戻り鰹に唸る

 
戻り鰹の季節になってきた。

たまたまスーパーで、これはという生のカツオが目に入った。そこそこ大きさがあって、モノが良いのに片身下半分(4分の1)の柵が¥398だった。安い。
量的には多いので迷ったが、カツオはデカイ方が旨い。それに、たとえ今日食べきれないであろう半分を捨てたとしても、安い。買わない手はない。

帰ってきてパックを開けたら、やはり予想通りの皮付きであった。正直、面倒くさい。でも、新鮮な証でもある。皮付きの生は、よほど自信が無いと店頭に出せないのだ。銀色が禿げて輝きを失ったモノは、目を背けたくなるくらいにみすぼらしい。

鮮度が良いので、皮を引いてもいいかなと思ったが、綺麗な銀色だったので、タタキにすることにした。大概の魚は、この皮と身の間に旨味が詰まっているのだ。
とはいえ、最上とされる藁焼き鰹のための藁なんて持ってるワケないし、たとえ有ったとしても、煙と炎が半端なく出るからマンションでは御法度だ。
そう云うワケだから、金串を打って、ガスの直火で皮めを焼くことにした。
焦げ過ぎないように気をつけて焼いたら、すかさず氷水に浸ける。普段はそこまでしないのだが、今回はモノが良いので万全を期した。旨いもんにありつきたかったら、手を抜いてはならない。

周りの水気をキッチンペーパーで丁寧に拭き、庖丁で厚めにスパッ切る。ここ、大事。カツオの刺身は厚めの方が旨いのだ。そして刺身はよく切れる包丁で、手前から刃先へと刃渡りを全部使う気持ちで引いて切る。前後に包丁をコキコキ動かして切るのは言語道断だ。断面がグチャグチャになって、味と食感が格段に落ちる。どんな良い素材でも、見事なまでに台無しになってしまうのだ。知らなかった人は、今後、肝に命ぜられよ。
その為には第一歩として、ケチらずによく切れるそこそこ高い包丁を買いましょうね。

 

 
切った瞬間には気づいていたが、見よ、この断面の輝き❗(ゴメン、ワードプレスに記事をアップすると、ナゼだか画質が極端に落ちるから、中々伝わらないとは思うけど)。

薬味は、過去に何度も同じような事を書いているが、ニンニクと茗荷、貝割れ大根が基本。土佐仕様が宜しい。

 

 
今回は葱も除外した。葱は香りが強いので、生魚の臭みを消してくれる効果がある。でも、今日は寧ろ邪魔だ。かえって鰹の本来の風味が消してしまいかねない。生姜も似たような理由で選択外とする。
甘ったるいタタキのタレなんぞは、当然使わない。ポン酢も醤油もいらない。鮮度の良い鰹は塩に限る。

最初の歯触り、噛むほどに押し返してくる微妙な弾力。じわりと感じる旨味。申し分ない。(´∇`)至福じゃよ。

余ったカツオを軽くヅケにしておいた。
で、翌日は状態をみて、ネギを登場させることにした。それだけカツオは足が早いのだ。一日経てば、グンと鮮度が下がる。だから、漁場が近い高知で食うカツオが美味いというワケなのさ。

ネギに煙が出るくらいに高温熱々チンチンにした胡麻油をかけたものを乗っける。あっ、そのままじゃなくて冷ましたヤツね。
アカン、読み返して「煙が出るくらいに高温熱々チンチン」のところで、一人で吹き出してしまう。意図して書いたワケではないが、🔥マグマのような燃え盛るオチンチンを想像してしまったのである。何が目的なのだ❓浮気した女への腹いせか❓それとも、新手のB級ヒーローかあ❓
実にバカバカしい。バカバカし過ぎて、もう1回笑てもうたワ

 

 
薬味は他に茗荷と貝割れ大根。
何か耐えきれずに、わちゃわちゃわちゃーと薬味を上からばらまいてやった。

 

 
それをTVでCS(クライマックスシリーズ)を観ながら食う。
味は、昨日のカツオと比ぶべくもない。
でも、創作系としては、まあまあかな。
クッソー(‘ε’*)、阪神、ますます巨人に点差を広げられてゆくやんけー。やっぱクソ弱いわ。
カツオが、どんどん不味くなる。

 
                    おしまい

 
追伸
昨日からそうだったけど、どちらかというと同時に放送されているソフトバンクVS西武の試合にチャンネルを合わせている時間の方が長い。なぜなら、試合として全然面白いからだ。正直、パ・リーグの方が野球のレベルが高いわ。

 

 

 

カニカマメンマ

  
何か、カニカマメンマって舌噛みそうだ。
ハイ、早口で5回続けてカニカマメンマと言ってみましょう\(^o^)/

2週間ほど前だったと思うが、TVの『マツコの知らない世界』で、カニカマを取り上げていた。一年365日間、ずーっとカニカマを食べ続けてるカニカマおばさんが、カニカマの魅力を伝えると云う内容だ。

その中でカニカマを使った料理も紹介されていた。その一つがカニカマメンマという代物だ。
酒のツマミとして紹介されたものだが、マツコ絶賛で、しかも超簡単に作れそうなので気になった。

で、作った。

 

 
たしかに超簡単だった。

材料はカニカマとメンマ、白髪ネギ。あと調味料の白胡椒、胡麻油だけである。
カニカマは一正蒲鉾の「カニ風味スティック」、メンマは桃屋のメンマ「やわらぎ」を使った。

 
【一正蒲鉾 カニ風味スティック】

 
イオングループでは、コヤツがだいたい山積みになっておる。味は安定して旨い。

  
【桃屋のやわらぎメンマ】 

 
あれば、もっと穂先をふんだんに使った柔らかいモノの方がいいと思う。

作り方はホントに超簡単で、これらを混ぜ合わせるだけである。あっ、カニカマは縦に裂かなきゃいけんし、ネギも切らなきゃイケんけど。

味は、不味くはない。そこそこ旨い。
でも劇的に旨いかと訊かれたら、首を傾げる。そこそこ旨いけど、何かチープな味なんである。

カニカマもメンマもまだ残ってるし、二日後にもう一回作った。

 

 
白髪ネギは3分の2を混ぜて、残りを上に飾った。
見た目がいいかなと思ったのさ。

でも、食うときは結局全部混ぜ合わせるんだけどね。

 

 
慣れてくると、これはこれで有りかもなあ…。
この味はハマる人はハマりそうな気がする。
でも2回目なんだから、今思えばもっとアレンジすべきだったかもなあ…。
けど、何をどうすればいいのかワカラン(?_?)

そういえば、番組では進化系カニカマって事で、🍊みかんカニカマとかも紹介されてたよなあ。

何じゃ、こりゃ❗❓だったので、スーパーで思わず写真撮っちやったよ。だから画像が残ってる。

 

 
どんな味なんだろ❓
気にはなったから、正直買うかどうかを迷ったよ。
でも結局買わなかった。
冷静になって考えてみたら、「んなもん、旨いワケないじゃないか(*`Д´)ノ❗」と思ったのである。

けど、マツコは結構旨いような事を言ってた。
そんなにミカン、ミカンしてなくて、仄かにミカンを感じるから違和感は思ってた程には無いそうだ。
そっか…ミカンと聞けば拒否反応が起きるが、考えたらミカンも柚子やレモンと同じ柑橘系だもんな。気づかんかった…。

実をいうと、その前にはソーダ味とかも売ってた。
コレも思わず写真を撮ってもうた。
一正蒲鉾よ、何処に行こうとしてるのだ❓
カニカマ業界1位の会社だけど、アンタら大丈夫かあ❓と思ったよ。

 

 
食いもんの色として、青は絶対タブーでしょうよ。
全然食欲が湧かないない色の筆頭だ。しかもソーダ味って、「ガリガリくん」かよ。攻め過ぎだよ。カニ味とソーダ味が混ざった味って、ゼッテー旨いワケないじゃん。想像しただけでも、嫌な気分になる。

でも、気になるなあ…。どんだけ不味いか知りたいよ。売れたのかなあ…。大量に残ってしまって大損してたら笑うなあ。

今度また変なのを出してきたら、買おっかなあ…。

 
                   おしまい

 
追伸
カニカマといえば、圧倒的にスギヨが作っているカニカマが旨い。カニカマを世に送り出した会社だしね。
そういえば、カニカマおばさんがカニカマにハマるキッカケがこのスギヨの「大人のカニカマ」だった。カニカマの中で一番旨いとも言っていた。
そのスギヨのカニカマが、昨日半額で売ってたから買ったんだよなあ…。「大人のカニカマ」じゃなくて、「かにちゃいまっせ」だけど。

 

 
まだメンマも白ネギもあるし、もう一回作れないことはない。でもなあ…、そのまま食って旨いのに、わざわざ変に手を加えて不味くなったら腹立つよなあ…。

 

2018′ カトカラ元年 その六

   
  vol.6 マメキシタバ

    『侏儒の舞』

  
2018年 7月某日。

夜の森へと足を踏み入れる。
7月も半ばになると、夜でも蒸し暑い。立ってるだけで汗がジットリと額から滲み出してくる。

樹液がドバドバ出ている御神木にぞんざいに近づいたら、黄色系のカトカラたちが驚いて一斉に飛び立った。結構な数で、ちょっとしたワチャワチャの乱舞の様相だ。

『あっ、マメキシタバもいますよ。あのチビこい奴、ほら、アレ。』と小太郎くんが言う。
でも、オイラはそれに特に反応する事もなく見送る。
『えっ、マメ採らないんですか❓五十嵐さん、まだ採った事ありませんよね❓』と小太郎くんが怪訝な顔で訊いてくる。
それに対して面倒くさそうに返す。
『無いけど、そのうち採れるやろ。どうせまた戻ってくるっしょ?』。
『やる気、全然ないですねー。』
と小太郎くんは言うが、クソ暑いんである。たかがマメキシタバに気合いなんぞ入るワケがない。
イガちゃん、ヒドイねー。まだ一つも採った事もないクセに、こんな事を言うなんてやっぱ虫採りをナメてる男なのである。

以前、フシキキシタバ、ワモンキシタバという美しいカトカラに連続して出会った事がキッカケでカトカラにハマったと書いたが、実をいうとあれは半分は本当だが、半分は嘘である。
カトカラの美しさには目覚めはしたが、正直言うと一部の美しいものにしか興味がなかった。近畿地方で採れるものは、前回に登場したカバフキシタバと他はシロシタバ、ムラサキシタバくらいにしか真の意味での興味はなかったと云うのが偽らざる気持ちだった。
それゆえカバフを仕留めたところで、何だか腑抜けになっていたのだ。カトカラを全種を集めるとは言ったが、日本の蝶をコンプリートしてやろうという気持ちに比べれば、モチベーションは遥かに低い。勢いで言っただけで、本当はそれほど強い決意はなかった。
だからか、マメキシタバを最初に採った時の記憶というものがゴッソリと欠落している。見事なまてに全然憶えてないのだ。
探してみたが、どうやら最初に採った時の証拠写真さえない。ようするに写真も撮っていないのだ。たぶん撮る気さえ起こらなかったのだろう。
一応、今年は辛うじて撮っているので、替わりにそちらの画像を添付しておこう。でも、これとて撮ったことさえ完全に忘れていた。

 

(2019.7.5 兵庫県宝塚市)

 
去年、最初に展翅したらしきモノの写真は一応残ってはいる。

 

 
♂だね。
どうやらファースト・ゲットはボロボロの個体だ。
冒頭の場所、矢田丘陵で採れたものかどうだかは定かではない。或いは他の所だったかもしれない。ボロゆえかラベルも無いのである。記憶ゼロだ。
それにしても、やはり一年目の展翅は酷いね。上翅を上げ過ぎてしまっているし、触角も今イチだ。

他の個体も並べておこう。

 

 
これは兵庫県六甲山地西部の個体だ。コチラも♂である。
採った記憶は全然ないが、これにはラベルがあるから間違いなかろう。

後翅はオレンジの地に黒い帯が楕円を描くようにあり、内側の帯の中心に薄い1本の黒い線が走るのが特徴である。
下翅はオレンジの領域が広く、フシキキシタバに似ている。しかし、上翅の色柄が違うので区別は容易。だいち両者は大きさが全然違う。マメキシタバの方が遥かに小さい。加えて発生時期も異なる。フシキキシタバの発生の方が1ヶ月くらい早いから、両者を同時に見る機会は殆んどないと言っていい。仮にあったとしても、フシキはその頃にはボロボロだから見間違えることはほぼ無いと言えよう(フシキキシタバについては当ブログに詳しく書いたので、画像等含めてソチラを見てくだされ)。

 

 
腹部が短くて太いから♀だね。
コヤツは上翅の模様にメリハリがあるなあ。ネットの情報なんかだとマメキシタバの上翅の模様は結構バリエーションがあるらしいけど、あまり意識した事はない。コガタキシタバやクロシオキシタバなんかの方が余程変化に富んでいるからだ。それらと比べると正直ツマンナイ。バリエーションも、どこか地味なのだ。

次のは、上翅がやはり上がり過ぎてはいるものの、比較的マシな展翅かな。問題は多々あるが、バランスはそう悪くはないだろう。

 

 
裏展翅した写真も出てきた。
ボロいし、裏展にでもしとくか…てな感じが色濃く滲み出ているようなテキトー展翅だ。

 

 
上2つが♂で、一番下が♀である。
何れも生駒山地北部のものだ。
この時の事はよく憶えている。樹液から驚いて飛んだマメキシタバたちが、アチキの周囲で何頭もがくるくると優雅に舞ったのである。侏儒の舞だ。でも小人どもの舞というよりかは、妖精たちの舞に見えた。
中々に幻想的な光景で、ほんの僅かな間だったが何となく嬉しい気持ちになったのをよく覚えている。こんな気分になれたのは、マメキシタバならではだと思う。珍しい種類ならば、それどころではない。興奮して、そんな優雅な気分に浸っている余裕などない。
また、これがもしパタラキシタバ(C.patala)、いわゆる普通キシタバならば、きっと腹を立ててムチャクチャに網を振り回して全員撃墜させていたかもしれない。デカイから、そんなのに囲まれて飛び回られたりしたら不気味だし、めちゃんこ気持ち悪いじゃないか。悪夢だ。何かの呪いじゃよ。想像しただけでも恐ろしいや。

今年、2019年に採ったものも並べておこう。少しは展翅もマシな筈だ。

 
(2019.8.11 大阪府四條畷市)

 
♂だね。8月も半ばだが、この時期でも結構新鮮な個体がいる。

 
(2019.7.5 兵庫県宝塚市)

 
これも♂である。
この場所では個体数が少なかった。稀種とされるカバフキシタバの方が、よっぽど多かった。

 
(2019.7.25 大阪府四條畷市)

 
これは♀だね。
ここは比較的個体数が多いが、去年よりかは少なかったと思う。

お次は裏面。

 

(2点とも 2019.8.11 大阪府四條畷市)

 
あらあら、全部でこんだけかい。もっと見た記憶があるのになあ…。何だかマメキシタバに対しての興味の度合いを如実に表しているようじゃないか。きっと見てもロクに採ってないってワケだな。
と云うワケなので、ネタも無いし、続編は書きましぇん。( ̄∇ ̄*)ゞあはは…、扱いがホントないがしろだニャア(ФωФ)
マメちゃん、ゴメンね、ゴメンねー。

 
【和名】
和名マメキシタバは、ヤクシマヒメキシタバと並び国内のカトカラの中では最も小さい事から名付けられたのだろう。これに関しては、べつに文句はない。豆電球や豆皿、豆柴(犬)に豆ダヌキ等々、昔から日本では小さいものの名前に豆を冠するという伝統があるからだ。虫だってマメコガネやマメゾウムシ等々があるし、特に違和感はない。まあ予定調和過ぎて面白くはないけどね。
あっ、今思い出したけど、スズキキシタバという和名が付けられたこともあるようだ。でもダサ過ぎて、コメントする気にもなれないや。

そういえば大学生の頃、男同士何人かで恋ばな(恋話)になったら、必ず最後のオチはいつも『何だかんだ言ってもー、結局マメが一番❗』と云う全員の唱和で終わってたっけ…。話が終盤になると、誰かが『何だかんだ言ってもー』と言えば、あとの句を皆が唱和して、しゃんしゃんでお開きになるのだ。
この時代の皆の悩みごとの大半は恋愛で、今にして思えば、とってもピュアだった。青春だったなあ…。
老いも若きも世の男性諸君❗恋愛の極意は、マメでっせ❗これに尽きます。今も昔も、モテる男は女の子の背中の痒い所に手が届くようなマメ男なのだ。自分は性格上、そういうの無理だけどさ。

 
【学名】Catocala duplicata (Butler,1885)

ネットで「duplicata 語源」で検索すると、ズラリと英語の「duplicate」の意味が出てきた。

①同一物の)2通の一つ[控え]、副本
②写し、複製、複写、複製物
③重複の、二重の、一双の
④まったく同じ、うりふたつの

ようするにコピーと云うワケである。だから、偽物、紛い物、贋作なんて意味もあるようだ。自分だってマメキシタバにぞんざいな扱いをしといて何だが、偽物とか紛い物ってのは酷いやね。もし語源がそっちなら、気の毒なくらいに不当に低い扱いだ。同情を禁じえないよ。
平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』を紐とくと、タテハチョウ科イチモンジチョウ属のナガサキイチモンジの亜種に Ladoga helmanni duplicata と云うのがいた。それに拠ると、duplicata(ドゥプリカータ) はラテン語由来で duplicataus の女性形とある。意味は「2倍の、重複した」となっていた。
2倍はまだしも、学名に重複したって意味が込められているとしたら、やっぱりネガティブなネーミングだよね。マメキシタバって不憫なカトカラだなあ…。

それは置いといて、ナゼにこのような学名がつけられたのだろう❓全然想像がつかないや。
そもそも2倍ってのがわからない。2分の1ならまだしも、チビッコなくせに2倍って何でやねん❓まさか哲学的なメタファーが込められているワケでもあるまいに。謎だよ。
もしかして他にシャム双生児みたくソックリな奴がいて、そいつと比べての命名❓
ならばと『世界のカトカラ』で探してみると、モンゴルヒメキシタバ Catocala proxeneta と云う、ちょっと似ているのが見つかった。しかも、ページこそ違えど、同じグループに入れられている。
しかし、記載年を確認したら、マメキシタバよりも後の記載になっている。となると、ブー。推察には当てはまらない。マジ、謎だよ(;・ω・)
考えても、他に考えうる理由がてんで思い浮かばない。
(ノ-_-)ノ~┻━┻ や~めた。スマンがマメキシタバの事なんぞ、どうだっていい。本音を言ってしまえば、全然興味ないのだ。

余談だが、ナガサキイチモンジについて少し書いておこう。
察しのいい方ならばナガサキイチモンジと云う和名からピンとくるかもしれないが、このチョウ、実をいうと日本の長崎で採られている。過去に Leechによる古い採集記録があるのだ。しかし、それが本邦における唯一の採集記録である。謂わば、幻のチョウなのだ。
かなり謎の記録だが、妥当に考えれば、おそらく迷蝶だろう。なぜなら亜種 duplicata の分布はアムール、ウスリー、北東中国、韓国とあるからだ。風に乗って飛んで来る可能性は有り得る。
ところで、今でもその標本って存在するのかなあ❓意外と同定間違いだったりしてね。もしくは日本での採集品の中に韓国や中国のものが混入してしまったなんて事だって無きにしもあらずだ。
因みにナガサキイチモンジは現在は属名が変わっいるようで、Limenitis helmanni という新しい学名になっている。

 
【開張(mm)】
46~48㎜。
小さい。それゆえなのか、どっか有り難みがないんだろねぇ。人気も今イチだ。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬、朝鮮半島、中国。

分布は広いが、産地はやや局所的であるとされている。でも、自分の中では普通種と云うイメージがある。けれど、2年目の経験も加えると、どこにでもいるというワケではなさそうだ。生息する場所では比較的多産する印象があるが、全く見ない場所や個体数の少ないところも結構ある。
そういえば意外だったが、九州などの暖地では少ない種らしい。カトカラは西日本寄りの分布のものと東日本寄りに分布するものがいるから、西日本寄りのものは九州には沢山いるかと思いきや、そうでもないんだね。そういえば実際、沖縄などの南西諸島にはアマミキシタバくらいしかいないもんね。カトカラは南方系ではないと云うことだ。かといって北海道には産しないカトカラもいるから、元々寒冷地の蛾とも言い切れないところがある。意外と温帯を好む狭適応型の蛾なのかもしれない。テキトーに言ってるけど(笑)。

 
【成虫出現期】
近畿地方では6月中下旬頃から現れ、生き残りは10月中旬頃まで見られる。最盛期は7月上旬から半ばといったところかな。

 
【生態】
クヌギ、コナラを主体とした低山地の二次林を好む。
垂直分布の限界はミズナラ帯に準ずるものと思われる。おそらく標高1200~1500m辺りだろう。
灯火にも樹液にもよく集まり、糖蜜トラップにもよく反応する。樹液への飛来時刻は早く、日没後、真っ先にやって来る種の一つだろう。吸汁時は他のカトカラのように下翅を開かないとされるが、そうでもない印象がある。確かに開かない個体は多いが、開く個体もそこそこ見てる。吸汁が終わると、近くの木に止まっていることが多い。これはその日のうちに再び樹液に訪れる為だからと思われる。他のカトカラも同じ習性を持つものは多い。樹液が出ている木を見つけたら、その木だけではなく、周囲の木も探査しといて損はない。

昼間は頭を下向きにして樹幹などに静止している。
結構敏感で、近づくと素早く反応して飛び立ち、意外と採れない。着地時は上向きに止まり、数十秒以内に下向きになるという。夜間は他のカトカラと同じく上向きに止まっている。

因みに、石塚勝己さんは『世界のカトカラ』で、見た目が全然違うエゾシロシタバと近縁関係であることを示唆しておられる。西尾氏も『日本のCatocala』の中で、両者の幼虫の見てくれと生態が酷似していることを報告されているから、見た目以上に近い間柄なのかもしれない。
反対に他人の空似なんて事もあるから興味深い。ただキシタバ(C.patala)とコガタキシタバなんぞは見た目がかなり似ているし、幼虫の食樹も重なるから、近い関係にあるかと思いきや、系統的にはかなり離れているらしい。生き物って面白いやね。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のクヌギ、コナラ、アベマキ、ナラガシワ、ミズナラ、アラカシが知られている。
食樹はどこにでもあるようなものだが、それと呼応してどこにでもいるワケではないので、やや不思議な感がある。
西尾氏の言によると、幼虫は樹齢10~30年の木を好むそうだから、その幼虫の嗜好性が分布と何らかの関わりがあるのかもしれない。また、その著書によると、アラカシ食いの個体群は上翅が暗化する傾向があるそうだ。

とここまで書いて、クロージングの仕方がワカンなくなった。
思い入れがないから、いつもみたいにカッコつけのモノローグで終わるワケにもいかんしなあ…。 
と云うワケで、このままグダグタで終わります。

 
                    おしまい

 
追伸

文中と小タイトルに「侏儒」と云う言葉が出てくるが、タイトルをつける時に浮かんだのが、芥川龍之介の箴言集『侏儒の言葉』と半村良の壮大な伝奇ロマン小説『妖星伝』だ。どちらも中学生の頃に読んだ小説だから、あんまし中身は覚えてないけれど、『妖星伝』はワクワクした記憶がある。地下世界で小人どもが暗躍、蠢くのだ。そういえば半村良には『侏儒の黄金宮』と云う作品もあった筈だ。読んでないけど。
因みに侏儒の意味だが、体の小さい人、小人とされる。また知識のない人の蔑称でもあるようだ。本タイトルとは関係ないけどさ。マメちゃんのことは蔑視しがちだけど、そういう意味をタイトルに込めたワケではない。
補足しておくと、箴言とは戒めの言葉。教訓の意味をもつ短い言葉。格言である。これまたタイトルとリンクしているワケではないので、あしからず。

追伸の追伸
Facebookに記事のリンクをあげたところ、カトカラ研究の第一人者である石塚勝己さんから以下のような御指摘があった。そのやり取りを記しておきます。

(石塚さん)
ブログの「去年、最初に展翅した・・・」て、コガタキシタバのように見えますが?
帯の形ですよねぇ…。

(ワシ)
でも胴体が細いし、小さかったのでマメかなと…。(ここでは書き忘れたが、帯が細くて黄色い領域も広い)

(石塚さん)
前翅亜基線の形状はマメではなくコガタのように見えますし、基部はマメより黒く見えます。後翅中央黒帯の形状もマメよりコガタに似ていますよね。
大分擦れている個体ですが、頭部から肩部の毛の色、こげ茶に見えるので、コダタではないかと思います。

こんなボロい個体でも見抜くなんて流石である。
プロはやっぱ凄いや。そう思っただすよ。
石塚さん、有り難う御座いました。

 

水茄子を愛する男

 
10月に入って、遂にスーパーの漬物売場から水茄子が姿を消した。ちょっぴり残念だ。

それにしても今年はよく水茄子を食った。
春先の三月からコンスタントに水茄子を食い続けていた。水茄子といえば夏のイメージが強いが、意外にも春先にはもう姿を見せ始めるのである。人気があるゆえ、最近はハウス栽培とかも増えているのかもしれない。

 

 
水茄子は関西ではポピュラーな存在ではあるが、全国的にはまだまだあまり知られていないとも思われるので、一応解説しておこう。

 
【泉州水茄子】
(出展『川崎農園』)

 
主に大阪府南部の泉州地域で栽培されており、形は普通の茄子よりも丸みを帯びる。果肉に多くの水分を含む事から、この名がある。
やったことあるけど、手で、うりゃ(#`皿´)と搾ると、驚くほど大量の水が出てくる。農家の人は、喉が渇いたら時々水がわりに搾って飲むらしい。高級🍆ナスだから、最近はやる人あまりいないと思うけど。

糠漬けや浅漬けで食べられることが多いが、生でも食べられている。
本来、茄子はアクが強くて生食には向かない野菜であるが、水茄子はアクが少なくて水分を多量に含んでいる。ゆえに生食も可能なようだ。
生で食べると、ほのかな甘みと爽やかな香りがある。シャリシャリ感もそれなりにあって、ちょっと青リンゴっぽい。実際、その特徴からか、江戸時代には果物扱いされていた時期もあったようだ。
なぜにそんなに水分が多いのかというと、主な栽培地である泉佐野市や貝塚市は水はけがよく、海が近いために地下水にも塩分が混じる。加えて温暖な気候ゆえ、蒸発していく水分を補うために大量の水分を貯め込むようになったものと考えられている。

これは知らなかったが、水茄子にも多くの品種があり、泉州地域でも地区によって栽培品種が異なるようだ。
例えば大阪府貝塚市の「幻の水茄子」と呼ばれ、めったに市場に出回る事のない「馬場なす」、同じく貝塚市の水茄子の原種とされる「澤なす」などがある。

 
取り敢えず、今年食べた水茄子を並べていこう。

 

 
上が浅漬け。下が糠漬けである。
夏らしいガラスの器を使おう使おうと思って、結局使ったのは9月も半ばだった。面倒くさがり屋の性格がモロに出とるがな。

浅漬けの方がフレッシュ感があって、生に近い風味がある。一方、糠漬けはそれと比べて味が濃い傾向にある。どちらが好きかと問われたら、答えに苦しむ。どちらも好きだからだ。
但し、より水茄子らしさを味わいたくば、浅漬けかなあ…。

 

 
基本は、何もつけない。
それが一番美味しいと思うからだ。

 

 
こう云う風に手で裂くのが正しいとされる。
けど、食感こそ微妙には違うものの、云うほど味がメチャンコ変わるワケではないと思う。
でも、コレという良い水茄子が手に入った時は、間違いなく包丁で少し切れ目を入れてから裂くけどね。

 

 
これも当然のこと水茄子かと思いきや、絹かわ茄子という別物だった。

 

 
ウィキペディアによると、絹かわ茄子とは愛媛県の西条地区だけで古くから自家消費用として栽培されてきた在来品種で、明治時代には既に栽培が行われていたという記録が残っているそうである。この地域特有の「うちぬき」と呼ばれる湧水を使った栽培によりふっくらと瑞々しくアクが少ないナスなんだそうな。
水茄子にも、最近はこの系統の茄子の血が入ってきてるという。

食ったら、味も殆んど同じだった。

 

 
お約束だし、見た目もあって生姜は一応添えるが、味を邪魔するから個人的には要らないと思う。
とはいえ、生姜が合わないと言っているワケではない。それはそれで旨いのだ。水茄子そのものを楽しむには邪魔だと言ってるだけだかんね。

 

 
気分で、たま~に鰹節なんぞも添える。
鰹節をかけて不味くなることはない。しかし、個性が強過ぎて水茄子の良さが失われがちだ。

 

 
糠漬けだね。上は醤油をかけてみた。気分で、たま~にかける。
これも不味くなるワケがない。しかし、かけ過ぎると、これまた水茄子の個性が消える。

 

 
夏の最盛期になると、糠漬けも色んなメーカーのものが並ぶ。特にどこというのは決めてない。しかし、上のメーカーが一番数が並んでいるので、自然、口にする機会も多い。
糠は捨てずに、適当に野菜を入れて一回だけ糠漬けをつくる。

 

 
この時は人参だったようだね。手でパリポリやってたら、あっという間に無くなったことを思い出したよ。

 

 
あれぇー❓
思ってた程には画像が残ってないぞー。もっと食ってる筈なのになあ。
暫し考えてから、答えに思い至る。ようするに写真を撮ってないんである。だって、いくら撮ってもビジュアル的というか、絵的に一緒。さして変わらんのである。何の面白味もない。

来年は、もっとアグレッシブな盛り付けにしてやろっと。全然思いつかないから自信ないけど。

 
                    おしまい

  
追伸
画像を消したいがゆえの、愛する男シリーズである。
ても、思ったほど消せんかった。

 
 

続・カバフキシタバ(後編)

 

『リビドー全開❗逆襲のモラセス』後編

  
2019年 7月4日。

当初は奈良にリベンジしに行く予定だったが、急遽方針を転換して六甲へ。
勘ではあるが、天気予報も含めて考えた結果だ。
予定は未定であって、しばしば変更。虫採りは常にフレキシブルでなくてはならない。特に天候に関してはビビットであるべきだと思う。

今日は下見の時とは違う別ルートを探すも、やっぱり幼虫の食樹であるカマツカの木は見つけられなかった。近くにカバフの記録はあるが、ホンマに此処におるんかいのお❓ このままの流れだと、再び辛酸ナメ子さんになりかねない。見えないけど、恐怖を好物とする性格の悪い小人くんたちが、傍らでクスクス笑いをしてそうだ。テメエら(=`ェ´=)、人の人生に悪さすんじゃねえぞ。

夜がやってきた。
暗い山道を黙々と登る。夜になってもクソ暑い。瞬く間にTシャツが汗でビッチャビチャになる。

午後7時半。
ようやく樹液ポイントに到着した。さあ、今日こそカバフを手ゴメにしてやろう。

が、(◎-◎;)ゲロゲロー。
あろうことか、半月程前にあれほどカトカラが乱舞していたコナラの木の樹液が止まっていた。
(・_・)……。見事なまでに何もいない。嘘でしょ❗❓
三連敗という現実が目の前にグッと迫ってくる。

暫く様子を見てみたが、やっぱ何も飛んで来ーん。
( ̄ロ ̄lll)まさかである。これってさあ、世間的に言うところの、見事に思惑が外れるってヤツだよね…。惨敗の予感は益々濃厚となる。
だが、備え有れば愁いなし。昼間、用心のために別な場所で新たな樹液ポイントを見つけておいた。オデ、だいたいアホだけど、たま~に賢いのである。
僅かな期待を抱き締めて、そちらへと移動する。

Σ(◎-◎;)アキャア━━━。マジかよ❗❓
けんど、糖蜜を吹き掛けるための霧吹きが一回使用しただけで、早々と詰まった。やること為(な)すこと上手くいかない。再び暗雲が垂れ込める。惨敗の予感、ダダ黒モジャモジャだ。

コシュコシュ、コシュコシュ。コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュ、コシュー…、(ノ-_-)ノ~┻━┻ ダアーッ❗何度やっても霧吹きから何も出てこん(#`皿´)❗
気が短い男ゆえ、ダンダンダーン(*`Д´)ノ❗、思わず破壊の衝動に駆られる。
(; ̄ー ̄A 落ち着け~、(; ̄ー ̄A 落ち着け~、俺。

🎵( ̄ー ̄)落ち着いたあ~、お~れ~。
と云うワケで、わりかし簡単に冷静になったワタクシは、一旦アタマの部分を取り外し(ワシの頭やないでぇ~、霧吹きでっせー)、管も抜いてお茶をブッかけてみた。
でもって、Ψ( ̄∇ ̄)Ψこちょこちょ~、Ψ( ̄∇ ̄)Ψこちょこちょ~。魔法の愛撫をしてやる。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψええんか、Ψ( ̄∇ ̄)Ψええんかあ~。

装着しなおして、再度シュコシュコやってみる。
暫くやってたら、ピュッ💦と出た。
❤あっはあ~ん。💕うっふ~ん。とれびあ~ん。
<(`^´)>ふっか~つ❗❗オイラ、🎵\(^o^)/てくにしゃあ~ん。
ぬははははΨ( ̄∇ ̄)Ψ、エロ男の超絶テクニックをナメんなよである。リビドー全開だぜ❗
これで思う存分、ブッカケてやれる。その辺の木を、まみれまみれのヌチョヌチョのネチャネチャにしまくってやらあ。男のリビドー、💥爆発じゃーい❗

だが寄ってくるのは糞キシタバのパタラ(C. patala)とチョコチョコ歩き回る糞ヤガのみ。この歩き回るところが💢癇(かん)に障る。イラッときて、石を投げつけたくなる。
名前はたぶんカラスヨトウって奴だ。ヨトウというのは漢字で書くと「夜盗」らしい。だから泥棒みたく歩き回るのか?、(=`ェ´=)小癪なっ。もしも携帯用殺人レーザービームとかがあったら、1匹1匹ピンポイントで八つ裂きにしてくれるのに(-_-)
人間、焦りが募ると心が荒れてくる。きっと闇の中の今の顔は、焦燥がベットリと貼り付いた醜い顔になっているに違いない。

午後8時26分。
樹液に何やら他とは違うカトカラが飛来していた。
でも結構高い位置だし、角度的にも真横に近くてよく見えない。おまけに手前の葉っぱが邪魔で下側が見えづらい。下翅を僅かに開いていそうだが、それも確認できない。持ってる懐中電灯が100均で買ったモノだから、光量が弱いというのも相俟って(註1)、兎に角よくワッカラーン。
でも消去法でいくと、マメキシタバにしては大きいし、パタラにしては小さい。アサマキシタバやフシキキシタバは季節的にもう終わっているし、ウスイロキシタバもそうだろう。ワモンキシタバも関西では終わりかけの時期だ。見たところ鮮度は良さそうだから、コヤツらも除外していいだろう。反対にアミメキシタバやクロシオキシタバには時期的にまだ早い。となると、残るはカバフキシタバとコガタキシタバしかいない。大きさ的にもそれくらいだ。でもコガタキシタバは最近ちょくちょく見ているから、雰囲気的に違うような気がする。ということはカバフ❓だよね❓
けど、そもそもカトカラじゃないと云う可能性もあるなあ…。上翅の見た目は似てるけど、下翅に色鮮やかさが無い糞ヤガの一種かもしれない。ヤガ科全般の知識がないから、それも充分有り得る。採ってはみたものの、下翅がドドメま○こ色でしたーという残念なパターンは往々にしてある事なのだ。

まあここでグダグダ考えていても埒が開かない。
取り敢えず採ってみっか。4m竿をするすると伸ばす。
それなりに緊張感はあるものの、それは通常のもので、過度な緊張感は無い。どうせ糞ヤガだろうという気持ちが心のどこかに有るからだ。きっと連敗で打ちひしがれていて、マイナス思考になっているのだ。糠喜びで、更なる落ち込み簾(すだれ)男になるのは避けたいという深層心理が無意識に働いてるんだろね。

高さを慎重に合わせて、💥叩く。
飛んで逃げた形跡はないから、たぶん網に入った筈だ。竿をすぼめて、中を覗く。

あらま(@ ̄□ ̄@;)❗、カバフやんかあ。
急に緊張感が高まる。今度は何があっても逃すワケにはいかない。もし又やらかしたら、その場で首カッ切って息絶えねばならぬ。慎重に慎重を期して、毒ビンに取り込んだ。

 

 
とはいえ、思っていた程の高揚感はない。何か拍子抜けした感じだ。奈良と京都の惨敗があったから、次の出会いはもっとドラマチックな展開を想像してたからだろう。背水の陣での戦いを覚悟していたのだ。それがまさかのシチュエーション曖昧の棚ボタ的だったから、どこかガッカリ感は否めない。虫採りにロマンとドラマ性を求める者としては、肩スカシを喰らったような気分だ。
それに背中の毛が落武者禿げチョロケになっているのに、途中で気づいちゃったと云うのもあるかもしれない。憧れていた美人さんが実をいうと円形脱毛症だった…。なんて事は万に一つも無いことだろうから、喩えとしては無理があるとは思うけど、そんな感じだ。

 

 

 
そんなに暴れてなかったし、取り込みも早かったのになあ…。何でやのん…❓

でも1頭いるということは複数いる可能性が高い。気を取り直して、糖蜜を集中的に撒いた場所へと移る。

(@ ̄□ ̄@;)あっ❗こっちにもおった。
今度は糖蜜トラップに来てるから、目の高さだ。
楽勝じゃん。テンション⤴上がるうーっ(о´∀`о)
しかし、ネットを構えかけてやめた。この高さだと毒ビンを直接かぶせる事ができる。ならば暴れる時間も短い。さすれば落武者化も防げる可能性が高い。そう踏んだのさ。

ヘッドライト、スイッチ・オーン。
準備万端。毒ビンを持ち、そっと近づく。
幸い、夢中で甘汁を吸っている。油断しているスキに背後からガバッじゃ❗でもって、カクカクカクカク…、手ゴメにしたるぅー(=`ェ´=)

だが、カブしたが紙一重。すんでのところで飛んだ❗
あちゃーΣ(×_×;)、また失敗かよう。俺、この毒ビンを被せるやり方って苦手なんだよネー。いつも、すんでのところで逃げられる。慣れてないから、下手に緊張感とか殺気が出ちゃうんだろなあ。蝶を手で採るのは得意なのになあ…。心を無にするには、対象に対して、それなりの経験値が必要だ。蝶には慣れていても、カトカラに対しての慣れはない。もう少し時間が必要そうだ。

逃したが、飛び方はパタパタ飛びだから目で追える。懐中電灯を拾って、あとを追う。
普段、カトカラはビュンビュン飛びで、かなり飛翔速度が高い。夜空を飛んでいる時などはスズメガの仲間かと見紛うばかりだ。しかし、なぜか樹液や花に飛来する時や、そこを飛び去る時はパタパタ飛びで遅い。ホバリングや方向転換が下手で、なんか鈍クサイ飛び方なのだ。急発進できないというか、トップスピードになるのに時間がかかり、急にスピードを落とす事も出来ないのだろう。
原因は体が重いのかな?とも思ったが、それほど特別に胴体がデカイわけではないのにナゼ❓胴体はスズメガの仲間とさして変わらんぞ。いや、寧ろスズメガよか細いくらいだ。はて…、何でやろ❓
もしかしたら、翅の形と厚さが関係しているのかも…。種類にもよるが、スズメガの方が上翅がより横に長くて、下翅がコンパクトだ。翅も分厚い。その辺に答えがあるのかもしれない。

目で追っていると、10mほど飛んで木の幹に止まった。
今度もわりと低い位置だ。毒ビンを被せる事も出来よう。しかし、位置をシッカリと確認してから網を取りに戻る。毒ビンで採る自信が無かったのだ。今度またハズせば、せっかく気分が乗りかけてたのに再び暗黒ビチャグチョの精神世界に沈みかねない。もうこれ以上、カタルシスが無い日々が続くのは辛いのだ。虫は採れてこそ、面白い。

幹を💥ブッ叩き、なんなくゲット。
しかし、又もや禿げチョロケ。まあ、いいや。採れないよかマシだろ。仕方なく、裏面写真を撮ることにする。

 

 
カバフは、裏も微妙にいいねぇ。
それを三角紙におさめてる時に、またカバフが糖蜜に飛んで来るのが視界に入った。

 

 
今度は、もっとハゲ~(ToT)
これは裏展翅ゆきだろなあ…。

その後も立て続けに飛んできた。
カトカラ国内No.1の稀種であるカバフキシタバを怒濤の20分間で3♂1♀ゲット❗❗
相変わらず無傷の背中フサフサさんは採れてないが、気分は悪かない。カバフの1日最高ゲット数のレコードをも射程内なんじゃないの~(^o^)v

と思ったけど、それでピタッと止まった。その後、11時前くらいまで粘るも飛来なし。
まあ、一日で複数採るのも難しいとされる稀種がこれだけ採れれば、いいだろ。
ところで、1日最高ゲット数っていくつなのだ❓ 最高ゲット数のレコードも射程内とか言っといて、知らんのだ。所詮は何も考えとらんテキトー男の、テキトー発言なのだ(笑)

 
一応、展翅画像も貼付しておこう。

 
【カバフキシタバ ♂】

 
無惨なハゲ度合いだが、カバフは美しい。
カバフキシタバの特徴と云えば、その特異な上翅のデザインだが、下翅も個性的だ。他のキシタバ類に比して下翅が明るい黄色で、しかもその領域が広い。珍しくて個性的で、しかも美しいとあらば、特別な存在とされるのも理解できる。

 
【カバフキシタバ ♀】

 
何か黄色の色が違うような気がするので、撮り直す。

 

 
( ̄~ ̄;)ん~っ、今イチ再現できてないが、まっいっか…。
 
雌雄の見分け方は、♀の方が♂よりも大きく、翅は全体的に丸みがある。また♀は腹部が太くて短く、先っちょの毛束の量も少ない。

 

 
裏展翅もした。
でも酷い写真だな。

 
【裏面】

 
裏面は他のキシタバ類と比べて劇的に違うワケではない。全体的に黄色みが強くて白っぽいところがあまりなく、領域も広い印象がある。但し、一つ一つ仔細に見たワケではない。同定するにあたって、裏を見る必要性がないし、特異とまで言える程の斬新性はないからである。

 
7月5日。

そこそこ満足したとはいえ、やはり落武者ハゲちょろけじゃない完品が欲しい。
と云うワケで、翌日も六甲に出掛けた。

午後8時17分。
最初の1頭が糖蜜に飛んできた。
その後、立て続けに4頭飛来。何れも糖蜜に寄ってきた。京都で採った最初の1頭も飛んできたのは8時半くらいだったし、どうやらカバフは日没直後には飛んで来ないようだ。基本的には8時を過ぎないと現れないと思われる(註2)。

15分程で一旦飛来が止まり、午後9時過ぎに1頭追加。その後、午後9時50分に1頭、10時15分に1頭が飛来して終了。

 


 

 
Ψ( ̄∇ ̄)Ψふはははは…、糖蜜、樹液に完勝❗
周囲には樹液が出ている木が計3本あるが、今日は樹液には1頭も来ず、7頭全てが糖蜜に寄ってきた。オラの作ったモラセス(糖蜜)ってスゴくねっ❓

レシピはテキトー&且つ複雑過ぎて正確なところは、教えたくともお教えできない。だから、たぶん二度と同じものは作れないだろう。
ベースはカルピス➕麦焼酎。そこに酸味として酢を足し、バヤリースオレンジジュースを加えた。しかし、今一つ匂わない。そこに飲み残しのビールを足したが、やっぱ今一つ。もうヤケクソでバナナを皮ごとグジャグジャにして入れてみた。焼酎も増量。これで香りにエッジが立った。イガちゃんスペシャルモラセスの誕生である。
もし真似するなら、ちゃんと濾してから使いましょうね。ワシみたいにエエ加減に作ると、霧吹きが詰まりもうすぞ。

流石に7頭も採れば、落武者じゃないのも採れる。

 

 
仔細に見たら、ナゼにこんなにも禿げチョロケになるのかが、概(おおむ)ね解ってきた。どうやらカバフちゃんの背中の真ん中の毛が元々薄いようなんである。毛が短くて、他と比べてフサフサ度が低いと思うんだよね。だから、すぐ円形脱毛症みたくなるんじゃないのかなあ…。

比較のために、参考として他のキシタバの画像を貼付しておきませう。

 

 
上がアサマキシタバ、下がコガタキシタバである。
毛が長いのが、お解り戴けるかと思う。
たぶん、普通のキシタバやフシキキシタバなんかも長い方だと思われる。
反対に短いタイプは他にもいるかもしれない。ムラサキシタバなんかも禿げちょろけ易いので、短いのかもなあ…。沢山採ったワケではないので、全然言い切れませんけど…。
或いは毛が長いタイプと短いタイプの2系統に分かれるとかないんだろうか❓
でも書いてて、段々自信が無くなってきた。所詮は印象で言っているだけの事で、数多くの個体を検証したワケではない。それに野外品ではジャッジメントの線引きが難しい。検証には不向きだ。こう云うのは、厳密的には各種を飼育、羽化させて比較してこそ、検証可能なものだろう。だから、この件に関しては半分以上は戯れ言として聞き流して戴けると有り難い。
但し、カバフに関してだけは、そこそこ当てはまってると思うんだけどなあ…。

今回も、展翅した画像を貼っておきます。
但し、便宜的に適当に選んだ写真なので、採集日は違うかもしれないです。

 

 
この時期は触角を自然な感じにするのが、マイ・トレンドだったんだろうなあ…。来年は真っ直ぐにしよっと。

 
7月6日

今日こそ、奈良でカバフをシバく予定だった。
しかし天気予報を見ると、生憎(あいにく)そっち方面の天気は思わしくない。どうやら、にわか雨があるようなのだ。雨はヨロシクない。網が濡れて、取り込む時に翅の鱗粉が剥がれてしまい、ボロ化しやすいのだ。当然、背中の毛も禿げ易いだろう。
それで急遽、昨日、一昨日のポイントにチェンジした。まさかの三連続出勤である。
また、7頭のうちの2頭は♀だと思ったのに、全部♂だったというのもある。これでは10♂1♀じゃないか。蝶や蛾は基本的に同柄ならば、♀の方が圧倒的に魅力があるのだ。♀、ぽちぃ~。

カバフは8時を過ぎないと飛来しないことが解ってきたので、今日は出発を30分ほど遅らせた。
今日もまた、エッチらオイラ…、じゃなくてエッチラオッチラと駅から長い坂道を歩く。

午後7時半、ポイントへと向かう入口に到着。
でも三日目ともなれば落ち着いたもんだ。念入りに全身に虫避けスプレーを散布して、毒瓶二つを両ポケットに捩じ込む。ヘッドライトを装着後、左手に捕虫網と懐中電灯、右手には糖蜜入りの霧吹きを持って夜の山へと入る。

寄って来たがる木にも好みがあるようで、昨日、一昨日を踏まえて、実績のある木を中心に8ヶ所に糖蜜を吹き付けた。辺りに、甘い香りが立ち込める。

2日間で11頭得ているので、気持ちは楽だ。
しかし、不安が全くないワケではない。虫採りに油断は禁物。常に予断は許せぬものなのだ。2日間でそこそこの数を得たからといって、翌日にまた同じように採れるという保証はどこにも無いのである。条件は変わらないのに、なぜだか1頭も採れない、姿さえ見ないということは往々にしてある事なのだ。況(ま)してや珍品で、個体数が少ないと言われているカバフキシタバである。この2日間で採り尽くした可能性も無いワケじゃない。
でも、♀は一つしか採れてないから、これからは♀の時期になってゆく可能性も無きにしも非ずとも考えられる。まだチャンスはある筈だ。

夕焼け空が次第に色を失い、群青色からやがて漆黒の闇へと移りゆく様は、いつ見ても飽きない。このカトカラを待つあいだの時間は、毎回特別な時の流れの中にあると思う。美しい風景と期待や不安が混じった感情が、不思議な感覚を一時(いっとき)与えてくれるのだ。マジックアワーとでも呼びたくなる素敵な時間だ。
少しニュアンスは違うが、これは昼間の蝶採りの時でも基本は同じだ。中学生がデート相手の女の子を待つみたいな気分なのだ。そこには期待と不安、ワクワクとドキドキ、胸を締め付けるようなものがある。
大人になると、そんな心持ちになれる事は滅多に無くなる。この歳になっても、そのワクワクを味わえるのは幸せなことだ。だから、蝶採りにハマったのかもしれない。
但し、待ち人きたらずで、心がズタズタになる事も多いんだけどね。

午後8時過ぎ。
早くも樹液に来ているカバフを発見。今日は飛来が早い。
でも矮小個体の♂だ。驚いたことにマメキシタバくらいしかない。思わず、二度見したよ。
カバフって、大小の個体差が大きい種なのかもしれないないと思う(註3)。

しかし、あとが続かない。
どうやらフライング個体だったようだ。まさか、これでおしまいってワケじゃないよね❓不安が擦過する。

8時22分。糖蜜トラップに漸く1頭が飛来。
この8時半前後が、カバフのゴールデンタイムの口火の時間なのだろう。

昨日、編み出した下コツッの採集方法で、難なくゲット。
そこから怒濤のラッシュが始まった。
9時前まで間断なく糖蜜トラップにやって来て、休む暇も無かった。あっという間に10頭をゲット。
その後も時折飛んできて、そこからあとは数を数えるのも面倒くさくなって、いくつ採ったかわからなくなった。
しかも、最初の矮小個体1頭以外は全部我がスペシャル糖蜜に来たものだ。ほぼ完勝と言っていいだろう。この三日間を合わせれば、モラセス(糖蜜)の圧倒的勝利だ。
ふははははΨ( ̄∇ ̄)Ψ、モラセスの逆襲だぜ❗

 

 
生息地は局所的で個体数も少ないと言われるカバフキシタバを、この日は結局17頭も採ってしまった。
1日で17頭って、それこそレコードじゃねえの❓(註4)

前の2日間も合わせると計28頭だ。
カバフって、ホンマに珍品かいな(;・ω・)❓

 

 
 
7月7日。

カバフをタコ採りしてやったので、溜飲も下がった事だし、この日はお休みにする予定だった。
しかし昨日、調子に乗って小太郎くんに自慢メールを送ってしまった。

小太郎くんは20代後半の若者で、基本的には蝶屋だが、虫全般について詳しい。驚くほど何だって知っているのだ。若いけど、かなりレベルの高いオールラウンダーだ。ゆえに、結構バカにされている(笑)。でも虫歴は向こうの方が長いし、レベルも高いから仕方がないのだ。それにカトカラの最初の先生だしさ。
彼は蛾にもそこそこ詳しくって、カトカラの事も基本的な事はだいたい知っている。最初にカトカラに興味を持ったのも、彼に影響されたところが大きい。中でもカバフの美しさと珍しさについての熱弁は印象に残っている。彼は基本的にカトカラは採らないし、採っても誰かに進呈するみたいだけど、カバフだけは別格らしい。アレだけは、人にはあげないと言ってた。
その彼から案内して下さいと言われて断るワケにはいかない。そう云うワケで、御案内申しあげた。まさか、まさかの四連チャンである。

今宵も我がモラセスは鬼のごたる効力を発揮した。
小太郎くんも、その効果を素直に認めたくらいである。ただし、この日は樹液に飛んできたヤツもそれなりにいた。

この日もそこそこの数が飛んできたが、正確な数はわからない。おそらく10頭ちょっとは飛んできたのではないだろうか❓前半は小太郎くんの採集と撮影のサポートをしていたので、正確な数を把握していなかったのである。

 

(写真提供 小太郎くん)

 
小太郎くんが満足したところで、最後に自分も幾つか採ったと思うけど、数は定かではない。それさえもあんまり憶えてないのだ。たぶん、急速にカバフに対して興味を失っていたのだろう。

カバフキシタバは稀種と言われてるけど、それに対しての疑問を明確に自覚したのは、この日からではないかと思う。本当はそれほど珍品ではなくて、意外と何処にでもいるんではないかと思ったのだ。それと同時に、食樹に対しての疑念も芽生えた。自分の目が節穴という可能性もあるが、随分と注意してカマツカの大木を探したつもりだが、結局1本も見つけられなかった。にも拘わらず、こんなにも成虫が採れたのである。
カバフの幼虫はカマツカの大木を好むと言われ、それが個体数の少なさの原因だと推測されてきた。けど、こんだけ採れりゃあ、別に大木じゃなくても発生するんじゃないかと疑ったのである。大木を意識するあまり、小さな木を見逃していた可能性はある。
また、こうも考えた。或いは此処ではカマツカ以外の植物も食樹として利用していて、見つからないのは、そのせいではないかと。
しかし、これはあくまでも推測に過ぎない。大ハズレの可能性もあるからね。

 
7月10日。

漸く奈良のカバフにリベンジする日がやって来た。
カバフに対するモチベーションは、かなり下がっているけど、奈良で享けた仇は奈良で返す❗やられたら、やり返す。それが人生のモットーだからだ。負けたままでは終われない性格なのだ。
とはいえ、返り討ちにされないとも限らない。勝つパーセンテージは少しでも上げておくべきだ。早めに行って、新たに樹液が出ている木を探しておいた。

この日は、家が近い小太郎くんにも声をかけておいた。日没後に合流する。
そこで、あのカトカラのニュー、マホロバキシタバ(註5)と出会ったのである。アミメキシタバともクロシオキシタバとも違う何じゃこりゃ❓のそれで、その日はカバフどころではなくなった。リベンジする事すら、頭から消えていたのである。

 
7月某日。

マホロバの発見で、蛾界の一部が騒然となった。
完全にカバフどころではなくなって、マホロバの分布調査にいそしむ事となる。
でも心の奥底では、通っているうちにそのうち何とかなるだろうと思っていた。それがこの日だった。

樹液の出ている木のそば、別な木に翅を閉じて静止していた。
でも、リベンジという意識はあまりなくて、『あっ、カバフおるやんか。』と云う感じで、さしたる興奮はなかった。特別緊張も無いから、なんなくゲット。

 

 
でも落武者になっとるー( ̄∇ ̄*)ゞ。
せやけどワシのせいちゃいまっせ。最初からやった。やっぱ、カバフは驚く程すぐ禿げチョロけるのねー。

時間は正確には憶えてないけど、たぶん8時は絶対過ぎていたと思う。
因みに、結局この周辺では糖蜜に飛来したものはゼロだった。もっとも、樹液がバンバン出ていたので、あんまり真面目に糖蜜採集やってなかったけどさ。

ここまで書いて、はたと気づいた。
7月某日だなんて、何で日付がハッキリわからんねやろ?と。
それで、上の展翅写真のデータを見直した。すると、何と日付が7月11日となっていた。と云うことはマホロバを見つけた日、つまりリベンジ初日の7月10日に、ちゃんとカバフを採っていたと云うことになる。Facebookに上げた記事もマホロバの記事を最初にあげた翌日(12日)の昼間になっている。12日は、小太郎くんが用事があるとかで、一人で訪れている。となると、10日に採っている可能性が極めて高い。

慌てて小太郎くんに電話して確認を取ったら、「その日かその前かはどうかは微妙ですけど、マホロバを採る前だったと思いますよ。」と云う答えが返ってきた。このカバフを採った時には、小太郎くんも一緒にいたのだ。
7月7日に彼と一緒にカバフを採りに行ってから、何処にも行ってない筈だ。ましてや奈良に行っていたとしたら、記憶がないワケがない。たとえパープリンの記憶喪失男だったとしても、小太郎くんが一緒に居たことは間違いないワケだから、それは有り得ない。
たぶん、マホロバの発見が強烈過ぎて、その日カバフを採った記憶がフッ飛んでいるのだ。
その後、なかなか次の1頭が得られなかったので、記憶がソチラに引っ張られたのかもしれない。奇しくも、如何に人間の記憶が曖昧なのかの証左を突きつけられた感じだ。思い込みとは恐ろしい。
何はともあれ、リベンジ一発目でカバフを採ったんだね。俺ってやっぱ、やる時はやる男やんか。何かプライドが強化されたようで、得した気分(о´∀`о)

その後、岸田先生がマホロバの分布調査に送り込んできた刺客、小林真大くんが若草山近辺でもカバフを見つけて、複数採った。そういえば、彼が言ってたなあ。糖蜜にソッコー来たそうだが、樹液には一つも来なかったって。カバフは樹液よりも、モラセス好きなのかもしれない。
自分も、後に赤松の幹に止まっているのを見つけた。カバフは赤松の木が好きで、昼間よく止まっていると聞いてたけど、この時初めて見た。真大くんも赤松の木で見つけたと言っていたから、やはり赤松好きなのだろう。もしかして、アカマツも食樹だったりしてね(笑)。日本のカトカラは基本的に針葉樹を食わないだろうから、それは無いとは思うけど…。
それで思い出したが、若草山近辺にもカマツカの木はそれなりにあるようだ。自分も2本くらい見た。探せば、もっと北や東にもあって、カバフもいるんじゃないかと思う。

自分の六甲でのタコ採り、奈良近辺での採集数、それに松尾さんが兵庫県西部で相当数のカバフを見ていることから、今年は大発生なのではと云う意見もあるようだ。しかし、果たして本当にそうなのかな?と疑問に感じている。それ以外で、他にはあまり例を聞かないからだ。たまたま沢山いる所が見つかって、情報が強調されたにすぎないんじゃないかと思ってる。間違ってたら、ゴメンナサイ。

思ったんだけど、大発生とかではなくて、寧ろ今まであまり調査されてこなかっただけの事ではなかろうか。意外とカバフは何処にでもいて、個体数も思われているほど少なくないのではないか。単にベストな採集方法が分かってなかっただけではないかと云う考えに傾き始めている。
今までカバフがあまり目に触れてこなかったのは、採集を主に外灯に来たものやライトトラップ、或いは昼間に静止しているもの、樹液への飛来に頼ってきたせいではなかろうか❓
カトカラの中でも、カバフは特徴的な上翅をしているから見つけ易いとは言われているが、にしても昼間の見つけ採りは決して効率が良いとは言えないだろう。樹液にも、個体数のわりには寄って来ないのかもしれない。自分の経験値と真大くんの見解を併せれば、樹液で採るよか、糖蜜の方が遥かに有効である可能性はあると思う。
しかし、糖蜜トラップでカバフを採ったという話はあまり聞かない。常識的に考えれば、糖蜜よりも樹液の方に寄ってくると考えるのは当たり前だろう。が、その当たり前が常に正しいとは限らないと云うことだ。
ライトトラップにも、そもそもあまり寄って来ない種なのかもしれない。或いは寄って来るのが遅い時間帯と云うのも有り得る。皆が皆、そんなに夜遅くや明け方までライト・トラップをやってないだろうからね。撤収した後がゴールデンタイムと云う可能性も無くはないか❓

結局、奈良でも六甲でもライトトラップを試してないから、ライトへの飛来に関しては本当のところはわからない。あれだけの数が糖蜜で採れて、ライトトラップにはあまり寄って来なかったとしたら、走光性が低いという可能性がある。
同地で、糖蜜とダブルで試してみたら、事実の一端が見えてくるかもしれない。どちらが有効であるか、来年試す価値はあると思う。
でもさあ( ̄∇ ̄*)ゞ、おいらライトトラップの道具持ってないんだよねー。

 
                   おしまい

 
追伸
計3話に渉る長々としたクソ文章にお付き合いくださいました方々、御拝読ありがとうございました。
相変わらずフザけまくるは、生意気に意見するわでスンマセンm(__)m

夏の強烈な日射し、荘厳なる夕暮れ、木々を揺らす風、部活動をする学生たちの声と楽器の音、タールのような漆黒の闇、儚く光る蛍たち、溶けそうな蒸し暑さ、糖蜜の甘い香り、帰り道の静まりかえった夜の街、そして灯りの中で明滅するカバフキシタバの鮮やかな黄色。
この長い文章を書いている間、色んな風景や温度、その他もろもろがフラッシュバックした。
来年も、カバフキシタバに会いに行きたい。

 
(註1)100均の懐中電灯
100均の懐中電灯はショボい。でも、敢えて使っている。何でかっつーと、照らしてもカトカラがあまり逃げないからなのである。カトカラは敏感だ。強い光を当てるとビックリして飛びがちなのだ。光量があって性能が良い懐中電灯は素晴らしいと思う。が、性能が良過ぎて、あまりヨロシクないんである。あくまでワタクシ的感想ですが。

 

 
ただしコヤツ、100均だけあってマジしょぼい。すぐに接触不良を起こして調子悪くなるのだ。で、しばしばブラックアウト。ドツいて、また光だすというポンコツ振り。電池が無くなりかけると、驚くほど光量が落ちるしさ。だから、予備電池は必須アイテム。お陰で、初期の頃は夜の山中で懐中電灯が消えかけて半泣きになったことが何度かある。一人ぼっちだったし、チビりそうになった。

 
(註2)8時を過ぎないと現れないと思われる
そんな事、図鑑とか何処にも書いてないけど、少なくとも関西では間違いなかろう。今夏、他人の採集も含めて知っている範囲では、50近い飛来数のうちで例外は一つもない。

 
(註3)カバフって大小の個体差が大きいのかもしれない

展翅した一部を並べてみた。

 

 
特別そうだとは言えないだろうが、それなりにはあると思う。

それよりも気づいたのは、♂と♀の下翅の斑紋の違いである。
今一度、並べてきた展翅写真を見て戴きたい。下翅の真ん中の黒帯が♂の方が細い傾向がある。だから、♂の方が黄色っぽく見える。そんな事、どこにも書いてなかったよね?
とはいえ、微妙なのもいる。同定の際の決定的な相違点とはならないだろうが、その一助にはなると思う。♂か♀なのか微妙な個体の場合には、使えるかもしんない。

 
(註4)それこそレコードじゃねえの❓
調べたら、石塚勝己さんの『世界のカトカラ』によると、島根県で143頭も採れた記録があるらしい。物凄い数だにゃあ。ケタが一桁違うわ。
但し、よくよく見たら外灯(水銀灯)に来たもので、しかも1959年から1960年の二年間での総数のようだ。
成虫の発生期間を少なく見積もって1ヶ月として、2年間で60日としよう。単純に143を60で割ったとしたら、2.83だ。つまり1日3頭も採れていないことになる(それでもスゴい数字とは言える)。となると、1日17頭って、凄くねえか❓レコードも有り得るよね。もちろん単純計算に過ぎないから、天候不順の日だってあるだろうし、飛来日数はもっと少ないかもしれない。けど、カトカラは雨でも全然飛んで来るからね。また、1日3頭ずつコンスタントに飛んで来るワケではなかろう。中には爆発的に集まって来る日もあっただろう。にしても17と云う数字は、かなりいい線いってると思うんだけどなあ。
因みに3日間で28頭だから、それを3で割ると平均は約9である。9×60=540だ。圧勝じゃん❗
小太郎くんと行った日も10頭くらいは採れているから、仮に38÷4としても9.5である。コチラの方がもっと凄いことになる。
まあ、何だかんだ言っても、所詮は机上の理論に過ぎないんだけどね。
とはいえ、少なくとも樹液&糖蜜採集の数としては、レコードに近いんじゃなかろうか❓

 
(註5)マホロバキシタバ

 
学名 Catocala naganoi mahoroba 。
日本で32番目に見つかったカトカラ。詳しいことは『月刊 むし』の10月号を見てくだされ。不肖ワタクシの発見記も有るでござる。

 

続・カバフキシタバ

  
随分と間があいたが、連載『2018’カトカラ元年』シリーズの再開である。
何でこんなに開いたのかと云うと、日本では未知のカトカラ、Catocala naganoi mahoroba マホロバキシタバ(註1)を目っけてしまったからである。
この発見にはカバフキシタバが深く関わっており、それでマホロバの記載が終わるまでは下手な事は書けなくなった。奈良県で見つけたカバフとマホロバの生息地が同一である事から、情報漏れを防ぐために自粛したのである。

と云うワケで、今回は前回のカバフキシタバの続編でありんす。
(-o-;)ん~、何かちょいややこしくなってるかもなあ。いっそ各カトカラの続編は『2019年’ カトカラ二年生』というタイトルに変えてやろうか…。でもそれはそれでゴチャゴチャになって、ややこしくなりそうだ。それに前に書いた続編シリーズのタイトルも全部書き直さないといけないしさ。面倒くさいし、とりあえずは暫くはこのまま2018年版と2019年版を交互に書いていくスタイルでいこう。

前半部は月刊むしの2019年10月号掲載の『マホロバキシタバ発見記』の文章が下敷きになっています。
もちろん「てにをは」を含めて微妙には変えるつもり。というか、遠慮してマイルドになったところも書き直すつもりの増補改訂版になろうかと思う。
完成すれば、たぶん時間が経ってる分、コチラの方が文章はコナれていると思う。ヒマな人は微妙な違いを探してね。とはいえ、書いてるうちに大幅に改変するかもしんないけど。

前置きが長くなった。取り敢えずタイトルを新たにつけて、前へと話を進めよう。

 
『リビドー全開❗逆襲のモラセス』

 
2018年、8月の終わり頃だったと思う。
カミキリムシ・ゴミムシダマシの研究で高名な秋田勝己さんが、Facebookに奈良県でのゴミムシダマシ探査の折りに、たまたまカバフキシタバを見つけたと書いておられた。
その年にカトカラ採りを始めたばかりの自分は、既に京都でカバフは得てはいたものの、来年はもっと近くで楽に採りたいと思った。それで、秋田さんとは殆んど面識はないものの、勇気を出してメッセンジャーで連絡をとった。
秋田さんは気軽に応対して下さり、場所は若草山近辺の昆虫採集禁止区域外だとお教え戴いた。また食樹のカマツカは奈良公園や柳生街道の入口付近、白毫寺周辺にもある旨のコメントを添えて下された。

ところで、奈良県にカバフの記録ってあったっけ❓
ネットで調べてみる。てっとり早いのは『ギャラリー カトカラ全集』だ。このサイトには各都道府県別のカトカラの記録の有無が表にされているのだ。
それによると、奈良県にカバフの記録は無いようだ(註2)。こういう誰も採った事が無い的なものは大好物だ。それで、俄然やる気が出た。根が単純なので、だったらオラが最初に採ったろやないけー❗となるのである。

その年の秋遅くには奈良公園へ行き、若草山、白毫寺と歩き、幼虫の食樹であるカマツカと樹液の出ていそうな木を探しておいた。

 
【カマツカ】
(於 奈良公園)

 
この画像を『コレがカマツカで、よござんすか❓』と秋田さんに送ったところ、正解との御墨付きを戴いた。
因みに月刊むしの原稿で、秋田さんが「こやつ、カマツカも知らんとカバフを探しとんのか❓イモかよ。」的なニュアンスの事を書かれていたが、まあその通りかな。
だってカトカラ1年生だし、飼育なんて蝶さえ殆んどしないから、植物には疎い。ましてや蛾の食樹だ。んなもん、知るワケないもーん<(`^´)>
そんなオイラだが、引きだけは強くて日本でも海外でも何か知らんけど珍しい蝶や甲虫だのを採ってきてしまう。海外なんかは現地にいる虫の事をろくに下調べもせず出掛けて行って、ガイドも雇わないというテキトー振りでだ。だから、周りに冷ややかな目で見られ、『おまえ、虫採りナメとんのか。』と御叱りを受けるのである。
まあ、皆さんが怒るのも解るけど、採れるんだから仕方がないのさ( ̄▽ ̄)ゞ。そないに叱られてもなあ…。
 
そんなオイラだが、翌年は秋田さんのお陰もあって、万を持して始動。

2019年 6月25日。

先ずは若草山近辺を攻める。しかし秋田さんに教えて戴いていた樹液の出てる木はゴッキーてんこ盛り。
Σ( ̄ロ ̄lll)キショっ、皮膚が粟立ち、おぞける。
一瞬、意地の悪い秋田さんのことだから、もしかしてワザとゴッキーだらけの木を教えたんじゃないかと疑う。
しかし、悪魔のような秋田さんといえども、たぶんそこまで手の込んだことはすまい。
そう思うが、一応『(=`ェ´=)秋田の野郎~。』と呟いとく(秋田さん、ゴメンナサイ)。

霧吹きで糖蜜を撒き散らすも、全然ダメ。小汚いクソ蛾どもと、ただキシタバ(パタラキシタバ)しか来ない。カバフが飛んで来る気配というものがまるでないのだ。
この気配を感じる感じないかは、謂わば勘みたいなものだ。言葉にするのは難しいが、その勘というものを自分は大切にしている。今回もそれに従おう。ダメなもんはダメ。決断は早い方がいい。チラッと若草山からの夜景を見て、午後9時過ぎには諦めて白毫寺へと向かった。

 

 
周囲は原始の森だ。真っ暗闇の中、長い坂道をひたすら下る。忍耐である。
勿論、人っ子一人いない。闇の奥で、何かあずかり知らぬ者どもが蠢いていそうな気がしてくる。マジで、こういう古い森は精霊とかがいそうだ。でも精霊が皆が皆、良い精霊だとは限らない。中には邪悪な精霊もいるかもしれない。でもって、ゴブリン、ゴブリン。小人で、人相がゼッテー悪いんだな。そうに決まってる。そいでもって滑舌が悪くって、何言ってるか解らないのだ。
一人で暗闇の中を歩いていると、色んな思いが去来して、どんどん心が磨り減ってゆく。コレが結構キツイ。ボディーブロウのように心身を次第に蝕んでゆくのだ。「こんなとこで、ワシ何やっとんねん❓」である。
冷静に考えれば、やってる事が一般ピーポーから見ると狂人の域だ。フツーの人は怖すぎて絶対に夜の森を一人でなんて歩き回りゃしません。そんなの、アタマおかしい人か犯罪者くらいだ。
でも、それに耐え忍ばねば、甘い果実は得られない。虫採りとは、勘と忍耐である。

白毫寺に着いたのは午後10時くらいだったと思う。
目星をつけていた樹液の出ているクヌギの木を見ると、結構カトカラが集まっている。
しかしカバフの姿はない。取り敢えず周辺の木に糖蜜を吹きかけてやれと、大きめの木に近づいた時だった。
高さ約3m、懐中電灯の灯りの端、右上方に何かのシルエットが見えたような気がした。そっと灯りをそちらへ持ってゆく。

そこには、あの特徴的な姿があった。
だが、脳が現実なのか幻なのか直ぐには判断てきなくて、頭の中で時間が止まる。ややあってから、目と脳の認識が漸く一つに重なりあった。
間違いない、カバフキシタバだっΣ( ̄ロ ̄lll)❗
瞬間フリーズ。ゴーゴンかメデューサの凶眼に射すくめられたかのように、その場で石化する。体が動かない。
だからといって、いつまでも🐍ヘビ女の呪縛に雁字搦めに囚われているワケにはゆかぬ。懸命に心を鎮め、ゆっくりと後ずさりする。7、8mほど離れてから反転。音を立てないようにして忍者の如く爪先立ちで走る。心は高揚感で乱れに乱れている。
30mほど後ろの荷物が置いてある場所まで戻った。離れたことにより、少し心を落ち着かせることが出来た。
しかし、ここからが仕切りなおしの本当の勝負だ。大きく一回、深呼吸をして気を整える。
焦ったら負けだ。逸る心を抑えて網を組み立てる。
Σ(T▽T;)ヒッ、でも手が覚束なくてネジに真っ直ぐ入れれな━━い。落ち着こう、俺。ここで焦ってどうする。ネジがバカになったら元も子もないではないか。もう一回深呼吸する。だいたい立ってやってるからダメなんだ。しゃがんでやろう。
それで何とか装着することができた。すっくと立ち上がる。もう大丈夫だ。侍魂がフツフツと甦ってくる。
いよいよ、ここからが本チャンの闘いが始まるかと思うと、背中がブルッとくる。武者震いってヤツだ。このギリギリ感、溜まんねえや。これがあるから虫採りはやめられない。我が愛刀、蝶次郎で必ずや斬る❗
軽く息を吐き、ゆっくりと一歩を踏み出す。落葉がカサカサと乾いた音をたてる。静かな夜の森に、その音が奇妙に誇張されて響く。彼奴を刺激しないように、懐中電灯の光を直接当てずに慎重に近づいてゆく。

この木だったな。
歩みをやめ、ゆっくりと懐中電灯を止まっていた辺りにズラしていく。再び緊張感が高まる。
ピピピピピピッ……、ロックオーン❗
ほっ( ̄▽ ̄)=3、逃げずにまだいる。よっしゃ、ゲーム続行だ。
けれども刹那、どう網を振るか迷う。ダメだ。その一瞬の躊躇が負の連鎖を呼び起こしかねない。自念する。迷いは捨てろ。何も考えるな。メンタルの弱い奴には幸運など降りてきはしない。
蝶次郎の柄を握り締める。そして次の瞬間、息を詰め、大胆に幹をバチコーン💥❗思いっきしブチ叩く。
秘技✴嵐流狼牙斬鉄剣❗❗

手応えはあった。
空中で網を素早く捻り、地べたへと持ってゆく。
どうだ❓ 波立つ心で、慌てて懐中電灯を照らす。
そこには、シッカリ網の底に収まっている彼奴の姿があった。しかも暴れる事なく大人しく静止している。安堵がさざ波のように拡がってゆく。
やっぱ俺様の読みが当たったなと思いつつ、半ば勝利に酔った気分で近づき、ぞんざいに網に毒瓶を差し込んだ。まあまあ天才をナメんなよ(`◇´)、狙った獲物はハズさないのさ。

しかし、取り込むすんでのところで物凄いスピードで急に動き出して、毒瓶の横をすり抜けた。
(|| ゜Д゜)ゲゲッ、えっ、えっ、マジ❓
ヤバいと思ったのも束の間、パタパタパタ~。網から抜け出して飛んでゆくのがチラッと見えた。
嘘でしょ❓嘘であってほしい。慌てて周りを懐中電灯で照らすも、その姿は忽然とその場から消えていた。
(;゜∇゜)嘘やん、逃げよった…。ファラオの彫像の如く呆然とその場に立ち尽くす。
(-“”-;)やっちまったな…。大ボーンヘッドである。あんま普段はこういうミスはしないので、ドッと落ち込み、「何でやねん…。」と闇の中で独り言(ご)ちる。己の詰めの甘さに心の中が急速にドス黒い後悔で染まってゆく。

結局、その日は明け方まで粘ったが、待てど暮らせどカバフは二度と戻っては来なかった。ファラオの呪いである。

しかし、その時はまだこのボーンヘッドが後のマホロバキシタバの発見に繋がろうとは遥か1万光年、露ほども想像だにしていなかった。
運命とは数奇なものである。ちょっとしたズレが、その後の結果を大きく左右する。人生は紙一重とはよく言ったものである。おそらくこの時、ちゃんとカバフをゲット出来ていたならば、今シーズン再びこの地を訪れる事は無かっただろう。そしてニューのカトカラを見つけるという幸運と栄誉も他の誰かの手に渡っていたに違いない。

閑話休題。
でも、この時点では後にそんな大発見に至るとは知らないという前提で話を先に進めまする。

 
2019年 7月2日。

天気や個人的な用事もあり、あれから約1週間のインターバルがあいてしまった。

この日は奈良にリベンジをしに行く事も考えだが、その前に去年カバフを採った京都市左京区へ行くことにした。

  
【カバフキシタバ Catocala mirifica ♂ 】

(2018.7.15 京都市左京区)

 
去年、人為的にボロにしてしまった1♂のみしか採れなかったとはいえ、先ずは実積のある場所で確実におさえておきたかったからである。
ここなら寄ってくる樹液も知っているから、楽勝である。♂♀の完品が採れれば、気分はだいぶと楽になる。その後でジックリ奈良を攻めればいい。

 
今年もまだ有りまんな、ビビらす看板。

 

 
去年の、あの真っ暗闇の世界と謎の動物の咆哮を思い出したよ。超ビビりまくったんだよなあ…。マジあん時は恐かったもんなあ。怖すぎて逆ギレしてたっけ…。
しかし、あれからコチラもそれなりに闇の経験を積んできている。今回は二度めの来訪だし、あの時の恐怖感と比べれば、どって事ない。鬼採りでイテこましてくれるわ。今日こそ、まあまあ天才の実力をとくと見せてくれようぞ(=`ェ´=)

去年、カバフの食樹であるカマツカかなと思っていた木はウワミズザクラだった。

 

 
木肌の感じからしても間違いないかと思われる。
さっきも言ったけど、一年も経てばアチキだってそれなりに進化しているんである。植物の知識も少しは増えているのだ。
だが、その後歩き回るもカマツカの木が一つも見つからない。嫌な予感が、サッと撫でるようにして走る。もしかして、個体数が元々少ない場所だったりして…。

夜の帳が降りると、やっぱ真っ暗になった。

 

 
でも今年は蛍が沢山いた。
去年は一つも見なかったのに、不思議だ。
だから最初見たときは、🔥鬼火かと思って腰くだけになりそうになっただよ。京都って、妖怪だの幽霊だのの魑魅魍魎が跳梁跋扈してそうじゃん。そういうイメージがある。それに、この辺は昔は刑場とか墓場だったと聞いたことが有るような気がしてきた。だから、マジで出たなと思った。
稀代の怖がり屋としては、熊よか鬼火の方が余っぽど怖いんである。もちろん熊も怖いけど、まだ現実の存在だから対処のしようもある。マウントされたとしても、脇に息が出来ない程の強烈なフックをおみまいしてやることだって出来る。けれど、お化けだったら対処のしようがない。いらぬ想像力が増幅して、恐怖が異様に膨れ上がってのお地蔵さんだ。動けるか、ボケッ❗急に得体の知れないものがボオーッと闇から浮き出てきて、口から緑色の液をジャーと吐きでもしたら、どうするのだ❓オチンチン、激りんこメリ込むわい。この世のものならざる者は、あきまへーん(T▽T)

蛍は源氏も平家もいた。川沿いにはゲンジボタル、真ん中の水田にはヘイケボタルと、棲み分けしていて、時々その境界線で両者が絡まって飛ぶ。道ならぬ恋。ちょっとした幻想的風景だ。
それで、心にフッと上手い具合に隙間が空き、何だか心が休まってくる。このリラックスした気分で、カバフをジャンジャン採りまくるけんね。

 

 
(-o-;)……。
夜が明けた。

嫌な予感が当たってしまった…。
夜通し探し回り、明け方まで粘ったのにも拘わらず、1頭たりとも見ることすらできなかった。まさかの返り討ち、又しても大惨敗を喫してしまう。
見もせんもんは、如何にワシでも採れん。やはり、此処は個体数が少ないのかもしれない(註3)

結局、採れたのはコカダキシタバと、まあまあ渋いんでねえのと思って採った、この蛾くらいだった(註4)。

 

 
けど、いまだに展翅すらしていない。
如何せん渋過ぎるのだ。

何にせよ、(◎-◎;)ショックで身も心もボロボロじゃよ。徒労感、半端ない。

やがて、朝日が昇ってきた。
無駄に眩しい。
日の光に照射されたヴァンパイアの如く、いっそ、その場で灰になってしまいたかった。

やはりカバフ採りは、甘くないのか…。
珍品と言われたる所以が解ったよ。

                     つづく

 
追伸
スランプで、思うように筆が進まない。
気に入らなくて何度書き直したことか…。
そう云う時は必要以上に長くなるし、気持ち的にもシンドイ。なので一旦前編で切ることにした。

そういえば思い出した。朝まで粘ったのは、今年はこの連続の二回だけだった。
両日ともに、あまりにも退屈過ぎて、睡魔と戦いながらずっと一人シリトリをやってたんだよね。何処にも到達しない、未来永劫救われることのない無益なシリトリだ。
アレは今思い出しても辛かった。そりゃ、ドラキュラみたく灰になりたくもなるよ。

 
(註1)マホロバキシタバ

 
新種になりかけた時期もあったが、結局は台湾のみに分布が知られていた Catocala naganoi の新亜種におさまった。
マホロバに関しては、またいつか書く機会はあろうが、まだカトカラ No.5なので、まだまだ先のことになりそうだ。

(註2)奈良県にカバフの記録は無いようだ
「大切にしたい奈良県の野生動植物2016 改訂版」には、カバフキシタバが絶滅危惧種としてリストアップされている。記録地の詳細は書かれていないが、大阪と奈良の県境、信貴山辺りでも採れているみたいだし、記録は間違いではないだろう。
「ギャラリー カトカラ全集」の都道府県別のカトカラ記録表は参考にすべきものではあるが、それをそのまま鵜呑みにしてはならないと思う。例えばフシキキシタバは奈良県から記録が無いとされているが、実際にはアホほどいるからね。

(註3)個体数が少ないのかもしれない
もしかしたら、まだ未発生でフライングだった可能性はある。去年の採集日よりも2週間くらい早い出陣だったし、今年は蝶の発生が1週間以上遅れていたようだからだ。それからすると、蛾の発生も遅れていた可能性は充分ある。
とはいえ、今のところ来年リベンジしに行くつもりはない。ごっつ真っ暗なとこだし、謎の動物の咆哮も怖いので、行くとしても来年はもう一人では行かないと思う。

(註4)この蛾くらいだった
たぶん、Phalera minor クロツマキシャチホコという蛾かと思われる。
あまり見かけない蛾だが、幼虫の食樹はブナ科コナラ属のウバメガシ、クヌギ、コナラ、アラカシとなってるから、そんなに珍しくはなさそうだ。

 

鳥谷を想う

 

阪神タイガースが最終戦を勝利で飾り、6連勝で3位だった広島を抜いてCS(クライマックスシリーズ)進出を決めた。全く期待していなかったから、まさかの展開に驚いたよ。
ガキの頃からの生粋の虎ファンとしては喜ばしい。
しかし、素直に喜べないというのが本音だ。たとえそれで日本シリーズまでいって勝ったとしても、心のどこかで納得いかない自分が見えるからだ。
この制度、何とかならんかね❓
消化試合が減ってファンの楽しみが増えたのは良いことだけど、どこか心に引っ掛かりがある。リーグ優勝の価値が下がるって、本末転倒じゃねえか?と思うんだよね。

だからか、試合が終わった時の矢野監督がどんな顔をするか注意深く見ていた。もし矢野が喜び爆発でヘラヘラ笑ってたら、来シーズンも期待できないなと思ったのである。
しかし、矢野の表情は変わらなかった。シーズン最後の挨拶でも笑顔はなかった。それでいい。それでこそ指揮官たるものだ。来年に期待するよ。CSも来期のために戦ってくれ。

この試合で、鳥谷が途中代打で出てきて凡退したが、
そのままショートの守備についた。
そうだ、そこが最もキミに相応しい場所だ。
結局、彼のもとへは打球は飛んで来なかったが、何だか見てるだけで泣けてきたよ。
知ってのとおり、鳥谷は今シーズンで縦縞のユニフォームを脱ぐ。シーズン途中で球団に「ユニフォームを脱いでくれ。」的なことを言われたようだ。事実上の引退勧告である。

 
(出展「サンTV」)

 
相変わらず、人を大事にしない糞みたいな球団だ。
シーズン途中での引退勧告なんて酷い。まだシーズンは残っているのに、そんな言われ方をされたら誰だってヤル気を無くすだろう。いや、シーズン途中での引退勧告は、当たり前に有りうる事だろう。問題は、それを外部に漏らしたことだ。今までチームのために頑張ってきた生え抜きのスター選手へのリスペクトがまるでない、失礼極まりないやり方だ。チームの功労者には引退を自分で決める権利があると思う。今回はそれを無視したやり方に思えてならない。尋ね方に愛がない。「阪神としては契約はできない」なら解るが、球団に「野球選手を辞めてくれ」と言う権利はない。鳥谷がそれを拒否して、現役続行を宣言したのも解る気がする。

思えば、江夏に田渕、掛布に岡田etc……、みんな酷い形でチームを去っていった。ファンが愛してきたスター選手への配慮に欠けると言わざるおえないだろう。
これが16年もチームに貢献してきた選手への仕打ちかよ。
一軍公式戦1939試合連続出場、13シーズン連続全試合出場、史上50人目の公式戦2000本安打、史上15人目の1000四球達成者、遊撃手としてNPB公式戦シーズン最多打点記録、歴代最長のフルイニング出場記録、セ・リーグのシーズン最多補殺記録etc…。主将や選手会長もつとめてきた。どんだけ彼がチームを支えてきたか、己ら忘れたんかいι(`ロ´)ノ

そういえば、内野手として土のグラウンドでのプレーを望み、「お金で自分の将来を決めたくない。そんな人間だと思われるのが一番嫌だ。」と言って、巨人やソフトバンク、西武の誘いを蹴ってでも阪神に来てくれたんだぞ。
この仕打ちに、多くの阪神ファンも怒っているに違いない。その証拠に試合後、鳥谷コールが鳴りやまなかったじゃないか。また、それで泣けたよ。

結局、鳥谷は促されても挨拶をしなかった。
それでいい、それこそが男の矜持と云うものだ。引退試合なんか頼まれても、せんでええよ。冷たい球団として、評価を落としゃいいのだ。みんなドラフトでも阪神なんか行かなくていい❗
あっ、それはマズイか…。
でも大阪桐蔭なんて、噂ではを藤波を潰した一件で、有望な選手に、阪神には絶対行くなと言ってるらしいぞ。悪いことは言わん。前途ある高校生に告ぐ、阪神なんて行ってもロクなことないぞー(ー。ー#)

現役を望む鳥谷を他のチームが雇ってくれるかどうかは、微妙だ。それでも一野球選手として、とことん納得のいくまで野球を続けたいという姿勢はカッコイイ。
たとえ憎っくき巨人に行ったとしても応援するよ。
その後、巨人のコーチなっても許すよ。鳥谷は慈善活動も積極的にやってたし、できた男なのだ。そんな男を流出させる球団は、やはりクソだ。

前言撤回。
阪神のCS進出を素直に喜ぼう。だって、もう少し縦縞のユニフォームを着た鳥谷が見られるんだから。

 
                   おしまい

 
追伸
こんな記事書いてるヒマがあったら、早よ『2018′ カトカラ元年』の原稿書けよってか?
ハイハイ、ちゃんと書いてますよー( ̄З ̄)。
でも、スランプで筆が全然進まんのだ。

鳥谷のことは最初から書くつもりだったが、前回のラグビーの記事の方は全く書く予定はなかった。
実を言うと、上のくだりを二回連続でやりたいがばかりに、ラグビーの記事を書いたのだ。ちゃんと、真面目には書いたけどね。

だからー、ハイハイ解ってますよ。
見てらっしゃい。カトカラの記事の方もソッコー書きますよー。

 

もはや奇跡ではない

 
🏈ラグビーW杯 第2戦 日本VSアイルランド

せいぜい善戦してくれればいいと思ってたけど、まさかの世界ランク2位のアイルランドに19ー12で勝っちゃったよ…。信じらんない。

 
(出展「NHK総合TV」)

 
最初、田村がペナルティーキックを思いきしダブって外した時は、早くも敗戦の予感に襲われたけど、前半ロースコアでよく耐えたよ。
前半の頑張りだけで充分満足したから、そのあとボロボロにされてもいいやと思ったくらい。それがまさか後半に逆転するだなんて夢にも思わなかった。
とにかく、勝って良かった。マジ泣けたよ。
日本代表、カッケー( ☆∀☆)

勝因は何かと云うと、先ずは堀江を中心とするフォワード陣の頑張りだろね。あの世界屈指の強さを誇るアイルランドのフォワードにスクラムで押し負けてなかった。押し負けてないからこそ、反則も少なかった。もちろん、相手を研究し尽くしたゲームプランが功を奏したと云うのもあったろう。
あとはダブルタックルで強力なアイルランドFWの突進を止めたこと。主将のリーチ・マイケルが入ってから、ゲームの流れが変わったのも大きい。
福岡の投入で、松島とのダブル快足ウィングになったのもトライに繋がったと思う。松島にマークが集まっての一つ飛ばしのパスになったのは福岡がいてこそ生まれたといっていいだろう。あっ、レメキの頑張りもあったね。
倒れてもなお前へ進むナンバーエイト姫野の突破力も相変わらずだったし、スクラムハーフに田中が入った事により、全体のリズムが良くなって攻撃スピードが上がったのも勝因の一つだろう。
とはいえ、HEROは特定の誰かとかではなくて、メンバー全員だけどね。全員の結束力とディシプリンこそが、この勝利を呼んだのだろう。

こうやって勝因を並べていると、日本が勝って当然な気がしてきた。前の大会で南アフリカに勝った時とは明らかに違う。アレは間違いなく奇跡的な勝利だったけど、今回はもはや奇跡ではないと思う。ジャイアント・キリングではあるけれど、両者の実力差はさほどなかったと言ってもいいんじゃないかな。

さあ、サモアを軽くあしらって、スコットランドを撃破し、決勝トーナメントへ進もう。
そこで、本当の奇跡を起こそうぜ、さくらジャパン❗

 
                   おしまい

 
追伸
こんな記事書いてるヒマがあったら、早よ『2018′ カトカラ元年』の原稿書けよってか?
ハイハイ、ちゃんと書いてますよー。でも、スランプで筆が全然進まんのだ。

 

奈良で念願の蕎麦を食う

 
  
奈良で、やっと念願の蕎麦を食った。

多くの外国人観光客でごった返すメイン通りを左に外れ、土塀に囲まれたひっそりとした道へ入る。そして、依水園の横を通り過ぎる。
店はその先、戒壇院の近くにある。店の隣は奈良を撮り続けた写真家、入江泰吉の旧居だ。
この辺は東大寺の裏道にあたり、人も少なく閑静なところなので昔から好きだ。
だから、その蕎麦屋の前はよく通る。店は20年くらい前からあったような気がするが、なぜか一度も入る機会が無かった。定休日だったり、蕎麦が売り切れて早々と店じまいしていたり、或いは既にお昼を食べてしまったあとだったりと、いつもタイミングが合わなかったのだ。
とはいえ、今日も既に早めの昼食は済ませていた。タイミングがバッチシというワケではない。だから一旦店の前で立ち止まり、暫し迷いはした。でも、今ここで入らないと一生食えないんじゃないかと思った。愚図愚図してるうちに店が閉店したり、遠くへ移転したりするなんて事は往々にしてあるのだ。こういう悪い連鎖は多少無理をしてでも行かないと、断ち切れない。そういう意味では、今が最大のチャンスかもしれないと考えなおした。それに時刻は既に午後2時を過ぎていたから、小腹が空きかけてはいた。で、漸く入る気になったと云うワケ。

 

 
奥に秋を演出する栗とススキが飾られてある。
おっ洒落だね~。

 

 
外観は、大体こんな感じである。
古民家風で、如何にも旨そうな蕎麦屋然とした雰囲気を醸し出している。
だが昔はもっと素っ気ない外観で、見過ごしそうなくらいに周囲と同化していた。そこに、お洒落感は微塵もなく、わびさび感が半端なかった。そういう意味では、どこか緊張を強いられるところがあって、もっと入りづらかったような雰囲気だった気がする。

 

 
このような外国人向けの看板も無かったしね。
そういえば、昔は店の入口に信楽焼のタヌキなんて無かったような気がするぞ。或いは店が前と変わってたりして…。

中へ入る。

 

 
店内はこんな感じで、癒し系の音楽が流れている。
写ってないけど、手前の大きなテーブルには大人数の白人の家族連れがいた。後から外国人カップルも入って来た。外国の人が好んで蕎麦を食う時代がやって来てるのかなあ❓

座ってすぐ、メニューも見ずに「もりそば」を頼む。初めての蕎麦屋では必ず「もりそば」を頼むことにしている。Simple is the best. 蕎麦そのものの旨さを測るには、余計なものはいらない。シンブルが一番だ。

だが、もりそばと言ったら、店員さんに怪訝な顔をされた。どうやら、もりそばが通じてないようなんである。
これは関西では従来「もりそば」とゆう言葉はあまり馴染みがなくて、笊に乗っけられた冷たい蕎麦は大体「ざるそば」と呼ばれてきたからだろう。最近は関西でも江戸スタイルの店が増えてはいるけれど、まだまだ知らない人も多いってワケだね。やはり関東は「そば文化」、関西は「うどん文化」なのだ。
とはいえ、実を言うと蕎麦店の発祥は東京ではなくて大阪なのだ。コレ、東京の人に言うと、大概は怒るか機嫌が悪くなるんだよね。でも、これはれっきとした事実なのだ。嘘だと思うんだったら、ウィキペディアでも何でもいいから、調べてくれたら得心がいくだろう(とはいえ諸説あり)。

話が逸れた。
きょとんとしている店員のオバチャンに、『ざるそばの海苔抜きのことです。とにかく海苔抜いてくれたら、それでいいです。』と言う。
『あのう…、でもうちのざるそばには最初から海苔が入っていません。』
今度は、コッチがきょとんとする番だった。
何だ、この会話のギクシャク感は。ちょっと気持ちがゾワゾワする。
一刻も早くこの変な間を終わらせたくって、『じゃあ、その海苔の入ってないざるそばでいいです。』と早口で返した。

テーブルに座って蕎麦茶を飲みながら、ふと思う。
でもさあ、ざるそばを頼んで、もし海苔が乗っかってなかったら『(#`皿´)おんどれ、海苔乗っかとらんやないけー。何ケチっとんねんワレ。』と怒る客もいるんじゃないか❓いや、絶対いるだろう。そん時は、どう答えるのだろうか❓一々、かくかくしかじか説明するのであろうか❓それって、相当面倒くさくねえか❓ 想像して、再びギクシャク感とゾワゾワ感に包まれる。
けんど、そんな心配をしてどうなるもんでもない。そもそもワシとは関係ない事だ。考えること自体ムダな事に気づいて、想念をシャットアウトした。

テーブルに店の名刺が置いてあるのを見て、初めてこの店が『そば処 喜多原』という名だと知る。こんな名前だったっけ…。

中々、蕎麦が来ない。もりそばの一件といい、一瞬イラッとしかけたが、ふと思い直した。
時間がかかっていると云うことは、「挽きたて」「打ちたて」「湯がきたて」の所謂(いわゆる)「三たて」の可能性がある。だとしたら、期待はかなり持てる。

10分以上待たされて、ようやく蕎麦が運ばれてきた。

 

 
いい感じだ。
旨い蕎麦は佇まいが良い。見た瞬間に旨いことを確信した。

 

 
細くて端整な蕎麦だ。
『先ずは塩で御賞味ください。』と言われたので、素直にそれに従う。ようは最初は蕎麦の香りを楽しめって事だろう。

食べてみる。
なるほどね。言わんとしている事はよく解る。確かに蕎麦の香りが鼻孔からスウーッと抜ける。だがこの食べ方、理解はできるが、あまり好きではない。何か口の中でボソボソするからだ。つゆが無いから、スルッと喉の奥へと入ってゆかないのが何だかもどかしいのだ。蕎麦の香りを楽しみたかったら、蕎麦そのものに鼻をもっていけば、充分に事足りると思うんだよね。それじゃ、ダメなの?

お次は、いよいよ蕎麦の先3分の1ほどをつゆにつけてすする。
(≧▽≦)美味い❗
細いのにコシがあり、心地好い歯触りと共に喉をするりと通ってゆく。喉ごしもいい。
十割蕎麦ではなく、つなぎの小麦粉が入っていそうだ。しかし、割合は二八蕎麦でもないような気がする。小麦粉の量はもっと少なさそうだ。十割と二八の中間なら、エエとこ取りである。ならば理想的じゃないか。

そばつゆも香り高くて、味がしっかりとしている。
おそらく昆布と鰹を合わせたものだろうが、素材は相当良いものを使っているとみえる。

いやはや、今年食った蕎麦の中では断トツ1位の蕎麦だよ。美味くて、あっという間に食べ終えてしまう。満足至極である。

でも、ここでずっと前から思っていた蕎麦に対しての文句を言っちゃおう。
蕎麦って、値段が矢鱈と高くねえか❓
この店は870円だから、このクオリティにしての値とすれば他の店と比して安い。量も他の店と比べて特に少ないワケではないから、良心的と言ってもよい。
それでも思う。真っ当な蕎麦を食わせる店って、量が少ないわりに値段が高いよね。ラーメンやウドンと比べて明らかに量が少ないのだ。だから、冷たい蕎麦だと満腹にならない。で、別で天麩羅なんぞを頼んじまい、気がつけば結構な値段になっている。で、食い終わったあとに、美味かったのに何か気分的にスッキリしないのだ。旨ければ、まだいい。これが値段のわりに不味かったりなんかすると、ホント腹が立つ。
この辺、皆さんはどう思ってるんざましょ。

とはいえ、きっと原材料が高いのだろうとは思う。小麦粉が主体のラーメンやウドンとは違うのだと言われれば口ごもらざるおえないところはある。でも、蕎麦って痩せた土地でも育つというじゃないか。簡単に育てられるなら大量生産できるから、安く提供できないものなのかね❓

最後に蕎麦湯が出てくる。

 

 
つゆが旨いだけに、蕎麦湯も当然の事ながらに旨い。
寛いでいると、オバチャンがテーブルを片付けている中に「すだちそば」らしきものがあることに気づいた。
すだちそば、好きなんだよなあ…。季節的にも今の時期しか食えないものだし、とても気になる。
と云うワケで今更ながらにメニューを所望する。

 

 
右側が冷たい蕎麦で、左側が温かい蕎麦である。思ってた以上にメニュー豊富なんだね。

 

 
ざるそばのところに「蕎麦粉10割+つなぎ1割」と書いてある。やはり十割蕎麦じゃなかったんだね。小麦粉も二八の割合じゃないから、十割蕎麦と二八蕎麦の間と云う見立てはビンゴだったワケだよね。我ながら、中々鋭いじゃないか。
でも待てよ。この記述だと蕎麦粉10割と小麦粉1割となってるから、足せば11割だよね❓オカしかないか❓割合が10対1って意味なのかな❓まあ、美味かったから、どっちだっていいんだけどね。

結構お酒もある。
奈良の辛口といえば『春鹿』だよなあ。酒、呑みたくなってくるわ。
ところで、蕎麦屋で酒飲むって粋な感じがするけど、あれって何でだろうか❓

 

 
結局、すだち蕎麦は頼まなかった。これからムラサキツバメ(註1)の様子も見ないといけないし、若草山でもっとカマツカの木を探さねばならない。結構歩くから腹八分目がよろしかろうと思ったのだ。

外に出て、戒壇院に向かって歩き始める。
あっ、今年の冬に訪れた時は門の修復をしてたけど、もう終わったんだね(註2)。
この階段と門の感じが好きだ。いつ見ても心が落ち着く。

 
【戒壇院】

 
でもそのうち、この辺も観光客だらけになってしまうのかもしれない。それは、きっと良い事なのだろうが、あまり嬉しくないなと思った。

                   おしまい

 
追伸
この店をあとで調べてみたら、色んなことがわかってきた。
まず驚いたのは、食べログか何かに「旧店名 そば処 よし川」とあったことだ。という事は代替わりじゃなくて、店主が前と変わってるって事なのかな❓
オーナーが吉川(芳川?)さんから喜多原(北原?)さんに変わった可能性が高いよね。店の外観の雰囲気が変わったのも、そのせいかもしれない。
だとしたら、「そば処 よし川」の時代に行っとくべきだったなと後悔してる。

ホームページを見ると、やはり「挽きたて」「打ちたて」「湯がきたて」の三たてで、蕎麦は北海道産のものを毎朝石臼で挽き、自家製粉しているようだ。北海道産のソバといえば良質とされ、評価が高い。で、三たてとくれば、なるほど美味いワケだ。納得だよ。

出汁は北海道産の利尻昆布と真昆布、干シイタケと3種類の削り節を使用しているとの事。これまた予想通りで、やはり良い素材を使っている。
因みに、使っている醤油など他の素材については言及されていなかった。

 
(註1)ムラサキツバメ

 
南方系の大型のシジミチョウの仲間で、近年になり、東に分布を拡げている。
奈良公園には幼虫の食樹であるシリブカガシが比較的あり、毎年安定して発生している。
この日は時期が悪く、見る個体はボロばっかだった。

 
(註2)戒壇院の門の修復…
当ブログに、その時の話があります。タイトルは『巨樹と仏像』だったっけかな。ヒマな人は読んで下され。

 

鯛を愛する男

 

 
鯛は美しい。鯛そのものの姿も美しいが、こうして調理された身も美しい。食べれる魚の中で最も美しいのが鯛だと思う。

 

 
ほんのりピンクと透き通る白が組み合わさったヴィジュアルは誰しもの食欲をそそる。セクスィーなのだ。

 

 
外で鯛の刺身や寿司を食う時の基本は、塩と柑橘の果汁である。柑橘ならばレモンでもカボスでもスダチでも何でもよろし。お家で柑橘が無い場合は仕方なくポッカレモンを使ったりもする。それでもそこそこ旨い。何だったら柑橘が無くともいい。それでも旨い。

何で塩かというと、それが一番鯛の風味と旨味を正しく感じられるからである。その時の鉄則は、とにかく噛むことである。最低20回以上、できれば30回くらいは噛みなはれ。そうすると、噛んでるうちに奥から鯛の旨味がググッと立ち上がってくるのである。だから、ヒラメやカレイなど他の白身魚の刺身も概ね塩と柑橘で食す。因みに、ブリの身は白いけど白身魚じゃござんせん。アジやサバと同じ青魚の仲間に入る。脂肪分が多いから、あんなに白いのだ。塩でも食べれないことはないけれど、生臭さが出る。やはり醤油の方が美味しい。

 

  
器は割山椒。あしらいにボウフウを添えて料亭風にカッコつけてみた。

 

 
いわゆる松皮造りと云うヤツである。鯛の皮は旨みたっぷりだから、より強い旨みが感じられる。皮に切れ目をいれておくと、更に旨みは増す。
コチラも飾りにボウフウを使った。茎に縦に切れ目を入れて水に放つと、くるくる巻くのが面白い。お洒落である。
作り方は簡単で、三枚におろして、皮をひかずに布巾なんかをかぶして上から熱湯をかける。してからに、ソッコー氷水につければいいだけ。

 

 
コチラも松皮造りだが、青い実山椒を散らしてみた。勿論、これも塩をつけて食う。
山椒のエッジが効いてて、これまた噛めば噛むほど旨みと甘みが感じられる。

 

 
鯛の黄身漬け。鯛の鮮度があまり良くない時の変化球である。鯛の身に太白胡麻油を塗り、卵の黄身と和えて盛り付ける。白胡麻をふって柚子の皮を添えれば完成。
柚子の皮は千切りにしてもいいし、卸がねで擦って散らしても構わない。お好きにされよし。で、最後に醤油をちょろっとかければ出来上がり。

酒の肴ではあるが、ご飯に乗っけて食っても美味い。

 

 
ちらし寿司風に錦糸玉子も加えてみた。ご飯は酢めしにしたが、ふつうの白飯でもよろし。

 

 
丸海の「小鯛ささ漬」である。これが上品な味わいで旨いんだよね。酢があまりキツくないのがよろしい。

 

 
本来は小さな木樽に入っているのだが、最近はこういうパックのものも売られている。でも樽に入っているヤツの方が絶対に美味いと思う。微かに木の香りを纏っているからだ。それにちゃんと笹だって入っている。というか包まれてる。これまた仄かな香りが移るから、よろし。それに笹は腐敗を防ぐという。ゆえに断然樽入りのものをお薦めする。

 

 
これも同じ丸海の「小鯛のささ漬け」だね。言い忘れたが、丸海で使う鯛は真鯛ではない。たぶん連子鯛(キダイ)だったと思う。店のオバハン曰く、笹漬けには連子鯛の方が適しているんだそうな。

 

 
半額だから、つい買ってしまったのだ。
でも、こういうのは本当はお薦めしない。時間が経ったものは酢がまわり過ぎて酸味が強くなり、身もかたくなって格段に味が落ちるのである。安物買いの銭失いになるから、製造してから日が経ってないものを選びましょうね。

実をいうと、今年の春先にオネーチャンと敦賀のお店に行く機会があった。そこで特選の「小鯛の昆布〆」を買って食ったんだけど、ブッ飛んだ。異次元にメチャメチャ旨かったのである。

 

 
これだね。木樽に入ってるってのは、こういう形態の事です。
残念ながら、中の本体の写真を撮り忘れた。それでも、外観の画像を見ているだけで、思い出してヨダレが出てきた。因みにこちらはレンコダイではなく、真鯛を使っている。グレイドアップなのだ。
でもデパートでは売ってないから、敦賀とか小浜のお店に行くしかないんだよねー。

これに感化されて、それっぽいものをつくってみた。身のほど知らずのチャレンジャーなのだ。

先ずは昆布〆をつくる。

 

 
で、それを酢〆にした。

 

 
2回つくった。どっちとも旨かったけど、その丸海の異次元のものには全然敵わなかった。足元にも及ばない。まあ当然だわね。あれよか旨いもんが作れるなら、店出すわ。

 

 
これも昆布〆である。一応昆布〆の作り方を書いておくか。
えー、切り分けた刺身を酒にくぐらせ、軽く塩振って昆布で巻いて一晩おけば出来上がり。塩は振っても振らなくてもよろし。ワシはその日の気分で選ぶ。

それを手巻き寿司にした。

 

 
酢めしをつくり、海苔を焙る。海苔を焙ってる時は何だか楽しい。さあ食うぞという期待値が高まってゆくからだ。

q(^-^q)旨いやんけ。期待値を裏切らない味でおました。

次はイクラを乗っけてみた。

 

 
当然ながらに、(^o^)v美味いねぇ~。
小さくだが、力強くガッツポーズをとっちゃったよ。

 

 
鯛の子と平目の子の煮つけである。

左が鯛の子なのだが、切り方を間違えた。本来は右の平目の子のように小分けに切ってから沸騰直前の出汁に放つ。そうすると花が咲いたようになる。でも、鯛の方はそのままの姿で煮ちゃったのだ。で、切ったら、こないなブサいくになってもうた。

あっ、切る前の画像も出てきた。

 

 
そういえば、あんまり見た目がキレイじゃないから、コレを切ってみたのだ。で、結果さらによろしくなくなっちやったというワケだね。

 
【鯛の子の卵とじ】

 
反省して、今度はちゃんと花型にした。それを卵でとじた。コレ、簡単だけど美味しいんだよね。かやく御飯と一緒に食うと、なお良し。もちろん鯛めしでもよろし。それにしても、よく飽きずに何回も作ったなあ。
余談だが、山椒の粉を振り掛けると、良いアクセントになりもうす。

お次は鯛の白子ポン酢である。ポン酢は「ひろたのポン酢」である。時々浮気するが、5、6年くらい前から概ねこれに落ち着いている。

 

 
赤いのは何れも「かんずり」。
🎵チャッチャチャチャッチャッ、チャッチャチャチャッチャッ、チャッチャー。ウーッ、かんずりぃー❗

アホ過ぎだが、「かんずり」を使う時は、お約束で必ずマンボをやるのだ。誰かが見たら、アホそのものである。
「かんずり」は東北版の柚子胡椒みたいなものだが、トンガリがもっと少なく、味に奥行きがある。

 
【かんずり】

 
でも無くなったので、一味唐辛子で我慢した。

 

 
どんだけ白子食っとんねん(笑)。
だって、美味いし、春から初夏にしか味わえない季節モノなんだもーん。

意外と食べたことのある人は少なそうだが、鯛の白子はマジで美味い。鱈の白子なんて足元にも及ばないくらい旨味とコクがあって、しかも上品なのだ。白子の中ではフグの白子と双璧ではないかと思う。でもトラフグの白子はバカ高いから食える機会はめったとない。となると、コスパ的には断然タイに軍配が上がる。他にフグの白子といえば、マフグやサバフグの白子もあるが、トラフグに比べては安ものの、それでも鯛よりはお高いのだ。

ちょっと話がズレるけど、そういえば昔、大阪は道頓堀、法善寺横丁近くに『南進』という冬だけやってるフグ屋があった。そこのてっちり(フグ鍋)後の〆の白子雑炊が絶品だった。残った鍋汁に白子を入れてグジュグジュに潰す。で、ご飯を入れて、とじた生卵を回しかける。蓋をして1分足らずで、浅葱(あさつき)を散らして出来上がり。思い出して、身悶えしたよ。
嗚呼、でも店はもう無いから二度と食えないんだよなあ…。
ふと、今気づいたけど、鯛の白子でも似たようなもんが出来るんじゃねえか❓何で今までそれに思い付かなかったんだろ❓
来年は、誰かさんと鯛しゃぶをして、何が何でも白子雑炊を作ろう。

 
【鯛めし】

 
鯛めしはアラだけで充分である。鯛は頭が美味いし、骨からは良質な出汁が出るので、寧ろそっちの方が旨いかもしんない。

熱湯をかけ、臭みを取るために、熱湯をかけてから作りまひょ。鱗もそうすれば取れやすくなりまふ。出来ればもうひと手間、それを焼いてから米と炊くと香ばしさが加わり、更によろしい。但し、鯛の頭は骨が多いので、それをあとで取り除くのがホネ。あっ、意図せずダジャレになってしまったなりよ(笑)

 

 
調味液は、水、顆粒の昆布だし、酒、薄口醤油、塩を適当に混ぜたもの。味醂はその日の気分で、入れたり入れなかったりする。

出来上がりは、こんな感じ。

 

 
あれっ❗❓、もう一回つくってるな。

 

 
二杯目は何となく卵の黄身を落としみた。

 

 
で、かき混ぜた。

んー、勿論不味くはないんだけど、いらんことしてもた。鯛めしの良さが生きるかと思いきや、むしろ消えとるやないけー。

 

 
お次は鯛の骨蒸しである。
何じゃいなというと、鯛の頭を昆布を下に敷いて酒ぶっかけて、塩振って蒸すだけですなあ。最初の下処理は鯛めしと同じだが、別に焼かなくともよい。
コレがシンプルだが、メチャンコ美味い。昆布の旨みが溜まらん。もしかしたら、鯛を昆布でくるんだら、もっと旨いかもしれん。自分は邪魔だと思うから用意しないけど、お好みでポン酢につけて食ってもいい。
鯛の頭といえば兜煮もあるが、とにかく断然こっちの方が好みだ。圧倒的に簡単だし、失敗も少ないしね。

こうして並べてみると、意外にも塩焼きも無いなあ…。
コレにはワケが有りそうだ。
思うに、鯛の塩焼きといえば、尾頭つきと云う概念が強すぎるのかもしれない。でも小さい鯛は美味くない。鯛はある程度の大きさにならないと美味くないのだ。でも、そんなデカイ鯛なんぞ家庭では焼けない。そんな焼く道具が無いからだ。かといって、切り身を焼くのは気が進まない。尾頭付きじゃないからだ。何かショボく感じてしまう。

あと、鯛しゃぶや鯛茶漬け、鯛そうめんも無いなあ…。
鯛しゃぶは鍋だし、できれば誰かと食いたい。鯛茶漬けは鯛を胡麻ダレに一晩漬けなければならないから面倒くさいし、茶漬けにする前に白御飯に乗っけたくなる。鯛そうめんも旨いと知ってるけど、作るのが面倒だ。それにビジュアル的に大皿の真ん中に鯛をデーンと飾りたい。そんなの一人暮らしには現実的でない。やっぱ愛媛出身の知人を作って、おうちに呼ばれて皆でワイワイ食べたいよね。できれば、その知人というのは女性であってほしいなあ。

そういえば鯛のソテーとかポワレとか洋風なものが一つもない。別に洋風の鯛料理を否定はしてないけど、自分の中の調理する優先順位としては低いんだろね。何かバターとかで焼くのって勿体ないような気がするんだな。鮮度とか悪けりゃするとは思うけど、そもそもそんな悪い状態の鯛は買わないのだ。ことわざに「腐っても鯛」という言葉があるけれども、鮮度の悪い鯛はやっぱり不味いのだ。
ことわざは何かの喩えだから文句を言っても仕方ないけど、腐った鯛は食えまへん。腐った鯛みたいな人もダメである。腐ってんだから、所詮はダメダメなんである。何か誰かのことを言ってるようで、心苦しいよ。

                   おしまい

 
追伸
お気づきの方もおられるだろうが、過去に書いた『鰹を愛する男』と『鮪を愛する男』の姉妹作である。
元々の目的はその二つと同じで、大量に溜まった画像を一挙に纏めて消すことにある。時々そうして画像を消さないと、ストレージが溜まってメール等が受信できなくなるのだ。
ほぼ毎日、飯は自分で作るので、どうしても写真が増えてしまう。その日の献立をチャチャと書いて記事にあげればいいんだけど、酒飲んで御機嫌なんだから、面倒くさい。で、日々どんどん画像が溜まってゆくというワケである。
だから、多分この魚シリーズはこれからもそれなりに続くと思われる。で、ある程度の魚の種類を書き終えたら、『魚王選手権』をやります(笑)