるとかじゃないだろうなあ。
だとしたら、無理無理じゃん。
あっ、でもよく見たら角があるわ。

しっかし、クソ長い名前だニャア。どれか1つくらい端折(はしょ)ることが出来なかったのかなあ❓
虫の名前には、とてつもなく長いものが結構ある。アレって、何とかならんのかね❓細かく特徴を現したいのだろうが、かえってワケわかんなくなってないか❓ハッキリ言う。長い和名はダサい。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
( ̄~ ̄;)う~む…。こりゃ、確かに鬼だわさ。
オニの名を認めてもいいような気がしてきた。
でも、それならオニかツノかのどっちか1つにしてもらいたいよね。
けど、オニとするには、やっぱ如何せんちっちゃ過ぎるわ。

 
【オニエグリゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこがオニなのか、さっぱりわからない。
単に属最大種なのかな❓
でも体長が10.7~12.3㎜しかないし、果たしてオニとつける意味ってあるのかな❓まだまだ昆虫素人にはワカンないや。自分の預かり知らぬ裏事情とかあるのかしら❓

 
【オニツノゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこに角あるねん(#`皿´)❗と思ったら、ちゃんとある奴も発見。

 
(出典『昆虫採集記』)

 
どうやら角はオスにしか無いようだ。もしくはオスの方が発達してる?

体長は10.8~18.5㎜。コレまた小さい。
属最大種かと思いきや、近縁のミツノゴミムシダマシ(コヅノゴミムシダマシ)の方が13.5~18.5㎜と大きいぞ。昆虫界のオニの基準って何なのさ❓

 
【オニクビカクシゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
頭に鬼的突起があるが、申し訳程度だ。鬼というよりも猫耳だ。ネコミミクビカクシゴミムシダマシの方が可愛くて良いのになあ…。
待てよ。そもそもコレって角なのか?小腮か何かじゃないのか❓
まあいい。おそらく猫耳は関係なく、属の最大種なのだろう。けれど、やはり小さい。体長は8.3~10.5㎜しかない。
とはいえ、クビカクシってのは中々秀逸なネーミングかもしんない。特徴をよく捉えていると思う。
 
 
【オニササキリモドキ】
(出典『日本のバッタ・コオロギ・キリギリス』)

 
属の最大種かと思いきや、そうでもないようだ。たった8~10.4㎜しかない。どこがオニやねんである。
調べてゆくと、愛媛県の鬼ヶ城山という地名がボツポツ出てくる。そこで最初に見つかったからなのか❓だとしたら、紛らわしい事この上ない。だったら、オニガシロササキリモドキにしろよなー(# ̄З ̄)
けど、調べるとどうやら基産地は鬼ヶ城山ではなく、篠山という所みたいだ。益々、ワケわかんねえや。
因みに、分布は愛媛県と高知県だけみたい。そこそこ珍しい種なんだろう。しかし、それとオニのネーミングは関係ないんだろなあ…。

 
【オニヒメタニガワカゲロウ】
(出典『ZATTAなホームページ』)

 
鬼なのに姫って、何じゃそりゃ❓である。
オニは主に最大種、ヒメは小型種につけられるのが生物界の常識だが、一般ピーポーにとっては何じゃそりゃ❓である。ミックスされたら、ワケわかんねえだろう。
これはおそらくヒメタニガワカゲロウの最大種であるから、頭にオニとつけられたのだと推測される。
でもヒメタニガワカゲロウというのが、探しても見つからない。フザけんなよである。ヒメは小さいという意味でつけられただけで、属レベルではタニガワカゲロウというワケなんだろね。もう面倒だから確認しないけど。

画像を見てもわかるとおり、葉っぱの大きさと比して大変小さい。ヒメと呼ぶに相応しいと言える。
だとしたら、オニの部分は大きさではなく、その形態によるネーミングではなかろうか?
そういう目で見れば、確かに頭部に突起らしきものがある。それを鬼に模して名付けられた可能性はある。とはいえ、申し訳程度だ。こんなもんがオニと言えるかね。せいぜいツノでよかったんじゃないの~❓

 
【オニヒメテントウ】
(出典『東京23区内の昆虫2』)

 
だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなっつーの(# ̄З ̄)
ヒメテントウの最大種らしいが3㎜しかないし、どこがオニやねん。もー、どいつもコイツもチビッコの鬼ばっかじゃねえか。

  
他にもオニヒメハネカクシ(だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなよ)、オキナワニセオニハネカクシ、アシナガオニゾウムシ、オニツヤハダチャイロコメツキとか、オニとつく昆虫はまだまだいるけれど、これくらいにしておこう。どうせ皆んなチビだろうしさ。

ようは、簡単に何でもかんでもオニって名前をつけるのはどうかと思うよと言いたいワケ。特にチビッコの虫にオニってつけるのは、もうやめません❓って事なのである。オニとつけるなら、それに相応しい存在であるべきだと思う。オニは鬼らしくである。
それを言うのに、ここまで長い文章を書くのは自分でも御苦労なこったである。( ̄∇ ̄ )ゞまっ、いっか…。

あっ、忘れてたよ。そういえば日本のオサムシにもオニの名を冠したのがいたなあ。

 
【オニクロナガオサムシ】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
正式には種ではなく、キュウシュウクロナガオサムシの東広島亜種で、その通称がオニクロナガオサムシである。
どうせキュウシュウクロナガオサムシの中で一番デカイから名付けられたんだろうと思っていた。実際、種の中では一番大きいのだが、甲虫屋のAさんから名前の由来を聞いて驚いた。何とオニは人のニックネームから来てるみたいなんである。
これは蛾の著名な研究者、特にシャチホコガの研究で高名な中臣謙太郎氏のアダ名なんだそうである。
長いが、学名を記そう。
Carabus(Leptocarabus)kyushuensis cerberus。
括弧内は、たぶん新たな分類を用いた場合の学名かな?
小種名の cerberus は冥界もしくは地獄の番犬ケルベロス(註6)のことだ。
Aさん曰く、中臣さんの顔が鬼みたいだったからオニの和名がついたそうだ。そんなん有りかいな(笑)。
その鬼に連動して小種名もついたようだ。その辺の事は詳しくは訊いてないけど、或いはケルベロス的な激しい性格の持ち主でいらっしゃるのかもしれない。でも、たとえそうだったとしても、鬼とかケルベロスとかとつけられるのを許した中臣さんは心が広い。

こう云うオニの命名の仕方は想定外だった。目から鱗である。由来が分かりにくい紛らわしいネーミングをすんなよとは思いつつも、でもちょっと愉しい。この由来ならば、納得です。エスプリが効いている。是非残して欲しい和名だよ(註7)。
もしかしたら、他にもコレ的イレギュラーな由来のオニ昆虫もいるかもしれないなあ…。
たぶんいないとは思うけど(笑)。

 
                    おしまい

 
追伸
他人の画像を借りまくりの回になった。自分の画像ってオニベニシタバとオニミスジしかないもんなあ…。ちょっと気が引ける。とにかく、画像を御使用させて戴きました方々、有り難う御座います。礼 m(__)m

今回は頭からケツに順には書かなかった。バラバラに書いて、あとから繋ぎ合わせた。最初に前回の元になる文章を入れて、植物から書き始め、次に海の生物の部分を膨らませていった。あとはオニオサムシの草稿、ついで鳥、戻って哺乳類、クモと書き、オニヤンマからオニツヤクワガタまでを一気に書いた。でもってミドリオニカミキリ、オニホソコバネカミキリを続けて書き、オニミスジを途中に挿入した。で、オニオサムシの稿を完成させた。そこからまた戻ってオニササキリモドキ、オニヒメタニガワカゲロウの項を書いた。してからに、オニクロナガの事とその前にある今回の主題である物言い(文句)を置いた。そして、最後にオニユミアシからゴミムシダマシの項までを順不同でバラバラに書いた。
だから、所々でトーンが微妙に変わっている。こういう書き方は珠にするけど、こごまで継ぎはぎだらけで書いたのは初めてだ。飽きれば別のところを書けばいいので、お陰で長文のわりにはあんまし苦痛ではなかった。でもそのせいで、ウンザリするくらいの長い文章になってしまったけどね。最後まで読んで下さった方には、ただただ感謝である。

 
(註1)バラクーダは老魚なると群れない

当時、先輩インストラクターにはそう聞かされていたのだが、これは間違い。単独行動の奴と群れている奴は別種なんだとさ。単独でいるデカイのがオニカマスで、群れているのはオオカマスだという。大型カマス類には何種類かあるのだが、ダイバーの間では全部ひっくるめてバラクーダと呼ばれている。だから種類が混同されているのだ。ブラックフィンバラクーダとかも、学術的には別種なんだろね。

 
(註2)ハカイダー
(出典『プレミアム バンダイ』)

 
特撮番組『人造人間キカイダー』及び『キカイダー01』に登場した悪役キャラクター。ダーティヒーローだ。
フィギュア、欲しいなあ…。

 
(註3)シオヤアブ
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
双翅目ムシヒキアブ科。体長23~30mm。
時にスズメバチをも襲う。オニヤンマも襲われることがあるみたい。返り討ちにあうことも多いそうだけど。

 
(註4)タテヅノマルバネクワガタ
(出典『気ままに昆虫採集』)

 
以前はチャイロマルバネクワガタ以外の全種全亜種が「タテヅノマルバネクワガタ」として、ひと括りにされていた。
現在はアマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、オキナワマルバネクワガタ、ヤエヤママルバネクワガタ、ヨナグニマルバネクワガタの5種類に分けられている。
マルバネクワガタは見たことがない。蝶屋だから夜は虫採りなんかしなかったのだ。そういえば、ヨナグニマルバネは禁止になる前年に与那国島にいて、しかもベストシーズンだった。それ狙いの人も沢山来ていた。今思うと、毎晩呑んだくれてる場合じゃなかったよ。
wikipediaには「今日知られる分類は水沼哲郎氏の熱心な研究によるところが大きい。」とあった。水沼さんは優しくて飄々としたお爺ちゃんだけど、やっぱスゴい人なんだね。

 
(註5)他のユミアシゴミムシダマシとそう変わらない

一見したところ、他の大型ユミアシゴミムシダマシとあまり変わらない。体長もそれほど大きな差はない。

 
【オオユミアシゴミムシダマシ】
(出典『こんなものを見た』)

 
体長21.8~27.9㎜。
そういえば初めてユミアシゴミムシダマシを採ったのは小学生の頃で、場所は長居公園の臨南寺だった。大阪のド真ん中だけど、まだ小規模ながら古い社寺林が残っていた時代だ。一部は原始に近い照葉樹林で、そこにはオオゴキブリやマイマイカブリ、オオゴミムシとかオオスナハラゴミムシなどの大型ゴミムシ、そういえばオオゴモクムシなんかもいた。オニユミアシは古くて豊かな照葉樹林にいるみたいだから、もしかしたらアレはオニユミアシだったりしてね。残念ながら標本は残っていないから確かめようがないけれど。

 
【アマミユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長23.8~29.3㎜。
前述したが、オニユミアシは22.0~31.2㎜。つまり大きさはオニユミアシ、アマミユミアシ、オオユミアシの順となる。

 
(註6)ケルベロス
(出典『世界の神話・伝説』)

 
ギリシア神話に登場する犬の怪物。冥界の入口を守護する番犬で、三つの首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬とされる。また、文献によって多少の差異はあるが、三つ首プラス竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれることが多い。
学名はラテン語なので、読み方はケルベルス。英語では読みはサーベラスとなる。

 
(註7)是非、残して欲しい和名だよ
実際、消えてゆく和名も多い。特にオサムシは亜種名にも和名をつける慣習があるからだ。オニクロナガも今ではキュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種と表記される機会が増えている。これは日本産オサムシ図説(井村・水沢, 2013)で、この亜種独自の和名を見直し「(種和名+主要分布地域名)亜種」という方式で和名を記載することが提唱されたからだ。この方式は従来方式の和名が「種を指すのか亜種を指すのか明確でない」という見解からだろう。確かに一見合理的ではある。
しかし、分布地域名の表記をなるべく正確かつ統一的なものしようとするあまり、やたらと長くなっているものが数多く見受けられるのも事実だ。従来の方式ならば、表記も喋るのも短くて済む。オニクロナガで済むところを、一々キュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種なんて言わなきゃならないなんて、どっちが合理的なのかワカンナイぞ。だいち、今は旧名と新名が混ざくりあって、益々何が何だかワカンなくなってて、かえって混乱を引き起こしてねぇか❓また、従来の和名は紀伊とか阿波なとの旧国名や地域名といった歴史ある地名を冠したものが多く、山河による地理的隔離により亜種分化をしてきたオサムシの和名に相応しいものともなっていた。しかし、それを継承しなかった新名もあり、亜種分化の歴史を掴みずらくしてしまったケースもある。オサムシはその形態よりも地方名がついたものが多い。これは見てくれが似たようなのばっかだからそうなったのだろうが、面白いし、かえって合理的でもある。言葉一つで何処に分布する種なのか解るもんね。形態を必死こいて表そうとして、無機質でクソ長ったらしくなった和名よか、余程こちらの方がいいや。
それとは関係ないけど中臣さんの名前を冠したらしきオサムシが、オニクロナガが以外にもう1つある。チュウゴククロナガオサムシ(キュウシュウクロナガオサムシ中国地方亜種)だ。
学名は Carabus (L.) kyushuensis nakatomii 。もしかしたら、オニクロナガも中臣さんに献じようと思ったが、既に nakatomii を使用しているのでアダ名を使ったのかもしれない。

 

2018′ カトカラ元年 その八

 
 Vol.8 オニベニシタバ

    『嗤う鬼』

 
彼女に、ちゃんと会えたのは意外と遅かった。
「ちゃんと」とわざわざ書いたのは、既に2017年の9月の終わりに会っているには会っているからだ。A木くんにハチ北にライトトラップに連れていってもらった時、帰り道のコンビニにいたのだ。
A木くんに要ります?と訊かれたが、要らないと答えた。ボロボロだったし、元々カトカラなんて集める予定はなかったからだ。この日の目的は、あくまでもムラサキシタバの実物を見ることだけだったのだ。

そもそも自分にとって蛾は基本的に忌み嫌うべき存在だった。チョウは好きなのに、ガは見ただけでオゾける。大の大人が女の子みたいにキャッと言って飛び退くぐらい怖かったのだ。おそらくこれは幼少の頃に植えつけられた蛾に対する負の概念の刷り込みだろう。通常、そう云うものは生涯変わることはない。概念として、脳髄の奥の奥まで染み込んでいる。それがまさか翌年には蛾を追っかけてることになろうとは夢にも思わなかった。カトカラは美しいものが多いとはいえ、青天の霹靂である。

あかん。このままいけば脱線確実なので、話を本筋に戻す。

そういえば、A木くんがオニベニなんて…みたいな言い方してたなあ。それで普通種なんだと認識した記憶がある。
翌年の初夏、小太郎くんにも『ド普通種だから、いっぱいいますよ。下手したら、ただキシタバ(C.patala)よか多いんじゃないですかね。』と聞かされていたから、やっぱ普通種なんだという認識をより強くした思いがある。だから7月に入れば、そのうち何処かで会えるだろうと思っていた。
しかし、なぜだか何処でも姿を見なかった。
(;・ω・)あれれ❓、オニベニって普通種じゃなかったのー❓
そうこうするうちに、7月も下旬になった。まさかである。このままだと新鮮な個体が得られない。それに、小太郎くんにも『えっ?まだオニベニを採ってないんですか?』と言われかねない。それも癪だ。
そんなマジで焦り始めていた頃のことだった。

 
2018年 7月26日。

2週間振りに矢田丘陵にやって来た。
日没直後にいつもの森へと入る。ここに樹液のドバドバ出ているクヌギの大木がある。そこには様々な虫が寄ってくる。昆虫酒場だ。カブトムシやクワガタをはじめ、各種の昆虫たちでいつも賑やかだ。勿論、カトカラたちも集まってくる。

木の前まで来ると、アカアシオオアオカミキリ(註1)がワチャワチャと軍団で群れていた。均整のとれた美しいカミキリムシで、かなりカッコイイんだけれども、こんだけいるとウザい。
カトカラは、見飽きまくって最近は憎悪さえ感じるパタラしかいない。何処にでもいるし、図体がデカイから邪魔なのだ。ゆえなのか、小太郎くんなんかは酷い仕打ちをしている(この辺のくだりは本シリーズの「続・キシタバ」の回に詳しく書かれています。おもろいから読んでね)。

何でオニベニいないのー(ノ_・。)❓
まさか今年から突然大減少したとか?でも、そんな事ってあるの?ワケわかんねえやと思って、ふと何気に隣の木に目をやった。
体の動きが止まる。あっ(゜ロ゜)、何かおる…。
そこには、翅を閉じて木肌と同化している蛾がいた。
見た瞬間、カトカラだと云う直感があった。種は特定出来ないものの、他の糞ヤガではないと感じたのだ。でも最初はどの種類のカトカラなのかは分からなかった。けど、大きさと上翅の色柄からして消去法で考えてゆくと、オニベニシタバではないかと云う予感はあった。
どうであれ、初めて見るカトカラだと感じれば、それなりに緊張感は走る。
でも、網を使った記憶がないんだよなあ…。

多分、この最初の1頭は毒ビンを被せて採ったものじゃなかろうか❓
書きながら、段々思い出してきた。高さは低かったから毒ビンを直接使ったのだ。どうせオニベニだろうから、たとえハズしてもこの先いくらでもチャンスはあるだろうとでも思ったのだろう。全然見つからなくて、しかも最初の1頭のわりには心の余裕があったのネ。
とはいいものの、この毒ビンを上から被せて採るという方法は苦手なので、それなりに緊張した感覚は残っている。
毒ビンを上から被せるのって、慣れてないから妙に緊張するのだ。網を振る時みたいに心を上手くコントロールできない。その緊張が相手にも伝わるのだろう。だいたいすんでのところで逃げられる。手で蝶を採るのは得意なんだけど何でだろ❓
蝶は心頭を滅却すれば、わりかし簡単に手掴みで採れる。そんな神技みたいなことができて、何で毒ビンを被せるのが下手なのかなあ…。そっちの方が簡単な筈なんだけどね。やっぱ慣れるしかないのかなあ…。

完全に思い出した。やはり最初の1頭は毒ビンで採ったわ。でも当日写した画像がない。どうやら写真を撮らなかったようだ。
と云うことは、さしたる感動もなかったのだろう。
周りに言われたり、図鑑等を読んでオニベニシタバ=ド普通種という概念が植え付けられてたんだろね。
こういうのは、あまりヨロシクない。情報が自分本来の素直な感性で見る心を阻害してしまっている。虫採りは感動があってこそ面白い。なのに、それを自ら放棄するのは勿体ないことだ。

で、翌日に取り敢えず撮ったのがコレ。

 
(2018.7.26 大和郡山市 矢田丘陵)

 
あっ、この画像を見て思い出したよ。
想像してたよりも美しいなと思ったのだ。皆がクソミソに言ってた程には汚くはない。渋い美しさがある。
下翅が同じ紅色系統のベニシタバと比べて色が暗くて鮮やかさに欠けるから、下に見られがちなんだろうけど、コレはこれで美しいなと思った。
もしも、日本にベニシタバやエゾベニシタバがいなければ、それなりに高い評価とか人気を得ていただろうに…。オニベニくんって、何だか不憫な存在だな。同情するよ。

昔、小学生の頃、クラスに松宮という性格の悪い嫌な奴がいた。小学校6年生か5年生の時だ。そいつが理科の天才とモテ囃されていた。しかし、Mくんという転校生がやって来てから、事態は一変した。彼がもっと理科の天才だったからだ。理科の授業中、先生の質問に何でもスラスラと答えたのである。松宮が先にあてられて、答えられなかった後だっただけにクラスに衝撃が走った。その時の、松宮の醜く歪んだ顔は忘れられない。恥と屈辱がベッタリと貼り付いていた。
Mくんは性格もいい奴で、瞬く間にクラスの人気者になった。当然、松宮の株は暴落した。松宮は嫌な奴だけど、その凋落振りは目を覆いたくなるような残酷な感じで、他人事ながら気の毒だった。先生も難しい問題は真っ先にMくんをあてるようになったからね。
自分はそんな目にあった事は一度もないけれど、もしもそんな立場になったとしたら、相当キツいと思う。自分だったら確実に今よりも性格がネジ曲がっていたに違いない。別人格になっていたのではないかと思うと、マジ怖い。今よりも数段イヤな奴になっていた自信がある。実際、松宮は益々イジけた陰険な野郎になった。中学生になってから、俺様に陰湿な方法で牙を剥いてきた時には驚いたよ。俺、全然関係ないのに、女の子の事で謂れのないトバッチリを受けた。無視したけどね。おまえの好きな女の子が俺の事を好きだからって、陰で悪口をある事ない事その娘に吹き込むんじゃねえよ。そのせいで、別な俺の好きな女の子にも嫌われそうになった。まあ、陰湿で人気のない奴だったから、皆が自分に味方してくれて、それ以上悪い方向にはいかなくて済んだけどさ。

いつもの如く、話が逸れた。
もちろん、オニベニシタバは松宮みたく性格は悪くはない。むしろ、いい方だ。カトカラの中では性格は素直な方だと思う。だから、採るのはそんなに難しくはない。ムラサキシタバなんかは結構性格が悪いもんな。異常に敏感だし、ライトトラップには中々近くまで寄ってこなくて、寄ってきたと思ったら、採りにくい変な所に止まるとかって、よく聞くもんね。

 
(2018.7.26 大和郡山市 矢田丘陵)

 
真ん中の黒帯が細くて、ジグザクになっているのがオニベニさんの特徴だ。色よりも、この黒帯の形で他の近似種と区別する方が同定間違いはしにくい。なぜなら、古い標本や飛び古したものは色が褪せているからだ。あとは翅形も違う。ベニやエゾベニは上翅が横長で、先端が尖る。オニベニはここが他の2種と比べて丸い。この二点さえ抑えておけば、判別間違いすることはないだろう。

この太い腹の形からすると、たぶん♀だろう。
でも、オニベニは♂もデブだから雌雄の区別は意外と難しい。

それにしても、やっぱり一年目の展翅は酷いな。上翅が上がり過ぎてる。まあ、カトカラ1年生だし、しゃあないか…。

この日は、他にも何頭か採った。

 

 
たぶん、コチラが♂だろう。
♀よりも腹が若干細くて長い。先端もやや丸い。でも他のカトカラの♂みたく尻先にいっぱい毛束があるワケではないから、やはり分かりにくい。

あっ、これは上翅に白い紋が入るタイプだね。こっちの方がカッコイイ。
どうやら前翅斑紋は個体変異に富むようだ。何処にも書いてないけど、この白紋が出るのは♂の方が多いような気がするが、本当のところはどうなんだろ?まだカトカラ2年生なので、断言できないけど…。
どちらにせよ、クロシオキシタバとかコガタキシタバ程にはヴァリエーションはないようだ。

裏面が意外と美しい。

 

 
そういえば、初めて飛んでいるのを下から見た時は、数秒間その場で固まった。何だかワカンなかったのだ。シロシタバにしては小さいし、白もオフホワイトではなくて真っ白だったからだ。因みに飛翔中は赤い部分は意外と目立たない。白の方に目がいくのだ。
答えは、コレまた消去法でオニベニにゆきついた。

 

 
赤、白、黒のコントラストが効いていて、素晴らしい。色の配分も申し分ない。
ベニシタバやエゾベニシタバには表の美しさでは負けるが、裏はオニベニが一番美しいと思う。

次に出会ったのは、四條畷だった。
シロシタバ探査の折りで、昼間にウワミズザクラを探していたら、突然飛んで逃げた。結構早いスピードだった。この日はコシロシタバも見たけど、やっぱり早かった。カトカラは夜に樹液に飛来する時はパタパタ飛びで遅いけど、昼間は飛ぶのが速いと知ったのは、この時が初めてだったかもしれない。マジ飛びのカトカラは速い。
それで、突然思い出した。カトカラを初めて見たのは、A木くんに連れて行ってもらったハチ北で見たジョナスキシタバではないや。実を云うと、もっと早い時期にオニベニシタバを見ていることを、まじまじと思い出したよ。間違いなくそれがカトカラとのファーストコンタクトだ。しかも、真っ昼間に見ているのだ。
あれって、ちょっとした白昼夢的だったよなあ…。

詳しい年月は憶えてない。
でも、おそらく2011年か2012年のどちらかの8月だ。場所は生駒山地だった。目的はオオムラサキ(註2)の♀狙いだった。
その場所は誰にも知られていないオラだけの秘密の樹液ポイントで、必ず複数の♀がゲットできた。樹液がドバドバ出ているクヌギの大木に、多い時では♂が一同に10数頭も集まっていたこともある。

時刻は午前10時過ぎだったと思う。
パンパンに膨らんだ期待を胸に、その木に向かって真っ直ぐに斜面を降りてゆく。オオムラサキの♀は綺麗じゃないけど、バカでかくて笑けるほど迫力があるので、その頃は毎年会いに行っていたのだ。
で、目の前まで来て、ゲゲッΣ( ̄ロ ̄lll)、見たら大きめの蛾たちがベタベタと樹液の出ている所に止まっていた。元々、大の蛾嫌いだったから激引きした。
向こうも驚いたようで、複数が下翅をパッと開いた。どひゃ\(◎o◎)/❗❗茶色かと思いきや、突然ビビットな赤が悪魔の口のように開いた❗
ヘ(゜ο°;)ノひっ、思わず飛び退いたよ。( ; ゜Д゜)ビックリしたなあ、もー。
キシタバは普段色鮮やかな下翅を隠して止まっており、天敵に襲われそうになったら、パッとそれを見せて相手を威嚇すると言われている。毒々しい鮮やかな色なので、相手が怯むのだ。それにまんまと引っ掛かったというワケだ。あたしゃ、しっかり怯みましたよ。

やや遠目から様子を伺う。数えたら5、6頭はいた。
コレが何とかシタバとか云う名前の人気のある蛾のグループの1種なんだろうなと思った。
ミーハーなので、人気があるものには興味がある。ちょっと悪魔的で怖くはあるけれど、綺麗といえばキレイだ。だから、採ろうかどうか悩んだ。でも、蛾だから採ったら暴れて、鱗粉を辺りにその辺に撒き散らす光景が目に浮かんだ。((((;゜Д゜)))ブルッときたよ。
だいち、蛾なんて元来よう触らんのだ。網に入れても、心がワヤクチャになってパニックになるやもしれぬ。考えた結果、採集は見送ることにした。
とはいえ、オオムラサキが飛んで来たら邪魔だ。排除せねばならぬ。
一旦、深呼吸をしてから、再び木に小走りで近づき、勢いをつけて思いきし前蹴りしてやった。
Σ(゜Д゜)ヒッ、(゜ロ゜;ノ)ノヒッ、Σ(T▽T;)ヒィーッ❗全員驚いて飛びやがった。それを狙ったんだけども、思った以上にシッチャカメッチャカ四方八方に飛んで横をかすめていったので、発狂しそうになっただよ。
(´д`|||)キモ~。一瞬、背中が凍りついたわ。体に異常なまでの変な力が入っていたようで、その場で肩で息したよ。

その日の夜、夢を見た。
何十頭ものオニベニシタバが、自分の周りを飛び交っている夢だ。下翅の赤い色がチカチカと明滅する。それが鬼の口が開いたり閉じたりして、まるでケタケタ嗤(わら)っているように見えた。嗤う鬼軍団だ。怖すぎる。
アキャーo(T□T)o、魘(うな)されて、恐怖のあまり飛び起きた。
もちろん、パジャマは汗ビッショリだった。

今宵、貴方の夢にもオニベニが乱舞するやもしれませぬぞ。

 
                   おしまい

 
 
今回も続編は書かない。前回と同じく解説は後回しの、2019年版をくっ付けたヴァージョンでいきます。

 
【学名】Catocala dula (Bremer, 1861)

小種名の「dula」は、ネットで調べたがワカランかった。dula じゃなくて、dura というのが矢鱈と出てくる。
頼みの綱の平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』にも載っていなかった。
ヒカゲチョウ属に、Lethe dora オビクロヒカゲ という似ているのがあったけど、綴りが微妙に違う。
ついでだから言っとくと、ドゥーラの語源はラテン語で「堅い、鈍感な」という意味。梵語由来ならば「遠い、長い」です。

ワカンねぇから、ここから先はいい加減な推測を書く。
たぶん、これは誰かに献名されたものではなかろうか❓おそらく女性の名前で、ドゥーラじゃなくて、ダラと読むんではないかな。ダラとかって、アメリカ人女性の名前とかに多くねえか❓
綴りがそれだと違うよな気がするが、もういいや。ゴメンナサイ。ワッカリまっしぇーん\(ToT)/

 
【和名】
オニベニシタバという和名は悪くないと思う。
たぶん赤鬼から来ているのだろう。その鬼の赤と下翅の色とを重ね合わせたのだと思われる。
いや、待てよ。オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼ、オニダルマオコゼ、オニハタタテダイ、オニヒトデ、オニヤドガリ…。あっ、思い浮かんだのは、海の生物ばかりだ。これはダイビングインストラクター時代の名残だね。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられた。オニイトマキエイは、そのデカさからだろう。オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また猛毒があり、危険なことから名付けられたものだと思われる。オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てたようだ。オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。性格も荒い。トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな?
植物ならオニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジなんかが有名だ。
オニユリの名の由来は、花が大きく豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。オニアザミやオニバスは、その棘と大きさに由来する。以下は面倒くさいので、省略する。
ようするに生物に鬼の名がつく場合は「①大きい。②刺、角がある。③見た目が厳つい。④凶暴・獰猛である。⑤色合いが鬼に似ている」の何れかの理由から付けられている模様だ。
昆虫はといえば、オニヤンマ、オニクワガタが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止めとく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。

話をオニベニの和名に戻そう。
オニベニシタバの和名には、色合いだけでなく、厳ついと云う意味も込められているのではないかと思う。オニベニは翅に比して胴体が太い。ゴツいんである。その体躯と赤黒い翅とが相俟って、鬼っぽく見えるといえば見えなくもないのだ。初めて会ったあの日の昼間は、その姿に兇々(まがまが)しい感じを受けたもん。

 
【開張】 65~70㎜
カトカラ全体の中では大きい部類に入るが、他の下翅が赤いグループ(ベニシタバ、エゾベニシタバ)の中では一番小さい。でも腹と胴がデブだからか、あんま大きさは変わんない印象がある。人だって身長が低くてもデブだと迫力があるから、そんなに小さく見えないんだよね。あっ、コレってデブ批判じゃないからね。迫力があった方が得です。
因みに、同じ下翅が紅いグループでも、オニベニシタバとベニシタバ&エゾベニシタバとは分類学的に系統が違うようだ。下翅が紅いだけで、あとは形態や斑紋、幼虫の食樹も異なるから、言われてみれば納得だすな。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬。
九州南部には分布していないようだ。ということは暑さや湿気には弱く、どちらかというと北方寄りの種なのかもしれない。低山地のカトカラというイメージがあったから、南方系とまでは言わないまでも、暖かい地域を好むカトカラだと勝手に思ってたけど、違うんだね。そういえば去年、長野県の標高1700mぐらいのとこでも採ったことあるわ。
因みにレッドデータブックだと「千葉県:D(一般保護生物)、高知県:準絶滅危惧、長崎県:絶滅危惧IA、大分県:情報不足」となっているようだ。こんなもんと言っては失礼だが、稀な地域もあるんだね。
あっ、長崎、大分、高知が入っているから、やはり温暖なところには、あまりいない種なんだ。納得だよ。

参考までに言っとくと、国外ではアムール(ロシア沿海州)、樺太、朝鮮、中国(中北部)に分布が知られる。

  
【成虫出現期】 6~10月
近畿地方では6月下旬辺りから現れるとあるが、実際見る機会が多いのは7月上旬からだろう。その頃から次第に個体数を増やし、8月半ば迄よく見かけた。

 
【生態】
クヌギの木が多い比較的乾燥したに二次林でよく見られる。コナラ主体の雑木林や常緑カシ林には少ない。
クヌギ、ヤナギ、ハルニレの樹液によく飛来する。また、ブドウなどの果実にも好んで集まるようだ。
樹液への飛来時刻は比較的早く、日没後すぐに現れる。但し、直接樹液には寄ってこず、近くの木に頭を上向きにして止まっていることも多い。
糖蜜トラップは、オニベニ狙いで試したことはないので、効果の程は分からない。とはいえ、おそらく反応するものと思われる。

発生初期は他のカトカラと同じく夜間に活動するが、8月に入って繁殖期になると昼間でも活発に活動し、昼夜を問わず樹液やブットレアなどの各種花にも吸蜜に訪れる。昼間に活動するカトカラは他にあまりいないので(註3)、カトカラの中では得意な生態を持つ種だと言えよう。
発生初期の昼間は、頭を下向きにして木の幹に止まっており、驚いて飛ぶと他の木に頭を上向きにして着地し、ややあってから下向きとなる。しかし、交尾期になると頭を上向きにして止まる個体が多いという。

灯火にもよく誘引されるようだ。けれど、灯火に来ているものを見たことが殆んどない。数えるくらしかした事がないけれど、ライトトラップでも見たことは一度もない。だから、光に寄ってくるという実感は個人的にはあまりない。
あっ、思い出した。標高1700mで採った奴は車のライトに飛んで来たわ。

 
【幼虫の食餌植物】
食樹はクヌギ、ミズナラ、カシワ、コナラなどブナ科コナラ属全般だが、少ないながらもアラカシなど常緑カシ類も利用している。
幼虫はクヌギを最も好み、以下ミズナラ、カシワの順に嗜好するが、コナラはあまり利用されていないようだ。これはコナラの芽吹きが早く、若葉がかたくなるのが早いからだと推察されている。マメキシタバやアサマキシタバも同様の傾向があるという。
樹齢15~30年くらいのものによく付くが、大発生するような年には老齢木にも幼虫が見られるそうだ。

 
2019年は、驚いたことに2頭しか採っていない。

 
(2019.7.10 奈良市白毫寺町)

 
こうして見ると、上翅があんま魅力的じゃないよなあ。その辺もベニやエゾベニに比べて、一段劣る評価になってんだろな。

裏面の写真もあった。

 

 
胸がもふもふだね。もふもふ大好き~(^o^)

この個体を採ったの時のことは、場所もシチュエーションもよく憶えている。
場所は白毫寺町東山緑地の雑木林で、日没後すぐの時間帯に樹液に寄ってきていた。小太郎くんが来るまでヒマだったので、新たな樹液ポイントを探している時に見つけたんだよね。
しかし、シチュエーションの記憶がこれだけ鮮明なのに、なぜだか日付の記憶はどうにも曖昧だ。
日付を確認してみると七月十日になっていた。七月十日といえば、日本で初めて見つかったカトカラ、新亜種マホロバキシタバ(註4)を発見した日だ。
と云うことは、そっちのインパクトが強すぎて、それ以前のオニベニの記憶がその日からフッ飛んでたみたいだ。

 
(2019.7.10 奈良市 白毫寺町)

 
♀かなあ…。だと思うんだけど。
今年は展翅もだいぶとマシになった。触角をどうするかは今だに迷ってて模索中だけどね。前脚も気分で出したり出さなかったりと、統一されてない。
コレは前脚出しいの、アンテナ真っ直ぐ寝かしーのパターンだす。
下の2頭目の個体も、同じパターンの展翅だね。

 
(2019.7.16 奈良市 高畑町)

 
これは住宅街で捕らえたんだよね。だから、ちょっとドキドキした。夜に住宅街で網持ってたら、怪しまれて当然なのだ。

2頭とも♀だと思うけど、見てると段々自信が無くなってきたよ。

それにしても、何で2頭しか採っていないんだろう❓
別に採るのをサボってたとかスルーしてたワケではないのにね。つまりこれは、それだけ今年は見ていないって事だ。多い時期に、去年一番個体数の多かった矢田丘陵に行っていないと云うのもあるかもしんないけど…。
或いは、意外といる所には沢山いるけれど、いないとこにはいないカトカラなのかもしれない。たった二年間でのモノ言いだけどさ。
でも、もしかしたら雑木林が放置されて老齢木ばかりになってきていて、幼虫が好む樹齢15~30年くらいの木が減っているのかもしれない。
ド普通種だとバカにしてたら、そのうち段々減っていって、いつの間にか絶滅危惧種になってたりしてね。

 
               おしまいのおしまい 
 
 
追伸
書くことが、あまりないから楽に終わるかと思いきや、そうでもなかった。松宮の事なんて思い出したのが間違いだったよ。そこから、何だかエンジンがかかっちゃって、どんどん長くなっていった。

最初のタイトルは『紅の鬼豚』だった。宮崎駿の映画『紅の豚』がモチーフだ。オニベニってデブでピンク系だからって安易につけた。自分でも笑ったわ。
テキトーにつけたけど、どうやってこのタイトルとオニベニをリンクさせんねんと思いながら書き始めた。まあ、どうせゼッテーまたフザけた方向にいくねんやろなあと思ったけどさ(笑)
因みに、そこから派生した『紅の鬼嫁』と云うのも候補としてあった。益々、どうやって本文とリンクさせるねんって感じだよね。輪をかけてムチャクチャな展開になること、明白である。
で、そのうち過去のファーストコンタクトの記憶が甦ってきて、今のタイトル『嗤う鬼』に落ち着いたと云うワケ。

 
(註1)アカアシオオアオカミキリ
(2018.7 大和郡山市 矢田丘陵)

 
夜行性。夏場、わんさか樹液に寄ってくる。今年も多かった。

 
(註2)オオムラサキ
世界最大級のタテハチョウの1種。日本の国蝶でもある。

 
【♂】

 
【♀】

 
下はブルーオオムラサキのスギタニ型。

 
(註3)昼間に活動するカトカラは他にあまりいない

エゾベニシタバやオオシロシタバなどに例があるが、通常の生態ではない。おそらく大発生した時などに限った生態ではないかと推察される。

 
(註4)マホロバキシタバ

【Catocala naganoi mahoroba ♂】

 
日本で32番目に見つかったカトカラ。
詳しくは月刊むしの2019年10月号を見て下され。

 
《参考文献》
▪西尾規孝『日本のCatocala』自費出版
▪石塚勝己『世界のカトカラ』月刊むし社
▪江崎悌三ほか『原色日本蛾類図鑑』保育社

 

天王寺で寿司を食う

 
先日、天王寺で用事があった。
ちょうど昼飯時だったので何か食おうと思った。
それで思い出したのが、あべのハルカス(近鉄百貨店)にある『すし 古径』。
店名の由来は、おそらく日本画家の小林古径だろう。

 

 
夏八月に来た時に、ここの鰯がメチャメチャ美味かった。それを思い出したのだ。

先ずは小手調べにツマミ三種をたのむ。
寿司を握ってもらう前に、ツマミで刺身をたのむ人が多いが、自分は滅多なことではたのまない。これから寿司食うのに、何で刺身を食わなきゃならんのだ?と思ってしまうのだ。

 

 
左から蛸のやわらか煮、高野豆腐、小針魚(サヨリ)の昆布絞めである。
蛸はタコでないくらいに物凄くやわらかい。美味しいけど、蛸に弾力を求める者には特に感銘はない。
高野豆腐はガキの頃はスポンジやんけと思っていたが、大人になると出汁次第だと解った。高野豆腐は出汁を食う料理なのだ。
サヨリの昆布絞めは侮れない旨さだ。地味にメチャ美味い。あまり締め過ぎていないので、身がかたくなってなくて、刺身に近いフレッシュな感じが残っているのがいい。

昼間なので、あまり酒は飲めないゆえに早々と握ってもらう。
関西ではあまりお目にかかれない小肌があったので、少し迷ったがたのんでみた。

 

 
見た感じは艶があって期待が持てる。コハダはセクシーでなければならぬ。
ここは醤油を自分でつけて食べる店ではなく、こうして職人が煮切り醤油を刷毛で塗って出してくるタイプの店である。所謂、職人がネタに仕事をするという江戸前寿司ってヤツだね。

因みに煮切り醤油とは、濃口醤油、又はたまり醤油に酒、味醂などを加えて火にかけてアルコール分をとばしたものである。店によって調合は違い、それぞれ工夫が施されていたりもする。

小肌は旨い不味いの落差が一番あるタネである。
旨いと思うことよりも、ガッカリさせられることの方が遥かに多い。だから少したのむのを迷ったのだ。

手でスッと持ち上げ、ちらりと見て、さっと口に入れる。

(ー_ー;)う~む。
悪くはない。悪くはないんだけど、やはり今回も期待値を下まわった。酢がややキツい。自分にとっては締め過ぎである。好みは浅締めなのだ。酢に浸ける時間が長いと身がかたくなる。それがあまり好きではないのだ。きずしとか鯖寿司とかも、これは同じである。酢締めのネタって、微妙な世界なんである。この状態が好みで、良しとする人もいるだろう。所詮、食いもんなんてものは、突き詰めれば最後は好みなのだ。

とにかく、それでやや気落ちして写真を撮るのを止めた。この先、期待はできないなと思ったのだ。

次にたのんだのは鯛。
塩に柑橘の絞り汁をキュッと垂らしてもらった。
鯛はこの食べ方が一番美味い。鯛の旨みと甘みを一番感じられるからだ。噛めば噛むほどに旨みが増す。

これも悪くはないものの、感動を呼び起こすほどのものではなかった。時期もあまり宜しくないのだろう。美味しくなるのは、気温が下がってゆくこれからだろう。

続いてたのんだは縞鯵(シマアジ)。
座って、ネタケースに並んでいるのを見た時から目を引いた。ネタがぴかぴかに輝いていたのだ。良い素材は表面が光っているように見えるものだ。食べてよ、食べてよとアピールしてくる。冗談ではなく、これはホントだ。わかる人にはわかる。どんなものでも、ホンマもんには美が宿るのだ。

これは抜群に美味かった。身がイカっているのに、噛むと歯切れがよく、あとから旨みがグングン追いかけてくる。
イカってる魚は歯応えはいいけど、旨みには欠ける事が多い。それがないのに驚いた。旨みが噛んでるうちに心地好く舌に広がってゆくのだ。
元々、シマアジは身質的にそういう魚ではあるけれど、参った。たぶん、秘密は切身の絶妙な厚さだろう。寿司ネタには、それぞれの、その時々の最良の厚さというものがあり、またシャリとのバランスがあるのだ。

この手の魚のカンパチ、ヒラマサ、ブリ等の中ではシマアジが一番美味いと思う。最近のブリとかハマチとかって、生臭くて食えたもんではない。だから、天然か、それに近い寒ブリしか食わない主義だ。昔は、ハマチが大好きだったのなあ…。オジサンになると、好みも変わるのだ。

このシマアジで考えを改めなおした。
好きなものを勝手にたのむのではなく、職人さんのお薦めを訊いてからオーダーすることにした。段々、寿司屋にも行けない人になってきたので、セオリーを忘れてたよ。悲しいやね。

そう云うワケで、次は薦められたカマスを素直にたのんだ。
でもカマス❓とは思った。カマスなんて魚は水っぽいから、寿司には向かないネタだと云うイメージがあったからだ。カマスといえば、一夜干しでしょうよ。
でも、出されたカマスの炙りは、悶絶するくらいにメチャメチャ美味かった。香ばしさが最初に鼻腔をくすぐり、上品なのに甘みと旨みが強い。そして、最後にもう一度、香ばしさが鼻から抜けてゆく。
カマス、ナメてました。脱帽。今まで寿司屋で食ったカマスの中では、ナンバー1と言ってもいい。

というワケで、写真も復活。

 
【剣先烏賊】

 
やわらかくて、旨みと甘みが半端ない。
イカ本来の甘みもさることながら、細かい包丁が入っているがゆえだろう。おそらく身の裏面にも隠し包丁が入っていた筈だ。イカは繊維を断ち切れば切るほど旨みと甘みが舌に感じ易いのだ。

 
【鯵】

 
わかりづらいから、反対からも撮る。

 

 
上に生姜が添えられている。
これも美味かったが、縞鯵の感動には及ばない。
但し、そもそも同じアジと言っても全く違う魚だ。そう思えば、アジとしてはそれなりに完成しているかもしれない。順番が逆ならば、もっと好評価だっただろう。寿司は食う順番も大事なのだ。

 
【アワビ】

 
煮アワビではなくて、生である。
普通にメッチャ旨い。メッチャは言い過ぎだけど、コリコリの中に貝独特の旨みがあって、よろし。
江戸前だから、火が入ったアワビかと思いきや。生しかないと言われた。でも好みとしては煮アワビよりも生のアワビの方が食感があって好きだから問題ないのさ。
煮アワビって、時々カマボコ的だなと思ってしまう。そう思ったら、おしまいだ。有り難みが無くなる。

 
【土瓶蒸し】

 
秋だすなあ…。しみじみ美味いよ。
土瓶蒸しは大好きだ。あんまり食べる機会はないけどさ。中を覗くと、ちゃんとハモも入ってた。ハモが入っていない土瓶蒸しは土瓶蒸しと認めない。全然、味が違うからである。ハモが入ると、出汁の旨みが格段に出て、尚且つ上品さを失わないと云うところがマストなのだ。
海老も入っていた。これは正直いらないと思っている。松茸とハモの極上のハーモニーを壊しかねない存在だと思ってる。重ねて言う。土瓶蒸しに海老はいらない。

 
【茶碗蒸し】

 
茶碗蒸しって良いよねぇ。
何だか心の底からホッとする。癒しの食いもんだ。このクオリティのもんだったら、毎日食ってもいいや。
茶碗蒸しと土瓶蒸しを考えた人は天才だと思う。

 
写真も撮ってない事だし、もう一回シマアジをたのんだ。

 
【縞鯵】

 
これもわかりづらいから、反対からも撮る。

 

 
最初と比べれば驚きがない分、感動は薄れるが、やはり美味い。

 
【カマスの炙り】

 
カマスも写真が無いので、もう一回たのんだ。
コチラは、遜色ないくらいの感動を味わえた。メチャメチャ美味い。この日のマイ・フェバリットは、間違いなくカマスだろう。

〆は穴子にしようと思ったのだが、生憎のところ売り切れとのこと。残念至極だ。

 
【ツブ貝】

 
生のツブ貝を久しく食べていない気がしたので、たのんだ。
歯触りは良いが、旨みが足りない。これも、もう少し季節が進んだ方が美味くなるのだろう。それぞれの旬は、ちゃんと覚えておいた方がいいやね。でも、同じ魚でも旬は場所によって違うから、世間で言われている旬が絶対ではないんだよね。

 
【トロ鉄火】

 
最後は、トロ鉄火で〆た。
やっぱ、トロ鉄火って最高だ。もちろんマグロは旨いけど、この海苔が堪らん。パリッとした食感と磯の仄かな香りがマグロの旨みを極限にまで引き出してくれるのだ。うめぇ~…。腹いっぱい。ノックアウトである。
それにしても、マグロと海苔の相性って抜群だな。わかっているのに、毎回一々感心することしきりである。
相性抜群の誰か現れてくんないかなあ…。ノックアウトされたいよ。

 
                    おしまい